JP6355157B2 - 既設構造物の背面盛土の構造 - Google Patents
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地震時に橋台等の既設構造物と背面盛土との境界部で舗装にひび割れや段差が生じることを防止する対策工として、特許文献1には橋台等の既設構造物の背面に固定したハニカム状の補強材と、補強材を埋没させるアスファルトとを組み合せて構成した踏掛版を路盤中に埋設することが開示されている。
また地震時に作用する橋台等の既設構造物の背面土圧を軽減するため、盛土の代替としてEPSや気泡混合軽量土等の軽量盛土材を用いることも知られている。
さらに、橋台等の既設構造物側から背面盛土中へ棒状の補強材を打ち込み、既設構造物と背面盛土を一体化することが特許文献2に開示されている。
<1>背面盛土を施しただけの橋台等の既設構造物にあっては、地震時における既設構造物と背面盛土の挙動の相違に基づき両者間に瞬間的に隙間ができ、この隙間内に盛土前面の一部の土砂が崩落するとともに、盛土前方側面から土砂が流出して、既設構造物と背面盛土の境界部に段差を生じる。
<2>地震時における既設構造物と背面盛土間で隙間内に繰り返し土砂が崩落することにより、既設構造物が押し出されて姿勢が崩れる。
<3>境界部の段差防止を図る特許文献1の耐震技術にあっては、小規模地震ではある程度の効果を発揮するものの、大規模地震では背面盛土の崩落を阻止しきれずに、上記<1><2>と同様の問題が生じる。
<4>背面盛土として軽量盛土材を用いる方法にあっては、軽量盛土の工費が嵩む問題と、洪水、高潮発生時における浮力に対する安定度に問題がある。
<5>補強材を用いて橋台と背面盛土を一体化する特許文献2の耐震技術にあっては、工事が大掛かりとなって工費が嵩むだけでなく工期も長期化する。
<6>東日本大震災を通じて、背面盛土の前方両側面から大量の土砂が流出して、境界部に大きな段差を生じた事例が多数発生した。
これらの事例を教訓にした対策工の提案が切望されている。
前記控え材を各盛土層の間に挟持させたことを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記抱持袋は断面コの字形のトップシートと、トップシートの両端開口部を封鎖するサイドシートとを具備し、前記トップシートが前記複数の盛土層の前面を抱持するとともに、前記サイドシートが前記複数の盛土層の前方側面を抱持する。
本発明の他の形態において、背面盛土の前面を既設構造物の背面から離隔させるか、または背面盛土の前面を既設構造物の背面に接面させてもよい。
本発明の他の形態において、前記抱持袋が盛土材の通過を阻止可能な透水性のシートで形成されていることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記抱持袋の内部であって、盛土層前部に排水層を形成してもよい。
<1>シート製の抱持袋を使用するだけで、背面盛土の前部および前方側部からの土砂流出を防止することができるだけでなく、背面盛土の前面および前方側面の変形も効果的に抑制できる。
したがって、背面盛土の耐震性を高めて、既設構造物と背面盛土の境界部の段差防止と、既設構造物の姿勢保持を両立することができる。
<2>従来と比べて背面盛土および既設構造物の耐震性を著しく向上できるから、大規模地震に対してきわめて有効である。
<3>直壁を構成する複数のパネル体を前方側面に配置し、パネル体に接続した控え材を盛土層に固定すれば、背面盛土の前面および両側面の三方を強固に拘束できるので、背面盛土の変形防止効果が格段に向上する。
<4>各盛土層の前部に排水層を形成することで、背面盛土の排水性が高まる。
本例では既設構造物が橋台である場合について説明する。
図1〜3を参照して説明すると、橋梁は、橋台10と、橋台10に一端を支持させた主桁15と、橋台10に隣接して設けた背面盛土20とを具備する。
橋台10はコンクリート製の橋台本体11を備える。橋台本体11はその下部に水平に向けて一体に形成した橋台基礎12を有し、その上部には主桁15を支持するための棚面13を有する。
背面盛土20は全体の断面が方形または略台形を呈していて、橋台本体11の背面11aに階層的に構築した複数の盛土層21で構成する。
背面盛土20の最上は舗装50で被覆されている。
背面盛土20の前面は橋台本体11の背面11aと離隔せず、抱持袋30を介して背面11aに当接している。
抱持袋30は背面盛土20の前面および前方側面からの土砂流出を防止するための袋体であり、断面コの字形のトップシート31と、トップシート31の両端開口部を封鎖するサイドシート32とを具備する。
トップシート31は各盛土層21の前方底面、前面および前方上面の間に跨って抱持可能な長さを有するシートであって、各盛土層21の前部を橋軸直交方向に沿って配置する。
サイドシート32は各盛土層21の少なくとも前方側面を抱持可能な長さを有するシートであって、各盛土層21の前方の両端部を橋軸方向に沿って配置する。
図4,5を参照して抱持袋30による盛土層21の包囲構造について説明する。
図4はトップシート31の一部にサイドシート32を一体に形成した形態を示し、図5は前面シート31と側面シート32を分離して別体に形成した形態を示す。
図4,5の(A)は抱持袋30のサイドシート32を閉じる前の状態を示し、(B)はサイドシート32を閉じた後の状態を示す。
抱持袋30は盛土層21の変位を拘束可能な引張強度を有するだけでなく、盛土材(土粒子)の通過を阻止可能な透水性を有するシートで形成する。
抱持袋30は非透水性のシートで形成してもよい。
抱持袋30の素材としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ゴム、ポリプロピレン等の繊維で形成した土木シート、不織布、織編布等の何れか一種または複数種を積層して使用することができる。
盛土層21の抱持手段は抱持袋30に限定されず、抱持袋30と枠ユニット33を併用してもよい。
図6を参照して説明すると、枠ユニット33は帯状の溶接金網等をL字形に屈曲して形成したもので、枠ユニット33の水平部と垂直部の間に垂直部の傾倒を防止する斜材34が配置してある。
使用にあたっては、枠ユニット33の内側に抱持袋30を配置し、抱持袋30と枠ユニット33とにより各盛土層21の前面または前面および側面を抱持する。
枠ユニット33および拘束シート25が協働して各盛土層21の端部の変形を拘束するため、各盛土層21の締め固めを十分に行えるうえに、抱持袋30単体の場合と比べて各盛土層21の変位拘束効果が高くなる。
図7を参照して説明すると、補強盛土20はその側面全体が直壁40で保護されている。
直壁40は複数のパネル体41と、パネル体41の背面に接続した控え材42とにより構成し、各盛土層21を構築する際に控え材42を上下の盛土層21の間に挟持することでパネル体41を支持している。
控え材42はスキンプレート等の帯状物またはジオグリッド等のシート状物を含み、その一端がパネル体41の背面に一体に接続されている。
背面盛土20の側部の保護手段は直壁40に限定されるものではなく、公知の盛土擁壁や場所打ちコンクリート擁壁等を適用してもよい。
つぎに背面盛土20の構築方法について説明する。
図8を参照して説明すると、橋台10の背面11a側の橋台基礎12上に抱持袋30を展開状態で配置する。
トップシート31の下半を橋台基礎12上に敷設し、トップシート31の上半、およびサイドシート32を上方へ捲り上げた状態で、橋台基礎12上に土砂を撒き出し、土砂を転圧して一層目の盛土層211を構築する。
一層目の盛土層211を構築した後、トップシート31とサイドシート32を巻き込んで盛土層211の前部および前方側部を包囲する。
以下同様に一層目の盛土層211の上面を支持地盤として、抱持袋30の設置工程と、盛土工程と、シート31、32の巻き込み工程とを繰り返して二層目以降の各盛土層212,213・・・を増設して所定の高さの背面盛土20を構築する。
各抱持袋30の折り畳まれた各シート31,32は、各盛土層21の間に挟持させて展開不能に固定する。
このように、盛土工の際に抱持袋30を用いて盛土層21に巻き込むだけの簡単な作業で以て、各盛土層21の前面および前方側面を抱持袋30で抱持することができる。
背面盛土20の構築と並行して、背面盛土20の側部に複数のパネル体41を縦横方向に組み立てて直壁40を形成する。
直壁40を形成する際、図6に示すように各盛土層21の間に控え材42を挟持させて各パネル体41を支持する。
このように本例では、背面盛土20を構成する各盛土層21の前面の土圧は抱持袋30を介して橋台10の背面11aに支持させるとともに、各盛土層21の側部の土圧は抱持袋30を介して直壁40に支持させる。
地震時において、橋梁を構成する橋台10と背面盛土20が異なる挙動を示すが、本発明では以下に詳しく説明するように、従来と比べて背面盛土20の耐震性が向上する。
地震時において、背面盛土20が橋台10の背面から離隔方向へ変位すると、橋台10の背面11aと背面盛土20の前面との間に瞬間的に隙間ができる。
土砂非透過性のシートで形成した抱持袋30のトップシート31は、背面盛土20の前面を抱持している。
したがって、背面盛土20が橋軸方向へ変位しても、トップシート31が土砂流出を確実に阻止して隙間内への土砂落下を未然に防止することができる。
さらにトップシート31は背面盛土20の前面の変位を拘束して土圧の上昇を抑制するので、橋台10の背面11aへ向けた押出力を小さくすることができる。
抱持袋30は背面盛土20の前面だけでなく、背面盛土20の前方側面を土砂非透過性のシートで形成したサイドシート32で抱持している。
したがって、背面盛土20が橋軸交差方向へ変位しても、サイドシート32が、背面盛土20の前方側面からの土砂流出を確実に阻止することができる。
さらにサイドシート32は、背面盛土20の前方側面の変位を拘束して土圧の上昇を抑制するので直壁40へ向けた押出力を小さくすることができる。
抱持袋30と直壁40とが背面盛土20の前面および両側面の三方を強固に拘束するので、地震等により、背面盛土20が橋軸交差または橋軸交差方向へ向けて変位しても、背面盛土20の前部および前方側部からの土砂流出を防止できるだけでなく、背面盛土20の前面および前方側面の変形も効果的に抑制することができる。
したがって、橋台10と背面盛土20の境界部における段差の発生抑制効果が格段に向上する。
地震時において、橋台10の背面11aと背面盛土20の前面との間に瞬間的に隙間が形成されても、抱持袋30が隙間内への土砂落下を防止する。
隙間内に土砂が落下しないので、橋台10は元の位置に復帰できて、橋台10の安定した姿勢が崩れることがない。
さらに背面盛土20が揺れ動く際に抱持袋30が背面盛土20の前面の土圧変化を押さえているので、背面盛土20の前面が橋台10の背面11aに接触しても、橋台10が押し出されることがない。
このように、抱持袋30を使用して背面盛土20の前部および前方側面を抱持するだけで、従来と比べて背面盛土20だけでなく橋台10の耐震性を著しく向上できるから、大規模地震に対して有効である。
背面盛土20の前部を抱持した抱持袋30は透水性を有するので、背面盛土20中の水を背面盛土20の外部へ排水できるが、その排水性には限界がある。
本例では抱持袋30内であって、各盛土層21の前部に排水性のよい骨材等の粒状物を配置して排水層22を形成し、排水層22とともに盛土層21の前部土砂を既述した抱持袋30で抱持した形態を示す。抱持袋30の作用効果は既述した実施の形態と同様である。
挟持シートは抱持袋30と同一素材で形成し、挟持シートの両端部を盛土層21の間に挟持させて固定する。
本例のように各盛土層21の前面を抱持袋30と挟持シートの多重シートで抱持することで、土砂落下防止効果と、背面盛土20の変形抑止効果がさらに高くなる。
図10は橋台10の背面11aから背面盛土20を離隔し、両者10,20の間に空隙Sを形成した他の形態を示したものである。
空隙Sを設けることで、背面盛土20の土圧が橋台10の背面11aへ伝達するのを防止できるから、橋台10の安定性が良くなる。
緩衝材60としては、土圧の吸収効果と落下物を抑える部材であり、例えば発泡スチロール等を適用できる。
空隙S内に緩衝材60を介装することで、土圧の伝達を阻止しつつ舗装等の上載荷重を支持することができる。
先の実施形態では既設構造物が橋台である場合について説明したが、既設構造物はボックスカルバートでもよい。
ボックスカルバートの背面に設ける背面盛土の抱持構造は既述したとおりであるので、その説明を省略する。
11・・・・・橋台本体
12・・・・・橋台基礎
15・・・・・主桁
20・・・・・背面盛土
21・・・・・盛土層
22・・・・・排水層
30・・・・・抱持袋
31・・・・・トップシート
32・・・・・サイドシート
40・・・・・直壁
50・・・・・舗装
Claims (5)
- 既設構造物の背面に対向して複数の盛土層を構築した既設構造物の背面盛土の構造であって、
前記複数の盛土層の前面および前方側面を包囲するシート製の抱持袋と、
背面盛土の側面を保護する直壁とを具備し、
前記抱持袋の端部を盛土層の間に固定し、
前記複数の盛土層の前面および前方側面を前記抱持袋で抱持し、
前記直壁が背面盛土の側面を覆う複数のパネル体と、パネル体の背面に接続した控え材とを具備し、
前記控え材を各盛土層の間に挟持させたことを特徴とする、
既設構造物の背面盛土の構造。 - 前記抱持袋が断面コの字形のトップシートと、トップシートの両端開口部を封鎖するサイドシートとを具備し、前記トップシートが前記複数の盛土層の前面を抱持するとともに、前記サイドシートが前記複数の盛土層の前方側面を抱持することを特徴とする、請求項1に記載した既設構造物の背面盛土の構造。
- 背面盛土の前面を既設構造物の背面から離隔させたことを特徴とする、請求項1または2に記載した既設構造物の背面盛土の構造。
- 前記抱持袋が盛土材の通過を阻止可能な透水性のシートで形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載した既設構造物の背面盛土の構造。
- 前記抱持袋の内部であって、盛土層前部に排水層を形成したことを特徴とする、請求項4に記載した既設構造物の背面盛土の構造。
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