従って、本発明の1つの目的は、光学系の少なくとも1つの欠陥を補償する方法及び装置を提供し、かつ従来技術の問題の少なくとも一部分を回避することである。
本発明の第1の態様により、請求項1に記載の方法を提供する。実施形態において、光学系の少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、少なくとも1つの欠陥が少なくとも部分的に補償されるように、光学面のうちの1つの上にパターン要素を持たない光学系の少なくとも1つの光学要素内に少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入する段階を含む。
本発明の方法は、光学要素の特定の光学特性の定められた変化を局所的に生成するために、光学要素に対して如何に局所的に影響を及ぼすかの知識に基づいている。従って、光学要素の光学特性は、光学要素内への1つ又はそれよりも多くの局所持続性修正配置の導入によって制御された方式で修正することができる。光学要素の修正された特性は、この光学要素、並びに光学系の更に別の光学要素の欠陥を少なくとも部分的に補償する。この処理は、局所持続性修正配置の導入が光学要素内にいずれかの他の欠陥をもたらすことのないように制御することができる。
更に別の態様において、少なくとも1つの欠陥は、光学系の少なくとも1つの光学要素の局所偏光変化及び/又は光学系の少なくとも1つの光学要素の局所強度変化を含む。
定めた方法は、光学系の光学要素のいくつかのタイプの欠陥を補償することができる。先の段落では2つの例示的な欠陥を示している。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素の少なくとも1つのインタフェース及び/又は少なくとも1つのコーティング上での光学ビームの少なくとも1つの局所反射率変化及び/又は少なくとも1つの局所透過率変化が、光学系内の光学ビームの局所強度変化を引き起こす。
これらの欠陥は、光学要素の製造工程の限られた完全性に起因して発生する可能性がある。これらの欠陥は、例えば、高い強度を有する光学ビームと周囲の空気中に存在する粒子との相互作用の結果として光学要素の作動中に悪化する可能性がある。更に、光学系がフォトリソグラフィ投影露光系である例では、光学ビームの局所偏光変化及び/又は光学ビームにわたる強度変化は、支配的な状態における強度(IPS)の低下をもたらし、それによってフォトリソグラフィマスクの特徴要素がウェーハ上のフォトレジスト内に生成する像コントラストが低下する。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素の複屈折分布は、光学系内の光学ビームの局所偏光変化を引き起こす。
定めた方法は、様々な原因から引き起こされる偏光変化を補償することができる。更に、本方法は、光学要素の材料の固有複屈折又は材料複屈折からもたらされる偏光変化を補償することができる。
更に、説明する方法は、光学要素の装着によって引き起こされる光学要素内の歪み又は応力によって誘起される複屈折を補償することを可能にする。これに加えて、定めた方法は、光学要素の寿命中の重力及び/又は光学要素の経年変化に根源を有する欠陥の補償を可能にする。
別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域内に導入する段階、少なくとも1つの局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域の外側に導入する段階、及び/又は少なくとも1つの第1の局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域内に導入し、少なくとも1つの第2の局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域の外側に導入する段階を更に含む。
光学的有効区域という表現は、光学要素のうちで光学ビームの光子がその上に入射する区域を意味する。光学要素の全ての他の部分区域は、光学要素の光学的有効区域の外側の区域である。
局所持続性修正を光学要素のうちで光学ビームの透過及び/又は反射に有効ではない区域内に導入することにより、欠陥の補償は、ビームの光路を最小限にしか妨害しない。
別の態様において、少なくとも1つの第1の光学要素が、少なくとも1つの第1の欠陥を含み、光学系の少なくとも1つの第2の光学要素が、この少なくとも1つの第1の欠陥を含み、この少なくとも1つの第1の光学要素が、少なくとも1つの第2の欠陥を含み、及び/又はこの少なくとも1つの第2の光学要素が、この少なくとも1つの第2の欠陥を含む。
上記に定めた方法は、いくつかのタイプの欠陥の補償を可能にする。局所持続性修正配置は、それぞれの欠陥タイプに特化して設計することができる。特定の特徴を有する2つ又はそれよりも多くの局所持続性修正配置を光学系の単一光学要素内に導入することにより、光学系の2つ又はそれよりも多くの異なる欠陥タイプを同時に補償することができる。
単一光学要素の1つ又はいくつかの局所持続性修正配置が、全体光学系のいくつかの光学要素にわたって配分されたいくつかのタイプの欠陥を補償することができることが、定めた方法の利点である。更に、光学系の複雑さを増すことになる光学系内に追加光学要素を挿入することが不要である。
局所持続性修正配置は、光学要素の光学的有効区域内に局所歪み分布を誘起するために使用することができる。それによって光学要素の光学的有効区域にわたる偏光変化の依存性を補償することができる。更に、光学要素の光学的有効区域内に局所散乱分布を誘起するために、別の局所持続性修正配置を適用することができる。それによって光学要素の光学的有効区域にわたる光学ビームの強度変化を補正することが可能になる。
更に、定めた方法は、欠陥を補償するのに2つ又はそれよりも多くの光学要素を加担させず、特にその相対的な向きの変更を伴わないので、光学系を形成する光学要素の収差のような他の欠陥の補償に向けて確保された最適化自由度を費やすことはない。
定めた方法の適用は、光学系の波長を制限しない。定めた方法は、電磁スペクトルの赤外線(IR)範囲から可視範囲を横切って紫外(UV)範囲に達する幅広いスペクトル範囲を有効範囲する光学系の光学要素に適用することができる。
別の態様において、少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入する段階は、超短レーザパルスを少なくとも1つの光学要素に印加する段階を含む。
超短レーザパルスは、好ましくは、ピコ秒範囲及び/又はフェムト秒範囲にパルス長を有するレーザパルスを含む。好ましくは、超短レーザパルスの生成には、可視波長領域、又はその近くで作動するレーザ系が使用される。
別の態様は、局所偏光変化を補償するための少なくとも1つの第1のパラメータセットを有し、及び/又は局所強度変化を補償するための少なくとも1つの第2のパラメータセットを有する超短レーザパルスを印加する段階を更に含む。
光学系の強度変化の補償後に、局所強度補償の結果として発生する損失を補償するために、光学系を通過するビームの光学強度を高める必要がある場合がある。
更に別の態様は、少なくとも1つの第1のパラメータセットを有する超短レーザパルスを少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域に及び/又は少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域の外側に印加する段階、及び/又は少なくとも1つの第2のパラメータセットを有する超短レーザパルスを少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域に印加する段階を含む。
別の態様により、少なくとも1つの第1のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの光学要素の材料の局所密度変化を誘起し、及び/又は少なくとも1つの第2のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの光学要素の材料の構造変化を誘起する。
更に別の態様において、少なくとも1つの第1のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの局所持続性修正配置の区域のピクセルと呼ぶ不連続局所修正を誘起し、少なくとも1つの第2のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの局所持続性修正配置の区域の連続局所修正を誘起する。
本出願の関連では、局所持続性修正配置は、ピクセルと呼ぶ1つ又はそれよりも多くの局所不連続修正、又はそれぞれの局所持続性修正配置の区域の連続局所修正、又は両方のタイプの修正の組合せを含む。
更に有益な態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置によって誘起された歪みが光学系の局所偏光変化を少なくとも部分的に補償するように少なくとも1つの局所持続性修正配置を選択する段階を含む。
更に別の態様により、少なくとも1つの局所持続性修正配置は、光学的有効区域内及び/又は光学的有効区域の外側に導入され、及び/又は少なくとも1つの第1の局所持続性修正配置が、少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域内に導入され、かつ少なくとも1つの第2の局所持続性修正配置が、少なくとも1つの光学要素の光学的有効区域の外側に導入される。
歪み分布は、歪みによって引き起こされる光学ビームの局所リターデーション変化をもたらす。局所持続性修正配置によって局所的に誘起される歪みを注意深く制御することにより、光学偏光の変化が少なくとも部分的に補償される。
光学的有効区域の外側の区域内への局所持続性修正の導入は精密に制御することができ、従って、この導入は、光学要素の材料の光学特性の局所劣化をもたらさない。これに加えて、この場合に、光学要素の光学的有効区域内の偏光変化を補償するのに遠くまで届く歪み効果しか使用されず、従って、光学要素の光学的有効区域内での他の光学特性の修正を除外することができる。
別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置によって誘起される散乱が、光学系の局所強度変化を少なくとも部分的に補償するように少なくとも1つの局所持続性修正配置を選択する段階を更に含む。更に別の態様において、少なくとも1つの局所持続性修正配置が、光学的有効区域内に導入される。
更に有益な態様は、光学系の局所偏光変化と局所強度変化を同時に補償するように少なくとも1つの局所持続性修正配置を選択する段階を更に含む。
更に別の態様は、少なくとも1つの第1の光学要素の少なくとも1つの第1の欠陥、光学系の少なくとも1つの第2の光学要素の少なくとも1つの第1の欠陥、光学系の少なくとも1つの第2の光学要素の少なくとも1つの第2の欠陥、及び/又は少なくとも1つの第1の光学要素の少なくとも1つの第2の欠陥を少なくとも1つの第1の光学要素内の少なくとも1つの局所持続性修正配置を用いて補償する段階を更に含む。
更に別の態様は、少なくとも1つの光学持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の強度変化測定、偏光測定、及び/又は複屈折測定から、及び/又は光学系の強度変化測定、偏光測定、及び/又は複屈折測定から決定する段階を更に含む。
定めた方法を使用して、単一光学要素によって引き起こされる偏光変化及び/又は強度変化を測定することも可能である。測定された偏光変化及び/又は強度変化から、偏光変化及び強度変化をかなりの程度まで補償する少なくとも1つの局所持続性修正配置を計算することができる。次に、次の段階では、決定された局所持続性修正配置は、光学要素の光学的有効区域内及び/又は光学的有効区域の外側の区域内に導入される。個々に補償された光学要素のみを含む光学系を構成することができる。
これに代えて、全体光学系の欠陥、すなわち、光学系の1つの更に別の光学要素、一部の更に別の光学要素、又は全ての他の光学要素上で得られる欠陥を補償する1つの光学要素を有する光学系を構成することができる。解説した2つの代替法の間の手法、すなわち、第1の光学要素内の第1の局所持続性修正配置を用いて光学系の欠陥の一部分を補償し、かつ光学系の第2の光学要素内の第2の局所持続性修正配置を用いて光学系の欠陥の第2の部分を補償する手法を使用することも可能である。
別の態様は、少なくとも1つの光学要素の少なくとも1つの第1の層内に少なくとも1つの第1の局所持続性修正配置を導入し、少なくとも1つの第2の層内に少なくとも1つの第2の局所持続性修正配置を導入する段階を更に含む。
光学要素内のそのような局所持続性修正配置は、局所持続性修正の導入における柔軟性を高める。その一方、そのような装置は、異なる欠陥の補正又は補償に向けて局所持続性修正配置を導入することを好都合に可能にする。更に、そのような装置は、超短レーザパルスで光学要素を損傷する危険を冒すことなく、光学要素の光学特性の定められた重要な修正を実施することを可能にする。
更に別の態様により、第1の層及び第2の層は、光学要素の2つの対向する光学面の間の中心に位置する平面の周りに配置される。
局所持続性修正のこの種の配置は、光学要素内に曲げ力を全く又はほぼ全く誘起しない。
更に別の態様により、局所持続性修正は、光学要素の対称平面の周りに位置付けることができ、それらが光学要素の幾何学中心に対して対称に位置する場合に、光学要素の面の近くにさえも位置付けることができる。これに代えて、更に別の態様により、局所持続性修正は、光学要素の曲げを回避するために全ての曲げ力が相殺又は補償されるように配置することができる。
更に別の態様において、少なくとも1つの局所持続性修正配置は、少なくとも2つの異なるタイプの局所持続性修正を含む。
更に別の態様において、少なくとも1つの第1のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの光学要素内に少なくとも1つの第1のタイプの局所持続性修正を導入し、少なくとも1つの第2のパラメータセットを有する超短レーザパルスが、少なくとも1つの光学要素内に少なくとも1つの第2のタイプの局所持続性修正を導入する。
この特徴は、光学系の単一光学要素内で光学系の2つの異なるタイプの欠陥の同時補正又は同時補償を可能にする。
更に別の態様において、以下の表は、光学要素の材料の光学特性及び機械的特性に影響を及ぼす局所持続性修正の生成において有利なレーザビームパラメータの範囲を紹介するものである。
(表1)
表1:代表的なレーザビームパラメータの数値
更に別の態様において、表2は、光学要素の材料歪みの有効な制御に向けて局所持続性修正を書き込む機能を与える第1のレーザビームパラメータセット(標準PW(処理ウィンドウ)と呼ぶ)を指定するものである。
(表2)
表2:標準処理ウィンドウにおけるNd−YAGレーザ系に関する代表的なレーザビームパラメータの数値
更に別の態様において、表3は、材料内に有意な歪みを誘起することなく、光学要素の材料透過率の有効な制御のための持続性局所修正の書込に関する第2のレーザビームパラメータセット(Low Reg PWと呼ぶ)を定めるものである。
(表3)
表3:低精度位置合わせ処理ウィンドウ(Low Reg PW)におけるNd−YAGレーザ系に関する代表的なレーザビームパラメータの数値
更に別の態様は、表4において、有意な光減衰及び/又は光散乱を誘起することなく、光学要素の材料の収縮のためのフォトリソグラフィマスクの書込に関する第3のレーザビームパラメータセット(ピクセルなしPWと呼ぶ)を指定するものである。
(表4)
表4:材料収縮(ピクセルなしPW)のためのNd−YAGレーザ系に関する代表的なレーザビームパラメータの数値
表2に示すレーザビームパラメータセットを使用するピクセル書込と、表3に示すレーザビームパラメータセットを使用するピクセル書込との組合せは、異なるタイプの誤差の補正、更に、異なる誤差の組合せの補正のための明確な手法をもたらす。
特定の補正アクション又は最適な補正アクションを達成するために、上記に指定したレーザビームパラメータセットを調整するか又は組み合わせることができる。
別の有益な態様は、少なくとも1つの欠陥を最大範囲で補償する少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入するための光学系の光学要素を選択する段階を更に含む。
光学系内の光学ビームに沿って、他の光学要素よりも検出を補償するのに適する光学要素が存在する可能性がある。これは、これらの光学要素が、光学的有効区域内に他の光学要素よりも小さい歪み及び/又は小さい局所散乱しか導かない局所持続性修正配置を用いて欠陥を補償することができることを意味する。記述した方法は、この目的に最適な局所持続性修正配置の導入のための光学要素の選択を可能にする。
別の態様は、光学系の少なくとも2つの光学要素をこれらの少なくとも2つの光学要素の各々内への少なくとも1つの局所持続性修正配置の導入に向けて選択する段階を更に含む。
この場合に、これらの局所持続性修正配置は、これらの配置の組合せ効果が、全体光学系の少なくとも1つの欠陥を補償するように選択される。
別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置をフォトリソグラフィ投影露光系の照明系の視野平面の隣に配置された照明系の光学要素内に導入する段階、及び/又は少なくとも1つの局所持続性修正配置を照明系の視野平面と瞳平面の間に配置された照明系の光学要素内に導入する段階を更に含む。
更に別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を欠陥を最大範囲で補償する位置に有する少なくとも1つの追加光学要素を光学系内に挿入する段階を更に含む。
この手法は、光学系の光学要素を修正することを必要としない。1つ又はいくつかの追加光学要素を必要に応じて挿入することができる1つ又はいくつかの位置を光学系内に意図することができる。
別の態様は、少なくとも1つのリターデーション補償構成要素内に少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入する段階を更に含み、少なくとも1つのリターデーション補償構成要素は、光学系内に追加で挿入されるものである。
更に別の態様において、光学系内で最大の欠陥補償効果を有する位置に少なくとも1つの偏光補償構成要素が配置される。
光学系の欠陥の補償に向けて個別の偏光補償構成要素を使用することにより、この偏光補償構成要素は、欠陥を最適に補償することができ、かつ一方で光学ビームの経路に対して最小の効果のみを有する光学系の位置に配置することができる。この手法は、異なる作動条件のための容易に交換することができる様々な偏光補償構成要素を設けることにより、光学系の作動中に変化する可能性がある欠陥の柔軟な補償を可能にする。
更に別の態様により、光学系は、望遠鏡系、顕微鏡系、及び/又は投影系を含む。別の態様において、顕微鏡系は、位相差顕微鏡を含み、及び/又は投影系は、フォトリソグラフィ投影露光系を含む。
本発明の方法の適用は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明放射線の波長内に限定されない。好ましくは、本発明の方法は、紫外(UV)波長領域、特にDUV範囲の電磁放射線を使用する投影露光系に適用することができる。
更に別の態様において、偏光補償構成要素は、フォトリソグラフィ投影露光系内でフォトリソグラフィ投影露光系の支配的な状態における強度(IPS)に対して最大の効果を有する位置に配置される。
更に別の態様において、局所持続性修正配置は、光学系の強度変化補償に使用される減光フィルタ内に導入される。
例えば、典型的に、投影露光系の照明系は、照明系の視野平面である結像平面の近くに、フォトリソグラフィマスクを照明するために使用されるスキャナの光学ビームにわたる照明の不均一性の補償専用の特定の光学要素を有する。この要素は減光フィルタであり、灰色フィルタとも呼ぶ。この光学要素は、局所持続性修正配置を導入することによるリターデーション変化の補償に対する完璧な候補である。その結果、灰色フィルタは、光学ビームにわたる強度変化の補償及びリターデーション変化の補償という両方のタスクを同時に並行して実施することができる。
別の態様において、光学系の強度変化補償のための減光フィルタとして作用する光学要素の光学的有効区域内に少なくとも1つの第1の局所持続性修正配置が導入され、この光学要素の光学的有効区域の外側に少なくとも1つの第2の局所持続性修正配置が導入される。
更に別の態様において、光学系は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明系を含む。
別の態様は、調節可能な歪みを少なくとも1つの光学要素に少なくとも1つのアクチュエータを用いて印加する段階を更に含む。更に別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入し、調節可能な歪みを少なくとも1つの光学要素内に少なくとも1つのアクチュエータを用いて印加する段階を含む。更に別の態様において、アクチュエータは圧電要素を含む。
局所持続性修正配置を含む光学要素に1つ又はいくつかのアクチュエータを取り付けることにより、調節可能な歪みを光学要素に追加的に印加することができる。アクチュエータは、例えば、投影露光系の温度ドリフト又は湿度変化によって引き起こされる偏光変化を補償するために使用することができる。更に、アクチュエータによって印加される追加の経時的な歪みは、投影露光系の光学要素の経年変化要素を補償するために使用することができる。
別の態様により、局所持続性修正配置は、光学系の少なくとも1つの欠陥を網羅的に補償する段階を含む。
この手法は、例えば、DUV波長領域のための光学要素の製作に使用される材料の固有複屈折又は材料複屈折を補償するために使用することができる。IPS(支配的な状態における強度)損失は、光学系又は投影露光系の光学要素内の光学ビームのリターデーションの二乗に比例するので、光学要素又は光学要素群の材料複屈折によって誘起される偏光変化の主要部分を個々の光学要素に対する固有複屈折の効果を詳細に解析することなしに補償することができる。従って、特定のタイプの光学系の誘導偏光変化を各個々の光学系の材料複屈折の効果を解析する必要なく少なくとも部分的に補償することができる。
別の態様は、光学系の各光学要素を補償する段階を更に含む。
この手法は、実質的に欠陥のない光学要素又は光学構成要素のみを含む光学系の構成を可能にする。これは、例えば、フォトリソグラフィ投影露光系が、複屈折補償された光学要素のみを含むことを意味する。更に、設置位置に依存する重力効果によって誘起される複屈折を補償することができる。
更に、異なる態様は、光学系の各光学要素を測定する段階を更に含む。更に別の態様において、光学要素はレンズを含む。
別の態様は、光学要素に歪みを印加することによって光学要素の少なくとも1つの欠陥を補償する段階を含む。更に別の態様において、歪みを印加する段階は、光学要素に時間非依存の歪みを印加する段階、及び/又は時間依存の歪みを印加する段階を含む。更に別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入することによって時間非依存の歪みを印加する段階を含む。更に別の態様は、少なくとも1つのアクチュエータを使用することによって時間依存の歪みを少なくとも1つの光学要素内に印加する段階を含む。
更に別の態様において、光学要素の少なくとも1つの欠陥の測定段階と光学要素の少なくとも1つの欠陥を補償する段階とは、組合せ装置内で行われる。別の有益な態様において、組合せ装置は、偏光計と超短レーザパルスの生成のためのレーザ光源とを含む。
最新の光学系に対しては、典型的に、光学系の各光学要素を光学系内へのその挿入の前に解析又は制御しなければならない。その結果、解析労力を過度に増加させることなく、光学欠陥の測定を光学要素の制御と組み合わせることができる。特に欠陥の測定とその補償とが単一のデバイス又は装置に組み合わされる場合に、欠陥補償を最適化することができる。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素の少なくとも1つの欠陥を補償する段階は、少なくとも1つ局所持続性修正配置を導入し、少なくとも1つの光学要素にアクチュエータを用いて歪みを印加する段階を含む。
別の態様により、少なくとも1つの光学要素の少なくとも1つの欠陥は、この少なくとも1つの光学要素の製作現場において少なくとも1つの光学要素の製作工程の終了時に補償される。
光学要素の製作工程の少なくとも終了時には、光学要素がその定められた規格を満たすか否かを制御しなければならない。規格は、歪み誘起複屈折を含むことができる。歪み誘起複屈折の数値は、光学要素を自身の光学系内に挿入する利用者が供給することができる。従って、光学要素の製造業者は、利用者の光学要素の歪み誘起複屈折を補償するのに必要な歪み分布を決定し、それぞれの歪み分布をこの光学要素に適用する。
有益な態様において、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素は、光学系内のビーム伝播方向の回りに回転対称ではない少なくとも1つの局所持続性修正配置を含む。
別の有益な態様は、欠陥補償が最大にされるように少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素をビーム伝播方向の回りに回転させることによって少なくとも1つの光学欠陥を補償する段階を更に含む。
この手法は、光学要素の補償効果を欠陥に対して調節することができるので、欠陥補償手順に更に別の自由度を導入する。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素は、これらの少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素のビーム伝播方向に対して垂直な平面に配分された異なる局所持続性修正配置を有する少なくとも2つの欠陥補償区域を含む。
様々な欠陥又は異なる強度を有する1つの欠陥タイプの補償に向けて光学要素又は追加光学要素を準備することにより、光学要素の最適な向きを決定するだけでよいので、欠陥補償処理を最適化することができる。
更に別の態様は、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素の欠陥補償区域が光学系の透明開口に位置合わせするように、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素をビーム伝播方向の回りに回転させる段階を更に含む。
フォトリソグラフィ投影露光系の照明系の透明開口は、一般的に楕円形のものであり、透明開口の区域は、光学要素又は追加光学要素の光学的有効区域よりも小さい。この状況は、様々な欠陥補償区域を有する光学要素及び/又は追加光学要素の製作を可能にする。
別の態様により、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素の少なくとも2つの欠陥補償区域は、ビーム伝播方向の回りの定められた回転角で配置される。
更に別の態様において、少なくとも2つの欠陥補償区域は、異なる欠陥強度を有する1タイプの欠陥を補償する局所持続性修正配置を含む。更に別の態様において、少なくとも2つの欠陥補償区域は、2つの異なるタイプの欠陥を補償する局所持続性修正配置を含む。別の有益な態様により、少なくとも2つの欠陥補償区域は、異なる欠陥強度を有する異なるタイプの欠陥を補償する局所持続性修正配置を含む。
更に別の態様は、光学系の作動中に少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素を回転させる段階を含む。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明系のレンズを含み、少なくとも1つの追加光学要素は欠陥補償板を含む。
上述したように、フォトリソグラフィ露光投影系のスキャナの照明系は、一般的に光学要素及び/又は追加光学要素の光学的有効区域の一部分のみを用い、その使用部分は、一般的に楕円形状を有する。この部分を透明開口と呼ぶ。従って、単一光学要素は、異なるタイプの光学欠陥を補償し、及び/又は様々な欠陥強度をもたらす単一の欠陥を補償するために使用することができる2つ又はそれよりも多くの欠陥補償区域を有することができる。光学要素及び/又は追加光学要素をビーム伝播方向の回りに回転させることにより、光学要素及び/又は追加光学要素の欠陥補償効果を最適化することができる。
有益な態様は、少なくとも1つの欠陥が最大範囲で補償されるように、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素を光学系内のビーム伝播方向に沿ってシフトさせる段階を更に含む。別の態様は、フォトリソグラフィ投影露光系の視野平面と瞳平面の間における少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素のシフト段階を含む。更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素のシフト段階は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明系の視野平面と瞳平面の間のシフト段階を含む。更に別の態様により、照明系はレチクルマスキング対物系を含む。
照明系では、歪み誘起複屈折は、典型的に視野依存性、並びに瞳依存性を示す。歪み誘起複屈折の補償に使用される光学要素及び/又は追加光学要素をシフトさせることにより、欠陥補償効果を視野、並びに瞳への欠陥の依存性に対して調節することができる。この手順は、光学系における欠陥補償効果を最大にする。
更に別の態様において、少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素は、複屈折分布を含む。
別の態様は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の面輪郭に対して一定の深さに導入する段階を更に含む。
更に別の態様は、少なくとも2つの異なる局所持続性修正配置を少なくとも1つの光学要素の様々な深さに導入する段階を含む。
光学的に「厚肉」の光学要素では、光線の一部分は、光学要素の光軸と平行に光学要素を通らない。厚肉光学要素内に均一なピクセル配置を導入する際に、光軸に対して非ゼロの角度を有する光学要素を通過する光線は、歪み誘起複屈折の速軸の成分を「見る」。ピクセル配置を一定の深さで光学要素の面輪郭を辿るように光学要素内に導入することにより、誘起複屈折分布の速軸は、光軸と平行な歪み誘起複屈折の成分を補償する光軸と平行なベクトル成分を取得する。光学要素の様々な深さへの異なるピクセル配置の導入も、光軸と平行な「厚肉」光学構成要素の歪み誘起複屈折の成分を補償することができる。
別の態様において、ビーム伝播方向に沿った少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素のシフト段階は、これらの少なくとも1つの光学要素及び/又は少なくとも1つの追加光学要素による光学系の複屈折分布の補償を変化させる。
更に別の態様により、光学面のうちの1つの上にパターン要素を持たず、光学系の少なくとも1つの欠陥を補償するための光学要素は、少なくとも1つの欠陥を少なくとも部分的に補償する少なくとも1つの局所持続性修正配置を含む。
別の態様において、光学要素の光学的有効区域は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を含み、かつ光学的有効区域の外側の区域は、少なくとも1つの局所持続性修正配置を含み、及び/又は光学的有効区域は、少なくとも1つの第1の局所持続性修正配置を含み、かつ光学的有効区域の外側の区域は、少なくとも1つの第2の局所持続性修正配置を含む。
更に別の態様において、光学要素は、光学系内に追加的に挿入される追加光学要素である。別の態様において、追加光学要素は結像特性を含まない。
更に別の態様により、少なくとも1つの第1の光学要素は、少なくとも1つの第1の欠陥を含み、及び/又は光学系の少なくとも1つの第2の光学要素は、少なくとも1つの第1の欠陥を含み、及び/又は少なくとも1つの第2の光学要素は、少なくとも1つの第1の欠陥を含み、及び/又は少なくとも1つの第2の光学要素は、少なくとも1つの第2の欠陥を含む。
別の態様により、光学要素及び/又は追加光学要素は、光学系内で少なくとも1つの欠陥を最大範囲で補償する位置に配置される。
更に別の態様において、光学要素及び/又は追加光学要素は、フォトリソグラフィ露光投影系内のこの投影系の支配的な状態における強度(IPS)に対して最大の効果を有する位置に配置される。
別の態様により、光学要素及び/又は追加光学要素は、フォトリソグラフィ投影露光系内でのこの露光系の支配的な状態における強度(IPS)に対して最大の効果を有する位置に配置されたリターデーション補償要素を含む。
更に別の態様において、光学要素及び/又は追加光学要素は、偏光補償構成要素を含む。
更に別の態様において、追加光学要素はリターデーション補償要素を含む。
更に別の態様において、リターデーション補償要素は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明系の瞳平面及び/又は視野平面に配置される。
更に別の態様において、光学要素は、フォトリソグラフィ投影露光系の照明系の強度変化補償に使用される減光フィルタを更に含む。
更に別の態様において、光学要素及び/又は追加光学要素は、更に、上述の態様のうちのいずれかに従う方法を実行するようになっている。
別の態様において、光学系の少なくとも1つの欠陥を補償するための装置は、(a)光学系の少なくとも1つの欠陥を決定するようになった測定ユニット、(b)光学系の少なくとも1つの欠陥から少なくとも1つの局所持続性修正配置を決定するようになった演算ユニット、及び(c)その面のうちの1つの上にパターン要素を持たない光学系の少なくとも1つの光学要素内に少なくとも1つの局所持続性修正配置を導入するようになった光源を含む。
更に別の態様において、測定ユニットは偏光計を含む。
偏光計又は自動化偏光計は、典型的に、光学系を形成する光学要素又は光学要素群の歪み誘起複屈折分布を決定するのに使用される。
有益な態様により、測定ユニットと光源は、単一デバイスに組み合わされる。
別の態様において、測定ユニットと光源とを含む組合せデバイスは、演算ユニットを更に含む。更に別の態様において、光源は、超短レーザパルスを発生させるようになったレーザ光源を含む。最後に、更に別の態様において、演算ユニットは、測定ユニットと光源とを含む組合せデバイスを更に制御する。
本発明をより明快に理解してその実際の用途を理解するために、以下の図を提供して下記で参照する。これらの図は、例示的にのみ提供したものであり、決して本発明の範囲を限定しないことに注意しなければならない。
以下では、本発明の例示的実施形態を示した添付図面を参照して本発明をより完全に説明する。しかし、本発明は、異なる形態に実施することができ、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。限定されるのではなく、これらの実施形態は、本発明の開示が完全なものになり、本発明の範囲を当業者に伝えることになるように提供するものである。
以下では、本発明を投影系、特にフォトリソグラフィ投影露光系に関して解説する。しかし、ここで解説するものは、本発明の原理の用途に関する単なる例に過ぎず、本発明をフォトリソグラフィ投影露光系を限定しないことを理解しなければならない。
図1は、投影露光系100の基本的な構成要素を示している。レーザ光源140が、直線偏光電磁放射線145をビーム拡大ユニット150内に放出する。ビーム拡大ユニット150は、レーザビーム145の直径をミリメートル範囲からセンチメートル範囲に増大させる。最新のDUV投影露光系では、光源としてエキシマレーザ系が使用される。偏光方向は、水平、すなわち、x方向に沿って向けられるか、又は垂直、すなわち、y方向に沿って向けられる。ビーム145はz方向に伝播する。一般的に、レーザ光源140は、ナノ秒範囲にパルス持続時間を有する光パルス又はレーザパルスを放出する。
図1の例示的実施形態において、照明系160は、第1の光学要素群162と、偏向ミラー164と、第2の光学要素群166とを含む。スキャナのビームスリット(図1には示していない)にわたる強度変化を除去するために、灰色フィルタとも呼ぶ減光フィルタ170が、照明系160の出口に配置される。減光フィルタ170を射出する光ビーム145は、ウェーハ上に投影される特徴要素を有するフォトリソグラフィマスク110を通過する。マスク110を通した光は、投影対物系180によって集光され、多くの場合にシリコンウェーハである基板120上に配置された感光層130上にフォーカスされる。マスク110及び基板120は投影露光系100の一部ではないことを強調しておかなければならない。
フォトリソグラフィマスク170は、照明系160の視野平面175に配置される。点線168は、照明系160の瞳平面168を略示している。
図1の例示的実施形態において、照明系160及び投影系180内の光学要素190はレンズである。更に、照明系160は、少なくとも1つのミラー164を含む。投影露光系100の光学要素190は、例えば、フィルタ要素及び/又は回折光学要素(DOE)(図1には示していない)を含むことができる。
与えられた波長で、フォトリソグラフィマスク110上の構造に対する投影露光系100の分解能は、投影対物系180が、基板120上に施されたフォトレジスト130上にフォーカスさせることができる最大伝播角によって実質的に決定される。理論上の伝播角θmaxは、投影対物系180又は投影系の開口数(NA)とフォトレジストの屈折率nRとから次式に従って得られる(M.Totzeck他著「結像に対する偏光の影響(Polarization influence on imaging)」、J.Microlith.、Microlab.、Microsyst.4(3)(2005年7月〜9月)、031108−1〜031108−15ページ)。
投影露光系100の分解能を最大にするためには、投影系180のNAを増大させなければならない。この増大は、1.0よりも大きい開口数(ハイパーNA)を有する光学系の使用を可能にする液浸リソグラフィを使用することによって行うことができる。その一方、電磁波の同一の偏光成分しか干渉しないので、上述したことは、投影露光系100によるフォトレジスト130内へのマスク110上の構造の結像に対して、投影露光系100内に使用される電磁放射線145のベクトル性が重要になることを意味する。従って、ウェーハ120上のフォトレジスト130内でのマスク110の特徴構造の像コントラストを決定するのは波面品質だけではない。偏光も、DUV投影露光系内で有意な影響を有し、ハイパーNA液浸リソグラフィ系の像品質を決定する。
投影露光系100の光学要素190内では、インタフェース及びコーティングにおける反射及び透過及び/又は複屈折は、偏光変化に対する最も重要な発生源である。一般性を制限することなく、以下に続く解説は、投影露光系100を通る経路上におけるレーザビーム145の偏光に対する光学要素190の複屈折の効果に着目する。
図2は、マスク110又はレチクル110の平面内での投影露光系100の照明系160の光学要素190の固有複屈折又は材料複屈折の効果を略示している。図1の解説において上述したように、レーザ光源140の出力ビーム145は実質的に直線偏光される。図2に示す例では、ビーム145は、水平方向に偏光されている。図2は、x軸を基準として角度を測定した場合の45°軸上へのベクトルリターデーションの投影を示すスカラー複屈折成分Ret45の図を示している。図2a〜図2cはまた、リターデーションが照明系160のレンズ縁部に向けて有意に増大することを示している。更に、図2a〜図2cは、リターデーションが瞳縁部に向けても有意に増大することも示している。これは、照明系160の光学要素170、190の材料複屈折が、強い視野依存性と瞳依存性の両方を有することを意味する。
材料複屈折を有する光学要素170、190のリターデーションΔは、光学要素170、190の厚みdとその速軸の屈折率nF及び遅軸の屈折率nSとにより次式に従って決定される。
この場合に、δを複屈折と呼ぶ。
光学要素170、190の材料複屈折によって引き起こされるリターデーションΔは、マスク110の照明視野にわたるレーザビーム145の偏光の変化をもたらす。その結果、例示的に図2で光学構成要素170、190の材料複屈折によって配分されている偏光は、支配的な状態における強度(IPS)の低下を招く。IPS規格は、投影露光系100の利用者に対して重要な特徴であるので、投影露光系100が、定められたIPS閾値を満たすようにIPS損失を補償しなければならない。現在、一般的なIPS規格は、照明設定に依存して96%と98.5%の間で変化する。
この高いIPS規格閾値は、全ての外部寄与も含む投影露光系100全体の約10nmの範囲のリターデーション収支をもたらす。従って、IPS規格は、投影露光系100の照明系160及び投影系180の全ての光学要素170、190に対して新しい複屈折要件を設定する。更に、IPS規格は、マスク110、フォトレジスト130、及びマスク110のペリクル(図1には示していない)によって誘起される偏光変化に対しても高い要求を課する。投影露光系100の一部ではない最後の構成要素の影響に対しては本発明では対処しない。
図3は、光学要素170、190内に局所持続性修正の配置を導入して投影露光系100の光学要素170、190の材料複屈折の効果を補償するために使用することができる装置400の略ブロック図を示している。装置300は、3次元で移動可能にすることができるチャック320を含む。チャック320には、例えば、挟着のような様々な技術を使用することによって光学要素310を固定することができる。光学要素310は、図1の光学要素170、190のうちの1つとすることができる。
装置300は、パルス又はレーザパルスのビーム又は光ビーム335を生成するパルスレーザ光源330を含む。レーザ光源330は、可変持続時間を有する光パルス又はレーザパルスを発生させる。パルス持続時間は、10fs程度の短さのものとすることができ、100psまで連続的に増加させることができる。パルスレーザ光源330によって生成される光パルスのパルスエネルギは、0.01μJ毎パルスから10mJ毎パルスに達する広大な範囲にわたって調節することができる。更に、レーザパルスの繰り返し数は、1Hzから100MHzまでの範囲を含む。好ましい実施形態において、光パルスは、800nmの波長で作動するTi:サファイアレイザによって生成することができる。しかし、以下に説明する方法は、このレーザ方式に限定されず、原理的に、光学要素310の材料に対する禁制帯幅よりも小さい光子エネルギを有し、フェムト秒範囲に持続時間を有するパルスを発生させることができる全てのレーザ方式を使用することができる。従って、例えば、Nd−YAGレーザ系又は色素レーザ系を適用することができる。
装置300は、1つよりも多いパルスレーザ光源330を含むことができる(図3には示していない)。
表2及び表3(「発明の概要」節)は、一態様において光学要素310内に局所持続性修正配置を導入するのに使用される周波数2倍Nd−YAGレーザ系のレーザビームパラメータの概要を表している。単一の局所持続性修正は、光学要素310の密度を局所的に修正する。局所修正される光学要素310の密度は、この光学要素310の少なくとも1つの小さい空間領域の範囲で非連続的に修正され、この少なくとも1つの小さい空間領域をピクセルと呼ぶ。更に、単一の局所持続性修正の局所修正密度は、誘起ピクセルである局所持続性修正の周囲に歪み分布を誘起する。光学要素310の材料内に特定目的の配置で多くのピクセルを導入するか又は書き込むことにより、望ましい歪み分布を生成することができる。
不透過性において誘起される変化Δβijは、材料内に誘起される歪みに線形に依存し、不透過性βと誘電率εとが次式によって関連付けられることは公知である。
この依存性は、応力光学行列の成分を用いて次式のように表すことができる。
従って、光学要素170、190内にピクセルを導入するか又は書き込むことによって光学要素170、190の材料内に誘起される歪みは、材料内での光学ビームのリターデーションΔに直接関連付けられ、次式によって与えられる。
ここで、dは、ここでもまた、光学要素170、190の厚みであり、n0は、光学要素170、190の等方性材料の屈折率であり、βijは、光学要素170、190の材料の不透過性行列の成分である。式5は、リターデーションを光学要素の厚みに対して垂直な2次元変形モデルで表している。
レーザビームは、光学要素170、190内にフォーカスされ、レーザパルスが光学要素310の材料内に「書き込まれる」ので、以下では、特定のレーザパルスを特徴付ける1つのレーザビームパラメータセットを書込モードとも呼ぶ。レーザビーム又はレーザパルスの各パラメータセット又は各書込モードは、光学要素170、190内に当該パラメータセットに特徴的な又は独特の局所変形を誘起する。言い換えれば、レーザパルスに関する各パラメータセット又は各書込モードは、光学要素310の材料内にその独特の変形を生成する。
以下では、光学要素170、190に対するレーザパルスの効果をモード署名(MS)と呼ぶパラメータの形式で説明する。この思想では、光学要素170、190の区域は、小さい基本区域、好ましくは、小さい矩形又は正方形に分割される。モード署名は、レーザパルスの作用又はレーザパルスの和の作用に起因する基本区域の歪曲又は変形を表している。
「発明の概要」節の表1から表4は、誘導歪み分布及び/又は誘導光散乱減衰のような光学要素170、190、310の材料の特性に異なって影響を及ぼす局所持続性修正配置に対する異なるレーザビームパラメータセットを要約している。
上記に表1で紹介したレーザビームパラメータセットに関して、レーザビームパラメータの全ての特定の範囲は、特定的に誘起される持続性修正に起因する特定のモード署名(MS)に対応することに注意しなければならない。
上記で表2に示すレーザビームパラメータセットの範囲は、誘導光減衰/誘導光散乱と比較して大きい膨張をもたらし、歪み制御に有利である。
更に、表3に示すレーザビームパラメータセットの範囲は、誘導光減衰/誘導光散乱と比較して小さい膨張を発生させる。この小さい大きさのMSを有する処理ウィンドウ(PW)は、光学要素170、190の材料の目立った変形なしに光の減衰/散乱を制御するのに有利である。
更に、上記で表4に示すピクセルなし書込に対応するレーザビームパラメータの範囲は、光学要素170、190の材料の収縮を誘起し、従って、負の大きさのMSを有することに注意しなければならない。ピクセルなし書込は、光学要素の特性が、光学要素上に入射する光の軽微な散乱でさえも許容しない場合の材料変形に有利である。
標準書込(表2)とLow Reg(表3)とピクセルなし書込(表4)との組合せは、誘導変形及び/又は誘導変形によって引き起こされる光減衰を制御するための完全セットを与える。
ステアリングミラー又はステアリング系390は、パルスレーザビーム335をフォーカス対物系340内に誘導する。対物系340は、パルスレーザビーム335を光学要素310内にフォーカスさせる。適用される対物系340のNA(開口数)は、光学要素310の材料内での定められたフォーカススポットサイズ及びフォーカス位置に依存する。表1に示すように、対物系340のNAは、0.9までとすることができ、この値は、実質的に1μmのフォーカススポット直径、及び実質的に1020W/cm2の最大強度をもたらす。
装置300は、試料ホルダ320の2軸位置決め台のx方向とy方向の平面内での平行移動を管理するコントローラ380及び演算ユニット360を更に含む。コントローラ380及び演算ユニット360は、対物系340が固定された1軸位置決め台350を通してのチャック320の平面に対して垂直な(z方向の)対物系340の平行移動を更に制御する。装置300の他の実施形態において、光学要素310を目標の場所まで移動するために、チャック320に3軸位置決め系を装備することができ、対物系340を固定されたものとすることができ、又はチャック320を固定されたものとすることができ、対物系340を3次元で移動可能にすることができることに注意しなければならない。パルスレーザビーム335の目標の場所への光学要素310のx方向、y方向、及びz方向の移動のための手動位置決め台を使用することができ、及び/又は対物系340は、3次元移動のための手動位置決め台を有することができることに更に注意しなければならない。
演算ユニット360は、マイクロプロセッサ、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、CPU(中央演算処理装置)、GPU(グラフィック処理ユニット)などとすることができる。演算ユニット360は、コントローラ380に配置することができ、又は例えばPC(パーソナルコンピュータ)、ワークステーション、メインフレームのような個別のユニットとすることができる。演算ユニット360は、キーボード、タッチパッド、マウス、ビデオ/グラフィックディスプレイ、プリンタのようなI/O(入力/出力)ユニットを更に含むことができる。更に、演算ユニット360は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含むことができる。演算ユニット360は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はこれらのいずれかの組合せでもたらすことができる。更に、演算ユニット360は、レーザ光源330(図3には示していない)を制御することができる。
更に、装置300は、チャック320に配置された光源からダイクロイックミラー345を通して光を受光するCCD(電荷結合デバイス)カメラ365を含む閲覧系を設けることができる。この閲覧系は、目標位置に対する光学要素310のナビゲーションを容易にする。更に、閲覧系は、光源330のパルスレーザビーム335による光学要素310内でのピクセル配置の形成を観察するために使用することができる。
図4は、光学要素170、190のうちの1つの材料複屈折の計測結果を示している。以下ではこの例を用いて、光学要素170、190の材料複屈折に対する局所持続性修正又はピクセルの配置の効果を論証する。光学要素170、190の材料複屈折を解析するのに、2つの交差偏光フィルタが使用される。図4aの線は、光学要素170、190の光学的有効区域の直径にわたる速軸の向きを示しており、これらの線の長さは、材料複屈折の局所強度を示している。図4bは、材料複屈折によって誘起される局所リターデーションΔの大きさ又は量を示している。この大きさは、10nmという最大のリターデーションの大きさにスケーリングされている。リターデーション量の二乗平均量は2.6nmに達する。
図5は、図4の光学要素170、190に対して、局所持続性修正の配置を導入するか又はピクセルを書き込む区域を示している。内側の黒色区域は、光ビーム145の光子が光学要素170、190を通過する光学的有効区域510である。図5は、光学的有効区域510の周囲に光学要素170、190の機能を実行するのに有効ではない区域520を灰色に示している。図5の例では、ピクセル配置の書込に使用される区域520は15mmの直径を有する。
既に上述したように、レーザ系330のレーザビーム335は、光学的有効区域510の外側520で光学要素170、190を局所的に変形するのに使用される。局所持続性修正は、光学要素170、190の材料の密度を局所的に修正する。光学要素170、190の区域520内にピクセル配置を書き込むことによる小さい局所変形の導入は、光学要素170、190の材料の材料複屈折を補償するのに使用される。従って、どの書込モード又はどのレーザビームパラメータセットがどのタイプのピクセルを生成するかを把握することは極めて重要である。
上述したように、レーザパルスは、以下では区域520内にのみ書き込まれ、レーザパルスの作用は、主に区域510内で解析される。
区域520内のピクセル配置の書込による光学要素170、190の光学的有効区域510内の材料複屈折の補償を解析するために、図4の光学要素170、190の材料複屈折の補償効果をシミュレートする。
図4の光学要素170、190の材料複屈折の補償に向けて、シミュレーション処理において、2つの異なる書込モードのピクセルを光学要素170、190の区域520内に導入する。図6及び図7は、それぞれの書込モードのピクセル配置の効果を示している。図6aは、第1のモードのモード署名を示しており、図7aは、第2の書込モードの書込署名を示している。黒色の正方形は、レーザパルスの印加の前の部分区域520内の基本区域を表している。灰色の矩形は、レーザパルスの作用下での基本区域の変形を表している。図6aは、実質的に水平方向の又はx方向に沿った基本区域の変形を示しており、それに対して図7aは、実質的に垂直方向の又はy方向に沿った基本区域の変形を示している。すなわち、モード署名は、区域520の膨張のタイプを決定し、従って、補償処理の効率も決定する。
図6b及び図7bは、区域520内で必要とされる局所持続性修正を誘起するために光学要素170、190の区域520内に書き込まなければならないピクセルの計算上の密度を示している。この光学ピクセル密度は、局所ピクセル密度に比例し、書込処理をモニタするのに使用される。印加レーザパルスは、標準処理ウィンドウ(表2を参照されたい)に従うパラメータセットを有する。材料複屈折を補償するのに必要とされるピクセル分布又は局所持続性修正配置は、図4の計測複屈折分布から決定される。必要とされるモード署名特性を得るために、印加レーザビームは、表2に記載のパラメータ値(std PW)を有していた。更に、この事例では、レーザビームを追加成形し、すなわち、この特定の事例では非点収差を導入した。
図6c及び図7cは、図6b及び図7bの区域520内のピクセル配置によって引き起こされる遠くまで届く歪みから発生する複屈折速軸の分布のシミュレーションを示している。図6d及び図7dは、区域520内のピクセル配置によって引き起こされる歪みによって誘起される活性区域510内でのリターデーションの大きさΔの局所分布を示している。
図8aは、シミュレーションにおいて、第1の書込モード(図6a)及び第2の書込モード(図7a)の図6b及び図7bのピクセル配置が光学要素170、190の材料複屈折に適用された後の図4の光学要素170、190の光学的有効区域510にわたる速軸の分布を示している。同じく図8bは、リターデーション量の残留分布を示している。図8bの二乗平均の大きさは0.56nmになる。
上述の値は、2.6nmである図4bの計測リターデーションに対して78%のリターデーションの改善をもたらす。この提示例は、図4の材料複屈折の有意な改善を示している。この結果は、部分的には、光学要素170、190の縁部分において大きい複屈折を有し、それに対して中心部分で複屈折が低いという考察中の問題の結果である。しかし、考察中の問題は、図2に示すもののような光学要素170、190では非常に一般的である。従って、説明する方法は、特に光学的有効区域510にわたる偏光変化が光学要素170、190の材料複屈折によって引き起こされる場合に、これらの偏光変化を補償するのに非常に適切である、
以下では、石英板の中心部分の僅かな固有複屈折を補償することによって本方法を検証する。この目的のために、図9は、石英板の計測複屈折分布を示している。より詳細には、図9aは、石英板にわたる固有複屈折又は材料複屈折の速軸の分布を示しており、図9bは、この板の中心領域の抜粋図を示している。図9cは、リターデーション量を示している。図2及び図4と同様に、図9においても固有複屈折は中心領域内で比較的弱く、この領域は、僅か0.18nmの二乗平均量のみを有する。
それにも関わらず、板の中心における複屈折問題を補償することが目的である。光学的有効区域又は光学的活性区域は、35mmの辺長を有する正方形区画である。ピクセル配置は、光学的有効正方形区画の周囲の10mmの幅広い区域内に書き込まれる。
図10aは、第1のモードのモード署名を示しており、図11aは、第2の書込モードのモード署名を示している。上述の場合のように、黒色の正方形は、レーザパルスの印加の前の中心正方形区画の周囲の区域内の基本区域を示している。灰色の矩形は、レーザパルスの作用下での基本区域の変形を示している。図10aは、大きい方の変形がx方向に対して−45°の角度を有する軸と平行である基本区域の非対称な変形を示している。図11aは、第2の書込モードの変形又はモード署名が、実質的に図10aのモード署名に対して約90°だけ回転されることを示している。第1の例と同様に、これらの書込モードは、標準処理ウィンドウのレーザビームパラメータセットを含む。
図10b及び図11bは、中心正方形区画の周囲の区域内で必要とされる局所変形を誘起するためにこの区域内に書き込まなければならない光学ピクセルの計算上の密度を示している。光学透過率の変化は5%までであり、それに対して図6b及び図7bでは、この変化は10%までである。上記に解説した例と同様に、材料複屈折の補償に必要とされるピクセル分布は、図9に示す計測複屈折分布から決定される。
図10c及び図11cは、図10b及び図11bの中心正方形区画の周囲の区域内のピクセル配置によって引き起こされる遠くまで届く歪みから発生する複屈折の速軸の分布のシミュレーションを示している。図10d及び図11dは、中心正方形区画の周囲の10mmの幅広帯状域内のピクセル配置によって引き起こされる歪みによって誘起される、活性区域(中心正方形区画)内でのリターデーション量Δの局所分布を示している。
これらのシミュレーション結果から、図9のリターデーションに対して88%の改善が予想される。図12aは、第1の書込モード(図10a)及び第2の書込モード(図11a)の図10b及び図11bのピクセル配置が、図9の石英板の中心領域の周囲の10mmの幅広帯状域内に書き込まれた後のこの石英板の光学的有効中心正方形区域にわたる速軸の計測分布を示している。図12bは、リターデーションの計測残留分布を示している。図12bのリターデーションのモード署名大きさは0.06nmである。
この値は、図9bの0.18nmの計測リターデーションに対して75%のリターデーションの改善をもたらす。この提示例は、図9の石英板の中心部分の材料複屈折の有意な改善を論証している。しかし、リターデーションの計測改善値は、シミュレーションデータから予想したもの(88%)よりも低い。図12からは、残差複屈折の主要部分が光学的有効区域のコーナに位置することを見ることができる。シミュレーション予想と計測データの間の差の主要部分は、当て嵌めた変形モデルの2次元近似から引き起こされる。3次元変形モデルの使用は、シミュレーションデータと計測データとをより良い適合に誘導することができる。その一方、この変形モデル予想と計測データの間の不適合は、光学的有効区域とこの区域の周囲のピクセルが書き込まれる帯状域との間に小さい間隙を導入することによって大きく改善することができる。
ここで、全体の系を形成する光学要素170、190の偏光変化を補償するために、解説している方法を投影露光系100の特定の光学要素に適用する。以下に説明する例示的実施形態において、この特定の光学要素は、投影露光系100の減光フィルタ170である。しかし、減光フィルタ170は単なる例に過ぎず、この補償方法は、投影露光系100の光学要素190のうちのいかなるものにも適用することができることを理解しなければならない。
図1から分るように、減光フィルタ170又は灰色フィルタ170は、照明系160の結像平面の近くに配置される。既に上述したように、例示的な灰色フィルタ170は、光ビーム145にわたる照明不均一性を補償するのに使用される。図13は、灰色フィルタ170の上面図を示している。その全域は、約150mm×75mmに達し、光学的有効区域1310は、約120mm×28mmである。灰色フィルタ170の厚みは3mmである。
活性フィルタ区域1310の周囲の区域1320は、DUV光子に対して透過性を持たず、従って、局所持続性修正配置を導入するために使用することができる。投影露光系100の光学要素170、190の材料複屈折の補償に必要とされる灰色フィルタ170の瞳の活性区域1310にわたるリターデーション分布が、照明瞳の活性区域1310にわたる平均として計算される。この手法は、各個々の投影露光系100の光学要素170、190の材料複屈折の解析を回避する。
区域1310は、灰色フィルタ170の長軸上で線形に変化する計算上のリターデーションを示している。図13に示すように、速軸は、灰色フィルタ170の右部分にx軸に対して45°の向きを有する。左部分では、速軸の向きはまた、x軸に対して−45°である。図13の右側のスケールは、リターデーションが灰色フィルタ170の中心で実質的にゼロであることを示している。縁部では、誘導リターデーションは約10nm/cmであり、それによって灰色フィルタ170の縁部において光学ビームの約3nmのリターデーションが引き起こされる(光が水平偏光又は垂直偏光を有する場合に)。
図13に示す計算上のリターデーション分布の構成に向けて、ここでもまた、2つの書込モードを適用する。図14a及び図14bは、減光フィルタ170の望ましいリターデーション分布又はリターデーション分布の生成に使用される2つの書込モードのモード署名を示している。図14aの書込モードは、実質的に水平方向の灰色フィルタ170の基本区域の変形を誘起し、それに対して図14bの書込モードは、実質的に垂直方向の基本区域の変形を誘起する。両方の書込モードは、標準処理ウィンドウからのレーザビームパラメータセットを含む。既に上述したように、光は円柱レンズを用いて追加成形される。
歪み発生源(ピクセルが書き込まれる区域)と誘導歪みが複屈折を補償する区域との間の距離が大きい可能性があるので、必要とされるリターデーションの量が比較的多いということが、図13の計算上のリターデーション分布の独特の特徴である。従って、光学的無効区域1320内で1つの局所持続性修正配置を用いて、又はこの区域内に各書込モードの単層のピクセルを書き込むことによってこのリターデーション分布を得ることは可能ではない。従って、全処理は、5つの連続段階に分割される。図15aは、図14aの第1の書込モードの計算上の5つのピクセル配置を示しており、図15bは、図14bの第2の書込モードの計算上の5つのピクセル配置を示しており、2つの書込モードのピクセル配置が、単層の灰色フィルタ170内に書き込まれる。5つの段階のピクセル配置が、灰色フィルタ170内で異なる深さに配置された5つの異なる層内に導入される。
各書込段階の後に、全体の目標に鑑みて次の書込段階を微調整するために、特定の層内のそれぞれの局所持続性修正配置によって得られるリターデーションの量が解析される。図16は、灰色フィルタ170の活性区域1310内での誘起複屈折の発達を示している。図16aは、灰色フィルタ170の区域1320内にピクセルが書き込まれていない図16a0の初期状態から始まる速軸の設定を示している。図16bは、この場合にも灰色フィルタ170の区域1320内に局所持続性修正配置が導入されていない灰色フィルタ170の初期状態から始まるリターデーション量の発達を表している。
図16は、5つの書込モードのピクセル配置によって導入される歪みが加算的であることを示している。それによって投影露光系100の光学構成要素170、190の材料複屈折を補償するための灰色フィルタ170の区域1320内での制御された誘導歪みの生成において大きいダイナミックレンジがもたらされる。
図3のレーザ系330である書込ツールは、全体処理中に、図14に示すような計算上のモード署名の生成においてある程度の不安定性を示している。図16では、例えば、段階2及び段階3においてそうであるように、一部の中間段階で得られる結果には目立ったずれが存在する。しかし、次の書込段階の前に実施される補正アクションに起因して、最終結果は、図13に示す計算上の目標との良好な適合を示している。
灰色フィルタ170の区域1320の様々な層内に位置する局所持続性修正配置の導入によって誘起される複屈折分布の効果を検証するために、処理された灰色フィルタ170を投影露光系100の照明系1609内に設置する。偏光された瞳の得られるIPSを図17に示している。
処理された灰色フィルタ170の向きを調べるために、この灰色フィルタ170をビーム経路170内に図13の灰色フィルタ145の水平軸であるx軸の回りに反転した2つの異なる向きに導入する。図17bは、処理された灰色フィルタ170が照明系160内に挿入されていない場合の投影露光系100の照明系160の結像平面内の光学ビームのリターデーション量の分布を示している。IPS損失は、2.7%に達する。図17aは、処理された灰色フィルタ170がレーザビーム145に配置されるが、間違った向きを有する状況を示している。従って、IPS損失は、2.7%から4.1%に劣化する。処理された灰色フィルタ170を正しい向きに使用すると、IPS損失は、2.7%から1.6%に減少する。この値は、IPS損失の41%の相対的減少である。
この改善は、投影露光系100の照明系160の光学要素190の一般的な補償に基づくものである。IPS損失の減少は、個々の照明系160のリターデーション分布を解析し、次に、特定の照明系160の特定の複屈折問題に特化して設計されたピクセル配置を灰色フィルタ170の区域1320内に書き込む場合に改善することができる。
投影露光系100のための光学要素170、190の複屈折の一般的な補償においてより良好な補償を得る別の可能性は、例えば、瞳平面に近い平面のような投影露光系100の別の平面に配置された専用補償要素を使用することである。そのような手法は、補正自由度を大きく高め、補償をより柔軟なものにする。理想的な手法では、得られる誘起複屈折を一般的に最も高い許容量のIPS損失とすることができる仕様目標に従って最適化するために、誘起複屈折の生成において処理の全体の変化空間を使用する問題が策定される。
解説する例は、光学要素の光学的有効区域の外側に位置する局所持続性修正配置が、光学系の光学要素内の偏光変化を補償するのに十分に適することを明確に示している。
以下の例では、光学系の光学要素170、190の欠陥をこれらの光学要素170、190の光学的有効区域510内に持続性変化配置を導入することによって補償することができることを論証する。第1のモードでは、表4に示すパラメータセットを有するレーザビーム335を光学要素170、190の複屈折分布の補償に対して使用する。表4に記載のレーザビームパラメータセットを用いて持続性変化を書き込んでも、光学要素170、190の材料内には軽微な歪みしか導入されない。以下に説明する特定例では、この軽微な歪みを無視する。ピクセルなし書込によって引き起こされる光学要素170、190の材料の形態的変化は、偏光依存のリターデーションをもたらす。導入される持続性変化配置の効果は、それぞれの持続性変化配置内に書き込まれた持続性変化の密度とx軸に対するレーザビーム偏光の角度とによって制御することができる。この場合に、単一のパルスは、目立った修正をほとんど導かないので、ピクセルという表現は用いない。望ましい効果には、フォーカスレーザビームの直径よりも小さい空間ピッチを有する複数のパルスによって到達される。レーザビーム書込のこの態様を強調するために、ここではピクセル密度の代わりにパルス密度を決定する。
図18に示すように、以下の例では、0°の偏光角のレーザビーム335と、持続性変化配置の内部における105ピクセル/mm2のパルス密度とが、60°の角度を有する速軸を有する1nmのリターデーションをもたらすと仮定する。この例では、速軸とレーザビーム偏光の間の角度差が、他の系パラメータに依存する可能性があることを示すために、60°の角度差を使用する。光学系の光学要素170、190内には、必要とされるあらゆるリターデーション分布を誘起するか又は書き込むことができることに注意しなければならない。しかし、この例の目的は、例えば、光学要素170、190の光学的有効区域にわたる光学ビームの強度変化を同時に補償することのような他の目的を実現する上で、既存の自由度を使用することができることを論証することである。
図19は、図1に示すフォトリソグラフィ投影露光系100の結像平面に配置された光学要素170、190の計測複屈折分布の例を示している。図19aは、計測された複屈折問題の速軸の向きの分布を表しており、図19bは、そのリターデーションの絶対値の分布又は大きさの分布を示している。図19bの二乗平均の大きさは2.6nmである。
図20aは、図20の複屈折問題をかなりの程度まで補償することになる偏光角の分布を表しており、図20bは、そうすることになる書込密度を示している。しかし、表3のレーザビームパラメータを有するレーザビーム335は、図20の持続性変化配置を有する光学要素170、190を通過する光学ビームの同位相波面を破壊することになる。表3のパラメータを有するレーザビーム335は、光学要素170、190の材料の屈折率を変化させることになる。
従って、図19の複屈折分布問題の補償では、以下に示す手法を使用する。図20の持続性変化配置を光学要素170、190の2つの異なる層内に導入される2つの持続性変化配置に分離する。これらの2つの層は、光学要素170、190の光学面までの異なる距離を有する。
図21a及び図21cは、2つの層内に使用されるレーザビーム335の偏光分布を表しており、図21b及び図21dは、第1及び第2の層における持続性変化配置の書込密度の分布を示している。光学要素170、190の光学的有効区域510の全ての点において合計書込密度は一定に保たれる。従って、必要とされるリターデーション差の生成において位相変化も一定に保たれる。
累積書込密度が一定であり、得られる2つの層の誘導リターデーション分布の和が図19の複屈折分布の補償に必要とされる速軸の向きの分布及び大きさの分布をもたらすという制約条件の下に、レーザビーム335において固定の偏光角セットを用いて類似の手法を得ることができる。
光学要素170、190の光学的有効区域内に2つ又はそれよりも多くの持続性変化配置を導入することにより、必要とされるあらゆる複屈折分布又は複屈折分布を生成することができる。光学要素170、190のいくつかの層内へのいくつかの持続性変化配置の適用の利点は、適度な量のパルス書込密度しか必要ではないという点である。更に、複屈折補償を位相欠陥の補償と組み合わせることができる。光学要素170、190の光学的有効区域510内への1つ又はいくつかの局所持続性修正配置の導入は、UV帯域内である程度の関連的な吸光を誘起する可能性がある。
上述の例では、ピクセル配置を光学要素170、190の光学的有効区域510内にのみ書き込んだ。以下の例では、ピクセル配置を光学要素170、190の光学的有効区域510内に加えて、その外側の区域520内にも導入する。以下の例では、光学要素170、190の材料内に変形を誘起するタイプのピクセル書込を実施するので、ピクセルという表現を再度使用する。モード署名(MS)は、レーザビーム書込の単位当たりに誘起される変形の量を指定する。この例の目的のために、ある程度の人工的白色ノイズを追加した石英板の固有複屈折分布を示す合成問題につて考察する。
図22は、代表的な合成問題を示しており、図22aは、速軸の向きの分布を示し、図22bは、リターデーションの大きさのそれぞれの分布を示している。二乗平均の大きさは0.5nmになる。一般的に光学要素170、190では、複屈折欠陥は、光学要素170、190の中心から縁部に増大することが認識される。図22に定める問題は、この実験的挙動を考慮している。
図23は、図22の問題の補償に使用されるピクセル書込だけのモードに使用されるモード署名を示している。図23から分るように、誘起ピクセルは、光学要素170、190の光学的有効区域510の内部510及び外側520において、光学要素170、190の材料の基本区域を膨張させる。
図24は、図22に示す複屈折問題の補償に向けて計算された書込マップを示している。図24は、最も高い書込密度が、図24の内側の正方形によって示す光学的有効区域520の外側510であることを示している。これは、図22に定めた複屈折問題の対称性の結果である。
図25aは、図23に示すモード署名を有するピクセル配置によって光学要素170、190の区域510、520内に誘起された複屈折の速軸の向きの分布のシミュレーションを示し、図25bは、その大きさの分布のシミュレーションを示している。
図26は、計算上のピクセル書込マップが図22の複屈折問題に適用された後の図22の残っている複屈折問題を示している。図26bの二乗平均の大きさは、図22bの0.50nmと比較して0.38nmになる。それによってリターデーション量又はリターデーションの大きさの23%の低下がもたらされる。
図26の限られた複屈折補償は、主に1つのモード署名へのピクセル書込処理の制限に起因する。光学要素170、190の区域510、520内に書き込まれるか又は導入されるピクセル配置が2つのモード署名又は2つの書込モードを含む場合に、図22の複屈折補償を87%まで改善することができる。
以下では、3つの異なるモード署名又は書込モードの適用が、図22に示す複屈折問題の完全な手法を与えることを論証する。
図27は、互いに対して120°だけ回転された3つの書込モードのモード署名を部分図a、c、及びeに示している。図27b、図27d、及び図27fは、それぞれのモード署名の書込マップを示している。図27の書込マップの書込密度は、光学要素170、190の区域にわたってより均一に配分されている。更に、レーザビーム335のいくつかのモード署名の適用は、図24に示す1つのモード署名だけを使用する補償と比較して、光学要素170、190の光学的有効区域510内に書込密度の多くの部分を集中させる。
図28は、図27b、図27d、及び図27fの書込マップによって誘起される速軸の向きの分布のシミュレーションを示している。最後に、図29は、図27の3つの書込マップの適用後の図22の残留複屈折分布を示している。図27から分るように、図27a、図27c、及び図27eに示す3つのモード署名は、図22の複屈折問題をほぼ完全に補償する。
解説中の例では、光学要素170、190の光学的有効区域510内へのピクセル配置の導入が、光学要素170、190を通過する光学ビームの位相変化を導かないと仮定している。光強度の節約が重要な場合に、前の例で解説した手法をピクセル配置の導入における4つ又はそれよりも多くのモード署名の適用に拡張することができる。
この提示例は、光学要素170、190の他の光学特性を劣化させることなく、欠陥補償に向けて光学要素170、190の光学的有効区域内にピクセル配置を導入することができることを示している。
以下では、本発明の原理の適用の更に別の例を解説する。この例では、照明系160の光学要素190の歪み誘起複屈折を補償するために、本発明の原理を使用する。以下の例では、照明系160は、図1のフォトリソグラフィ投影露光系100のレチクルマスキング(REMA)対物系とすることができる。光学要素190は、レンズ、及び/又は例えば図1のミラー164のようなミラーを含む。
光学要素190内の歪み誘起複屈折の補正は、実質的又は少なくとも部分的に光学要素190内の歪み誘起複屈折を補償する歪みを光学要素190に印加することによって行われる。上記に既に示すように、この歪みは、例えば、1つ又はいくつかのアクチュエータを使用することによって光学要素190に印加することができる。これに代えて及び/又はこれに加えて、光学要素190内に1つ又はいくつかの局所持続性修正配置を導入することにより、光学要素190に歪み分布を適用することができる。
前に解説した例と同様に、以下では、局所持続性修正配置を光学要素のうちで光学的に有効ではない区域520内にのみ導入するか又は書き込む。例えば、この区域は、一般的に図5の光学的有効区域510の周囲の約10mmの区域であるレンズマウント区域とすることができる。
図30は、レンズ3000の2つの複屈折構成を略示している。レンズ3000は、光学的無効区域3020によって囲まれた円形の光学的有効区域3010を含む。図30の左の部分は、光学的有効区域3010内の歪み誘起複屈折のタンジェンシャル分布を示しており、黒色の短線3030は、レンズ3000の材料の歪み誘起複屈折の速軸の向きを示している。
レンズ3000の光学的有効区域3010内の歪み誘起複屈折分布3030を補償するために、局所持続性修正配置3040をレンズ3000の光学的無効区域3020内に導入するか又は書き込む。短線3040に示す歪み誘起複屈折の速軸は、黒色の短線3040と平行である。レンズ3000の区域3020内への局所持続性修正配置3040の書込によって誘起される局所歪みは、光学的有効区域3010内を延び、レンズ3000の光学的有効区域3010内の歪み誘起複屈折3030を少なくとも部分的に補償する。
右のレンズ3050は、その光学的有効区域3010内にタンジェンシャル半径方向歪み誘起複屈折分布3030、3060、3070を概略的に示している。黒色の短線3030、3060、及び3070の方向は、ここでもまた、歪み誘起複屈折分布の速軸の方向を示している。黒色の短線3040及び3070は、光学的有効区域3020内のタンジェンシャル半径方向歪み誘起複屈折分布3030、3060、及び3070を補償するために、レンズ3050の光学的無効区域3020内に書き込まれる局所持続性修正配置の速軸を略示している。
更に、レンズ3000が、例えば、図1の照明系160のミラー164のようなミラーの反対の箇所に配置される場合に、図30の右の部分のタンジェンシャル半径方向分布3040及び3070を図30の左の部分のレンズ3000のタンジェンシャル歪み誘起複屈折分布3030の補償においても用いなければならない。ミラー164は、ピクセル配置3040及び3070によって書き込まれたタンジェンシャル半径方向歪み誘起複屈折分布3030、3060、3070をタンジェンシャル歪み誘起複屈折分布3030に変換する。従って、レンズ3000と3050がミラーの反対側に配置される場合に、レンズ3050のタンジェンシャル半径方向歪み分布3040及び3070は、レンズ3000のタンジェンシャル歪み誘起複屈折分布3030を補償する。
図31は、歪み誘起複屈折補償処理を略示している。レンズ3100は、ここでもまた、光学的有効区域3110と光学的無効境界区域3120を含む。図31のレンズ3100は、図31の左の部分に示すように、光学的有効区域3110内に半径方向歪み誘起複屈折分布3130を有する。中央の部分は、レンズ3100の光学的無効区域3120内にそれぞれの局所持続性修正配置又はピクセル配置3140を導入することによる歪み誘起複屈折分布3130の部分補償を示している。上述したように、光学的無効区域3120内のピクセル配置3140によって誘起される歪みは、レンズ3100の光学的有効区域3110に到達し、光学的有効区域3110内の歪み誘起複屈折分布3130を補償する。
図31の右の部分は、複屈折補償処理の完了後の状況を示している。レンズ3100の境界区域3120は、レンズ3100の光学的有効区域3110内の歪み誘起複屈折分布3130をかなりの程度まで補償する歪みを有するピクセル配置3140を含む。これは、光学的有効区域3110にわたる残留リターデーションが2nmよりも小さく、又は更に1nmよりも小さいことを意味する。
上記に解説した歪み誘起複屈折補償原理は、照明系160の各光学要素190に適用することができる。これは、照明系160が、複屈折だけが補償された光学要素190を含むことを意味する。歪み誘起複屈折を含む光学要素190の光学特性は、一般的に、光学要素190が照明系160内に挿入される前に制御されるので、各光学要素190の歪み誘起複屈折をこの歪み誘起複屈折の決定中にその場で補償することを有利とすることができる。
多くの場合に、歪み誘起複屈折は、偏光計又は自動化偏光計を用いて測定される。歪み誘起複屈折の決定及び補償を容易にするために、偏光計とピクセル書込処理において適用されるレーザ系とを組合せデバイスに統合することができる。それによって歪み誘起複屈折分布の事実上同時の決定と補償とが可能になる。偏光計とピクセル書込処理に使用される光源又はレーザ光源との組合せデバイスへの統合は、個々の光学要素190の欠陥補償処理における制御ループの容易な設定を可能にする。
更に、歪み誘起複屈折分布の補償は、照明系160の製作現場において実施することができ、又は光学要素190の製作現場において事前に実施することもできる。
これに代えて、照明系160の光学要素170、190の他の光学欠陥の補償と同様に、照明系160全体の複屈折分布を最小にするように光学要素170、190のうちの1つ又は単に少数のものに限って補償することにより、歪み誘起複屈折補償の労力を軽減することができる。
更に別の手法では、照明系160の光学要素170、190は修正されない。これに代えて、照明系160内のビーム経路に1つ又はいくつかの光学要素を挿入することができる。この1つ又はいくつかの追加光学要素は、照明系160の光学要素170、190の歪み誘起複屈折に対する補償要素として機能する。これらの追加光学要素は、溶融石英板を含むことができる。更に、追加光学要素は結像特性を持たない。
追加光学要素の挿入に向けて、照明系160は、1つ又はいくつかの追加光学要素(図1には示していない)のための1つ又はいくつかの装着位置を含むことができる。照明系160のビーム経路内への1つ又はいくつかの追加光学要素の挿入は、照明系160内のビーム経路の定められた位置において行われるので、照明系160内のビーム経路をそれ程妨害しない。
一般的に、照明系160は、IPS数値を損なわないために補償しなければならない約±10nmから±12nmのリターデーションを有する。この関連において、支配的な状態における強度(IPS)がリターデーションの2次関数であることが有利である。これは、リターデーションを半減することにより、IPS損失が、その未補償数値の4分の1まで低下することを意味する。従って、多くの場合に、リターデーションの完全な補償は不要である。一般的に、照明系160のリターデーションを1nm又は2nmの範囲に入れることで十分である。
図32は、レチクルマスキング(REMA)対物系のレンズ3200を略示している。REMA対物系は、図1の投影露光系100の照明系160の例示的な構造である。レンズ3200は、フォトリソグラフィマスク110が位置する平面である照明系160の視野平面175の近くに配置される。黒色の円3210は、レンズ3200の全体開口を示している。楕円形区域3220は、レンズ3200の透明開口3220を示している。
REMA対物系の歪み誘起複屈折分布を補償するために、レンズ3200内にピクセル配置が書き込まれる。黒色の短線3230は、図32のレンズ3200内へのピクセル書込処理によって誘起された歪み誘起複屈折分布の速軸の方向又は向きを示している。図32では、速軸3230は、半径方向の向きを示している。これに代えて速軸は、タンジェンシャルな向き(図32には示していない)を有することができると考えられる。
部分開口3240、3250、及び3260は、レンズ3200の透明開口3220にわたって局所持続性修正配置によって誘起された複屈折分布のリターデーション変化を示している。レンズ3200の中心にある部分開口3250は、リターデーション変化を実質的に全く示さない。部分開口3240は、約−6nmから約6nmのリターデーション変化を示している。部分開口3240、3250、及び3260のうちの1つ内の赤色の区域は、約+6nmのスカラー複屈折成分Ret45のリターデーションを表し、緑色の区域は、約0nmのリターデーションを示し、青色の区域は、−6nm前後のリターデーションを示している。速軸3230の向きから予想されるように、部分開口3260は、部分開口3240のリターデーション変化であるが、透明開口の楕円3220の主軸において鏡像反転されたものを示している。
速軸3230の向きで表す図32のレンズ3200の歪み誘起複屈折分布は、視野依存ゼルニケZ3瞳挙動の補償を可能にする。
図33のレンズ3300は、照明系の瞳平面168と視野平面175の間に配置される。図32のレンズ3200と同様に、黒色の円で囲んだ明灰色の区域3310は、レンズ3300の光学的有効区域を示している。光学的有効区域3310の内側の白色の楕円形区域3320は、REMA対物系のレンズ3300の透明開口3320である。
レンズ3300内には、x方向又は水平方向に対して±45°の向きを有して短線3330及び3340に示す速軸を有する局所持続性修正配置が導入される。図32と同様に、速軸3330及び3340は、半径方向の向きを示している。別の例では、速軸3330及び3340は、タンジェンシャルな向き(図33には示していない)を有することができる。
図32と同様に、図33の部分開口3340、3350、3360、3370、及び3380は、レンズ3300の透明開口3320にわたるピクセル書込処理によって誘起された歪み誘起複屈折分布のリターデーション変化を示している。上述の場合のように、レンズ3300の中心にある部分開口3350は、その区域にわたってリターデーション変化を実質的に全く示さない。リターデーションは、部分開口3340内では約−6nmから約0nmまで変化する。その一方、リターデーションは、部分開口3360の区域にわたってほぼ+6nmから約0nmまで変化する。更に、部分開口3370にわたるリターデーション変化は、部分開口3340にわたる変化と似ており、同じく部分開口3380のリターデーション変化と部分開口3360のリターデーション変化とは似ている。
局所持続性修正配置によって誘起され、速軸3330及び3340の向きによって示される複屈折分布は、視野依存ゼルニケZ3瞳挙動の補償を可能にする。レンズ3300は、瞳平面168と視野平面175の間の照明系160のビーム経路に位置することを強調しておかなければならない。しかし、レンズ3300は、瞳168に依存するが、視野には依存しないゼルニケZ1寄与も生成する。ゼルニケZ1寄与は、レンズ3300の透明開口3320と全体開口又は光学的有効区域3310との比に依存する。
ゼルニケZ1寄与は、望ましい場合があり、又は望ましくない場合がある。この寄与が有害である場合に、それは、視野平面175の直近に配置された照明系160の減光フィルタ170内にそれぞれのピクセル配置を書き込むことによって補償することができる。
図34は、互いに垂直に配置された2つの欠陥補償区域3415及び3425を有するレンズ3400を含む。図32のレンズ3200及び図33の3300と同様に、レンズ3400は、光学的無効区域(図34には示していない)によって囲まれた光学的有効区域3410を有する。レンズ3400の光学的有効区域3410の内部には、図32の透明開口3220と類似の形態を有する透明開口3420が存在する。図32とは異なり、レンズ3400内には、透明開口3420にわたって異なる強度のリターデーション分布を有する照明系160の2つの歪み誘起複屈折分布を補償するために、2つの異なるピクセル配置が書き込まれる。黒色の短線3430は、図34のレンズ3400内への第1のピクセル書込処理によって誘起された複屈折の速軸の方向又は向きを示している。青色の短線3435は、レンズ3400内に導入された第2の局所持続性修正配置の速軸の向きを示している。第2のピクセル配置の速軸3435の向きは、透明開口3420に対して90°だけ回転されている。
部分開口3440、3450、及び3660は、レンズ3400の透明開口3420にわたって第1の局所持続性修正配置によって誘起された複屈折のリターデーション変化を示している。レンズ3400の中心にある部分開口3450は、ここでもまた、部分開口3450の区域にわたってリターデーション変化を実質的に全く示さない。部分開口3440は、右の垂直軸から見ることができるように、約−6nmから約6nmまでのリターデーション変化を示している。その一方、部分開口3460の区域にわたるリターデーションも、−6nmから+6nmまで変化する。図32と同様に、部分開口3440内でのリターデーション変化と3460内でのリターデーション変化とは異なる符号を有する。
上述したように、レンズ3400の欠陥補償区域3425は、欠陥補償区域3415と同じ速軸3430の向きを有する。しかし、部分開口3470及び3480の区域内のリターデーションは、水平の破線軸に示すように、−3nmから+3nmまでしか変化しない。欠陥補償区域3415と3425は、照明系160の類似の複屈折分布を補償するが、欠陥補償区域3425の欠陥補償量は、欠陥補償区域3415のものの半分でしかない。レンズ3400をその光軸の回りに90°だけ回転させることにより、補償欠陥区域3415又は補償欠陥区域3425を照明系160の透明開口3420に位置合わせすることができる。
図34の欠陥補償区域3415及び3425において、実質的に等しい歪み分布がレンズ3400に導入され、導入歪みの強度又は量だけが異なり、異なるリターデーション分布をもたらす。しかし、レンズ3400の第2の欠陥補償区域3425内には、異なる歪み分布を導入することができる。リターデーション補償の量又は強度も、第1の欠陥補償区域3415内と第2の欠陥補償区域3425内とで異なる場合がある。更に、レンズ3400の光学的有効区域3420は、レンズ3400の透明開口3420と光学的有効区域3410との面積比に依存して2つよりも多い欠陥補償区域に分離することができる。
ここで、様々な欠陥補償区域3415及び3425のためのピクセルは、図34には示していないレンズ3400の光学的無効区域内にしか書き込まれないことを再度言及しておく。しかし、上述したように、定められた歪み誘起複屈折分布を生成し、レンズ3400の光学的有効区域3410にわたって光学透過率の変化を導かないピクセル配置をレンズ3400の光学的有効区域3410内に導入することができる。
レンズ3400の回転は、フォトリソグラフィ投影露光系100の作動中に動的に行うことができる。それによって照明系160の1つ又はいくつかの光学要素190のドリフトを補償することが可能になる。更に、レンズ3400及び/又は照明系の他の光学要素190の動的な回転は、補償効果の決定との組合せで光学系の欠陥補償のための制御ループを構成することを可能にする。
図30から図34では、レンズ3000、3100、3200、3300,及び3400の関連で本発明の原理の適用を解説する。しかし、説明する原理は、照明系160内のそれぞれの位置に挿入される1つ又はいくつかの追加光学要素に適用することができることを理解しなければならない。
図33の解説において上述したように、歪み誘起複屈折分布の補償効果は、フォトリソグラフィ投影露光系100の照明系又はREMA対物系160内での光学要素190の位置に依存する。
図35は、平行平面石英板の形態にある追加光学要素3530を略示している。石英板3530は、図32のレンズ3200の複屈折分布3230を含む。石英板は、図1に点線175で表す視野平面3510から照明系160内の瞳平面3520(図1に点線168で略示す)までシフトされる。
図36aは、石英板3530が図35の位置aに配置された場合に、石英板3530によって図32の透明開口3230内に生成される部分開口3610、3620、3630、3640、及び3650の変化を示している。位置aは、視野平面3510に近い。リターデーションは、部分開口3610、3620、3630、及び3640内で+6nm(赤色)から−6nm(青色)まで変化する。中心の部分開口3650は、その区域3650にわたってリターデーション変化を実質的に全く示さず、リターデーション量は実質的にゼロ(緑色)である。図32のレンズ3200と同様に、石英板3530は、ビーム経路内の位置aにおいて、回転対称であるリターデーション分布のゼルニケZ6寄与を補償する。更に、ゼルニケZ6寄与は、視野平面3510にわたって一定である。
位置eでは、すなわち、瞳平面3520の近くでは、石英板3530は、視野非依存ゼルニケZ3寄与を補償する。図36cは、石英板3530の位置eにおける部分開口3610から3650を略示している。図36cから分るように、リターデーションは、各部分開口3610から3650内で系統的に変化する。その一方、リターデーションは、部分開口3610から3650の各々にわたって実質的に均一に変化する。
視野平面3510と瞳平面3520の間で実質的に中間にある位置、すなわち、図35の位置cでは、図36aのゼルニケZ6寄与と図36fのゼルニケZ3寄与の両方の補償がほぼ拮抗する。図36cは、この状況を略示している。
石英板3530を図35の位置aから位置fにシフトさせると、ゼルニケZ6寄与は徐々に低下し、それに対してゼルニケZ3寄与は、同時に徐々に増大する。特に、図35の中間位置、すなわち、位置b、c、及びd、特に位置cにおける配置は、既存の照明系160において発生する上述の寄与が重ね合わされたものを補償することを強調しておく。
図35及び図36の状況で解説した例示的な欠陥補償は、単一の石英板3530の適用に限定されない。そうではなく、2つ又はそれよりも多くの石英板を使用することもできる。更に、視野平面3510と瞳平面3520の間で石英板3530をシフトさせることによる欠陥補償は、図30から図34の解説において記述した1つ又はいくつかの石英板3530の回転と組み合わせることができる。
図37は、薄肉レンズ3700(a)及び厚肉レンズ3750(b)内の光路を略示している。薄肉レンズでは、その厚みを事実上無視することができ、それに対して厚肉レンズでは無視することができない。薄肉レンズ3700は、光学的有効区域3710と光学的に無効な境界区域3720とを有する。同じく厚肉レンズ3750も、光学的有効区域3760と境界区域3770とを有する。図37aは、光軸3725から始まり、レンズ3700を光線3735として通って、光軸3725と平行な光線3740としてレンズ3700を射出する光線3730を示している。
境界区域3720内に、局所持続性修正配置3745が導入される。図37aから分るように、光線3735は、光軸3725に対して非常に小さい角度のみを有するので、ピクセル配置3745によって誘起される歪みは、光軸3725に対して実質的に垂直な平面に存在する。
図37bも、光軸3775で始まり、レンズ3750を光線3785として通り、光軸3775と平行な光線3790としてレンズ3750を射出する光路3780を示している。図37aと同様に、ピクセル配置3795も、レンズ3750の光学的無効区域3770の中心に書き込まれる。しかし、図37aとは対照的に、ピクセル配置3795によって導入される歪みの方向は、レンズ3750内の光線3785に対して垂直ではなく、光線3785の方向と平行な成分を有する。
図38は、厚肉レンズ3750内の光線方向3785と平行であるピクセル配置の歪み誘起複屈折成分を回避する2つの異なる局所持続性修正配置を示している。図38aのレンズ3800では、境界区域3820内でレンズ3800の面までの一定の深さを有するが、レンズ3800の面輪郭を辿るピクセル配置3830が、境界区域3820内に書き込まれる。
ピクセル配置3830は、レンズ3800の光学的有効区域3810内に光線3785に対してほぼ垂直な歪み分布を生成し、従って、この歪み分布は、図37の光線3785の方向に実質的に成分を持たない。
図38bは、光線方向3785と平行な横方向歪み誘起複屈折の問題を解決する代替手法を示している。図38bでは、レンズ3850の光学的無効区域3820内に図37の光線方向3785と平行な歪み成分を実質的に回避する2つの異なる局所持続性修正配置3860と3870が導入される。
更に、厚肉光学要素内で光線方向3785と平行な歪み成分を実質的に阻止する様々な他のピクセル配置を適用することができる。更に、図38aの手法と図38bの手法を組み合わせることができる。
最後に、更に別の代替手法では、厚肉レンズ3800及び3850の光学的有効区域3810及び3860内に光学透過率変化を生成することなく予め決められた歪み分布を生成するピクセル配置を図38a及び図38bのレンズ3800及び3850の光学的有効区域3810及び3860内に導入することもできることを再度強調しておく。