JP6313609B2 - 硝酸塩粒子測定装置及びその測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大気エアロゾルのうち硝酸塩粒子を測定する測定装置及びその測定方法に関する。
人類は化石燃料の燃焼によって大量のエネルギーを生み出し、著しい発展を遂げてきた。しかしその一方で、化石燃料の燃焼に伴い様々な汚染物質が排出され、地球温暖化やオゾン層破壊、大気汚染など様々な問題が生じてきている。中でも大気汚染は深刻化しており、経済協力開発機構(OECD、2012)は、新たな対策がとられず現在の経済成長が継続すると2050年に大気汚染による死者が水質汚染による死者を上回り、環境悪化による死者の最大の要因になると予測している。
この大気汚染の一つの光化学スモッグは近年でも多発し、人体への様々な悪影響を持ち、早期解決が強く望まれている。光化学スモッグの原因成分とされるものは窒素酸化物や揮発性有機化合物などである。それらの濃度は発生源対策の策定のため、常に大気監視局でモニタリングされるようになり様々な測定法が生み出されてきた。
しかしながら、大気汚染の原因とされるものはガス状のものだけでなく、大気中のエアロゾルとも密接に関わっている。このエアロゾルとは一般的に「大気中に浮遊する微小な液体・固体粒子」を意味している。このエアロゾルの中でも空気力学粒子径が2.5μm以下のものをPM2.5と呼び、2013年1、2月に中国北京で極めて高濃度な状況が連日報道され、我が国への越境汚染も示唆されるに及んで「PM2.5騒動」とも言うべき大きな社会的関心を呼んだ。ただ、PM2.5自体は新たな大気汚染物質ではなく、中国の高濃度汚染は従来から指摘され、わが国でも測定が行われてきたが、その環境中での動態や発生源には依然不明な点が少なくない。PM2.5は、その大きさの故に呼吸器の深奥部まで侵入し、呼吸器疾患や循環器系へ影響を及ぼすこと疫学研究から明らかになり、米国では1997年に環境基準が設けられた。我が国では、2009年にPM2.5環境基準が設定されたが、PM2.5の環境基準達成率は2012年において一般局で27.6%、自動車排出局で29.4%と低い。
大気エアロゾルの発生源は多岐にわたるが、大きくは土壌、海塩粒子などに由来する自然起源と、化石燃料の燃焼など人為発生源に由来する二種類に分けられる。一般に前者はミクロンオーダーの粗大粒径域、後者はサブミクロンの微小粒径域に存在する。また、粒子の生成過程から分類すると初めから粒子として放出される一次粒子と、ガス状の前駆物質が大気中で粒子化した二次粒子に分けることができる。微小粒子は主に硝酸塩、硫酸塩、炭素成分が多く含まれているが、元素状炭素は自動車対策により減少傾向にある。また、廃棄物焼却炉の排ガス対策により、塩化物は非常に低濃度になっている。つまり、自動車や固定発生源から排出される一次粒子が減少し、硝酸塩や硫酸塩、有機炭素の二次生成粒子の割合が高くなっている。こうした二次粒子成分はPM2.5の50%以上を構成している。
PM2.5の環境基準の達成状況を把握するためには質量濃度のモニタリングが必要であるが、PM2.5汚染への対策・改善策の策定には、大気中での挙動・発生源・生成機構に関する知見が不可欠であり、これらは質量濃度だけでなく粒子化学成分と前駆物質のモニタリングが必要である。図41は我が国のPM2.5の成分割合の例であるが、硝酸塩や硫酸塩、有機炭素、アンモニウム塩が主要成分となっている。また、夏季の二次粒子は硫酸塩と有機物が主成分で、冬季の二次粒子は硝酸塩が主となっている。NOは硝酸塩粒子の前駆物質でありNOの環境基準はほとんどのモニタリング地点で達成されているものの、PM2.5対策を考える上では、硫酸塩や有機成分に加えて、NOと硝酸塩粒子の同時モニタリングが望まれる。
次に、NO、硝酸塩粒子の環境動態と測定法について説明する。
NOの特性は以下に示すような反応により光化学オキシダントであるオゾンやPAN(Peroxyacyl
Nitrates)を生成することで光化学スモッグの原因となり、目への異物感や呼吸困難、皮膚の発赤など様々な悪影響を引き起こす。
Figure 0006313609
また、NO単独でも高濃度であれば刺激性があり、ぜんそくの原因物質とされている。よって大気汚染の主要原因物質のひとつとされており環境省により環境基準が設けられている。
近年の日本におけるNOの環境基準達成率の推移は図42に示すように一般局において100%、自動車排出局で99.5%と高い。しかしながら、2007年5月8日から9日にかけて北日本を除く日本全域で高濃度の光化学オキシダント、主成分はOでPANなども含まれる、が観測され、全国的に光化学スモッグ注意報が発令された。また、光化学オキシダント濃度は日本全国で増加傾向にあり、全国的に環境基準達成率が低く、首都圏などにおけるオキシダント注意報発令日数は改善されていない。これらの要因として、(独)海洋研究開発機構が実施した後方流跡線解析手法を用いた対流圏オゾンに関するデータの解析結果は、東アジアの大陸起源のNOが、光化学反応が活溌な春から夏にかけて風下側にあたる日本のオゾン濃度を著しく増加させている可能性を示している。また、環境基準は達成していても、平成22年におけるデータでも平均11ppbのNOは測定されている。光化学オキシダント原因物質としてだけでなく人間の健康に悪影響を及ぼし、また、硝酸塩粒子の前駆体である二酸化窒素を含むNOモニタリングは重要であるといえる。
硝酸塩粒子の特性について
図43に2000年度の首都圏におけるPM2.5の2次粒子成分の月・年度平均濃度(左)と高濃度時(右)に対する首都圏内発生源の寄与を示した。このデータにおいて、図中、赤色のものは国内発生源の寄与であり、青が大気濃度計算値、緑が首都圏内発生源の寄与を示している。図43に示すように硝酸塩はPM2.5において首都圏内発生源の寄与率が季節的に大きく変動し、夏季には90%を超え、年平均も68%と高くなるようなデータが示されている。この変動をモニタリングすることは発生源対策の策定につながる。
大気中において、硝酸塩粒子は主に以下のようなプロセスで生成される。対流圏におけるNO種は、自動車や航空機、火力発電所などの排出源からNO(=NO+NO)の形で一次排出され、排出される90%以上はNOである。
大気中でNOと対流圏Oは次の(1−5)式のように反応してNOを生成する。
Figure 0006313609
このNOは太陽光によって生成するOHラジカルと反応して、硝酸を生成する。
Figure 0006313609
太陽光のない夜間では、NOは対流圏Oと反応して硝酸塩ラジカルを生成する。
Figure 0006313609
ここで生成したNOは以下のような平衡状態で存在する。
Figure 0006313609
このN(g)は最終的に水と反応して硝酸に変化する。よって硝酸はNOの排出がどの程度進行したかの指標になると考えられるので、重要なファクターとなる。
さらにこのHNO(g)はNaClなどの海塩粒子や黄砂などの土壌粒子、大気中のNHと次のように反応して、2次粒子である粒子状硝酸NO (p)を生成する。
Figure 0006313609
また、硝酸塩粒子の中でも土壌粒子由来である硝酸カルシウムは(1−12)式のような反応で生成される。
Figure 0006313609
(1−11)、(1−13)式で代表される反応は粗大粒径域に存在する自然起源粒子とHNOガスとの不均一反応であり、(1−12)式に示すNHとHNOとの気相反応から核生成・粒子成長を経て微小粒径域のサブミクロン粒子が生成する。すなわち、大気中には図45のように1μm〜2μmを境として微小粒子側に存在する硝酸アンモニウムと粗大粒子側に存在する硝酸ナトリウムなどの粒子が存在する。
特に(1−12)式の反応で生成された硝酸アンモニウムの解離平衡定数は、Denbighによればvan’t Hoff式より(1−14)式で推定できる。
Figure 0006313609
ここで、(1−14)式より、相対湿度が50%の際のNHNOの平衡解離定数の温度依存性を図44に示した。
図44よりこの定数は温度変化に敏感であり、低温では解離定数が低くなることから、温度が低下すると(1−12)式左辺のガスから右辺の粒子へ移行が進む。
これに対し、NaNOなどの他の硝酸塩粒子の解離定数は298Kで3.96(−)であり、NHNOの4.0×1017(molkg−2atm−2)に比べて極めて小さく、ガスへの移行は無視できるといえる。
よって、硝酸塩の成分によって生成機構、存在形態の温度依存性は大きく異なり、成分同定による発生源の識別可能性を示唆する。
NO測定原理と問題点
NOの測定には様々な方式があり、赤外線の吸収量の変化により測定する非分散形赤外線吸収法、紫外線の吸収量の変化をみる紫外線吸収法、目的とする成分の吸収がある波長域において吸収のピークと端部の吸収の信号の差から測定成分の濃度を算定する差分光吸収法、低電位電解法、ジルコニアにより、NOを測定するなど実に様々な方法がある。しかしながら、大気を測定する上で、使用する際の利便性や連続性、リアルタイム測定などの問題を考慮した際、主に吸光光度法と化学発光法が広く使用されている。以下にそれぞれの原理について説明する。
吸光光度法
この方式は、吸収液(ザルツマン試薬)を用いる吸光光度法によって、試料大気中に含まれる一酸化窒素と二酸化窒素を同時に連続測定する方式である。吸収液(N−1−ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩、スルファニル酸及び氷酢酸の混合溶液)に試料大気を一定時間通気して二酸化窒素を吸収させ、吸収液の吸光度を測定し、試料大気中に含まれる二酸化窒素濃度を連続的に測定する。一酸化窒素は吸収液と反応しないので、酸化液(硫酸酸性過マンガン酸カリウム溶液)で二酸化窒素に変えてから、二酸化窒素と同様の方法で測定する。この方式の利点として、高価な分析器がある中で比較的安価であり、メンテナンスの取り扱いが容易、故障が少ないなどの利点がある。しかしながら、測定に用いられる吸収液の透過率の減少は、NOの濃度により差はあるが、吸光度測定の精度確保のため、2週間に1回交換することが必要となる。また、この装置の排気ガスには酢酸の酸性蒸気が含まれており、そのまま測定場所内に放置すると測定器及びデータ転送装置等が腐食し、故障の原因となる。従って、水や酢酸を除いた後、外へ放出するなどの手間を要する。
化学発光法
試料大気にオゾンを反応させると、一酸化窒素から励起状態の二酸化窒素が生じ、これが基底状態に戻る時に光を発する。この発光は、物質が励起された状態から基底状態に戻る場合に光を出すという多くの物質が持つ特性をいい、化学反応の結果として発光が起こる現象を化学発光という。この化学発光の強度を測定することにより、試料大気中の一酸化窒素濃度を測定することができる。
化学発光方式NO測定器は、試料大気をコンバータと呼ばれる変換器に通じて二酸化窒素を一酸化窒素に変換した上で化学発光の強度を測定すると、試料大気中のNO(一酸化窒素及び二酸化窒素)の濃度が測定できる。化学発光は、次式のとおりである。
Figure 0006313609
つまり、一酸化窒素とオゾンが反応すると二酸化窒素(NO)が生成するが、その一部が一定の割合で励起状態のNOとなる。このNOが基底状態に戻る時で励起エネルギーを光エネルギーとして放出するのでこの強度を測定する。この化学発光強度が一酸化窒素濃度と比例関係にあることを利用して、試料大気に含まれる一酸化窒素を測定する。
一酸化窒素とオゾンとの反応の化学発光スペクトルは600〜3000nmの波長帯域にあり、極大波長は1200nm付近であるが、他の化学発光の影響を除くために、光電側光部に光学フィルタを使用する。他の化学発光の干渉影響については、光学フィルタ未装着のNO測定器において、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチルが影響を与える可能性が確認されている。
また、光電側光部には光電子増倍管が使用されるが、光電面特性により検出に利用できる波長範囲が600〜900nmと狭いため、長波長側に感度の高い光電素子を用いる機種も存在する。
なお、式(1−17)に示すように、他の物質の化学発光と同様に、共存成分Mと励起分子が衝突して励起エネルギーを失うクエンチング(消光)を起こすこともある。一般にこのクエンチングを起こすガスとして二酸化炭素及び水蒸気が知られているが、大気中の二酸化炭素濃度程度では測定の影響は無視できる。水蒸気については除湿器や調湿器を付加することによりその影響を除去する。また、NOの中で、オゾンとの化学発光のよって測定できる物質は一酸化窒素のみである。従って、二酸化窒素は、NO→NOコンバーターによってNOを全て一酸化窒素として測定し、別途測定した一酸化窒素の量を引くことで求めることができる。
硝酸塩粒子測定原理と問題点
大気エアロゾル中の硝酸塩などのイオン成分は一般的には、フィルタやインパクタに捕集された後、純水抽出を行い、多成分同時分析法であるイオンクロマトグラフ(IC)法により分析されている。イオンクロマトグラフは別々のカラムを使って、陰イオン、(フッ素イオン、塩化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン他)と陽イオン(カリウムイオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン他)への適用が可能である。アンダーセンササンプラーのような捕集面がスポット的な試料採取したフィルタは、スポットごとに均一捕集が保証されることを確認できない場合が多く、捕集試料を丸ごと分析試料とすることが望ましい。この際、試料の汚染に気をつける必要がある。IC分析には専門的な知識や経験が必要となり、分析時間および分析費用がかかってしまい、測定地点、測定回数が限定されるという問題もある。そのため、環境省のガイドラインにおける指針では、年4回(期間は2週間程度)の分析に留っている。年4回の分析では、季節変動などの大きなトレンドは確認することは可能であるが、PM2.5の発生源の解明、健康影響の調査は困難である。そこで、近年PILS(Particle
Into Liquid Sampler)などのIC分析を用いたエアロゾル化学成分連続自動分析装置が開発されているが、時間分解能は1時間程度である。
エアロゾル質量分析計(AMS)は、原理として真空チャンバー中で空気力学的レンズによって気体成分と分離された粒子を、600℃まで加熱されたヒータによって衝突の際に気化する。このガスを電子衝撃によりイオン化し、四重極質量分析計で質量スペクトルを得る。特徴として個別粒子の粒径測定と同時に、硝酸塩を含む化学組成を定量的に高時間分解能で測定できる。しかしながら、時間分解能、組成の解明において非常に優れる一方、装置が高価であり、データ処理の複雑さ、メンテナンスの複雑さなどから各大気監視局への普及には問題がある。
Yamamoto and Kosakaは、基板上に捕集した硝酸塩粒子の加熱分解により生成するNOの化学発光による測定は広範囲の濃度測定が可能であり、高い感度と精度を有すると報告している。この原理を利用した連続硝酸塩粒子測定装置として、市販のナイトレートモニター8400Nも存在し、時間分解能は15分であるが、現在は製造が中止になっていることや、捕集効率を上げるための粒子成長に必要な水や高純度窒素ガスを準備すること、硝酸塩成分による分離ができないなどの問題点がある。
前述したように、NOや硝酸塩粒子の分析には様々な方法が用いられているが、それぞれメンテナンスや解析の難しさや、時間分解能、コストなどの問題点がある。また、1台の装置で密接な関係を持つNOとNO 粒子の同時測定を行う機器は存在していない。
そこで、本発明は、硝酸塩の種類別による分離同定ができれば生成機構の解明にもつながるため、主に微小粒子側として存在する硝酸アンモニウムとその他の硝酸塩の分離測定装置の開発を目的とした。加えて、熱分解・化学発光の原理に基づくNO、NO 粒子同時連続測定装置を新規に開発し、その評価を行うことを目的とした。
以上を踏まえ、以下に本発明の概要を示すと、まず、NO、NO 粒子の計測装置について説明する。そして、本発明の測定原理、データ処理に関わる予備実験について説明した後、機器のノイズおよび本発明で必須となるデニューダーの性能を評価した。また、窒素酸化物測定装置における水蒸気や硫酸アンモニウムなどの干渉成分による影響も確認した。その後、実大気用の自動連続測定可能な試作装置の説明を行う。
次いで、本発明に係る装置の性能評価について説明する。まず、性能評価に用いた装置と器具について説明し、その後、標準硝酸塩試料を用いた評価結果について示す。これにより、硝酸塩の分解・検出効率を調べる。また、硝酸塩の成分による分離が可能であるか熱分解温度を変化させることで検討した。実際の大気中ではエアロゾルとして硝酸塩が存在しているため、テスト粒子を発生させ、他の既存測定装置との比較も行った。その際、テスト粒子による硝酸塩成分の分離同定も検討した。
さらに、自動連続試作装置を用いて、実大気中の硝酸塩粒子の質量濃度を計測した点を説明し、最後に結論として、本発明によって得られた結果と今後の課題をとりまとめた。
すなわち、本願第1請求項に記載した発明は、図面で用いた符号を付して記すと、試料大気に含まれるエアロゾルを捕集フィルタで捕集するとともに捕集されたエアロゾルを分析する捕集分析部と、窒素酸化物を測定するNOx計部と、前記捕集分析部に連通する吸引ポンプと、装置を制御し濃度換算を行う制御部と、を備えた硝酸塩粒子測定装置において、
前記捕集分析部の上流側にデニューダー及びゼロフィルタを設け
前記捕集分析部と前記NO 計部との間の流路に第1の流路開閉用の電磁バルブを設け、この電磁バルブの上流側には、第2の流路開閉用の電磁バルブを備えた吸引ポンプへの流路を接続するとともに、当該第1の電磁バルブの下流側には、第3の流路開閉用の電磁バルブを備えたNO 濃度測定用の試料大気入口流路を接続し、
前記捕集フィルタの下流側の部位を加熱する加熱器を前記捕集分析部に連係して設け、
前記加熱器は、前記捕集フィルタの下流側の部位を少なくとも140℃乃至600℃の範囲で段階別に加熱設定可能に設けられており、
これにより、前記加熱器による設定温度を、人為発生源に由来する硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うための低温段階と自然起源に由来する硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うための高温段階とに設定可能に構成して、硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うようにした硝酸塩粒子測定装置である。
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1において、前記試料大気を前記デニューダーの上流側から前記吸引ポンプで吸引して前記捕集フィルタにエアロゾルを捕集する捕集ラインと、前記捕集フィルタを加熱器で加熱して前記捕集されたサンプルのNOx濃度を前記NOx計部で計測する分析計測ラインと、前記捕集分析部と前記NOx計部との間に、試料大気の入口流路を設けて当該試料大気のNOxを前記NOx計部で計測する計測ラインと、を備えるとともに、これら3ラインの流路が、前記第1乃至第3の電磁バルブにて択一的に切り替えられる硝酸塩粒子測定装置である。
本願第3請求項に記載した発明は、請求項1において、前記デニューダー4及びゼロフィルタ5、前記捕集分析部1、並びに、前記加熱器6を備えた測定ラインを2系統設け、これらを前記NO計部2に接続した硝酸塩粒子測定装置である。
本願第4請求項に記載した発明は、請求項1記載の装置を用いて行う硝酸塩粒子測定方法であって、前記デニューダー4を経由したエアロゾルを前記捕集フィルタ11で捕集し、前記加熱器6により温度を低温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行った後、前記加熱器6により温度を高温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行う硝酸塩粒子測定方法である。
本願第5請求項に記載した発明は、請求項4において、前記デニューダー4及びゼロフィルタ5、前記捕集分析部1、並びに、前記加熱器6を備えた測定ラインを2系統設け、これらを前記NO計部2に接続したものを用い、前記デニューダー4を経由したエアロゾルを前記捕集フィルタ11で捕集し、前記加熱器6により温度を低温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行った後、前記加熱器6により温度を高温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行う場合に、一方の測定ラインで行うサンプリング及び分析と、他方の測定ラインで行うサンプリング及び分析を、時系列的に異ならしめて行う硝酸塩粒子測定方法である。
本発明によれば、硝酸塩の熱分解温度の違いを利用して、熱分解温度上昇プロファイルを2段階に設定し、化学発光の原理に基づくNO計を組み合わせることにより、NO、成分別NO 粒子同時連続測定を可能にすることができるものである。
本発明では、後記実施例にて詳述するように、最初の低温段階(300℃)で微小粒子側の硝酸アンモニウムを、また、高温段階(600℃)で土壌、海塩粒子などに由来する自然起源の硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等を検出することができる。
5℃/minで100cm3/minの空気流入量におけるCa(NO・4HOのTGとDTA曲線を示す図である。 実施例装置の概略図である。 NO計の計測プロセスのブロック図である。 NO計電圧校正直線である。 データロガーの設定を1秒平均に設定した際の出力値の変動を示す図である。 データロガーの設定を10秒平均に設定した際の出力値の変動を示す図である。 データロガーの設定を30秒平均に設定した際の出力値の変動を示す図である。 ノイズ確認実験の概略図である。 デニューダー性能確認実験の概略図を示すである。 デニューダー性能確認実験(2013.12.24〜12.27)を示すである。 純水を滴下した際のNO計の経時変化を示す図である。 硫酸アンモニウムを滴下した際のNO計の経時変化を示す図である。 硝酸塩測定装置の制御盤の外形図を示すである。 硝酸塩測定装置の制御盤における運転状態画面を示す図である。 硝酸塩測定装置の制御盤におけるパターン設定画面を示す図である。 硝酸塩測定装置の制御盤における計測定数設定画面を示す図である。 硝酸塩測定装置の概略図と電磁バルブの位置を示す図である。 連続測定における硝酸塩測定装置のシーケンスを示す図である。 滴下実験の概略図である。 KNOの滴下量と検知された質量との関係を示す図である。 NaNOの滴下量と検知された質量との関係を示す図である。 Ca(NOの滴下量と検知された質量との関係を示す図である。 NHNOの滴下量と検知された質量との関係を示す図である。 KNOとNHNOを同量滴下した際のNO計の経時変化、赤線温度プロファイルは200℃と完全分解のため500℃に設定した場合。 FMPSの測定原理を示す図である。 テスト粒子測定の同時計測実験を示す概略図である。 ナイトレートモニター8400Nと本例の装置によるテスト粒子質量濃度比較である。 アトマイザー3079により発生させた硝酸塩粒子の粒度分布を示す図である。 1−JETエアロゾルアトマイザー9302により発生させた各硝酸塩粒子の粒度分布を示す図である。 テスト硝酸塩粒子を用いたFMPSと試作装置、TEOMの同時計測実験の概略図である。 テスト粒子の試作装置とIC分析用フィルタ捕集の同時計測実験の概略図である。 標準硝酸塩試料を用いた検量線図である。 IC分析と試作装置との比較を示す図である。 粒子状硝酸塩分離実験の概略図である。 硝酸アンモニウムと硝酸ナトリウムを分解させた際のNO計出力の経時変化、 赤線の温度プロファイルは200℃と完全分解のため500℃C設定した場合。 硝酸アンモニウムと硝酸カルシウムを分解させた際のNO計出力の経時変化、 赤線の温度プロファイルは200℃と完全分解のため500℃に設定した場合。 本例の大気自動連続測定用装置の外観を示す図である。 新宿における2014年1月19日から24日までの試作器によるNO -濃度の変動を示す図である。 新宿における2014年2月1日から3日までの温度を2段階設定にした場合の本例の装置によるNO 濃度の変動を示す図である。 新宿における2014年2月1日から3日までのPM2.5及びNO 濃度の変動を示す図である。 一般環境(9地点)におけるPM2.5の主要成分割合を示す図である。 日本におけるNOの環境基準達成率の推移を示す図である。 PM2.5中硝酸塩の発生源寄与率のシミュレーション結果を示す図である。 相対湿度が50%の際のNHNOの平衡解離定数の温度依存性を示す図である。 大気中に存在する硝酸塩成分ごとの粒度分布を示す図である。なお、A’populationは硝酸アンモニウム、B’populationは硝酸ナトリウムなどを示す。
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る測定装置及び方法の測定原理
硝酸塩は熱分解によって酸素の他にNO、NOを発生する。本発明の実施例において、大気中の主要硝酸塩として対象とした成分は、硝酸アンモニウム(NHNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)、であり、以下に各硝酸塩の熱分解特性について説明する。また、これらのほかにも、大気中で存在の可能性があるMg(NOや金属硝酸塩についても言及する。
硝酸アンモニウムの分解開始温度は142℃であるが、分解が顕著に進行するのは200℃付近より高温である。また、分解時に大きな発熱を伴う。一方、硝酸ナトリウムは491℃において分解が始まり、以下のような反応で進んでいく。
Figure 0006313609
硝酸カルシウムの融点は561℃であるが、分解は500℃で始まる。図1の550℃付近にみられるTG曲線における折点は、硝酸塩の熱分解が融解の潜熱の影響を受けるためであると考えられる。硝酸カリウムの分解は硝酸カルシウムより少しだけ高く、526℃で始まる。
熱分解に関する結果より、硝酸塩の中で水和物を作るものは、無水塩を作る化合物と、脱水過程で分解する化合物に分かれる。また、加熱、脱水による方法では無水塩を生成しない化合物と、無水塩を生成するが、無水塩の熱分解温度が低いために脱水反応中に熱分解が起こり、区別できない場合がある。多くの硝酸塩は一旦無水塩に変わり、直接酸化物に変化する。Na、K、Rb、Csの硝酸塩では亜硝酸塩になり、次に酸化物へと変わっていく。アルカリ金属硝酸塩の熱分解を一般化すると、次のような反応式となる。
Figure 0006313609
また、硝酸マグネシウムは吸湿したMg(NO・6.528HOの固体状態であったが、この際の熱分解の挙動は、脱水後、無水塩を作ることなく、硝酸塩の熱分解が起こり、460℃において酸化物MgOとなる。
硝酸リチウムの熱分解開始温度は430℃以上で起こり、硝酸セシウムで407℃、硝酸バリウムにおいて550℃、硝酸ストロンチウムで542℃、硝酸ルビジウムで529℃とどれも500℃付近での分解が確認されている。
上記に示したような反応では酸化物などが残留してしまうが、硝酸塩はNOやNOなどのNOに分解することができる。本例では、この熱分解により硝酸塩から生成したNOをNO計により定量し、硝酸塩粒子濃度を測定する。
また、大気中には前記の図45で示したように、一般的に、微小粒子側に存在する硝酸アンモニウムと粗大粒子側に存在する硝酸ナトリウムなどの粒子が存在する。これらの成分の熱分解点は前述で示したように硝酸アンモニウムにおいて約142℃、粗大粒子側の硝酸ナトリウムや硝酸カルシウムにおいて500℃であり、大きな差が存在する。これを利用し、加熱器で200℃程度に上昇させることで、微小粒子側の硝酸アンモニウムを測定し、その後検出が終わった段階で500℃に上昇させることで残留している硝酸塩粒子を測定することができると考えられる。
装置の概要
本例の測定装置の概略図を図2に示す。この測定装置は試料大気の導入のために2ヶ所の入口流路を有し、一方はNO濃度計測用のもので市販のNO計(Thermo、MODEL 200A)による測定を行う。もう一方の流路は硝酸塩粒子計測用でNO濃度計測中に、ポンプで大気を吸引するが、まずデニューダー(Sunset Lab.)でNOや硫黄酸化物などの干渉ガスを全て除去し、石英フィルタで硝酸塩粒子を捕集する。硝酸塩粒子は500℃付近で熱分解により90%以上が NOに変換できる。そこで、ガス用の流路を閉じ、粒子用流路をゼロフィルタに切替て清浄空気を流し、加熱器を用いて石英フィルタを500℃まで昇温させ、捕集された硝酸塩量をNO計で測定する。粒子及びNOの流路切替は電磁バルブを用いて行う。このように、流路を間欠的に取り替えることでNOと硝酸塩粒子濃度を半連続的に計測できる。
データ処理
NO濃度から硝酸塩濃度への変換
本例の装置において、データを取得する際、図3に示すNO計のアナログ出力部分に直接データロガーを接続することで、光電子増倍管による電圧変化をデジタル変換してデータとして記録する。使用したチャンネルはNO計におけるNOの総濃度に対応する。アナログ出力はNO計の濃度レンジ0〜Cmax (ppb) に対応して0〜5Vである。
従って、得られた出力値X(V)からNO濃度C(ppb)は
C = Cmax X/5
で変換できる。本例で用いたNO計の分解能は0.4ppbであるからXは0.2mVとなり、ノイズの寄与について検討することが必要である。
次に、電圧計を用いてNO計からの出力電圧を確認した。条件として、NOの濃度を室内濃度、1000、2000、3500、5000(ppb)を目標に希釈し(後記「デニューダーの性能評価」参照 )、試作器の流路を通して、それぞれの出力値を電圧計により測定した。
以下に希釈条件を示す。
用いたNO濃度は約5000ppb
5000ppbはそのまま流し測定、
3500ppbはNO 200mLに対し、希釈空気は87mL
2000ppbはNO 100mLに対し、希釈空気は152mL
1000ppbはNO 100mLに対し、希釈空気は403mL
とすることで達成した。
なお電圧計のレンジ設定は、室内空気の際:100mV、
1000及び2000ppb:1V
3500及び5000ppb:10Vのように設定した。
この測定の際、NO計の濃度レンジは0〜10000ppbに設定したため、(2−6)式から単純に検出された電圧値(mV)を2倍すれば濃度(ppb)に変換できる。
図4より、NO濃度と出力電圧との関係は(2−6)式で表わされることが確認できた。
一般大気中においてNOが10ppmの濃度範囲まで上昇する可能性はなく、わが国の一般大気濃度に対応する出力電圧は10mV程度であるため、濃度レンジの上限値を見直す必要がある。一方で、粒子状硝酸塩濃度測定においても、硝酸塩粒子モニターとして機能させるために上限値の設定が必要となる。まず、上限をそれぞれ1000、2000、5000ppbに設定した際の硝酸塩濃度の上限を示す。
1000ppb=3.84μg/m
2000ppb=7.69μg/m
5000ppb=19.22μg/m
これが測定可能な瞬間最大値となる。一方、NO計の測定限界0.4ppbに対応する硝酸塩濃度の検出下限は0.1μg/mとなる。
ここで、日本の粒子状硝酸塩濃度は2009年度の、東京都環境科学研究所による微小粒子状物質等の二次生成機構に関する研究報告書によると、冬季の東京都における四地点で大体5μg/m程度、最大で江東区の8μg/m程度となっている。秋季でも同様であり、春季では更に低く検出されていた。また、本願発明者の曹らの都心部におけるPM2.5揮発性成分濃度の計測でも、一年を通して、硝酸塩濃度は平均で3.56μg/mと報告されている。
実際の計測では温度上昇に時間幅があり、捕集された硝酸塩粒子が瞬間的にNOに変換することはないことからも、瞬間最大値が7.69μg/mあれば十分と考えられ、NO計の濃度レンジを0〜2000ppbに決定した。この濃度レンジに設定した際の出力電圧からNO濃度への換算式を以下に示す。
NO計の設定レンジが2000(ppb)、出力電圧をX(V)とすると、
Figure 0006313609
次に出力されたNO濃度(ppb)から硝酸塩の質量濃度(μg/m) に換算する式を下記に示す。
Figure 0006313609
出力平均時間の設定
濃度出力にはノイズが含まれるため、データロガーで出力の平滑化を行うための最適設定条件を求めた。以下に設定した条件とその根拠を示す。
最適な出力平均時間を1秒、10秒、30秒と変更し、出力を測定することで確認した。図5〜図7にデータロガーの設定を1秒平均、10秒平均、30秒平均に設定し、テスト溶液として硝酸カリウム溶液(0.1μg/μL:NO )をフィルタ上(80nL)に滴下しキャリアガスとして窒素を流し、フィルタ部を600℃まで加熱することでNO計の変動を確認したデータを示す。赤線は温度プロファイルを表すが、わずかなオーバーシューティングが生じている。
これらの図において、1秒平均ではデータの数が膨大となり記憶媒体の容量を大きくしなければいけないこと、またNO計自体の計測値が大きく変動し、硝酸塩濃度を計算する際に、積分開始時と終了時間の明確な設定が困難で、設定時間の不確実性による値の変動が起こってしまうなどの問題点があった。また、30秒平均のグラフは連続的ななめらかな出力で積分開始時間の設定が容易である。しかしながら、硝酸塩の熱分解により発生する短時間でのNO濃度変動の追従性を考慮して、10秒平均という設定で計測を行う。
データロガーの入力電圧レンジ
データロガーの設定において重要となるのが、入力電圧の設定である。この設定によりデータロガー側におけるNO濃度の測定分解能が決定される。
用いたデータロガーの表示分解能は入力電圧レンジに対応して
±5V:1mV
±1V:0.1mV
±500mV:0.1mV
±100mV:0.01mVとなっている。
NO計の出力は、硝酸塩濃度に対する設定レンジ0〜20000ppbにおいて、0〜5Vとなっているため、1ppbあたり2.5mVで出力される。一方、NO計自体の濃度分解能が0.4ppbであるため、データロガーの表示分解能1mV以下は意味をもたない。そこで、入力電圧レンジは±5Vに設定し、測定を行った。
ノイズ評価
得られたデータではノイズによるバックグランド出力値の変動を評価しておく必要がある。ノイズが生じる原因としては、測定装置の流路におけるNO吸着、デニューダーへの粒子沈着、粒子捕集部加熱による吸着ガスの放出の温度依存性などの要因が考えられる。そこで以下に述べる条件下でNO計の出力変動を検討した。
まず、粒子フリーのNを流した際のノイズの温度依存性を検討した。実験は図8に示したようにNガスをキャリアガスとして試作器を通し、NO計でデータの変動を計測した。この際、フィルタ部分を加熱器を用いて設定温度を100、180、200、300、500℃に変化させ10分間測定した。また、測定装置に室内空気を直接流す場合と、デニューダーを通した場合の温度依存性、測定装置を介さず直接NO計で室内空気のデータを測定することも試みた。次表にそれぞれの条件下における平均濃度をまとめた。なお使用流路にはガス吸着を防ぐためにテフロン(登録商標)チューブを用いた。
様々な条件下におけるNO計出力の変動
Figure 0006313609

前記の表より加熱による濃度変動はあることが確認できたが、NO濃度上昇の温度依存性は認められず、平均値で0〜2ppb程度の上昇にすぎなかった。また、Nガスやデニューダーを通した際に微量な変化は見られたものの、変動は最大でも5ppbであった。これにより、硝酸塩粒子分析時の積分開始時間を最大値の5ppbより余分にとった7ppb以上出力されたときに設定した。これによりバックグランド値の変動による過大評価を防ぐ。
以上より、デニューダーを通過させた空気やNガスをキャリアとして用いるのであれば、硝酸塩粒子計測上は無視できる範囲のNO濃度しか検知されないため、問題はないといえる。
デニューダーの性能評価
図9にデニューダー性能確認実験の概略図を示した。本測定装置では市販のデニューダー(Sunset Lab.)を用いてNOなどの干渉物質を除去し、硝酸塩粒子のみを捕集する。そのため、デニューダーの窒素酸化物の除去効率について3日間の性能テストを行った。次に実験方法について述べる。NOガス(5000ppb、東横化学株式会社)と希釈器(TD−K100、東京ダイレック株式会社)を用いて100ppbまで濃度を希釈し、図9に示すようにデニューダーと試作装置を通過させ、NO計の出力をデータロガーにより記録した。使用した流路はガス吸着が少ないテフロン(登録商標)チューブを用いた。この際、連続計測時間は3日間である。測定開始時には100ppb程度まで希釈されているか確認し、その後流路を変更しデニューダーを通しNO濃度を測定した。
図10に示すように、実験開始時に100ppb近く検出されていたものが、デニューダーを通した際一気にゼロレベルまで低下し、100%近い除去効率を示した。2日目より出口濃度の上昇と変動が増え、多いときで30ppb近く検出された。しかしながら、3日目でも平均的に10ppbの値になっており、90%近い除去効率を示した。前述したNO濃度の推移より近年一般局では多くても16ppb程度しか検知されていない。この濃度に対して単純に除去効率90%を適用すると1.4ppbになり、前項で述べたノイズレベルである。また、本実験で用いたNO濃度の16%で、少なくとも17日間程度連続測定が可能であるが、破過曲線の作成などさらに長期の実験が必要である。
干渉成分評価
化学発光法にて干渉物質として考えられている水蒸気と硫酸塩について、水と硫酸アンモニウム溶液(0.1μg/μL:SO )を用いて、NO計で検出されるか検証した。測定装置のフィルタ部を一旦開放し、直接ピペットで純水を1.6μL滴下した。また、硫酸アンモニウム溶液を120、160、240、320ngを滴下することも行った。さらに、一旦流路を10秒間開放し何も滴下しないということも試みた。その後、流路を閉じ、清浄空気としてNガスを流す。その後、PIDの加熱器をもちいて温度を2分間で500℃でまで上昇させ後方に続くNO計で測定した。図11に純水を滴下した際の出力の経時変化、図12には硫酸アンモニウム溶液滴下試料の経時変化を示した。
図11より純水を滴下した際、検出電圧はNO濃度換算で3.6ppbになるので、バックグランドノイズ以下で問題ないと評価できる。図12より硫酸アンモニウムを滴下した際も純水を滴下した際のときと同様の傾向を示した。この結果から、純水、硫酸アンモニウムともに今回の化学発光法を用いた装置において干渉物質とはならないと考えられる。
大気自動連続測定試作装置
以上のような基本性能を検討したのち、大気の自動連続測定用装置を完成させるため、プロトタイプとして、制御盤、電磁バルブ流路を組み込んだ装置を作成した。
装置の基本構成は粒子を捕集し、分解する分析部と自動的に装置を制御し、濃度換算をおこなう制御部、窒素酸化物を測定するNO計部に分かれる。外形は図13のようになっている。
測定する際の機能を画面とともに説明していく。図14、図15、図16に装置の要となる運転状態画面、パターン設定画面、計測定数設定画面を示した。
まず、メインメニュー画面より、初期設定、手動操作、運転状態、パターン設定、イベント履歴、トレンドグラフ、炉温度制御、PIDバンク、計測定数設定、計測ログデータ、SDカードデータ転送と11個の画面に移行できる。
初期設定では使用するラインの決定、時刻修正を行える。これにより時間設定でリアルタイム計測がおこなえる。手動操作では制御している電磁バルブの切り替え、冷却ファン、炉温度の調整を決定することができる。
運転状態画面では問題が発生する箇所、また加熱器の稼働状態等の情報を確認できる。これにより装置の測定がどのようになっているか一括で確認することができる。また、パターン設定画面では導入 (大気サンプリング)、分析(加熱しNO計による計測)、待機 (加熱し温度上昇したフィルタ部をファンにより冷却)という3つのプロセスが設定できる。図15に示すように計10個のプロセスを制御することができ、これにより温度を段階的に変化させ硝酸塩粒子における硝酸アンモニウムと他硝酸塩との分離が可能となる。設定項目は各プロセスを何秒間、温度は何度に上昇もしくは維持するか、また、温度を上昇させる際にはどのPID番号を設定するかである。これにより、温度を分析中に2段階に設定することや異なる温度プロファイルを設定することができる。また、イベント履歴は装置が稼働している中でどのようなことが起こったか確認できる画面であり、これは装置の問題点で述べたようにメンテナンスの容易さを目的として情報を出力した。また、トレンドグラフにおいては濃度の時間変化を示すことができる。炉温度制御、PIDバンク画面ではある設定した加熱温度について詳細設定をすることができるようになっている。図16に示す計測定数設定ではパターン設定画面で変更したサンプリング時間やサンプリングの際の流量を変更することで正しい硝酸塩濃度の換算をおこなうことができる。また、異なるNO測定装置を将来的に用いる際、電圧と濃度の関係を近似直線として代入することで互換性を持たせることが可能である。計測ログデータにおいてもデータ取得時刻等の濃度などを表示できる。最後のSDカードへのデータ転送画面では取得したデータログの出力を行う。
本例の測定装置では、1つの分析部でも連続測定が可能であるが、時間分解能をより精度よく行うためには2つの分析部による半リアルタイム計測が求められる。
ここで2つの分析部とは硝酸塩粒子のサンプリングを行うフィルタ部を2つ用いるということでありこの際、一つ目の分析部をAセール、二つ目をBセールと呼ぶ。仕組みとしてはサンプリングをAセールで行う間、Bセールにおいて加熱し分析する。その後、Aセールが分析に入った際、Bセールでサンプリングする。この方法を用いることで1つの分析部を用いたときの時間分解能を半分の時間にすることができる。この流路を切り替えるにあたって、図17、図18に電磁バルブの挙動、2つの流路を用いた連続測定におけるシーケンスを示した。
電磁バルブによる流路切替
電磁バルブの位置を図17に示す。1つの測定部分には電磁バルブが4つ取り付けられている。1つは入り口流路部分についており、デニューダーから粒子を捕集する場合と、デニューダ-―からゼロフィルタに切り替え、清浄空気を流す場合とでの2通りに用いる。残り3つは測定部分後方についている。
・ポンプへのバルブが開いた際には、測定部分からのNO計へのバルブは閉じる。また、大気を吸引する部分のバルブは開く。
・ポンプへのバルブが閉まる際には、測定部分からのNO計へのバルブは開き、また、大気を吸引する部分のバルブは閉じる。
2つ測定ラインにおいて、電磁バルブを使用することにより、より短い時間分解能を達成することができる。図18に本測定装置における目標シーケンスを示した。この際、時間分解能は30分であった。しかしながら、現段階では40分サンプリング、10分分析、10分待機から構成される1つのラインのみでの自動測定装置となり時間分解能は1時間である。
本例の装置の性能評価
使用した装置・器具
(1)キャリアガス:純度9A 窒素ガス(高千穂化学工業株式会社)
本例の装置では主に試作器、またナイトレートモニター8400Nのキャリアガスとして用いた。
(2)デニューダー:( Sunset Laboratory )平行板状活性炭フィルタデニューダー。
キャリアガスとして流す室内空気に存在する主にNOや硫黄酸化物などの干渉物質の除去を行うために使用した。中の活性炭フィルタは加熱することで再利用できる。
(3)ゼロフィルタ
分析時清浄空気を流すため、空気中の粒子を取り除く際に用いた。また、後述するFMPSの運転中の大気時にゼロフィルタを通し、エラーがないことを確認するため、また、NO計へと向かう流路の直前にゼロフィルタをはさむことで、NO計にガスのみを流すためにも使用した。
(4)デジタルマスフローコントローラ(CMQ−V、アズビル株式会社)
本例の装置において、試作装置へのキャリアガスの流入流量調節に用いた。標準フルスケール流量は5.00L/min であり、実際の設定値は1.2L/minでNO計の吸引流量を超える程度流した。
(5)ポンプ(NLY−20DC、東京ダイレック株式会社)
本例の測定装置において、サンプリングを行う際、8L/minの流量にする必要がある。よって8L/min以上の吸引能力を有するものを用いた。
(6)NO計(200A Thermo社)
主にNOと硝酸塩粒子を加熱分解によってNOに変換したものを測定する際に用いた。測定レンジは50〜20000ppbで検出限界は0.4ppbである。測定原理は先に述べた化学発光法であるが、モリブデンによりNOがNOに還元される。
装置内にあるオゾナイザーにより生成されたオゾンと流入してきたNOとの反応により、励起状態のNO分子が余分のエネルギーを光子として放出すること、また低いエネルギーレベルに下がることで解放する。この際、発生した光強度はNO濃度に直接比例する(式3−1、3−2)。次に分析器の光電子増倍管のシグナルによりデータを検知する。次にバルブがサンプル流路から高温、モリブデンを含む変換流路へと切り替わり、残留NOをNOに下に示した式3-3の反応で還元する。なお、今回用いたNO計ではNOとNOを分離して計測はしていない。

NO+O→NO+O (3−1)
NO→NO+hv (3−2)
3NO+Mo→3NO+MoO (3−3)

(7)PID制御器(DSSP93、シマデン社)
装置の分析部であるフィルタ部のK熱電対により温度を感知し、フィルタ部の加熱に使用されるリボンヒーターの温度制御に用いた。
(8)石英繊維フィルタ(PALLFLEX 2500 QAT−UP)10mmφ
バインダーを使用していない高純度石英繊維のろ紙で、有機質、金属等のコンタミネーションが極めて少ないので、各種エアロゾルの分析を高い精度で行うことができる。優れた捕集効率にてエアロゾルを捕集できること、低圧損、耐熱性が高い、優れた均一性のため硝酸塩粒子捕集用に使用した。
(9)ガラス管
本例の装置の分析部の流路には1000℃以上の耐熱性とNO吸着が少ない特注の石英ガラス管を用いた。
(10)電磁バルブ(小林義美商店)
試作装置の流路切り替えのため、特注の電磁バルブを使用した。この際、バルブ開閉の命令は試作装置からの基板により信号が送られる。これにより大気の自動計測を行う。
(11)データロガー(NR−600、Keyence社)
NO計の光電子増倍管から出力されるアナログ信号をデジタル信号として計測し、電圧変化をエクセル形式で記録・出力する。本例では先に述べたように、この出力された電圧信号をまず、NO濃度に変換し、その後質量濃度に変換するという方法をとった。最高分解能は16bitであり、最大入力チャンネル数256であった。
性能評価実験方法
硝酸塩分解率計測実験
まず、試作装置内にある分析部の石英フィルタ(10mm)上に捕集された硝酸塩粒子が全てNOに変換されるかを定量 (0.2、0.4、0.6、0.8、1.6、3.2μL)の硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム溶液 (0.1μg/μL:NO )をピペットでフィルタ上に滴下し、PID制御の加熱器を用いて、2分間で500℃ まで加熱した。NO計の信号をデータロガーにより記録し、硝酸塩の質量濃度に変換した。これにより硝酸塩のNOへの変換率を求めた。滴下の際は図19に示すように一旦流路を開放し、フィルタを取り出し、シリンジまたはピペットにより直接滴下した。これにより硝酸塩溶液の分解率を求めた。
図20、21、22、23は、計測シーケンス中のNO計の出力を記録したデータロガーの積分値を質量濃度に単位換算した値と硝酸カリウム溶液、硝酸ナトリウム溶液、硝酸カルシウム溶液及び硝酸アンモニウム溶液の滴下量との関係を示す。その結果、ばらつきはあったが、両者の間にはよい線形性が認められ、理論値とも近く、硝酸塩粒子の加熱分解による測定が可能であることが示され、変換率は硝酸カリウム、硝酸ナトリウムでほぼ100%、硝酸カルシウムでは96%、硝酸アンモニウムでは88%の変換効率を示した。 硝酸アンモニウムにおいて、変換率が若干低い値となったが硝酸アンモニウムは揮発性の不安定な物質であるため、調製やフィルタに滴下する段階で一部が失われたと考えられる。しかしながら、他の硝酸塩成分においてほぼ100%の変換効率を示し硝酸塩の分解・検出が可能であることがわかった。以下、硝酸塩のNOへの変換効率は100%として取り扱う。
硝酸塩成分分離実験
前述した本例装置の測定で示した原理に基づいて、加熱温度を変化させることで硝酸アンモニウムとその他の硝酸塩粒子を分離同定可能か検討した。各硝酸塩量が80ngになるようの硝酸アンモニウム溶液 (NO :100 ng/μL) と硝酸カリウム溶液 (NO :100ng/μL ) を1枚の石英フィルタ (10mmφ) 上に滴下し、最初に一定温度(200、250、280、または300℃) まで昇温させ、2分間でNO計の出力がゼロレベルまで低下するのを確認後、さらに500℃ まで加熱し出力がゼロレベルへ低下するまで待機することで両者の硝酸塩が分離測定できるかを確認した。
この際、データロガーにより検出されたNO濃度はサンプリング流量8L/min、サンプリング時間15分と設定し、硝酸塩の質量濃度を計算した。
まず、今回用いた加熱器の制御は200℃設定にした場合、温度上昇がオーバーシュートしてしまい280℃まで温度が加熱されてしまった。また、高温の500℃でも設定値を超えてしまうが、520℃まで上昇する程度でバランスが取れた。300、280、250℃のデータをみると硝酸アンモニウム、硝酸カリウムを同量滴下しているにもかかわらず、開始3分間にそれぞれの温度での検出値が、500℃に上昇させ3分間出力された値よりも多くなり、温度による分離はできなかった。200℃設定では両方の出力が同程度となり、200℃と500℃に2段階設定した場合にKNOとNHNOが分離同定できることが確認された。また、この際第1段階の上昇温度を200℃に設定し、280℃までオーバーシュートしても硝酸カリウム単体で測定した場合、出力は確認されなかった。また、分解温度が硝酸カリウムと近い500℃である硝酸ナトリウム、硝酸カルシウムにおいても同様に200℃に設定し加熱したところ、出力は確認されないことがわかった。よって単体での滴下実験の結果から硝酸アンモニウムと、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムの分離は可能であると考えられ、次にテストエアロゾルでの検証をおこなう。
粒子状硝酸塩計測実験
まず、硝酸塩テストエアロゾルを発生させ、装置性能を評価する実験において試作装置との比較や粒子作成や粒子分布の測定のために用いた装置とその原理について述べる。
エアロゾルアトマイザー3079
噴霧式の発生装置で液滴状のエアロゾル粒子を安定して発生する事ができる。粒径分布及び、個数濃度が安定した状態で粒子を発生させる。また、軽量・小型であり、低ノイズの小型コンプレッサーを内蔵しており、取扱いも非常に容易である。よって本研究では各硝酸塩粒子を作製するために用いた。発生液滴径は0.2〜1μmであり、粒子個数濃度は10個/cmである。
1−JETエアロゾルアドマイザー
上記のアトマイザー3079と同様の噴霧式の微粒子発生装置である。この装置により発生する。液滴粒径は4〜5μmであり、発生粒子濃度は40000個/cmである(水、25psi)。この装置を用いることで、エアロゾルアトマイザー3079と異なる粒子径と粒子個数濃度の硝酸塩を発生させ、試作装置の性能を評価した。
ディフュージョンドライヤー(TSI model 3062)
本例において、アトマイザー等により発生させた液滴状態の硝酸塩粒子を乾燥状態にするため、これを用いた。乾燥原理として、エアロゾル流路を囲む乾燥材(シリカゲル)が拡散効果で余分な湿気を取り除く。エアロゾルが乾燥剤に接触しないため、粒子の損失も最小限に抑えられる。また、中身の乾燥剤であるシリカはドライヤーから取り出し、120℃で焼くことで再利用可能となる。
FMPS
アトマイザーにより発生させた各硝酸塩粒子の計測において、粒子の粒度分布を評価するために本研究ではFMPS(TSI、Model− 3091) を用いた。Model 3091は粒子径範囲5.6〜560nmの微粒子を32段階のチャンネルで分級測定することができ、長期間での連続的な計測が可能である。このFMPSは同一装置内に静電式分級器(DMA)と、検出器として低ノイズエレクトロメーターが組み込まれている。以下に、FMPSを用いた粒径分布の計測手順を示す。
図25に原理図を示す。まず、サンプル粒子は入口においてチャージャーにより拡散荷電される。シースエアーの流れに乗り、カラム内部に入った荷電粒子はカラム中央にある高電圧ロッドと反発し、外側に移動する。外側には複数のリング状捕集板が取り付けられており、表面にはエレクトロメータ−が取り付けられている。中央ロッドに反発し、移動した粒子は各段のエレクトロメーターに捕集され、その粒子の電流値が個数濃度値としてデータ化される。
粒子の移動は個々の粒子が持つ、電気移動度により異なる。電気移動度は粒径に依存しており、粒径が小さいものは大きく、サイズの大きいものは小さく移動する。よって、微小粒子はカラム上部で、粗大粒子は下部でリングに捕集される。加えて、高精度なエレクトロメーターを複数使用することで一度に多くの粒径の個数濃度情報を得ることが可能となる。
FMPSは結果に影響を与える計測時の誤差となりうる要因を取り除くため、自動的に補正をおこなっている。FMPSの計測原理に加え、独自のデータ補正機能により、高時間分解能によるリアルタイムの粒径分布情報がより信頼性の高いものとなっている。
ナイトレートモニタ8400N(Thermo)
本例と同様の原理で硝酸塩粒子濃度を計測する市販装置であるが、現在製造は中止されている。本研究の硝酸塩のテスト粒子の質量濃度測定のために使用した。時間分解能は10minであり、3〜20分の間を選択できる。検出限界値は時間分解能10分の場合0.5μg/mである。この測定原理を下に示した。まず、レインキャップにより雨を除き、微小粒子を含む大気が入口流路より流入する。その後、PM2.5サイクロンにより、粒子径2.5μm以下の粒子のみを捕集する。後方に続く活性炭デニューダーにより干渉ガスを全て除去し、加湿器により流路内を通る粒子を成長させて、装置下部にあるインパクターで金属片に硝酸塩を捕集する。その際、金属片に電圧を印加させることによって瞬間加熱する。加熱分解によってNOへと変換され、流路を通りNO計(Thermo 200A)で濃度を測定。データ処理によりモニター上に表示、記録される。
大気計測モニターTEOM(Thermo 1400ab)
試作装置との硝酸塩粒子の質量濃度の比較をおこなうため振動素子式マイクロ天秤を用いた。TEOM1400abはThermo Scientific社特許のTEOM原理(振動素子式マイクロ天秤)を用いて、粒子の質量濃度をリアルタイムに測定する。サンプルインレットの交換により、SPM、PM10、PM2.5、PMまたはTSP濃度の計測が可能となる。サンプリング流量は16.6L/minで、測定可能範囲は0〜5g/mである。
テスト粒子測定実験
各硝酸塩溶液をエアロゾルアトマイザー3079に入れ、液滴状態の粒子を発生させる。その後、ディフュージョンドライヤーにより乾燥させ、流量調整用のゼロフィルタの後方に続くチャンバーにて流路を3つに分ける。この分けたものをそれぞれナイトレートモニター8400N、FMPS、試作装置により測定した。この際試作装置への流量はマスフローコントローラーとポンプにより各条件ごとに設定した。
ナイトレートモニター8400Nとの比較の際にはまずFMPSにより、粒子の安定状態を確認する。その後、チャンバーにて流路を二つに分け各流量を5L/minで計測した。サンプリング終了後、まず、粒子入口を変更し清浄空気用流路にする。その後ポンプ用流路をNO計に向かう流路へと変更する。清浄空気としてNガスを流しながら、加熱器により500℃まで昇温させNO計の出力をデータロガーに記録した。この実験により、装置間の比較を行い硝酸塩粒子の測定精度を比較した。
この実験系で使用した硝酸塩濃度は大気中に存在する質量濃度に近い値に調製し、硝酸アンモニウム(0.0040g/100 mL)、硝酸ナトリウム(0.0020g/100mL)、硝酸カルシウム(0.0032g/100mL)を用いた。本実験より、各硝酸塩粒子の計測が可能であるかを検証した。図27に各測定装置による各硝酸塩粒子の質量濃度比較を示した。また、この際、各硝酸塩粒子におけるFMPSによる粒度分布も図28と図29に示した。
図27より両装置の間にはよい相関が認められたが、試作装置の方が過大評価であった。これは粒子を発生させるためのアトマイザー部や流量調整用の流路で室内空気が流入し、石英フィルタ部にNOが吸着したためと考えられる。正確には後述する粒子をフィルタ捕集し、イオンクロマトグラフィ(IC) 分析により求めた硝酸塩濃度との比較が必要である。
TEOMによる質量濃度比較実験
アトマイザー3079により各硝酸塩粒子を発生させ、ディフュージョンドライヤーで乾燥させた粒子をチャンバーに導入し、FMPSと試作装置、TEOM1400とで粒子の質量濃度を測定した。この際、TEOMの質量濃度は全質量のため分子量計算をおこないNO 濃度に換算した。この際、TEOMへの流量は16.6L/min、試作装置へも16.6L/minと条件を等しくすることで質量濃度の比較を行った。
図30と表3.2にTEOMによる実験装置の概略図とその結果を示す。この表の左2列にFMPSとTEOMの同時計測結果、右2列にFMPSと本例の装置の同時測定結果を示した。このときの硝酸塩溶液の濃度は硝酸アンモニウム(1.985mg/100mL)、硝酸カルシウム(2.070mg/100mL)、硝酸ナトリウム(2.035mg/100mL)のように調製した。また、FMPSによる質量濃度は個数濃度から(3−4)式)を用いて換算した。
Figure 0006313609
表3.1 FMPSによる粒子パラメータTEOMと試作装置との比較
Figure 0006313609
表3.2よりTEOMと試作装置の質量濃度は近い値を示し、相関がみられる。しかし、FMPSによる質量濃度は過大評価を示した。原因として、実験室においてこの実験を行った日のみ、大量の分析装置を同時稼働することがあり、電力の大量消費に伴う電圧降下が起こり、特にFMPSの安定性に問題があったためと考えられる。
IC分析による検討
まず、アトマイザーにより各硝酸塩粒子を発生させ、FMPSにて粒子が安定的に発生されているのを確認後、流路を二つに分けて試作装置とIC用のフィルタ捕集を各8L/minでサンプリングを行った。47mmφ石英フィルタ上に捕集されたエアロゾル試料中の無機イオン成分量はイオンクロマトグラフ分析装置を用いて測定した。実験系の概略図を図31に示す。以下に装置の概要、試料前処理から分析までの流れについて述べる.
イオンクロマトグラフィの概要
イオンクロマトグラフィ(Ion chromatography、IC)は、1975年にDow Chemical社のH. Smallらによって開発されたイオン性物質の分析法で、JISでは、“溶離液を移動相に、イオン交換体などを固定相とした分離カラム内で試料中のイオン成分を展開溶離させ、電気伝導度検出器、電気化学検出器または吸光光度検出器を用いて測定する方法” と定義されており、クロマトグラフ法の一つである。ppm〜ppbレベルのイオン種を煩雑な前処理無しに簡便、迅速かつ同時に分離、定量できる利点を兼ね備えている。このため、短時間に各種の分析に普及した。近年、IC分析の改良はめざましく、大気汚染分野においてもその応用は広く、大気エアロゾル粒子や雨水中のイオン成分の分析に用いられている。
用いたICのカラムは、陰イオン分析にはIC−SA2、陽イオン分析にはIC−SC1(いずれも島津製作所社製)を用いた。なお、分離されたイオン成分は電気伝導度検出器(CDD−10Asp、島津製作所)により検出された。陰イオンそれぞれを分析する際の溶離液、流量、オーブン温度などの分析条件を下記表3.2(ICの分析条件)に示す。
Figure 0006313609
以下にイオンクロマトグラフ分析の前処理から分析までの流れを述べる。47 mmφ石英フィルタを抽出瓶に入れ、5 mLの蒸留水 (蒸留水、ナカライテスク) を加え、水溶性イオン成分の超音波抽出を20分間行い、それを2回繰り返し合計10 mLの溶液に調製した。
超音波抽出後、テフロン(登録商標)フィルタ(DISMIC 13HP045CN、アドバンテック東洋)を用いてろ過し、不純物の除去を行った。
ろ液の約3.2〜3.7mLを取り出し、イオンクロマトグラフ測定用バイアル瓶に入れ、表3.3に示した条件で各無機イオン成分のクロマトグラフの面積を得た。
得られた各成分の面積は、あらかじめ既知濃度の標準液を測定して得られた検量線を用いて濃度換算を行い、試料中の無機イオン量を得た。作成した検量線図を図32に示した。また、IC分析と試作装置により測定した比較を図33に示した。
図33より硝酸アンモニウム、硝酸カルシウムともに変動は示したものの、測定結果に相関関係がみられた。しかし、硝酸ナトリウムにおいては試作装置側の質量濃度結果が過大評価となっている。しかしながら、各装置との相関関係も示すことができており、捕集実験の回数を増やすことでICのデータと試作装置での質量濃度結果が一致すると考えられる。
硝酸塩成分分離同定実験
本実験において、2段階温度変化による粒子状硝酸塩成分の分離同定を試みた。図34に粒子状硝酸塩分離実験の概略図を示した。まず、アトマイザー3079と1−JET エアロゾルアトマイザー9302により硝酸アンモニウムと他の硝酸塩成分である硝酸ナトリウムと硝酸カルシウムの粒子を同時に発生させる。その後、ディフュージョンドライヤーにて乾燥状態にし、試作装置内フィルタ上に混合粒子を捕集する。最初に滴下実験より求めた温度を目安として一定温度 (180、200、240℃) まで昇温させ、2分間でNO計の出力がゼロレベルまで低下するのを確認後、さらに500℃まで加熱し出力がゼロレベルへ低下するまで待機することで両者の硝酸塩が分離測定できるかを確認した。以下の図35、図36に硝酸アンモニウムと硝酸ナトリウム混合粒子、硝酸アンモニウムと硝酸カルシウム混合粒子をそれぞれフィルタ捕集し、分解させた際のNO計出力の経時変化、200℃と完全分解のため500℃に設定した場合の温度プロファイルを示す。また、それぞれの出力における積算値から求めた質量濃度とそれぞれの硝酸塩で測定した値を示すことで分解ができるか検討した。
分離実験の1段階目の積算値として出力される硝酸アンモニウム単独で分離実験と同条件でNO出力を確認した。また硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムにおいても1−JET エアロゾルアトマイザー9302を用いてそれぞれ単独の結果を求めることで、分離実験の出力と比較することで分離が達成しているか確認した。その際の各比率を表3.4に示す。

表3.3 個々の硝酸塩粒子の質量濃度と2段階温度設定で同時に分析した際の比率
Figure 0006313609
図35より硝酸アンモニウムと硝酸ナトリウムの分離条件の検討において、初期温度を180℃に設定した場合、最初の硝酸アンモニウムと考えられるものの出力値が極端に少なく、この温度条件では分離できないことがわかる。240℃設定の場合、最初の出力値が予測範囲よりも超えてしまったため、残留していた硝酸ナトリウムが分解されてしまった可能性がある。表3.3より硝酸ナトリウム、硝酸カルシウムどちらにおいても初期段階温度を200℃に設定し、最終段階温度を500℃にした場合、個々の発生量と分離により定量された硝酸塩成分の質量濃度比がほぼ一致し、硝酸塩成分の分離同定が確認できた。
実大気硝酸塩粒子分析
実験の概要
連続測定可能な試作装置を用いて、実大気中の硝酸塩粒子の濃度測定を行った。測定場所は東京都新宿区の東京ダイレック本社で、この地点は交通量の多い外苑西通沿道に面し、北方向約800mに交通幹線国道20号線、南方向約500mに首都高速道路4号線が走っている。実験環境の外観を図37に示す。
図37において、最上段の装置が分析部であり、フィルタで粒子を捕集する。中段の装置でデータ処理等装置の制御をおこない、最下段にはNO計を配置した。サンプリングは地上10mの部屋から室外に流路を伸ばし、外にPM2.5用のサイクロンをとりつけた。
1段階温度シーケンスによる実大気測定
シーケンスはサンプリング時間40分、分析時間10分、待機時間10分でおこなった。PM2.5の質量濃度は環境省大気汚染物質広域監視システムのそらまめ君より、測定地点に近接する東京都新宿区内藤町にある国設新宿のデータを得た26)。この際の加熱温度は500℃のみで行った。
ナイトレートモニター8400Nの比較では、試作装置が過大評価側に測定している時間もあるが、ほぼ同様の傾向を示した。また、PM2.5の質量濃度と比較したとき、硝酸塩の占める割合が顕著に検出されているところもあったが、ほぼ20%〜30%の割合を示しており、傾向としては合っていた。よって測定結果に妥当性が見られると考える。ナイトレートモニター8400Nの結果とも傾向が合い、ほぼ同じ値を示した。しかしながら、1月20日の0時頃に試作装置濃度はナイトレートモニター8400Nの測定結果よりも2倍程度過大評価になっている。
2段階温度シーケンスによる実大気測定
2段階温度シーケンスで測定する際、35分サンプリング、15分分析、10分待機のサイクルで測定した。場所は1段階測定と同様に新宿区の東京ダイレック株式会社本社でおこなった。今回大気用自動連続測定装置に用いた加熱器は試作装置に用いていたものと異なり、設定温度に対し、オーバーシュートしない改良器を用いた。試作装置に用いた加熱器の温度を200℃に設定した際、硝酸塩成分の分離同定が可能であることが分かったが、その際温度がオーバーシュートして300℃まで上昇してしまうことを確認したため、300℃に設定して1段階目の分離を検討した。この際、フィルタ上に硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム溶液を滴下し、この加熱器を用いて300℃設定で実験した際、硝酸アンモニウム溶液のみが分解された。他の溶液では分解されず、NO濃度は検出されなかった。よって温度は1段階目を300℃、2段階目を500℃で測定した。図39に成分別硝酸塩濃度の連続測定結果、図40に国設新宿のPM2.5濃度、改良器の総硝酸塩濃度(図39で示された濃度の和)、8400N測定器による硝酸塩濃度の結果を示す。
図39より、温度を2段階に設定した場合、硝酸アンモニウムは多いときで総質量濃度中の70〜80%検出されており硝酸アンモニウムがPM2.5の硝酸塩の主要成分であることがわかる。一方、図40をみると2月1日の12:00〜2月2日の12:00までは2つの硝酸塩測定装置の間に良い相関を示したものの、2月2日の12:00以降は500℃設定の1サイクルで測定したときよりも大幅に8400Nナイトレートモニターとずれが生じてしまった。温度を2段階にすることによってずれが生じたため、原因を確かめる必要がある。また、環境について考察すると、高速道路や交通量が多く面しているため大型車などによるNO排出があり、高いときで180ppb近くと環境基準を大幅に超える濃度が検出された。この際、硝酸塩粒子の前駆体であるNO濃度が高いときに硝酸塩濃度が高く検出される傾向を示した。これはNOが硝酸塩粒子の生成を促している可能性があると考えられ、高い時では20μg/m近く検出し、硝酸塩成分のみでPM2.5の割合の中で大きい値を示した。
本例では、大気エアロゾルのPM2.5中の硝酸塩粒子の既存装置の問題点を改善したNO、NO 粒子同時連続測定装置を新規に開発し、性能評価を行った。評価項目として干渉成分、標準硝酸塩、硝酸塩テストエアロゾル、実大気測定に分類し、それぞれにおいて得られた結果を列挙していく。
(1)干渉成分等の確認
硝酸塩粒子計測における干渉成分の一つとされている硫酸アンモニウムの熱分解や水分の存在による光化学発光法への影響は検出されなかった。また、試作装置の大気サンプリングに用いる、デニューダーによる窒素酸化物等の干渉成分の除去効率はほぼ100%を示した。加えて、現段階の結果より大気中NOレベルが16ppbであった場合17日間程度の持続期間を示した。装置の測定精度を下げる干渉等の問題は確認されなかった。
(2)標準硝酸塩試料測定評価
既知濃度の硝酸塩溶液を滴下し、熱分解させることで確認した硝酸塩溶液のNO変換率は硝酸カリウム、硝酸ナトリウムでほぼ100%、硝酸カルシウムでは96%、硝酸アンモニウムでは88%の変換効率を示した。また、硝酸アンモニウムと硝酸カリウムの混合試料分離は加熱器におけるオーバーシュートがあったが、初期段階温度を200℃設定、最終温度を500℃設定にした場合のみ、1:1の量で滴下している成分が1:1の割合で出力された。このことから硝酸アンモニウムと他硝酸塩の成分との分離が可能であることが示された。
(3)テスト粒子計測評価
エアロゾルアトマイザーにより硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウムのテスト粒子を発生させ、硝酸塩を測定することのできる既存装置であるナイトレートモニタ8400N、フィルタ捕集+IC分析、TEOMによる比較を行ったところ、試作装置側に過大評価が見受けられたが相関関係があることが確認できた。また、エアロゾルでの硝酸アンモニウムと他硝酸塩成分との分離同定を行った際には標準試料での分離のときと同じ200℃設定と500℃設定での分離が可能であり、個々の発生量と分離により定量された硝酸塩成分の質量濃度比がほぼ一致した。
(4)大気中硝酸塩粒子連続測定による評価
温度1段階設定において、ナイトレートモニター8400Nと大気中の硝酸塩の質量濃度を測定したところ、値が一致した。また、2段階測定において、設定温度300℃と500℃に対応して質量濃度は分離出力されていたものの、300℃、500℃の総濃度とナイトレートモニターとの間に差異がみられた。
今後の課題として、製品化を目標とした場合、分離条件のより詳細な検討と確証を得るとともにサンプリング、分析、待機のプロセスにおける時間設定の最適化による分解能の改善を目指す。
また、大気連続測定における、他測定装置との比較や過大評価などのずれの原因究明などを行うことも必要となる。
さらに2段階測定におけるナイトレートモニタ−との誤差原因をつきとめ、解決することが必要である。
本発明の硝酸塩粒子測定装置及びその測定方法によれば、硝酸塩の種類別による分離同定ができることとなり、これにより生成機構の解明にもつながるとともに、その対処方の研究や施行にすこぶる有意義なものである。
1 捕集分析部
2 捕集分析部NO計部
3 吸引ポンプ
4 デニューダー
5 ゼロフィルタ
6 加熱器
11 捕集フィルタ
12 捕集フィルタの下流側の部位

Claims (5)

  1. 試料大気に含まれるエアロゾルを捕集フィルタで捕集するとともに捕集されたエアロゾルを分析する捕集分析部と、窒素酸化物を測定するNOx計部と、前記捕集分析部に連通する吸引ポンプと、装置を制御し濃度換算を行う制御部と、を備えた硝酸塩粒子測定装置において、
    前記捕集分析部の上流側にデニューダー及びゼロフィルタを設け
    前記捕集分析部と前記NO 計部との間の流路に第1の流路開閉用の電磁バルブを設け、この電磁バルブの上流側には、第2の流路開閉用の電磁バルブを備えた吸引ポンプへの流路を接続するとともに、当該第1の電磁バルブの下流側には、第3の流路開閉用の電磁バルブを備えたNO 濃度測定用の試料大気入口流路を接続し、
    前記捕集フィルタの下流側の部位を加熱する加熱器を前記捕集分析部に連係して設け、
    前記加熱器は、前記捕集フィルタの下流側の部位を少なくとも140℃乃至600℃の範囲で段階別に加熱設定可能に設けられており、
    これにより、前記加熱器による設定温度を、人為発生源に由来する硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うための低温段階と自然起源に由来する硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うための高温段階とに設定可能に構成して、硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うようにしたことを特徴とする硝酸塩粒子測定装置。
  2. 前記試料大気を前記デニューダーの上流側から前記吸引ポンプで吸引して前記捕集フィルタにエアロゾルを捕集する捕集ラインと、前記捕集フィルタを加熱器で加熱して前記捕集されたサンプルのNOx濃度を前記NOx計部で計測する分析計測ラインと、前記捕集分析部と前記NOx計部との間に、試料大気の入口流路を設けて当該試料大気のNOxを前記NOx計部で計測する計測ラインと、を備えるとともに、これら3ラインの流路が、前記第1乃至第3の電磁バルブにて択一的に切り替えられることを特徴とする請求項1記載の硝酸塩粒子測定装置。
  3. 前記デニューダー及びゼロフィルタ、前記捕集分析部、並びに、前記加熱器を備えた測定ラインを2系統設け、これらを前記NO計部に接続したことを特徴とする請求項1記載の硝酸塩粒子測定装置。
  4. 請求項1記載の装置を用いて行う硝酸塩粒子測定方法であって、前記デニューダーを経由したエアロゾルを前記捕集フィルタで捕集し、前記加熱器により温度を低温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行った後、前記加熱器により温度を高温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行うことを特徴とする硝酸塩粒子測定方法。
  5. 前記デニューダー及びゼロフィルタ、前記捕集分析部、並びに、前記加熱器を備えた測定ラインを2系統設け、これらを前記NO計部に接続したものを用い、前記デニューダーを経由したエアロゾルを前記捕集フィルタで捕集し、前記加熱器により温度を低温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行った後、前記加熱器により温度を高温段階に設定して硝酸塩粒子の化学形態分離測定を行う場合に、一方の測定ラインで行うサンプリング及び分析と、他方の測定ラインで行うサンプリング及び分析を、時系列的に異ならしめて行うことを特徴とする請求項4記載の硝酸塩粒子測定方法。
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