(A)第1の実施形態
以下、本発明による電力制御装置及び画像形成装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図2は、この実施形態のカラー印刷可能であり、高圧電源装置263を備える画像形成装置101の概略断面図である。
画像形成装置101は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれのトナー色のトナー剤を用いてでカラー印刷可能であるものとする。
画像形成装置101は、それぞれのトナー色に対応する現像器102K、102Y、102M、102Cを有している。
現像器102K、102Y、102M、102Cはそれぞれ、感光体ドラム132K、132Y、132M、132Cに接した帯電ローラ136K、136Y、136M、136Cによって一様に帯電される。帯電された感光体ドラム132K、132Y、132M、132Cは、LEDヘッド103K、103Y、103M、103Cの発光によって潜像を形成される。現像器102K、102Y、102M、102C内の供給ローラ133K、133Y、133M、133Cが現像ローラ134K、134Y、134M、134Cにトナーを供給する。そして、現像ブレード135K、135Y、135M、135Cにより現像ローラ134K、134Y、134M、134C表面に一様にトナー層を形成され、感光体ドラム132K、132Y、132M、132C上にトナー像が現像される。
クリーニングブレード137K、137Y、137M、137Cは転写後の残トナーをクリーニングする。トナーカートリッジ104K、104Y、104M、104Cは現像器102K、102Y、102M、102Cに着脱可能に取り付けられ、内部のトナーを対応する現像器102K、102Y、102M、102Cに供給可能な構造になっている。
転写ローラ105K、105Y、105M、105Cは転写ベルト108裏面から転写ニッブPにバイアスが印加可能に配置される。
転写ベルト駆動ローラ106、転写ベルト従動ローラ107は転写ベルト108を張架しローラの駆動によって用紙Pを搬送可能となっている。
転写ベルトクリーニングブレード111は転写ベルト108上のトナーを掻き落とせるようになっていて転写ベルトクリーナ一容器112には掻き落とされたトナーが収容される。
用紙カセット113は画像形成装置101に着脱可能に取り付けられ用紙が積載される。ホッピングローラ114は転写媒体である用紙Pを用紙カセット113から搬送する。
レジストローラ116および117は用紙Pを転写ベルト108に所定のタイミングで搬送する。
定着器118は用紙Pのトナー像を熱と加圧によって定着する。用紙ガイド119は用紙を排紙トレー120にフェースダウンで排出する。
定着器118は、熱源としての定着器ヒーター259、サーミスタ265、加熱ローラ118a、及び押圧ローラ118bを有している。定着器118では、定着器ヒーター259により加熱され加熱ローラ118aと押圧ローラ118bとの間で用紙Pを挟み込みながら搬送することにより、用紙Pに転写されたトナー像を定着させる。また、定着器118は、加熱ローラ118aの温度検知手段として、サーミスタ265を有している。定着器118はプリンタエンジン制御部253からの信号により低圧電源260から制御される。
用紙検出センサ140は接触または非接触で用紙Pの通過を検知する。
図3は画像形成装置の制御系の構成について示したブロック図である。
画像形成装置101は、制御系の構成要素として、ホストインターフェース部250、コマンド/画像処理部251、LEDヘッドインターフェース部252、及びプリンタエンジン制御部253を有している。また、画像形成装置101は、各ローラ等を回転駆動するモータとして、ホッピングモータ254、レジストモータ255、ベルトモータ256、定着器ヒーターモータ257、及びドラムモータ258を有している。さらに、画像形成装置101は、電源として、高圧発生部280及び低圧電源260を有している。
ホストインターフェース部250はコマンド/画像処理部251にデータを送受信する。
コマンド画像処理部251はLEDヘッドインターフェース部252に画像データを出力する。
LEDヘッドインターフェース部252はプリンタエンジン制御部253によってヘッド駆動パルス等を制御され、LEDヘッド103K、103Y、103M、103Cを発光させる。
プリンタエンジン制御部253は高圧発生部280に信号を送り高圧を発生させ、ブラック現像器102K、イエロー現像器102Y、マゼンタ現像器102M、シアン現像器102Cの帯電ローラ136K、136Y、136M、136Cおよび、現像ローラ134K、134Y、134M、134Cにバイアスを印加すると共に転写ローラ105K、105Y、105M、105Cにバイアスを印加する。
用紙検出センサ140は前記転写バイアスの発生タイミングを調整する為に用いられる。
プリンタエンジン制御部253はホッピングモータ254、レジストモータ255、ベルトモータ256、定着器ヒーターモータ257、ドラムモータ258を所定のタイミングで駆動する。
定着器ヒーター259は低圧電源260から出力される信号およびサーミスタ265の検出値に応じてプリンタエンジン制御部253によって温度制御される。
次に、低圧電源260内部の回路構成の例について図1を用いて説明する。
低圧電源260には、回路を構成する要素として、24VのDC電源からフローティングの28Vの電圧を生成するDC−DCコンバータ301、ゲートドライブ回路302、スイッチ手段325、スイッチ339、コモンモードチョークコイル338、コンデンサ341、342、343、交流のゼロクロス検出回路337、フォトカプラ328、コンデンサ335、ブリッジダイオード336、スイッチング手段334、トランス333、整流回路332、24Vの直流を5Vの直流に変換するDC−DCコンバータ331、24VのDC出力329、及び5VのDC出力330を有している。また、低圧電源260には、電源として商用の100V交流電源340が接続されているものとする。さらに、低圧電源260では、スイッチング手段334に係るヒーター(電力供給先の負荷)として、500ワットのハロゲンヒーター327(定着器ヒーター259を構成する熱源)が接続されているものとする。さらに、低圧電源260では、24VのDC出力329、及び5VのDC出力330に係る電力供給先として、プリンタエンジン制御部253が接続されているものとする。
また、ゲートドライブ回路302は、図1に示す部品を有する。具体的には、ゲートドライブ回路302は、フォトカプラ303、5.1kΩ抵抗304、NPNトランジスタ305、5.1kΩ抵抗306、遅延回路307(100kΩ抵抗308と3300pFコンデンサ309で構成)、NPNトランジスタ310、PNPトランジスタ311、5.1kΩ抵抗312、2.7kΩ抵抗313、10Vのツェナーダイオード314、300Ω抵抗315、20Vのツェナーダイオード316、10Vツェナーダイオード317、300Ω抵抗318、319ツェナーダイオード20V、320ツェナーダイオード10Vを有している。
スイッチ手段325は、2つのSiC MOSFET(シリコンカーバイトパワーMOSFET)を用いて構成されている。具体的には、この実施形態のスイッチ手段325は、SiC NチャンネルMOSFET(以下、単に「MOSFET」と呼ぶ)321、323で構成されているものとする。なお、この実施形態では、SIC NチャンネルのMOSFET321、323として、それぞれ、ダイオードが内蔵されたROHM製SCT2080KEを適用した。そのため図1に示すMOSFET321、323には、それぞれダイオード322、324がつけられている。
また、スイッチ手段325では、図1に示すように、2つのMOSFET321、323が互いの導通方向が逆向きになるように接続されている。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の画像形成装置101の動作を説明する。
まず、画像形成装置101の全体の動作について、図2、図3を用いて説明する。
まず、画像形成装置101が、不図示の外部機器から、ホストインターフェース部250を介してPDL(Page Description Language)等で記述された印刷データを受信したものとする。
印刷データはコマンド/画像処理部251によってビットマップデータに変換される。そして、画像形成装置101は定着器118の熱定着ローラをサーミスタ265の検知値に応じて定着器ヒーター259を制御することにより所定の温度にした後、印字動作を開始する。
そして、給紙カセット113にセットされた用紙Pがホッピングローラ114で繰り出され給紙される。以後、画像形成動作に同期したタイミングでレジストローラ116および117によって用紙Pは転写ベルト108上に搬送される。
そして、電子写真プロセスにより現像器内の感光体ドラム132K、132Y、132M、132Cにトナー像が形成される。この時、前記ビットマップデータに応じてLEDヘッド103K、103M、103Y、103Cが点灯される。そして、現像器102K、102Y、102M、102Cによって現像されたトナー像は転写ベルト108上を搬送される用紙Pに転写ローラ105K、105Y、105M、105Cに印加されたバイアスによって用紙Pに転写される。用紙は4色のトナー像が転写された後、定着器118によって定着され排紙される。
次に、低圧電源260の動作概要について説明する。
100V交流電源340(商用交流電源100V/50Hz)は、ACスイッチ339をオンすることにより低圧電源260に供給される。
そして、低圧電源260では、コンデンサ341、342、343およびコモンモードチョークコイル338により電源ライン(100V交流電源340)からのノイズが除去される。
ゼロクロス検出回路337は、AC100Vのゼロクロスタイミングで、パルスを出力する。
ゼロクロス検出回路337から出力されたパルスはフォトカブラ328で絶縁された信号としてプリンタエンジン制御部253へ入力される。またAC100Vはブリッジダイオード336、コンデンサ335でDC140Vの直流に整流され、スイッチング手段334とトランス333により変圧され整流回路332により24Vの直流に変換される。以上の構成は一般的なスイッチング電源である。
さらに、整流回路332から出力される24Vの直流は、DC−DCコンバータ331により5Vに降圧される。そして、この2系統の電源(24Vと5Vの直流電源)がプリンタエンジン制御部253及びモータ等(図1では図示を省略)に供給されることになる。
また、整流回路332から出力される24Vの直流は、DC−DCコンバータ301にも供給される。DC−DCコンバータ301は昇圧型のDC−DCコンバータであり、24Vの直流を、図示しないスイッチング手段によりACに変換し、図示しないトランスにより昇圧し、再度整流して28Vの直流に変換する構成であるものとする。DC−DCコンバータ301では、上述のトランスにより1次、2次間が絶縁されておりフローティング電源を構成しているものとする。
MOSFET321とMOSFET323とは、互いにソース側(ソース端子)を接続されAC100Vをオンオフする構成となっている。MOSFET321とMOSFET323のゲート端子には等価な信号が入力される。したがって、一方のMOSFETでゲートがオン状態となった場合は、当該MOSFETのドレインとソース間に電流が流れ、他方のMOSFETは内蔵還流ダイオード(322もしくは324)に電流が流れることによりハロゲンヒーター327に電流を流すことになる。
MOSFET321とMOSFET323の接続点であるソース端子の電位は、AC100V(100V交流電源340)の電圧に応じて変動する。
よって、MOSFET321、323のゲート電位をコントロールする為には、ソース電位相対のゲート電圧を入力する必要がある。MOSFET321、323のソース電位及びゲート電位は、ゲートドライブ回路302によりコントロールされる。
次に、ゲートドライブ回路302内部の動作について説明する。
DC−DCコンバータ301から出力される28Vの電圧は抵抗312、10Vツェナーダイオードの両者を介して電流が流れることによりMOSFET321、323のソース電位に対しての相対電圧で+18V〜−10V程度の電圧がゲートドライブ回路に供給することが可能となる。
プリンタエンジン制御部253から出力される駆動パルスとしてのPWM信号(パルス幅変調信号)はフォトカプラ303により絶縁され、NPNトランジスタ305のベースをドライブする。
NPNトランジスタ305のコレクタからNPNトランジスタ310、PNPトランジスタ311に入力される信号は307遅延回路(100kΩ抵抗308と3300pFコンデンサ309)により遅延され、NPNトランジスタ310とPNPトランジスタ311のエミッタからゲートドライブ信号として抵抗315および318を介してMOSFET321、323のゲートに信号が入力される。
次に、ゲートドライブ回路302及びスイッチ手段325(MOSFET321、323)に係る各信号について図4を用いて説明する。図4は、低圧電源260で発生(出力)する各出力について示したタイミングチャート(波形)の例である。
図4(a)は、100V交流電源340から出力されるAC100Vの波形、及び、AC100の波形のうちスイッチ手段325からハロゲンヒーター327に供給される電圧の波形(ハッチが付された所定の位相角の間の波形)である。図4(b)は、ゼロクロス検出回路337から出力されるゼロクロス信号の波形である。図4(c)はプリンタエンジン制御部253から、ゲートドライブ回路302に供給されるPWM信号(パルス幅調整信号)である。さらに、図4(d)は、MOSFET321、323のゲートに供給される信号(以下、「ゲート駆動信号」と呼ぶ)の波形である。
図4に示すように、ゼロクロス検出回路337から出力されるゼロクロス信号のパルス(図4(b))を基準として、ゼロクロス信号の周波数(商用AC100V/50Hzの場合は100Hz、60Hzの場合は120Hz)のPWM信号がプリンタ制御部253から出力されるものとする。すなわち、プリンタ制御部253では、ゼロクロス信号のパルス(周波数)に同期した任意のデューティのパルスを生成し、PWM信号(図4(c)参照)として、低圧電源260(ゲートドライブ回路302)に還流する。プリンタ制御部253で、ゼロクロス信号のパルスに基づいてPWM信号を生成するための回路については種々の構成を適用することができる。プリンタ制御部253では、PWM信号は商用周波数と同期を取る為にゼロクロス信号によりタイミングが補正される。具体的には、例えば、プリンタ制御部253は、ゼロクロス信号検出に同期してPWMのカウンタをセットもしくはリセットする等の方法を取ることも可能である。また、プリンタ制御部253は、ゼロクロス信号に同期させたPLL回路(位相同期回路)によるクロックを入力としたPWM信号を生成しても良い。また商用交流周波数は大きな変動はないので、プリンタ制御部253では、フィルタを設けてゼロクロスタイミング以外に入力される信号を排除しでも良い。
以上のように、低圧電源260(ゲートドライブ回路302)では、PWM信号のデューティを可変とすることにより、スイッチ手段325をON状態とする位相角を可変(制御)することが可能となる。
図5、MOSFET321に係る各波形の観測結果(計測器を用いた実際の計測結果)について示した図である。
図5では、MOSFET321のドレイン電圧、MOSFET321のドレインからハロゲンヒーター327に流れる電流(以下、「ヒーター電流」と呼ぶ)、MOSFET321のソースとゲートとの電位差(以下、「ソース電位相対ゲート電圧」と呼ぶ)、及びPWM出力(PWM信号)の波形をしめしたタイミングチャートとして示している。
図5に示すように、PWM出力に対して、遅延回路307のRC(100kΩ抵抗308、及び3300pFコンデンサ309)により立ち上がりが鈍った信号が、ゲートドライブ回路から出力され、MOSFET321、323のゲートに印加される。図5に示すように、MOSFET321、323のゲート電圧は出力飽和電圧の90%時点でPWM出力の立ち上がりエッジから232μsecのポイントとなった。
図6は、MOSFET321(SiC NチャンネルMOSFET)の特性を計測器(カーブトレーサ)で実際に測定した波形を示した図である。
図6の計測結果から、MOSFET321のゲート電圧が5Vの時はドレイン電流は200mA強であり、ドレインソース電圧が高くなっても電流は増加しないことがわかる。また、図6の計測結果から、ゲート電圧が5Vから1V上昇する毎に、ドレイン電流は増加してゆくことがわかる。さらに、図6の計測結果から、MOSFET321(SiC NチャンネルMOSFET)では、この特性からゲート電圧を緩やかに上昇させた場合にドレイン電流も緩やかに上昇することが分かる。すなわち、MOSFET321(SiC NチャンネルMOSFET)では、ドレイン電流(ヒート電流)がゲート電圧により制限された場合、ドレイン電流増加に伴ってドレインソース間電圧が上昇する。その結果、ハロゲンヒーター327に印加される電圧が相対的に低下し、ヒーター電流が制限されることになる。
そして、図5に示すように、MOSFET321では、ゲート電圧の立ち上がりを緩やかにするとハロゲンヒーター327に流れる電流の立ち上がりエッジが鈍る。通常のゲートドライブ回路はゲート電圧の立ち上がりを急峻にしてFETの損失を少なくするように動作させる。これに対して、この実施形態では、逆にMOSFET321、323の損失を増加させて電流変化を鈍くさせる構成としている。通常、FETのスイッチング周波数は通常kHzオーダー、それも数十〜数百kHzとなるとスイッチング損失も無視出来ない程大きくなる。これに対して、この実施形態では、MOSFET321、323のスイッチング周波数は100Hzもしくは120Hzという商用交流周波数の2倍の低速であるので、極度に高い損失(熱量)が発生することはないため、このような制御が可能となる。
次に、PWM信号のデューティを変化させた場合のMOSFET321に係る各信号の波形について説明する。
図7〜図13は、PWM信号のデューティ(オンデューティ)を0%〜100%の間で変化(概ね4%又は5%単位で変化)させた場合のMOSFET321に係る各信号の波形の観測結果を示した図である。図7〜図13では、PWM信号のデューティ(オンデューティ)ごとに、MOSFET321のドレイン電圧、ヒーター電流、ゲート電圧、及びPWM信号の電圧(PWM電圧)の各波形について示している。
図7(a)〜図7(d)では、それぞれPWMオンデューティ0%、6%、10%、14%の場合の各波形について示している。図8(a)〜図8(d)では、それぞれPWMオンデューティ22%、26%、30%、34%の場合の各波形について示している。図9(a)〜図9(d)では、それぞれPWMオンデューティ34%、39%、43%、47%の場合の各波形について示している。図10(a)〜図10(d)では、それぞれPWMオンデューティ51%、55%、59%、63%の場合の各波形について示している。図11(a)〜図11(d)では、それぞれPWMオンデューティ67%、71%、75%、80%の場合の各波形について示している。図12(a)〜図12(d)では、それぞれPWMオンデューティ84%、88%、92%、96%の場合の各波形について示している。図13では、PWMオンデューティ100%の場合の各波形について示している。
次に、上述の図7〜図13で示した波形の一部の詳細波形を図14〜図16に示す。図14〜図16は、PWM信号のデューティ(オンデューティ)を10%〜55%の間で変化(概ね4%単位で変化)させた場合のMOSFET321に係る各信号の波形の詳細な観測結果を示した図である。図14〜図16では、PWM信号のデューティ(オンデューティ)ごとに、MOSFET321のドレイン電圧、ヒーター電流、ゲート電圧、及びPWM信号の電圧(PWM電圧)の各波形の詳細について示している。なお、図14〜図16に示す観測結果では、ゲート電圧波形については差動プローブにより測定した結果となっている。
図14(a)〜図14(d)では、それぞれPWMオンデューティ10%、14%、18%、22%の場合の各波形について示している。図15(a)〜図15(d)では、それぞれPWMオンデューティ26%、30%、34%、39%の場合の各波形について示している。図16(a)〜図16(d)では、それぞれPWMオンデューティ43%、47%、51%、55%の場合の各波形について示している。
プリンタエンジン制御部253は、例えば、コールドスター卜時のハロゲンヒーター327温度が低い状態では低デューティで導通を開始するようにしてもよい。そして、プリンタエンジン制御部253は、ハロゲンヒーター327の抵抗値が温度上昇によって低下した後、高デューティ領域でデューティを可変して温度制御を行うようにしてもよい。具体的には、プリンタエンジン制御部253は、例えば、コールドスタート時はデユーティ25%で通電を開始し、所定時間後に40〜100%の範囲にてデューティを可変するように制御してもよい。PWM信号はプリンタエンジン制御部253のデジタル回路により所定のオンデューティで生成される。例えば、プリンタエンジン制御部253が、8bitの分解能でPWM信号のオンデューティを設定可能な場合には256段階でオンデューティの設定が可能となる。また、例えば、プリンタエンジン制御部253が、16bitの分解能でPWM信号のオンデューティを設定可能な場合には65536段階でオンデューティの設定が可能となる。
以上のように、画像形成装置101では、PWM信号のオンデューティについては使用するハロゲンヒーター327の特性により適宜実装に合わせて調整することが可能である。またPWM信号のオンデューティと位相角(スイッチ手段325をオン状態とする位相角)の関係についても回路遅延(遅延回路307の回路定数によって定まる遅延)の影響を受けるが、プリンタエンジン制御部253のファームウェアにより適宜調整することが可能である。
この実施形態では従来トライアックを用いる場合にヒーターに直列に挿入するノーマルモード(ディファレンシャルモード)チョークコイルを実装しない状態で説明したが、チョークコイルを併用して電流をトランジスタとコイル双方で、制限しても良い。この実施形態では500Wのヒーターに適用した場合で説明したが、ヒーターのワッテージが高くなると電流の絶対値が大きくなることによりトランジスタの損失を用いた電流制限では不足する場合がある。併用する場合にはコイル鳴きを抑える場合には電流変化をさらに緩やかにした方が効果がある。コイル鳴きはコイルに流れる電流の最大値の影響が大きいのでヒーターのワッテージに応じて適宜実験等により決定すれば良い。
また、第1の実施形態では、チョークコイルを併用(挿入)した場合でも位相制御時に発生するコイルの鳴きを防止することが可能となった。
なお、第1の実施形態では、トライアックを用いる場合にヒーター(ハロゲンヒーター327)に直列に挿入するノーマルモード(ディファレンシャルモード)チョークコイルを実装しない状態で説明したが、チョークコイルを併用してヒーター電流をスイッチ手段325のトランジスタ(MOSFET321、323)とチョークコイルの双方で、制限する構成としてもよい。
さらに、第1の実施形態では、ヒーターとして500Wのハロゲンヒーター327を適用する例について説明したが、ヒーターのワッテージが高くなるとヒーター電流の絶対値が大きくなることにより、トランジスタ(スイッチ手段325のMOSFET321、323)の損失を用いた電流制限では、ヒーター電流の立ち上がりの制限が不足する場合がある。例えば、上述のように、チョークコイルを併用する際に、当該チョークコイルのコイル鳴きを抑える場合には、ヒーター電流の電流変化をさらに緩やかにした方が効果がある。チョークコイルのコイル鳴きはチョークコイルに流れる電流の最大値の影響が大きいのでヒーターのワッテージに応じて適宜実験等により決定するようにすれば良い。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
第1の実施形態では、スイッチング手段334においてMOSFET321、323(SiC MOSFETトランジスタ)を用いてヒーター電流をスイッチングすることにより、MOSFET321、323で発生する損失(トランジスタのオン時の損失)を利用して、ヒーター電流の立ち上がり(突入電流)を緩やかにしている。これにより、第1の実施形態では、従来トライアックを用いた電力制御に必要であったノーマルモードチョークコイルを実装しなくとも伝導ノイズレベルを下げることが出来、チョークコイルの鳴きによるユーザーの不快感を排除することが可能となった。電圧/電流波形は一般的にn次高調波の合成で表されるが、傾きが急になるほどn次高調波が多くなりピーク値が増えることになる。ヒーター電流についても傾きが急になるほど、n次高調波が増えることによりピーク電流値が増え、傾きが緩やかになればn次高調波が減り、ピーク電流値が減ることになる。したがって第1の実施形態では、ヒーター電流の傾き(立ち上がり)を緩やかにすることにより、チョークコイルで低減される高調波成分やチョークコイルに作用するピーク電流が減り、チョークコイルの振動が減ることで、コイル鳴き等を低減することができる。
また、第1の実施形態では、位相制御によるコイル鳴き、伝導ノイズの影響が低減したことによりハロゲンヒーター327を用いた温度制御時も常に位相制御を利用出来るようになった。さらに、第1の実施形態では、チョークコイルを併用(挿入)した場合でも位相制御時に発生するコイルの鳴きを防止することが可能となった。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による電力制御装置及び画像形成装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(B−1)第2の実施形態の構成
以下では、第2の実施形態の画像形成装置101について、第1の実施形態との差異部分を説明する。第2の実施形態の画像形成装置101では、低圧電源260以外の構成要素については同様の構成となっている。
図17は、第2の実施形態の低圧電源260の内部構成の例について示した説明図であり、上述の図1と同一又は対応する部分には、同一又は対応する符号を付している。
第2の実施形態の低圧電源260では、スイッチ手段325で用いられるトランジスタの種類が異なっている。具体的には、第2の実施形態のスイッチ手段325では、MOSFET321、323(SiC NチャンネルMOSFET)が、IGBT絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であるトランジスタ1321、1323に置き換わっている。なお、この実施形態の例では、トランジスタ1321、1323として、富士電機製FGW50N60HDを適用した。
そして、第2の実施形態では、スイッチ手段325で用いられるトランジスタの特性変更に伴って、遅延回路307に適用される回路定数(RC)も調整されている。具体的には、第2の実施形態の遅延回路307では、3300pFコンデンサ309が、0.01μFコンデンサ1309に置き換わっている。
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の画像形成装置101(低圧電源260)の動作について説明する。
上述の通り、第2の実施形態では、低圧電源260のみが第1の実施形態と異なる。したがって、以下では、第2の実施形態の低圧電源260内部の動作について、第1の実施形態との差異部分のみを説明する。具体的には、以下では、SiC NチャンネルMOSFETであるMOSFET321、323が、IGBT絶縁ゲートバイポーラトランジスタであるトランジスタ1321、1323に置き換わった場合の特性変化を中心に説明する。
図18は、トランジスタ1321、1323(IGBT絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の特性を計測器(カーブトレーサ)で実際に測定した波形を示した図である。
図18に示すように、第2の実施形態の第1のトランジスタ1321、1323は、第1の実施形態のMOSFET321、323(SiC NチャンネルMOSFET)に対してゲート電圧変化による電流特性変化が異なっている。そのため、第2の実施形態では、第1の実施形態の遅延回路307における3300pFのコンデンサ309を、0.01μFのコンデンサ1309に置き換え、トランジスタ1321、1323のゲート電圧立ち上がりをさらに緩やかにしている。
その結果、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、PWM信号のデューティと位相角の対応が変化する。第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、プリンタエンジン制御部253の処理(例えば、ファームウェア等による処理)によってPWM信号のデューティと位相角の対応を調整するようにしてもよい。
次に、PWM信号のデューティを変化させた場合のトランジスタ1321に係る各信号の波形について説明する。
図19〜図24は、PWM信号のデューティ(オンデューティ)を10%〜100%の間で変化(概ね4%又は5%単位で変化)させた場合のトランジスタ1321に係る各信号の波形の観測結果を示した図である。図19〜図24では、PWM信号のデューティ(オンデューティ)ごとに、トランジスタ1321のドレイン電圧、ヒーター電流、ゲート電圧、及びPWM信号の電圧(PWM電圧)の各波形について示している。
図19(a)〜図19(d)では、それぞれPWMオンデューティ10%、14%、18%、22%の場合の各波形について示している。図20(a)〜図20(d)では、それぞれPWMオンデューティ26%、30%、34%、39%の場合の各波形について示している。図21(a)〜図21(d)では、それぞれPWMオンデューティ43%、47%、51%、55%の場合の各波形について示している。図22(a)〜図22(d)では、それぞれPWMオンデューティ59%、63%、67%、71%の場合の各波形について示している。図23(a)〜図23(d)では、それぞれPWMオンデューティ75%、80%、84%、88%の場合の各波形について示している。図24(a)〜図24(d)では、それぞれPWMオンデューティ92%、96%、100%の場合の各波形について示している。
図25〜図30は、PWM信号のオンデューティごとに、ハロゲンヒーター327の部分のみ(上述の図17で示した回路部分のみ)を用いて測定した伝導ノイズ測定結果を示す。図25〜図30は、それぞれ、オンデューティ18%、34%、51%、67%、84%、100%の場合の伝導ノイズ測定結果を示している。図25〜図30では、各デューティにおけるPWM信号の周波数ごとの伝導ノイズ測定結果を示している。また、図25〜図30では、VCCI ClassBにおけるノイズレベルの基準となる境界線も示している。例えば、VCCI ClassBにおけるノイズレベルの基準を採用するとすれば、伝導ノイズ測定結果が当該基準以下で、且つ、十分なマージン(例えば、6db程度)を確保できれば、低圧電源260の設計上、ハロゲンヒーター327に係るノイズレベルは問題がないことになる。図25に示すように18%程度の低いデューティを適用した場合には、PWM信号の周波数によっては伝導ノイズ測定結果は6db以下のマージンしか確保できないことになる。しかしながら、ある程度高いデューティ(例えば、図26〜図30に示す34%程度以上のデューティ)を適用すれば、PWM信号の周波数に関わらず、実質6dB以上のマージンが確保出来ることがわかる。
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
第2の実施形態では、スイッチング手段334で用いるトランジスタを、IGBT絶縁ゲートバイポーラトランジスタに置き換えても、第1の実施形態と同様に、トランジスタで発生する損失(トランジスタのオン時の損失)を利用して、ヒーター電流の立ち上がり(突入電流)を緩やかにしている。また、第2の実施形態では、従来トライアックを用いた制御の場合に必要であったノーマルモードチョークコイルを使用しなくとも、伝導ノイズレベルをVCCIクラスB規制値以下にすることが可能となった。
(C)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(C−1)上記の各実施形態では、スイッチング手段334の負荷としてハロゲンヒーター327を適用する例について示したが、その他のヒーター(例えば、セラミックヒーター等)にも適用可能である。
また、上記の各実施形態では、本発明の電源制御装置及び画像形成装置をカラープリンタに適用する例について示したが、モノクロプリンタ、複写機(コピー機)、複合機、FAX等の他の画像形成施装置に適用するようにしてもよい。
(C−2)図1に示す第1の実施形態のスイッチング手段325について、図31に示すスイッチング手段3325のように、ダイオードブリッジ3324等を用いてスイッチ素子(MOSFET)の数を低減するようにしてもよい。これにより、第1の実施形態において、スイッチング手段のコスト低減することができる。また、第2の実施形態についても同様に、図17のスイッチング手段325を図32に示すスイッチング手段3325のようにダイオードブリッジ3324等を用いてスイッチ素子(絶縁バイポーラトランジスタ)の数を低減するようにしてもよい。