(第1実施形態)
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御装置は、3相回転電機に接続された3相インバータに適用される。本実施形態において、制御装置及び回転電機は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されている。
図1に示すように、制御システムは、モータジェネレータ10、インバータ20、システムメインリレー21及び制御装置30を備えている。本実施形態において、モータジェネレータ10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータジェネレータ10として、同期機を用いており、より具体的には永久磁石埋込型のものを用いている。
モータジェネレータ10は、インバータ20及びシステムメインリレー21を介して、直流電源としての高圧バッテリ22に接続されている。高圧バッテリ22の出力電圧は、例えば百V以上である。なお、インバータ20の入力側には、インバータ20の入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ23が設けられている。ちなみに、高圧バッテリ22の出力電圧を昇圧してインバータ20に出力する昇圧コンバータが制御システムに備えられる場合、昇圧コンバータが直流電源に相当する。
インバータ20は、上アームスイッチSup,Svp,Swpと下アームスイッチSun,Svn,Swnとの直列接続体を相数分備えている。U相上,下アームスイッチSup,Sunの接続点には、電気配線としてのU相ハーネス11Uを介してモータジェネレータ10のU相巻線10Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSvp,Svnの接続点には、V相ハーネス11Vを介してモータジェネレータ10のV相巻線10Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSwp,Swnの接続点には、W相ハーネス11Wを介してモータジェネレータ10のW相巻線10Wの第1端が接続されている。各相巻線10U,10V,10Wの第2端は、中性点にて接続されている。U,V,W相巻線10U,10V,10Wは、電気角で互いに120°ずれている。
ちなみに本実施形態では、各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的には、IGBTを用いている。そして、各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnには、各フリーホイールダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
各上アームスイッチSup,Svp,Swpの高電位側端子であるコレクタには、電気配線としての正極母線Lpが接続されている。正極母線Lpには、高圧バッテリ22の正極端子が接続されている。正極母線Lpにおいて、平滑コンデンサ23との接続点よりも高圧バッテリ22側には、システムメインリレー21が設けられている。
各下アームスイッチSun,Svn,Swnの低電位側端子であるエミッタには、電気配線としての負極母線Lnが接続されている。負極母線Lnには、高圧バッテリ22の負極端子が接続されている。
制御システムは、電気負荷LDを備えている。電気負荷LDの正極側は、正極母線Lpにおいてシステムメインリレー21と平滑コンデンサ23の高電位側端子との間に接続されている。電気負荷LDの負極側は、負極母線Lnに接続されている。電気負荷LDには、例えば、高圧バッテリ22の出力電圧を降圧して図示しない低圧バッテリに供給するDCDCコンバータ、及び車室内空調用の電動コンプレッサが含まれる。なお低圧バッテリは、その出力電圧が高圧バッテリ22の出力電圧よりも低いものである。
制御システムは、さらに、モータジェネレータ10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する相電流検出部24を備えている。本実施形態において、相電流検出部24は、モータジェネレータ10のV,W相に流れる電流を検出する。また、制御システムは、平滑コンデンサ23の端子間電圧をインバータ20の電源電圧VINVとして検出する電圧検出部25、及びモータジェネレータ10の電気角θeを検出する角度検出部26を備えている。角度検出部26としては例えばレゾルバを用いることができる。
制御システムは、インバータ20の温度を検出する温度検出部27を備えている。温度検出部27は、具体的には例えば、インバータ20を構成する各スイッチSup〜Swnのうち、インバータ20の駆動時に温度が最も高くなるスイッチを温度検出対象とするものである。なお、温度検出部27としては、例えば、感温ダイオード又はサーミスタを用いることができる。
制御装置30は、マイコンを主体として構成され、モータジェネレータ10の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ20を操作する。本実施形態において、制御量はトルクであり、その指令値は指令トルクTrq*である。制御装置30は、インバータ20を構成する各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnをオンオフ駆動すべく、上記各種検出部の検出値に基づいて、各駆動信号gUp,gUn,gVp,gVn,gWp,gWnを生成する。制御装置30は、生成した各駆動信号gUp,gUn,gVp,gVn,gWp,gWnを各スイッチに対応する各駆動回路Drに対して出力する。ここで、上アーム側の駆動信号gUp,gVp,gWpと、対応する下アーム側の駆動信号gUn,gVn,gWnとは、互いに相補的な信号となっている。すなわち、上アームスイッチと、対応する下アームスイッチとは、交互にオン状態とされる。なお、指令トルクTrq*は、例えば、制御装置30の外部に設けられた制御装置であって、制御装置30よりも上位の制御装置から出力される。
続いて、図2を用いて、制御装置30の行う駆動信号の生成処理について説明する。
2相変換部31は、相電流検出部24により検出されたV,W相電流IV,IW、及び角度検出部26により検出された電気角θeに基づいて、モータジェネレータ10の3相固定座標系におけるU,V,W相電流IU,IV,IWを、2相回転座標系であるdq座標系におけるd,q軸電流Idr,Iqrに変換する。
トルク推定部32は、2相変換部31から出力されたd,q軸電流Idr,Iqrに基づいて、モータジェネレータ10の推定トルクTeを算出する。ここで、推定トルクTeは、d,q軸電流Idr,Iqrと推定トルクTeとが関係付けられたマップを用いて算出されてもよいし、モデル式を用いて算出されてもよい。
トルク偏差算出部33は、指令トルクTrq*から推定トルクTeを減算することにより、トルク偏差ΔTを算出する。
位相算出部34は、トルク偏差算出部33によって算出されたトルク偏差ΔTに基づいて、推定トルクTeを指令トルクTrq*にフィードバック制御するための操作量として、指令電圧位相δを算出する。指令電圧位相δは、インバータ20の出力電圧ベクトルの電圧位相の指令値である。本実施形態では、トルク偏差ΔTを入力とする比例積分制御によって指令電圧位相δを算出する。
なお、出力電圧ベクトルは、dq座標系における出力電圧ベクトルのd軸成分であるd軸電圧Vdとq軸成分であるq軸電圧Vqとによって定義される。また本実施形態において、電圧位相は、q軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向が正方向として定義されている。
電流設定部35は、指令トルクTrq*に基づいて、指令トルクTrq*を実現するためのd,q軸指令電流Id*,Iq*を算出する。本実施形態では、最小電流最大トルク制御(Maximum torque per ampere control)を実現するための電流をd,q軸指令電流Id*,Iq*として算出する。
電流偏差算出部36は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出し、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。また、電流偏差算出部36は、算出した各電流偏差ΔId、ΔIqを元に出力すべき電圧ベクトルの電圧振幅と相関関係をもつパラメータの偏差量を算出する。
電圧設定部37は、電流偏差算出部36により算出した電圧振幅と相関関係をもつパラメータの偏差量に基づいて、出力電圧ベクトルの電圧振幅の指令値である指令電圧振幅Vrを算出する。ここで電圧振幅は、d軸電圧Vdの2乗値とq軸電圧Vqの2乗値との和の平方根として定義される。本実施形態では、上記フィードバック制御として、比例積分制御を用いて、指令電圧振幅Vrを算出する。
変調器38は、指令電圧位相δ、指令電圧振幅Vr、電圧検出部25により検出された電源電圧VINV、及び電気角θeに基づいて、上記駆動信号gUp,gUn,gVp,gVn,gWp,gWnの元になる信号であるPWM信号GU,GV,GWを生成する。なお、変調器38の詳細については、後に詳述する。本実施形態において、PWM信号GU,GV,GWは、位相が電気角で120°ずつずれている。
信号生成部39は、PWM信号GU,GV,GWとその論理反転信号との論理反転タイミング同士をデッドタイムだけ離間させる処理を行うことで、上記駆動信号gUp,gUn,gVp,gVn,gWp,gWnを生成する。
続いて、図3を用いて変調器38について説明する。本実施形態において、変調器38は、パルスパターン制御によりPWM信号GU,GV,GWを生成する。
速度算出部38aは、電気角θeに基づいて、モータジェネレータ10の電気角周波数feを算出する。電気角周波数feは、インバータ20の出力電圧に含まれる基本波成分の周波数である。
指令同期数設定部38bは、電気角周波数fe及び同期数テーブルに基づいて、指令同期数Ntを設定する。この設定処理は、キャリア信号の1周期の整数倍と1電気角周期とを一致させる同期式三角波比較PWM制御の考え方を用いてパルスパターンを生成しているためになされるものである。同期数テーブルは、複数の電気角周波数領域のそれぞれと指令同期数Ntとが予め関係付けられた情報である。本実施形態では、各電気角周波数領域と関係付けられた指令同期数Ntとして、「3,6,9,12,15,…」というように3の倍数が用いられる。各指令同期数3,6,9,12,15,…と関係付けられた電気角周波数領域の上限閾値f3,f6,f9,f12,f15…は、f(Nt)=fcmax/Ntに設定されている。なお、fcmaxは、キャリア信号の上限周波数を示す。
変調率算出部38cは、指令電圧振幅Vr及び電源電圧VINVに基づいて、変調率Mrを算出する。ここで変調率Mとは、指令電圧振幅Vrを電源電圧VINVで規格化した値のことである。本実施形態では、下式(eq1)により変調率Mrを算出する。変調率Mrは、インバータ20の出力電圧に含まれる基本波成分の振幅に相当する情報である。
パターン生成部38dは、電気角周波数fe、指令同期数Nt及び変調率Mrに基づいて、スイッチングパターンの指令値である指令パターンを生成する。指令パターンは、パターン記憶部38eに記憶されているパルスパターンに基づいて生成される。パルスパターンは、指令同期数Nt及び変調率Mrと関係付けられて予めパターン記憶部38eに記憶されている。パターン記憶部38eは、メモリにて構成されている。
図4に、パルスパターンの一例を示す。図示されるように、パルスパターンは、オン指示信号とオフ指示信号とのそれぞれが電気角θeと関係付けられたマップ情報である。オン指示信号は、上アームスイッチをオン駆動してかつ下アームスイッチをオフ駆動することを指示する信号である。オフ指示信号は、上アームスイッチをオフ駆動してかつ下アームスイッチをオン駆動することを指示する信号である。本実施形態では、オン,オフ指示信号として互いに論理値の異なる信号を用いており、具体的には、オン指示信号として論理Hの信号を用い、オフ指示信号として論理Lの信号を用いている。
本実施形態において、パターン記憶部38eには、パルスパターンとして、オン指示信号及びオフ指示信号のうちいずれか一方から他方への切り替えを指示する電気角が記憶されている。図4には、オン指示信号及びオフ指示信号のうちいずれか一方から他方への切り替えを指示する電気角であるスイッチングタイミングとして、α0,α1,α2を例示した。ちなみに、パルスパターンは、変調率Mrに代えて、指令電圧振幅Vrと関係付けられていてもよい。
本実施形態において、パターン記憶部38eは、1電気角周期に渡って規定されたパルスパターンに加えて、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンを記憶している。ここで1電気角周期とは、インバータ20の出力電圧に含まれる基本波成分の1周期のことである。換言すれば、1電気角周期とは、図4に破線にて示すように、パルスパターンに含まれる基本波成分の1周期のことである。パターン生成部38dは、パターン記憶部38eから選択したパルスパターンが基本波成分の周期の何倍の電気角周期で規定されているかを規定する識別数Ncycを出力する。
加算部38gは、電気角θe及び指令電圧位相δの加算値として加算角θvを算出する。再生角算出部38fは、加算角θvが増加して360°(1電気角周期)となるまでの回数が識別数Ncycとなるまで、加算角θvの増加分だけ増加する再生角θrを算出する。再生角算出部38fは、再生角θrが識別数Ncyc及び360°の乗算値となる場合に再生角θrを0にリセットする。
パターン生成部38dにより生成された指令パターンを規定するスイッチングタイミングαと、再生角θrとは、角度比較部38hに入力される。角度比較部38hは、入力されたスイッチングタイミングαのうち、再生角θrに該当するものを選択する。角度比較部38hは、選択したスイッチングタイミングαに基づいて、PWM信号GU,GV,GWを生成して出力する。
続いて、パターン記憶部38eに記憶されているパルスパターンについてさらに説明する。本実施形態では、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンにおいて、各電気角周期に対応するパルスパターンは、図4に破線にて示すように、振幅及び位相が互いに同一であってかつ変調率Mrに対応する基本波成分を含んでいる。すなわち、各電気角周期に対応するパルスパターンに含まれる基本波成分は、互いに同一である。また、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンにおいて、各電気角周期に対応するパルスパターンは、互いに異なる高調波成分のスペクトルを含んでいる。具体的には例えば、各電気角周期に対応するパルスパターンは、所定の周波数範囲における高調波成分のうち大きさが最大となる高調波成分の周波数が互いに異なるような高調波成分を含んでいる。以下、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンがパターン記憶部38eに記憶されている理由について説明する。
周期Tの周期関数は、周波数f(=1/T)の整数倍で変動する正弦波を合成したもので表すことができる。このため、1電気角周期Tswで規定されたパルスパターンを指令パターンとした場合、インバータ20から出力される相電圧に含まれる高調波成分は、相電圧に含まれる基本波成分の周波数feの整数倍に分布することとなる。特に図5(a)に示すように、1電気角周期の中央に対して対称性を有するパルスパターンPP1においては、相電圧に含まれる高調波成分が基本波成分の周波数の奇数倍に分布する。なお図5に記載された電気角周波数の1次とは、基本波成分の周波数のことである。
一方、Nを2以上の整数とすると、1周期「N×T」の周期関数は、周波数「1/(N×T)」の整数倍で変動する正弦波を合成したもので表すことができる。ここで、高調波成分が互いに異なる1電気角周期のパルスパターンを組み合わせたN電気角周期に渡るパルスパターンに基づいて指令パターンを生成する。この場合、相電圧に含まれる高調波成分は、周波数feよりも刻み幅の細かい周波数fe/Nの整数倍に分布することとなる。これにより、相電圧に含まれる高調波成分が拡散される。その結果、特定の周波数の高調波成分の大きさを低減できる。その結果、インバータ20のNVH特性を改善できる。図5(b)には、異なる高調波成分を含む2つのパルスパターンPP1,PP2を用いた場合の相電圧スペクトルを示し、図5(c)には、異なる高調波成分を含む3つのパルスパターンPP1,PP2,PP3を用いた場合の相電圧スペクトルを示す。
なお、パターン記憶部38eに記憶されるパルスパターンとしては、4電気角周期以上の電気角周期に渡って規定されたパルスパターンであってもよい。そしてこの場合、各電気角周期に対応するパルスパターンに含まれる高調波成分が互いに異なる高調波成分とされていればよい。
このように、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンを用いることにより、NVH特性を改善できる。本実施形態において、複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンを用いる処理を高調波切替処理と称すこととする。
図8に、高調波切替処理を含む指令パターン生成処理の手順を示す。この処理は、パターン生成部38dにより、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、変調率算出部38cにより算出された変調率Mrと、指令同期数設定部38bにより設定された指令同期数Ntとを取得する。続くステップS12では、温度検出部27の検出温度Temp、速度算出部38aにより算出された電気角周波数fe、指令トルクTrq*、及び電源電圧VINVを取得する。
続くステップS14では、取得した変調率Mr及び指令同期数Ntに該当するパルスパターンをパターン記憶部38eから選択する。本実施形態において、ステップS14の処理で選択されるパルスパターンは、1電気角周期に渡って規定されたものである。
続くステップS16では、ステップS14で選択したパルスパターンと、ステップS12で取得した電気角周波数feとに基づいて、インバータ20及びモータジェネレータ10の間に流れる相電流のスペクトルと、正極母線Lp,負極母線Lnに流れる母線電流のスペクトルとを推定する。ここで、1電気角周期の中央に対して対称性をもったパルスパターンを用いたときの相電流のスペクトルは、相電流に含まれる基本波成分の周波数の奇数倍であって、かつ、この基本波成分の周波数の3の倍数の周波数を除く周波数に分布する。また、母線電流のスペクトルは、母線電流に含まれる基本波成分の周波数の6の倍数の周波数に分布する。例えば、電気角周波数が100Hzである場合において、5次,7次の電気角周波数で高調波成分の振幅が大きくなるパルスパターンが選択されたとき、相電流には、500Hz,700Hzの高調波成分が重畳し、母線電流には、600Hzの高調波成分が大きく表れる。
続くステップS18では、所定の第1周波数範囲において相電流に含まれる高調波成分の大きさが第1閾値を超えているとの第1条件、及び所定の第2周波数範囲において母線電流に含まれる高調波成分の大きさが第2閾値を超えているとの第2条件の論理和が真であるか否かを判定する。ここで、周波数範囲及び閾値は、以下のように定めることができる。
例えば、人間の可聴周波数域に各周波数範囲を設定し、相電流に含まれる高調波成分の振幅及び音圧の関係から決まる高調波成分の最大許容振幅を各閾値に設定する。
また例えば、モータジェネレータ10の共振周波数近傍に第1周波数範囲を設定し、相電流に含まれる高調波成分の振幅とその高調波成分によるモータジェネレータ10の振動,騒音レベルの関係から決まる高調波成分の最大許容振幅を第1閾値に設定する。一方、システムメインリレー21、高圧バッテリ22、平滑コンデンサ23、電気負荷LD等の各機器の共振周波数近傍に第2周波数範囲を設定する。そして、母線電流に含まれる高調波成分の振幅とその高調波成分による各機器の振動,騒音レベルの関係から決まる高調波成分の最大許容振幅に第2閾値を設定する。
ステップS18において肯定判定した場合には、ステップS20に進み、検出温度Tempが所定温度Tαを超えているか否かを判定する。この処理は、高調波切替処理の実行を禁止するか否かを判定するための処理である。つまり、図7(b)に示す複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンが用いられる場合、図7(a)に示す1電気角周期に渡って規定されたパルスパターンが用いられる場合と比較して、指令パターンで規定されるスイッチング回数が多くなる。このため、インバータ20のスイッチング損失が大きくなり、インバータ20の温度が過度に上昇し、インバータ20の信頼性が低下する懸念がある。したがって、インバータ20を保護する観点から、ステップS20の処理を設けた。
先の図6の説明に戻り、ステップS20において否定判定した場合には、ステップS22に進み、指令トルクTrq*、電気角周波数fe及び電源電圧VINVのうち少なくとも1つが急変しているか否かを判定する。本実施形態において、各パラメータが急変しているか否かは、各パラメータの単位時間あたりの変化量が所定量以上になるか否かで判定する。ステップS22の処理は、モータジェネレータ10のトルク制御が不安定となるのを回避するための処理である。つまり、指令トルクTrq*、電気角周波数fe及び電源電圧VINVは、変調率Mrを定めるパラメータである。このため、これらパラメータの少なくとも1つが急変すると、変調率Mrも変化する。図8には、電気角周波数feの急変により変調率Mrが変化することを示した。
変調率Mrが変化することは、パターン記憶部38eに記憶されているパルスパターンの中から参照されるパルスパターンが変化することと同じである。このため、変調率Mrの変化に伴い、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルも変化する。ここで、変調率Mrの変化による高調波成分の変化と、複数電気角周期で規定されたパルスパターンを用いることによる高調波成分の変化とが同時に発生すると、意図しない周波数範囲で高調波成分が発生し、トルク制御が不安定化する懸念がある。このため、変調率Mrの変化時には、高調波切替処理の実行を禁止してトルク制御が不安定となるのを回避する。
ステップS18において否定判定した場合、又はステップS20,S22において肯定判定した場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、ステップS14において選択したパルスパターンを指令パターンとして角度比較部38hに出力する。この際、再生角算出部38fには、識別数Ncycとして1を出力する。
ステップS22において否定判定した場合には、ステップS26に進む。ステップS26では、高調波切替処理として、ステップS14において選択したパルスパターンに、このパルスパターンとは異なる高調波成分のスペクトルを含むパルスパターンが組み合わされた複数電気角周期に渡るパルスパターンを選択する処理を行う。
ステップS26の処理の完了後、続くステップS24では、ステップS26において選択した複数電気角周期に渡るパルスパターンを指令パターンとして角度比較部38hに出力する。
図9に、2電気角周期に渡って規定された指令パターンが角度比較部38hから出力される場合のタイムチャートを示す。なお図9では、1相分のパルスパターンのみについて示す。
図示される例では、時刻t1〜t2において、1つ目のパルスパターンのスイッチングタイミングと再生角θrとに基づいて、1つ目のパルスパターンが出力される。そして時刻t2〜t3において、2つ目のパルスパターンのスイッチングタイミングと再生角θrとに基づいて、1つ目のパルスパターンとは異なる高調波成分のスペクトルが含まれる2つ目のパルスパターンが出力される。その後、時刻t3〜t4において、時刻t1〜t2と同じパルスパターンが出力され、時刻t4〜t5において、時刻t2〜t3と同じパルスパターンが出力される。
続いて図10に、3電気角周期に渡って規定された指令パターンが角度比較部38hから出力される場合のタイムチャートを示す。図示される例では、時刻t1〜t2,t2〜t3のそれぞれにおいて、互いに異なる高調波成分のスペクトルを含む3つのパルスパターンが順次出力される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルが大きくて、かつ、その周波数が制御システムを構成する機器の共振周波数近傍になると、振動、騒音及び電磁ノイズが増加する等、制御システムのNVH特性が悪化する。具体的には例えば、相電流に含まれる高調波成分のスペクトルが大きくてかつその周波数がモータジェネレータ10の共振周波数近傍になると、モータジェネレータ10及びインバータ20のNVH特性が悪化する。その結果、各相のハーネス11U〜11Wが振動し、騒音が発生する。また例えば、母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルが大きくてかつその周波数が、高圧バッテリ22、平滑コンデンサ23、システムメインリレー21又は電気負荷LDの共振周波数近傍になる場合にもNVH特性が悪化する。
この点、本実施形態では、同一の指令同期数Nt及び同一の変調率Mrであっても、複数電気角周期のパルスパターンを組み合わせることにより、指令パターンに含まれる高調波成分の大きさ及び周波数のうち少なくとも一方が、時間経過とともに切り替えられる。このため、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルを拡散でき、特定の周波数にスペクトルが偏ることを防止できる。これにより、制御システムのNVH特性を改善することができる。
複数電気角周期に渡って規定されたパルスパターンにおいて、各電気角周期に対応するパルスパターンに含まれる基本波成分の振幅及び位相を互いに同一とした。このため、高調波切替処理の実行時における各電気角周期に対応するパルスパターンのパルス数が、先の図6のステップS14で選択したパルスパターンのパルス数からずれる場合であっても、モータジェネレータ10のトルク制御性を安定化することができる。
スペクトルの大きさにかかわらず高調波切替処理を実行する構成では、スペクトル拡散用にパターン記憶部38eに記憶させるパルスパターンの数が多くなる。その結果、パターン記憶部38eの記憶情報量が多くなる。これに対し、本実施形態では、電気角周波数feとパルスパターンとに基づいて、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルを推定する。そして、所定の周波数範囲における上記スペクトルの大きさが閾値を超えている場合に、高調波切替処理を実行する。このため、特定の状況に対応したスペクトル拡散用のパルスパターンを用意すればよく、スペクトル拡散用のパルスパターンの数を少なくできる。これにより、パターン記憶部38eの記憶情報量を削減することができる。
指令トルクTrq*、電気角周波数fe及び電源電圧VINVのうち少なくとも1つが急変していると判定した場合、高調波切替処理の実行を禁止した。このため、モータジェネレータ10のトルク制御を安定化できる。
検出温度Tempが所定温度Tαを超えると判定した場合、高調波切替処理の実行を禁止した。これにより、インバータ20の信頼性の低下を回避できる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、パターン記憶部38eは、複数電気角周期ではなく、1電気角周期を「2×M+1」/4倍した周期分のパルスパターンを記憶している。ここで、Mは1以上の整数である。これは、パターン記憶部38eの記憶情報量を削減するためである。
図11に、M=3の場合、すなわち1電気角周期を1.75倍した周期分のパルスパターンを例示する。このパルスパターンでは、時刻t1〜t2までが1つ目のパルスパターンであり、時刻t2〜t3までが2つ目のパルスパターンの0〜180°分に相当する。このため、時刻t1〜t3までのパルスパターンに、時刻t3に示す軸線に対してこのパターンと線対称となるパルスパターンを時刻t1〜t3までのパルスパターンにつなげる。これにより、1電気角周期を3.5倍した周期に渡る指令パターンが生成される。
なお、時刻t1〜t4で規定されたパルスパターンに、このパターンの論理反転値をつなげることにより、7電気角周期分の指令パターンが生成される。すなわち、パターン記憶部38eは、7電気角周期分の指令パターンが生成されたと仮定した場合に、生成された指令パターンのうち各電気角周期に対応するパルスパターンに含まれる高調波成分のスペクトルを互いに異なるスペクトルとするパルスパターンを記憶している。
図11に示す指令パターンが生成された場合、パターン生成部38dから出力される識別数Ncycは1.75となる。再生角算出部38fは、再生角θrが「360×1.75=630°」となるまでは、加算角θvの増加分だけ再生角θrを増加し、再生角θrが630°となった後、0°となるまでは、加算角θvの増加分だけ再生角θrを減少する。
以上説明した本実施形態によれば、パターン記憶部38eの記憶情報量を削減しつつ、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルを拡散できる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、パターン記憶部38eは、複数電気角周期ではなく、1電気角周期を「K+1」/2倍した周期分のパルスパターンを記憶している。ここで、Kは2以上の偶数である。これは、上記第2実施形態と同様に、パターン記憶部38eの記憶情報量を削減するためである。
図12に、M=2の場合、すなわち1電気角周期を1.5倍した周期分のパルスパターンを例示する。このパルスパターンでは、時刻t1〜t2までが1つ目のパルスパターンであり、時刻t2〜t3までが2つ目のパルスパターンの0〜90°分に相当する。このため、時刻t1〜t3までのパルスパターンに、時刻t3に示す軸線に対してこのパターンと点対称となるパルスパターンを時刻t1〜t3までのパルスパターンにつなげる。これにより、3電気角周期に渡る指令パターンが生成される。
図12に示す指令パターンが生成された場合、パターン生成部38dから出力される識別数Ncycは1.5となる。再生角算出部38fは、再生角θrが「360×1.5=540°」となるまでは、加算角θvの増加分だけ再生角θrを増加し、再生角θrが540°となった後、0°となるまでは、加算角θvの増加分だけ再生角θrを減少する。
以上説明した本実施形態によれば、パターン記憶部38eの記憶情報量を削減しつつ、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルを拡散できる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、指令同期数Ntが同一であっても、実際の同期数を切り替えることにより、相電流,母線電流に含まれる高調波成分のスペクトルを拡散する。
本実施形態において、変調器38は、再生角算出部38fを備えていない。このため、加算部38gにより算出された加算角θvが角度比較部38hにそのまま入力される。また本実施形態において、パターン記憶部38eは、指令同期数Nt及び変調率Mrと関係付けられた1電気角周期に渡るパルスパターンを記憶している。
図13に、本実施形態に係る指令パターン生成処理の手順を示す。この処理は、パターン生成部38dにより、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお図13において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、ステップS12の処理の完了後、ステップS28において、取得した指令同期数Nt及び変調率Mrに該当するパルスパターンを選択する。そして選択したパルスパターンを角度比較部38hに出力する。その後ステップS16に進む。なお、ステップS16でのスペクトルの推定には、ステップS28で選択したパルスパターンが用いられる。
ステップS18において否定判定した場合、又はステップS20,S22において肯定判定した場合には、ステップS28で選択したパルスパターンが指令パターンとしてそのまま用いられる。一方、ステップS22において否定判定した場合には、ステップS30に進み、高調波切替処理として、同期数可変処理を行う。この処理では、まず、取得した指令同期数Ntに基づいて、互いに異なる複数の切替同期数Nrを選択する。そして、選択した切替同期数Nrを順次切り替えつつ、パターン記憶部38eに記憶されているパルスパターンのうち順次切り替えられた切替同期数Nrに対応するパルスパターンを角度比較部38hに順次出力する。本実施形態では、取得した指令同期数Nt及びこの指令同期数Ntに隣接する同期数を切替同期数Nrとして設定する。
図14に、同期数可変処理を示す。図14には、指令同期数Ntが12に設定されている場合において、切替同期数Nrとして6,12,18が選択される場合を例示した。ここで、図14(a)は、タイマのカウンタ値CNTの推移を示し、図14(b)は、実際に設定される切替同期数Nrの推移を示す。
図14(a)に示すように、カウンタ値CNTがカウンタ閾値Cthに到達したと判定されるたびに、切替同期数Nrがランダムに切り替えられ、また、カウンタ値CNTがリセットされる。すなわち、カウンタ閾値Cthに対応した時間が経過するたびに、切替同期数Nrがランダムに切り替えられる。
これにより、指令同期数Ntが同一であっても、切替同期数Nrと一致する指令同期数Ntに対応するパルスパターンがパターン記憶部38eから選択される。図15に、切替同期数Nrが6,12,18に設定された場合の相電流に含まれる高調波成分のスペクトルを示す。図示されるように、切替同期数Nrが順次切り替えられることにより、可聴周波数域においてある次数の高調波成分の大きさがその許容閾値Sthを超えている場合であっても、許容閾値Sthを超える高調波成分の次数が順次変更される。その結果、時間平均でみたときの相電流に含まれる高調波成分のスペクトルは拡散され、制御システムのNVH特性を改善することができる。
また本実施形態によれば、パターン記憶部38eの記憶情報量を増加させることなく、時間あたりの高調波成分のスペクトルの大きさを低減できる。
さらに本実施形態では、指令同期数Nt及びこの同期数に隣接する同期数を切替同期数Nrとして選択した。このため、指令同期数Ntから大きくはずれた同期数が選択されることがなく、モータジェネレータ10のトルク制御性の低下を抑制できる。
ちなみに、検出温度Tempに基づいて、先の図14に示したカウンタ閾値Cthを変更してもよい。具体的には例えば、検出温度Tempが高いほど、選択された切替同期数Nrのうち、最も小さい切替同期数Nrに対応するカウンタ閾値Cthを長くして、かつ、最も大きい切替同期数Nrに対応するカウンタ閾値Cthを短くしてもよい。これにより、スイッチング回数が多くなる時間を短縮でき、インバータ20の温度が過度に高くなることを抑制できる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図16に示すように、インバータの構成を変更する。なお図16において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお図16では、電気負荷LD及び各種検出部等の図示を省略している。
図示されるように、本実施形態に係るモータジェネレータ50は、中性点を備えておらず、互いに独立したU,V,W相巻線50U,50V,50Wを備えている。
インバータ60は、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を6相分備えている。U相第1上,下アームスイッチS1up,S1unの接続点には、U相巻線50Uの第1端PU1が接続され、U相第2上,下アームスイッチS2up,S2unの接続点には、U相巻線50Uの第2端PU2が接続されている。V相第1上,下アームスイッチS1vp,S1vnの接続点には、V相巻線50Vの第1端PV1が接続され、V相第2上,下アームスイッチS2vp,S2vnの接続点には、V相巻線50Vの第2端PV2が接続されている。W相第1上,下アームスイッチS1wp,S1wnの接続点には、W相巻線50Wの第1端PW1が接続され、W相第2上,下アームスイッチS2wp,S2wnの接続点には、W相巻線50Wの第2端PW2が接続されている。
ちなみに本実施形態では、各スイッチS1up〜S2wnとして、IGBTを用いている。そして、各スイッチS1up〜S2wnには、各フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
各上アームスイッチS1up〜S2wpのコレクタには、正極母線Lpが接続されている。また、各下アームスイッチS1un〜S2wnのエミッタには、負極母線Lnが接続されている。
制御装置30は、モータジェネレータ10のトルクを指令トルクTrq*に制御すべく、インバータ60を構成する各スイッチS1up〜S2wnをオンオフ駆動する。
続いて、図17を用いて、変調器38について説明する。なお図17において、先の図3に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
指令同期数設定部38iは、電気角周波数fe及び同期数テーブルに基づいて、U,V,W相それぞれの指令同期数Nu,Nv,Nwを設定する。
パターン生成部38jは、U,V,W相それぞれについて、電気角周波数fe、指令同期数及び変調率Mrに基づいて指令パターンを生成する。指令パターンは、パターン記憶部38kに記憶されているパルスパターンに基づいて生成される。パルスパターンは、指令同期数及び変調率Mrと関係付けられて予めパターン記憶部38kに記憶されている。
パターン生成部38jにより生成されたU相の指令パターンを規定するスイッチングタイミングαと、加算角θvとは、U相角度比較部38mに入力される。U相角度比較部38mは、入力されたスイッチングタイミングαのうち、加算角θvに該当するものを選択する。U相角度比較部38mは、選択したスイッチングタイミングαに基づいて、U相のPWM信号GUを生成して出力する。
なお、U相のPWM信号GUは、信号生成部39に入力される。信号生成部39は、U相のPWM信号GUとその論理反転信号との論理反転タイミング同士をデッドタイムだけ離間させる処理を行うことで、U相の各スイッチS1up〜S2unをオンオフ駆動するための駆動信号を生成する。本実施形態では、U相第1上アームスイッチS1up,U相第2下アームスイッチS2unの組と、U相第2上アームスイッチS2up,U相第1下アームスイッチS1unの組とが交互にオン駆動される。
パターン生成部38jにより生成されたV相の指令パターンを規定するスイッチングタイミングβと、加算角θvとは、V相角度比較部38nに入力される。V相角度比較部38nは、入力されたスイッチングタイミングβのうち、加算角θvに該当するものを選択する。V相角度比較部38nは、選択したスイッチングタイミングβに基づいて、V相のPWM信号GVを生成して出力する。ちなみに、信号生成部39は、V相のPWM信号GVに基づいて、V相の各スイッチS1vp〜S2vnをオンオフ駆動するための駆動信号を生成する。本実施形態では、V相第1上アームスイッチS1vp,V相第2下アームスイッチS2vnの組と、V相第2上アームスイッチS2vp,V相第1下アームスイッチS1vnの組とが交互にオン駆動される。
パターン生成部38jにより生成されたW相の指令パターンを規定するスイッチングタイミングγと、加算角θvとは、W相角度比較部38pに入力される。W相角度比較部38pは、入力されたスイッチングタイミングγのうち、加算角θvに該当するものを選択する。W相角度比較部38pは、選択したスイッチングタイミングγに基づいて、W相のPWM信号GWを生成して出力する。ちなみに、信号生成部39は、W相のPWM信号GWに基づいて、W相の各スイッチS1wp〜S2wnをオンオフ駆動するための駆動信号を生成する。本実施形態では、W相第1上アームスイッチS1wp,W相第2下アームスイッチS2wnの組と、W相第2上アームスイッチS2wp,W相第1下アームスイッチS1wnの組とが交互にオン駆動される。
続いて、図18を用いて、パターン生成部38jにより実行される同期数可変処理について説明する。ここで、図18(a)は、タイマのカウンタ値CNTの推移を示し、図18(b),(c),(d)は、指令同期数設定部38iにより設定されるU,V,W相の指令同期数Nu,Nv,Nwの推移を示す。
図示されるように、本実施形態では、U,V,W相それぞれで指令同期数が異なるように、各相の指令同期数がランダムに切り替えられる。図19に、各相の同期数Nu,Nv,Nwが18,6,12に設定された場合の相電流に含まれる高調波成分のスペクトルを示す。図示されるように、各相の同期数が異なるものとされることにより、各次数のスペクトルのうち最も大きいものの周波数を分散させることができる。特に本実施形態では、モータジェネレータ50の各相巻線が互いに独立したものであるため、各相の電流は各相で選択されたパルスパターンに大きく依存することとなる。このため、U,V,W相それぞれで異なるパルスパターンを出力することにより、各次数のスペクトルのうち最も大きいものの周波数の分散させることによるNVH特性の改善効果を高めることができる。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について、上記第5実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図20に示すように、モータジェネレータの構成を変更する。なお図20において、先の図16に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお図20では、電気負荷LD及び各種検出部等の図示を省略している。また図20では、便宜上、インバータ80を構成する各スイッチの符号を、先の図16に示したインバータ60を構成する各スイッチの符号と同一にしている。
図示されるように、モータジェネレータ70は、多相多重巻線を有する巻線界磁型回転電機であり、具体的には、3相2重巻線を有する同期機である。モータジェネレータ70を構成するステータには、第1,第2巻線群が巻回されている。第1,第2巻線群に対して、モータジェネレータ70のロータが共通化されている。第1巻線群及び第2巻線群のそれぞれは、異なる中性点を有する3相巻線からなる。第1巻線群は、電気角で互いに120°ずれたU,V,W相巻線70U1,70V1,70W1を有し、第2巻線群は、電気角で互いに120°ずれたU,V,W相巻線70U2,70V2,70W2を有している。なお本実施形態では、第1巻線群を構成する各相巻線70U1,70V1,70W1それぞれの巻数と、第2巻線群を構成する各相巻線70U2,70V2,70W2それぞれの巻数とが等しく設定されている。また本実施形態では、第1巻線群と第2巻線群との磁気干渉を打ち消すべく、第1巻線群と第2巻線群とのなす角度がずらされている。この角度は、例えば30°に設定されればよい。
制御装置30は、モータジェネレータ10のトルクを指令トルクTrq*に制御すべく、インバータ80を構成する各スイッチS1up〜S2wnをオンオフ駆動する。
続いて、図21を用いて、変調器38について説明する。なお図21において、先の図17に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
指令同期数設定部38qは、電気角周波数fe及び同期数テーブルに基づいて、第1,第2巻線群それぞれの指令同期数N1,N2を設定する。
パターン生成部38rは、第1,第2巻線群それぞれについて、電気角周波数fe、指令同期数及び変調率Mrに基づいて指令パターンを生成する。指令パターンは、パターン記憶部38sに記憶されているパルスパターンに基づいて生成される。パルスパターンは、指令同期数及び変調率Mrと関係付けられて予めパターン記憶部38sに記憶されている。
パターン生成部38rにより生成された第1巻線群の指令パターンを規定するスイッチングタイミングαと、加算角θvとは、第1角度比較部38tに入力される。第1角度比較部38tは、入力されたスイッチングタイミングαのうち、加算角θvに該当するものを選択する。第1角度比較部38tは、選択したスイッチングタイミングαに基づいて、第1のPWM信号GU1,GV1,GW1を生成して出力する。なお、第1のPWM信号GU1,GV1,GW1に基づく各第1スイッチS1up,S1un,S1vp,S1vn,S1wp,S1wnの駆動信号の生成手法は上記第1実施形態と同様である。このため、その詳細な説明を省略する。
パターン生成部38rにより生成された第2巻線群の指令パターンを規定するスイッチングタイミングβと、加算角θvとは、第2角度比較部38uに入力される。第2角度比較部38uは、入力されたスイッチングタイミングβのうち、加算角θvに該当するものを選択する。第2角度比較部38uは、選択したスイッチングタイミングβに基づいて、第2のPWM信号GU2,GV2,GW2を生成して出力する。なお、第2のPWM信号GU2,GV2,GW2に基づく各第2スイッチS2up,S2un,S2vp,S2vn,S2wp,S2wnの駆動信号の生成手法は上記第1実施形態と同様である。このため、その詳細な説明を省略する。
続いて、図22を用いて、本実施形態の効果について説明する。ここで、図22(a)は、第1巻線群に対応する指令同期数N1が18に設定された場合の相電流に含まれる高調波成分のスペクトルを示す。図22(b)は、第2巻線群に対応する指令同期数N2が12に設定された場合の相電流に含まれる高調波成分のスペクトルを示す。
図示されるように、第1,第2巻線群それぞれで指令同期数を異ならせることにより、各次数のスペクトルのうち最も大きいものの周波数を分散させることができる。その結果、制御システムのNVH特性の改善効果を高めることができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・インバータとしては、上記各実施形態に例示したものに限らず、例えば図23に示すものであってもよい。なお図23において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお図23では、電気負荷LD及び各種検出部等の図示を省略している。
インバータ100は、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を2相分備えている。第1スイッチSA及び第2スイッチSBの接続点には、モータジェネレータ90を構成する巻線90aの第1端が接続されている。第3スイッチSC及び第4スイッチSDの接続点には、巻線90aの第2端が接続されている。ちなみに各スイッチSA〜SDとして、IGBTを用いている。そして各スイッチSA〜SDには、各フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
第1スイッチSA及び第3スイッチSCのコレクタには、正極母線Lpが接続され、第2スイッチSB及び第4スイッチSDのエミッタには、負極母線Lnが接続されている。
・インバータとしては、上述した2,3,6相のものに限らず、それ以外の相数を有するものであってもよい。
・先の図6のステップS18において、相電流に含まれる高調波成分の大きさが第1閾値を超えているとの第1条件、及び母線電流に含まれる高調波成分の大きさが第2閾値を超えているとの第2条件のいずれかを無くしてもよい。
・上記第1〜第3実施形態において、複数電気角周期に渡って規定された指令パターンについて、各電気角周期に対応するパターンに含まれる基本波成分の振幅及び位相を互いに同一としなくてもよい。
・先の図6のステップS22の処理を、指令トルクTrq*、電気角周波数fe及び電源電圧VINVのうち、一部であってかつ、少なくとも1つが急変しているか否かを判定する処理に置き換えてもよい。
・先の図6のステップS20で用いるインバータ温度は、温度検出部27の検出値に限らず、所定の温度推定処理により推定されたインバータ温度であってもよい。
・先の図4,図11,図12に示したパルスパターンの全てをパターン記憶部38eに記憶させてもよい。
・上記第4実施形態において、選択される切替同期数Nrを2つとしてもよい。この場合、例えば、切替同期数Nrを6,12としたり、12,18としたりすればよい。
・モータジェネレータの制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
・モータジェネレータとしては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置を構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
・インバータに電気的に接続される負荷であるモータジェネレータとしては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。さらに、上記負荷としては回転電機に限らない。