JP6303288B2 - 処理品積載用トレー - Google Patents

Description

本発明は処理品積載用トレーに関し、特に処理品と処理ガスの熱交換を効率的に行うことが可能な処理品積載用トレーに関する。

ガス焼入れ等においては冷却ガスによってトレーに積載された処理品を効率的に冷却する必要がある。従来はトレーについては冷却ガスを実質的に抵抗無く通過させる金網製やパンチングメタル製のものを使用し、冷却室内にフローガイドを設けて処理品に効率よく冷却ガスを当てるようにしている。

なお、特許文献１には熱風の流れを阻害しないような金網や多数の孔を設けたトレーが示されている。

特開２００７−３１５６７８

しかしフローガイドによって処理品に効率よく冷却ガス（処理ガス）を当てる構造では、処理品の形状が変わるとフローガイドを交換する必要があり、このため冷却室を開放して処理ラインを一旦停止しなければならず、処理品が頻繁に変わる場合には処理効率が悪いという問題があった。

そこで本発明はこのような課題を解決するもので、処理品の形状が変わっても熱交換ガスによる効果的な熱交換がなされるとともに処理ラインを停止する必要も無く、効率の良い操業を行うことが可能な処理品積載用トレーを提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本第１発明では、円形リング体の処理品を積載するトレーのトレー面上に当該トレー面の一定の領域を閉塞する遮蔽部を設け、当該遮蔽部は、前記トレー面上に前記円形リング体の処理品を載置した際にその内側に位置して当該処理品の内周に沿って前記処理品の冷却速度を向上させる一定幅のガス流通間隙を形成する円形体であり、前記ガス流通間隙は、熱交換ガス流を実質的に抵抗なく流通させるものである。

本第１発明によれば、遮蔽部を設けたことによって熱交換ガスが処理品の周囲に収束するように流通させられて処理品と効率的に熱交換する。処理品の形状が変わってもこれに応じてトレーの遮蔽部の形状を変更するだけであるから処理ラインを停止させる必要が無く、効率の良い操業を行うことが可能である。なお、遮蔽部がトレーを閉塞する領域は、トレー全体を通過する熱交換ガスの流速が低下することがないような範囲とする。本第１発明ではさらに、円形リング体の処理品の周囲に熱交換ガスが収束するように流通させられ、処理品と効率的に熱交換する。

本第２発明では、前記遮蔽部（２）は、板状又は円錐状である。

上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。

以上のように、本発明の処理品積載用トレーによれば、処理品の形状が変わっても形状に適した遮蔽をすることで熱交換ガスによる効率的な熱交換がなされるとともに、処理ラインを停止することなく効率の良い操業を行うことが可能である。

本発明の第１実施形態におけるトレーの平面図である。 冷却速度の計算モデルを示す図である。 冷却条件指数および冷却速度の変化を示すグラフである。 本発明の第２実施形態におけるトレーの平面図である。

なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。

（第１実施形態）
図１には処理品積載用トレーの平面図を示す。トレー１は全体が角形で、一定間隔で縦横に形成された格子によって複数の孔が形成されている。これにより、紙面垂直方向のガス流が実質的に抵抗無くトレー１を通過する。トレー１に載置される処理品Ｗは例えば図１中の鎖線で示すような外径Ｄ１，内径Ｄ２の円形リング体、より具体的にはギアである。図１では理解を容易にするために処理品Ｗを一定間隔Ｓ２をおいて４個載置した状態を示しているが、処理品Ｗの数はこれに限られものではない。

ここで、本実施形態では、トレー１上の、各処理品Ｗが載置される位置に直径Ｄ３の円形の板状遮蔽部２が設けられている。ここで、遮蔽部２は必ずしも板状とする必要は無く、例えば円錐状のものでも良い。このような遮蔽部２を設けたことにより、処理品Ｗを載置した状態で、処理品Ｗの内側に遮蔽部２が位置し、処理品Ｗの内周に沿って全周に一定幅Ｓ１のガス流通間隙１１が形成される。

このように処理品Ｗを配置したトレー１について、図１の領域Ｘについて図２の矢印で示すような熱交換ガスたる冷却ガスのガス流Ｆを想定して、処理品Ｗの測定ポイントＰにおける冷却条件指数と冷却速度を算出した。その結果を表１に示し、これをグラフ化したものを図３に示す。なお、算出に当たっては各部寸法値を、Ｄ１＝２２５（ｍｍ）、Ｄ２＝１２５（ｍｍ）、Ｄ３＝１１５（ｍｍ）、Ｓ１＝５（ｍｍ）、Ｓ２＝１０（ｍｍ）に設定した。

表１において、冷却ガスとしてＮ2ガスを使用し、その圧力を０．９（ＭＰａＧ）、速度を１３（ｍ／ｓ）にすると、遮蔽部２を設けないときの測定ポイントＰの冷却条件指数は１１．７（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は１６．１（Ｋ／ｓ）である（表１のａ欄、以下、表１中の各欄の符号は図３のグラフにおける各点に付した符号と対応している）。これに対して遮蔽部２を設けると、測定ポイントＰの冷却条件指数は１６．４（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は２０．０（Ｋ／ｓ）となって冷却効果が増大する（表１のｂ欄）。

このことはＮ2ガスの圧力を０．９（ＭＰａＧ）、速度を２６（ｍ／ｓ）にしても同様で、遮蔽部２を設けないときの測定ポイントＰの冷却条件指数は２３．４（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は２６．３（Ｋ／ｓ）である（表１のｃ欄）のに対して、遮蔽部２を設けると、測定ポイントＰの冷却条件指数は３２．８（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は３１．３（Ｋ／ｓ）となって冷却効果が増大する（表１のｄ欄）。

冷却ガスとしてＨｅを使用した場合にも、その圧力を０．９（ＭＰａＧ）、速度を１３（ｍ／ｓ）にすると、遮蔽部２を設けないときの測定ポイントＰの冷却条件指数が１８．７（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度が２０．８（Ｋ／ｓ）である（表１のｅ欄）のに対して、遮蔽部２を設けると、測定ポイントＰの冷却条件指数は２６．２（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は２７．８（Ｋ／ｓ）となって冷却効果が増大する（表１のｆ欄）。なお、ＨｅガスはＮ2ガスに比して冷却性能が良い。

Ｈｅガスの圧力を０．９（ＭＰａＧ）、速度を２６（ｍ／ｓ）にすると、遮蔽部２を設けないときの測定ポイントＰの冷却条件指数は３７．４（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は３３．３（Ｋ／ｓ）である（表１のｇ欄）のに対して、遮蔽部２を設けると、測定ポイントＰの冷却条件指数は５２．４（ＭＰａＧ・ｍ／ｓ）、冷却速度は４１．２（Ｋ／ｓ）となって冷却効果が増大する（表１のｈ欄）。

（第２実施形態）
図４に示すように、トレー１上で処理品Ｗの外側にも遮蔽部３を設けるようにすれば、さらに大きな冷却効果を得ることができる。すなわち、図４において、トレー１に載置されるリング状の処理品Ｗの内側に設けた第１実施形態と同様の遮蔽部２に加えて、処理品Ｗの外方を囲むようにさらに遮蔽部３を設ける。遮蔽部３は四角形状で中心部に円形開口３１が形成されており、遮蔽部３の内周と遮蔽部２の外周との間の空間に処理品Ｗが載置される。これにより、処理品Ｗの内周と外周に沿って全周にそれぞれ一定幅Ｓ１，Ｓ３のガス流通間隙１１，１２が形成される。

なお、本実施形態において、隣接する遮蔽部３の間には一定の間隙１４が形成してあるが、これはトレー１全体を通過する冷却ガスの流速を低下させないようにするためである。このように、遮蔽部を設ける場合にはトレー１全体を通過する冷却ガスの流速が低下することがないように、適当に間隙を形成する必要がある。

上記各実施形態において、遮蔽部を処理品の外方のみに設けるようにしても良い。また、処理品の形状はリング形に限られないことはもちろんである。さらに、上記実施形態はガス冷却の場合について説明したがガス加熱の場合にも適用することができる。

１…トレー、２，３…遮蔽部、Ｓ１、Ｓ３…ガス流通間隙、Ｗ…処理品。

Claims (2)

1. 円形リング体の処理品を積載するトレーのトレー面上に当該トレー面の一定の領域を閉塞する遮蔽部を設け、当該遮蔽部は、前記トレー面上に前記円形リング体の処理品を載置した際にその内側に位置して当該処理品の内周に沿って前記処理品の冷却速度を向上させる一定幅のガス流通間隙を形成する円形体であり、前記ガス流通間隙は、熱交換ガス流を実質的に抵抗なく流通させるものである処理品積載用トレー。
2. 前記遮蔽部は、板状又は円錐状である請求項１に記載の処理品積載用トレー。

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