{実施形態}
以下、実施形態に係る端子付電線の製造方法について説明する。
<端子付電線>
図1は端子付電線10を示す概略側面図であり、図2は同端子付電線10を示す概略平面図であり、図3は端子20を示す概略斜視図である。
この端子付電線10は、電線12と、端子20と、防食被膜40とを備える。
電線12は、芯線14と、芯線14を覆う被覆18とを備える。芯線14は、線状の導体であり、ここでは、複数の素線が撚り合わされることによって芯線14が形成されている。被覆18は、樹脂等の絶縁材料によって形成されている。被覆18は、例えば、芯線14の周りに軟化した樹脂を押出被覆等することによって形成される。
また、電線12の端部では、所定長の被覆18が芯線14から皮剥されている。これにより、電線12の端部に、芯線14が所定長に亘って露出する露出芯線部14aが設けられる。
端子20は、導電性板材である金属板材をプレス加工等することにより形成された部材であり、相手側の電気的接続要素としての相手側端子80と直接接触するコンタクト部30とそのコンタクト部30と繋がる電線保持部22とを備える。
電線保持部22は、先端側連結部23、芯線圧着部24、中間連結部25及び被覆圧着部26を備える。これらの先端側連結部23、芯線圧着部24、中間連結部25及び被覆圧着部26は、直線方向に沿って一列に並んで形成されている。なお、本実施形態では、本端子20において、コンタクト部30側を端子20の先端側、電線保持部22側を端子20の基端側として説明する。
被覆圧着部26は、かしめられることにより、電線12の被覆18の端部に圧着される部分である。被覆圧着部26は、底板部26aと、その底板部26aの両側に立設されて対向する一対の被覆圧着片26b、26bとを備えている。ここでは、一対の被覆圧着片26bのうち本端子20の先端側の縁部は、各被覆圧着片26bの立設方向先端側に向けて端子20の基端側に傾斜する形状に形成されている。
中間連結部25は、被覆圧着部26と芯線圧着部24とを繋ぐ部分である。中間連結部25は、底板部25aと、その底板部25aの両側に立設されて対向する一対の側壁部25b、25bとを備える。
芯線圧着部24は、かしめられることにより、露出芯線部14aに圧着される部分である。芯線圧着部24は、底板部24aと、その底板部24aの両側に立設されて対向する一対の芯線圧着片24b、24bとを備える。なお、本実施形態では、一対の芯線圧着片24b、24bが対向する方向が幅方向であるとして説明する。また、底板部25aに対して一対の芯線圧着片24bが立設された方向が高さ方向であるとして説明する。
先端側連結部23は、芯線圧着部24とコンタクト部30とを繋ぐ部分である。先端側連結部23は、底板部23aと、その底板部23aの両側に立設されて対向する一対の側壁部23b、23bとを備える。一対の側壁部23bは芯線圧着部24からコンタクト部30に向けて徐々に高さ寸法が高くなるように形成されている。
電線保持部22における各底板部23a、24a、25a、26aは、全体として板状に連なる形状に形成されている。また、電線保持部22における幅方向の一方の側の各側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bは、全体として板状に連なる形状に形成されている。同様に、電線保持部22における幅方向の一方の側の各側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bも、全体として板状に連なる形状に形成されている。また、電線12に対してかしめられる(曲げられる)部分である被覆圧着部26の被覆圧着片26b、26b及び芯線圧着部24の芯線圧着片24b、24bは、中間連結部25及び先端側連結部23の各々の側壁部25b、25b、23b、23bよりも高さ方向において長く形成されている。
また、コンタクト部30は、相手側の電気的接続要素としての相手側端子80と直接接触し、相手側端子80に接続される部分(端子接続部)である。コンタクト部30は、相手側端子80が嵌め入れられる孔である端子挿入孔32が形成された筒状の部分である。本実施形態では、コンタクト部30は、角筒状に形成されており、内部に相手側端子80と接触して弾性変形する接触片33が設けられている。
ここでは、コンタクト部30が筒形状の端子形状(いわゆるメス端子形状)に形成された例で説明するが、コンタクト部は、細長棒状又は細長板状の端子形状(いわゆるオス端子形状)を含む形状に形成されていてもよい。
上記端子20は次のようにして電線12の端部に接続されている。すなわち、被覆18の端部が被覆圧着部26における一対の被覆圧着片26b、26bの間に位置し、露出芯線部14aが芯線圧着部24における一対の芯線圧着片24b、24bの間に位置するように配置される。この状態で、被覆圧着部26の被覆圧着片26b、26bは、底板部26a上の被覆18側(内側)へ曲げられる(かしめられる)。さらに、芯線圧着部24の芯線圧着片24b、24bは、底板部24a上の露出芯線部14a側(内側)へ曲げられる(かしめられる)。これにより、被覆圧着部26において、底板部26aと2つの被覆圧着片26b、26bとが被覆18の端部に圧着された状態でこれを保持し、芯線圧着部24において、底板部24aと2つの芯線圧着片24b、24bとが露出芯線部14aに圧着された状態でこれを保持する。
なお、この接続部分では、露出芯線部14aが芯線圧着部24でその底板部24a側に押え付けられているため、露出芯線部14aのうち被覆圧着部26と芯線圧着部24との間で底板部25aの反対側の部分(上側の部分)は、被覆圧着部26から芯線圧着部24側に向けて徐々に底板部25a側に傾斜する形状、換言すれば、高さ寸法が低くなる傾斜形状に形成されている。
ここで、電線12の芯線14(素線)と、端子20とは、異種の金属によって構成されている。例えば、芯線14は、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金によって構成されている。一方、端子20は、銅若しくは銅を主成分とする銅合金(黄銅等)によって構成された部材、あるいはそれらの部材に錫(Sn)メッキ若しくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された部材である。従って、芯線14と端子20との接続部分では、異種金属が接触した状態となっており、この部分に塩水等の電解液が付着すると、異種金属接触腐食が発生し得る。
また、端子20と電線12との接続部分では、露出芯線部14aは次の各部で外部に露出している。すなわち、芯線圧着部24と被覆圧着部26との間で、露出芯線部14aの基端側部分Q1が露出している。また、芯線圧着部24とコンタクト部30との間で、露出芯線部14aの先端側部分Q3が露出している。さらに、芯線圧着部24の一対の芯線圧着片24bが露出芯線部14aにかしめられた状態で、一対の芯線圧着片24b、24bの先端部間に隙間が生じ得るため、この一対の芯線圧着片24b、24bの間で露出芯線部14aの中間部分Q2が露出し得る。すなわち、上記部分Q1、Q2、Q3の表面が、露出芯線部14aのうち芯線圧着部24から露出する露出表面部分Qである。
そこで、防食処理前の端子付電線10のうち上記露出表面部分Qを含む領域を防食対象領域40Aとし、この防食対象領域40Aに防食被膜40を形成している。本実施形態では、防食対象領域40Aは、上記露出表面部分Qと、端子20のうち露出表面部分Qを囲む周縁部分とからなる領域として想定されている。端子20のうち露出表面部分Qを囲む部分は、具体的には、先端側連結部23のうち先端側部分Q3の両側及び先端側部分と、芯線圧着部24のうち中間部分Q2の両側部分と、中間連結部25及び被覆圧着部26のうち基端側部分Q1を囲む部分である。
ここでは、流動状態の防食剤を上記防食対象領域40Aの少なくとも一部に供給する。そして、後述する押え型によって、流動状態の防食剤を、防食対象領域40Aの全体に広げ、その流動状態の防食剤を、硬化させて防食被膜40を形成する。すると、それらの各部分Q1、Q2、Q3を含む露出表面部分Q及びその周縁部が防食被膜40で被覆されるため、端子20と電線12との接続部分に電解液が付着したとしても、当該電解液は、露出芯線部14aには接しない。このため、異種金属に対して電解液が付着した状態となることが抑制され、もって、異種金属接触腐食が抑制される。なお、ここでは、防食被膜40は、透明又は半透明であるが、これは必須ではない。
もっとも、必要とされる防食性能を満たしつつ、電線と端子との接続部分の大型化の抑制するためには、流動状態の防食剤を上記防食対象領域40Aの少なくとも一部に供給することによって、防食に適した量の防食剤を供給し、また、その防食剤による膜厚をコントロールして防食剤による膜厚をコントロールすることが好ましい。
そこで、ここでは、流動状態の防食剤を、上記部分Q1、Q2及びQ3の少なくとも1箇所に供給することによって、防食するのに適切な範囲に広げることが可能な範囲で、なるべく少ない量の防食剤を供給するようにしている。また、流動状態の防食剤を供給した後、部分Q1、Q2及びQ3表面上で、後述する押え型によって防食剤を押えることで、防食剤をなるべく広範囲に広げると共に、その防食剤の厚み寸法の上限を規制している。
なお、防食剤は、本来想定された防食対象領域40Aからさらに広がっていてもよい。もっとも、防食剤が電線保持部22の表面上に広がる領域はなるべく小さいことが好ましい。
<端子付電線の製造方法の全体に関する説明>
電線12と端子20との接続部分に防食処理が施された上記端子付電線10の製造方法の全体について説明する。
端子付電線10の製造方法は、防食処理が施される前の端子付電線10B(図4参照)を準備する工程(a)と、流動状態の防食剤を供給する工程(b)と、押え型によって流動状態の防食剤を押えて広げる工程(c)と、流動状態の防食剤を硬化させる工程(d)とを備える。
工程(a)における、防食処理が施される前の端子付電線10Bは、図4に示すように、端子20の芯線圧着部24が電線12の露出芯線部14aに圧着されると共に、端子20の被覆圧着部26が電線12の被覆18に圧着されることにより、電線12と端子20とが接続された構成とされている。
工程(b)では、露出芯線部14aのうち芯線圧着部24から露出する露出表面部分Qを含む防食対象領域40Aの少なくとも一部に流動状態の防食剤を供給する。流動状態の防食剤は、点状に供給されてもよいし、線状に供給されてもよいし、ある程度の広がりの面状領域に供給されてもよい。工程(b)については、後にさらに詳細に説明する。
工程(c)では、押え型によって流動状態の防食剤を押えて、流動状態の防食剤を、防食対象領域40Aの全体に広げる。この工程(c)についても、後にさらに詳細に説明する。
工程(d)では、流動状態の防食剤を硬化させる。これにより、上記防食被膜40が形成された端子付電線10を製造することができる。
なお、硬化処理としては、防食剤の性質に応じた内容が実施される。例えば、防食剤として、紫外線等の光によって硬化する性質のものを用いた場合には、流動状態の防食剤に対して硬化用の光を照射させる処理が実施される。防食剤として、熱によって硬化する性質のものを用いた場合には、流動状態の防食剤を加熱する処理が実施される。
また、後の説明では、工程(c)を実施する途中で、本工程(d)が実施される。もっとも、工程(d)は、工程(c)にて実施される部分的な工程と、工程(c)の後に実施される部分的な工程とを含んでいてもよい。
本工程(d)についても、後にさらに詳細に説明する。
以下、上記工程(b)〜工程(d)についてより具体的に説明する。
<防食剤供給工程(b)>
防食剤供給工程(b)では、流動状態の防食剤を、防食対象領域40Aの少なくとも一部に供給する。ここでは、流動状態の防食剤を、防食対象領域40Aの表面の複数箇所に点状に供給する。
流動状態の防食剤の供給は、例えば、図5に示すように、流動状態の防食剤を点状に供給可能な装置を用いて行われる。かかる装置としては、ディスペンサ90を用いることが好ましい。ディスペンサ90は、液体収容部92に向けて気体をパルス状に送込むことによって、液体収容部92内に収容された液体をニードル94の先端部からパルス状に吐出させる装置である。パルス状に送込まれる気体の圧力及び加圧時間を制御することによって、防食剤を供給する各点状箇所における、防食剤の供給速度及び供給時間を制御し、もって、防食剤の供給量を制御することができる。
流動状態の防食剤を供給する工程は、露出芯線部14aのうち芯線圧着部24に対して被覆圧着部26側に露出する基端側部分Q1若しくはその周縁部に流動状態の防食剤を供給する工程(b1)と、芯線圧着部24の一対の芯線圧着片24b間の部分Q2若しくはその周縁部に流動状態の防食剤を供給する工程(b2)と、露出芯線部14aのうち芯線圧着部24に対して被覆圧着部26とは反対側に露出する先端側部分Q3若しくはその周縁部に流動状態の防食剤を供給する工程(b3)とを含む。ここでは、上記工程(b1、(b2)、(b3)の全てにおいて、流動状態の防食剤が点状に供給されている。
各箇所での塗布量及び全ての塗布量は、後に押え型210によって流動状態の防食剤を押えた際に、その防食剤が側方にはみ出ない程度の量に設定されている。上記ディスペンサ90を用いることで、防食剤の供給量を適切な量とするように容易に調整できる。
図6は電線12と端子20との接続部分に対して流動状態の防食剤を点状に供給する際において、防食剤の供給点の一例を示す図である。
同図では、被覆圧着部26の一対の被覆圧着片26bの先端部の間の点P1で、流動状態の防食剤が点状に供給される。なお、図6に示す点P1〜P6は、点状に供給された流動状態の防食剤が、その供給中に広がると想定される領域を示しており、実際には、点P1〜P6として示される円の中心に対して流動状態の防食剤が供給される。なお、後で説明するように、防食剤Lは押え型210によって押されて広がるため、その供給箇所を少なくすることができる。
また、露出芯線部14aの基端側部分Q1及びその周縁部を含む領域に対して、その両側の各位置のP2及びP3に点状に供給する(工程(b1))。なお、P2及びP3は、防食対象領域40Aにおける両側の位置でもある。なお、防食対象領域40Aにおける両側の位置P2、P3に流動状態の防食剤が供給された場合であっても、後述するように、その防食剤は押え型によって押広げられるため、その間の基端側部分Q1全体を覆うことができる。
また、芯線圧着部24の一対の芯線圧着片24b間の部分Q2に対して、その延在方向中間の点P4で、流動状態の防食剤が点状に供給される(工程(b2))。
また、露出芯線部14aの先端側部分Q3及びその周縁部を含む領域に対して、その両側の各位置のP5及びP6に流動状態の防食剤を点状に供給する(工程(b3))。なお、P5及びP6は、防食対象領域40Aにおける両側の位置でもある。なお、防食対象領域40Aにおける両側の位置P5、P6に流動状態の防食剤が供給された場合であっても、後述するように、その防食剤は押え型によって押広げられるため、その間の先端側部分Q3全体を覆うことができる。
なお、上記ニードル94は、3軸方向の移動機構装置98等によって、電線保持部22の延在方向、幅方向及び高さ方向に移動駆動可能に支持され、上記各点P1〜P6に応じた所定の位置データに従って、供給位置を制御されつつ移動駆動されることが好ましい。もっとも、ニードル94の移動は、作業者による人手によって行われてもよい。また、ニードル94は、端子20に対して相対的に移動すればよく、従って、端子20を移動させてもよい。
点状に供給された流動状態の防食剤は、自己の粘度、露出芯線部14aに対する防食剤の濡れ性等に応じて、露出芯線部14aの表面上にも広がってもよいし、ある程度の時間、粒状態のまま留まってもよい。流動状態の防食剤は、後の工程で、押え型210によって押広げられるため、この段階で、それぞれの供給点P1〜P6において供給された流動状態の防食剤が連続する1つの被膜を形成するように防食対象領域40A全体に広がる必要はない。
なお、流動状態の防食剤の広がりの程度は、自己の粘度、露出芯線部14aに対する防食剤の濡れ性等によって左右される。いずれにせよ、それぞれの供給点P1〜P6において供給された防食剤が、少なくとも押え型210によって押広げられた状態で、防食対象領域40Aの表面全体に広がって繋がり、全体として1つの連続する被膜を形成するように、各供給点における防食剤の供給量、各供給点間の距離が、実験的、経験的手法等によって、適宜調整、設定される。
<防食剤押え工程(c)>
防食剤押え工程(c)では、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えて、流動状態の防食剤Lを、防食対象領域40Aの全体に広げる。
図7は防食剤押え装置200を示す概略斜視図であり、図8及び図9は同防食剤押え装置200を示す概略側面図である。図8は防食剤Lを押える前の状態を示しており、図9は防食剤Lを押えた状態を示している。図10は図9のX−X線における概略断面図であり、図11は図9のXI−XI線における概略断面図であり、図12は図9のXII−XII線における概略断面図である。
防食剤押え装置200は、押え型210と端子セット部220とを備える。
端子セット部220は、流動状態の防食剤Lが供給された端子付電線10Bを載置状に支持可能に構成されている。
より具体的には、端子セット部220は、金属又は樹脂等で形成された部材であり、端子セット面222と、端子位置決め凸部224とを備える。端子セット面222は、端子20の幅と同じかこれよりも大きい幅寸法で、かつ、端子20の長さ寸法と同じかこれよりも大きい平面に形成されている。そして、端子20を端子セット面222上で載置状に支持することで、当該端子20を端子セット面222に対して垂直な上下方向において一定位置で支持できるようになっている。
なお、流動状態の防食剤Lの供給も、端子20を本端子セット部220上に載置した状態で行われてもよい。
端子位置決め凸部224は、端子セット面222の前側部分(図7〜図9の左側部分)から上方に突出するように形成されている。端子位置決め凸部224のうち端子セット面222側を向く面224fは、端子セット面222に対して垂直状態で立上がっている。そして、端子セット面222上に載置された端子20の先端部が端子位置決め凸部224の面224fに押し当てられる。これにより、端子20がその延在方向において一定位置に支持される。
なお、端子付電線10Bのうち電線12側の部分は、電線保持部(図示省略)によって保持されており、端子20はその幅方向にも一定位置に支持される。端子位置決め凸部224に端子20の先端部を嵌め込んでその幅方向一定位置に支持可能な凹部が形成されていてもよい。
押え型210は、端子付電線10B上の流動状態の防食剤Lを押えることができるように構成されている。
ここでは、押え型210は、金属又は樹脂等で形成された部材であり、その下側の表面に押え面212が形成されている。押え面212は、端子付電線10Bのうち電線12と端子20との接続部分を側面視した状態で、その接続部分の上側に対して間隔をあけて配設可能な形状に形成されている。より具体的には、押え面212は、端子セット部220上に支持された端子20の被覆圧着部26の上側に位置する被覆側押え面213と、端子20の芯線圧着部24の上側に位置する芯線側押え面214と、これらの中間に位置する中間押え面215とを備える。なお、押え面212の幅寸法は、端子20のうち押える対象となる各部分の幅寸法と同じであるか、防食剤Lを押えることが可能な範囲で端子20のうち押える対象となる各部分の幅寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。
芯線側押え面214は、被覆側押え面213に対して、芯線圧着部24と被覆圧着部26との高さ寸法の差と同程度の寸法で下側に位置している。中間押え面215は、被覆圧着部26から芯線圧着部24に向けて下向き傾斜するように形成されている。
なお、ここでは、芯線側押え面214の前側縁部は、端子20のうち芯線圧着部24とコンタクト部30との間であって露出芯線部14aよりも先端側の部分にも延在していることが好ましい。これにより、露出芯線部14aの先端側でも、流動状態の防食剤Lを押えることができる。
上記押え面212は、なるべく円滑な面に形成されていることが好ましい。押え面212には、硬化前或は硬化後において、防食剤の剥離を容易にする処理が施されていることが好ましい。例えば、押え面212にフッ素コーティング加工が施されているとよい。
なお、押え型210は、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモーター等のアクチュエータによって、端子セット部220に対して上方に離れた位置と、端子セット部220に近づいて防食剤Lを押えることが可能な位置との間で、往復移動可能に支持されていることが好ましい。
本防食剤押え装置200を用いて、流動状態の防食剤Lを押える工程について説明する。
まず、押え型210を端子セット部220の上方に離れた位置に配設した状態で、流動状態の防食剤Lが供給された端子付電線10Bの端子20を、端子セット部220上の一定位置に位置決め支持する(図7及び図8参照)。
そして、押え型210を下降させて、押え面212によって、端子付電線10Bの接続部分上に供給された流動状態の防食剤Lを押える。すなわち、押え面212が接続部分に対して所定の隙間をあけて対向する位置まで、押え型210を下降させる(図9参照)。なお、押え型210の移動は、端子20に対する相対的な移動であればよく、従って、端子セット部220側が移動してもよい。
すると、端子付電線10Bの接続部分上の防食剤Lが押されて、防食対象領域40Aの全体に広がるようになる。また、防食剤Lの厚みは、押え面212によって規定される範囲内に収るため、当該防食剤Lは接続部分から大きく外方に突出することが抑制される。
すなわち、点P1〜点P6に点状に供給された防食剤Lが押えられてその周囲に広がって、相互に繋がって1つの被膜を形成し、防食対象領域40Aの全体に広がる。
この際、芯線側押え面214の前側縁部は、露出芯線部14aよりも先端側の部分にも延在しているため、露出芯線部14aの先端側でも、芯線側押え面214よって流動状態の防食剤Lを押えることができる。すなわち、先端側連結部23のうち露出芯線部14aよりも先端側の部分では、一対の側壁部23bが立上がっているため、側壁部23bの先端側の角部が防食剤Lによる被膜を突破るようにして上方に露出してしまう恐れがある。そこで、芯線側押え面214の前側縁部を、露出芯線部14aよりも先端側の部分にも延在させると、芯線側押え面214に対する防食剤Lの濡れ性に応じて、防食剤Lが芯線側押え面214に付着する(図12参照)。この芯線側押え面214は、一対の側壁部23bの先端側部分よりも間隔をあけた上方位置に配設されているため、当該芯線側押え面214に付着した防食剤Lは、露出芯線部14aの先端側で、一対の側壁部23bの先端側部分を覆うことができる。これにより、露出芯線部14aの露出表面部分Qの周縁部でより確実に一定の膜厚を確保できる。また、この部分で、防食被膜40の表面が円滑となり、若干鏡面状を呈するため、その部分を良好に形成することができたか等の製品検査、画像検査が容易となる。
また、工程(b)において、流動状態の防食剤Lが、防食対象領域40Aのいずれかの部分に対してその両側の各位置に点状に供給されている。ここでは、防食剤Lは、点P2と点P3との関係、及び、点P5と点P6との関係で、防食対象領域40Aの両側の各位置に供給されている(図6参照)。
そして、本工程(c)では、防食対象領域40Aの両側の各位置に点状に供給された流動状態の防食剤Lが広げられて、防食対象領域40Aの幅方向中央で繋がるように、押え面212によって点状に供給された流動状態の防食剤Lを押える。
図13〜図15を参照してより具体的に説明する。図13〜図15は、図9に示すXIII−XIII線断面において、点状に供給された流動状態の防食剤Lを押える工程を示している。
図13では、中間連結部25において一対の側壁部25bが若干内側に倒れ込むように立設されており、流動状態の防食剤Lが一対の側壁部25bの先端部上(図6の点P2、P3参照)に供給され、粒状に留まっている状態を示している。
この状態で、押え型210の押え面212が下降すると、図14に示すように、粒状の防食剤Lが押え面212の中間押え面215が両側の粒状の防食剤Lに接触する。すると、粒状の防食剤Lは、中間押え面215に対する濡れ性に応じて当該中間押え面215に広がる。そして、その幅方向中央部で、両側の防食剤Lがくっつく。すると、防食剤Lは、表面張力によってその表面積をなるべく小さくしようとするので、中央に寄る。このように、両側の点P2、P3に供給された流動状態の防食剤Lを中間押え面215によって押えることで、それらの防食剤Lを広げて、それらの中央で繋げると共に中央に寄せるようにする。これにより、端子の両側外方へ防食剤Lがはみ出すことを抑制しつつ、防食対象領域40Aの幅方向全体に防食剤Lを広げることができる。
<防食剤硬化工程(d)>
端子付電線10Bの接続部分に供給された流動状態の防食剤Lを硬化させる工程について説明する。ここでは、防食剤Lが光(例えば、紫外線光)によって硬化する性質のものであるという例で説明する。
本工程(d)は、図16〜図18に示すように、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えた状態で、端子20の両側方から光を流動状態の防食剤Lに照射させる工程(d1)を含む。
すなわち、押え型210の押え面212は、幅方向に平坦であるため、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えた状態では、端子付電線10Bの接続部分の上部と押え面212との間に介在する流動状態の防食剤Lがその間の側方部分に露出している。防食剤L自体は、透明又は半透明であり、光は当該防食剤Lを透過することができる。
そこで、端子セット部220上の端子20の両側方から、光照射部300からの光を端子20に向けて照射すると、当該光は、流動状態の防食剤Lの両側部からその幅方向中央に進入する。これにより、端子付電線10Bの接続部分上の防食剤Lが光硬化する。なお、光は防食剤L内である程度乱拡散されるので、これにより、硬化範囲はある程度広がる。
なお、芯線圧着部24では、芯線圧着片24bの先端部が内方に向うように曲げられているため、芯線圧着部24の両側方から光を照射すると、一対の芯線圧着片24bの先端部の凹む部分には光は照射され難い。このため、防食剤Lのうち一対の芯線圧着片24bの先端部の凹む部分にある部分Laには、光は照射されず、当該部分Laは硬化し難い(図17参照)。
しかしながら、防食剤Lのうち部分La上にある部分Lbには、光が照射されるため、硬化する。この部分Lbは、一対の芯線圧着片24bのうち両側方から見て観察可能な外周部分に密着した状態で硬化するため、前記部分Laを封止した状態で硬化する。なお、この段階で、防食剤Lは完全に硬化する必要はなく、防食剤Lの流出を抑制できる程度に硬化すればよい。
そこで、上記工程(d1)を実施した後、押え型210を上方に移動させ、防食剤Lの上方を開放させた状態で、その上方の光照射部310からの光を防食剤Lに照射させる(図18参照)。すると、部分Laにも光が照射されるので、硬化する。これにより、防食剤Lの全体を硬化させることができる。
本工程(d)は、図19に示すように、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えた状態で、端子20のコンタクト部30と芯線圧着部24との間、即ち、先端側連結部23に光を照射させる工程(d2)を含んでいてもよい。
すなわち、工程(d2)では、押え型210の前側(コンタクト部30側、図19では左側)の光照射部320から先端側連結部23内に向けて光が照射される。この光は、先端側連結部23の底板部23aと一対の側壁部23bとの間に向けて照射される(図3参照)。従って、流動状態の防食剤Lが、先端側連結部23の底板部23aと一対の側壁部23bとで囲まれる空間内でコンタクト部30側に流れ出ようとして、押え面212からコンタクト部30側に流出すると、その段階で、硬化する。これにより、防食剤Lがコンタクト部30側に流出することを抑制でき、コンタクト部30への防食剤Lの付着を有効に抑制できる。
なお、本工程(d2)は、押え型210が流動状態の防食剤Lを押えることを開始する時点で実施されることが好ましい。
そのためには、光照射部320からの光は、押え面212の前側面よりも前方(コンタクト部30側)のみに照射されるように、光の進路が制限されていることが好ましい。
もっとも、本工程(d2)は、押え型210が流動状態の防食剤Lを押えることを開始する時点で実施されることは必須ではない。
なお、防食剤Lの硬化工程は、上記例に限られない。防食剤Lが空気の湿気等で硬化する性質のものである場合には、そのまま放置しておいてもよい。また、防食剤Lが熱で硬化する性質のものである場合には、当該防食剤Lを加熱するようにしてもよい。この場合の一例については後でも説明する。
<効果等>
以上のように構成された端子付電線10の製造方法によると、防食対象領域40Aの少なくとも1箇所に流動状態の防食剤Lを供給し、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えて、その流動状態の防食剤Lを防食対象領域40Aの全体に広げ、この流動状態の防食剤Lを硬化させるため、防食剤Lにより露出芯線部14aの露出表面部分Qを覆うことができ、必要とされる防食性能を満たすことができる。また、流動状態の防食剤Lを押え型210によって押えることで、防食剤Lの厚みを規制することができ、端子付電線10の接続部分の大型化を抑制できる。
これにより、例えば、防食処理を施さない端子付電線を想定して設計された従来タイプのコネクタのキャビティにも、端子を収容することが可能となり、ワイヤーハーネスのコストアップを抑制することができる。
また、工程(b)では、流動状態の防食剤Lを点状に供給するため、防食対象領域40Aに所定の厚みの防食被膜40を形成するため、流動状態の防食剤Lを必要最低限の量だけ容易に供給することができる。また、点状に供給された流動状態の防食剤Lは、押え型210によって押されて広がるため、露出芯線部14aの露出表面部分Qをより確実に覆うことができる。
また、流動状態の防食剤Lを防食対象領域40Aのいずれかの部分においてその両側に供給し、押え型210によってその両側に供給された防食剤Lを押えるため、防食剤Lを、防食対象領域40Aの幅方向において必要かつ十分な範囲でより確実に押広げることができる。
押え面212に、防食剤Lの剥離を容易にするための処理が施されているため、流動状態又は硬化した防食剤Lが押え面212にくっついたままとなることを抑制でき、防食被膜40をより確実に形成することができる。
また、押え面212の芯線側押え面214の先端部が、端子20のうち芯線圧着部24とコンタクト部30との間であって露出芯線部14aよりも先端側の部分で、流動状態の防食剤Lを押えるため、露出芯線部14aの先端部の周縁部でも防食被膜40の厚みをある程度確保することができ、より確実な防食性能を得ることができる。
また、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えた状態で、端子20の両側方から、硬化用の光を、流動状態の防食剤Lに照射するため、防食剤Lが周囲に流出し難くなる。
また、押え型210によって流動状態の防食剤Lを押えた状態で、端子20のコンタクト部30と芯線圧着部24との間に、硬化用の光を照射するため、流動状態の防食剤Lがコンタクト部30側に流れ込み難くなる。これにより、コンタクト部30の電気的接続信頼性を向上させることができる。
{変形例}
上記実施形態を前提として、各種変形例について説明する。
<工程(b)に関する変形例>
まず、流動状態の防食剤Lを供給するための変形例について説明する。
図20は微量の防食剤Lを点状に供給するための変形例を示す説明図である。図20において、符号110で示す部分は供給対象部分の表面を示しており、符号120で示す部分は、流動状態の防食剤Lを吐出する防食剤吐出用ニードルを示している。また、図20では、左右方向に複数の防食剤吐出用ニードル120が示されており、左側から右側に向けて、供給対象部分の表面110に対する防食剤吐出用ニードル120の位置及び防食剤の吐出状態の変化を、経時順で示している。
すなわち、防食剤吐出用ニードル120から吐出される流動状態の防食剤Lが微量である場合、防食剤Lは自重によってはニードル120から離れ難い。このため、流動状態の防食剤Lは、その吐出量によっては、防食剤吐出用ニードル120から吐出されかつその先端部に留まって粒状となる(図20の(1)参照)。
この防食剤Lを供給対象部分の表面110に供給するため、上記防食剤Lの粒を、供給対象部分の表面110に接触させるように、防食剤吐出用ニードル120を供給対象部分の表面110に近づける(図20の(2)参照)。
この後、防食剤吐出用ニードル120を供給対象部分の表面110から遠ざける(図20の(3)〜(7)参照)。この際、供給対象部分の表面110に接触した防食剤Lの粒は、防食剤吐出用ニードル120によって引き伸され、やがて、供給対象部分の表面110に残存する部分と、防食剤吐出用ニードル120の先端部に残存する部分とに分断される(図20の(6)、(7)参照)。これにより、微量の防食剤Lでも、これを供給対象部分の表面により確実に供給することが可能となる。
なお、上記各動作中において、防食剤吐出用ニードル120から追加の防食剤Lが吐出されてもよい。
図21及び図22は、工程(b)において、部分Q1、Q3により均一な厚みの被膜を形成できるように、防食剤を点状に供給するための変形例である。
すなわち、露出芯線部14aの先端側部分Q3は、基本的には複数の素線が集合したものであり、略円形断面を呈するため、その幅方向中央で高く、その幅方向両外方向に向けて徐々に傾斜が大きくなる形状を示す。このため、露出芯線部14aの先端側部分Q3の全体に対して均一な態様で点状に防食剤を供給すると、その幅方向両側で防食剤Lの膜厚が小さくなる恐れがある。露出芯線部14aの先端側部分Q3の幅方向両側では、傾斜が大きく、これらの部分に供給された流動状態の防食剤Lが傾斜に従って、ずり落ちてしまうからである。
そこで、次のようにすれば、露出芯線部14aの先端側部分Q3に対して、より均一な厚みの被膜を形成できるように、防食剤を点状に供給することができる。
すなわち、図21に示すように、露出芯線部14aの先端側部分Q3に対してその幅方向中央から偏る部分に対して防食剤Lを点状に供給する。
この後、図22に示すように、防食剤吐出用ニードル120を先端側部分Q3の幅方向中央に向けて移動させる(矢符B参照)。なお、防食剤吐出用ニードル120は、先端側部分Q3に接触しないように、上昇しつつ先端側部分Q3の幅方向中央に向けて移動させることが好ましい。
すると、防食剤Lの粒が、防食剤吐出用ニードル120によって先端側部分Q3の中央に向けて引っ張られつつ引き伸され、やがて、先端側部分Q3に残存する部分と防食剤吐出用ニードル120に残る部分とに分断される。このため、先端側部分Q3上に供給された防食剤Lがその幅方向外方にずり落ち難くなる。
また、先端側部分Q3に残存する防食剤Lは、図21に示す供給点(先端側部分Q3の幅方向中央から偏った位置にある)から先端側部分Q3の幅方向中央に向けて細くなりつつ延びる分布する(図22において2点鎖線で示す防食剤L参照)。このため、先端側部分Q3に残存する防食剤Lが先端側部分Q3の幅方向外側に僅かにずり落ちることを考慮しても、露出芯線部14aの先端側部分Q3に対して、より均一な厚みの被膜を形成できる。
なお、基端側部分Q1に流動状態の防食剤を点状に供給する場合にも同様に供給することで、より均一な厚みの被膜を形成することができる。
図23及び図24は、工程(b)において、部分Q2に対して微量の防食剤をより広範囲に供給するための変形例である。
すなわち、一対の芯線圧着片24b間には僅かな隙間が形成されるに過ぎないため、この部分には微量の防食剤をより長い部分に供給できるようにすることが好ましい。
そこで、図23に示すように、芯線圧着部24の一対の芯線圧着片24b間の部分に防食剤Lを点状に供給し、その後、防食剤吐出用ニードル120を一対の芯線圧着片24b間に沿って移動させる(矢符C参照)。すると、防食剤Lの粒が、防食剤吐出用ニードル120によって一対の芯線圧着片24b間に沿って引っ張られつつ引き伸され、部分Q2に残存する部分と防食剤吐出用ニードル120に残る部分とに分断される。
すると、図24に示すように、一対の芯線圧着片24b間の所定位置に防食剤Lが点状に供給され、その部分から防食剤吐出用ニードル120の移動方向に沿って順次細長くなりつつ延びるように、防食剤Lが供給されることになる。これにより、一対の芯線圧着片24b間に対して、微量の防食剤をより確実により長い部分に対して供給することができる。
<工程(c)及び工程(d)に関する変形例>
図25に示す変形例では、押え型210に対応する押え型1210が流動状態の防食剤Lを押えた状態で、押え面212に対応する押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間隔が、端子20の側方からみて、端子20の延在方向において不均一となるように設定されている。
より具体的には、防食対象領域40Aのうち被覆圧着部26と芯線圧着部24の前側(コンタクト部30側)では、押え面1212と防食対象領域40Aとの間隔寸法が寸法D1となるように設定されている。また、中間連結部25における露出芯線部14aの基端側部分Q1(若しくは中間連結部25の一対の側壁部25b)との間隔が、上記寸法D1よりも大きい寸法(例えば、D2)となるように設定されている。
ここでは、押え面1212のうち中間押え面1215(中間押え面215に対応する)が、中間押え面215よりも前側(コンタクト部30側)に近い位置に設けられていることで、中間連結部25における露出芯線部14aの基端側部分Q1(若しくは中間連結部25の一対の側壁部25b)との間隔が、上記寸法D1よりも大きい寸法(例えば、寸法D2)となるように設定されている。
この変形例は、圧着形状のバラツキ及び被覆位置の少なくとも一方のばらつきが生じた場合に、効果を発揮する。
すなわち、端子20を電線12に圧着する際には、端子20及び電線12の少なくとも一方の位置がばらつく恐れがある。これらの位置のばらつきが生じた状態のままで、端子20が電線12に圧着されてしまうと、それは、圧着形状のばらつき及び中間連結部25における被覆18の端部位置のばらつきとして表れる。
圧着形状のばらつき及び被覆18の端部位置のばらつきの少なくとも一方が生じると、押え面1212の下方における端子付電線10Bの接続部分の占有体積がばらついてしまう。
理想的な接続状態の接続部分を想定した場合と比較して、圧着形状が突出しており、又は、被覆18の端部の位置が芯線圧着部24側に位置していると、押え面1212の下方における端子付電線10Bの接続部分の占有体積は大きくなってしまう。そうすると、理想的な接続状態の接続部分を想定した量の防食剤Lを供給すると、その防食剤Lは、接続部分と押え面1212との間に収りきらず、余剰分が発生し、その余剰分は、側方にはみ出してしまう恐れがある。
そこで、押え型1210が流動状態の防食剤Lを押えた状態で、押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間隔が、端子20の延在方向において不均一となるように設定されていると、防食剤Lの余剰分を、押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間であってそれらの間隔が比較的大きい部分に逃すことができる。また、防食剤Lの余剰分は、押え面1212に対する濡れ性に応じて当該押え面1212に沿って流動することも、上記余剰分を、押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間であってそれらの間隔が比較的大きい空間に逃すことに貢献する。
ここで、接続部分の防食対象領域40Aに形成された防食被膜40がコネクタハウジングのキャビティと干渉しないための上限の状態を想定する。この上限を規定するのが上記押え面1212である。また、理想的な形状の接続部分に理想的な量の防食剤Lが供給された状態を想定する。押え面1212と防食対象領域40Aとの間において、前者の状態における防食剤Lの体積から後者の状態における防食剤Lの体積を引いた値が、圧着形状のばらつき及び被覆18の端部位置のばらつきに起因する体積変動に対応し得る範囲であると把握することができる。
このように、防食剤Lの余剰分が、端子20の側方にはみ出ることを抑制できることになる。
押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間であってそれらの間隔が比較的大きい部分は、コネクタのキャビティに干渉し難い場所に設けられていることが好ましい。そこで、本変形例では、中間連結部25と、芯線圧着部24のうち中間連結部25側の部分で、押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間隔を、その前後部分よりも大きくしている。
もっとも、逆に、理想的な接続状態の接続部分を想定した場合と比較して、圧着形状の突出量が少なく、又は、被覆18の端部の位置が被覆18側に位置していると、押え面1212の下方における端子付電線10Bの接続部分の占有体積は小さくなってしまう。そうすると、理想的な接続状態の接続部分を想定した量の防食剤Lを供給すると、その防食剤Lは、押え面1212と防食対象領域40Aの表面との間を充填できず、また、防食剤Lが中間押え面1215に対する濡れ性に応じて当該中間押え面1215に沿って流動することを考慮しても、当該防食剤Lが中間押え面1215に沿って上に移動でき無い可能性がある。
また、上記のような場合、図26に示すように、防食剤Lによる防食被膜1240のうち中間押え面1215の上側に対応する部分に、滴形状の上端部を斜めに切り落したような凹状欠部1242が生じてしまう可能性がある。凹状欠部1242の開口周縁部1242aは、比較的尖った形状として表れることがある。このため、端子付電線10の取扱中に、他の部分が凹状欠部1242の開口周縁部1242aに引っ掛かってしまう恐れがある。
そこで、図27〜図29に示す変形例では、押え型1210に対応する押え型2210に対して、押え面1212に対応する押え面2212に、凸部2216が形成されている。
凸部2216は、押え面2212と防食対象領域40Aの表面との間隔が端子20の延在方向においてその周囲よりも大きくなる部分の幅方向中央の部分、即ち、中間押え面1215に対応する中間押え面2215の幅方向中央の部分に形成されている。凸部2216は、中間押え面2215の上側部分に形成されているため、端子20の延在方向において部分的に突出している。
また、凸部2216は、外方に向けて凸となるように湾曲する形状に形成されている。ここでは、凸部2216は、楕円体を半分に切除したような形状に形成されている。
この変形例によると、流動状態の防食剤Lを凸部2216に接触させることによって、防食剤Lを端子20の幅方向中央に寄せることができ、防食剤Lの側方へのはみ出しを抑制することができる。
すなわち、凸部2216を形成しない場合において、図30に示すように、押え面1212の下方における端子付電線10Bの接続部分の占有体積が小さいと、図31に示すように、中間押え面1215を防食対象領域40A上の防食剤Lに向けて下降させても、防食剤Lに達することができない可能性がある。
これに対して、中間押え面2215に凸部2216を形成しておくと、押え型2210を同程度下降させた場合でも、図32に示すように、凸部2216の先端部は防食剤Lに接触することができる。防食剤Lが凸部2216に接触すると、その表面の濡れ性に応じて、防食剤Lが凸部2216表面を伝わり、中間押え面2215側に伝わる。これにより、防食剤Lが中間押え面2215の幅方向中央に寄せられる。これに伴って、凸部2216に対して端子20の延在方向両側でも、防食剤Lが端子20の幅方向中央部に寄せられる。これにより、防食剤Lの余剰量が少ない場合又はほとんど無い場合でも、押え面2212と防食対象領域40Aの表面との間隔が比較的大きい部分に、防食剤Lを寄せることができ、防食剤Lの側方へのはみ出しをより有効に抑制できる。
また、凸部2216は、上記のように、外方に向けて凸となるように湾曲する形状に形成されているため、図33に示すように、防食剤Lによる防食被膜2040に、凸部の表面形状が転写された凹状欠部2042が形成されても、その周縁部形状を比較的滑らかな形状に形成することができる。これにより、防食被膜2040に対する他の部材の引っ掛かり等が有効に抑制される。
なお、凸部2216は、押え面2212の幅方向中央部に設けられているため、端子20の両側方から光を照射させて防食剤Lを硬化させる際の障害とはならない。
図34及び図35に示す変形例では、押え型210に対応する押え型3210は、防食対象領域40Aの両側方で流動状態の防食剤Lを押え込み可能な一対の側方押え面3218を含む。
すなわち、押え型3210のうち押え面212に対応する押え面3212の両側部に下方に突出する一対の押え用突部3217が形成され、そのうち向き面が側方押え面3218とされている。側方押え面3218の間隔寸法は、端子20のうち押える対象となる各部分の幅寸法と同一であるか、端子20と干渉しない範囲で、端子20のうち押える対象となる各部分の幅寸法よりも小さく設定されている。
この側方押え面3218によって、流動状態の防食剤Lが端子20の側方に大きくはみ出すことを抑制できる。なお、防食剤Lの量、広がり方によっては、側方押え面3218は、防食剤Lを側方から押えることも、押えないこともあり得る。
なお、このように、側方押え面3218を設けると、端子20の側方から硬化用の光を防食剤Lに照射させることが困難となる。
そこで、図36に示すように、押え型3210に対応する押え型3210Bが、硬化用の光を透過可能な光透過部分を含む構成とすればよい。本例では、押え型3210Bの全体が、光透過可能とされている。かかる押え型3210Bは、ガラス又は透明な樹脂によって形成するとよい。
この例によると、押え型3210によって防食剤Lを押えた状態で、押え型3210Bの両側方及び上方の少なくとも一方から、光照射部3110の光を照射し、その光を押え型3210の光透過部分を透過させて、防食剤Lに光を照射して、当該防食剤Lを硬化させることができる。
また、図37に示す例では、防食剤Lとして、熱硬化可能な性質のものを用いることを前提として、押え型3210に発熱体3214を取付けている。そして、押え型3210によって防食剤Lを押えた状態で、発熱体3214を発熱させ、その熱により押え型3210を加熱し、もって、防食剤Lを加熱して硬化させるようにしている。
なお、防食剤Lを加熱する構成は上記例に限られず、例えば、端子セット部220側を加熱し、端子20を介して防食剤Lを加熱するようにしてもよい。
なお、図36のように、押え型の少なくとも一部を光透過部分とし、当該光透過部分を介して防食剤に光を照射する工程、及び、図37のように、防食剤Lとして、熱硬化可能な性質のものを用い、防食剤Lを加熱することで、防食剤Lを硬化させる工程は、一対の側方押え面3218の有無に拘らず適用可能である。
また、防食剤Lとして、光硬化可能で、かつ、熱硬化可能な性質のものを用いた場合には、上記両工程を併用することも可能である。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。