しかしながら、従来のドアビームにあっては、車両前後方向に長いので、側突荷重により中央部で撓み変形を起こしやすく、それによってドアビームが破損を起こし兼ねないという懸念があった。また、リンフォース31が断面コの字形状の場合には、ドアインナパネル1の前後の枠状部9,10との固定部33,34においてコの字断面部が潰れたり、剥がれたりする等の変形を起こし兼ねないという懸念があった。そのために、ドアパネル3の中空部内を橋渡しする補強部材だからこそ生じてしまう有害な撓み変形を防止することのできる補強部材が求められている。
また、図8に鎖線で示すように、同じ形態の自動車ドアにおいて仕様に応じて板状(開断面形状)のリンフォース31に代えてパイプ状(閉断面形状)のドアビーム41を用いる場合に、板状のリンフォース31の前後の孔32がパイプ状のドアビーム41にラップしてしまうために、車両の組立工程において共通のロボットアーム(装置)を用いることができず、余分な工数やコストがかかってしまうと共に、工場ラインが複雑化するという懸念があった。
また、ロボットアームを用いてパイプ状のドアビーム41をドアインナパネル1に組み付ける際に、パイプ状のドアビーム41をバランス(安定性)良く且つ位置精度良くドアインナパネル1に組み付けることが難しいという懸念があった。
また、板状のリンフォース31の上下の凸部38に接着剤(マスチックシーラ)14を複数箇所に塗布して、リンフォース31をドアアウタパネル2(図7)に固定しようとした場合に、板状のリンフォース31への接着剤14の塗布位置とパイプ状のドアビーム41への接着剤14の塗布位置とが異なるために、共通の接着剤塗布装置及び接着剤塗布工程を用いることができず、余分な工数やコストがかかってしまうと共に、工場ラインが複雑化するという懸念があった。
本発明は、上記した点に鑑み、車両の側面衝突時に閉断面形状のドアビームの撓み変形を抑制することができ、また、ドアビームをバランス良く且つ位置精度良くドアインナパネルに組み付けることができ、それに加えて、既存の開断面形状のリンフォースと共通の装置を用いて効率良く組み付けを行うことのできる車両用ドアビーム構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用ドアビーム構造は、自動車ドアのドアインナパネルとドアアウタパネルとを補強する車両前後方向に延びるドアビームを設けた車両用ドアビーム構造において、閉断面形状の二本のドアビームが上下に配置され、該二本のドアビームの前端部同士及び後端部同士がそれぞれ前後の各結合ブラケットで繋がれた状態で、該結合ブラケットが前記ドアインナパネルに面接触で固定され、該二本のドアビームの間において該前後の結合ブラケットに孔が設けられており、少なくとも該孔の径分の距離を隔てて該二本のドアビームが配置され、前記前後の結合ブラケットの間における前記二本のドアビームの長さの中心位置が前後にずれるように該二本のドアビームの長さが相違したことを特徴とする。
上記構成により、二本のドアビームと、二本のドアビームに結合した車両前後の結合ブラケットとで形成されたエリアで、車両の側面衝突時の荷重(側突荷重)が受けられることで、各ドアビーム単体の撓み変形(曲げ)が抑制されて、ドアビーム単体の撓み変形に伴う折れが防止される。また、側突荷重に対して、各ドアビームが閉断面により潰れにくい上に、固定部において結合ブラケットが面接触でインナパネルに固定されているので、ドアビームが受けた荷重に対して固定部においてドアビームと結合ブラケットとドアインナパネルという三枚の部材で支えられて、ドアビームの変形等(ドアビーム断面の変形や固定部の剥がれ)が抑制される。
また、ドアインナパネルへのドアビーム組立体の組み付け時に、二本のドアビームと前後の結合ブラケットとで一体となったドアビーム組立体(補強部材)の重心となる二本のドアビーム間に設けた孔により、二本のドアビームが同時に、バランス良く且つ位置精度良く組み付けられる。
また、二本のドアビームの間で前後の各結合ブラケットに孔が設けられているので、既存の板状(開断面形状)のリンフォースと二本の閉断面形状のドアビームとが共通のロボットアーム(装置)を用いてドアインナパネルに組み付け可能となる。
また、側突荷重によるドアビームの最大撓み部位が二本のドアビームで車両前後に異なることで、二本のドアビームが同時に変形を起こすことが防止され、ドアビームによる補強効果が高まる。
請求項2に係る車両用ドアビーム構造は、請求項1記載の車両用ドアビーム構造において、前記結合ブラケットが前記ドアビームの長手方向直交断面における重心までの径の2/3以上を覆うように周方向に回り込んで結合したことを特徴とする。
上記構成により、車両の側突時に、二本のドアビームが互いに離れる方向(上下方向)に撓もうとする力を、回し込んで結合した結合ブラケットの面で受け止めることで、補強効果が高められる。
請求項3に係る車両用ドアビーム構造は、請求項1又は2記載の車両用ドアビーム構造において、前記ドアアウタパネルと前記ドアビームとが、該ドアビームの長手方向直交断面における重心の側部位置で接着剤により固定されたことを特徴とする。
上記構成により、車両の側突によりドアアウタパネルが変形すると共にドアビームの固定点に荷重が伝わり、固定部におけるドアインナパネルからの結合ブラケットの剥がれが起こり難くなる。また、ドアアウタパネルの車両外側からの側突時以外の押圧荷重によるベカツキ(弾性的なへこみ)が防止される。また、上下二本のドアビームに接着剤を塗布することで、既存の板状(開断面形状)のリンフォースの上下部分に接着剤を塗布する装置を共通で使用可能となる。
請求項1記載の発明によれば、上下のドアビームと前後の結合ブラケットとで形成されたエリアで、車両への側突荷重を受けることで、各ドアビームの撓み変形を抑制して各ドアビームの折れを防止することができる。また、側突荷重に対して、各ドアビームが閉断面により潰れにくい上に、結合ブラケットが面接触でインナパネルに固定されているので、ドアビームが受けた荷重をドアビームと結合ブラケットとドアインナパネルという三枚の部材で支えて、ドアビームの変形や結合ブラケットからのドアビームの剥がれやドアインナパネルからの結合ブラケットの剥がれを抑止することができる。
また、二本のドアビームと前後の結合ブラケットとを一体的にドアインナパネルに組み付ける際に、重心となる二本のドアビーム間に設けた孔により、二本のドアビームを同時に、バランス良く且つ位置精度良く組み付けることができる。また、二本のドアビームの間で各結合ブラケットに孔を設けているので、既存の開断面形状のリンフォースと共通の装置を用いて少ない工数及びコストでドアインナパネルへの組み付けを行うことができる。
また、側突荷重によるドアビームの最大撓み部位を二本のドアビームで車両前後に異なるようにしたことで、二本のドアビームが同時に変形を起こすことを防止して、ドアビームによる補強効果を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、車両の側突時に、二本のドアビームが互いに離れる方向(上下方向)に撓もうとする力を、回し込んで結合した結合ブラケットの面で受け止めることで、補強効果を高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、車両の側突時に、ドアアウタパネルの変形荷重をドアビームから結合ブラケットに伝えて、ドアインナパネルからの結合ブラケットの剥がれを起こし難くすることができる。また、ドアアウタパネルの押圧時のベカツキ(弾性的なへこみ)を防ぐことができる。また、上下二本のドアビームに接着剤を塗布することで、既存の板状(開断面形状)のリンフォースと共通の装置を用いて少ない工数及びコストで接着剤の塗布を行うことができる。
図1〜図5は、本発明の車両用ドアビーム構造の一実施形態を示すものである。
図1に示すように、この車両用ドアビーム構造は、自動車のドアパネルを成す金属製のドアインナパネル1とドアアウタパネル2(図4)との間に、ドアパネル3(図4)を車両前後方向に橋渡しする閉断面形状のドアビーム4,5を上下に二本設け、二本のドアビーム4,5の各前端部4a,5aを一つの前側の結合ブラケット6に固定し、二本のドアビーム4,5の各後端部4b,5bを一つの後側の結合ブラケット7に固定して、図2に示すドアビーム組立体8を構成し、ドアビーム組立体8の前側の結合ブラケット6をドアインナパネル1の前側の枠状部9に固定し、後側の結合ブラケット7をドアインナパネル1の後側の枠状部10に固定して構成されるものである。
ドアアウタパネル2(図4)は意匠を兼ね、ドアインナパネル1はドアアウタパネル2に対する補強と搭載部品に対する取付座とを兼ねる。ドアインナパネル1とドアアウタパネル2とは外縁においてヘム型成型及び接着材で結合されている。ドアインナパネル1とドアアウタパネル2との間には、ドアインナパネル1に設けた作業孔11を通して例えばドアラッチ等のドア内部機構部品が取り付けられる。
本実施形態では、中空丸棒(パイプ状)の上下二本のドアビーム4,5を用いている。ドアビーム4,5の閉断面形状(ビーム長手方向とは直交する方向の断面形状)は円形に限らず、三角形でも四角形でもその他の多角形でもよく、これらは断面円形のドアビーム4,5と同様の作用効果(後述する)を奏する。また、本実施形態のドアビーム4,5は鉄パイプで構成されているが、鉄パイプ以外に他の板金部材や、アルミニウムやマグネシウム等の軽合金や、繊維強化樹脂で形成されたものでもよい。
ドアインナパネル1へのドアビーム4,5の組み付けは、上下二本のドアビーム4,5を前後の金属製の結合ブラケット6,7に結合して一体化したドアビーム組立体8(図2)の状態で行う。二本のドアビーム4,5の間において前後の各結合ブラケット6,7に円形又は長円形の孔12,13がそれぞれ設けられている。
不図示のロボットアーム(装置)の前後のピン部を前後の各結合ブラケット6,7の孔12,13に挿入係合して、ドアビーム組立体8をドアインナパネル1に組み付けて、各結合ブラケット6,7をドアインナパネル1の前後の枠状部9,10に溶接で結合固定する。その後、ドアインナパネル1に対する他の溶接部品を溶接後、ドアアウタパネル2(図4)をドアインナパネル1の外縁に結合する。
本実施形態においては、図5で詳述するように、上下二本のドアビーム4,5に接着剤(マスチックシーラ)14を塗布して、ドアアウタパネル2に二本のドアビーム4,5を接着固定する。
図1,図2に示すように、ドアビーム組立体8の二本のドアビーム4,5は概ね平行に配置されている(正確には、車両前方から後方に向かうにつれて二本のドアビーム間の上下方向距離を少しテーパ状に拡大させて、二本のドアビーム4,5をそれぞれ直線的に配置している)。
図2に示す如く、前側の結合ブラケット6は、前半の車両外側の板状部15と、後半の車両内側の板状部16と、前後の板状部15,16を連結した段差部17とで側面視(ドアアウタパネル2側から見て)略台形状に構成されている。後半の板状部16の上下に、二本のドアビーム4,5の前端部4a,5aを配置する断面略半円状の各受け部(支持部)22が形成され、後半の板状部16の幅方向中央(上下の受け部22の中間)に孔12が貫通して設けられている。上下の受け部22の形状はほぼ同じである。
前半の板状部15の車両内側の面(符号17で代用)が図1のドアインナパネル1の前側の枠状部9の車両外側の面(符号9で代用)に面接触した状態で前側の結合ブラケット6が前側の枠状部9に溶接で固定されている。前側の孔12はドアインナパネル1の前側の枠状部9の後方においてドアインナパネル1の凹部空間19(図4)に位置している。凹部空間19は、車両内側のドアインナパネル部分1aの車両外側の面(符号1aで代用)と、ドアインナパネル部分1aから車両外側に向けて突出した前後及び下側の枠状部9,10,18の車両外側の面(符号9,10,18で代用)との間に形成されている。
後側の結合ブラケット7は、大きな略矩形状の主板状部20と、主板状部20の後半側から上向きに一体に突出形成された小さな縦長矩形状の副板状部21とで構成されている。主板状部20に下側のドアビーム5の後端部5bを固定するための断面略半円状の受け部(支持部)23が形成され、副板状部21に上側のドアビーム4の後端部4bを固定するための断面略半円状の受け部(支持部)24(図3(a)参照)が形成されている。
主板状部20の上半側すなわち後側の結合ブラケット7の幅方向中央(上下の受け部23,24の間)に孔13が貫通して設けられている。主板状部20と副板状部21との後半部分の車両内側の面が図1のドアインナパネル1の後側の枠状部10の車両外側の面に面接触で当接した状態で、後側の結合ブラケット7が後側の枠状部10に溶接で固定されている。孔13はドアインナパネル1の後側の枠状部10の前方においてドアインナパネル1の凹部空間19(図4)に位置している。
上側のドアビーム4は下側のドアビーム5よりも全長を長く規定されている。前側の結合ブラケット6において、上側のドアビーム4の前端4a’と下側のドアビーム5の前端5a’とはほぼ前後方向のずれなく位置している(正確には下側のドアビーム5の前端5a’が上側のドアビーム4の前端4a’よりも前方に少し突出している)。
後側の結合ブラケット7において、上側のドアビーム4の後端4b’は下側のドアビーム5の後端5b’よりも後方に大きく突出している。上側のドアビーム4の後端4b’は副板状部21のほぼ後端に位置し、下側のドアビーム5の後端5b’は主板状部20の前後方向ほぼ中央に位置している。上下のドアビーム4,5の上下の受け部23,24に接触している部分の長さは同程度である。上側のドアビーム4の長手方向の中心位置は下側のドアビーム5の長手方向の中心位置よりも後方にずれている。各ドアビーム4,5の前後の各端部4a〜5bは各結合ブラケット6,7の受け部22〜24に溶接で固定されることが好ましいが、溶接に代えて接着等の手段を用いて固定することも可能である。
図1に示すように、前側の結合ブラケット6は、ドアインナパネル1の上半の窓枠部25を除くインナパネル部分(符号1aで代用)の前部の高さ方向中央よりも少し上側に配置され、後側の結合ブラケット7は、インナパネル部分(1a)の後部の高さ方向ほぼ中央に配置されている。図1の例の前側の結合ブラケット6は、テーラードブランク材を用いたドアインナパネル1の前部の厚板部分(厚板部分の後端を符号26で示す)に配置固定されている。図1のドアインナパネル1は車両右側のリアサイドドアにおけるものであるが、本発明のドアビーム構造は不図示のフロントサイドドアにも適用可能である。
図3(a)は、後側の結合ブラケット7の上側の副板状部21側の部分をドアインナパネル1の後側の枠状部10に固定した状態を便宜上ドアビーム4を除いて示したものである。実際には図3(b)に示すように、上下のドアビーム4,5の後端部4b,5bを副板状部21と主板状部20との各受け部23,24に固定した状態で、副板状部21と主板状部20との後半の平面部分20a,21aの車両内側の面がドアインナパネル1の後側の枠状部10の車両外側の面に面接触した状態で溶接等で固定される。上側のドアビーム4の後端部4bは副板状部21の受け部24を介してドアインナパネル1の枠状部10の車両外側の面に接してないし近接している。すなわち上側のドアビーム4の後端部4bは受け部24を介してドアインナパネル1に引っ掛けるように支持されている。
図4に図1のA−A相当断面図を示すように、後側の結合ブラケット7の上側の受け部24は、車両内側に底部分24a’を有する断面略半円状に湾曲した凹部24aと、凹部24aの上下にそれぞれ断面山型湾曲状に続く凸部24bとで構成されている。凹部24aの底部分24a’はドアインナパネル1の後側の枠状部10の車両外側の面に若干の隙間を存して位置している。後側の結合ブラケット7の下側の受け部23も同様に断面円弧状の凹部23aと上下の断面山型湾曲状の凸部23bとで構成されている。
図4における下側の受け部23は、図1のA−A断面位置が上側の受け部24よりも車両前方であるので、ドアインナパネル1の後側の枠状部10よりも前方の凹部空間19側のインナパネル部分1aに対向して位置し、下側のドアビーム5の後端部5bはそのインナパネル部分1aに対向して位置している。
後側の結合ブラケット7の上側と下側の各受け部23,24の凹部23a,24aの深さHは、各ドアビーム4,5の半径r(ドアビーム4,5の長手方向直交断面における重心Oまでの径)の2/3以上の寸法に規定されている。各受け部23,24の深さHが各ドアビーム4,5の半径rの2/3以上であることで、凹部23a,24aの上下両側の凸部23b,24bが車両外側に向けて高く突出して、車両の側面衝突時にドアビーム4,5の上下方向のずれ(移動)を防止する。この構成は図2の前側のブラケット6の各受け部22においても同様である。図4で符号2はドアアウタパネルを示す。
図5に図1のB−B相当断面図を示すように、上下二本のドアビーム4,5は、ドアインナパネル1の後側の枠状部10(図4)の近傍位置を除いてドアアウタパネル2に接近して位置している。そして、各ドアビーム4,5の車両外側の円弧状の外面に塗布された接着剤(マスチックシーラ)14がドアアウタパネル2の車両内側の面に接着されて、各ドアビーム4,5がドアアウタパネル2に固定されている。接着剤(マスチックシーラ)14は例えば初期的に弾性を有して加熱で硬化する既存のものである。
図6は、上記本発明のドアビーム4,5の構造を従来の板状のリンフォース31の構造(図8参照)と対比して示すものである。本発明の二本のドアビーム4,5を便宜上鎖線で示している。
上下二本のドアビーム4,5に塗布する複数の点状の接着剤14の位置と、従来の板状のリンフォース31の上下部分に点状に塗布する複数の接着剤14の位置と一致する。このように、板状のリンフォース31と二本のパイプ状のドアビーム4,5とに、同じ塗布装置を共用して、同じ塗布条件(塗布位置や塗布量)で接着剤14を塗布することができる。
また、板状のリンフォース31の前後の孔32に上下二本のパイプ状のドアビーム4,5がラップする(重なる)ことがなく、板状のリンフォース31の前後の孔32の位置は、二本のドアビーム4,5を含むドアビーム組立体8(図2)における前後のブラケット6,7の孔12,13(図2)の位置に概ね対応するので、同じロボットアーム(組付装置)を共用して、板状のリンフォース31と同じ条件で二本のドアビーム4,5を含むドアビーム組立体8をドアインナパネル1に組み付けることができる。
以下に、本発明の車両用ドアビーム構造の特徴的な構成とその作用効果を説明する。
本発明の第一の特徴は、図1に示すように、自動車ドアのドアインナパネル1とドアアウタパネル2とを補強する車両前後方向に延びるドアビームを設けるドア補強構造において、閉断面を有する二本のドアビーム4,5を上下に配置し、両ドアビーム4,5の前端部4a,5aと後端部4b,5bとを、上下のドアビーム間を繋ぐ前後の結合ブラケット6,7を介してドアインナパネル1に面接触させて固定し、各結合ブラケット6,7に設けたドアインナパネル1への固定用の孔12,13の少なくとも内径分の距離を隔てて二本のドアビーム4,5を配設したことにある。
本構造を採ることで、車両への側突荷重等の作用時に、ドアパネル3(図4)の車両前後間を橋渡しするドアビーム4,5自体の変形を抑制することができると共に、ドアビーム4,5が起こす撓み変形を抑制することができ、ドアパネル3の強度向上効果を得ることができる。
一般的に、車両のドアパネル3の前端と後端とに固定部を有するドアパネル内部のドアビームは、車両の側方衝突(側突)等の荷重に対して、長手方向中央部が撓み変形を起こしやすい。そして、その撓み変形が基となってドアビームの固定部が剥がれる変形に結び付くことがある。
本発明の構造により、車両の側突時に、二本のドアビーム4,5と、各ドアビーム4,5を固定する前後の結合ブラケット6,7とにより形成されるエリアで側突荷重を受けることになるため、ドアビーム4,5やドアビーム固定部(結合ブラケット6,7にドアインナパネル1を付加した部分)の変形抑制に結び付けることができる。その上、ドアビーム4,5の固定点は、ドアビーム4,5の閉断面に、結合ブラケット6,7とドアインナパネル1との面接触による三枚結合を加えた形で側突荷重を受けることにより、ドアビーム4,5の中央部の撓みに対して剛性を持たせることができ、ドアビーム4,5の撓み変形抑制効果を生み出すことができる。また、ドアビーム4,5を二本にすることで、一本のドアビームよりも細いドアビームで同等のパネル剛性を確保することができる。そのため、一本のドアビームよりもドアビームを長く設定でき、ドアインナパネル1とドアアウタパネル2との隙に潜り込ませることができる。
さらに、ドアビーム4,5自体が閉断面を形成していると共に、ドアビーム固定部では受けた側突荷重をすぐにドアインナパネル1に伝えることができ、ドアビーム4,5の閉断面とドアインナパネル1とで側突荷重を受け止めることになるため、ドアビーム4,5の潰れによる変形を抑制することができるようになる。ドアビーム固定部が上記のように三枚合わせになっていることで、ドアビーム4,5の端部4a〜5bや結合ブラケット6,7の剥がれの抑制にも結び付けることができる。
また、ドアインナパネル1に結合ブラケット6,7と一体となった形で固定されるドアビーム4,5は、二本のドアビーム4,5と結合ブラケット6,7との重心となるドアビーム間に孔12,13を有していることで、組み付け作業において、一体となった部品(ドアビーム組立体)8をバランス良く支持しながら組み付けることができるため、組付位置精度及び組み付け性を高めることができる。
本発明の第二の特徴は、図1〜図2に示すように、二本のドアビーム4,5の結合部間長さに違いをつけたことにある。本例では二本のドアビーム4,5の前端4a’,5a’の位置をほぼ一致させ、後端4b’,5b’の位置を前後にずらしている。
本構造を採ることで、側突荷重により生じる上下二本のドアビーム4,5の撓みの腹となる部位(最も変形量の大きい部位)が、車両前後方向に位置違いになるために、同位置の腹部位を起点とした撓みに起因するドアパネル面の変形を抑制するための剛性を持たせることができ、補強効果につながる。
本発明の第三の特徴は、図3〜図4に示したように、ドアビーム4,5の長手方向とは直交する断面における重心Oまでの径の2/3以上を結合ブラケット6,7で覆うように結合ブラケット6,7をドアビーム4,5の周方向に回し込んで結合したことにある。
本構造を採ることで、二本のドアビーム4,5が側突荷重により互いに離れる方向(二本のドアビーム4,5が広がる上下方向)に変形しようとすることに対して、回し込んだ結合ブラケット6,7の内面がドアビームの上下方向の外面に接触して荷重を受けることで、二本のドアビーム4,5の互いに離れる方向への撓み変形を抑制する補強効果が生じる。
本発明の第四の特徴は、図5に示したように、ドアアウタパネル2とドアビーム4,5とをドアビーム4,5の長手方向とは直交する方向の断面の重心Oの側部でマスチックシーラ(接着剤)14により接着したことにある。
本構造を採ることで、ドアビーム4,5への側突荷重の伝わり方(ドアアウタパネル2の当たる方向)を明確にし、ドアビーム4,5と結合ブラケット6,7の固定部に満遍なく荷重を伝わらせることができるため、固定部の一部に荷重が集中してその部分を起点として固定部が剥がれるという不具合を抑制して、補強効果を高めることができる。また、ドアアウタパネル2が車両内側よりドアビーム4,5で支持されているために、ドアアウタパネル2の側突時以外の押圧時のベカツキ(弾性的な凹み変形)を防止することができる。