以下に、本願発明を具体化した実施形態を、作業車両としてのスピードスプレーヤに適用した場合の図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図3を参照しながら、スピードスプレーヤの概要について説明する。実施形態におけるスピードスプレーヤの走行機体1は、走行部としての左右一対の前輪3と同じく左右一対の後輪4とで支持されている。走行機体1の前部にキャビン5を配置している。走行機体1におけるキャビン5の後方(走行機体1の前後中途部)に、薬液を収容する薬液タンク6を配置している。走行機体1における薬液タンク6の後方にエンジンルーム7を配置している。エンジンルーム7内には、ディーゼルエンジン8(以下、単にエンジンという)と動力噴霧ポンプ9とを搭載している。エンジン8の後部には、エンジン8からの動力を動力噴霧ポンプ9等に伝達するPTOミッションケース20を取り付けている。走行機体1の後部(エンジンルーム7の後方)に薬液散布部10と送風ファン11とを配置している。薬液タンク6の下方には、エンジン8からの動力を変速する走行ミッションケース12を搭載している。エンジン8の動力によって動力噴霧ポンプ9及び送風ファン11を駆動させ、動力噴霧ポンプ9によって薬液タンク6から薬液を吸引して薬液散布部10から薬液を噴霧する。噴霧された薬液は送風ファン11からの送風によって果樹園等の圃場内に拡散され、果樹等に散布される。
走行機体1を構成する略井桁形状の機体フレーム2の前下部に前車軸ケース13を設けている。前車軸ケース13の左右両側に前輪3を回転可能に取り付けている。機体フレーム2の後下部には後車軸ケース14を設けている。後車軸ケース14の左右両側に後輪4を回転可能に取り付けている。走行ミッションケース12は、前向きに延びる前輪伝達軸15を介して前車軸ケース13に動力伝達可能に連結すると共に、後向きに延びる後輪伝達軸16を介して後車軸ケース14に動力伝達可能に連結している。エンジン8からPTOミッションケース20を経由した動力を走行ミッションケース12で変速し、当該変速出力によって前輪伝達軸15及び前車軸ケース13を介して左右両前輪3を駆動させ、後輪伝達軸16及び後車軸ケース14を介して左右両後輪4を駆動させるように構成している(四輪駆動可能に構成している)。
図2及び図3に示すように、キャビン5の内部には、オペレータが着座する操縦座席21と、左右両前輪3又は前後四輪3,4を舵取り操作する操縦ハンドル22とを配置している。操縦ハンドル22の前方に配置したダッシュボード23の背面上側に、エンジン回転計や燃料計等を表示する計器パネル24を配置している。ダッシュボード23の背面右側には、左右両前輪3及び左右両後輪4を二輪操舵モードと四輪操舵モードとに切り換え操作する二輪操舵モードスイッチ25並びに四輪操舵モードスイッチ26と、エンジン回転速度を設定保持する回転速度操作具であるスロットルレバー29とを配置している。各モードスイッチ25,26はランプ付きのスイッチである。なお、以下の説明では便宜上、二輪操舵モードを2WSモードと表記し、四輪操舵モードを4WSモードと表記する。
ダッシュボード23の下方には、スロットルレバー29での設定回転速度を基準にしてエンジン回転速度を増減速させるアクセルペダル30と、走行機体1を制動操作するブレーキペダル31と、動力継断用の走行クラッチ84(図5参照)を継断操作するクラッチペダル32とを配置している。操縦座席21の左側に設けたサイドコラム33には、左右両後輪4を制動状態に維持操作する駐車ブレーキレバー34と、前輪3及び後輪4の駆動方式を二駆と四駆とに切り換え操作する駆動切換レバー35と、走行機体1の前進、停止、後退及び車速を操作する主変速レバー36と、走行ミッションケース12の出力を低速と高速とに切り換え操作する副変速操作具としての副変速レバー37とを配置している。
図2及び図4に示すように、前車軸ケース13には左右両前輪3を方向転換させる前輪操舵シリンダ41を設けている。2WSモード及び4WSモードのどちらを実行する場合も、操縦ハンドル22の回動操作に応じて前輪操舵シリンダ41を伸縮作動させることによって、タイロッド42及びナックルアーム43を介して左右両前輪3をキングピン44回りの同じ方向に方向転換(旋回)させる。すなわち、操縦ハンドル22の操舵角(回動操作量)に比例して、左右両前輪3の舵取り角(操向角度)が変更される。
また、後車軸ケース14には左右両後輪4を方向転換させる後輪操舵シリンダ45を設けている。4WSモードを実行する場合は、操縦ハンドル22の回動操作に応じて後輪操舵シリンダ45を伸縮作動させることによって、タイロッド46及びナックルアーム47を介して左右両後輪4をキングピン48回りの同じ方向に方向転換(旋回)させる。すなわち、操縦ハンドル22の操舵角(回動操作量)に比例して、左右両後輪4の舵取り角(操向角度)が変更される。なお、この場合、左右両後輪4の舵取り角は左右両前輪3の舵取り角と逆位相になる。
次に、主として図5を参照しながら、スピードスプレーヤの動力伝達系統について説明する。シリンダブロック50の後面側にフライホイルハウジング71を固着している(図8及び図10〜図12参照)。フライホイルハウジング71内にフライホイル72を配置している。エンジン8から前後に突出したエンジン出力軸70の後端側にフライホイル72を直結している。フライホイル72を介してエンジン8の動力を取り出すように構成している。フライホイルハウジング71の後面側にPTOミッションケース20を着脱可能に取り付けている。PTOミッションケース20内にあるミッション入力軸73にフライホイル72を連結している。実施形態のPTOミッションケース20はエンジン8から右下向きに張り出している。PTOミッションケース20の張出し部からは、走行ミッションケース12に動力伝達する主動軸74と、動力噴霧ポンプ9を駆動させるポンプ用PTO軸75とが前向きに突出している。また、PTOミッションケース20からは、送風ファン11を駆動させるファン用PTO軸76が後向きに突出している。PTOミッションケース20は、フライホイル72を介してエンジン8の動力を取り出す動力取出し部を構成している。
PTOミッションケース20内には、前述したミッション入力軸73と、ミッション入力軸73に伝わった動力を主動軸74及びポンプ用PTO軸75に伝達する主伝動ギヤ機構77と、ミッション入力軸73に伝わった動力をファンクラッチ機構79経由でファン用PTO軸76に伝達する副伝動ギヤ機構78とを配置している。エンジン8からの動力は、ミッション入力軸73から主伝動ギヤ機構77に向かう系統と、ミッション入力軸73から副伝動ギヤ機構78に向かう系統とに分岐して伝達される。主伝動ギヤ機構77に伝わった動力は、主動軸74に向かう系統とポンプ用PTO軸75に向かう系統とに更に分岐して伝達される。主伝動ギヤ機構77からポンプ用PTO軸75に伝わった動力は、プーリ及びベルト伝動系80を介して動力噴霧ポンプ9のポンプ軸(図示省略)に伝達され、動力噴霧ポンプ9を駆動させる。副伝動ギヤ機構78は高速と低速との二段階に切換え可能な構成である。ミッション入力軸73からファンクラッチ機構79を介して副伝動ギヤ機構78に伝わった動力は、副伝動ギヤ機構78で適宜変速されてからファン用PTO軸76に伝達され、送風ファン11を駆動させる。
エンジン8前方で且つ薬液タンク6下方に位置する走行ミッションケース12は、両端に自在軸継手を有する伝動軸81を介して主動軸74から動力を受け取る主変速入力軸82と、薬液タンク6内の撹拌翼(図示省略)を駆動させる撹拌用PTO軸83と、前輪伝達軸15及び後輪伝達軸16に動力伝達する走行出力軸17とを備えている。主変速入力軸82は走行ミッションケース12から後向きに突出していて、PTOミッションケース20の張出し部から前向きに突出した主動軸74が伝動軸81を介して主変速入力軸82に動力伝達する。撹拌用PTO軸83は走行ミッションケース12から前向きに突出している。走行出力軸17は走行ミッションケース12の前後両側から突出している。走行出力軸17の前端側に自在軸継手を介して前輪伝達軸15を連結し、走行出力軸17の後端側に自在軸継手を介して後輪伝達軸16を連結している。
走行ミッションケース12内には、動力継断用の走行クラッチ84と、走行クラッチ84を介して主変速入力軸82の前端側(走行ミッションケース12内の部位)に連結した主変速伝達軸85と、PTOミッションケース20経由の動力を変速する主変速ギヤ機構86及び副変速ギヤ機構87と、前述した撹拌用PTO軸83並びに走行出力軸17とを配置している。主変速入力軸82から走行クラッチ84を介して主変速伝達軸85に伝わった動力は、撹拌用PTO軸83に向かう系統と主変速ギヤ機構86に向かう系統とに分岐して伝達される。主変速伝達軸85から撹拌用PTO軸83に伝わった動力は、プーリ及びベルト伝動系88を介して薬液タンク6内にある撹拌翼の撹拌軸(図示省略)に伝達され、撹拌翼を駆動させる。主変速伝達軸85から主変速ギヤ機構86に向かう動力は、主変速ギヤ機構86及び副変速ギヤ機構87によって適宜変速されてから、走行出力軸17に伝達される。そして、走行出力軸17に伝わった変速動力は、前輪伝達軸15を介して前車軸ケース13内の前輪差動ギヤ機構18に伝達されて左右両前輪3を駆動させると共に、後輪伝達軸16を介して後車軸ケース14内の後輪差動ギヤ機構19に伝達されて左右両後輪4を駆動させる。
次に、図6〜図13を参照しながら、エンジン8及びその周辺構造を説明する。走行機体1に搭載したエンジン8は、上面にシリンダヘッド51を締結したシリンダブロック50を備えている。シリンダヘッド51の一側面に排気マニホールド52を設けている。排気マニホールド52の排出口側に接続した排気管53には、後処理装置であるディーゼル微粒子捕集フィルタ54(以下、捕集フィルタという)を連結している。捕集フィルタ54は排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するものである。図示は省略するが、実施形態の捕集フィルタ54は、耐熱金属材料製のケーシング内にある略筒型のフィルタケースに、例えば白金等の酸化触媒とハニカム構造体とを直列に並べて収容した構造になっている。エンジン8の各気筒から排気マニホールド52に排出された排気ガスは、捕集フィルタ54を経由して浄化処理をされたのち機外に放出される。
図6等に示すように、エンジン8には、燃料供給手段である蓄圧式燃料噴射装置55(コモンレール式燃料噴射装置)を設けている。蓄圧式燃料噴射装置55は、エンジン8の各気筒に高圧燃料を噴射する複数のインジェクタ56(燃料噴射弁)と、高圧燃料を蓄圧して各インジェクタ56に分配するコモンレール57(蓄圧室)と、走行機体1に搭載した燃料タンク58から燃料フィルタ59経由で吸入した燃料を高圧に加圧してコモンレール57に圧送するサプライポンプ60とを備えている。
各インジェクタ56は、個別の高圧配管61を介してコモンレール57につながれている。各インジェクタ56が開き作動している間、コモンレール57から圧送した高圧燃料を各気筒の燃焼室に向けて噴射するように構成している。コモンレール57には、内圧(コモンレール57内の燃料圧力)を検出する圧力センサ62を取り付けている。サプライポンプ60はエンジン8の動力によって駆動するものであり、コモンレール57への燃料圧送量を調節する圧力制御電磁弁63を有している。圧力制御電磁弁63は、サプライポンプ60から燃料タンク58への燃料戻し量を増減させることによって、コモンレール57への燃料圧送量を調節してコモンレール内圧を制御する。各インジェクタ56の燃料噴射圧はコモンレール内圧に略等しい。このため、圧力制御電磁弁63によるコモンレール内圧の制御によって、間接的に各インジェクタ56の噴射圧が制御される。
各インジェクタ56、コモンレール57及びサプライポンプ60は戻し配管64を介して燃料タンク58に接続している。コモンレール57と戻し配管64との間には、コモンレール内圧が必要以上に高まるのを防止する圧力リミッタ弁65を設けている。サプライポンプ60と戻し配管64との間に圧力制御電磁弁63を設けている。各インジェクタ56、コモンレール57及びサプライポンプ60での余剰燃料は、戻し配管64を通じて燃料タンク58に戻される。
蓄圧式燃料噴射装置55は、上死点(TDC)を挟む付近でメイン噴射を実行する。また、蓄圧式燃料噴射装置55は、メイン噴射以外にも、NOx及び騒音の低減を目的として少量のパイロット噴射を上死点より約60°以前の時期に実行したり、騒音低減を目的としたプレ噴射を上死点直前の時期に実行したり、粒子状物質の低減や排気ガスの浄化促進を目的としたアフタ噴射及びポスト噴射を上死点後の時期に実行したりする。
さて、図7〜図11に示すように、エンジンルーム7を形成するボンネット91は、枝下での農作業時にボンネットが枝に引っ掛かるのを極力防止する目的で、略円弧形状になっている。実施形態のボンネット91は左右に分割構成されていて、左右のボンネット91は両方共、左右中央部を回動支点として跳ね上げ回動可能になっている。すなわち、左右のボンネット91は、いわゆるガルウイング式の開閉扉になっている。左右一方のボンネット91(実施形態では左ボンネット91)に空気排出口92を形成している。空気排出口92には防塵網93を取り付けている(図1、図7及び図8参照)。
図8〜図11に示すように、機体フレーム2の後部には、エンジン8の前側を支持する左右の前部支持台94と、エンジン8の後側を支持する左右の後部支持台95とを設けている。各前部支持台94の上面側に、防振ゴムを有する前脚体96を介してエンジン8の前部を連結している。各後部支持台95の上面側には、防振ゴムを有する後脚体97を介してエンジン8の後部に取り付けたPTOミッションケース20に連結している。すなわち、前後四つの支持台94,95を介して機体フレーム2の後部にエンジン8をPTOミッションケース20ごと防振支持している。なお、機体フレーム2の後部右側には支持板台98を設けている。支持板台98上に動力噴霧ポンプ9を搭載している。
実施形態のエンジン8では、エンジン出力軸70の延びる方向を走行機体1の前後方向と平行に設定している(エンジン出力軸70を前後向きに設定している)。動力取出し部であるPTOミッションケース20はエンジンルーム7(走行機体1)の後部側に位置させている。排気マニホールド52はシリンダヘッド51の左側面に位置している。シリンダヘッド51の右側面には吸気マニホールド(図示省略)を設けている。図7〜図11に示すように、フライホイルハウジング71上面にはフィルタ取付け部100を形成している。フィルタ取付け部100にはブラケット脚99を介して捕集フィルタ54を取り付けている。高剛性部品であるフライホイルハウジング71の上部側で捕集フィルタ54を支持している。捕集フィルタ54の下方に、フライホイルハウジング71の後面側に取り付けたPTOミッションケース20が位置している。すなわち、捕集フィルタ54は、フライホイルハウジング71上部側で支持した状態で、PTOミッションケース20の上方に位置している。言うまでもないが、捕集フィルタ54は、PTOミッションケース20と同様に、エンジンルーム7(走行機体1)の後部側に位置している。
捕集フィルタ54はエンジン出力軸70方向(前後方向)と交差する左右方向に延びている(捕集フィルタ54の長手方向はエンジン出力軸70方向と交差している)。捕集フィルタ54の排気入口側(左側)は、排気管53を介して排気マニホールド52の排出口側に接続している。捕集フィルタ54の排気出口側(右側)には、下向きに延びるテールパイプ101を接続している。エンジン8の排気ガスは、排気マニホールド51から捕集フィルタ54を経由して浄化処理をされたのちテールパイプ101に移動し、テールパイプ101の排気口から機外に放出される。エンジン8の排気経路中に配置した捕集フィルタ54によって、テールパイプ101経由で機外に排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)を除去すると共に、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を低減している。なお、前述した通り、PTOミッションケース20はエンジン8から右下向きに張り出しているため、テールパイプ101の中途部は、左右外向きに湾曲してPTOミッションケース20の張出し部を迂回している。
上記の構成によると、エンジン8の高剛性部品であるフライホイルハウジング71を用いて、重量物である捕集フィルタ54を高剛性且つ安定的に支持でき、振動等による捕集フィルタ54の損傷を防止できる。デッドスペースであるPTOミッションケース20上方の空間を捕集フィルタ54の配置空間として有効利用でき、エンジン8を配置するエンジンルーム7内に、エンジン8と共にPTOミッションケース20及び捕集フィルタ54をコンパクトに収容できる。捕集フィルタ54がエンジン8と同一の振動系に属することになり、防振対策を簡素化してコスト抑制を図れる。
エンジンルーム7内のうちエンジン8の左右一側方(実施形態では左側)には、エンジン冷却水を冷却するラジエータ102を配置している。この場合、機体フレーム2の後部左側で且つ左前部支持台94よりも前方に、左前部支持台94とは別途でラジエータ取付け台103を設けている(図7及び図8参照)。矩形枠状の取付けフレーム枠104にラジエータ102をボルト締結している。ラジエータ102の左右内側の広幅面をエンジン8左側面に対峙させた状態で、取付けフレーム枠104の下端側をラジエータ取付け台103と左後部支持台95とに跨って連結することによって、ラジエータ102をエンジン8の左側に位置させている。
ラジエータ102は、側面視でエンジン8と捕集フィルタ54の一部とに被さる大きさに設定している。実施形態のラジエータ102は、側面視において左ボンネット91の広範囲を占める大きさになっていて、ラジエータ102の前後長さが左ボンネット91の前後長さよりも若干短い程度である(図8参照)。従って、エンジンルーム7内では、平面視で中央付近にあるエンジン8の左側及び後側を、ラジエータ102と捕集フィルタ54とで取り囲んでいる。このため、捕集フィルタ54とラジエータ102とをエンジン8の周囲(左側及び後側)にコンパクトに配置したものでありながら、捕集フィルタ54に邪魔されることなくラジエータ102を大型化でき、ラジエータ102の冷却性能が向上する。その結果、エンジンルーム7内のヒートバランスを良好に維持できる。
ラジエータ102の左右外側には、ラジエータ102を通過した後の空気(エンジンルーム7内の空気)を外部に排出する排風ファン105を配置している。実施形態では、取付けフレーム枠104に、動力中継軸及び排風ファン軸(図示省略)を動力伝達可能に軸支した前後長手の伝動パイプ106を取り付けている。詳細は省略するが、動力中継軸は伝動パイプ106の長手方向に沿って延び、排風ファン軸は動力中継軸と直交する方向に延びている。動力中継軸の先端側にベベルギヤ機構を介して排風ファン軸を連動連結している。動力中継軸の基端側はプーリ及びベルト伝動系を介してエンジン出力軸70の前端側に動力伝達可能に連結している。エンジン8の動力は、エンジン出力軸70の前端側からプーリ及びベルト伝動系と伝動パイプ106内の動力中継軸とを介して排風ファン軸に伝達され、排風ファン105を回転駆動させる。
ラジエータ102及び排風ファン105は、左ボンネット91の空気排出口92に臨ませている。左ボンネット91の空気排出口92とラジエータ102との間に、排風ファン105が位置している。ラジエータ102の左右内側には、作動油冷却用のオイルクーラ107と、キャビン5内の空調を管理する空気調和機(図示省略)用の冷媒を液化させるコンデンサ108とを配置している。オイルクーラ107とコンデンサ108とは、前後横並びに位置していて、両方共に取付けフレーム枠104に取り付けている。排風ファン105の回転駆動によって、エンジンルーム7内の空気がオイルクーラ107、コンデンサ108及びラジエータ102を経由して空気排出口92から機外に排出される。その結果、エンジン8、オイルクーラ107、コンデンサ108及びラジエータ102が空冷される。
図7、図10及び図11に示すように、エンジンルーム7内のうちエンジン8の左右他側方(実施形態では右側)には、エンジン8に導入する空気を清浄化するエアクリーナ109を配置している。実施形態では、機体フレーム2においてエンジン8よりも後方の部位に、進行方向から見てエンジンルーム7内に収まる大きさで略門形を呈する門形フレーム110を立設している。門形フレーム110の一対の脚部をそれぞれ対応する左右の後部支持台95にボルト締結している。門形フレーム110の前面右コーナ部にエアクリーナ109を取り付けている。エアクリーナ109は、エンジンルーム7内の後部側で捕集フィルタ54と左右横並びに位置している。エアクリーナ109の前方に動力噴霧ポンプ9が位置している。エアクリーナ109から延びる吸気管111をエンジン8の吸気マニホールド(図示省略)に接続している。
このように構成すると、捕集フィルタ54とラジエータ102とエアクリーナ109とをエンジン8の周囲にコンパクトに配置したものでありながら、エアクリーナ109がエンジン8や捕集フィルタ54で温められた熱気を取り込むおそれを低減できる。特に、排風ファン105の駆動によって、捕集フィルタ54周辺の空気(熱気)を機外に排出して、捕集フィルタ54周辺をスムーズに換気できるから、エアクリーナ109が熱気を取り込むおそれをより一層低減できる。
さて、図7及び図9〜図11に示すように、エンジン8におけるシリンダヘッド51の後面側に、センサブラケット125をボルト締結している。センサブラケット125の上面側に、差圧センサ126とフィルタ温度センサ127(図14参照)用のハーネスコネクタ127aとを取り付けている。差圧センサ126は、ハニカム構造体の流入側の排気ガス圧力と流出側の排気ガス圧力の差(排気ガス差圧)を検出するものである。差圧センサ126には、上流側センサ配管126a及び下流側センサ配管126bの一端側をそれぞれ接続している。捕集フィルタ54内のハニカム構造体(スートフィルタ)を挟む位置関係で、各センサ配管体126a,126bの他端側を捕集フィルタ54内に差し込んで固定している。フィルタ温度センサ127用のハーネスコネクタ127aには、センサハーネス127bを介して捕集フィルタ54内に差し込んで固定した温度センサに接続している。差圧センサ126及びフィルタ温度センサ127用のハーネスコネクタ127aは、ボンネット91の内面側と干渉しないように、捕集フィルタ54側でなくエンジン8側にセンサブラケット125を介して支持させている。実施形態では、差圧センサ126並びにフィルタ温度センサ127用のハーネスコネクタ127aの上端の高さ位置を、ラジエータ102及び吸気管111の上端よりも低く設定している。
図7及び図10〜図13に示すように、捕集フィルタ54とエアクリーナ109との間には、捕集フィルタ54からの熱を遮断する横遮熱板体112を配置している。横遮熱板体112は略矩形状のものであり、平面視において捕集フィルタ54の配置空間とエアクリーナ109の配置空間とは横遮熱板体112で仕切られている。実施形態では、門形フレーム110の右コーナ部下側にブラケット板113を取り付けている。ブラケット板113の左端側に横遮熱板体112を前向きに突出するように取り付けている。このため、捕集フィルタ54とエアクリーナ109とを隣接配置していても、横遮熱板体112の断熱作用によってエアクリーナ109周辺の雰囲気温度の上昇を簡単に抑制でき、エアクリーナ109がエンジン8や捕集フィルタ54で温められた熱気を取り込むおそれを低減できる。
図10〜図12に示すように、捕集フィルタ54とPTOミッションケース20との間には、捕集フィルタ54からの熱を遮断する下遮熱板体114を配置している。下遮熱板体114は左右横長矩形状のものであり、背面視において捕集フィルタ54の配置空間とPTOミッションケース20の配置空間とは下遮熱板体114で仕切られている。実施形態では、PTOミッションケース20の上面側に、前後一対のプレート板118をボルト締結している。前後両プレート板118に下遮熱板体114を上方から載置し、前後両プレート板118に下遮熱板体114を取り付けている。捕集フィルタ54の右側及び下側を両遮熱板体112,114で取り囲んでいる。換言すると、両遮熱板体112,114の内側空間に捕集フィルタ54を配置している。両遮熱板体112,114の内側空間は、排風ファン105側(右側)に向けては開口している。
上記の構成によると、捕集フィルタ54とPTOミッションケース20とを隣接配置していても、下遮熱板体114の断熱作用によってPTOミッションケース20周辺の雰囲気温度の上昇を簡単に抑制できる。排風ファン105の駆動によって、捕集フィルタ54周辺の空気(熱気)を両遮熱板体112,114の内側空間から外部に排出して、捕集フィルタ54周辺(両遮熱板体112,114の内側空間)をスムーズに換気できる。
図10及び図11に示すように、ラジエータ102の左右内側にあるオイルクーラ107は、油圧配管115を介してPTOミッションケース20の背面側に接続している。油圧配管115は下遮熱板体114の下方側を通している。PTOミッションケース20の左側部には、PTOミッションケース20内のファンクラッチ機構79(図5参照)を継断作動させるファンクラッチモータ116を配置している。従って、ファンクラッチモータ116も下遮熱板体114の下方側に位置している。下遮熱板体114の断熱作用によって、捕集フィルタ54からの熱が油圧配管115(ひいては内部の作動油)やファンクラッチモータ116に及ぶのを抑制できる。なお、門形フレーム110の左脚部には、エンジン8の駆動制御を司るエンジンECU117を配置している。エンジンECU117の配置箇所はラジエータ102の後方であり、エンジン8や捕集フィルタ54から離れている。このため、捕集フィルタ54等からの熱の影響はエンジンECU117にも及び難く、エンジンECU117の制御安定化や長寿命化に寄与している。
図10及び図13に示すように、テールパイプ101の外周側は、テールパイプ101からの熱を遮断する遮熱筒体120で取り囲んでいる。実施形態では、テールパイプ101を上流パイプ体101aと下流パイプ体101bとに分離構成している。上流パイプ体101aの排気入口側を捕集フィルタ54の排気出口側(右側)に接続している。上流パイプ体101aの排気出口側に、フレキシブル管である蛇腹状連結パイプ101cを介して下流パイプ体101bの排気入口側を接続している。パイプブラケット(図示省略)を介して右後部支持台95に下流パイプ体101bの上部側を取り付けている。エンジン8から捕集フィルタ54及び上流パイプ体101aに伝わった振動は蛇腹状連結パイプ101cで遮断され、下流パイプ体101bに伝達されることはない。エンジン8の駆動による振動は蛇腹状連結パイプ101cで吸収される。
図13に示すように、上流パイプ体101a及び蛇腹状連結パイプ101cの前面側は略L字状の上部前面カバー体121で覆っている。上部前面カバー体121は門形フレーム110に取り付けたブラケット板113の下端側と横遮熱板体112の下端側とに連結している。上流パイプ体101aの後面側は上部後面カバー体122で覆っている。上部後面カバー体122は上流パイプ体101aに直接ボルト締結している。蛇腹状連結パイプ101cの外周側は筒状の断熱カバー体123で覆っている。下流パイプ体101bの後面上部側は、右後部支持台95に取り付けた下部後面カバー体124で覆っている。上部前面カバー体121、上部後面カバー体122、断熱カバー体123及び下部後面カバー体124が遮熱筒体120を構成している。
上記の構成によると、遮熱筒体120(特に上部前面カバー体121)の断熱作用によってテールパイプ101からの熱がエアクリーナ109に及ぶのを抑制でき、エアクリーナ109が熱気を取り込むおそれをより一層低減できる。
上記の記載並びに図10及び図11から明らかなように、走行機体1に搭載したエンジン8と、前記エンジン8の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置54とを備え、前記エンジン8には、フライホイルハウジング71内のフライホイル72を介して前記エンジン8の動力を取り出す動力取出し部20を設けている作業車両において、前記フライホイルハウジング71の上部側で前記排気ガス浄化装置54を支持して、前記排気ガス浄化装置54を前記動力取出し部20の上方に位置させているから、前記エンジン8の高剛性部品である前記フライホイルハウジング71を用いて、重量物である前記排気ガス浄化装置54を高剛性且つ安定的に支持でき、振動等による前記排気ガス浄化装置54の損傷を防止できる。デッドスペースである前記動力取出し部20上方の空間を前記排気ガス浄化装置54の配置空間として有効利用でき、前記エンジン8を配置するエンジンルーム7内に、前記エンジン8と共に前記動力取出し部20及び前記排気ガス浄化装置54をコンパクトに収容できる。前記排気ガス浄化装置54が前記エンジン8と同一の振動系に属することになり、防振対策を簡素化してコスト抑制を図れる。
また、前記動力取出し部20及び前記排気ガス浄化装置54を前記走行機体1の後部側に位置させ、前記エンジン8の左右一側方には、エンジン冷却水を冷却するラジエータ102を配置し、前記ラジエータ102は、側面視で前記エンジン8と前記排気ガス浄化装置54の一部とに被さる大きさに設定しているから、前記排気ガス浄化装置54と前記ラジエータ102とを前記エンジン8の周囲にコンパクトに配置したものでありながら、前記排気ガス浄化装置54に邪魔されることなく前記ラジエータ102を大型化でき、前記ラジエータ102の冷却性能が向上する。その結果、前記エンジンルーム7内のヒートバランスを良好に維持できる。
更に、前記ラジエータ102の左右外側には、前記ラジエータ102通過後の空気を外部に排出する排風ファン105を配置し、前記エンジン8の左右他側方には、前記エンジン8に導入する空気を清浄化するエアクリーナ109を配置しているから、前記排気ガス浄化装置54と前記ラジエータ102と前記エアクリーナ109とを前記エンジン8の周囲にコンパクトに配置したものでありながら、前記エアクリーナ109が前記エンジン8や前記排気ガス浄化装置54で温められた熱気を取り込むおそれを低減できる。
上記の記載並びに図7及び図10〜図12から明らかなように、走行機体1に搭載したエンジン8と、前記エンジン8の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置54とを備え、前記エンジン8には、フライホイルハウジング72を介して前記エンジン8の動力を取り出す動力取出し部20を設けている作業車両において、前記動力取出し部20を前記走行機体1の後部側に位置させ、前記排気ガス浄化装置54を前記動力取出し部20の上方に配置し、前記エンジン8の左右一側方には、前記エンジン8に導入する空気を清浄化するエアクリーナ109を配置し、前記排気ガス浄化装置54と前記エアクリーナ109との間には、前記排気ガス浄化装置54からの熱を遮断する横遮熱板体112を配置しているから、前記排気ガス浄化装置54と前記エアクリーナ109とを隣接配置していても、前記横遮熱板体112の断熱作用によって前記エアクリーナ109周辺の雰囲気温度の上昇を簡単に抑制でき、前記エアクリーナ109が前記エンジン8や前記排気ガス浄化装置54で温められた熱気を取り込むおそれを低減できる。
また、前記エンジン8の左右他側方にはエンジン冷却水を冷却するラジエータ102を配置し、前記ラジエータ102の左右外側には、前記ラジエータ102通過後の空気を外部に排出する排風ファン105を配置し、前記排気ガス浄化装置54と前記動力取出し部20との間には、前記排気ガス浄化装置54からの熱を遮断する下遮熱板体114を配置しているから、前記排気ガス浄化装置54と前記動力取出し部20とを隣接配置していても、前記下遮熱板体114の断熱作用によって前記動力取出し部20周辺の雰囲気温度の上昇を簡単に抑制できる。前記排風ファン105の駆動によって、前記排気ガス浄化装置54周辺の空気(熱気)を前記両遮熱板体112,114の内側空間から外部に排出して、前記排気ガス浄化装置54周辺(前記両遮熱板体112,114の内側空間)をスムーズに換気できる。
更に、前記排気ガス浄化装置54のうち前記エアクリーナ109寄りの部位からテールパイプ101を下向きに延出し、前記テールパイプ101の外周側は、前記テールパイプ101からの熱を遮断する遮熱筒体120で取り囲んでいるから、前記遮熱筒体120の断熱作用によって前記テールパイプ101からの熱が前記エアクリーナ109に及ぶのを抑制でき、前記エアクリーナ109が熱気を取り込むおそれをより一層低減できる。
次に、図14を参照しながら、スピードスプレーヤの各種再生制御を実行する構成について説明する。図14に示すように、スピードスプレーヤの走行機体1には、エンジン8の駆動制御を司るエンジンECU117と、計器パネル24(図3参照)の表示制御を司るメータECU151と、走行機体1の作動制御等を司る本機ECU152とを搭載している。各ECU117,151,152はそれぞれ、各種演算処理や制御を実行するCPUのほか、制御プログラムやデータを記憶させるROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM、時間計測用のタイマ及び入出力インターフェイス等を備えていて、CAN通信バス149を介して相互に通信可能に接続している。エンジンECU117及びメータECU151は、電源印加用のキースイッチ153を介してバッテリー154に接続している。キースイッチ153は、鍵穴に差し込んだ所定の鍵で回転操作可能なロータリ式スイッチであり、ダッシュボード23の背面右側にあるスロットルレバー29の近傍に配置している(図3参照)。
メータECU151には、捕集フィルタ54の再生制御を許可する入力部材としての再生スイッチ155、計器パネル24の液晶パネル156、捕集フィルタ54の再生制御等に関連して鳴動する警報ブザー157、捕集フィルタ54の再生制御に関連して明滅する警報ランプとしての再生ランプ158、再生スイッチ155に内蔵し且つ捕集フィルタ54の再生制御に関連して明滅する再生スイッチランプ159、駐車ブレーキレバー34の制動操作を保持した状態でオンになる駐車ブレーキスイッチ160、副変速レバー37の中立操作状態を検出する副変速中立スイッチ161、ファンクラッチ機構79の継断状態を検出するファンクラッチスイッチ162、及び、送風変速操作具としての送風変速レバー163の操作状態を検出する送風変速スイッチ164等を接続している。再生ランプ158は、計器パネル24内に液晶パネル156とは別で表示される。再生スイッチ155及び再生スイッチランプ159はダッシュボード23の背面側に取り付けている(図3参照)。実施形態のファンクラッチスイッチ162は、送風変速スイッチ164を介してメータECU151に接続している。送風変速レバー163は、送風ファン11の駆動速度を高速と低速とに切換え操作するものであり、エンジンルーム7内のうちエアクリーナ109の下方に位置している(図11参照)。
本機ECU152には、走行機体1の走行速度(車速)を検出する車速検出部材としての車速センサ142、及び、副変速レバー37の高速操作状態を検出する副変速高速スイッチ166等を接続している。車速センサ142は、走行ミッションケース12内の走行出力軸17に設けた回転ロータ(図示省略)に対峙する状態で走行ミッションケース12に装着している。
エンジンECU117は、エンジン8の駆動状態に応じた適切なコモンレール内圧となるように、圧力センサ62の検出結果に基づき圧力制御電磁弁63を駆動させると共に、エンジン8の駆動状態に応じた適切な噴射タイミング及び噴射量となるように各インジェクタ56を開閉作動させる燃料噴射制御を実行する。エンジンECU117には、蓄圧式燃料噴射装置55の各インジェクタ56、コモンレール内圧を検出する圧力センサ62、コモンレール57への燃料圧送量を調節する圧力制御電磁弁63、エンジン回転速度を検出する回転速度検出器としてのエンジン回転センサ66、アクセルペダル30の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルセンサ67、スロットルレバー29の操作位置を検出するスロットルポテンショ68、エンジン8の吸気圧(吸気量)を調節する吸気スロットル部材165、捕集フィルタ54内にあるハニカム構造体前後(上下流)の排気ガスの差圧を検出する差圧センサ126、並びに、捕集フィルタ54内の排気ガス温度を検出するフィルタ温度センサ127等を接続している。
走行機体1の停止状態では原則として、エンジンECU117は、エンジン回転センサ66で検出した実際のエンジン回転速度が予め設定したアイドリング回転速度と一致するように、各インジェクタ56からの燃料の噴射圧、噴射タイミング及び噴射量(以下、目標噴射パターンという)をフィードバック制御する。また、停止状態以外では、エンジンECU117は、実際のエンジン回転速度がスロットルレバー29の操作位置(スロットルポテンショ68の検出結果)に対応した基準回転数と一致するように、目標噴射パターンをフィードバック制御する。
実施形態における捕集フィルタ54の再生制御方式としては、エンジン8の通常運転だけで捕集フィルタ54が自発的に再生する通常運転制御(自己再生制御)と、捕集フィルタ54の詰り状態が規定水準以上になるとエンジン8の負荷増大を利用して排気ガス温度を自動的に上昇させるアシスト再生制御と、ポスト噴射を用いて排気ガス温度を上昇させるリセット再生制御と、ポスト噴射、エンジン8のハイアイドル回転速度及び送風ファン11駆動を組み合わせて排気ガス温度を上昇させる非作業再生制御(駐車再生制御又は緊急再生制御といってもよい)とがある。
通常運転制御は、路上走行時や薬液散布作業時の再生制御形式である。通常運転制御では、エンジン回転速度とトルクとの関係が出力特性マップの自己再生領域にあり、捕集フィルタ54内でのPM酸化量がPM捕集量を上回る程度に、エンジン8の排気ガスが高温になっている。
アシスト再生制御では、吸気スロットル部材165の開度調節とアフタ噴射とによって、捕集フィルタ54を再生させる。すなわち、アシスト再生制御では、吸気スロットル部材165を所定開度まで閉弁させる(絞る)ことによって、エンジン8への吸気量を制限する。そうすると、エンジン8の負荷が増大するから、設定回転速度維持のために蓄圧式燃料噴射装置55の燃料噴射量が増加し、エンジン8の排気ガス温度を上昇させる。これに合わせて、メイン噴射に対してやや遅角させて噴射するアフタ噴射によって拡散燃焼を活性化させ、エンジン8の排気ガス温度を上昇させる。その結果、捕集フィルタ54内のPMが燃焼除去される。
リセット再生制御は、アシスト再生制御が失敗した場合(捕集フィルタ54の詰り状態が改善せずPMが残留した場合)や、エンジン8の累積駆動時間TIが設定時間TI1(例えば100時間程度)以上になった場合に行われる。リセット再生制御では、アシスト再生制御の態様に加えて、ポスト噴射を実行することによって、捕集フィルタ54を再生させる。すなわち、リセット再生制御では、吸気スロットル部材165の開度調節とアフタ噴射とに加えて、ポスト噴射で捕集フィルタ54内に直接供給した未燃燃料を酸化触媒で燃焼させることによって、捕集フィルタ54内の排気ガス温度を上昇させる(約560℃程度)。その結果、捕集フィルタ54内のPMが強制的に燃焼除去される。
非作業再生制御は、リセット再生制御が失敗した場合(捕集フィルタ54の詰り状態が改善せずPMが残留した場合)等に行われる。非作業再生制御では、リセット再生制御の態様に加えて、エンジン回転速度をハイアイドル回転速度(例えば2200rpm)に維持すると共に送風ファン11を低速駆動させることによって、エンジン8の排気ガス温度を上昇させる(約600℃程度)。その結果、リセット再生制御よりも更に好条件下で、捕集フィルタ54内のPMが強制的に燃焼除去される。なお、非作業再生制御でのアフタ噴射は、アシスト再生制御やリセット再生制御よりもリタード(遅角)させて行われる。
次に、図15及び図16のフローチャートを参照しながら、エンジンECU117による捕集フィルタ54再生制御の一例について説明する。前述の各再生制御は、メータECU151の指令に基づきエンジンECU117が実行する。すなわち、図15及び図16のフローチャートにて示すアルゴリズム(プログラム)は、メータECU151のROMに記憶されていて、当該アルゴリズムをRAMに呼び出してからCPUで処理して、CAN通信バス149を通じてエンジンECU117に指令を発し、エンジンECU117がメータECU151の指令を処理することによって、前述の各再生制御が実行される。
図15に示すように、捕集フィルタ54再生制御ではまず、キースイッチ153がオンであれば(S101:YES)、エンジン回転センサ66、差圧センサ126及びフィルタ温度センサ127の検出値と、吸気スロットル部材165の開度と、蓄圧式燃料噴射装置55の燃料噴射量とを読み込む(S102)。すなわち、エンジンECU117が、エンジン回転センサ66、差圧センサ126及びフィルタ温度センサ127の検出値と、吸気スロットル部材165の開度と、蓄圧式燃料噴射装置55の燃料噴射量とを読み込んで、メータECU151に送信する。
次いで、過去にリセット再生制御又は非作業再生制御を実行してからの累積駆動時間TIが設定時間TI1(例えば50時間)未満であれば(S103:NO)、捕集フィルタ54内のPM堆積量を推定する(S104)。PM堆積量推定は、差圧センサ126の検出値と排気ガス流量マップとに基づくP法と、エンジン回転センサ66の検出値と燃料噴射量とPM排出量マップと排気ガス流量マップとに基づくC法とを用いて行う。PM堆積量が規定量Ma(例えば8g/l)以上であれば(S105:YES)、アシスト再生制御を実行する(S106)。すなわち、メータECU151が、エンジンECU117に対してアシスト再生制御を実行するための指令信号を与える。
アシスト再生制御を行っている際、エンジン回転センサ66の検出値と燃料噴射量とPM排出量マップと排気ガス流量マップとに基づき、捕集フィルタ54内のPM堆積量を推定する(S107)。PM堆積量が規定量Ma(例えば6g/l)未満であれば(S108:YES)、アシスト再生制御を終了して通常運転制御に戻る。PM堆積量が規定量Ma以上の場合(S108:NO)、この状態で所定時間TI4(例えば10分)を経過した場合は(S109:YES)、リセット再生制御の前のリセット待機モードであるステップS201へ移行する。
ステップS103に戻り、累積駆動時間TIが設定時間TI1以上の場合(S103:YES)、リセット待機モードであるステップS201へ移行し、リセット再生要求を実行させる。この段階では、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159が低速点滅すると共に(例えば0.5Hz)、警報ブザー157が断続的に低速鳴動する(例えば0.5Hz)。このとき、メータECU151は、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159を低速点滅させると同時に、警報ブザー157を低速鳴動させる。また、メータECU151は、液晶パネル156の画面表示をリセット再生制御の実行を促すリセット再生要求情報による表示に切り換える。この場合、液晶パネル156には、「再生スイッチを長押ししてください」の文字データ等の操作指示標識が表示される。
再生スイッチ155が所定時間(例えば3秒)オン操作された場合、(S202:YES)、リセット再生制御を実行する(S203)。この段階では、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159を点灯させる一方、警報ブザー157を鳴動停止させる。また、液晶パネル156の画面表示をリセット再生要求情報から「リセット再生中」という文字データ等の報知標識によるリセット再生実行情報に遷移させる。このため、オペレータは、液晶パネル156の表示内容と再生ランプ158及び再生スイッチランプ159の状態を確認することで、リセット再生制御の実行中である旨を簡単に視認でき、オペレータの注意を喚起できる。
リセット再生制御の実行中は、捕集フィルタ54内のPM堆積量を推定し(S204)、PM堆積量が規定量Mr(例えば10g/l)未満の場合は(S205:NO)、リセット再生制御開始から所定時間TI8(例えば30分)を経過すれば(S206:YES)、リセット再生制御を終了して通常運転制御に戻る。このとき、リセット再生制御を終了するため、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159を消灯させる。また、液晶パネル156の画面表示をリセット再生実行情報から通常情報に遷移させる。一方、PM堆積量が規定量Mr以上であれば(S205:YES)、リセット再生制御失敗とみなし、PM過堆積の可能性が懸念されるので、非作業再生制御の前の非作業待機モードであるステップS301へ移行する。
図16に示すように、非作業待機モードでは始めに、捕集フィルタ54内のPM堆積量を推定する(S301)。そして、PM堆積量が規定量Mb(例えば12g/l)未満で(S302:NO)且つ所定時間TI9(例えば10時間)内であれば(S303:NO)、第1非作業再生要求を実行させる(S304)。この段階では、再生ランプ158は消灯したままであるが、警報ブザー157が断続的に高速鳴動する(例えば1.0Hz)。そして、液晶パネル156の画面表示が、非作業再生制御の実行を予告する第1非作業再生要求指標の表示に切り替わる。例えば第1非作業再生要求指標は、「農作業部を停止」の文字データと「安全な場所に駐車」の文字データとを交互に切換表示させる。
一方、PM堆積量が規定量Mb以上か(S302:YES)、非作業待機モードのままで所定時間TI9(例えば10時間)を経過した場合は(S303:YES)、PM過堆積の可能性が懸念されるので、捕集フィルタ54の異常を報知する(S401)。このとき、再生ランプ158が高速点滅すると共に(例えば1.0Hz)、警報ブザー157が高速鳴動する(例えば1.0Hz)。また、液晶パネル156の画面表示が、「排気フィルタ異常」の文字データと「販売店に連絡」の文字データとを交互に切り換える異常警告標識の表示に切り換わる。
上述のステップS304で第1非作業再生要求を実行した後は、予め設定した非作業移行条件(インターロック解除条件)が成立するまで待機する(S305)。ステップS305に示す非作業移行条件は、ファンクラッチスイッチ162が入り状態(ファンクラッチ機構79が動力接続状態)、駐車ブレーキスイッチ160がオン、副変速中立スイッチ161がオン(副変速レバー37が中立状態)、並びに、送風変速スイッチ164が低速状態(送風変速レバー163が低速側操作状態)という条件からなっている。
ステップS305において非作業移行条件(インターロック解除条件)が成立すると(S305:YES)、第2非作業再生要求を実行する(S306)。この段階では、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159が低速点滅し、警報ブザー157が断続的な低速鳴動に切り換わる。また、液晶パネル156の画面表示が、非作業再生制御の実行を促す第2非作業再生要求情報による表示に遷移する。すなわち、液晶パネル156には、ステップS201でのリセット再生要求情報による表示と同様、「再生スイッチを長押ししてください」の文字データ等の操作指示標識が表示される。
そして、再生スイッチ155を所定時間オンにすれば(S307:YES)、非作業再生制御を実行する(S308)。この段階では、再生ランプ158及び再生スイッチランプ159を点灯させる一方、警報ブザー157を鳴動停止させる。また、液晶パネル156の画面表示を第2非作業再生要求情報から非作業再生実行情報に遷移させる。すなわち、液晶パネル156には、「排気フィルタ再生中」の文字データと「再生終了まで待機」の文字データとを交互に切り換える非作業再生報知標識が表示される。
非作業再生制御の実行中は捕集フィルタ54内のPM堆積量を推定する(S309)。PM堆積量が規定量Ms(例えば8g/l)未満であり(S310:YES)、且つ、非作業再生制御開始から所定時間TI11(例えば30分)を経過すれば(S311:YES)、非作業再生制御を終了して通常運転制御に戻る。PM堆積量が規定量Ms以上の場合(S310:NO)、この状態で所定時間TI12(例えば30分)を経過すれば(S312:YES)、非作業再生制御失敗とみなし、PM過堆積の可能性が懸念されるので、捕集フィルタ54の異常を報知するステップS401へ移行する。
非作業再生制御の実行中に、駐車ブレーキレバー34での制動解除や送風ファン11の高速駆動等によって、非作業移行条件(インターロック解除条件)が非成立の状態になると(S313:YES)、非作業再生制御が中断した後に(S314)、ステップS304に移行して、第1非作業再生要求を実行させる。なお、S312において、非作業移行条件(インターロック解除条件)が非成立の状態により、非作業再生制御の中断の可否が判定されるものとしたが、非作業再生制御の実行中に再生スイッチ155を押下したら非作業再生制御を中断するようにしても差し支えない。
上記の制御によると、例えばスピードスプレーヤのような作業車両にもともと備わる送風ファン11を利用して、エンジン8に加わる負荷(ダミー負荷)を調節することが可能になり、非作業再生制御において、排気ガス温度を再生可能な温度以上に確実に上昇させて捕集フィルタ54内のPMを燃焼除去できる。非作業再生制御での捕集フィルタ54のPM捕集能力を確実に回復できる。
また、送風ファン11の駆動速度は高速と低速との二段階に切換え可能な構成であり、非作業再生制御の実行時は送風ファン11を低速駆動させるから、非作業再生制御の実行時に送風ファン11からエンジン8に過剰なダミー負荷を掛けずに済む。特に送風ファン11の高速駆動時は非作業再生制御を実行しないから、非作業再生制御の実行時に送風ファン11からエンジン8に過剰なダミー負荷が掛かることを皆無にできる。従って、非作業再生制御に伴う燃費の悪化を抑制できる。
更に、オペレータの手動操作による捕集フィルタ54の再生制御の開始指示が、再生スイッチ155に対する長押し操作(所定時間(例えば3秒)のオン操作)である。すなわち、オペレータの手動操作か又は誤操作かを判断可能な操作時間以上に再生スイッチ155を連続操作したときに、捕集フィルタ54の再生制御を開始するから、オペレータが想定していない再生制御の実行を未然に阻止できる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。その他各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。