JP6340278B2 - 免震機構および免震機構の形成方法 - Google Patents

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本発明は免震機構に関する。
地震時の建物の揺れを低減して安全で安心な居住空間等を提供するため、積層ゴム等を使用した免震機構に関する技術が種々知られている。例えば特許文献1では、所定の柱下に配置した積層ゴムの周りに独立の中空状積層ゴムを隙間をあけて配置することにより、地震時に想定以上の変形が生じた場合にも損傷を回避することが記載されている。
また特許文献2は、等価剛性の異なる積層ゴムを上下に組み合わせて配置し、小地震時には等価剛性の小さい積層ゴムが変形し、大地震時には等価剛性の小さい積層ゴムがロックされて等価剛性の大きい積層ゴムが機能することにより、免震効果を発揮するものである。
特開2010−270569号公報 特開平10−281198号公報
建物には地震荷重だけでなく風荷重も加わり、建物の高さやロケーション等によっては大きな風荷重が作用することもある。さらに、すべり支承やオイルダンパ等を併用する高性能免震機構では、地震の入力を遮断するため地震用弾性ばねの剛性が通常の免震機構よりも低くなる。これにより建物の応答加速度を低減できるが、長時間一定方向の力が加わる風荷重下では地震時よりも大きな変形が生じるケースがある。
この点、上記のような大きな変形を許容できる程度の地震用弾性ばねの設計や建物外側のクリアランスの確保は非常に困難である。そのため、擁壁等のストッパに建物を衝突させ変形を制限することも考えられるが、衝突時に過度な加速度が生じる恐れもある。
特許文献1、2を含め、従来の免震機構には、このように大きな変形を生じさせる風荷重の問題を考慮したものはなかった。また、強風時に過大な変形や有害な振動を防ぐために、免震層で上部構造と下部構造をロックする機構も提案されているが、切り替えが必要となるロック機構を用いると、動作の信頼性が低下するという問題もある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、地震時には所定の免震機能を発揮しながら、大きな風荷重下でも好適に挙動する免震機構を提供することである。
前述した目的を達成するための第1の発明は、上部構造と下部構造の対向面の間に配置される免震機構であって、第1の弾性ばねと、前記対向面のうち一方の面に取付けられ、前記第1の弾性ばねよりも剛性の高い第2の弾性ばねと、前記第2の弾性ばねに設けられる当接部と、前記当接部との間に水平方向の所定のギャップを空けて設けられる変位規制部と、を具備し、前記変位規制部は、前記対向面のうち他方の面に形成された鉛直方向の壁であり、前記第1の弾性ばねと第2の弾性ばねは異なる平面位置に設けられ、前記当接部は前記他方の面との間に間隔を空けて配置され、前記第1の弾性ばねが変形して前記当接部が前記変位規制部に当接した後、前記第2の弾性ばねが変形することを特徴とする免震機構である。
弾性ばねとしては、例えば積層ゴムが用いられる。
前記当接部は、例えば前記第2の弾性ばねの端部に設けられる板材であり、前記当接部の外縁が、前記第2の弾性ばねの外周部より外側に位置する。
第2の発明は、上部構造と下部構造の対向面の間に配置される免震機構の形成方法であって、第1の弾性ばねと、前記対向面のうち一方の面に取付けられ、前記第1の弾性ばねよりも剛性の高い第2の弾性ばねと、前記第2の弾性ばねに設けられる当接部と、前記当接部との間に水平方向の所定のギャップを空けて設けられた、前記対向面のうち他方の面に形成された鉛直方向の壁である変位規制部と、を、前記第1の弾性ばねと第2の弾性ばねが異なる平面位置に設けられ、前記当接部が前記他方の面との間に間隔を空けて配置され、前記第1の弾性ばねが変形して前記当接部が前記変位規制部に当接した後、前記第2の弾性ばねが変形するように前記対向面の間に形成し、前記ギャップの大きさを前記上部構造に生じる地震荷重による変位により定め、前記第2の弾性ばねの剛性を、前記地震荷重による変位を超える変位を前記上部構造に生じさせる風荷重により定めることを特徴とする免震機構の形成方法である。
本発明では、地震時には第1の弾性ばねの変形により免震機能を発揮することができる。一方、大きな風荷重下では、当接部が変位規制部に当接した後、剛性の高い第2の弾性ばねが変形する。従って、地震時には所定の免震機能を発揮するとともに大きな風荷重下においても安定した挙動を示して過大な変位を抑制し、建物外側に大きなクリアランスを確保する必要もない。また擁壁等のストッパに建物を衝突させる場合も、過度な加速度が発生するのを抑制できる。さらに、本発明の機構は簡易なものであり、ロック機構などのように切り替えを行う必要もないため動作の信頼性も高く、万が一地震と強風とが同時に生じても免震機能を発揮できる。
本発明によれば、地震時には所定の免震機能を発揮しながら、大きな風荷重下でも好適に挙動する免震機構を提供できる。
免震機構2を示す図 ギャップ付きばね機構9の鉛直方向の断面を示す図 変位とせん断力との関係を示す図 ギャップ付きばね機構9、地震用弾性ばね11等の配置の例を示す図 ギャップ付きばね機構9aの鉛直方向の断面を示す図 変位とせん断力との関係を示す図
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る免震機構2を模式的に示す図である。図1の例では、建物の上部構造3と下部構造5の対向面の間の免震層に、免震機構2が設けられる。
免震機構2は、すべり支承7、ギャップ付きばね機構9、地震用弾性ばね11(第1の弾性ばね)、オイルダンパ13等を有する。
すべり支承7は、上部構造3をスライド可能に支持するものである。
オイルダンパ13は、揺れの発生時にダンパ内の作動油を流動させ、その際の抵抗によって揺れを減衰させるものである。通常、オイルダンパ13は地震時の揺れの減衰を目的として調整される。
地震用弾性ばね11は、弾性変形によって構造物の周期を長くし、揺れを低減させるものであり、上下端が上部構造3と下部構造5の各々に取り付けられる。本実施形態では、地震用弾性ばね11として積層ゴムを用いる。積層ゴムは、例えば、ゴム板と鋼板を複数層交互に積層し、互いに接着して構成される。
ギャップ付きばね機構9と地震用弾性ばね11は、異なる平面位置で並列に設けられる。図2(a)に、ギャップ付きばね機構9の鉛直方向の断面を示す。
ギャップ付きばね機構9は、風荷重用弾性ばね21(第2の弾性ばね)、当接部19、変位規制部17等を有する。
風荷重用弾性ばね21は、弾性変形によって建物の変形を抑制し、揺れを減少させる。風荷重用弾性ばね21は、上部構造3の下面(前記した対向面のうち一方の面)に取り付けられる。風荷重用弾性ばね21としては、前記の地震用弾性ばね11と同様、積層ゴムが用いられる。この積層ゴムは、地震用弾性ばね11よりも剛性が高く、せん断弾性係数が高いものとする。
当接部19は、風荷重用弾性ばね21の下端部で水平方向に設けられる板材であり、例えば鋼板が用いられる。当接部19の外縁は、風荷重用弾性ばね21の外周部より外側に位置する。当接部19は下部構造5の上面から間隔を空けて配置される。
変位規制部17は下部構造5の上面(前記した対向面のうち他方の面)に形成された壁であり、当接部19の変位を規制する。変位規制部17は、当接部19の外縁との間に水平方向の所定のギャップ15を空けて設けられる。ギャップ15の大きさは、地震荷重による最大変位を考慮して設定する。例えば、地震荷重下での変位が概ねギャップ15内に収まるように設定する。
図3は、免震層における(上部構造3の)変位とせん断力との関係の概略を示す図である。せん断力Aは極大風荷重下のせん断力である。図にはギャップ15の大きさも併せて示した。
実線27は、地震用弾性ばね11の応答特性を示す。仮に地震用弾性ばね11のみを設置した場合、極大風荷重下では変位が大きくなる。また、変位の途中に擁壁等のストッパ(不図示)が有る場合、上部構造3がストッパに衝突して過度な加速度が発生する恐れがある。
実線25は、風荷重用弾性ばね21の応答特性を示す。風荷重用弾性ばね21は、変位がギャップ15の大きさとなり当接部19が変位規制部17に当接すると、図2(b)に示すように変形を開始する。風荷重用弾性ばね21の剛性は大きいため、過大な変位は生じなくなる。
本実施形態では、前記したようにギャップ15を地震荷重による最大変位を考慮して設定することで、地震荷重下では地震用弾性ばね11のみが変形する。一方、大きな風荷重下では、変位がギャップ15の大きさに達するまでは地震用弾性ばね11が変形するが、変位がギャップ15の大きさに達して当接部19が変位規制部17に当接すると、風荷重用弾性ばね21の変形が開始し、上記したように過大な変位が抑制される。
風荷重用弾性ばね21のばね値(剛性)は、例えば上部構造3の外側に擁壁等のストッパが有る場合、風荷重によるせん断力をストッパまでのクリアランス内で受けきれる値、あるいは上部構造3がストッパに接触、衝突しても過度な加速度が生じない値に設定する。風荷重用弾性ばね21のばね値は、概ね地震用弾性ばね11の10倍程度が適切である。従って、例えば地震用弾性ばね11が直径160cm、高さ40cmの円柱状である場合、風荷重用弾性ばね21は直径160cm、高さ5cmの円柱状のものとする。
このように、第1の実施形態の免震機構2によれば、地震時には地震用弾性ばね11の変形により免震機能を発揮することができる。一方、大きな風荷重下では、当接部19が変位規制部17に当接した後、剛性の高い風荷重用弾性ばね21が変形する。従って、地震時には所定の免震機能を発揮するとともに、大きな風荷重下においても安定した挙動を示して過大な変位を抑制し、建物外側に大きなクリアランスを確保する必要もない。また擁壁等のストッパに建物を衝突させる場合も、過度な加速度が発生するのを抑制できる。さらに、ロック機構などのように切り替えを行う必要もないため動作の信頼性も高く、万が一地震と強風とが同時に生じても免震機能を発揮できる。加えて、想定を超える大地震時のフェイルセーフとしても有効である。
第1の実施形態では各弾性ばねを積層ゴムとし、当接部19を風荷重用弾性ばね21の端部に設けた板材として、その外縁を変位規制部17である壁に当接させたが、これに限ることはない。例えば、弾性ばねは積層ゴムに限らず、スプリングやシリコン等でもよい。また、当接部19と変位規制部17との組み合わせも、地震用弾性ばね11が所定量変形した際に当接部19が変位規制部17に当接すればよい。しかしながら、上記のような構成を採ることで、簡易な構成により前記の効果を好適に実現することができる。
なお、第1の実施形態では、当接部19と下部構造5の上面との間に間隔が設けられているが、この間にフッ素樹脂板などのすべり板を設けてもよい。当接部19と下部構造5との間に隙間がある場合、当接部19が変位規制部17への当接時に回転して風荷重用弾性ばね21が損傷する恐れがあるが、すべり板を設ければこのような回転を防止できる。また、下部構造5の上面に溜まった塵等により挙動が妨げられるのを防ぐ効果もある。
また、ギャップ付きばね機構9や地震用弾性ばね11等の配置も特に限定されず、目的とする免震機能や風荷重下での挙動に応じて決定される。図4はこれらの配置の例であり、この例では、ギャップ付きばね機構9と地震用弾性ばね11を建物の矩形平面の各隅部に4つずつ配置している。図の点線は基礎梁を示し、ギャップ付きばね機構9が縦横の基礎梁の交点に対応する位置に設けられている。
さらに、ギャップ付きばね機構9では、下部構造に風荷重用弾性ばね21を取付けてもよい。この場合は図2(a)に示す配置を180°回転して上下逆とした配置となり、変位規制部17は上部構造の下面に設けられる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5(a)は、第2の実施形態に係る免震機構のうち、ギャップ付きばね機構9aの鉛直方向の断面を示す。免震機構としては、この他第1の実施形態と同様のすべり支承やオイルダンパ等も設けられる。
図5(a)に示すように、ギャップ付きばね機構9aは、地震用弾性ばね31、変位規制部35、当接部37、風荷重用弾性ばね39等を有する。地震用弾性ばね31と風荷重用弾性ばね39は対応する平面位置にあり、これらが上下に並べて直列に配置される。
地震用弾性ばね31は、下部構造5の上面に取り付けられる。風荷重用弾性ばね39は、上部構造3の下面に取り付けられる。地震用弾性ばね31と風荷重用弾性ばね39は、第1の実施形態の地震用弾性ばね11、風荷重用弾性ばね21と略同様である。
当接部37は、風荷重用弾性ばね39の下端部と地震用弾性ばね31の上端部の間に取り付けられる水平方向の板材であり、例えば鋼板が用いられる。当接部37の外縁は、地震用弾性ばね31および風荷重用弾性ばね39の外周部より外側に位置する。
変位規制部35は、第1の実施形態の変位規制部17と同様、下部構造5の上面に形成された壁であり、当接部37の変位を規制する。変位規制部35は、当接部37の外縁との間に水平方向の所定のギャップ33を確保して設けられる。ギャップ33の大きさは、地震荷重による最大変位を考慮して設定する。
図6は免震層における変位とせん断力との関係の概略を示す図である。図6に示すせん断力Cは、極大風荷重下のせん断力であり、せん断力Bは、地震荷重による最大せん断力である。図にはギャップ33の大きさも併せて示した。
実線41は、ギャップ付きばね機構9aの応答特性を示す。このギャップ付きばね機構9aでは、前記したようにギャップ33を地震荷重による最大変位を考慮して設定することで、地震荷重下では、剛性の低い地震用弾性ばね31が主に変形する。
一方、大きな風荷重下では、変位がギャップ33の大きさに達するまでは地震用弾性ばね31が主に変形するが、変位がギャップ33の大きさに達して当接部37が変位規制部35に当接すると、以降は図5(b)に示すように剛性の高い風荷重用弾性ばね39のみが変形し、これによってせん断力Bからせん断力Cまでの増加分の力が負担され、過大な変位が抑制される。
第1の実施形態と同様、風荷重用弾性ばね39のばね値は、例えば上部構造3の外側に擁壁等のストッパが有る場合、風荷重によるせん断力をストッパまでのクリアランス内で受けきれる値、あるいは上部構造3がストッパに接触、衝突しても過大な加速度が生じない値に設定する。
このように、第2の実施形態のギャップ付きばね機構9aによっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、地震用弾性ばね31と風荷重用弾性ばね39が一体化しているため、省スペースとなる利点もある。また、下部構造5の上面に塵等が溜まっても挙動が妨げられないので、メンテナンス面でも好ましい。なお、第1の実施形態と同様、風荷重用弾性ばね39を下部構造の上面に、地震用弾性ばね31を上部構造の下面に取り付けることも可能である。この場合、図5(a)に示す配置を180°回転して上下逆とした配置となり、変位規制部35が上部構造の下面に設けられる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
2………免震機構
3………上部構造
5………下部構造
7………すべり支承
9、9a………ギャップ付きばね機構
11、31………地震用弾性ばね
13………オイルダンパ
15、33………ギャップ
17、35………変位規制部
19、37………当接部
21、39………風荷重用弾性ばね

Claims (4)

  1. 上部構造と下部構造の対向面の間に配置される免震機構であって、
    第1の弾性ばねと、
    前記対向面のうち一方の面に取付けられ、前記第1の弾性ばねよりも剛性の高い第2の弾性ばねと、
    前記第2の弾性ばねに設けられる当接部と、
    前記当接部との間に水平方向の所定のギャップを空けて設けられる変位規制部と、
    を具備し、
    前記変位規制部は、前記対向面のうち他方の面に形成された鉛直方向の壁であり、
    前記第1の弾性ばねと第2の弾性ばねは異なる平面位置に設けられ、前記当接部は前記他方の面との間に間隔を空けて配置され、
    前記第1の弾性ばねが変形して前記当接部が前記変位規制部に当接した後、前記第2の弾性ばねが変形することを特徴とする免震機構。
  2. 弾性ばねとして積層ゴムを用いることを特徴とする請求項1に記載の免震機構。
  3. 前記当接部は、前記第2の弾性ばねの端部に設けられる板材であり、
    前記当接部の外縁が、前記第2の弾性ばねの外周部より外側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震機構。
  4. 上部構造と下部構造の対向面の間に配置される免震機構の形成方法であって、
    第1の弾性ばねと、
    前記対向面のうち一方の面に取付けられ、前記第1の弾性ばねよりも剛性の高い第2の弾性ばねと、
    前記第2の弾性ばねに設けられる当接部と、
    前記当接部との間に水平方向の所定のギャップを空けて設けられた、前記対向面のうち他方の面に形成された鉛直方向の壁である変位規制部と、
    を、前記第1の弾性ばねと第2の弾性ばねが異なる平面位置に設けられ、前記当接部が前記他方の面との間に間隔を空けて配置され、前記第1の弾性ばねが変形して前記当接部が前記変位規制部に当接した後、前記第2の弾性ばねが変形するように前記対向面の間に形成し、
    前記ギャップの大きさを前記上部構造に生じる地震荷重による変位により定め、
    前記第2の弾性ばねの剛性を、前記地震荷重による変位を超える変位を前記上部構造に生じさせる風荷重により定めることを特徴とする免震機構の形成方法
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