JP6532049B2 - 固体酸化物形燃料電池用燃料極とその製造方法および前記燃料極を含む固体酸化物形燃料電池 - Google Patents
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Description
また、前記遷移金属としては、特にモリブデンが好ましい。
RExCe1-xO2-(x/2) (I)
AyZr1-yO2-(y/2) (II)
前記組成式(I)において、REは、Sm、Gd、Y、La、CaおよびNdから選ばれる少なくとも1種の金属であり、xは0≦x<0.5を満たす実数を示し、
前記組成式(II)において、Aは、Y、Sc、Ce、およびYbから選ばれる少なくとも1種の金属であり、yは0≦y<0.2を満たす実数を示す。
工程A)イオン導電体の粉末とニッケル酸化物の粉末とを混合し、当該混合物を焼成して燃料極中間体を作製する工程、および
工程B)工程Aで作製した燃料極中間体に、モリブデン、タングステンおよびタンタルからなる群より選択される遷移金属を含む溶液を含浸する工程
を含むことを特徴とする。
前記遷移金属の中でも、比較的低温で窒化物を形成できるモリブデンがより好ましい(モリブデンは、約700℃で窒化物(Mo2N)を形成する)。また、モリブデンは含浸法に適しているため、優れた性能を有する燃料極を製造しやすいという利点がある。
下記の組成式(I)で表されるドープセリアまたは組成式(II)で表される安定化ジルコニアが挙げられる。
RExCe1-xO2-(x/2) (I)
AyZr1-yO2-(y/2) (II)
前記組成式(I)において、REは、Sm、Gd、Y、La、CaおよびNdから選ばれる少なくとも1種の金属であり、xは0≦x<0.5を満たす実数を示し、
前記組成式(II)において、Aは、Y、Sc、Ce、およびYbから選ばれる少なくとも1種の金属であり、yは0≦y<0.2を満たす実数を示す。
上記組成式(III)において、sは0≦s≦0.25を満たす実数を示し、uは0≦u≦0.1を満たす実数を示し、vは0.05≦v≦0.25を満たす実数を示し、wは2.7≦w≦3.025を満たす実数を示すことが特に好ましく、その一例として、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3が挙げられる。
まず、図1に示す固体酸化物形燃料電池1を900℃以下の雰囲気中に設置し、図2に示すように、燃料極4に水素と窒素との化合物のガス(図2の例では、NH3ガス)を含む燃料を供給し、空気極3に酸素ガスを含む酸化剤を供給する。
これにより、空気極3においては、酸化剤中に含まれる酸素ガスにより、(1/2)O2+2e-→O2-の反応から酸化物イオン(O2-)が生じる。そして、酸化物イオン(O2-)は電解質2を燃料極4に向かって伝導する。
そして、燃料極4においては、電解質を伝導してきた酸化物イオン(O2-)と、アンモニアガスとにより、2NH3ad+3O2-→3H2O+N2+6e-の反応から水(H2O)と窒素(N2)と電子(e-)が生じる。そして、水(H2O)および窒素(N2)は外部に放出され、電子(e-)は外部回路を通って空気極3に流れ込む。
以上のようにして固体酸化物形燃料電池を作動させることによって、固体酸化物形燃料電池による発電が可能となる。
なお、本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、水素と窒素との化合物からなるガスを含む燃料を使用する場合に特に好適であるが、水素(H2)ガスを含む燃料などの従来から公知の燃料を供給して作動させることも可能である。
まず、燃料極に使用するイオン導電体として、上述した式(I)のドープセリアまたは式(II)の安定化ジルコニア粉末を準備する。
次に、上記イオン導電体の粉末と、酸化ニッケル(NiO)粉末とを、それらの全量に占めるイオン導電体の含有率が10〜50重量%(より好ましくは20〜40重量%)となる割合で混合し、バインダー(ポリエチレングリコール、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂等)を水や有機溶媒と適宜組み合わせて燃料極ペーストを調製する。なお、他の金属元素(すなわち、Mo,W,Ta,Ni以外の金属元素)の酸化物を添加する場合、イオン導電体、NiOおよび他の金属元素の酸化物(例えば、Fe2O3)の全量に占めるイオン導電体の含有率は、上記と同じ範囲であることが好ましい。
作製した燃料極ペーストを、図1に示すようなディスク状の固体電解質2の片面の一部に、スクリーン印刷した後、焼成し、燃料極中間体を作製する。
次に、電解質の他方の面に、前記燃料極中間体と重なるように、Pt(白金)またはペロブスカイト型酸化物を含むペーストをスクリーン印刷した後、焼成することによって空気極3を形成する。
続いて、モリブデン、タングステン、タンタルからなる群より選択される遷移金属を含む溶液を、前記燃料極中間体にマイクロピペット等で滴下し、吸収させることによって、前記燃料極中間体に前記溶液を含浸させた後、60〜120℃で乾燥を行い、燃料極4を作製する。
前記遷移金属を含む溶液としては、前記遷移金属の塩を含む水溶液(超純水を使用することが好ましい)、アルコール溶液(エタノール等)、あるいは水とアルコールの混合溶液等を使用することができる。
特にMoCl5を水のみに溶かした溶液が好ましいが、MoCl5が溶けきらない場合は、少量の有機溶媒(エタノールアミン等)を加えても良い。溶液中の遷移金属の塩の濃度は、0.05〜1.0mol/dm3程度が好ましく、0.1〜0.5mol/dm3程度がより好ましい。
以下の手順により、図1に模式的に示す構成の固体酸化物形燃料電池を作製した。
酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、酸化ガリウムおよび酸化マグネシウムを所定の比率でエタノール中において湿式混合した後、1150℃で18時間の仮焼と上記の湿式混合とを交互に2回繰り返して作製したLSGM粉末を、294MPaの圧力でCIP成形し、その後1500℃で10時間焼成することによって、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3(LSGM)からなるディスク状(直径15mm、厚み0.5mm)の緻密な電解質を作製した。
Sm(No3)3・6H2O(硝酸サマリウム六水和物)粉末とCe(No3)3・6H2O(硝酸セリウム六水和物)粉末とをそれぞれSmとCeとのモル比がSm:Ce=2:8となるように、濃度が0.2mol/dm3の硝酸水溶液中に溶解し、混合した。次に、シュウ酸二水和物の水溶液とアンモニア水溶液とを混合して得たシュウ酸アンモニウム水溶液(シュウ酸濃度:0.2mol/dm3, pH:6.7)を調製し、これを上記SmとCeを含む硝酸水溶液に加えることにより、SmとCeの水酸化物沈殿を得た。さらに12時間撹拌した後、吸引ろ過により沈殿物を分離回収し、80℃で乾燥し、空気中で700℃で か焼することによって、SDC20(Sm0.2Ce0.8O1.9)粉末を得た。
上述のようにして製造したSDC20粉末と、NiO(酸化ニッケル)粉末とを、SDC20:NiO=3:7(重量比)となる割合で混合し、バインダーとしてポリエチレングリコールを適量添加して燃料極ペーストを調製した。その燃料極ペーストを、ディスク状の緻密な電解質の片面に、直径6mmの円形となるようにスクリーン印刷した後に、1250℃で3時間焼成し、燃料極中間体を形成した。
次に、電解質の他方の面に、燃料極中間体と重なるように、Sm0.5Sr0.5CoO3の組成をもつペロブスカイト型酸化物のペーストをスクリーン印刷した後に、1200℃で3時間焼成することによって、空気極(直径6mm、厚さ約10μm)を形成した。
続いて、電解質の外縁に直径0.5mmのPt線を巻きつけ、Ptペーストで電解質の縁に接着させた状態で、930℃で0.5時間焼成することにより、参照電極を形成した。
最後に、燃料極中間体に濃度が0.15mol/dm3または0.3mol/dm3のMoCl5(塩化モリブデン)水溶液を5〜20μl含浸した後(燃料極中間体に、MoCl5水溶液をマイクロピペットで滴下し、吸収させることによって含浸した)、80℃で乾燥することによって燃料極(Ni-Mo-SDC燃料極)を形成した。
実施例1で作製した固体酸化物形燃料電池を用い、発電試験を実施した。燃料極、空気極、参照極での集電にはPtメッシュを用い、Pt線を通して計測器(ポテンショスタット)に接続した。燃料ガスの密閉にはパイレックス(登録商標)ガラスを用いた。固体酸化物形燃料電池を設置した電気炉を900℃に昇温した後、燃料極に純水素を100ml/minで供給し、燃料極の還元処理を1時間行った。続いて、目的の温度(900℃)に設定し、燃料極側にNH3ガスを、空気極側に空気をそれぞれ100ml/minで供給し、電極性能の測定を行った。開回路電圧から0.4Vに至るまで0.7mV/sの定速で電位走査を行い、対応する電流密度を読み取り、電位と電流密度を掛け合わせた値を出力密度とした。表1に、様々なMo含有量の燃料極を用いたときの固体酸化物形燃料電池の出力密度を示す。
表1に示すように、Mo含有量が3at.% 付近で最も高い出力密度が得られた。
表1の燃料極のうち、Moなし(Ni単独)、Moが3.37at.%および11.4at.%の燃料極のSEM写真を撮影し、表面状態を確認した。図3に結果を示す。図3から明らかなように、Moが11.4at.%の場合は、Moによる燃料極表面の被覆が観察された。Moが11.4at.%の場合、出力密度が低くなったが(表1参照)、この理由は、含浸法ではMoが多すぎるとMoが電極表面を被覆し、活性が低下するためと考えられる。したがって、含浸法によりMoを含む燃料極を作製する場合、Moは10at.%以下が好ましく、1.5〜6at.%がより好ましく、2〜4at.%が特に好ましいと考えられる。
NiOとMoO3の粉末をNiとMoの原子数比が9:1となるように乳鉢を用いて混合した。続いて、その粉末を水素気流中、またはアンモニアを25%含むアルゴン気流中で900℃にて1時間処理し、室温まで冷却した後、取り出した粉末のX線回析パターンを測定した。結果を図4(b)に示す。図4(a)は、NiO粉末単独のX線回析パターンである。
図4(b)から明らかなように、NiとMoを含む燃料極は、アンモニア燃料中で、Ni-Mo窒化物を生成することが明らかになった。窒化物を形成する金属は、アンモニア吸着のエンタルピーを小さくする効果があると考えられる。図4(a)に示すように、Ni単独の場合、窒化物を形成せず、アンモニア吸着が良好に進まないが、Moを少量添加することにより、アンモニア吸着が促進され、発電性能が向上すると考えられる。
表1に示すMoが0at.%の燃料極および2.56at.%の燃料極を用いて作製した固体酸化物形燃料電池を、700℃、800℃および900℃のそれぞれの雰囲気中に設置し、空気極に空気を供給し、燃料極にアンモニアガスを供給したときの、空気極と燃料極との間の電圧(V)と、燃料電池に流れる電流の電流密度(mA/cm2)との関係(電圧−電流特性)を調べた。また、電流密度(mA/cm2)と出力密度(W/cm2)との関係も調べた。結果を図5に示す。図5の各グラフにおいて、横軸が電流密度(mA/cm2)、左の縦軸が電圧(V)、右の縦軸が出力密度(W/cm2)を示す。
上述した特許文献1に開示されているNi-Fe-SDC燃料極と本発明に係るNi-Mo-SDC燃料極を比較するため、以下のようにして、Ni-Fe-SDC燃料極を含む燃料電池を作製した。なお、Ni-Fe-SDC燃料極における、NiとFeの総原子数に対するFeの原子数の割合は、最も高い活性を示すことが確認されている約60at.%とした。
実施例1のようにして作製したSDC20と、Fe2O3(酸化鉄)粉末およびNiO粉末とを、SDC20:(Fe2O3+NiO)=3:7(重量比)、Ni:Fe=2:3(原子数比)となるように混合し、バインダーとしてポリエチレングリコールを適量添加して燃料ペーストを作製した。
実施例1で使用した燃料ペーストの代わりに、上記のFeを含む燃料ペーストを使用し、Moの含浸を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で固体酸化物形燃料電池を作製した。
また、図7(b)に示すように、Ni-Mo-SDCからなる燃料極は、Ni-Fe-SDCからなる燃料極と同程度に低い過電圧を示した。
このことから、900℃の雰囲気において、Ni-Mo-SDC燃料極が、Ni-Fe-SDC燃料極と比べて、より優れた特性を示すことが確認された。
このように、本発明に係るNi-Mo-SDC燃料極は、ごくわずかなMoの添加量で発電性能が著しく向上する。この理由として、MoはFeよりもアンモニア吸着能力が高く、故に低い含有量でもNi-Fe-SDC燃料極を超える性能に繋がったものと考えられる。
また、Ni-Fe-SDC燃料極はその高いFe含有率の故に、燃料ガス中に含まれる水蒸気により酸化され易いが、本発明に係るNi-Mo-SDC燃料極におけるMoの含有率は低いため、電極の酸化も抑えられると考えられる。更に、MoはFeに比べて融点が高いため、本発明に係るNi-Mo-SDC燃料極は、高温還元雰囲気においても燃料極の微細構造が保たれやすい(粒子径が増大しにくい)という利点がある。
したがって、本発明に係るNi-Mo-SDC燃料極は、Ni-Fe-SDC燃料極と比べて、より長期間に渡り発電性能を安定に維持することができると考えられる。
燃料極中間体に添加する元素をMoからTa、W、Nbに変更した以外は実施例1と同じ方法で、燃料電池を製造した。
具体的には、実施例1と同じ方法で形成した燃料極中間体に、濃度が0.15 mol/dm3のTaCl5溶液(エタノール)、(NH3)W22O41・5H2O溶液(水・エタノール=1:9)、あるいはNbCl5 溶液(エタノール)を含浸した後(燃料極中間体に、各溶液をマイクロピペットにて滴下し、吸収させることで含浸した)、80℃で乾燥することによって、添加金属の含有量が3at.%の燃料極(Ni-Ta-SDC、Ni-W-SDC、Ni-Nb-SDC)を有する固体酸化物形燃料電池を作製した。
Ta2O5またはWO3の粉末を、アンモニアを25%含むアルゴン気流中で900℃にて1時間還元処理し、室温まで冷却した後、取り出した粉末のX線回折パターンを測定した。結果を図9に示す。図9(a)はTa2O5、図9(b)はWO3のX線回折パターンである。また、Nb2O5粉末についても、同じ方法で処理し、X線回析パターンを測定した。結果を図10に示す。
2 電解質
3 空気極
4 燃料極
Claims (7)
- 固体酸化物形燃料電池を作動させるための燃料極であって、
ニッケルとイオン導電体とを含む焼成体、および前記焼成体に付着しているモリブデン
を含むこと、
燃料極中におけるモリブデンとニッケルの総原子数に対するモリブデンの原子数の割合が1〜10%であること、
を特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極。 - 窒素と水素との化合物のガスを含む燃料を供給して固体酸化物形燃料電池を作動させるための燃料極であることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用燃料極。
- 前記燃料極中におけるモリブデンとニッケルの総原子数に対するモリブデンの原子数の割合が1.5〜6%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池用燃料極。
- 前記イオン導電体が、下記の組成式(I)または(II)
RE x Ce 1-x O 2-(x/2) (I)
A y Zr 1-y O 2-(y/2) (II)
で表される金属酸化物であって、
前記組成式(I)において、REは、Sm、Gd、Y、La、CaおよびNdから選ばれる少なくとも1種の金属であり、xは0≦x<0.5を満たす実数を示し、
前記組成式(II)において、Aは、Y、Sc、Ce、およびYbから選ばれる少なくとも1種の金属であり、yは0≦y<0.2を満たす実数を示す
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用燃料極。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料極と、電解質と、空気極とを含むことを特徴とする、固体酸化物形燃料電池。
- 固体酸化物形燃料電池用燃料極を製造する方法であって、
工程A)イオン導電体の粉末とニッケル酸化物の粉末とを混合し、当該混合物を焼成して燃料極中間体を作製する工程、および
工程B)工程Aで作製した燃料極中間体に、モリブデンを含む溶液を、モリブデンとニッケルの総原子数に対するモリブデンの原子数の割合が1〜10%となるように含浸する工程
を含むことを特徴とする、固体酸化物形燃料電池用燃料極の製造方法。 - モリブデンとニッケルの総原子数に対するモリブデンの原子数の割合が1.5〜6%となるように含浸することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
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