以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同様又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略するこがある。
図面には、便宜上、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付す。実施形態の圧電デバイスは、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいものであるが、便宜上、D2軸の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。
<第1実施形態>
(水晶振動子の概略構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1(以下、「水晶」は省略することがある。)の概略構成を示す分解斜視図である。
振動子1は、例えば、主として3つの部材からなる。すなわち、振動子1は、電圧が印加されて振動する水晶振動素子3(以下、「水晶」は省略することがある。)と、振動素子3をパッケージングするための素子搭載部材5及び蓋部材7とを有している。
箱状の素子搭載部材5に振動素子3が収容され、素子搭載部材5に蓋部材7が被せられると、振動子1は、例えば、全体として、概略、薄型の直方体状となる。素子搭載部材5の内部は、例えば、蓋部材7により封止される。また、当該内部は、例えば、真空とされ、又は、適宜なガス(例えば窒素)が封入されている。
振動子1の寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、幅(D3軸方向)は、0.40mm以上3.20mm以下、長さ(D1軸方向)は0.65mm以上5.00mm以下、厚さ(D2軸方向)は0.2mm以上1.2mm以下である。
振動子1は、例えば、不図示の回路基板等の実装面に対して下面(D2軸方向の負側の面)を対向させて配置され、半田等からなるバンプによって実装面に表面実装される。そして、振動子1は、その回路基板に設けられている発振回路によって電圧が印加され、発振信号の生成に寄与する。
(パッケージの構成)
素子搭載部材5は、例えば、素子搭載部材5の主体となる基体9と、振動素子3を実装するための1対のパッド11と、振動子1を不図示の回路基板等に実装するための複数の外部端子13とを有している。
基体9は、絶縁材料からなり、振動素子3を収容する凹部5aを有している。基体9を構成する絶縁材料は、例えば、セラミック又は樹脂である。1対のパッド11は、例えば、凹部5aの底面に設けられた導電層により構成されている。複数の外部端子13は、例えば、基体9の下面(凹部5aが開口する側とは反対側の面)に設けられた導電層により構成されている。1対のパッド11と、複数の外部端子13のうちの2つとは、基体9に設けられた不図示の配線導体によって互いに接続されている。
蓋部材7は、例えば、金属から構成され、素子搭載部材5の上面にシーム溶接等により接合されている。
(振動素子の構成)
振動素子3は、例えば、水晶片15と、水晶片15に電圧を印加するための1対の励振電極17(一方の励振電極17は水晶片15に隠れて不図示)と、振動素子3を1対のパッド11に実装するための1対の引出電極19とを有している。
水晶片15は、例えば、概ね長方形の板状に形成されている。水晶片15は、例えば、ATカット水晶片からなる。すなわち、水晶片15は、水晶のX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)及びZ軸(光学軸)からなる直交座標系をX軸回りに35°15′の角度(図中、θ)で回転させたX軸、Y′軸及びZ′軸からなる直交座標系において、XZ′平面に沿って水晶から切り出された平板からなる。そして、水晶片15は、X軸に平行な長辺、Z′軸に平行な短辺を有する矩形状とされ、Y′軸方向に厚みを有している。
1対の励振電極17は、例えば、水晶片15の両主面の中央側に層状に設けられている。1対の引出電極19は、励振電極17から引き出されて水晶片15の長手方向(X軸方向)の一端側部分に設けられている。1対の励振電極17及び1対の引出電極19は、例えば、振動素子3の両主面のいずれを凹部5aの底面側としてもよいように、水晶片15の中心(例えば重心)を通り、水晶片15の長手方向(D1軸方向)に延びる不図示の中心線に対して180°回転対称の形状に形成されている。
振動素子3は、主面を凹部5aの底面に対向させて凹部5aに収容される。引出電極19は、不図示のバンプによりパッド11に接合される。これにより、振動素子3は、素子搭載部材5に片持ち梁のように支持される。また、1対の励振電極17は、1対のパッド11と電気的に接続され、ひいては、複数の外部端子13のいずれか2つと電気的に接続される。バンプは、例えば、導電性接着剤からなる。
なお、導電層(パッド11、外部端子13、励振電極17及び引出電極19等)は、例えば、金属層である。導電層は、1層(1種類の材料)からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。
(水晶片の形状の詳細)
上述のように水晶片15は、概ね長方形の板状に形成されており、互いに平行な1対の主面21と、主面21の平面視において水晶片15の長辺を構成する1対の側面23と、主面21の平面視において水晶片15の短辺を構成する1対の端面25とを有している。
図2(a)は、図1のIIa−IIa線における水晶片15の断面図である。図2(b)は、水晶片15の端部を示す平面図である。図2(c)は水晶片15の端面25を示す図である。
側面23及び端面25は、例えば、基本的に結晶面によって構成されている。なお、ここでは、結晶面同士の角部等において加工精度の限界から生じる丸み(面取り)は無視する。結晶面は、結晶格子の幾何学的規則性に起因して直交座標系XYZ(ZY′Z′)に対して単結晶(水晶)に固有の角度で形成される平面である。例えば、側面23及び端面25は、いずれの結晶面によって構成されてもよく、例えば、m面、r面又はR面等によって構成されている。
側面23又は端面25それぞれは、1つの結晶面から構成されていてもよいし、複数の結晶面から構成されていてもよい。図2(a)では、各側面23が1つの結晶面で構成されている態様を例示している。また、図2(b)及び図2(c)では、各端面25の大部分が1つの結晶面で構成されている態様を例示している。なお、側面23又は端面25それぞれは、適宜な方法によって他の面との角部において面取りがなされることなどにより、結晶面以外の面を含んでいてもよい。
端面25には、例えば、当該端面25が面する方向へ突出する突部15pが設けられている。別の観点では、水晶片15は、板状の本体部15bと、本体部15bから突出する突部15pとを有している。なお、突部15pが設けられず、水晶片15の全体が本体部15bによって構成されていてもよい。
突部15pは、例えば、端面25のD3軸方向の両端に設けられており、合計で2つ設けられている。各突部15pの表面は、例えば、複数(図示の例では4つ)の結晶面によって構成されている。なお、図2(b)及び図2(c)では、水晶片15のうち引出電極19とは反対側の端部を示しているが、引出電極19側の端部も、結晶面の具体的な種類等を除いて同様である。
突部15pは、後述するように、水晶片15の製造方法を好適なものにするために生じる部分である。従って、その有無及び大きさ等は、基本的に、後述する水晶片15の製造方法の諸条件の設定に付随して決定される。ただし、引出電極19の配置領域拡大等を目的として、製造方法とは別個の観点から大きさ等が設定されてもよい。なお、突部15pの根元の厚さ(D2軸方向)は、例えば、1対の主面21間の厚さと同等である。
(水晶振動素子の製造方法の概略)
図3は、水晶振動素子3(水晶片15)の製造方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップST1では、水晶からなるウェハ31(図6(b)参照)が準備される。なお、ここでいうウェハは、水晶片15が多数個取りされる板状のものであればよく、円盤状でなくてもよいものとする。例えば、ウェハ31の平面形状は、矩形等であってもよい。
ウェハ31の準備は、例えば、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、人工水晶に対してランバード加工及びスライシングを行うことによって、図1を参照して説明した角度でウェハが切り出される。さらに、その切り出されたウェハに対してラッピング、エッチング及び/又はポリッシングを行うことにより、主面21となる面を有するウェハ31が形成される。
ステップST2では、ウェハ31の両主面上に、ウェハ31のエッチングのための第1マスク33(図4(a)及び図5参照)を形成する。第1マスク33は、例えば、金属膜からなる。なお、金属膜は、材料が互いに異なる2以上の層から構成されていてもよい。金属膜の材料は、例えば、クロムである。第1マスク33の形成方法は、例えば、第1マスク33の具体的な形状を除いては、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、第1マスク33は、フォトリソグラフィーによって形成されたレジストマスクを介してスパッタリング法若しくはめっき法により導電材料が成膜されることによって形成され、又は導電材料が成膜された後にレジストマスクを介して導電膜がエッチングされることによって形成される。
ステップST3では、第1マスク33の上に、ウェハ31のエッチングのための第2マスク35(図4(b)及び図5参照)を形成する。第2マスク35は、例えば、フォトレジストなどの樹脂からなる。フォトレジストは、ポジ型及びネガ型のいずれであってもよい。第2マスク35の形成方法は、例えば、第2マスク35の具体的な形状を除いては、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、第2マスク35は、スピンコート法等によってフォトレジストが成膜された後に、フォトリソグラフィーによってパターニングされて形成される。
なお、図3では、第1マスク33を形成するステップと、第2マスク35を形成するステップとが順次に行われる場合を例示しているが、両者は一部が重複していてもよい。例えば、第1マスク33となる導電膜の形成、第2マスク35となるレジスト膜の形成の後、レジスト膜のパターニング、及び、導電膜のパターニングの順で第1マスク33及び第2マスク35が形成されてもよい。
ステップST4では、ステップST2及びST3で形成した第1マスク33及び第2マスク35を介してウェハ31に対してウェットエッチングを行う。これにより、ウェハ31が個片化されて水晶片15が形成される。なお、特に図示しないが、個片化後、水晶片15から第1マスク33及び第2マスク35が除去される。例えば、水晶片15は、これらのマスクを除去するための適宜な薬液に浸される。
ステップST5では、個片化された水晶片15の表面に1対の励振電極17及び1対の引出電極19を形成する。これらの導電層の形成方法は、例えば、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、これらの導電層は、マスクを介して導電材料が成膜されることにより形成され、又は導電材料が成膜された後にマスクを介してエッチングされることにより形成される。
以上のように、本実施形態の製造方法では、ウェットエッチングによってウェハ31を個片化して水晶片15を得て、その後、水晶片15に対して励振電極17及び引出電極19を形成している。
(第1マスクの平面形状)
図4(a)は、ステップST2で形成される第1マスク33の一部を示す平面図である。
図4(a)は、ウェハ31の両主面に形成される2つの第1マスク33の一方のみを示している。ただし、2つの第1マスク33は、基本的に、平面透視において互いに同一の形状である。
第1マスク33には、ウェハ31の主面を露出させる複数の開口37が形成され、また、複数の開口37によって区切られることによって、複数の個片領域39、複数の連結領域41及び外側領域43が形成されている。
複数の開口37は、例えば、それぞれスリット状(溝状)に形成されている。その幅は、例えば、後述する説明から理解されるように、少なくとも、複数の開口37を介してウェハ31の両主面に対してウェットエッチングを行ったときに、複数の開口37下に比較的速やかに貫通孔が形成される大きさとされている。
複数の個片領域39は、ウェハ31のうち複数の水晶片15(本体部15b)となる部分に重なる領域である。従って、各個片領域39の平面形状及び大きさは、水晶片15と同様であり、本実施形態では長方形である。複数の個片領域39は、ウェハ31内において適宜に配置(配列)されてよい。本実施形態では、複数の個片領域39は、個片領域39の長辺及び短辺に平行な方向において縦横に配列されている。
外側領域43は、例えば、ウェハ31の外周部に重なる領域である。別の観点では、複数の個片領域39全体の外側に位置する領域である。従って、外側領域43の平面形状は、例えば、複数の個片領域39全体の配置領域の外縁を内縁とするとともに、ウェハ31の外縁を外縁とする枠状である。
なお、特に図示しないが、第1マスク33は、外側領域43の内側を区切るように延びる仕切領域45(変形例であるが図11参照)を有していてもよい。そして、外側領域43及び仕切領域45によって区切られた複数の領域それぞれにおいて、図示のように複数の個片領域39が縦横に配列されていてもよい。
複数の連結領域41は、複数の個片領域39同士を直接的に又は間接的に連結するための領域である。別の観点では、複数の連結領域41は、複数の個片領域39を直接的に又は間接的に外側領域43に連結するための領域である。なお、後述するように、連結領域41が設けられていることによって、突部15pが形成される。
具体的には、複数の連結領域41の一部は、例えば、互いに隣接する個片領域39間に位置し、両端がその互いに隣接する個片領域39に接続されている。すなわち、当該一部の連結領域41は、複数の個片領域39同士を直接的に連結している。また、複数の連結領域41の他の一部は、例えば、外側領域43(仕切領域45でもよい)と、外側領域43に隣接する個片領域39との間に位置し、両端が外側領域43と外側領域43に隣接する個片領域39とに接続されている。すなわち、当該他の一部の連結領域41は、個片領域39を直接的に外側領域43に連結している。別の観点では、前者は、外側領域43に連結された個片領域39等を介して個片領域39を間接的に外側領域43に連結しており、後者は、外側領域43等を介して間接的に個片領域39同士を連結している。
連結領域41は、個片領域39の適宜な位置から延び出てよい。図示の例では、各個片領域39の1対の短辺それぞれの両端から延び出ている。別の観点では、各個片領域39は、4隅において他の個片領域39(又は外側領域43)と直接的に又は間接的に連結されている。また、互いに隣接する個片領域39同士を接続する連結領域41は、互いに対向する2つの短辺間に位置して両端が当該2つの短辺に接続されている。
連結領域41の平面形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、連結領域41は、一定の幅で延びる長方形とされている。また、その延びる方向は、例えば、個片領域39の長辺(別の観点ではX軸)と平行である。
連結領域41の幅は、後述する説明から理解されるように、水晶片15の側面23及び端面25のエッチングが好適に行われるように適宜に設定されてよい。連結領域41の長さは、個片領域39の連結領域41が設けられる側(短辺側)の開口37の幅と同じであり、開口37の幅の設定に付随して設定される。ただし、突部15pを任意の大きさにする目的などから、連結領域41の長さが優先的に設定され、これに付随して短辺側の開口37の幅が設定されてもよい。
(第2マスクの平面形状)
図4(b)は、ステップST3で形成される第2マスク35の一部を示す平面図である。
図4(b)は、ウェハ31の両主面に形成される2つの第2マスク35の一方のみを示している。ただし、2つの第2マスク35は、基本的に、平面透視において互いに同一の形状である。
第2マスク35の形状は、例えば、第1マスク33の形状において、連結領域41を無くした形状である。すなわち、第2マスク35は、第1マスク33の、複数の個片領域39及び外側領域43(並びに仕切領域45がある場合は仕切領域45)の全体に重なるとともに、第1マスク33の複数の開口37及び複数の連結領域41を露出させている。
(第1マスク及び第2マスクの断面形状)
図5は、図4(b)のV−V線における断面図である。
上述のように、本実施形態では、第2マスク35は、第1マスク33の個片領域39の全体に重なっており、両者の縁部は概ね一致している。
第2マスク35は、例えば、第1マスク33よりも厚く形成されている。例えば、第1マスク33の厚さが0.1μm以上0.3μm以下であるのに対して、第2マスク35の厚さは0.5μm以上3μm以下である。また、別の観点では、例えば、第2マスク35の厚さは、第1マスク33の厚さの5倍以上20倍以下である。
なお、第1マスク33及び第2マスク35によって、エッチング用の複合マスク47が構成されている。
(ウェットエッチングの進行過程)
図6(a)〜図8(d)を参照して、ウェットエッチングの進行過程を説明する。なお、以下では、エッチングの進行に伴って形状が変化しても、変化の前後で同一の符号を用いることがある。
図6(a)及び図6(b)は、ウェットエッチングを開始したときのウェハ31の断面図及び平面図である。なお、図6(a)は、図6(b)のVIa−VIa線の断面図に相当する。これらの図では、便宜上、ウェハ31から多数個取りされる水晶片15の数を少なく示している。図6(a)では、第1マスク33及び第2マスク35を区別せずに複合マスク47を示している。図6(b)では、複合マスク47を示さずに、ウェハ31のみを示している。
図6(a)に示すように、ウェハ31は、薬液槽49内の薬液51に浸される。このとき、ウェハ31は、適宜な治具53(図6(b))によって保持されている。これにより、ウェハ31(その両主面に設けられた複合マスク47)は、薬液51中の適宜な高さに保持され、薬液槽49の底面から離れているとともに薬液51の液面から離れている。
治具53は、例えば、ウェハ31の外周部(第1マスク33の外側領域43(図4(a))が重なる部分)を保持している。保持は、挟持などの適宜な方法によってなされてよい。治具53の保持位置の数も適宜に設定されてよい。
なお、特に図示しないが、ウェハ31が薬液51に浸された状態で、薬液51の流れを生じさせたり、及び/又は、治具53を移動させることによってウェハ31を振動させたりしてもよい。すなわち、薬液51のウェハ31に対する相対的な流れを積極的に生じさてもよい。また、この相対的な流れは、図6(a)〜図7(d)までに示す過程のうちの適宜な期間において形成されてよい。
図6(c)及び図6(d)は、ウェットエッチングがある程度進行したときの、図6(a)及び図6(b)と同様の図である。なお、図6(c)は、図6(d)のVIc−VIc線の断面図に相当する。
ウェハ31が第1マスク33の複数の開口37(及び第2マスク35の開口37に対応する開口)を介してエッチングされることによって、ウェハ31には、複数の開口37と概ね同様の平面形状の貫通孔が形成される。これにより、例えば、水晶片15の平面視における外形が概ね形成される。
ただし、個片領域39は、連結領域41を介して直接的に又は間接的に外側領域43に連結されていることから、水晶片15は、ウェハ31のうちの連結領域41下の部分を介して直接的に又は間接的にウェハ31の外周部に連結されている。従って、水晶片15は、エッチング前に引き続いて治具53に間接的に保持されており、ひいては、薬液槽49内の適宜な高さに維持されている。
図7(a)及び図7(b)は、ウェットエッチングが更に進行したときのウェハ31の一部を示す断面図及び平面図である。なお、図7(a)は、図7(b)のVIIa−VIIa線の断面図に相当する。
ウェットエッチングが進行していくと、開口37の下に穴が形成されていく通常のエッチングに加えて、当該穴の内周面がエッチングされていく、いわゆるサイドエッチングが生じる。従って、第1マスク33に重なる領域であっても開口37の周囲においてはエッチングがなされる。
その結果、例えば、矢印y1で示すように、ウェハ31のうちの第1マスク33の連結領域41下に位置する部分は、エッチングされて細くなっていく。ここで、連結領域41上においては第2マスク35が重なっていないことから、連結領域41は、第1マスク33の他の領域に比較してウェハ31から剥がれやすくなっている。その結果、連結領域41下においては、他の領域下よりもサイドエッチングが進行する。
図7(c)及び図7(d)は、ウェットエッチングが更に進行したときの、図6(a)及び図6(b)と同様の図である。なお、図7(c)は、図6(d)のVIIc−VIIc線の断面図に相当する。
上記のように第1マスク33の連結領域41下におけるサイドエッチングが進行していくと、やがてウェハ31のうちの連結領域41下の部分は途切れ、複数の水晶片15が個片化される。個片された水晶片15は、治具53によって保持されないから、例えば、薬液51中を沈んでいく。
なお、サイドエッチングは、第1マスク33のうちの連結領域41以外の領域の下においても生じ得る。ただし、例えば、連結領域41が比較的細く形成されていることによって、他の領域下におけるサイドエッチングが過剰に進行する前に個片化がなされる。及び/又は、上述のように連結領域41の上に第2マスク35が重なっていないことから、連結領域41下においては他の領域下よりもサイドエッチングが生じやすく、他の領域下におけるサイドエッチングが過剰に進行する前に個片化がなされる。
その後、エッチングを終了する。なお、エッチングは、個片化後、直ちに終了されてもよいし、個片化後もある程度の時間に亘って継続されてもよい。また、エッチングの終了は、例えば、水晶片15を薬液槽49から取り出すことによってなされてもよいし、薬液槽49から薬液が排出されることによってなされてもよい。水晶片15の薬液槽49からの取り出しは、適宜に行われてよく、例えば、薬液槽49の下に配置しておいた不図示の網で掬い上げることによってなされてよい。
以上のように、本実施形態のウェットエッチングでは、水晶片15の平面形状が形成され、また、水晶片15の個片化がなされる。また、個片化は、第1マスク33の開口37における通常のエッチングによってではなく、第1マスク33の連結領域41下におけるサイドエッチングによってなされる。従って、例えば、個片化の前に、開口37を介したエッチング等が十分になされることになる。
また、水晶片15の平面形状は、ウェットエッチングによって形成されることから、エッチングによって現れた側面23及び端面25は、公知のように結晶面によって構成される。突部15pは、ウェハ31のうちの連結領域41下の部分が折り取られて形成されるのではなく、サイドエッチングによって分離されて形成されることから、その表面は、側面23等と同様に、結晶面によって構成される。
なお、図2(b)及び図2(c)では、ウェハ31のうちの連結領域41下の部分が個片化後も残り、突部15pを形成している場合について例示した。ただし、上記のように、個片化後もエッチングを継続してよく、この場合、更なるエッチングによって突部15pが除去されてもよい。
水晶片15の1対の端面25(短辺)に突部15pが形成される場合、両端面25は、結晶の軸に対して互いに異なる向き(ATカット板ではX軸の正側及び負側)であるから、1対の端面25では突部15pの形状が互いに異なる。換言すれば、突部15pの形状からX軸の正側及び負側を特定可能である。
水晶片15、励振電極17及び引出電極19の形状及び相対位置によっては、これらの形状及び相対位置を規定するD1軸方向の正負と、結晶の軸に基づくX軸方向の正負とが同じ場合と逆の場合とで、周波数温度特性等が微妙に異なることがある。このような場合においては、突部15pの形状に基づいてX軸方向の正負を特定し、D1軸方向の正負とX軸方向の正負との関係を予め定められた関係に一致させてよい。
図8(a)〜図8(d)は、開口37におけるエッチングの進行過程を示す断面図である。この断面図は、図5のように、開口37がスリット状に延びる方向に対して直交する断面におけるものである。ただし、これらの図は模式図であることから、図8(a)〜図8(d)と図5とで縦横比等は異なっている。
図8(a)は、エッチング開始時の状態を示している。この状態は、図6(a)及び図6(b)に示した状態に対応している。既に述べたように、ウェハ31の両主面には第1マスク33及び第2マスク35が積層されており、また、ウェハ31の両主面は開口37から露出している。
図8(b)は、エッチングがある程度進行したものの、まだ、開口37下の穴がまだ凹部である状態(貫通孔となっていない状態)を示している。この状態は、図6(a)及び図6(b)の状態と図6(c)及び図6(d)の状態との間の状態に対応している。
開口37下の凹部は、結晶のウェットエッチングに対する異方性に起因して、その内周面(内壁面)が結晶面によって構成される。その結果、凹部は、通常、径が深さ方向に一定となる形状(断面視で長方形)とはならない。例えば、図示のように、凹部は、断面視において、第1結晶面55及び第2結晶面57を脚とする台形状に形成される。
両主面の凹部は、そのエッチングの方向が逆向きであることなどから、通常、断面視において、幅方向(紙面左右方向)の同一側であっても、互いに異なる方向に面する結晶面が現れる。例えば、紙面上方の凹部の紙面右側の結晶面(55)と、紙面下方の凹部の紙面右側の結晶面(57)とは、互いに異なる方向に面している。
なお、本実施形態では、ATカット板を例にとり、図8(a)〜図8(d)はX軸方向に直交する断面である。従って、紙面上方の凹部の紙面右側の結晶面と、紙面下方の凹部の紙面左側の結晶面とは、表面の向きが異なり、傾斜角が同一の第1結晶面55となっている。また、紙面上方の凹部の紙面左側の結晶面と、紙面下方の凹部の紙面右側の結晶面とは、表面の向きが異なり、傾斜角が同一の第2結晶面57となっている。
図8(c)は、エッチングがさらに進行した状態を示している。この状態は、例えば、図6(c)及び図6(d)の状態(ただし、比較的初期の状態)に対応している。
開口37下の凹部が台形の脚を延ばすようにして深くなっていくと、やがてウェハ31の両主面の凹部がつながり、貫通孔が形成される。このつながった直後においては、台形の形状が残っている。そして、両主面の凹部においては、上述のように、断面視において、幅方向(紙面左右方向)の同一側であっても、互いに異なる方向に面する結晶面が現れている。従って、貫通直後においては、側面23又は端面25の各面は、2つ以上の結晶面が混在している状態であり、図示のように突部が形成されている。
なお、図8(b)及び図8(c)から理解されるように、開口37の幅が狭いと、ウェハ31の両主面の凹部がつながる前に、各凹部の脚同士が互いに接する(断面視で三角形の凹部が形成される。)。そして、エッチングの速度は急激に低下する。従って、開口37の幅は、各凹部の脚同士が互いに接しないように比較的広く設定されていることが好ましい。
図8(d)は、エッチングがさらに進行した状態を示している。この状態は、例えば、図7(c)及び図7(d)の状態(例えば個片化直後)に対応している。
エッチングの進行によって、図8(c)に示した側面23又は端面25の突部は除去される。例えば、側面23又は端面25は1つの結晶面(図示の例では第1結晶面55)によって構成される。これにより、例えば、側面23及び端面25の形状が簡素化され、意図しない不要な振動が生じるおそれが低減される。また、例えば、側面23及び/又は端面25に引出電極19又は引出電極19から延びる不図示の配線を成膜することが容易化される。なお、側面23及び端面25は、十分にエッチングを進行させた結果、最終的に2以上の結晶面から構成されてもよい。
以上のとおり、本実施形態に係る水晶片15の製造方法は、ウェハ31の両主面に第1マスク33を形成する第1マスク形成ステップ(ステップST2)と、第1マスク33が設けられたウェハ31を薬液51に浸してウェットエッチングを行うエッチングステップ(ステップST4)と、を有している。第1マスク33は、ウェハ31の主面を露出させる複数の開口37によって区切られることにより、ウェハ31のうち複数の水晶片15となる部分に重なる複数の個片領域39と、複数の個片領域39から延び出て直接的に又は間接的に複数の個片領域39同士を連結する複数の連結領域41と、を有している。エッチングステップは、ウェハ31のうちの複数の開口37下の部分がエッチングされて貫通孔が形成された後(図6(c)、図6(d)及び図8(c)の後)も、サイドエッチングによってウェハ31のうちの複数の連結領域41下の部分がエッチングされて(図7(a)及び図7(b))、複数の水晶片15が個片化される(図7(c)及び図7(d))まで継続される。
従って、既に述べたように、連結領域41下の部分がサイドエッチングによって分離されてウェハ31が個片化される時期は、個片領域39の周囲(連結領域41との接続位置を除く)において通常のエッチングによって貫通孔が開通される時期(図8(c))よりも遅れる。ここで、図8(c)及び図8(d)を参照して説明したように、側面23及び端面25を所望の形状に形成するためには、通常のエッチングによって貫通孔が開通するだけでは足りず、さらにエッチングを十分に行うことが好ましい場合がある。そして、個片化の時期が個片領域39の周囲において貫通孔が開通される時期よりも遅れることによって、連結領域41を設けない場合に比較して、複数の水晶片15が連結された状態での水晶片15の側面23及び端面25のエッチング時間を長くすることができる。換言すれば、個片化された後における水晶片15の側面23及び端面25のエッチング時間を短く、又は無くすことができる。
個片化された後でのエッチングでは、例えば、水晶片15の薬液槽49の底面に対する接触の態様、薬液51の流れがある場合における水晶片15の流され方等が複数の水晶片15間でばらつく蓋然性が高い。その結果、例えば、エッチングの進行程度が水晶片15間でばらついたり、水晶片15の複数の面のうちのエッチングの進行程度が高い面が複数の水晶片15間で異なったりする蓋然性が高くなる。しかし、本実施形態では、上記のように、個片化された後における側面23及び端面25のエッチング時間を短く、又は無くすことができるから、そのような蓋然性を低くすることができる。
なお、連結領域41が比較的細く、比較的早期に個片化がなされたとしても、連結領域41を設けない場合に比べれば、上記の効果は、多少なりとも奏される。また、治具53によってウェハ31を薬液51中に保持していないとしても、複数の水晶片15の薬液槽49に対する姿勢等のばらつきが抑制されるから、上記の効果は奏される。
連結領域41が設けられることによって、個片化後に直ちにエッチングを終了した場合又は個片化後のエッチング時間が比較的短い場合においては、突部15pが形成される。ここで、例えば、本実施形態とは異なり、特許文献1のように、連結領域41下のサイドエッチングを行わないことによってウェハ状態を保ち、水晶片15に励振電極17を形成し、その後、連結領域41下の部分を折り取る製造方法においても、連結領域41下に突部が形成される。この従来の突部は、折り取り(脆性破壊)によって形成されることから、その先端形状は、予測が困難であるとともに複数の水晶片15間でばらつきが生じやすく、また、先端にバリが発生しやすい。ひいては、突部が水晶片15の振動に及ぼす影響を予測することが困難であり、また、水晶片15間で振動にばらつきが生じやすい。一方、本実施形態の突部15pは、エッチングによって現れた結晶面によって構成されている。従って、突部15pの先端形状は、例えば、予測が容易であるとともに水晶片15間のばらつきが抑制され、また、バリが生じない。ひいては、水晶片15の振動特性が安定化される。
また、本実施形態では、第1マスク33は、ウェハ31の外周部に重なる外側領域43を有している。複数の個片領域39は、複数の連結領域41によって直接的に又は間接的に外側領域43に連結されている。エッチングステップでは、ウェハ31の外周部を保持してウェハ31のうちの前記外周部よりも内側の部分を薬液槽49の底面及び薬液51の液面から離した状態でウェハ31を薬液に浸す(図6(a)〜図6(d))。
従って、本実施形態では、複数の水晶片15は、個片化されるまで、ウェハ31の外周部を介して位置保持され、また、薬液槽49の底面及び薬液51の液面から離れた状態が維持される。ここで、水晶片15が個片化されると、水晶片15は、沈んで薬液槽49の底面に接するか、浮いて薬液51の液面に接する蓋然性が高い(一般的な薬液では前者)。水晶片15が薬液槽49の底面又は薬液51の液面に接すると、水晶片15の周囲における反応物質の拡散状態及び/又は薬液51の流れは、水晶片15が薬液51中にあるときとは異なったものとなる。ひいては、水晶片15のエッチングの進行速度等は、個片化前後で変化する。その結果、例えば、水晶片15の側面23及び端面25のエッチングの進行程度と、エッチング時間との相関を把握することが困難になる。また、例えば、ウェハ31を振動させることによって水晶片15を移動させ、これにより薬液51の水晶片15に対する相対的な流れを生じさせることができない。しかし、上記のように、本実施形態では、複数の水晶片15は、個片化されるまで治具53等によって適宜な位置に位置保持されるから、そのような不都合が解消される。
また、本実施形態では、第1マスク33上に、複数の個片領域39に重なるとともに複数の開口37を露出させる第2マスク35を形成する第2マスク形成ステップ(ステップST3)を更に有している。第2マスク35は、複数の連結領域41を露出させる。
従って、例えば、既に述べたように、連結領域41は、個片領域39に比較して、ウェハ31から剥離しやすくなる。その結果、例えば、連結領域41下では個片領域39下に比較してサイドエッチングが進みやすくなる。そして、個片領域39下における過剰なサイドエッチングを抑制しつつ、連結領域41下の部分を分離して水晶片15を個片化することができる。
また、本実施形態では、第2マスク35は、複数の個片領域39それぞれの全体に重なる。
従って、各個片領域39はその全体についてウェハ31からの剥離が抑制され、ひいては、サイドエッチングが抑制される。その結果、例えば、後述する第2実施形態に比較して、個片領域39の形状と水晶片15の平面形状との対応関係を把握することが容易であり、ひいては、水晶片15の平面形状を調整しやすい。
また、本実施形態では、第1マスク33は、金属膜からなり、第2マスク35は、金属膜よりも厚いレジスト膜からなる。
従って、例えば、第2マスク35の非配置領域においては、第2マスク35の配置領域に比較して、第1マスク33がウェハ31から捲れるように変位しやすく、ひいては、第1マスク33とウェハ31との間に薬液51が入り込みやすい。その結果、例えば、上述した、第2マスク35の非配置領域である連結領域41においてサイドエッチングを促進しつつ、第2マスク35の配置領域である個片領域39においてサイドエッチングを抑制する効果が好適に実現される。
また、本実施形態では、複数の連結領域41は、互いに隣接する個片領域39の互いに対向する2辺間に両端が接続されて個片領域39同士を直接的に連結するものを含む。
すなわち、複数の個片領域39の一部は、外側領域43又は仕切領域45に直接的に連結されない。その結果、例えば、仕切領域45を不要にすることができ、仕切領域45を無くした分だけウェハ31から取り出せる水晶片15の数を増やすことができる。なお、本実施形態とは異なり、従来のように水晶片15を外側領域43及び仕切領域45から折り取る場合においては、外側領域43及び仕切領域45を強固に支持した上で水晶片15に比較的大きな力を加える必要があり、本実施形態のように個片領域39同士を直接的に連結することは極めて困難である。すなわち、当該構成及び効果は、ウェットエッチングによってウェハ31を個片化することから実現されるものである。
また、本実施形態では、複数の個片領域39は、それぞれ長方形であり、複数の連結領域41は、複数の個片領域39の短辺の両端から延び出ている。
従って、例えば、連結領域41付近に残渣が生じるときに、その残渣を長辺中央又は短辺中央等の振動に影響を及ぼしやすい位置から離すことができる。また、例えば、仮に、連結領域41が設けられていないと仮定した場合、個片領域39の角部においては、短辺方向と長辺方向との双方からサイドエッチングがなされ、過度に面取りされるおそれがある。しかし、連結領域41があることによって、そのような不都合を解消できる。すなわち、残渣を生じるおそれがある連結領域41を逆に利用して、過度な面取りを抑制できる。また、例えば、突部15pが形成された場合、突部15pは、水晶片15のうち引出電極19の配置のためにスペースが確保される側(すなわち短辺側)に位置することになるから、振動に及ぼす影響が低減され、また、引出電極19の配置に利用することも可能である。
また、本実施形態の振動素子用の水晶片15は、板状の本体部15bと、本体部15bの外周面(本実施形態では端面25)から突出する突部15pと、を有している。突部15pの先端面は結晶面によって構成されている。また、本実施形態の水晶振動素子3は、前記の本実施形態の水晶片15と、本体部15bの両面に位置している励振電極17とを有している。また、本実施形態の水晶振動子1は、前記の本実施形態の水晶振動素子3と、水晶振動素子3が実装された素子搭載部材5(実装基体)と、を有している。
従って、上述した本実施形態の水晶片15の製造方法を利用できる。また、既に言及したように、水晶片15の突部15pの先端面が結晶面によって構成されていることから、脆性破壊による破断面に比較して、先端形状のばらつきが小さく、水晶片15の振動特性が安定する。ひいては、振動子1の電気特性が安定する。
<第2実施形態>
図9(a)は、第2実施形態に係る水晶片15の製造方法を説明するための図である。具体的には、図9(a)は、本実施形態の第2マスク235の一部を示す平面図であり、第1実施形態の図4(b)に相当している。図9(b)は図9(a)のIXb−IXb線における断面図であり、第1実施形態の図5に相当している。
第2実施形態の製造方法は、第2マスクの形状のみが第1実施形態の製造方法と相違する。具体的には、第1実施形態の第2マスク35が第1マスク33の個片領域39の全体を覆っていたのに対して、本実施形態の第2マスク235は、個片領域39の中央側部分のみを覆っており、個片領域39の外周側部分を露出させている。第2マスク235が個片領域39を露出させる幅は、得ようとする効果(後述)に応じて適宜に設定されてよい。
図10(a)及び図10(b)は、本実施形態の効果の例を説明するための断面図であり、第1実施形態の図8(c)及び図8(d)に相当している。
図10(a)に示すように、本実施形態においても、ウェハ31の両主面において開口37の下に形成された凹部が一部において通じることによって貫通孔が形成される。凹部の形状は、例えば、第1実施形態と同様に、断面視において、第1結晶面55及び第2結晶面57を脚とする台形状である。ただし、図10(a)では、第1結晶面55を図8(c)よりも傾斜して示している。
エッチングが更に進むと、図10(b)に示すように、ウェハ31の両主面の凹部の形状によって生じていた、側面23又は端面25の突部は除去される。例えば、側面23又は端面25は、第1実施形態と同様に、1つの結晶面(図示の例では第1結晶面55)によって構成される。
このとき、第1結晶面55が主面に対して垂直又は垂直に近くなく、比較的傾斜している場合、突部を完全に除去するためには、図10(b)において示しているように、サイドエッチングによって第1マスク33下までエッチングが進む必要がある。一方、本実施形態では、個片領域39の外周部分は、第2マスク35から露出していることから、連結領域41と同様に、ウェハ31から剥離してウェハ31との間に薬液61を侵入させやすい。従って、好適にサイドエッチングを生じさせ、図10(b)に示すような状態とすることができる。
なお、図10(a)では、説明の便宜上、第1マスク33下におけるサイドエッチングを示していないが、図10(a)の時点で、第1マスク33下におけるサイドエッチングがある程度なされていてもよい。また、図10(b)では、説明の便宜上、第2結晶面57が現れていた側において、第1マスク33下におけるサイドエッチングを示していないが、第2結晶面57が現れていた側においてもサイドエッチングが生じていてよい。
図10(b)では、第1マスク33(個片領域39)の第2マスク35から露出する幅は、サイドエッチングを生じさせる幅よりも広く設定されている。ただし、この露出する幅は、サイドエッチングを生じさせる幅と同等であってもよいし、小さくてもよい。露出する幅は、第1マスク33の剥離のしやすさやエッチング時間等に応じて適宜に設定されてよい。
図10(c)は、図10(b)の効果の例とは異なる効果の例について説明するための断面図であり、図10(b)に相当する。なお、この図では、第1結晶面55は、図8(d)等と同様に、垂直に描かれている。
薬液61の種類及びエッチング時間によっては、第1マスク33のうち第2マスク35から露出する部分もエッチングされる。その結果、ウェハ31は、元々の開口37下でのエッチングに加えて、開口37が拡大した開口38下でのエッチングもなされる。その結果、側面23又は端面25には、厚さ方向の中央側が突出する、いわゆるメサ形状が形成される。このように、個片領域39の第2マスク35から露出する部分は、メサ形状の形成に利用されてもよい。
なお、図10(c)では、開口37下のエッチングと開口38下によるエッチングとの2段階のエッチングによって断面視において段階的にメサ形状が形成されている場合を例示している。ただし、徐々に第1マスク33が剥離及び除去されていくことなどによって、断面視において曲線状にメサ形状が形成されてもよい。
以上のとおり、第2実施形態においても、第1マスク33が複数の連結領域41を有し、エッチングステップ(ST4)は、サイドエッチングによってウェハ31のうちの複数の連結領域41下の部分がエッチングされて複数の水晶片15が個片化されるまで継続されることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、ウェットエッチングによって水晶片15を個片化することができ、かつ個片化の時期を遅らせて側面23及び端面25を高精度にエッチングすることができる。
また、本実施形態では、第2マスク235は、複数の個片領域39それぞれのうちの中央側部分に重なるとともに複数の個片領域39それぞれのうちの外周側部分を露出させる。従って、例えば、図10(b)を参照して説明したように、個片領域39の周囲においてもサイドエッチングを生じさせて好適な側面23又は端面25を形成したり、図10(c)を参照して説明したようにメサ形状を実現したりすることができる。
(変形例)
図11(a)は、変形例に係る第1マスク101の一部を示す平面図である。
実施形態の第1マスク33では、連結領域41は、個片領域39の短辺の両端から延び出た。これに対して変形例の第1マスク101では、連結領域41は、個片領域39の短辺の中央から延び出ている。このように、連結領域41は、適宜な位置から延び出てよい。なお、既に述べたように、残渣が振動に及ぼす影響を低減したり、隅部における過剰な面取りを抑制したりする観点からは、連結領域41は、実施形態で示したように短辺の両端に位置していることが好ましい。
図11(b)は、他の変形例に係る第1マスク103の一部を示す平面図である。
実施形態の第1マスク33では、複数の連結領域41は、複数の個片領域39間に位置して複数の個片領域39同士を直接的に連結するものを含んでいた。これに対して変形例の第1マスク103では、全ての連結領域41は、個片領域39と外側領域43又は仕切領域45(図示の変形例では紙面左右方向に延びる仕切領域45)との間に位置して、個片領域39と外側領域43又は仕切領域45とを直接的に連結している。換言すれば、全ての個片領域39は、外側領域43及び仕切領域45を介して間接的に互いに連結されている。
このように、複数の個片領域39同士は、連結領域41によって直接的に連結されていなくてもよい。このような場合、例えば、実施形態に比較して、ウェハ31の強度を確保しやすい。なお、実施形態は、既に述べたように、例えば、仕切領域45の一部又は全部を無くすことができることから、個片領域39の数を増やすことができる。
なお、以上の実施形態において、水晶片15は圧電片の一例である。第1マスク33、101及び103はそれぞれ第1エッチングマスクの一例である。第2マスク35及び235はそれぞれ第2エッチングマスクの一例である。水晶振動素子3は圧電振動素子の一例である。水晶振動子1は圧電振動デバイスの一例である。素子搭載部材5は実装基体の一例でる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
圧電振動デバイスは、圧電振動子に限定されず、例えば、発振回路を含む圧電発振器であってもよい。また、圧電振動子は、サーミスタ等の圧電振動素子以外の部品を備えていてもよい。圧電振動子や圧電発振器の構造は、実施形態に例示したものに限定されず、H型の素子搭載部材を有するものなど、適宜な構造とされてよい。
板状の本体部を含む圧電振動用の圧電片は、ATカットのものに限定されず、例えば、BTカットやGTカットのものであってもよい。板状の本体部(別の観点では第1エッチングマスクの個片領域)は、長方形に限定されず、例えば、円形、長円形、楕円形、正方形又は4角形以外の多角形であってもよい。圧電片を構成する材料は、水晶に限定されず、例えば、多結晶体であってもよいし、水晶以外の単結晶体であってもよい。圧電片の製造方法は、板状の圧電片を製造するためのものに限定されず、例えば、音叉型の圧電片を形成するためのものであってもよい。
実施形態で述べたように、突部(15p)は、エッチングによって形成されることから当該突部が振動特性に及ぼす悪影響は低減され、また、当該突部は、エッチングによる個片化後も十分にエッチングを継続することによって除去されてもよい。別の観点では、突部を除去するためのエッチングとは別の工程は不要である。しかし、エッチングとは別の工程によって突部が除去されてもよい。
第1実施形態の説明においても言及したように、個片化後のエッチングによってエッチング精度が複数の圧電片間においてばらつくことを抑制する観点からは、ウェハは、外周部が保持されてその内側(複数の圧電片が形成される部分)が薬液中(薬液槽から浮いた位置)に保持されていなくてもよい。例えば、ウェハは、薬液槽の底に沈んでいてもよい。また、この場合において、例えば、第1エッチングマスク(33)は、外側領域(43)を有していなくてもよい。例えば、第1エッチングマスクは、複数の個片領域(39)と、当該複数の個片領域を互いに直接的に連結する複数の連結領域(41)とのみを有する構成であってもよい。
ウェハの外周部が保持される場合において、その保持方法は、治具によるものに限定されない。例えば、薬液槽の底にウェハの外周部を支持するための台座が設けられ、これにより、ウェハの外周部が保持(単に支持されるだけを含む)されてもよい。また、ウェハは、水平に配置されなくてもよく、鉛直に配置されてもよい。このような場合において、適宜な部材がウェハの外周面に当接することによってウェハの外周部が保持されてもよい。また、ウェハは、外周部以外の部分においても支持されてもよい。治具は、外側領域等のエッチングを抑制するマスクの役割を担ってもよい。
第1マスクに外側領域(43)が設けられる場合において、図6(d)において治具53が2箇所でウェハ31を保持していることから理解されるように、外側領域は、枠状(環状)でなくてもよく、複数の個片領域(39)の領域を挟む1対の領域であってもよい。