(実施形態1)
以下、実施形態1について図面を用いて説明する。図1は、実施形態1における周辺監視システム100の概略的な構成の一例を示すブロック図である。図1に示す周辺監視システム100は、車両やロボットといった移動体に搭載されるものであり、センサユニット1a〜1d、及び監視用ECU2を含んでいる。本実施形態では、周辺監視システム100が自動車に搭載される場合を例に挙げて以降の説明を行う。
センサユニット1a〜1d及び監視用ECU2は、例えば車載LANで各々接続されている。他にも、監視用ECU2とセンサユニット1a〜1dのそれぞれとがジカ線で接続されている構成としてもよい。
センサユニット1aは、測距センサ11a及び制御IC12aを備える。センサユニット1bは、測距センサ11b及び制御IC12bを備える。センサユニット1cは、測距センサ11c及び制御IC12cを備える。センサユニット1dは、測距センサ11d及び制御IC12dを備える。以降では、測距センサ11a〜11dを区別しない場合には、測距センサ11と呼び、制御IC12a〜12dを区別しない場合には、制御IC12と呼ぶ。
測距センサ11は、検知軸を中心とした検知範囲を有する測距センサである。測距センサ11としては、レーザレーダやミリ波レーダや超音波センサといった、探査波を送信して反射波を受信するものを用いることができる。他にも、ステレオカメラや単眼のカメラ等のカメラを用いる構成としてもよい。単眼のカメラを測距センサとして用いる場合には、自車へのカメラの設置位置及び光軸の向きが決まれば自車から対象までの距離が撮像画像中の対象の位置から算出できることを利用することになる。
本実施形態では、測距センサ11として、レーザレーダを用いる場合を例に挙げて以降の説明を行う。レーザレーダとしての測距センサ11は、発光部や受光部などからなる。発光部は、パルス状のレーザ光を、スキャナ及び発光レンズを介して放射する半導体レーザダイオード(以下、単にレーザダイオード)を備えている。
レーザダイオードは、レーザダイオード駆動回路を介して制御IC12に接続され、制御IC12からの駆動信号によりレーザ光を放射する。また、スキャナには反射体としてのポリゴンミラーが、モータによって回転駆動可能に設けられている。制御IC12からの駆動信号がモータ駆動回路に入力されると、モータ駆動回路がそのモータを駆動することにより、ポリゴンミラーを回転させる。このモータの回転位置は、モータ回転位置センサによって検出され、制御IC12に出力される。
ポリゴンミラーは、回転軸回りの側面に6個の反射面が形成されている。また、ポリゴンミラーにおける各反射面はそれぞれ異なる面倒れ角を有するように形成されている。このため、ポリゴンミラーを所定速度で回転させつつ、レーザダイオードからレーザ光を間欠的に放射させることにより、車幅方向及び車高方向それぞれの所定角度の範囲にレーザ光を掃引照射(つまり、スキャン)することが可能になる。便宜上、以降の説明では、車幅方向の所定角度の範囲にレーザ光を掃引照射する場合を例に挙げて説明を行う。
受光部は、物体に反射されたレーザ光(つまり、反射光)を受光する受光レンズを有し、この受光レンズは、受光した反射光を受光素子に与える。受光素子は、反射光の強度に対応する電圧を出力する。この受光素子の出力電圧は、増幅器にて増幅された後にコンパレータに出力される。コンパレータは増幅器の出力電圧を基準電圧と比較し、出力電圧が基準電圧より大きくなったとき、所定の受光信号を時間計測回路へ出力する。
時間計測回路には、制御IC12からレーザダイオード駆動回路へ出力される駆動信号も入力されている。この時間計測回路は、駆動信号を出力してから受光信号が発生するまでの時間、すなわちレーザ光を出射した時刻と反射光を受光した時刻との時間差を2進デジタル信号に符号化する。そして、この2進デジタル信号が、計測時間データとして制御IC12に入力される。
ここで、レーザ光の照射エリアについて説明する。発光部には、ポリゴンミラーの反射によってレーザ光を照射可能な最大限の角度範囲(以下、照射可能区間)が存在するが、図2に示すように、レーザ光を実際に照射する角度範囲(以下、照射区間)は、照射可能区間より狭い範囲に限定している。照射区間を照射可能区間より狭い範囲に限定することは、レーザダイオードからレーザ光を間欠的に放射する期間を限定することにより行う構成とすればよい。
照射区間を照射可能区間より狭い範囲に限定することによって、図2に示すように、レーザ光の照射エリアについても、レーザ光を物理的に照射可能な照射可能エリアよりも狭い範囲となる。照射エリアは、言い換えると測距センサ11の検知範囲である。また、以降では、照射エリアの中心軸を光軸と呼ぶ。本実施形態では、例えば発光部は、車幅方向の照射エリアにおいて、0.08degのビームステップ角で451本のレーザ光を照射する場合を例に挙げて説明を行う。この場合、1〜451本まで0.08degのビームステップ角でレーザ光を照射する1周期を1スキャンとする。
発光部が、実際にレーザ光を照射する際には、上述した照射エリア内を2次元的にレーザ光がスキャンするように、制御IC12から発光部に駆動信号が出力される。このような2次元的なスキャンにより、反射光を受光した場合には、その反射光が得られたレーザ光の照射角度θが一義的に定まる。図3に示すように、0.08degのビームステップ角で451本照射するレーザ光のn本目の照射光の反射光が得られた場合には、その反射光が得られたレーザ光の照射角度θはn×0.08degとなる。
さらに、制御IC12は、時間計測回路からレーザ光の出射時刻と反射光の受光時刻との時間差が入力された場合、その時間差に基づいて物体までの距離dを算出する(図3参照)。制御IC12は、その距離dと、反射光が得られたレーザ光の照射角度θとの極座標系のデータを、測定結果として監視用ECU2に送る。一例として、制御IC12は、照射エリア内を1スキャンして得られた測定結果を、1スキャン分の測定結果として監視用ECU2に送る構成とすればよい。
測距センサ11は、例えば図4に示すように、測距センサ11aが自車前部、測距センサ11bが自車左側部、測距センサ11cが自車後部、測距センサ11dが自車右側部に設置されている。図4のHVが自車を示しており、OV1が自車の先行車、OV2が自車の隣接車線を走行する左斜め側方車、OV3が自車の後続車を示している。
測距センサ11aは、図4のAに示すように自車前方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲A)としている。測距センサ11bは、図4のBに示すように自車左側方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲B)としている。測距センサ11cは、図4のCに示すように自車後方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲C)としている。測距センサ11dは、図4のDに示すように自車右側方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲D)としている。また、検知範囲Aと検知範囲B、検知範囲Bと検知範囲C、検知範囲Cと検知範囲D、検知範囲Dと検知範囲Aとは、それぞれ一部が重複している。
実施形態1における測距センサ11の設置例は、図4に示すものに限らない。測距センサ11は、以下の条件を満たしさえすればよい。1つ目は、測距センサ11は複数用いる。2つ目は、これら測距センサ11のうち少なくとも1つが、自らに対する相対位置が一定の位置に定まる基準対象が存在する方位が検知範囲に含まれる測距センサ11であればよい。
例えば、周辺監視システム100を自動車に適用する場合には、自車に対する相対位置が前方の一定の位置に定まる先行車が存在する前方や、自車に対する相対位置が後方の一定の位置に定まる後続車が存在する後方が検知範囲に含まれる測距センサ11が2つ目の条件を満たす。2つ目の条件を満たす測距センサ11を、ここでは便宜上、第1群の測距センサ11と呼ぶ。図4の例では、測距センサ11a及び測距センサ11cが第1群の測距センサ11に該当する。この第1群の測距センサ11が請求項の第1群測距センサに相当する。
3つ目は、複数の測距センサ11のうち、第1群の測距センサ11以外の少なくとも1つが、第1群の測距センサ11と検知範囲が一部重複する測距センサ11であればよい。3つ目の条件を満たす測距センサ11を、ここでは便宜上、第2群の測距センサ11と呼ぶ。図4の例では、測距センサ11b及び測距センサ11dが第2群の測距センサ11に該当する。この第2群の測距センサ11が請求項の第2群測距センサに相当する。
図1に戻って、監視用ECU2は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。監視用ECU2が請求項の周辺監視装置に相当する。
図1に示すように、監視用ECU2は、機能ブロックとして、条件判定部21、通信部22、座標変換部23、グルーピング部24、統計処理部25、角特定部26、位置特定部27、軸ずれ判断部28、補正処理部29、及び異常報知部30を備えている。
また、座標変換部23は、図5に示すように、第1座標変換部231、第2座標変換部232、第3座標変換部233、及び第4座標変換部234を備えている。位置特定部27は、図6に示すように、第1位置特定部271、第2位置特定部272、第3位置特定部273、及び第4位置特定部274を備えている。軸ずれ判断部28は、図7に示すように、第1軸ずれ判断部281、第2軸ずれ判断部282、第3軸ずれ判断部283、及び第4軸ずれ判断部284を備えている。
ここで、図8のフローチャートを用いて、監視用ECU2での第1群の測距センサ11に対する検知軸のずれの補正に関連する処理(以下、第1補正関連処理)についての説明を行う。図8のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときに開始する構成とすればよい。
まず、ステップS1では、条件判定部21が、以降の処理を行う条件を満たしているか否かを判定する。条件の一例としては、自車の車両情報が、自車が直進状態と推定される値であることが挙げられる。
具体例を挙げると、自車の車速が40km/h以上など、直進と推定される程度の所定の車速以上であることや、自車のステアリング位置が略中立位置にあることや、自車のヨーレートが略0であることなどがある。また、これらの組み合わせであってもよい。車速については車速センサから取得すればよく、ステアリング位置については舵角センサから取得すればよく、ヨーレートについてはヨーレートセンサから取得すればよい。
ステップS1で条件を満たしていると判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。一方、条件を満たしていないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS12に移る。
ステップS2では、座標変換部23が、通信部22を介して第1群の測距センサ11の1スキャン分の測定結果を取得し、ステップS3に移る。本実施形態では、第1座標変換部231が測距センサ11aの1スキャン分の測定結果を取得し、第3座標変換部233が測距センサ11cの1スキャン分の測定結果を取得する。
ステップS3では、座標変換部23が極座標系のデータとしての測距センサ11の測定結果を直交座標系のデータに変換する座標変換処理を行って、ステップS4に移る。
本実施形態では、第1座標変換部231が、測距センサ11aの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。一例としては、図9に示すように、測距センサ11aの設置位置を原点(図9中のO1(p1、q1))として、自車の前後方向をY1軸、自車の左右方向をX1軸とする直交座標系のデータに変換する。図9のθ1maxは、測距センサ11aの設置位置を原点とした場合の測距センサ11aの検知範囲の角度である。
なお、図10に示すような、自車の中心点を原点(図10中のO0(0、0))として、自車の前後方向をY0軸、自車の左右方向をX0軸とする直交座標系(以下、車両直交座標系)においては、p1=0、q1>0であるものとする。
測距センサ11aの極座標系のデータとしての測定結果を(θ1、d1)とした場合、測距センサ11aについての直交座標系のデータ(x1、y1)は、第1座標変換部231において例えば以下の式に従って変換される。x1については、x1=d1×sin(θ1−θ1max/2)であり、y1については、y1=d1×cos(θ1−θ1max/2)である。
また、第3座標変換部233が、測距センサ11cの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。一例としては、測距センサ11cの設置位置を原点O3(p3、q3)とし、自車の前後方向をY3軸、自車の左右方向をX3軸とする直交座標系のデータに変換する。なお、車両直交座標系においては、p3=0、q1<0であるものとする。
測距センサ11cの極座標系のデータとしての測定結果を(θ3、d3)とした場合、測距センサ11cについての直交座標系のデータ(x3、y3)は、第3座標変換部233において例えば以下の式に従って変換される。x3については、x3=d3×sin(θ3−θ3max/2)であり、y3については、y3=−d3×cos(θ3−θ3max/2)である。なお、θ3maxは、測距センサ11cの設置位置を原点とした場合の測距センサ11cの検知範囲の角度である。
ステップS4では、グルーピング部24がグルーピング処理を行って、ステップS5に移る。グルーピング処理では、座標変換処理で得られた直交座標系のデータについて、お互いの隣接方位での距離が所定距離未満であるもの同士を1つのグループにする。グルーピング処理は、第1座標変換部231で得られたデータについては、第1座標変換部231で得られたデータ同士で行い、第3座標変換部233で得られたデータについては、第3座標変換部233で得られたデータ同士で行う。
ここで言うところの隣接方位とは、測距センサ11からレーザ光を順次照射していく方向であって、例えば測距センサ11a、11cでは自車の左右方向であり、測距センサ11b、11dでは自車の前後方向である。また、ここで言うところの所定距離とは、異なる車両を同じグループにグルーピングしない程度の値であって、任意に設定可能な値である。本実施形態では、例えば90cmとする。
ここで、図11及び図12を用いて、グルーピング処理の一例について説明を行う。ここでが、測距センサ11aによって、図11の白抜きの丸で示すように、2台の車両の複数の反射点について測定結果が得られている場合について説明を行う。図11に示す例の場合、グルーピング処理によって、異なる車両についてのデータ(図中の白抜きの丸参照)は隣接方位での距離が90cm以上となることで、異なるグループ(図中の破線の円参照)に分けられる。
ステップS5では、統計処理部25が統計処理を行って、ステップS6に移る。統計処理では、グルーピング処理でグループ化されたグループのデータ群が示す対象についての自車左右方向の中心位置(以下、対象中心位置)を決定する。例えば対象中心位置の決定は、自車の左右方向の最も左側のデータと、最も右側のデータとの中点を求めることで決定する構成とすればよい。そして、決定した対象中心位置を監視用ECU2のメモリに蓄積する。
対象中心位置のメモリへの蓄積は、図8のフローチャートが繰り返されてステップS5の統計処理が行われるごとに行われる。統計処理は、第1座標変換部231で得られたデータについてグループ化されたものと、第3座標変換部233で得られたデータについてグループ化されたものと別個に行われる。また、グルーピング処理でグループ化されたグループが複数存在した場合には、自車の左右方向の中心位置により近いグループについての対象中心位置をメモリに蓄積する構成とすればよい。
なお、グルーピング処理でグループ化されたデータ群が自車からの距離が近すぎるものであったり、遠すぎるものであったりする場合には、対象中心位置の精度が低くなる可能性が高くなる。よって、このようなデータ群についての対象中心位置はメモリへ蓄積しない構成としてもよい。
ステップS6では、統計処理によって対象中心位置が十分に蓄積されたか否かを統計処理部25が判断する。一例としては、複数回のスキャン分についての対象中心位置が蓄積されたと推定した場合に、対象中心位置が十分に蓄積されたと判断する構成とすればよい。また、異なる車両のデータ群か、同一の車両のデータ群かを区別することができる場合には、所定の複数台分の車両についての対象中心位置が蓄積されたと推定した場合に、対象中心位置が十分に蓄積されたと判断する構成としてもよい。
そして、対象中心位置が十分に蓄積されたと判断した場合(ステップS6でYES)には、ステップS7に移る。一方、対象中心位置が十分に蓄積されていないと判断した場合(ステップS6でNO)には、ステップS12に移る。
ステップS7では、軸ずれ判断部28で第1軸ずれ判断処理を行って、ステップS8に移る。第1軸ずれ判断処理では、統計処理で蓄積された対象中心位置から決定する基準位置と、第1群の測距センサ11の光軸とのずれを判断する。基準位置は、統計処理で蓄積された複数の対象中心位置の平均値であってもよいし、中間値であってもよい。
本実施形態の例では、第1軸ずれ判断部281が、第1座標変換部231で得られたデータについて統計処理で蓄積された対象中心位置から基準位置を決定する。ここでの基準位置は、自車の先行車の左右方向における中心位置を想定している。そして、第1軸ずれ判断部281は、この基準位置と測距センサ11aの光軸とのずれ量を算出する。一例としては、測距センサ11aについての直交座標系のY1軸が測距センサ11aの光軸と一致するので、測距センサ11aについての直交座標系のY1軸に対する基準位置の傾きを角度に変換した値をずれ量として算出すればよい。
また、第3軸ずれ判断部283は、第3座標変換部233で得られたデータについて統計処理で蓄積された対象中心位置から基準位置を決定する。ここでの基準位置は、自車の後続車の左右方向における中心位置を想定している。そして、第3軸ずれ判断部283は、この基準位置と測距センサ11cの光軸とのずれ量を算出する。一例としては、測距センサ11cについての直交座標系のY3軸に対する基準位置の傾きを角度に変換した値をずれ量として算出すればよい。よって、第1軸ずれ判断部281及び第3軸ずれ判断部283が請求項の第1群測距センサ軸ずれ判断部に相当する。
第1軸ずれ判断処理では、算出したずれ量が誤差程度の範囲内か否かを判断したり、算出したずれ量が補正可能な範囲内か否かを判断したりする。誤差程度の範囲については任意に設定可能である。また、補正可能な範囲とは、ずれ量が、このずれ量分だけ第1群の測距センサ11の照射区間をずらした場合に照射可能区間を超えない値におさまる範囲である。
そして、ステップS8では、第1軸ずれ判断処理において、ずれ量が誤差程度の範囲内と判断した場合には、第1群の測距センサ11の光軸にずれがないものとして(ステップS8でNO)、ステップS12に移る。一方、ずれ量が誤差程度の範囲内でないと判断した場合には、第1群の測距センサ11の光軸にずれがあるものとして(ステップS8でYES)、ステップS9に移る。
ステップS9では、第1軸ずれ判断処理において、ずれ量が補正可能な範囲内と判断した場合(ステップS9でYES)には、ステップS10に移る。一方、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断した場合(ステップS9でNO)には、ステップS11に移る。
ステップS10では、補正処理部29が第1補正処理を行って、ステップS12に移る。第1補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第1群の測距センサ11の制御IC12に対して、このずれ量だけ照射区間をずらさせる指示(以下、照射エリア変更指示)を送る。照射エリア変更指示を受けた制御IC12では、この照射エリア変更指示に従って照射区間をずらすことにより、照射エリアを変更する。
また、第1補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第1群の測距センサ11に対応する座標変換部23に対して、このずれ量を補正量として与える。例えば、測距センサ11aの光軸のずれ量が補正可能な範囲内と判断された場合には、第1座標変換部231に補正量を与える。また、測距センサ11cの光軸のずれ量が補正可能な範囲内と判断された場合には、第3座標変換部233に補正量を与える。
補正量を与えられた座標変換部23では、この補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行うことになる。つまり、見かけ上の光軸の調整が行われることになる。補正量を与えられた座標変換部23での処理については後に詳述する。
ステップS11では、異常報知部30が異常報知処理を行って、ステップS12に移る。ステップS11の異常報知処理では、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断された第1群の測距センサ11について、光軸に異常があることを示す報知を行わせる。報知は、例えば図示しない表示装置や音声出力装置に行わせる。
ステップS12では、第1補正関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS12でYES)には、フローを終了する。一方、第1補正関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS12でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。第1補正関連処理の終了タイミングの一例としては、イグニッション電源がオフになったときなどがある。
続いて、図13のフローチャートを用いて、監視用ECU2での第2群の測距センサ11に対する検知軸のずれの補正に関連する処理(以下、第2補正関連処理)についての説明を行う。図13のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときであって、且つ、第1補正関連処理において、ずれ量が誤差程度の範囲内若しくは補正可能な範囲内と既に判断済みの場合に開始する構成とすればよい。第1補正関連処理において、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断されていた場合には、図13のフローチャートを開始しない構成とすればよい。
まず、ステップS21では、座標変換部23が、通信部22を介して測距センサ11の1スキャン分の測定結果を取得し、ステップS22に移る。本実施形態では、第1座標変換部231が測距センサ11aの1スキャン分の測定結果を取得し、第2座標変換部232が測距センサ11bの1スキャン分の測定結果を取得する。また、第3座標変換部233が測距センサ11cの1スキャン分の測定結果を取得し、第4座標変換部234が測距センサ11dの1スキャン分の測定結果を取得する。
ステップS22では、座標変換部23が極座標系のデータとしての測距センサ11の測定結果を直交座標系のデータに変換する座標変換処理を行って、ステップS23に移る。
本実施形態では、第1座標変換部231が、測距センサ11aの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。第1座標変換部231に前述の第1補正処理による補正量が与えられていない場合には、前述のステップS3で説明したのと同様にして座標変換を行う。
一方、第1座標変換部231に前述の第1補正処理による補正量が与えられていた場合には、この補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行う。ここで、補正量として与えられた測距センサ11aの光軸のずれ量をφとし、座標変換の具体例を以下に述べる。測距センサ11aの極座標系のデータとしての測定結果を(θ1、d1)とした場合、x1については、x1=d1×sin(−φ+θ1−θ1max/2)であり、y1については、y1=d1×cos(−φ+θ1−θ1max/2)である。
また、第3座標変換部233が、測距センサ11cの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。第3座標変換部233に前述の第1補正処理による補正量が与えられていない場合には、前述のステップS3で説明したのと同様にして座標変換を行う。一方、第3座標変換部233に前述の第1補正処理による補正量が与えられていた場合には、第1座標変換部231について説明したのと同様にこの補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行う。
さらに、第2座標変換部232が、測距センサ11bの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。一例としては、図14に示すように、測距センサ11bの設置位置を原点(図14中のO2(p2、q2))として、自車の前後方向をY2軸、自車の左右方向をX2軸とする直交座標系のデータに変換する。図14のθ2maxは、測距センサ11bの設置位置を原点とした場合の測距センサ11bの検知範囲の角度である。なお、図10に示すような車両直交座標系においては、p2<0、q2>0であるものとする。
測距センサ11bの極座標系のデータとしての測定結果を(θ2、d2)とした場合、測距センサ11bについての直交座標系のデータ(x2、y2)は、第2座標変換部232において例えば以下の式に従って変換される。x2については、x2=−d2×cos(θ2−θ2max/2)であり、y2については、y2=d2×sin(θ2−θ2max/2)である。
また、第4座標変換部234が、測距センサ11dの1スキャン分の測定結果を直交座標系のデータに変換する。一例としては、測距センサ11dの設置位置を原点O4(p4、q4)とし、自車の前後方向をY4軸、自車の左右方向をX4軸とする直交座標系のデータに変換する。なお、車両直交座標系においては、p4>0、q4>0であるものとする。
測距センサ11dの極座標系のデータとしての測定結果を(θ4、d4)とした場合、測距センサ11dについての直交座標系のデータ(x4、y4)は、第4座標変換部234において例えば以下の式に従って変換される。x4については、x4=d4×cos(θ4−θ4max/2)であり、y4については、y4=d4×sin(θ4−θ4max/2)である。なお、θ4maxは、測距センサ11dの設置位置を原点とした場合の測距センサ11dの検知範囲の角度である。
ステップS23では、ステップS4と同様に、グルーピング部24がグルーピング処理を行って、ステップS24に移る。グルーピング処理は、第1座標変換部231で得られたデータについては、第1座標変換部231で得られたデータ同士で行うといったように、同じ座標変換部23で得られたデータ同士で行う。
ステップS24では、条件判定部21が、以降の処理を行う条件を満たしているか否かを判定する。条件の一例としては、自車が高速走行中且つ直進状態であることが挙げられる。具体例を挙げると、自車の車速が例えば40km/h以上の場合に自車が高速走行中とすればよい。また、自車のステアリング位置が略中立位置にあることや、自車のヨーレートが略0である場合に自車が直進状態とすればよい。
ステップS24で条件を満たしていると判定した場合(ステップS24でYES)には、ステップS25に移る。一方、条件を満たしていないと判定した場合(ステップS24でNO)には、ステップS33に移る。
ステップS25では、角特定部26が角特定処理を行って、ステップS26に移る。角特定処理では、測距センサ11で測定結果が得られた物体(例えば車両)についての角を特定する。一例としては、測距センサ11に最も近接する角を特定する構成とすればよい。ここで、角特定処理の一例について、図15及び図16を用いて説明を行う。
まず、ステップS23のグルーピング処理で1つのグループとされた直交座標系のデータの点のうち、Y座標が最大値の点(以下、Y座標最大点)とX座標が最小値の点(以下、X座標最小点)とを結ぶ線分を直径とする円弧を算出することで物体の外郭線を検出する。なお、図15及び図16の白抜きの丸が直交座標系のデータの点を示しており、GがY座標最大点、HがX座標最小点、Oが円弧の中心を示している。
続いて、上述の円弧上に仮想的な点Pnをおき、Y座標最大点Gと点Pnとを結ぶ線分を線分GPn、X座標最小点Hと点Pnとを結ぶ線分を線分HPnとする。そして、グループ内のY座標最大点GとX座標最小点Hとを除く各点と、線分GPn、線分HPnとの距離のうち、より短い方の距離dpnを算出する。図15及び図16の例では、dpnとしてdp1、dp2、dp3を示している。
角特定処理では、グループ内のY座標最大点GとX座標最小点Hとを除く各点について算出した上述の距離dpnの総和(以下、Σdpn)をとる処理を、点Pnをずらしながら行い、Σdpnが最小となる点Pnを角と特定する。一例としては、Y座標最大点Gと中心Oを結ぶ線分と、点Pnと中心Oとを結ぶ線分とがなす角度が1度ずつ変化するように点Pnをずらしていく構成とすればよい。
また、角特定処理では、角の特定の位置精度を上げるため、角特定処理で特定した角の位置から、次回の角特定処理で特定される角の位置の予測も行うことが好ましい。角の位置の予測は、例えば自車の速度や物体との相対速度を演算することで行う構成としてもよいし、カルマンフィルタを用いることで行う構成としてもよい。
一例として、図17のように、時刻T0の角と時刻T1の角とが特定されている場合には、時刻T1以降の角の位置を以下の式によって演算する構成としてもよい。図17では、検知範囲Aの角を特定した場合を例に挙げて説明を行う。
なお、図17の例では、時刻T0の角の特定時に、時刻T1の角の位置を予測した予測結果を(X0、Y0)とし、実際に特定した時刻T0の角の位置を(x0、y0)とする。また、時刻T1の角の特定時に、時刻T1以降の角の位置を予測した予測結果を(X1、Y1)とし、実際に特定した時刻T1の角の位置を(x1、y1)とする。
以上の場合に、X1は、X1=X0+α(x1−X0)の式で算出し、Y1は、Y1=Y0+α(y1−Y0)の式で算出する。例えばαは、O1を中心とした(x0、y0)から(x1、y1)への変移量とすればよい。
本実施形態では、測距センサ11に最も近接する角を特定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。後述する検知軸のずれの判断を行う処理において、物体の同じ部位の位置を比較対象にできさえすれば、他の部位を特定する構成としてもよい。
ステップS26では、角特定処理で特定した角が、測距センサ11の検知範囲の重複領域に位置するか否かを角特定部26が判定する。例えば角特定部26は、予め設定された検知軸を中心とした各測距センサ11の検知範囲を表す座標を用いて、測距センサ11の検知範囲の重複領域に位置するか否かを判定可能となっている構成とすればよい。また、検知範囲の補正が行われた場合には、補正後の検知範囲を表す座標を用いて判定する構成とすればよい。
例えば、図18に示すように、検知範囲Aには位置するが、検知範囲Aと検知範囲Bや検知範囲Dとの重複領域に位置しない角Iは、重複領域に位置しないと判定される。一方、検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域に位置する角Jは、重複領域に位置すると判定される。
ステップS26で重複領域に位置すると判定した場合(ステップS26でYES)には、ステップS27に移る。一方、重複領域に位置しないと判定した場合(ステップS26でNO)には、ステップS33に移る。
ステップS27では、位置特定部27が位置特定処理を行って、ステップS28に移る。位置特定処理は、第1群の測距センサ11の検知範囲と第2群の測距センサ11の検知範囲との重複領域に位置する角について、この第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27とこの第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで行われる。
具体例としては、検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域に位置する角については、第1位置特定部271と第2位置特定部272とで行われ、検知範囲Aと検知範囲Cとの重複領域に位置する角については、第2位置特定部272と第3位置特定部273とで行われる。また、検知範囲Cと検知範囲Dとの重複領域に位置する角については、第3位置特定部273と第4位置特定部274とで行われ、検知範囲Dと検知範囲Aとの重複領域に位置する角については、第4位置特定部274と第1位置特定部271とで行われる。
なお、第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27が請求項の第1群位置特定部に相当し、第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27が請求項の第2群位置特定部に相当する。実施形態1では、第1位置特定部271及び第3位置特定部273が請求項の第1群位置特定部に相当し、第2位置特定部272及び第4位置特定部274が請求項の第2群位置特定部に相当する。
位置特定処理では、各測距センサ11についての直交座標系のデータを車両直交座標系のデータに変換する。言い換えると、各座標系の原点の位置の差分だけずらす変換を行う。ここでは、一例として、検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域に位置する角について、第1位置特定部271と第2位置特定部272とで位置特定処理を行う場合を例に挙げて説明を行う。
なお、第1座標変換部231で得られたデータをもとに特定した角の位置を(x1、y1)とし、この(x1、y1)について位置特定処理を行った結果の角の位置を(X1、Y1)とする(図19の角K参照)。また、第2座標変換部232で得られたデータをもとに特定した角の位置を(x2、y2)とし、この(x2、y2)について位置特定処理を行った結果の角の位置を(X2、Y2)とする(図19の角L参照)。
角K(X1、Y1)については、(X1、Y1)=(x1、y1)+(p1、q1)の式によって求める。また、角L(X2、Y2)については、(X2、Y2)=(x2、y2)+(p2、q2)の式によって求める。なお、第3座標変換部233で得られたデータをもとに特定した角の位置や第4座標変換部234で得られたデータをもとに特定した角の位置についても上述したのと同様にして位置特定処理を行う構成とすればよい。
ステップS28では、位置特定処理で特定した、車両直交座標系における角の位置同士のずれを判断する第2軸ずれ判断処理を行って、ステップS29に移る。なお、本実施形態では、車両直交座標系における位置同士のずれを判断する構成を示したが、必ずしもこれに限らず、同一の座標系における位置同士のずれを判断する構成であればよい。
第2軸ずれ判断処理では、第1群の測距センサ11と第2群の測距センサ11との検知範囲の重複領域に位置する角について、この第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27とこの第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置同士のずれを判断する。言い換えると、重複領域に位置する物体の同じ部位について、第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27と第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置同士のずれを判断する。
検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域に位置する角については、第1位置特定部271と第2位置特定部272とで特定した位置同士のずれを第2軸ずれ判断部282で判断する。検知範囲Aと検知範囲Dとの重複領域に位置する角については、第1位置特定部271と第4位置特定部274とで特定した位置同士のずれを第4軸ずれ判断部284で判断する。検知範囲Cと検知範囲Bとの重複領域に位置する角については、第3位置特定部273と第2位置特定部272とで特定した位置同士のずれを第2軸ずれ判断部282で判断する。検知範囲Cと検知範囲Dとの重複領域に位置する角については、第3位置特定部273と第4位置特定部274とで特定した位置同士のずれを第4軸ずれ判断部284で判断する。よって、第2軸ずれ判断部282及び第4軸ずれ判断部284が請求項の第2群測距センサ軸ずれ判断部に相当する。
ここでは、検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域における第1位置特定部271と第2位置特定部272とで特定した位置同士のずれの第2軸ずれ判断部282での判断について、図19の場合を例に挙げて説明を行う。
第2軸ずれ判断部282は、検知範囲Aと検知範囲Bとの重複領域における第1位置特定部271で特定した角K(X1、Y1)と第2位置特定部272で特定した角L(X2、Y2)とのずれ量βを以下の式1によって算出する。
なお、第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27と第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27との他の組み合わせでの処理においても、同様にしてずれ量を算出する構成とすればよい。
第2軸ずれ判断処理では、算出したずれ量が誤差程度の範囲内か否かを判断したり、算出したずれ量が補正可能な範囲内か否かを判断したりする。誤差程度の範囲については任意に設定可能である。また、補正可能な範囲とは、ずれ量が、このずれ量分だけ第2群の測距センサ11の照射区間をずらした場合に照射可能区間を超えない値におさまる範囲である。
そして、ステップS29では、第2軸ずれ判断処理において、ずれ量が誤差程度の範囲内と判断した場合には、第2群の測距センサ11の光軸にずれがないものとして(ステップS29でNO)、ステップS33に移る。一方、ずれ量が誤差程度の範囲内でないと判断した場合には、第2群の測距センサ11の光軸にずれがあるものとして(ステップS29でYES)、ステップS30に移る。
ステップS30では、第2軸ずれ判断処理において、ずれ量が補正可能な範囲内と判断した場合(ステップS30でYES)には、ステップS31に移る。一方、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断した場合(ステップS30でNO)には、ステップS32に移る。
ステップS31では、補正処理部29が第2補正処理を行って、ステップS33に移る。第2補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第2群の測距センサ11の制御IC12に対して、このずれ量だけ照射区間をずらさせる照射エリア変更指示を送る。照射エリア変更指示を受けた制御IC12では、この照射エリア変更指示に従って照射区間をずらすことにより、照射エリアを変更する。
また、第2補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第2群の測距センサ11に対応する座標変換部23に対して、このずれ量を補正量として与える。例えば、測距センサ11bの光軸のずれ量が補正可能な範囲内と判断された場合には、第2座標変換部232に補正量を与える。また、測距センサ11dの光軸のずれ量が補正可能な範囲内と判断された場合には、第4座標変換部234に補正量を与える。補正量を与えられた座標変換部23では、この補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行うことになる。つまり、見かけ上の光軸の調整が行われることになる。
ステップS32では、異常報知部30が異常報知処理を行って、ステップS33に移る。ステップS32の異常報知処理では、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断された第2群の測距センサ11について、光軸に異常があることを示す報知を行わせる。
ステップS33では、第2補正関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS33でYES)には、フローを終了する。一方、第2補正関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS33でNO)には、ステップS21に戻ってフローを繰り返す。第2補正関連処理の終了タイミングの一例としては、イグニッション電源がオフになったときなどがある。
2つの測距センサ11の検知範囲が重なっている領域に存在する物体についての、各測距センサ11の測定結果から特定される位置は、各測距センサ11の検知軸が予め設定した方向を正しく指向していれば概ね一致するようになっている。これに対して、一方の測距センサ11の検知軸にずれがある場合には、各測距センサ11の測定結果から特定される位置にずれが生じる。
実施形態1の構成によれば、第1群の測距センサ11については、見かけ上の検知軸の調整が行われる。よって、第2軸ずれ判断部282や第4軸ずれ判断部284は、第1群の測距センサ11に対応する位置特定部27と第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置のずれから、第2群の測距センサ11の検知軸のずれを判断できる。そして、第2群の測距センサ11に対応する第2位置特定部272や第4位置特定部274は、判断したずれ分を補正した物体の位置を特定することが可能となる。従って、自らに対する相対位置が一定の位置に定まる対象が存在する方位が検知範囲に含まれない第2群の測距センサ11を用いる場合にも、第2群の測距センサ11に対応する第2位置特定部272や第4位置特定部274において、より正確な位置特定を行うことが可能になる。
その結果、自らに対する相対位置が一定の位置に定まる対象が存在する方位が検知範囲に含まれない第2群の測距センサ11を用いて、より正確に物体の位置特定が行われるように、第2群の測距センサ11の見かけ上の検知軸の調整を行うことが可能になる。
なお、実施形態1では、監視用ECU2が請求項の周辺監視装置の機能を担う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、センサユニット1a〜1dのうちの1つの制御IC12が請求項の周辺監視装置の機能を担う構成(以下、変形例1)としてもよい。変形例1の構成を採用する場合には、請求項の周辺監視装置の機能を担う制御IC12が、他の制御IC12から測距センサ11の測定結果を取得する構成とすればよい。
(実施形態2)
以上、本発明の実施形態1を説明したが、本発明は上述の実施形態1に限定されるものではなく、次の実施形態2も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この次の実施形態2について図面を用いて説明を行う。図20は、実施形態2における周辺監視システム200の概略的な構成の一例を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
実施形態2の周辺監視システム200は、前述の第1群の測距センサ11及び第2群の測距センサ11以外の測距センサ11(以下、第3群の測距センサ11)を用いる点と、第3群の測距センサ11に対する検知軸のずれの補正に関連する処理を行う点を除けば、実施形態1の周辺監視システム100と同様である。
図20に示す周辺監視システム200は、車両やロボットといった移動体に搭載されるものであり、センサユニット1a、1b、1d、1e、1f、及び監視用ECU2aを含んでいる。本実施形態では、周辺監視システム200が自動車に搭載される場合を例に挙げて以降の説明を行う。
センサユニット1e、1f、及び監視用ECU2aは、例えば車載LANで各々接続されている。他にも、監視用ECU2aとセンサユニット1e、1fのそれぞれとがジカ線で接続されている構成としてもよい。
センサユニット1eは、測距センサ11e及び制御IC12eを備える。センサユニット1fは、測距センサ11f及び制御IC12fを備える。以降では、測距センサ11a11b、11d、11e、11fを区別しない場合には、測距センサ11と呼び、制御IC12a、12b、12d、12e、12fを区別しない場合には、制御IC12と呼ぶ。
測距センサ11は、例えば図21に示すように、測距センサ11aが自車前部、測距センサ11bが自車左側部前側、測距センサ11dが自車右側部前側、測距センサ11eが自車左側部後側、測距センサ11fが自車右側部後側に設置されている。図21のHVが自車を示しており、OV1が自車の先行車、OV2が自車の隣接車線を走行する左斜め側方車、OV4が自車の隣接車線を走行する左側方車を示している。
測距センサ11aは、図21のAに示すように自車前方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲A)としている。測距センサ11bは、図21のBに示すように自車左斜め前方から左側方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲B)としている。測距センサ11dは、図21のDに示すように自車右斜め前方から右側方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲D)としている。測距センサ11eは、図21のEに示すように自車左側方から左斜め後方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲E)としている。測距センサ11fは、図21のFに示すように自車右側方から自車右斜め後方の所定範囲を検知範囲(以下、検知範囲F)としている。
検知範囲Aと検知範囲B、検知範囲Bと検知範囲E、検知範囲Aと検知範囲D、検知範囲Dと検知範囲Fとは、それぞれ一部が重複している。
実施形態2における測距センサ11の設置例は、図21に示すものに限らない。測距センサ11は、以下の条件を満たしさえすればよい。1つ目は、測距センサ11は複数用いる。2つ目は、これら測距センサ11のうち少なくとも1つが前述の第1群の測距センサ11であればよい。3つ目は、複数の測距センサ11のうち、第1群の測距センサ11以外の少なくとも1つが、前述の第2群の測距センサ11であればよい。
4つ目は、複数の測距センサ11のうち、第1群の測距センサ11及び第2群の測距センサ以外の少なくとも1つが、第1群の測距センサ11とは検知範囲が重複しないが第2群の測距センサ11とは検知範囲が一部重複する測距センサ11であればよい。4つ目の条件を満たす測距センサ11が第3群の測距センサ11に該当する。図21の例では、測距センサ11e及び測距センサ11fが第3群の測距センサ11に該当する。この第3群の測距センサ11が請求項の第3群測距センサに相当する。
図20に戻って、監視用ECU2aは、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。監視用ECU2aが請求項の周辺監視装置に相当する。
図20に示すように、監視用ECU2は、機能ブロックとして、条件判定部21、通信部22、座標変換部23a、グルーピング部24、統計処理部25、角特定部26、位置特定部27a、軸ずれ判断部28a、補正処理部29、及び異常報知部30を備えている。
また、座標変換部23aは、図22に示すように、第1座標変換部231、第2座標変換部232、第4座標変換部234、第5座標変換部235、及び第6座標変換部236を備えている。位置特定部27aは、図23に示すように、第1位置特定部271、第2位置特定部272、第4位置特定部274、第5位置特定部275、及び第6位置特定部276を備えている。軸ずれ判断部28aは、図24に示すように、第1軸ずれ判断部281、第2軸ずれ判断部282、第4軸ずれ判断部284、第5軸ずれ判断部285、及び第6軸ずれ判断部286を備えている。
監視用ECU2aでも、監視用ECU2と同様にして、第1補正関連処理及び第2補正関連処理を行う。
ここで、図25のフローチャートを用いて、監視用ECU2aでの第3群の測距センサ11に対する検知軸のずれの補正に関連する処理(以下、第3補正関連処理)についての説明を行う。図25のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときであって、且つ、第2補正関連処理において、ずれ量が誤差程度の範囲内若しくは補正可能な範囲内と既に判断済みの場合に開始する構成とすればよい。第2補正関連処理において、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断されていた場合には、図25のフローチャートを開始しない構成とすればよい。
まず、ステップS41では、座標変換部23が、通信部22を介して測距センサ11の1スキャン分の測定結果を取得し、ステップS22に移る。本実施形態では、第2座標変換部232が測距センサ11bの1スキャン分の測定結果を取得し、第4座標変換部234が測距センサ11dの1スキャン分の測定結果を取得する。また、第5座標変換部235が測距センサ11eの1スキャン分の測定結果を取得し、第6座標変換部236が測距センサ11fの1スキャン分の測定結果を取得する。
ステップS42では、前述のステップS22と同様にして、座標変換部23が極座標系のデータとしての測距センサ11の測定結果を直交座標系のデータに変換する座標変換処理を行って、ステップS43に移る。ここでは、第2座標変換部232や第4座標変換部234に第2補正処理による補正量が与えられていた場合には、この補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行う。
ステップS43〜ステップS45では、前述のステップS23〜ステップS25と同様の処理を行う。なお、ステップS44で条件を満たしていると判定した場合(ステップS44でYES)には、ステップS45に移る。一方、条件を満たしていないと判定した場合(ステップS44でNO)には、ステップS53に移る。
ステップS46では、角特定処理で特定した角が、第2群の測距センサ11の検知範囲と第3群の測距センサ11の検知範囲の重複領域に位置するか否かをステップS26と同様にして角特定部26が判定する。例えば角特定部26は、予め設定された検知軸を中心とした各測距センサ11の検知範囲を表す座標を用いて、上述の判定が可能となっている構成とすればよい。また、検知範囲の補正が行われた場合には、補正後の検知範囲を表す座標を用いて判定する構成とすればよい。
ステップS46で重複領域に位置すると判定した場合(ステップS46でYES)には、ステップS47に移る。一方、重複領域に位置しないと判定した場合(ステップS46でNO)には、ステップS53に移る。
ステップS47では、ステップS27と同様にして、位置特定部27が、各測距センサ11についての直交座標系のデータを車両直交座標系のデータに変換する位置特定処理を行って、ステップS48に移る。位置特定処理は、第2群の測距センサ11の検知範囲と第3群の測距センサ11の検知範囲との重複領域に位置する角について、この第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とこの第3群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで行われる。
具体例としては、検知範囲Bと検知範囲Eとの重複領域に位置する角については、第2位置特定部272と第5位置特定部275とで行われ、検知範囲Dと検知範囲Fとの重複領域に位置する角については、第4位置特定部274と第6位置特定部276とで行われる。
なお、第3群の測距センサ11に対応する位置特定部27が請求項の第3群位置特定部に相当する。実施形態2では、第5位置特定部275及び第6位置特定部276が請求項の第3群位置特定部に相当する。
ステップS48では、位置特定処理で特定した、車両直交座標系における角の位置同士のずれを判断する第3軸ずれ判断処理を行って、ステップS49に移る。第3軸ずれ判断処理では、第2群の測距センサ11と第3群の測距センサ11との検知範囲の重複領域に位置する角について、この第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27とこの第3群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置同士のずれを判断する。言い換えると、重複領域に位置する物体の同じ部位について、第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27と第3群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置同士のずれを判断する。
検知範囲Bと検知範囲Eとの重複領域に位置する角については、第2位置特定部272と第5位置特定部275とで特定した位置同士のずれを第5軸ずれ判断部285で判断する。検知範囲Dと検知範囲Fとの重複領域に位置する角については、第4位置特定部274と第6位置特定部276とで特定した位置同士のずれを第6軸ずれ判断部286で判断する。よって、第5軸ずれ判断部285及び第6軸ずれ判断部286が請求項の第3群測距センサ軸ずれ判断部に相当する。
なお、第3軸ずれ判断処理でのずれ量の算出は、第2軸ずれ判断処理でのずれ量の算出と同様の方法で算出する構成とすればよい。また、第3軸ずれ判断処理では、第2軸ずれ判断処理と同様に、算出したずれ量が誤差程度の範囲内か否かを判断したり、算出したずれ量が補正可能な範囲内か否かを判断したりする。
そして、ステップS49では、第3軸ずれ判断処理において、ずれ量が誤差程度の範囲内と判断した場合には、第3群の測距センサ11の光軸にずれがないものとして(ステップS49でNO)、ステップS53に移る。一方、ずれ量が誤差程度の範囲内でないと判断した場合には、第3群の測距センサ11の光軸にずれがあるものとして(ステップS49でYES)、ステップS50に移る。
ステップS50では、第3軸ずれ判断処理において、ずれ量が補正可能な範囲内と判断した場合(ステップS50でYES)には、ステップS51に移る。一方、ずれ量が補正可能な範囲内でないと判断した場合(ステップS50でNO)には、ステップS52に移る。
ステップS51では、補正処理部29が第3補正処理を行って、ステップS53に移る。第3補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第3群の測距センサ11の制御IC12に対して、このずれ量だけ照射区間をずらさせる照射エリア変更指示を送る。また、第3補正処理では、ずれ量が補正可能な範囲内と判断された第3群の測距センサ11に対応する座標変換部23に対して、このずれ量を補正量として与える。補正量を与えられた座標変換部23では、この補正量を用いて、光軸のずれ分の補正を行って座標変換を行うことになる。つまり、見かけ上の光軸の調整が行われることになる。
ステップS52では、ステップS32と同様にして異常報知部30が異常報知処理を行って、ステップS53に移る。ステップS53では、第3補正関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS53でYES)には、フローを終了する。一方、第3補正関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS53でNO)には、ステップS41に戻ってフローを繰り返す。第3補正関連処理の終了タイミングの一例としては、イグニッション電源がオフになったときなどがある。
実施形態2の構成によれば、第2群の測距センサ11については、見かけ上の検知軸の調整が行われる。よって、第5軸ずれ判断部285や第6軸ずれ判断部286は、第2群の測距センサ11に対応する位置特定部27と第3群の測距センサ11に対応する位置特定部27とで特定した位置のずれから、第3群の測距センサ11の検知軸のずれを判断できる。そして、第3群の測距センサ11に対応する第5位置特定部275や第6位置特定部276は、判断したずれ分を補正した物体の位置を特定することが可能となる。
従って、自らに対する相対位置が一定の位置に定まる対象が存在する方位が検知範囲に含まれる第1群の測距センサ11と検知範囲が重複しない第3群の測距センサ11を用いる場合にも、第3群の測距センサ11の検知軸のずれ分を補正し、より正確な位置特定を行うことを可能にする。
なお、実施形態2と変形例1とを組み合わせる構成としてもよい。また、前述の実施形態1、2では、本発明を車両やロボットといった移動体に適用する場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。例えば、路上の移動体等を監視するカメラ等の測距センサ11を搭載した路側機といった設置物に本発明を適用する構成(以下、変形例2)としてもよい。
変形例2の構成を採用する場合には、前述の第1群の測距センサ11や第2群の測距センサ11や第3群の測距センサ11をそれぞれ別の路側機に取り付ける構成とすればよい。そして、各測距センサ11の測定結果を取得する装置によって、監視用ECU2や監視用ECU2aと同様の処理を行う構成とすればよい。
図26には、第1群の測距センサ11を路側機RU1に取り付け、第2群の測距センサ11を路側機RU2に取り付けた場合の例を示している。図26のMが路側機RU1に取り付けられた第1群の測距センサ11の検知範囲を示しており、Nが路側機RU2に取り付けられた第2群の測距センサ11の検知範囲を示している。
変形例2では、第1群の測距センサ11として、自センサを搭載した路側機に対する相対位置が一定の位置に定まる基準対象が存在する測距センサ11を用いる構成とすればよい。路側機に対する相対位置が一定の位置に定まる基準対象としては、路側に固定されたリフレクタ(図26のRE参照)等を用いる構成とすればよい。
変形例2では、第1群の測距センサ11の検知軸のずれの判断は、前述の基準対象の位置をもとに行う構成とすればよい。また、第2群の測距センサ11の検知軸のずれの判断は、第1群の測距センサ11と第2群の測距センサ11とでの検知範囲の重複領域における物体の検知位置のずれをもとに行う構成とすればよい。第3群の測距センサ11の検知軸のずれの判断は、第2群の測距センサ11と第3群の測距センサ11とでの検知範囲の重複領域における物体の検知位置のずれをもとに行う構成とすればよい。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。