以下、図面(図1〜図9)を参照して本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置1及びワイピング方法について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、冗長を避けるため、図中、同一又は相当する部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本実施形態では、図中に記載のX軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直線に平行である。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。図1は、インクジェット記録装置1の構成を示す。インクジェット記録装置1は、トレイ200、給送ローラー201、第1搬送ユニット205、ヘッド部3、制御部50、ワイパー部60、第2搬送ユニット212、排出ローラー対216、及び、キャップユニット290を備える。
トレイ200は、記録媒体Pを収納し、第1搬送ユニット205よりも記録媒体Pの搬送方向D0の上流側(図1では右側)に設けられる。トレイ200の搬送方向D0の下流側端(図1では左側端)には、給送ローラー201が設けられる。給送ローラー201は、トレイ200に収容された記録媒体Pを一枚ずつ第1搬送ユニット205へ供給する。記録媒体Pは、記録ヘッド10によって画像が形成される媒体であって、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、又は、光沢紙のような紙、並びに、OHP(Overhead Projector)シートのような合成樹脂製のシートを含む。
第1搬送ユニット205は、第1駆動ローラー206と、第1従動ローラー207と、第1搬送ベルト208とを含む。第1搬送ベルト208は、第1駆動ローラー206及び第1従動ローラー207に掛け渡される。第1駆動ローラー206が図略のモーターによって反時計回りに回転駆動されることによって、第1搬送ベルト208が回転し、第1搬送ベルト208上に載置された記録媒体Pが搬送方向D0(図1では左方向)に搬送される。
ヘッド部3は、第1搬送ベルト208における上側ベルトの上面に対向して配置される。ヘッド部3は、ヘッドハウジング18、及び、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kを含む。ヘッドハウジング18は、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kを保持する。ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kは、それぞれ、黄色のインク、マゼンダ色のインク、シアン色のインク、及び、黒色のインクを吐出する。ラインヘッド10Y〜10Kは、記録媒体Pの搬送方向D0に沿って配置される。
図1に示すように、第2搬送ユニット212は、第1搬送ユニット205よりも搬送方向D0の下流側(図1では左側)に配置されている。第2搬送ユニット212は、第2駆動ローラー213と、第2従動ローラー214と、第2搬送ベルト215とを含む。第2搬送ベルト215は、第2駆動ローラー213及び第2従動ローラー214に掛け渡される。第2駆動ローラー213が図略のモーターによって反時計回りに回転駆動されることによって、第2搬送ベルト215が回転し、第2搬送ベルト215上に載置された記録媒体Pが搬送方向D0(図1では左方向)に搬送される。
ヘッド部3によって画像が形成された記録媒体Pは、第2搬送ユニット212へ送られ、記録媒体Pが第2搬送ユニット212を通過する間に、記録媒体Pの表面に付着したインクが乾燥される。また、第2搬送ユニット212の下方にはワイパー部60及びキャップユニット290が配置されている。
制御部50は、インクジェット記録装置1全体の動作を制御する。制御部50は、例えば、ワイパー部60にラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17に付着したインクを拭き取らせる前に、つまり、ワイピングを実行する前に、第1搬送ユニット205を下降させる。そして、制御部50は、第2搬送ユニット212の下方に配置されたワイパー部60を水平移動させて、待機位置であるヘッド部3の下方に配置する。その結果、ワイパー部60は、ヘッド部3と第1搬送ユニット205との間に位置させられる。ワイパー部60は、図3〜図9を参照して後述するように、ラインヘッド10Y〜10Kに付着したインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。
制御部50は、また例えば、ラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17(図3参照)をキャッピングする前に、キャップユニット290を水平移動させてヘッド部3の下方に位置させる。更に、制御部50は、キャップユニット290を上方に移動させる。その結果、キャップユニット290は、ラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17に装着される。なお、制御部50の詳細については、図3を参照して後述する。
排出ローラー対216は、第2搬送ユニット212よりも搬送方向D0の下流側(図1では左側)に配置され、画像が形成された記録媒体Pをインクジェット記録装置1の外部に排出する。
図2は、図1に示すインクジェット記録装置1のヘッド部3を示す斜視図である。図2に示すように、ラインヘッド10Y〜10Kは、それぞれ、搬送方向D0に直交する方向(ここでは、X軸方向)に沿って千鳥状に配置される3個の記録ヘッド10を含む。
次に、図3を参照して、記録ヘッド10、ワイパー部60、及び、制御部50について説明する。図3は、図1に示すインクジェット記録装置1の制御部50の機能的な構成、記録ヘッド10、及び、ワイパー部60を示す図である。ワイパー部60は、ワイパー20及び移動機構30を含む。なお、ワイパー20は、上端部が下端部より右側(X軸の負方向)に位置するようにX−Z平面内において所定角度θ(ここでは、30度)傾斜して移動機構30に取り付けられている。
記録ヘッド10は、その下面にインク吐出面17を有する。インク吐出面17の中央部には、多数のノズル11が開口している。ノズル11は、記録媒体P(図1参照)に画像を形成するためのインクを吐出する。ノズル11は、パージ処理において、記録ヘッド10内の不要物と共にインクNfを排出する。なお、インクNfは密閉空間(図略のインクタンク)に収容されている。よって、インクNfに含有される揮発成分の蒸発が防止される。インクNfに含有される揮発成分は、外気に触れると蒸発する。その結果、ノズル11から排出されるインクNfは、空気に触れていた残留インクNv(図7(b)〜(d)参照)と比較して粘度が低い。
制御部50は、移動機構30を介してワイパー20を移動させる。移動機構30は、制御部50の指示に応じて、ワイパー20を移動させる。具体的には、移動機構30は、上昇方向D1にワイパー20を移動させることができ、ワイピング方向D3又はワイピング方向D4にワイパー20を移動させることができ、下降方向D2にワイパー20を移動させることができる。本実施形態では、上昇方向D1及び下降方向D2は、Z軸に沿っており、インク吐出面17に直交している。また、ワイピング方向D3及びワイピング方向D4は、X軸及びインク吐出面17に沿っている。上昇方向D1及び下降方向D2を総称して上下方向と記載する場合もある。
移動機構30は、制御部50からの指示に応じて、ワイパー20を上昇方向D1、下降方向D2、ワイピング方向D3及びワイピング方向D4に移動させる。例えば、ワイパー20によってインク吐出面17をワイピングする場合には、移動機構30は、ワイパー20をインク吐出面17に押し当てた状態でインク吐出面17に沿って移動させる。その結果、ワイパー20は、ノズル11から排出されたインクNf又はノズル11から吐出されインク吐出面17に付着したインクNvを拭き取ることができる。また、ワイパー20は、インク吐出面17に付着した不要物(例えば、ゴミ、埃)も拭き取る。
ワイパー20は、弾性を有し、平板状に形成されている。ワイパー20は、例えば、EPDM(ethylene−propylene−diene terpolymer)を含む合成ゴム、又は、合成樹脂によって形成される。また、ワイパー20の先端(上端)は、本実施形態では、平坦(フラット)である。なお、移動機構30の構造については、図5、図6を参照して後述する。
記録ヘッド10の一方側端部(図3では、左側端部)の下面には、L字状に折り曲げられた板状部材40が配置されている。板状部材40は、親水部41と、撥水部42とを備える。親水部41は、インク吐出面17より高い親水性を有する。親水部41は、例えば、親水性の高いステンレスのような金属、又は、親水性の高い合成樹脂によって形成される。親水部41の表面粗さは、インク吐出面17の表面粗さより粗い。ここで、親水部41がインク吐出面17よりも高い親水性を有していればよい。よって、例えば、親水部41を金属又は合成樹脂によって形成し、親水部41の表面粗さを、インク吐出面17の表面粗さよりも粗くすることによって、親水部41の親水性をインク吐出面17の親水性よりも高くする。
撥水部42はインク吐出面17及び親水部41より高い撥水性を有する。撥水部42は、例えば、フッ素樹脂により形成される。撥水部42は、インク吐出面17に対して親水部41よりも外側(図3では、左側)に配置される。親水部41と撥水部42とは隣接して構成されている。撥水部42は、インク吐出面17に対して斜め上方(図3では、左上方向)に傾斜して配置されている。
次に、制御部50の機能的な構成について説明する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備える。上記ROMには、本発明に係るワイピング方法を実行するための制御プログラムが格納されている。そして、上記CPUは、上記ROMに格納された制御プログラムを読みだして実行することによって、第1移動指示部51、及び、第2移動指示部52を含む各種機能部として機能する。上記RAMは、上記CPUが、上記制御プログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
第1移動指示部51は、移動機構30を介して、ワイパー20をインク吐出面17に沿ってワイピング方向D3に移動させ、インクNfを記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)に溜める。
第2移動指示部52は、移動機構30を介して、ワイパー20を、インク吐出面17に沿ってワイピング方向D4に移動させ、貯留されたインクNfを用いて、インク吐出面17のウェットワイピングを行う。なお、第1移動指示部51、及び、第2移動指示部52の動作の詳細については、図7〜図9を参照して後述する。
ここで、図4を参照して記録ヘッド10について説明する。図4は、図1に示すインクジェット記録装置1の記録ヘッド10を示す側面図である。記録ヘッド10は、流入口13及び流出口15を有する。流入口13は、図3に示すインクNfが流入する開口部である。流出口15は、インクNfが流出する開口部である。換言すれば、画像形成処理時又はパージ処理時に、図略のインクタンクから流入口13に流入したインクNfは、記録ヘッド10の内部に流入し、流出口15から流出する。また、記録ヘッド10の内部に流入したインクNfは、画像形成処理時にはノズル11から吐出され、パージ処理時にはノズル11から排出される。本実施形態では、ワイパー20は、パージ処理時にノズル11から排出され、インク吐出面17に付着したインクNfを用いてウェットワイピングを行う。
次に、図5、図6を参照して、移動機構30について説明する。図5は、図3に示す移動機構30がワイパー20を下降させた状態を示す図である。図6は、図3に示す移動機構30がワイパー20を上昇させた状態を示す図である。なお、図5及び図6では、図面の簡略化のため、板状部材40、親水部41及び撥水部42の表記を省略している。制御部50は、ワイピングを実行する前に、ワイパー部60を、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kに対向するように移動させる。なお、図5では、便宜上、ラインヘッド10Kが備える3個の記録ヘッド10に対応する3個のワイパー20のみを表記している。
図5、図6に示すように、移動機構30は、キャリッジ31、キャリッジ31を支持する支持フレーム35、コロ36、ギャップコロ37、昇降部材38、及び、底部39を備える。昇降部材38は、それぞれ、リフト部材38a及びシャフト38bを含む。
底部39は、昇降部材38を介して支持フレーム35を支持する。昇降部材38は、底部39上に配置され、支持フレーム35を支持し昇降する。シャフト38bは、図略のモーターによって回転駆動され、リフト部材38aを介して、支持フレーム35を昇降する。リフト部材38aは、シャフト38bと一体に構成され、シャフト38bが回転駆動されることによって、シャフト38bと一体に回転する。また、リフト部材38aが回転することによって、支持フレーム35を昇降する。更に具体的には、昇降部材38のシャフト38bが、図略のモーターによって回転駆動され、リフト部材38aが起立されることによって、昇降部材38のリフト部材38aが支持フレーム35を上昇させる。また、昇降部材38のシャフト38bが、図略のモーターによって回転駆動され、リフト部材38aが倒伏されることによって、昇降部材38のリフト部材38aが支持フレーム35を下降させる。
支持フレーム35は、昇降部材38によって支持され、コロ36を介して、キャリッジ31をX軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動可能に支持する。コロ36は、支持フレーム35によって支持され、支持フレーム35上を回動することによって、キャリッジ31をX軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動させる。
キャリッジ31は、コロ36を介して、支持フレーム35によって支持され、X軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動する。また、キャリッジ31には、ギャップコロ37及びワイパー20が設けられている。ギャップコロ37は、昇降部材38によって支持フレーム35が上昇されたときに、ヘッドハウジング18に当接することで、インク吐出面17に押し当てられたワイパー20の上下方向の位置(上限位置)を一定に保持する。なお、ワイパー20は、上端部が下端部より右側(X軸の負方向)に位置するようにX−Z平面内において所定角度θ(ここでは、30度)傾斜してキャリッジ31に取り付けられている。
ここで、図3、図5、及び、図6を参照して、ワイパー20を上昇させる場合の移動機構30の動作を説明する。まず、図3に示す制御部50が、図略のモーターを駆動させて、ワイピング方向D3の上流側(図5では右側)に配置される昇降部材38のシャフト38bを時計回りに回転させ、ワイピング方向D3の下流側(図5では左側)に配置される昇降部材38のシャフト38bを反時計回りに回転させる。そして、倒伏状態のリフト部材38aが起立状態に変化される。その結果、図6に示すように、支持フレーム35と共にキャリッジ31、コロ36、ギャップコロ37、及びワイパー20が上昇する。
図6に示すように、ギャップコロ37は、ヘッドハウジング18に当接することで、上昇してインク吐出面17に押し当てられたワイパー20の上下方向の位置を一定に保持する。キャリッジ31は、支持フレーム35に対して、コロ36を介して移動可能に支持される。キャリッジ31がワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動することによって、ワイパー20もワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動する。
なお、ラインヘッド10Y、10M、10Cの各々に対応する3個のワイパー20は、移動機構30によって、ラインヘッド10Kに対応する3個のワイパー20と同様の動作をする。
次に、図7及び図8を参照して、ワイパー20の動作について説明する。図7(a)〜図7(d)は、それぞれ、図3に示すワイパー20の動作(往路)を示す図である。ワイパー20は、制御部50(第1移動指示部51、及び、第2移動指示部52)の指示に応じて移動機構30が動作することによって、以下に説明するように動作する。なお、ワイパー20は、上端部が下端部より右側(X軸の負方向)に位置するようにX−Z平面内において所定角度θ(ここでは、30度)傾斜している。
初期状態では、ノズル11がインクNfを排出するため、インク付着領域FA内にインクNfが残留している。また、ワイパー20は、下限位置にある。そして、図7(a)に示すように、ワイパー20は、インク付着領域FAの外側であって記録ヘッド10の一方側端部(図7(a)では、右端部)の第1当接位置PT1の直下の位置まで移動され、上昇方向D1に移動する(上昇する)。そして、ワイパー20の先端がインク吐出面17に押し当てられ、ワイパー20は上昇を停止する。ワイパー20の先端がインク吐出面17に押し当てられるときに、ワイパー20の先端に付着していたインクNvが、図7(b)に示すように、インク吐出面17に付着する。
次に、図7(b)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、第1当接位置PT1から親水部41に向かってワイピング方向D3に移動し、親水部41内の第1停止位置PS1に停止する。その後、図7(c)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、ワイピング方向D4に所定距離LB(ここでは、6mm)移動し、親水部41内の停止位置PS1aに停止する。そして、図7(d)に示すように、ワイパー20は、下降方向D2に移動する(下降する)。その結果、ワイパー20によってインク付着領域FA内に残留したインクNfが拭き取られ、親水部41内の第1停止位置PS1近傍にインクNfが貯留される。
上述のように、ワイパー20が、第1停止位置PS1から所定距離LB(ここでは、6mm)バックしてから下降するため、ワイパー20に付着するインクNfの量を減少することができる。その結果、親水部41内の第1停止位置PS1近傍に多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。ここで、フレッシュインクNfとは、ノズル11から吐出された直後のインクであって、インクに含まれる揮発成分がほとんど蒸発していないインクである。一方、残留インクNvとは、ノズル11から排出されてから所定時間(例えば、3分)以上経過したインクであって、インクに含まれる揮発成分が蒸発して粘度が増加したインクである。
また、バックする距離である所定距離LBが3mm以上、且つ、10mm以下であるため、ワイパー20によってワイピングされたフレッシュインクNfを効果的にワイパー20から離れさせることができる。フレッシュインクNfを効果的にワイパー20から離れさせることができるため、ワイパー20に付着するインクNfの量を減少させることができる。したがって、第1停止位置PS1近傍に多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。
更に、ワイパー20は、インク吐出面17に垂直な平面(Y−Z平面)から、所定角度θ(ここでは、30度)傾斜して配置されているため、ワイパー20がバックする際にワイパー20の先端が座屈することを回避することができる。
また、所定角度θが5度以上、且つ、45度以下である(ここでは、30度)であるため、ワイパー20がバックする際にワイパー20の先端が座屈することを更に確実に回避することができる。
更に、第1停止位置PS1は、親水部41に含まれる位置であるため、第1停止位置PS1近傍に更に多量のインクNfを貯留することができる。
図8(a)〜(e)は、それぞれ、図3に示すワイパー20の動作(復路)を示す図である。図8(a)に示すように、ワイパー20は、停止位置PS1aで下降した後、上下方向の位置を一定に維持したまま(下限位置のまま)、第2当接位置PT2の直下までワイピング方向D3に移動される。ワイパー20の先端には、インクNfが付着している。次に、図8(b)に示すように、ワイパー20は、撥水部42に向かって上昇方向D1に移動し(上昇し)、撥水部42内の第2当接位置PT2において撥水部42に当接し、上限位置において上昇を停止する。
次に、図8(c)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、親水部41を経由してワイピング方向D4に移動し、親水部41に付着したインクNfを拭き取る。
次に、図8(d)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、記録ヘッド10の右端近傍位置である第2停止位置PS2までワイピング方向D4に移動する。
次に、図8(e)に示すように、第2停止位置PS2に到達したワイパー20は、停止した後、下降方向D2に移動する(下降する)。そして、ワイパー20は、待機位置に戻り、ワイピングを終了する。
以上、図7及び図8を参照して説明したように、第1停止位置PS1近傍にフレッシュインクNfを多量に貯留することができる。また、このフレッシュインクNfを用いて、第2当接位置PT2から第2停止位置PS2までウェットワイピングすることによって、簡素な構成で記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクを拭き取ることができるため、インク吐出面17におけるインク溜りの発生を抑制することができる。
更に、第2当接位置PT2は、撥水部42に含まれる位置であるため、ワイパー20の先端に付着したインクNfが、第2当接位置PT2近傍に付着することを抑制できる。
また、撥水部42は斜め上方に傾斜して形成されている。よって、ワイパー20は、撥水部42から親水部41に移動する際に、撥水部42の傾斜に応じてワイパー20の先端部を徐々に湾曲させながら親水部41に進入できる。その結果、ワイパー20を親水部41に向かって上昇方向D1に上昇させ親水部41に押し当てる場合と比較して、ワイパー20先端が受けるダメージを軽減することができる。
次に、図9を参照して、制御部50の動作を説明する。図9は、図3に示す制御部50の動作を示すフローチャートである。まず、図7(a)に示すように、図3に示す第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が第1当接位置PT1の下方に移動される(ステップS101)。次に、第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が上昇方向D1に移動され、図7(b)に示すように、インク吐出面17に押し当てられる(ステップS103)。
そして、第1移動指示部51からの指示によって、図7(b)に示すように、ワイパー20がインク吐出面17をワイピングしつつ、左方向(ワイピング方向D3)に移動される(ステップS105)。次いで、第1移動指示部51からの指示によって、図7(c)に示すように、ワイパー20が第1停止位置PS1で停止される(ステップS107)。そして、第1移動指示部51からの指示によって、図7(d)に示すように、ワイパー20が第1停止位置PS1から所定距離LB(ここでは、6mm)右方向(ワイピング方向D4)に移動される(ステップS109)。次に、第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が下降方向D2に移動され(下降され)、インク吐出面17から離される(ステップS111)。
次に、第2移動指示部52からの指示によって、図8(a)に示すように、ワイパー20が、第2当接位置PT2の直下に移動される(ステップS113)。そして、第2移動指示部52からの指示によって、図8(b)に示すように、ワイパー20が上昇方向D1に移動され(上昇され)、図8(c)に示すように、撥水部42内の第2当接位置PT2において撥水部42に当接し、上限位置において上昇が停止される(ステップS115)。続いて、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20がインク吐出面17をワイピングしつつ、ワイピング方向D4に移動される(ステップS117)。
次いで、第2移動指示部52からの指示によって、図8(d)に示すように、ワイパー20が第2停止位置PS2で停止される(ステップS119)。そして、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20が下降方向D2に移動され(下降され)、図8(e)に示すように、インク吐出面17から離され(ステップS121)、処理が終了する。
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS101からステップS107が、「第1ワイピング工程」の一例に相当し、ステップS109からステップS111が、「インク溜り形成工程」の一例に相当し、ステップS113からステップS121が、「第2ワイピング工程」の一例に相当する。
上述のように、第1停止位置PS1近傍に貯留されたフレッシュインクNfを用いて、第2当接位置PT2から第2停止位置PS2までウェットワイピングされるため、簡素な構成で記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクNf、Nvを拭き取ることができる。よって、インク吐出面17におけるインク溜りの発生を抑制することができる。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(8))。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上、実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(1)図7を参照して説明したように、バックする距離である所定距離LBが、3mm以上、且つ、10mm以下である(ここでは、6mm)である場合について説明したが、所定距離LBが、3mm以上であればよい。所定距離LBが長い程、ワイパー20を確実にインクNfから離すことができる。ただし、所定距離LBは、ワイパー20の材質及びサイズに応じて適正な範囲が変化する。
(2)図7を参照して説明したように、本実施形態では、ワイパー20がインク吐出面17に垂直な平面(X−Z平面)から、所定角度θ傾斜して配置されている場合について説明したが、ワイパー20が傾斜していない形態でもよい。
(3)図7を参照して説明したように、本実施形態では、所定角度θが、5度以上、且つ、45度以下である(例えば、30度)である場合について説明したが、所定角度θが、5度以上であればよい。所定角度θが大きい程、ワイパー20がバックする際にワイパー20の先端が座屈することを更に確実に回避することができる。ただし、所定角度θは、ワイパー20の材質及びサイズによって適正な範囲が変化する。
(4)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第1停止位置PS1が親水部41内の位置である場合について説明したが、記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)のインク吐出面17内の位置でもよい。
(5)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第2当接位置PT2が撥水部42内の位置である場合について説明したが、第2当接位置PT2が記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)のインク吐出面17内の位置でもよい。
(6)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第2停止位置PS2が、記録ヘッド10の他方側端部(例えば、右側端部)におけるインク吐出面17の端近傍の位置である場合について説明したが、第1当接位置PT1よりも記録ヘッド10の外側の位置であればよい。ただし、第2停止位置PS2が、記録ヘッド10の他方側端部(例えば、右側端部)におけるインク吐出面17の端に近いことが好ましい。第2停止位置PS2がインク吐出面17の端に近い程、ワイパー20がインク吐出面17から離れた後に、インク吐出面17及びワイパー20の上端に付着しているインクNfの量を削減することができる。
(7)図7を参照して説明したように、本実施形態では、記録ヘッド10の一方側端部(図3では、左側端部)に、親水部41及び撥水部42を有する板状部材40が配置されている場合について説明したが、その他の形態でもよい。例えば、記録ヘッド10の両端に、それぞれ、板状部材40が配置されている形態でもよいし、記録ヘッド10に板状部材40が配置されていない形態でもよい。記録ヘッド10の両端に、それぞれ、板状部材40が配置されている場合には、第2停止位置PS2を右側端に配置された板状部材40の撥水部42内の位置とすることによって、インク吐出面17及びワイパー20の上面に付着するインクNfの量を更に削減することができる。
(8)図7を参照して説明したように、本実施形態では、ワイパー20の先端(上端)が平坦(フラット)である場合について説明したが、ワイパー20に先端を傾斜させて加工されている形態でもよい。この場合には、インク吐出面17及びワイパー20の先端に付着するインクNfの量を更に削減することができる。