以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電池制御システムを採用した電力制御システム1000を示す図である。
図1において、電力制御システム1000は、電力系統1と、太陽光発電部2と、N(Nは1以上の整数)個の電力貯蔵装置3と、N台のローカル充放電装置100と、蓄電池SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)200と、中央給電指令所300内の給電指令部300Aと、を含む。電力系統1は、火力発電機4と、配電用変圧器5と、配電線6と、を含む。なお、太陽光発電部2が電力系統1に含まれてもよい。N台のローカル充放電装置100と蓄電池SCADA200は、電池制御システムに含まれる。なお、火力発電機4は、外部の電力安定化装置の一例である。
太陽光発電部2が連系された電力系統1では、例えば、天候に依存した太陽光発電部2の発電量の変動に伴う電力の需給バランスの変動が危惧される。電力制御システム1000は、電力系統1での電力の需給バランスの変動を、火力発電機4の発電動作とN個の電力貯蔵装置3の充放電動作とを制御することによって抑制する。
電力系統1は、電力を需要家側の負荷7へ供給するためのシステムである。電力系統1は、他の機器(例えば、開閉器、上位変電器、SVR(Step Voltage Regulator)および柱上変圧器)も含むが、説明の簡略化を図るため、これらの機器は省略されている。
電力系統1は、他の電力系統8と連系線9を介して連系している。このため、電力系統1から他の電力系統8へ連系線9を介して電力が供給されたり、他の電力系統8から電力系統1へ連系線9を介して電力が供給されたりする。
太陽光発電部2は、再生可能電源の一例である。再生可能電源は、太陽光発電部に限らず適宜変更可能である。例えば、再生可能電源として、風力発電機、水力発電機(1千キロワット以下の電力を発電する小水力発電機を含む)、地熱発電機、または、これらの発電機が混在する電源が用いられてもよい。
電力貯蔵装置3は、電池(蓄電池)の一例であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池、またはレドックスフロー電池である。
本実施形態では、N個の電力貯蔵装置3は、N台のローカル充放電装置100と1対1で対応する。電力貯蔵装置3は、対応するローカル充放電装置100に内蔵されてもよいし、対応するローカル充放電装置100に内蔵されなくてもよい。本実施形態では、各電力貯蔵装置3は、対応するローカル充放電装置100に内蔵されているとする(図2参照)。
各ローカル充放電装置100は、対応する電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する。
蓄電池SCADA200は、各ローカル充放電装置100および各電力貯蔵装置3を管理する。
給電指令部300Aは、火力発電機4の発電動作と、N個の電力貯蔵装置3の充放電動作と、を調整することによって、電力系統1での電力の需給バランスの変動を抑制する。
図2は、ローカル充放電装置100と蓄電池SCADA200と給電指令部300Aの一例を示した図である。図2において、図1に示したものと同一構成のものには同一符号を付してある。図2では、説明の簡略化を図るために、N個の電力貯蔵装置3およびN個のローカル充放電装置100のうち、1個の電力貯蔵装置3を内蔵した1個のローカル充放電装置100を示している。
まず、ローカル充放電装置100について説明する。
ローカル充放電装置100は、第1制御装置または電池制御装置の一例である。ローカル充放電装置100は、電力系統1に接続された電力貯蔵装置3の動作を制御する。ローカル充放電装置100は、検出部101と、通信部102と、把握部103と、演算部104と、を含む。
検出部101は、検出手段の一例である。検出部101は、電力貯蔵装置3のSOC(State of Charge)を検出する。電力貯蔵装置3のSOCは、0〜1までの範囲内の値をとる。電力貯蔵装置3のSOCは、電力貯蔵装置3の状態を表す状態情報、または、電力貯蔵装置3の充放電可能容量を特定するための電池情報の一例である。なお、状態情報および電池情報は、電力貯蔵装置3のSOCに限らず、適宜変更可能である。例えば、電力貯蔵装置3のセル温度、電流量や電圧が用いられてもよい。
通信部102は、第1通信手段または通信手段の一例である。通信部102は、蓄電池SCADA200と通信する。
把握部103は、第1把握手段の一例である。把握部103は、電力系統1での電力の需給バランスを調節するために必要な調節電力量(以下、単に「調節電力量」と称する)Wを把握する。調節電力量Wは、電力系統1での電力需給バランス状態に応じて変動する。
例えば、調節電力量Wを特定するための調節電力量情報が、給電指令部300Aから送信され、把握部103は、その調節電力量情報を受信することによって、調節電力量Wを把握する。
調節電力量情報は、例えば、調節電力量Wを表し、給電指令部300Aからブロードキャストで送信される。なお、調節電力量情報のブロードキャストは、無線通信で行われてもよいし、インターネット等の公衆網を用いて行われてもよい。無線通信でのブロードキャストとしては、例えば、FM(Frequency Modulation)放送を利用したブロードキャストが用いられてもよい。無線通信でのブロードキャストは、FM放送を利用したブロードキャストに限らず適宜変更可能である。なお、調節電力量情報の送信手法は、ブロードキャストに限らず適宜変更可能である。例えば、調節電力量情報は、双方向通信によって送信されてもよい。
演算部104は、制御手段の一例である。
演算部104は、蓄電池SCADA200から電力需給バランス制御の分担を示す分担情報を得る情報入手動作(送受信処理)と、分担情報を用いて電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する制御動作(電池動作制御処理)と、を実行する。
なお、分担情報は、電力需給バランスの変動を抑制するためにローカル充放電装置100や電力貯蔵装置3に分担された電力貯蔵装置3の充放電動作に関する情報である。
演算部104は、情報入手動作を時間間隔をあけて繰り返し実行し、制御動作を情報入手動作の時間間隔よりも短い時間間隔をあけて繰り返し実行する。
例えば、演算部104は、情報入手動作を周期T(例えば、T=1分)で繰り返し実行し、制御動作を周期Tl(例えば、Tl=4秒)で繰り返し実行する。周期Tは、所定時間間隔の一例である。なお、本実施形態では、調節電力量情報の送信および受信も周期Tlで繰り返し実行される。
なお、周期Tと周期Tlは、1分と4秒に限らず、周期Tが周期Tlよりも長ければよい。
また、情報入手動作の動作時間間隔および制御動作の動作時間間隔、または両者のいずれかは、一定でなくてもよく、情報入手動作の各動作時間間隔のうちの最短時間が、制御動作の各動作時間間隔のうちの最長時間よりも長ければよい。
また、演算部104は、蓄電池SCADA200からのSOCを要求する旨の情報要求に応じて、情報入手動作を実行してもよいし、自律的に情報入手動作を実行してもよい。
ここで、演算部104の情報入手動作について説明する。
演算部104は、検出部101が検出した電力貯蔵装置3のSOCを、電力貯蔵装置3の識別情報(以下「ID」と称する。)と共に、通信部102から蓄電池SCADA200に送信する。
IDは、ローカル充放電装置100と蓄電池SCADA200とのそれぞれに記憶されている。蓄電池SCADA200は、電力貯蔵装置3のSOC と共に送信されたIDを用いて、SOCが報告された電力貯蔵装置3を特定する。
通信部102は、電力貯蔵装置3のSOCとIDを蓄電池SCADA200に送信した後、蓄電池SCADA200から分担情報を受信する。
分担情報は、電力貯蔵装置3のSOCや電力における需要と供給のアンバランス状態に応じて設定される。本実施形態では、分担情報として、分担係数Kと、調節電力量の最大値Wmaxが用いられる。分担係数Kは、動作制御情報の一例であり、電力貯蔵装置3への分担割合が高くなるほど大きくなる。
続いて、演算部104の制御動作について説明する。
演算部104は、把握部103にて把握された調節電力量と、通信部102にて受信された分担情報に基づいて、電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する。
また、演算部104は、把握部103にて把握された調節電力量と、通信部102にて受信された分担情報に加えて、電力貯蔵装置3のSOCに基づいて、電力貯蔵装置3の充放電動作を制御してもよい。
演算部104は、調節電力量Wの絶対値が調節電力量の最大値Wmax以下である場合には、分担係数Kと調節電力量Wを用いて、電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する。一方、調節電力量Wの絶対値が調節電力量の最大値Wmaxよりも大きい場合には、演算部104は、分担係数Kと調節電力量の最大値W maxを用いて、電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する。
次に、蓄電池SCADA200について説明する。
蓄電池SCADA200は、第2制御装置または電池制御支援装置の一例である。蓄電池SCADA200は、N台のローカル充放電装置100およびN個の電力貯蔵装置3を管理下に置いている。蓄電池SCADA200は、通信部201と、データベース202と、把握部203と、演算部204と、を含む。
通信部201は、第2通信手段または支援側通信手段の一例である。通信部201は、各ローカル充放電装置100および給電指令部300Aと通信する。例えば、通信部201は、各ローカル充放電装置100から電力貯蔵装置3のSOCおよびIDを受信する。
データベース202は、通信部201が受信した電力貯蔵装置3のSOCから電力貯蔵装置3の充放電可能容量を求めるために用いられる蓄電池分配率曲線を保持する。また、データベース202は、充放電可能容量を求めるために用いられる各電力貯蔵装置3の定格出力P(n)も保持する。なお、電力貯蔵装置3の定格出力P(n)としては、電力貯蔵装置3に接続された不図示のパワーコンバータ(AC/DCコンバータ)の定格出力が用いられる。
図3A、3Bは、蓄電池分配率曲線の一例を示した図である。図3Aは、放電時の蓄電池分配率曲線202aの一例を表し、図3Bは、充電時の蓄電池分配率曲線202bの一例を表す。
把握部203は、第2把握手段の一例である。把握部203は、電力系統1での電力量を調整するために蓄電池SCADA200の管理下にある電力貯蔵装置3に分担されている電力量(以下「分担電力量」と称する。)を把握する。分担電力量は、電力系統の状況の一例である。
把握部203は、データベース202内の蓄電池分配率曲線を用いて、N個の電力貯蔵装置3のSOCからN個の電力貯蔵装置3にて構成される蓄電池群の充放電可能容量を示す調整可能総容量PESを導出する。調整可能総容量PESは、通知情報の一例である。
把握部203は、調整可能総容量PESを通信部201から給電指令部300Aに送信し、その後、調整可能総容量PESが反映された分担電力量を表す分担電力量情報を、給電指令部300Aから通信部201を介して受信する。把握部203は、分担電力量情報にて分担電力量を把握する。
本実施形態では、分担電力量情報として、最大分担電力量を表すLFC(負荷周波数制御)割り当て容量LFCESと、調節電力量の最大値Wmaxと、を表す充放電利得線が用いられる。
なお、“調節電力量の最大値Wmax”とは、管理下にある多数の蓄電池の総出力LFCESで対応できる“調節電力量の最大の振れ量”を意味し、これ以上の値になった場合は、LFCESでの対応が困難になる。
図4は、充放電利得線の一例を示した図である。充放電利得線の詳細については後述する。
演算部204は、処理手段の一例である。演算部204は、通信部201にて受信された電力貯蔵装置3のSOCと、把握部203にて把握された充放電利得線と、に基づいて、分担情報(分担係数Kと調節電力量の最大値Wmax)を生成する。演算部204は、分担情報(分担係数Kと調節電力量の最大値Wmax)を、通信部201から各ローカル充放電装置100に送信する。
次に、給電指令部300Aについて説明する。
給電指令部300Aは、外部制御装置および外部通信装置の一例である。給電指令部300Aは、周波数計301と、潮流検出部302と、通信部303および304と、演算部305と、を含む。
周波数計301は、電力系統1の系統周波数を検出する。
潮流検出部302は、連系線9での潮流を検出する。
通信部303は、蓄電池SCADA200や各ローカル充放電装置100と通信する。例えば、通信部303は、蓄電池SCADA200から調整可能総容量PESを受信する。
通信部304は、各ローカル充放電装置100に調節電力量情報を送信する。
演算部305は、給電指令部300Aの動作を制御する。
例えば、演算部305は、周波数計301にて検出された系統周波数と、潮流検出部302にて検出された連系線9の潮流と、を用いて、発電所の出力補正量である総需給調整量を計算する。なお、総需給調整量は、調節電力量を意味する。
例えば、連系線9を介して電力が電力系統1から他の電力系統8に供給されている場合、演算部305は、系統周波数の基準周波数から周波数計301で検出された系統周波数を差し引いた値に、所定の定数を乗算し、その乗算結果から、連系線9の潮流(連系線9を介して電力系統1から他の電力系統8に供給されている電力)を減算した結果を、総需給調整量として算出する。
また、連系線9を介して電力が他の電力系統8から電力系統1に供給されている場合、演算部305は、系統周波数の基準周波数から周波数計301で検出された系統周波数を差し引いた値に、所定の定数を乗算し、その乗算結果に、連系線9の潮流(連系線9を介して他の電力系統8から電力系統1に供給されている電力)を加算した結果を、総需給調整量として算出する。
演算部305は、総需給調整量を表す調節電力量情報を生成し、その調節電力量情報を通信部304からブロードキャストで送信する。
また、演算部305は、総需給調整量と、制御対象となる火力発電機4のLFC調整容量と、制御対象となる蓄電池群の調整可能総容量PESと、を用いて、LFC容量を導出する。演算部305は、火力発電機4のLFC調整容量を不図示の火力発電機制御部から入手する。調整可能総容量PESは、通信部303から演算部305に供給される。
演算部305は、火力発電機4には、LFC容量のうち急な変動成分を除いた容量を割り当て、蓄電池群へは、残りのLFC容量LFCES(但し、LFCES<=PES)を割り当てる。例えば、演算部305は、LFC容量のうち周期が10秒以下の変動成分のみを通すハイパスフィルタを用いて、LFC容量から急な変動成分(容量LFCES)を抽出する。
もしくは、演算部305は、LFC容量を火力発電機4と蓄電池群とに割り振る比率に従って、LFC容量を火力発電機4と蓄電池群とに割り振る。
演算部305は、容量LFCESをLFC割り当て容量LFCESとして扱い、LFC割り当て容量LFCESと、予め定められた調節電力量の最大値Wmaxと、を表す充放電利得線(図4参照)を生成する。
演算部305は、充放電利得線を通信部303から蓄電池SCADA200に送信する。
次に、動作の概要を説明する。
(1)蓄電池SCADA200が、周期Tで、制御対象の各電力貯蔵装置3のSOCを各ローカル充放電装置100から受け付けることによって各電力貯蔵装置3のSOCを収集する。周期Tは1分程度である。
(2)蓄電池SCADA200は、各電力貯蔵装置3のSOCを収集するごとに、各電力貯蔵装置3のSOCに基づいて調整可能総容量PESを導出する。
(3)続いて、蓄電池SCADA200が、周期Tmで、給電指令部300Aへ調整可能総容量PESを送信する。周期Tmは周期T以上であり、例えば4分である。
(4)給電指令部300Aは、調整可能総容量PESを受信するごとに、蓄電池SCADA200が管轄する電力貯蔵装置3群に対するLFC割り当て容量LFCES(LFCES<=PES)を計算する。
(5)給電指令部300Aは、LFC割り当て容量LFCESを計算するごとに、LFC割り当て容量LFCESと調節電力量の最大値Wmaxとを用いて充放電利得線を作成し、蓄電池SCADA200へ充放電利得線を送信する。
(6)蓄電池SCADA200は、給電指令部300Aからの最新の充放電利得線に従って、分担係数Kを計算する。
(7)続いて、蓄電池SCADA200は、周期Tで、各ローカル充放電装置100へ分担情報(分担係数Kと調節電力量の最大値Wmax)を送信する。
(8)各ローカル充放電装置100は、分担係数Kと調節電力量の最大値Wmaxとに基づいて、電力貯蔵装置3の充放電動作を規定するローカル充放電利得線を計算する。ローカル充放電利得線については後述する。
(9)給電指令部300Aは、周期T1で、調節電力量(総需給調整量)を表す調節電力量情報を生成し、その調節電力量情報を周期T1でブロードキャスト送信する。
(10)各ローカル充放電装置100は、調節電力量情報が表す調節電力量とローカル充放電利得線とを用いて、電力貯蔵装置3の充放電動作を制御する。
次に、動作の詳細を説明する。
まず、蓄電池SCADA200が、電力貯蔵装置3のSOCに基づいて調整可能総容量PESを導出する動作(以下「PES導出動作」と称する。)を説明する。なお、調整可能総容量PESの導出では、各IDの蓄電池の定格出力P(n)等の情報(何kWhの電池であるか。また、使用可能なSOC範囲、例えば30%〜90%の範囲等)が必要となる。これらの情報は基本的に静的な情報であるため、本実施形態では、予め蓄電池SCADA200が各ローカル充放電装置100からこれらの情報を入手済みであるとする。
図5は、PES導出動作を説明するためのシーケンス図である。図5では、説明の簡略化のため、ローカル充放電装置100の数を1としている。
蓄電池SCADA200の通信部201は、各ローカル充放電装置100にSOCを要求する旨の情報要求を送信する(ステップS501)。
各ローカル充放電装置100では、演算部104は、通信部102を介してSOCを要求する旨の情報要求を受信すると、検出部101に電力貯蔵装置3のSOCを検出させる(ステップS502)。
続いて、演算部104は、検出部101が検出したSOCをIDと共に、通信部102から蓄電池SCADA200に送信する(ステップS503)。以下、IDを「1」から「N」の通し番号(n)として説明する。
蓄電池SCADA200は、各ローカル充放電装置100からIDが付加されたSOC(以下「SOC(n)」と称する。)を受信すると、調整可能総容量PESを導出する(ステップS504)。
蓄電池SCADA200と各ローカル充放電装置100は、ステップS501〜S504の動作、つまりPES導出動作を、周期Tで繰り返す。
次に、調整可能総容量PESを導出する手法について説明する。
蓄電池SCADA200の通信部201は、各ローカル充放電装置100からリアルタイムのSOC(n)を収集する。
続いて、蓄電池SCADA200の把握部203は、SOC(n)とデータベース202に保持されている蓄電池分配率曲線202aおよび202b(図3A、3B参照)を用いて、電力貯蔵装置3ごとに、放電時の蓄電池分配率α放電(n)および充電時の蓄電池分配率α充電(n)を導出する。
ここで、図3A、3Bに示す蓄電池分配率曲線は、充電時も放電時も基本的にSOCを50%程度に維持することを目的とした曲線を用いている。なお、蓄電池分配率曲線は、図3A、3Bに示したものに限らず適宜変更可能である。
続いて、把握部203は、放電時の蓄電池分配率α放電(n)と、充電時の蓄電池分配率α充電(n)と、データベース202に保持されている、総数N個の電力貯蔵装置3の各々の定格出力P(n)と、数1および数2に示した数式と、を用いて、PES、放電とPES、充電とを導出する。
続いて、把握部203は、PES、放電とPES、充電とのうち、値の小さい方を、調整可能総容量PESとして採用する。これは、電力の需給バランスを調整するためには電力貯蔵装置3での充電および放電が同程度の頻度で必要となり、充電と放電の両方が行える調整可能総容量が必要になるためである。なお、この調整可能総容量は、周期Tの期間中は少なくとも、充放電を継続できると考えられる値である。
次に、蓄電池SCADA200が給電指令部300Aと通信して充放電利得線を把握する動作(以下「把握動作」と称する。)を説明する。
図6は、把握動作を説明するためのシーケンス図である。
給電指令部300Aの演算部305は、周波数計301にて検出された系統周波数と、潮流検出部302にて検出された連系線9での潮流と、を用いて、総需給調整量(調節電力量)を計算する(ステップS601)。
続いて、演算部305は、不図示の火力発電機制御部から火力発電機4のLFC調整容量を収集する(ステップS602)。
一方、蓄電池SCADA200の通信部201は、算出された調整可能総容量PESのうち最新の調整可能総容量PESを、給電指令部300Aに送信する(ステップS603)。
給電指令部300Aの通信部303は、蓄電池SCADA200の通信部201から送信された最新の調整可能総容量PESを受信し、その最新の調整可能総容量PESを演算部305に出力する。
演算部305は、最新の調整可能総容量PESを受け付けると、総需給調整量(調節電力量)と、火力発電機4のLFC調整容量と、最新の調整可能総容量PESと、を用いて、LFC容量を導出する。続いて、演算部305は、火力発電機4には、LFC容量のうち急な変動成分を除いた容量を割り当て、蓄電池群へは、残りのLFC容量LFCES(但し、LFCES<=PES)を、LFC割り当て容量LFCESとして割り当てる(ステップS604)。
本実施形態では、演算部305は、EDC(Economic load dispatching control)成分の受け持ち分も考慮しながら、経済性の観点も考慮して、火力発電機4へのLFC容量の割り当てと、蓄電池群へのLFC容量の割り当て(LFC割り当て容量LFCES)と、の比率を決める。
続いて、演算部305は、LFC割り当て容量LFCESと、予め定められた調節電力量の最大値Wmaxと、を表す充放電利得線(図4参照)を生成する(ステップS605)。
図4に示した充放電利得線は、調節電力量に対する蓄電池群の充放電量を表している。充放電利得線は、「LFC割り当て容量LFCES<=調整可能総容量PES」の範囲内でのLFC割り当て容量LFCESの大小(LFCESやLFCES')に応じて、線400Aになったり線400Bになったりと変化する。
続いて、演算部305は、充放電利得線を通信部303から蓄電池SCADA200に送信する(ステップS606)。
蓄電池SCADA200と給電指令部300Aは、ステップS601〜S606の動作、つまり把握動作を、周期Tm(例えば、Tm=4分)で繰り返す。
なお、蓄電池SCADA200の把握部203は、通信部201を介して充放電利得線を受信していき、充放電利得線のうち最新の充放電利得線のみを保持する。
次に、蓄電池SCADA200が分担情報を生成し、分担情報を各ローカル充放電装置100に送信し、各ローカル充放電装置100が分担情報に基づいて、電力貯蔵装置3の充放電を制御するためのローカル充放電利得線を導出する動作(以下「分担動作」と称する。)を説明する。
図7は、分担動作を説明するためのシーケンス図である。図7では、説明の簡略化のため、ローカル充放電装置100の数を1としている。
蓄電池SCADA200の演算部204は、把握部203に保持されている最新の充放電利得線に示されたLFC割り当て容量LFCESと、把握部203が有する最新の調整可能総容量PESと、数3に示した数式と、を用いて、分担係数Kを導出する(ステップS701)。
続いて、演算部204は、分担係数Kと、最新の充放電利得線に示された調節電力量の最大値Wmaxと、を示す分担情報を、通信部201から各ローカル充放電装置100に送信する(ステップS702)。なお、本実施形態では分担係数Kとして数3を用いたが、他にも、逼迫時には強制的に限界に近い出力を出すことを個別の蓄電池に分担係数Kの値として指示する等、柔軟な運用が可能である。
なお、本実施形態では、ステップS702において以下の処理が実行される。
演算部204は、電力貯蔵装置3ごとに、把握部203が導出した最新の放電時の蓄電池分配率α放電(n)および充電時の蓄電池分配率α充電(n)のうち小さい値の方を蓄電池分配率α(n)として特定する。
続いて、演算部204は、電力貯蔵装置3ごとに、蓄電池分配率α(n)と、データベース202に保持されている定格出力P(n)と、を表す動作関連情報を生成する。
続いて、演算部204は、各動作関連情報に分担情報を付加し、動作関連情報に対応する電力貯蔵装置3に対応するローカル充放電装置100に、動作関連情報が付加された分担情報を、通信部201から送信する。
各ローカル充放電装置100では、演算部104は、通信部102を介して動作関連情報付き分担情報を受信する。
演算部104は、動作関連情報付き分担情報と、数4に示した数式と、を用いて、ローカル充放電利得係数G(n)を導出する(ステップS703)。
なお、数4の数式内の値は、動作関連情報付き分担情報に示されている。
続いて、演算部104は、ローカル充放電利得係数G(n)と、動作関連情報付き分担情報に示された調節電力量の最大値Wmaxと、を用いて、図8に示したローカル充放電利得線800Aを導出する(ステップS704)。
図8に示したローカル充放電利得線800Aは、調節電力量Wが−Wmax≦W≦Wmaxの範囲では、原点0を通り傾きがローカル充放電利得係数G(n)となる直線となり、調節電力量WがW<−Wmaxの範囲では、「−K・α(n)・P(n)」(マイナスの符号は放電を表す)という一定値を取り、調整電力WがWmax<Wの範囲では、「K・α(n)・P(n)」という一定値を取る。
蓄電池SCADA200および各ローカル充放電装置100は、ステップS701〜S704を周期T(例えば、T=1分)で繰り返す。
なお、蓄電池SCADA200は、ステップS701を周期Tで繰り返し、ステップS702を周期Tよりも短い周期で繰り返してもよい。この場合、ステップS702で送信される動作関連情報付き分担情報は、周期Tで更新される。
ステップS702が周期Tよりも短い周期で繰り返えされると、ローカル充放電装置100は、あるタイミングで通信障害によって動作関連情報付き分担情報を受信できなくても、受信できなかった動作関連情報付き分担情報を、その後に受信可能になる。
各ローカル充放電装置100では、演算部104は、通信部102を介して動作関連情報付き分担情報を受信していき、動作関連情報付き分担情報のうち最新の動作関連情報付き分担情報のみを保持する。
次に、ローカル充放電装置100が動作関連情報付き分担情報と調節電力量Wとに基づいて電力貯蔵装置3の充放電を制御する動作(以下「充放電制御動作」と称する。)を説明する。
図9は、充放電制御動作を説明するためのシーケンス図である。
給電指令部300Aでは、演算部305は、周期T1(例えば、周期4秒)で、調節電力量(総需給調整量)を表す調節電力量情報を生成し、その調節電力量情報を通信部304から周期T1でブロードキャスト送信する。
ローカル充放電装置100では、演算部104は、周期T1で調節電力量情報を受信する(ステップS901)。
続いて、演算部104は、調節電力量情報が表す調節電力量Wとローカル充放電利得線とに従って、電力貯蔵装置3の充電量または放電量を算出する(ステップS902)。
本実施形態では、ステップS902において、演算部104は、調節電力量Wの絶対値が調節電力量の最大値Wmax以下である場合は、ローカル充放電利得係数G(n)に調節電力量Wを乗算した値(G(n)・W)の絶対値を調整電力量として算出する。一方、調節電力量Wの絶対値が調節電力量の最大値Wmaxよりも大きい場合は、演算部104は、分担係数Kと蓄電池分配率α(n)と定格出力P(n)とを互いに乗算した値(K・α(n)・P(n))を調整電力量として算出する。この例では、図8において充電側と放電側でG(n)の傾きが同じ、即ち点対称なケースを示したが、実際には、点対称でない場合も想定され、その場合も、同じような考え方でG(n)は決定される。
続いて、演算部104は、調節電力量Wが正の値である場合、調整電力量だけ電力貯蔵装置3に充電動作を実行させ、調節電力量Wが負の値である場合、調整電力量だけ電力貯蔵装置3に放電動作を実行させる(ステップS903)。
各ローカル充放電装置100は、ステップS901〜S903を周期Tl(例えば、Tl=4秒)で繰り返す。その結果、毎回、調節電力量Wの値が変化しても、その都度、G(n)・Wに則る充放電が成される。
また、一般にLFC容量は充電方向、放電方向の双方の値をとるため、電力貯蔵装置(電池)3のSOCが0もしくは1に偏るのは望ましくない。偏りが生じると、図3に示した蓄電池分配率曲線の例にもある通り、充電、もしくは放電できる電力が小さくなり、調整可能総容量PESが小さくなってしまう。
そこで、ローカル充放電装置100が、短い周期で測定される電力系統1全体の需給状態を表す情報(本実施形態では、調節電力量W)と蓄電池SCADA200から長い周期で配信される分担情報から算出される充放電量のほかに、SOCを補正するための充放電量(SOC補正オフセット)を加えて、電力貯蔵装置3の充放電を制御してもよい。
SOC補正オフセットの値(SOC補正オフセット値)を決める方法として、演算部104が、通信部102を介して蓄電池SCADA200より、SOC補正オフセット値を決定するのに必要な情報(SOC補正オフセット関連情報)を受け付け、演算部104が、SOC補正オフセット関連情報に従ってSOC補正オフセット値を決定する、という方法がある。その際、蓄電池SCADA200は、分担情報を送信するのと同時にSOC補正オフセット関連情報を送信してもよい。なお、SOC補正オフセット関連情報は、補正情報の一例である。
SOC補正オフセット関連情報の例として、SOC補正オフセット値そのものを表すSOC補正オフセット関連情報が挙げられ、蓄電池SCADA200が、このSOC補正オフセット関連情報を各ローカル充放電装置100に対して配信する。
この場合、蓄電池SCADA200の演算部204は、各ローカル充放電装置100から受信したSOCを参照し、電力貯蔵装置3のうちSOCが0に偏った電力貯蔵装置3には、充電用のSOC補正オフセット値を表すSOC補正オフセット関連情報を配信する。また、蓄電池SCADA200の演算部204は、電力貯蔵装置3のうちSOCが1に偏った電力貯蔵装置3には、放電用のSOC補正オフセット値を表すSOC補正オフセット関連情報を配信する。
以下では、充電用のSOC補正オフセット値として、正の値のSOC補正オフセット値が用いられ、放電用のSOC補正オフセット値として、負の値のSOC補正オフセット値が用いられる例を説明する。
なお、SOCが0に偏った電力貯蔵装置3は、例えば、SOCの値が、0より大きく0.5未満の第1閾値以下になっている電力貯蔵装置である。また、SOCが1に偏った電力貯蔵装置3は、例えば、SOCの値が、0.5より大きく1未満の第2閾値以上になっている電力貯蔵装置である。
ローカル充放電装置100の演算部104は、調節電力量Wが正の値である場合、調整電力量にSOC補正オフセット値を加算して補正電力量を算出する。
また、ローカル充放電装置100の演算部104は、調節電力量Wが負の値である場合、調整電力量に−1を乗算した乗算結果にSOC補正オフセット値を加算して補正電力量を算出する。
演算部104は、補正電力量が正の値である場合、補正電力量だけ電力貯蔵装置3に充電動作を実行させ、補正電力量が負の値である場合、補正電力量だけ電力貯蔵装置3に放電動作を実行させ、補正電力量が0である場合、電力貯蔵装置3の充電および放電を実行しない。
なお、演算部204は、同時刻における全電力貯蔵装置3のSOC補正オフセットの値の総和(以下「オフセット総和」と称する)が0になるように、各SOC補正オフセット関連情報を決定してもよい。この場合、SOC補正オフセットは容量LFCESに影響しない。
もしくは、演算部204は、オフセット総和を常に0にせずにオフセット総和の変化の速度(時間の経過に伴うオフセット総和の変化の速度)が速度閾値以下(速度閾値は、例えば、調整可能総容量PES/30分)になるように、各SOC補正オフセット関連情報を決定してもよい。なお、速度閾値として、電力系統1に接続された外部の電力安定化装置(例えば、火力発電機4)が行う電力安定化動作(LFC動作)の応答速度の上限が用いられる。
例えば30分より長周期のゆっくりとした電力需給の変化は、EDCによって、火力発電機4の電力安定化動作で吸収される電力需給の変化として割り当てられる。このため、オフセット総和の変化に起因する電力需給の変化は、外部の電力安定化装置にて吸収される可能性が高くなる。よって、SOC補正オフセット値に起因する電力需給の変化は、電力貯蔵装置3の充放電に伴う相対的に高速な需給の変化には影響しなくなる。
また、演算部104が、検出部101を介してSOCを参照し、SOCが目的の値(例えば、0.5である基準SOC)になったら、自律的にSOC補正オフセットを無効して、電力貯蔵装置3の充放電を制御してもよい。
なお、上述したようにSOC補正オフセット値そのものを表すSOC補正オフセット関連情報が用いられた場合、演算部104がSOC補正オフセット値を算出する処理を実行する必要が無くなり、演算部104の処理負荷の増大を抑えることが可能になる。
SOC補正オフセット関連情報の他の例として、蓄電池SCADA200が、各ローカル充放電装置100がSOC補正オフセット値を決定する際に必要となるパラメータを各ローカル充放電装置100に配信するという方法がある。
例えば、n番目のローカル充放電装置100は、以下の数5を用いてSOC補正オフセット値Poffset,n(t)を決める。
ただし、SOCtarget、nは目的とするSOC値(電力貯蔵装置3の基準状態)、SOCn(t)は時刻tにおけるn番目のローカル充放電装置100の電力貯蔵装置3のSOC値、Tnは時定数(速度関連情報)である。
ローカル充放電装置100の演算部104は、検出部101を介して電力貯蔵装置3のSOC値を取得し、蓄電池SCADA200より通信部102を介してSOCtarget、nおよびTnを取得し、数5よりSOC補正オフセット値Poffset,n(t)を算出する。
この場合、実際のSOCの変化に応じて、SOC補正オフセット値Poffset,n(t)を適宜変更することが可能になる。また、例えば通信障害が生じてSOCtarget、nおよびTnが新たに受信されなくても、既に受信済みのSOCtarget、nおよびTnを用いてSOC補正オフセット値Poffset,n(t)を算出し続けることが可能になる。
蓄電池SCADA200の演算部204が各電力貯蔵装置のSOCtargetを決める方法の例として、LFC容量の充電方向と放電方向の偏りによって決める方法があり、多くの場合SOCtarget=0.5となる。また、TnはSOCを補正する速度を表しており、例えば、演算部204は、SOC補正オフセット値に起因する電力需給の変化がEDCによって吸収されるようにするために、各電力貯蔵装置3のSOC補正オフセットの値の総和の変化が30分より長周期の変化になるようにTnを設定する。
なお、各ローカル充放電装置100内の演算部104に、予めSOCtarget,nとTnが登録され、各演算部104が、登録されたSOCtarget,nとTnを用いてSOC補正オフセット値Poffset,n(t)を算出してもよい。
この場合も、ローカル充放電装置100の演算部104は、調節電力量Wが正の値である場合、調整電力量にSOC補正オフセット値を加算して補正電力量を算出する。演算部104は、調節電力量Wが負の値である場合、調整電力量に−1を乗算した乗算結果にSOC補正オフセット値を加算して補正電力量を算出する。
演算部104は、補正電力量が正の値である場合、補正電力量だけ電力貯蔵装置3に充電動作を実行させる。演算部104は、補正電力量が負の値である場合、補正電力量だけ電力貯蔵装置3に放電動作を実行させる。演算部104は、補正電力量が0である場合、電力貯蔵装置3の充電および放電を実行しない。
次に、電力貯蔵装置3のSOCに応じて電力貯蔵装置3の充電量または放電量を制御する他の例を説明する。
以下、説明の簡略化を図るため、定格出力が等しい電力貯蔵装置3が2個ある場合について示す。ここでは、2個の電力貯蔵装置3の定格出力をP(1)、P(2)と表す(ただしP(1)=P(2))。また、蓄電池分配率曲線は、図10に示したように、SOCの値によらず蓄電池分配率が1に維持されるとする。また、蓄電池SCADA200の演算部204は、分配係数Kが1であるときの各ローカル充放電装置100のローカル充放電利得線、つまり、分配係数Kを考慮していないときの各ローカル充放電装置100のローカル充放電利得線(以下「基準ローカル充放電利得線」と称する)を特定する。
図11は、各電力貯蔵装置3にSOC補正オフセットをかける前の基準ローカル充放電利得線を示した図である。図11において、縦軸は、各電力貯蔵装置3の充放電量であるローカル充放電装置出力を示し、横軸は、電力系統1の総需給バランスの状態を表す値Xとする。Xの例として、本実施形態では、調節電力量(総需給調整量)(W)を使用している。
図11に示した基準ローカル充放電利得線では、Xが−Xr以上Xr以下の領域において、ローカル充放電装置出力が、ローカル充放電利得係数G(n)の傾きでXに対して比例する。また、電力貯蔵装置3は定格出力P(n)以上の出力は出せないため、Xが−Xr以上Xr以下の領域以外の領域では、ローカル充放電装置出力は定格出力となる。Xrは、ローカル充放電装置出力が定格出力P(n)になる際のXの値である。なお、ここでは充電の定格出力と放電の定格出力を正負の符号が反転した同一の値としているが、必ずしもそうである必要はない。
ここで、2つの電力貯蔵装置3のSOCが異なっていたとする。蓄電池SCADA200の演算部204は、各々の電力貯蔵装置3のSOCの値を取得したのち、各々の電力貯蔵装置3のSOC補正オフセット量を算出する。なお、SOC補正オフセット量の算出手法については後述する。演算部204は、さらにSOC補正オフセット量を加味した各電力貯蔵装置3の充放電量の総和が−Xr≦X≦Xrの領域で目的の関数形(例えば、充放電量の総和が−Xr≦X≦Xrの領域でXに対して線形)になるように、基準ローカル充放電利得線を修正する。そして、演算部204は、修正された基準ローカル充放電利得線を、各々のローカル充放電装置100に送信する。図12は、修正された基準ローカル充放電利得線の例を示した図である。
ここで、蓄電池SCADA200の演算部204が基準ローカル充放電利得線を修正する手法の一例を、図13を参照して説明する。
まず、演算部204は、収集した各電力貯蔵装置3のSOCを用いて、目標SOCを算出する(ステップS1301)。目標SOCの算出方法の一つの例として、演算部204が目標SOC=ΣnWHn(t)/ΣnWHrnを算出する方法がある。なお、WHn(t)、WHrnは、それぞれ、電力貯蔵装置3nの時刻tの充電電力量(Wh)と、定格出力である最大充電電力量(Wh)である。また、Σnは、
を意味する。
続いて、演算部204は、各電力貯蔵装置3のSOC値と目標SOCとの差ΔSOCnを求める(ステップS1302)。
続いて、演算部204は、電力貯蔵装置3ごとに、ΔWHn= WHrn×ΔSOCnを計算して(ステップS1303)、目標SOCに達するまでに必要な電力量ΔWHn(Wh)を求める。
続いて、演算部204は、電力貯蔵装置3ごとに、ΔWHnを、事前に設定した時定数T(例えば5分)で割り、オフセットΔPoffsetn(W)を算出する(ステップS1304)。時定数Tは5分に限らず適宜変更可能である。
なお、オフセットΔPoffsetnは、今後Xが0のまま一定であると仮定した場合に時間Tで目標SOCに到達できるオフセット量であり、目標SOCをステップS1301に示した方法で設定した場合、ΣnΔPoffsetn=0となる。また、時定数Tは、SOCを補正する速度を規定している。例えば、オフセットΔPoffsetnに起因する電力需給の変化がEDCによって火力電力機4等の電力安定化装置に振り分けられ、その変化が火力電力機4等の電力安定化装置の電力安定化動作で吸収されるようにするために、演算部204は、各電力貯蔵装置3のオフセットΔPoffsetnの総和の変化が30分より長周期の変化になるようにTを設定する。
演算部204は、まず、この値(オフセットΔPoffsetn)を図11に示した基準ローカル充放電利得線に加える。
続いて、演算部204は、オフセットΔPoffsetnを加えて各電力貯蔵装置3が充放電を行っても、同じ時刻における全電力貯蔵装置3の充放電量の総和が−Xr ≦X≦Xrの領域においてXに対して線形になるよう、オフセットΔPoffsetnが加えられた基準ローカル充放電利得線に対して、ステップS1305およびS1306で更なる補正を加える。
ステップS1305では、演算部204は、各電力貯蔵装置3について、ΔPoffsetnを加えた後の基準ローカル充放電利得線が|X|≦Xr内で定格出力となるXの値Xlimnを求める。このとき、0<Xlimn<X<Xr(もしくは−Xr<X<Xlimn <0)の領域では、電力貯蔵装置の出力が定格出力に飽和してしまい、Xに対しての線形性が損なわれる。
そこで、演算部204は、ステップS1306で、他の電力貯蔵装置の基準ローカル充放電利得線の傾きにオフセットを加えて、−Xr<X<Xrの領域において、各電力貯蔵装置3の充放電量の総和をXに対して線形の関係にする。なお、ΔPoffsetnが加えられていない状況でも、−Xr<X<Xrの領域において各電力貯蔵装置3の総充放電量がXに対して線形の関係であったため、−Xr<X<Xrの領域において各電力貯蔵装置3の総充放電量をXに対して線形の関係にすることは、−Xr<X<Xrの領域において各電力貯蔵装置3のオフセットの総和をXに対して線形の関係にすることを意味する。
例えば、図12に示した例では、Xlim1<X<Xrの領域において、電力貯蔵装置31の出力が定格出力に飽和してしまう。このため、演算部204は、Xlim1<X<Xrの領域において、電力貯蔵装置32の基準ローカル充放電利得線の傾きにオフセットを加えることによって、Xlim1<X<Xrの領域において各電力貯蔵装置3(電力貯蔵装置31および32)の総充放電量がXに対して線形の関係にする。また、図12に示した例では、−Xr<X<Xlim2の領域において、電力貯蔵装置32の出力が定格出力に飽和してしまう。このため、演算部204は、−Xr<X<Xlim2の領域において、電力貯蔵装置31の基準ローカル充放電利得線の傾きにオフセットを加えることによって、−Xr<X<Xlim2の領域において各電力貯蔵装置3(電力貯蔵装置31および32)の総充放電量がXに対して線形の関係にする。
続いて、演算部204は、修正された基準ローカル充放電利得線を、各々のローカル充放電装置100に送信する(ステップS1307)。なお、この送信タイミングは、分担情報が送信されるタイミングに同期してもよい。
なお、修正された基準ローカル充放電利得線は、動作情報の一例であり、オフセット値とオフセットがなされていないときのローカル充放電装置出力とを加算した値(電力貯蔵装置の動作内容を表す情報)とXとの関係を示す。
各ローカル充放電装置100では、演算部104は、修正された基準ローカル充放電利得線を用いて、調節電力量Wに対応する電力量および電力貯蔵装置3の動作(充電動作または放電動作)を特定し、調節電力量Wに対応する電力量に分担係数Kを乗算した乗算結果の電力量だけ、該特定された動作を電力貯蔵装置3に実行させる。
この例では、電力貯蔵装置3のSOCに応じて電力貯蔵装置3の充電量または放電量を制御するSOC補正動作を実行しても、SOC補正動作を実行しない場合と同様に、−Xr<X<Xrの領域において、全電力貯蔵装置3の総充放電量をXに対して線形の関係にすることができる。よって、電力貯蔵装置3の総充放電量をXに基づいて高精度に制御することが可能になる。
次に、電力貯蔵装置3のSOCに応じて電力貯蔵装置3の充電量または放電量を制御するさらに他の例を説明する。
図14は、上述した例とは異なるオフセットの与え方を説明するための図である。この例では、オフセットがG(n)に与えられる。
演算部204は、電力貯蔵装置3のSOCが目標SOCより高い場合は、基準ローカル充放電利得線において、充電側のG(n)を小さくしかつ放電側のG(n)を大きくし、また電力貯蔵装置3のSOC が目標SOCより低い場合は、充電側のG(n)を大きくしかつ放電側のG(n)を小さくする。
図14に示したオフセットの与え方でも、図12に示した例と同様に、Xに対する総充放電量の線形性が崩れることを防ぐため、ある電力貯蔵装置の出力が|X|≦Xrで定格出力に達する場合は、他の電力貯蔵装置がその分のG(n)を賄う。
図14に示した例では、Xlim1<X<Xrの領域において、電力貯蔵装置31の出力が定格出力に飽和してしまう。このため、演算部204は、Xlim1<X<Xrの領域において、電力貯蔵装置32の基準ローカル充放電利得線の傾きにオフセットを加えることによって、Xlim1<X<Xrの領域において各電力貯蔵装置3(電力貯蔵装置31および32)の総充放電量をXに対して線形の関係にする。また、図14に示した例では、−Xr<X<Xlim2の領域において、電力貯蔵装置32の出力が定格出力に飽和してしまう。このため、演算部204は、−Xr<X<Xlim2の領域において、電力貯蔵装置31の基準ローカル充放電利得線の傾きにオフセットを加えることによって、−Xr<X<Xlim2の領域において各電力貯蔵装置3(電力貯蔵装置31および32)の総充放電量をXに対して線形の関係にする。
この例においても、電力貯蔵装置3のSOCに応じて電力貯蔵装置3の充電量または放電量を制御するSOC補正動作を実行しても、SOC補正動作を実行しない場合と同様に、−Xr<X<Xrの領域において、各電力貯蔵装置3の総充放電量をXに対して線形の関係にすることができる。よって、各電力貯蔵装置3の総充放電量をXに基づいて高精度に制御することが可能になる。また、この例では、X=0のとき、電力貯蔵装置3を用いた充放電が実行されないので、電力貯蔵装置3を動作させるための電力の消費が増加することを抑制可能になる。
以上説明してきた電力制御システム1000にてN=1000台の電力貯蔵装置を制御したところ、途中で給電指令部300Aと蓄電池SCADAとの間で通信障害が20秒間発生したが、充放電利得線を送信する4分間隔の間での障害であったため、通信障害の前後で制御状態に変化はなく、安定的に系統周波数変動の抑制制御を実現することができた。
また、系統側の火力発電機と電力貯蔵装置との全体最適という観点でも、経済性や火力発電機の応答速度を考慮した制御分担を、分散蓄電池群に担わせることが可能になった。
次に、本実施形態の効果について説明する。
ローカル充放電装置100では、演算部104は、蓄電池SCADA200から提供された分担情報と、把握部103が把握した調節電力量と、に基づいて、電力貯蔵装置3の動作を制御する。このため、分担情報だけでなく、実際の電力系統での電力需給のバランス状態の変化に応じて、電力貯蔵装置3の動作を調整することが可能になる。
また、本実施形態によれば、需要家機器が連系点で測定した値(例えば系統周波数の基準周波数からの乖離量)から総需給調整量を推定できない場合でも、需要家機器は総需給調整量を得ることができる。
例えば、系統周波数の基準周波数からの乖離量に加えて、需要家機器では測定できない値(例えば電力系統1から他の電力系統8に連系線9を介して流れる電力量)を用いて総需給調整量を算出することを、電力会社が要求する場合がある。
詳細に説明すると、複数の電力系統が連系している状況では、各電力系統の系統周波数は共通となる。そのため、一方の電力系統1における需給バランスの悪化(需要量と発電量の不一致)により系統周波数が変化すると、他の電力系統8においても系統周波数が変化してしまう。
電力系統1と電力系統8が異なる電力会社によって運用されている状況では、一般には、片方の電力系統で需給バランスの悪化が生じた場合、その電力系統内にある機器の需給調整によって需給バランスを取り戻す(需要量と発電量の不一致を解消する)必要がある。
しかし、各需要家機器が系統周波数の基準周波数からの乖離量を用いて総需給調整量を推定する場合、需給バランスがとれている(需要量と発電量が一致している)他の電力系統8に連系した需要家機器も、系統周波数の変化から、需給調整が必要と誤認してしまう。
そのため、系統周波数の基準周波数からの乖離量から総需給調整量を算出する方法は、電力系統1が他の電力系統8と独立して連系していない離島のような状況において利用すること好ましい。
電力系統1が他の電力系統8と連系している場合の需給調整の方法として、例えば、周波数偏倚連系線潮流制御(Tie line Bias Control、TBC)と呼ばれる方法がある。
この方法では、系統周波数から電力系統1と電力系統8の総需給調整量の総和を算出し、電力系統1から他の電力系統8に連系線9を介して流れる電力量から、電力系統1と電力系統8のそれぞれの総需給調整量が算出される。
この方法を用いれば、他の電力系統8が連係している場合でも、需給バランスが悪化した電力系統1のみを調整すればよいと認識することができる。
そこで本実施形態では、例えば、電力会社もしくはアグリゲータ等が系統周波数と連系線9を介して流れる電力量を測定し、電力系統1と電力系統8のそれぞれの総需給調整量を算出し、その算出結果を需要家機器に配信することで、需要家機器は総需給調整量を得ることができる。
なお、総需給調整量は、系統周波数の基準周波数を用いなければ、連係線9を流れる電力量を用いて算出される以外にも、電力会社が任意に決定するなど、その他の方法により算出されてもよい。
なお、上記効果は、検出部101と通信部102と把握部103と演算部104とからなるローカル充放電装置100でも奏する。また、上記効果は、通信部201と把握部203と演算部204とからなる蓄電池SCADA200でも奏する。また、上記効果は、検出部101と通信部102と把握部103と演算部104とからなるローカル充放電装置100と、通信部201と把握部203と演算部204とからなる蓄電池SCADA200と、からなる電池制御システムでも奏する。
図15は、検出部101と通信部102と把握部103と演算部104とからなるローカル充放電装置を示した図である。
図16は、通信部201と把握部203と演算部204とからなる蓄電池SCADA200を示した図である。
また、把握部103は、調節電力量を特定するための調節電力量情報を、給電指令部300Aから受信することによって、調節電力量を把握する。このため、調節電力量を容易に把握することが可能になる。
また、調節電力量情報は、調節電力量情報の送信元から調節電力量情報の送信先への片方向通信(例えばブロードキャスト通信)で送信される。このため、調節電力量情報の通信に関する遅延を小さくすることが可能になる。
なお、例えば、調節電力量情報の情報量が動作制御情報の情報量よりも少ない場合、調節電力量情報は、調節電力量情報の送信元と調節電力量情報の送信先との間の双方向通信によって、調節電力量情報の送信元から調節電力量情報の送信先へ送信されてもよい。この場合、調節電力量情報の送信先から調節電力量情報の送信元へ送信される情報としては、調節電力量情報を受信した旨の情報(例えばACK)が用いられる。
また、演算部305は、調節電力量情報を通信部304からブロードキャストで送信する代わりに、調節電力量情報を通信部303から蓄電池SCADA200に送信してもよい。この場合、蓄電池SCADA200では、通信部201が調節電力量情報を受信し、演算部204は、その調節電力量情報を通信部201からローカル充放電装置100に送信する。この場合、動作制御情報と調節電力量情報とを同じ通信部を用いて通知することが可能になる。
また、各ローカル充放電装置100に同時に送信される調節電力量情報は同じ内容を表すので、送信先ごとに調節電力量情報を変更する必要が無く、調節電力量情報の送信側の負荷を抑えることが可能になる。
なお、調節電力量情報の送信元は、指令部300Aに限らず適宜変更可能である。
また、蓄電池SCADA200は、分担情報を生成するために用いる充放電利得線を、電力系統1を制御する給電指令部300Aから受け付ける。このため、例えば、系統側の火力発電機4の動作が考慮された充放電利得線を得ることが可能になる。よって、系統側の火力発電機4と電力貯蔵装置3とによる電力需給バランス制御を高い精度で実施することが可能になる。
また、蓄電池SCADA200は、調整可能総容量PESが反映された充放電利得線を給電指令部300Aから受け付ける。このため、電力貯蔵装置3の調整可能総容量に応じて、電力貯蔵装置3の負担を調整することが可能になる。
また、ローカル充放電装置100が蓄電池SCADA200から分担情報を入手する時間間隔が、ローカル充放電装置100が分担情報を用いて電力貯蔵装置3の動作を制御する動作間隔よりも長い。このため、分担情報を入手する時間間隔が電力貯蔵装置3の動作間隔以下である場合に比べて、分担情報を入手する処理が、ローカル充放電装置100と蓄電池SCADA200との間で生じる可能性のある通信の不具合の影響を受け難くなる。
また、演算部104は、さらに電力貯蔵装置3のSOCやSOC補正オフセット値に基づいて電力貯蔵装置3の動作を制御する。このため、電力貯蔵装置3のSOCが0もしくは1に偏ることを防止可能になり、電力貯蔵装置3を用いて充電もしくは放電できる電力が小さくなり、調整可能総容量PESが小さくなってしまうことを防止可能になる。
また、演算部104は、調節電力量Wに応じて特定される電力系統1の電力を安定化させるための電力量を、分担係数KおよびSOCに基づいて調整した補正電力量を特定し、その補正電力量での充電または放電を電力貯蔵装置3に対して実行する。このため、電力貯蔵装置3のSOCが0もしくは1に偏ることを防止しつつ、分担情報だけでなく実際の電力系統での電力需給のバランス状態の変化に応じて、電力貯蔵装置3の動作を調整することが可能になる。
また、演算部204が、電力貯蔵装置3のSOCに基づいて、電力貯蔵装置3のSOCを基準SOCに近づける充電量または放電量を示すSOC補正オフセット関連情報を生成し、演算部104が、SOC補正オフセット関連情報に示された充電量または放電量を用いて電力貯蔵装置3を制御してもよい。この場合、演算部104がSOC補正オフセット値を算出する処理を実行する必要が無くなり、演算部104の負荷を抑えることが可能になる。
また、演算部204が、充電用のSOC補正オフセット値を正の値とし放電用のSOC補正オフセット値を負の値とした場合に、充電用のSOC補正オフセット値と放電用のSOC補正オフセット値の総和が0になるように、各SOC補正オフセット関連情報を生成してもよい。この場合、SOC補正オフセットが容量LFCESに影響することを防止可能になる。
また、演算部204が、時間の経過に伴うオフセット総和の変化の速度が、火力発電機4が行う電力安定化動作の応答速度の上限以下になるように、各SOC補正オフセット関連情報を生成してもよい。この場合、オフセット総和の変化に起因する電力需給の変化は、火力発電機4の電力安定化動作にて吸収される可能性が高くなる。よって、SOC補正オフセット値に起因する電力需給の変化は、電力貯蔵装置3の充放電に伴う相対的に高速な需給の変化には影響しなくなる可能性が高くなる。
また、演算部204が、電力貯蔵装置3ごとに、電力貯蔵装置3のSOCに基づいて、該SOCを目標SOCに近づける充電量または放電量を特定し、かつ、調節電力量Wが所定範囲内である状況において各電力貯蔵装置3の該充電量または該放電量の総和が調節電力量Wに対して線形の関係になるように該充電量または該放電量を補正してもよい。また、演算部204は、補正後の該充電量または該放電量を用いて、修正された基準ローカル充放電利得線を生成してもよい。そして、演算部104は、修正された基準ローカル充放電利得線に基づいて、電力貯蔵装置3の動作を制御してもよい。この場合、電力貯蔵装置3の総充放電量をXに基づいて高精度に制御することが可能になる。
また、演算部104が、蓄電池SCADA200から受信したSOCtarget、nと電力貯蔵装置3のSOCとの差に基づいて、SOC補正オフセット値を生成してもよい。この場合、実際の電力貯蔵装置3のSOCの変化に応じて、SOC補正オフセット値を適宜変更することが可能になる。また、例えば通信障害が生じてSOCtarget、nが新たに受信できなくなっても、既に受信済みのSOCtarget、nを用いてSOC補正オフセット値を算出し続けることが可能になる。
また、演算部104が、蓄電池SCADA200から受信したTnでSOCtarget、nと電力貯蔵装置3のSOCとの差を補正することによって、電力貯蔵装置3のSOCをSOCtarget、nに近づける充電量または放電量を示すSOC補正オフセットの値を生成してもよい。この場合、オフセット総和の変化の速度をTnにて調節することが可能になる。よって、オフセット総和の変化に起因する電力需給の変化を、火力発電機4の電力安定化動作にて吸収させることが可能になる。
なお、本実施形態において、電力貯蔵装置3における有効電力Pと無効電力Qの制御を考慮した場合、定格出力P(n)の代わりに、有効電力Pの制御に割り当てる電力貯蔵装置3の出力分の最大値(要するに、別途Qの出力を平行して用いている場合、その出力分定格出力よりもP出力最大値が低下している効果を考慮)が用いられてもよい。
また、本実施形態において、ローカル充放電装置100は、蓄電池SCADA200との通信が不通になった場合、電力貯蔵装置3の充放電の制御を停止してもよい。
また、蓄電池SCADA200は、いずれかのローカル充放電装置100との通信が不通になった場合、通信が不通になったローカル充放電装置100以外のローカル充放電装置100と上述した通信を行うことが望ましい。
また、電力系統1が、他の電力系統8と連系されていない場合(連系線9が存在しない場合)には、演算部305は、系統周波数の基準周波数から周波数計301で検出された系統周波数を差し引いた値に、所定の定数を乗算し、その乗算結果を、総需給調整量として算出する。
また、上記実施形態では、蓄電池SCADA200やローカル制御装置100等は、情報通信の過程で時刻同期情報を適時集配し、機器間で時刻同期が成されている。
また、ローカル充放電装置100は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能なCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)のような記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、ローカル充放電装置100が有する各機能を実行する。記録媒体は、CD−ROMに限らず適宜変更可能である。
また、蓄電池SCADA200は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、蓄電池SCADA200が有する各機能を実行する。
また、給電指令部300Aの代わりに、配電用変電所近辺に設置された小規模のEMS(Energy Management System:エネルギー管理システム)が用いられてもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
まず、本実施形態の想定する状況を説明する。
アグリゲータが、複数の需要家の消費電力を制御することによって、電力系統の需給バランスを取る責任を担う事業者(以降、簡単のため電力会社とする)に対して需給調整力を提供するとする。
需給調整力とは、電力会社の管理する電力系統内の総需要量と総供給量のずれを遅延なく埋める能力のことである。よって、アグリゲータに求められる能力は、電力会社の要求に従って遅延なく需給調整を行う能力、すなわち消費電力もしくは発電電力を変更する能力である。
アグリゲータは、需給調整力を提供するため、需要家の持つ機器を直接制御して需給調整を行うとする。
一般に、需給調整力を提供する者は火力発電所の所有者である場合が多く、その場合、電力会社に提供する需給調整力は少なくともMW以上の単位となる。よって、個別の需要家では、火力発電所の所有者のように電力会社に対して需給調整力を提供する契約を結ぶことはできない。そこでアグリゲータは、多数の需要家の機器を直接制御してそれらの機器を連携させることで、需要家が持つ需給調整力を電力会社に提供可能にする。
アグリゲータが制御する需給調整装置の例として、蓄電池、ヒートポンプ給湯器、空調、電気自動車等の、消費電力を変更しても需要家の利便性に影響が出るまでに時間がかかる装置が挙げられる。このような装置の中でも、アグリゲータが制御する需給調整装置としては、特に、エネルギーを蓄えることが可能な装置が望ましい。エネルギーを蓄えることが可能な装置は、一時的に消費電力が変更されたとしても、エネルギーを蓄えるバッファがあるため、短い期間であれば特に需要家の利便性に大きな影響を与えない。
アグリゲータは、需給調整力を提供する日の前日までに電力会社と契約を行い、アグリゲータが提供する需給調整力および需給調整力を提供する時間帯を決定する。
電力会社の求める需給調整力は、需給調整量が指示される間隔や需給調整量の積算値が0(例えば、需要増加を正、減少を負とする場合)になるまでの時間である変動周期の違いによって、複数種類に分かれている。電力会社は、複数種類の需給調整力の中から必要な需給調整力を、需給調整力を必要とする日の前日までに計算し、事前契約によって必要な容量(需給調整力)を確保する。必要な需給調整力を確保する手法の例として、市場を介して必要な需給調整力に到達するまで、需給調整力について入札させる手法がある。その場合、アグリゲータは、自身の提供可能な需給調整力を事前に算出し、その算出結果を考慮して入札することになる。
アグリゲータが電力会社に提供する需給調整力は、特に、需給調整量の変更周期が短く(例えば変更周期が1秒間隔)かつ変動周期が短い(例えば変動周期が30分間程度)需給調整力、すなわち短期需給調整力と呼ばれるものが望ましい。以下この点について説明する。
従来需給調整力を提供してきた火力発電は、短い周期で需給調整量が変更される需給調整には向かないが、需給調整量の一定時間の総和については制約が少ないという特徴がある。
火力発電では、発電量を変更するためには燃料の注入量を変更する必要がある。そのため火力発電では、出力を数十%変更するには、一定の時間(例えば短くとも数十秒)かかる。したがって火力発電では、1秒間隔で需給調整量が変更された場合に、その変更への追従が困難となる。しかし火力発電では、燃料の注入量さえ変更してしまえば、需給調整量の時間積分の値に関係なく需給調整力を提供できる。
一方で、需要家の機器を用いた需給調整の場合、多くの需要家の機器は、需給調整量の変更に応じて1秒ごと変化する、消費電力の変更の指令値に追従することが可能である。
しかし、需要家の機器は、長期間での消費電力の変更の時間積分が0にならないと、前述のエネルギーを蓄えるバッファが飽和してしまい、利便性に影響が出てしまうという問題が発生する。
また、再生可能電源の普及に伴って必要となる需給調整力は、短期、例えば1秒間隔で消費電力の変更の指令値が変更されるような変化の速い需給調整力である。再生可能電源は、気候に応じて発電量が高速に変動するため、それを吸収するための需給調整力が特に求められる。
よって、需要家の機器の直接制御によって提供される調整力は、短期需給調整力とすることが望ましいことになる。
なお、アグリゲータ機器が、電力会社の要求する需給調整量PES(t)を受け取り、需要家の機器を直接制御して、需要家の機器の消費電力の総和が需給調整量PES(t)から乖離することなく該総和を需給調整量PES(t)だけ変化させようとしても、通信の遅延、中断または需要家の機器の状態の変化に起因して需要家の機器が需給調整用の指令に従えなくなると、需要家の機器の消費電力の総和が需給調整量PES(t)から乖離してしまう。以下、この点について説明する。
アグリゲータ機器は、需要家の機器と双方向通信を行って各需要家の機器に対して需給調整の指令を行う状況下では、例えば以下のように動作する。
アグリゲータ機器が電力会社より需給調整量PES(t)を受け取ると、アグリゲータ機器は、需給調整量PES(t)を、需要家の各機器の需給調整量Pn(t)に割り当てる。なお、Pn(t)のnは機器を示す番号で、1,2,3..と整数で表す。Pn(t)が正であることは、需要を増やすこと、つまり蓄電池なら充電を意味し、Pn(t)が負であることは、需要を減らすこと、つまり蓄電池なら放電を意味する。
アグリゲータ機器は、割り当ての際、PES(t)=P1(t)+P2(t)+…+PN(t)という制約条件の下で、各機器nの状態に応じて各機器nの需給調整量Pn(t)を割り当てる必要がある。なお、アグリゲータ機器が制御する全ての需要家の機器の総数をN個とする。ここで、アグリゲータ機器が各機器nの状態に応じて各機器nの需給調整量Pn(t)を割り当てる意味を説明する。例えば、需要家の機器が蓄電池である場合、蓄電池のSOCの飽和または枯渇が生じると、蓄電池は指令をうけても反応できない。よって、それを回避するように、アグリゲータ機器は、各機器nの状態に応じて、各機器nの需給調整量Pn(t)を割り当てる。
しかし、アグリゲータ機器が、数万以上の大量の需要家の機器と双方向通信を行うと、通信の遅延や中断が発生する可能性が高くなる。
例えば、アグリゲータ機器が、順番に需要家の機器に状態を問い合わせ、その返答に応じて各機器nの需給調整量Pn(t)を割り当て、その割り当て結果を配信する場合、一般のインターネットで生じる遅延時間である数十m秒が機器ごとにかかってしまう。このため、アグリゲータ機器が1万個の機器すべてと通信を終えるのに数百秒以上の時間がかかってしまう。
もしくは、アグリゲータ機器が需要家の機器に一斉に問い合せをして、各機器が返答を行った場合、返答時に輻輳が生じ、再送に伴う通信の一時的な途絶や、大幅な遅延が生じる可能性がある。
よって、アグリゲータ機器が数万以上の大量の需要家の機器と常に双方向通信を行うことは、通信の遅延や中断を生じさせることになり、求められる遅延の極力ない需要家の機器の制御を行う上で、アグリゲータ機器が常に双方向通信で需要家の機器を制御、例えば蓄電池なら充電電力もしくは放電電力を指令することは困難となる。
そこで、本実施形態では、遅延なくPES(t)=P1(t)+P2(t)+…+PN(t)を満たしつつ各機器の状態に応じた直接制御量(各機器nの需給調整量)Pn(t)の割当を実現するために、アグリゲータ機器と需要家の機器との間で通信される情報を、要求性能の異なる2種類の情報(具体的には「需給調整量PES(t)」と「各機器(以下、機器として「電池」を例に説明する)の分担を表す情報」)に分離し、各情報の通信手法を異ならせることで、通信の遅延や中断を抑制し、各需要家の機器の需要の変化が目標値と乖離することを低減することを可能にした。
需要家の各機器は、直接制御量Pn(t)をアグリゲータ機器から受け取るのではなく、「需給調整量PES(t)」と「各電池の分担を表す情報」の2種類の情報を受け取り、2種類の情報を合わせることで、自身の直接制御量(分担量)Pn(t)を算出し、その算出結果に従って需給調整を行う。
需給調整量PES(t)は、遅延なく(例えば1秒ごとに)需要家の各機器にて受け取られる必要がある一方で、需要家の各機器に対して同一の情報(需給調整量PES(t))が配信されればよく、また片方向の通信でよい。このため、需給調整量PES(t)の通信手法としては、低遅延かつ高信頼な通信手法を選択できる。例えば、需給調整量PES(t)の配信手法として、FM放送等の無線を使った配信手法や、アプリケーションレイヤ・ブロードキャスト、UDP(User Datagram Protocol)等がある。もしくは、アグリゲータ機器や需要家の各機器が系統全体の需給バランスを反映する系統周波数の基準周波数からの乖離を測定し、その測定結果をもとに需給調整量PES(t)を推定してもよい。
一方で、「各電池の分担を表す情報」は機器の状態に応じて変化するため、アグリゲータ機器は、需要家の各機器から機器の状態を受信し、それら機器の状態に応じて「各電池の分担を表す情報」を決定し、その「各電池の分担を表す情報」を需要家の各機器に配信するため必要がある。つまり、「各電池の分担を表す情報」を決定し「各電池の分担を表す情報」を配信するためには、アグリゲータ機器と需要家の各機器とは双方向通信を用いる必要がある。
しかしながら、「各電池の分担を表す情報」を決定し「各電池の分担を表す情報」を配信するに必要な双方向通信は、低頻度(数分以上の間隔)であり、また通信間隔より小さい数十秒〜分程度以下の遅延や中断があっても構わないため、インターネット等の安価な通信を使用することが可能である。これは、需給調整に関係する機器の状態の変化は多くの機器において秒単位で変化するものではないため、分担を表す情報は低頻度でも問題がないことに起因する。
次に、本実施形態の構成を説明する。図17は、本実施形態の構成の例を示した図である。
図17において、需要家施設1300内の制御装置1310は、第1制御装置の一例であり、アグリゲータ装置1200は、第2制御装置の一例である。
電力会社1100は、需給調整容量計画部1110および需給調整量配信部1120を備えている。
需給調整容量計画部1110は、需給調整を行うより以前、例えば前日のうちに、時刻ごと、例えば1時間単位で、必要となる需給調整容量を見積もり、その見積もりに従って、アグリゲータ装置1200や、不図示の他のアグリゲータや不図示の火力発電所等に対して、需給調整容量を割り当てる。ここで、需給調整容量とは、要求に応じて変更する需要もしくは負荷の最大値を指す。そして需給調整を行う際は、需給調整量配信部1120は、アグリゲータや不図示の火力発電所に対し、例えば1秒ごとに、割り当てに応じて規格化された需給調整量を配信する。
アグリゲータ装置1200は、機能の観点で3つの部分からなる。
1つ目の部分は、需給調整を行うより以前(例えば前日)に電力会社1110に提供する需給調整容量を決定する機能を実現するための、データベース1210、需給調整量見積部1220および需給調整容量契約部1230を含む。
データベース1210には、アグリゲータと契約している需要家の機器の、各々の提供可能な需給調整容量およびその他制約(例えば蓄電池ならインバータ定格)が格納されている。
需給調整量見積部1220は、データベース1210に格納されている情報を元に、契約している全ての需要家の機器を用いて提供可能な需給調整容量を見積もり、需給調整容量契約部1230を介してアグリゲータ1200装置が電力会社1100に提供する需給調整容量を決定する。
2つ目の部分は、需給調整を行う際、電力会社1100より例えば1秒ごとに送られてくる需給調整量を受信し、その需給調整量を需要家の機器(電池)に配信する機能を実現するための、需給調整量受信部1240およびアグリゲータ側片方向通信部1250を含む。
3つ目の部分は、事前に契約した需給調整容量および各需要家の機器の状態に基づき、各電池の分担を決定する割当演算部1260と、各需要家の機器の状態を収集し、各電池の分担を各需要家の機器へ送信するアグリゲータ側双方向通信部1270とを含む。
アグリゲータ側双方向通信部1270が各需要家の機器の状態を収集し、割当演算部1260が決定した各電池の分担を各需要家の機器へ送信する一連の動作の間隔は、長い間隔、例えば10分ごとである。
なお、アグリゲータ装置1200において、需給調整容量契約部1230は第2把握手段の一例である。アグリゲータ側片方向通信部1250は外部通信装置の一例である。割当演算部1260は処理手段の一例である。アグリゲータ側双方向通信部1270は第2通信手段の一例である。
需要家施設1300は、制御装置1310およびアグリゲータ装置1200が制御する対象の装置の例として、蓄電池1320を備えている。
蓄電池1320は、制御装置1310からの指令に従って充放電量を決定し、電力系統1に対して電力を放出・吸収することで需給調整を行う。
なお、アグリゲータ装置1200が制御する対象の装置として、蓄電池を想定しているが、アグリゲータ装置1200が制御する対象の装置は、例えば、ヒートポンプ給湯器、空調、または電気自動車でもよい。
また図17では、需要家施設1300内に1つの制御装置1310があり、1つの制御装置1310に1つの蓄電池1320しか接続されていないが、1つの需要家施設1300内に複数の制御装置1310があっても構わないし、1つの制御装置1310に複数の蓄電池1320が接続していても構わない。
また、説明の簡略化を図るため、アグリゲータ装置1200が制御する負荷以外は省略しているが、その他の負荷が需要家施設1300内に存在してもよい。
また、説明の簡略化を図るため、図17では需要家施設1300は1つしか示されていないが、需要家施設1300は、複数例えば1万戸以上存在してもよい。
需要家施設1300内の制御装置1310は、需要家側片方向通信部1311、需要家側双方向通信部1312および需要家演算装置1313を含む。
需要家側片方向通信部1311は、アグリゲータ側片方向通信部1250より、例えば1秒ごとに、規格化された需給調整量を受信する。
需要家側双方向通信部1312は、需要家演算装置1313を介して各需要家の機器(本実施形態では蓄電池1320)の状態(例えばSOC)を収集し、各需要家の機器の状態をアグリゲータ側双方向通信部1270へ送信する。また、需要家側双方向通信部1312は、アグリゲータ側双方向通信部1270より、電池(蓄電池1320)の分担を受信する。なお、需要家側双方向通信部1312が実行するこの送受信動作は、長い間隔、例えば10分間隔で行われる。
需要家演算装置1313は、短い間隔、例えば1秒ごとに受信する規格化された需給調整量と、長い間隔、例えば10分ごとに受信する分担の情報とを用いて、短い間隔、例えば1秒ごとに蓄電池1320へ指令する充放電量を決定する。
なお、規格化された需給調整量は、電力会社1100からアグリゲータ装置1200を経由して需要家施設1300内の制御装置1310に配信されるが、その場合の通信手法は下記のようになる。
まず、アグリゲータ側片方向通信部1250より需要家側片方向通信部1311へ規格化された需給調整量を送信する手法としては、送信先となる制御装置1310の数が多いため、比較的安価かつ信頼性の高い、FM放送等の無線を使った配信や、アプリケーションレイヤ・ブロードキャスト、UDP等が使用される。
一方で、電力会社1100の需給調整量配信部1120がアグリゲータ装置1200の需給調整量受信部1240と通信を行う手法としては、アグリゲータ装置1200の数は需要家の数(制御装置1310)の数と比較して大幅に少ないことから、例えば、信頼性の高い専用線を用いて通信する手法が用いられてもよい。
また、アグリゲータ側双方向通信部1270と需要家側双方向通信部1312の間での通信手法としては、遅延や中断に対して強いため、通常のインターネットやキャリア網を使用する通信手法が用いられる。
なお、制御装置1310において、需要家側片方向通信部1311は第1把握手段の一例であり、需要家側双方向通信部1312は第1通信手段の一例であり、需要家演算装置1313は検出手段および制御手段の一例である。
次に、図17に示した本実施形態の動作を説明する。
本実施形態の動作は、事前の需給調整容量の契約の手順と、需給調整の動作の手順との2つに分けることができる。
事前の需給調整容量の契約の手順では、電力会社1100は、必要となる需給調整容量を見積もり、一方でアグリゲータ装置1200は、複数の契約需要家の蓄電池1320を用いて提供可能な需給調整容量PES,rated_maxを見積もり、時刻毎にアグリゲータ装置1200が、電力会社1100に提供する需給調整容量PES,maxを契約する。
需給調整の動作の手順では、電力会社1100より1秒ごとにアグリゲータ装置1200へ送信される需給調整量PES(t)が、各々の契約需要家の蓄電池1320の充放電量Pn(t)に割り振られる。
まず、事前の需給調整容量の契約の動作を説明する。
図18は、電力会社1100の需給調整容量計画部1110の動作を説明するためのフローチャートである。
ステップS2010では、需給調整容量計画部1110は、需給調整を行う日より以前、例えば前日のうちに、翌日24時間分の時刻毎、例えば1時間単位で必要となる需給調整容量を見積もる。需給調整容量とは、要求に応じて変更する需要もしくは負荷の最大値を指す。需給調整容量計画部1110は、例えば翌日の気象予測等を用いて、需要家負荷および再生可能電源の発電量の変動幅を推定し、系統全体で必要となる需給調整容量を見積る。
次に、ステップS2020にて、需給調整容量計画部1110は、見積もられた系統全体で必要となる需給調整容量から、電力会社1100自身が持つ不図示の火力発電機等が各時刻において提供可能な需給調整容量を差し引き、その減算結果を用いて、各時刻において電力会社1100の外部、例えばアグリゲータや自家発電機を持つ事業者等から調達する必要ある需給調整容量を算出する。
次に、ステップS2030において、需給調整容量計画部1110は、外部から調達する必要のある需給調整容量を調達する。この調達手法としては、需給調整容量計画部1110が、金額と需給調整容量を提示して、外部から調達する必要のある需給調整容量を、アグリゲータや自家発電機を持つ事業者等から調達してもよいし、一般にアンシラリー市場と呼ばれる電力市場を開設して、外部から調達する必要のある需給調整容量を調達してもよい。
図19は、アグリゲータ装置1200の持つ需給調整量見積部1220および需給調整容量契約部1230の動作を表すフローチャートである。
図19に示した動作は、アグリゲータ装置1200が、複数の契約需要家の蓄電池1320を用いて提供可能な需給調整容量PES,rated_maxを見積もり、時刻毎にアグリゲータ装置1200が電力会社1100に提供する需給調整容量PES,maxを契約する手順である。なお、図19に示した動作は、需給調整を行うより以前、例えば需給調整を行う日の前日のうちに実施される。
需給調整量見積部1220は、ステップS3010にて、まず各需要家の制御装置1310より、アグリゲータ装置1200が直接制御可能な蓄電池1320のインバータ容量(需給調整容量)Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxを収集し、続いて、ステップS3020にて、インバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxをデータベース1210へ格納する。
なお、ステップS3010では、例えば、制御装置1310内の需要家演算装置1313が、蓄電池1320のインバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxを取得し、その取得結果を、需要家側双方向通信部1312を介して、アグリゲータ側双方向通信部1270に送信し、アグリゲータ側双方向通信部1270は、その取得結果を需給調整量見積部1220に提供する。
不図示のインバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxを収集する手段としては、例えば、インターネット上で需給調整量の募集を行い、応募してきた需要家に、アグリゲータ装置1200が直接制御可能な蓄電池1320のインバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxを入力させてもよい。もしくは、需要家とアグリゲータが定期契約を結び、例えば一か月間は一定のインバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxをアグリゲータに提供するとする場合もあり、その場合、ステップS3010をスキップしても構わない。
図20は、データベース1210に格納された情報の例を示した図である。
次に、需給調整量見積部1220は、ステップS3030にて、アグリゲータ装置1200が電力会社1100に対して各時刻に提供可能な最大の需給調整容量PES, rated_maxを算出する。
需給調整量見積部1220は、需要家の蓄電池を直接制御して各時刻に提供できる事が保証できる需給調整容量PES, rated_maxを決定するに当たり、需要家の各蓄電池1320のSOCが飽和もしくは枯渇してしまうことを回避する必要がある。
このため、需給調整量見積部1220は、例えば、インバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxの分布や電力会社1100より指示される需給調整量に含まれる変動成分の最大周期に基づき、需給調整容量PES, rated_maxを決定する。
需給調整容量PES, rated_maxを決定する手法の一例としては、インバータ容量Wn,maxおよび充電電力量WHn,maxのばらつきが規定のぱらつきよりも小さく、また電力会社1100から指示される需給調整量に含まれる変動成分の最大周期がΣn WHn,max /(2×Σn Wn,max)より小さい場合、PES, rated_max=Σn Wn,maxとする方法がある。このように設定することで、アグリゲータが電力会社1100に提供する需給調整容量PES, rated_maxを最大化することができ、また電力会社1100から指示される需給調整量に含まれる変動成分の最大周期で、充電と放電が繰り返されたとしても電池のSOCが飽和または枯渇することを抑制可能になる。なお、需給調整量に含まれる長期変動成分の推定値は電力会社によって公開されているとする。
次に、需給調整量見積部1220は、ステップS3040において、ステップS3030にて算出した各時刻の需給調整容量PES, rated_maxを需給調整容量契約部1230へ伝える。
次に、需給調整容量契約部1230は、ステップS3050において、電力会社1100の需給調整容量計画部1110より各時刻に必要な需給調整容量および容量当たり得られる収入を取得する。
次に、需給調整容量契約部1230は、ステップS3060にて、電力会社1100からの収入と需給調整容量を提供する需要家へ支払う金額とを比較し、十分な利益が得られる時間帯を選択し、その時間帯に提供する需給調整容量PES,maxを決定する。需給調整容量PES,maxは、各需要家の蓄電池全体に分担されている電力量の一例である。
次に、需給調整容量契約部1230は、ステップS3070にて、選択された時間帯に提供する需給調整容量PES,maxを電力会社1100に対して通知する。
なお、需給調整容量PES,maxは需給調整容量PES, rated_max以下であればよい。
電力会社1100がアグリゲータに求める需給調整容量が需給調整容量PES, rated_maxよりも多い場合、需給調整容量契約部1230は、需給調整容量PES,max=需給調整容量PES, rated_maxとし、足りない分は電力会社が別途需給調整力を調達する必要がある。
電力会社1100がアグリゲータに求める需給調整容量が需給調整容量PES, rated_max以下の場合、需給調整容量契約部1230は、需給調整容量PES,maxを電力会社より求められた需給調整容量と一致させ、一部の蓄電池は使用する必要が無いため、使用しない蓄電池の情報をデータベース1210から削除する。
次に、需給調整容量契約部1230は、ステップS3080にて、各需要家の制御装置1310に、蓄電池1320を直接制御する時間帯(ステップS3060で決定された時間帯)を通知する。
以上が、事前の需給調整容量の契約の動作の説明である。
次に、需給調整の動作を説明する。
ここでは説明の簡略化を図るため、電力会社1100とアグリゲータ装置1200が契約した各時刻、例えば1時間毎の需給調整容量PES,maxのうち、需給調整容量PES,maxが一定の期間、例えば1時間に限定して説明する。なお、他の時間でも同様の処理を行う。
アグリゲータ装置1200の需給調整量受信部1240は、図21に示したように電力会社1100の需給調整量配信部1120より1秒ごとに、規格化された需給調整量Pnorm(t)を受け取り、アグリゲータ側片方向通信部1250を介して、規格化された需給調整量Pnorm(t)を全ての需要家施設1300の需要家側片方向通信部1311へ送信する。
なお、電力会社の要求する需給調整量PES (t)は、PES (t)=Pnorm(t)×PES,maxとなる。
また、一般に同一情報を片方向通信で送る場合の遅延は、需給調整に求められる最大値遅延量、例えば0.5秒より小さく、インターネットなら例えば98%が50m秒以内、FM放送ならほぼ0秒である。
また、規格化された需給調整量Pnorm(t)は−1から1の間の値をとり、正の値が需要を増やす、つまり蓄電池では充電の要求であり、負の値が需要を減らす、つまり蓄電池では放電の要求であるとする。なお、規格化された需給調整量Pnorm(t)は、調節電力量情報の一例である。
アグリゲータ側双方向通信部1270は、図22に示した通り、長い間隔、例えば10分ごとに、各々の契約需要家の蓄電池1320の情報を収集し、Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報を割当演算部1260にて算出、各々の契約需要家の蓄電池1320に配信する。
需要家演算装置1313は、図23で示した通り、短い間隔、例えば1秒ごとにPnorm(t)を受け取り、長い間隔、例えば10分ごとに、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報を受け取る。そして需要家演算装置1313は、最新の規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報に基づき、1秒ごとに充放電量Pn(t)を算出し、その算出結果に応じて蓄電池1320に充放電量を指示する。
次に、アグリゲータ装置1200の割当演算部1260が、各々の契約需要家の蓄電池1320の情報に基づき、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報を生成する手順、つまり、規格化された需給調整量Pnorm(t)を充放電量Pn(t)に変換する関数形を説明する。関数形は、対応関係情報および動作制御情報の一例である。
なお、需要家演算装置1313は、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報として、アグリゲータ装置1200の割当演算部1260より10分ごとにこの関数形を取得し、規格化された需給調整量Pnorm(t)から充放電量Pn(t)を生成し、充放電量Pn(t)に従って蓄電池1320に充放電の指令を与えるという、処理を行う。
以下では、割当演算部1260が、契約需要家の蓄電池1320の情報に基づいて、蓄電池毎の規格化された需給調整量Pnorm(t)から充放電量Pn(t)に変換する関数形を決定する方法を、図24、図25、図26、図27を用いて説明する。なお、これらの図では説明の簡略化を図るため、2個の蓄電池が存在する場合を記しているが、3個以上の蓄電池が存在する場合も同様の手法を用いて関数形を決定できる。
まず、図24に示した例を以下に説明する。
この例は、SOCの飽和、枯渇を回避するために、蓄電池間でのSOCの偏りを解決することを目的とする。
割当演算部1260は、契約需要家の蓄電池1320の情報として、SOCを取得する。そして、割当演算部1260は、蓄電池nについて、各蓄電池が提供する需給調整容量Pn,maxをΣn Pn,max=PES,maxとなるよう定義する。ここでは、蓄電池1320の制御可能なインバータ容量であるWn,maxの重みをつけてPES, maxを分配したもの、つまり数式で表すとPn,max=PES,max×Wn,max/Σn' Wn',maxとなるように定義するとした。
次に、割当演算部1260は、先に取得した各蓄電池のSOCの値に基づき、バイアスPbias,nを計算する。ここで、各蓄電池nより収集したSOC値をSOCnとする。
割当演算部1260は、データベース1210よりインバータ容量WHn,maxを取得し、次に全電池を単一電池とみなした場合のSOCであるSOCavg=Σn'(SOCn'×WHn',max)/ Σn'WHn',maxを算出する。
続いて、割当演算部1260は、各蓄電池についてSOCの差分ΔSOCn= SOCavg−SOCnを算出し、次にSOCの差分ΔSOCnに比例して、オフセット値をΣn Pbias,n=0となるように割り振る。そして、割当演算部1260は、各蓄電池に対して図24に示したような、傾きPn,max、切片Pbias,nの線形の関数形を作成し、この関数形を、各蓄電池nを制御する各制御装置1310に、アグリゲータ側双方向通信部1270を介して配信する。
なお、関数形の配信周期は、関数形の作成周期(例えば10分)よりも短くてもよい。この場合、配信される関数形は、新たな関数形が作成されるたびに更新される。関数形が、関数形の作成周期よりも短い周期で送信されると、制御装置1310は、あるタイミングで通信障害によって関数形を受信できなくても、受信できなかった関数形を、その後に受信可能になる。
次の例として、バイアスを加えるのではなく、図25に示したように線形ではない関数形を与える方法もある。
この例では、割当演算部1260は、充電と放電の重みを変えることで、SOCがSOCAVGより大きい蓄電池については、規格化された需給調整量Pnorm(t)が正、つまり充電が要請された際には、相対的に感度を低くし、その分をSOCがSoCAVGより小さい蓄電池によって補う。その結果、各々の充放電量Pn(t)は規格化された需給調整量Pnorm(t)に対して非線形であるが、Σn Pn(t)は規格化された需給調整量Pnorm(t)に対して線形となり、PES (t)=Pnorm(t)×PES,maxを実現できる。
他の例として、上記のSOCの飽和、枯渇を回避する以外にも、劣化を抑制するための割当方法もある。
割当演算部1260は、契約需要家の蓄電池1320の情報として、蓄電池の劣化に関する情報(本実施形態は、蓄電池の劣化の進みやすさの程度を表す電池情報)、例えばSOCや温度を取得する。その上で、割当演算部1260は、充放電によって劣化の進みやすい蓄電池には充電/放電の割り当てを小さく、充放電によって劣化の進みにくい蓄電池には充電/放電の割り当てを大きくする。なお、劣化の進みやすい蓄電池の一例としては、蓄電池の温度が所定温度以上になっている蓄電池が挙げられ、劣化の進みにくい蓄電池の一例としては、蓄電池の温度が所定温度未満になっている蓄電池が挙げられる。なお、蓄電池は、温度が所定温度よりも高くなるほど劣化が進みやすくなる。
この手法として、割当演算部1260は、図26に示したように傾きを変え、充放電によって劣化の進みやすい蓄電池は傾きを基準傾きよりも小さく、充放電によって劣化の進みにくい蓄電池は傾きを基準傾きよりも大きくする。もしくは、図27に示したように、割当演算部1260は、規格化された需給調整量Pnorm(t)に対する充電量/放電量の感度を変えることで、充放電によって劣化の進みやすい蓄電池と、充放電によって劣化の進みにくい蓄電池との、規格化された需給調整量に対する充放電の重みを変える方法がある。
また、図17に示した本実施形態では、アグリゲータ装置1200が、需要家施設1300内の制御装置1310に対して、規格化された需給調整量Pnorm(t)を配信しているが、この信号自体は他の需給調整力を提供する者、例えば異なるアグリゲータや発電機を持つ事業者にとっても共通の信号である。よって、図28に示したように、電力会社自身が電力会社側片方向通信部12250を備え、アグリゲータ装置1200を介さずに電力会社側片方向通信部12250が直接需要家の制御装置1310に、規格化された需給調整量Pnorm(t)を配信してもよい。なお、その場合、需給調整量受信部1240およびアグリゲータ側片方向通信部1250は不要となる。
図29は、第2実施形態の変形例を示した図である。
図17、図28に示した構成では、アグリゲータは1軒以上の需要家施設1300内の制御装置のみとの間で通信を行い、各需要家の機器の状態を収集し、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出するために必要な情報である対応関係情報を配信する。
単一のアグリゲータが全需要家施設1300内の制御装置1310との間で通信を行う場合以外にも、図29に示したように、アグリゲータが需要家以外にも中間アグリゲータと契約する場合もある。
この場合、中間アグリゲータが有する中間アグリゲータ装置2900は、契約した各需要家施設2910内の機器の状態を収集し、その収集結果をアグリゲータ装置1200へ送信し、対応関係情報をアグリゲータ装置1200より受信し、対応関係情報を需要家施設2910内の機器の状態に応じて送信する。
例えば、中間アグリゲータ装置2900は、契約した各需要家施設2910の機器の状態を、単一の機器であるかのように縮約し、単一の機器の状態としてアグリゲータ装置1200に送信する。このため、アグリゲータ装置1200は、需要家施設1300と同様に、中間アグリゲータ装置2900を扱うことが可能となる。その場合、中間アグリゲータ装置2900は、アグリゲータ装置1200より配信された需要家施設1300向けの対応関係情報を、契約需要家施設2910向けに分配し、配信する。
中間アグリゲータ装置2900が、契約した各需要家施設2910の機器の状態を、単一の機器であるかのように縮約する方法として、機器が蓄電池だった場合、全ての蓄電池の平均SOCを機器の状態する方法がある。
また、中間アグリゲータ装置2900が階層化し、中間アグリゲータ装置2900がさらに中間アグリゲータ装置2920と契約する場合もある。また、中間アグリゲータが需要家を兼ねる場合もある。
本実施形態によれば、割当演算部1260は、需給調整容量PES,maxと蓄電池1320のSOCとに基づいて、規格化された需給調整量Pnorm(t)と充放電量Pn(t)との対応関係を表す関数形を生成する。需要家演算装置1313は、関数形を用いて、規格化された需給調整量Pnorm(t)に対応する充放電量Pn(t)を特定する。需要家演算装置1313は、その充放電量Pn(t)でも充電または放電を蓄電池1320に対して実行する。
このため、蓄電池1320ごとに充放電量Pn(t)を設定することが可能になる。
また、割当演算部1260が、劣化が進みやすい蓄電池ほど分担量を少なくすれば、蓄電池全体としての劣化を抑制することが可能になる。
また、アグリゲータ装置1200は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、アグリゲータ装置1200が有する各機能を実行する。
また、制御装置1310は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、制御装置1310が有する各機能を実行する。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図30は、本実施形態の構成の例を示した図である。
本実施形態のシステムは、図17に示した第2実施形態のシステムに、需要家周波数計1330を加えたものである。そして、需要家演算装置1313に関しては後述の通り機能が追加されている。それ以外の機能については図17に示したものの機能と同一である。
需要家周波数計1330は、蓄電池1320の連系する電力系統の系統周波数、例えば50Hz近傍もしくは60Hz近傍の値を測定する。
本実施形態のシステムは、より通信の信頼性が低い状況で使用されることを想定している。
本実施形態のシステムでは、アグリゲータ側片方向通信部1250と需要家側片方向通信部1311との間の片方向通信に問題が発生して、1秒毎に、規格化された需給調整量Pnorm(t)を需要家側片方向通信部1311が受け取れない状況でも、蓄電池1320が電力系統1の需給調整のための充放電を行えることを目的としている。
次に、このシステムの動作を説明する。
以下に、需要家演算装置1313の動作および需要家周波数計1330の動作を主に示す。他の部分の機能は、図17に示した第2実施形態が有する機能と同様である。
図17に示した第2実施形態では、需要家演算装置1313は、需要家の持つ蓄電池1320の充放電量Pn(t)の算出のため、1秒毎に通信を介して受け取る規格化された需給調整量Pnorm(t)と、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出する関数形(図24、図25、図26、図27に例示)を用いた。
図30に示した本実施形態のシステムでは、需要家演算装置1313は、需要家側片方向通信部1311を介してPnorm(t)を取得する以外に、後述の方法により、需要家周波数計1330によって測定された系統周波数よりPnorm(t)を算出する。
需要家演算装置1313は、需要家側片方向通信部1311を介して、規格化された需給調整量Pnorm(t)を取得できた場合は、その値を需給調整量Pnorm(t)として用いる。
一方、需要家演算装置1313は、需要家側片方向通信部1311を介して、規格化された需給調整量Pnorm(t)を一定時間(例えば2秒以上)取得できない場合などは、異常と判断する。需要家演算装置1313は、異常と判断すると、需要家周波数計1330が測定した系統周波数を用いて、規格化された需給調整量を算出する。続いて、需要家演算装置1313は、その算出結果(規格化された需給調整量Pnorm(t))を用いて、充放電量Pn(t)を算出する。
ここで、需要家演算装置1313が需要家周波数計1330によって測定された系統周波数から、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する方法を示す。
一般に電力系統の需要と供給のインバランスは、電力系統1の基準周波数(50Hzもしくは60Hz)からの乖離量に比例する。
よって、需要家演算装置1313は、電力会社1100との間で、どの需給調整の制御を蓄電池1320により実行するかの取り決めを事前に行った上で、需給調整の機能に応じた計算方法で、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。
例えば、電力会社と契約した需給調整の制御がインバランスに対する比例制御であるガバナーフリー制御である場合、需要家演算装置1313は、基準周波数からの乖離量に係数を掛けることで、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。電力会社と契約した需給調整の制御がインバランスに対しての積分制御である負荷周波数制御である場合、需要家演算装置1313は、基準周波数からの乖離量の積分値に係数を掛けることで、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。なお、ここで使用する係数は、系統の負荷および発電機の状態に応じてゆっくりと変化するため、系数は、規格化された需給調整量Pnorm(t)を用いて充放電量Pn(t)を算出する関数形の配信と同時に需要家施設1300に送信される。
なお、通信を介して送信される規格化された需給調整量Pnorm(t)の値と系統周波数より推定する規格化された需給調整量Pnorm(t)の値は異なる場合がある。その理由は、以下の通りである。系統周波数から推定した規格化された需給調整量Pnorm(t)は、電力系統全体での需要と供給のインバランスを表す。このため、契約した電力会社の電力系統が他の電力会社の電力系統と連系している場合、他の電力会社の電力系統で生じたインバランスも系統周波数に現れるためである。しかし差は小さいこと、及び他の電力会社の電力系統で生じたインバランスに対しての反応でも系統の需給安定化に繋がることから、その差異は無視できる。
本実施形態によれば、需要家側片方向通信部1311が、規格化された需給調整量Pnorm(t)を受け取れない場合、需要家演算装置1313は、需要家周波数計1330が測定した系統周波数から、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。そして、需要家演算装置1313は、その算出結果(規格化された需給調整量Pnorm(t))と、規格化された需給調整量Pnorm(t)より充放電量Pn(t)を算出する関数形と、用いて、充放電量Pn(t)を算出する。
このため、規格化された需給調整量Pnorm(t)を片方向通信で受信できなくても、充放電量Pn(t)を算出できる。また、その算出結果(充放電量Pn(t))に従って蓄電池1320の動作(充電や放電)を制御することで、電力需給バランスを調整することが可能になる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図31は、本実施形態の構成の例を示した図である。
本実施形態のシステムは、図30に示した第3実施形態のシステムに、連系線潮流測定装置1331と他の電力会社1333を加えたものである。需給調整量配信部1120および需要家演算装置1313に関しては後述の通り動作が異なる。それ以外の機能については図30および図17に示したものの機能と同一である。
本実施形態のシステムは、通信に対しての依存を減らすことで、通信の信頼性が低い状況下でも、高い信頼性で需要家の蓄電池を電力系統100の需要と供給のインバランスを補正するのに利用することができる。
次に、このシステムの動作を説明する。
以下に、需給調整量配信部1120の動作および需要家演算装置1313の動作を主に示す。他の部分の機能は、図17に示した第2実施形態や図30に示した第3実施形態が有する機能と同様である。
まず、図17に示した第2実施形態や図30に示した第3実施形態において、需給調整量配信部1120が需給調整量を算出する方法の一例を説明する。
需給調整量配信部1120は、まず、系統周波数の測定値より電力系統全体の需要と供給のインバランスを算出する。
続いて、需給調整量配信部1120は、その算出結果(電力系統全体の需要と供給のインバランス)から、不図示の連系線潮流測定装置を用いて測定した他の電力会社の電力系統での需要と供給のインバランス分を差し引いて、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。
続いて、需給調整量配信部1120は、規格化された需給調整量Pnorm(t)をアグリゲータ1200に配信する。
一方、図31に示した本実施形態のシステムでは、需給調整量配信部1120は、規格化された需給調整量Pnorm(t)の代わりに、連系線潮流測定装置1331での測定値である他の電力会社1333との連系線での潮流Ptie(t)を、アグリゲータ1200に配信する。
需給調整量受信部1240、アグリゲータ側片方向通信部1250、需要家側片方向通信部1311も同様に、規格化された需給調整量Pnorm(t)の代わりに、連系線での潮流Ptie(t)の通信を行い、需要家演算装置1313は、需要家側片方向通信部1311から連系線での潮流Ptie(t)を受け取る。
需要家演算装置1313は、需要家周波数計1330によって測定した系統周波数より系統全体での需要と供給のインバランスを算出し、その算出結果から連系線での潮流Ptie(t)を差し引く(減算を行う)。
続いて、需要家演算装置1313は、その減算結果に、第3実施形態の説明で示した、系統周波数から規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する際に用いた係数を掛けることで、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。
本実施形態では、需要家演算装置1313は、需要家周波数計1330が測定した系統周波数と、需要家側片方向通信部1311が受信した連系線での潮流Ptie(t)と、に基づいて、規格化された需給調整量Pnorm(t)を得る。
ここで、連系線での潮流Ptie(t)の変動は、系統周波数の変動と比較して非常にゆっくりであることが多い。このため、系統周波数に応じて変動する、規格化された需給調整量Pnorm(t)の変動に比べて、連系線での潮流Ptie(t)の変動は、非常にゆっくりであることが多くなる。よって、通信(片方向通信)を行うことによって連系線での潮流Ptie(t)の値を更新する頻度を、規格化された需給調整量Pnorm(t) の値を更新する頻度よりも大幅に落とすことが可能となる。
したがって、アグリゲータ側片方向通信部1250と需要家側片方向通信部1311の間の通信の頻度を小さくする(例えば1分に1回)ことで、通信トラフィックを低減し、また遅延に対しての耐性を高めることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図32は、本実施形態の構成の例を示した図である。
図32に示した本実施形態のシステムは、図17に示したシステムに、発電所状態監視装置1334を加えたものである。需給調整量配信部1120に関しては後述の通り機能が変更される。それ以外の機能については図17に示したものの機能と同一である。
発電所状態監視装置1334は、発電所の故障等による解列を監視しており、解列すると解列した旨を需給調整量配信部1120に伝える。
本実施形態のシステムでは、瞬動予備力やスピニングリザーブ(Spinning Reserve)と呼ばれる、発電所の故障等で一定時間電力の供給が足りなくなった際に補助的に発電所を補助する機能を需要家の持つ蓄電池に持たせることができる。
次に、このシステムの動作を説明する。
以下に、需給調整量配信部1120の動作を主に示す。他の部分の機能は、図17に示した第2実施形態が有する機能と同様である。
図17に示した第2実施形態では、需給調整量配信部1120は、需要と供給のインバランスを算出し、その算出結果に基づいて、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出し、規格化された需給調整量Pnorm(t)をアグリゲータ1200に配信している。
一方、図32に示した本実施形態のシステムでは、需給調整量配信部1120は、以下のように動作する。
需給調整量配信部1120は、発電所状態監視装置1334からの発電所の解列の情報を受け取ると、その発電所に対して事前に割り当てられていた発電電力を複数の蓄電池1320全体で放電するように、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。
続いて、需給調整量配信部1120は、その算出結果(規格化された需給調整量Pnorm(t))を、アグリゲータ1200に配信する。
そして、需給調整量配信部1120は、他の発電所が起動する、他の発電所が炊き増しをする、故障した発電所が復旧するなどして、再度安定供給が可能になるまでの数秒〜数時間の間、アグリゲータ1200に対して放電の指令を継続する。
本実施形態によれば、発電所状態監視装置1334は、発電所の故障等による解列を監視し、解列を確認すると解列した旨を需給調整量配信部1120に伝える。需給調整量配信部1120は、発電所の解列の情報を受け取ると、その発電所に対して事前に割り当てられていた発電電力を複数の蓄電池1320全体で放電するように、規格化された需給調整量Pnorm(t)を算出する。そして、需給調整量配信部1120は、その算出結果(規格化された需給調整量Pnorm(t))を、アグリゲータ1200に配信する。アグリゲータ1200では、アグリゲータ側片方向通信部1311は、需給調整量受信部1240を介して、規格化された需給調整量Pnorm(t)を受信すると、その規格化された需給調整量Pnorm(t)を、各需要家施設1300に送信する。
このため、瞬動予備力やスピニングリザーブと呼ばれる、発電所の故障等で一定時間電力の供給が足りなくなった際に補助的に発電所を補助する機能を、需要家の持つ蓄電池1320を用いて実行することが可能になる。
なお、本実施形態のシステムでは、需要家施設1300の持つ装置の機能は、図17、図30、図31に示した需給調整のためのものと共通化可能であるため、これらと共存することで需要家の持つ蓄電池の電力系統1に対する貢献を拡大することが可能である。
また、第3〜第5実施形態において、アグリゲータ装置1200は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、アグリゲータ装置1200が有する各機能を実行する。
また、第3〜第5実施形態において、制御装置1310は、コンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、制御装置1310が有する各機能を実行する。
また、図17、28、30〜32において、例えば、調節電力量情報の情報量が動作制御情報の情報量よりも少ない場合、アグリゲータ側片方向通信部1250と需要家側片方向通信部1311との間の通信や、電力会社側片方向通信部12250と需要家側片方向通信部1311との間の通信として、双方向通信が用いられてもよい。
この場合、アグリゲータ側片方向通信部1250、需要家側片方向通信部1311、電力会社側片方向通信部12250の代わりに、アグリゲータ側双方向通信部、需要家側双方向通信部、電力会社側双方向通信部が用いられる。
例えば、アグリゲータ側片方向通信部1250と需要家側片方向通信部1311との間の通信を、アグリゲータ側双方向通信部1270と需要家側双方向通信部1312とで行い、電力会社側片方向通信部12250と需要家側片方向通信部1311との間の通信を、電力会社側双方向通信部と需要家側双方向通信部1312とで行う。
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。この出願は、2013年9月12日に出願された日本出願特願2013−189240を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。