以下、本発明を実施する上で好適な実施の形態について図面を用いて説明する。以下の実施の形態では、回路中の各スイッチング素子およびダイオードにおける電圧低下、配線の抵抗、並びにインダクタンス、寄生容量および変圧器の励磁インダクタンス等が無視できる理想的な状態であるものとして説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、下記はあくまでも実施の例に過ぎず、発明の実施態様を下記実施の形態に限定することを意図するものではない。
実施の形態1.
(全体構成の説明)
最初に、実施の形態1におけるDC/DCコンバータの全体構成を説明する。図1は、本実施の形態のDC/DCコンバータ100の主回路構成図である。
DC/DCコンバータ100は、1次側ブリッジ回路10と、2次側ブリッジ回路20と、変圧器30と、リアクトルユニット40と、制御装置50とを備える。DC/DCコンバータ100は、直流の1次側電源60と直流の2次側電源70との間に接続されている。
本実施の形態のDC/DCコンバータ100では、変圧器30に流れる電流にクラーク変換を施した際の零相電流に対し、有効な鎖交磁束を殆ど持たない変圧器30の中性点NP1にリアクトルL1の一端を接続し、リアクトルL1の他端に1次側電源60を接続する。変圧器30の両端には1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20が接続され、1次側ブリッジ回路10の母線(PL1,NL1)にはキャパシタを有する蓄電ユニット11が接続され、2次側ブリッジ回路20の母線(PL2,NL2)には2次側電源70が接続される。DC/DCコンバータ100は、1次側電源60と1次側蓄電ユニット11の電圧の比を1次側ブリッジ回路10のスイッチングによって調節することによって、1次側電源60の電圧と2次側ブリッジ回路20の母線電圧の比を調節できることを特徴とする。
リアクトルユニット40の一方端子fは、1次側電源60の高圧側に接続される。1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eは、1次側電源60の低圧側に接続される。リアクトルユニット40の他方端子nは、変圧器30の中性点NP1に接続される。
1次側蓄電ユニット11は、1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eと高圧側端子dとの間に接続される。1次側蓄電ユニット11はキャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。
2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uは、2次側電源70の高圧側に接続される。2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vは、2次側電源70の低圧側に接続される。
2次側蓄電ユニット21は、2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uおよび2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vに接続される。
2次側蓄電ユニット21は、キャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。2次側蓄電ユニット21は、接続点mにおいて、変圧器30の2次側中性点端子に接続される。
変圧器30は、三相変圧器であり、1次側ブリッジ回路10は、三相の第1ブリッジ回路12を有する。第1ブリッジ回路12は、6つのスイッチング素子SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16と、これらのスイッチング素子にそれぞれ並列に接続されたキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16とを有する。但し、外付けのキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16は、回路構成上等価な位置にあるスイッチング素子の寄生容量を用いて代用しても良い。
なお、図1ではスイッチング素子の記号として、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の記号を使用しているが、必ずしも回路図に記載された通りのスイッチング素子を利用しなくても良い。種々のスイッチング素子を自由に適用でき、Siを素材とした素子に限らず、SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体を素材としたSiC−MOSFETおよびGaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor)などをスイッチング素子として使用しても良い。
接続点aにおいて、スイッチング素子SW11の高圧側とスイッチング素子SW12の低圧側とが接続される。接続点bにおいて、スイッチング素子SW13の高圧側とスイッチング素子SW14の低圧側とが接続される。接続点cにおいて、スイッチング素子SW15の高圧側とスイッチング素子SW16の低圧側とが接続される。
以下、直列に接続された2つのスイッチの組をレグ、それぞれのスイッチをアームと呼称し、特に接続点を基準として高圧側のスイッチを上アーム、低圧側のスイッチを下アームと呼称する場合がある。
第1ブリッジ回路12は、接続点a,接続点bおよび接続点cにおいて、変圧器30の1次側各相端子に接続される。
2次側ブリッジ回路20は、三相の第2ブリッジ回路22を有する。第2ブリッジ回路22は、6つのスイッチング素子SW21,SW22,SW23,SW24,SW25,SW26を有する。
接続点rにおいて、スイッチング素子SW21の高圧側とスイッチング素子SW22の低圧側とが接続される。接続点sにおいて、スイッチング素子SW23の高圧側とスイッチング素子SW24の低圧側とが接続される。接続点tにおいて、スイッチング素子SW25の高圧側とスイッチング素子SW26の低圧側とが接続される。
第2ブリッジ回路22は、接続点r,接続点sおよび接続点tにおいて、変圧器30の2次側各相端子に接続される。
次に変圧器30の構成方法について説明する。図1には、変圧器30を千鳥−Y結線方式で構成した場合を示す。変圧器30は、1次側の各相電流にクラーク変換(αβ0変換)を施した時の零相電流が、変圧器のコア内部に磁束を誘起しないように構成されており、かつ1次側と2次側の間に位相差を持つ。
図2は、実施の形態1のDC/DCコンバータ100の第1変形例の主回路構成図である。図1には、変圧器30を千鳥−Y結線方式で構成した場合を示したが、図2では、変圧器30をY−Δ結線方式で構成した場合の回路図が示されている。他の部分の構成については、図2の変形例は図1のDC/DCコンバータと同様であるので説明は繰り返さない。
変圧器30の構成には、図2に示した構成以外にも他の変形例も考えられる。図3または図4のように複数のコア(トロイダルコア)を組み合わせる構成、図5のように磁気回路に対称性のあるコアを用いる構成、図6または図7に記載するように、商用周波数の三相変圧器に代表される3柱型コアを用いて実現する構成などを採用しても良い。なお、図4〜図7における接続点a,b,c,n,r,s,tは、図1または図2の接続点a,b,c,n,r,s,tにそれぞれ対応している。
コア同士を磁気的に結合させる場合は、図5のように磁気回路を対称的に構成するのが望ましいが、図6または図7のように、商用周波数の三相変圧器のような3柱型コアを用いて、零相電流によって生じる磁束がキャンセルするように構成しても良い。
特に図4に示すように、複数のコアを用いたY−Δ結線方式を採用する場合には、1次側巻線を流れる零相電流は磁界を生じうるが、通常、1次側巻線を流れる零相電流が生じる磁界は2次側巻線内に循環電流を誘起し、2次側巻線のΔ結線内を流れる循環電流が生じる磁界と1次側巻線を流れる零相電流が生じる磁界とが釣り合うことで1次側巻線を流れる零相電流が生じる鎖交磁束がキャンセルされる。
図3または図6に示すように、1次側巻線を複数に分割した千鳥−Y結線方式で変圧器を構成する場合には、1次側巻線を流れる電流同士で磁束をキャンセルすることができるので、零相電流が2次側巻線に電流を誘起せず銅損を削減できるメリットがある。また、2次側巻線に中性点ができるため、これを2次側母線電圧の中性点と電気的に接続することによって2次側巻線のコモンモード電位振動を抑制できる。
図4または図7に示すようにY−Δ結線方式で変圧器を構成する場合には、構造が単純な2巻線変圧器またはオープン結線の三相変圧器などを利用できるため、設計・製造が容易になるメリットがある。しかし、1次側巻線の零相電流に比例してΔ結線内部を流れる循環電流が生じるため、銅損が増加する他、巻線抵抗の電圧降下により偏磁を生じる原因となる可能性などのデメリットがある。なお、コア同士を磁気的に結合させ、単一のコアによって構成する場合には、Y−Δ構成を採用する場合でも1次側巻線の零相電流による2次側巻線電流の誘起が発生しないことがある。
1次側端子の零相電流が誘起する磁束を抑制するためには、コア内に発生する磁界の磁路上に釣り合う磁界を誘起するか、あるいは、開磁路とすることによって等価的に磁気抵抗を増加させ、磁束を生じないようにする方法などが考えられる。これらのいずれの方法も1次側端子の零相電流がコア内へ生じる磁界が磁束を誘起しないようにする手法の例示であり、他の同様な機能を発揮する構成を採用しても良い。
零相電流が生じる磁束をキャンセルする手法、および1次側巻線と2次側巻線間の位相をずらす手法は、商用周波数の三相変圧器などで昔から一般的に議論されている領域である。本実施の形態によれば、変圧器30、リアクトルユニット40、第1ブリッジ回路12および第2ブリッジ回路22を主たる構成要素とした回路構成によって、変圧器30が持つ電流経路の自由度を最大限活用できる。
図8は、DC/DCコンバータ100の第2変形例の主回路構成図である。図8に示した構成では、1次側回路部分に変圧器30の漏れインダクタンス成分を補助するリアクトルLa,Lb,Lcが、変圧器30と接続点a,b,cとの間にそれぞれ挿入されている。また、図示しないが、2次側回路部分に変圧器30の漏れインダクタンス成分を補助するリアクトルを変圧器30と接続点r,s,tとの間にそれぞれ挿入してもよい。また、三相変圧器30の中性点NP1に接続された各相3本の巻線間の接続を解除し、新たに生じた個別の3つの端子のそれぞれを、別個に図9のように変更を加えたリアクトルの端子n1、n2、n3と接続するように変更を加えても良い。これらのように、電気回路、磁気回路、または電気・磁気回路の組み合わせ、の上で変圧器30および周辺の補助的な素子に対して等価な変更を行なっても良い。
零相電流が生じる磁束がキャンセルされるとき、エネルギー上の制約から、変圧器30の中性点NP1に接続された端子nの電位は、変圧器30の1次側各相端子に接続された接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均となる。
実用上は変圧器30の各端子間には漏れインダクタンス成分に起因する電圧があり、また巻線の誤差などで完全に磁束がキャンセルされない場合があるため、端子nの電位が、接続点a,接続点b,接続点cの電位の平均と常に一致するとは限らない。以下では端子nの電位が接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均と一致するとして説明するが、簡単のためであり、本発明の形態はこれに限定されない。
(動作の説明)
次にDC/DCコンバータの動作について説明する。以下の説明は漏れインダクタンスのばらつきがない、理想的な状態を仮定している。
変圧器の偏磁がなく、漏れインダクタンスのばらつきもなく、スイッチング素子の個体差もなく、配線インピーダンスのばらつき等もないような理想的な状態では、第1ブリッジ回路12の各相のスイッチング素子は同一のデューティ(Duty)比で動作する。
図10は、図1における変圧器30の端子間電圧波形の例を示す波形図である。図10において、電圧Vae、Vbe、Vce、Vneは、それぞれ、端子eを基準とした接続点a,b,cおよび端子nの電位差を示す。また、電圧Van、Vbn、Vcnは、それぞれ、端子nを基準とした接続点a,b,cの電位差を示す。また電圧Vcapは、端子eを基準とした端子dの電位差を示す。
第1ブリッジ回路12の各相レグがスイッチを切り替えるタイミングは、スイッチング周期Tの1/3ずつずれており、接続点a,接続点b,接続点cに印加される電圧Vae,Vbe,Vceは、120°ずつ位相がシフトした波形となる。
第1ブリッジ回路12の上記のような動作は、多並列駆動するチョッパ回路でマルチフェーズ動作、またはキャリア位相シフト動作などと呼称され、一般に知られている。
図10では、各相の接続点の電圧Vae,Vbe,Vceの立ち上がり時刻を基準として、スイッチング周期の1/3ずつ各相の波形を位相シフトして動作させている。これは位相シフトの方法のうちの一例であり、電圧の立ち下がり時刻を基準としても、上アームオン時間の中心や下アームオン時間の中心を基準としてもよい。
三角波キャリアを用いる一般的なPWM(Pulse Width Modulation)方式では、スイッチングパターンを生成する三角波キャリアの位相を120°ずつ位相シフトすることによって同様なマルチフェーズ動作を実現できる。
ただし、変圧器の漏れインダクタンスや巻数にばらつきが生じている場合、変圧器30の各相電圧と各相電流をαβ0変換したときの座標空間において、1次側・2次側で電力を伝送する電流に三相が非対称となるような歪が生じる。このような電流の歪を補正するためには、第1ブリッジ回路12または第2ブリッジ回路22あるいはその両方において出力する電圧を調節する必要がある。この場合、1次側のキャリアを必ずしも120°ずつ位相シフトする必要はなく、補正のために位相シフト量を調節することが好ましい場合もある。
図10に示すように、第1ブリッジ回路12が変圧器30の各接続点に120°ずつ位相シフトした電圧を出力すると、変圧器30の中性点NP1には接続点a,接続点b,接続点cに加わった電圧の平均値が出力され、リアクトルL1の端子nには、振幅1/3、周波数3倍の矩形波電圧Vneが出力される。
リアクトルユニット40の一方端子fには1次側電源60が接続され、他方端子nには変圧器30の中性点NP1が接続されているため、リアクトルL1には1次側電源60の電源電圧Vinと、第1ブリッジ回路12の出力電圧の平均値、の差が印加される。
第1ブリッジ回路12の各相のデューティ比を三相すべてにおいて同じだけ増減させて調節することで、変圧器30の偏磁の原因となる各相間の不平衡電圧に関係せずにリアクトルL1に加わる電圧を制御できる。
言い換えれば、リアクトルL1を流れる電流は、第1ブリッジ回路12の各相デューティ比の平均値を調節することによって制御できる。すなわち、第1ブリッジ回路12に接続された変圧器30の1次側零相電流は、第1ブリッジ回路12の各相の出力デューティ比の平均値によって決まる。
理想的には、第1ブリッジ回路12において出力デューティ比の平均値を制御するだけで偏磁を起こさず零相電流を制御できるが、実用上何らかの理由で変圧器30に偏磁が発生する場合には、各相のデューティ比のバランスを変えることで偏磁現象を抑制できる。
第1ブリッジ回路12はマルチフェーズ動作(キャリア位相シフト動作)を行なっている。このため、変圧器30の各相電流が1次側蓄電ユニット11へ流れるとき、a相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れる期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在するか、またはa相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れない期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在する。
そのため、制御装置50において1次側蓄電ユニット11に流れる電流を検出する際に、スイッチング1周期の間の位相を120°ずつシフトさせながら検出することによって変圧器30の各相電流のばらつきを検出できる。すなわち、1次側蓄電ユニット11に電流検出センサを設けることで変圧器30の偏磁電流を検出できる。
また、当然ながら三相変圧器の各相電流をすべて検出するほか、キルヒホッフの電流則から導かれる電流の自由度の数以上の検出箇所があれば、検出箇所、検出方法の如何によらず偏磁電流の検出は可能である。
一般的に変圧器の励磁インダクタンスが非常に大きいため、偏磁抑制に必要な応答速度は、リアクトルL1の電流制御の応答速度と比べて十分に遅い。また、1次側電源60の高圧側に接続される端子fから変圧器30の1次側接続点a、接続点b、接続点cまでの電圧にαβ0変換を施すと、偏磁電流に寄与する成分と零相電流に寄与する成分を分離して独立に考えることができる。図11は、検出した偏磁電流と零相電流を独立して入力する場合の制御ブロック図である。この制御ブロックは、偏磁電流を検出するセンサ54と、入力電流を検出するセンサ55と、指令値iα*,iβ*,i0*との差電流を演算する減算器51〜53と、PI(比例積分)制御を実行するPI制御部56〜58と、αβ0/abc変換部59と、PWM制御部61と、abc/αβ0変換部62と、電圧電流変換部66〜68とを含む。
零相電流に影響するのは各相のデューティ比の平均であり、偏磁電流に影響するのは各相デューティ比の偏差である。ここで、リアクトルL1についての電流制御では、リアクトルL1に流れる電流または変圧器30の零相電流を検出値とし、第1ブリッジ回路12の平均デューティ比を操作量としてリアクトルL1の電流が指令値i0*に追従するようにPI制御部58によってPI制御する。これに対して偏磁電流を抑制する制御では、変圧器30の偏磁電流を検出値とし、各相のデューティ比の平均値からのばらつきを操作量として偏磁電流がゼロとなるようにPI制御部56,57によってPI制御する。したがって、リアクトルL1についての電流制御と、偏磁電流を抑制する制御とは独立に考えることができる。
偏磁がない理想的な状態では、リアクトルL1を通過した電流は3等分され、変圧器30の1次側巻線に零相電流として流れる。
1次側巻線に流れる零相電流は第2ブリッジ回路22へ電力を伝送せず、重ね合わせの原理を基に零相電流のみを取り出して考えた場合、1次側ブリッジ回路10は、3並列双方向チョッパ回路のように振る舞う。この3並列双方向チョッパ回路は、並列接続した双方向チョッパ回路のリアクトルの一部を結合し、磁束をキャンセルすることで変圧器の役割を持たせ、結合のない場合と比べて磁気素子全体の体積を低減したものである。
第1ブリッジ回路12のデューティ比でリアクトルL1の電流を制御することによって、1次側電源60と1次側蓄電ユニット11との間の電力伝送量を制御できる。
本実施の形態では、第1ブリッジ回路12のスイッチングパターンを維持したまま、第2ブリッジ回路22のスイッチング波形をフェーズシフトすることによって、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21との間で電力を伝送し合う。
(作用効果の説明)
次に実施の形態1のDC/DCコンバータの作用効果について説明する。
図12は、第1ブリッジ回路12が取りうるスイッチの状態を示す図である。図13は、第2ブリッジ回路22が取りうるスイッチの状態を示す図である。
なお、図12および図13において、“ON”はスイッチ又はダイオード或いはその両方が導通状態であることを示し、“OFF”はスイッチ及びダイオードが遮断状態であることを示す。
以下、Ph.1〜Ph.8は、第1ブリッジ回路12が取りうるスイッチの状態(フェーズ)を示し、PH.1〜PH.9およびPH.7−2,PH.2−3,PH.3−4,PH.4−5,PH.5−6,PH.6−7は、第2ブリッジ回路22が取りうるスイッチの状態(フェーズ)を示すものとする。
第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路22との間のフェーズシフトの適用量と、変圧器30を介して第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路22との間を伝わる伝送電力量との間には相関がある。ここでは、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路22との間のフェーズシフトの適用方法について触れる。
図14は一例として、第1ブリッジ回路12のスイッチングキャリアと、第2ブリッジ回路22のスイッチングキャリアの関係を表した図である。図15は、実施の形態1に係る主要動作モードの半導体素子のスイッチングタイミングを示す波形図である。
第1ブリッジ回路12の場合は、1次側キャリアとして、一般的な三角波キャリア比較によるスイッチングを行なう。それに対して、第2ブリッジ回路22の場合は、進相フェーズシフトΨ1,Ψ2を適用した進相キャリア比較と遅相フェーズシフトΦ1,Φ2を適用した遅相キャリア比較の組み合わせによってスイッチングを行なう。
フェーズシフト量が0である場合、図14中の2次側キャリアは1次側キャリアと重なる。
第1ブリッジ回路12の場合は、一般的な三角波キャリア比較方式のPWMのように、図14に示す1次側の三角波キャリアがデューティ比の指令値波形と交差することによって、図15に示すように、一つのレグの中の上アームと下アームの導通/遮断状態が同じタイミングで切り替わる(SW11〜SW16)。これに対し、第2ブリッジ回路22の場合は、一つのレグの中の上アームと下アームの導通/遮断状態が同じタイミングで切り替わるとは限らず、例えば図15に示すように、異なるタイミングで切り替わる場合がある(SW21〜SW26)。
なお、上の段落において1次側ブリッジ回路12の一つのレグの上アームと下アームが「同じタイミング」で切り替わると表現したが、これは1次側ブリッジ回路12のスイッチング方式と2次側ブリッジ回路22のスイッチング方式との違いが際立つように便宜上用いた表現であり、デッドタイム適用の可能性を排斥する意図はない。後述するZVT動作を行う上でもデッドタイムは適宜適用されることが好ましい。
図16は、第1ブリッジ回路12の各スイッチのON/OFF状態とベクトル電位の関係を示す図である。図16では、第1ブリッジ回路12(1次側)の出力電圧にクラーク変換(αβ0変換)を施して、αβ平面へ投射した場合の主要動作フェーズとベクトル電位との関係が示される。
図17は、第2ブリッジ回路22の各スイッチのON/OFF状態とベクトル電位の関係を示す図である。図17では、第2ブリッジ回路22(2次側)の出力電圧にクラーク変換(αβ0変換)を施して、αβ平面へ投射した場合の主要動作フェーズとベクトル電位との関係が示される。
なお、図16及び図17において点で示された箇所は、母線電圧を一定値としたときの主要なフェーズにおけるベクトル電位であって、図16及び図17は各フェーズに対応するベクトル電位の間の相対的な関係を示す。図16において、ベクトルa(1,0,0)、ベクトルb(0,1,0)、ベクトルc(0,0,1)は、それぞれ図1中の接続点a、接続点b、接続点cに接続されたレグの上アームが導通状態であるとき、図面上のベクトル電位に及ぼす影響を示す単位ベクトル電位である。同様に、図17において、ベクトルr(1,0,0)、ベクトルs(0,1,0)、ベクトルt(0,0,1)は、それぞれ図1中の接続点r、接続点s、接続点tに接続されたレグの上アームが導通状態であるとき、図面に現れる影響を示す単位ベクトル電位である。
第2ブリッジ回路22のスイッチは、変圧器の持つ位相差に従い、2次側ブリッジ回路22のキャリアが示すスイッチングタイミングに従って、主として第1ブリッジ回路12が出力するベクトル電位と対応するベクトル電位か、或いは対応するベクトル電位から1つ以上のスイッチの出力状態が切り替わった、図17中の適当なベクトル電位を出力するように切り替わる。
なお、第2ブリッジ回路22のスイッチングタイミングを決定する方法に関しては、例えば図14のようにキャリアを変化させるのではなく、代わりにデューティ比を変化させて第2ブリッジ回路22のスイッチングタイミングをコントロールし、結果として同じスイッチングパターンを得る方法なども考えられる。このような、第2ブリッジ回路22のスイッチングタイミングを決定する方法に関しては一例にすぎず、論理的に等価な手法が無数に考えられるので他の方法を用いても良い。例えばマイコンへの実装の過程で、キャリアを変形する方法が一般的でない場合、等価的にデューティ比を変調する方が都合がよいなどの利点が生じる可能性もある。
変圧器30は、1次側各相端子と2次側各相端子の間に30°の位相差を持つ。本実施の形態では、図16に示すベクトル電位を第1ブリッジ回路12が出力し、図17に示すベクトル電位を第2ブリッジ回路22が出力することによって、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21との間の電力伝送をコントロールする。
図16に示す記号は、“1”は上アームがON、下アームがOFF、“−1”は上アームがOFF、下アームがONの状態を指す。例えばPh.2(1,−1,−1)であれば、図12中の主要動作フェーズPh.2と対応している。Ph.2(1,−1,−1)は、接続点aを持つレグの上アームがONで下アームがOFF、接続点bを持つレグの上アームがOFFで下アームがON、接続点cを持つレグの上アームがOFFで下アームがONの状態を表す。
図17に示すベクトル電位の中には、第2ブリッジ回路22のレグが中性点電位を出力する状態に相当する点(PH.2−3、PH.3−4、PH.4−5、PH.5−6、PH.6−7、PH.7−2)がある。
図1の回路において、第2ブリッジ回路22は、第2ブリッジ回路22のスイッチがOFF−OFF状態(レグの上下スイッチが両方OFFとなる状態と定義する)となることを、中性点電位を出力する状態とみなしている。
なお、図18のように、第2ブリッジ回路22を、中性点電圧を出力する3レベルインバータ構成としても良い。すなわち、第2ブリッジ回路22をNPC(中性点クランプ)回路やTNPC(T型中性点クランプ)回路などの3レベルインバータにて構成することもできる。その場合は、OFF−OFF状態において、中性点電位と接続するスイッチ(SW27−1,SW27−2等)をON状態とすることによって、図1の構成と同様な動作ができる。
図17に示す記号は、“1”は上アームがON、下アームがOFF、“−1”は上アームがOFF、下アームがONの状態を指し、“0”は上アームおよび下アームがOFFの状態を指す。例えばPH.2(1,−1,0)であれば、図13中の主要動作フェーズPH.2と対応し、接続点rを持つレグの上アームがONで下アームがOFF、接続点sを持つレグの上アームがOFFで下アームがON、接続点tを持つレグの上アームおよび下アームがOFFの状態を表す。
DC/DCコンバータ100が動作するにあたり、1次側各相端子と2次側各相端子の間に30°の位相差を持つ変圧器30に対して、同位相のベクトル電位を印加する必要がある。
変圧器30は1次側各相端子と2次側各相端子に30°の位相差を持つ。変圧器30の1次側各相端子と2次側各相端子に同位相のベクトル電位が加わる状態は、第1ブリッジ回路12または第2ブリッジ回路22の一つのレグの接続点電位が中性点電位となる状態に相当する。
このため、第2ブリッジ回路22のレグは、中性点電位を出力する状態に相当するOFF−OFF状態を取ることがある。第2ブリッジ回路22のOFF−OFF状態のレグの接続点電位は、第1ブリッジ回路12の出力するベクトル電位によって決まる。第1ブリッジ回路12のスイッチング状態がPh.2、Ph.3、Ph.4、Ph.5、Ph.6、Ph.7であるときに、第2ブリッジ回路22のスイッチング状態が対応するPH.2、PH.3、PH.4、PH.5、PH.6、PH.7となっていれば、変圧器30の両端の位相が揃い、OFF−OFF状態のレグの接続点の電位はちょうど中性点電位となる。
ただし、三相変圧器には、漏れインダクタンスのばらつきや設計段階で意図しない結合インダクタンスなどのばらつきや寄生成分が存在する。したがって、第1ブリッジ回路12が出力するベクトル電位が変圧器の結合を介して第2ブリッジ回路22へ伝わったときに、OFF−OFF状態となるレグの接続点電位がちょうど中性点電位になるとは限らない。OFF−OFF状態のレグの接続点電位が中性点電位からズレたり、スイッチングに起因して電位が振動することは当然考えられる。
変圧器30のばらつきによる影響を抑えるための工夫としては、三相変圧器の結合を強め、別途漏れインダクタンスに相当する箇所にリアクトルを挿入する方法や、1次側各相のスイッチングタイミングを調節する方法、2次側各相のスイッチングタイミングを調節する方法などが考えられる。
また、振動を抑制する方法としては、第2ブリッジ回路22を3レベル回路とすることによって強制的に振動を停止させる方法や、2次側蓄電ユニットの分圧キャパシタC1の低圧側と分圧キャパシタC2の高圧側を接続した点と接続点mとの間に抵抗を挿入し、振動を抑制する方法や、2次側蓄電ユニットの分圧キャパシタC1の低圧側と分圧キャパシタC2の高圧側を接続した点と2次側の各相の接続点r、接続点s又は接続点tとの間に抵抗を挿入し、振動を抑制する方法等が考えられる。
OFF−OFF状態となったレグにはスイッチと並列な寄生容量などの容量成分を介して共振現象の原因となりうる電流が流れる場合があるが、継続して変換器の主電力を伝送する主回路電流は流れない。そのため、第2ブリッジ回路22のOFF−OFF状態でない残りの2レグのON状態のスイッチに電流が流れることによって、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21との間で電力伝送が起こる。
(作用効果の説明)
次にDC/DCコンバータの作用効果についてさらに詳しく説明する。
図15に示すスイッチングパターンは、進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトが同量適用された状態を表している。
本実施の形態に係るDC/DCコンバータでは、一般に、進相フェーズシフトの適用量が増加すると回生方向への電力伝送量が増加し、遅相フェーズシフトの適用量が増加すると力行方向への電力伝送量が増加する。
1次側キャリアを基準として、2次側キャリアとの間に適用するフェーズシフトの量を決める。2次側ブリッジ回路22のフェーズシフト適用量の決め方は様々考えられるが、進相フェーズシフトΨ1,Ψ2と遅相フェーズシフトΦ1,Φ2それぞれについて、例えば次の式(1)〜(4)のように定義することができる。ここでは、進相変数ψと遅相変数φを定め、第1ブリッジ回路12の上アームのオンデューティ比の平均値をDで示す。このとき、1次側キャリア及び2次側キャリアの関係は図14のようになる。なお、図14中でフェーズシフト量が0である状態は、基準となる1次側キャリアに2次側キャリアが重なる状態を指す。
進相フェーズシフトも遅相フェーズシフトも適用されていない場合、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路22は互いに「対応関係にあるベクトル電位」を出力する。第1ブリッジ回路12の上アームのオンデューティ比を以下では単に「デューティ比」と称する。図19は、実施の形態1の電力伝送の説明に用いる電流および電圧等の符号を示した回路図である。図20は、デューティ比が50%のときの出力波形を示す図である。図21は、デューティ比が16.7%のときの出力波形を示す図である。図22は、デューティ比が83.3%のときの出力波形を示す図である。なお、これらの波形図において、複数の線が重なる部分については、見やすさのためわずかに上下にずらして表現した部分がある。また、図23以降の波形図についても同様な処理を行なっている。
第1ブリッジ回路12によって変圧器30に電圧が印加される場合(Ph.2、Ph.3、Ph.4、Ph.5、Ph.6、Ph.7)については、第2ブリッジ回路22の各場合に対応する2つのレグが導通する状態(PH.2、PH.3、PH.4、PH.5、PH.6、PH.7)が、それぞれ「対応関係にあるベクトル電位」である。
第1ブリッジ回路12のスイッチがすべて下アームON状態(Ph.1)または上アームON状態である場合(Ph.8)には、変圧器30には電圧が印加されない。このとき、第2ブリッジ回路22のスイッチはすべてのレグがOFF−OFF状態(PH.1)かまたはすべて上アームON状態(PH.8)かまたはすべて下アームON状態(PH.9)となる。
図20、図21、図22では、1次側蓄電ユニット11の電圧Vcapと2次側蓄電ユニット21の電圧Voutの比は、図1に示した千鳥−Y結線の三相変圧器の巻数比を1:nとすると1:4n/3となり、図2に示したY−Δ結線の三相変圧器の巻数比を1:nとすると1:2n/3となる。
上の段落で示す電圧比の状態を、1次側蓄電ユニット11の電圧Vcapと2次側蓄電ユニット21の電圧Voutが釣り合う状態と定義する。本実施の形態において、変圧器30を介して電力の伝送が起こるのは、釣り合いの状態より1次側蓄電ユニット11の電圧が高いときである。
次に、進相フェーズシフトまたは遅相フェーズシフトあるいはその両方を適用した際の回路動作を説明する。図20〜図37に各デューティ比およびフェーズシフトの条件における波形を示す。
なお、図20〜図37の波形には、キルヒホッフの電流則により変圧器30の各相電流から自明である1次側電源60の電流、およびキルヒホッフの電圧則により変圧器30の各相電圧から自明である中性接続点nの電圧は表示しない。
進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトはそれぞれ回生方向、力行方向の電力伝送作用があり、互いに打ち消し合う関係にある。進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトが同量適用されていれば、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21の間で電力が行き来するのみで、平均の伝送電力量はゼロである。図23〜図25は、進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトが同量適用された場合の波形図である。図23にデューティ比50%の波形が示され、図24にデューティ比16.7%の波形が示され、図25にデューティ比83.3%の波形が示される。
第1ブリッジ回路12は、並列に接続されたキャパシタC11〜C16を利用することにより、上下スイッチを切り替える際にゼロ・ボルテージ・トランジション(以下、ZVTという)動作を行なう。
ZVTは、DAB(Dual Active Bridge)方式などでよく知られたソフトスイッチング方式である。順方向へ電流が流れるMOSFETまたはIGBTをターンオフし、その電流を上下アームに並列に接続されたキャパシタへ転流することでキャパシタを充放電する。このとき、キャパシタの充放電に従って上下アームの接続点電位が変動する。このように、接続点電位を切り替えて逆側アームの逆並列ダイオードへ電流を流し、逆並列ダイオードに電流が流れたときに逆側アームのMOSFETまたはIGBTをターンオンすることによって、ソフトスイッチングによる接続点電位の切り替えを達成する。
図23、図24、図25の各波形では、2次側スイッチに進相と遅相両方のフェーズシフトを適用することによって、変圧器を介して1次側回路と2次側回路の間で電力が行き来し、第1ブリッジ回路12にZVTによるスイッチングを行なうのに適した方向の電流が流れ、ソフトスイッチングによるスイッチの切り替えを行なうことができる。また、第2ブリッジ回路22には、ターンオンまたはターンオフの際に電流が流れておらず、ソフトスイッチング(ZCS:Zero Current Switching)によるスイッチの切り替えを行なうことができる。
図26〜図28は、遅相フェーズシフトを適用した力行動作時の動作波形である。デューティ比50%のときの波形を図26に示し、デューティ比16.7%のときの波形を図27に示し、デューティ比83.3%のときの波形を図28に示す。
図29〜図31は、進相フェーズシフトを適用した回生動作時の動作波形である。デューティ比50%のときの波形を図29に示し、デューティ比16.7%のときの波形を図30に示し、デューティ比83.3%のときの波形を図31に示す。
図32〜図34は、遅相フェーズシフトとそれに比して少量の進相フェーズシフトを適用した力行動作時の動作波形図である。デューティ比50%のときの波形を図32に示し、デューティ比16.7%のときの波形を図33に示し、デューティ比83.3%のときの波形を図34に示す。
図35〜図37は、進相フェーズシフトとそれに比して少量の遅相フェーズシフトを適用した回生動作時の動作波形図である。デューティ比50%のときの波形を図35に示し、デューティ比16.7%のときの波形を図36に示し、デューティ比83.3%のときの波形を図37に示す。
同じ量の電力を伝送する場合、単に力行動作時に遅相フェーズシフトを適用する場合(図26〜図28)と比べて、遅相フェーズシフトとそれに比して少量の進相フェーズシフトを適用した場合(図32〜図34)では、第1ブリッジ回路12がスイッチングする瞬間の電流が変化し、ZVTに適した電流が増加する。
また、回生動作時に進相フェーズシフトを適用する場合(図29〜図31)と比べて、進相フェーズシフトとそれに比して少量の遅相フェーズシフトを適用した場合(図35〜図37)には、第1ブリッジ回路12がスイッチングする瞬間の電流が変化し、ZVTに適した電流が増加する。
これらの現象は、全体として力行動作である中で、一部回生動作を生じたり、全体として回生動作である中で、一部力行動作を生じているとも見ることができる。これにより、変圧器30を行き来する、全体として伝送電力量に寄与しない循環電力が生じ、この循環電力のエネルギーの一部はソフトスイッチングに利用することができる。
進相と遅相両方のフェーズシフト量を利用することで、第1ブリッジ回路12にはZVTによるスイッチングを行なうのに適した方向の電流を流せ、ソフトスイッチングによるスイッチの切り替えを行なうことができる。また、第2ブリッジ回路22には、ターンオンまたはターンオフの際には電流が流れておらず、ソフトスイッチング(ZCS)によるスイッチの切り替えを行なうことができる。
本実施の形態では、第1ブリッジ回路12のデューティ比が変動した場合でも電力伝送を継続することができる。すなわち、1次側電源60の電圧が変化した場合でも、デューティ比を変動させることによって、2次側電源70との間での電力伝送を継続することができる。
千鳥−Y結線型の場合、1次側電源60の電圧と2次側電源70の電圧の昇圧比の上限は、次の式(5)で表すことができる。
Y−Δ結線の場合には、1次側電源60の電圧と2次側電源70の電圧の昇圧比の上限は、次の式(6)で表すことができる。
1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21の間で電力伝送が行なわれる場合には、1次側蓄電ユニット11の電圧が上昇する。上記式(5)または(6)の等号が成り立つ場合は、第2ブリッジ回路22にフェーズシフト量が重畳されず、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21の間で電力伝送が行なわれないときである。
本実施の形態の動作例として、図23に示される動作波形について、図15に示すスイッチングパターンに基づいて詳しく説明する。図15に示すスイッチングパターンでは、同量の進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトが適用されており、第2ブリッジ回路22の切替フェーズ(PH.2−3、PH.3−4、PH.4−5、PH.5−6、PH.6−7)の期間中に第1ブリッジ回路12がスイッチングを行なう。
第2ブリッジ回路22には、第1ブリッジ回路12の出力するベクトル電位に対応するスイッチング状態が存在するが、通常、第1ブリッジ回路12のスイッチング状態が切り替わる前後には転流期間が設けられ、第2ブリッジ回路22は転流経路に対応したスイッチングパターンを出力する。
転流開始時においては、電流が流れていない状態で半導体素子がターンオンするZCSターンオンを活用する。また、転流終了時においては、電流が流れていない状態で半導体素子がターンオフするZCSターンオフを活用する。
ZCSターンオンによって第2ブリッジ回路22が切替フェーズへ移行すると、変圧器30の1次側各相端子(接続点a,b,c)と2次側各相端子(接続点r,s,t)の電圧の位相がずれ、両端の電圧に応じた電流が変圧器30に流れるようになる。
第2ブリッジ回路22の切替フェーズを基準に考えると、第1ブリッジ回路12の切替対象のレグの接続点の電位が中性点となるときに変圧器両端の位相が揃ってバランスする。このため、進相フェーズシフトの期間中には、切替対象のレグにスイッチの順方向電流が多く流れるよう電圧が印加され、ソフトスイッチングを利用したZVTを行なうのに必要な電流が増加する。
ZVTによって第1ブリッジ回路12のスイッチが切り替わると、変圧器30の両端に加わる電圧の位相が変化し、切替フェーズ直前のフェーズの電流経路は自然に消滅して、安定した状態へと切り替わる。この状態では、切替フェーズ直前のフェーズと同様に、第1ブリッジ回路12のベクトル電位と第2ブリッジ回路22のベクトル電位の位相が揃ってバランスする。
なお、電流経路が消滅する際には、流れる電流がゼロとなるときに半導体素子(好ましくはダイオード)がターンオフし、ZCSターンオフが行なわれる。
力行動作において、第1ブリッジ回路12のスイッチ状態がPh.2であり、第2ブリッジ回路22のスイッチ状態がPH.2であるとき、第1ブリッジ回路12の電流経路は次の2つの電流経路Ph.2(1)およびPh.2(2)の重ね合わせとなる。
電流経路Ph.2(1):(1次側蓄電ユニット11)→(接続点d)→(スイッチSW12)→(接続点a)→(変圧器30)→(接続点b)→(スイッチSW13)→(接続点e)→(1次側蓄電ユニット11)
電流経路Ph.2(2):(1次側蓄電ユニット11)→(接続点d)→(スイッチSW12)→(接続点a)→(変圧器30)→(接続点c)→(スイッチSW15)→(接続点e)→(1次側蓄電ユニット11)
上記電流経路Ph.2(1)と、電流経路Ph.2(2)と、に並列して電流を流すことで、第1ブリッジ回路12は2次側に電力を送電するか、または2次側から電力を受電する。
このとき、第2ブリッジ回路22の電流経路PH.2は、以下のようになる。
電流経路PH.2:(2次側電源70)→(接続点v)→(スイッチSW23)→(接続点s)→(変圧器30)→(接続点r)→(スイッチSW22)→(接続点u)→(2次側電源70)
上記電流経路PH.2に電流を流すことで、第2ブリッジ回路22は1次側から電力を受電するか、または1次側へ電力を送電する。
第1ブリッジ回路12のスイッチ状態がPh.3であり、第2ブリッジ回路22のスイッチ状態がPH.3であるとき、第1ブリッジ回路12の電流経路は次の2つの電流経路Ph.3(1)およびPh.3(2)の重ね合わせとなる。
電流経路Ph.3(1):(1次側蓄電ユニット11)→(接続点d)→(スイッチSW12)→(接続点b)→(変圧器30)→(接続点c)→(スイッチSW15)→(接続点e)→(1次側蓄電ユニット11)
電流経路Ph.3(2):(1次側蓄電ユニット11)→(接続点d)→(スイッチSW14)→(接続点a)→(変圧器30)→(接続点c)→(スイッチSW15)→(接続点e)→(1次側蓄電ユニット11)
上記電流経路Ph.3(1)と、電流経路Ph.3(2)と、に並列して電流を流すことで、第1ブリッジ回路12は2次側に電力を送電するか、または2次側から電力を受電する。
このとき、第2ブリッジ回路22の電流経路PH.3は、以下のようになる。
電流経路PH.3:(2次側電源70)→(接続点v)→(スイッチSW25)→(接続点t)→(変圧器30)→(接続点r)→(スイッチSW22)→(接続点u)→(2次側電源70)
上記電流経路PH.3に電流を流すことで、第2ブリッジ回路22は1次側から電力を受電するか、または1次側へ電力を送電する。
第1ブリッジ回路12のスイッチ状態がPh.2またはPh.3であり、第2ブリッジ回路22のスイッチ状態がPH.2−3であるとき、第2ブリッジ回路22には電流経路PH.2と電流経路PH.3が重ね合わさった経路に電流が流れており、電流経路PH.2から電流経路PH.3への転流が起こる。
また、第1ブリッジ回路12のスイッチ状態がPh.2からPh.3へ切り替わる際には、スイッチSW13が導通した状態から、SW14が導通した状態へと切り替わる。
電流経路Ph.2(2)と電流経路Ph.3(1)の経路は同一である。
1次側電源60と1次側蓄電ユニット11間および1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21間の伝送電力の釣り合いは、進相フェーズシフトを多めに適用していれば、遅相フェーズシフトに相当するスイッチング状態がダイオード導通期間に応じて伸縮することで自動的に達成される。
デューティ比に応じてこの電流経路の切り替わりのパターンは変化する。図38、図39は、それぞれ1次側ブリッジ回路10のデューティ比に応じて図15から変化した1次側ブリッジ回路10および2次側ブリッジ回路20の動作フェーズの順序を示した図である。
図15に示す動作では、1次側ブリッジ回路10は、2次側ブリッジ回路20のPH7−2,PH2−3,PH3−4,PH4−5,PH5−6,PH6−7の期間中にスイッチングを行なう。2次側ブリッジ回路20は、PH7−2,PH2−3,PH3−4,PH4−5,PH5−6,PH6−7の開始時に、直前のフェーズでOFF−OFF状態となっていたレグをZCSターンオンする。PH7−2,PH2−3,PH3−4,PH4−5,PH5−6,PH6−7の終了時には、1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20の電圧の関係により、直後のフェーズの電流経路が確保されており、また、直前のフェーズにおける電流経路は消滅する。
電流経路が消滅し、電流がゼロになった瞬間にスイッチをターンオフすることでZCSターンオフを実現できる。電流ゼロの点で丁度スイッチをターンオフすることは難しいが、逆並列ダイオードの機能を利用することで、実用上問題なくZCSターンオフを実現できる。例えば、MOSFETで同期整流動作を行う場合などには、ZCSターンオフに先んじてMOSFETの逆方向電流をターンオフ(ZVS−OFF)し、逆並列ダイオードへ転流させることで、逆並列ダイオードの機能によってゼロ電流ターンオフを実現できる。
スイッチあるいはダイオードが遮断状態となると、レグはOFF−OFF状態に移行する。一連の動作の中で、2次側ブリッジ回路20のスイッチングにおいてはゼロ電流スイッチングが成立し、1次側ブリッジ回路10のスイッチングにおいてはゼロ電圧スイッチングが成立しており、すべてのフェーズ切替時点においてソフトスイッチング動作を成立させることができる。
図38に示す動作の場合は、PH.1からPH.2,PH.4,PH.6に切り替わるときに2次側ブリッジ回路20がゼロ電流でのターンオン動作を行なう。2次側ブリッジ回路20のフェーズが1次側ブリッジ回路10に先行して切り替わることで、2次側ブリッジ回路20から1次側ブリッジ回路10へ電力を伝送する方向に電流が増加し、1次側ブリッジ回路10にはZVTに有利な電流が流れるため、ZVTによるソフトスイッチングを実現できる。1次側ブリッジ回路がPh.1からPh.2、Ph.4、Ph.6に切り替わると、1次側ブリッジ回路10から2次側ブリッジ回路20へ電力を伝送する方向に電流が増加する。このときには、1次側ブリッジ回路10及び2次側ブリッジ回路20が変圧器へ出力する電圧がゼロでなく、かつ電圧の位相が揃っており、変圧器を介して1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20との間で力行または回生方向へ電力がやり取りされる。1次側ブリッジ回路10のフェーズが切り替わった後は、2次側ブリッジ回路20から1次側ブリッジ回路10へ電力を伝送する方向に電流が増加し、電流がゼロになる時点で2次側ブリッジ回路20のスイッチをターンオフすることによって、2次側ブリッジ回路20のフェーズがPH.2,PH.4,PH.6からPH.1へ切り替わる。
図39に示す動作の場合は、PH.1からPH.3,PH.5,PH.7に切り替わるときに2次側ブリッジ回路20がゼロ電流でのターンオン動作を行なう。2次側ブリッジ回路20のフェーズが1次側ブリッジ回路10に先行して切り替わることで、2次側ブリッジ回路20から1次側ブリッジ回路10へ電力を伝送する方向に電流が増加し、1次側ブリッジ回路10にはZVTに有利な電流が流れるため、ZVTによるソフトスイッチングを実現できる。1次側ブリッジ回路がPh.1からPh.2、Ph.4、Ph.6に切り替わると、1次側ブリッジ回路10から2次側ブリッジ回路20へ電力を伝送する方向に電流が増加する。このときには、1次側ブリッジ回路10及び2次側ブリッジ回路20が変圧器へ出力する電圧がゼロでなく、かつ電圧の位相が揃っており、変圧器を介して1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20との間で力行または回生方向へ電力がやり取りされる。1次側ブリッジ回路10のフェーズが切り替わった後は、2次側ブリッジ回路20から1次側ブリッジ回路10へ電力を伝送する方向に電流が増加し、電流がゼロになる時点で2次側ブリッジ回路20のスイッチをターンオフすることによって、2次側ブリッジ回路20のフェーズがPH.3,PH.5,PH.7からPH.1へ切り替わる。
これまでの説明では、第2ブリッジ回路22のターンオフ時に、各スイッチに流れる電流がゼロになった時点でZCSターンオフする動作について述べた。
しかし、スイッチに流れる電流がちょうどゼロになった時点を検知して動作を切り替えるのは実用上難しい点が多い。また、第1ブリッジ回路12によって制御される、1次側電源60から1次側蓄電ユニット11への伝送電力量と、1次側蓄電ユニット11から2次側蓄電ユニット21への伝送電力量をちょうど釣り合うように制御することもセンサや受動素子の誤差、制御偏差などの関係で難しい。
好ましくは、スイッチに流れる電流がゼロになる前の、逆並列ダイオードを順方向に流れる電流を利用することによって、タイミングの厳密な設定が難しい第2ブリッジ回路22のターンオフ時の問題を解決できる。
まず、1次側電源60から1次側蓄電ユニット11へ伝送する電力量を基準として、力行動作ならば遅相変数φ、回生動作ならば進相変数ψのみを増加させ、1次側蓄電ユニット11から2次側蓄電ユニット21への電力伝送を行なうスイッチングパターンを作成する。このときに、1次側電源60から1次側蓄電ユニット11への伝送電力量と計算上釣り合う電力を伝送するスイッチングパターンを定める。
そこから、進相変数ψを増加させ、伝送電力量に応じて、数%から数十%程度、力行方向への伝送電力量を減じた値(つまり、回生動作時には回生方向への伝送電力を増加した値)を1次側蓄電ユニット11から2次側蓄電ユニット21への伝送電力量の指令値とする。
この状態でスイッチングを行なうと、第2ブリッジ回路22のスイッチがターンオフする時、逆並列ダイオードの順方向電流が流れている状態でターンオフすることになり、スイッチの種類によってはスイッチからダイオードへZVSによる転流が起こる。このとき、変圧器30との接続点の電圧は変わらず、実質的な遅相フェーズ期間が延びる。そして、流れる電流がゼロとなった時点でダイオードの接続が切れてスイッチングが起こり、逆並列ダイオードによるZCS動作となる。
以上の各実施の形態における説明では、本発明の本質を明らかにするために回路における各スイッチング素子、ダイオードにおける電圧低下や配線の抵抗、インダクタンス、寄生容量、変圧器の励磁インダクタンス等が無い理想的な状態につき説明してきた。しかし、実際の回路においては、これらはいずれも大なり小なり存在する。これらの抵抗成分、静電容量成分、インダクタンス成分を補償する付加回路については従来から様々な方式が知られており、本発明の構成にこれら付加回路を付加することや、均等の範囲で回路を改変する等といったことは適宜行なわれる。
以上のように実施の形態1によれば1次側電源60の電圧変動に応じて第1ブリッジ回路12のデューティ比を調節することによって、電源電圧変動に対応して動作することができる。
また、第1ブリッジ回路12のスイッチングパターンを基準として、進相フェーズシフトと遅相フェーズシフトを同時に扱って、第2ブリッジ回路22のスイッチングパターンを構成したので、電力伝送量が小さい場合においてもソフトスイッチングを実現することができ、スイッチング損失を低減することができる。
さらに、実用上フェーズシフト量を厳密に定めることが難しい場合に、進相フェーズシフトを多めに取り、逆並列ダイオードへの転流を利用してソフトスイッチングを行なう方式を採用することによって実用上の誤差がある場合にも柔軟な対応ができ、スイッチング損失を低減することができる。
また、ソフトスイッチングの際に変圧器の励磁電流を利用することもできる。例えば1次側下側アームのスイッチがターンオンしていた場合、その下側アームのスイッチに流れる順方向電流が増加するように励磁電流は変化する。したがって、偏磁がなく、励磁電流の平均的な値がゼロに保たれていれば、励磁電流をソフトスイッチングに利用することが可能である。このような変圧器の励磁電流を利用したソフトスイッチング動作は、LLC回路などで既に検討され、一部では実用されている。
2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードの組がOFF−OFF状態となる期間においては、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は電気回路上、変圧器30の各相端子のみが接続され、他の配線などからは電気的に切り離された状態となる。このとき2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は、接続点への微小電流の流入や接続点からの微小電流の流出に対して電圧が容易に変動し得る状態となる。この状態は、例えば2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードが持つ寄生容量成分と変圧器20の漏れインダクタンス成分による共振現象を引き起こす可能性がある。このような共振現象を引き金として、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点の電圧が激しく振動することによる電磁放射ノイズの問題が発生する。EMC等の関係でこの問題を許容できない場合、実施の形態1に係るDC/DCコンバータ回路100に図51中の抵抗R21、R22、R23の様な抵抗を付け加えてDC/DCコンバータ回路100Aとすることで、電圧の振動を抑制することができる。抵抗を付け加える場合には、抵抗を追加することによる損失が発生するため、振動現象等の問題を許容できる範囲を元に抵抗値を判断し、できるだけ抵抗値を大きくすることが望ましい。
実施の形態2.
実施の形態1において、遅相フェーズシフトのみが適用される場合には、2次側ブリッジ回路20のスイッチング素子は逆並列ダイオードに同期して動作するのみである。したがって、実施の形態2では、2次側ブリッジ回路20のスイッチング素子をダイオードに置き換える場合を説明する。
(全体構成の説明)
図40は実施の形態2のDC/DCコンバータ101の主回路構成図である。図40に示されるのは、実施の形態1の2次側ブリッジ回路20のスイッチング素子をダイオードに置き換えた変形例である。この場合、電力の伝送方向は1次側から2次側に向かう片方向になる。
実施の形態2のDC/DCコンバータ101は、1次側ブリッジ回路10と、2次側ブリッジ回路20と、変圧器30と、リアクトルユニット40と、制御装置50を備える。
DC/DCコンバータ101は、直流の1次側電源60と直流の2次側電源70との間に接続されている。
リアクトルユニット40の一方端子fは、1次側電源60の高圧側に接続される。1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eは、1次側電源60の低圧側に接続される。リアクトルユニット40の他方端子nは、変圧器30の中性点NP1に接続される。
1次側蓄電ユニット11は、1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eと高圧側端子dとの間に接続される。1次側蓄電ユニット11はキャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。
2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uは、2次側電源70の高圧側に接続される。2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vは、2次側電源70の低圧側に接続される。
2次側蓄電ユニット21は、2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uおよび2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vに接続される。
2次側蓄電ユニット21は、キャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。2次側蓄電ユニット21は、接続点mにおいて、変圧器30の2次側中性点端子に接続される。
1次側ブリッジ回路10は、第1ブリッジ回路12を有する。第1ブリッジ回路12は、6つのスイッチング素子SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16と、各々のスイッチング素子に並列に接続されたキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16とを有する。但し、外付けのキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16は必ず必要ではなく、回路構成上等価な位置にあるスイッチング素子の寄生容量を用いて代用できる。
なお、図40ではスイッチング素子の記号として、MOSFETまたはIGBTの記号を使用しているが、必ずしも回路図に記載された通りのスイッチング素子を利用しなくても良い。種々のスイッチング素子を自由に適用でき、Siを素材とした素子に限らず、SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体を素材としたSiC−MOSFETおよびGaN−HEMTなどをスイッチング素子として使用しても良い。
接続点aにおいて、スイッチング素子SW11の高圧側とスイッチング素子SW12の低圧側とが接続される。接続点bにおいて、スイッチング素子SW13の高圧側とスイッチング素子SW14の低圧側とが接続される。接続点cにおいて、スイッチング素子SW15の高圧側とスイッチング素子SW16の低圧側とが接続される。
第1ブリッジ回路12は、接続点a,接続点bおよび接続点cにおいて、変圧器30の1次側各相端子に接続される。
実施の形態2では、2次側ブリッジ回路20は、第2ブリッジ回路122を有する。第2ブリッジ回路122は、6つのダイオードD21,D22,D23,D24,D25,D26を有する。
ダイオードD21のカソードとダイオードD22のアノードとが接続点rで接続される。ダイオードD23のカソードとダイオードD24のアノードとが接続点sで接続される。ダイオードD25のカソードとダイオードD26のアノードとが接続点tで接続される。
第2ブリッジ回路122は、接続点r,接続点sおよび接続点tにおいて、変圧器30の2次側各相端子と接続されている。
次に三相変圧器の構成方法について説明する。
変圧器30は、1次側の各相電流にクラーク変換(αβ0変換)を施した時の零相電流が、変圧器のコア内部に磁束を誘起しないように構成されており、かつ1次側と2次側の間に位相差を持つ。
図41は、実施の形態2のDC/DCコンバータ101の第1変形例の主回路構成図である。図40には、変圧器30を千鳥−Y結線方式で構成した場合を示したが、図41では、変圧器30をY−Δ結線方式で構成した場合の回路図が示されている。他の部分の構成については、図41の変形例は図40のDC/DCコンバータと同様であるので説明は繰り返さない。
変圧器30の構成には、図41に示した構成以外にも他の変形例も考えられる。図3または図4のように複数のコア(トロイダルコア)を組み合わせる構成、図5のように磁気回路に対称性のあるコアを用いる構成、図6または図7に記載するように、商用周波数の三相変圧器に代表される3柱型コアを用いて実現する構成などを採用しても良い。なお、図4〜図7における接続点a,b,c,n,r,s,tは、図40または図41の接続点a,b,c,n,r,s,tにそれぞれ対応している。
コア同士を磁気的に結合させる場合は、図5のように磁気回路を対称的に構成するのが望ましいが、図6または図7のように、商用周波数の三相変圧器のような3柱型コアを用いることによって零相電流によって生じる磁束をキャンセルしても良い。
特に、複数のコアを用いて図4に示すようなY−Δ構成を採用する場合は、1次側巻線を流れる零相電流によって生じる磁界が2次側巻線に電流を誘起し、2次側巻線のΔ結線内を流れる循環電流によって生じる磁界と1次側巻線を流れる電流によって生じる磁界とが釣り合うため、1次側巻線を流れる零相電流によって生じる鎖交磁束がキャンセルされる。
図3または図6に示すように、1次側巻線を複数に分割した千鳥−Y結線方式で変圧器を構成する場合には、1次側巻線を流れる電流同士で磁束をキャンセルすることができるので、零相電流が2次側巻線に電流を誘起せず銅損を削減できるメリットがある。また、2次側巻線に中性点ができるため、これを2次側母線電圧の中性点と電気的に接続することによって2次側巻線のコモンモード電位振動を抑制できる。
図4または図7に示すようにY−Δ結線方式で変圧器を構成する場合には、構造が単純な2巻線変圧器またはオープン結線の三相変圧器などを利用できるため、設計・製造が容易になるメリットがある。しかし、1次側巻線の零相電流に比例してΔ結線内部を流れる循環電流が生じるため、銅損が増加する他、巻線抵抗の電圧降下により偏磁を生じる原因となる可能性などのデメリットがある。なお、コア同士を磁気的に結合させ、単一のコアによって構成する場合は、Y−Δ構成を採用する場合でも1次側巻線の零相電流による2次側巻線電流の誘起は発生しない。
1次側端子の零相電流が誘起する磁束を抑制するためには、コア内に発生する磁界の磁路上に釣り合う磁界を誘起するか、あるいは、開磁路とすることによって等価的に磁気抵抗を増加させ、磁束を生じないようにする方法などが考えられる。これらのいずれの方法も1次側端子の零相電流がコア内へ生じる磁界が磁束を誘起しないようにする手法の例示であり、他の同様な機能を発揮する構成を採用しても良い。
また、零相電流が生じる磁束をキャンセルする手法、および1次側巻線と2次側巻線間の位相をずらす手法は、商用周波数の三相変圧器などで昔から一般的に議論されている領域でもある。
変圧器と周辺の補助的な素子(漏れインダクタンス分を補助する外挿リアクトルなど)の構成に対して、電気回路または磁気回路あるいは電気・磁気回路の組み合わせの上で構成に等価な変更を適宜行なっても良い。
零相電流が生じる磁束がキャンセルされるとき、エネルギー上の制約から、変圧器30の中性点NP1に接続された端子nの電位は、変圧器30の1次側各相端子に接続された接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均となる。
実用上は変圧器30の各端子間には漏れインダクタンス成分に起因する電圧があり、また巻線の誤差などで完全に磁束がキャンセルされない場合があるため、端子nの電位が、接続点a,接続点b,接続点cの電位の平均と常に一致するとは限らない。以下では端子nの電位が接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均と一致するとして説明するが、簡単のためであり、本発明の形態はこれに限定されない。
(動作の説明)
次にDC/DCコンバータの動作について説明する。以下の説明は漏れインダクタンスのばらつきがない、理想的な状態を仮定している。
漏れインダクタンスのばらつきもなく、スイッチング素子の個体差もなく、配線インピーダンスのばらつき等もない理想的な状態では、第1ブリッジ回路12の各相のスイッチング素子は同一のデューティ比で動作する。
図10に示すように、第1ブリッジ回路12の各相のレグが同一のデューティ比に基づいてスイッチングしているときを考える。第1ブリッジ回路12の各相レグがスイッチを切り替えるタイミングはスイッチング周期Tの1/3ずつずれており、接続点a,接続点b,接続点cに印加される電圧は120°ずつ位相がシフトした矩形波電圧となる。
第1ブリッジ回路12の上記のような動作は、並列駆動する双方向チョッパ回路において、マルチフェーズ動作、あるいはキャリア位相シフト動作などと呼称され、一般によく知られた方式と似ている。
図10では、各相の接続点の電圧の立ち上がり時刻を基準として、スイッチング周期の1/3ずつ各相の波形を位相シフトして動作させている。これは位相シフトの方法のうちの一例であり、電圧の立ち下がり時刻を基準としても、上アームオン時間の中心や下アームオン時間の中心を基準としてもよい。
三角波キャリアを用いる一般的なPWM方式では、スイッチングパターンを生成する三角波キャリアの位相を120°ずつ位相シフトすることによって同様なマルチフェーズ動作を実現できる。
ただし、変圧器の漏れインダクタンスや巻数にばらつきが生じている場合、変圧器30の各相電圧と各相電流をαβ0変換したときの座標空間において、1次側・2次側で電力を伝送する電流に各相間の非対称な歪が生じる。この電流歪は、1次側電圧と2次側電圧の差によって生じるので、これを補正するためには、第1ブリッジ回路12または第2ブリッジ回路122あるいはその両方において出力する電圧を調節する必要がある。この場合必ずしもちょうど120°ずつ位相シフトする必要はなく、補正のために位相シフト量を調節することができる。
図10に示すように、第1ブリッジ回路12が変圧器30の各接続点に120°ずつ位相シフトした電圧を出力すると、変圧器30の中性点NP1には接続点a,接続点b,接続点cに加わった電圧の平均値が出力され、リアクトルL1の端子nには、振幅1/3、周波数3倍の矩形波電圧Vneが出力される。
リアクトルユニット40の一方端子fには1次側電源60が接続され、他方端子nには変圧器30の中性点NP1が接続されているため、リアクトルL1には1次側電源60の電源電圧Vinと、第1ブリッジ回路12の出力電圧の平均値、の差が印加される。
第1ブリッジ回路12の各相のデューティ比を三相すべてにおいて同じだけ増減させて調節することによって、変圧器30の偏磁の原因となる各相間の不平衡電圧に関係せずにリアクトルL1に加わる電圧を制御できる。
言い換えれば、リアクトルL1を流れる電流は、第1ブリッジ回路12の各相デューティ比の平均値を調節することによって制御できる。また、第1ブリッジ回路12に接続された変圧器30の1次側零相電流は、第1ブリッジ回路12の各相の出力デューティ比の平均値によって決まる。
理想的には第1ブリッジ回路12は出力デューティ比の平均値を制御するのみで零相電流を制御できるが、変圧器30に偏磁が発生した場合、各相のデューティ比のバランスを変えることで偏磁現象を抑制できる。
第1ブリッジ回路12はマルチフェーズ動作(キャリア位相シフト動作)を行なっている。このため、変圧器30の各相電流が1次側蓄電ユニット11へ流れるとき、a相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れる期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在するか、またはa相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れない期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在する。
そのため、制御装置50において1次側蓄電ユニット11に流れる電流を検出する際に、スイッチング1周期の間の位相を120°ずつシフトさせながら検出することによって変圧器30の各相電流のばらつきを検出可能である。すなわち、1次側蓄電ユニット11に電流検出センサを設けることで変圧器30の偏磁電流は検出できる。
また、当然ながら三相変圧器の各相電流をすべて検出することでも偏磁電流を検出できる。
一般的に変圧器の励磁インダクタンスが非常に大きいため、偏磁抑制に必要な応答速度は、リアクトルL1の電流制御の応答速度と比べて十分に遅い。また、1次側電源60の高圧側に接続される端子fから変圧器30の1次側接続点a、接続点b、接続点cまでの範囲にαβ0変換を施すと、偏磁電流と零相電流を分離し独立に考えることができる(図11)。このとき、零相電流に影響するのは各相のデューティ比の平均値であり、偏磁電流に影響するのは各相デューティ比の平均値からのばらつきである。
ここで、リアクトルL1についての電流制御では、リアクトルL1に流れる電流または変圧器30の零相電流を検出値とし、第1ブリッジ回路12の平均デューティ比を操作量としてリアクトルL1の電流が指令値に追従するようにPI制御する。これに対して偏磁電流を抑制する制御では、偏磁電流を検出値とし、各相のデューティ比の平均値からのばらつきを操作量として偏磁電流がゼロとなるようにPI制御する。したがって、リアクトルL1についての電流制御と、偏磁電流を抑制する制御とは独立に考えることができる。
偏磁がない理想的な状態では、リアクトルL1を通過した電流は3等分され、変圧器30の1次側巻線に零相電流として流れる。ただし、実際は三相変圧器に偏磁電流が流れるため、リアクトルL1の電流がちょうど3等分されるわけではない。
1次側巻線に流れる零相電流は第2ブリッジ回路122へ電力を伝送しない。重ね合わせの原理を基に零相電流のみを取り出して考えると、1次側ブリッジ回路10は、3並列双方向チョッパ回路のように振る舞う。この3並列双方向チョッパ回路は、並列接続した双方向チョッパ回路のリアクトルの一部を結合し、磁束をキャンセルすることで変圧器の役割を持たせ、結合のない場合と比べて磁気素子全体の体積を低減したものである。
第1ブリッジ回路12のデューティ比によってリアクトルL1の電流を制御することによって、1次側電源60と1次側蓄電ユニット11との間の電力伝送量を制御できる。
第1ブリッジ回路12は、変圧器30を流れる励磁電流と各相電流を利用することでソフトスイッチングを行なうことができる。
本実施の形態では、第1ブリッジ回路12のスイッチングパターンを維持することによって、1次側蓄電ユニット11の電圧が上下する。1次側蓄電ユニット11の電圧が上下することによって、変圧器30を通じて第1ブリッジ回路12から第2ブリッジ回路122へ流れる電力量が上下するので、1次側電源60から2次側電源70へ電力を逐次伝送することができる。
(作用効果の説明)
次に実施の形態2のDC/DCコンバータの作用効果について説明する。
第1ブリッジ回路12は、通常の三角波キャリアによるスイッチングを行なう。これに対して、第2ブリッジ回路122のダイオードは遅相方向に位相シフトして導通する。
本実施の形態では、変圧器30が1次側各相端子と2次側各相端子の間に30°の位相差を発生し、図16に示すベクトル電位を第1ブリッジ回路12が出力し、図17に示すベクトル電位を第2ブリッジ回路122が出力することによって、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21との間で電力がやり取りされる。
図16に示す記号は、“1”は上アームがON、下アームがOFF、“−1”は上アームがOFF、下アームがONの状態を指す。例えばPh.2(1,−1,−1)であれば、図12中の主要動作フェーズPh.2と対応している。Ph.2(1,−1,−1)は、接続点aを持つレグの上アームがONで下アームがOFF、接続点bを持つレグの上アームがOFFで下アームがON、接続点cを持つレグの上アームがOFFで下アームがONの状態を表す。
図17に示すベクトル電位の中には、第2ブリッジ回路122のレグが中性点電位を出力する状態に相当する点(PH.2−3、PH.3−4、PH.4−5、PH.5−6、PH.6−7、PH.7−2)がある。
図40の回路において、第2ブリッジ回路122は中性点電圧を出力できないため、第2ブリッジ回路122のダイオードがOFF−OFF状態(レグの上下ダイオードが両方OFFとなる状態と定義する)となることを、レグが中性点電位を出力する状態として取り扱っている。
図40の回路において、図17に示す記号は、“1”は上アームがON、下アームがOFF、“−1”は上アームがOFF、下アームがONの状態を指し、“0”は上アームおよび下アームがOFFの状態を指す。例えばPH.2(1,−1,0)であれば、図13中の主要動作フェーズPH.2と対応し、接続点rを持つレグの上アームがONで下アームがOFF、接続点sを持つレグの上アームがOFFで下アームがON、接続点tを持つレグの上アームおよび下アームがOFFの状態を表す。
DC/DCコンバータ101が動作するにあたり、1次側各相端子と2次側各相端子の間に30°の位相差を持つ変圧器30に対して、同位相のベクトル電位を印加する必要がある。
変圧器30は1次側各相端子と2次側各相端子に30°の位相差を持つ。変圧器30の1次側各相端子と2次側各相端子に同位相のベクトル電位が加わる状態は、第1ブリッジ回路12または第2ブリッジ回路122の一つのレグの接続点電位が中性点電位となる状態に相当する。
このため、第2ブリッジ回路122のレグは、中性点電位を出力する状態に相当するOFF−OFF状態を取る。第2ブリッジ回路122のOFF−OFF状態のレグの接続点電位は、第1ブリッジ回路12の出力するベクトル電位によって決まる。第1ブリッジ回路12のスイッチング状態がPh.2、Ph.3、Ph.4、Ph.5、Ph.6、Ph.7であるときに、第2ブリッジ回路122のスイッチング状態が対応するPH.2、PH.3、PH.4、PH.5、PH.6、PH.7となっていれば、変圧器30の両端の位相が揃い、OFF−OFF状態のレグの接続点は中性点電位となる。
ただし、三相変圧器には、漏れインダクタンスおよび意図しない結合インダクタンスを始めとしたばらつきや寄生成分が存在する。したがって、第1ブリッジ回路12が出力するベクトル電位がそのまま第2ブリッジ回路122へ伝わり、OFF−OFF状態のレグの接続点電位がちょうど中性点電位になるとは限らない。OFF−OFF状態のレグの電位が中性点電位からズレたり、スイッチングに起因して電位が振動することは当然考えられる。
変圧器30のばらつきによる影響を抑えるための工夫としては、三相変圧器の結合を強め、別途漏れインダクタンスに相当する箇所にリアクトルを挿入する方法や、各フェーズシフトの量を2次側各相の間で調節する方法が考えられる。
OFF−OFF状態となったレグには電流が流れない。そのため、第2ブリッジ回路122のOFF−OFF状態でない残りの2レグのON状態のスイッチに電流が流れることによって、1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21との間で電力伝送が起こる。
(作用効果の説明)
次にDC/DCコンバータの作用効果についてさらに詳しく説明する。図43は、実施の形態2におけるスイッチングパターンの一例を示す図である。図43に示すスイッチングパターンは、第2ブリッジ回路122のダイオードが第1ブリッジ回路12に対して遅れて導通する様子を表している。
1次側キャリアを基準として、2次側キャリアとの間に適用するフェーズシフトの量を決める。2次側ブリッジ回路22のフェーズシフト適用量の決め方は様々考えられるが、遅相フェーズシフト量について例えば次の式(7)〜(8)のように定義する。ここでは、遅相変数φを定め、第1ブリッジ回路12の上アームのオンデューティ比の平均値をDで示す。このとき、1次側キャリア及び2次側キャリアの関係は図44のようになる。なお、図44中でフェーズシフト量が0である状態は、基準となる1次側キャリアに2次側キャリアが重なる状態を指す。
図45〜図47は、伝送電力がないときにおける波形図である。第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路122は互いに対応関係にあるベクトル電位を出力する。図45に第1ブリッジ回路12の上アームのオンデューティ比が50%のときの波形が示され、図46に同デューティ比が16.7%のときの波形が示され、図47に同デューティ比が83.3%のときの波形が示される。
第1ブリッジ回路12によって変圧器30に電圧が印加される場合(Ph.2、Ph.3、Ph.4、Ph.5、Ph.6、Ph.7)については、第2ブリッジ回路122の各場合に対応する2つのレグが導通する状態(PH.2、PH.3、PH.4、PH.5、PH.6、PH.7)が、それぞれ「対応関係にあるベクトル電位」である。
第1ブリッジ回路12の3つのレグがすべて上アームON状態または下アームON状態である場合(Ph.1、Ph.8)には、変圧器30には電圧が印加されない。このとき、第2ブリッジ回路122のダイオードはすべてのレグがOFF−OFF状態(PH.1)となる。
図45、図46、図47では、1次側蓄電ユニット11の電圧と2次側蓄電ユニット21の電圧の比は、図40に示した千鳥−Y結線の三相変圧器の巻数比を1:nとすると1:4n/3となり、図41に示したY−Δ結線の三相変圧器の巻数比を1:nとすると1:2n/3となる。
これらの電力伝送が無い状態を、1次側蓄電ユニット11の電圧と2次側蓄電ユニット21の電圧が釣り合う状態と定義する。本実施の形態において、変圧器30を介して電力の伝送が起こるときは、釣り合いの状態より1次側蓄電ユニット11の電圧が高い状態でDC/DCコンバータが動作するときである。
千鳥−Y結線型の場合、1次側電源60の電圧と2次側電源70の電圧の昇圧比の上限は、次の式(9)で表すことができる。
Y−Δ結線の場合には、1次側電源60の電圧と2次側電源70の電圧の昇圧比の上限は、次の式(10)で表すことができる。
1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21の間で電力伝送が行なわれる場合には、1次側蓄電ユニット11の電圧が上昇する。したがって、上記式の等号が成り立つ場合は1次側蓄電ユニット11と2次側蓄電ユニット21の間で電力伝送が行なわれていない場合である。
次に、電力伝送を行なう場合の動作を説明する。図42は、実施の形態2の電力伝送の説明に用いる回路図である。図45〜図48に各デューティ比およびフェーズシフトの条件における波形を示す。
なお、図45〜図48にはキルヒホッフの電流則により変圧器30の各相電流から自明である1次側電源60の電流、およびキルヒホッフの電圧則により変圧器30の各相電圧から自明である中性接続点nの電圧は表示していない。
第1ブリッジ回路12は、各スイッチと並列接続されたキャパシタなどを利用することにより、上下スイッチを切り替える際にZVT動作を行なう。
伝送電力がないときの動作波形で、上アームのオンデューティ比が50%である波形を図45に示し、同デューティ比が16.7%である波形を図46に示し、同デューティ比が83.3%である波形を図47に示す。図45、図46、図47では三相変圧器の励磁電流が強調して描かれている。三相変圧器の励磁電流により、第1ブリッジ回路12にZVTによるスイッチングを行なうのに適した方向の電流が流れており、ソフトスイッチングによるスイッチの切り替えを行なうことができる。
図43、図48、図49は、力行方向へ電力伝送が行なわれ、遅相フェーズシフトが発生したときの動作波形図である。デューティ比50%のときの波形が図43に示され、デューティ比16.7%のときの波形が図48に示され、デューティ比83.3%のときの波形が図49に示される。
図43、図48、図49には、励磁電流がない状態を示す。励磁電流の影響を考慮すると、第1ブリッジ回路12がスイッチングするタイミングで、スイッチングを行なうレグがZVTを行なうのに適した電流が増加しており、定格電流の範囲を定め、励磁電流の量を適当に定めることによって、定格電流の範囲内全てでソフトスイッチングによる動作を行なうことが可能である。
本実施の形態では、第1ブリッジ回路12のデューティ比が変動した場合でも電力伝送を継続することができる。すなわち、1次側電源60の電圧が変化した場合でも、デューティ比を変動させることによって2次側電源70との間での電力伝送を継続することができる。
第2ブリッジ回路122には、第1ブリッジ回路12の出力するベクトル電位に対応するスイッチング状態が存在するが、通常、第1ブリッジ回路12のスイッチング状態が切り替わった後には転流期間が存在し、第2ブリッジ回路122からは転流経路に対応したスイッチングパターンが出力される。
ダイオードが導通し、第2ブリッジ回路122が転流期間へ移行すると、変圧器30の1次側各相端子と2次側各相端子の電圧の位相がずれ、両端の電圧に応じた電流が変圧器30に流れるようになる。
ZVTによって、第1ブリッジ回路12のスイッチが切り替わると、変圧器30の両端に加わる電圧の位相が変化し、転流経路が自然に消滅する。すると、切替フェーズへ移行する前と同様に、第1ブリッジ回路12のベクトル電位と第2ブリッジ回路122のベクトル電位が同位相となる、安定した状態へと切り替わる。
以上の各実施の形態における説明では、本発明の本質を明らかにするために回路における各スイッチング素子、ダイオードにおける電圧低下や配線の抵抗、インダクタンス、寄生容量、変圧器の励磁インダクタンス等が無い理想的な状態につき説明してきたが、実際の回路においてはいずれも大なり小なり存在する。これらの抵抗成分、静電容量成分、インダクタンス成分を補償する付加回路については従来から様々な方式が知られており、本発明の構成にこれら付加回路を付加することや、均等の範囲で回路を改変する等といったことは適宜行なわれる。
以上のように実施の形態2によれば1次側電源60の電圧変動に応じて第1ブリッジ回路12のデューティ比を調節することによって、電源電圧変動に対応して動作することができる。
また、ソフトスイッチングの際に変圧器の励磁電流を利用することもできる。例えば1次側下側アームのスイッチがターンオンしていた場合、その下側アームのスイッチに流れる順方向電流が増加するように励磁電流は変化する。したがって、偏磁がなく、励磁電流の平均的な値がゼロに保たれていれば、励磁電流をソフトスイッチングに利用することが可能である。このような変圧器の励磁電流を利用したソフトスイッチング動作は、LLC回路などで既に検討され、一部では実用されている。
変圧器の励磁電流を利用することによって、第1ブリッジ回路12のソフトスイッチングに必要な電流を増加させることができ、定格電流の全範囲でソフトスイッチング動作を行なえるように設定することも可能である。
最後に、再び図面を参照して、本実施の形態1,2について総括する。
図1に示されるDC/DCコンバータ100は、少なくとも1次側巻線に中性点NP1を有する変圧器30と、中性点NP1と1次側電源60との間に接続される第1リアクトルL1と、第1正極線PL1と第1負極線NL1とで構成される第1母線対と、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に接続される蓄電ユニット11と、第1母線対(PL2,NL2)と1次側巻線とに接続される第1ブリッジ回路12と、第2正極線PL2と第2負極線NL2とで構成される第2母線対と、変圧器30の2次側巻線と第2母線対との間に接続される第2ブリッジ回路22とを備える。第2母線対(PL2,NL2)には負荷回路となる2次側電源70が接続される。
このような構成とすることによって、変圧器30の1次側の巻き線を利用してリアクトルL1に加わる電圧・時間積を小さくできるため、1次側電源(低圧・大電流を想定)の電流が流れるリアクトルL1のコア体積および巻数を削減できる。
好ましくは、第1ブリッジ回路12は、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に接続される第1レグを含む。第1レグは、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に直列接続される第1スイッチング素子SW11および第2スイッチング素子SW12を含む。DC/DCコンバータは、第1スイッチング素子SW11および第2スイッチング素子SW12のスイッチングデューティー比を制御する制御装置50をさらに備える。制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinの変化に応じてスイッチングデューティー比を決定する。好ましくは、制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinと蓄電ユニット11の電圧Vcapとの比に応じてスイッチングデューティー比を決定する。
好ましくは、第1ブリッジ回路12は、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に並列に接続される第1レグ、第2レグおよび第3レグを含む。第1レグは、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に直列接続される第1スイッチング素子SW11および第2スイッチング素子SW12を含む。第2レグは、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に直列接続される第3スイッチング素子SW13および第4スイッチング素子SW14を含む。第3レグは、第1正極線PL1と第1負極線NL1との間に直列接続される第5スイッチング素子SW15および第6スイッチング素子SW16を含む。DC/DCコンバータ100は、第1〜第6スイッチング素子SW11〜SW16のスイッチングデューティー比を制御する制御装置50をさらに備える。制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinの変化に応じてスイッチングデューティー比を決定する。好ましくは、制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinと蓄電ユニット11の電圧Vcapとの比に応じてスイッチングデューティー比を決定する。
たとえば、制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinが低下すると、1次側母線対の電圧Vcapの低下を抑制して目標電圧付近で安定するように、第1〜第6スイッチング素子SW11〜SW16スイッチングデューティー比を決定する。逆に、制御装置50は、1次側電源60の電圧Vinが上昇すると、1次側母線対の電圧Vcapの上昇を抑制して目標電圧付近で安定するように、第1〜第6スイッチング素子SW11〜SW16スイッチングデューティー比を決定する。以上のように制御することによって、1次側母線対の電圧と2次側母線対の電圧の比が動作・効率に大きく影響するDual Active Bridge回路において、1次側電源60の電圧と2次側電源70の電圧の比が変化した場合にも、1次側母線対の電圧と2次側母線対の電圧の比を良好に保ちつつDC/DC変換動作を行なうことができ、電源電圧の変動に耐性を持たせることができる。
好ましくは、変圧器30は、1次側入出力と2次側入出力に位相差を持たせるように構成される。位相差を持たせることによって、1次側の第1ブリッジ回路12と2次側の第2ブリッジ回路22の半導体スイッチに流れる電流が違うようになり、これをソフトスイッチング動作に利用できる。
より好ましくは、図1、図3、図6に示すように、変圧器30の巻線方式は千鳥−Y結線方式である。千鳥−Y結線方式の変圧器は、Y−Δ結線方式にした場合に比べ、同じ昇圧比で見ると大電流の流れる1次側回路の巻数が少なく、巻線抵抗が小さくなる。
図3に示すように、変圧器30は、第1コア321、第2コア322および第3コア323と、1次側巻線を構成する第1巻線301、第2巻線302および第3巻線303と、2次側巻線を構成する、第4巻線304、第5巻線305および第6巻線306とを含む。第1巻線301は、第1巻線部301−1と第2巻線部301−2とに分割され、第2巻線302は、第3巻線部302−1と第4巻線部302−2とに分割され、第3巻線303は、第5巻線部303−1と第6巻線部303−2とに分割される。第1コア321には、第1巻線部301−1、第6巻線部303−2および第4巻線304が巻回される。第2コア322には、第2巻線部301−2、第3巻線部302−1および第5巻線305が巻回される。第3コア323には、第4巻線部302−2、第5巻線部303−1および第6巻線306が巻回される。
図3のような構成とすれば、トロイダルコアなどを利用した単相変圧器の巻線方式を工夫することによって、1次側と2次側の結合に位相差を持たせた三相変圧器を構成できる。
好ましくは、図2、図4、図7に示すように、変圧器30の巻線方式はY−Δ結線方式である。Y−Δ結線方式は、千鳥−Y結線方式と比べて変圧器の構成が単純になり、DC/DCコンバータ100の設計および製造が容易になる。
好ましくは、図8、図9に示すように、DC/DCコンバータ100は、変圧器30の一次側巻線と第1ブリッジ回路12の出力との間に挿入された第2リアクトルLa,Lb,Lcをさらに備える。
このような構成とすれば、変圧器30の漏れインダクタンスのばらつきが回路動作に与える影響を抑えることができる。
より好ましくは、DC/DCコンバータ100の制御装置50は、第2ブリッジ回路22においてZCSターンオンを行なうように、第1ブリッジ回路12および第2ブリッジ回路22のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
このようにすれば、ZCSターンオンを行なって2次側回路のスイッチング素子をソフトスイッチングすることによって、DC/DCコンバータ100のスイッチング損失を低減できる。
好ましくは、DC/DCコンバータ100の制御装置50は、第1ブリッジ回路12のスイッチング素子SW12〜SW16と並列に接続した外付けのキャパシタC11〜C16を用いて、第1ブリッジ回路12の上下アームのON/OFF切り替えをゼロボルテージトランジッション(ZVT)動作によって行なうように、第1ブリッジ回路12および第2ブリッジ回路22のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
このようにすれば、ZVT動作によって1次側回路のスイッチング素子をソフトスイッチングすることによって、DC/DCコンバータ100のスイッチング損失を低減できる。
好ましくは、図40〜図42に示すように、第2ブリッジ回路122は、ダイオードブリッジ回路である。DC/DCコンバータ101は、1次側電源60から負荷回路となる2次側電源70へ片方向の電力伝送を行なう。
このように構成すれば、2次側回路のスイッチング素子を削減することによって、DC/DCコンバータ101のコストを削減できる。
より好ましくは、DC/DCコンバータ101の制御装置50は、第1ブリッジ回路12のスイッチング素子と並列に接続した外付けのキャパシタを用いて、第1ブリッジ回路12の上下アームのON/OFF切り替えをゼロボルテージトランジッション動作によって行なうように、第1ブリッジ回路12および第2ブリッジ回路22のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
このようにすれば、ZVT動作によって1次側回路のスイッチング素子をソフトスイッチングすることによって、DC/DCコンバータ101のスイッチング損失を低減できる。
なお、DC/DCコンバータ101において、変圧器30の励磁電流を利用することによって、1次側電源から2次側電源への電力伝送が無いか、または小さい場合においてもソフトスイッチング動作を実現できる。特に、伝送電力が小さく、2次側回路による補助動作がない場合においてもソフトスイッチングができる。
2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードの組がOFF−OFF状態となる期間においては、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は電気回路上、変圧器30の各相端子のみが接続され、他の配線などからは電気的に切り離された状態となる。このとき2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は、接続点への微小電流の流入や接続点からの微小電流の流出に対して電圧が容易に変動し得る状態となる。この状態は、例えば2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードが持つ寄生容量成分と変圧器20の漏れインダクタンス成分による共振現象を引き起こす可能性がある。このような共振現象を引き金として、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点の電圧が激しく振動することによる電磁放射ノイズの問題が発生する。EMC等の関係でこの問題を許容できない場合、実施の形態2に係るDC/DCコンバータ回路101に図52中のR21、R22、R23の様な抵抗を付け加えてDC/DCコンバータ回路101Aとすることで、電圧の振動を抑制することができる。抵抗を付け加える場合には、抵抗を追加することによる損失が発生するため、振動現象等の問題を許容できる範囲を元に抵抗値を判断し、できるだけ抵抗値を大きくすることが望ましい。
実施の形態3
実施の形態3では、ソフトスイッチング動作可能な領域を拡張する制御方式について説明する。
(全体構成の説明)
実施の形態3に係る電力変換装置は、実施の形態1と同様に図1に示したDC/DCコンバータ100の回路構成を備える。制御装置50は、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組のオン状態を上下で瞬時に切り替え、その際に切り替え対象のレグに流れる電流がゼロまたはゼロに近い電流(定格動作時にレグに流れる最大電流の10%以下)となるように制御する点を特徴とする。
実施の形態3におけるDC/DCコンバータの全体構成を説明する。図1は、本実施の形態のDC/DCコンバータ100の主回路構成図である。
DC/DCコンバータ100は、1次側ブリッジ回路10と、2次側ブリッジ回路20と、変圧器30と、リアクトルユニット40と、制御装置50とを備える。DC/DCコンバータ100は、直流の1次側電源60と直流の2次側電源70との間に接続されている。
本実施の形態のDC/DCコンバータ100では、変圧器30に流れる電流にクラーク変換を施した際の零相電流に対し、有効な鎖交磁束を殆ど持たない変圧器30の中性点NP1にリアクトルL1の一端を接続し、リアクトルL1の他端に1次側電源60を接続する。変圧器30の両端には1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20が接続され、1次側ブリッジ回路10の母線(PL1,NL1)にはキャパシタを有する蓄電ユニット11が接続され、2次側ブリッジ回路20の母線(PL2,NL2)には2次側電源70が接続される。DC/DCコンバータ100は、1次側電源60と1次側蓄電ユニット11の電圧の比を1次側ブリッジ回路10のスイッチングによって調節することによって、1次側電源60の電圧と2次側ブリッジ回路20の母線電圧の比を調節できることを特徴とする。
リアクトルユニット40の一方端子fは、1次側電源60の高圧側に接続される。1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eは、1次側電源60の低圧側に接続される。リアクトルユニット40の他方端子nは、変圧器30の中性点NP1に接続される。
1次側蓄電ユニット11は、1次側ブリッジ回路10の低圧側端子eと高圧側端子dとの間に接続される。1次側蓄電ユニット11はキャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。
2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uは、2次側電源70の高圧側に接続される。2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vは、2次側電源70の低圧側に接続される。
2次側蓄電ユニット21は、2次側ブリッジ回路20の高圧側端子uおよび2次側ブリッジ回路20の低圧側端子vに接続される。
2次側蓄電ユニット21は、キャパシタまたはバッテリーなどのエネルギー蓄積要素を備え、電圧源としての機能を有する。2次側蓄電ユニット21は、接続点mにおいて、変圧器30の2次側中性点端子に接続される。
変圧器30は、三相変圧器であり、1次側ブリッジ回路10は、三相の第1ブリッジ回路12を有する。第1ブリッジ回路12は、6つのスイッチング素子SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16と、これらのスイッチング素子にそれぞれ並列に接続されたキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16とを有する。但し、外付けのキャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16は、回路構成上等価な位置にあるスイッチング素子の寄生容量を用いて代用しても良い。
なお、図1ではスイッチング素子の記号として、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の記号を使用しているが、必ずしも回路図に記載された通りのスイッチング素子を利用しなくても良い。種々のスイッチング素子を自由に適用でき、Siを素材とした素子に限らず、SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体を素材としたSiC−MOSFETおよびGaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor)などをスイッチング素子として使用しても良い。
接続点aにおいて、スイッチング素子SW11の高圧側とスイッチング素子SW12の低圧側とが接続される。接続点bにおいて、スイッチング素子SW13の高圧側とスイッチング素子SW14の低圧側とが接続される。接続点cにおいて、スイッチング素子SW15の高圧側とスイッチング素子SW16の低圧側とが接続される。
以下、直列に接続された2つのスイッチの組をレグ、それぞれのスイッチをアームと呼称し、特に接続点を基準として高圧側のスイッチを上アーム、低圧側のスイッチを下アームと呼称する場合がある。
第1ブリッジ回路12は、接続点a,接続点bおよび接続点cにおいて、変圧器30の1次側各相端子に接続される。
2次側ブリッジ回路20は、三相の第2ブリッジ回路22を有する。第2ブリッジ回路22は、6つのスイッチング素子SW21,SW22,SW23,SW24,SW25,SW26を有する。
接続点rにおいて、スイッチング素子SW21の高圧側とスイッチング素子SW22の低圧側とが接続される。接続点sにおいて、スイッチング素子SW23の高圧側とスイッチング素子SW24の低圧側とが接続される。接続点tにおいて、スイッチング素子SW25の高圧側とスイッチング素子SW26の低圧側とが接続される。
第2ブリッジ回路22は、接続点r,接続点sおよび接続点tにおいて、変圧器30の2次側各相端子に接続される。
次に変圧器30の構成方法について説明する。図1には、変圧器30を千鳥−Y結線方式で構成した場合を示す。変圧器30は、1次側の各相電流にクラーク変換(αβ0変換)を施した時の零相電流が、変圧器のコア内部に磁束を誘起しないように構成されており、かつ1次側と2次側の間に位相差を持つ。
図2は、実施の形態1のDC/DCコンバータ100の第1変形例の主回路構成図である。図1には、変圧器30を千鳥−Y結線方式で構成した場合を示したが、図2では、変圧器30をY−Δ結線方式で構成した場合の回路図が示されている。他の部分の構成については、図2の変形例は図1のDC/DCコンバータと同様であるので説明は繰り返さない。
変圧器30の構成には、図2に示した構成以外にも他の変形例も考えられる。図3または図4のように複数のコア(トロイダルコア)を組み合わせる構成、図5のように磁気回路に対称性のあるコアを用いる構成、図6または図7に記載するように、商用周波数の三相変圧器に代表される3柱型コアを用いて実現する構成などを採用しても良い。なお、図4〜図7における接続点a,b,c,n,r,s,tは、図1または図2の接続点a,b,c,n,r,s,tにそれぞれ対応している。
コア同士を磁気的に結合させる場合は、図5のように磁気回路を対称的に構成するのが望ましいが、図6または図7のように、商用周波数の三相変圧器のような3柱型コアを用いて、零相電流によって生じる磁束がキャンセルするように構成しても良い。
特に図4に示すように、複数のコアを用いたY−Δ結線方式を採用する場合には、1次側巻線を流れる零相電流は磁界を生じうるが、通常、1次側巻線を流れる零相電流が生じる磁界は2次側巻線内に循環電流を誘起し、2次側巻線のΔ結線内を流れる循環電流が生じる磁界と1次側巻線を流れる零相電流が生じる磁界とが釣り合うことで1次側巻線を流れる零相電流が生じる鎖交磁束がキャンセルされる。
図3または図6に示すように、1次側巻線を複数に分割した千鳥−Y結線方式で変圧器を構成する場合には、1次側巻線を流れる電流同士で磁束をキャンセルすることができるので、零相電流が2次側巻線に電流を誘起せず銅損を削減できるメリットがある。また、2次側巻線に中性点ができるため、これを2次側母線電圧の中性点と電気的に接続することによって2次側巻線のコモンモード電位振動を抑制できる。
図4または図7に示すようにY−Δ結線方式で変圧器を構成する場合には、構造が単純な2巻線変圧器またはオープン結線の三相変圧器などを利用できるため、設計・製造が容易になるメリットがある。しかし、1次側巻線の零相電流に比例してΔ結線内部を流れる循環電流が生じるため、銅損が増加する他、巻線抵抗の電圧降下により偏磁を生じる原因となる可能性などのデメリットがある。なお、コア同士を磁気的に結合させ、単一のコアによって構成する場合には、Y−Δ構成を採用する場合でも1次側巻線の零相電流による2次側巻線電流の誘起が発生しないことがある。
1次側端子の零相電流が誘起する磁束を抑制するためには、コア内に発生する磁界の磁路上に釣り合う磁界を誘起するか、あるいは、開磁路とすることによって等価的に磁気抵抗を増加させ、磁束を生じないようにする方法などが考えられる。これらのいずれの方法も1次側端子の零相電流がコア内へ生じる磁界が磁束を誘起しないようにする手法の例示であり、他の同様な機能を発揮する構成を採用しても良い。
零相電流が生じる磁束をキャンセルする手法、および1次側巻線と2次側巻線間の位相をずらす手法は、商用周波数の三相変圧器などで昔から一般的に議論されている領域である。本実施の形態によれば、変圧器30、リアクトルユニット40、第1ブリッジ回路12および第2ブリッジ回路22を主たる構成要素とした回路構成によって、変圧器30が持つ電流経路の自由度を最大限活用できる。
図8は、DC/DCコンバータ100の第2変形例の主回路構成図である。図8に示した構成では、1次側回路部分に変圧器30の漏れインダクタンス成分を補助するリアクトルLa,Lb,Lcが、変圧器30と接続点a,b,cとの間にそれぞれ挿入されている。また、図示しないが、2次側回路部分に変圧器30の漏れインダクタンス成分を補助するリアクトルを変圧器30と接続点r,s,tとの間にそれぞれ挿入してもよい。また、三相変圧器30の中性点NP1に接続された各相3本の巻線間の接続を解除し、新たに生じた個別の3つの端子のそれぞれを、別個に図9のように変更を加えたリアクトルの端子n1、n2、n3と接続するように変更を加えても良い。これらのように、電気回路、磁気回路、または電気・磁気回路の組み合わせ、の上で変圧器30および周辺の補助的な素子に対して等価な変更を行なっても良い。
零相電流が生じる磁束がキャンセルされるとき、エネルギー上の制約から、変圧器30の中性点NP1に接続された端子nの電位は、変圧器30の1次側各相端子に接続された接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均となる。
実用上は変圧器30の各端子間には漏れインダクタンス成分に起因する電圧があり、また巻線の誤差などで完全に磁束がキャンセルされない場合があるため、端子nの電位が、接続点a,接続点b,接続点cの電位の平均と常に一致するとは限らない。以下では端子nの電位が接続点a,接続点b,接続点cに加わる電位の平均と一致するとして説明するが、簡単のためであり、本発明の形態はこれに限定されない。
(動作の説明)
次にDC/DCコンバータの動作について説明する。以下の説明は漏れインダクタンスのばらつきがない、理想的な状態を仮定している。
変圧器の偏磁がなく、漏れインダクタンスのばらつきもなく、スイッチング素子の個体差もなく、配線インピーダンスのばらつき等もないような理想的な状態では、第1ブリッジ回路12の各相のスイッチング素子は同一のデューティ(Duty)比で動作する。
図10は、図1における変圧器30の端子間電圧波形の例を示す波形図である。図10において、電圧Vae、Vbe、Vce、Vneは、それぞれ、端子eを基準とした接続点a,b,cおよび端子nの電位差を示す。また、電圧Van、Vbn、Vcnは、それぞれ、端子nを基準とした接続点a,b,cの電位差を示す。また電圧Vcapは、端子eを基準とした端子dの電位差を示す。
第1ブリッジ回路12の各相レグがスイッチを切り替えるタイミングは、スイッチング周期Tの1/3ずつずれており、接続点a,接続点b,接続点cに印加される電圧Vae,Vbe,Vceは、120°ずつ位相がシフトした波形となる。
第1ブリッジ回路12の上記のような動作は、多並列駆動するチョッパ回路でマルチフェーズ動作、またはキャリア位相シフト動作などと呼称され、一般に知られている。
図10では、各相の接続点の電圧Vae,Vbe,Vceの立ち上がり時刻を基準として、スイッチング周期の1/3ずつ各相の波形を位相シフトして動作させている。これは位相シフトの方法のうちの一例であり、電圧の立ち下がり時刻を基準としても、上アームオン時間の中心や下アームオン時間の中心を基準としてもよい。
三角波キャリアを用いる一般的なPWM(Pulse Width Modulation)方式では、スイッチングパターンを生成する三角波キャリアの位相を120°ずつ位相シフトすることによって同様なマルチフェーズ動作を実現できる。
ただし、変圧器の漏れインダクタンスや巻数にばらつきが生じている場合、変圧器30の各相電圧と各相電流をαβ0変換したときの座標空間において、1次側・2次側で電力を伝送する電流に三相が非対称となるような歪が生じる。このような電流の歪を補正するためには、第1ブリッジ回路12または第2ブリッジ回路22あるいはその両方において出力する電圧を調節する必要がある。この場合、1次側のキャリアを必ずしも120°ずつ位相シフトする必要はなく、補正のために位相シフト量を調節することが好ましい場合もある。
図10に示すように、第1ブリッジ回路12が変圧器30の各接続点に120°ずつ位相シフトした電圧を出力すると、変圧器30の中性点NP1には接続点a,接続点b,接続点cに加わった電圧の平均値が出力され、リアクトルL1の端子nには、振幅1/3、周波数3倍の矩形波電圧Vneが出力される。
リアクトルユニット40の一方端子fには1次側電源60が接続され、他方端子nには変圧器30の中性点NP1が接続されているため、リアクトルL1には1次側電源60の電源電圧Vinと、第1ブリッジ回路12の出力電圧の平均値、の差が印加される。
第1ブリッジ回路12の各相のデューティ比を三相すべてにおいて同じだけ増減させて調節することで、変圧器30の偏磁の原因となる各相間の不平衡電圧に関係せずにリアクトルL1に加わる電圧を制御できる。
言い換えれば、リアクトルL1を流れる電流は、第1ブリッジ回路12の各相デューティ比の平均値を調節することによって制御できる。すなわち、第1ブリッジ回路12に接続された変圧器30の1次側零相電流は、第1ブリッジ回路12の各相の出力デューティ比の平均値によって決まる。
理想的には、第1ブリッジ回路12において出力デューティ比の平均値を制御するだけで偏磁を起こさず零相電流を制御できるが、実用上何らかの理由で変圧器30に偏磁が発生する場合には、各相のデューティ比のバランスを変えることで偏磁現象を抑制できる。
第1ブリッジ回路12はマルチフェーズ動作(キャリア位相シフト動作)を行なっている。このため、変圧器30の各相電流が1次側蓄電ユニット11へ流れるとき、a相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れる期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在するか、またはa相、b相、c相のいずれか1相の電流のみが流れない期間がスイッチング1周期の間で位相が120°ずれた時刻で存在する。
そのため、制御装置50において1次側蓄電ユニット11に流れる電流を検出する際に、スイッチング1周期の間の位相を120°ずつシフトさせながら検出することによって変圧器30の各相電流のばらつきを検出できる。すなわち、1次側蓄電ユニット11に電流検出センサを設けることで変圧器30の偏磁電流を検出できる。
また、当然ながら三相変圧器の各相電流をすべて検出するほか、キルヒホッフの電流則から導かれる電流の自由度の数以上の検出箇所があれば、検出箇所、検出方法の如何によらず偏磁電流の検出は可能である。
一般的に変圧器の励磁インダクタンスが非常に大きいため、偏磁抑制に必要な応答速度は、リアクトルL1の電流制御の応答速度と比べて十分に遅い。また、1次側電源60の高圧側に接続される端子fから変圧器30の1次側接続点a、接続点b、接続点cまでの電圧にαβ0変換を施すと、偏磁電流に寄与する成分と零相電流に寄与する成分を分離して独立に考えることができる。図11は、検出した偏磁電流と零相電流を独立して入力する場合の制御ブロック図である。この制御ブロックは、偏磁電流を検出するセンサ54と、入力電流を検出するセンサ55と、指令値iα*,iβ*,i0*との差電流を演算する減算器51〜53と、PI(比例積分)制御を実行するPI制御部56〜58と、αβ0/abc変換部59と、PWM制御部61と、abc/αβ0変換部62と、電圧電流変換部66〜68とを含む。
零相電流に影響するのは各相のデューティ比の平均であり、偏磁電流に影響するのは各相デューティ比の偏差である。ここで、リアクトルL1についての電流制御では、リアクトルL1に流れる電流または変圧器30の零相電流を検出値とし、第1ブリッジ回路12の平均デューティ比を操作量としてリアクトルL1の電流が指令値i0*に追従するようにPI制御部58によってPI制御する。これに対して偏磁電流を抑制する制御では、変圧器30の偏磁電流を検出値とし、各相のデューティ比の平均値からのばらつきを操作量として偏磁電流がゼロとなるようにPI制御部56,57によってPI制御する。したがって、リアクトルL1についての電流制御と、偏磁電流を抑制する制御とは独立に考えることができる。
偏磁がない理想的な状態では、リアクトルL1を通過した電流は3等分され、変圧器30の1次側巻線に零相電流として流れる。
1次側巻線に流れる零相電流は第2ブリッジ回路22へ電力を伝送せず、重ね合わせの原理を基に零相電流のみを取り出して考えた場合、1次側ブリッジ回路10は、3並列双方向チョッパ回路のように振る舞う。この3並列双方向チョッパ回路は、並列接続した双方向チョッパ回路のリアクトルの一部を結合し、磁束をキャンセルすることで変圧器の役割を持たせ、結合のない場合と比べて磁気素子全体の体積を低減したものである。
第1ブリッジ回路12のデューティ比でリアクトルL1の電流を制御することによって、1次側電源60と1次側蓄電ユニット11との間の電力伝送量を制御できる。
(動作の説明)
実施の形態3に係る電力変換装置は、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組のオン状態を上下で瞬時に切り替え、その際に切替対象のレグに流れる電流をゼロまたはゼロに近い電流となるよう制御することで、ソフトスイッチング動作可能な領域を拡張する。
実施の形態1に係る電力変換装置には、1次側電源60と中間キャパシタ等の蓄電ユニット110との電圧比に応じて制御装置50が1次側ブリッジ回路10及び2次側ブリッジ回路20の各スイッチを異なる順序で動作させる動作モードがあり、すべての動作モードが2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組が同時にOFFとなる、OFF−OFF状態となる期間を持つ特徴がある。
また、実施の形態1に係る電力変換装置は、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組のオン状態を上下で切り替える際は、上下アームのスイッチの組の一方のスイッチがオン状態となる期間と、上下アームのスイッチの組の他方のスイッチがオン状態となる期間との間に、上下アームのスイッチの組がOFF−OFF状態となる期間を意図的に作り出し、これを利用してソフトスイッチングを行なう。
従って、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組のオン状態が上下で入れ替わる際には、一連の上下アームのスイッチの組のオン状態の上下での切替動作期間の中にOFF−OFF状態となる期間が存在している必要があった。DC/DCコンバータ100の実施の形態1に係る動作においては、2次側のレグがOFF−OFF状態となる期間が存在しているが、これに対して、DC/DCコンバータ100の実施の形態3に係る動作においては、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチの組のオン状態を上下で切り替える際には瞬時の切り替え動作をする特徴を持つ。
ここでの瞬時の切り替え動作とは、デッドタイムを除くOFF−OFF期間を持たず、一般的な双方向チョッパ回路やフルブリッジインバータ回路等のスイッチング動作と同様に、スイッチの状態の切り替えが瞬時に行なわれる様子を指している。さらに、実施の形態3の瞬時切替動作においては、切替対象の上下アームの接続点へ接続された変圧器30の各相端子から流れる電流がゼロまたはゼロに近い時点において行なうという特徴がある。これを実現すべく、制御装置50は瞬時切替の際に上下アームの接続点へ接続された変圧器30の各相端子に流れる電流がゼロまたはゼロに近くなるよう1次側ブリッジ回路10及び2次側ブリッジ回路20の各スイッチの切り替えの順序やタイミング、及び1次側ブリッジ回路10及び2次側ブリッジ回路20の母線電圧を制御することを特徴とする。
2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点に接続された三相変圧器30の各相電流がゼロになる状態は、変圧器30の各端子に流れる電流を一組にしたベクトルにクラーク変換・パーク変換等の名称で知られる座標変換を施すことで、座標平面上の点として紙面上に表現できる。
DC/DCコンバータ回路100の動作の主要な部分は変圧器30を流れる電流から零相成分を除いた各相電流を表すことで表現でき、クラーク変換・パーク変換等を適宜施すことによって得られる座標平面上へ変圧器30に流れる各相電流の軌跡を描くことでDC/DCコンバータ回路の動作の主要な部分を表現できる。DC/DCコンバータ回路100の各相電流を表した座標平面上の電流の軌跡は、1次側ブリッジ回路10又は2次側ブリッジ回路20の各スイッチがオン・オフを切り替えるタイミングで折れる折れ線状のグラフとなる。座標平面上に表した各線分が折れる点の座標平面上での位置がスイッチング時点での各相電流を表し、1次側及び2次側のソフトスイッチングの成否を決める重要な要素となる。
図50のように、変圧器30の1次側端子の各相電流を示すの向きを表す120°間隔の座標軸を表示した平面上に変圧器30の各相電流の軌跡を表示する場合、その電流の軌跡が3つの座標軸のどれかの軸上にある点においては、2次側を流れる各相電流の中で、対応する1相の上下アーム接続点へ接続された変圧器30の端子を流れる電流がゼロとなる。このことは、位相差を持つ三相変圧器30の1次側の各相端子と2次側の各相端子の関係から導かれる。
実施の形態3に係る電力変換装置では、制御装置50は三相変圧器30の各相電流を座標平面上に表示した軌跡において、各相電流を表す点が三相変圧器30の1次側端子の各相電流の向きを示す120°間隔の座標軸上またはその近傍にある場合において2次側ブリッジ回路20の上下アームの瞬時切り替えを行う。
実施の形態3において、2次側のレグを瞬時に切り替える場合には、1次側・2次側のスイッチングのタイミングや母線電圧を制御することで、変圧器電流の軌跡が軸上にあるタイミングで2次側のスイッチの上下を切り替えるように動作する必要がある。電流の軌跡の形状を決める要素としては、変圧器の漏れインダクタンス、変圧器の結合インダクタンス、1次側及び2次側のスイッチ切り替えのタイミング、1次側母線電圧と2次側母線電圧などが主として挙げられる。実施の形態3においては、1次側ブリッジ回路10の母線電圧、2次側ブリッジ回路20の母線電圧、変圧器30の各相電流を検出し、主として操作可能な1次側及び2次側のスイッチ切り替えのタイミングの調節や、1次側母線電圧又は/及び2次側母線電圧の制御によって変圧器30の各相電流を調節し、座標軸上で見た場合には変圧器30の各相電流の軌跡を制御することでゼロ電流による2次側レグの切り替えを実現する。
実施の形態1に係るスイッチング動作では、OFF−OFF状態の期間がある場合においては、電流の行き場が無いために、寄生容量やオフ抵抗を無視すれば原理的にレグ中点を流れる電流がゼロとなっており、OFF−OFF状態の期間があることによって2次側スイッチのゼロ電流による切り替えが実現できる。これに対し、実施の形態3においては2次側のスイッチの切替タイミング時点でレグ中点を流れる電流を厳密にゼロにすることは難しく、ゼロ付近のある程度電流が流れている状態でスイッチングする場合も十分に考えられ、定格動作時の最大電流から10%以下でのスイッチをソフトスイッチングとみなして動作させるなど、実用上ある程度の許容差を持たせる運用を考慮に入れるべきである。流れる電流が厳密な意味でゼロとならなくとも、制御の結果、例えば定格動作時の最大電流等とくらべて小さな電流で2次側レグの上下切り替えを行う場合には、2次側スイッチのスイッチング損失を低減する効果を見込むことができる。
実施の形態1に係る電力変換装置が説明するスイッチングパターンによる動作ができない場合は、主として1次側ブリッジ回路の下側オンDuty比の平均が1/3又は2/3の近傍である場合に発生する。例えば、実施の形態3に係る電力変換装置は、1次側母線電圧と2次側母線電圧の比を用いた以下の式(11)、(12)の不等式が成立する場合を検出し、実施の形態3に係る動作をするDC/DCコンバータ回路100として動作させることができる。
ただし、千鳥―Y巻線のとき、1次側の巻数を2次側の巻数で割った比をnとすれば、d0は、以下の式(13)で表される。
また、Y−Δ巻線のとき、1次側の巻数を2次側の巻数で割った比をnとすれば、d0は、以下の式(14)で表される。
また、D0は、以下の式(15)で表される。
実施の形態4.
実施の形態4では、2次側ブリッジ回路のOFF−OFF期間の振動を抑制するため抵抗を付け足す。
実施の形態4に係る電力変換装置は、実施の形態1又は実施の形態2に示したDC/DCコンバータ回路100又はDC/DCコンバータ101の構成に加えて、2次側ブリッジ回路20の正極線又は2次側ブリッジ回路20の負極線又は2次側ブリッジ回路20の母線電圧を分割した中性点と、2次側ブリッジ回路20の各相の上下アームの接続点とを接続する抵抗R21,R22,R23を備える(図51、図52)。これらの抵抗は、2次側ブリッジ回路20の各相の上下アームのスイッチ又はダイオードの組が上下で同時にOFF状態となる場合において、当該上下アーム接続点に生じうる電圧の振動や、当該上下アーム接続点に接続された変圧器30の端子を流れうる電流の振動や、当該上下アーム接続点に接続された変圧器30の端子を流れる電流が流れる経路から影響を受ける各配線上に発生しうる電圧の振動又は電流の振動を抑制する効果がある。
実施の形態1又は実施の形態2に係る電力変換装置において、2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードの組がOFF−OFF状態となる期間においては、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は電気回路上、変圧器30の各相端子のみが接続され、他の配線などからは電気的に切り離された状態となる。このとき2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点は、接続点への微小電流の流入や接続点からの微小電流の流出に対して電圧が容易に変動し得る状態となる。この状態は、例えば2次側ブリッジ回路20の上下アームのスイッチ又はダイオードが持つ寄生容量成分と変圧器20の漏れインダクタンス成分による共振現象を引き起こす可能性がある。このような共振現象を引き金として、2次側ブリッジ回路20の上下アームの接続点の電圧が激しく振動することによる電磁放射ノイズの問題が発生する。EMC等の関係でこの問題を許容できない場合、実施の形態1にかかるDC/DCコンバータ回路100又は実施の形態2に係るDC/DCコンバータ回路101に前記の様な抵抗を付け加えることで、電圧の振動を抑制することができる。抵抗を付け加える場合には、抵抗を追加することによる損失が発生するため、振動現象等の問題を許容できる範囲を元に抵抗値を判断し、できるだけ抵抗値を大きく取ることが望ましい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。