JP6448066B2 - 石炭灰を原料に用いたコンクリート - Google Patents
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Description
発生した石炭灰の一部は、生コンクリート製造の際に混和材として使われることもあるが、大部分は、埋立て処理されたり、セメント会社へ費用負担の上、処理委託をされているのが現状である。
しかしながら、生コンクリートの原料に石炭灰が多く含まれると、さらには砂利や砂が全て石炭灰に置き換えられてしまうと、硬化後のコンクリートの強度が大きく低下してしまう問題点や、既成灰という特殊な原料を用いるという問題点があった。
2.水分含有フライアッシュとクリンカアッシュを原料とした生コンクリート。
3.水分含有フライアッシュの含水率が10〜40重量%である前記1又は2の生コンクリート。
4.砂及び砂利は含まない、前記1〜3のいずれか1の生コンクリート。
5.AE剤を含まない前記1〜4のいずれか1項の生コンクリート。
6.原料にスラグを含む前記1〜5のいずれか1の生コンクリート。
7.原料に木粉を含む、前記1〜6のいずれか1の生コンクリート。
8.前記1〜7のいずれか1の生コンクリートの硬化体。
9.前記8の硬化体を粉砕してなる硬化体造粒物。
10.フライアッシュに加水したのち一定時間放置し、少なくとも前記加水放置したフライアッシュ、セメント及び水を混練する、生コンクリートの製造方法。
11.フライアッシュに加水したのち一定時間放置し、少なくとも前記加水放置したフライアッシュ、クリンカアッシュ、セメント及び水を混練する、生コンクリートの製造方法。
コンクリートは、土木、建築構造物の材料として広く使われている。コンクリートは、各種材料を混合し硬化させたものであるが、硬化前のコンクリートは生コンクリートと呼ばれ、一般に、セメント、細骨材、粗骨材、水、混和剤、及び必要に応じて混和材を混合し、練ることで、製造される。
多くの場合、細骨材には砂、粗骨材には砂利が使われる。混和剤は、少量混合するもので、コンクリートの種々の性能を向上させる役割を果たし、例えば、気泡を発生させてコンクリートの練り混ぜをスムーズにするAE剤(Air Entraining剤)、セメントを分散させる減水剤がある。混和材は、比較的、量多く混合するもので、火山灰や石炭灰などのセメントと反応して新しい化合物を生成するものや、コンクリートの収縮によるひび割れ防ぐために用いる膨張材、金属精錬のときに発生するスラグなどである。
なお、フライアッシュやクリンカアッシュの石炭灰は必ずしも石炭火力発電所で発生したものでなくてもよく、例えば熱供給ボイラーから発生したものであってもよい。また、フライアッシュとクリンカアッシュの密度はほぼ同じであるとより好ましく、クリンカアッシュ密度に対するフライアッシュ密度の差異はプラスマイナス5%以下であるとより好ましい。比重の差異は混練度合に影響を与える可能性がある。
生コンクリートの総重量に対し、石炭灰(加湿前のフライアッシュ+クリンカアッシュ)の重量比に特に制限はないが、好ましくは0.5〜0.7である。重量割合が高すぎると強度が低下してしまう可能性があるし、低すぎては、石炭灰の活用を進めるという点から不都合である。
生コンクリートの原材料としては、重量を増やすためにスラグを加えてもよい。また、漁礁を製造する際、コンクリートを材料とすることがあるが、その際、混合すると藻類の成長に有用とされる、木粉を加えてもよい。
フライアッシュに事前に加水するときは、空気を巻き込みにくい方法であればどのようなものでもよいが、混練用ミキサーで撹拌しながら加水したり、加水後に混練して水を馴染ませる方法がある。また、実運用時の現実的な方法として、例えばフライアッシュを空中に飛ばしてそれに水を噴霧する方法がある。これは、高速回転する円板が縦に2枚並んだ、臼を縦にしたような装置にフライアッシュを投入し、フライアッシュを薄く回転分散させながら(空中に飛ばしながら)、圧力調整のできるアンローダーバルブから水を噴霧し、調製する方法である。
加水して放置する時間は、12時間以上が好ましく、より好ましくは18時間以上、さらに好ましくは24時間以上である。放置する時間が長いほど、フライアッシュの粒子表面の凹凸に水が行きわたり、空隙の空気が追い出されるので好ましい。
放置後、セメント、水分含有フライアッシュ、クリンカアッシュ、水、必要に応じて、砂利、砂、混和剤、混和材を、混練する。セメントや水など各種材料の配合割合は、目標強度等に応じて設定する。できた生コンクリートを型に流し込んで成型する。成型後、コンクリートを養生する。必要に応じて、コンクリートを破砕して、粉砕物とする。
フライアッシュを配合したコンクリートについて、事前加水すること、クリンカアッシュを配合することの効果を調べた。具体的には、混練後の流動性能、硬化後の体積膨張、密度、圧縮強度を調べ、その値を比較した。
石炭灰は2つの発電所イ、ロから排出されたものをそれぞれ用いた。生コンクリートの配合は表1イ、ロに示した。
発電所イについては、事前加水しないフライアッシュを配合したコンクリート(比較実験例イ−A(乾燥灰)、比較実験例イーB(乾燥灰+AE剤))、事前加水した水分含有フライアッシュを配合したコンクリート(実験例イ−A(30%水分含有フライアッシュ)、実験例イ−B(全量水分含有フライアッシュ))を準備した。発電所ロについては、事前加水しないフライアッシュを配合したコンクリート(比較実験例ロ−A(乾燥灰)、比較実験例ロ−B(乾燥灰+AE剤))、水分含有フライアッシュを配合したコンクリート(実験例ロ−A(20%水分含有フライアッシュ))、水分含有フライアッシュとクリンカアッシュを配合したコンクリート(実験例ロ−B(20%水分含有フライアッシュ+クリンカアッシュ))を準備した。
表1の配合割合で、各種材料をミキサーに投入し混練した。水分含有フライアッシュは、フライアッシュに、事前に、表1FWで示した量を加水し、小型ミキサーで撹拌し、15時間放置して、調製した。ただし、実験例イ−B、全量事前に加水したものは、32時間放置した。
混練後の流動性能については、混練した生コンクリートを、円筒を使って直径10cm、高さ5cmの円柱状とし、これを、振動機を使って20秒間振動させ、振動後の直径(フロー値)を測定した(図1)。振動後の直径(フロー値)が大きいほど流動性能が高いこととなる。
硬化後の体積膨張(膨張長さ)については、直径12.5cm、高さ25cmの円柱状の供試体型枠に、生コンクリートを流しいれ、養生完了後に、膨張長さを測定した(図2)。
密度については、体積を一定にして、そのときの重量を比較した。すなわち、硬化後の供試体コンクリートの重量を測定し、膨張したものついては、膨張した部位を除去して、重量を測定した。なお、主な原料に大きな違いがない場合、密度は大きい方が、中身が詰まっている優れたコンクリートといえる。
圧縮強度については、供試体コンクリートを使って、JIS A 1108に従って測定した。
流動性能、体積膨張(膨張長さ)、供試体重量、圧縮強度の測定結果を表2〜5、図3〜6に示した。なお、発電所ロのコンクリートは、養生後いずれも体積膨張しなかった(図表なし)。
実験例イーA(30%水分含有フライアッシュ)は、比較実験例イ−A(乾燥灰)と比べ、体積膨張(膨張長さ)は少なく(27⇒7mm、表3、図4)、密度(供試体重量)も高く(4.827⇒5.126kg、表4、図5)、圧縮強度も大きかった(4.13⇒11.5N/mm2、表5、図6)。
実験例イーB(全量加湿)も、比較実験例イ−A(乾燥灰)と比べ、体積膨張(膨張長さ)は少なく(27⇒2mm、表3、図4)、密度(供試体重量)も高く(4.827⇒5.310kg、表4、図5)、圧縮強度も大きかった(4.1⇒12.8N/mm2、表5、図6)。実験例イーA(30%水分含有フライアッシュ)と比較しても、流動性能はやや劣るものの(表2、図3)、体積膨張(膨張長さ)(表3、図4)、密度(供試体重量)(表4、図5)、圧縮強度(表5、図6)は優れていた。
発電所ロについても、実験例ロ−A(20%水分含有フライアッシュ)は、比較実験例ロ−A(乾燥灰)と比べ、体積膨張(膨張長さ)は同様で(共に膨張無し)、密度(供試体重量)は高く(5.328⇒5.556kg、表4、図5)、圧縮強度は大きかった(13.4⇒18.9N/mm2、表5、図6)。比較実験例ロ−B(乾燥灰+AE剤)と比較しても、密度は高く(5.362⇒5.556kg、表4、図5)、圧縮強度も大きかった(12.3⇒18.9N/mm2、表5、図6)。
実験例ロ−B(20%水分含有フライアッシュ+クリンカアッシュ)の結果は、最も優れていて、体積膨張(膨張長さ)、供試体重量、圧縮強度のいずれも、比較実験例ロ−A(乾燥灰)、比較実験例ロ−B(乾燥灰+AE剤)、実験例ロ−A(20%水分含有フライアッシュ)と比較しても、ほとんど全ての項目で、最も優れているか、最も優れているものと同じ値であった(表2〜5、図3〜6)。
なお、流動性能は、事前加水しないフライアッシュを原料とした比較実験例の方が、水分含有フライアッシュを原料とした実験例より優れている傾向があるが(図3)、これは供試体の軽さや膨張性の大きさから空気の混入によるもので、圧縮強度には寄与しないと考えられる。
フライアッシュとクリンカアッシュが配合されたコンクリートについて、事前加水した水分含有フライアッシュを配合することの効果を調べた。石炭灰は、発電所ロから排出されたものを使用した。
1.比較対照コンクリートの製造
フライアッシュに事前に加水せず、表7の配合割合でセメント、水、フライアッシュ、クリンカアッシュをミキサーに投入し混練した。これを成型し、80℃で24時間蒸気養生して、コンクリートを製造した(表7比較実験例1〜4)。
フライアッシュに、表8の水分含有フライアッシュで示した量を、実施例1と同様の方法で加水して、24時間放置し、これを水分含有フライアッシュとした。表8の配合割合でセメント、水、水分含有フライアッシュ、クリンカアッシュをミキサーに投入し、混練した。これを成型し、80℃で24時間蒸気養生して、コンクリートを製造した(表8実験例1〜4)。
直径10cm、高さ20cmの円柱供試体を、比較実験例は材齢2日で、水分含有フライアッシュを用いた実験例は材齢4日で、圧縮強度試験に供した。試験方法はJIS A 1108に従った。
比較実験例の圧縮強度の測定結果を、表9、図7に、実験例の結果を表10、図8に示した。比較実験例1〜4はいずれも目標強度の18N/mm2に達しなかったが、水分含有フライアッシュを配合した実験例1〜4は、いずれも目標強度に達した。実験例3は、比較実験例1と比較し、各材料の配合割合は全く同じだが、実験例3の強度は、比較実験例1と比べ大きかった(4.7⇒18.3N/mm2)。フライアッシュとクリンカアッシュを共に配合した場合も、フライアッシュに事前加水する(水分含有フライアッシュを使用する)ことで、圧縮強度が向上することがわかった。
単位重量は、一定の体積を持った供試体の重量で、コンクリート密度に相当する値である。実験例3を比較実験例1と比較すると、配合割合は同じであるにもかかわらず、実験例3の方が単位重量の値は大きい、つまり、水分含有フライアッシュを配合することで、コンクリート密度が大きくなることがわかった。これは、事前加水することで、膨張の原因となる空隙内の空気が追い出され、コンクリート密度を高くすることができたことによると考えられる。
Claims (14)
- AE剤を含まない、加水して12時間以上放置した水分含有フライアッシュを原料とした生コンクリート。
- 加水して12時間以上放置した水分含有フライアッシュと、クリンカアッシュを原料とし、フライアッシュが細骨材、クリンカアッシュが粗骨材として用いられ、硬化促進剤を含まない生コンクリート。
- AE剤を含まない、請求項2の生コンクリート。
- 加水して12時間以上放置した水分含有フライアッシュと、クリンカアッシュを原料とし、フライアッシュが細骨材、クリンカアッシュが粗骨材として用いられ、実質的に混和剤を含まない生コンクリート。
- 前記水分含有フライアッシュの含水率が10〜40重量%である請求項1〜4のいずれか1の生コンクリート。
- 砂及び砂利は含まない、請求項1〜5のいずれか1の生コンクリート。
- 原料にスラグを含む請求項1〜6のいずれか1の生コンクリート。
- 原料に木粉を含む、請求項1〜7のいずれか1の生コンクリート。
- 請求項1〜8のいずれか1の生コンクリートの硬化体。
- 請求項9の硬化体を粉砕してなる硬化体造粒物。
- フライアッシュに加水したのち12時間以上放置し、少なくとも、前記加水放置したフライアッシュ、セメント及び水を混練し、AE剤は混合しない、生コンクリートの製造方法。
- フライアッシュに加水したのち12時間以上放置し、少なくとも、前記加水放置したフライアッシュ、クリンカアッシュ、セメント及び水を混練し、硬化促進剤は混合せず、フライアッシュは細骨材、クリンカアッシュは粗骨材として用いる、生コンクリートの製造方法。
- AE剤を混合しない請求項12の生コンクリートの製造方法。
- フライアッシュに加水したのち12時間以上放置し、少なくとも、前記加水放置したフライアッシュ、クリンカアッシュ、セメント及び水を混練し、実質的に混和剤は混合せず、フライアッシュは細骨材、クリンカアッシュは粗骨材として用いる、生コンクリートの製造方法。
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