JP6240618B2 - トランスミッション用潤滑剤組成物 - Google Patents

Description

本発明は、トランスミッション、特に、マニュアルギアボックスやアクスル（車軸）やダブルクラッチトランスミッションにおいて使用される潤滑剤組成物に関する。詳細には、本発明にかかる潤滑剤組成物は、優れた極圧特性、優れた耐摩耗性および低い摩擦係数を同時に示す。

優れた極圧特性、優れた耐摩耗性および優れた耐焼付き性を同時に示す潤滑剤組成物を処方することは、極めて困難である。通常、潤滑剤組成物は、これらのうちの２つの特性しか同時に示すことができない。耐摩耗剤や極圧剤や摩擦調整剤が数多く存在するが、その効果にはばらつきがあり、しかも、所与の特性については向上させるが別の特性については低下させてしまう添加剤さえある。さらに、これらの添加剤の化学的性質は複雑で、しかも、互いに反応し合って全く別の化学種を形成する場合もあり、そのような化学種による極圧特性や摩耗特性や摩擦特性や焼付き特性への影響は、最終的に不明である。一例として、摩擦調整剤にも耐摩耗剤にもなり得るジホスファイト類などの添加剤は、硫黄を含有する極圧剤中の硫黄と反応することにより、例えばチオホスホン酸誘導体などを形成することが知られている。この場合、チオホスホン酸誘導体の特性は、反応前の分子の特性と著しく異なってしまう。このように、多数の極圧剤成分が、耐摩耗剤や摩擦調整剤と反応することによって全く別の化学成分を形成する。そのような反応は制御され、最終生成物の厳密な特性も長期的に監視されない。極圧剤／耐摩耗剤／摩擦調整剤同士が相互作用すると、これらの添加剤を含有する組成物の最終的な特性が拮抗作用を受ける可能性がある。

特許文献１、特許文献２および特許文献３には、ジチオカルバメート部位を有する化合物と、ホスファイト部位を有する化合物と、ジチオホスフェート部位を有する化合物とを含む潤滑剤組成物が記載されている。しかし、どの文献においても、これらの化合物の組合せにより、優れた極圧特性、優れた耐摩耗性および優れた摩擦係数が同時に得られるとは立証されていない。さらに、どの文献においても、潤滑剤組成物の耐焼付き性の向上に関する情報は記載されていない。

米国特許出願公開第２００９／０１１９６４号明細書 米国特許第５６７４８２０号明細書 米国特許第５８７２０８５号明細書

本願の出願人は、優れた極圧特性、優れた耐摩耗性、優れた摩擦特性および優れた耐焼付き性を同時に得るために少なくとも４種類の必須添加剤を含む、新規の潤滑剤組成物を開発した。

具体的には、上記の添加剤の組合せは、金属ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、アミンジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物との組合せである。

金属ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、アミンジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物とを含む、本発明にかかる潤滑剤組成物は、優れた摩耗特性、優れた極圧特性、優れた摩擦特性および優れた耐焼付き性を同時に示す。

本発明にかかる潤滑剤組成物は、さらに、酸化および腐食についても優れた特性を示す。

本発明は、少なくとも１種の基油と、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物と、を含む潤滑剤組成物であって、
前記ジチオカルバメート部位を有する化合物が、下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメートとの混合物である、潤滑剤組成物に関する。

式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、さらに、少なくとも１つのジチオカルバメート部位を有する他種の化合物を含む。

好ましくは、ジチオカルバメート部位を有する前記他種の化合物は、ビスジチオカルバメート類、アンモニウムジチオカルバメート類およびジチオカルバメートエステル類の各単体または２種以上の混合物である。

好ましくは、ビスジチオカルバメートは、下記の式（Ｉ−ａ）で表されるビスジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_５は、炭素数１〜８の炭化水素含有基である。

好ましくは、アンモニウムジチオカルバメートは、下記の式（Ｉ−ｂ）で表されるアンモニウムジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、ジチオカルバメートエステルは、下記の式（Ｉ−ｄ）で表されるジチオカルバメートエステルである。

式中、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１５およびＲ_１６は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、ジチオカルバメート部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％、より好ましくは０．２〜４％、さらに好ましくは０．３〜２％、なおいっそう好ましくは０．５〜１％含有する。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、上記の式（Ｉ−ｃ）に対応する化合物と上記の式（Ｉ−ｅ）に対応する化合物との混合物を、質量％で、０．１〜３％、より好ましくは０．１〜２％、さらに好ましくは０．５〜２％含有する。

好ましくは、ホスファイト部位を有する化合物は、ホスファイトモノエステル類、ホスファイトジエステル類およびホスファイトトリエステル類の各単体または２種以上の混合物である。

好ましくは、ホスファイトモノエステルは、下記の一般式（ＩＩ−ａ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトモノエステルである。

式中、Ｒ_１９は、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、ホスファイトジエステルは、下記の一般式（ＩＩ−ｂ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトジエステルである。

式中、Ｒ_２０およびＲ_２１は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、ホスファイトトリエステルは、下記の一般式（ＩＩ−ｃ）で表されるホスファイトトリエステルである。

式中、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、ホスファイト部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％、より好ましくは０．２〜４％、さらに好ましくは０．３〜２％、なおいっそう好ましくは０．５〜１％含有する。

好ましくは、ジチオホスフェート部位を有する化合物は、アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類、ジチオホスフェートエステル類および金属ジチオホスフェート類の各単体または２種以上の混合物である。

好ましくは、アンモニウムジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ａ）で表されるアンモニウムジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、アミンジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｂ）で表されるアミンジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_２９、Ｒ_３０およびＲ_３１は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_２９、Ｒ_３０およびＲ_３１のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

好ましくは、ジチオホスフェートエステルは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｃ）で表されるジチオホスフェートエステルである。

式中、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_３５およびＲ_３６は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。

好ましくは、金属ジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｄ）で表される金属ジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、ジチオホスフェート部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％、より好ましくは０．２〜４％、さらに好ましくは０．３〜２％、なおいっそう好ましくは０．５〜１％含有する。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、さらに、芳香族アミン類およびフェノール誘導体類からなる群から選択される酸化防止剤を含む。本発明において「フェノール誘導体」とは、少なくとも１つのフェノール基またはフェノキシ基を有するあらゆる化合物のことを意味する。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、さらに、ポリイソブテンから誘導された分散剤を含む。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、さらに、ポリメタクリレート系のポリマーを含む。

好ましくは、前記潤滑剤組成物の、１００℃における動粘度が、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で、４〜４０ｃＳｔ、より好ましくは４．１〜３２．５ｃＳｔ、さらに好ましくは６〜１８．５ｃＳｔである。

本発明は、さらに、前記潤滑剤組成物の使用であって、トランスミッション、例えばギアボックス、アクスルなど、好ましくは動力車（motor vehicle）のマニュアルギアボックス、を潤滑するための使用に関する。

好ましくは、前記潤滑剤組成物は、車両、特に自動車の燃料消費を減少させるために使用される。

本発明は、さらに、潤滑剤組成物の摩耗特性、極圧特性、摩擦特性および耐焼付き性を向上させるための、基油中における、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物、およびジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物の使用であって、
前記ジチオカルバメート部位を有する化合物が、下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメートとの混合物である、使用に関する。

式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、少なくとも１種の基油と、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物と、から実質的に構成される潤滑剤組成物であり、
前記ジチオカルバメート部位を有する化合物が、下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメートとの混合物である。

式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

（ジチオカルバメート）
本発明にかかる潤滑剤組成物は、金属ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物およびアミンジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物を含む。以降では、説明を分かり易くするために、金属ジチオカルバメート部位を有する化合物を「金属ジチオカルバメート」と称し、アミンジチオカルバメート部位を有する化合物を「アミンジチオカルバメート」と称する。

前記金属ジチオカルバメートは、下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

好ましくは、前記金属は、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、水銀、銀、カドミウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、タリウム、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガンおよびヒ素からなる群から選択される。好ましい金属は、亜鉛、モリブデンおよびアンチモンであり、より好ましくは亜鉛およびモリブデンであり、さらに好ましくは亜鉛である。金属の混合物が使用されてもよい。前記金属ジチオカルバメートは、上記の式（Ｉ−ｅ）で示されるとおり中性であるが、化学量論量を超える金属が存在する場合には塩基性となる。

好ましくは、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、任意で少なくとも１つのヘテロ原子（例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子など）で置換されていてもよい炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは少なくとも１つの酸素原子で置換された炭化水素含有基である。

使用可能な金属ジチオカルバメートは、当業者にとって周知の化合物である。そのような化合物を製造する方法の一例は、米国特許第２４９２３１４号明細書に記載されている。例えば、そのような添加剤の製造元は、Ｖａｎｄｅｒｔｂｉｌｔ社、Ｒｈｅｉｎ Ｃｈｅｍｉｅ社、Ａｄｅｋａ社、Ｋｉｎｇ Ｉｎｄｕｓｔｒｉｅｓ社などである。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）ＡＺ、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）ＥＺ、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）７３、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）７３ Ｓｕｐｅｒ Ｐｌｕｓ、Ｍｏｌｙｖａｎ（登録商標）Ａ、Ｍｏｌｙｖａｎ（登録商標）８０７、Ｍｏｌｙｖａｎ（登録商標）８２２、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ６３０１、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ６３２０、Ｓａｋｕｒａ−Ｌｕｂｅ（登録商標）２００、Ｓａｋｕｒａ−Ｌｕｂｅ（登録商標）１６５、Ｓａｋｕｒａ−Ｌｕｂｅ（登録商標）５２５、Ｓａｋｕｒａ−Ｌｕｂｅ（登録商標）６００、Ｎａ−Ｌｕｂｅ（登録商標）ＡＤＴＣなどである。

好ましくは、前記金属ジチオカルバメートは、下記の式（Ｉ−ｅ−１）で表されるモリブデンジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、上記の式（Ｉ−ｅ）の場合と同じである。

好ましくは、前記金属ジチオカルバメートは、下記の式（Ｉ−ｅ−２）で表される亜鉛ジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、上記の式（Ｉ−ｅ）の場合と同じである。

上記の式（Ｉ−ｅ−２）に対応する特に好ましい化合物は、Ｒ_１７およびＲ_１８が、互いに独立して、炭素数５〜１２の直鎖アルキル炭化水素含有基である化合物であり、例えば、亜鉛ジアミルジチオカルバメート、亜鉛ジブチルジチオカルバメートなどである。

前記アミンジチオカルバメートは、下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表されるアミンジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

好ましくは、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、任意で少なくとも１つのヘテロ原子（例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子など）で置換されていてもよい炭化水素含有基でであってもよく、より好ましくは少なくとも１つの酸素原子で置換された炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、炭化水素含有基である。

特に好ましい化合物は、ジアミルアミンジアミルジチオカルバメート（ジアミルアミンジアミルジチオカルバミン酸塩）およびジアミルアミンジブチルジチオカルバメート（ジアミルアミンジブチルジチオカルバミン酸塩）である。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）ＥＺなどである。

好ましくは、ジチオカルバメート部位を有する化合物は、上記の式（Ｉ−ｃ）で表されるジチオカルバメートと上記の式（Ｉ−ｅ−２）で表されるジチオカルバメートとの混合物である。

好ましくは、ジチオカルバメート部位を有する化合物は、亜鉛ジチオカルバメートとジアミルアンモニウムジアミルジチオカルバメートとの混合物である。

一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、さらに、ジチオカルバメート部位を有する他種の化合物を含む。

第１の実施形態において、ジチオカルバメート部位を有する前記他種の化合物は、下記の一般式（Ｉ−ａ）で表されるビスジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_５は、炭素数１〜８の炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１、Ｒ_２、Ｒ_３およびＲ_４は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_５は、炭素数２〜６の炭化水素含有基である。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）７７２３、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ６３４０などである。

第２の実施形態において、ジチオカルバメート部位を有する前記他種の化合物は、下記の一般式（Ｉ−ｂ）で表されるアンモニウムジチオカルバメートである。

式中、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_６およびＲ_７は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

第３の実施形態において、ジチオカルバメート部位を有する前記他種の化合物は、下記の一般式（Ｉ−ｄ）で表されるジチオカルバメートエステルである。

式中、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１５およびＲ_１６は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１３およびＲ_１４は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１５およびＲ_１６は、互いに独立して、炭素数２〜６の炭化水素含有基である。

（ホスファイト）
本発明にかかる潤滑剤組成物は、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物を含む。以降では、説明を分かり易くするために、ホスファイト部位を有する化合物を「ホスファイト」と称する。

「ホスファイト」とは、ホスファイトエステルのことを意味する。ホスファイトエステルは、ホスファイトモノエステル、ホスファイトジエステルおよびホスファイトトリエステルの各単体またはこれらの混合物である。

ホスファイトモノエステルは、「ケトン」形態および「アルコール」形態の２つの形態が平衡している。ホスファイトジエステルについても同様である。

使用可能なホスファイトは、下記の一般式（ＩＩ−ａ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトモノエステルであり得る。

式中、Ｒ_１９は、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１９は、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜２０の、さらに好ましくは炭素数４〜１８の、なおいっそう好ましくは炭素数６〜１６の、特にいっそう好ましくは炭素数８〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１９は、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_１９は、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_１９は、酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換された炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

ホスファイトモノエステルとして、例えば、Ｃ_１０アルキルビスフェノールＡホスファイト、Ｃ_１２〜Ｃ_１５アルキルビスフェノールＡホスファイトなどが挙げられる。

使用可能なホスファイトは、下記の一般式（ＩＩ−ｂ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトジエステルであり得る。

式中、Ｒ_２０およびＲ_２１は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２０およびＲ_２１は、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜２０の、さらに好ましくは炭素数４〜１８の、なおいっそう好ましくは炭素数６〜１６の、なおいっそう好ましくは炭素数８〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２０およびＲ_２１は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_２０およびＲ_２１は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２０およびＲ_２１は、酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換された炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

ホスファイトジエステルとして、例えば、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ジイソデシルホスファイト、ジ−ｎ−オクチルホスファイト、ジベンジルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジオレイルホスファイトなどが挙げられる。

使用可能なホスファイトは、下記の一般式（ＩＩ−ｃ）で表されるホスファイトトリエステルであり得る。

式中、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜２０の、さらに好ましくは炭素数４〜１８の、なおいっそう好ましくは炭素数６〜１６の、なおいっそう好ましくは炭素数８〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２２、Ｒ_２３およびＲ_２４は、酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換された、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

ホスファイトトリエステルとして、例えば、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、トリジメチルフェニルホスファイト、ジフェニルエチルヘキシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス（ジプロピレングリコール）ホスファイト、トリス（ノニルフェニル）ホスファイト、トリス（２，４−ジ−ｔ−ブチルフェニル）ホスファイト、トリス（５−ノルボルネン−２−メチル）ホスファイト、トリス（トリデシル）ホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリベンジルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ポリ（ジプロピレングリコール）フェニルホスファイト、トリス（ジプロピレングリコール）ホスファイトなどが挙げられる。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ｄｕｒａｐｈｏｓ（登録商標）ＡＰ２３０、Ｄｕｒａｐｈｏｓ（登録商標）ＡＰ２４０Ｌ、Ｄｕｒａｐｈｏｓ（登録商標）ＤＢＨＰ、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）４、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）１０、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）２１３、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）６、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）７、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）８、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）９、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）１１、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）１２、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）６１３、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）６７５、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）４９、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）５３、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）７２、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）２５３、Ｄｏｖｅｒｐｈｏｓ（登録商標）２７１、Ｉｒｇａｐｈｏｓ（登録商標）ＯＰＨ、Ｒｈｏｄｉａ社製のＲｈｏｄａｐｈｏｓシリーズなどである。

本発明にかかる潤滑剤組成物は、ホスファイトを、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％含有していてもよく、好ましくは０．２〜４％、より好ましくは０．３〜２％、さらに好ましくは０．５〜１％含有する。

（ジチオホスフェート）
本発明にかかる潤滑剤組成物は、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物を含む。以降では、説明を分かり易くするために、ジチオホスフェート部位を有する化合物を「ジチオホスフェート」と称する。

使用可能なジチオホスフェートは、アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類、ジチオホスフェートエステル類および金属ジチオホスフェート類の各単体または２種以上の混合物である。アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類およびジチオホスフェートエステル類には、無灰ジチオホスフェートであるという利点、特に亜鉛を含まないジチオホスフェートであるという利点がある。

第１の実施形態において、前記ジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ａ）で表されるアンモニウムジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２５およびＲ_２６は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された炭化水素含有基である。

市販品として、例えば、アンモニウムジメチルジチオホスフェート、アンモニウムジエチルジチオホスフェート、アンモニウムジブチルジチオホスフェートなどが挙げられる。

第２の実施形態において、前記ジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｂ）で表されるアミンジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_２９、Ｒ_３０およびＲ_３１は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_２９、Ｒ_３０およびＲ_３１のうちの少なくとも１つは水素原子でない。

好ましくは、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２７およびＲ_２８は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_２９、Ｒ_３０およびＲ_３１は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、炭化水素含有基である。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３８８０などである。

第３の実施形態において、前記ジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｃ）で表されるジチオホスフェートエステルである。

式中、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_３５およびＲ_３６は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３３およびＲ_３４は、互いに独立して、炭素数２〜６の炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３５およびＲ_３６は、互いに独立して、炭素数２〜６の炭化水素含有基である。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ｉｒｇａｌｕｂｅ（登録商標）６３などである。

第４の実施形態において、前記ジチオホスフェートは、下記の一般式（ＩＩＩ−ｄ）で表される金属ジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。

好ましくは、前記金属は、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、水銀、銀、カドミウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、タリウム、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガンおよびヒ素からなる群から選択される。好ましい金属は、亜鉛、モリブデンおよびアンチモンであり、より好ましくは亜鉛およびモリブデンであり、さらに好ましくは亜鉛である。金属の混合物が使用されてもよい。前記金属ジチオホスフェートは、上記の式（ＩＩＩ−ｄ）で例示されるとおり中性であるが、化学量論量を超える金属が存在する場合には塩基性となる。

好ましくは、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、炭素数２〜２４の、より好ましくは炭素数３〜１８の、さらに好ましくは炭素数５〜１２の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、置換されていない炭化水素含有基であり、当該置換されていない炭化水素含有基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基またはベンジル基であってもよい。

好ましくは、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基または分岐鎖アルキル炭化水素含有基、より好ましくは直鎖アルキル炭化水素含有基である。

好ましくは、Ｒ_３７およびＲ_３８は、互いに独立して、任意で酸素原子および／または窒素原子および／または硫黄原子および／またはリン原子で置換されていてもよい炭化水素含有基であってもよく、より好ましくは酸素原子で置換された、炭化水素含有基である。

使用可能な金属ジチオホスフェートは、当業者にとって周知の化合物である。

例えば、そのような化合物の市販品は、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３０３８、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３０４５、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３０４８、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３０５８、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３０８０、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３１８０、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３２１２、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ３５８０、Ｋｉｋｕｌｕｂｅ（登録商標）Ｚ１１２、Ｌｕｂｒｉｚｏｌ（登録商標）１３７１、Ｌｕｂｒｉｚｏｌ（登録商標）１３７５、Ｌｕｂｒｉｚｏｌ（登録商標）１３９５、Ｌｕｂｒｉｚｏｌ（登録商標）５１７９、Ｏｌｏａ（登録商標）２６０、Ｏｌｏａ（登録商標）２６７などである。

好ましくは、前記金属ジチオホスフェートは、下記の式（ＩＩＩ−ｄ−１）で表されるモリブデンジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_３７およびＲ_３８は、上記の式（ＩＩＩ−ｄ）の場合と同じである。

好ましくは、前記金属ジチオホスフェートは、下記の式（ＩＩＩ−ｄ−２）で表される亜鉛ジチオホスフェートである。

式中、Ｒ_３７およびＲ_３８は、上記の式（ＩＩＩ−ｄ）の場合と同じである。

本発明にかかる潤滑剤組成物は、ジチオホスフェートを、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％含有していてもよく、好ましくは０．２〜４％、より好ましくは０．３〜２％、さらに好ましくは０．５〜１％含有する。

（基油）
本発明にかかる潤滑剤組成物は、用途に応じ、合成由来、天然の鉱物由来、動物由来または植物由来の、どの種類の潤滑剤基油を含んでいてもよい。

本発明にかかる潤滑剤組成物中に配合される少なくとも１種の基油は、以下にまとめたＡＰＩ分類のグループ１〜５の鉱物由来もしくは合成由来の基油（あるいは、ＡＴＩＥＬ分類の等価物）の単体、またはそのような基油の混合物とされ得る。

本発明にかかる鉱物由来の基油には、原油を常圧蒸留や減圧蒸留した後、溶剤抽出、脱アスファルト、溶剤脱ろう、水添処理、水素化分解・水素化異性化、水素化仕上げ等の精製工程に通すことによって得られる、あらゆるタイプの基油が含まれ得る。

本発明にかかる潤滑剤組成物中に配合される基油は、合成由来の基油であってもよい。そのような合成由来の基油の例としては：カルボン酸とアルコールとの特定のエステル；ポリαオレフィン；などが挙げられる。ポリαオレフィンを基油として使用する場合、当該ポリαオレフィンは、例えば、炭素数４〜３２のモノマー（例えば、オクテン、デセン等）に由来するものであり、かつ、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠して測定される１００℃での粘度が１．５〜１５ｃＳｔとなるものである。前記ポリαオレフィンは、ＡＳＴＭ Ｄ５２９６規格に準拠して測定される重量平均分子量が、典型的に２５０〜３，０００である。合成由来の基油と鉱物由来の基油との混合物が使用されてもよい。

本発明にかかる潤滑剤組成物を製造するにあたって使用する潤滑剤基油は、ギアボックスに対する使用、特には自動車のギアボックスに対する使用、より特にはマニュアルギアボックスに対する使用に適した特性、具体的には、その用途に適した粘度、粘度指数、硫黄含有量および耐酸化性を備えたものであれば、特定の潤滑剤基油に限定されない。

好ましくは、前記潤滑剤組成物中の前記潤滑剤基油の含有量は、当該潤滑剤組成物の総質量に対して、質量％で、５０％以上、より好ましくは６０％以上または７０％以上である。典型的には、前記潤滑剤基油の含有量は、本発明にかかる潤滑剤組成物の総質量に対して７５〜９０質量％である。

好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物は、ＡＰＩ分類のグループ１および／またはグループ３の鉱物由来の基油、あるいは、グループ４の合成由来の基油を含む。

好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物は、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠して測定される１００℃での動粘度が、４〜４１ｃＳｔであり、より好ましくはＳＡＥ Ｊ３０６分類に準拠して４．１〜３２．５ｃＳｔである。

好適な粘度グレードは、７５Ｗ〜１４０の間のあらゆる粘度グレードであり、特には、７５Ｗ、７５Ｗ８０および７５Ｗ９０である。

好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物は、粘度指数（ＶＩ）（ＡＳＴＭ Ｄ２２７０規格）が１２０を超えている。

（さらなる添加剤）
また、本発明にかかる潤滑剤組成物は、トランスミッション用オイルを処方するうえで適したあらゆる種類の添加剤を含んでいてもよく、例えば、ポリマー、酸化防止剤、腐食抑制剤および分散剤から選択される少なくとも１種の添加剤を、当該用途に一般的に必要とされる配合量で含む。

前記ポリマーは、せん断安定ポリマーからなる群から選択されてもよく、好ましくは、エチレンとαオレフィンとのコポリマー；ポリアクリレート（例えば、ポリメタクリレートなど）；オレフィンコポリマー（ＯＣＰ）、エチレンプロピレンジエンモノマー（ＥＰＤＭ）；ポリブテン；スチレンとオレフィンとの非水添系または水添系コポリマー；およびスチレンとアクリレートとのコポリマーからなる群から選択される。好適なポリマーは、ポリメタクリレート（ＰＭＡ）である。

好ましい分散剤は、ポリイソブチレン（ＰＩＢ）、ポリイソブチレンコハク酸無水物およびポリイソブチレンコハク酸無水物のアミン誘導体（ＰＩＢコハク酸イミド）である。

好ましい酸化防止剤の例としては、アミン系酸化防止剤［好ましくは、ジフェニルアミン類、特には、ジアルキルフェニルアミン類（オクタジフェニルアミン類など）、フェニル−α−ナフチルアミン類］、フェノール系酸化防止剤［ジブチルヒドロキシトルエン（ＢＨＴ）およびその誘導体］、含硫黄酸化防止剤（硫化フェネート類）などが挙げられる。

好ましい腐食防止剤は、フェノール誘導体であり、特には、オルト位にアルキル置換基を有するエトキシ化フェノール誘導体である。前記腐食防止剤（または腐食抑制剤）は、ジメルカプトチアジアゾール誘導体であってもよい。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８．５％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％、および
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、
含有し、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８．５％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％、および
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、
含有し、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ−２）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、および、
−少なくとも１種の付加的添加剤を０．５〜３％、
含有し、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

前記付加的添加剤は、前述したさらなる添加剤から選択されてもよい。

好ましくは、前記付加的添加剤は、前記ポリマー、前記酸化防止剤、前記腐食抑制剤および前記分散剤の各単体または２種以上の混合物である。

好ましくは、前記付加的添加剤は、少なくとも１種の酸化防止剤と少なくとも１種の分散剤との混合物である。

好ましくは、前記付加的添加剤は、少なくとも１種のポリイソブチレンコハク酸イミドと少なくとも１種のジアルキルフェニルアミンとの混合物である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８．５％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％、および
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、
から実質的に構成され、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８．５％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％、および
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、
から実質的に構成され、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ−２）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

本発明の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、
−基油を８０〜９８％、
−ホスファイト部位を有する化合物を０．５〜３％、
−ジチオホスフェート部位を有する化合物を０．５〜３％
−ジチオカルバメート部位を有する化合物を０．５〜３％、および、
−少なくとも１種の付加的添加剤を０．５〜３％、
から実質的に構成され、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、前述した一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメートと前述した一般式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートとの混合物である。

前記付加的添加剤は、前述したさらなる添加剤から選択されてもよい。

好ましくは、前記付加的添加剤は、前記ポリマー、前記酸化防止剤、前記腐食抑制剤および前記分散剤の各単体または２種以上の混合物である。

好ましくは、前記付加的添加剤は、少なくとも１種の酸化防止剤と少なくとも１種の分散剤との混合物である。

好ましくは、前記付加的添加剤は、少なくとも１種のポリイソブチレンコハク酸イミドと少なくとも１種のジアルキルフェニルアミンとの混合物である。

本発明は、さらに、トランスミッション（例えばギアボックス、アクスルなど）（好ましくは自動車のマニュアルギアボックス）を潤滑する方法であって、
前記潤滑剤組成物をトランスミッション（例えばギアボックスなど）と接触させる工程、
を含む、潤滑方法に関する。

好ましくは、この方法により、潤滑剤組成物に関して、摩耗の減少、極圧特性の向上、摩擦の軽減および耐焼付き性の向上を同時に達成することができる。また、有利なことに、この方法により、車両、特に自動車の燃料消費を減少させることができる。

潤滑剤組成物中において、前述した４種類の添加剤を使用することにより、その潤滑剤組成物に関して、摩耗の減少、極圧特性の向上、摩擦係数の低下および耐焼付き性の向上を同時にもたらすことができる。

好ましい一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、少なくとも１種の基油と、前述した式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、前述した式（Ｉ−ｃ）で表されるアミンジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物と、少なくとも１種の酸化防止剤と、少なくとも１種の分散剤とを含む。酸化防止剤及び分散剤を配合することにより、特に、分散剤を配合することにより、極めて良好な極圧特性、摩耗特性、摩擦特性および耐焼付き性に悪影響を及ぼすことなく、優れた耐酸化性を確保することができる。驚くべきことに、分散剤を使用することにより、耐酸化性を顕著に向上させることが可能である。

（実施例１）
潤滑剤組成物１〜７を、以下の材料により調製する：
● グループ４のＰＡＯ系基油（１００℃における動粘度がＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で６ｃＳｔであり、かつ、ＡＳＴＭ ２２７０規格に準拠して測定される粘度指数が１２５である。）；
● ジチオカルバメート［Ｖａｎｌｕｂｅ ＥＺ；詳細には、下記の式で表される亜鉛ジアミルジチオカルバメート：

と、下記の式で表されるジアミルアミンジアミルジチオカルバメート（ジアミルアミンジアミルジチオカルバミン酸塩）：

との混合物である。］；
● ホスファイトＰ_１（詳細には、ジ−ｎ−オクチルホスファイトである。）；および
● ジチオホスフェート（詳細には、３−［（ビス−イソプロピルオキシホスフィノチオイル）チオ］プロピオン酸エチルエステルである。）

次に、潤滑剤組成物１〜７の摩耗特性、極圧特性および摩擦特性を測定する。

前記キャメロンプリント往復動摩擦試験機の動作原理については、例えば、2011年にＳＴＬＥ（米国潤滑トライボロジー学会）より公刊されたA G Plintによる“Friction Force Measurement in Reciprocating Tribometers”に記載されている。測定手順としては、平面に対するローラの摩擦係数を測定する。ローラは、試験対象の潤滑剤に全体を浸けた状態で、走行時のギアボックスの制御機構内で生じる摩擦条件を再現するために、温度条件（６０℃、１００℃および１４０℃）、荷重条件（５０Ｎ、１００Ｎ、１５０Ｎおよび２００Ｎ）および周波数条件（５Ｈｚ、１０Ｈｚ、２０Ｈｚおよび４０Ｈｚ）を変化させて測定する。前記表面上における前記ローラの移動距離、すなわち、往復ストローク量は７ｍｍに固定する。試験時間は１０分間とする。以上の試験条件下で摩擦の減少が得られるということは、試験対象の潤滑剤を適用したギアボックスにおいて、ギアの変速時の応力およびギアの摩擦損失が減少するということを意味する。上記の異なる温度条件下における摩擦係数の数値（μｍｉｎ）は、試験終了直前の最終分において、前記４種類の荷重条件での摩擦係数の平均の最小値に相当する。

潤滑剤組成物１〜６は、本発明の必須添加剤に対応する前述した３種類の材料のうちの１種類又は２種類しか含まない、対照としての潤滑剤組成物である。潤滑剤組成物１〜６は、優れた耐摩耗性、優れた極圧特性および優れた摩擦特性を同時に示さない。本発明にかかる潤滑剤組成物である潤滑剤組成物７だけが、優れた耐摩耗性、優れた極圧特性および優れた摩擦特性を同時に示す。

（実施例２）
本発明にかかる潤滑剤組成物である潤滑剤組成物８及び９を、以下の材料により調製する：
● グループ４のＰＡＯ系基油（１００℃における動粘度がＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で６ｃＳｔであり、かつ、ＡＳＴＭ ２２７０規格に準拠して測定される粘度指数が１２５である。）；
● ジチオカルバメート［Ｖａｎｌｕｂｅ（登録商標）ＥＺ；詳細には、亜鉛ジアミルジチオカルバメートとジアミルアミンジアミルジチオカルバメート（ジアミルアミンジアミルジチオカルバミン酸塩）との混合物である。］；
● ホスファイトＰ_１（詳細には、ジ−ｎ−オクチルホスファイトである。）；
● ジチオホスフェート（詳細には、３−［（ビス−イソプロピルオキシホスフィノチオイル）チオ］プロピオン酸エチルエステルである。）；
● アミン系酸化防止剤［詳細には、Ｃ_４基及びＣ_８基によりジアルキル化されたジフェニルアミンである。］；および
● 分散剤（詳細には、ポリイソブチレン誘導体、より詳細には、ポリイソブチレンコハク酸イミド誘導体である。）

次に、潤滑剤組成物７〜９の極圧特性、酸化特性および腐食特性を（ＦＺＧ試験によって）測定する。

潤滑剤組成物７〜９は、極めて良好な極圧性能レベルを示す。潤滑剤組成物７及び８の損傷発生荷重ステージは１２であり、潤滑剤組成物９の損傷発生荷重ステージは１０である。これらの結果は、損傷発生荷重ステージが９である参照用のオイルＨと肩を並べるものである（潤滑剤組成物７及び８に至っては、参照用のオイルＨよりも優れている）。なお、この参照用のオイルＨは、当該オイルの質量に対する質量％で、グループ１の基油を７２％、ポリメタクリレート系のポリマーを１１％、ＰＡＯを８％、およびパッケージ添加剤（亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、ジブチルホスファイト、アリールホスファイト、および酸化防止剤としてのジフェニルアミンを含む）を８％含有する。以上から、潤滑剤組成物７〜９は、前記参照用のオイルＨに比べて高い荷重まで機能不良が起こらないので、その参照用のオイルＨよりも優れた極圧挙動を示す。

さらに、潤滑剤組成物７〜９、特に潤滑剤組成物９は、（銅や鋼に対する）腐食性および酸化性が低い。

（実施例３）
対照用の潤滑剤組成物１０〜１５を、以下の材料により調製する：
● グループ４のＰＡＯ系基油（１００℃における動粘度がＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で６ｃＳｔであり、かつ、ＡＳＴＭ ２２７０規格に準拠して測定される粘度指数が１２５である。）；
● ジチオカルバメート［詳細には、亜鉛ジアミルジチオカルバメートとジアミルアミンジアミルジチオカルバメート（ジアミルアミンジアミルジチオカルバミン酸塩）との混合物であり、実施例１で使用するジチオカルバメートと同じ混合物である。］；
● ホスファイトＰ_２（詳細には、トリフェニルホスファイトである。）；および
● 含硫黄オレフィン［その極圧特性により知られており、詳細には、Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ２５４５である。］

次に、潤滑剤組成物１０〜１５の摩耗特性および極圧特性を測定する。

Ａｄｄｉｔｉｎ（登録商標）ＲＣ ２５４５は極圧剤であり、本発明にかかる潤滑剤組成物中に配合されるジチオホスフェート部位を有する化合物と同じ機能を担う。

しかし、ジチオカルバメートおよびホスファイトに対し、ジチオホスフェートに代えて含硫黄オレフィンを組み合わせた場合には、優れた耐摩耗性および優れた極圧特性を同時に得ることができない。

以上から、本発明にかかる潤滑剤組成物を構成する化合物のうちの１つでも、それと同じ機能を担うものの化学構造が異なる別の化合物（すなわち、同種の添加剤でも別の系列に属する添加剤）に代えた場合、耐摩耗性、極圧特性および摩擦特性の３つの特性の向上を同時に達成できない。

（実施例４）
比較例としての潤滑剤組成物１６を調製する。潤滑剤組成物１６では、本発明にかかる潤滑剤組成物である潤滑剤組成物７において、前述した金属ジチオカルバメートとアミンジチオカルバメートとの混合物（Ｖａｎｌｕｂｅ ＥＺ）を、亜鉛ジアミルジチオカルバメート（Ｖａｎｌｕｂｅ ＡＺ）単独に置き換えることにより、調製している。

上記の結果から、前述した式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートと前述した式（Ｉ−ｃ）で表されるアミンジチオカルバメートとの組合せにより、潤滑剤組成物の良好な耐摩耗性を実現することができるだけでなく、耐焼付き性を極めて有意に向上させることができる。

その一方で、前述した式（Ｉ−ｅ）で表される金属ジチオカルバメートのみを潤滑剤組成物中に配合した場合には、優れた耐焼付き性を得ることができない。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様１〕
少なくとも１種の基油と、
ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、
ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、
ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物と、
を含む潤滑剤組成物であって、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート

（式中、Ｒ _８ およびＲ _９ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
● 下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート

（式中、Ｒ _１７ およびＲ _１８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。）との混合物である、潤滑剤組成物。
〔態様２〕
請求項１に記載の潤滑剤組成物において、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート

（式中、Ｒ _８ およびＲ _９ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
● 下記の一般式（Ｉ−ｅ−２）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート

（式中、Ｒ _１７ およびＲ _１８ は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基である。）との混合物である、潤滑剤組成物。
〔態様３〕
請求項２に記載の潤滑剤組成物において、Ｒ _１７ およびＲ _１８ が、互いに独立して、炭素数５〜１２の直鎖アルキル基である、潤滑剤組成物。
〔態様４〕
請求項１から３のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、ジチオカルバメート部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％（好ましくは０．２〜４％、より好ましくは０．３〜２％、さらに好ましくは０．５〜１％）含有する、潤滑剤組成物。
〔態様５〕
請求項１から４のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、上記の式（Ｉ−ｃ）に対応するアミンジチオカルバメートと上記の式（Ｉ−ｅ）に対応する金属ジチオカルバメートとの混合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜３％（好ましくは０．１〜２％、より好ましくは０．５〜２％）含有する、潤滑剤組成物。
〔態様６〕
請求項１から５のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、ホスファイト部位を有する化合物が、ホスファイトモノエステル類、ホスファイトジエステル類およびホスファイトトリエステル類の各単体または２種以上の混合物である、潤滑剤組成物。
〔態様７〕
請求項６に記載の潤滑剤組成物において、ホスファイトモノエステルが、
● 下記の一般式（ＩＩ−ａ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトモノエステル

（式中、Ｒ _１９ は、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様８〕
請求項６に記載の潤滑剤組成物において、ホスファイトジエステルが、
● 下記の一般式（ＩＩ−ｂ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトジエステル

（式中、Ｒ _２０ およびＲ _２１ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様９〕
請求項６に記載の潤滑剤組成物において、ホスファイトトリエステルが、
● 下記の一般式（ＩＩ−ｃ）で表されるホスファイトトリエステル

（式中、Ｒ _２２ 、Ｒ _２３ およびＲ _２４ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様１０〕
請求項１から９のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、ホスファイト部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％（好ましくは０．２〜４％、より好ましくは０．３〜２％、さらに好ましくは０．５〜１％）含有する、潤滑剤組成物。
〔態様１１〕
請求項１から１０のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、ジチオホスフェート部位を有する化合物が、アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類、ジチオホスフェートエステル類および金属ジチオホスフェート類の各単体または２種以上の混合物である、潤滑剤組成物。
〔態様１２〕
請求項１１に記載の潤滑剤組成物において、アンモニウムジチオホスフェートが、
● 下記の一般式（ＩＩＩ−ａ）で表されるアンモニウムジチオホスフェート

（式中、Ｒ _２５ およびＲ _２６ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様１３〕
請求項１１に記載の潤滑剤組成物において、アミンジチオホスフェートが、
● 下記の一般式（ＩＩＩ−ｂ）で表されるアミンジチオホスフェート

（式中、Ｒ _２７ およびＲ _２８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）である、潤滑剤組成物。
〔態様１４〕
請求項１１に記載の潤滑剤組成物において、ジチオホスフェートエステルが、
● 下記の一般式（ＩＩＩ−ｃ）で表されるジチオホスフェートエステル

（式中、Ｒ _３３ およびＲ _３４ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _３５ およびＲ _３６ は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様１５〕
請求項１１に記載の潤滑剤組成物において、金属ジチオホスフェートが、
● 下記の一般式（ＩＩＩ−ｄ）で表される金属ジチオホスフェート

（式中、Ｒ _３７ およびＲ _３８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。）である、潤滑剤組成物。
〔態様１６〕
請求項１から１５のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、ジチオホスフェート部位を有する化合物を、当該潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％（好ましくは０．２〜４％、より好ましくは０．３〜２％、さらに好ましくは０．５〜１％）含有する、潤滑剤組成物。
〔態様１７〕
請求項１から１６のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、芳香族アミン類およびフェノール誘導体類からなる群から選択される酸化防止剤を含む、潤滑剤組成物。
〔態様１８〕
請求項１から１７のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、ポリイソブテンから誘導された分散剤を含む、潤滑剤組成物。
〔態様１９〕
請求項１から１８のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、ポリメタクリレート系のポリマーを含む、潤滑剤組成物。
〔態様２０〕
請求項１から１９のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物の、１００℃における動粘度が、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で、４〜４０ｃＳｔ（好ましくは４．１〜３２．５ｃＳｔ、より好ましくは６〜１８．５ｃＳｔ）である、潤滑剤組成物。
〔態様２１〕
請求項１から２０のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、トランスミッション（例えばギアボックス、アクスルなど）（好ましくは自動車のマニュアルギアボックス）を潤滑するための使用。
〔態様２２〕
請求項１から２０のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、車両（特に自動車）の燃料消費を減少させるための使用。
〔態様２３〕
自動車のトランスミッションを潤滑する方法であって、
請求項１から２０のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物をトランスミッションと接触させる工程、
を含む、潤滑方法。
〔態様２４〕
潤滑剤組成物の摩耗特性、極圧特性、摩擦特性および耐焼付き性を向上させるための、基油中における、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物、およびジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物の使用であって、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート

（式中、Ｒ _８ およびＲ _９ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _１０ 、Ｒ _１１ およびＲ _１２ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
● 下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート

（式中、Ｒ _１７ およびＲ _１８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。）との混合物である、使用。

Claims (11)

1. 少なくとも１種の基油と、
   潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜３％含有する、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物と、
   潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％含有する、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物と、
   潤滑剤組成物の総質量に対し、質量％で、０．１〜５％含有する、ジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物と、
   を含む潤滑剤組成物であって、
   前記ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
   ● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート
   

   

   （式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
   ● 下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート
   

   

   （式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。）との混合物であり、
   前記ホスファイト部位を有する化合物が、下記の一般式（ＩＩ−ｂ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトジエステル
   

   

   （式中、Ｒ _２０ およびＲ _２１ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）であり、
   前記ジチオホスフェート部位を有する化合物が、アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類およびジチオホスフェートエステル類の各単体または２種以上の混合物から選択され、
   前記アンモニウムジチオホスフェート類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ａ）で表されるアンモニウムジチオホスフェート
   

   

   （式中、Ｒ _２５ およびＲ _２６ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）であり、
   前記アミンジチオホスフェート類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ｂ）で表されるアミンジチオホスフェート
   

   

   （式中、Ｒ _２７ およびＲ _２８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）であり、および
   前記ジチオホスフェートエステル類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ｃ）で表されるジチオホスフェートエステル
   

   

   （式中、Ｒ _３３ およびＲ _３４ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _３５ およびＲ _３６ は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。）である、潤滑剤組成物。
2. 請求項１に記載の潤滑剤組成物において、ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
   ● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート
   

   

   （式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
   ● 下記の一般式（Ｉ−ｅ−２）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート
   

   

   （式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、直鎖アルキル炭化水素含有基である。）との混合物である、潤滑剤組成物。
3. 請求項２に記載の潤滑剤組成物において、Ｒ_１７およびＲ_１８が、互いに独立して、炭素数５〜１２の直鎖アルキル基である、潤滑剤組成物。
4. 請求項１から３のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、芳香族アミン類およびフェノール誘導体類からなる群から選択される酸化防止剤を含む、潤滑剤組成物。
5. 請求項１から４のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、ポリイソブテンから誘導された分散剤を含む、潤滑剤組成物。
6. 請求項１から５のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物が、さらに、ポリメタクリレート系のポリマーを含む、潤滑剤組成物。
7. 請求項１から６のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、当該潤滑剤組成物の、１００℃における動粘度が、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠した測定値で、４〜４０ｃＳｔである、潤滑剤組成物。
8. 請求項１から７のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、トランスミッションを潤滑するための使用。
9. 請求項１から７のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、車両の燃料消費を減少させるための使用。
10. 自動車のトランスミッションを潤滑する方法であって、
    請求項１から７のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物をトランスミッションと接触させる工程、
    を含む、潤滑方法。
11. 潤滑剤組成物の摩耗特性、極圧特性、摩擦特性および耐焼付き性を向上させるための、基油中における、ジチオカルバメート部位を有する少なくとも１種の化合物、ホスファイト部位を有する少なくとも１種の化合物、およびジチオホスフェート部位を有する少なくとも１種の化合物の使用であって、
    ジチオカルバメート部位を有する化合物が、
    ● 下記の一般式（Ｉ−ｃ）で表される少なくとも１種のアミンジチオカルバメート
    

    

    （式中、Ｒ_８およびＲ_９は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ_１０、Ｒ_１１およびＲ_１２のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）と、
    ● 下記の一般式（Ｉ−ｅ）で表される少なくとも１種の金属ジチオカルバメート
    

    

    （式中、Ｒ_１７およびＲ_１８は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｍは金属カチオンであり、ｎはこの金属カチオンの価数である。）との混合物であり、
    前記ホスファイト部位を有する化合物が、下記の一般式（ＩＩ−ｂ）で表される、アルコール型および／またはケトン型のホスファイトジエステル
    

    

    （式中、Ｒ _２０ およびＲ _２１ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）であり、
    前記ジチオホスフェート部位を有する化合物が、アンモニウムジチオホスフェート類、アミンジチオホスフェート類およびジチオホスフェートエステル類の各単体または２種以上の混合物から選択され、
    前記アンモニウムジチオホスフェート類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ａ）で表されるアンモニウムジチオホスフェート
    

    

    （式中、Ｒ _２５ およびＲ _２６ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基である。）であり、
    前記アミンジチオホスフェート類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ｂ）で表されるアミンジチオホスフェート
    

    

    （式中、Ｒ _２７ およびＲ _２８ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ は、互いに独立して、水素原子であるか又は炭素数１〜３０の炭化水素含有基であり、Ｒ _２９ 、Ｒ _３０ およびＲ _３１ のうちの少なくとも１つは水素原子でない。）であり、および
    前記ジチオホスフェートエステル類が、下記の一般式（ＩＩＩ−ｃ）で表されるジチオホスフェートエステル
    

    

    （式中、Ｒ _３３ およびＲ _３４ は、互いに独立して、炭素数１〜３０の、任意で置換されていてもよい炭化水素含有基であり、Ｒ _３５ およびＲ _３６ は、互いに独立して、炭素数１〜１８の炭化水素含有基である。）である、使用。