JP6272498B2 - アセトニトリルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アセトニトリルの製造方法に関する。
アセトニトリルは、化学反応用の溶媒、特には医薬中間体の合成や精製に用いられる溶媒や、高速液体クロマトグラフィーの移動相溶媒などに用いられる。また、最近はDNA合成用溶媒及び精製用溶媒、有機EL材料合成用溶媒、電子部品の洗浄用溶剤としてもアセトニトリルが用いられるようになっている。
特に、高速液体クロマトグラフィーの溶媒に用いられるアセトニトリルは、その紫外線吸収がバックグラウンドにならぬよう、波長200〜400nmにおける紫外線吸収のないものであることが必要である。従来、このようなアセトニトリルは、粗アセトニトリルを精製することで得られている。
さて現在、一般に市販されているアセトニトリルは、主に、プロピレン又はイソブテンと、アンモニアと、酸素との接触的アンモ酸化反応によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に副生成物として得られる粗アセトニトリルを、回収及び精製して得られるものである。
一方、アセトニトリルを直接製造する方法として、酢酸とアンモニアとを触媒の存在下に気相反応させてアセトニトリルを製造する方法も公知であり、上記の粗アセトニトリルを副生させる方法に替わる粗アセトニトリル製造方法として注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。この製造方法の反応式は次のとおりである。この反応によって得られた粗アセトニトリルは、生成したアセトニトリル、未反応の酢酸やアンモニア、生成した水が含まれ得る。
CHCOOH+NH→CHCN+2H
例えば、特許文献1には、酢酸とアンモニアとを触媒の存在下に気相反応させてアセトニトリルを製造する方法に於いて、反応生成ガスを強酸と接触させてアセトニトリルを水溶液として回収することで、アンモニアが強酸との塩を形成し、炭酸アンモニウムの生成・析出を抑止する方法が開示されている。ゆえに、特許文献1では、下式に示す酢酸の脱炭酸反応による二酸化炭素、アセトンの副生が問題となっていることが推察されるが、反応により生成する副生物に関する記載は無く、高純度アセトニトリルに精製する際の問題点が示されていない。
2CHCOOH→CHCOCH+CO+H
また、特許文献2には、各種ゼオライト触媒を用いてカルボン酸とアンモニアからニトリルを製造する方法において、アンモニア/カルボン酸のモル比を1/1〜10/1とし、触媒としてH−ZSM−5、NaY、H−モルデナイト等のゼオライト、SAPO−40、シリカアルミナ等を用い、反応温度を300〜500℃とし、液体生成物基準のWHSVを0.4h−1とする方法が開示されている。特許文献2の実施例によれば、収率は100%と開示されているものの、触媒量が多く工業的に実施することを想定されたものではない。また、微量副生物質に関する記載は無く、高純度アセトニトリルに精製する際の問題点が示されていない。
特許第5173897号公報 インド特許187529号公報
本発明者らは、反応成績、触媒寿命に優れる固体酸触媒の存在下、先行技術文献に記載の方法で酢酸とアンモニアの気相反応によりアセトニトリルを製造した。その結果、かかる従来方法には全く触れられていない現象、すなわち製造される含水粗アセトニトリル中にアセトン、メチルエチルケトン、エチレン、プロピレン、ブテン;アクリロニトリルやプロピオニトリル等のニトリル化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類;ピリジン類等が微量副生不純物として含有されることが、判明した。
これら不純物の中でもトルエン等の芳香族化合物類は、波長200nm領域の紫外線吸収に多大な影響を及ぼす物質であることが知られている。また、芳香族化合物類の中でアセトニトリルとの沸点、共沸組成形成から蒸留分離が問題となることが推定されるトルエンは、アセトニトリルに対してわずか1.0質量ppm存在した場合でも、波長200nmでの紫外線吸収の吸光度は0.3以上にまで上昇してしまう。従って、極微量であっても、トルエンの副生とその精製は、アセトニトリル製品品質への大きな課題となる。
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法には、微量副生不純物に関する検討が全く為されておらず、かかる課題の提起がない。例えば、特許文献1では、酢酸原料の溶媒として芳香族炭化水素に溶解させて供給する方法を提案している程である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、固体酸触媒を用いて酢酸とアンモニアとの気相反応により得られる含水粗アセトニトリルの精製に用いられるエネルギー消費量が少なく、精製設備及び精製工程も簡易であるアセトニトリルの製造方法を提供することを目的とする。また、このようにして得られるアセトニトリルは、化学反応用の溶媒、特には医薬中間体の合成用溶媒及び精製用溶媒、或いは、高速液体クロマトグラフィーの移動相溶媒、DNA合成用溶媒及び精製用溶媒、有機EL材料合成用溶媒、或いは、電子部品の洗浄溶剤として好適に用いることができる。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意、検討を重ねた結果、気相反応において、所定の触媒を用い、かつ、得られた組成物を精製工程において活性炭で処理することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
酢酸とアンモニアとを固体酸触媒の存在下に気相反応させて含水粗アセトニトリルを得る気相反応工程と、
前記含水粗アセトニトリル、及び/又は、前記含水粗アセトニトリルの精製物を、活性炭処理する活性炭処理工程と、を有する、
アセトニトリルの製造方法。
〔2〕
前記固体酸触媒が、中間細孔径ゼオライトである、前項〔1〕に記載のアセトニトリルの製造方法。
〔3〕
前記活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル、及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物中のトルエンの含有量が、アセトニトリル100質量%に対して、1.0質量ppm未満である、前項〔1〕又は〔2〕に記載のアセトニトリルの製造方法。
〔4〕
前記活性炭処理工程において、前記含水租アセトニトリルを活性炭処理する、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
〔5〕
前記気相反応工程において、WHSVが、0.5〜20h−1である、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
〔6〕
前記中間細孔径ゼオライトが、ZSM−5型ゼオライトを含む、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
〔7〕
前項〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法により製造された、アセトニトリル。
本発明によれば、固体酸触媒を用いて酢酸とアンモニアの気相反応により得られる含水粗アセトニトリルの精製に用いられるエネルギー消費量が少なく、精製設備及び精製工程も簡易であるアセトニトリルの製造方法を提供することができる。また、このようにして得られるアセトニトリルは、化学反応用の溶媒、特には医薬中間体の合成用溶媒及び精製用溶媒、或いは、高速液体クロマトグラフィーの移動相溶媒、DNA合成用溶媒及び精製用溶媒、有機EL材料合成用溶媒、或いは、電子部品の洗浄溶剤として好適に用いることができる。
活性炭を用いたアセトニトリル中のトルエンの吸着試験の結果の一例を示す図である。 活性炭を用いたアセトニトリル中のトルエンの吸着試験の結果の別の一例を示す図である。 活性炭を用いたアセトニトリル中のトルエンの吸着試験の結果のさらに別の一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、数値範囲における「A〜B」の表現は、特に記載がない限り「A以上B以下」の数値範囲を示すものとする。
〔アセトニトリルの製造方法〕
本実施形態のアセトニトリルの製造方法は、酢酸とアンモニアとを固体酸触媒の存在下に気相反応させて含水粗アセトニトリルを得る気相反応工程と、前記含水粗アセトニトリル、及び/又は、前記含水粗アセトニトリルの精製物を、活性炭処理する活性炭処理工程と、を有する。
本実施形態によれば、固体酸触媒を用いることにより、高活性、高収率でかつ、長期に安定に気相反応を行うことができる。また、該触媒を用いる系において問題となる副生物であるトルエンを、活性炭処理工程で簡便に除去することができるため、高純度なアセトニトリルを、少ないエネルギー消費量で、簡易な精製設備及び精製工程により得ることができる。
〔気相反応工程〕
気相反応工程は、酢酸とアンモニアとを固体酸触媒の存在下に気相反応させて含水粗アセトニトリルを得る工程である。具体的には、固体酸触媒を充填した反応器内で、所定の温度にて、酢酸とアンモニアと触媒とを気相接触させることにより、実施することができるが、特に限定されない。
(原料)
気相反応の原料となる酢酸及びアンモニアとしては、特に限定されず、各種化学合成法などから製造されたものを用いることができる。酢酸及びアンモニアは、必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものでよい。例えば、酢酸としては、一般に工業的に用いられる酢酸水溶液を用いることができる。
(固体酸触媒)
本実施形態で用いる固体酸触媒は、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられる。例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、リン酸等の酸を含浸・担持させたもの:酸性型イオン交換樹脂;中間細孔径ゼオライト等のゼオライト類;活性アルミナ類;リン酸アルミニウム類;メソポーラスシリカアルミナ等が挙げられる。
これら固体酸触媒のうちでも、中間細孔径ゼオライトを含有する触媒等のゼオライト類、活性アルミナ類が好ましく、中間細孔径ゼオライトを含有する触媒がより好ましい。このような固体酸触媒を用いることにより、本実施形態の効果をより有効に発揮させることができる。
(中間細孔径ゼオライトを含有する触媒)
中間細孔径ゼオライトを含有する触媒について以下説明する。「ゼオライト」とは一般的に結晶性の多孔質アルミノシリケートの総称である。ゼオライトは、四面体構造である(SiO4−と(AlO5−とを基本構造単位として有し、これらが三次元的に連結することで結晶が形成される。また、アルミニウムイオン以外の3価あるいは4価の元素をシリケート骨格に組み込んだメタロシリケートもゼオライトに含まれる。ゼオライトは構造及び組成が多様であるため、構造コード、生成過程、鉱物学、細孔径、細孔の次元、アルミニウム濃度、他のカチオン濃度及び構造元素などのさまざまな観点から異なる分類がなされている(ゼオライトの科学と工学、小野嘉夫・八嶋建明/編、講談社サイエンティフィック参照)。また、国際ゼオライト学会(IZA)により多様なフレームワーク型コードが規定されている。
(中間細孔径ゼオライト)
ここで、「中間細孔径ゼオライト」とは、細孔径の範囲が、A型ゼオライトに代表される小細孔径ゼオライトの細孔径と、モルデナイトやX型やY型ゼオライトに代表される大細孔径ゼオライトの細孔径との中間にある細孔径を有するゼオライトを意味し、その結晶構造中に、例えば酸素10員環を有するゼオライトを意味する。中間細孔径ゼオライトの有する細孔径は、好ましくは5〜6.5Åである。
(中間細孔径ゼオライトの構造)
中間細孔径ゼオライトの構造としては、特に限定されないが、例えば、国際ゼオライト学会(IZA)が規定するフレームワーク型コード(FTC)において、AEL、EUO、FER、HEU、MEL、MFI、NES、TON、及びWEI等で示される構造が挙げられる。このなかでも、MFIで示される構造を有する中間細孔径ゼオライトが好ましい。MFIで示される構造を有する中間細孔径ゼオライトとしては、具体的にはZSM−5型ゼオライトが挙げられる。このような中間細孔径ゼオライトを用いることにより、活性、選択性、触媒寿命がより向上する傾向にある。
また、中間細孔径ゼオライトとしては、ゼオライト骨格を構成するアルミニウム(Al)原子の一部がガリウム(Ga)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、クロム(Cr)などの元素で置換されたメタロアルミノシリケートや、ゼオライト骨格を構成するアルミニウム原子が全て上記の元素で置換されたメタロシリケートを用いることもできる。
(シリカ/アルミナ比)
中間細孔径ゼオライトのシリカ/アルミナ比(モル比、以下同様。)は、好ましくは20〜1000であり、より好ましくは20〜500であり、さらに好ましくは20〜300である。シリカ/アルミナ比が20以上であることにより中間細孔径ゼオライト触媒をより安定に製造できる傾向にある。また、シリカ/アルミナ比が1000以下であることにより活性がより向上する傾向にある。ゼオライトのシリカ/アルミナ比は、公知の方法、例えばゼオライトをアルカリ水溶液に完全に溶解し、得られる溶液をプラズマ発光分光分析法により分析することで求めることができる。なお、中間細孔径ゼオライトがメタロアルミノシリケート又はメタロシリケートである場合のシリカ/アルミナ比は、上記元素に置換されたアルミニウム原子の量をAl(アルミナ)のモル数に換算した上で、算出される。
(中間細孔径ゼオライトを含有する触媒の調製方法)
中間細孔径ゼオライトを含有する触媒の調製方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることが可能である。なお、中間細孔径ゼオライトは、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含侵や担持などの修飾により組成を変えることが可能である。本実施の形態においては、中間細孔径ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部が、プロトンで交換されていることが好ましい。このような中間細孔径ゼオライトを含有する触媒を用いることにより、活性がより向上する傾向にある。
(中間細孔径ゼオライトを含有する触媒の成形方法)
中間細孔径ゼオライトを含有する触媒の形状は、粉状でも粒状でもよく、気相反応工程等のプロセスに応じて適した形状に成型加工した成形体とすることができる。中間細孔径ゼオライトを含有する触媒の成形方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることが可能である。具体的には、触媒の前駆体を噴霧乾燥する方法、触媒成分を圧縮成型する方法、触媒成分を押出成型する方法が挙げられる。これら成形方法においては、バインダーや成形用希釈剤(マトリックス)を用いてもよい。バインダー及び成形用希釈剤としては、特に限定されないが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、カオリン、ケイソウ土、粘土等の多孔性耐火性無機酸化物が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。これらのバインダー及び成形用希釈剤は、市販のものを用いてもよく、常法により合成してもよい。中間細孔径ゼオライトを含有する触媒をバインダーを用いて成型加工する場合における、中間細孔径ゼオライト/(バインダー及び成形用希釈剤)の質量比率は、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは20/80〜80/20である。
(活性アルミナ類)
次いで、活性アルミナ類について以下説明する。活性アルミナ類としては、特に限定されないが、例えば、市販の活性アルミナが挙げられる。活性アルミナ類の形状は、粉状でも粒状でもよく、気相反応工程等のプロセスに応じて適したものとすることができる。
(反応器)
気相反応工程において用いられる反応器としては、特に限定されないが、例えば、固定床式反応器、流動床式反応器、移動床式反応器等が挙げられる。反応方式としては、バッチ式及び流通式のいずれもが使用可能であるが、生産性を考慮すれば、流通式が好ましい。なお、本明細書の記載は当業者が容易に調節しうる程度の反応条件の変更を妨げるものではない。
なお、反応器に固体酸触媒を含有する触媒を充填する場合、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂やセラミックボール等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に限定はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の観点から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、気相反応は吸熱反応であるため、所望反応温度に制御するには、熱供給機構を備えることが好ましい。例えば、工業的に固定床で実施する場合には、多管式シェル&チューブ方式反応器を採用することが考えられる。また、反応器には、反応に伴う吸熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
(アンモニア/酢酸のモル比)
気相反応工程において、反応器に供給するアンモニア/酢酸のモル比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0〜2.0であり、さらに好ましくは1.1〜1.5である。アンモニア/酢酸のモル比が1.0以上であることにより、反応効率がより向上する傾向にある。また、アンモニア/酢酸のモル比が1.5以下であることにより、精製工程において、後述する含水粗アセトニトリルからアンモニアを分離除去するためのエネルギー消費量をより低減できる傾向にある。
(WHSV(重量空間速度))
WHSV(重量空間速度)は、反応器への触媒充填重量に対する、1時間あたりに流れる原料重量であり、下式にて求めることができる。
WHSV[h−1]=1時間あたりに流れる原料重量[g/h]/触媒充填重量[g]
ここで、「触媒充填重量」とは、本実施形態における固体酸触媒の反応器への充填重量を意味し、固体酸触媒が成形体である場合は、該成形体を構成するバインダーや成形用希釈剤を含む成形体全体の反応器充填重量である。なお、上述の不活性な粒状物は触媒充填重量には含まれない。また、ここで「原料重量」とは、反応器へ流れる原料の合計重量であり、「原料」には、本実施形態における原料である、酢酸又は酢酸水溶液、及びアンモニアの他、後述する希釈剤も含まれる。
WHSVは、生産性と触媒寿命、反応収率との兼ね合いで適宜調整することができる。例えば、気相反応工程におけるWHSVは、好ましくは0.5〜50h−1であり、より好ましくは0.5〜20h−1であり、さらに好ましくは0.5〜10h−1である。WHSVが0.5h−1以上であることにより、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を低減でき、反応器をコンパクトにすることができ、アセトンやトルエン等の好ましくない副生物の副生を抑制でき、高純度アセトニトリルへの精製負荷をより小さくできる傾向にある。また、WHSVが50h−1以下であることにより、酢酸の転化率がより向上し、また、アセトニトリルの選択率がより向上する傾向にある。
(希釈剤)
気相反応工程においては、酢酸及びアンモニアの他に、希釈剤を用いてもよい、希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、水、パラフィン系炭化水素ガス類、及びそれらの混合物など、反応に不活性な気体が挙げられる。このなかでも、窒素及び水が好ましい。希釈剤は、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。また、後述する含水粗アセトニトリルの水分量を調整する目的で、酢酸とアンモニアとの気相反応により生成する含水粗アセトニトリルに、水を希釈剤として混合して精製に供してもよい。
(反応温度)
気相反応の反応温度は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは300℃以上であり、さらに好ましくは350℃以上である。また、気相反応の反応温度は、好ましくは600℃以下であり、より好ましくは550℃以下であり、さらに好ましくは520℃以下である。反応温度が250℃以上であることにより、反応収率がより向上する傾向にある。また、反応温度が600℃以下であることにより、副生物の生成をより抑制でき、触媒の劣化も抑制できる傾向にある。尚、本実施形態における気相反応は脱水反応(吸熱反応)であるので、反応器内を所望の反応温度に制御するためには、反応器に熱源を設置することが好ましい。例えば、固定床反応器で工業的に気相反応を実施する場合には、多管式シェル&チューブ方式反応器を用いることが考えられる。
(反応圧力)
気相反応の反応圧力は、本実施形態の気相反応の反応平衡上は、低圧が有利であるが、圧力が高いと反応速度は向上する。従って、平衡転化率と反応速度の兼ね合いであり、好ましくは常圧〜0.3MPaG(ゲージ圧、以下同様。)であり、より好ましくは0.03〜0.25MPaGであり、さらに好ましくは、0.05〜0.20MPaGである。
(含水粗アセトニトリル)
「含水粗アセトニトリル」とは、10質量%以上70質量%以下のアセトニトリルと、30質量%以上90質量%以下の水と、を含み、その他に0質量%以上60質量%以下の不純物を含み得る組成物である。該不純物としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、酢酸、アセトアミド、アセトン、トルエン等の芳香族化合物、が挙げられる。
本実施形態において、含水粗アセトニトリルは気相反応工程により直接得ることができる。また、気相反応工程により直接得られた組成物に水を加えることで得ることもできる。
本実施形態の気相反応により得られる活性炭処理工程前の含水粗アセトニトリル中のトルエンの含有量は、反応条件により影響されるものであり、その存在量が多いと活性炭処理工程の負荷が大きくなるので、アセトニトリル100質量%に対して、1〜500質量ppmであり、好ましくは1〜100質量ppmであり、さらに好ましくは1〜50質量ppmである。活性炭処理工程前の含水粗アセトニトリル中のトルエンの含有量が上記範囲内であっても、本実施形態の製造方法によれば、トルエンを十分に除去することができる。なお、含水粗アセトニトリル中のトルエンの含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
含水粗アセトニトリル中には、反応により生成する水、及び、原料酢酸、アンモニアの希釈剤として添加された水分も含有する。また、気相反応により得られた含水粗アセトニトリルに対して、水を希釈剤として混合することにより調整してもよい。この場合、含水粗アセトニトリル中の水の含有量は、混合した水の重量も加味して求める。
含水粗アセトニトリル中の水の含有量は、含水粗アセトニトリル100質量%に対して30質量%以上90質量%以下であり、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上90質量%以下である。含水粗アセトニトリル中の水の含有量が高いと後述する活性炭処理工程において、該含水粗アセトニトリルを処理することで、トルエン等の芳香族化合物をより効率よく除去できる傾向にある。一方、含水粗アセトニトリル中の水の含有量が90質量%を超えると後述する精製工程において、含水粗アセトニトリル又は粗アセトニトリル中の水を除去せしめる効率の悪化に繋がる。
〔精製工程〕
本実施形態のアセトニトリルの製造方法は、含水粗アセトニトリルを精製して、製品アセトニトリルを得る精製工程を有していてもよい。精製工程に含まれる工程としては、含水粗アセトニトリルから水、アンモニア及びその他不純物を除去するように構成されていれば特に限定されないが、例えば、濃縮工程及び脱水工程などが挙げられる。
(濃縮工程)
濃縮工程は、含水粗アセトニトリルからアンモニアを分離し、粗アセトニトリルを得る工程である。アンモニアの分離方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸留塔を用いる方法が挙げられる。ここで、「粗アセトニトリル」とは、含水粗アセトニトリルから、大部分のアンモニアが除かれて濃縮されたアセトニトリルであり、主に50質量%以上75質量%未満のアセトニトリルと、25質量%以上50質量%以下の水と、その他不純物と、を含み得る混合物である。
(脱水工程)
脱水工程は、粗アセトニトリルから水を分離し、脱水アセトニトリルを得る工程である。水の分離方法としては、特に限定されないが、例えば、粗アセトニトリルにアルカリを添加し、抽出脱水を行う方法が挙げられる。用い得るアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、苛性ソーダが挙げられる。また、アルカリの使用量は、粗アセトニトリル中の水分含有量によって適宜調整することができ、粗アセトニトリルの水分含有量に対して、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは30〜60質量%である。抽出温度は、好ましくは5〜60℃であり、より好ましくは10〜35℃である。
抽出脱水方法としては、特に限定されないが、例えば、連続式向流接触型を用いる方法が好ましい。連続式向流接触塔の充填物としては、特に限定されないが、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インターロックサドル、テラレットパッキング、ディクソンリング、マクマホンパッキングが好ましく、規則充填物としては、特に限定されないが、例えば、網目構造の充填物が好ましい。
(脱水アセトニトリル)
ここで、「脱水アセトニトリル」とは、75質量%以上99質量%以下のアセトニトリルと、0質量%以上25質量%未満の水と、その他不純物と、を含み得る混合物である。
(その他の工程)
精製工程は、その他の工程、例えば低沸分除去工程及び高沸分除去工程を有していてもよい。低沸分除去工程及び高沸分除去工程は、脱水アセトニトリルからアセトニトリルの沸点未満の低沸成分と、アセトニトリルの沸点超過の高沸成分と、を除去し、後述する製品アセトニトリルを得る工程である。低沸分除去方法及び高沸分除去方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸留塔を用いる方法が挙げられる。
また、含水粗アセトニトリルは、既に公知であるプロピレン又はイソブテンとアンモニア及び分子状酸素との接触的アンモ酸化反応によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に副生成物として得られる副生粗アセトニトリルの蒸留精製方法と同様に、或いは、該蒸留精製方法に倣って精製することもできる。参考となる従来技術としては、特に限定されないが、例えば、特開昭55−153757号公報、特許第3104312号公報、WO2013/146609号パンフレット等を挙げることができる。
上記精製工程を経ることにより、製品アセトニトリルを得ることができる。
(製品アセトニトリル)
「製品アセトニトリル」とは、アセトニトリルの含有量が99質量%超であり、アセトニトリル以外の不純物の含有量が1質量%未満のアセトニトリルをいう。製品アセトニトリルに含まれるアセトニトリルの含有量は、好ましくは99.5質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは99.9質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは99.99質量%以上100質量%以下である。
〔活性炭処理工程〕
活性炭処理工程は、含水粗アセトニトリル、及び/又は、含水粗アセトニトリルの精製物を、活性炭処理する工程である。より具体的には、反応器出口から排出される含水粗アセトニトリル、及び/又は、上記精製工程における蒸留塔出口から排出される含水粗アセトニトリルの精製物を活性炭処理することが挙げられるが、特に限定されない。ここで、「含水粗アセトニトリルの精製物」とは、濃縮工程後の粗アセトニトリル、脱水工程後の脱水アセトニトリル、低沸分除去工程後のアセトニトリル、及び高沸分除去工程後のアセトニトリルを含む包括表現である。すなわち、活性炭処理工程は、気相反応工程後であれば、どの段階で行ってもよく、例えば、気相反応工程後かつ精製工程前、精製工程中又は精製工程後に行うことができる。より具体的に、精製工程中とは、濃縮工程後、脱水工程後、及び低沸分除去工程後のいずれかであって高沸分除去工程前を意味する。
活性炭処理工程は、気相でも液相でも実施することができ、液相で処理することが好ましく、より好ましくはアセトニトリル水溶液の状態で活性炭処理する方法である。これにより効果的にトルエンの吸着除去が可能となる。
一般に活性炭は、高い表面積を持つ炭素材料である。高性能の活性炭は、比表面積が高く、精密な細孔分布を持つ。活性炭の比表面積は、通常は、500〜1000m/gである。比表面積が上記範囲内であることにより、トルエンを効率的に吸着除去することが可能である。
活性炭としては、特に限定されず、市販品を用いることができ、あらかじめ賦活された活性炭であってもよい。活性炭の賦活方法としては、ガス賦活法、薬品賦活法が挙げられる。
活性炭の形状は、特に限定されないが、粒子状のものが好ましい。粒子状の活性炭の平均粒径は、好ましくは0.1〜50mmであり、より好ましくは3〜30mmであり、さらに好ましくは2〜15mmである。平均粒径が0.1mm以上であることにより、液流及び/又はガス流により活性炭充填装置(吸着塔)から活性炭が散逸することを抑止できる傾向にある。また、粒状活性炭としては、造粒炭成型炭、破砕炭、ビーズ炭を用いることができる。
活性炭の原料としては、一般的に用いられる活性炭の原料であれば特に限定されず、例えば、やし殻(パームヤシ殻、ココナッツヤシ殻など)、天然繊維(麻、綿など)、合成繊維(レーヨン、ポリエステルなど)、合成樹脂(ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールなど)が挙げられる。
本実施の形態における活性炭処理方法は、連続式、バッチ式いずれでも構わないが、工業的な実施を想定する場合には、連続式が好ましい。また、活性炭処理においては、一般に用いられる活性炭吸着塔形式である固定層式、移動層式、膨張層式、流動層式を採用することができる。固定床連続式吸着塔の形式としては、例えば「新版 活性炭 基礎と応用」(講談社サイエンティフィク編 講談社1992年)のp.260には、2〜3塔の切替方式、線速度(LV)は5〜10m/h、と記載されている。
活性炭処理は、トルエン除去率の観点から、水を20%以上含む被処理液に対して行われることが好ましく、水を40%以上含む被処理液に対して行われることがより好ましく、水を60%以上含む被処理液に対して行われることが最も好ましい。即ち、活性炭吸着処理は、被処理液を含水粗アセトニトリル、粗アセトニトリルとすることが好ましく、より好ましくは、含水租アセトニトリルとすることである。また被処理液を含水粗アセトニトリルまたは粗アセトニトリルに水を加えたものとしてもよい。
(活性炭処理工程後のトルエンの含有量)
活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物中のトルエンの含有量は、アセトニトリル100質量%に対して、好ましくは1.0質量ppm未満であり、より好ましくは0.5質量ppm以下であり、さらに好ましくは0.1質量ppm以下である。活性炭処理工程後の、含水粗アセトニトリル及び/又は製品アセトニトリルに含まれるトルエンの含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは検出限界量以下であり、より好ましくはアセトニトリル100質量%に対して0質量%である。活性炭処理工程後の、含水粗アセトニトリル及び/又は含水粗アセトニトリルの精製物中のトルエンの含有量が上記範囲内であることにより、より高品質なアセトニトリルとなる。
また、活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物の波長200nmでの紫外線吸収の吸光度は、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.25以下であり、さらに好ましくは0.20以下である。また、活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物の波長200nmでの紫外線吸収の吸光度の下限は特に制限されず、低いほど好ましく、より好ましくは0である。波長200nmでの紫外線吸収の吸光度は、アセトニトリル中の芳香族化合物の含有量の指標となる。この観点から、活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物の波長200nmでの紫外線吸収の吸光度が上記範囲内であることにより、より高品質な製品アセトニトリルとなる。
〔アセトニトリル〕
本実施形態のアセトニトリルは、上記製造方法により得られる。このようにして得られるアセトニトリルは、化学反応用の溶媒、特には医薬中間体の合成用溶媒、精製用溶媒、高速液体クロマトグラフィーの移動相溶媒、DNA合成用溶媒及び精製用溶媒、有機EL材料合成用溶媒、或いは、電子部品の洗浄溶剤として好適に用いることができる。なお、本実施形態のアセトニトリルは、製品アセトニトリルと同義である。
以下、本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
<アセトニトリルの製造>
日揮触媒化成株式会社製H−ZSM−5ゼオライトの押出成型触媒(MFI−30/Al=80/20)を用いて、酢酸とアンモニアの気相反応を行い、含水粗アセトニトリルの製造実験を行った。反応には、流通式固定床反応装置を用いた。内径21.2mmのSUS製反応管に、上記触媒73.3gを充填した。触媒層高さは340mmであった。この反応管に水分量20質量%の酢酸水溶液(80%酢酸水溶液)及びアンモニアを供給した。
原料組成はアンモニア/酢酸=1.2(モル比)とし、WHSVは3.88h−1、反応温度は445℃、反応圧力は0.11MPaGとした。なお、反応温度は触媒層の平均温度である。反応管から流出する反応生成ガスは、反応管下部に接続した冷却器で冷却凝縮させ、含水粗アセトニトリルの溶液を得た。反応は160時間継続し、含水粗アセトニトリルを適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィーによって組成分析を行った。
なお、組成分析は以下の条件で実施した(以下同様)。
・装置:株式会社島津製作所製「GC2010」
・カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「HP−INNOWAX」
・検出器:TCD
・カラム温度:60℃(1分保持)→100℃(昇温速度10℃/分)→180℃(昇温速度20℃/分)
・インジェクション温度:200℃
・検出器温度:200℃
・キャリアガス:ヘリウム
上記条件での経過時間80h、及び160h後の含水粗アセトニトリルを分析した結果は以下の通りであった。得られた含水粗アセトニトリル中の水分量は51〜52質量%であった。
経過時間 (h) 80 160
アセトニトリル収率 (モル%) 97.4 97.3
(含水粗アセトニトリル組成)
アンモニア (質量%) 5.5 5.5
アセトニトリル (質量%) 41.6 42.0
酢酸 (質量%) 1.0 1.0
アセトン (質量%) 0.2 0.2
アセトアミド (質量%) 0.2 0.2
なお、気相反応においては、下記反応式に示した酢酸2モルからアセトンと二酸化炭素が等モル量生成する副反応が起きる。本実施例では、含水粗アセトニトリルのみをガスクロマトグラフィーで分析しており、含水粗アセトニトリルに溶解しない二酸化炭素は分析できない。そのため、分析によって検出されたアセトンの生成量から二酸化炭素の生成量を推定し、酢酸基準アセトニトリル収率(モル%)を求めた。
2CHCOOH→CHCOCH+CO+H
また、得られた含水粗アセトニトリル中に含まれる不純物のうち、トルエンの含有量を別途、ガスクロマトグラフィーによって詳細分析したところ、アセトニトリル100質量%に対して44質量ppmであった。なお、トルエン含有量の詳細分析は以下の条件で実施した(以下同様)。
・装置:株式会社島津製作所製「GC−17A」
・カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「HP−5」
・検出器:FID
・カラム温度:50℃(3分保持)→200℃(昇温速度10℃/分)
・インジェクション温度:250℃
・検出器温度:250℃
・キャリアガス:窒素
<活性炭処理工程>
上記含水粗アセトニトリル2,000gをステンレス製容器に受け入れ、そこへ、日本エンバイロケミカルズ株式会社製粒状白鷺S2Xを200g添加して密閉し、室温下、15分間攪拌混合した。しかる後、フィルターを介して活性炭処理工程後のアセトニトリル液のみを回収した。
得られた、アセトニトリル液中のトルエンの含有量を上記のガスクロマトグラフィー詳細分析、及び、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)で分析したが、ともに、トルエンは検出できなかった。なお、GC−MSは以下の条件で分析した。
・装置:アジレント・テクノロジー株式会社製「HP−6890/5973N」
・カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「HP−INNOWAX」
・オーブン温度:40℃(5分保持)→200℃(昇温速度10℃/分)
・インジェクション温度:200℃
・インターフェース温度:240℃
・キャリアガス:ヘリウム
本実施例から、酢酸とアンモニアからアセトニトリルを製造する方法において、中間細孔径ゼオライトは、高収率、高選択率でかつ、耐劣化性にも優れる好適な触媒であることが分かった。一方で、該触媒では、製品品質上問題となるトルエンの副生が避けられないことも分かった。しかしながら、含水粗アセトニトリルを活性炭で処理せしめることにより、問題となるトルエンを除去できるので、該処理液を公知の方法で、蒸留精製、脱水処理を行うことにより、トルエンを含まない高純度アセトニトリルを得ることができることが判る。
〔実施例2〕
<アセトニトリルの製造>
住友化学製活性アルミナKHD−46を用いて、酢酸とアンモニアの気相反応を行い、含水粗アセトニトリルの製造実験を行った。内径20mmの石英ガラス製反応管に、上記触媒3.13gを充填した。触媒層高さは20mmであった。この反応管に水分量20質量%の酢酸水溶液(80%酢酸水溶液)及びアンモニアを供給した。
原料組成はアンモニア/酢酸=1.3(モル比)とし、WHSVは6.4h−1、反応温度は424〜467℃、反応圧力は常圧とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、含水粗アセトニトリルを組成分析した。結果は以下の通りであった。得られた含水粗アセトニトリル中の水分量は38.4〜43.1質量%であった。
経過時間 (h) 2 6
反応温度 (℃) 424 467
アセトニトリル収率 (モル%) 51.8 69.3
(含水粗アセトニトリル組成)
アンモニア (質量%) 15.6 15.7
アセトニトリル (質量%) 20.9 28.4
酢酸 (質量%) 16.0 5.9
アセトン (質量%) 2.9 5.3
アセトアミド (質量%) 6.2 1.6
また、得られた含水粗アセトニトリル中に含まれる不純物のうち、トルエンの含有量を別途、ガスクロマトグラフィーによって詳細分析したところ、アセトニトリル100質量%に対して2時間経過後が23質量ppm、6時間経過後が127質量ppmであった。
<活性炭処理工程>
上記含水粗アセトニトリル100gをステンレス製容器に受け入れ、そこへ、日本エンバイロケミカルズ株式会社製粒状白鷺S2Xを10g添加して密閉し、室温下、15分間攪拌混合した。しかる後、フィルターを介して活性炭処理工程後のアセトニトリル液のみを回収した。
得られた、アセトニトリル液中のトルエンの含有量を上記のガスクロマトグラフィー詳細分析、及び、GC−MSで分析したが、ともに、トルエンは検出できなかった。
〔実施例3〕
<アセトニトリル/トルエン/水 模擬組成液を用いた活性炭処理実験>
活性炭処理工程におけるトルエンの除去効率に対する被処理液の水分含有量の影響をみるため、模擬液を用いて活性炭処理工程を行った。模擬液としては、トルエンの含有量をアセトニトリル100質量%に対して13.5質量ppmとし、該アセトニトリルに水を添加し、液中水分含有量を0,10,20,40,60質量%に調整したものを用意した。
それぞれ水分含有量の異なる模擬液を密閉容器にアセトニトリル20g相当ずつを投入し、カルゴンカーボンジャパン株式会社製液相用破砕炭MO10活性炭1gを添加し、室温下10分攪拌した。その後、それぞれ活性炭処理工程後の模擬液中に含まれるトルエンの含有量を詳細分析して、除去率を求めた。結果を図1に示す。なお、除去率は、(活性炭処理工程前の模擬液のトルエン含有量−活性炭処理工程後の模擬液のトルエン含有量)×100/(活性炭処理工程前の模擬液のトルエン含有量)[%]にて算出した。
本実施例から、本実施の形態における活性炭処理によるトルエンの除去は、被処理液の水分量が多いほど効果的に除去できることが判る。従って、活性炭処理するのに好ましいタイミングは、第1には反応器出口の含水粗アセトニトリルであり、第2には濃縮工程の蒸留塔出口の粗アセトニトリルであり、第3には脱水工程の連続式向流接触塔出口の脱水アセトニトリルであることが判る。
〔実施例4〕
<アセトニトリル/トルエン/水 模擬組成液を用いた活性炭処理実験>
活性炭として日本エンバイロケミカルズ株式会社製粒状白鷺S2Xを用い、模擬液としてトルエンの含有量をアセトニトリル100質量%に対して13.55質量ppmとしたアセトニトリル水溶液(液中水分含有量0質量%、60質量%)を用いたこと以外は、実施例3と同様に活性炭処理試験を行った。結果を図2に示す。
〔実施例5〕
<アセトニトリル/トルエン/水 模擬組成液を用いた活性炭処理実験>
活性炭として日本エンバイロケミカルズ株式会社製粒状白鷺G2Cを用いたこと以外は、実施例4と同様に活性炭処理試験を行った。結果を図3に示す。活性炭の銘柄や使用量により前後はするが、実施例3〜5の結果から、含水アセトニトリル中の微量のトルエンは、該含水アセトニトリルの水分量が多いほど効果的に除去できることがわかる。
〔実施例6〕
<含水粗アセトニトリルの活性炭カラム処理実験>
内径30mmで高さ350mmのステンレス管に日本エンバイロケミカルズ株式会社製活性炭粒状白鷺S2Xを400g充填した。実施例1で得られた含水粗アセトニトリルをポンプにて32ml/分の供給速度で該活性炭カラム下部より通液し、カラム上部から処理後の含水粗アセトニトリルを回収した。カラムでの該含水粗アセトニトリルの活性炭層滞留時間は30分と見積もられる。該条件にて1kgの含水粗アセトニトリルを処理し、処理後の含水粗アセトニトリル中のトルエン含有量をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出限界以下であった。
本実施例から、工業的に実施可能な活性炭カラム固定層流通方式にて、トルエンを吸着除去できることが判る。
本出願は、2014年10月31日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2014−223446)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、化学反応用の溶媒や、特には医薬中間体の合成、精製に、或いは、高速液体クロマトグラフィーの移動相溶媒などに用いられる高純度アセトニトリルを酢酸とアンモニアから製造するに当たり、高収率で安定に製造でき、かつ、副生する芳香族化合物を簡便な方法で容易に除去することができるので、波長200nmでの紫外線吸収の吸光度の低い高純度なアセトニトリルの製造方法を提供する方法として産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 酢酸とアンモニアとを固体酸触媒を含有する触媒の存在下に気相反応させて含水粗アセトニトリルを得る気相反応工程と、
    前記含水粗アセトニトリル、及び/又は、前記含水粗アセトニトリルの精製物を、活性炭処理する活性炭処理工程と、を有する、
    アセトニトリルの製造方法であって、
    前記含水粗アセトニトリル中の水の含有量が、含水粗アセトニトリル100質量%に対して30質量%以上90質量%以下である、
    アセトニトリルの製造方法
  2. 前記固体酸触媒が中間細孔径ゼオライトである、請求項1に記載のアセトニトリルの製造方法。
  3. 前記活性炭処理工程後の、前記含水粗アセトニトリル及び/又は前記含水粗アセトニトリルの精製物中のトルエンの含有量が、アセトニトリル100質量%に対して、1.0質量ppm未満である、請求項1又は2に記載のアセトニトリルの製造方法。
  4. 前記活性炭処理工程において、前記含水租アセトニトリルを活性炭処理する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
  5. 前記気相反応工程において、WHSVが、0.5〜20h-1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
  6. 前記中間細孔径ゼオライトが、ZSM−5型ゼオライトを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載のアセトニトリルの製造方法。
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