以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、図1,13に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2側に配置されるトップマウントタイプとされている。助手席用エアバッグ装置Mは、図1に示すように、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15の上方を覆うエアバッグカバー6と、を備えて構成されている。
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、特に断らない限り、車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。また、実施形態では、左ハンドル車の助手席に搭載される助手席用エアバッグ装置Mを例に採り、説明をする。
エアバッグカバー6は、図1,13に示すように、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6aをエアバッグ15に押されて開かせるように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6aの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6bが、下方に突出して形成されている。
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、図1に示すように、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6bを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを取付手段として、エアバッグ15におけるガス流入口23の周縁、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。
エアバッグ15は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16と、バッグ本体16の外表面側に配置されるスリップ材35と、を備えて構成されている。
バッグ本体16は、図13に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な袋状とされるもので、膨張完了時の形状を、図2,3に示すように、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状として、構成されている。詳細には、バッグ本体16は、膨張完了時に乗員MP側となる後端側において略鉛直方向に沿って配置される乗員側壁部28と、乗員側壁部28の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状(実施形態の場合、略円錐形状)の周壁部17と、を備える構成とされている。周壁部17は、バッグ本体16の膨張完了時において、上下両側で左右方向に略沿って配置される上側壁18,下側壁19と、左右両側で前後方向に略沿って配置される左側壁20,右側壁21と、を備える構成とされている。膨張完了時のバッグ本体16の前端16a(周壁部17の前端)側となる下側壁19の前端近傍における左右方向の中央となる位置には、バッグ本体16の内部に膨張用ガスを流入させるように円形に開口されて、周縁24を収納部位としてのケース12の底壁部12aに取り付けられるガス流入口23が、形成されている。ガス流入口23の周縁24には、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ガス流入口23の周縁24をケース12の底壁部12aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔25が、形成されている。また、バッグ本体16において、左側壁20と右側壁21との領域には、余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール26が、形成されている。
乗員側壁部28は、バッグ本体16の膨張完了時に、助手席に着座した乗員MPと対向するように乗員MP側に配置されるもので、実施形態の場合、膨張完了時に、左右方向の中央を上下の略全域にわたって前方側に凹ませるように、凹凸を有して構成されている。すなわち、乗員側壁部28は、バッグ本体16の膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部29と、凹部29の左右両側で相対的に後方へ突出するように形成される突出部30L,30Rと、を、上下方向に沿って連続的に配設させるようにして、構成されている(図3参照)。すなわち、実施形態のバッグ本体16の乗員側壁部28には、バッグ本体16の膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部29と、凹部29の左右両側に配置される突出部30L,30Rと、が、上下方向に沿って連続的に配設されている(図3参照)。具体的には、実施形態の場合、左右の突出部30L,30Rの隆起した状態と凹部29の凹んだ状態とは、乗員側壁部28の上下の略全域にわたって、略同一として、周壁部17における上側壁18,下側壁19の領域内において、前方にかけて凹凸を収束させるような形状とされている。そして、実施形態のバッグ本体16では、凹部29における凹みの先端は、乗員側壁部28を構成する後述する内左パネル50L,内右パネル50Rの内周縁50b,50b相互を縫着(結合)させて形成される縫合部位から、構成され、各突出部30L,30Rにおける突出頂部は、後述する外左パネル43L,外右パネル43Rにおけるメインパネル44L,44Rの外周縁44a,44aと、内左パネル50L,内右パネル50Rの外周縁50a,50aと、をそれぞれ縫着させて形成される縫合部位から、構成されている。
また、実施形態のバッグ本体16は、図3に示すように、内部に整流布32を配置させている。整流布32は、ガス流入口23の上方を覆うとともに、前後方向の両端側を開口させた略筒状とされるもので、ガス流入口23から流入した膨張用ガスGを、前後両側に整流する構成とされている。すなわち、実施形態のバッグ本体16では、ガス流入口23から流入した膨張用ガスGは、整流布32の前後の開口32a,32bから前後両側に向かうように整流されて、バッグ本体16内に流入することとなる。整流布32は、実施形態の場合、図4に示すような整流布素材52から、構成されている。
スリップ材35は、バッグ本体16の外表面側に配置されて、バッグ本体16の膨張初期に、接触する乗員(近接小柄乗員NP1,NP2)に対する押圧力を抑制可能な可撓性を有したシート体から構成されている。実施形態において、近接小柄乗員NP1は、詳細には後述するが、座席に着座した小柄乗員であり、近接小柄乗員NP2は、座席とインパネ1との間に起立している小柄乗員である。スリップ材35は、先端37を自由端として、元部36をバッグ本体に結合されるもので、実施形態の場合、外形形状を略四角形状として、元部36となる一辺を、略全域にわたってバッグ本体16に結合(実施形態の場合、縫合糸を用いて縫着)されている。スリップ材35は、バッグ本体16における左右方向の片側に偏った位置に配置されるもので、実施形態の場合、図2,3に示すように、膨張完了時のバッグ本体16において、車幅方向の中央側となる周壁部17の左側壁20側に、配置されている。このスリップ材35は、実施形態では、略正方形状とされている。また、スリップ材35は、幅寸法及び長さ寸法(実施形態の場合、正方形状であることから略同一の寸法)を、バッグ本体16の膨張初期において、乗員としての後述する近接小柄乗員NP1,NP2のバッグ本体16との接触時に、バッグ本体16と近接小柄乗員NP1,NP2の頭部NHとの間に介在されて、近接小柄乗員NP1,NP2の頭部NHを略覆い可能な大きさに設定されている。具体的には、スリップ材35は、300mm×300mm〜400mm×400mm程度の大きさに設定される正方形状とされて、図13に示すごとく通常着座位置に着座している乗員MPには、接触しない構成とされている。このスリップ材35は、正方形状に限られるものではなく、一辺を250〜400mm程度に設定される長方形状として、一辺を、バッグ本体に結合させる構成としてもよい。スリップ材を長方形状とする場合、バッグ本体を覆った状態の維持を考慮すれば、長辺側をバッグ本体に結合させる構成とすることが、短辺側をバッグ本体に結合させる構成とする場合と比較して、バッグ本体に対して大きくめくれがたくなって、望ましい。
また、このスリップ材35は、後述するごとく、バッグ本体16の膨張初期において、左方へ旋回して、かつ、この旋回方向側の面(実施形態の場合、バッグ本体16の膨張初期においてバッグ本体16側ではない表面35a側となる)を、近接小柄乗員NP1,NP2との接触面とするように、元部36をバッグ本体16に結合されている。そして、スリップ材35は、近接小柄乗員NP1,NP2と接触される接触面の裏面35b側を、表面35a側での近接小柄乗員NP1,NP2との接触時に、バッグ本体16をガイドするガイド面として、バッグ本体16を、近接小柄乗員NP1,NP2に対して裏面35b側ですり抜けさせて、膨張させることとなる。このスリップ材35は、バッグ本体16の展開膨張時に、元部36をバッグ本体16に結合させている結合部位38を旋回軸として、左方へ旋回されるものであり、実施形態では、スリップ材35は、この結合部位38を、バッグ本体16の膨張初期において、近接小柄乗員と非接触状態においても、上下方向に略沿って配置可能な位置に配置させるように、車両搭載状態のバッグ本体16に結合されている(図14参照)。また、スリップ材35の元部36を結合させる結合部位38は、後述するごとく、バッグ本体16の折り畳み時における予備折りバッグ58において、周壁部17を折り畳んで(実施形態の場合、山折りして)形成される折目MC1の位置で、この折目MC1に沿うように、配設される構成である(図5,6,8参照)。
実施形態では、スリップ材35は、バッグ本体16を単体で膨張させた状態において、図2に示すように、元部36をバッグ本体16に結合させる結合部位38を、左側壁20の上下の中央より上方となる位置において、左側壁20の上縁に略沿わせるように、後上がりに傾斜させて配置させるとともに、この結合部位38を、バッグ本体16の前端16a近傍から、ベントホール26の直上となる位置まで配置させる構成とされている。すなわち、スリップ材35を結合させる結合部位38は、左側壁20において、乗員側壁部28から離れた前側半分程度の領域に、配置されている。また、スリップ材35は、元部36の端縁35cを下側に位置させるようにしてバッグ本体16に結合部位38で結合されて、バッグ本体16とともに折り畳まれて収納される折畳収納時には、先端37を右方に向けるように、左側壁20の上側の部位から上側壁18にかけてを覆う構成であるが、バッグ本体16の膨張完了状態においては、結合部位38の部位で反転されて、先端37をバッグ本体16の左方で結合部位38よりも下方に位置させるように、裏面35b側を露出させてめくられたような状態で、配置されることとなる(図2,13,15のB参照)。
バッグ本体16は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、図4に示すように、主に周壁部17側を構成する周壁パネル部42と、主に乗員側壁部28側を構成する乗員側パネル部49と、を備えて構成されている。周壁パネル部42は、2枚の外左パネル43L,外右パネル43Rから構成され、乗員側パネル部49は、左右一対の内左パネル50L,内右パネル50Rから構成されている。
周壁パネル部42を構成する外左パネル43L及び外右パネル43Rは、周壁部17を左右で2分割するように構成されるもので、実施形態の場合、図4に示すように、左右対称形とされている。外左パネル43Lは、図9,10に示すように、左側壁20を構成するメインパネル44Lと、メインパネル44Lの下縁側における前部側に位置してガス流入口23の周縁24を構成する流入口構成部45Lと、メインパネル44Lの下縁側における後部側に位置して下側壁19の左側の部位を構成する下側部位46Lと、メインパネル44Rの上縁側に位置して上側壁18の左側の部位を構成する上側部位47Lと、を備える構成とされている。メインパネル44Lは、外形形状を略扇形状として、実施形態の場合、バッグ本体16の周壁部17における左側壁20の全域と、乗員側壁部28における突出部30Lの突出頂部から左方の領域と、を構成する部位である。流入口構成部45Lは、下側壁19においてガス流入口23の周縁24となる前側の領域を構成するもので、外右パネル43Rに形成される流入口構成部45Rと重なるように、メインパネル44Lから略半楕円形状に突出して形成されている。下側部位46Lは、流入口構成部45Lの後側において、先端側(後縁46c側)をメインパネル44Lから分離させて略帯状とするように、構成されるもので、実施形態の場合、バッグ本体16の周壁部17における下側壁19の左側の領域を構成している(図3参照)。上側部位47Lは、先端側(後縁47d側)をメインパネル44Lから分離させて略帯状とするように、構成されるもので、実施形態の場合、バッグ本体16の周壁部17における上側壁18の左側の領域を構成している(図3参照)。上側部位47Lは、実施形態の場合、下側部位46Lと略直交するように、形成されている。外右パネル43Rは、外左パネル43Lと左右対称形として構成されていることから、詳細な説明を省略する。
内左パネル50L及び内右パネル50Rは、乗員側壁部28における各突出部30L,30Rの突出頂部間の領域を、構成している。詳細には、内左パネル50L及び内右パネル50Rは、周壁部17における上側壁18の後側の部位から、乗員側壁部28における各突出部30L,30Rの突出頂部間を経て、周壁部17の下側壁19の後側の部位にかけての領域を構成するもので、この領域を、凹部29の底部(前端)となる位置で、左右に2分割し、それぞれ、凹部29の前端から左側の突出部30Lの突出頂部までの領域と、凹部29の前端から右側の突出部30Rの突出頂部までの領域と、を構成するように、略C字形状に湾曲した左右一対とされている。また、内左パネル50L,内右パネル50Rは、平らに展開した状態において、外周縁50aを、それぞれ、外左パネル43L,外右パネル43Rにおけるメインパネル44L,44Rの外周縁44aの湾曲形状に略沿わせるように、構成されている。
実施形態のバッグ本体16内には、詳細な図示を省略するが、ガス流入口23の周縁24を補強する補強布が、所定数配置されている。実施形態では、バッグ本体16を構成する周壁パネル部42,乗員側パネル部49、整流布32を構成する整流布素材52、及び、スリップ材35は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。実施形態では、スリップ材35をバッグ本体16に対して滑りやすくするように、周壁パネル部42,乗員側パネル部49,整流布素材52,スリップ材35は、全てノンコート布から、形成されている。
次に、エアバッグ15の製造について説明をする。スリップ材35は、結合部位38を形成するように、外左パネル43Lのメインパネル44Lに、縫合糸を用いて縫着させておく。また、内左パネル50L,内右パネル50Rも、平らに展開した状態で、外周縁50a,50a相互を一致させるように重ね、内周縁50b,50b相互を、縫合糸を用いて縫着させておく。
まず、外左パネル43Lと外右パネル43Rとを、平らに展開した状態で周縁相互を一致させるように重ね、下側部位46L,46Rの内縁46a,46a相互を縫合糸を用いて縫着させる。そして、流入口構成部45L,45R相互を重ねるように、外左パネル43Lと外右パネル43Rとを開く。その後、流入口構成部45L,45R上に、整流布素材52を重ね、ガス流入口23の周縁24となる部位で、縫合糸を用いて縫着させ、その後、孔開け加工により、ガス流入口23と取付孔25とを形成する。次いで、外左パネル43Lと外右パネル43Rとを周縁相互を一致させるように重ね、上側部位47L,47Rの内縁47a,47a相互を縫合糸を用いて縫着させる。その後、外左パネル43L,外右パネル43Rの上側部位47L,47Rの後縁47d,47dを、内左パネル50L,内右パネル50Rの前上縁50c,50cに、縫合糸を用いて縫着させる。同様にして、外左パネル43L,外右パネル43Rにおける下側部位46L,46Rの後縁46c,46cを、内左パネル50L,内右パネル50Rの前下縁50d,50dに縫合糸を用いて縫着させる。次いで、外左パネル43Lにおけるメインパネル44Lの外周縁44aの前上端部位44aaと上側部位47Lの外縁47b、メインパネル44Lの外周縁44aにおける前下端部位44abと下側部位46Lの外縁46b、そして、外周縁44aと内左パネル50Lの外周縁50a、を、それぞれ結合させるように、縫合糸を用いて縫着させる。同様に、外右パネル43Rにおけるメインパネル44Rの外周縁44aの前上端部位44aaと上側部位47Rの外縁47b、メインパネル44Rの外周縁44aにおける前下端部位44abと下側部位46Rの外縁46、そして、外周縁44aと内右パネル50Rの外周縁50a、を、それぞれ結合させるように、縫合糸を用いて縫着させる。その後、整流布素材52の対向する両縁を縫合糸を用いて縫着させて整流布32を形成し、非縫合のエリアを利用して、縁部の縫い代が外部に露出しないようにバッグ本体16を反転させる。その後、外左パネル43Lにおける流入口構成部45Lの前縁45aと上側部位47Lの前縁47c、外右パネル43Rにおける流入口構成部45Rの前縁45aと上側部位47Rの前縁47c、を、それぞれ、相互に、縫合糸を用いて縫着させれば、エアバッグ15を製造することができる。
そして、エアバッグ15の製造後、各取付孔25からボルト9aを突出させるようにして、内部にリテーナ9を配設させた状態で、エアバッグ15を折り畳む。具体的には、エアバッグ15は、予備折りバッグ58を形成する予備折り工程と、予備折りバッグ58を左右方向側の幅寸法を縮めるように折り畳んで左右縮小折りバッグ68を形成する左右縮小折り工程と、左右縮小折りバッグ68を前後方向側の幅寸法を縮めるように折り畳んで折り完了体73を形成する前後縮小折り工程と、を経て、折り畳まれる。
予備折り工程においては、周壁部17の部位に折目を付けるようにして乗員側壁部28をガス流入口23に接近させるように、バッグ本体16を略平らに展開させつつ、ガス流入口23を中心とした略左右対称形に折り畳んで、予備折りバッグ58を形成している。具体的には、予備折りバッグ58は、図5〜9に示すように、各突出部30L,30Rの突出頂部を左右に開くようにして、乗員側壁部28を平らに展開するように、周壁部17の領域を折り畳んで、形成されている。また、実施形態の場合、予備折りバッグ58において、乗員側壁部28は、図5に示すように、ガス流入口23の後方側に配置される構成とされ、ガス流入口23の直上となる位置には、周壁部17における上側壁18の前端側の部位が、配置されることとなる。すなわち、実施形態の予備折りバッグ58では、上側壁18の前端側部位18aが、ガス流入口23と重なって配置される構成である(図5参照)。
詳細に説明すれば、予備折りバッグ58は、周壁部17の領域に前後方向あるいは左右方向に沿った山折りや谷折りの複数の折目MC1,MC2,MC3,MC4,VC1,VC2,VC3,VC4,VC5,VC6を付けて、周壁部17を折り畳むことにより、平らに展開された乗員側壁部28を、ガス流入口23に接近させるように、折り畳まれている。具体的には、予備折りバッグ58は、周壁部17の部位に、ガス流入口23の左右両側となる前側において後方にかけて拡開するように形成される2つの山折りの折目MC1,MC2と、これらの折目MC1,MC2から連なるように後側で後方にかけて収束されるように形成される2つの山折りの折目MC3,MC4と、を形成し、後縁側の部位を谷折りの折目VC6を形成して折り込むことにより、外形形状を図5,6に示すような略五角形状として構成されている。また、この予備折りバッグ58において、乗員側壁部28は、突出部30L,30Rの左右両側で谷折りの折目VC1,VC2を付けて、突出部30L,30Rを左右に開いて平らに折り畳まれる。また、周壁部17におけるガス流入口23の左右両側の部位は、前後方向の全域にわたって形成される谷折りの折目VC3,VC4を付けて折り畳まれ、周壁部17における乗員側壁部28の上縁近傍となる部位は、左右方向に沿って形成される谷折りの折目VC5を付けて、折り畳まれている。そして、実施形態のバッグ本体16では、この予備折りバッグ58において、ガス流入口23の左側に配置される山折りの折目MC1の部位に、スリップ材35の元部36を結合させている結合部位38が、配設される構成であり、結合部位38は、折目MC1の部位で、折目MC1に沿うように、形成されている。換言すれば、予備折りバッグ58は、この結合部位38に沿うように折目MC1をつけるようにして、周壁部17を折り畳むことにより、形成されている。
次に、予備折りバッグ58を、左右縮小折りする。左右縮小折り工程においては、予備折りバッグ58における左縁58a側と右縁58b側との部位を、それぞれ、ガス流入口23側に接近させるように折って、左右方向の幅寸法をケース12内に収納可能に縮められた左右縮小折りバッグ68を形成する(図11のB参照)。具体的には、実施形態では、まず、図10のA,Bに示すように、予備折りバッグ58において、スリップ材35側から離れた側となる離隔側部位としての右側部位60を、右縁58b側から乗員側壁部28側に向かって巻くようにロール折りし、ロール折り部位(離隔側折畳部位)62を、形成する。次いで、図11のB及び図11のAに示すように、スリップ材35側となる近接側部位としての左側部位59を、ロール折り部位62上に重ねるようにして、折り返し部位61を、形成する。この左側部位59の折り返し時に、左側部位59側に配置されるスリップ材35も、反転されて、折り返し部位61の前方において、ガス流入口23の上方の領域(上側壁18の前端側部位18a)を覆うように、配置されることとなる。このとき、実施形態では、スリップ材35は、元部36近傍の一部を折り返し部位61と乗員側壁部28との間に折り込まれるようにして、折込部位64を形成しつつ、先端側の一部を、ロール折り部位62より右方に突出させるようにして、上側壁18の前端側部位18aを覆うように、配置される。この折込部位64は、スリップ材35の先端37側の部位のロール折り部位62から右方への突出量(後述する折り返し量)を調整するために形成されている。そして、図11のBに示すように、ロール折り部位62から突出しているスリップ材35の先端37側の部位を、バッグ本体16(左右縮小折りバッグ68)における元部36を結合させた部位から離れた側(右側)の裏面側(ガス流入口23側)に、配設させるように、折り返せば、左右縮小折りバッグ68を形成することができる。このスリップ材35の先端37側を折り返して形成される折返部位65は、ガス流入口23の周縁24におけるリテーナ9の配置部位に進入しないように、構成されている(図11のB参照)。
次いで、左右縮小折りバッグ68を、前後縮小折りする。前後縮小折り工程においては、まず、図12のA,Bに示すように、左右縮小折りバッグ68において、ガス流入口23の後方となる後側部位69を、後端69a側から周壁部17側に向かって巻くようにロール折りして、ロール折り部位71を形成し、このロール折り部位71を、反転させるようにして、ガス流入口23上に載せ、図12のCに示すように、ガス流入口23の前方となる前側部位70を、ロール折り部位71の前方から上方を覆うように折り返して、前後方向の幅寸法をケース12内に収納可能に縮めれば、図12のCに示すように、折り完了体73を形成することができる。
その後、折り完了体73の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。このとき、スリップ材35の先端37側の折返部位65は、折り返し状態を維持された状態で、ラッピングシートにくるまれることとなる。次いで、折り完了体73をケース12の底壁部12aに載置させる。各インフレーター8の本体部8aを、底壁部12aの下方からケース12内に挿入させるとともに、底壁部12aから下方に突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、ケース12に折り畳んだエアバッグ15(折り完了体73)とインフレーター8とを取り付けることができる。
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6bに、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しないブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8のガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6aを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー6の扉部6a,6aを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方に突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線及び図13に示すように、膨張を完了させることとなる。
この実施形態の助手席用エアバッグ装置Mにおけるエアバッグ15の展開膨張のモードを詳細に説明すれば、折り畳まれたバッグ本体16が内部に膨張用ガスを流入させて膨張する際に、まず、ガス流入口23の直上に配置される上側壁18の前端側部位18aが、大きく上方に押し上げれられることとなり、この前端側部位18aを上方に押し上げるような初期膨張によって、エアバッグカバー6の扉部6a,6aが押し開かれることとなる。その後、扉部6a,6aが開いて形成された開口から、バッグ本体16が、後上方に向かって突出しつつ、前後縮小折りと左右縮小折りとを順次解消するように展開膨張することとなる。そして、この膨張初期においては、バッグ本体16は、前端側部位18aを後上方に向かって押し上げられるようにして、膨張することから、前端側部位18aを覆っているスリップ材35も、前端側部位18aを覆った状態を維持されつつ、後上方に向かって押し上げられることとなる(図14のA参照)。このとき、実施形態では、バッグ本体16は、左右縮小折りにおいて、スリップ材35側となる左側部位59を、スリップ材35から離れた側となる右側部位60をロール折りして形成されるロール折り部位62の上に重ねるように、折り畳まれていることから、膨張初期に、スリップ材35側となる左側部位59が、右側部位60(ロール折り部位62)を押えるような態様となり、膨張初期に、まず、この左側部位59が膨張し、次いで、ロールを解くにように展開しつつ右側部位60が膨張することとなって、バッグ本体16は、一旦、右方に向かいつつ後上方に突出するように膨張することとなる(図14のB参照)。そして、このようにバッグ本体16が膨張する際に、スリップ材35は、図14のBの二点鎖線に示すように、元部36をバッグ本体16に結合させている結合部位38を旋回軸として、左方に向かって旋回されることとなる。そして、実施形態のエアバッグ15では、このような折り畳みにより、バッグ本体16は、まず、スリップ材35から離れた右方側に向かって突出するように膨張することとなり、その後、近接乗員等に接触しなければ、図15のA,Bに示すように、左右にバランスよく膨張しつつ、後方に向かって突出するように膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、膨張用ガスを内部に流入させて膨張するバッグ本体16が、膨張初期の状態において乗員としての近接小柄乗員NP1,NP2と接触する際に、近接小柄乗員NP1,NP2は、バッグ本体16の外表面側に配置されるスリップ材35と接触することとなるが、このスリップ材35は、バッグ本体16における左右方向の片側(実施形態の場合、左側)に偏った位置に、元部36を結合させており、近接小柄乗員NP1,NP2との接触面(表面35a)側を、左右方向の外方(実施形態の場合、左方)に向けるように旋回させることができる。そのため、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、バッグ本体16の膨張初期における近接小柄乗員NP1,NP2との接触時に、スリップ材35が、近接小柄乗員NP1,NP2を接触させた状態で、その接触面(表面35a)の裏面35b側でバッグ本体16を左方側あるいは右方側(実施形態の場合、右方側)に向かって滑らせるような態様となり、バッグ本体16は、近接小柄乗員NP1,NP2をすり抜けるようにして、斜め右後方に向かうように、突出の向きを偏向されつつ、膨張することとなる。その結果、バッグ本体16が、近接小柄乗員NP1,NP2を後方に押圧することを極力抑制することができる。
具体的には、図16に示すように、近接小柄乗員NP1が、助手席に着座した状態で頭部NHをインパネ1に接触させるように、インパネ1に接近している状態、詳細には、近接小柄乗員NP1の頭部NHが、インパネ1におけるエアバッグカバー6の扉部6aの後側に近接した位置に、接近している状態では、膨張するバッグ本体16が、エアバッグカバー6の扉部6a,6aが開いて形成された開口から後上方に向かって突出する際に、まず、バッグ本体16における上側壁18の前端側部位18aと、前端側部位18aを覆っているスリップ材35と、が後上方に向かって押し上げられるように膨張することから、扉部6aの後側に近接している近接小柄乗員NP1の頭部NHにスリップ材35の表面35aが接触することとなる。このとき、スリップ材35は、旋回軸となる結合部位38を、前側を上方に位置させるように前後方向に対して略傾斜させるように、前後方向(上下方向)に略沿って配置されることとなる。そして、このスリップ材35が、表面35a側において近接小柄乗員NP1の頭部NHを接触させた状態で、この表面35a(接触面)の裏面35b側をバッグ本体16をガイドするガイド面として、膨張するバッグ本体16を、近接小柄乗員NP1をすり抜けさせて膨張させるように、右方に向かって滑らせることとなり、バッグ本体16は、図17〜20に示すように、インパネ1の上にうつ伏せるように頭部NHをインパネ1に接近させている近接小柄乗員NP1をすり抜けるように、右後方側に向かって大きく膨張することとなる。このとき、スリップ材35は、表面35aによる近接小柄乗員NP1との接触状態を維持されつつ、先端37を左方にむけるように旋回するようにして、裏面35b側でバッグ本体16を右方に滑らせることとなり、近接小柄乗員NP1は、スリップ材35との接触状態を維持されることから、膨張するバッグ本体16によって後方に押圧されることを、極力抑制される。
また、図21に示すように、近接小柄乗員NP2が、頭部NHをウィンドシールド4に近接させつつ腹部をインパネ1に接触させるように、インパネ1に接近して立っている状態においても、バッグ本体16の膨張初期に、近接小柄乗員NP2の頭部NHにスリップ材35の表面35aが接触することとなる。このとき、近接小柄乗員NP2の頭部NHは、前述の近接小柄乗員NP1と比較してインパネ1から離れた上方に位置していることから、スリップ材35は、旋回軸となる結合部位38を、近接小柄乗員NP1との接触時よりも、前後方向に対して大きく傾斜させるように、前後方向(上下方向)に略沿って配置されることとなる。そして、このスリップ材35が、近接小柄乗員NP2の頭部NHを接触させた状態で、バッグ本体16を、右方に向かって滑らせるように膨張することとなり、バッグ本体16は、図22〜25に示すように、インパネ1の後方に立ち塞がっている近接小柄乗員NP2をすり抜けるように、右方に向かって大きく膨張することとなる。このとき、スリップ材35は、表面35a側による近接小柄乗員NP2との接触状態を維持されつつ、裏面35b側によってバッグ本体16をガイドして、バッグ本体16を右方に滑らせることとなり、近接小柄乗員NP2は、スリップ材35との接触状態を維持されることから、膨張するバッグ本体16によって後方に押圧されることを、極力抑制される。
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、展開膨張時に乗員(近接小柄乗員NP1,NP2)と接触することとなっても、バッグ本体16によって乗員を後方へ押圧することを的確に抑制することができる。
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、バッグ本体16の周壁部17において、膨張完了時に左右方向側に配置される側壁部(実施形態の場合、左側壁20)の位置に、元部36を結合させて、配設される構成である。すなわち、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35の元部36を、乗員側壁部28から離れた位置に配置させることができることから、スリップ材35の元部36から先端37までの長さ寸法を大きく設定しても(旋回時の旋回半径を大きく設定しても)、エアバッグ15の膨張完了時には、スリップ材35は、乗員側壁部28から外れた領域に配置されることとなる。そのため、元部36から先端37までの長さ寸法を大きく設定したスリップ材35によって、膨張初期に接近する近接小柄乗員NP1,NP2を広く覆うことが可能となり、また、このスリップ材35は、乗員側壁部28を覆わないことから、図13に示すように、膨張を完了させたバッグ本体16による通常着座位置に着座している乗員MPの保護時には、乗員MPを、膨張を完了させたバッグ本体16の乗員側壁部28によって、的確に保護することができる。実施形態のバッグ本体16では、乗員側壁部28が、膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部29と、凹部29の左右両側で相対的に後方へ突出する突出部30L,30Rと、を、上下方向に沿って連続的に配設させる構成であることから、膨張完了後のバッグ本体16の乗員側壁部28に、助手席に着座している通常着座位置の乗員MPが当接する際に、まず、乗員MPの左右の肩部MSが、後方へ突出している突出部30L,30Rと当たって拘束され、肩部MSを突出部30L,30Rにより拘束された状態で頭部MHを凹部29内に進入させるようにして、頭部MHが凹部29の周囲の部位により、保護されることとなる(図13参照)。なお、このような点を考慮しなければ、スリップ材を、バッグ本体において乗員側壁部の領域に、結合させる構成としてもよい。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、バッグ本体16の膨張初期における左右方向側への旋回軸としての元部36側(結合部位38)を、上下方向に略沿って配置可能な位置に、結合させて、配設される構成である。そのため、バッグ本体16の膨張初期における近接小柄乗員NP1,NP2との接触時に、スリップ材35を、円滑に左右方向側で旋回させることができて、近接小柄乗員NP1,NP2の右方側に接触して覆うことができることから、スリップ材35の裏面35b側で、円滑にバッグ本体16を斜め右後方に向かうように偏向させることができる。特に、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35を略四角形状(実施形態の場合、略正方形状)として、一辺を全長にわたってバッグ本体16に結合させて、元部36側のバッグ本体16への結合部位38を、旋回軸としている構成であることから、スリップ材35を、旋回軸に沿った方向側の全域にわたって、旋回軸を中心として安定して旋回させることができる。すなわち、実施形態では、図16,21に示すように、バッグ本体16の膨張初期において、スリップ材35の旋回軸(結合部位38)が上下に長く延びていることから、実施形態のごとく、インパネ1の上面2に近接している近接小柄乗員NP1の頭部NHも、インパネ1から上方に離れている近接小柄乗員NP2の頭部NHも、ともにスリップ材35によって的確に覆うことができ、保護する乗員の頭部の位置が上下にばらついていても、的確に乗員の頭部を覆うことができる。なお、このような点を考慮しなければ、スリップ材として、旋回軸をバッグ本体の膨張初期に、上下方向に略沿って配置させるように構成しなくともよく、例えば、スリップ材を、線状ではなく、点状の結合部位によって、バッグ本体側に結合させる構成としてもよい。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、周壁部17において、膨張完了時に車幅方向の中央側となる左側壁20に、元部36を結合させていることから、スリップ材35を介して、膨張するバッグ本体16により近接小柄乗員NP1,NP2が押圧されることとなっても、近接小柄乗員NP1,NP2は、スリップ材35により、車両の車幅方向の中央側後方に移動することとなり、移動時にドアトリム等の車体側の部材と接触することを抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、スリップ材を、周壁部における膨張完了時に車幅方向の端側(実施形態のバッグ本体では、右側壁)に、元部を結合させる構成としてもよい。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、予備折りバッグ58を左右縮小折りして形成される左右縮小折りバッグ68において、バッグ本体16におけるガス流入口23と重なった部位(実施形態の場合、上側壁18の前端側部位18a)の表面を覆うように、配置される構成である。すなわち、実施形態では、バッグ本体16の膨張初期において、インフレーター8からの膨張用ガスを受けて押し上げられる上側壁18の前端側部位18aが、スリップ材35に覆われる構成であることから、膨張用ガスの流入時に、直ちに、ガス流入口23と重なったバッグ本体16の表面側でスリップ材35が押し上げられ、スリップ材35は、自由端の先端37側を旋回させる挙動を確保し易くなり、膨張初期のバッグ本体16が近接小柄乗員NP1,NP2と接触しようとする際に、スリップ材35を、的確に、自由端の先端37側を旋回させつつ、バッグ本体16と近接小柄乗員NP1,NP2との間に介在させることができる。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、左右縮小折りバッグ68において、上側壁18の前端側部位18aの表面を覆った状態の先端37側を、折り返して、左右縮小折りバッグ68における元部36を結合させた部位から離れた側(右側)の裏面側に、配設させる構成である。そのため、スリップ材35によるバッグ本体16におけるガス流入口23と重なった部位(前端側部位18a)を覆った状態を、確実に維持させた状態で、折り完了体73を収納部位としてのケース12に収納させることができ、また、バッグ本体16の膨張初期においても、スリップ材35が捲れ上がることを抑制できて、換言すれば、スリップ材35が、元部36から自由端となる先端37までを伸ばした状態を確保できることから、スリップ材35を、先端37側を伸ばした状態で旋回させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、スリップ材の先端側を、左右縮小折りバッグの裏面側に配置させるように折り返さなくともよい。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、スリップ材35が、予備折りバッグ58における周壁部17を折り畳んで形成される折目MC1の位置で、折目MC1に沿わせるようにして、元部36を結合させて、配設される構成である。そのため、エアバッグ15の折り畳み作業時に、スリップ材35の元部36を結合させている結合部位38が大きく影響し難く、エアバッグ15の折り畳み作業性が良好となる。なお、このような点を考慮しなければ、スリップ材を、予備折りバッグの折目と交差するようにして、元部をバッグ本体に結合させる構成としてもよい。
さらにまた、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、左右縮小折りバッグ68が、予備折りバッグ58においてスリップ材35側となる左側部位59(近接側部位)を、スリップ材35側から離れた側となる右側部位60(離隔側部位)を折り畳んだロール折り部位62(離隔側折畳部位)上に重ねるようにして、形成されている。そのため、バッグ本体16の膨張初期において、スリップ材35側となる左側部位59が、スリップ材35側から離れた側となる右側部位60を押えるような態様となり、膨張初期に、まず、この左側部位59が膨張し、次いで、右側部位60が膨張することから、バッグ本体16の膨張初期における近接小柄乗員NP1,NP2との接触時に、膨張するバッグ本体16を、右側部位60側となる右方に大きく突出させるように膨張させることができ、換言すれば、膨張するバッグ本体16を、スリップ材35から離れた右方側に向かうように、一層円滑に偏向させることができる。特に、実施形態では、右側部位60は、右縁58b側を乗員側壁部28側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれていることから、蛇腹折りにより折り畳むことと比較して、展開速度が遅く、左側部位59より一層遅れて膨張させることができる。そのため、膨張するバッグ本体16を、右方に向かって突出するように、一層的確に偏向させることができる。このような点を考慮しなければ、右側部位を蛇腹折りにより折り畳んでもよい。また、上記点を考慮しなければ、図26に示すように、予備折りバッグ58における左側部位59と右側部位60とを、ともに、乗員側壁部側に巻くようなロール折りとして、2つのロール折り部位76,77を有した左右対称形の左右縮小折りバッグ75を形成するように折り畳む構成としてもよい。このように折り畳む場合、スリップ材35は、元部側の部位を、ロール折り部位76とともにロール折りされることとなるが、先端側の部位により、離隔側部位である右側部位60を折り畳んで形成されるロール折り部位77を覆うように配設させることとなる。
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mによる乗員保護方法においては、バッグ本体16に元部36を結合されるスリップ材35が、先端37を自由端として構成されるとともに、バッグ本体16の膨張初期において、近接小柄乗員NP1,NP2と接触する際に、バッグ本体16に対して左右方向側(実施形態の場合、左方)で旋回可能とされるとともに、近接小柄乗員NP1,NP2を接触させた接触面(表面35a)の裏面35b側を、バッグ本体16をガイドするガイド面として、バッグ本体16を、近接小柄乗員NP1,NP2に対してガイド面側ですり抜けさせて、膨張させることから、近接小柄乗員NP1,NP2を、バッグ本体16により押圧することを抑制して、的確に保護することができる。
なお、実施形態では、左ハンドル車の助手席の前方に搭載させたトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置を例にとり説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、右ハンドル車の助手席の前方に搭載させてもよく、また、ミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置にも適用可能である。