以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
<比較例>
以下、比較例として、インクリボンを用いて印画を行うサーマルプリンタ1000について説明する。図12は、比較例に係るサーマルプリンタ1000の機械的な構成を示すブロック図である。なお、本明細書においては、印画が行われる印画用紙を、単に、ペーパーともいう。以下においては、ペーパー(印画用紙)において印画が行われる面を、印画面ともいう。
次に、サーマルプリンタ1000が行う印画動作について説明する。まず、サーマルプリンタ1000が搬送ローラー25を駆動(回転)させることにより、ペーパー24を所定の位置に搬送する。次に、サーマルプリンタ1000が巻取側インクリボン26を駆動させることにより、インクリボン23を巻き取る。検知センサー28が、インクリボン23に設けられた頭出しマークを検知した場合、サーマルヘッド21とプラテンローラー22とが圧接されて、インクリボン23およびペーパー24が挟持される。
サーマルヘッド21が、インクリボン23に対し熱を加えると、インクリボン23の染料がペーパー24に転写されて1ライン分の画像が形成される。ペーパー24に、1画面に対応する指定のライン数の画像が転写されると、サーマルヘッド21とプラテンローラー22との圧接が解除される。その後、インクリボン23が所定の長さだけ巻き取られて、次の色の頭出しが行われる。すなわち、ペーパー24が、所定の位置に戻される。
以上の処理が、3つの色領域に対し行われる。当該3つの色領域は、それぞれ、イエロー、マゼンタおよびシアンを示す領域である。これにより、当該3つの色領域の各々の色が、ペーパー24に順次転写される。その結果、ペーパー24に画像が形成される。そして、最後に保護層が転写される。当該保護層は、ペーパー24に形成された画像を保護するための保護材料から構成される。また、当該保護層は、印画物の退色、傷付き等を低減させる特性を有する。
以下においては、ペーパー24のうち、画像が形成された領域を画像形成領域ともいう。また、以下においては、ペーパー24のうち画像形成領域の部分を、印画物ともいう。
そして、サーマルプリンタ1000は、ペーパー24のうち画像形成領域の部分を、印画物として、サーマルプリンタ1000の外部に排出する。これにより、印画動作は終了する。
サーマルプリンタ1000で使用されるペーパー24は、複数の層で構成される。当該複数の層は、受容層、クッション層、基材および裏面層である。受容層は、画像を形成するための染料が熱転写されるための層である。クッション層は、ペーパー24とサーマルヘッド21との接触状態を良好にするための層である。基材は、ペーパー24の厚みおよび剛性を調整するための層である。裏面層は、搬送ローラー25によるペーパー24の搬送力を向上させるための層である。
受容層、クッション層、基材および裏面層は、裏面層、基材、クッション層、受容層の順で積層される。すなわち、ペーパー24の表面には、受容層が設けられる。
なお、受容層およびクッション層は、樹脂系の材料で構成される。そのため、受容層およびクッション層は、サーマルヘッド21から、大きな熱が加わった場合、熱収縮を生じる。この場合、ペーパー24は、図13のように、印画面に対し凹みが生じるように、円弧状に反る。すなわち、ペーパー24には、凹みとしてのカールが生じる。
以下においては、凹みとしてのカールを、凹カールともいう。また、以下においては、凹カールにおける屈曲の大きさの度合いを、凹カール量ともいう。また、以下においては、印画用紙(ペーパー)に対して印画の対象となる画像を、印画対象画像ともいう。
なお、ペーパー24に加わる熱量に応じて、凹カール量は変化する。具体的には、ペーパー24に対して印画の対象となる画像(印画対象画像)の濃度が大きい程、凹カール量は大きい。また、ペーパー24に対して印画の対象となる画像(印画対象画像)の濃度が小さい程、凹カール量は小さい。
なお、印画対象画像の濃度とは、当該印画対象画像全体の明るさ等により表現される。例えば、印画対象画像が暗い程、印画対象画像の濃度は大きくなる。例えば、夜景を示す全体的に暗い印画対象画像の濃度は大きい。
ここで、一例として、印画対象画像を構成する各画素の画素値は8ビット(0〜255)で表現されるとする。この場合、印画対象画像の濃度は、当該印画対象画像を構成する全ての画素の画素値の平均値を利用した値で表現される。なお、印画対象画像の濃度は、上記に限定されず、他の形式により表現されてもよい。
また、サーマルプリンタでは、印画時間の短縮およびペーパー搬送時の信頼性向上のため、一般的に、ロール紙(ペーパーロール)が用いられる。当該ロール紙は、長尺状のペーパー(印画用紙)がロール状に巻かれて構成される。そのため、ペーパーには、巻き癖が生じする。具体的には、ペーパーは、図14のように、印画面において凸面が生じるように、円弧状に反る。すなわち、ペーパーには、凸面としてのカールが生じる。
以下においては、凸面としてのカールを、凸カールともいう。また、以下においては、凸カールにおける屈曲の大きさの度合いを、凸カール量ともいう。また、以下においては、凹カール量および凸カール量の各々を、単に、カール量ともいう。
凸カールは、印画動作のために、ロール紙からペーパーの一部が使用される前の初期状態において発生している。凸カール量は、ロール紙を構成するペーパー(印画用紙)のうち、該印画対象画像の印画の対象となる領域の位置に応じて異なる。
以下においては、ロール紙を構成するペーパー(印画用紙)のうち、印画対象画像の印画の対象となる領域の位置を、印画対象位置ともいう。印画対象位置は、未使用のロール紙の側面の円における位置に相当する。また、以下においては、ロール紙における印画用紙の巻きの開始位置を、巻き開始位置ともいう。また、以下においては、未使用のロール紙の側面の形状である円を、側面円ともいう。巻き開始位置は、側面円の中心部に相当する。
具体的には、印画対象位置が巻き開始位置に近い程、凸カール量は大きい。印画対象位置が巻き開始位置から遠い程、凸カール量は小さい。すなわち、印画対象位置が側面円の周縁部に近い程、凸カール量は小さい。
以上のことから、ペーパーに形成される画像の品質を保つためには、印画対象画像の濃度と印画対象位置とを考慮した、印画用紙に対する加熱の量の制御が求められる。
そこで、以下の実施の形態により、上記比較例で述べた要望を満たし、前述の関連技術A,Bにおける問題を解決する。
<実施の形態1>
まず、本発明の1つの実施の形態に係るサーマルプリンタを、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るサーマルプリンタ100の機械的な構成を主に示す図である。なお、図1では、サーマルプリンタ100における印画のための構成を主に示す。サーマルプリンタ100は、詳細は後述するが、後述のロール紙4rと、後述のインクリボン3とを用いて印画を行う。
図1を参照して、サーマルプリンタ100は、サーマルヘッド1と、プラテンローラー2と、インクリボン3と、搬送ローラー5と、巻取側インクリボン6と、供給側インクリボン7と、検知センサー8と、加熱制御部33とを備える。
なお、サーマルプリンタ100には、ロール紙4rが取り付けられる。ロール紙4rは、長尺状のペーパー4(印画用紙)がロール状に巻かれて構成される。ロール紙4rの形状は、円柱状である。そのため、ロール紙4rの側面の形状は円である。また、ペーパー4の構成および特性は、前述のペーパー24と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
以下、ペーパー4について間単に説明する。ペーパー4は、主面4aと、裏面4bとを有する。本実施の形態では、主面4aは、染料が転写される面である。主面4aには、前述の受容層が設けられる。また、主面4aは、ロール紙4rにおける外側の面である。
一方、裏面4bは、ペーパー4(印画用紙)のうち主面4aの反対側の面である。裏面4bは、ロール紙4rにおける内側の面である。
サーマルヘッド1は、詳細は後述するが、加熱制御部33の制御に従い、インクリボン3に与えるための熱を発生する。すなわち、サーマルヘッド1は、インクリボン3およびペーパー4(印画用紙)に対し加熱を行う。以下においては、サーマルヘッド1がインクリボン3およびペーパー4(印画用紙)に対し行う加熱の量を、加熱量HTともいう。
プラテンローラー2は、サーマルヘッド1に対向して配置される。プラテンローラー2とサーマルヘッド1とにより、インクリボン3の一部とペーパー4の一部とが挟まれる。
図2は、本発明の実施の形態1に係るインクリボン3の一部を示す図である。インクリボン3の形状は、長尺状である。図2を参照して、インクリボン3には、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dから構成される転写領域が、当該インクリボン3の長手方向に沿って複数組塗布(形成)される。すなわち、インクリボン3は、色領域11a,11b,11cと、保護層11dとを有する。
色領域11a,11b,11cの各々は、転写の対象物であるペーパー4(印画用紙)に転写するための色を示す。具体的には、色領域11a,11b,11cには、それぞれ、イエロー、マゼンタおよびシアンの色の染料が形成される。保護層11dは、印画が行われたペーパー4の耐久性を向上させるための層である。当該保護層11dは、ペーパー4に形成された画像を保護するための保護材料から構成される。保護材料は、ペーパー4に転写された色を保護するための材料である。
色領域11a,11b,11cの各々の染料および保護層11dの保護材料は、転写のための転写材料である。すなわち、インクリボン3は、転写材料を有する。
なお、インクリボン3において、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dの各々の先頭部分(端部)には、頭出しマーク12が形成されている。すなわち、頭出しマーク12は、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dの各々に対応づけて設けられる。以下においては、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dにそれぞれ対応づけられた4つの頭出しマーク12を、それぞれ、頭出しマーク12a,12b,12c,12dともいう。
再び、図1を参照して、巻取側インクリボン6は、インクリボン3の一方側が、図示しない軸に巻きつけられることにより構成される。なお、駆動モーター(図示せず)が、巻取側インクリボン6を回転(駆動)させる。これにより、インクリボン3の一部が、巻取側インクリボン6に巻き取られる。
供給側インクリボン7は、インクリボン3の他方側が、図示しない軸に巻きつけられることにより構成される。供給側インクリボン7は、巻取側インクリボン6がインクリボン3の一部を巻き取るのに伴い、巻き取られたインクリボン3の長さの分だけ、インクリボン3を供給する。
検知センサー8は、インクリボン3の頭出しマーク12を検知するセンサーである。検知センサー8は、頭出しマーク12を検知した場合、検知した旨を示す検知信号を、加熱制御部33へ送信する。
加熱制御部33は、サーマルヘッド1を制御する。具体的には、加熱制御部33は、サーマルヘッド1が発生する熱の量を制御する。すなわち、加熱制御部33は、サーマルヘッド1を介して、加熱量HTを制御する。これにより、サーマルヘッド1は、インクリボン3に含まれる、転写材料としての染料または保護材料を、ペーパー4(印画用紙)に転写するために、インクリボン3およびペーパー4に対し加熱を行う。
図3は、本発明の実施の形態1に係るサーマルプリンタ100における、加熱の制御構成を主に示すブロック図である。図3を参照して、サーマルプリンタ100は、さらに、画像記憶部31と、データ処理部32と、位置検出部34とを備える。
画像記憶部31は、印画対象画像を一時的に記憶するためのメモリである。印画対象画像は、ペーパー4(印画用紙)に対して印画の対象となる画像である。
データ処理部32は、詳細は後述するが、ペーパー4に印画対象画像を形成するための処理を行う。
以下においては、ロール紙4rにおけるペーパー4(印画用紙)の巻きの開始位置を、巻き開始位置ともいう。また、以下においては、ロール紙4rの側面の形状である円を、側面円ともいう。巻き開始位置は、側面円の中心部に相当する。また、以下においては、ロール紙4rを構成するペーパー4(印画用紙)のうち、印画対象画像の印画の対象となる領域を、印画対象領域ともいう。また、以下においては、ペーパー4(印画用紙)のうち、印画対象領域の位置を、印画対象位置ともいう。
また、以下においては、印画対象位置を数値により示す変数を、位置変数Pともいう。位置変数Pは、印画対象位置が側面円の周端に近い程、小さい値が設定される。また、位置変数Pは、印画対象位置が側面円の中心に近い程、大きい値が設定される。
位置検出部34は、常時、印画対象位置を検出している。印画対象位置は、ロール紙4rを構成するペーパー4のうち、印画対象画像の印画の対象となる領域の位置である。
具体的には、位置検出部34は、例えば、常時、ロール紙4rの側面円の直径を検出する。ここで、未使用のロール紙4rの側面円の直径を、直径d0と定義する。また、位置検出部34が検出する最新の直径を、直径d1と定義する。位置検出部34は、d0−d1の演算結果を、印画対象位置を示す位置変数Pとして検出する。
この場合、位置変数Pは、0からd0の範囲の値で表現される。d1=d0、すなわち、位置変数Pが0の場合、印画対象位置は、側面円の周端の位置である。位置変数Pがd0の場合、印画対象位置は、側面円の中心部の位置である。
例えば、d0−d1=d0/2である場合、すなわち、位置変数Pがd0/2を示す場合、当該印画対象位置は、側面円の中心と側面円の周端との中間の位置に対応する、印画対象領域の位置である。また、例えば、d0−d1=d0×0.9である場合、すなわち、位置変数Pがd0×0.9を示す場合、印画対象位置は、側面円の中心部に対応する、印画対象領域の位置である。この場合、当該印画対象領域の凸カール量は大きい。
位置変数Pは、ロール紙4rの側面円の直径の変化に伴い、変化する。位置検出部34は、位置変数Pが変化する毎に、最新の位置変数Pを、加熱制御部33へ送信する。
なお、位置変数Pの検出方法は上記の方法に限定されず、他の方法により、位置変数Pが検出されてもよい。
以下においては、印画対象画像の濃度を、画像濃度Iともいう。画像濃度Iは、数値により表現される。
ここで、説明を簡単にするために、画像濃度Iの値を、一例として、0から3の範囲で表現する。また、印画対象画像を構成する各画素の画素値は8ビット(0〜255)で表現されるとする。以下においては、印画対象画像を構成する全ての画素の画素値の平均値を、画素平均値ともいう。画素平均値が0に近い程、印画対象画像は、全体的に黒に近くなる。
また、画素平均値が0〜63の範囲の値である場合、画像濃度Iの値は3とする。画素平均値が64〜127の範囲の値である場合、画像濃度Iの値は2とする。画素平均値が128〜191の範囲の値である場合、画像濃度Iの値は1とする。画素平均値が192〜255の範囲の値である場合、画像濃度Iの値は0とする。
また、加熱制御部33は、メモリ(図示せず)を含む。加熱制御部33は、図4に示される、特性関数である特性線CL0,CL1,CL2,CL3を予め記憶している。
以下においては、特性線CL0,CL1,CL2,CL3の各々を、単に、特性線CLともいう。また、以下においては、印画対象位置(位置変数P)により特定される印画対象領域のカール量が最小となるような加熱量HTを、熱エネルギーEopともいう。熱エネルギーEopは、制御された熱量、すなわち、制御熱量である。
図4の縦軸は、熱エネルギーEopを示す。図4の横軸は、位置変数P(印画対象位置)を示す。当該横軸において点x0から右側に向けて離れる程、位置変数Pの値は大きくなる。すなわち、当該横軸において点x0から右側に向けて離れる程、位置変数Pが示す印画対象位置は、側面円の中心に近い位置となる。
各特性線CLは、印画対象画像の濃度(画像濃度I)の値に関連付けられている。具体的には、特性線CL0,CL1,CL2,CL3は、それぞれ、画像濃度Iの値である0,1,2,3に関連付けられている。
各特性線CLは、印画対象位置(位置変数P)と熱エネルギーEopとの関係を示す特性関数である。当該特性関数は、画像濃度Iおよび位置変数Pを用いた関数Fである以下の式1により表現される。
Eop=F(I,P) …(式1)
式1に示すように、熱エネルギーEopは、画像濃度Iおよび位置変数Pにより特定される。式1の関数Fは、保護層11dの転写に使用される加熱量(熱エネルギー)である。関数Fは、ペーパー4の熱収縮特性が考慮された関数である。
図4を参照して、関数Fは、画像濃度Iの値が大きい程、小さい値を示す。すなわち、関数Fは、印画対象画像の濃度が大きい程、小さい値を示す。また、関数Fは、画像濃度Iの値が小さい程、大きい値を示す。すなわち、関数Fは、印画対象画像の濃度が小さい程、大きい値を示す。
また、関数Fは、位置変数Pの値が小さい程、小さい値を示す。すなわち、関数Fは、印画対象位置が側面円の周端に近い程、小さい値を示す。また、関数Fは、位置変数Pの値が大きい程、大きい値を示す。すなわち、関数Fは、印画対象位置が側面円の中心に近い程、大きい値を示す。
各特性線CLは、実験等により得られた曲線である。具体的には、ある画像濃度Iで表現される印画対象画像を使用して、印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるように、サーマルプリンタ100に対する作業者の操作により、加熱量HTが調整される。
これにより、印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーEopが特定される。そして、各印画対象位置に対応する、特定された熱エネルギーEopを示す曲線が、特性線CLとして求められる。
例えば、画像濃度I=0に対応する印画対象画像を使用して、印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーEopが特定されたとする。この場合、各印画対象位置(位置変数P)に対応する、特定された熱エネルギーEopを示す曲線が、特性線CL0(特性線CL)として求められる。
なお、求められた各特性線CLは、例えば、作業者による、サーマルプリンタ100に対する操作により、加熱制御部33のメモリに予め記憶される。
なお、各特性線CLは、上記のような実験等に限定されず、例えば、コンピュータを利用したシミュレーション等により求められてもよい。また、特性線CLの代わりに、各画像濃度I毎に、位置変数P、Eopをテーブル化した換算表を使用してもよい。
次に、図1、図2および図3を用いて、サーマルプリンタ100が行う処理(以下、印画処理Nともいう)について詳細に説明する。なお、前述したように、位置検出部34は、印画対象位置(位置変数P)が変化する毎に、最新の印画対象位置を示す位置変数Pを、加熱制御部33へ送信する。
印画処理Nでは、まず、画像受信処理Nが行われる。画像受信処理Nでは、サーマルプリンタ100は、外部装置(図示せず)から、印画対象画像G1を受信する。サーマルプリンタ100は、受信した印画対象画像G1を、画像記憶部31に記憶させる。
次に、画像濃度算出処理が行われる。画像濃度算出処理では、データ処理部32が、印画対象画像G1の画素平均値を算出する。そして、データ処理部32は、画素平均値から画像濃度Iを算出する。画像濃度Iは、前述したように、0から3の範囲の値で表現される。なお、画素平均値および画像濃度Iの算出方法は前述したので詳細な説明は繰り返さない。そして、データ処理部32は、算出された画像濃度Iを、加熱制御部33へ送信する。これにより、画像濃度算出処理は終了する。
なお、画像濃度Iを算出する構成要素は、データ処理部32に限定されない。例えば、加熱制御部33が画像濃度Iを算出してもよい。
次に、画像形成処理Nが行われる。画像形成処理Nでは、データ処理部32が、画像記憶部31に記憶された印画対象画像G1から、色領域11aに対応するイエローの印刷データを生成する。本実施の形態では、一例として、印画対象画像G1は、印画対象画像G1のイエロー成分、印画対象画像G1のマゼンタ成分および印画対象画像G1のシアン成分から構成されるとする。
この場合、当該イエローの印刷データは、印画対象画像G1のイエロー成分を印画(印刷)するためのデータである。そして、データ処理部32は、当該印刷データを、加熱制御部33へ送信する。
次に、サーマルプリンタ100は、搬送ローラー5を駆動(回転)させることにより、ペーパー4を所定の位置に搬送する。ペーパー4の搬送と同時に、サーマルプリンタ100は、巻取側インクリボン6がインクリボン3の巻き取りを開始するように、巻取側インクリボン6を駆動させる。
検知センサー8が、色領域11a(イエロー)に対応づけて設けられる頭出しマーク12aを検知した場合、サーマルプリンタ100は、インクリボン3の搬送(移動)を停止させる。そして、サーマルプリンタ100は、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とが圧接するよう制御を行う。
加熱制御部33は、インクリボン3およびペーパー4を、印画対象画像G1のイエロー成分の1ラインに対応する距離(1画素)だけ移動させる毎に、サーマルヘッド1が、印画対象画像G1のイエロー成分に応じた熱をインクリボン3に与えるよう、サーマルヘッド1を制御する。これにより、イエローの染料が、ペーパー4の主面4aに熱転写される。
以上の処理が、印画対象画像G1のイエロー成分を構成する各ラインに対し行われることにより、印画対象画像G1のイエロー成分がペーパー4の主面4aに印画される。
印画対象画像G1のイエロー成分の印画が終了すると、サーマルプリンタ100は、ペーパー4の巻戻しを行う。当該巻戻しと同時に、サーマルプリンタ100は、インクリボン3における色領域11bの頭出しを行うために、巻取側インクリボン6にインクリボン3の巻き取りを行わせる制御を行う。
前述の色領域11aの場合と同様に、検知センサー8が、色領域11b(マゼンタ)に対応づけて設けられる頭出しマーク12bを検知した場合、サーマルプリンタ100は、インクリボン3の搬送(移動)を停止させる。また、データ処理部32は、イエローの印刷データと同様に、マゼンタの印刷データを生成し、当該印刷データを、加熱制御部33へ送信する。
そして、サーマルプリンタ100は、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とが圧接するよう制御を行う。次に、加熱制御部33は、前述の印画対象画像G1のイエロー成分の印画のための処理と同様な処理を行うことにより、印画対象画像G1のマゼンタ成分の印画を行う。
その後、サーマルプリンタ100は、印画対象画像G1のシアン成分を転写(印画)するための処理を行う。印画対象画像G1のシアン成分を転写するための処理は、印画対象画像G1のイエロー成分の印画のための前述の処理と同様な処理である。これにより、ペーパー4の印画対象領域に印画対象画像G1が形成される。その結果、画像形成処理Nは終了する。
次に、保護層転写処理Nが行われる。保護層転写処理Nでは、搬送処理Nおよび加熱制御処理Nが行われる。
搬送処理Nでは、サーマルプリンタ100は、ペーパー4の巻戻しを行う。当該巻戻しと同時に、サーマルプリンタ100は、インクリボン3における色領域11dの頭出しを行うために、巻取側インクリボン6にインクリボン3の巻き取りを行わせる制御を行う。
前述の色領域11aの場合と同様に、検知センサー8が、保護層11dに対応づけて設けられる頭出しマーク12dを検知した場合、サーマルプリンタ100は、インクリボン3の搬送(移動)を停止させる。
次に、加熱制御処理Nが行われる。加熱制御処理Nでは、詳細は後述するが、加熱制御部33が、画像濃度Iと、印画対象位置(位置変数P)とに基づいて、加熱量HTを制御する。加熱量HTの制御は、例えば、サーマルヘッド1が有する発熱素子(図示せず)への通電時間の制御により行われる。
なお、加熱量HTの制御は、例えば、サーマルヘッド1を制御するためのパルス信号が有するパルス数により行われてもよい。
加熱制御処理Nでは、詳細は後述するが、画像濃度Iの値が小さい程、加熱量HTを大きくする制御が行われる。また、加熱制御処理Nでは、印画対象位置が側面円の中心に近い程、加熱量HTを大きくする制御が行われる。
具体的には、加熱制御処理Nでは、特性関数特定処理N、加熱量特定処理Nおよび加熱処理Nが行われる。
まず、特性関数特定処理Nが行われる。特性関数特定処理Nでは、加熱制御部33が、データ処理部32から受信した画像濃度Iの値に関連付けられた特性線CL(特性関数)を特定する。例えば、画像濃度Iの値が0である場合、特定される特性線CLは、図4の特性線CL0である。
次に、加熱量特定処理Nが行われる。加熱量特定処理Nでは、加熱制御部33が、特定した特性関数(特性線CL)を使用して、熱エネルギーEopを特定する。具体的には、加熱制御部33が、最新の位置変数Pの値に対応する、特定した特性線CLが示すEopを特定する。
ここで、一例として、特定された特性線CLが図4の特性線CL0であるとする。また、最新の位置変数Pの値が0であるとする。この場合、加熱量特定処理Nにより特定されるEopは、特性線CL0のうち、当該特性線CL0と図4の縦軸とが交わる位置に対応する値である。
次に、加熱処理Nが行われる。加熱処理Nでは、加熱制御部33が、加熱量HTが、特定されたEop(制御熱量)となるように、サーマルヘッド1を制御する。以上により、保護層11d(保護材料)が、ペーパー4に形成された印画対象画像G1を覆うように、当該ペーパー4に転写される。これにより、加熱制御処理Nは終了し、保護層転写処理Nは終了する。以下においては、ペーパー4のうち、印画対象画像G1が形成された印画対象領域の部分を、印画物ともいう。
次に、排出処理Nが行われる。排出処理Nでは、サーマルプリンタ100は、印画物を、当該サーマルプリンタ100の外部に排出する。以上により、印画処理Nは終了する。
以下においては、前述のサーマルプリンタ1000が排出する印画物を、印画物Jともいう。また、以下においては、サーマルプリンタ100が排出する印画物を、印画物Nともいう。印画物Nは、印画処理Nにより得られる印画物である。
次に、印画物Jおよび印画物Nのカール量について説明する。図15は、比較例における印画物Jのカール量を説明するための図である。図15の横軸は、図4と同様、位置変数P(印画対象位置)を示す。図15の縦軸は、カール量を示す。当該縦軸の点x0では、凸カール量および凹カール量は0である。当該縦軸は、点x0から上側に向けて離れる程、凸カール量が大きいことを示す。また、当該縦軸は、点x0から下側に向けて離れる程、凹カール量が大きいことを示す。
また、図15の「カール変動幅」とは、サーマルプリンタ1000から得られる印画物Jのカール量の変動の幅である。図15において、特性線L11は、印画物Jのカール量の変動範囲の上端の線を示す。特性線L12は、印画物Jのカール量の変動範囲の下端の線を示す。
図5は、実施の形態1における印画物Nのカール量を説明するための図である。図5は、図15と比較して、さらに特性線L11a,L12aが追加されている点が異なる。図5のそれ以外の点は、図15と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
図5において、特性線L11aは、印画物Nのカール量の変動範囲の上端の線を示す。特性線L12aは、印画物Nのカール量の変動範囲の下端の線を示す。図5の「カール変動幅」とは、サーマルプリンタ100から得られる印画物Nのカール量の変動の幅である。
図5を参照して、印画物Nのカール量の変動の幅は、印画物Jのカール量の変動の幅より小さい。すなわち、前述の加熱制御処理Nが行われることにより、印画物Nのカール量の変動の幅を、比較例の構成で得られる印画物Jのカール量の変動の幅より小さくすることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、サーマルヘッド1は、インクリボン3およびペーパー4(印画用紙)に対し加熱を行う。加熱制御部33は、印画対象画像G1の濃度(画像濃度I)と、印画対象領域の位置である印画対象位置(位置変数P)とに基づいて、サーマルヘッド1が行う加熱の量である加熱量HTを制御する。なお、ペーパー4のカール量は、当該ペーパー4に対する加熱の量により変化する。
これにより、カール量を制御する機械的な構成を別途設けることなく、ペーパー4(印画用紙)のカール量を制御することができる。
また、本実施の形態によれば、印画対象画像の濃度、および、印画対象位置に応じて、インクリボン3の保護層11dの転写の際の加熱量を制御する。これにより、関連技術A,Bのように、ペーパーのカールを矯正するための機械的な構成を新たに設けることなく、カール量を低減することができる。その結果、品位のよい印画ができるサーマルプリンタを得る事ができる。
また、上記構成により、サーマルプリンタ100の構造を単純にすることができる。その結果、印画に係る紙詰まりが少なくなる。その結果、サーマルプリンタ100の信頼性の向上、サーマルプリンタ100のコストの低減を実現することができる。
なお、従来のサーマルプリンタでは、例えば、凸カールの矯正を行うための機械的な構成(機構部材)を別途設ける必要がある。そのため、サーマルプリンタの構成が複雑になり、当該サーマルプリンタの製造コストが高くなるという問題点がある。
また、凸カールをさらに少なくするために、ペーパーの屈曲量を大きくすると、ペーパーの表面にシワが発生するという状況、紙詰まり等が発生しやすくなるという問題点がある。
また、ロール紙を構成するペーパーは、印画対象位置と、印画対象画像の濃度との組み合わせにより、カール量は様々に変動する。そのため、ロール紙を構成するペーパーを使用して印画を行う場合、印画において一定の品位を保つことは難しいという問題点がある。
一方、本実施の形態は上記のように構成されるため、上記の問題を解決することができる。
<実施の形態2>
両面印刷を行う機能を有するサーマルプリンタは、ペーパーの主面に加え、さらに、ペーパーの裏面にも印画する。そのため、ペーパーの裏面に、濃度が大きい画像を印画すると、凸カール量が大きくなる。そのため、ペーパーの主面に印画する画像の濃度と、ペーパーの裏面に印画する画像の濃度との組み合わせの影響により、カール量が大きく変動する。
本実施の形態では、上記のような問題を解決するための構成および制御について説明する。本実施の形態に係るサーマルプリンタは、両面印刷を行う機能を有するサーマルプリンタ100Aである。すなわち、サーマルプリンタ100Aは、ペーパー4の主面4aと、ペーパー4の裏面4bとに印画を行う機能を有する。
サーマルプリンタ100Aは、サーマルプリンタ100と同様、ペーパー4を使用する。なお、サーマルプリンタ100Aが使用するペーパー4の裏面4bには、前述の受容層が設けられる。
サーマルプリンタ100Aの機械的な構成は、図1と同様である。なお、サーマルプリンタ100Aは、サーマルプリンタ100と比較して、さらに、反転機構(図示せず)を含む。当該反転機構は、主面4aと裏面4bとが入れ替わるように、ペーパー4を反転させる機構である。
図6は、本発明の実施の形態2に係るサーマルプリンタ100Aにおける、加熱の制御構成を主に示すブロック図である。図6を参照して、サーマルプリンタ100Aは、図3のサーマルプリンタ100と比較して、さらに、印画面特定部35を備える点が異なる。サーマルプリンタ100Aのそれ以外の構成は、サーマルプリンタ100と同様なので詳細な説明は繰り返さない。以下においては、ペーパー4において、印画の対象となる面を、印画対象面ともいう。
印画面特定部35は、前述の反転機構の動作を常に監視している。これにより、印画面特定部35は、印画対象面が、ペーパー4のうち、主面4aおよび裏面4bのいずれであるか常に把握している。
印画対象面が主面4aである場合、印画面特定部35は、印画対象面が主面4aである旨を、加熱制御部33へ通知する。印画対象面が裏面4bである場合、印画面特定部35は、印画対象面が裏面4bである旨を、加熱制御部33へ通知する。これにより、加熱制御部33は、印画対象面が、主面4aおよび裏面4bのいずれであるか常に把握している。なお、加熱制御部33は、印画面特定部35の機能を有する構成としてもよい。
サーマルプリンタ100Aは、外部装置(図示せず)から、印画対象画像G1,G2を受信する。印画対象画像G1は、ペーパー4の主面4aに対して印画の対象となる画像である。印画対象画像G2は、ペーパー4の裏面4bに対して印画の対象となる画像である。
以下においては、ロール紙4rを構成するペーパー4(印画用紙)の主面4aのうち、印画対象画像G1の印画の対象となる領域を、第1印画対象領域ともいう。また、以下においては、ペーパー4(印画用紙)の主面4aのうち、第1印画対象領域の位置を、第1印画対象位置ともいう。
また、以下においては、ロール紙4rを構成するペーパー4(印画用紙)の裏面4bのうち、印画対象画像G2の印画の対象となる領域を、第2印画対象領域ともいう。また、以下においては、ペーパー4(印画用紙)の裏面4bのうち、第2印画対象領域の位置を、第2印画対象位置ともいう。
また、以下においては、第1印画対象位置または第2印画対象位置を数値により示す変数を、位置変数Pともいう。当該位置変数Pは、実施の形態1で説明したので詳細な説明は繰り返さない。
位置検出部34は、常時、第1印画対象位置および第2印画対象位置を検出している。位置検出部34は、実施の形態1と同様、d0−d1の演算結果を、位置変数Pとして検出する。
前述したように、位置検出部34は、位置変数Pが変化する毎に、最新の位置変数Pを、加熱制御部33へ送信する。
サーマルヘッド1は、実施の形態1と同様、インクリボン3およびペーパー4(印画用紙)に対し加熱を行う。以下においては、サーマルヘッド1がペーパー4(印画用紙)の主面4aに対し行う加熱の量を、加熱量HT1ともいう。なお、加熱量HT1は、第1印画対象領域に対する前述の加熱量HTである。
また、以下においては、サーマルヘッド1がペーパー4(印画用紙)の裏面4bに対し行う加熱の量を、加熱量HT2ともいう。なお、加熱量HT2は、第2印画対象領域に対する前述の加熱量HTである。
また、以下においては、第1印画対象位置(位置変数P)により特定される第1印画対象領域のカール量が最小となるような加熱量HT1を、熱エネルギーE1opともいう。熱エネルギーE1opは、制御された熱量、すなわち、制御熱量である。熱エネルギーE1opは、以下の式2および式3により表現される。
E1op=k1a×E1opa+k1b×E1opb …(式2)
k1a+k1b=1 …(式3)
式2および式3において、k1a,k1bは、係数である。k1a,k1bの各々は、0より大きく、かつ、1未満の値である。k1a,k1bは、一例として、0.5である。なお、k1a,k1bは、0.5に限定されず、式3を満たす他の値であってもよい。
また、式2より、熱エネルギーE1opaは、熱エネルギーE1op(加熱量HT1)の一部としての制御熱量である。また、熱エネルギーE1opbは、熱エネルギーE1op(加熱量HT1)の別の一部としての制御熱量である。
本実施の形態の加熱制御部33は、図7に示される、特性関数である特性線CL10,CL11,CL12,CL13を予め記憶している。以下においては、特性線CL10,CL11,CL12,CL13の各々を、単に、特性線CL1nともいう。
図7の縦軸は、図4の縦軸のEopと同様な表現方法により、熱エネルギーE1opaを示す。図7の横軸は、図4の横軸の位置変数Pと同様な表現方法により、位置変数P(第1印画対象位置)を示す。
以下においては、熱エネルギーE1opa,E1opbを特定するために使用される、印画対象画像G1の濃度を、画像濃度I11ともいう。また、以下においては、熱エネルギーE1opa,E1opbを特定するために使用される、印画対象画像G2の濃度を、画像濃度I12ともいう。
画像濃度I11,I12は、前述の画像濃度Iと同様、数値により表現される。画像濃度I11は、前述の画像濃度Iと同様、印画対象画像G1の画素平均値に応じて、0から3の範囲の値に設定される。画像濃度I12は、前述の画像濃度Iと同様、印画対象画像G2の画素平均値に応じて、0から3の範囲の値に設定される。
各特性線CL1nは、印画対象画像G1の濃度(画像濃度I11)の値に関連付けられている。具体的には、特性線CL10,CL11,CL12,CL13は、それぞれ、画像濃度I11の値である0,1,2,3に関連付けられている。
各特性線CL1nは、第1印画対象位置(位置変数P)と熱エネルギーE1opaとの関係を示す特性関数である。当該特性関数は、画像濃度I11および位置変数Pを用いた関数F11である以下の式4により表現される。
E1opa=F11(I11,P) …(式4)
式4に示すように、熱エネルギーE1opaは、画像濃度I11および位置変数Pにより特定される。式4の関数F11は、保護層11dの転写に使用される加熱量(熱エネルギー)である。
図7を参照して、関数F11は、画像濃度I11の値が大きい程、小さい値を示す。すなわち、関数F11は、印画対象画像G1の濃度が大きい程、小さい値を示す。また、関数F11は、画像濃度I11の値が小さい程、大きい値を示す。すなわち、関数F11は、印画対象画像G1の濃度が小さい程、大きい値を示す。
また、関数F11は、位置変数Pの値が小さい程、小さい値を示す。すなわち、関数F11は、第1印画対象位置が側面円の周端に近い程、小さい値を示す。また、関数F11は、位置変数Pの値が大きい程、大きい値を示す。すなわち、関数F11は、第1印画対象位置が側面円の中心に近い程、大きい値を示す。
加熱制御部33は、さらに、図8に示される、特性関数である特性線CL20,CL21,CL22,CL23を予め記憶している。以下においては、特性線CL20,CL21,CL22,CL23の各々を、単に、特性線CL2nともいう。
図8の縦軸は、図4の縦軸のEopと同様な表現方法により、熱エネルギーE1opbを示す。図8の横軸は、図7の横軸と同様である。
各特性線CL2nは、印画対象画像G2の濃度(画像濃度I12)の値に関連付けられている。具体的には、特性線CL20,CL21,CL22,CL23は、それぞれ、画像濃度I12の値である0,1,2,3に関連付けられている。
各特性線CL2nは、第1印画対象位置(位置変数P)と熱エネルギーE1opbとの関係を示す特性関数である。当該特性関数は、画像濃度I12および位置変数Pを用いた関数F12である以下の式5により表現される。
E1opb=F12(I12,P) …(式5)
式5に示すように、熱エネルギーE1opbは、画像濃度I12および位置変数Pにより特定される。式5の関数F12は、保護層11dの転写に使用される加熱量(熱エネルギー)である。
図8を参照して、関数F12は、画像濃度I12の値が小さい程、小さい値を示す。すなわち、関数F12は、印画対象画像G2の濃度が小さい程、小さい値を示す。また、関数F12は、画像濃度I12の値が大きい程、大きい値を示す。すなわち、関数F12は、印画対象画像G2の濃度が大きい程、大きい値を示す。
また、関数F12は、位置変数Pの値が小さい程、小さい値を示す。すなわち、関数F12は、第1印画対象位置が側面円の周端に近い程、小さい値を示す。また、関数F12は、位置変数Pの値が大きい程、大きい値を示す。すなわち、関数F12は、第1印画対象位置が側面円の中心に近い程、大きい値を示す。
関数F11および関数F12は、ペーパー4の熱収縮特性が考慮された関数である。各特性線CL1nおよび各特性線CL2nは、特性線CLと同様、実験等により得られた曲線である。一例として、特性線CL1nについて説明する。
特性線CL1nの算出には、画像濃度I12が0である印画対象画像G2と、ある画像濃度I11で表現される印画対象画像G1とが使用される。当該印画対象画像G1を使用して、第1印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるように、サーマルプリンタ100Aに対する作業者の操作により、加熱量HT1が調整される。なお、加熱量HT1の調整の際には、画像濃度I12が0である印画対象画像G2が裏面4bに印画される。
これにより、第1印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーE1opaが特定される。そして、各第1印画対象位置に対応する、特定された熱エネルギーE1opaを示す曲線が、特性線CL1nとして求められる。
例えば、画像濃度I11=0に対応する印画対象画像G1を使用して、第1印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーE1opaが特定される。そして、各第1印画対象位置(位置変数P)に対応する、特定された熱エネルギーE1opaを示す曲線が、特性線CL10(特性線CL1n)として求められる。求められた各特性線CL1nは、加熱制御部33のメモリに予め記憶される。
特性線CL2nの算出には、画像濃度I11が0である印画対象画像G1と、ある画像濃度I12で表現される印画対象画像G2とが使用される。なお、特性線CL2nの算出は、特性線CL1nと同様な方法により、加熱量HT1を調整して行われる。なお、加熱量HT1の調整の際には、画像濃度I11が0である印画対象画像G1が主面4aに印画される。
これにより、第2印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーE1opbが特定される。そして、各第2印画対象位置に対応する、特定された熱エネルギーE1opbを示す曲線が、特性線CL2nとして求められる。求められた各特性線CL2nは、加熱制御部33のメモリに予め記憶される。
以下においては、第2印画対象位置(位置変数P)により特定される第2印画対象領域のカール量が最小となるような加熱量HT2を、熱エネルギーE2opともいう。熱エネルギーE2opは、制御された熱量、すなわち、制御熱量である。熱エネルギーE2opは、以下の式6および式7により表現される。
E2op=k2a×E2opa+k2b×E2opb …(式6)
k2a+k2b=1 …(式7)
式6および式7において、k2a,k2bは、係数である。k2a,k2bの各々は、0より大きく、かつ、1未満の値である。k2a,k2bは、一例として、0.5である。なお、k2a,k2bは、0.5に限定されず、式7を満たす他の値であってもよい。
また、式6より、熱エネルギーE2opaは、熱エネルギーE2op(加熱量HT2)の一部としての制御熱量である。また、熱エネルギーE2opbは、熱エネルギーE2op(加熱量HT2)の別の一部としての制御熱量である。
加熱制御部33は、さらに、図9に示される、特性関数である特性線CL30,CL31,CL32,CL33を予め記憶している。以下においては、特性線CL30,CL31,CL32,CL33の各々を、単に、特性線CL3nともいう。
図9の縦軸は、図4の縦軸のEopの表現方法を逆にした表現方法により、熱エネルギーE2opaを示す。図9の横軸は、図4の横軸の位置変数Pと同様な表現方法により、位置変数P(第2印画対象位置)を示す。
以下においては、熱エネルギーE2opa,E2opbを特定するために使用される、印画対象画像G1の濃度を、画像濃度I21ともいう。また、以下においては、熱エネルギーE2opa,E2opbを特定するために使用される、印画対象画像G2の濃度を、画像濃度I22ともいう。
画像濃度I21は、前述の画像濃度I11と同様、印画対象画像G1の画素平均値に応じて、0から3の範囲の値に設定される。画像濃度I22は、前述の画像濃度I12と同様、印画対象画像G2の画素平均値に応じて、0から3の範囲の値に設定される。
各特性線CL3nは、印画対象画像G1の濃度(画像濃度I21)の値に関連付けられている。具体的には、特性線CL30,CL31,CL32,CL33は、それぞれ、画像濃度I21の値である0,1,2,3に関連付けられている。
各特性線CL3nは、第2印画対象位置(位置変数P)と熱エネルギーE2opaとの関係を示す特性関数である。当該特性関数は、画像濃度I21および位置変数Pを用いた関数F21である以下の式8により表現される。
E2opa=F21(I21,P) …(式8)
式8に示すように、熱エネルギーE2opaは、画像濃度I21および位置変数Pにより特定される。式8の関数F21は、保護層11dの転写に使用される加熱量(熱エネルギー)である。
図9を参照して、関数F21は、画像濃度I21の値が大きい程、大きい値を示す。すなわち、関数F21は、印画対象画像G2の濃度が大きい程、大きい値を示す。また、関数F21は、画像濃度I21の値が小さい程、小さい値を示す。すなわち、関数F21は、印画対象画像G2の濃度が小さい程、小さい値を示す。
また、関数F21は、位置変数Pの値が小さい程、大きい値を示す。すなわち、関数F21は、第2印画対象位置が側面円の周端に近い程、大きい値を示す。また、関数F21は、位置変数Pの値が大きい程、小さい値を示す。すなわち、関数F21は、第2印画対象位置が側面円の中心に近い程、小さい値を示す。
加熱制御部33は、さらに、図10に示される、特性関数である特性線CL40,CL41,CL42,CL43を予め記憶している。以下においては、特性線CL40,CL41,CL42,CL43の各々を、単に、特性線CL4nともいう。
図10の縦軸は、図9の縦軸のE2opaと同様な表現方法により、熱エネルギーE2opbを示す。図10の横軸は、図9の横軸と同様である。
各特性線CL4nは、印画対象画像G2の濃度(画像濃度I22)の値に関連付けられている。具体的には、特性線CL40,CL41,CL42,CL43は、それぞれ、画像濃度I22の値である0,1,2,3に関連付けられている。
各特性線CL4nは、第2印画対象位置(位置変数P)と熱エネルギーE2opbとの関係を示す特性関数である。当該特性関数は、画像濃度I22および位置変数Pを用いた関数F22である以下の式9により表現される。
E2opb=F22(I22,P) …(式9)
式9に示すように、熱エネルギーE2opbは、画像濃度I22および位置変数Pにより特定される。式9の関数F22は、保護層11dの転写に使用される加熱量(熱エネルギー)である。
図10を参照して、関数F22は、画像濃度I22の値が大きい程、小さい値を示す。すなわち、関数F22は、印画対象画像G2の濃度が大きい程、小さい値を示す。また、関数F22は、画像濃度I22の値が小さい程、大きい値を示す。すなわち、関数F22は、印画対象画像G2の濃度が小さい程、大きい値を示す。
また、関数F22は、位置変数Pの値が小さい程、大きい値を示す。すなわち、関数F22は、第2印画対象位置が側面円の周端に近い程、大きい値を示す。また、関数F22は、位置変数Pの値が大きい程、小さい値を示す。すなわち、関数F22は、第2印画対象位置が側面円の中心に近い程、小さい値を示す。
関数F21および関数F22は、ペーパー4の熱収縮特性が考慮された関数である。各特性線CL3nおよび各特性線CL4nは、特性線CLと同様、実験等により得られた曲線である。
特性線CL3nの算出には、画像濃度I22が0である印画対象画像G2と、ある画像濃度I21で表現される印画対象画像G1とが使用される。当該印画対象画像G1を使用して、第1印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるように、サーマルプリンタ100Aに対する作業者の操作により、加熱量HT2が調整される。なお、加熱量HT2の調整の際には、画像濃度I22が0である印画対象画像G2が裏面4bに印画される。
これにより、第1印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーE2opaが特定される。そして、各第1印画対象位置に対応する、特定された熱エネルギーE2opaを示す曲線が、特性線CL3nとして求められる。求められた各特性線CL3nは、加熱制御部33のメモリに予め記憶される。
特性線CL4nの算出には、画像濃度I21が0である印画対象画像G1と、ある画像濃度I22で表現される印画対象画像G2とが使用される。なお、特性線CL4nの算出は、特性線CL3nと同様な方法により、加熱量HT2を調整して行われる。なお、加熱量HT2の調整の際には、画像濃度I21が0である印画対象画像G1が主面4aに印画される。
これにより、第2印画対象位置(位置変数P)が変化する毎にカール量が最小となるような熱エネルギーE2opbが特定される。そして、各第2印画対象位置に対応する、特定された熱エネルギーE2opbを示す曲線が、特性線CL4nとして求められる。求められた各特性線CL4nは、加熱制御部33のメモリに予め記憶される。
なお、特性線CL1n,CL2n,CL3n,CL4nは、上記のような実験等に限定されず、例えば、コンピュータを利用したシミュレーション等により求められてもよい。また、特性線CL1n,CL2n,CL3n,CL4nの代わりに、特性線CL1n,CL2n,CL3n,CL4nの各々をテーブル化した換算表を使用してもよい。
次に、図1および図6を用いて、サーマルプリンタ100Aが行う処理(以下、印画処理Aともいう)について詳細に説明する。なお、前述したように、位置検出部34は、位置変数Pが変化する毎に、最新の位置変数Pを、加熱制御部33へ送信する。位置変数Pは、前述したように、第1印画対象位置または第2印画対象位置を数値により示す変数である。また、前述したように、加熱制御部33は、印画面特定部35からの通知により、印画対象面が、主面4aおよび裏面4bのいずれであるか常に把握している。
印画処理Aでは、まず、画像受信処理Aが行われる。画像受信処理Aでは、サーマルプリンタ100Aは、外部装置(図示せず)から、印画対象画像G1,G2を受信する。サーマルプリンタ100Aは、受信した印画対象画像G1,G2を、画像記憶部31に記憶させる。
以下においては、印画対象画像G1の濃度を、第1画像濃度ともいう。また、以下においては、印画対象画像G2の濃度を、第2画像濃度ともいう。
次に、画像濃度算出処理A1が行われる。画像濃度算出処理A1では、データ処理部32が、印画対象画像G1の画素平均値を算出する。そして、データ処理部32は、画素平均値から第1画像濃度を算出する。第1画像濃度は、前述の画像濃度I11または前述の画像濃度I21で表現される。すなわち、第1画像濃度は、前述したように、0から3の範囲の値で表現される。なお、画素平均値および第1画像濃度の算出方法は前述したので詳細な説明は繰り返さない。そして、データ処理部32は、第1画像濃度を、加熱制御部33へ送信する。これにより、画像濃度算出処理A1は終了する。
次に、画像濃度算出処理A2が行われる。画像濃度算出処理A2では、データ処理部32が、印画対象画像G2の画素平均値を算出する。そして、データ処理部32は、画素平均値から第2画像濃度を算出する。第2画像濃度は、前述の画像濃度I12または前述の画像濃度I22で表現される。すなわち、第2画像濃度は、前述したように、0から3の範囲の値で表現される。なお、画素平均値および第2画像濃度の算出方法は前述したので詳細な説明は繰り返さない。そして、データ処理部32は、第2画像濃度を、加熱制御部33へ送信する。これにより、画像濃度算出処理A2は終了する。
次に、画像形成処理A1が行われる。画像形成処理A1は、ペーパー4の主面4aに印画対象画像G1を形成するための処理である。画像形成処理A1は、実施の形態1の画像形成処理Nと同様なので詳細な説明は繰り返さない。
次に、保護層転写処理A1が行われる。保護層転写処理A1は、ペーパー4の主面4aに保護層11d(保護材料)を転写する処理である。保護層転写処理A1では、搬送処理Nおよび加熱制御処理A1が行われる。
搬送処理Nは、実施の形態1と同様な処理であるので詳細な説明は繰り返さない。
加熱制御処理A1では、詳細は後述するが、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第1印画対象位置(位置変数P)とに基づいて、加熱量HT1を制御する処理を行う。加熱量HT1の制御は、例えば、サーマルヘッド1が有する発熱素子(図示せず)への通電時間の制御により行われる。
なお、加熱量HT1の制御は、例えば、サーマルヘッド1を制御するためのパルス信号が有するパルス数により行われてもよい。
加熱制御処理A1では、特性関数特定処理A1、加熱量特定処理A1および加熱処理A1が行われる。
まず、特性関数特定処理A1が行われる。特性関数特定処理A1では、加熱制御部33が、図7の各特性線CL1nのうち、データ処理部32から受信した第1画像濃度の値に関連付けられた特性線CL1n(特性関数)を特定する。例えば、第1画像濃度の値が0である場合、特定される特性線CL1nは、特性線CL10である。
また、加熱制御部33は、図8の各特性線CL2nのうち、データ処理部32から受信した第2画像濃度の値に関連付けられた特性線CL2n(特性関数)を特定する。
次に、加熱量特定処理A1が行われる。加熱量特定処理A1では、加熱制御部33が、特定した特性関数(特性線CL1n)を使用して、熱エネルギーE1opaを特定する。具体的には、加熱制御部33が、最新の位置変数Pの値に対応する、特定した特性線CL1nが示すE1opaを特定する。
また、加熱制御部33は、特定した特性関数(特性線CL2n)を使用して、熱エネルギーE1opbを特定する。具体的には、加熱制御部33が、最新の位置変数Pの値に対応する、特定した特性線CL2nが示すE1opbを特定する。
次に、加熱制御部33は、式2に、特定した熱エネルギーE1opa,E1opbを代入することにより、熱エネルギーE1opを特定する。
次に、加熱処理A1が行われる。加熱処理A1では、加熱制御部33が、加熱量HT1が、特定されたE1op(制御熱量)となるように、サーマルヘッド1を制御する。当該E1opは、特定された熱エネルギーE1opa,E1opbを用いて特定された熱エネルギーである。すなわち、加熱処理A1では、加熱制御部33が、特定された熱エネルギーE1opa,E1opbに基づいて、加熱量HT1を制御する。
以上により、保護層11d(保護材料)が、ペーパー4の主面4aに形成された印画対象画像G1を覆うように、当該ペーパー4に転写される。これにより、加熱制御処理A1は終了し、保護層転写処理A1は終了する。
次に、搬送処理A1が行われる。搬送処理A1では、ペーパー4のうち、印画対象画像G1が形成された主面4aの反対側の面である裏面4bに印画対象画像G2を形成可能なように、サーマルプリンタ100は、ペーパー4の巻戻しを行う。
次に、反転処理A1が行われる。反転処理A1では、前述の反転機構(図示せず)が、主面4aと裏面4bとが入れ替わるように、ペーパー4を反転させる。これにより、ペーパー4の裏面4bがインクリボン3と当接する。
次に、画像形成処理A2が行われる。画像形成処理A2は、ペーパー4の裏面4bに印画対象画像G2を形成するための処理である。画像形成処理A2は、実施の形態1の画像形成処理Nと同様なので詳細な説明は繰り返さない。
次に、保護層転写処理A2が行われる。保護層転写処理A2は、ペーパー4の裏面4bに保護層11d(保護材料)を転写する処理である。保護層転写処理A2では、搬送処理Nおよび加熱制御処理A2が行われる。
搬送処理Nは、実施の形態1と同様な処理であるので詳細な説明は繰り返さない。
加熱制御処理A2では、詳細は後述するが、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第2印画対象位置(位置変数P)とに基づいて、加熱量HT2を制御する処理を行う。加熱量HT2の制御は、前述した、加熱量HT1の制御と同様である。
加熱制御処理A2では、特性関数特定処理A2、加熱量特定処理A2および加熱処理A2が行われる。
まず、特性関数特定処理A2が行われる。特性関数特定処理A2では、加熱制御部33が、図9の各特性線CL3nのうち、データ処理部32から受信した第1画像濃度の値に関連付けられた特性線CL3n(特性関数)を特定する。
また、加熱制御部33は、図10の各特性線CL4nのうち、データ処理部32から受信した第2画像濃度の値に関連付けられた特性線CL4n(特性関数)を特定する。
次に、加熱量特定処理A2が行われる。加熱量特定処理A2では、加熱制御部33が、特定した特性関数(特性線CL3n)を使用して、熱エネルギーE2opaを特定する。具体的には、加熱制御部33が、最新の位置変数Pの値に対応する、特定した特性線CL3nが示すE2opaを特定する。
また、加熱制御部33は、特定した特性関数(特性線CL4n)を使用して、熱エネルギーE2opbを特定する。具体的には、加熱制御部33が、最新の位置変数Pの値に対応する、特定した特性線CL4nが示すE2opbを特定する。
次に、加熱制御部33は、式6に、特定した熱エネルギーE2opa,E2opbを代入することにより、熱エネルギーE2opを特定する。
次に、加熱処理A2が行われる。加熱処理A2では、加熱制御部33が、加熱量HT2が、特定されたE2op(制御熱量)となるように、サーマルヘッド1を制御する。当該E2opは、特定された熱エネルギーE2opa,E2opbを用いて特定された熱エネルギーである。すなわち、加熱処理A2では、加熱制御部33が、特定された熱エネルギーE2opa,E2opbに基づいて、加熱量HT2を制御する。
以上により、保護層11d(保護材料)が、ペーパー4の裏面4bに形成された印画対象画像G2を覆うように、当該ペーパー4に転写される。これにより、加熱制御処理A2は終了し、保護層転写処理A2は終了する。
以下においては、ペーパー4のうち、主面4aおよび裏面4bにそれぞれ印画対象画像G1,G2が形成された部分を、印画物ともいう。
次に、排出処理Aが行われる。排出処理Aでは、サーマルプリンタ100Aは、印画物を、当該サーマルプリンタ100Aの外部に排出する。以上により、印画処理Aは終了する。
ここで、比較のために、前述のサーマルプリンタ1000は、サーマルプリンタ100Aと同様に、両面印刷を行う機能を有するとする。なお、当該サーマルプリンタ1000は、本実施の形態のように、画像の濃度を考慮した熱量の制御を行わずに、印画物を排出する。
以下においては、サーマルプリンタ1000が排出する印画物を、印画物Jaともいう。また、以下においては、サーマルプリンタ100Aが排出する印画物を、印画物Naともいう。印画物Naは、印画処理Aにより得られる印画物である。
次に、印画物Jaおよび印画物Naのカール量について説明する。
図16は、比較例における印画物Jaのカール量を説明するための図である。図16は、図15と比較して、特性線L11,L12の代わりに特性線L21,L22を示す点が異なる。図16のそれ以外の点は、図15と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
図16において、特性線L21は、印画物Jaのカール量の変動範囲の上端の線を示す。特性線L22は、印画物Jaのカール量の変動範囲の下端の線を示す。
図11は、実施の形態2における印画物Naのカール量を説明するための図である。図11は、図16と比較して、さらに特性線L21n,L22n,L21a,L22aが追加されている点が異なる。図11のそれ以外の点は、図16と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
特性線L21n,L22nは、前述の加熱制御処理A1が行われることにより得られる線である。特性線L21nは、印画物Naのカール量の変動範囲の上端の線を示す。特性線L22nは、印画物Naのカール量の変動範囲の下端の線を示す。
特性線L21a,L22aは、前述の加熱制御処理A1,A2の両方が行われることにより得られる線である。特性線L21aは、印画物Naのカール量の変動範囲の上端の線を示す。特性線L22aは、印画物Naのカール量の変動範囲の下端の線を示す。
図11を参照して、前述の加熱制御処理A1,A2の両方が行われた場合における印画物Naのカール量の変動の幅は、印画物Jaのカール量の変動の幅より小さい。すなわち、前述の加熱制御処理A1,A2が行われることにより、印画物Naのカール量の変動の幅を、印画物Jaのカール量の変動の幅より小さくすることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ペーパー4の主面4aに対して印画の対象となる印画対象画像G1の濃度を考慮した加熱量の制御を行う。また、さらに、ペーパー4の裏面4bに対して印画の対象となる印画対象画像G2画像の濃度を考慮した加熱量の制御を行う。これにより、ペーパー4の主面4aおよび裏面4bに画像を印画する構成においても、ペーパー4のカール量を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、印画対象画像G1,G2の濃度、および、印画対象位置(P)に応じて、インクリボン3の保護層11dの転写の際の加熱量を制御する。これにより、関連技術A,Bのように、カールを矯正するための機械的な構成を新たに設けることなく、カール量を低減することができる。すなわち、カールを矯正するための機械的な構成を新たに設けることなく、凸カールおよび凹カールを低減することができる。その結果、品位のよい印画ができるサーマルプリンタを得る事ができる。
また、上記構成により、サーマルプリンタ100Aの構造を単純にすることができる。その結果、印画に係る紙詰まりが少なくなる。その結果、サーマルプリンタ100Aの信頼性の向上、サーマルプリンタ100Aのコストの低減を実現することができる。
なお、本実施の形態では、主面4aおよび裏面4bのうち、主面4aに印画を行う処理を最初に行う構成としたがこれに限定されない。主面4aおよび裏面4bのうち、裏面4bに印画を行う処理を最初に行う構成としてもよい。
なお、両面印刷を行う機能を有する従来のサーマルプリンタは、カールが大きい場合、カールを矯正することが難しいという問題点がある。また、当該従来のサーマルプリンタは、例えば、濃度の大きい画像を印画した場合に生ずる凹カールを矯正することが難しいという問題点がある。
一方、本実施の形態は上記のように構成されるため、上記の問題を解決することができる。
(変形例1)
一般的に、保護層の転写に必要な加熱量と、ペーパーの熱収縮特性は、温度により変動する。そこで、本変形例では、温度をさらに考慮した加熱量の制御を行う。具体的には、実施の形態1,2の加熱制御処理は、画像の濃度、印画対象位置に加え、サーマルプリンタの筐体の内部温度を考慮した構成とする。
以下においては、実施の形態1の加熱制御処理Nにおいて、さらに、内部温度Tを考慮した構成を、変形構成Bともいう。内部温度Tは、サーマルプリンタ100の筐体(図示せず)の内部温度である。
変形構成Bの加熱制御処理Nでは、加熱制御部33が、画像濃度Iと、印画対象位置(位置変数P)と、内部温度Tとに基づいて、加熱量HTを制御する。内部温度Tは、例えば、サーマルプリンタ100の筐体(図示せず)の内部に設けられる温度センサ(図示せず)により測定される。
ここで、基準温度Tbを定義する。基準温度Tbは、測定された内部温度Tが基準温度Tbと同じである場合、加熱量HTを変化させる必要のない、基準となる温度である。
具体的には、変形構成Bの加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部33が、内部温度Tが基準温度Tbより小さい程、加熱量HTを大きくする制御を行う。また、加熱制御部33は、内部温度Tが基準温度Tbより大きい程、加熱量HTを小さくする制御を行う。なお、変形構成Bにおいて制御対象となる加熱量HTは、特定された熱エネルギーEopを使用して制御された後の加熱量である。
例えば、内部温度Tが基準温度Tbの1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HTを2倍にする制御を行う。また、例えば、内部温度Tが基準温度Tbの2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HTを1/2倍にする制御を行う。
以下においては、実施の形態2の加熱制御処理A1において、さらに、内部温度Tを考慮した構成を、変形構成B1ともいう。
変形構成B1の加熱制御処理A1では、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第1印画対象位置(位置変数P)と、内部温度Tとに基づいて、加熱量HT1を制御する処理を行う。内部温度Tは、例えば、サーマルプリンタ100Aの筐体(図示せず)の内部に設けられる温度センサ(図示せず)により測定される。
ここで、基準温度Tb1を定義する。基準温度Tb1は、測定された内部温度Tが基準温度Tb1と同じである場合、加熱量HT1を変化させる必要のない、基準となる温度である。
具体的には、変形構成B1の加熱制御処理A1に含まれる加熱処理A1では、加熱制御部33が、内部温度Tが、基準温度Tb1より小さい程、加熱量HT1を大きくする制御を行う。また、加熱制御部33が、内部温度Tが、基準温度Tb1より大きい程、加熱量HT1を小さくする制御を行う。なお、変形構成B1において制御対象となる加熱量HT1は、特定された熱エネルギーE1opを使用して制御された後の加熱量である。
例えば、内部温度Tが基準温度Tb1の1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT1を2倍にする制御を行う。また、例えば、内部温度Tが基準温度Tb1の2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT1を1/2倍にする制御を行う。
以下においては、実施の形態2の加熱制御処理A2において、さらに、内部温度Tを考慮した構成を、変形構成B2ともいう。
変形構成B2の加熱制御処理A2では、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第1印画対象位置(位置変数P)と、内部温度Tとに基づいて、加熱量HT2を制御する処理を行う。当該内部温度Tは、変形構成B1の内部温度Tと同じである。
具体的には、変形構成B2の加熱制御処理A2に含まれる加熱処理A2では、加熱制御部33が、内部温度Tが基準温度Tb1より大きい程、加熱量HT2を大きくする制御を行う。また、加熱制御部33が、内部温度Tが基準温度Tb1より小さい程、加熱量HT2を小さくする制御を行う。当該基準温度Tb1は、変形構成B1の基準温度Tb1と同様である。すなわち、基準温度Tb1は、測定された内部温度Tが基準温度Tb1と同じである場合、加熱量HT2を変化させる必要のない、基準となる温度である。
例えば、内部温度Tが基準温度Tb1の2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT2を2倍にする制御を行う。また、例えば、内部温度Tが基準温度Tb1の1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT2を1/2倍にする制御を行う。
以上説明したように、本変形例によれば、内部温度をさらに考慮した加熱量の制御を行う。これにより、印画の対象となる一枚目のペーパーのカール量と、連続して複数の印画を行った場合におけるペーパーのカール量とのばらつきをさらに少なくすることができる。その結果、品位のよい印画ができるサーマルプリンタを得る事ができる。
なお、実施の形態2に対しては、変形構成B1および変形構成B2の一方または両方を適用してよい。
(変形例2)
ペーパーがロール状に巻かれて構成されるロール紙において発生するカール量は、ロール紙(ペーパーロール)が製造されたときから、時間が経過する程、大きくなる性質がある。従って、製造直後のロール紙においては、凸カール量が小さい。また、ロール紙の製造後、長期間保存されていたロール紙においては、凸カール量が大きい。
また、ペーパーの熱収縮特性に係るペーパー自身のカールの初期状態は、ペーパーが製造されたときから当該ペーパーを使用するときまでの保存期間により変化する。
そこで、本変形例では、ロール紙を構成するペーパーの保存期間をさらに考慮した加熱量の制御を行う。
以下においては、実施の形態1の加熱制御処理Nにおいて、さらに、保存期間LGを考慮した構成を、変形構成Cともいう。保存期間LGは、ロール紙4rを構成するペーパー4(印画用紙)が製造されたときから当該ペーパー4を使用するときまでの期間である。保存期間LGは、例えば、ロール紙4rに記載されている製造日時の情報から特定される。
変形構成Cの加熱制御処理Nでは、加熱制御部33が、画像濃度Iと、印画対象位置(位置変数P)と、保存期間LGとに基づいて、加熱量HTを制御する。
ここで、基準保存期間LGbを定義する。基準保存期間LGbは、保存期間LGが基準保存期間LGbと同じである場合、加熱量HTを変化させる必要のない、基準となる期間である。
具体的には、変形構成Cの加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部33が、保存期間LGが、基準保存期間LGbより長い程、加熱量HTを大きくする制御を行う。また、加熱制御部33は、保存期間LGが基準保存期間LGbより短い程、加熱量HTを小さくする制御を行う。なお、変形構成Cにおいて制御対象となる加熱量HTは、特定された熱エネルギーEopを使用して制御された後の加熱量である。
例えば、保存期間LGが基準保存期間LGbの2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HTを2倍にする制御を行う。また、例えば、保存期間LGが基準保存期間LGbの1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HTを1/2倍にする制御を行う。
以下においては、実施の形態2の加熱制御処理A1において、さらに、保存期間LGを考慮した構成を、変形構成C1ともいう。
変形構成C1の加熱制御処理A1では、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第1印画対象位置(位置変数P)と、保存期間LGとに基づいて、加熱量HT1を制御する処理を行う。
ここで、基準保存期間LGb1を定義する。基準保存期間LGb1は、保存期間LGが基準保存期間LGb1と同じである場合、加熱量HT1を変化させる必要のない、基準となる期間である。
具体的には、変形構成C1の加熱制御処理A1に含まれる加熱処理A1では、加熱制御部33が、保存期間LGが基準保存期間LGb1より長い程、加熱量HT1を大きくする制御を行う。また、加熱制御部33は、保存期間LGが基準保存期間LGb1より短い程、加熱量HT1を小さくする制御を行う。なお、変形構成C1において制御対象となる加熱量HT1は、特定された熱エネルギーE1opを使用して制御された後の加熱量である。
例えば、保存期間LGが基準保存期間LGb1の2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT1を2倍にする制御を行う。また、例えば、保存期間LGが基準保存期間LGb1の1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT1を1/2倍にする制御を行う。
以下においては、実施の形態2の加熱制御処理A2において、さらに、保存期間LGを考慮した構成を、変形構成C2ともいう。
変形構成C2の加熱制御処理A2では、加熱制御部33が、第1画像濃度と、第2画像濃度と、第1印画対象位置(位置変数P)と、保存期間LGとに基づいて、加熱量HT2を制御する処理を行う。
具体的には、変形構成C2の加熱制御処理A2に含まれる加熱処理A2では、加熱制御部33が、保存期間LGが基準保存期間LGb1より短い程、加熱量HT2を大きくする制御を行う。また、加熱制御部33は、保存期間LGが基準保存期間LGb1より長い程、加熱量HT2を小さくする制御を行う。当該基準保存期間LGb1は、変形構成C1の基準保存期間LGb1と同様である。すなわち、基準保存期間LGb1は、保存期間LGが基準保存期間LGb1と同じである場合、加熱量HT2を変化させる必要のない、基準となる期間である。
例えば、保存期間LGが基準保存期間LGb1の1/2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT2を2倍にする制御を行う。また、例えば、保存期間LGが基準保存期間LGb1の2倍である場合、加熱制御部33は、加熱量HT2を1/2倍にする制御を行う。
以上説明したように、本変形例によれば、ペーパー4の保存期間をさらに考慮した加熱量の制御を行う。これにより、使用するペーパー4の保存期間に関わらず、印画によるカールのばらつきさらに少なくすることができる。その結果、品位のよい印画ができるサーマルプリンタを得る事ができる。
また、本変形例によれば、ペーパー4の製造時期に係らず印画のカール量のばらつきをさらに少なくすることができる。
なお、実施の形態2に対しては、変形構成C1および変形構成C2の一方または両方を適用してよい。
また、変形例1と変形例2とは組み合わせて行われてもよい。例えば、実施の形態1に対して、変形構成Bおよび変形構成Cの両方を適用してもよい。また、例えば、実施の形態2に対して、変形構成B1および変形構成B2の一方または両方と、変形構成C1および変形構成C2の一方または両方とを適用してもよい。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態、各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態、各変形例を適宜、変形、省略することが可能である。
例えば、実施の形態1,2および変形例1,2において、加熱量の制御は、保護層11dの転写の際に行う構成としたがこれに限定されない。実施の形態1,2および変形例1,2における加熱量の制御は、イエロー、マゼンタおよびシアンの染料の転写の際に行う構成としてもよい。
また、画像濃度に設定される値は、0から3の範囲の値に限定されず、例えば、0から9の範囲の値であってもよい。