本開示は、かかるフッ素化オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む、「樹脂直鎖状」フッ素化オルガノシロキサンブロックコポリマー、硬化性組成物、及び固体組成物に関する。かかるフッ素化オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む組成物は、いくつかの実施形態では、非フッ素化「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーに対して異なる物理的特性を有する。例えば、本明細書に記載の実施形態のフッ素化「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーの硬化性組成物は、例えば、より高温度にて改善された安定性を有し得る。更に、本明細書に記載の実施形態のフッ素化「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーの硬化性組成物は、低屈折率コーティング、例えば、約1.3〜約1.45、又は約1.35〜約1.42の屈折率を有するものの調製において有用であり得る。フッ素化「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーは、
40〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位と、
10〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位と、
0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]と、を含み、
式中、
R1は、各発生にて、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、
R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基であり、
Rfはフッ素含有基を表し、但し、オルガノシロキサンブロックコポリマーに少なくとも1つのRf基があり、
ジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]は、直鎖状ブロック当たり平均で10〜400個のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]を有する直鎖状ブロックの中に配置され、
トリシロキシ単位[R2SiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖状ブロックの中に配置され、非直鎖状ブロックの少なくとも30%は、互いに架橋され、各直鎖状ブロックは、少なくとも1つの非直鎖状ブロックに連結され、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーとして本明細書に記載の実施形態のオルガノポリシロキサン。オルガノポリシロキサンは、[R3SiO1/2]、[R2SiO2/2]、[RSiO3/2]、又は[SiO4/2]シロキシ単位から独立して、選択されるシロキシ単位を含有するポリマーであり、式中、Rは、例えば、有機基であってもよい。これらのシロキシ単位は、一般にそれぞれM、D、T、及びQ単位と呼ばれる。これらのシロキシ単位は、様々な方法で組み合わされて、環状、直鎖状、又は分枝状構造を生成することができる。結果として得られるポリマー構造の化学的及び物理的性質は、オルガノポリシロキサン中のシロキシ単位の数とタイプによって変化する。例えば、「直鎖状」オルガノポリシロキサンは、主としてDすなわち[R2SiO2/2]シロキシ単位を含有してもよく、その結果、このポリジオルガノシロキサン内のD単位の数により示される「重合度」すなわち「dp」に応じ様々な粘度の流体であるポリジオルガノシロキサンを生じる。「直鎖状」オルガノポリシロキサンは、25℃よりも低いガラス転移温度(Tg)を有し得る。「樹脂」オルガノポリシロキサンは、シロキシ単位の大半がT又はQシロキシ単位から選択される場合に生じる。Tシロキシ単位を主に使用してオルガノポリシロキサンを調製する場合、結果として得られるオルガノシロキサンは、多くの場合、「樹脂」又は「シルセスキオキサン樹脂」と称される。オルガノポリシロキサン内のT又はQシロキシ単位の量を増加させることは、増加する硬度及び/又はガラスのような特性を有するポリマーをもたらし得る。したがって、「樹脂」オルガノポリシロキサンは、より高いTg値を有し、例えばシロキサン樹脂は、多くの場合、40℃を超える、例えば、50℃超、60℃超、70℃超、80℃超、90℃超、若しくは100℃超のTg値を有する。いくつかの実施形態では、シロキサン樹脂のためのTgは、約60℃〜約100℃、例えば、約60℃〜約80℃、約50℃〜約100℃、約50℃〜約80℃、又は約70℃〜約100℃である。
本明細書で使用するとき、「オルガノシロキサンブロックコポリマー」又は「樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー」は、「樹脂」Tシロキシ単位と組み合わせた「直鎖状」Dシロキシ単位を含有するオルガノポリシロキサンを指す。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンコポリマーは、「ランダム」コポリマーとは対照的に、「ブロック」コポリマーである。このように、開示される実施形態の「樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー」は、D単位及びTシロキシ単位を含有するオルガノポリシロキサンを指し、D単位(すなわち、[R1 2SiO2/2]単位)は、いくつかの実施形態では、平均10〜400D単位(例えば、平均約10〜約400D単位;約10〜約300D単位;約10〜約200D単位;約10〜約100D単位;約50〜約400D単位;約100〜約400D単位;約150〜約400D単位;約200〜約400D単位;約300〜約400D単位;約50〜約300D単位;約100〜約300D単位;約150〜約300D単位;約200〜約300D単位;約100〜約150D単位、約115〜約125D単位、約90〜約170D単位、又は約110〜約140D単位)を有する、本明細書では「直鎖状ブロック」と称されるポリマー鎖を生成するように、一緒に主に結合される。
T単位(すなわち、[R2SiO3/2])は、いくつかの実施形態では、主に互いに結合され、「非直鎖状ブロック」と称される分枝状ポリマー鎖を生成する。いくつかの実施形態では、著しい数のこれらの非直鎖状ブロックが更に凝集して「ナノドメイン」を生成し、このとき、固体形態のブロックコポリマーがもたらされる。いくつかの実施形態では、これらのナノドメインは、D単位を有する直鎖状ブロックから生成される相から相分離を生成し、よって、樹脂が豊富な相を生成する。
いくつかの実施形態では、非直鎖状ブロックは、少なくとも500g/モル、例えば、少なくとも1000g/モル、少なくとも2000g/モル、少なくとも3000g/モル、又は少なくとも4000g/モルのうちの数平均分子量を有し;又は約500g/モル〜約4000g/モル、約500g/モル〜約3000g/モル、約500g/モル〜約2000g/モル、約500g/モル〜約1000g/モル、約1000g/モル〜2000g/モル、約1000g/モル〜約1500g/モル、約1000g/モル〜約1200g/モル、約1000g/モル〜3000g/モル、約1000g/モル〜約2500g/モル、約1000g/モル〜約4000g/モル、約2000g/モル〜約3000g/モル又は約2000g/モル〜約4000g/モルの分子量を有する。
オルガノシロキサンブロックコポリマー(例えば、40〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位、及び10〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位を含むそれらのもの)は、式[R1 2SiO2/2]a[R2SiO3/2]bにより表すことができ、式中、添字a及びbは、コポリマーのシロキシ単位のモル分率を表し、
aは、約0.4〜約0.9、
あるいは約0.5〜約0.9、
あるいは約0.6〜約0.9であり、
bは、0.1〜0.6、
あるいは約0.1〜約0.5、
あるいは約0.1〜約0.4であり、
式中、R1は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、
R2は、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基であり、
Rfは、フッ素含有基を表し、但し、オルガノシロキサンブロックコポリマーに少なくとも1つのRf基がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、40〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位、例えば、50〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;65〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;70〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;又は80〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜60モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜50モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜60モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;又は70〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、10〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位、例えば、10〜20モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜30モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜35モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜30モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜35モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;40〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;又は40〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位を含む。
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、Mシロキシ単位、Qシロキシ単位、他の特異なD又はTシロキシ単位(例えば、R1又はR2以外の有機基を有する)などの追加のシロキシ単位を含有してもよく、但し、このオルガノシロキサンブロックコポリマーは、本明細書に記載の通りのモル分率のジシロキシ及びトリシロキシ単位を含有する、ということが理解されるべきである。換言すれば、添字a及びbにより示されるモル分率の和は、必ずしも合計して1にならなければならないわけではない。a+bの和は、オルガノシロキサンブロックコポリマーに存在し得る少量の他のシロキシ単位を考慮した場合に1未満になってもよい。あるいは、a+bの和は、0.6超、あるいは0.7超、あるいは0.8超、あるいは0.9超である。いくつかの実施形態では、a+bの和は、約0.6〜約0.9で、例えば、約0.6〜約0.8、約0.6〜約0.7、約0.7〜約0.9、約0.7〜約0.8、又は約0.8〜約0.9である。
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位及び式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位から本質的に構成されつつ、0.5〜25モルパーセントのシラノール基[≡SiOH](例えば、0.5〜5モルパーセント、0.5〜10モルパーセント、0.5〜15モルパーセント、0.5〜20モルパーセント、5〜10モルパーセント、5〜15モルパーセント、5〜20モルパーセント、5〜25モルパーセント、10〜15モルパーセント10〜20モルパーセント、10〜25モルパーセント、15〜20モルパーセント、15〜25モルパーセント、又は20〜25モルパーセント)もまた含有し、式中、R1及びR2は、本明細書に定義される通りである。したがって、いくつかの実施形態では、a+bの和(モル分率を使用してコポリマーのジシロキシ及びトリシロキシ単位の量を表す場合)は、0.95を超えるか、あるいは0.98を超える。
いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーはまた、0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]、あるいは2〜32モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]、及び、あるいは8〜22モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]を含有し得る。
シラノール基は、オルガノシロキサンブロックコポリマーの任意のシロキシ単位上に存在し得る。本明細書に記載の量は、オルガノシロキサンブロックコポリマーに見出されるシラノール基の合計量を表す。いくつかの実施形態では、シラノール基の大部分(例えば、75%超、80%超、90%超;約75%〜約90%、約80%〜約90%、若しくは約75%〜約85%)は、トリシロキシ単位、すなわち、ブロックコポリマーの樹脂成分上に存在する。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、シラノール基は、オルガノシロキサンブロックコポリマーの樹脂成分上に存在して、ブロックコポリマーが高温にて更に反応又は硬化することを可能にする。
各発生にて、上のジシロキシ単位内の各R1は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、式中、ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アリール、又はアルキルアリール基であり得る。各R1は、各発生にて、C1〜C30アルキル基であってもよく、あるいは、各発生にて、各R1は、C1〜C18アルキル基であってもよい。あるいは、各R1は、各発生にて、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシル等のC1〜C6アルキル基であってもよい。あるいは、各R1は、各発生にて、メチルであってもよい。各R1は、各発生にて、フェニル、ナフチル、又はアンスリル基などのアリール基であってもよい。あるいは、各R1は、各発生にて、上述のアルキル、アリール、又はRf基の任意の組み合わせであり得、それによって、いくつかの実施形態では、各ジシロキシ単位は、2つのアルキル基(例えば、2つのメチル基);2つのアリール基(例えば、2つのフェニル基);アルキル(例えば、メチル)及びアリール基(例えば、フェニル)、2つのRf基;1つのRf基及び1つのアルキ基(例えば、メチル);若しくは1つのRf基及び1つのアリール基(例えば、フェニル)を有し得る。あるいは、各R1は、各発生にて、フェニル、メチル、又はRfである。
各R2は、各発生にて、上でトリシロキシ単位は、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基であり、式中、ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アリール、又はアルキルアリール基であり得る。各R2は、各発生にて、C1〜C20アルキル基であってもよく、あるいは各R2は、各発生にて、C1〜C18アルキル基であってもよい。あるいは、各R2は、各発生にて、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルなどのC1〜C6アルキル基であってもよい。あるいは、各R2は、各発生にて、メチルであってもよい。各R2は、各発生にて、フェニル、ナフチル、又はアンスリル基などのアリール基であってもよい。あるいは、各R2は、各発生にて、上述のアルキル、アリール、又はRf基の任意の組み合わせであり得、それによって、いくつかの実施形態では、各ジシロキシ単位は、2つのアルキル基(例えば、2つのメチル基);2つのアリール基(例えば、2つのフェニル基);アルキル(例えば、メチル)及びアリール基(例えば、フェニル)、2つのRf基;1つのRf基及び1つのアルキ基(例えば、メチル);又は1つのRf基及び1つのアリール基(例えば、フェニル)を有し得る。あるいは、各R2は、各発生にて、フェニル、メチル、又はRfである。
明細書全体で使用するとき、ヒドロカルビルはまた、置換ヒドロカルビルを含む。本明細書全体で使用される「置換」は、当業者には既知の置換基を有する1つ以上の水素原子基の置換を広く指し、本明細書に記載されるような安定した化合物をもたらす。好適な置換基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ(すなわち、CO2H)、カルボキシアルキル、カルボキシアリル、シアノ、ニトロなどが挙げられるが、これらに限定されない。置換ヒドロカルビルはまた、ハロゲン置換ヒドロカルビルを含み、ハロゲンは、塩素、臭素、又はこれらの組み合わせであってもよい。
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも1つのRf基を含む。Rf基は、オルガノシロキサンブロックコポリマーの任意のシロキシ単位上に存在し得る。例えば、Rf基は、直鎖状ブロックジシロキシ単位上、非直鎖状ブロックトリシロキシ単位上、又は直鎖状ブロックジシロキシ単位と非直鎖状ブロックトリシロキシ単位の両方の上に存在し得る。いくつかの実施形態では、Rf基が直鎖状ブロックジシロキシ単位と非直鎖状ブロックトリシロキシ単位の両方の上に含有される場合、直鎖状ブロックジシロキシ単位のRf基のモルパーセント対非直鎖状ブロックのトリシロキシ単位上のRf基のモルパーセントは、直鎖状及び非直鎖状ブロックが実質的にほぼ、不相溶性であるようになるべきである(例えば、本明細書に記載されるように、固体オルガノシロキサンブロックコポリマーが、第1の相及び不相溶性の第2の相を含有する場合、第1の相は、本明細書に記載されるようなジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]を主に含有し、第2の相は本明細書に記載されるようなトリシロキシ単位[R2SiO3/2]を主に含有し、非直鎖状ブロックは、十分凝集して、第1の相と不相溶性であるナノドメインとなる)。
本明細書で使用されるとき、Rfは、フッ素含有基を表す。したがって、Rfは、種々のフルオロカルビル、ペルフルオロカルビル、又は少なくとも1つのCF3基を含有するヒドロカルビルから選択され得、それらのうちのいずれも直鎖状又は分枝鎖状であり得る。例えば、フッ素含有基は、CF3−、CF3CF2−、CF3(CF2)2−、CF3(CF2)3−、C3F7−、(CF3)2CF−、C4F9−、C5F11−C6F13−基などが挙げられるが、これらに限定されない、種々のペルフルオロカルビルから選択され得る。フッ素含有基はまた、−CH2CH2CF3、−CH2CH2CH2CF3、−CH2CH2CH2CH2CF3、−CH2CH2CH2CH2CH2CF3、一連の類似のヒドロカルビルなどが挙げられるが、これらに限定されない、少なくとも1つのCF3基を含有するヒドロカルビルであってもよい。フルオロカルビルは、少なくとも1つの水素原子がフッ素と置換されているヒドロカルビルを含む。フルオロカルビルとしては、−CHFCH3、−CF2CH3、−CF2CHFCH3、−CHFCF2CH3、−CF2CF2CH3、一連の類似のヒドロカルビルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「フルオロカルビル」は、「ペルフルオロカルビル及び「少なくとも1つのCF3基を含有するヒドロカルビル」を包含することが理解されるべきである。
フッ素含有基は、式−CH2CH2CH2(G)a[CR3(CF3)2]bにより表わされるそれらのものから選択され得、式中、Gは、C、O、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの原子を含む連結基であり、各R3は、独立して、F又はHから選択され、添字aは、0又は1の値を有し、添字bは、1又は2の値を有する。いくつかの実施形態では、連結基Gは、−O−である。他の実施形態では、連結基Gは、O−CH2CH2CH2−などの2〜4個の炭素原子を有するエーテル基であり、−CH2CH2CH2−などの2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、−CH(CH2−)2などの3〜5個の炭素原子を有する分枝鎖状アルキレン基であり、又は、式中、cが1〜8の整数である(−CH(CF3)CH2−)cなどの2〜4個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基である。
本明細書に有用な他のフッ素含有基は、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、フッ素含有基は、−CH2CH2CF3である。
オルガノシロキサンブロックコポリマー上に存在するRf基の数又は量は様々であり得るが、Rf基を含有する少なくとも1つのシロキシ単位の存在をもたらす。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、約20〜約80モル%、約20〜約50モル%、又は約25〜約45モル%のRf基を含むシロキシ単位を含有する。
ある実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーのジシロキシ単位は、式[(CH3)(CF3CH2CH2)SiO2/2]を有する。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、約20〜約80モル%、約20〜約50モル%、又は約25〜約45モル%のシロキシ単位ジシロキシ単位の式[(CH3)(CF3CH2CH2)SiO2/2]を含有する。
本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーを説明するために本明細書で使用するとき、モル分率を用いる式[R1 2SiO2/2]a[R2SiO3/2]b、及び関連する式は、コポリマーのジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]及びトリシロキシ単位[R2SiO3/2]の構造順序を示すものではない。むしろ、この式は、添字a及びbを介して本明細書で説明されるモル分率によりコポリマーの2つの単位の相対量を説明するための便宜的表記法をもたらすことを目的としている。本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーの様々なシロキシ単位のモル分率並びにシラノール含有量は、29Si NMR技術により容易に判定することができる。
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、あるいは少なくとも40,000g/モルの重量平均分子量、あるいは少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量、あるいは少なくとも60,000g/モルの重量平均分子量、あるいは少なくとも70,000g/モルの重量平均分子量、あるいは少なくとも80,000g/モルの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、約20,000g/モル〜約250,000g/モル又は約100,000g/モル〜約250,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、あるいは約40,000g/モル〜約100,000g/モルの重量平均分子量、あるいは約50,000g/モル〜約100,000g/モルの重量平均分子量、あるいは約50,000g/モル〜約80,000g/モルの重量平均分子量、あるいは約50,000g/モル〜約70,000g/モルの重量平均分子量、あるいは約50,000g/モル〜約60,000g/モルの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態オルガノシロキサンブロックコポリマーは、約15,000〜約50,000g/モル、約15,000〜約30,000g/モル、約20,000〜約30,000g/モル、又は約20,000〜約25,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術を用いて容易に判定することができる。
いくつかの実施形態では、ジシロキシ及びトリシロキシ単位の構造順序は、以下のように更に説明することができる:ジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]は、直鎖状ブロックごとに平均で10〜400個のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]を有する直鎖状ブロックの中に配置され、トリシロキシ単位[R2SiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖状ブロックの中に配置される。各直鎖状ブロックは、ブロックコポリマーの中の少なくとも1個の非直鎖状ブロックに連結されている。更に、非直鎖状ブロックの少なくとも30%は、互いに架橋されており、
あるいは、非直鎖状ブロックの少なくとも40%は、互いに架橋されており、
あるいは、非直鎖状ブロックの少なくとも50%は、互いに架橋され、架橋される非直鎖状ブロックパーセントを示すように本明細書に付与される全ての百分率は、重量パーセントである。
他の実施形態では、非直鎖状ブロックの約30%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約50%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約40%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約50%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約60%〜約80%は、互いに架橋され、又は非直鎖状ブロックの約60%〜約70%は、互いに架橋される。
非直鎖状ブロックの架橋は、様々な化学的機序及び/又は部分を介して達成され得る。例えば、ブロックコポリマー非直鎖状ブロックの架橋は、コポリマーの非直鎖状ブロック内に存在する残留シラノール基の縮合から生じ得る。ブロックコポリマーの非直鎖状ブロックの架橋はまた、「遊離樹脂」成分と非直鎖状ブロックとの間で生じ得る。「遊離樹脂」成分は、ブロックコポリマーの調製中に過剰量のオルガノシロキサン樹脂を使用する結果として、ブロックコポリマー組成物中に存在し得る。遊離樹脂成分は、ブロック以外の部分上及び遊離樹脂上に存在する残留シラノール基の縮合により非直鎖状ブロックと架橋し得る。遊離樹脂は、本明細書に記載のような、架橋剤として添加される低分子量化合物との反応による架橋をもたらし得る。遊離樹脂は、存在する場合、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量により約10%〜約20%の量で存在し得、例えば、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量により約15%〜約20%などである。
いくつかの実施形態では、ある化合物は、例えば、非樹脂ブロックを架橋するように、ブロックコポリマーの調製中に添加されてもよい。これらの架橋化合物としては、ブロックコポリマーの生成(本明細書で論議されるような工程II))中に添加される式R5 qSiX4−qを有するオルガノシロキサンも挙げられ、式中、R5は、C1〜C8ヒドロカルビル、又はC1〜C8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解可能な基であり、qは、0、1、又は2である。R5は、C1〜C8ヒドロカルビル又はC1〜C8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、あるいはR5は、C1〜C8アルキル基又はフェニル基であり、あるいはR5は、メチル、エチル、又はメチルとエチルとの組み合わせである。Xは任意の加水分解性基であり、E又は、あるいはXは、オキシモ、アセトキシ、ハロゲン原子、ヒドロキシル(OH)、又はアルコキシ基であり得る。
一実施形態では、式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランは、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、又は両方の組み合わせなどのアルキルトリアセトキシシランである。市販の代表的なアルキルトリアセトキシシランとしては、ETS−900(Dow Corning Corp.(Midland,MI))が挙げられる。
架橋剤として有用な、他の好適な非限定的なオルガノシランとしては、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン(MTO)、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラオキシムシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジオキシムシラン、及びメチルトリス(メチルメチルケトキシム)シランが挙げられる。
工程II)中に添加される場合、式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランの量は、様々であり得るが、いくつかの実施形態では、プロセスにおいて使用されるオルガノシロキサン樹脂の量に基づく。例えば、使用されるシランの量は、オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの2〜15モル%のモル化学量をもたらし得、例えば、オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの2〜10モル%;オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの5〜15モル%;オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの2〜5モル%;オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの10〜15モル%;オルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの5〜10モル%;又はオルガノシロキサン樹脂におけるSiのオルガノシラン/モルの2〜12モル%である。更に、工程II)中に添加される式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランの量は、いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマー上の全てのシラノール基を消費しない化学量が確保されるように制御される。一実施形態では、工程IIにおいて使用されるオルガノシランの量は、0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]を含有するオルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらすように選択される。
ブロックコポリマーの架橋は主にシロキサン結合≡Si−O−Si≡であり得、上述のようにシラノール基の縮合から生じる。
ブロックコポリマーの架橋の量は、GPC技術などでブロックコポリマーの平均分子量を判定することにより、推定され得る。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーの架橋は、その平均分子量を増加させる。したがって、ブロックコポリマーの平均分子量、直鎖状シロキシ成分の選択(すなわち、その重合度により示されるものとしての鎖長)、及び非直鎖状ブロックの分子量(ブロックコポリマーを調製するために使用されるオルガノシロキサン樹脂の選択により主に制御される)を考慮して、架橋の程度を推定することができる。
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、公開PCT特許出願第WO2012/040302号及び同第WO2012/040305号に開示される方法を含む、当該技術分野では既知の方法により調製され得る。
いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む固体組成物はまた、超塩基触媒を含有する。例えば、2012年12月14日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2012/069701号、及び2012年12月14日に出願された米国仮特許出願第61/570,477号を参照されたく、これらの全体は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照することにより組み込まれる。
いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む固体組成物はまた、安定剤を含有する。例えば、2012年11月30日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2012/067334号、及び2011年12月2日に出願された米国仮特許出願第61/566,031号を参照されたく、これらの全体は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照することにより組み込まれる。
本開示は更に、
a)いくつかの実施形態で本明細書に記載の安定剤又は超塩基と組み合わせる本明細書に記載のオルガノシロキサンブロックコポリマーと、
b)有機溶媒と、を含む、硬化性組成物を提供する。
いくつかの実施形態では、有機溶媒は、ベンゼン、トルエン又はキシレンなどの芳香族系溶剤である。
一実施形態では、硬化性組成物は、オルガノシロキサン樹脂(例えば、ブロックコポリマーの一部ではない遊離樹脂)を更に含有してもよい。これらの組成物中に存在するオルガノシロキサン樹脂は、オルガノシロキサンブロックコポリマーを調製するために使用されるオルガノシロキサン樹脂である。したがって、オルガノシロキサン樹脂は、少なくとも60モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位をその式中に含み得(例えば、少なくとも70モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位又は少なくとも80モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位;若しくは60〜70モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位、60〜80モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位、又は70〜80モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位)、式中、各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビルである。あるいは、オルガノシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン樹脂又はフェニルシルセスキオキサン樹脂である。
硬化性組成物中のオルガノシロキサンブロックコポリマー、有機溶媒、及び任意のオルガノシロキサン樹脂の量は、様々であり得る。硬化性組成物は、
本明細書に記載のオルガノシロキサンブロックコポリマーの40〜80重量%(例えば、40〜70重量%、40〜60重量%、40〜50重量%)を含有し得;
有機溶媒の10〜80重量%(例えば、10〜70重量%、10〜60重量%、10〜50重量%、10〜40重量%、10〜30重量%、10〜20重量%、20〜80重量%、30〜80重量%、40〜80重量%、50〜80重量%、60〜80重量%、又は70〜80重量)を含有し得;
オルガノシロキサン樹脂の5〜40重量%(例えば、5〜30重量%、5〜20重量%、5〜10重量%、10〜40重量%、10〜30重量%、10〜20重量%、20〜40重量%、又は30〜40重量%)を含有し得;
但し、これらの成分の重量%の和は、100%を超えないものとする。一実施形態では、硬化性組成物は、本明細書に記載のようなオルガノシロキサンブロックコポリマーと、有機溶媒と、オルガノシロキサン樹脂と、から本質的になる。いくつかの実施形態では、これらの成分の重量%は、合計して100%、又はほぼ100%である。
更に別の実施形態では、硬化性組成物は、硬化触媒を含有する。硬化触媒は、オルガノシロキサンの縮合硬化に作用する、様々なスズ又はチタン触媒などの当該技術分野において既知の任意の触媒から選択され得る。縮合触媒は、ヒドロキシ基に結合したケイ素(=シラノール)の縮合を促進してSi−O−Si連結を生成するために使用される任意の縮合触媒であり得る。例としては、アミン、並びに鉛、スズ、チタン、亜鉛、及び鉄の錯体が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びジシアンジアミドなどの塩基性化合物;チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタンアセチルアセトネート、トリイソブトキシドアルミニウム、トリイソプロポキシドアルミニウム、テトラジルコニウム(アセチルアセトナート)、テトラブチル酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、アセチルアセトナートコバルト、アセチルアセトナート鉄、アセチルアセトナートスズ、オクチル酸ジブチルスズ、ラウレートジブチルスズ、オクチル酸亜鉛、ベゾエート(bezoate)亜鉛、p−tert−安息香酸亜鉛、ラウレート亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸塩アルミニウム、及びトリイソプロポキシドアルミニウム(alminium)などの金属含有化合物;トリアセチルアセトナートアルミニウム、ビスエチルアセチルアセトナートモノアセチルアセトナートアルミニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、及びジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンなどの有機チタンキレートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、縮合触媒は、オクチル酸亜鉛、ベゾエート亜鉛、p−tert−安息香酸亜鉛、ラウレート亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸塩アルミニウム、及びトリイソプロポキシドアルミニウムを含む。例えば、米国特許第8,193,269号を参照されたく、その全体の開示は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照することにより組み込まれる。縮合触媒の他の例としては、アルミニウムアルコキシド、アンチモンアルコキシド、バリウムアルコキシド、ホウ素アルコキシド、カルシウムアルコキシド、セリウムアルコキシド、エルビウムアルコキシド、ガリウムアルコキシド、ケイ素アルコキシド、ゲルマニウムアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、インジウムアルコキシド、鉄アルコキシド、ランタンアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、ネオジミウムアルコキシド、サマリウムアルコキシド、ストロンチウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、チタンアルコキシド、スズアルコキシド、バナジウムアルコキシド酸化物、イットリウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタン又はジルコニウム化合物、特に、チタン及びジルコニウムアルコキシド、及びキレート及びオリゴ−及び上記アルコキシドの重縮合物、ジアルキルスズジアセテート、スズ(II)オクトエート、ジアルキルスズジアシレート、ジアルキルスズ酸化物及び二重金属アルコキシドが挙げられるが、これらに限定されない。二重金属アルコキシドは、特定の比率で2つの異なる金属を含有するアルコキシドである。いくつかの実施形態では、縮合触媒は、テトラエチレート(tetraethylate)チタン、テトラプロピレート(tetrapropylate)チタン、テトライソプロピレート(tetraisopropylate)チタン、テトラブチレート(tetrabutylate)チタン、テトライソオクチル酸チタン、イソプロピレート(isopropylate)トリステアロイレート(tristearoylate)チタン、トルイソプロピレート(truisopropylate)ステアロイレート(stearoylate)チタン、ジイソプロピレート(diisopropylate)ジステアロイレート(distearoylate)チタン、ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトライソプロピレート、テトラブチレートジルコニウムを含む。例えば、米国特許第7,005,460号を参照されたく、その全体の開示は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照することにより組み込まれる。更に、縮合触媒は、独国特許第DE 4427528 C2号、及び欧州特許第EP 0 639 622 B1号(これらの両方は、本明細書に完全に記載されているかのように参照することにより組み込まれる)に記載されるように、チタン酸塩、ジルコン酸塩、及びハフニウム酸塩を含む。
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する固体組成物は、本明細書に記載のような硬化性オルガノシロキサンブロックコポリマー組成物から溶媒を除去することにより調製され得る。溶媒は、任意の既知の処理技術により除去され得る。一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマー含有硬化性組成物のフィルムが生成され、そのフィルムから溶媒を蒸発させることができる。フィルムを高温及び/又は減圧にかけることにより、溶媒除去及び後続の固体硬化性組成物の生成を促進させ得る。あるいは、硬化性組成物を押出成形機に通して、溶媒を除去し、リボン又はペレットの形状の固体組成物を生成してもよい。剥離フィルムに対するコーティング作業もまた、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロール、ロッド又はグラビアコーティングにおけるように、使用され得る。また、固体フィルムを調製するにあたりロールツーロールコーティング作業も使用され得る。コーティング作業では、コンベアオーブン又は他の溶液の加熱及び排気手段を使用して、溶媒を除去し、最終的な固体フィルムを得ることができる。
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ブロックコポリマーの固体組成物を生成する際、本明細書に記載のようなオルガノシロキサンブロックコポリマーのジシロキシ、及びトリシロキシ単位の構造順序により、特定の特異な物理的特性特徴を有するコポリマーをもたらし得ることが可能である。例えば、コポリマーのジシロキシ、及びトリシロキシ単位の構造順序は、可視光の高光透過率(例えば、350nmを超える波長にて、少なくとも85%の透過率、少なくとも90%の透過率、少なくとも95%の透過率、少なくとも99%の透過率、又は100%の透過率)を可能にする固体コーティングをもたらし得る。構造順序はまた、流動し、加熱時に硬化し、室温にて安定性を保持するオルガノシロキサンブロックコポリマーを可能にし得る。これらはまた、積層技術を使用して加工され得る。これらの特性は、様々な電子物品の耐候性及び耐久性を改善させ、一方で、低コストかつ容易な手順を提供するためのコーティングを生成するのに有用である。
本開示は更に、上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーの固体形態、及びこのオルガノシロキサンブロックコポリマーを含む本明細書に記載の硬化性組成物からもたらされる固体組成物に関する。したがって、本開示は、
40〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位と、
10〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位と、
0.5〜25モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]と、を含むオルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらし、
式中、
各R1は、各発生にて、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、
各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基であり、
Rfは、フッ素含有基を表し、但し、オルガノシロキサンブロックコポリマーに少なくとも1つのRf基があり、
ジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]は、直鎖状ブロック当たり平均で10〜400個のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]を有する直鎖状ブロックの中に配置され、
トリシロキシ単位[R2SiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖状ブロックの中に配置され、非直鎖状ブロックの少なくとも30%は、互いに架橋され、各直鎖状ブロックは、少なくとも1つの非直鎖状ブロックに連結され、一緒にナノドメイン内に主に凝集され、
各直鎖状ブロックは、少なくとも1つの非直鎖状ブロックに連結され、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量を有し、25℃にて固体である。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、40〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位、例えば、50〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;65〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;70〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;又は80〜90モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜60モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;40〜50モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;50〜60モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;60〜70モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位;又は70〜80モルパーセントの式[R1 2SiO2/2]のジシロキシ単位を含む。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、10〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位、例えば、10〜20モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜30モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜35モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;10〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜30モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜35モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;20〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜40モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;30〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;40〜50モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位;又は40〜60モルパーセントの式[R2SiO3/2]のトリシロキシ単位を含む。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、0.5〜25モルパーセントのシラノール基[≡SiOH](例えば、0.5〜5モルパーセント、0.5〜10モルパーセント、0.5〜15モルパーセント、0.5〜20モルパーセント、5〜10モルパーセント、5〜15モルパーセント、5〜20モルパーセント、5〜25モルパーセント、10〜15モルパーセント10〜20モルパーセント、10〜25モルパーセント、15〜20モルパーセント、15〜25モルパーセント、又は20〜25モルパーセント)を含む。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーのジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]は、平均10〜400個のジシロキシ単位、例えば、平均約10〜約400個のジシロキシ単位;約10〜約300個のジシロキシ単位;約10〜約200個のジシロキシ単位;約10〜約100個のジシロキシ単位;約50〜約400個のジシロキシ単位;約100〜約400個のジシロキシ単位;約150〜約400個のジシロキシ単位;約200〜約400個のジシロキシ単位;約300〜約400個のジシロキシ単位;約50〜約300個のジシロキシ単位;約100〜約300個のジシロキシ単位;約150〜約300個のジシロキシ単位;約200〜約300個のジシロキシ単位;約100〜約150個のジシロキシ単位、約115〜約125個のジシロキシ単位、約90〜約170個のジシロキシ単位、又は約110〜約140個のジシロキシ単位)を有する直鎖状ブロックの中に配置される。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーの非直鎖状ブロックは、少なくとも500g/モルの数平均分子量、例えば、少なくとも1000g/モル、少なくとも2000g/モル、少なくとも3000g/モル、又は少なくとも4000g/モルを有するか、又は、約500g/モル〜約4000g/モル、約500g/モル〜約3000g/モル、約500g/モル〜約2000g/モル、約500g/モル〜約1000g/モル、約1000g/モル〜約2000g/モル、約1000g/モル〜約1500g/モル、約1000g/モル〜約1200g/モル、約1000g/モル〜約3000g/モル、約1000g/モル〜約2500g/モル、約1000g/モル〜約4000g/モル、約2000g/モル〜約3000g/モル、又は約2000g/モル〜約4000g/モルの分子量を有する。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーの非直鎖状ブロックの少なくとも30%は、互いに架橋され、例えば、非直鎖状ブロックの少なくとも40%は互いに架橋され;非直鎖状ブロックの少なくとも50%は互いに架橋され;非直鎖状ブロックの少なくとも60%は互いに架橋され;非直鎖状ブロックの少なくとも70%は互いに架橋され;又は非直鎖状ブロックの少なくとも80%は互いに架橋される。他の実施形態では、非直鎖状ブロックの約30%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約50%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約30%〜約40%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約40%〜約50%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約80%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約55%〜約70%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約50%〜約60%は、互いに架橋され、非直鎖状ブロックの約60%〜約80%は、互いに架橋され、又は非直鎖状ブロックの約60%〜約70%は、互いに架橋される。
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、あるいは、少なくとも40,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、少なくとも60,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、少なくとも70,000g/モルの重量平均分子量、又は、あるいは、少なくとも80,000g/モルの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物内に含有されるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、約20,000g/モル〜約250,000g/モル、又は約100,000g/モル〜約250,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、あるいは、約40,000g/モル〜約100,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、約50,000g/モル〜約100,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、約50,000g/モル〜約80,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、約50,000g/モル〜約70,000g/モルの重量平均分子量、あるいは、約50,000g/モル〜約60,000g/モルの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態オルガノシロキサンブロックコポリマーは、約15,000〜約50,000g/モル、約15,000〜約30,000g/モル、約20,000〜約30,000g/モル、又は約20,000〜約25,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
いくつかの実施形態では、上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、例えば、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、又はこれらの組み合わせ)中にてのブロックコポリマー溶液のフィルムの注型成形、及び溶媒の蒸発を可能にすることにより、固体形態に単離される。これらの条件下において、上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、約50重量%〜約80重量%の固体、例えば、約60重量%〜約80重量%の固体、約70重量%〜約80重量%の固体、又は約75重量%〜約80重量%の固体、を含有する有機溶媒中に溶液としてもたらされ得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、トルエンである。いくつかの実施形態では、かかる溶液は、25℃で0.0015m2/s(1500cSt)〜約0.004m2/s(4000cSt)、例えば、25℃で約0.0015m2/s(1500cSt)〜約0.003m2/s(3000cSt)、約0.002m2/s(2000cSt)〜約0.004m2/s(4000cSt)、又は約0.002m2/s(2000cSt)〜約0.003m2/s(3000cSt)、の粘度を有する。
固体を乾燥又は生成すると、ブロックコポリマーの非直鎖状ブロックは、更に一緒に凝集して「ナノドメイン」を生成する。本明細書で使用されるとき、「主に凝集される」は、「ナノドメイン」として本明細書に記載の固体組成物のある領域に見出される、オルガノシロキサンブロックコポリマーの非直鎖状ブロックの大部分(例えば、50%超;60%超;75%超、80%超、90%超;約75%〜約90%、約80%〜約90%、又は約75%〜約85%)を意味する。本明細書で使用されるとき、「ナノドメイン」は、固体ブロックコポリマー組成物内に分離される相であり、かつ1〜100ナノメートルにサイズ決めされる少なくとも1つの寸法を所有する固体ブロックコポリマー組成物内のそれらの相領域を指す。ナノドメインの形状は様々であり得るが、但し、ナノドメインの少なくとも1つの寸法は1〜100ナノメートルのサイズである。したがって、ナノドメインは、規則的又は不規則的な形状であり得る。ナノドメインは、球状、管状、場合によっては層状であり得る。
更なる実施形態では、本明細書に記載されるような固体オルガノシロキサンブロックコポリマーは、第1の相及び不相溶性の第2の相を含有し、第1の相は、主に本明細書に定義されるようなジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]を含有し、第2の相は、主に本明細書に定義されるようなトリシロキシ単位[R2SiO3/2]を含有し、非直鎖状ブロックは、十分凝集して、第1の相と不相溶性であるナノドメインとなる。
固体組成物が、本明細書に記載のようにオルガノシロキサン樹脂も含有するオルガノシロキサンブロックコポリマーの硬化性組成物から生成される場合、オルガノシロキサン樹脂もまた主にナノドメイン内で凝集する。
本開示の固体ブロックコポリマーのジシロキシ及びトリシロキシ単位の構造順序、並びに、ナノドメインの特徴は、透過型電子顕微鏡(TEM)法、原子間力顕微鏡法(AFM)、中性子線小角散乱法、X線小角散乱法及び走査型電子顕微鏡法などの特定の分析技術を用いて明示的に測定され得る。
あるいは、ブロックコポリマーのジシロキシ及びトリシロキシ単位の構造順序、並びに、ナノドメインの生成は、本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーから生じるコーティングの特定の物理的特性を特徴付けることにより、示され得る。例えば、本発明のオルガノシロキサンコポリマーは、95%を超える可視光透過率を有するコーティングをもたらし得る。当業者は、可視光がこのような媒質を通過することができ、かつ150ナノメートルを超えるサイズを有する粒子(又は本明細書で使用されるようなドメイン)により回折されないでいることができる場合にのみ、このような光学的透明度が(2つの相の屈折率が一致する以外に)可能であることを理解している。粒径又はドメインが更に小さくなるにつれて、光学的透明度は更に改善され得る。したがって、本発明のオルガノシロキサンコポリマーからもたらされるコーティングは、少なくとも95%の光学的可視光透過率、例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の可視光透過率を有し得る。本明細書で使用されるとき、用語「可視光」は、350nmを超える波長の光を含む。
加工温度(T加工)が、オルガノシロキサンブロックコポリマーの最終硬化に必要とされる温度(T硬化)よりも低く、すなわち、T加工<T硬化であるため、本発明の樹脂−直鎖状オルガノポリシロキサンブロックコポリマーの一利点は、それらを複数回加工できるということである。しかしながら、オルガノシロキサンコポリマーは、T加工が、T硬化を上回る場合、硬化して高温安定性を得る。したがって、本発明の樹脂−直鎖状オルガノポリシロキサンブロックコポリマーは、疎水性、高温安定性、水分/紫外線耐性などのシリコーンに関連する利益と共に、「再加工可能」であるという有意な利点を提供する。
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物は、「融解加工可能」であると考えられ得る。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する溶液のフィルムから生成されるコーティングなどの固体組成物は、「溶融」時に高温にて流体挙動を呈する。オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物の「溶融加工可能」の特徴は、固体組成物が液体挙動を呈する際の固体組成物の「溶融流動温度」を測定することにより、モニターされ得る。溶融流動温度は、具体的には、市販の装置を使用して、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、及び貯蔵温度の関数としてのタンデルタ(tan δ)を測定することにより判定され得る。例えば、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、及び温度の関数としてのタンデルタを測定するためには、市販のレオメーター(TA Instrumentsの、2KSTD標準屈曲旋回軸スプリング変換器を備えるARES−RDAなどと、強制対流炉)が使用され得る。試験標本(例えば、8mm幅、1mm厚さ)は、平行なプレートの間に装填することができ、25℃〜300℃の範囲で2℃/分にて温度を徐々に上げながら小さなひずみの振動レオロジーを使用して測定され得る(振動数1Hz)。流動開始は、G’降下(「流動」と標識されている)に入る変曲温度として計算され得、120℃での粘度が溶融加工性についての尺度として報告され、硬化開始はG’上昇(「硬化」と標識されている)に入る開始温度として計算される。典型的には、固体組成物の「流動」はまた、オルガノシロキサンブロックコポリマーの非直鎖状区域(すなわち、樹脂成分)のガラス転移温度に相関する。
いくつかの実施形態において、タンデルタ=1は、150℃にて約3〜約5時間、例えば、150℃にて約3〜約5分間、150℃にて約10〜約15分間、150℃にて約10〜約12分間、150℃にて約8〜約10分間、150℃にて約30分間〜約2.5時間、150℃にて約1時間〜約4時間、又は150℃にて約2.5時間〜約5時間である。
更なる実施形態では、固体組成物は、25℃〜200℃、あるいは25℃〜160℃、あるいは50℃〜160℃の範囲の溶融流動温度を有するものとして、特徴付けられ得る。
溶融加工可能であるという利益により、デバイスアーキテクチャの周りのオルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物の再流動が、T硬化以下の温度で、デバイス上の初期のコーティング又はデバイス上に固体が生成された後、可能になると考えられる。この特性は、カプセル化される様々な電子デバイスに対して非常に有益である。
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物は、「硬化性」として考慮されてもよい。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマー含有溶液のフィルムから生成されたコーティングなどの固体組成物は、ブロックコポリマーを更に硬化することにより、更なる物理的特性変化を受け得る。本明細書で論議されるように、本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、特定の量のシラノール基を含有する。ブロックコポリマー上のこれらのシラノール基の存在は、更なる反応、例えば、硬化機構を可能にすることが可能である。硬化時に、固体組成物の物理的特性は、更に変化し得る。
あるいは、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物の「溶融加工性」、硬化度、及び/又は硬化速度は、様々な温度下でのレオロジー測定値により判定され得る。
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する固体組成物は、25℃にて0.01MPa〜500MPaの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び0.001MPa〜250MPaの範囲の損失弾性率(G’’)、あるいは25℃にて0.1MPa〜250MPaの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び0.01MPa〜125MPaの損失弾性率(G’’)、あるいは25℃にて0.1MPa〜200MPaの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び0.01MPa〜100MPaの損失弾性率(G’’)を有し得る。
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する固体組成物は、120℃にて10Pa〜500,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び10Pa〜500,000Paの範囲の損失弾性率(G’’)、あるいは120℃にて20Pa〜250,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び20Pa〜250,000Paの損失弾性率(G’’)、あるいは120℃にて30Pa〜200,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び30Pa〜200,000Paの損失弾性率(G’)を有し得る。
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する固体組成物は、200℃にて10Pa〜100,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び5Pa〜80,000Paの範囲の損失弾性率(G’’)、あるいは200℃にて20Pa〜75,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び10Pa〜65,000Paの損失弾性率(G’’)、あるいは200℃にて30Pa〜50,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)及び15Pa〜40,000Paの損失弾性率(G’’)を有し得る。
固体組成物は、引張強度及び破断伸度(%)などの特定の物理的特性により更に特徴付けられ得る。上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーからもたらされる本発明の固体組成物は、0.1MPa超、あるいは0.5MPa超、あるいは1.5MPa超、又は、あるいは2MPa超の初期引張強度を有し得る。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約0.1MPa〜約10MPaの初期引張強度、例えば、約0.5〜約10MPa、約1.5MPa〜約10MPa、約2MPa〜約10MPa、約5MPa〜約10MPa、又は約7MPa〜約10MPa、を有し得る。上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーからもたらされる本発明の固体組成物は、40%を超える、あるいは50%を超える、あるいは75%を超える初期破断(又は破裂)伸度(%)を有し得る。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約20%〜約90%、例えば、約25%〜約50%、約20%〜約60%、約40%〜約60%、約40%〜約50%、又は、約75%〜約90%の破断(又は破裂)伸度(%)を有し得る。本明細書で使用するとき、引張強度及び初期破断伸度はASTM D412により測定される。
前述の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーは、
I)
a)式
R1 q(E)(3−q)SiO(R1 2SiO2/2)nSi(E)(3−q)R1 qを有する直鎖状オルガノシロキサンであって、
式中、各R1は、各発生にて、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、
nは10〜400であり、qは0、1又は2であり、
Eは、少なくとも1個の炭素原子を含有する加水分解性基である、直鎖状オルガノシロキサンと、
b)オルガノシロキサン樹脂であって、少なくとも60モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位をその式中に含み、式中、各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基である、オルガノシロキサン樹脂とを、
c)有機溶媒中で反応させて、
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを生成する工程であって、
工程I)で使用されるa)及びb)の量は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに、40〜90モル%のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]、及び10〜60モル%のトリシロキシ単位[R2SiO3/2]をもたらすように選択され、
工程I)で添加される直鎖状オルガノシロキサンの少なくとも95重量パーセントが樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに組み込まれる、工程と、
II)工程I)の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを反応させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量(Mw)を少なくとも50%増加させるように十分に架橋する、工程と、
III)任意に、工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを、貯蔵安定性及び/又は光学的透明度を向上させるように更に処理し、及び/又は、任意に工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに安定剤又は超塩基を添加する、工程と、
IV)任意に、有機溶媒を除去する工程と、を含むプロセスにより、調製され得る。
このプロセスにおける工程I)は、
a)式
R1 q(E)(3−q)SiO(R1 2SiO2/2)nSi(E)(3−q)R1 qを有する直鎖状オルガノシロキサンであって、
式中、各R1は、各発生にて、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、
nは10〜400であり、qは0、1又は2であり、
Eは、少なくとも1個の炭素原子を含有する加水分解性基である、直鎖状オルガノシロキサンと、
b)オルガノシロキサン樹脂であって、少なくとも60モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位をその式中に含み、式中、各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基である、オルガノシロキサン樹脂とを、
c)有機溶媒中で反応させて、
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを生成する工程であって、
工程I)で使用されるa)及びb)の量は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに、40〜90モル%のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]、及び10〜60モル%のトリシロキシ単位[R2SiO3/2]をもたらすように選択され、
工程I)で添加される直鎖状オルガノシロキサンの少なくとも95重量パーセントが、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに組み込まれる、工程を含む。
このプロセスの工程I)の反応は、概ね、以下の概略図により表され得る。
オルガノシロキサン樹脂上の様々なOH基は、直鎖状オルガノシロキサン上の加水分解性基(E)と反応して、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー及びH−(E)化合物を生成する。工程I)における反応は、オルガノシロキサン樹脂と直鎖状オルガノシロキサンとの間の縮合反応と考えられ得る。
直鎖状オルガノシロキサン
本プロセスの工程I)における成分a)は、式R1 q(E)(3−q)SiO(R1 2SiO2/2)nSi(E)(3−q)R1 qを有する直鎖状オルガノシロキサンであり、式中、各R1は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル、Rf基、又はこれらの組み合わせであり、添字「n」は、直鎖状オルガノシロキサンの重合度(dp)として考慮され得、かつ10〜400(例えば、平均約10〜約400個のD単位;約10〜約300個のD単位;約10〜約200個のD単位;約10〜約100個のD単位;約50〜約400個のD単位;約100〜約400個のD単位;約150〜約400個のD単位;約200〜約400個のD単位;約300〜約400個のD単位;約50〜約300個のD単位;約100〜約300個のD単位;約150〜約300個のD単位;約200〜約300個のD単位;約100〜約150個のD単位、約115〜約125個のD単位、約90〜約170個のD単位、又は約110〜約140個のD単位)と様々であり得、添字「q」は、0、1、又は2であり得、Eは、少なくとも1つの炭素原子を含有する加水分解性基である。成分a)は、式R1 q(E)(3−q)SiO(R1 2SiO2/2)nSi(E)(3−q)R1 qを有する直鎖状オルガノシロキサンとして説明されるが、当業者は、T(R1SiO3/2)シロキシ単位などの少量の代替的なシロキシ単位が、成分a)の直鎖状オルガノシロキサンの中に組み込まれ得ることを理解する。同様に、オルガノシロキサンは、D(R1 2SiO2/2)シロキシ単位の大部分を有することにより「主に」直鎖状であると考慮され得る。更に、成分a)として使用される直鎖状オルガノシロキサンは、複数の直鎖状オルガノシロキサンの組み合わせであり得る。なお更には、成分a)として使用される直鎖状オルガノシロキサンは、シラノール基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、成分a)として使用される直鎖状オルガノシロキサンは、約0.5〜約5モル%のシラノール基、例えば、約1モル%〜約3モル%;約1モル%〜約2モル%、又は約1モル%〜約1.5モル%のシラノール基を含む。
各発生にて、上の直鎖状オルガノシロキサンの式における各R1は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル又はRf基であり、式中、ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アリール、又はアルキルアリール基であり得る。各R1は、各発生にて、C1〜C30アルキル基であってもよく、あるいは、各発生にて、各R1は、C1〜C18アルキル基であってもよい。あるいは各R1は、各発生にて、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシル等のC1〜C6アルキル基であってもよい。あるいは各R1は、各発生にて、メチルであってもよい。各R1は、各発生にて、フェニル、ナフチル、又はアンスリル基などのアリール基であってもよい。あるいは、各R1は、各発生にて、上述のアルキル、アリール、又はRf基の任意の組み合わせであり得、それによって、いくつかの実施形態では、各ジシロキシ単位は、2つのアルキル基(例えば、2つのメチル基);2つのアリール基(例えば、2つのフェニル基);アルキル(例えば、メチル)及びアリール基(例えば、フェニル)、2つのRf基;1つのRf基及び1つのアルキ基(例えば、メチル);若しくは1つのRf基及び1つのアリール基(例えば、フェニル)を有し得る。あるいは、各R1は、各発生にて、フェニル、メチル、又はRfである。
Eは、少なくとも1つの炭素原子(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜5個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子)を含有する任意の加水分解性基から選択され得る。いくつかの実施形態では、Eは、オキシモ、エポキシ、カルボキシ、アミノ、アミド基、又はこれらの組み合わせから選択される。あるいは、Eは、式R1C(=O)O−、R1 2C=N−O−、又はR4C=N−O−を有し、式中、R1は、本明細書に定義される通りであり、R4は、ヒドロカルビルである。一実施形態では、Eは、H3CC(=O)O−(アセトキシ)であり、qは、1である。一実施形態では、Eは、(CH3)(CH3CH2)C=N−O−(メチルエチルケトキシミル(methylethylketoximyl))であり、qは、1である。
一実施形態では、直鎖状オルガノシロキサンは、式(CH3)q(E)(3−q)SiO[(CF3CH2CH2)SiO2/2)]nSi(E)(3−q)(CH3)qであり、式中、E、n、及びqは、本明細書に定義される通りである。
一実施形態では、直鎖状オルガノシロキサンは、式(CH3)q(E)(3−q)SiO[(CF3CH2CH2)(C6H5)SiO2/2)]nSi(E)(3−q)(CH3)qであり、式中、E、n、及びqは、本明細書に定義される通りである。
成分a)として好適な直鎖状オルガノシロキサンを調製するためのプロセスは、既知である。いくつかの実施形態では、シラノール末端ポリジオルガノシロキサンを、アルキルトリアセトキシシラン又はジアルキルケトキシムなどの「末端封鎖」化合物と反応させる。末端封鎖反応の化学量は、典型的には、ポリジオルガノシロキサン上の全てのシラノール基と反応させるのに十分な量の末端封鎖化合物が添加されるように、調整される。いくつかの実施形態では、末端封鎖化合物のモルは、ポリジオルガノシロキサン上のシラノールモル当たりに使用されてもよい。あるいは、1〜10%といったわずかにモル過剰の末端封鎖化合物が使用されてもよい。反応は、いくつかの実施形態では、シラノールポリジオルガノシロキサンの縮合反応を最小化する無水条件下で行われる。いくつかの実施形態では、シラノール末端ポリジオルガノシロキサン及び末端封鎖化合物を、無水条件下で有機溶媒中に溶解させ、室温、又は高温(最高で溶媒の沸点)にて反応させる。
オルガノシロキサン樹脂
本発明のプロセスにおける成分b)は、少なくとも60モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位をその式中に含むオルガノシロキサン樹脂であり、式中、各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル、Rf基、又はこれらの組み合わせである。オルガノシロキサン樹脂は、任意の量及び組み合わせの他のM、D及びQシロキシ単位を含有し得、但し、オルガノシロキサン樹脂は、少なくとも70モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有し、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも80モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有し、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも90モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有し、又は、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも95モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有する。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサン樹脂は、約70〜約100モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有し、例えば、約70〜約95モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位、約80〜約95モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位、又は約90〜約95モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位である。成分b)として有用なオルガノシロキサン樹脂としては、「シルセスキオキサン」として知られるものが挙げられる。
上のトリシロキシ単位における、各R2は、各発生にて、独立して、C1〜C20ヒドロカルビル又はRf基であり、式中、ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アリール、又はアルキルアリール基であり得る。各R2は、各発生にて、C1〜C20アルキル基であってもよく、あるいは各R2は、各発生にて、C1〜C18アルキル基であってもよい。あるいは各R2は、各発生にて、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルなどのC1〜C6アルキル基であってもよい。あるいは各R2は、各発生にて、メチルであってもよい。各R2は、各発生にて、フェニル、ナフチル、又はアンスリル基などのアリール基であってもよい。あるいは、各R2は、各発生にて上述のアルキル、アリール、又はRf基の任意の組み合わせであり得、それによって、いくつかの実施形態では、各ジシロキシ単位は、2つのアルキル基(例えば、2つのメチル基);2つのアリール基(例えば、2つのフェニル基);アルキル(例えば、メチル)及びアリール基(例えば、フェニル)、2つのRf基;1つのRf基及び1つのアルキ基(例えば、メチル);又は1つのRf基及び1つのアリール基(例えば、フェニル)を有し得る。あるいは、各R2は、各発生にて、フェニル、メチル、又はRfである。
オルガノシロキサン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、限定されないが、いくつかの実施形態では、1000〜10000、又は、あるいは1500〜5000g/モルの範囲である。
少なくとも60モル%の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有するオルガノシロキサン樹脂及びこれらの調製方法は、当該技術分野において既知である。これらは典型的には、ケイ素原子上に3個の、ハロゲン又はアルコキシ基などの加水分解性基を有するオルガノシランを有機溶媒中で加水分解することにより、調製される。シルセスキオキサン樹脂の調製のための代表的な実施例は、米国特許第5,075,103号に見出され得る。更に、多くのオルガノシロキサン樹脂は市販されており、固体(フレーク又は粉末)か又は有機溶媒溶液のいずれかとして販売されている。成分b)として有用な、好適な非限定的な市販のオルガノシロキサン樹脂としては、Dow Corning(登録商標)217フレーク樹脂、233フレーク、220フレーク、249フレーク、255フレーク、Z−6018フレーク(Dow Corning Corporation(Midland,MI))が挙げられる。
当業者は、このような多量の[R2SiO3/2]シロキシ単位を含有するオルガノシロキサン樹脂が、特定の濃度のSi−OZを有し得、式中、Zが、水素(すなわち、シラノール)、アルキル基(その結果、OZはアルコキシ基である)であり得、又は、あるいはOZはまた本明細書に記載のようないずれかの「E」加水分解性基であり得ることを理解する。オルガノシロキサン樹脂上に存在する全てのシロキシ基のモル百分率としてのSi−OZ含有量は、29Si NMRにより容易に判定され得る。オルガノシロキサン樹脂上に存在するOZ基の濃度は、樹脂の調製モード及び後続処理に応じ様々である。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスにおける使用に好適なオルガノシロキサン樹脂のシラノール(Si−OH)含有量は、少なくとも5モル%、あるいは少なくとも10モル%、あるいは25モル%、あるいは40モル%、又は、あるいは50モル%のシラノール含有量を有する。他の実施形態では、シラノール含有量は、約5モル%〜約60モル%、例えば、約10モル%〜約60モル%、約25モル%〜約60モル%、約40モル%〜約60モル%、約25モル%〜約40モル%、又は約25モル%〜約50モル%である。
当業者は更に、このような多量の[R2SiO3/2]シロキシ単位及びシラノール含有量を含有するオルガノシロキサン樹脂はまた、特に高湿度条件下で、水分子を保持し得る。したがって、工程I)における反応に先立ってオルガノシロキサン樹脂を「乾燥」させることにより、樹脂に存在する過剰な水を除去することが、多くの場合、有益である。これは、オルガノシロキサン樹脂を有機溶媒中に溶解させ、加熱して還流させ、分離技術(例えば、Dean Starkトラップ又は同等のプロセス)により水を除去することによって達成され得る。
工程I)の反応で使用されるa)及びb)の量は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに、40〜90モル%のジシロキシ単位[R1 2SiO2/2]、及び10〜60モル%のトリシロキシ単位[R2SiO3/2]をもたらすように選択される。成分a)及びb)内に存在するジシロキシ及びトリシロキシ単位のモル%は、29Si NMR技術を使用して、容易に判定され得る。次に、開始時のモル%により、工程I)において使用される成分a)及びb)の質量を判定する。
いくつかの実施形態では、成分a)及びb)の量は、添加する直鎖状オルガノシロキサンの量に対しオルガノシロキサン樹脂上のシラノール基がモル過剰であることを確保するように選択され得る。したがって、十分な量のオルガノシロキサン樹脂を、いくつかの実施形態では、工程I)において使用された全ての直鎖状オルガノシロキサンと潜在的に反応させるように添加し得る。同様に、モル過剰のオルガノシロキサン樹脂が使用され得る。使用する量は、直鎖状オルガノシロキサンのモル当たりに使用されるオルガノシロキサン樹脂のモル数を計算することにより判定され得る。
本明細書に論じられるように、工程I)において影響がある反応は、直鎖状オルガノシロキサンの加水分解性基とオルガノシロキサン樹脂上のシラノール基との間の縮合反応である。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスの工程II)において更に反応させるために、生成した樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの樹脂成分上に十分な量のシラノール基が残存している。いくつかの実施形態では、少なくとも10モル%、あるいは少なくとも20モル%、又は、あるいは少なくとも30モル%のシラノールが、本発明の工程I)において生成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーのトリシロキシ単位上に残存している。いくつかの実施形態では、約10モル%〜約60モル%、例えば、約20モル%〜約60モル%、又は約30モル%〜約60モル%が、本発明の工程I)において生成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーのトリシロキシ単位上に残存している。
上述の(a)直鎖状オルガノシロキサンを(b)オルガノシロキサン樹脂と反応させるための反応条件は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、反応条件は、a)直鎖状オルガノシロキサンとb)オルガノシロキサン樹脂との間の縮合型反応に作用するように、選択される。様々な非限定的な実施形態及び反応条件が、本明細書の下記の実施例において説明される。一部の実施形態では、(a)直鎖状オルガノシロキサンと(b)オルガノシロキサン樹脂は、室温にて反応する。他の実施形態では、(a)と(b)は、室温を超える温度にて反応し、それは、最大約50、75、100に、又は更に最大150℃に及ぶ。あるいは、(a)と(b)は、溶媒を還流させながら一緒に反応することができる。なおも他の実施形態において、(a)と(b)は、5、10、又は更に10℃を超える室温未満である温度にて反応する。なおも他の実施形態では(a)と(b)は、1、5、10、30、60、120、若しくは180分、又は更に長い時間にわたって反応する。いくつかの実施形態では、(a)と(b)は、窒素又は希ガスなどの不活性雰囲気下で反応する。あるいは、(a)と(b)は、一部の水蒸気及び/又は酸素を含む雰囲気下で反応し得る。更に、(a)と(b)は、いかなるサイズの管で反応させてもよく、混合機、ボルテクサー(vortexer)、攪拌機、加熱器などを含む任意の装置を用いてもよい。他の実施形態では、(a)と(b)は、極性又は非極性であり得る1つ以上の有機溶媒中で反応する。いくつかの実施形態では、トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらに類するものなどの芳香族系溶剤が利用される。有機溶媒中に溶解させるオルガノシロキサンの量は様々であるが、その量は、直鎖状オルガノシロキサンの鎖延長又はオルガノシロキサン樹脂の早すぎる縮合を最小化する量であり得る。
成分a)とb)の添加順序は、様々であり得る。いくつかの実施形態では、直鎖状オルガノシロキサンは、有機溶媒中に溶解されるオルガノシロキサン樹脂の溶液に添加される。この添加の順序は、直鎖状オルガノシロキサン上の加水分解性基とオルガノシロキサン樹脂上のシラノール基との縮合を向上させ得、一方で、直鎖状オルガノシロキサンの鎖延長又はオルガノシロキサン樹脂の早すぎる縮合を最小化し得る。他の実施形態では、オルガノシロキサン樹脂は、有機溶媒中に溶解される直鎖状オルガノシロキサン樹脂の溶液に添加される。
工程I)における反応の進行、及び樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの生成は、GPC、IR、又は29Si NMRなどの様々な分析技術によりモニターされ得る。いくつかの実施形態では、工程I)における反応は、工程I)において使用される直鎖状オルガノシロキサンの少なくとも95重量パーセント(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)が、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの中に組み込まれるまで、持続することを可能にする。
本発明のプロセスの工程II)は、工程I)から得た樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に反応させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を架橋させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量を少なくとも50%、あるいは少なくとも60%、あるいは70%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも100%増加させる工程を含む。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスの工程II)は、工程I)から得た樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に反応させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を架橋させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量を、約50%〜約100%、例えば、約60%〜約100%、約70%〜約100%、約80%〜約100%、又は約90%〜約100%増加させる工程を含む。
このプロセスの工程II)の反応は、概ね、以下の概略図により表され得る。
工程I)において生成された樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシブロックが、工程II)の反応により架橋され、これがブロックコポリマーの平均分子量を増加させると考えられる。トリシロキシブロックの架橋により、トリシロキシブロックが凝集し濃縮されたブロックコポリマーをもたらし、これが最終的にブロックコポリマーの固体組成物内に「ナノドメイン」を生成する助けとなり得るとも考えられる。換言すれば、このトリシロキシブロックの凝集による濃縮は、ブロックコポリマーがフィルム又は硬化コーティングなどの固体形態で単離される場合には、相分離し得る。ブロックコポリマーのトリシロキシブロックの凝集による濃縮及びその後のブロックコポリマーを含有する固体組成物内での「ナノドメイン」の生成は、これらの組成物の光学的透明度並びにこれらの物質に関連する他の物理的特性の向上をもたらし得る。
工程II)における架橋反応は、様々な化学的機序及び/又は部分を介して達成され得る。例えば、ブロックコポリマーの非直鎖状ブロックの架橋は、コポリマーの非直鎖状ブロック内に存在する残留シラノール基の縮合から生じ得る。ブロックコポリマーの非直鎖状ブロックの架橋はまた、「遊離樹脂」成分と非直鎖状ブロックとの間で生じ得る。「遊離樹脂」成分は、ブロックコポリマーの調製の工程I)において過剰量のオルガノシロキサン樹脂を使用する結果として、ブロックコポリマー組成物中に存在し得る。遊離樹脂成分は、非直鎖状ブロック上及び遊離樹脂上に存在する残留シラノール基の縮合により非直鎖状ブロックと架橋し得る。遊離樹脂は、本明細書に記載のように、架橋剤として添加された低分子量化合物と反応することにより、架橋をもたらし得る。
本プロセスの工程II)は、工程I)の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンの生成と同時に生じ得、又は、工程II)の反応に作用するように条件を修正した分離反応を含み得る。工程II)の反応は、工程Iと同じ条件下で生じ得る。この状況において、工程II)の反応は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーが生成されるにつれて、進行する。あるいは、工程I)に使用される反応条件は、更に工程II)の反応にも拡大適用される。あるいは、反応条件は、変更することができ、又は、工程II)の反応に作用させるために追加成分を添加することができる。
いくつかの実施形態では、工程II)の反応条件は、出発物質である直鎖状オルガノシロキサンにおいて使用される加水分解性基(E)の選択に応じて異なり得る。直鎖状オルガノシロキサン内の(E)がオキシム基である場合、工程II)の反応は、工程I)と同じ反応条件下で生じる可能性がある。すなわち、直鎖状−樹脂オルガノシロキサンコポリマーが工程I)において生成されると、それは継続して、樹脂成分上に存在するシラノール基の縮合により反応して、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの分子量を更に増加させる。理論に束縛されることを望むものではないが、(E)がオキシモ基であるとき、工程I)の反応から結果として得られる加水分界オキシモ基(例えばメチルエチルケトキシム)は、工程II)の反応のための縮合触媒として作用し得ることが可能である。同様に、工程II)の反応は、工程I)と同じ条件下で同時に進行し得る。換言すれば、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーが工程I)において生成されるにつれ、これは更に同じ条件下で反応して、コポリマーの樹脂成分上に存在するシラノール基の縮合反応によりその分子量を更に増加させ得る。しかしながら、直鎖状オルガノシロキサン上の(E)がアセトキシ基である場合、生じる加水分解性基(酢酸)は工程II)の反応を十分に触媒しない。したがって、この状況では、工程II)の反応は、本明細書において説明されるように、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの樹脂成分の縮合に作用する更なる成分により向上され得る。
本発明のプロセスの一実施形態では、式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランを、工程II)中に添加し、式中、R5は、C1〜C8ヒドロカルビル又はC1〜C8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは、加水分解性基であり、qは0、1又は2である。R5は、C1〜C8ヒドロカルビル又はC1〜C8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、あるいはR5は、C1〜C8アルキル基又はフェニル基であり、あるいはR5は、メチル、エチル、又はメチルとエチルの組み合わせである。Xは、任意の加水分解性基であり、あるいはXは、本明細書に定義されたようなE、ハロゲン原子、ヒドロキシル(OH)、又はアルコキシ基であり得る。一実施形態では、オルガノシランは、アルキルトリアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン又はこれらの組み合わせである。市販の代表的なアルキルトリアセトキシシランとしては、ETS−900(Dow Corning Corp.(Midland,MI))が挙げられる。いくつかの実施形態において有用な、他の好適な非限定のオルガノシランとしては、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン(MTO)、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラオキシムシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジオキシムシラン、メチルトリス(メチルメチルケトキシム)シランが挙げられる。
工程II)中に添加する際の式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランの量は様々であるが、プロセスにおいて使用されるオルガノシロキサン樹脂の量に基づいてもよい。使用されるシランの量は、オルガノシロキサン樹脂上のSiのモル当たり2〜15モル%のオルガノシランのモル化学量、例えば、オルガノシロキサン樹脂のSiの2〜10モル%のオルガノシラン/モル;オルガノシロキサン樹脂のSiの5〜15モル%のオルガノシラン/モル;オルガノシロキサン樹脂のSiの2〜5モル%のオルガノシラン/モル;オルガノシロキサン樹脂のSiの10〜15モル%のオルガノシラン/モル;オルガノシロキサン樹脂のSiの5〜10モル%のオルガノシラン/モル;又は、オルガノシロキサン樹脂のSiの2〜12モル%のオルガノシラン/モルをもたらすべきである。更に、いくつかの実施形態では、工程II)中に添加される式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランの量を、オルガノシロキサンブロックコポリマー上の全てのシラノール基を消費しない化学量が確保されるように制御し得る。一実施形態では、工程II)において使用されるオルガノシランの量は、0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]を含有するオルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらすように選択される。
本発明のプロセスにおける工程III)は、随意的なものであって、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に処理することを含む。更なる処理は、貯蔵安定性及び/又は光学的透明度を向上させるように、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に処理することを含むが、これに限定されない。したがって、本明細書で使用されるとき、「更なる処理」という句は、とりわけ、その貯蔵安定性及び/又は光学的透明度を向上させるための、生成された樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの任意の更なる反応又は処理を広く指す。工程II)において生成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーは、例えば、依然としてかなりの量の反応性「OZ」基(すなわち、≡SiOZ基であり、式中、Zは本明細書に定義した通りである)及び/又はX基(式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランが工程IIにおいて使用される場合、Xはブロックコポリマーの中に導入される)を含有し得る。この段階で樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマー上に存在するOZ基は、樹脂成分上に元々存在した、あるいは、オルガノシランが工程II)において使用される場合には式R5 qSiX4−qを有するオルガノシランとシラノール基の反応から生じ得る、シラノール基であり得る。このような「OZ」又はX基が貯蔵中に更に反応して、貯蔵安定性を制限し得る又は最終使用用途の際の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの反応性を減少させ得ることが可能である。あるいは、残っているシラノール基の更なる反応は、樹脂ドメインの生成を更に向上させ、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの光学的透明度を改善し得る。したがって、任意の工程III)は、工程II)中に生じるオルガノシロキサンブロックコポリマー上のOZ又はXを更に反応させて、貯蔵安定性及び/又は光学的透明度を改善するために、実施され得る。工程III)のための条件は、使用される直鎖状成分及び樹脂成分、これらの量、及び末端封鎖化合物の選択に応じ、様々であり得る。
本プロセスの一実施形態では、工程III)は、工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンを、水と反応させ、本プロセス時に生成される酢酸などのいかなる小分子量化合物も除去することにより、実施される。いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーは、直鎖状オルガノシロキサンから生じ得、ここで、Eはアセトキシ基であり、並びに/又は、アセトキシシランは工程II)において使用される。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、工程II)において生成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンは、かなりの量の加水分解性Si−O−C(O)CH3基を含有し、これは樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの貯蔵安定性を制限し得る可能性がある。したがって、工程II)から生成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーに水を添加してもよく、これは、相当量のSi−O−C(O)CH3基を加水分解して、更にトリシロキシ単位を架橋し、酢酸を除去し得る。生成された酢酸及び過剰な水は、既知の分離技術により除去され得る。いくつかの実施例において添加される水の量は、様々であり得る。いくつかの実施形態では、添加される水の量は、全固形分当たり10重量%あるいは5重量%が添加される(反応媒質中の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーに基づいたとき)。
本プロセスの一実施形態では、工程III)は、工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンを、アルコール、オキシム、又はトリアルキルシロキシ化合物から選択される末端封鎖化合物を含む末端封鎖化合物と反応させることにより、実施される。いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーは、Eがオキシム基である直鎖状オルガノシロキサンから生成される。末端封鎖化合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、又は一連の他のものなどのC1〜C20アルコール(例えば、C1〜C20アルコール、C1〜C12アルコール、C1〜C10アルコール、C1〜C6アルコール、又はC1〜C4アルコール)であり得る。あるいは、アルコールは、n−ブタノールである。末端封鎖化合物はまた、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルエトキシシランなどのトリアルキルシロキシ化合物であってもよい。末端封鎖化合物の量は、様々であり得る。いくつかの実施形態では、反応媒質中の樹脂直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー固体に対して、3〜15重量%の間(例えば、3〜10重量%、5〜15重量%、3〜5重量%、10〜15重量%、5〜10重量%、又は3〜12重量%)である。
本プロセスの任意の工程III)は、加えて、又は「更なる処理」の代りに、工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを、安定剤又は超塩基と共に含有する工程を含んでもよい。
本発明のプロセスの工程IV)は任意であり、工程I)及びII)の反応において使用される有機溶媒を除去する工程を含む。有機溶媒は、任意の既知の技術により除去され得る。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、大気条件下又は減圧条件下のいずれかで高温にて樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマー組成物を加熱する工程により除去され得る。いくつかの実施形態では、全ての溶媒が除去されるわけではない。いくつかの実施形態では、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の溶媒が除去され、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の溶媒が除去される。いくつかの実施形態では、20%未満の溶媒が除去され、例えば、15%未満、10%未満、5%未満、又は0%の溶媒が除去される。他の実施形態では、約20%〜約100%の溶媒が除去され、例えば、約30%〜約90%、約20%〜約80%、約30〜約60%、約50〜約60%、約70〜約80%、又は約50%〜約90%の溶媒が除去される。
本発明の実施形態のうちのいくつかは、その全体が本明細書に完全に記載されているかのように、参照することにより組み込まれる、2012年12月20日に出願されたPCT/US2012/071011;2013年1月16日に出願されたPCT/US2013/021707;及び2013年2月7日に出願されたPCT/US2013/025126に説明されるものなどの本明細書に記載の組成物を含む光学アセンブリ及び物品に関する。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のオルガノシロキサンブロックコポリマーを含むLEDカプセル化材に関する。
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、値又は範囲の変動の程度、例えば、記載される値又は記載される範囲の限度の10%以内、5%以内、又は1%以内を許容することができる。
範囲形式で表される値は、範囲の限界として明示的に記述される数値を含むだけでなく、それぞれの数値及びサブ範囲が明示的に記述されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又はサブ範囲も含む柔軟な形で解釈されるべきである。例えば、「約0.1%〜約5%」又は「約0.1%〜5%」の範囲は、約0.1%〜約5%を含むだけでなく、示される範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及びサブ範囲(例えば、0.1%〜0.5%、1.1%〜2.2%、3.3%〜4.4%)も含むものと解釈されるべきである。
本明細書に記載及び主張される本発明の実施形態は、これらの実施形態が、本開示の複数の態様の実例として意図されるため、本明細書に開示される特定の実施形態によりその範囲において限定されない。いかなる同等の実施形態も、本開示の範囲内にあることが意図される。事実、本明細書に図示及び説明されるものに加えて、実施形態の種々の修正は、前述の記載から当業者には明らかになろう。かかる修正はまた、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
要約書が提供されることにより、読者が技術開示の趣旨を迅速に確認できることを可能にする。それは、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解と共に提出される。
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すために含まれる。しかしながら、本開示の見地から、当業者には当然のことながら、開示される特定の実施形態において本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で多くの変更をなすことができ、依然として類似する、又は同様の結果を得ることができる。全てのパーセントは、重量%である。特に指定しない限り、測定は全て23℃で行った。
特性評価法
29Si及び13C NMRスペクトル分析法
例えば、約3グラムの、溶媒を含まない樹脂直鎖状物質(室温にて一晩サンプルを乾燥させることにより調製)と、1gのCDCl3と、CDCl3の4グラムの0.04M Cr(acac)3溶液と、をバイアル瓶に量り取り、十分に混合することにより、樹脂直鎖状生成物のNMRサンプルを調製した。次に、サンプルを、ケイ素を含まないNMR管の中に移した。Varian Mercury 400MHz NMRを使用して、スペクトルを得た。4gのサンプルを、CDCI3の4グラムの0.04M Cr(acac)3溶液で希釈することにより、217フレーク及びシラノール末端PDMSなどの他の材料のNMRサンプルを調製した。
13C NMR実験を、例えば、16mmのガラスNMR管中に配置することにより、実施した。5mmのNMR管を、16mm管の内側に配置し、ロック溶媒を装填した。12〜20分の信号平均化ブロックにおいて、13C DEPT NMRを得た。Varian Inova NMRスペクトロメーターにおいて、400MHzの1H動作振動数でデータを得た。
29Si NMRスペクトルにおけるT(Ph,OZ)及びT(Ph,OZ2)領域の積分値から樹脂直鎖状生成物のシラノール含有量を計算した。T(アルキル)基は、完全に縮合したものと考えられ(推定)、T(Ph,Oz)から差し引かれた。29Si NMRからのD(Me2)の積分値に、比率(合成の組成に使用されるPDMSに含まれるSiモル量に対するカップリング剤に含まれるSiモル量)を乗じることにより、T(アルキル)含有量を計算した。217フレーク由来のイソプロポキシは、低濃度であるため、Oz値から差し引かなかった。したがって、総OZ=総OHとみなされた。
GPC分析
例えば、GPC等級のTHFを用い0.5%(重量/体積)でサンプルを調製し、0.45μmのPTFEシリンジフィルターで濾過し、ポリスチレン標準と比較して分析した。分子量判定に使用される比較検量線(三次フィット)は、580〜2,320,000ダルトンの分子量範囲の16のポリスチレン標準によるものであった。クロマトグラフィー装置は、真空脱気装置を装備したWaters 2695セパレーションモジュールと、Waters 2410示差屈折計と、ガードカラムが前に設置された2つ(300mm×7.5mm)のPolymer Laboratories Mixed Cカラム(分子量分離範囲:200〜3,000,000)と、からなる。1.0mL/分で流動するようにプログラムされたGPC等級のTHFを用いて分離を実施し、注入体積を、100μLにて固定し、カラム及び検知器を、35℃に加熱した。データ収集は、25分かかり、処理はAtlas/Cirrusソフトウエアを用いて実施された。
遊離樹脂含有量を測定するために、低分子量側の遊離樹脂ピークを積分して、面積(%)を得た。
レオロジー分析
TA Instrumentsから市販されているレオメーター(2KSTD標準屈曲旋回軸スプリング変換器を備えるARES−RDA(TA Instruments(New Castle,DE 19720))を強制対流炉と共に使用して、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)及び温度の関数としてのtan δを測定した。試験標本(典型的には8mm幅、1mm厚さ)を、平行なプレートの間に装填し、25℃〜300℃の範囲で2℃/分にて温度を徐々に上げながら小さなひずみの振動レオロジーを使用して測定した(振動数1Hz)。
コポリマーを特性評価するために、流動開始をG’降下(「流動」と標識されている)に入る変曲温度として計算し、120℃での粘度を溶融加工性についての尺度として報告し、硬化開始をG’上昇(「硬化」と標識されている)に入る変曲温度として計算した。
光学的透明度
本発明の組成物のキャストシートの厚さ1mmのサンプルを通して測定された、約350〜1000ナノメートルの波長での光透過率(%)として、光学的透明度を評価した。少なくとも95%の透過率(%)を有するサンプルは、光学的に透明であると考えた。
実施例1(参照):99dpのOH−末端トリフルオロプロピルメチルシロキサンの調製
500Lの4首丸底フラスコを、PI流体(Dow Corning 4−2830;トリフルオロプロピルメチルシロキサン、23℃にて0.0001m2/s(100cSt)の粘度を有するヒドロキシ末端)で充填した(200.0g)。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行った。PI流体を、80℃まで加熱し、その時点で水中の0.3gの10% KOH溶液を添加した(およそ150ppm KOH)。反応混合物を、2時間20分にわたって80℃で加熱した。加熱を停止し、反応混合物を、次いでトルエン溶液(0.64g;1モルKOH:3モル酢酸)中で10%の酢酸で処理した。反応混合物を、数時間にわたって室温で加熱した。この間、反応混合物は、透明であった。43.7gの4−三フッ化クロロベンジルを、反応混合物に添加した。反応混合物は、透明なままであった。反応混合物を、室温にて一晩撹拌した。翌日、一部の沈殿が目立った。反応混合物を、Darco G−60カーボンブラックで処理し、一晩撹拌した。反応混合物を、0.45μmのフィルターを通して加圧濾過した。濾液は、透明で無色であった。ポリマーを、235℃にて薄フィルム蒸発器上で剥離し、1時間40分にわたって40、〜40.0Pa(〜0.3mm Hg)の設定速度で撹拌した。単離される収量:131.1g。ポリマーを、65重量%のポリマーにて4−三フッ化クロロベンゾ中に溶解した。溶液は、軽い混濁を有したため、それを、0.22μmフィルターを通して濾過した。結果として得られた生成物は、2.02モル%のOH含有量を持つ99dpを有した。
実施例2(参照):低RI樹脂直鎖状組成物の合成における使用のためのDMe2 0.10TMe 0.80TPh 0.10TMe樹脂の調製
2Lの3首丸底フラスコを、脱イオン水(643.7g)と4−メチルペンタノン(MIBK;346.8g)と、で充填した。このフラスコに、teflon撹拌パドルと、温度計と、水冷凝縮器と、を装備させた。水/MIBKを、氷水浴を用いて10℃まで冷却し、次いでフェニルトリクロロシラン(30.71g、0.145モル);メチルトリクロロシラン(173.64g、1.162モル);ジメチルジクロロシラン(18.74g、0.145モル);及びMIBK(127.8g)の予混合溶液を約13分以上にわたってゆっくりと添加した。発熱を、10℃〜最大48℃まで観察した。反応混合物を、除去された氷水浴で5分間撹拌させた。この間、温度を44℃まで落とした。水性層を、2Lの分液漏斗において除去した。有機層を、各洗浄ごとに58.5gのDI水の2Lの分液漏斗を用いて、室温にて3回洗浄した。以下のプロセスを、最終洗浄水が4.0のpHを有するまで数回繰り返した。有機相を、1Lの3首フラスコに移動させ、DI水(58.5g;58.5gが、[理論収量(110.8g)+MIBK(474.6g)]の10%)を添加した。反応混合物を、60℃で15分間加熱した。水相を、次いで除去した。残っている水を、加熱により除去し、共沸蒸留を介して還流した。翌日、1.2μmのフィルターを通して加圧濾過した。
樹脂を、120℃の油浴温度にて30分間ロタベーパー(rotavapor)を用いて乾燥状態に剥離し、次いで、樹脂を、150℃の炉に15分で注ぎ出した。樹脂は、120℃で低粘度液体であり、かつ透明であった。材料を炉から取り出したとき、揮発性オリゴマーの指標であり得る、煙が出ていた。生成物は、透明で、室温で「ぱりぱりとした」固体であった。単離される収量は、108.5gであった。
実施例3:45重量%のメチル−T樹脂及び55重量%の99dp TFPシロキサンを有する樹脂−直鎖状の調製
500mLの4首丸底フラスコを、4−三フッ化クロロベンゾ(CBTF;120.38g)と、実施例2からのメチル−T樹脂(45.0g、0.582モルSi)と、で充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行い、Dean Stark装置をCBTFでプレフィルし、加熱マントルを加熱のために使用した。反応混合物を、30分間還流しながら加熱した(141℃)。反応混合物を、138℃(ポット温度)まで冷却した。シラノール末端TFPシロキサン(実施例1;84.62gの溶液=55.00gのシロキサン、0.352モルSi)の溶液を、50/50重量のメチルトリアセトキシシラン(MTA)/エチルトリアセトキシシラン(ETA)(1.70g、0.00746モルSi)で封止した。封止されたシラノール末端TFPシロキサンを、50/50 MTA/ETAをシロキサンに添加し、室温で2時間混合することにより、窒素下にてグローブボックス内(前日)で調製した。反応を、IR分析により完全に立証した。
封止されたシラノール末端TFPシロキサンの溶液を、138℃で素早く樹脂溶液に添加した。反応混合物は、非常に混濁した。この反応混合物に、83.3gのCBTFを添加し、固体含有量を約30%の固体まで減少させた。反応混合物は、なおも混濁していた。別の66.7gのCBTFを添加し、固体含有量を約25%の固体まで更に減少させた。ここで、反応混合物は、軽い混濁のみを有した。
反応混合物を、還流させながら合計5時間にわたって加熱した。2時間後、水は、Dean Starkの底部において観察されなかった。溶媒は、水よりも高い密度を有し、幾分水が上部に存在したことが観察された。水を除去した。合計4時間後、上部から更なる水を除去したが、前よりも少量であった。固体含有量を、約150gの溶媒を留去することにより増加させた。反応混合物を、室温まで冷却した。溶液は、高粘度であり混濁していた。CBTF(36.0g)を添加し、溶液の粘度を減少させた。