JP6308554B2 - 誘電体薄膜 - Google Patents

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本発明は高温でも安定して動作する誘電体薄膜に関し、特に誘電体薄膜中のBiが拡散して表面に析出することを防止するための組成及び構造に関する。
SiC素子等の高温で動作可能な半導体素子の研究・開発が進められているが、このような半導体素子を使用した回路中あるいは半導体素子中に組み込んで使用できる、高温環境下で使用可能なキャパシタ用材料が求められている。高温用半導体素子の一つの典型的な用途として自動車分野がある。自動車用の半導体は単に高温環境下で動作できればよいだけではなく、自動車が外気に直接触れる環境下で使用されることから、極寒地域でもエンジンが起動したら直ちに走行を開始する場合があることを考えると、そこで使用される半導体回路あるいは集積回路は−40℃程度から正常に動作することが求められる。一方、例えばエンジン制御用高温センサの直近に設置される信号処理回路に使用される場合には高温側で400℃までの動作が求められる。すなわち、高温用半導体を使用した回路あるいはその集積回路は用途によっては−40℃〜400℃の広い温度範囲で正常に動作することが求められる。あるいはハイブリッド自動車や電気自動車で使用されるスナバ回路でも高温側が250℃程度の温度範囲での動作が求められる。更には、民生用途を考えると、メンテナンスなしでも長期間に渡って当初の特性を維持して安定動作することも必要となる。
従来市販されてきたキャパシタは低温側ではともかく、400℃もの高温で使用可能なものはない。例えばBaTiO系の市販品の積層セラミックスキャパシタの使用温度範囲は−55℃〜150℃程度であり、タンタルキャパシタでも市販品の使用温度範囲は−55℃〜175℃程度しかない。
近年、BaTiO−Bi(Mg,Nb)O(以下、BT−BMNと略称することがある)(特許文献1)等の高温でも高誘電率を維持する材料が開発された。また、類似組成の誘電体BaTiO−Bi(Mg0.5Ti0.5)Oが非特許文献1及び2で報告されている。ただし、この材料はそのままでは温度による誘電率変化が大きいため、これにTaを添加することでこの問題に対処することが考えられる。BT−BMNにTaを1.5重量%及び3重量%添加した材料の室温から400℃までの100kHzにおける比誘電率の変化を図1に示す。図1から明らかなように、Taを1.5重量%添加した材料では([測定温度範囲内での最大誘電率]−[測定温度範囲内での最小誘電率])/[測定温度範囲内での最大誘電率]×100%で定義される誘電率変化率Δεは、温度範囲が室温(以下、RT)〜400℃で33%、90℃〜400℃で10%と、かなり大きくなる。一方、Taを3重量%添加した材料(実施例の項に示した比較例の誘電体薄膜)では、誘電率変化率ΔεはRT〜400℃で23%及び60℃〜400℃で10%とかなり改善される。しかしTaを3%含む材料の誘電率は図1からわかるようにTaが1.5重量%の場合に比べて20%程度低下するだけではなく、400℃の手前付近からの誘電率下落が目立つ。誘電率変化率は想定されている使用温度範囲内で5%以下になることが望ましく、また誘電率の絶対値もできるだけ大きいことが望ましいが、この点で図1に示した結果は十分なものであるということはできない。更には、この材料中のBiが熱で拡散して表面で酸化ビスマスとして析出することにより、キャパシタ作成時の加熱やその後の高温環境下の使用によって組成が変化し、これにより誘電率の低下やその他の物性変化が起こるという問題がある。
本発明の課題は、誘電体中のBiが熱拡散して表面に析出することを防止することにある。
本発明の一側面によれば、Biを含む誘電体層とBiの拡散を抑止する元素を含むバリア層とを交互積層した誘電体薄膜が与えられる。
ここで、前記Biの拡散を抑止する元素はTa、Ti、Sr,Hf、Zr、Y及びMnからなる群から選択された少なくとも一であってよい。
また、前記Biの拡散を抑止する元素はTaであってよい。
また、前記誘電体層を構成する誘電体はBaTiO−Bi(Mg,Nb)Oであってよい。
また、前記誘電体層におけるBi過剰濃度が5〜8重量%であってよい。
また、前記バリア層のTa含有量は前記バリア層中にTaの構造を形成しない濃度であってよい。
また、前記バリア層は前記Biを含む誘電体層と同じ誘電体にTa化合物を添加したものであってよい。
あるいは、前記バリア層は厚さが0.4nm以下のTaの層を含んでよい。
あるいは、前記バリア層は厚さが0.4nm以下の金属タンタルの層を含んでよい。
本発明によれば、Biを含む誘電体材料中でのBiの拡散及び表面での析出を防止できるので、キャパシタ特性の安定化に有効である。
従来技術の問題点を説明する図。 リラクサ強誘電体材料の構造を模式的に示す図。 BT−BMNのBi濃度による強誘電性の評価を行った結果を示す像。 BT−BMNのBi濃度による比誘電率及び強誘電性の変化を示す図。 BT−BMNへのTa添加量による比誘電率及び誘電率変化率の変化を示す図。 本発明及び本発明との比較の対象とする誘電体膜の構成及びこれらを誘電体として使用したキャパシタの等価回路を概念的に示す図。 本発明の実施例及び比較例の成膜に使用したレーザーアブレーション法を実施する装置の概念図。 本発明の実施例及び比較例の成膜後に行ったポストアニールの温度プロファイルを示す図。 基板、電極等を含めた比較例の構造及び成膜条件を示す図。 基板、電極等を含めた実施例の構造及び成膜条件を示す図。 本発明の実施例の誘電体薄膜の温度−誘電率特性を比較例の誘電体薄膜と比較する図。 本発明の実施例及び比較例についてX線光電子分光を行うことで測定した試料表面付近のBi結合スペクトルを示す図。 (a)本発明の実施例のTa積層添加試料及び比較例のTa均一添加試料の表面〜深度7nm程度の深さまでのBa結合スペクトルの強度(拡散が起こらない組成)に対するBiの強度比をプロットした図。(b)比較例のTa均一添加試料についてBiとBT−BMNとの強度比の角度依存性をプロットした図。
先ず、本発明が適用される誘電体材料についての基本的な説明及びそのような誘電体中でのBiの作用・意義について説明する。更に、そのような誘電体にTaを添加することによる効果についても説明する。
原子レベルで構造不均質性及び電荷不均質性を導入することによって、自由エネルギーの揺らぎに起因する巨大な誘電率を有機させるリラクサ強誘電体材料が注目され、研究・開発が進められている。リラクサ強誘電体材料の構造を図2に模式的に示す。ここで欠陥複合体とは電荷不均質性と構造不均質性とを併せ持つ欠陥種であり、数百原子集団で構成される強誘電分極領域である。欠陥複合体は例えばBa(Mg2+,Nb5+)Oに由来する分極ナノ領域(Polar Nano Region、PNR)である。
リラクサ強誘電体材料では組成により構造・電荷の不均質性が左右される。特に、Biは不均質性を誘発する点でリラクサ強誘電体材料の成分として有効なものであるが、一方ではBiは組成変動が大きく、これがリラクサ強誘電体材料の誘電率や高誘電性の増減に大きな影響を与える。例えば、誘電体キャパシタでは強誘電性は最小にして大きな誘電率を得たいという要請がある。これは、強誘電性の減少は従来のキュリー温度前後の特性変化を抑制し、誘電率の温度変化の改善が期待できるからである。
Bi組成(ターゲット仕込み組成)に対する強誘電性及び誘電率の評価を行った。
先ず、強誘電性評価の結果を図3に示す。この評価は具体的には非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を用いて行った。強誘電性評価対象の試料−カンチレバー間に1Vの電圧を印加しながら試料をスキャンした。この時、スキャン速度を変化させることで電圧に追随する強誘電成分を画像化した。ここで図3中の(a)〜(d)中のほぼ中央付近に描かれている黒丸の内部にある正方形領域(5μm角)については、この正方形領域以外の全体(100μm角)に比べて20倍の時間をかけて(つまり、1/20の速度で)スキャンした。この結果、強誘電成分が大きいほどこの残留分極成分が大きくなるため正方形領域で検出される電圧が大きくなり、画像中では当該領域がより明瞭なコントラストで観察される。図中の(a)〜(d)はBT−BMN薄膜作製用ターゲットのBi成分の組成がそれぞれ化学量論組成、5重量%のBi過剰、7重量%のBi過剰及び10重量%のBi過剰の場合の像を示す。この結果、このターゲット中のBi組成が化学量論組成から大きくなるにつれて強誘電成分が小さくなり、7重量%Bi過剰組成付近で強誘電性が最小となることが確認された。BT−BMN薄膜を誘電体キャパシタに使用する場合には、Bi過剰濃度が5〜8重量%の領域にあれば、強誘電性が十分小さい誘電体として扱うことができると判断される。
次に、BT−BMNのBi過剰濃度に対する比誘電率の変化を調べて、図4のグラフにプロットした。また、上述のBT−BMN薄膜を誘電体キャパシタ用に使用する場合に強誘電性が十分小さい誘電体として扱うことができるBi過剰濃度範囲を「誘電体層」としてこのプロット上に表記した。このグラフから、BT−BMNは誘電体キャパシタとしての使用に適するBi過剰濃度領域において300程度の充分に高い比誘電率を示すことが判る。
ところが、先に述べたように、誘電体中のBiは組成変動が大きいという問題がある。具体的にはキャパシタの製造プロセスや高温環境下での使用中にBiが拡散・析出することにより、誘電体中のBi組成が変化し、これにより静電容量等の特性が変化してしまう。このようなBi拡散・析出を阻止するために誘電体中に添加すべき材料を探索するため、本願出願人が公開している金属偏析予測システム(SurfSeg)を使用して解析を行った。なお、SurfSegはインターネット上においてhttp://surfseg.nims.go.jp/SurfSeg/menu.htmlでアクセス可能である。また、SurfSegが行う解析の原理等は本願発明とは直接関係しないのでここでは説明しないが、必要に応じて非特許文献3、4を参照されたい。
この解析は、金属Biの表面を他の金属層で覆ったものを酸素雰囲気で熱処理を行うという単純化されたモデルに基づいて行った。また、金属Biの表面を覆う金属を、Pt、Ru、Ta、Ti、Srとして解析した。その結果、表面を覆う金属層としてPtを使用した場合にはBiは容易に金属層中を拡散して表面に析出するが、Ruの場合にはPtに比べて拡散が少なく、Ta、TiまたはSrで表面を覆った場合には拡散を充分に抑止できることが判った。また、これらの金属に代えて、Hf、Zr、YまたはMnを使用することもできる。以下では、使用すべき金属の選定に当たって、母体材料であるBT−BMNには含まれず、また酸素欠損を抑制するという性質を有するものが好ましいという観点から、Taを選択して誘電体薄膜を作成した。Ta以外の金属であっても、Biの拡散を抑止できるものであればTaに代えて使用することができる。なお、以下で説明する実施例では母体材料としてBT−BMNを使用したが、Biを含む誘電体であってBi組成の変化がその電気特性(誘電性や強誘電性)に影響を及ぼす材料であれば当然Bi拡散・析出の抑止効果が発揮されるので、BT−BMNに代えてこのような誘電体を使用しても本発明の効果が得られる。本発明に使用できる誘電体としては、これに限定するものではないが、BaTiO−Bi(Mg,Zr)Oがある。また、高温動作が求められないのであれば、SrBie2Ta(SBT)、(Bi,La)Ti12(BLT)等(非特許文献5、6)も使用できる。
Taは結合力の強い元素であるため、これを誘電体中に添加することによって、酸素欠陥の改善及びBiの拡散の抑制という効果が得られる。ただし、BaTiO構造中のTiをTaが置換することから、過剰なTa添加は材料の誘電率の低下を招く。図5からわかるように、BT−BMNへのTa添加量が増加するにつれて誘電率が低下することが判る。また、Ta添加量を7重量%まで多くすると、誘電率変化率が大きく悪化することもわかる。また、非特許文献5によれば、SrBiTi15の比誘電率200前後であるのに対して、SrBiTaの比誘電率はこれよりもかなり低い50前後となる。
これに加えて、Ta添加はBiの拡散を抑制するがBiを完全に固定できるわけではないので、少量のTaを均一添加した膜では膜厚方向にBiの組成傾斜が形成される。より具体的に言えば、先ずTa添加なしのBi含有誘電体(BT−BMN等)薄膜ではその内部でのBi拡散により、図6(a)左側に模式的に示すように、BiがBiの形で薄膜表面(図6(a)では上側)に析出する。これにより、誘電体中ではBi欠損によって誘電率が低下する。また、誘電体表面に形成されるBi膜は低誘電率である。従って、このような誘電体薄膜を使用したキャパシタの等価回路は、図6(a)右側に示すように、低誘電率のBi層を誘電体とするキャパシタとBi欠損により誘電率の低下したBT−BMNを誘電体とするキャパシタの直列回路となり、キャパシタ全体の容量は大きく低下する。
これに対して、図6(b)左側に模式的に示す、BT−BMN中にTaを均一に添加した誘電体薄膜では、Taの添加によってBiの拡散が抑制されるが完全には阻止されないため、Biの表面析出には図6(a)に示したものよりは薄いものの、やはりBi層が生じる。また、誘電体薄膜内部ではBi組成傾斜による膜厚方向への誘電率分布が生じている。これにより、ここに示す誘電体薄膜を使用したキャパシタの等価回路は、図6(b)の右側に示すように、低誘電率のBi層を誘電体とするキャパシタ(図6(a)の等価回路中の対応するキャパシタよりは大容量)と、Bi層から離れた位置にあってBi濃度が適切な濃度よりも低下したために誘電率が低下したBT−BMN層を誘電体とするキャパシタと、両キャパシタの間にありBi濃度が高いBT−BMN層を誘電体とするキャパシタとの直列回路となる。従って、図6(b)の誘電体薄膜を使用したキャパシタは、図6(a)の場合よりは軽微であるが、それでもある程度の容量の低下は免れない。
本発明では図6(b)を参照して説明したような、Ta均一添加の場合にも依然として現れるBiの誘電体表面への析出及び誘電体内部でのBi組成傾斜を充分に抑止するため、母体材料であるBT−BMNの薄膜とTaを多く含有する層(バリア層)とを積層した構造(Ta積層添加構造、Ta不均一添加構造とも呼ぶ)を採用する。この構造の場合には、BT−BMN中のBiの拡散はこのTaに富んでいるバリア層で抑止される。このようにして構成された誘電体薄膜はその膜厚方向に複数の繰り返し単位に区切られていているので、一つの繰り返し単位内でBiの拡散が起こっても、拡散距離が短く制限されるために、誘電体表面まで移動して析出できるBiの総量はTa均一添加の場合に比べて大幅に少なくなり、また同じ理由で、各繰り返し単位内でのBi組成の最大値と最小値の差も少なくなって誘電率変化も抑制される。上で説明した特徴は、バリア層中のTa添加濃度が高いほど、また繰り返し単位の厚さを薄くするほど(つまり単位厚さあたりの繰り返し数を多くするほど)、顕著になる。従って、このように構成された誘電体薄膜を使用したキャパシタの等価回路を考えてみると、図6(b)右側の等価回路中に現れるようなBi層や低誘電率BT−BMN層を誘電体とする小容量のキャパシタは実質的に現れず、その等価回路は図6(c)右側に示した、実質的には高誘電率BT−BMNを誘電体とする大容量のキャパシタだけが直列に接続されたものとなる。これら三種類の構造及びそれらを誘電体として使用したキャパシタの等価回路の比較を以下の表1にまとめて示す。
なお、物質が原子で構成されている以上、単位厚さあたりの繰り返し数を無限に増加できるわけではないが、少なくとも、バリア層の厚さが1nm程度まで薄くしても上で説明した効果については大きな変化はない。更には、これよりも大幅に薄くして母体材料の格子定数(BT−BMNの場合には0.4〜0.5nm)未満としてもある程度の効果が維持される。また、バリア層中のTa濃度については、BT−BMNを使用した場合にはそのぺロブスカイト構造を維持するため、バリア層中にTaの構造ができない成分組成であればよい。
あるいはバリア層中にTaの構造ができてしまう組成とした場合には、バリア層の厚さを0.4nm以下とすることにより、Ta構造が実際にバリア層中に形成されて、低誘電率のTa(誘電率20程度)を使用した低容量キャパシタが直列に入る等価回路を与える状態となるのを阻止する。このバリア層の厚さの上限0.4nmは以下のようにして定めた。特許文献2において、Taの格子定数は以下のとおりであると報告されている:
・斜方晶β相Taの格子定数はa=0.6198nm,b=4.029nm,c=0.388nm。
・六方晶δ相Taの格子定数はa=0.362nm、c=0.387nm。
本発明の誘電体膜の作成条件では通常はδ相はできないと考えられるので、この相については考慮の必要がない。β相ではc=0.388nmであるが、C軸配向で成長する条件を今回の系で再現することも困難であるため、BT−BMNの格子定数を超える厚さでなければ良いとするのが妥当であると考え、上記の上限値を設定した。
また、バリア層を形成するために使用する所望組成のターゲット材料が準備できないなどの事情がある場合には、母体材料とTaとの極薄層を交互積層することによりTa不均一添加を実現することもできる。この場合、Ta層が厚いとこれによって母体材料の結晶構造が維持されなくなるという問題があるので、ここでも上記極薄Ta層をそれぞれ0.4nm以下とする。更には、この層は必ずしもTaに限定されるものではなく、例えば金属Taの極薄層を使用することもできる。金属Taの極薄層を使用した場合、この層の周囲にはBT−BMN由来の酸素が存在している状態なので、層中のTaは容易に酸化されると考えられる。このため、上記と同様にTaが隣接するBT−BMNとは異なる誘電体として機能しない厚さと同程度の0.4nm以下の厚さとするのが妥当である。
また、誘電体薄膜の最上層と最下層は母体材料であってもまたバリア層であってもよいが、一般には、キャパシタとして使用する際に電極に接触する最上層、最下層はバリア層であった方が安定性の面で好ましい。
以下で、本発明の実施例を説明するが、当然ながら以下の実施例は単なる例示であり、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に基づいて定められるものであることに注意されたい。
[誘電体薄膜の作成]
比較例としてのTa均一添加誘電体薄膜の試料及び本発明の一実施例のTa積層添加誘電体薄膜の試料を作成するため、先ず図7に概念的に示す装置を使用して、レーザーアブレーション(PLD)法(物理蒸着法)により所要の組成を有する膜を基板上に形成した。この成膜条件を以下の表2に示す。
PLD法により成膜を行った後、高速熱処理装置(RTA装置)でポストアニールを実施した。ポストアニール条件は以下の通りである:
・雰囲気:O、1気圧
・温度:850℃
・熱処理時間:5分(温度プロファイルは図8)
・冷却は炉内、ガス雰囲気中で自然冷却
なお、ポストアニールは結晶性の向上による誘電率の向上を目的として行った。この実施例に使用した特定の製膜装置ではPLD製膜中の基板温度は最高で600℃程度であった。この温度では十分な結晶性(誘電率)が得られないため、ポストアニールを行うことで、結晶性の向上によって高い誘電率を実現した。なお、本実施例で作製した試料とは異なるが、別に行った実験では、基板温度510℃で製膜しただけでは誘電率250(100kHz)であったが、ポストアニールによって結晶性が向上し、誘電率が380(100KHz)まで向上した。
[比較例の組成・構造等]
比較例としてのTa均一添加誘電体薄膜の成膜に当たっては、以下の組成を有するセラミックスターゲットを使用した:
0.6BaTiO−0.4Bi(Mg2/3Nb1/3)O:7重量%Bi過剰(Bi過剰量をBi換算の重量%として表記。以下同様)、1.5重量%Ta添加(以下、1.5%Ta−BTBMNと称する)
基板、電極等を含めた比較例の構造及び成膜条件を図9に示す。図中で、1.5%Ta−BTBMN緩衝層は結晶構造制御のための層であって、本発明の趣旨には直接関係するものではない。また、本比較例の電気特性は1.5%Ta−BTBMN緩衝層を含んだ特性である。SrRuO下部電極層は誘電体層のターゲットに加えてSrRuOセラミックスターゲットをPLD装置内に導入し、誘電体層形成の前に作製した。また、上部電極は直径100μmのPt薄膜であり、ポストアニール処理後に金属マスクを用いてDCスパッタ法により形成した。図示の通り、誘電体層本体は1.5%Ta−BTBMN単一のターゲットを用いて形成された、Ta添加量も含めて一様な組成を有している。
[実施例の組成・構造等]
本発明の一実施例のTa積層添加誘電体薄膜の成膜に当たっては、以下の組成を有する三種類のセラミックスターゲットを使用した:
(1)0.6BaTiO−0.4Bi(Mg2/3Nb1/3)O:7重量%Bi過剰、3.0重量%Ta添加(以下、3%Ta−BTBMNと称する)
(2)0.6BaTiO−0.4Bi(Mg2/3Nb1/3)O:7重量%Bi過剰、(以下、BTBMNと称する)
(3)0.6BaTiO−0.4Bi(Mg2/3Nb1/3)O:7重量% Bi過剰、1.5重量%Ta添加(以下、1.5%Ta−BTBMNと称する)
基板、電極等を含めた比較例の構造及び成膜条件を図10に示す。1.5%Ta−BTBMN緩衝層、SrRuO下部電極層及び上部電極については比較例について説明した通りである。実施例の誘電体層本体は、比較例の単一の構造とは異なり、それぞれ2nm厚の3.0%−BTBMN層(バリア層)とBTBMN層とからなる厚さ4nmの一組の繰り返し単位が500回繰り返された構造を有している。この構造により上で説明したTa積層添加構造が実現されている。なお、実施例でも誘電体層本体のTaの平均濃度は(0重量%+3.0重量%)/2=1.5重量%となり、比較例と同じである。
なお、上記具体的な構成は一例を示すだけであって、これに限定する意図はない。例えば、上の例ではBTBMN層とバリア層とは同じ厚さ(2nm)を有しているが、この厚さは必要に応じて適宜選択でき、またこれら二種類の層が互いに異なる厚さであってもよい。薄膜全体の厚さも任意に設定できることは言うまでもない。
[誘電体薄膜の評価:電気的特性]
このようにして作製したバリア層入りの誘電体薄膜の実施例について、100kHz及び10kHzにおける誘電率をRTから400℃まで温度を変化させて測定した。また、同じ母体材料にTaを1.5%均一に添加して作成した比較例の誘電体薄膜についても同じ測定を行った。これらの測定結果を図11に示す。図11から明らかなように、同じ平均濃度(1.5%)であっても、実施例の誘電体薄膜では、Taを均一添加した誘電体薄膜がRT〜130℃の間に示す大きな誘電率変化が何れの測定周波数においても軽減されている。また、周波数による誘電率変化を高温端付近について検討すれば、Taを均一添加した比較例の誘電体薄膜が測定周波数10kHzの場合に示す急激な誘電率上昇が、実施例の誘電体薄膜の場合には全く現れない。更には、この10kHzの高温端誘電率急上昇を除けば、同じ誘電率を示すわずかな例外を除いて、何れの測定周波数でも実施例の誘電体薄膜の方がTaを均一添加した比較例の誘電体薄膜に比べて誘電率が高いことがわかる。すなわち、本発明に係る誘電体薄膜では、誘電率を低下させることなく、高濃度Taの均一添加の場合とほぼ同等の誘電率変化率特性を実現することができる。
更に、本発明に係るバリア層入りの誘電体薄膜では、タンタル添加量を1.5%〜7%まで変化させても、誘電率変化率は4%〜6%の良好な値を示し、この状態で誘電率を約360〜200の範囲で滑らかに変化させることができることがわかった。従って、本発明では、誘電率変化率を良好な範囲に維持しながら、広い範囲で誘電率を変化させることが可能となる。
[誘電体薄膜の評価:Bi濃度分布]
次に、X線光電子分光により、試料表面付近のBi濃度分布について本発明の実施例のバリア層入りの誘電体薄膜を比較例であるTaを均一添加した誘電体薄膜と比較し、本発明によるBiの拡散及び表面への析出の防止効果を調べた。
図12は図11に示す誘電率測定を行った試料(つまり、製膜→ポストアニール(850℃)→RT〜400℃までの温度サイクルを経た試料)についてX線光電子分光(X線はAlのKα線(1486.6eV))を行うことで測定した試料表面付近のBi結合スペクトルを示す。ここで、検出深さは試料表面から7nm程度である。図12(a)に示す均一Ta添加試料の測定結果では、BT−BMN(158eV付近)及びBi(159.5eV付近)のピークが確認できる。従って、均一Ta添加試料ではその表面付近にBiがBiの形で析出していることが確認できる。これに対して、図12(b)に示す本発明の積層構造を有する試料では、BT−BMN及び欠陥構造を含むTB−BMN(155.5eV)のピークが確認できるが、表面付近へのBiの析出を示すBiのピークは現れていない。
更に、試料表面の深さ方向の濃度変化を調べるため、図12と同じ試料に対して図12の測定と同じX線を照射し、X線光電子分光法の測定角依存性を測定した。なお、測定角は図13(a)の差し込み図に示す通り、試料表面への鉛直線からの角度とした。図13(a)に、試料表面〜深度7nm程度の深さまでのBa結合スペクトルの強度(Baは拡散が起こらない成分)に対するBiの強度比をプロットした結果を示す。これにより、試料最表面から深さ7nmまでの相対的な組成分布を評価することができる。良く知られているように、測定角が大きい測定結果ほど、深度が浅い領域の組成の影響が強く表れる。図13(a)に基づいて比較例(均一Ta添加試料)と実施例(Ta積層添加試料)とを比較すると、Ta均一添加試料の方がプロットの傾斜が大きく、しかも強度比の値も全測定角度範囲でTa均一添加試料の値の方が大きい。これにより、Ta均一添加試料の方が表面に向かってBi濃度が急激に上昇し、しかも少なくとも深さ7nmまでの範囲ではBi濃度自体も積層構造の試料よりも高い。更に、Ta均一添加試料についてBiとBT−BMNとの強度比の角度依存性をプロットした図13(b)からも、この試料ではその表面にBiが析出してBiとなっていることが判る。
以上、図12及び図13に基づいて説明したように、本発明に係るバリア層入りの誘電体薄膜は、Taを均一添加した誘電体薄膜で起こるBiの拡散及び表面への析出を抑制する効果を有することが確認できた。
以上説明したように、本発明の誘電体膜を使用することにより、高温半導体と共に使用することができるキャパシタの動作温度範囲の上限を大きく引き上げるだけではなく、この広い動作温度範囲内でのキャパシタとしての特性の変化を抑制することができるので、高温半導体の実用化、適用分野の拡大等に大きく交換するものと期待される。
特開2011−11963号公報 特開2000−216360号公報
H. Tanaka et al., J. Appl. Phys. 111, 084108 (2012). B. Xiong et al., J. Am. Ceram. Soc., 94[10] 3412-3417 (2011).06/061005/ M. Yoshitake et al., J. Vac. Sci. Technol. A 19, 1432 (2001). M. Yoshitake, Jpn. J. Appl. Phys., 51, 085601 (2012). K. Takahashi et al., Appl. Phys. Lett. 89, 082901 (2006). http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/20

Claims (9)

  1. Biを含む誘電体層とBiの拡散を抑止する元素を含むバリア層とを交互積層した誘電体薄膜。
  2. 前記Biの拡散を抑止する元素はTa、Ti、Sr,Hf、Zr、Y及びMnからなる群から選択された少なくとも一である、請求項1に記載の誘電体薄膜。
  3. 前記Biの拡散を抑止する元素はTaである、請求項1に記載の誘電体薄膜。
  4. 前記誘電体層を構成する誘電体はBaTiO−Bi(Mg,Nb)Oである、請求項1から3の何れかに記載の誘電体薄膜。
  5. 前記誘電体層におけるBi過剰濃度が5〜8重量%である、請求項4に記載の誘電体薄膜。
  6. 前記バリア層のTa含有量は前記バリア層中にTaの構造を形成しない濃度である、請求項3から5の何れかに記載の誘電体薄膜。
  7. 前記バリア層は前記Biを含む誘電体層と同じ誘電体にTa化合物を添加した、請求項3から6の何れかに記載の誘電体薄膜。
  8. 前記バリア層は厚さが0.4nm以下のTaの層を含む、請求項3から5の何れかに記載の誘電体薄膜。
  9. 前記バリア層は厚さが0.4nm以下の金属タンタルの層を含む、請求項3から5の何れかに記載の誘電体薄膜。
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