以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るシート処理装置を含んでなる画像形成システムの断面図である。この画像形成システム1000は、画像形成装置10と、画像形成装置10のシート排出側に接続されるシート処理装置500とを備える。
画像形成装置10は、画像形成装置の本体、イメージリーダ200、原稿給送装置100及び操作表示装置400で構成されている。原稿給送装置100は、原稿トレイ上に上向きにセットされた原稿を、先頭頁から順に1枚ずつ給紙し、湾曲したパスを介してプラテンガラス102上を図1の左から読み取り位置を経て右へ搬送し、その後、外部の排紙トレイ112に向けて排出する。
この原稿がプラテンガラス102上の読み取り位置を通過するときに、読み取り位置に対応する位置に保持されたスキャナユニット104により原稿画像が読み取られる。具体的には、原稿が読み取り位置を通過する際に、原稿の読み取り面がスキャナユニット104のランプ103の光で照射され、読み取り面からの反射光がミラー105、106、107を介してレンズ108に導かれる。このレンズ108を通過した光は、イメージセンサ109の撮像面に結像する。
このように読み取り位置を左から右へ通過するように原稿を搬送することによって原稿読み取り走査が行われる。原稿の搬送方向に対して直交する方向を主走査方向とし、搬送方向を副走査方向とする。すなわち、原稿が読み取り位置を通過する際に主走査方向に原稿画像を1ライン毎にイメージセンサ109で読み取りながら、原稿を副走査方向に搬送することによって、原稿画像全体の読み取りが行われる。そして、光学的に読み取られた画像はイメージセンサ109によって画像データに変換されて出力される。イメージセンサ109から出力された画像データは、後述する画像信号制御部202(図6参照)において所定の処理が施された後に画像形成装置10の露光制御部110にビデオ信号として入力される。
露光制御部110は、入力されたビデオ信号に基づきレーザ光を変調して出力し、該レーザ光はポリゴンミラー110aにより走査されながら感光ドラム111上に照射される。感光ドラム111には走査されたレーザ光に応じた静電潜像が形成される。この感光ドラム111上の静電潜像は、現像器113から供給される現像剤によって現像剤像として可視像化される。また、レーザ光の照射開始と同期したタイミングで、各カセット114,115、手差給紙部125または両面搬送パス124から用紙が給紙され、この用紙は感光ドラム111と転写部116との間に搬送される。感光ドラム111に形成された現像剤像は、給紙された用紙上に転写部116によって転写される。
現像剤像が転写された用紙は定着部117に搬送され、定着部117は用紙を熱圧することによって現像剤像を用紙上に定着させる。定着部117を通過した用紙はフラッパ121および排出ローラ118を経て画像形成装置10から外部に向けて排出される。
ここで、用紙がその画像形成面が下向きになる状態(フェイスダウン)で排出されるときには、定着部117を通過した用紙はフラッパ121の切換動作により一旦、反転パス122内に導かれる。そして、その用紙の後端がフラッパ121を通過した後に、用紙がスイッチバックされて排出ローラ118により画像形成装置10から排出される。さらに、用紙の両面に画像形成を行う両面記録が設定されている場合には、フラッパ121の切換動作により用紙が反転パス122に導かれた後に両面搬送パス124へ搬送される。そして、両面搬送パス124へ導かれた用紙を上述したタイミングで感光ドラム111と転写部116との間に再度給紙する制御が行われる。
画像形成装置10から排出され、シート処理装置500に導入される用紙を、以下、単に「シート」または「シートP1」と呼称する。
図2は、シート処理装置500の断面図である。
シート処理装置500は、画像形成装置10から搬出されたシートを取り込む。シート処理装置500は、後処理として、取り込んだ複数のシートを整合して束ねる処理、ソート処理、ノンソート処理を行える。シート処理装置500はさらに、後処理として、シート束の後端側をステイプルするステイプル処理(綴じ処理)、シートの後端側にパンチ穴を開ける(穿孔する)パンチ処理、シート束を二つ折りにして製本する製本処理等の処理を行える。従ってシート処理装置500は、穿孔装置としてパンチ(穴開け)処理を行うパンチユニット750、ステイプル処理を行うステイプル部760、製本処理を行う製本部800を備えている。
シート処理装置500は、シートの搬入口付近に、搬入されるシートを検知するための入口センサ531を備える。搬送ローラ対503とバッファローラ505との間には、搬送手段としての横位置シフトユニット1001が設けられている。横位置シフトユニット1001は、シートを幅方向にオフセットして排紙するシフトソートモードやシートにパンチ穴をあけるパンチモードの際に、シートを幅方向にシフトさせながら搬送する機能を有する。横位置シフトユニット1001は、搬送ローラ1101a、1102a、従動ローラ1101b、1102bを備える。また、シート処理装置500は、シートを積載するトレイ700及び701を備える。
図3は、パンチユニット750の模式図である。図3の左側、右側がそれぞれ図2の手前側、奥側である。図3の上側が、シートの搬送方向(下流側)である。パンチユニット750は、シート後端部に穴開けを行う穿孔装置である。
図3に示すように、パンチユニット750には、シート幅方向(図3の左右方向)における中央から手前と奥側のそれぞれ等しい位置に、ストッパ99a、99bが設けられている。ストッパ99a、99bは、横位置シフトユニット1001により搬送されるシートの斜行を補正するためにシートと当接する当接部材である。スイッチバック搬送されたシートは、その搬送方向における後端部がストッパ99a、99bに突き当てられることで後端辺の斜行が補正される。
図4は、シート処理装置500の横位置シフトユニット1001の模式図である。図4の左側、右側がそれぞれ図2の手前側、奥側である。図4の上側が、シートの搬送方向(下流側)である。
搬送モータM1103により、ギア1116およびタイミングベルト1115を介して搬送ローラ1101a,1102aに駆動力が与えられ、搬送ローラ1101a,1102aと従動ローラ1101b,1102bとが協働してシートの搬送を行う。
シートの搬送方向に直交するシート幅方向における位置ずれを、以下、「横ずれ」ないし「横位置ずれ」と称する。以降「シート幅方向」の語は、特別に言及がない限り、斜行の有無とは関係なく、シートの搬送方向に直交し且つシート面に平行な方向の意味で用いる。搬送されるシートの横位置ずれ量は、検知手段としての横位置センサ1104(1104a、1104b)によるシートの側端(横端部)の検知により求められる。
横位置センサユニット1105において、2つの横位置センサ1104a、1104bは、シート幅方向に沿って配列され、距離A(約10mm)の間隔をもって配置される。横位置センサ1104a、1104bの構成は同様であり、いずれも発光素子と受光素子とを有して構成される。
横位置センサユニット1105(以下、「センサユニット1105」と略記することもある)は、横位置センサ移動モータM1106によって矢印44、43に示す図4の左右方向に駆動される。それにより、横位置センサ1104は、センサユニット1105と一体となってシート幅方向に移動する。
横位置センサ移動モータM1106はステッピングモータで構成され、その駆動パルスから、センサユニット1105の移動距離、ひいては各横位置センサ1104の移動距離を求めることができる。センサユニット1105のホームポジションは、横位置HPセンサ1108により検出される。
図5(a)は、横位置センサ1104がOFFからONになるときのシートP1と横位置センサ1104との関係を示した図である。図5(b)は、横位置センサ1104がONからOFFになるときのシートP1と横位置センサ1104との関係を示した図である。横位置センサ1104の受光回路にはヒステリシスを持たせているので、図示したようにOFFからONになるときとONからOFFになるときとで、横端部を検知する位置が異なる。
また、横位置シフトユニット1001を図4の矢印45、46に示す左右方向に駆動してシフトさせる横位置シフトモータM1107が、センサユニット1105とは別体に設けられる。横位置シフトユニット1001のホームポジションは、シフトユニットHPセンサ1109により検出される。
後端検知センサ1112は、搬送されてきたシートを検知すると共に、シートの後端が横位置シフトユニット1001内の搬送ローラ1101a、1101bを抜けたことを検知する。
図6は、画像形成システム1000の制御系のブロック図である。
画像形成装置10は、CPU回路部150を備えている。CPU回路部150は、CPU153、ROM151、RAM152を内蔵し、ROM151に格納されている制御プログラムにより画像形成装置10を総括的に制御する。RAM152は、制御データを一時的に保持し、また制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。
原稿給送装置制御部101は、原稿給送装置100をCPU回路部150からの指示に基づき駆動制御する。イメージリーダ制御部201は、イメージリーダ200のスキャナユニット104、イメージセンサ109等に対する駆動制御を行い、イメージセンサ109から出力されたアナログ画像信号を画像信号制御部202に転送する。画像信号制御部202は、アナログ画像信号をデジタル信号に変換した後に各処理を施し、このデジタル信号をビデオ信号に変換してプリンタ制御部301に出力する。プリンタ制御部301は、画像信号制御部202から入力されたビデオ信号に基づき露光制御部110を駆動する。
操作部401は、操作表示装置400とCPU回路部150との間で情報のやり取りを行う。操作部401は、操作表示装置400からの各種操作指示を受け付けてCPU回路部150にその操作指示を伝えると共に、CPU回路部150からの信号に基づく情報を操作表示装置400の表示部に表示させる。
シート処理装置500にはまた、フィニッシャ制御部501が搭載される。フィニッシャ制御部501は、CPU回路部150と情報のやり取りを行うことによってシート処理装置500全体の駆動制御を行う。このフィニッシャ制御部501は画像形成装置10側に設けてもよい。
フィニッシャ制御部501は、CPU550、ROM551、RAM552等を備える。フィニッシャ制御部501は、不図示の通信ICを介して画像形成装置10側のCPU回路部150と通信してデータ交換を行う。そして、フィニッシャ制御部501は、CPU回路部150からの指示に基づき、ROM551に格納された各種プログラムを実行してシート処理装置500を駆動制御する。
また、フィニッシャ制御部501は、入口センサ531、後端検知センサ1112、シフトユニットHPセンサ1109、横位置センサ1104の検知結果に基づき、モータM1107、M1106、M1103、パンチユニット750を制御する。
図7は、シートP1と横位置センサユニット1105の待機位置との関係を示す図である。
センサユニット1105は、シートP1の奥側に配置される。斜行が無く且つ横位置ずれのない状態のシートP1の奥側の側端位置を「基準の横位置」(規定の横位置)とし、以降これを、基準横端位置903と呼称する。ただし、基準横端位置903はシートP1のサイズによって異なる。
図において、センサユニット1105の待機位置902は、シート幅方向における横位置センサ1104aの位置で表現されるとする。待機位置902は、基準横端位置903から奥側にCmm離れた位置である。待機位置902は、各サイズのシートP1に想定される奥側への最大の横ずれが生じた場合の横端位置である限界横端位置904よりも奥側に設定されている。従って、センサユニット1105の移動開始前の段階で(横端位置の検知動作開始前に)横位置センサ1104aがON状態となっていることはなく、横位置センサ1104a、1104bはいずれもOFFになっている。
図8は、パンチ処理のフローチャートである。このパンチ処理は、画像形成装置10のCPU回路部150からパンチ処理の実行指示があったとき、フィニッシャ制御部501が実行する。このパンチ処理においては、穿孔動作の前に横位置ずれ補正、斜行補正等がなされる。
まず、フィニッシャ制御部501は、CPU回路部150から送られてくるシートのサイズ情報を取得し、取得したサイズに応じた待機位置902に横位置センサユニット1105を移動させる(ステップS101)。
次に、フィニッシャ制御部501は、入口センサ531がONになるのを待つ(ステップS102)。入口センサ531がONになったら、フィニッシャ制御部501は、シートP1の横位置補正量Zを決定する横位置補正量決定処理を実行する(ステップS103)。この横位置補正量決定処理については図9、図10で後述する。
次に、フィニッシャ制御部501は、シートP1の後端が搬送ローラ対503を抜けるのを待つ(ステップS104)。シート後端が搬送ローラ対503を抜けたか否かは、入口センサ531がOFFになってからのシートP1の搬送距離から判断される。入口センサ531がOFFになりシート後端が搬送ローラ対503を抜けたら、フィニッシャ制御部501は、ステップS103で求めた横位置補正量Zに基づき、横位置ずれ補正を行うよう制御する(ステップS105)。すなわち、フィニッシャ制御部501は、シフトユニット1001を横位置ずれがなくなる方向に横位置補正量Zの分だけ移動させる。
その後、フィニッシャ制御部501は、搬送モータM1103を一旦停止させる(ステップS106)。次いでフィニッシャ制御部501は、搬送モータM1103を逆転させ、パンチユニット750のストッパ99a、99bにシートP1の後端部を突き当てることで、シートP1の斜行補正を行う(ステップS107)。
フィニッシャ制御部501は、斜行補正が施されたシートP1がストッパ99a、99bに当接した状態で、シートP1に穿孔動作を行うよう制御する(ステップS108)。次に、フィニッシャ制御部501は、搬送モータM1103を起動し(ステップS109)、シートP1の搬送を再開する。次に、フィニッシャ制御部501は、今回の処理対象のシートP1が最終シートであるか否かを判別し(ステップS110)、最終シートでない場合は、処理をステップS102に戻す。一方、最終シートである場合は、フィニッシャ制御部501は、今回のシートP1のトレイ700、701への排出が完了するのを待ち(ステップS111)、排出が完了したら、各モータを停止させて(ステップS112)、図8の処理が終了する。
次に、横位置補正量決定処理について、図9、図10のフローチャートと図11〜図20とを併せて参照しつつ説明する。図9及び図10は、図8のステップS103で実行される横位置補正量決定処理のフローチャートである。
まず、フィニッシャ制御部501は、シート搬送方向における横位置センサ1104a、1104bが配置された地点に、シートP1の先端が到達するのを待つ(ステップS201)。そして、当該地点にシート先端が到達したら、フィニッシャ制御部501は、シート幅方向においてセンサユニット1105がシートP1に近づく方向に移動するように、横位置センサ移動モータM1106の駆動を開始する(ステップS202)。これにより、センサユニット1105の横位置センサ1104a、1104bは、待機位置902からの移動を開始する。横位置センサ1104a、1104bはいずれも、シートP1のずれ量が最大の場合においてもシート側端より装置奥側の位置に待機しているため、シートP1に近づく方向は常に奥側から手前側に向かう方向となる。
以下のステップS203〜S213、S216〜S218で、横位置センサ1104a、1104bの検知結果という複数回の検知結果に基づき横位置ずれ量J、斜行量α及び斜行方向が求められる。
センサユニット1105の移動の往行程において、横位置センサ1104aが横位置センサ1104bよりも先にONするので、フィニッシャ制御部501は、まず、横位置センサ1104aがONするのを待つ(ステップS203)。横位置センサ1104aがONしたら、フィニッシャ制御部501は1回目の横位置検知までの移動距離である横位置検知距離X1を求め、それをRAM552上のメモリに記憶させる(ステップS204)。
図11は、1回目の検知時の状態を示す図である。搬送中のシートP1は斜行しているので、シートが搬送されるにつれシートP1の側端と横位置センサ1104a、1104bとの相対的な位置が変化する。
図11に示すように、横位置検知距離X1は、待機位置902から横位置センサ1104aがシートP1の横端部を検知するまでのセンサユニット1105の(ひいては横位置センサ1104aの)、シート幅方向における移動距離である。
次に、フィニッシャ制御部501は、搬送方向における1回目の検知をしたシート上のポイントを求めるべく、シート搬送距離Y1を算出し、それをRAM552上のメモリに記憶させる(ステップS205)。ここで、シート搬送距離Y1は、搬送方向におけるシートP1の先端が検知されてからセンサユニット1105によりシートP1の横端部が1回目に検知されるまでのシートP1の搬送距離である(図11)。すなわちシート搬送距離Y1は、入口センサ531がONした地点901から、横位置センサ1104aがシートP1の横端部を検知した時点のシート先端の位置905までの、搬送方向における距離である。
次に、フィニッシャ制御部501は、横位置センサ1104bがONするのを待つ(ステップS206)。横位置センサ1104bがONしたら、フィニッシャ制御部501は2回目の横位置検知までの移動距離である横位置検知距離X2を求め、それをRAM552上のメモリに記憶させる(ステップS207)。
図12は、2回目の検知時の状態を示す図である。図12に示すように、横位置検知距離X2は、待機位置902から横位置センサ1104bがシートP1の横端部を検知するまでのセンサユニット1105の(ひいては横位置センサ1104aの)、シート幅方向における移動距離である。
次に、フィニッシャ制御部501は、搬送方向における2回目の検知をしたシート上のポイントを求めるべく、シート搬送距離Y2を算出し、それをRAM552上のメモリに記憶させる(ステップS208)。ここで、シート搬送距離Y2は、搬送方向におけるシートP1の先端が検知されてからセンサユニット1105によりシートP1の横端部が2回目に検知されるまでのシートP1の搬送距離である(図12)。すなわちシート搬送距離Y2は、入口センサ531がONした地点901から、横位置センサ1104bがシートP1の横端部を検知した時点のシート先端の位置906までの、搬送方向における距離である。
次に、フィニッシャ制御部501は、横位置センサ移動モータM1106を停止させ、所定時間経過後、再びセンサユニット1105を待機位置へ戻す(ステップS209)。
次に、図10のステップS210で、フィニッシャ制御部501は、シートの斜行の向きを把握するために、X2−X1>Aが成立するか否かを判別する。すなわちフィニッシャ制御部501は、RAM552上に記憶された横位置検知距離X2と横位置検知距離X1との差分が、横位置センサ1104a、1104bの配置間隔(距離A)より大きいか否かを判別する。
その判別の結果、X2−X1>Aが成立する場合は、フィニッシャ制御部501は、シートP1の手前側が奥側よりも先行する方向に傾いている「手前進み斜行」であると判断して、処理をステップS211に進める。一方、X2−X1>Aが成立しない場合は、フィニッシャ制御部501は、シートP1の奥側が手前側より先行する方向に傾いている「奥進み斜行」であると判断して、処理をステップS216に進める。なお、斜行無しは奥進み斜行に含めて以降の決定処理を行うこととする。
まず、ステップS211では、フィニッシャ制御部501は、X1値、X2値、Y1値、Y2値に基づいて、手前進み斜行におけるシートP1の斜行量αを求める。
図13は、手前進み斜行における斜行量αを説明するための、シートP1と横位置センサ1104との関係を示す図である。
搬送方向における横位置センサ1104a、1104bの配置位置におけるシートP1の側端位置を考えたとき、1回目の検知時から2回目の検知時までにシートP1の側端位置が変位した量を変位量X3とする。斜行量αは、変位量X3を、搬送方向1mmあたりに換算した値である。例えば、手前進み斜行の場合、図13に示すように、X2値とX1値との差分からセンサ間隔である距離Aを引くことで、斜行による側端位置の変位量X3を求めることができる。斜行が零であるならば、シートP1が搬送されても側端位置は変化しないから、変位量X3も零である。求めた変位量X3(=X2−X1−A)を、1回目の検知から2回目の検知までのシートP1の搬送距離(Y2−Y1)で割ることで、斜行量αを求めることができる。手前進み斜行時の斜行量αは、下記数式1で求めることができる。
[数1]
α=(X2−X1−A)/(Y2−Y1)
次に、図10のステップS212では、フィニッシャ制御部501は、後端位置補正距離fを算出する。
図14は、手前進み斜行における後端位置補正距離fを説明するための、シートP1と横位置センサ1104との関係を示す図である。横位置センサ1104bは、シート後端に近い位置で2回目の側端の検知を行うが、シート搬送方向において、検知した位置からシート後端までには少し距離がある。この距離を後端位置補正距離fとする。後端位置補正距離fにより、シートP1の後端位置が予測される。後端位置補正距離fという値は、横位置ずれ量Jの決定、いずれも後述する変位量Hの予測及び補正量Hの決定を、搬送方向におけるシートP1の後端位置について行えるようにするために用いられる。従って、横位置ずれ量J、変位量H及び補正量Hは、シート後端に関して表現される値である。
まず、図14に示すように、距離Bは、入口センサ531がONする地点901から、シート搬送方向における横位置センサ1104が配置されている位置までの距離であり、固定値である。シートP1の搬送方向長さをL1とする。搬送方向長さL1はシートサイズによって定まる。
搬送距離Y2から距離Bを引くことで、2回目の検知時のシートP1の先端の位置906から、シート搬送方向における横位置センサ1104が配置されている位置までの距離が求まる(Y2−B)。搬送方向長さL1から(Y2−B)を引くことで、後端位置補正距離fが求まる。従って、後端位置補正距離fは、下記数式2から求めることができる。
[数2]
f=L1−(Y2−B)
次に、図10のステップS213では、フィニッシャ制御部501は、横位置ずれ量Jを決定する。図15は、手前進み斜行における横位置ずれ量Jを説明するための、シートP1と横位置センサ1104との関係を示す図である。
横位置ずれ量Jは、シートP1の後端が、基準横端位置903に対してシート幅方向にずれている量である。横位置ずれ量Jは、奥方向へのずれを正の値としている。この横位置ずれ量Jは、従来の横位置ずれ補正の手法においては直接に適用されていた量であるが、本実施の形態では、そのまま適用するわけではない。
図15に示すように、後端位置補正距離fにより予測されるシートP1の後端位置における側端位置が、後端部横端位置909である。シート幅方向における、基準横端位置903と後端部横端位置909との距離が横位置ずれ量Jとなる。
横位置ずれ量Jは次のようにして求める。手前進み斜行の場合、横位置検知距離X2は、2回目の検知位置がシートP1の後端に近いほど大きくなる。そのため、シート後端位置で側端を検知したと仮定した場合の横位置検知距離は、横位置検知距離X2に対して「α×f」分だけ加えた値となる。図7でも説明したように、シート幅方向における、基準横端位置903から待機位置902までの距離はCである。手前進み斜行時の横位置ずれ量Jは下記数式3により求めることができる。
[数3]
J=C−(X2−A+α×f)
求めた横位置ずれ量Jがプラスの場合は、シートP1が奥方向にずれていることになり、横位置ずれ量がマイナスの場合は、シートP1が手前方向にずれていることになる。
次に、図10のステップS214では、フィニッシャ制御部501は、補正量Hを決定する。図16で、補正量Hについて説明する。
図16は、手前進み斜行したシートP1の斜行補正の様子を示す図である。斜行補正の際には、パンチユニット750のストッパ99a、99bにシートP1の後端部が突き当たる。そして、手前進み斜行の場合、奥側のストッパ99bを回動支点としてシートP1がシート面に平行な平面内で回動変位する。すなわち、ストッパ99bを中心にシートP1が図16の反時計方向に回動することで斜行が矯正される。
補正量Hは、ストッパ99への突き当てによる斜行補正時に生じるシートP1の横方向のずれを考慮して横位置ずれ量Jを補正するための量である。本実施の形態に係る補正量Hによる補正が適用されるシートP1が実線で示され、補正量Hによる補正が適用されない従来の手法によるシートP1xが点線で示される。まず、点線で示したシートP1xに着目する。
距離Lfは、基準横端位置903から、奥側のストッパ99bまでの距離であり、シートサイズによって決まる。従来の手法によれば、斜行補正前に横位置ずれ量Jが解消されているから、シート幅方向における、シートP1xの後端の側端位置Qからストッパ99bまでの距離はLfとなっている。
このシートP1xが斜行補正されると、ストッパ99bを中心に回動変位することによって、シートP1xの後端の側端位置Qが奥側に変位することになる。そのため、斜行補正後の後端の側端位置Qからストッパ99bまでの距離は、距離LfよりもH’だけ長くなってしまう。
そこで、誤差であるH’値が生じないように、斜行補正後のシートP1の横位置ずれがちょうど零になるようにすればよい。すなわち、斜行補正後に、基準横端位置903から後端の側端位置Qまでの距離が距離Lfとなるようにすればよい。そのためには、斜行補正に際し、シートP1の後端のうち、奥側の側端位置(側端位置Q相当)からの、シートP1の後端に沿った実際の長さがLfである位置を、ストッパ99bに当接させればよい。言い換えれば、斜行補正前の、基準横端位置903から後端の側端位置Qまでの、シート搬送方向における距離がLf−Hとなるように、シートP1の横位置を調整しておけばよい。
本実施の形態では、実線で示すシートP1のように、斜行補正の前に行う横位置ずれ補正(図8のステップS105)において、実際に適用される量である横位置補正量Zに、補正量Hを反映させる。手前進み斜行時の補正量Hは、シートP1の斜行量αを考慮して、下記数式4で求められる。
[数4]
H=Lf−(S×Lf)
ここで、補正係数Sは斜行量αに基づいて求まる。図17、図18でS値の設定を説明する。
図17は、斜行量αごとの補正係数Sの設定テーブルを示す図である。図18は、斜行量α、斜行角度θ、補正係数Sを説明する図である。
図17に示す設定テーブルは、予めROM551に格納されている。この設定テーブルにおいて、斜行量αの各範囲に応じて補正係数Sが対応付けられている。斜行角度θは斜行量αを斜行角度に変換したものである。
図8の三角形を参照して説明すると、斜行量αをb/a、距離Lfをcに置き換えて考えることができる。ここで、tanθ=b/aであるから、θはθ=arctan(b/a)で求められる。aについてはa=c×cosθで求められる。本実施の形態ではcosθが補正係数Sに相当する。補正係数Sは斜行量αに応じて予め複数用意されている。補正係数Sは1より小さい値で、大小関係はS1>S2>・・・>S6となっている。
次に、図10のステップS215では、フィニッシャ制御部501は、横位置補正量Zを決定する。
斜行補正の実行により生じる横方向のずれの方向は常に奥方向である。従って、横位置ずれ補正時(図8のステップS105)には、横位置ずれ量Jよりも補正量H分だけ余計に手前方向へシートP1を移動させることが必要となる。横位置補正量Zは、横位置ずれ量Jと補正量Hとから、下記数式5により算出され決定される。
[数5]
Z=J+H
横位置ずれ補正において、横位置補正量Zの値が正の場合は手前方向へ、負の場合は奥方向へ、それぞれシートP1を移動させることになる。
次に奥進み斜行の場合について説明する。奥進み斜行の場合は、ステップS216以降の処理がなされる。ステップS216では、フィニッシャ制御部501は、X1値、X2値、Y1値、Y2値に基づいて、奥進み斜行におけるシートP1の斜行量αを求める。
図19は、奥進み斜行における斜行量αを説明するための、シートP1と横位置センサ1104との関係を示す図である。
図19に示すように、奥進み斜行の場合、1回目の検知時から2回目の検知時までのシートP1の側端位置の変位量X3は、センサ間隔である距離AからX2値とX1値との差分を引くことで求めることができる。求めた変位量X3(=A−(X2−X1))を、1回目の検知から2回目の検知までのシートP1の搬送距離(Y2−Y1)で割ることで、斜行量αを求めることができる。奥進み斜行時の斜行量αは、下記数式6で求めることができる。
[数6]
α=(A−(X2−X1))/(Y2−Y1)
次に、図10のステップS217では、フィニッシャ制御部501は、後端位置補正距離fを決定する。ステップS212で実行した手前進み斜行の場合と同様に、後端位置補正距離fは、上記数式2から求めることができる。
次に、図10のステップS218では、フィニッシャ制御部501は、横位置ずれ量Jを決定する。奥進み斜行の場合、横位置検知距離X2は、2回目の検知位置がシートP1の後端に近いほど小さくなる。そのため、シート後端位置で側端を検知したと仮定した場合の横位置検知距離は、横位置検知距離X2から「α×f」分だけ差し引いた値となる。奥進み斜行時の横位置ずれ量Jは下記数式7により求めることができる。
[数7]
J=C−(X2−A−α×f)
奥進み斜行の場合も、求めた横位置ずれ量Jがプラスの場合は、シートP1が奥方向にずれていることになり、横位置ずれ量がマイナスの場合は、シートP1が手前方向にずれていることになる。
次に、図10のステップS219では、フィニッシャ制御部501は、補正量Hを決定する。
図20は、奥進み斜行したシートP1の斜行補正の様子を示す図である。斜行補正の際には、パンチユニット750のストッパ99a、99bにシートP1の後端部が突き当たる。そして、奥進み斜行の場合は、手前側のストッパ99aを回動支点としてシートP1が平面内で回動変位する。すなわち、ストッパ99aを中心にシートP1が図20の時計方向に回動することで斜行が矯正される。
本実施の形態に係る補正量Hによる補正が適用されるシートP1が実線で示され、補正量Hによる補正が適用されない従来の手法によるシートP1xが点線で示される。まず、点線で示したシートP1xに着目する。
距離Lbは、基準横端位置903から、手前側のストッパ99aまでの距離であり、シートサイズによって決まる。従来の手法によれば、斜行補正前に横位置ずれ量Jが解消されているから、シート幅方向における、シートP1xの後端の側端位置Qからストッパ99aまでの距離はLbとなっている。
このシートP1xが斜行補正されると、ストッパ99aを中心に回動変位することによって、シートP1xの後端の側端位置Qが奥側に変位することになる。そのため、斜行補正後の後端の側端位置Qからストッパ99aまでの距離は、距離LbよりもH’だけ長くなってしまう。
奥進み斜行の場合は、手前進み斜行の場合に比べて、シートP1の回動支点となる位置と回動方向が異なるが、補正量Hの決定については同様に考えることができる。斜行補正に際し、シートP1の後端のうち、奥側の側端位置(側端位置Q相当)からの、シートP1の後端に沿った実際の長さがLbである位置を、ストッパ99aに当接させればよい。言い換えれば、斜行補正前の、基準横端位置903から後端の側端位置Qまでのシート搬送方向における距離がLb−Hとなるように、シートP1の横位置を調整しておけばよい。奥進み斜行時の補正量Hは、シートP1の斜行量αを考慮して、下記数式8で求められる。
[数8]
H=Lb−(S×Lb)
この補正係数Sについては、図17に示す設定テーブルから求められる。なお、演算処理において斜行量α=0の場合に対処するためには、ステップS219で、補正係数Sを「1」に設定すればよい。
ステップS219の処理後のステップS215では、フィニッシャ制御部501は、ステップS218、S219でそれぞれ求めたJ値、H値を数式5に適用して横位置補正量Zを決定する。
奥進みの場合も、斜行補正の実行により生じる横方向のずれの方向は常に奥方向である。従って、横位置ずれ補正時(図8のステップS105)には、横位置ずれ量Jよりも補正量H分だけ余計に手前方向へシートP1を移動させることになる。
ステップS215の処理後は図8のステップS104に処理が進み、ステップS105で、横位置補正量Zに基づく横位置ずれ補正が実行される。その後の斜行補正(ステップS107)の処理後には横位置ずれが解消されることになり、その状態で、穿孔動作(ステップS108)が適切な位置になされることになる。
本実施の形態によれば、横位置センサ1104の検知結果から、斜行補正前のシートP1の斜行量α、及びシート後端についての横位置ずれ量Jが決定される(第1、第2の決定手段)。そして斜行補正により生じるシート幅方向の変位量Hが斜行量α等に基づいて予測され、横位置ずれ量J及び変位量Hから横位置補正量Zが決定される(第3の決定手段)。よって、斜行補正により生じる横ずれを考慮して、横位置ずれ補正のための適切な補正量を求めることができる。そして、横位置補正量Zに基づいて横位置ずれ補正がなされることで、生産性を低下させることなく横位置ずれを解消でき、その後の後処理、例えば穿孔処理を高精度に行うことができる。
なお、本実施の形態では、搬送されるシートP1の斜行を補正する補正手段としてストッパ99a、99bを用いたが、シートP1の端部と当接する当接部材であればよく、形態は問わない。例えば、当接部材は3つ以上に分かれて構成されてもよいし、1本の棒状に構成されてもよい。変位量Hを決定する際には、当接部材のうち、斜行補正時にシートP1と当接して回動支点となる位置が把握できればよい。斜行補正時に回転始点となる当接位置から、基準横端位置903までの距離(Lf、Lb)に応じて変位量Hを決定すればよい。
なお、斜行補正時に当接部材に当接するのはシートP1の後端に限るものではなく、先端が当接することで斜行補正される構成としてもよい。
ところで、本実施の形態では、シート後端部に穿孔する場合を想定したため、シート後端について横位置補正量Zを決定した。しかし、シート搬送方向におけるいずれの位置を横位置補正量Zの決定対象の基準とするかは限定されない。例えば、シート先端部に穿孔する場合には、斜行量α等からシート先端近傍について横位置補正量Zを決定してもよい。従って、横位置ずれ量J、変位量H及び補正量Hは、シート搬送方向において決定基準として決めた位置について統一してなされるようにすればよい。
また、横位置ずれ補正に際し、パンチ処理の位置精度を高めることを念頭においてシート後端の横位置ずれ量Jを求めることとした。しかし、パンチ処理以外の他の後処理を念頭に置き、それに応じたシートの部分の横位置ずれ補正を行う場合にも、本発明を適用可能である。
なお、本実施の形態では、シートP1の幅方向の側端位置を検知する検知手段である、横位置センサユニット1105の横位置センサ1104の数は2個とした。しかし、斜行補正前のシートP1の横位置ずれ及び斜行を把握できればよいので、搬送方向における複数個所でシート側端を検知できればよい。従って、例えば、1個のセンサを2往復させることで、シート搬送方向における複数箇所で側端を検知する構成としてもよい。
あるいは、横位置センサユニット1105において3個以上のセンサをシート幅方向に沿って配列し、複数のセンサの検知結果の組み合わせによって横位置ずれ及び斜行を把握してもよい。
なお、本実施の形態では、横位置補正量Zに基づいてパンチ穴の位置を合わせるために、横位置ずれ補正においては、シート(ないしシフトユニット1001)をシフトさせる構成を採用した。しかしこれに限るものでなく、シート(ないしシフトユニット1001)及びパンチユニット750の少なくとも一方をシフトさせるように構成してもよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。