JP6302253B2 - 加圧用回転体及びその製造方法、並びに加熱装置 - Google Patents
加圧用回転体及びその製造方法、並びに加熱装置 Download PDFInfo
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Description
特許文献1では、未架橋シリコーンゴムに発泡剤を混合し、発泡硬化することで空隙を形成している。特許文献2では未架橋シリコーンゴムにあらかじめ中空充填剤を混合することで、成形架橋後に空隙を形成している。また、特許文献3では、水を吸収させた吸水性ポリマーを未架橋シリコーンゴムに分散し、架橋時に脱水することで空隙を形成している。しかしながら、加圧部材の熱伝導の抑制は、先に述べたニップにおける小サイズの記録材の非接触領域の温度上昇をより加速させることとなる。
また、本発明の他の目的は、紙のサイズによらず、安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置用の加熱装置の提供にある。
熱定着装置に用いられる加圧用回転体であって、
基体と、
該基体の上に形成された、空隙を有する弾性層と、を有し、
該弾性層は、単一の層からなり、針状フィラーを含み、かつ、空隙率が、20体積%以上70体積%以下であり、
該弾性層の該加圧用回転体の回転軸に沿う方向の熱伝導率λ1が、該弾性層の厚み方向の熱伝導率λ2の6倍以上、900倍以下である加圧用回転体が提供される。
(1)未架橋のゴム、針状フィラー及び含水ゲルを含む、エマルジョン状態の弾性層形成用の液体組成物を、基体の長手方向に流動させて、該液体組成物の層を該基体の上に形成する工程、
(2)該液体組成物の層中の該未架橋のゴムを架橋させる工程、および、
(3)該未架橋のゴムが架橋してなる該層から該含水ゲル中の水分を蒸発させ、空隙を有する弾性層を形成する工程を有する加圧用回転体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、非通紙部の昇温が生じ難く、かつ、被加熱体を効率良く加熱することのできる加熱装置を得ることができる。
図1は本発明に係る加熱装置の断面図である。この加熱装置は、フィルム加熱方式の加熱装置であり、以下にその概略の構成について説明する。
ベースフィルムの材料としては、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、およびPES(ポリエーテルスルホン)等の樹脂材料や、SUS、Niなどの金属材料が用いられる。
表面層の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)および、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)等のフッ素樹脂材料が用いられる。なお、適宜、ベースフィルムと表面層の間に、シリコーンゴムからなる弾性層、接着層を設けても良い。
加圧用回転体4は、フィルム3を介してヒータ2の表面保護層2dに所定の加圧機構(不図示)により所定の加圧力で加圧されている。その加圧力に応じて加圧用回転体4の弾性層4bが弾性変形し、加圧用回転体4の表面とフィルム3の表面との間に未定着トナー画像の加熱定着に必要な所定幅のニップ部Nが形成される。
ニップ部Nに被加熱材としての記録材Pが導入され、記録材Pが挟持搬送されることにより、記録材Pが加熱される。ニップ部N内でのフィルム3と加圧用回転体4の接触時間は一般的には20〜80msec程度である。
フィルム3は、画像形成実行時に加圧用回転体4が矢印bの反時計方向に回転駆動されることにより、加圧用回転体4の回転に従動して矢印aの方向に回転する。
加圧用回転体4の層構成を以下に詳細に説明する。
弾性層4bは、単一の層からなり、基体4aの幅方向に配向している針状フィラー4b1と、空隙4b2とを有する。弾性層4bの厚みは所望の幅のニップ部を形成できれば特に限定されないが、2〜10mmが好ましい。弾性層4bは、好ましくは、付加硬化型シリコーンゴムの硬化物を含む。
離型層4cの厚さは、加圧用回転体4に充分な離型性を付与することができ、本発明に係る効果を損なわない範囲で任意に設定することができる、一般的には20〜50μmである。
本発明の加圧用回転体を構成する弾性層は、以下に記した特徴を有しているために、非通紙部昇温を抑制しつつ、立ち上がり時間の短縮を実現することができる。
本発明に係る弾性層は、加圧用回転体の回転軸(以下、単に「回転軸」ともいう)に沿う方向の熱伝導率λ1が、弾性層の厚み方向の熱伝導率λ2の6倍以上、900倍以下である。言い換えると、「λ1/λ2」(以下、この比を熱伝導率比αと記す)が6以上、900以下である。特には、熱伝導率比αが、6以上、335以下であることが好ましい。
弾性層の熱伝導率比αを上記の範囲内とすることで、弾性層の柔軟性が維持され非通紙部昇温の抑制効果と立ち上がり時間の短縮とが高いレベルで両立された加圧用回転体を得ることができる。
本発明に係る弾性層は、弾性層4bの表面から深さ500μmまでの領域の容積比熱が0.5J/cm3・K以上1.2J/cm3・K以下であることが好ましい。
該容積比熱が低い程、立ち上がり時間を短縮できるため、より好ましくは0.5J/cm3・K以上1.0J/cm3・K以下である。ニップ部において加圧用回転体の加熱部材による加熱は、通常極めて短い時間で行われる。具体的には、例えば、20〜80msec程度である。そのため、加圧用回転体が加熱部材から受ける熱の熱浸透距離は浅く、弾性層4bの表面から深さ500μm程度の範囲に留まっているものと考えられる。
そこで、弾性層の表面から深さ500μmまでの領域において、容積比熱を小さくすることで、定着フィルムから加圧用回転体への熱の浸透を抑え、フィルム3を効率良く温度上昇させることができる。その結果として、加熱部材の立ち上がり時間を短縮することができる。
上記領域の容積比熱を0.5J/cm3・K以上とすることで、上記領域における空隙量を過度に多くする必要がなく、上記領域に十分な強度を担持させることができる。また、上記領域の容積比熱を1.2J/cm3・K以下とすることで、加熱装置の立ち上がり時間のより一層の短縮効果を得ることができる。
容積比熱=定圧比熱×見かけ密度
弾性層4bのベースポリマーは付加硬化型液状シリコーンゴムを架橋硬化することで得られる。付加硬化型液状シリコーンゴムは、ビニル基等の不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン(A)と、Si−H結合(ヒドリド)を有するオルガノポリシロキサン(B)とを有する未架橋シリコーンゴムである。加熱等によりビニル基等の不飽和結合に対してSi‐Hが付加反応することで架橋硬化が進行する。
反応を促進する触媒として(A)には白金化合物を含有するのが一般的である。この付加硬化型液状シリコーンゴムは、本発明の目的を損なわない範囲で流動性を調節できる。なお、本発明においては、発明の特徴の範囲を超えない限りは、弾性層4b中に、本発明に記載されていないフィラーや充填材や配合剤が、公知の課題の解決手段として含まれていても構わない。
弾性層4b中における針状フィラー4b1の含有比率は、弾性層に対して5体積%以上とすることが好ましい。針状フィラーの含有比率が5体積%以上とすることで、加圧用回転体の回転軸に沿う方向の熱伝導率をより一層向上させることができ、非通紙部昇温のより一層の抑制効果を得ることができる。また、弾性層4b中の針状フィラー4b1の含有比率は、40体積%以下とすることが好ましい。針状フィラーの含有比率を40体積%以下とすることで、弾性層4bの容易に成形することができる。また、弾性層の弾性の過度の低下を避け得る。
針状フィラーとして、熱伝導率λが500W/(m・K)以上900W/(m・K)以下であるものは、非通紙部昇温をより有効に抑制することができるため好ましい。
このような材料の具体例として、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。針状のピッチ系炭素繊維は、より具体的な形状として、例えば、図3において直径Dが5〜11μm(平均直径)でありかつ長さL(平均長さ)が50μm以上1000μm以下程度のものが例示でき、工業的に容易に入手可能である。
この状態で25℃における体積を乾式自動密度計(商品名:アキュピック1330−1、株式会社島津製作所製)により測定する(以下、この体積をVaと記す)。その後、空気雰囲気下で700℃・1時間加熱することにより、針状フィラーが熱分解除去される。残った無機フィラーの25℃における体積を乾式自動密度計(商品名:アキュピック1330−1、株式会社島津製作所製)により測定する(以下、この体積をVbと記す)。これらの値を基に、次の式から針状フィラーの重量を求めることができる。
針状フィラーの体積(体積%)={(Va−Vb)/Vall}×100
なお、弾性層中の針状フィラーの長さの算術平均値は、以下の方法によって求めることができる。すなわち、弾性層から切り出したサンプルを窒素ガス雰囲気下、700℃で1時間焼成してシリコーンゴム成分を灰化させて除去する。こうしてサンプル中の針状フィラーを取り出すことができる。ここから、針状フィラーの少なくとも100本を無作為に選択し、それらの長さを光学顕微鏡を用いて測定し、その算術平均値を求める。
熱伝導率=熱拡散率×定圧比熱×密度
本発明に係る弾性層4b中には、配向した針状フィラー4b1と共に空隙4b2が存在している。
これは、発泡剤の発泡時に針状フィラーの配向が乱され、または、中空粒子が針状フィラーの配向を阻害してしまうためであると考えられる。すなわち、従来は、空隙を有する弾性層中において、加圧用回転体の回転軸に沿う方向に針状フィラーを配向させることは困難であった。そのため、弾性層の回転軸に沿う方向の熱伝導率を、弾性層の厚み方向の熱伝導率の6倍以上とすることができなかった。
すなわち、弾性層の形成に用いる液状組成物中において、水を吸収して膨潤した含水ゲルは、空隙形成手段として従来から用いられている中空粒子が有するような硬いシェルが存在せず、また、含水ゲル分散状態の径が10〜30μm程度であり、液体組成物の流動方向に沿う方向への針状フィラーの配向を阻害し難いためであると考えられる。
空隙率(体積%)=[{(Vall−(Мp/ρp+Va)}/Vall]×100
以下のような製造方法により、非通紙部昇温を抑制しつつ、立ち上がり時間短縮効果を得る加圧用回転体を得ることができる。
未架橋付加硬化型液状シリコーンゴムに上記の針状フィラー4b1と吸水性ポリマーに水を含ませてゲル状にした含水材料(以下、「含水ゲル」ともいう)とを配合する。付加硬化型の液状シリコーンゴム、針状フィラー4b1、および含水ゲルの所定の量を秤量し、遊星式の万能混合攪拌機など、公知のフィラー混合撹拌手段を用いて混合し、付加硬化型の液状シリコーンゴム中に微小な水が分散してなるエマルジョン状態の弾性層形成用液体組成物を調製する。
上記(i)で調製した液体組成物を、表面をプライマー処理した基体4aを配置した注型成形用型のキャビティに注入する。
このとき、針状フィラーが、加圧用回転体の回転軸に沿う方向、すなわち、加圧用回転体の幅方向に配向するように、キャビティ内に液体組成物を注入させる。これにより、針状フィラー4b1が回転軸に沿う方向に略配向し、回転軸に沿う方向の熱伝導率を効果的に高めることができる。
具体例を図7を用いて説明する。図7は、本発明に係る加圧用回転体の注型成形用型の、基体の長手方向に沿う方向の断面図である。図7において、71は、内面が円筒形状の成形型、74は、成形型71中に配置された本発明に係る加圧用回転体の基体(芯金)、72は、芯金74の外周面と成形金型71の内周面との間に形成されてなるキャビティ、73−1及び73−2は、キャビティ72と外部との連通路である。
そして、本発明に係る液体組成物を、流路73−1から注入し、キャビティ72内を液体組成物で充填する。その結果、液体組成物中の針状フィラー4b1は、液体組成物の流れに従って、基体の長手方向に沿う方向に略配向する。
そして、弾性層の熱伝導率比(λ1/λ2)は、例えば、注型成形法で弾性層を形成する場合、液体組成物中の含水ゲルの含有量、針状フィラーの長さおよび含有量、液体組成物の粘度、注型成形用型のキャビティへの注入速度などを調整することで制御することができる。具体的には、液体組成物中の含水ゲルの含有量を増加させることにより、弾性層中に多くの空隙を存在させることができ、弾性層の熱伝導率比(λ1/λ2)を小さくする方向に調整することができる。
液体組成物中の針状フィラーの含有量を増加させ、針状フィラーを長くし、かつ、回転軸に沿う方向により良く配向させることで、熱伝導率比を大きくする方向に調整することができる。
針状フィラーを回転軸に沿う方向によりよく配向させるためには、液体組成物の粘度を高め、液体組成物の注型成形用型のキャビティへの流入速度を速めることにより達成可能である。
次いで、液体組成物で充填されたキャビティを密閉し、水の沸点未満の温度、例えば、60〜90℃にて、5分〜120分加熱し、シリコーンゴム成分を硬化させる。
キャビティを密閉してあるため、液体組成物に分散されてなる含水ゲル中の水分は保持された状態でシリコーンゴム成分が硬化する。
一方、キャビティを密閉しない状態でシリコーンゴム成分を硬化させた場合、シリコーンゴム成分の硬化の過程において、含水ゲル中の水分が蒸発する。こうして得られる弾性層は、表面近傍、具体的には、表面から深さ500μmまでの領域に、空隙がない無発泡の領域(以下、「スキン層」と記す)が形成される。このスキン層は、弾性層の空隙が存在する部分よりも高密度であるため、容積比熱が高い。すなわち、前記した、表面から深さ500μmまでの領域が有することが好ましいとした容積比熱の値(0.5J/cm3・K以上1.2J/cm3・K以下)を達成し得ない。
そのため、加熱装置の立ち上がり時間の短縮化の観点からは、スキン層が形成されないようにすることが好ましく、そのためには、上記したように、エマルジョン状態の弾性層形成用液状組成物の硬化を、当該液状組成物中に微細に分散されている水を蒸発させることなしに行うことが好ましい。具体的には、上記したように、キャビティを密閉した状態でエマルジョン状態の液状組成物の硬化を行うことが好ましい。
金型を適宜、水冷や空冷を行った後、架橋硬化した液体組成物層が積層された基体4aを脱型する。
基体4aに積層した液体組成物層を加熱処理により脱水し、空隙4b2を形成する。熱処理条件としては、100℃〜250℃、1〜5時間が望ましい。
接着剤を用いて、弾性層4b上に離型層4cであるフッ素樹脂製チューブを被覆し、一体化する。接着剤を用いずに弾性層4bと離型層4cが層間接着する場合は、接着剤を用いなくても良い。なお、離型層4cは工程の最後に形成することは必ずしも必要ではなく、予め金型内部にチューブを配置してから液体組成物を注型する方法によっても離型層を積層できる。また、弾性層4bを形成した後に、離型層4cをフッ素樹脂材のコーティング等の公知の方法によって形成することも可能である。
まず、基体4aとしては、直径が22.8mm、長さが400mmの鉄製の芯金を用意した。
また、ポリアクリル酸ナトリウムを主成分として含み、かつ、スメクタイト系粘土鉱物を含む増粘剤(商品名:ベンゲルW−200U;株式会社ホージュン製)1質量部に対して、99質量部のイオン交換水を加えて十分に撹拌し、膨潤させ、含水ゲルを調製した。
離型層4cの材料として、厚さ50μmのPFAチューブ(グンゼ株式会社製)を用意した。
また、針状フィラー4b1としては、以下に示した4種類のピッチ系炭素繊維を用意した。
平均繊維直径:9μm
平均繊維長L:50μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、「100−05M」と記す。
平均繊維直径:9μm
平均繊維長L:150μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、「100−15M」と記す。
平均繊維直径:9μm
平均繊維長L:250μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、「100−25M」と記す。
平均繊維直径:9μm
平均繊維長L:1000μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、「100−01」と記す。
弾性層4bと基体4aの接着には「DY39−051」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)のA液およびB液、弾性層4bと離型層4cの接着には「SE1819CV」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)のA液およびB液を使用した。
未架橋の付加硬化型液状シリコーンゴムと、
該付加硬化型液状シリコーンゴムを基準として10体積%の針状フィラー「100−25M」と、
該付加硬化型液状シリコーンゴムを基準として50体積%の含水ゲルと、を混合し、万能混合撹拌機(商品名:T.K.ハイビスミックス2P−1、プライミクス株式会社製)を用いて撹拌羽根の回転数を80rpmとして、30分間撹拌し、エマルジョン状態の液体組成物を調製した。得られたエマルジョン状態の液体組成物のせん断速度40(1/s)における粘度は、50Pa・sであった。
針状フィラーの種類を表1に示したように変更した。また、液体組成物中における針状フィラー及び含水ゲルの含有量を、弾性層中の針状フィラー及び空隙の含有比率が表1に記載の値となるように適宜増加または減少させた。それら以外は、実施例1と同様にして実施例2〜8に係る加圧ローラを得た。
針状フィラー及び含水ゲルを混合しない以外は、実施例1に係る液状組成物と同様にして本比較例に係る液状組成物を調製した。この液状組成物を用いた以外は、実施例1に係る加圧ローラと同じ方法で比較例1に係る加圧ローラを得た。
こうして得られた比較例1に係る加圧ローラは、弾性層は針状フィラーを含まず、また、弾性層中には空隙が存在しない。
液体組成物として、液体組成物中の含水ゲルの量を、弾性層中の空隙の含有比率が10体積%となるように調整したものを用いた以外は、実施例3と同様にして実施例9に係る加圧ローラを作製した。
液体組成物として、未硬化の付加硬化型液状シリコーンゴムに対して針状フィラー「100−15M」を10体積%、及び、含水ゲルを10体積%混合した液体組成物を調製した。
この液状組成物を、内周に連続した開口を有するドーナツ形状のリング状ヘッドを用いて、基体の周面に、弾性層の厚みが3.6mmとなるように塗布した。
次いで、基体を水平に保持し、基体を中心にして回転させながら、赤外線ランプを用いて基体の周面の液状組成物の塗膜を50℃で72時間加熱して、液状シリコーンゴムを架橋させて弾性層を形成した。
その後、実施例1と同様にして弾性層上に接着剤(商品名:SE1819CV;東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いてPFAチューブを接着して、実施例10に係る加圧ローラを得た。
なお、上記の方法によって得られた弾性層の断面を光学顕微鏡で観察したところ、弾性層の表面から深さ250μmに至る領域には、空隙が存在しないソリッドな層(以降、「スキン層」ともいう)が形成されていた。
針状フィラーの混合量を15体積%とし、含水ゲルを含まない以外は、実施例9と同様にして液体組成物を調製し、実施例9と同様にして比較例2に係る加圧ローラを作製した。
実施例1〜10に係る加圧ローラの弾性層について、無作為に選択した3箇所において、厚み方向に切断し、切断面に表れている空隙のサイズを測定した。その結果、いずれの切断面においても、80個数%以上の空隙が、5〜30μmの空隙径を有していた。
加熱装置に搭載された加圧ローラの周速度を234mm/secとなるように調整し、ヒータ温度を220℃に設定した。加熱装置のニップ部NにトナーTを担持した記録材Pとして通紙した紙はレター(LTR)サイズ紙(75g/m2)である。この紙を、紙の長手方向が、加圧ローラの長手方向と平行になるように、連続して500枚通紙したときの非通紙領域(LTRサイズ紙が接しない領域)のフィルム3の表面の温度を測定した。本発明に係る非通紙部の昇温の抑制効果とは、一般的な弾性層を具備する比較例1の加圧ローラを用いた加熱装置より非通紙部の温度が低いことである。
各加圧ローラの評価結果(非通紙部温度、立ち上がり時間)を表1に示した。
また、各加圧ローラの弾性層中の空隙の含有比率、弾性層の回転軸に沿う方向の熱伝導率λ1、弾性層の厚み方向の熱伝導率λ2、弾性層の表面から深さ500μmまでの領域の容積比熱を、前記した方法により測定した。その結果を表1に併せて示した。
なお、実施例2および実施例3に関して、実施例3に用いた針状フィラーは、実施例2で用いた針状フィラーよりも長いものの、λ1は同程度の値となっている。これは、実施例3の弾性層は、空隙の量が実施例2の弾性層と比較して多いため、回転軸に沿う方向の長い針状フィラーを用いたことによるλ1の向上効果が減殺されているものと考えられる。
実施例10は、弾性層の表面から深さ250μmの領域に生じたスキン層により、弾性層の表面から深さ500μmまでの領域の容積比熱が実施例1〜8に係る加圧用回転体と比較して高くなっていた。そのため、実施例10に係る加圧ローラを用いた加熱装置の立ち上がり時間は、実施例1〜8に係る加圧ローラを用いた場合と比較して長かった。
その結果として、弾性層の該加圧用回転体の回転軸に沿う方向についての熱伝導率λ1と、該弾性層の厚み方向についての熱伝導率λ2との比(λ1/λ2)を、6以上900以下とすることができた。これにより、非通紙部昇温を抑制しつつ、立ち上がり時間の短縮を実現する加圧用回転体、及び、加熱装置を得ることができる。
2 ヒータ
3 フィルム
4 電子写真用部材(加圧用回転体)
4a 基体
4b 弾性層
4c 離型層
4bs 切り出しサンプル
4b1 針状フィラー
4b2 空隙
T トナー
P 記録材
N ニップ部
Claims (13)
- 熱定着装置に用いられる加圧用回転体であって、
基体と、
該基体の上に形成された、空隙を有する弾性層と、を有し、
該弾性層は、単一の層からなり、針状フィラーを含み、かつ、空隙率が、20体積%以上70体積%以下であり、
該弾性層の該加圧用回転体の回転軸に沿う方向の熱伝導率λ1が、該弾性層の厚み方向の熱伝導率λ2の6倍以上、900倍以下であることを特徴とする加圧用回転体。 - 前記弾性層の前記加圧用回転体の回転軸に沿う方向の熱伝導率λ1と、前記弾性層の厚み方向の熱伝導率λ2との比(λ1/λ2)が、6以上、335以下である請求項1に記載の加圧用回転体。
- 前記弾性層の表面から深さ500μmまでの領域の容積比熱が、0.5J/cm3・K以上1.2J/cm3・K以下である請求項1又は2に記載の加圧用回転体。
- 前記弾性層中における前記針状フィラーの含有比率が、前記弾性層に対して5体積%以上、40体積%以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 前記弾性層の表面から深さ500μmまでの領域の空隙率が10体積%以上70体積%以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 前記弾性層が、付加硬化型シリコーンゴムの硬化物を含む請求項1〜5の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 前記針状フィラーの熱伝導率が、500W/(m・K)以上、900W/(m・K)以下である請求項1〜6の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 前記針状フィラーが炭素繊維である請求項1〜7の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 前記熱伝導率λ1が、2.5W/(m・K)以上、90.5W/(m・K)以下である請求項1〜8の何れか一項に記載の加圧用回転体。
- 加熱部材と、該加熱部材に対向して配置され、該加熱部材に圧接される加圧部材と、を有し、該加熱部材と該加圧部材との間のニップ部に被加熱材を導入して挟持搬送することにより該被加熱材を加熱する加熱装置において、
該加圧部材が、請求項1〜9の何れか一項に記載の加圧用回転体であることを特徴とする加熱装置。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱定着装置の加圧用回転体の製造方法であって、
(1)未架橋のゴム、針状フィラー及び含水ゲルを含む、エマルジョン状態の弾性層形成用の液体組成物を、基体の長手方向に流動させて、該液体組成物の層を該基体の上に形成する工程、
(2)該液体組成物の層中の該未架橋のゴムを架橋させる工程、および、
(3)該未架橋のゴムが架橋してなる該層から該含水ゲル中の水分を蒸発させ、空隙を有する弾性層を形成する工程を有することを特徴とする加圧用回転体の製造方法。 - 前記工程(1)が、前記液体組成物を、注型成形用型のキャビティに、該注型成形用型の一端から注入する工程を含む請求項11に記載の加圧用回転体の製造方法。
- 前記工程(2)が、前記注型成形用型のキャビティを密閉した状態で、前記注型成形用型を加熱する工程を含む請求項12に記載の加圧用回転体の製造方法。
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