本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的対象語を指すために使用される。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、小規模な変動を記述及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
バルク凝固アモルファス合金、すなわちバルク金属ガラス(「BMG」)は、最近開発された部類の金属材料である。これらの合金は、比較的穏やかな速度で、凝固及び冷却させることができ、それらは、アモルファスの、非晶質(すなわち、ガラス質)状態を、室温で保持する。アモルファス合金は、それらの結晶性の対応物よりも、多くの優れた特性を有する。しかしながら、冷却速度が十分に高速ではない場合には、冷却の間に、その合金の内部で結晶が形成される恐れがあり、そのため、アモルファス状態の利益が失われる恐れがある。例えば、バルクアモルファス合金部品の製造に伴う1つの重要な課題は、徐冷又は合金原料中の不純物のいずれかによる、それらの部品の部分的な結晶化である。BMG部品内では、高い程度のアモルファス化度(また反対に、低い程度の結晶化度)が望ましいため、制御された量のアモルファス化度を有するBMG部品を鋳造するための方法を開発する必要性がある。
図1(米国特許第7,575,040号より入手)は、Liquidmetal Technologyにより製造された、Zr−−Ti−−Ni−−Cu−−Beの種類のVIT−001シリーズからの、例示的なバルク凝固アモルファス合金の粘度温度グラフを示す。アモルファス固体の形成の間、バルク凝固アモルファス金属に関しては、明確な液体/固体変態が存在しないことに留意するべきである。この溶融合金は、ガラス転移温度近傍で固体形態に近づくまで、過冷却の増大と共に、ますます粘稠になる。したがって、バルク凝固アモルファス合金に関する凝固前面の温度は、ガラス転移温度近傍とすることができ、その温度近傍で、この合金は、事実上、急冷アモルファスシート製品を引き抜く目的に関して、固体として作用する。
図2(米国特許第7,575,040号より入手)は、例示的なバルク凝固アモルファス合金の、時間−温度−変態(TTT)冷却曲線、すなわちTTT図を示す。バルク凝固アモルファス金属は、従来型金属と同様に、冷却時に液体/固体の結晶化変態を起こさない。その代わりに、高温で(「融解温度」Tm近傍で)見出される、高度に流体の、非晶質形態の金属は、温度が低減されるにつれて(ガラス転移温度Tg近傍まで)、より粘稠になり、最終的に、従来型の固体の外面的な物理的特性を呈する。
バルク凝固アモルファス金属に関しては、液体/結晶化変態は存在しないにも関わらず、対応する結晶相の熱力学的液相温度として、「融解温度」Tmを定義することができる。この体系の下では、バルク凝固アモルファス合金の融解温度での粘度は、約0.1ポアズ〜約10,000ポアズの範囲に、更に場合によっては、0.01ポアズ未満にあることが可能である。この「融解温度」でのより低い粘度は、BMG部品を成形するためのバルク凝固アモルファス金属による、シェル/金型の複雑な部分のより速く完全な充填をもたらす。更には、BMG部品を成形するための溶融金属の冷却速度は、冷却の間の時間−温度プロファイルが、図2のTTT図内の結晶化領域を境界付けるノーズ形状領域を横断しないようなものでなければならない。図2では、Tノーズは、結晶化が最も急速であり、かつ最短の時間スケールで生じる、臨界結晶化温度Txである。
過冷却液体領域、すなわちTg〜Txの温度領域は、バルク凝固合金の結晶化に対する極度の安定性を明示するものである。この温度領域内では、バルク凝固合金は、高粘度の液体として存在し得る。この過冷却液体領域内でのバルク凝固合金の粘度は、ガラス転移温度での1012Pa・sから、結晶化温度である過冷却液体領域の高温限界での105Pa・sに至るまでの間で変化し得る。そのような粘度を有する液体は、加圧力の下で、実質的な塑性歪みを経験し得る。本明細書の実施形態は、成形及び分離方法として、この過却液体領域内での、大きい塑性成形性を利用する。
Txについて明確にする必要がある。技術的には、TTT図に示されるノーズ形状の曲線は、Txを温度及び時間の関数として説明する。それゆえ、金属合金を加熱又は冷却する間に辿る軌跡とは関係なく、このTTT曲線に当る場合に、Txに到達している。図2では、Txは破線として示されるが、これは、Tmの近位からTgの近位まで、Txが変化し得るためである。
図2の概略的なTTT図は、時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(1)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tm以上〜Tg未満のダイカストの加工処理方法を示す。ダイカストの間、この成形は、軌跡がTTT曲線に当ることを回避するために、実質的に急速冷却と同時に行われる。時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(2)、(3)、及び(4)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tg以下からTm未満までの超塑性成形(SPF)に関する加工処理方法。SPFでは、アモルファスBMGは、過冷却液体領域内へと再加熱され、利用可能な加工処理ウインドウは、ダイカストよりも遙かに大きく、より良好なプロセスの可制御性をもたらすことが可能である。SPFプロセスは、冷却の間の結晶化を回避するために、急速冷却を必要としない。また、例示的軌跡(2)、(3)、及び(4)によって示されるように、SPFの間の最高温度が、Tノーズ超又はTノーズ未満、最大約Tmとなる状態で、SPFを実施することができる。一個のアモルファス合金を昇温させるが、TTT曲線に当ることを回避するように管理する場合には、「Tg〜Tm」に加熱しても、Txには到達していない。
20℃/分の加熱速度で得られる、バルク凝固アモルファス合金の典型的な示差走査熱量計(DSC)加熱曲線は、大部分は、TTTデータを横切る具体的な軌跡を説明するものであり、特定温度でのTgと、DSC加熱傾斜がTTT結晶化開始と交差する場合のTxと、最終的に、同じ軌跡が融解に関する温度範囲と交差する場合の融解ピークとが認められるであろう。図2の軌跡(2)、(3)、及び(4)の上り傾斜部分によって示されるような急速な加熱速度で、バルク凝固アモルファス合金を加熱する場合には、TTT曲線を完全に回避することが可能であり、DSCデータは、加熱の際、ガラス転移を示すが、Txは示さない。このことについての別の考察方法は、軌跡(2)、(3)、及び(4)は、結晶化曲線に当らない限り、TTT曲線のノーズ(及び更にその上方)〜Tg線の温度内の、いずれの場所にも収まることができる点である。そのことは、加工処理温度が上昇するにつれて、軌跡内の水平な平坦部が遙かに短くなり得ることを単に意味する。
相
本明細書での用語「相」は、熱力学状態図内で見出すことができるものを指し得る。相は、その全体にわたって、材料の全ての物理的特性が本質的に均一である、空間の領域(例えば、熱力学系)である。物理的特性の例としては、密度、屈折率、化学組成、及び格子周期性が挙げられる。相の単純な説明は、化学的に均一であり、物理的にまったく別であり、及び/又は機械的に分離可能な材料の領域である。例えば、ガラスジャー内の、氷及び水からなる系では、その角氷が1つの相であり、水が第2の相であり、その水の上の湿り空気が第3の相である。ジャーのガラスは、別の分離相である。相は、固溶体を指すことがあり、2成分、3成分、4成分以上の溶体又は金属間化合物などの、化合物であることができる。別の例としては、アモルファス相は、結晶相とは全く別である。
金属、遷移金属、及び非金属
用語「金属」は、電気陽性の化学元素を指す。本明細書での用語「元素」は、一般的には、周期表に見出すことができる元素を指す。物理的には、基底状態の金属原子は、空状態を占有状態に近くする、部分的に満たされたエネルギー帯を含む。用語「遷移金属」とは、不完全な内部電子殻を有し、一連の元素内の、最も電気陽性のものと最も電気陽性ではないものとの間の遷移リンクとして役立つ、周期表の第3族〜第12族の範囲内の金属元素のうちのいずれかである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、及び安定な錯イオンを形成する能力によって特徴付けられる。用語「非金属」は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を指す。
用途に応じて、任意の好適な非金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金(又は「合金組成物」)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の非金属元素などの複数の非金属元素を含み得る。非金属元素は、周期表内の第13族〜第17族内に見出される、いずれかの元素とすることができる。例えば、非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、及びBのうちの、いずれか1つとすることができる。場合により、非金属元素はまた、第13族〜第17族内の特定の半金属(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びPo)を指すこともできる。一実施形態では、非金属元素としては、B、Si、C、P、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。したがって、例えば、その合金は、ホウ化物若しくは炭化物、又は双方を含み得る。
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、及びウンウンビウムのうちのいずれかとすることができる。一実施形態では、遷移金属元素含有BMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、及びHgのうちの少なくとも1つを有し得る。用途に応じて、任意の好適な遷移金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の遷移金属元素など、複数の遷移金属元素を含み得る。
本明細書で説明される、合金又は合金「サンプル」又は「試料」合金は、任意の形状又はサイズを有し得る。例えば、合金は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの形状を有し得る、微粒子の形状を有し得る。この微粒子は、任意のサイズを有し得る。例えば、その微粒子は、約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルなど、約10マイクロメートル〜約60マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約50マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約45マイクロメートルなど、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルなど、約25マイクロメートル〜約35マイクロメートルなどの、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均直径を有し得る。例えば、一実施形態では、微粒子の平均直径は、約25マイクロメートル〜約44マイクロメートルである。一部の実施形態では、ナノメートルの範囲のものなどの、より小さい微粒子、又は100マイクロメートルよりも大きいものなどの、より大型の微粒子を使用することができる。
合金のサンプル又は試料はまた、遙かに大きい寸法のものにすることもできる。例えば、インゴットなどのバルク構造構成要素、電子機器の筺体/ケーシングにすることができ、又は更にミリメートル、センチメートル、又はメートルの範囲の寸法を有する構造的構成要素の一部分とすることさえできる。
固溶体
用語「固溶体」は、溶体の固体形態を指す。用語「溶体」は、固体、液体、気体、又はこれらの組み合わせとすることができる、2種以上の物質の混合物を指す。この混合物は、均質又は不均質とすることができる。用語「混合物」とは、互いに組み合わされ、一般的には分離することが可能である、2種以上の物質の組成物である。一般的には、それらの2種以上の物質は、互いに化合されない。
合金
一部の実施形態では、本明細書で説明される合金組成物は、完全に合金化することができる。一実施形態では、「合金」とは、一方の原子が他方の原子に置き換わるか、又は原子間の格子間位置を占有する、2種以上の金属の均質な混合物又は固溶体を指すものであり、例えば、黄銅は、亜鉛及び銅の合金である。合金とは、複合材料とは対照的に、金属マトリックス中の1種以上の化合物などの、金属マトリックス中の1種以上の元素の部分的又は完全な固溶体を指すことができる。本明細書での合金という用語は、単一の固相の微細構造を呈し得る全率固溶合金、及び2つ以上の相を呈し得る部分的溶体の双方を指すことができる。本明細書で説明される合金組成物は、合金を含むもの、又は合金含有複合材料を含むものを指すことができる。
それゆえ、完全に合金化した合金は、固溶体相であれ、化合物相であれ、又は双方であれ、その構成成分の均質な分布を有し得る。本明細書で使用される用語「完全に合金化された」は、許容誤差範囲内の僅かな変異を説明することができる。例えば、その用語は、少なくとも95%の合金化など、少なくとも99%の合金化など、少なくとも99.5%の合金化など、少なくとも99.9%の合金化などの、少なくとも90%の合金化を指すことができる。本明細書での百分率は、文脈に応じて、体積百分率又は重量百分率のいずれかを指すことができる。これらの百分率は、合金の部分ではない組成又は相の観点によるものとすることができる、不純物によって均衡させることができる。
アモルファス又は非晶質固体
「アモルファス」又は「非晶質固体」は、結晶に特徴的な格子周期性を欠く固体である。本明細書で使用するとき、「アモルファス固体」は、ガラス転移を通じて、加熱されると液体状の状態へと軟化及び変態するアモルファス固体である、「ガラス」を含む。一般的には、アモルファス材料は、結晶に特徴的な長距離秩序を欠くが、それらのアモルファス材料は、化学結合の性質による、原子の長さスケールでの何らかの短距離秩序を保有し得る。アモルファス固体と結晶性固体との区別は、X線回折及び透過型電子顕微鏡検査などの構造特性評価技術によって決定される、格子周期性に基づいて行うことができる。
用語「秩序」及び「無秩序」とは、多粒子系内での何らかの対称性又は相関性の有無を指示する。用語「長距離秩序」及び「短距離秩序」は、長さスケールに基づいて、材料内の秩序を区別する。
固体における秩序の最も厳密な形態は格子周期性であり、特定のパターン(単位格子内の原子配列)が何度も繰り返され、空間の並進に普遍の、空間充填を形成する。この格子周期性は、結晶の定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子及び230種の空間群に分類されている。
格子周期性は、長距離秩序を示唆するものである。1つの単位格子のみが知られる場合には、その並進対称性によって、任意の距離での、全ての原子配置を正確に予測することが可能である。一般に逆も真であるが、ただし、例えば、完全に確定的な充填を有するが、格子周期性を保有しない、準結晶の場合は例外である。
長距離秩序は、同じサンプルの遠隔の部分が、相関する挙動を呈する、物理系を特徴付ける。この長距離秩序は、相関関数、すなわち次のスピン−スピン相関関数として表現することができる。G(x,x’)=〈s(x),s(x’)〉
上記の関数では、sはスピン量子数であり、xは特定の系内の距離関数である。この関数は、x=x’である場合、単位元に等しく、距離|x−x’|が増大するにつれて減少する。典型的には、この関数は、長距離で、指数関数的にゼロまで減衰し、その系は無秩序であると見なされる。しかしながら、この相関関数が大きい|x−x’|で一定値へと減衰する場合には、その系は長距離秩序を保有すると述べることができる。この関数が、距離の累乗でゼロまで減衰する場合には、準長距離秩序と呼ぶことができる。大きい値の|x−x’|を構成するものは、相対的であることに留意されたい。
系は、その挙動を定義する一部のパラメータが、経時的に進展しないランダム変数である(すなわち、それらが急冷又は凍結された)場合、急冷無秩序、例えば、スピングラスを提示すると延べることができる。この急冷無秩序は、ランダム変数自体が進展することが可能な、焼鈍無秩序とは反対である。本明細書の実施形態は、急冷無秩序を含む系を包含する。
本明細書で説明される合金は、結晶性、部分結晶性、アモルファス、又は実質的アモルファスとすることができる。例えば、合金サンプル/試料は、少なくともある程度の結晶化度を含み得るものであり、ナノメートル及び/又はマイクロメートルの範囲のサイズを、結晶粒/結晶が有する。あるいは、合金は、十分にアモルファスであるなどの、実質的アモルファスとすることができる。一実施形態では、合金組成物は、実質的に結晶性であるなど、完全に結晶性であるなどの、少なくとも実質的にアモルファスではない。
一実施形態では、他のアモルファス合金中の1種の結晶又は複数種の結晶の存在は、その合金中の「結晶相」として解釈することができる。合金の結晶化度の程度(又は一部の実施形態では、略して「結晶化度」)とは、その合金中に存在する結晶相の量を指すことができる。その程度とは、例えば、合金中に存在する結晶の分率を指すことができる。この分率は、文脈に応じて、体積分率又は重量分率を指すことができる。アモルファス合金がどの程度「アモルファス」であるかの尺度を、アモルファス化度とすることができる。アモルファス化度は、結晶化度の程度の観点により測定することができる。例えば、一実施形態では、低い程度の結晶化度を有する合金は、高い程度のアモルファス化度を有すると述べることができる。一実施形態では、例えば、60体積%の結晶相を有する合金は、40体積%のアモルファス相を有し得る。
アモルファス合金又はアモルファス金属
「アモルファス合金」とは、50体積%超のアモルファス含有量、好ましくは90体積%超のアモルファス含有量、より好ましくは95体積%超のアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超〜ほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。上述のように、アモルファス化度が高い合金は、結晶化度の程度が同等に低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有するアモルファス金属材料である。結晶性であることにより、高度に秩序化した原子配置を有する、殆どの金属とは対照的に、アモルファス合金は非晶質である。そのような無秩序構造が、冷却の間に液体状態から直接作り出される材料は、「ガラス」と称される場合がある。したがって、アモルファス金属は、一般に「金属ガラス」又は「ガラス金属」と称される。一実施形態では、バルク金属ガラス(「BMG」)とは、その微細構造が少なくとも部分的にアモルファスである合金を、指すことができる。しかしながら、アモルファス金属を作り出すためには、極度な急速冷却の他にも、物理蒸着、固相反応、イオン照射、メルトスピニング、及び機械的合金化を含めた、幾つかの方法が存在する。アモルファス合金は、それらが調製される方法とは関係なく、単一の部類の材料とすることができる。
アモルファス金属は、様々な急冷法を通じて作り出すことができる。例えば、アモルファス金属は、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによって、作り出すことができる。1秒当り約数百万度の急冷は、結晶が形成するには過度に高速である得るため、その金属は、ガラス状態で「固定」される。また、アモルファス金属/合金は、厚い層のアモルファス構造、例えば、バルク金属ガラスの形成を可能にするための、十分に低速な臨界冷却速度で作り出すこともできる。
用語「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金(「BAA」)、及びバルク凝固アモルファス合金は、本明細書で互換的に使用される。それらの用語は、少なくともミリメートルの範囲の最小寸法を有する、アモルファス合金を指す。例えば、その寸法は、少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなどの、少なくとも約0.5mmとすることができる。幾何学形状に応じて、その寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さなどを指すことができる。BMGはまた、少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなどの、センチメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、金属ガラスとすることもできる。一部の実施形態では、BMGは、少なくともメートルの範囲の、少なくとも1つの寸法を有し得る。BMGは、金属ガラスに関して、上述の形状又は形態のうちの、いずれかを呈することができる。したがって、本明細書で説明されるBMGは、一部の実施形態では、重要な一態様での従来の堆積技術によって作製される薄膜とは異なるものとすることができ、前者のBMGは、後者の薄膜よりも遙かに大きい寸法のものとすることができる。
アモルファス金属は、純金属ではなく、合金とすることができる。この合金は、著しく異なるサイズの原子を含有し得ることにより、溶融状態で、低い自由体積がもたらされる(またそれゆえ、他の金属及び合金よりも、桁違いとなるまでの高い粘度を有する)。この粘度は、原子が、規則格子を形成するために十分に移動することを防ぐ。この材料構造は、冷却の間の低収縮性、及び塑性変形に対する抵抗性をもたらし得る。一部の場合には結晶性材料の弱点である、この結晶粒界の非存在は、例えば、磨耗及び腐食に対する、より良好な抵抗性をもたらし得る。一実施形態では、技術的にはガラスであるが、アモルファス金属はまた、酸化物ガラス及びセラミックよりも遙かに強靭であり、脆性ではないものにすることもできる。
アモルファス材料の熱伝導率は、それらの結晶性対応物の熱伝導率よりも低いものにすることができる。より緩徐な冷却の間でも、アモルファス構造の形成を達成するために、3種以上の構成成分で合金を作製して、より高いポテンシャルエネルギー、及びより低い形成の確率を有する、複合結晶単位をもたらすことができる。アモルファス合金の形成は、以下の幾つかの因子:合金の構成成分の組成と、構成成分の原子半径(好ましくは、高い充填密度及び低い自由体積を達成するために、12%超の有意差を有する)と、結晶核生成を阻止し、溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長する、構成成分の組み合わせの負の混合熱と、に応じて変化し得る。しかしながら、アモルファス合金の形成は、多種多様な変数に基づくものであるため、合金組成物がアモルファス合金を形成するか否かを事前に決定することは、困難な場合がある。
例えば、ホウ素、ケイ素、リン、及び他のガラス形成剤と、磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は、低い保磁力及び高い電気抵抗を有する、磁性のものとすることができる。この高い抵抗は、例えば、トランス用磁心として有用な特性である、交番磁界に晒された場合の渦電流による低損失をもたらす。
アモルファス合金は、潜在的に有用な様々な特性を有し得る。具体的には、アモルファス合金は、同様の化学組成の結晶性合金よりも強固である傾向にあり、それらは結晶性合金よりも大きい可逆性(「弾性」)変形に耐え得る。アモルファス金属は、それらの強度を、それらの非晶質構造から直接導き出すものであり、この非晶質構造は、結晶性合金の強度を制限する欠陥(転位などの)を全く有し得ない。例えば、Vitreloy(商標)として知られる、1つの最新のアモルファス金属は、高級チタンのほぼ2倍の引張り強さを有する。一部の実施形態では、室温での金属ガラスは延性ではなく、張力が負荷されると突然破損するが、このことは、差し迫った破壊が明白ではないため、信頼性が重要な用途での、その材料の適用性を制限する。それゆえ、この課題を克服するために、延性の結晶性金属の樹枝状の粒子又は繊維を含有する、金属ガラスマトリックスを有する、金属マトリックス複合材料を使用することができる。あるいは、深刻化を引き起こす傾向がある元素(例えば、Ni)が少ないBMGを使用することができる。例えば、Niを含まないBMGを使用することにより、そのBMGの延性を改善することができる。
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、これらが真のガラスであり、換言すれば、加熱により軟化かつ流動し得ることである。このことは、ポリマーと殆ど同じ方法での、射出成形などによる、容易な加工処理を可能にする。結果として、アモルファス合金は、スポーツ用品、医療用機器、電子部品及び電子装備、並びに薄膜を作製するために使用することができる。アモルファス金属の薄膜は、高速酸素燃料技術を介して、保護コーティングとして堆積させることができる。
材料は、アモルファス相、結晶相、又は双方を有し得る。これらのアモルファス相及び結晶相は、同じ化学組成を有し、微細構造のみが異なる(すなわち、一方はアモルファスであり、他方は結晶質である)ものとすることができる。一実施形態での微細構造は、25×以上の倍率の顕微鏡によって明らかとなるような材料の構造を指す。あるいは、これらの2つの相は、異なる化学組成及び微細構造を有し得る。例えば、組成物は、部分的アモルファス、実質的アモルファス、又は完全アモルファスとすることができる。
上述のように、アモルファス化度の程度(また反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定することができる。その程度とは、合金中に存在する結晶相の体積分率又は重量分率を指すことができる。部分的アモルファス組成物とは、少なくとも約10体積%など、少なくとも約20体積%など、少なくとも約40体積%など、少なくとも約60体積%など、少なくとも約80体積%など、少なくとも約90体積%などの、少なくともその約5体積%がアモルファス相である組成物を指すことができる。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書中の他の場所で定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスである組成物とは、少なくとも約95体積%など、少なくとも約98体積%など、少なくとも約99体積%など、少なくとも約99.5体積%など、少なくとも約99.8体積%など、少なくとも約99.9体積%などの、少なくともその約90体積%がアモルファスであるものを指すことができる。一実施形態では、実質的アモルファス組成物は、その中に存在する、何らかの付随的な少量の結晶相を有し得る。
一実施形態では、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質とすることができる。組成が均一である物質は均質である。このことは、不均質である物質とは対照的である。用語「組成」とは、物質中の化学組成及び/又は微細構造を指す。物質は、その物質の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ組成を有する場合に、均質である。例えば、微粒子懸濁液は、その微粒子懸濁液の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ体積の粒子を有する場合に、均質である。しかしながら、顕微鏡下で個々の粒子を視認することが可能な場合もある。均質な物質の別の例は、空気であり、その空気中の種々の成分は等しく浮遊するが、空気中の粒子、気体、及び液体は、個別に分析することができ、又は空気から分離することもできる。
アモルファス合金に関して均質である組成とは、その微細構造の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス相を有するものを指すことができる。換言すれば、その組成物は、組成物の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス合金を巨視的に含む。代替の実施形態では、この組成は、非アモルファス相をその中に有する、アモルファス相を有する複合材料のものとすることができる。この非アモルファス相は、1つの結晶又は複数の結晶とすることができる。それらの結晶は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの、任意の形状の微粒子の形態とすることができる。一実施形態では、結晶は、樹枝状形態を有し得る。例えば、少なくとも部分的にアモルファスの複合組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散する樹枝状結晶の形状の結晶相を有し得るものであり、この分散は、均一又は不均一なものとすることができ、アモルファス相と結晶相とは、同じ化学組成又は異なる化学組成を有し得る一実施形態では、それらの相は実質的に同じ化学組成を有し得る。別の実施形態では、結晶相は、BMG相よりも延性とすることができる。
本明細書で説明される方法は、任意のタイプのアモルファス合金に適用可能とすることができる。同様に、組成物又は物品の成分として、本明細書で説明されるアモルファス合金は、任意のタイプのものとすることができる。このアモルファス合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beの元素、又はこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、この合金は、その化学式又は化学組成中に、これらの元素のいずれかの組み合わせを含み得る。それらの元素は、種々の重量百分率又は体積百分率で存在し得る。例えば、鉄「ベース」合金とは、その中に存在する無視することができない重量百分率の鉄を有する、合金を指すことができ、その重量百分率は、例えば、少なくとも約40重量%など、少なくとも約50重量%など、少なくとも約60重量%など、少なくとも約80重量%などの、少なくとも約20重量%などとすることができる。あるいは、一実施形態では、上述の百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。したがって、アモルファス合金は、ジルコニウムベース、チタンベース、白金ベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどとすることができる。この合金はまた、特定の目的に適合するように、上述の元素のうちのいずれかを含まない場合もある。例えば、一部の実施形態では、この合金、又はこの合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、この合金又は複合材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを、全く含まない。
例えば、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu,Fe)
b(Be,Al,Si,B)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは30〜75の範囲であり、bは5〜60の範囲であり、cは0〜50の範囲である。あるいは、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは40〜75の範囲であり、bは5〜50の範囲であり、cは5〜50の範囲である。この合金はまた、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものでもあり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは7.5〜35の範囲であり、cは10〜37.5の範囲である。あるいは、この合金は式(Zr)
a(Nb,Ti)
b(Ni,Cu)
c(Al)
dを有し得るものであり、式中、a、b、c、及びdはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは0〜10の範囲であり、cは20〜40の範囲であり、dは7.5〜15の範囲である。上述の合金系の例示的一実施形態は、Liquidmetal Technologies(CA,USA)によって製作されるような、Vitreloy−1及びVitreloy−101などの、商品名Vitreloy(商標)の、Zr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金である。種々の系のアモルファス合金の一部の実施例が、表1及び表2に記載される。
その他の例示的な鉄系合金には、例えば米国特許出願公開第2007/0079907号及び同第2008/0118387号に開示されている組成物が挙げられる。これらの組成物には、Fe(Mn,Co,Ni,Cu)(C,Si,B,P,Al)系が含まれ、ここにおいてFe含有量は60〜75原子パーセント、(Mn,Co,Ni,Cu)の合計は5〜25原子パーセントの範囲内、及び(C,Si,B,P,Al)の合計は8〜20原子パーセントの範囲内であり、例示的な組成はFe48Cr15Mo14Y2C15B6である。また、Fe−Cr−Mo−(Y,Ln)−C−B、Co−Cr−Mo−Ln−C−B、Fe−Mn−Cr−Mo−(Y,Ln)−C−B、(Fe,Cr,Co)−(Mo,Mn)−(C,B)−Y、Fe−(Co,Ni)−(Zr,Nb,Ta)−(Mo,W)−B,Fe−(Al,Ga)−(P,C,B,Si,Ge)、Fe−(Co,Cr,Mo,Ga,Sb)−P−B−C、(Fe,Co)−B−Si−Nb合金、及びFe−(Cr−Mo)−(C,B)−Tmにより記述される合金系が挙げられ、ここにおいてLnはランタニド元素、Tmは遷移金属元素を示す。更に、このアモルファス合金は、米国特許出願公開第2010/0300148号に記述される例示的組成物Fe80P12.5C5B2.5、Fe80PllC5B2.5Sil.5、Fe74.5Mo5.5P12.5C5B2.5、Fe74.5Mo5.5PllC5B2.5Sil.5、Fe70Mo5Ni5P12.5C5B2.5、Fe70Mo5Ni5PllC5B2.5Sil.5、Fe68Mo5Ni5Cr2P12.5C5B2.5、及びFe68Mo5Ni5Cr2PllC5B2.5Sil.5のうちの1つであり得る。
これらのアモルファス合金はまた、(Fe,Ni,Co)ベース合金などの、鉄合金とすることもできる。かかる組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号、及び同第5,735,975号、Inoueら、Appl.Phys.Lett.,Volume 71,p 464(1997)、Shenら、Mater.Trans.,JIM,Volume 42,p 2136(2001)、並びに日本特許出願第200126277号(公開番号第2001303218(A)号)で開示されている。1つの例示的な組成物は、Fe72Al5Ga2P11C6B4である。別の実施例は、Fe72Al7Zr10Mo5W2B15である。本明細書でのコーティングに使用することができる、別の鉄ベース合金系が、米国特許出願公開第2010/0084052号で開示されており、そのアモルファス金属は、例えば、括弧内に記される組成の範囲で、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)、及びケイ素(0.3〜3.1原子%)を含有し、また括弧内に記される組成の指定範囲で以下の元素:クロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)、及び残部の鉄を含有する。
上述のアモルファス合金系は、Nb、Cr、V、及びCoを含めた添加遷移金属元素などの、添加元素を更に含み得る。これらの添加元素は、例えば約20重量%以下など、約10重量%以下など、約5重量%など、約30重量%以下で存在し得る。一実施形態では、この任意選択の添加元素は、コバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つであり、炭化物を形成して、耐摩耗性及び耐食性を更に改善する。更なる任意選択の元素としては、融点を低下させるための、合計で最大約2%の、好ましくは1%未満の、リン、ゲルマニウム、及びヒ素を挙げることができる。他の少量の不純物は、約2%未満、好ましくは0.5%未満とするべきである。
一部の実施形態では、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素を意図的に添加することにより、機械的特性(例えば、硬度、強度、破壊機構など)の改善、及び/又は耐食性の改善などの、その組成物の特性を修正することができる。あるいは、それらの不純物は、加工処理及び製造の副生成物として得られるもののような、不可避の付随的な不純物として存在し得る。この不純物は、約5重量%以下など、約2重量%以下など、約1重量%以下など、約0.5重量%以下など、約0.1重量%以下などの約10重量%以下とすることができる。一部の実施形態では、これらの百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。一実施形態では、この合金サンプル/組成物は、アモルファス合金から本質的になる(少量の付随的不純物のみを有する)。別の実施形態では、この組成物はアモルファス合金を含む(観察可能な微量の不純物を全く有さない)。
一実施形態では、最終部品は、バルク凝固アモルファス合金の臨界鋳造厚さを超過するものであった。
本明細書の実施形態では、バルク凝固アモルファス合金が高粘度の液体として存在することができる、過冷却液体領域の存在により、超塑性成形が可能となる。高塑性変形を得ることができる。過冷却液体領域内で高塑性変形を起こす能力は、成形プロセス及び/又は切断プロセスに使用される。固体とは対照的に、この液体のバルク凝固合金は、局所的に変形し、このことが、切断及び成形のために必要とされるエネルギーを、大幅に低下させる。切断及び成形の容易性は、合金、金型、及び切断工具の温度に応じて変化する。温度が高くなるにつれて、粘度が低下し、その結果として、切断及び成形が容易になる。
本明細書の実施形態は、例えば、Tg〜Txで実施される、アモルファス合金を使用する熱可塑性成形プロセスを利用することができる。本明細書では、Tx及びTgは、結晶化の開始の温度、及びガラス転移の開始の温度として、典型的な加熱速度(例えば、20℃/分)での標準的なDSC測定から決定される。
アモルファス合金構成要素は、臨界鋳造厚さを有し得るものであり、最終部品は、その臨界鋳造厚さよりも厚い厚さを有し得る。更には、加熱及び整形操作の時間並びに温度は、アモルファス合金の弾性歪み限界が、1.0%以上、好ましくは1.5%以上であることを実質的に維持し得るように選択される。本明細書の実施形態との関連では、ガラス転移近傍の温度とは、成形温度がガラス転移未満、ガラス転移温度若しくはガラス転位温度近傍、及びガラス転移温度超とすることができることを意味するが、結晶化温度Txより低い温度であることが好ましい。冷却工程は、加熱工程での加熱速度と同様の速度で、好ましくは、加熱工程での加熱速度を超える速度で実施される。冷却工程はまた、好ましくは、成形荷重及び整形荷重が依然として維持されている間にも達成される。
電子機器
本明細書の実施形態は、BMGを使用する電子機器の製作で有用であり得る。本明細書での電子機器とは、当該技術分野において既知の任意の電子機器を指すことができる。例えば、この電子機器は、携帯電話及び固定電話などの電話、あるいは、例えばiPhone(商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信機器などの、任意の通信機器とすることができる。この電子機器は、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、携帯ウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))、及びコンピュータモニタなどの、ディスプレイの一部とすることができる。電子機器はまた、ポータブルDVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、ポータブル音楽プレーヤ(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽機器とすることもできる。この電子機器はまた、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御することなどの、制御を提供する機器(例えば、Apple TV(商標))の一部とすることもでき、又は電子機器用の遠隔制御装置とすることができる。この電子機器は、コンピュータ、あるいはハードドライブタワーの筺体若しくはケーシング、ラップトップ筺体、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカなどの、コンピュータ付属品の一部とすることができる。この物品はまた、腕時計又は時計などの機器にも適用することができる。
BMG等の合金は、合金の構成元素の溶融混合物から製造され得る。この合金は高温において、特に融点近くで、反応性であり得る。望ましくない反応又は汚染を避けるために、合金が冷却されるまでは、例えば金型などの他の材料に合金を接触させるのは避けるべきである。
図3に示す一実施形態により、合金の構成元素の溶融混合物301の流れが、るつぼなどの好適な容器302から連続的に流れ出し、ここにおいて混合物は、好適な方法303(例えば抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱など)によって溶融される。流れが何らかの固体又は液体に接触する前に、この流れは個別のピース304に破断され、急速に冷却される。
一実施形態において、この流れは、電磁場によって個別のピースに破断される。例えば、この流れは、流れの周りに配置されたコイル305を通過して流れることができ、AC電流がこのコイルに流れてコイル内部に電磁場を生成する。この電磁場は、流れを個別のピースに破断するのに有効である。例えば、電磁場は、周波数約50〜約1000kHzで約10〜約100kWを有し得る。あるいは、この流れは、流れの周りに配置された2枚の導電性プレートの間を流れることができ、AC電圧が導電性プレートに印加されてプレート間に電磁場が生成される。この電磁場も、流れを個別のピースに破断するのに有効である。電磁場を生成する他の好適な方法も使用することができる。個別のピースの寸法及び形状は、電磁波の周波数、波形、出力、又はこれらの組み合わせを調節することにより、調節することができる。この流れは好ましくは、酸化を防ぐために、不活性ガス雰囲気又は減圧下にある。
一実施形態において、この流れは、不活性ガス306を流れに吹き付けることにより、個別のピースに破断することができる。
一実施形態において、この流れを注ぎ出す容器は、流れを個別のピースに破断するために振動させることができる。
図4に示す別の実施形態において、流れが容器から出てすぐに、この流れは急速に冷却されて固化してロッドとなるか、又は、その合金の構成元素の溶融混合物から固体ロッドが引き出される。流れが容器から注ぎ出る間、ロッドが連続的に容器から伸びる。ロッドが伸びる際に、このロッドは、レーザ、集束電磁波、プラズマなどの好適な方法によって個別のピースに分離することができる。
この個別のピースは、原料を製造するのに使用することができ、又は、射出成形の出発原料として直接使用することができる。例えば、この原料又は個別のピースは、溶融させ、すぐに金型に射出することができる。金型内の溶融した原料又は溶融した個別のピースは、完全にアモルファスである部品をもたらすのに十分な速度で冷却することができる。あるいは、この金型内の溶融した原料又は溶融した個別のピースは、完全な結晶質(99重量%超が結晶質材料)である部品を形成する速度で、あるいは、部分的に結晶質かつ部分的にアモルファスである部品を形成する速度で、冷却することができる。原料又は溶融した個別のピースは好ましくは、誘導加熱により溶融される。
この合金は、例えば表1に記載される任意の組成のBMGを含み得る。一実施形態において、この合金は本質的に鉄を含まない。一実施形態において、この合金は本質的にニッケルを含まない。一実施形態において、この合金は本質的にコバルトを含まない。一実施形態において、この合金は本質的に金、銀、及び白金を含まない。一実施形態において、この合金は強磁性ではない。この合金は部分的にアモルファス、完全にアモルファス、又は完全に結晶質であり得る。この合金は、均質な化学組成を有し得、あるいは、複合体であり得る。
一実施形態において、溶融した流れ又は固体ロッドを個別のピースに分離するための装置には、溶融した流れが流れ出すか、又はロッドが延伸される容器と、その溶融した流れ又は固体ロッドの周りに配置され、電磁場を生成することによりこの溶融した流れ又は固体ロッドを個別のピースに分離するための、1つ以上のコイルとが含まれ得る。1つ以上のコイルは、レーザ源、電子ビーム源、又は導電性プレートに置き換えることができる。
個別のピースは更に、原料(例えばBMGを含む原料)を形成するため、更にプロセス加工され得る。原料を形成する方法は、本願と同一譲受人に譲渡された特許出願の、代理人整理番号第069648−0396583号及び同第069648−0396607号に見出すことができ、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
BMG原料は、射出成形の出発原料となり得る。例えば、BMG原料は溶融され、金型に射出され得る。金型内の溶融したBMGは、完全なアモルファスである部品を形成する速度で冷却され得る。あるいは、この金型内の溶融したBMG原料は、完全な結晶質(99重量%超が結晶質材料)である部品を形成する速度で、あるいは、部分的に結晶質かつ部分的にアモルファスである部品を形成する速度で、冷却することができる。BMG原料は好ましくは誘導加熱により溶融される。
射出成形は、熱可塑性材料及び熱硬化性プラスチック材料の双方から部品を作り出すための、製造プロセスである。材料は、加熱されたバレルに供給され、混合され、型穴に押し込められ、ここで冷却されて硬化し、型穴の形状となる。この金型は通常、鋼又はアルミニウムなどの金属から作製され、所望の部品の形体を形成するように、精密機械加工することができる。射出成形は、自動車の最小構成要素からボディパネルまで、様々な部品を製造するために広く使用される。
射出成形には、ポリマーが使用されている。全ての熱可塑性、一部の熱硬化性、及び一部のエラストマーを含めて、多くのポリマー(時に樹脂とも呼ばれる)が使用され得る。1995年時点では、射出成形に使用できる材料が約18,000種類あり、その数は毎年平均750種類ずつ増加してきた。利用できる材料は、これまで開発された材料の合金又は混合物であり、これはすなわち、製品設計者が、幅広い材料選択肢の中から、まさに適切な特性を有するものを選ぶことができることを意味する。材料は、最終部品に必要な強度及び機能に基づいて選択されるが、また、各材料には、考慮しなければならない成形時の様々なパラメータがある。エポキシ及びフェノール樹脂などの一般的なポリマーは熱硬化性プラスチックの例であり、ナイロン、ポリエチレン、及びポリスチレンは熱可塑性プラスチックである。
射出成形装置は、材料ホッパー、射出ラム又はスクリュー型プランジャ、及び加熱装置を含む。これらはプレスとしても知られ、それらの部品が成形される金型を保持している。プレスはトン数により格付けされ、これは、装置が印加できる型締め力の大きさを表わす。この力により、金型は、射出プロセスの間、閉鎖したまま保たれる。トン数は、5トン未満から6000トンまで変動し得るものであり、より高い数字は、比較的少ない製造操作で使用される。必要とされる全型締め力は、成形されている部品の投影面積によって決定される。この投影面積に、その投影面積の平方インチ当り2〜8トンの型締め力を乗算する。経験則としては、平方インチ当たり4又は5トンを、殆どの製品に関して使用することができる。プラスチック材料が極めて硬い場合には、金型を充填するために、より大きい射出圧力が必要とされ、それゆえ、金型を閉鎖して保持するために、より大きい型締めのトン数が必要とされる。必要とされる力はまた、使用されている材料、及び部品のサイズによっても決定することができ、より大きい部品は、より高い型締め力を必要とする。
この金型は、射出金型(Aプレート)と突き出し金型(Bプレート)の、2つの主な構成部品を含む。原料は、射出金型の「湯口」から射出金型に入る。この湯口ブッシュは、成形装置の射出バレルのノズルに対してしっかり密封し、かつ、溶融した原料をバレルから金型(型穴とも呼ばれる)へと流れるようにするためのものである。湯口ブッシュは、溶融した原料を、チャネルを通して型穴像へと導き、このチャネルは、A及びBプレートの面に機械加工される。このチャネルにより、原料が沿って走る(run)ため、これは「ランナー」とも呼ばれる。溶融した原料はランナーを通って流れ、1つ以上の専用ゲートに入り、型穴形状に流れ込んで、望ましい部品を形成する。
金型は、連続経路を形成するように、金型プレートを貫通して穿設され、ホースによって接続された一連の穴に、冷却剤(通常は水)を通過させることによって、冷却することができる。この冷却剤は、金型(これは、高温のプラスチックから熱を吸収している)から熱を吸収し、プラスチックを最も効率的な速度で硬化させるために、金型を適切な温度に維持する。
一部の金型は、予め成形された部品を再挿入することができ、これによって、最初の部品の周囲に新たなプラスチック層を形成することが可能になる。このことは、多くの場合、オーバーモールディングと称される。単一の成形サイクルの範囲内で「オーバーモールド」するように、2ショット金型又はマルチショット金型が設計され、これは、2つ以上の射出ユニットを備える専用の射出成形機上で、プロセス加工しなければならない。このプロセスは、実際は、2回実行される射出成形プロセスである。第1工程では、基底色材料が、基本形状へと成形され、この基本形状は、第2ショットのための空間を含む。次いで、異なる色の第2の材料が、それらの空間内に射出成形される。例えば、このプロセスによって作製される押しボタン及びキーは、多用しても摩損する可能性がなく、判読可能なまま維持される、標識を有する。
部品の射出成形の間の、イベントのシーケンスは、射出成形サイクルと呼ばれる。このサイクルは、金型が閉鎖するときに開始され、その後に、型穴内への原料の射出が続く。型穴が充填された後、保持圧力を維持することにより、あらゆる材料収縮を補填する。次の工程で、スクリューが回り、次のショットがフロントスクリューに供給される。これにより、次のショットが準備される際に、スクリューが引き戻される。その部品が十分に冷却された後、金型を開放して部品を排出させる。