JP6609815B2 - プレキャスト床版、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造、及び鋼桁とプレキャスト床版の合成方法 - Google Patents

プレキャスト床版、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造、及び鋼桁とプレキャスト床版の合成方法 Download PDF

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本願発明は、鋼桁上に設置されるプレキャスト床版に関する技術であり、より具体的には、鋼桁との合成に適したプレキャスト床版と、このプレキャスト床版を使用した鋼桁との合成構造、及び合成方法に関する技術である。
近年、鋼桁橋のRC(Reinforced Concrete)床版の取替え工事が行われている。これは、車両の通過による繰り返し荷重を長年にわたって受け続け、あるいは凍結防止剤などの影響による塩害が生じ、その他コンクリートの中性化やアルカリ骨材反応などが生じた結果、RC床版に著しい劣化現象がみられたことが主な理由である。RC床版に代わる床版としては、軽量で長期耐久性に優れ、現場施工の短縮化が可能であり、しかも近年では高強度コンクリート(σ=50N/mm)の使用など高品質であるといった点から、プレキャスト床版が好んで用いられる。ここで「プレキャスト」とは、工場や製造ヤードなど現場とは異なる場所で、あらかじめ製品や部材を製作しておくことであり、このプレキャストによって製作されたコンクリート床版は「プレキャストコンクリート床版」と呼ばれることもあるが、ここでは便宜上、単に「プレキャスト床版」ということとする。
既設の鋼桁にプレキャスト床版を設置する場合、鋼桁とプレキャスト床版を一体化した合成桁と、鋼桁とプレキャスト床版を一体化しない非合成桁が考えられる。非合成桁は、鋼桁とプレキャスト床版が独立していることからそれぞれ別の挙動を示し、したがって同じ荷重でも合成桁に比べてプレキャスト床版に大きなたわみが生ずる。そのため、合成桁を非合成桁として床版を取替えたケースでは、たわみや鋼桁の応力に対する補強対策が施されるのが一般的である。
一方、合成桁は、鋼桁とプレキャスト床版が一体となって挙動することから比較的大きな剛性を有し、非合成桁に比べてたわみが小さく、非合成桁(又は合成桁)から合成桁に床版を取替えた場合、非合成桁に取替えた場合に比べ鋼桁を補強する必要がなく、もしくは鋼桁の補強量がかなり減ることが知られている。鋼桁とプレキャスト床版による合成桁を形成するには、頭付きスタッドをはじめとするスタッドを利用する手法が主流である。具体的には、鋼桁の上面(つまり、上フランジの上部)に頭付きスタッドを溶接し、この頭付きスタッドをプレキャスト床版に設けた箱抜き部に収め、そして箱抜き部に無収縮モルタルや高流動コンクリート等の充填材を注入して固化することで、鋼桁とプレキャスト床版を一体化する。
通常、鋼桁とプレキャスト床版を一体化するためには相当数のスタッドが必要となる。そのため、プレキャスト床版のうち鋼桁上面と対向する部分(つまりスタッド上方に位置する部分)には、多数の箱抜き部を設けなければならない。一方、プレキャスト床版には、鋼桁方向と直交する方向(以下、「鋼桁直交方向」という。)にプレストレスを導入するためのPC(Prestressed Concrete)鋼材が埋設されることが多い。
図9は、従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造を示す模式図であり、(a)はその横断面図、(b)はその平面図、(c)はその縦断面図である。この図に示すように、鋼桁G(主桁)の上フランジ面には頭付きスタッドSが溶接固定されており、プレキャスト床版Bを鋼桁G上に設置したときに頭付きスタッドSを収容できるようプレキャスト床版Bには箱抜き部Eが設けられている。図9(c)に示すように、多数の頭付きスタッドSが鋼桁方向(橋軸方向)に並べて配置されることから、図9(b)に示すように、1つのプレキャスト床版Bには複数箇所(図では4箇所)の箱抜き部Eが必要となる。したがって、鋼桁直交方向にプレストレスを導入するためのPC鋼材Pは、図9(b)や図9(c)に示すように、箱抜き部Eと箱抜き部Eの間隙をぬって埋設しなければならない。つまり、従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造では、PC鋼材Pの配置計画(設置位置の他、設置本数や鋼材径など)において自由な設計が制限されていたわけである。
そこで特許文献1では、箱抜き穴の数を低減することを目的として、床版を貫通する「貫通すれ止め」と床版を貫通しない「ずれ止めコッター」の2種類の箱抜き部を設けた鋼桁とプレキャスト床版の合成構造を提案している。
特開2015−229818号公報
特許文献1で提案される技術は、「貫通すれ止め」位置にはPC鋼材を設置できないものの、「ずれ止めコッター」の上部にはPC鋼材を設置できることから、従来に比べ比較的自由にPC鋼材の配置計画を行うことができる。
ところで、特許文献1が示す「貫通すれ止め」を含む従来の箱抜き部は、床版を貫通することから、供用後に箱抜き部を通じて雨水等が浸水するという問題があった。箱抜き部を無収縮モルタルで十分に充填したとしても、やはり若干の隙間が生じてしまい、そこから浸水が生ずるわけである。この浸水によって鋼桁や頭付きスタッドに腐食が生じることもあり、ひいては構造上大きな損傷に達することもある。
また、特許文献1を含む従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造には、別の問題を指摘することもできる。既述のとおり、鋼桁とプレキャスト床版を一体化するためには多数のスタッドが設置されるが、スタッドが集中して設置される箇所にはせん断力が集中することになる。つまり、無収縮モルタル等の充填材(硬化後)に大きなせん断力が生じ、場合によってはこの充填材にせん断ひび割れが発生した結果、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造が機能しなくなることも考えられる。
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、分散配置するなど自由なPC鋼材の配置計画を可能とし、さらに箱抜き部からの浸水を防止し、しかも箱抜き部に生ずるせん断力に抵抗することのできるプレキャスト床版と、このプレキャスト床版を使用した鋼桁との合成構造、及び合成方法を提供することである。
本願発明は、床版を貫通しない収容部(スタッドを収容するための空間)を設けるとともに、収容部内に露出するせん断補強筋を設置する、というこれまでにない発想に基づいて行われたものである。
本願発明のプレキャスト床版は、鋼桁の上に設置されるものであり、その一部に鋼桁設置部が形成されたものである。鋼桁設置部は、鋼桁上面に対向する位置に、鋼桁方向に沿って形成され、収容部を含む断面中空の「箱抜き部」と、収容部を含まない断面中実の「載置部」を有している。この収容部は、鋼桁上面に固定されたスタッドを収容する空間であり、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成される。また、本願発明のプレキャスト床版には、鋼桁直交方向に収容部を貫通し、かつ収容部内に露出する「せん断補強筋」が埋設される。
また本願発明のプレキャスト床版は、箱抜き部のみからなる鋼桁設置部が形成されたものとすることもできる。
本願発明のプレキャスト床版は、鋼桁直交方向に複数の緊張材が埋設されたものとすることもできる。この場合、頂板部に埋設される緊張材の段数よりも、多段の緊張材が載置部に埋設される。
本願発明のプレキャスト床版は、頂板部を肉厚方向に貫通する貫通孔が設けられたものとすることもできる。
本願発明の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造は、鋼桁と、鋼桁設置部が形成されたプレキャスト床版からなる合成構造である。なお鋼桁設置部は、鋼桁方向に沿って形成されるものであって、収容部を含む断面中空の「箱抜き部」と収容部を含まない断面中実の「載置部」を有しており、またこの収容部は、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成される。さらにプレキャスト床版には、鋼桁直交方向に収容部を貫通し、かつ収容部内に露出する「せん断補強筋」が埋設される。鋼桁上面のうち収容部が配置される範囲であってせん断補強筋を避ける位置には、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドが固定されており、鋼桁上に設置された状態のプレキャスト床版の収容部はスタッドを収容する。そして、スタッド及びせん断補強筋を含む収容部内を充填材で固化することによって、鋼桁とプレキャスト床版が一体化され、せん断補強筋が鋼桁とプレキャスト床版の間で生ずるせん断力に抵抗する。
また本願発明の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造は、鋼桁と、箱抜き部のみからなる鋼桁設置部が形成されたプレキャスト床版との合成構造とすることもできる。
本願発明の鋼桁とプレキャスト床版の合成方法は、鋼桁と、鋼桁設置部が形成されたプレキャスト床版を合成する方法であり、スタッド固定工程と、床版設置工程、充填材注入工程を備えている。なお鋼桁設置部は、鋼桁方向に沿って形成されるものであって、収容部を含む断面中空の「箱抜き部」と収容部を含まない断面中実の「載置部」を有しており、またこの収容部は、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成される。さらにプレキャスト床版には、鋼桁直交方向に収容部を貫通し、かつ収容部内に露出する「せん断補強筋」が埋設される。スタッド固定工程では、鋼桁上面のうち収容部が配置される範囲であってせん断補強筋を避ける位置に、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドを固定する。プレキャスト床版設置工程では、鋼桁設置部が鋼桁の上に配置されるように鋼桁にプレキャスト床版を設置し、充填材注入工程では、スタッド及びせん断補強筋が収容された収容部内に、充填材を注入する。
また本願発明の鋼桁とプレキャスト床版の合成方法は、鋼桁と、箱抜き部のみからなる鋼桁設置部が形成されたプレキャスト床版とを合成する方法とすることもできる。
本願発明のプレキャスト床版、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造、及び鋼桁とプレキャスト床版の合成方法には、次のような効果がある。
(1)プレキャスト床版と鋼桁との合成による接合が容易でなかったため、従来、プレキャスト床版による取替えは非合成で行われてきた。その結果、鋼桁のたわみや応力が増加し、それを許容値に入れるために相当量の鋼桁補強が必要であった。これに対し本願発明は、その補強量を大幅に削減することができる。
(2)「載置部」はスタッドを収容しない断面中実であることからPC鋼材を設置することができるうえ、スタッドを収容する「箱抜き部」も上部の頂板部にPC鋼材を設置することができる。したがって、スタッド位置に制限されることなく、自由にPC鋼材の配置を設計することができる。
(3)スタッドを収容する「箱抜き部」は床版を貫通しないため、供用後の雨水等の浸水のおそれがなく、浸水による鋼桁等の腐食を防止することができる。
(4)露出した状態のせん断補強筋とスタッドを合わせて収容部内が固化されるため、鋼桁とプレキャスト床版の間で生ずるせん断力に抵抗することができ、収容部のせん断ひび割れ等を防止することができる。
(5)スタッドを分散配置することができるため、せん断力の集中を回避することができる。
(6)せん断補強筋の位置を把握したうえでスタッドを鋼桁上に固定することができるため、せん断補強筋を設けたプレキャスト床版であってもスタッドが支障となることなく鋼桁上に設置することができる。
本願発明のプレキャスト床版と鋼桁を合成した合成桁の一部を示す斜視図。 (a)は鋼桁設置部を模式的に示す断面図、(b)は下方から見た鋼桁設置部を模式的に示す平面図。 (a)は箱抜き部を模式的に示す断面図、(b)は載置部を模式的に示す断面図。 箱抜き部のみからなる鋼桁設置部を模式的に示す平面図。 プレキャスト床版に埋設されたせん断補強筋を示す部分断面図。 箱抜き部と載置部を有する鋼桁設置部が形成されたプレキャスト床版と、鋼桁を合成した合成構造を示す部分縦断面図。 箱抜き部のみを有する鋼桁設置部が形成された本願発明のプレキャスト床版と鋼桁を合成した合成構造を示す部分縦断面図。 既設のRC床版を撤去してプレキャスト床版と鋼桁との合成構造を形成する方法における主な工程の流れを示すフロー図。 (a)は従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造を示す横断面図、(b)は従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造を示す平面図、(c)は従来の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造を示す縦断面図。
本願発明のプレキャスト床版、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造、及び鋼桁とプレキャスト床版の合成方法の一例を、図に基づいて説明する。
1.プレキャスト床版
はじめに、本願発明のプレキャスト床版について説明する。図1は、橋梁の合成桁を示すものであり、本願発明のプレキャスト床版100と鋼桁200を合成した合成桁の一部を示す斜視図である。この図では、1つのプレキャスト床版100のみを示しているが、もちろん橋梁全体としては複数の鋼桁200(この場合は主桁)が橋軸方向に並べられており、この鋼桁200間にプレキャスト床版100が橋軸直角方向に架け渡され、さらに橋軸直角方向に架け渡されたプレキャスト床版100が橋軸方向に並べられて、橋梁全体の床版は形成される。なおここでは便宜上、設置された鋼桁200の軸線方向(つまり橋軸方向)を「鋼桁方向」と呼び、鋼桁方向に直交する方向(つまり橋軸直角方向)を「鋼桁直交方向」と呼ぶこととする。
プレキャスト床版100を鋼桁200上に設置した姿勢(以下、「設置姿勢」という。)で見ると、図1にも示すように、その下面側には「収容部111a」が設けられており、この収容部111aを鋼桁直交方向に貫通し収容部111a内に露出する「せん断補強筋120」が埋設されている。この収容部111aは、鋼桁200の上面(上フランジ)に固定されたスタッド300を収容するよう箱抜きされた空間である。またプレキャスト床版100は、PC鋼材(以下、「緊張材130」という。)により鋼桁直交方向にプレストレスが導入されたものとすることもできるし、収容部111a内に無収縮モルタル等の充填材を注入するためにも利用できる「貫通孔140」が設けられたものとすることもできる。
(鋼桁設置部)
既述のとおり、プレキャスト床版100は鋼桁200間に架け渡されて設置される。つまり、プレキャスト床版100のうち一部だけが鋼桁200に載せられるわけである。本願発明はこの「鋼桁200に載せられる部分」に1つの技術的特徴を備えており、ここでは便宜上、「鋼桁設置部」ということとする。なお鋼桁設置部は、鋼桁200上に直接載置されることもあるが、高さ調整台(ゴム製やプラスチック製)を介して鋼桁200上に間接的に載置されることもある。いずれにしろ鋼桁設置部は、鋼桁200からの反力を直接受ける部分であり、大きなせん断力を負担することから、図1にも示すようにハンチ状として他よりも部材厚を大きくするのが一般的である。本願発明の鋼桁設置部も、同様にハンチ状とすることもできるし、ハンチ状とすることなく他と同じ部材厚としてもよい。
図2は、鋼桁設置部110を模式的に示す図であり、(a)は断面図、(b)は下方から見た平面図である。図2(a)に示すように鋼桁設置部110は、設置姿勢のプレキャスト床版100のうち、鋼桁200上面に対向する部分に形成される。したがって図2(b)からも分かるように、鋼桁設置部110は鋼桁方向にわたって形成される。なお1つのプレキャスト床版100は、通常、2つ以上の鋼桁200に架け渡される。図2ではプレキャスト床版100が2つの鋼桁200に架け渡された場合を例示しており、そのため2箇所の鋼桁設置部110が形成されているが、3以上の鋼桁200に架け渡される場合は、鋼桁200の数(つまり3以上)だけ鋼桁設置部110を形成するとよい。
また鋼桁設置部110は、図2(b)に示す「箱抜き部111」と「載置部112」によって形成される。図3(a)は箱抜き部111を模式的に示す断面図であり、図3(b)は載置部112を模式的に示す断面図である。図3(a)に示すように、箱抜き部111には収容部111aが設けられており、プレキャスト床版100を鋼桁200上に設置したとき、鋼桁200上面のスタッド300はこの収容部111aに収容される。
収容部111aは、プレキャスト床版100の製作時に箱抜き部111の一部を箱抜きすることで形成される。もちろん、スタッド300を収容できるように、収容部111aの高さがスタッド300の高さ以上となるよう箱抜きされる。ただしこの箱抜きは、プレキャスト床版100(つまり箱抜き部111)を貫通するものではなく、部材のうち上方の一部を残したものであり、これによって収容部111aの上方に「頂板部111b」が形成される。換言すれば、箱抜き部111は、その断面が中空となっており、断面上方の頂板部111bと断面下方の収容部111aで形成される。このように収容部111a上方に頂板部111bを設けた結果、供用後の浸水を防ぐことができ、浸水による鋼桁200やスタッド300の腐食を防ぐことができる。
一方の載置部112は、プレキャスト床版100の製作時に箱抜きされることなく形成される断面、すなわち収容部111aが設けられない断面であり、図3(b)に示すように断面内がすべて材料(コンクリート)で充填された中実の断面となっている。
図2(b)にも示すように帯状の鋼桁設置部110は、箱抜き部111(図では白抜き部分)と載置部112(図では網がけ部分)が鋼桁方向に交互に連続して配置されることで形成される。例えばこの図では、両端と中央に計3箇所の載置部112が設けられ、載置部112に挟まれるように2箇所の箱抜き部111が設けられている。なお、鋼桁方向に多数のスタッド300が配置されることもあり、収容部111aはできるだけ鋼桁方向に長い寸法で形成するとよい。したがって箱抜き部111は、鋼桁方向に沿って載置部112よりも長い寸法で形成される。箱抜き部111と載置部112の配置及び数や、箱抜き部111の鋼桁方向寸法は、プレキャスト床版100の形状寸法や設置されるスタッド300の数等に応じて適宜設計することができる。
またプレキャスト床版100や鋼桁200のサイズ、あるいは想定される外力など種々の条件によっては、本願発明のプレキャスト床版100を、載置部112が設けられることがない鋼桁設置部110、すなわち箱抜き部111のみを有する鋼桁設置部110が形成されたものとすることもできる。この場合、図3(a)に示す断面(箱抜き部111)がプレキャスト床版100の鋼桁方向にわたって形成され、つまり鋼桁設置部110範囲はすべて箱抜き部111となり、したがって図4に示すように下方からプレキャスト床版100を見ると鋼桁設置部110と箱抜き部111の平面位置は一致する。
(せん断補強筋)
既述のとおりプレキャスト床版100には、主筋や配力筋の他、せん断補強筋120が設けられる。図5は、プレキャスト床版100に埋設されたせん断補強筋120を示す部分断面図である。この図に示すようにせん断補強筋120は、プレキャスト床版100上部に定着部が設けられ、そこから斜方向に折り曲げられ、さらに収容部111aを鋼桁直交方向に貫通する部分が設けられている。したがって、せん断補強筋120の一部は収容部111a内に露出している。このせん断補強筋120は、異形棒鋼のほか丸鋼など種々の鉄筋を使用することができ、さらに耐久性を考慮してエポキシ樹脂塗装が施された鉄筋を使用してもよい。またせん断補強筋120の鉄筋径は、プレキャスト床版100の形状寸法や設計荷重などに応じて適宜設計することができ、例えばD16やD19、D22等とすることができる。
(緊張材)
通常、橋梁の床版として用いられるプレキャスト床版にはPC鋼材によってプレストレスが導入される。本願発明のプレキャスト床版100の場合も、緊張材130を埋設することでプレストレスを導入することができる。具体的には、プレキャスト床版100を製作する際に、緊張した状態の緊張材130(PC鋼材)を埋設したままコンクリートを打設し、さらにその状態でコンクリートが硬化した後、緊張した状態の緊張材130を床版端部で切断することによってプレストレスが導入される。この緊張材130は、設置姿勢となったプレキャスト床版100の鋼桁直交方向に設置するとよい。
従来、鋼桁上のスタッドを収容するためには、プレキャスト床版の一部に部材厚方向に貫通する箱抜き部を設けるのが一般的であり、当然ながらこの箱抜き部には緊張材が設置できず、結果的に緊張材の配置が極めて限定的とされていた。一方、本願発明のプレキャスト床版100は、スタッド300を収容する収容部111aの上方に頂板部111bを設けた効果で、図6に示すようにスタッド300の上方にも緊張材130を埋設することができ、すなわち制限されることなくプレキャスト床版100の任意の位置に緊張材130を配置することができる。さらに、緊張材130の配置に制限されることなくスタッド300を配置することができるともいえることから、スタッド300の分散配置が可能となり、この結果せん断力の集中を回避することができる。なお、中実断面の載置部112は頂板部111bに比べ部材厚寸法が大きい(厚い)ことから、載置部112に埋設する緊張材130の段数(上下方向に配列する数)は、頂板部111bに埋設する緊張材130の段数よりも多くすることが望ましい。例えば図6の場合、頂板部111bには1段の緊張材130が埋設され、載置部112には2段の緊張材130が埋設されている。
2.鋼桁とプレキャスト床版の合成構造
次に、本願発明の鋼桁とプレキャスト床版の合成構造について説明する。図6及び図7は、ここまで説明したプレキャスト床版100と、鋼桁200を合成した合成構造を示す部分縦断面図である。なお、図6は載置部112及び箱抜き部111を有する鋼桁設置部110が形成されたケースを示し、図7は箱抜き部111のみを有する鋼桁設置部110が形成されたケースを示している。これらの図に示すように、鋼桁200の上面(上フランジ)には、鋼桁方向に多数並べられたスタッド300が、例えば溶接によって固定されている。この鋼桁200は、鋼製の部材でありI形鋼を用いるのが一般的であるが、橋梁の規模に応じてH形鋼を用いることもでき、その他箱桁などとすることもできる。また、鋼桁200に固定されるスタッド300は、頭部に他よりも太径部材を設けた頭付きスタッドを用いることが多いが、鉄筋を山形(三角形状)やコの字形(四角形状)に折り曲げたもの、あるいは単なる直立した短鉄筋のものなど、種々の形状のスタッド300を採用することができる。
スタッド300が固定された鋼桁200上には、プレキャスト床版100が設置される。このとき、スタッド300と収容部111aの平面位置が一致するように、つまりスタッド300が収容部111a内に収容されるように、プレキャスト床版100の位置を調整しながら設置される。そして、収容部111aに収められたスタッド300と、さらに収容部111aに露出するせん断補強筋120を含めた状態で、収容部111a内に無収縮モルタル等の充填材を注入し、この充填材が硬化することでプレキャスト床版100と鋼桁200の合成構造が形成される。この合成構造によれば、収容部111a内のスタッド300でプレキャスト床版100と鋼桁200を一体化させるだけでなく、収容部111a内のせん断補強筋120によってプレキャスト床版100と鋼桁200を連結することから、従来に比べプレキャスト床版100と鋼桁200の間で生ずるせん断力に対して、より抵抗することができる。
3.鋼桁とプレキャスト床版の合成方法
続いて、「1.プレキャスト床版」で説明したプレキャスト床版100と、鋼桁200を合成して「2.鋼桁とプレキャスト床版の合成構造」で説明した合成構造を形成する方法について説明する。図8は、既設のRC床版を撤去して、新たにプレキャスト床版100と鋼桁200による合成構造を形成する方法における主な工程の流れを示すフロー図である。
まず、既存のRC床版を撤去(Step11)し、鋼桁200の上面(上フランジ)に付着した不要物を除去するなどスタッド300固定面の清掃を行う(Step12)。そして、プレキャスト床版100を設置する位置を計測し、その位置を鋼桁200の上面に罫書く。このとき、収容部111aとせん断補強筋120の位置を考慮したうえで、スタッド300の固定位置を罫書いておく(Step13)。次に、鋼桁200の上面のうち前工程で罫書かれた固定位置(つまり、収容部111aの位置であってせん断補強筋120の位置を避ける位置)に、スタッド300を溶接等で固定していく(Step14)。スタッド300を固定すると、鋼桁200上面の所定位置にプレキャスト床版100を設置する(Step15)。プレキャスト床版100の設置高さを調整するには、ゴム製やプラスチック製などの高さ調整台や、高さ調整ボルトを利用して行うとよい。高さ調整台は、プレキャスト床版100の設置前に鋼桁200(載置部112位置)上に配置されるものであり、その寸法(高さ)を調整することでプレキャスト床版100の設置高さを調整する。高さ調整ボルトは、プレキャスト床版100に設けられた雌ネジに挿入されるものであり、プレキャスト床版100の設置後に高さ調整ボルトの突出長さを調整することでプレキャスト床版100の設置高さを調整する。プレキャスト床版100が設置できると、充填材の漏れ防止用のソウルスポンジ400(図5)を鋼桁200全長にわたって配置したうえで、収容部111a内に無収縮モルタル等の充填材を注入する(Step16)。このとき、あらかじめ頂板部111bを肉厚方向に貫通する貫通孔140を設けておくと、この貫通孔140を利用して充填材を注入することもできるし、貫通孔140を通じて収容部111a内の空気を抜くこともできる。なお、供用後の浸水を防ぐことができるよう、貫通孔140はできる限り小径とするとよい。注入された充填材が硬化すると、収容部111a内で充填材、スタッド300、せん断補強筋120が一体として固化され、この結果、プレキャスト床版100と鋼桁200が一体化された合成構造が形成される。
本願発明のプレキャスト床版、鋼桁とプレキャスト床版の合成構造、及び鋼桁とプレキャスト床版の合成方法は、道路橋、鉄道橋といったあらゆる用途の橋梁に利用でき、河川橋、跨道橋、跨線橋など種々のものを越える橋梁に利用することができる。また本願発明は、既設橋梁の床版架け替え工事に使用する場合に限らず、新設橋梁にも採用することができる。本願発明が、安全な交通を提供し、ひいては橋梁の長寿命化を図ることができることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
100 プレキャスト床版
110 (プレキャストコンクリート床版の)鋼桁設置部
111 (鋼桁設置部の)箱抜き部
111a (箱抜き部の)収容部
111b (箱抜き部の)頂板部
112 (鋼桁設置部の)載置部
120 (プレキャストコンクリート床版の)せん断補強筋
130 (プレキャストコンクリート床版の)緊張材
140 (プレキャストコンクリート床版の)貫通孔
200 鋼桁
300 スタッド
400 ソウルスポンジ
B (従来の)プレキャスト床版
E (従来の)箱抜き部
G 鋼桁
P PC鋼材
S 頭付きスタッド

Claims (7)

  1. 鋼桁の上に設置されるプレキャスト床版において、
    前記鋼桁上面に対向する位置に、鋼桁方向に沿って、鋼桁設置部が形成され、
    前記鋼桁設置部は、収容部を含む断面中空の箱抜き部と、該収容部を含まない断面中実の載置部と、を有し、
    前記収容部は、前記鋼桁上面に固定されたスタッドを収容する空間であって、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成され、
    鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し、該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設され、
    鋼桁直交方向に、複数の緊張材が埋設され、
    前記頂板部に埋設される前記緊張材の段数よりも、前記載置部に埋設される前記緊張材の段数の方が多い、
    ことを特徴とするプレキャスト床版。
  2. 鋼桁の上に設置されるプレキャスト床版において、
    前記鋼桁上面に対向する位置に、鋼桁方向に沿って、鋼桁設置部が形成され、
    前記鋼桁設置部は、収容部及び頂板部からなる中空の断面であり、
    前記収容部は、前記鋼桁上面に固定されたスタッドを収容する空間であって、上方に前記頂板部を残すように形成され、
    鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し、該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設された、
    ことを特徴とするプレキャスト床版。
  3. 前記頂板部に、該頂板部を肉厚方向に貫通する貫通孔が設けられた、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプレキャスト床版。
  4. 鋼桁とプレキャスト床版からなる合成構造において、
    前記プレキャスト床版には、収容部を含む断面中空の箱抜き部と、該収容部を含まない断面中実の載置部と、を有する鋼桁設置部が、鋼桁方向に沿って形成され、該収容部は、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成されるものであり、
    さらに前記プレキャスト床版には、鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設され、
    前記鋼桁上面のうち前記収容部が配置される範囲であって、前記せん断補強筋を避ける位置には、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドが固定され、
    前記鋼桁上に設置された前記プレキャスト床版の前記収容部は前記スタッドを収容し、該スタッド及び前記せん断補強筋を含む前記収容部内を充填材で固化することによって、前記鋼桁と前記プレキャスト床版が一体化され、
    前記せん断補強筋が、前記鋼桁と前記プレキャスト床版の間で生ずるせん断力に抵抗し得る、
    ことを特徴とする鋼桁とプレキャスト床版の合成構造。
  5. 鋼桁とプレキャスト床版からなる合成構造において、
    前記プレキャスト床版には、収容部及び頂板部からなる断面中空の鋼桁設置部が鋼桁方向に沿って形成され、該収容部は上方に該頂板部を残すように形成されるものであり、
    さらに前記プレキャスト床版には、鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設され、
    前記鋼桁上面のうち前記収容部が配置される範囲であって、前記せん断補強筋を避ける位置には、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドが固定され、
    前記鋼桁上に設置された前記プレキャスト床版の前記収容部は前記スタッドを収容し、該スタッド及び前記せん断補強筋を含む前記収容部内を充填材で固化することによって、前記鋼桁と前記プレキャスト床版が一体化され、
    前記せん断補強筋が、前記鋼桁と前記プレキャスト床版の間で生ずるせん断力に抵抗し得る、
    ことを特徴とする鋼桁とプレキャスト床版の合成構造。
  6. 鋼桁とプレキャスト床版を合成する方法において、
    前記プレキャスト床版には、収容部を含む断面中空の箱抜き部と、該収容部を含まない断面中実の載置部と、を有する鋼桁設置部が、鋼桁方向に沿って形成され、該収容部は、上方に頂板部を残すように形成されるとともに、鋼桁方向に沿って形成されるものであり、
    さらに前記プレキャスト床版には、鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設され、
    前記鋼桁上面のうち、前記収容部が配置される範囲であって、前記せん断補強筋を避ける位置に、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドを固定するスタッド固定工程と、
    前記鋼桁設置部が前記鋼桁の上に配置されるように、該鋼桁に前記プレキャスト床版を設置するプレキャスト床版設置工程と、
    前記収容部内に収容された前記スタッド及び前記せん断補強筋を含む前記収容部内に、充填材を注入する充填材注入工程と、
    を備えたことを特徴とする鋼桁とプレキャスト床版の合成方法。
  7. 鋼桁とプレキャスト床版を合成する方法において、
    前記プレキャスト床版には、収容部及び頂板部からなる断面中空の鋼桁設置部が鋼桁方向に沿って形成され、該収容部は上方に該頂板部を残すように形成されるものであり、
    さらに前記プレキャスト床版には、鋼桁直交方向に前記収容部を貫通し該収容部内に露出する、せん断補強筋が埋設され、
    前記鋼桁上面のうち、前記収容部が配置される範囲であって、前記せん断補強筋を避ける位置に、鋼桁方向に並ぶ複数のスタッドを固定するスタッド固定工程と、
    前記鋼桁設置部が前記鋼桁の上に配置されるように、該鋼桁に前記プレキャスト床版を設置するプレキャスト床版設置工程と、
    前記収容部内に収容された前記スタッド及び前記せん断補強筋を含む前記収容部内に、充填材を注入する充填材注入工程と、
    を備えたことを特徴とする鋼桁とプレキャスト床版の合成方法。
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