以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
<装置構成>
図1は、実施形態に係る検査装置100の概略側面図である。検査装置100は、フォトデバイスである検査対象物である太陽電池9に対して、パルス光を照射し、該パルス光の照射に応じて太陽電池9から放射される電磁波(主に、周波数が0.1THz〜30THzのテラヘルツ波)を検出することによって、検査対象物の検査を行う。
検査装置100は、装置架台1、テラヘルツ波測定系2、移動ステージ3、試料台4、ルミネッセンス測定系5、カメラ6および制御部7を備えている。
図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする右手系のXYZ直交座標系を適宜付している。移動ステージ3の表面に平行な面を水平面(XY平面)とし、それに垂直な上下方向を鉛直方向(Z軸方向)としている。また、ルミネッセンス測定系5から見て、テラヘルツ波測定系2が配置されている側を+Y側とし、その反対側を−Y側とする。また、ルミネッセンス測定系5の側からテラヘルツ波測定系2の側を見たとき、右手側は+X側とし、左手側は−X側としている。さらに、Z軸方向の上側を+Z側とし、下側を−Z側とする。
テラヘルツ波測定系2は、下方に配された太陽電池9に対して、上方からパルス光を照射し、放射されるテラヘルツ波パルスを検出装置である。テラヘルツ波測定系2の構成については、後に詳述する。
移動ステージ3は、ステージ駆動機構31によって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の各方向に移動する。ステージ駆動機構31は、移動ステージ3をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構、移動ステージ3をY軸方向に移動するY軸方向移動機構、移動ステージ3をZ軸方向に昇降させる昇降機構を備えている。さらに、ステージ駆動機構31は、Z軸周りの回転方向(θ軸方向)に移動させる回転機構を備えている。
試料台4は、移動ステージ3の上面に取り付けられている。試料台4は、電圧印加テーブル41と、電極ピンユニット43を備えている。
電圧印加テーブル41は、例えば銅などの電気伝導性の高い素材で構成されており、さらにその表面が金メッキされている。また、電圧印加テーブル41の表面には、複数の吸着孔が形成されている。吸着孔は吸引ポンプに接続されており、当該吸引ポンプを駆動することによって、太陽電池9の裏面が電圧印加テーブル41に吸着される。これによって、太陽電池9が試料台4に固定される。なお、電圧印加テーブル41の表面に、複数の吸着溝を設け、当該各吸着溝内に、上記複数の吸着孔を形成してもよい。この場合、複数の吸着溝に沿って太陽電池9が吸着されるため、太陽電池9を強固に固定できる。試料台4の電圧印加テーブル41は、保持部の一例である。
移動ステージ3がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動することよって、移動ステージ3上の試料台4に保持された太陽電池9が、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれに移動することとなる。
図1に示すように、ステージ駆動機構31のY軸方向移動機構は、移動ステージ3を位置L1,L2,L3にそれぞれ移動させる。位置L1は、太陽電池9を電圧印加テーブル41に設置するための移動ステージ3の位置である。位置L2は、位置L1よりも+Y側の位置であって、ルミネッセンス測定系5(第一検査部)において太陽電池9のEL測定またはPL測定を行う位置である。さらに、位置L3は、位置L2よりも+Y側の位置であって、テラヘルツ波測定系2(第二検査部)に備えられたカメラ6によって後述する指標部45を撮影する位置である。
電極ピンユニット43は、導電性の複数の電極ピン431と、当該複数の電極ピン431を支持する導電性の電極バー432を備えている。
電極バー432は、複数の棒状の電極ピン431を、Y軸方向に所定の間隔をあけて、かつ、各々がZ方向に沿って起立するように保持する。本実施形態では、電極バー432は、試料台4に保持された太陽電池9の表面側電極であるバスバー電極93に沿うように保持する。また、電極ピンユニット43は、後述する複数の指標部45のそれぞれに当接させる複数の電極ピン431を備えている。
試料台4は、電圧印加テーブル41を太陽電池9の裏面側電極に接触させ、かつ、複数の電極ピン431を、太陽電池9の表面側電極(ここでは、後述するバスバー電極93)に接触させる。電圧印加テーブル41および電極ピンユニット43は、電気的に接続されており、太陽電池9の表面側電極および裏面側電極の間で電圧を印加する。
ルミネッセンス測定系5は、EL(Electro-Luminescence)測定またはPL(Photo-Luminescence)測定を行う。以下の説明では、EL測定およびPL測定のそれぞれを、特に区別しない場合には、単に「ルミネッセンス測定」と称する場合がある。ルミネッセンス測定系5では、カバー部材51によって太陽電池9が覆われ、その状態でルミネッセンス測定が行われる。
より具体的には、ルミネッセンス測定系5は、EL測定を行うためのイメージセンサ53を備えている。EL測定を行う場合には、ルミネッセンス測定系5において、電圧印加テーブル41および電極ピンユニット43を介して、太陽電池9に順方向バイアスの電圧が印加される。これによって、ルミネッセンス測定系5は、太陽電池9をEL発光させ、当該EL発光をイメージセンサ53によって撮影する。これによって、ルミネッセンス画像であるEL画像が取得される。イメージセンサ53は、例えば波長が約800nm〜1600nmの光を検出可能であることが好ましく、波長が約1000nm〜1400nmの光を検出可能であることがより好ましい。
また、ルミネッセンス測定系5は、PLプローブ光源55を備えている。ルミネッセンス測定系5は、PLプローブ光源55から照射されたPLプローブ光によって、太陽電池9をPL発光させ、当該PL発光をイメージセンサ53によって撮影する。これによって、PL画像が取得される。
以下の説明では、EL画像およびPL画像のそれぞれを、特に区別しない場合には、単に「ルミネッセンス画像」と称する場合がある。
ルミネッセンス測定系5は、必ずしもEL測定およびPL測定の双方を行うための構成を備えていなくてもよく、いずれか一方のみの測定を行うように構成されていてもよい。
図2は、試料台4の電圧印加テーブル41に保持された太陽電池9を示す概略平面図である。図2に示されるように、電圧印加テーブル41には、複数の指標部45が設けられている。本実施形態では、太陽電池9を保持する領域の外側四隅のそれぞれに、指標部45が設けられている。このように、各指標部45は、太陽電池9を保持する電圧印加テーブル41に設けられている。したがって、各指標部45は、太陽電池9に対して固定された位置に設けられている。
なお、保持部を構成する電圧印加テーブル41の表面に、各指標部45を取り外し可能に取り付ける取付機構を設けてもよい。取付機構の具体的構成は種々考えられるが、例えば指標部45の外周形状に合う形状の枠材を電圧印加テーブル41における所定位置に設けることが考えられる。当該枠材の内部に指標部45を収納することによって、指標部45を固定することが可能である。また、枠材に指標部45を固定するクランプ機構を設けてもよい。さらに、指標部45自体の裏面側に粘着材等を設け、当該粘着材を介して指標部45を電圧印加テーブル41に取り外し可能に取り付けることも考えられる。
指標部45は、ルミネッセンス測定系5において、ルミネッセンス発光するように構成されている。具体的には、指標部45は、n型半導体層、p型半導体層、裏面電極および表面電極を備えた一般的な太陽電池として構成されている。このため、指標部45は、ルミネッセンス測定系5において、試料台4によって順バイアス電圧が印加されることで、EL発光する。また、指標部45は、PLプローブ光源55から照射されたPLプローブ光によって、PL発光する。またはPLプローブ光の照射を受けて、PL発光する。指標部45のEL発光またはPL発光は、イメージセンサ53によって撮影される。以下の説明では、EL発光およびPL発光のそれぞれを、特に区別しない場合には、単に「ルミネッセンス発光」と称する場合がある。
図2に示すように、各指標部45は、矩形状の太陽電池本体451、当該太陽電池本体451の表面に取り付けられた十字形状の表面電極452を備えている。なお、EL測定の際には、この表面電極452に電極ピン431が当接され、太陽電池本体451に順バイアス電圧が印加される。指標部45がルミネッセンス発光した場合、表面電極452が、非発光部分の像としてEL画像またはPL画像に表示される。そこで、この十字状部分の交差点の位置を検出することによって、指標部45の位置を正確に特定できる。
もちろん、指標部45の形状は図2に示すものに限定されるものではない。表面電極452の形状を十字形状以外の特定形状(例えば円形)としてもよい。この場合、ルミネッセンス画像における当該特定形状の非発光部分の重心位置等を求めることで、指標部45の位置を特定することが考えられる。
指標部45を設ける位置は、図2に示される位置に限定されない。ただし、図2に示すように、指標部45は、電圧印加テーブル41の表面において、2箇所以上の異なる位置に設けることによって、各指標部45および太陽電池9間の位置関係を具体的に特定できる。
指標部45は、好ましくは、太陽電池9と同様の材料、例えば、太陽電池9と同一のバンドギャップを有する部材で構成される。この場合、太陽電池9がルミネッセンス発光する条件のもとで、指標部45もルミネッセンス発光させることができる。
図2に示す太陽電池9の受光面91に形成された表面側電極は、一方向に沿って延びる3本の長尺矩形板状のバスバー電極93と、これらバスバー電極93に直交するように延びる多数の細長板状のフィンガー電極95とで構成されている。バスバー電極93は、フィンガー電極95に比べて幅広に形成されている。なお、図2に示すように、太陽電池9は、各バスバー電極93の長手方向がY軸方向に沿うように配置される。このため、太陽電池9に電圧を印可する場合、Y軸方向に沿って一定間隔で並ぶ複数の電極ピン431が、各バスバー電極93のそれぞれに当接される。
図3は、テラヘルツ波測定系2の概略構成図である。テラヘルツ波測定系2は、プローブ光照射部22、テラヘルツ波検出部23および遅延部24を備えている。
プローブ光照射部22は、フェムト秒レーザ221を備えている。フェムト秒レーザ221は、例えば、360nm(ナノメートル)以上1.5μm(マイクロメートル)以下の可視光領域を含む波長のパルス光(パルス光LP1)を放射する。具体例としては、中心波長が800nm付近であり、周期が数kHz〜数百MHz、パルス幅が10〜150フェムト秒程度の直線偏光のパルス光が、フェムト秒レーザ221から放射される。もちろん、その他の波長領域(例えば、青色波長(450〜495nm)、緑色波長(495〜570nm)などの可視光波長)のパルス光が出射されるようにしてもよい。
フェムト秒レーザ221から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(パルス光LP11)は、太陽電池9に照射される。このとき、プローブ光照射部22は、パルス光LP11の照射を、受光面91側から行う。また、パルス光LP11の光軸が、太陽電池9の受光面91に対して斜めに入射するように、パルス光LP11が太陽電池9に対して照射される。本実施形態では、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲内で適宜変更することができる。
太陽電池9などフォトデバイスは、例えば、p型とn型の半導体が接合されたpn接合部を有している。このpn接合部付近では電子と正孔とが互いに拡散して結びつく拡散電流が生じることによって、pn接合部付近に電子と正孔とがほとんど存在しない空乏層が形成されている。この領域では、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域に引き戻す力が生じるため、フォトデバイスの内部に電場(内部電界)が生じている。
仮に、禁制帯幅を超えるエネルギーを持つ光がpn接合部に照射された場合、pn接合部において発生した自由電子および自由正孔が、内部電界によって、自由電子がn型半導体側へ、取り残された自由正孔がp型半導体側へ移動する。フォトデバイスでは、この電流がn型半導体およびp型半導体のそれぞれに取り付けられた電極を介して、外部に取り出される。例えば太陽電池の場合、pn接合部の空乏層に光が照射されたときに生じる自由電子と自由正孔の移動が、直流電流として利用される。
マクスウェルの方程式によると、電流に変化が生じたとき、その電流の時間微分に比例した強度の電磁波が発生する。すなわち、空乏層などの光励起キャリア発生領域にパルス光が照射されることで、瞬間的に光電流の発生および消滅が起こる。この瞬間的に発生する光電流の時間微分に比例して、電磁波パルス(テラヘルツ波パルスLT1)が発生する。
図3に示すように、ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、検出光LP12として遅延部24を経由し、テラヘルツ波検出部23のテラヘルツ波検出器231に入射する。また、パルス光LP11の照射に応じて発生したテラヘルツ波パルスLT1は、放物面鏡などによって適宜集光され、テラヘルツ波検出器231に入射する。
なお、図1に示すように、パルス光LP11は、Y軸方向沿って(図1の例では、+Y側から−Y側に向けて)太陽電池9に照射される。また、Y軸方向に沿って(図1の例では、+Y側から−Y側に向けて)放射されるテラヘルツ波パルスLT1が、テラヘルツ波検出器231によって検出される。このように、本実施形態では、パルス光LP11の照射方向、および、検出されるテラヘルツ波パルスLT1の放射方向が、複数の電極ピン431が所定間隔をあけて配列される方向(すなわち、Y軸方向)に一致している。このため、複数の電極ピン431によって、プローブ光であるパルス光LP11が遮られたり、あるいは、発生したテラヘルツ波パルスLT1が複数の電極ピン431によって遮られたりすることを抑制できる。
テラヘルツ波検出器231は、電磁波検出素子として、例えば、光伝導スイッチを備えている。テラヘルツ波パルスLT1がテラヘルツ波検出器231に入射する状態で、検出光LP12がテラヘルツ波検出器231に照射されると、光伝導スイッチに瞬間的にテラヘルツ波パルスLT1の電界強度に応じた電流が発生する。この電界強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、テラヘルツ波検出部23は、検出光LP12の照射に応じて、太陽電池9を透過したテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出する。なお、光伝導スイッチとは異なる他の素子、例えば非線形光学結晶を採用することも考えられる。
遅延部24は、検出光LP12のテラヘルツ波検出器231への到達時間を連続的に変更する光学装置である。遅延部24は、検出光LP12の入射方向に沿って直線移動する遅延ステージ241と遅延ステージ241を移動させる遅延ステージ駆動機構242とを備えている。遅延ステージ241は、検出光LP12をその入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。また、遅延ステージ駆動機構242は、制御部7の制御に基づいて、検出光LP12の入射方向に沿って遅延ステージ241を平行移動させる。遅延ステージ241が平行移動することによって、ビームスプリッタB1からテラヘルツ波検出器231までの検出光LP12の光路長が連続的に変更される。
遅延ステージ241は、テラヘルツ波パルスLT1がテラヘルツ波検出器231に到達する時間と、検出光LP12がテラヘルツ波検出器231へ到達する時間との差(位相差)を変更する。具体的には、遅延ステージ241によって、検出光LP12の光路長を変化することによって、テラヘルツ波検出器231においてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(検出タイミングまたはサンプリングタイミング)が遅延される。
なお、遅延ステージ241とは異なる構成によって、検出光LP12のテラヘルツ波検出器231への到達時間を変更することも可能である。具体的には、電気光学効果を利用することが考えられる。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。例えば、特許文献である特開2009−175127号公報に開示された電気光学素子を利用することができる。
また、検出光LP12の光路長を変更する代わりに、太陽電池9に向かうパルス光LP11の光路長、もしくは、太陽電池9から放射されたテラヘルツ波パルスLT1の光路長を変更してもよい。いずれの場合においても、テラヘルツ波検出器231に検出光LP12が到達する時間に対して、テラヘルツ波検出器231にテラヘルツ波パルスLT1が到達する時間をずらすことができる。つまり、テラヘルツ波検出器231におけるテラヘルツ波パルスLT1の検出タイミングを遅延させることができる。
ステージ駆動機構31は、移動ステージ3に取り付けられた試料台4に保持されている太陽電池9を、プローブ光照射部22に対して、XY平面内で相対的に移動させる。つまり、検査装置100は、太陽電池9の受光面91をパルス光LP11で走査可能に構成されている。したがって、本実施形態では、ステージ駆動機構31は、走査機構を構成している。ただし、太陽電池9を移動させる代わりに、または、太陽電池9を移動させると共に、プローブ光照射部22およびテラヘルツ波検出部23をXY平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。
また、パルス光LP11自体の光路を変更する走査機構を採用してもよい。具体的には、往復揺動するガルバノミラーによって、パルス光LP11の光路を、太陽電池9の受光面91に平行なXY平面に沿って変更することが考えられる。また、ガルバノミラーの代わりに、ポリゴンミラー、ピエゾミラーまたは音響光学素子などを採用してもよい。
太陽電池9について、テラヘルツ波測定を行う場合には、試料台4の電圧印加テーブル41および電極ピンユニット43を介して、太陽電池9に逆バイアス電圧を印加してもよい。これによって、太陽電池9から放射されるテラヘルツ波パルスLT1の強度を高めることができる。また、電圧印加テーブル41および電極バー432間を短絡接続して、太陽電池9の表面側電極と裏面側電極とを短絡することも考えられる。この場合においても、太陽電池9から放射されるテラヘルツ波パルスLT1の強度を高めることができる。
図4は、検査装置100における制御部7と他の要素との電気的な接続を示すブロック図である。制御部7は、演算装置としてのCPU71、読み取り専用のROM72、主にCPU71のワーキングエリアとして使用されるRAMおよび不揮発性の記録媒体である記憶部74を備えている。制御部7は、表示部61、操作部62、ステージ駆動機構31、遅延ステージ駆動機構242、ルミネッセンス測定系5、イメージセンサ53およびカメラ6といった検査装置100の各要素とバス配線、ネットワーク回線またはシリアル通信回線などを介して接続されている。制御部7は、これらの要素の動作制御を行ったり、これらの要素からデータを受け取ったりする。
CPU71は、ROM72内に格納されているプログラム75を読み取りつつ実行することによって、RAM73または記憶部74に記憶されている各種データについての演算処理を行う。このように、制御部7は、CPU71、ROM72、RAM73および記憶部74を備えており、一般的なコンピュータとして構成されている。
表示部61は、液晶表示装置などで構成されており、各種情報をオペレータに提示する。操作部62は、マウス、キーボードなどの各種入力装置として構成されており、オペレータが制御部7に与える指令のための操作を受け付ける。なお、表示部61がタッチパネル機能を備えることによって、表示部61が操作部62の機能の一部または全部を備えていてもよい。
また、CPU71は、プログラム75にしたがって動作することによって、画像加工部711、検査対象箇所設定部712および位置特定部713として機能する。
画像加工部711は、ルミネッセンス画像を加工する機能である。イメージセンサ53で取得したルミネッセンス画像のデータは、各画素毎にルミネッセンス発光の発光強度に応じた画素値を保持したものである。つまり、ルミネッセンス画像は、ルミネッセンス発光強度の分布を示す画像である。画像加工部711は、記憶部74に予め保存されているルックアップテーブル(LUT)741を参照することによって、各画素毎にカラー化用の画素値に変換する。このように、画像加工部711は、LUC741に基づいて、元のルミネッセンス画像を、発光強度分布をカラーで表現したルミネッセンス画像に加工する。また、元のルミネッセンス画像が、特定の範囲の発光強度を強調したルミネッセンス画像に加工される、LUT741が用いられてもよい。
このように、1種類のLUT741だけではなく、互いに異なるLUT741を複数用意しておくことが望ましい。異なるLUT741に基づき、画像加工部711が複数のルミネッセンス画像を生成することによって、太陽電池9の欠陥(例えば、内部擦り傷、クラック、成膜不良、膜厚ムラ、結晶粒界や、電極の印刷ミス、電極の孔蝕(腐蝕)、電極の劣化、剥離による電極の断線等)の検出が容易となる。ただし、画像加工部711は、必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
検査対象箇所設定部712は、テラヘルツ波測定系2において、テラヘルツ波測定を行うべき箇所(検査対象箇所)を指定する命令を受け付ける。検査対象箇所の指定は、オペレータが操作部62のマウスまたはキーボードなどを操作することによって行われる。本実施例では、検査対象箇所設定部712は、画像加工部711によって生成されたルミネッセンス画像を表示部61に表示する。そして、オペレータは、その表示部61に表示されたルミネッセンス画像を参照しつつ、操作部62を操作することによって、テラヘルツ波測定を行う検査対象箇所を指定する入力を行う。検査対象箇所設定部712は、その入力に従って、検査対象箇所を示す検査対象箇所情報を記憶部74に保存する。
位置特定部713は、ルミネッセンス画像における指標部45の像、および、カメラ6によって取得される可視画像における指標部45の像に基づき、太陽電池9における検査対象箇所の位置を特定する。可視画像を撮影するカメラ6は、像取得部の一例である。
なお、画像加工部711、検査対象箇所設定部712および位置特定部713の一部または全部は、専用の回路で構成されることによって、ハードウェア的に実現されてもよい。
<検査例>
図5は、検査装置100を用いた検査例の流れ図である。以下の各工程における検査装置100の動作は、特に断らない限り、制御部7の制御の下に行われるものとする。
まず、太陽電池9が電圧印加テーブル41に保持される(ステップS11)。そして、移動ステージ3を移動させることによって、太陽電池9をルミネッセンス測定系5(第一検査部)に移動させる(ステップS12)。
ルミネッセンス測定系5では、太陽電池9について、ルミネッセンス測定が行われる。これによって、太陽電池9のルミネッセンス画像を取得する(ステップS13)。このとき、指標部45のルミネッセンス発光も撮影されるため、4つの指標部45の像も含むルミネッセンス画像が取得されることとなる。
次に、画像加工部711が、ルミネッセンス画像を加工する(ステップS14)。具体的には、画像加工部711は、LUT741を参照して、元のルミネッセンス画像を、発光強度に応じてカラー化したルミネッセンス画像、あるいは、特定の発光強度の範囲を強調したルミネッセンス画像に加工する。なお、ステップS14の工程は、省略することも可能である。
図6は、太陽電池9のEL画像i1および異なるLUT741に基づく加工後のEL画像i2〜i4を示す図である。なお、図示のEL画像i1〜i4は、太陽電池9の一部を示す図である。図示のように、異なるLUT741に基づいて加工されたEL画像i2〜i4を生成することによって、異なる観点から、太陽電池9のEL発光の強度分布を観察できる。このため、太陽電池9の欠陥候補箇所の検出が容易となるため、テラヘルツ波測定を行うべき部分を指定し易くなる。
次に、ルミネッセンス画像に基づき、テラヘルツ波測定を行うべき検査対象箇所の設定が行われる(ステップS15)。具体的には、ステップS14で取得された加工後のルミネッセンス画像、もしくは、ステップS13で取得された元のルミネッセンス画像が表示部61に表示された状態で、オペレータが、テラヘルツ波測定を行うべき検査対象箇所の指定する入力を行う。この入力に基づき、検査対象箇所設定部712が検査対象箇所を設定する。
検査対象箇所の設定が完了すると、検査装置100は、ステージ駆動機構31を駆動して、太陽電池9をルミネッセンス測定系5の位置からテラヘルツ波測定系2の位置へ移動させる(ステップS16)。なお、ステップS16は、ステップS14の後、かつ、ステップS15よりも前に実行されてもよい。
カメラ6によって、太陽電池9を撮影する。これによって、4つの指標部45および太陽電池9の像が含まれる可視画像が取得される(ステップS17)。そして、テラヘルツ波測定系2に移動した太陽電池9における、検査対象箇所の特定が行われる(ステップS18)。
このステップS18では、位置特定部713が、ステップS13で取得されたルミネッセンス画像(または、ステップS14で取得した加工後のルミネッセンス画像)に含まれる4つの指標部45の位置を特定する。さらに、位置特定部713は、ステップS17で取得された可視画像に含まれる4つの指標部45の位置を特定する。これによって、ルミネッセンス画像に基づいて指定された検査対象箇所を、可視画像上において特定することができる。
検査対象箇所の特定が完了すると、テラヘルツ波測定系2において、テラヘルツ波測定が行われる(ステップS19)。具体的には、位置特定部713によって特定された検査対象箇所にパルス光LP11の照射が行うべく、制御部7がステージ駆動機構31を制御する。そして、太陽電池9の検査対象箇所にプローブ光であるパルス光LP11が照射され、それに応じて太陽電池9から放射されるテラヘルツ波パルスLT1が測定される。
なお、検査装置100は、検査対象箇所についてテラヘルツ波測定する場合、まず、可視画像に含まれる各指標部45の位置に基づいて、太陽電池9の位置(向きなども含む。)を調整する(アライメント)。これによって、太陽電池9のルミネッセンス測定系5およびテラヘルツ波測定系2間の搬送で生じた、太陽電池9の位置ずれが補正される。その後に、太陽電池9の検査対象箇所にパルス光LP11の照射する。
以上説明したように、本実施形態に係る検査装置100によると、指標部45自体がルミネッセンス発光するように構成されている。このため、ルミネッセンス測定系5において、可視画像を取得する装置および作業が不要となる。このため、ルミネッセンス測定系5およびテラヘルツ波測定系2の両者間で太陽電池9を移動させた際における位置合わせを簡易的に行うことができる。
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、太陽電池9を保持する保持部(電圧印加テーブル41)に、指標部45が設けられている。しかしながら、検査試料である太陽電池9に、指標部45を設けてもよい。この場合、十字形状などの所定形状に形成された薄膜状の電極を、太陽電池9の受光面91の任意の位置に複数設けることが考えられる。この場合、該電極に電極ピン431を当接させて太陽電池9に順バイアス電圧を印加すれば、該電極の周囲をEL発光させることができる。このため、指標部としての電極を、非発光部分としてイメージセンサ53で検出できる。また、このような指標部としての薄膜状の電極は、バスバー電極93またはフィンガー電極95を設ける工程で、容易に形成することが可能である。もちろん、指標部としての電極を、後から太陽電池9に取り付けするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、可視画像から指標部45の位置を特定するものとして説明した。しかしながら、可視画像の代わりに、例えばテラヘルツ波の強度分布を画像化したイメージング画像から指標部45の位置を特定することも考えられる。例えば、各指標部45およびその周辺を含む領域を、プローブ光であるパルス光LP11で走査する。これによって指標部45から発生するテラヘルツ波の強度分布を画像化し、該画像に基づいて各指標部45の位置を特定することが考えられる。この場合、プローブ光照射部22、テラヘルツ波検出部23、ステージ駆動機構31が、指標部45から発生するテラヘルツ波に基づく像を取得する像取得部を構成する。この場合、可視画像を撮影するカメラ6を省略することも可能である。
また、指標部として、太陽電池9の受光面91に、ルミネッセンス光を遮る遮光部材を設けてもよい。この場合においても、太陽電池9がルミネッセンス発光した際に、遮光部材によって光が遮光されるため、イメージセンサ53によって非発光部分として検出することができる。遮光部材として、例えば粘着性テープを採用すれば、太陽電池9に容易に取り付けることができる。
また、上記実施形態では、フェムト秒レーザ221からパルス光を出射させて、太陽電池9からパルス状のテラヘルツ波を放射させている。しかしながら、フェムト秒レーザ221の代わりに、発振周波数がわずかに相違する2つの連続光を出射する2つの光源を利用することも可能である(特開2013−170864号公報)。具体的には、2つの連続光を、光導波路である光ファイバなどで形成されたカプラによって重ね合わせることで、差周波に対応する光ビート信号を生成する。そして、この光ビート信号を、太陽電池9に照射することによって、その光ビート信号の周波数に応じた電磁波(テラヘルツ波)を放射させることができる。
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。