JP6226241B2 - シャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置、船舶 - Google Patents
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Description
船舶が一機の主機と一基のプロペラとを備えた、いわゆる一軸船の場合、船舶が大型化すると、当然ながら、一基のみのプロペラに作用する荷重度が増加する。十分な推進力を得るには、プロペラの回転速度を高めたり、プロペラの径を大きくする必要がある。すると、プロペラの周速が速くなるので、プロペラ翼端近傍の圧力が下がって、水中に気泡が生じる現象であるキャビテーションが過大に発生することがある。キャビテーションが発生すると、船尾船底を通じて船体が振動する。また、キャビテーションによってプロペラにエロージョンが生じることがあり、プロペラの耐久性に悪影響を及ぼす。
このうち、OLP方式では、二基のプロペラを前後にずらして配置し、船尾から見た場合に二基のプロペラの少なくとも一部が重なるように配置する。OLP方式を採用することで推進性能が一軸船から5〜10%程度改善できる。
インターロックプロペラ方式では、一方のプロペラの翼と翼との間に他方のプロペラの翼が入るように配置する。
プロペラを左右並列する方式では、プロペラを船長方向の同じ位置に並べて配置する。
また、前方のプロペラの回転により、速度の速い回転流が新たに形成されるため、後方のプロペラは非常に複雑な流れの中で動作する必要があり、必然的にキャビテーションが発生する範囲が広がってしまう。その結果、過大な振動が発生する恐れがある。更に、前方のプロペラのプロペラ翼の先端からチップボルテックスキャビテーション(翼端渦キャビテーション)を発生した場合、発生した気泡が後方のプロペラのプロペラ翼面上で破裂するなどして、そのプロペラ翼にエロージョンを発生させる可能性もある。
この発明の第一態様によれば、船尾船体に設けられた左舷プロペラおよび右舷プロペラと、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの後方において、前記船尾船体の船幅方向中心に配置された1つの舵、または左舷舵および右舷舵からなる2つの舵を設け、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの前方にそれぞれ設けられ、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラのプロペラ軸を回転自在に支持するシャフトブラケットと、を備え、前記船幅方向中心側における前記左舷プロペラのプロペラ翼の先端と前記右舷プロペラのプロペラ翼の先端との距離は、0mより大きく1.0m以下とされ、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向は、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上部において船幅方向中心側から外側に向かって回転する外回りとされ、前記シャフトブラケットは、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの前記プロペラ軸を回転自在に支持する軸支持部と、前記軸支持部から上方に向けて延び、前記軸支持部と船尾船体とを接続するストラットと、を備え、前記ストラットは、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上部に対し、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向とは反対方向の流れを与えるように形成され、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラのプロペラ直径をDpとしたとき、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心位置と、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの中心高さにおける前記舵の前縁との距離が、1.0Dp以下であり、前記船尾船体は、前記右舷プロペラおよび前記左舷プロペラと同じ高さの先端部の位置が、前記右舷プロペラと前記左舷プロペラの回転面の船首側の端の位置よりも船首側に位置する一軸船型の船尾構造を有し、前記軸支持部は、前記先端部の位置よりも船尾側に設けられ、前記ストラットは、前記右舷プロペラと前記左舷プロペラの回転面の船首側の端の位置よりも船首側であって、かつ、前記先端部の位置よりも船尾側に設けられて前記軸支持部から上方に向けて延び、前記船体に接続されている。
また、ストラットにより、左舷プロペラおよび右舷プロペラの回転方向とは反対方向の流れが付与されるので、左舷プロペラおよび右舷プロペラ(10R)に対する流れの回転方向の速度が相対的に高まる。これによって、右舷プロペラ(10R)および左舷プロペラにおいて、より多くの前進方向の推力を発揮させることが可能となり、推進性能を向上させることができる。
このように構成することで、フィンにより、左舷プロペラおよび右舷プロペラの回転方向とは反対方向の流れが付与されるので、左舷プロペラおよび右舷プロペラに対する流れの回転方向の速度が相対的に高まる。これによって、右舷プロペラおよび左舷プロペラにおいて、より多くの前進方向の推力を発揮させることが可能となり、推進性能を向上させることができる。
このような構成によれば、右舷プロペラおよび左舷プロペラを船幅方向中心の近傍に近接させて配置することで、推進性能の向上を図ることができる。右舷プロペラおよび左舷プロペラにおけるベアリングフォース、キャビテーション、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置の構成を示す下面図である。図2は、推進装置の構成を示す側面図である。
ここでは、船舶として、多軸船の一種である一軸船型の船尾構造を有する二軸船(船舶、近接二軸船)1を例に説明する。
図1に示すように、この実施形態における二軸船1の推進装置は、右舷プロペラ10Rと、左舷プロペラ10Lと、舵40と、を備えている。
左舷プロペラ10Lは、船尾船体3の船底4の左舷側の下方に設けられている。左舷プロペラ10Lは、左舷プロペラ軸12Lの一端に接続されている。船尾船体3の内部の左舷側には、左舷主機18Lが設けられている。左舷プロペラ軸12Lは、船底4に設けられたボッシング11Lを通して船尾船体3内部に貫通し、他端が左舷主機18Lに接続されている。左舷主機18Lは、左舷プロペラ軸12Lを介して左舷プロペラ10Lを回転させる。
シャフトブラケット13R、13Lは、右舷プロペラ軸12R、左舷プロペラ軸12Lを回転自在に支持する筒状支持部14R、14Lと、筒状支持部14R、14Lから上方に向けてV字状に延び、上端が船尾船体3の船底4に接続された複数のストラット15R、16R、15L、16Lと、を備えている。
ここで、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとの距離を、船幅方向中心C側における右舷プロペラ10Rの最外周部と左舷プロペラ10Lの最外周部との間隔であるプロペラチップ間距離dで表す。その場合、プロペラチップ間距離dは、プロペラ翼同士の接触の恐れがなく、かつ、縦渦を捉えられるように右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとを船幅方向中心Cに近く配置できるよう、なるべく小さく設定するのが好ましい。具体的には、以下のようにして決定される。
図3において、横軸は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとのプロペラチップ間距離dの値を示している。縦軸は、船舶の推進性能指標であり、同じ船尾船体3に一組のプロペラおよび主機で推進させる一軸船とした場合の推進性能を1.0として正規化した値を示している。ここで、推進性能は馬力性能のことであり、同一速力を出すために必要な馬力が小さいほど性能が良い、すなわち燃費性能が良いことになる。従って、縦軸の推進性能指標の数値が小さくなるほど推進性能が良く、数値が大きくなるほど推進性能が悪い。したがって、一軸船と比較して推進性能を向上させるためには、推進性能を1.0以下にする必要がある。したがって、プロペラチップ間距離dの上限を、1.0mと設定するのが好ましい。
右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lは、その領域80と重なる領域S2、S1の範囲で、効率良く縦渦V1,V2を回収できる。そして、プロペラチップ間距離dを小さくすればするほど、領域S2及び領域S1を併せた面積が大きくなるため、推進性能をより向上させることができる。
舵40は、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lよりも後方側(船尾側)に配置されている。舵40は、翼断面形状で、船尾船体3の船底4から鉛直下方に延びる舵軸41に取り付けられている。舵40は、舵軸41とともに鉛直軸線回りに回転し、二軸船1の針路方向を変更する。
このようにして、二軸船1によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
なお、上記第一実施形態では、二軸船1の船尾船体3が、一軸船型の船尾構造を有するものとしたが、これに限らない。船尾船体3において、舵40の前方に、船幅方向中心Cに沿って延びるスケグを備えるようにしてもよい。
次に、この発明にかかるシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置および船舶の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態とシャフトブラケット13R、13Lの構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、この発明の第二実施形態に係るシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置の構成を示す下面図である。図6は、図5の要部拡大図であり、シャフトブラケットのストラットの断面形状を示す図である。図7は、この発明の第二実施形態に係るシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置を後方から見た図である。
図5、図6、図7に示すように、この実施形態における二軸船1は、上記第一実施形態と同様の構成で設けられた右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lと、舵40と、を備えている。
このようにして、二軸船1によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
次に、この発明にかかるシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置および船舶の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第二実施形態とシャフトブラケット13R、13Lの構成のみが異なるので、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図8は、この発明の第三実施形態に係るシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置を後方から見た図である。
図8に示すように、この実施形態における二軸船1は、上記第二実施形態と同様の構成で設けられた右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lと、舵40と、を備えている。
このようにして、二軸船1によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
3 船尾船体
4 船底
9 先端部
10L 左舷プロペラ
10R 右舷プロペラ
11L,11R ボッシング
12L 左舷プロペラ軸
12R 右舷プロペラ軸
13R,13L シャフトブラケット
14R,14L 筒状支持部
15R,15L、16R,16L、25R,25L、26R,26L ストラット
18L 左舷主機
18R 右舷主機
40 舵
40f、40fp 前縁
41 舵軸
45 フィン
80 領域
C 船幅方向中心
d プロペラチップ間距離
Ls 基準線
V1,V2 縦渦
Claims (3)
- 船尾船体に設けられた左舷プロペラおよび右舷プロペラと、
前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの後方において、前記船尾船体の船幅方向中心に配置された1つの舵、または左舷舵および右舷舵からなる2つの舵を設け、
前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの前方にそれぞれ設けられ、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラのプロペラ軸を回転自在に支持するシャフトブラケットと、を備え、
前記船幅方向中心側における前記左舷プロペラのプロペラ翼の先端と前記右舷プロペラのプロペラ翼の先端との距離は、0mより大きく1.0m以下とされ、
前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向は、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上部において船幅方向中心側から外側に向かって回転する外回りとされ、
前記シャフトブラケットは、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの前記プロペラ軸を回転自在に支持する軸支持部と、前記軸支持部から上方に向けて延び、前記軸支持部と船尾船体とを接続するストラットと、を備え、
前記ストラットは、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上部に対し、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向とは反対方向の流れを与えるように形成され、
前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラのプロペラ直径をDpとしたとき、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心位置と、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの中心高さにおける前記舵の前縁との距離が、1.0Dp以下であり、
前記船尾船体は、前記右舷プロペラおよび前記左舷プロペラと同じ高さの先端部の位置が、前記右舷プロペラと前記左舷プロペラの回転面の船首側の端の位置よりも船首側に位置する一軸船型の船尾構造を有し、
前記軸支持部は、前記先端部の位置よりも船尾側に設けられ、
前記ストラットは、前記右舷プロペラと前記左舷プロペラの回転面の船首側の端の位置よりも船首側であって、かつ、前記先端部の位置よりも船尾側に設けられて前記軸支持部から上方に向けて延び、前記船体に接続されているシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置。 - 前記軸支持部は、その下部の外周部に、放射状に延びる1枚以上のフィンを備え、前記各フィンは、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの下部に対し、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向とは反対方向の流れを与えるように形成されている請求項1に記載のシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置。
- 請求項1又は2に記載のシャフトブラケットを有する近接二軸船の推進装置を備える船舶。
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