本発明に係る第1の観点の誘導加熱装置は、
直流電源と、
第1の加熱コイルと、
第2の加熱コイルと、
前記第1の加熱コイルの一端に接続される第1の接続端子、前記第2の加熱コイルの一端に接続される第2の接続端子および前記直流電源の高電位側出力端に接続されるコモン端子を有し、前記コモン端子を前記第1の接続端子または前記第2の接続端子のいずれか一方に接続するための切替えリレーと、
前記第1の加熱コイルの他端と前記第2の加熱コイルの他端とを接続する接続部に一端が接続され、他端が前記コモン端子に接続されて前記第1の加熱コイルまたは前記第2の加熱コイルと共振回路を形成する共振コンデンサと、
前記接続部と前記直流電源の低電位側出力端との間に接続され、前記共振回路に共振電流を発生させるスイッチング素子と、
前記第1の加熱コイルの一端の電圧を検知する第1の電圧検知回路と、
前記スイッチング素子を駆動して前記第1の加熱コイルまたは前記第2の加熱コイルの加熱出力を所定の値に制御すると共に前記切替えリレーの切替えを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第1の電圧検知回路の検知結果に基づき、前記第1の加熱コイルの一端の検知電圧が前記直流電源の出力電圧より大きな値を含む第1の電圧範囲内であることを検知したとき、前記コモン端子が前記第2の接続端子に接続されたと判定するよう構成されている。
上記のように構成された本発明に係る第1の観点の構成において、コモン端子が第1の接続端子に接続されていないときには、第1の加熱コイルに共振電流が流れないので、第1の電圧検知回路は、第1の加熱コイルの他端と第2の加熱コイルの他端の接続部に加わる電圧を検知する。制御部は、第1の電圧検知回路の検知結果に基づき、第1の加熱コイルの一端の電圧が直流電源の出力電圧より大きな値を含む第1の電圧範囲内にあることを検知したとき、即ち第1の加熱コイルの一端の電圧が直流電源の出力電圧より大きいことを検知したとき、第1の加熱コイルの一端は開放状態にあり、かつ接続部の電圧が直流電源の出力電圧より大きいと判断する。このため、制御部は、第2の加熱コイルに共振電流が流れていると判定する。このように、制御部は、第1の電圧検知回路の検知結果に基づき、コモン端子が第1の接続端子に接続されておらず、第2の接続端子に接続されていることを判定することができる。したがって、制御部が、切替えリレーのコモン端子を第1の接続端子に接続するように制御し、かつスイッチング素子をオンオフ制御している状態において、上記のような接続状態を検知したときには、切替えリレーの可動接点が第2の接続端子と溶着状態となっていると判断することができる。
本発明に係る第2の観点の誘導加熱装置においては、前記の第1の観点における前記制御部が、前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第1の電圧検知回路の検知結果に基づき、前記第1の加熱コイルの一端の検知電圧が前記直流電源の出力電圧と同じであることを検知したとき、前記コモン端子が前記第1の接続端子に接続されたと判定するよう構成されている。
共振回路に共振電流が発生しているとき、第1の加熱コイルの一端の電圧は、コモン端子が第1の接続端子に接続されている場合と、第2の接続端子に接続されている場合とで異なる電圧となる。コモン端子が第1の接続端子に接続されている場合には、直流電源の高電位側の出力端と同電圧となり、コモン端子が第2の接続端子に接続されている場合には、接続部と同電圧、すなわち直流電源の高電位側の出力端の電圧に第2の加熱コイル端子間に発生する電圧が加算された電圧となる。制御部は、切替えリレーのコモン端子を第1の接続端子に接続するように制御し、かつスイッチング素子をオンオフ制御することにより、コモン端子が第1の接続端子に正常に接続されており、第2の接続端子には接続されていないことを正確に判別することができる。
上記のように、本発明に係る第2の観点における制御部は、切替えリレーのコモン端子を第1の接続端子と第2の接続端子のいずれに接続するように制御されている場合においても、切替えリレーの切替え動作を新たに行うことなく、切替えリレーが指示どおりに正常に動作しているか否かを確実に確認することができる。
本発明に係る第3の観点の誘導加熱装置においては、前記の第1の観点または第2の観点における前記制御部が、前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第1の電圧検知回路の検知結果に基づき、前記第1の加熱コイルの一端の検知電圧が前記直流電源の出力電圧より小さな値を有する閾値以下であることを検知したとき、前記切替えリレーが正常に動作していないと判定するよう構成されている。
上記のように構成された本発明に係る第3の観点における制御部は、切替えリレーのコモン端子を第1の接続端子に接続するように制御し、かつスイッチング素子をオンオフ制御した場合に、コモン端子が、第1の接続端子に正常に接続されており、第2の接続端子には接続されていないことを判別することができる。
本発明に係る第4の観点の誘導加熱装置においては、前記の第1の観点または第2の観点における前記制御部が、前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第1の電圧検知回路が零電圧を検知したとき、前記第1の接続端子および前記第2の接続端子のどちらも前記コモン端子に接続されていないと判定するよう構成されている。
上記のように構成された本発明に係る第4の観点においては、コモン端子に第1の接続端子と第2の接続端子のどちらのコイルも接続されていなければ、第1の電圧検知回路がほぼ零Vの電圧を検知する。コモン端子に第1の接続端子が接続された状態にある場合、およびコモン端子に第2の接続端子が接続された状態にある場合のいずれにおいても第1の電圧検知回路は、直流電源の出力電圧以上の電圧を検知する。したがって、本発明によれば、第1の電圧検知回路がほぼ零Vの電圧を検知したときには、コモン端子に第1の接続端子および第2の接続端子のどちらも接続されていないと判定できる。例えば、切替えリレーの接点に埃等の異物が挟まり、動作させようとする加熱コイルが未接続状態となっていることを、第4の観点の構成においては切替えリレーの切替え動作を新たに加えることなく検知することができる。
本発明に係る第5の観点の誘導加熱装置は、
直流電源と、
第1の加熱コイルと、
第2の加熱コイルと、
前記第1の加熱コイルの一端に接続される第1の接続端子、前記第2の加熱コイルの一端に接続される第2の接続端子および前記直流電源の高電位側出力端に接続されるコモン端子を有し、前記コモン端子を前記第1の接続端子または前記第2の接続端子のいずれか一方に接続するための切替えリレーと、
前記第1の加熱コイルの他端と前記第2の加熱コイルの他端とを接続する接続部に一端が接続され、他端が前記コモン端子に接続されて前記第1の加熱コイルまたは前記第2の加熱コイルと共振回路を形成する共振コンデンサと、
前記接続部と前記直流電源の低電位側出力端との間に接続され、前記共振回路に共振電流を発生させるスイッチング素子と、
前記第1の加熱コイルの他端と前記第2の加熱コイルの他端とを接続する前記接続部の電圧を検知する第2の電圧検知回路と、
前記スイッチング素子を駆動して前記第1の加熱コイルまたは前記第2の加熱コイルの加熱出力を所定の値に制御すると共に前記切替えリレーの切替えを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の加熱出力で前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第2の電圧検知回路の検知結果に基づき、前記接続部の検知電圧が第2の電圧範囲内であることを検知したとき、前記コモン端子が前記第2の接続端子に接続されていると判定するように構成されており、
前記第2の電圧範囲は、前記第1の加熱コイルに所定の加熱出力で前記共振電流を発生させている場合に生じる前記接続部の電圧値を含まず、かつ前記第2の加熱コイルに所定の加熱出力で前記共振電流を発生させている場合に生じる前記接続部の電圧値を含むよう設定されている。
上記のように構成された本発明に係る第5の観点の構成において、コモン端子を第1の接続端子に接続して、第1の加熱コイルに共振電流を流す場合と、コモン端子を第2の接続端子に接続して第2の加熱コイルに共振電流を流す場合で、第2の電圧検知回路は、異なる高周波電圧を検知する。制御部は第2の電圧検知回路の検知する電圧値に応じて、いずれの加熱コイルが動作しているかを判別することができる。
本発明に係る第6の観点の誘導加熱装置においては、前記の第5の観点における前記制御部が、所定の加熱出力で前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第2の電圧検知回路の検知結果に基づき、前記接続部の検知電圧が前記第1の加熱コイルに前記所定の加熱出力で前記共振電流を発生させている場合に生じる前記接続部の電圧値を検知したとき、前記コモン端子が前記第1の接続端子に接続されたと判定するよう構成されている。
上記のように、本発明に係る第6の観点における制御部は、切替えリレーのコモン端子を第1の接続端子と第2の接続端子のいずれに接続するように制御されている場合においても、切替えリレーの切替え動作を新たに行うことなく、切替えリレーが指示どおりに正常に動作しているか否かを確実に確認することができる。
本発明に係る第7の観点の誘導加熱装置においては、前記の第5の観点における前記制御部が、所定の加熱出力で前記共振回路に共振電流が発生しているときに、前記第2の電圧検知回路が零電圧を検知したとき、前記第1の接続端子およびと前記第2の接続端子のどちらも前記コモン端子に接続されていないと判定するよう構成されている。
上記のように、本発明に係る第7の観点における制御部は、第2の電圧検知回路が、零電圧を検知したとき、第1の接続端子および第2の接続端子のどちらもコモン端子に接続されていないと判定するようにし構成したことにより、切替えリレーの接点に、例えば、埃等の異物が挟まり、共振電流を流そうとする第1の加熱コイルまたは第2の加熱コイルの一方の加熱コイルが未接続状態であり、かつ他方の加熱コイルにおいても接続されていないことを検知することができる。
以下、本発明に係る実施の形態として誘導加熱装置について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の誘導加熱装置は、以下の実施の形態に記載した誘導加熱装置の構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的思想と同等の技術的思想に基づいて構成される誘導加熱装置を含むものである。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1の誘導加熱装置の主要回路を示すブロック図である。
図1において、直流電源1は、整流素子である全波整流器を構成するダイオードブリッジ2と、ダイオードブリッジ2の高電位側出力端に一端が接続されたチョークコイル3と、チョークコイル3の他端とダイオードブリッジ2の低電位側出力端との間に接続された平滑用コンデンサ4と、で構成されている。交流電源5は直流電源1の入力端に接続されている。実施の形態1においては、説明のため交流電源5を、日本国内の商用電源である周波数50Hzまたは60HzのAC100Vとしている。なお、交流電源5としては実施の形態1の構成に限定されるものではない。直流電源1は交流電源5の交流電圧を整流平滑した直流電圧を形成し、形成された直流電圧を平滑用コンデンサ4の両端に出力する。直流電源1の高電位側の出力端1aは、平滑用コンデンサ4の高電位側端子に接続される。また、直流電源1の低電位側の出力端1bは、ダイオードブリッジ2の低電位側出力端および平滑用コンデンサ4の低電位側端子に接続される。
インバータ回路6の高電位側の入力端6aは、直流電源1の出力端1aに接続され、インバータ回路6の共通電位に接続される低電位側の入力端6bは、直流電源1の出力端1bに接続される。直流電源1はインバータ回路6の動作時には、交流電源5の2倍の周波数のリップルが重畳した脈流の直流電圧をインバータ回路6に供給する。
インバータ回路6は、第1の加熱コイル9および第2の加熱コイル10を備える。また、インバータ回路6は、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10のいずれかと共振して共振電流を発生する共振回路を構成する共振コンデンサ7と、この共振回路に共振電流を発生させるため共振コンデンサ7の一端7aに高電位側の一端8aが接続されるスイッチング素子8と、を備える。この共振回路に共振電流が流れることにより、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10には高周波磁界が発生し、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10により被加熱物を誘導加熱する。
切替えリレー11は、コモン端子12と第1の接続端子13と第2の接続端子14の3つの端子を備える。切替えリレー11は、駆動用の電磁コイル(図示せず)に駆動信号が送られることにより可動接点が移動して、選択的にコモン端子12を、第1の接続端子13または第2の接続端子14のどちらかに接続するよう構成されている。コモン端子12は、インバータ回路6の入力端6aに接続されている。
第1の加熱コイル9の一端9aは、切替えリレー11の第1の接続端子13に接続されている。第1の加熱コイル9の他端9bは、共振コンデンサ7の一端7aに接続されている。また、第2の加熱コイル10の一端10aは、切替えリレー11の第2の接続端子14に接続されている。第2の加熱コイル10の他端10bは、第1の加熱コイル9の他端9bと共に、接続部16で共振コンデンサ7の一端7aに接続されている。
第1の電圧検知回路17は、共通電位となる入力端17bがインバータ回路6の低電位側の入力端6bに接続され、高電位側の入力端17aが第1の加熱コイル9の一端9aに接続されている。第1の電圧検知回路17は、第1の加熱コイル9の一端9aとインバータ回路6の共通電位との間の電圧VA(以下、単に、電圧VAと称す。)を検出し、その検出結果を出力端17cおよび出力端17dから制御部18に出力する。
制御部18は、マイクロコンピュータを含む回路で構成され、切替えリレー11の駆動用の電磁コイル(図示せず)に駆動信号を送り、切替えリレー11の可動接点を切替える制御を行っている。これにより、制御部18は、選択的にコモン端子12を、第1の接続端子13もしくは第2の接続端子14のどちらかに接続する。その後、制御部18は、スイッチング素子8に駆動信号を送り、インバータ回路6を発振動作させる。入力電流検知部32は、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10の加熱出力に対応する直流電源1の入力電流を検知する。この入力電流の大きさは、インバータ回路6の入力電流の大きさに略一致する。このようにインバータ回路6の入力電流を監視して、制御部18は当該誘導加熱装置の加熱出力を所定の値に制御する。
図2は、本発明に係る実施の形態1における第1の電圧検知回路17の主要部を示す回路図である。
第1の電圧検知回路17は、低電位側の入力端17bが共通電位となっている。入力端17bは、インバータ回路6の共通電位に接続され、高電位側の入力端17aは、第1の加熱コイル9の一端9aに接続される。したがって、第1の電圧検知回路17は、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAを検知する。第1の電圧検知回路17は、分圧回路21、ピークホールド回路22、基準電圧生成回路26および比較回路29を備える。
分圧回路21は、電圧VAを分圧する抵抗19と抵抗20の直列回路で構成される。ピークホールド回路22は、コレクタ抵抗22a、トランジスタ22c、エミッタ抵抗22bおよびコンデンサ22dで構成されている。ピークホールド回路22は、電圧VAを分圧回路21で分圧した分圧電圧のピーク電圧を保持して、第1の電圧検知回路17の共通電位との間の電圧を示す出力電圧VB(以下、単に、出力電圧VBと称す。)を出力する。後述の電圧VC、VD、V1およびV2も同様に、第1の電圧検知回路17の共通電位との間の電圧を示す。基準電圧生成回路26は、制御電源Vと共通電位間に接続された抵抗23、抵抗24および抵抗25の直列回路で構成されている。基準電圧生成回路26において、抵抗23と抵抗24の接続点の電位が基準電圧V1を生成し、抵抗24と抵抗25の接続点の電位が基準電圧V2(V1>V2)を生成する。
比較回路29は、第1のコンパレータ27と第2のコンパレータ28を備える。第1のコンパレータ27は、ピークホールド回路22の出力電圧VBと基準電圧生成回路26が生成した第1の基準電圧V1とを比較し、VB>V1の場合には、HIGH信号を出力端17cから出力(HIGH出力)する。一方、VB≦V1の場合には、LOW信号を出力(LOW出力)する。第2のコンパレータ28は、ピークホールド回路22の出力電圧VBと基準電圧生成回路26が生成した第2の基準電圧V2とを比較し、VB>V2の場合には、HIGH信号を出力端17cから出力する。一方、VB≦V2の場合には、LOW信号を出力する。比較回路29は、この2つのコンパレータ27,28の出力を制御部18に出力する。
実施の形態1においては、分圧回路21の分圧比が、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAをほぼ1/100に分圧するように設定されている。なお、分圧回路21の分圧比は、実施の形態1の構成に限定されず、第1の電圧検知回路17を構成する部品の電気定格を満たすように適宜設定すれば良い。
以上のように構成された実施の形態1の誘導加熱装置における動作および作用について以下に説明する。
図1に示すように、切替えリレー11において、コモン端子12と第1の接続端子13が接続された状態にあると仮定する。この状態では、第1の加熱コイル9の一端9aは、直流電源1の出力電圧VC(約141V)と同電圧となる。したがって、インバータ回路6が発振動作を行っているか、若しくは行っていないに拘わらず、第1の電圧検知回路17に入力される電圧VAは、ピーク電圧が直流電源1の出力電圧VCと略等しい直流電圧となり、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、VB≒VC/100=1.4Vとなる。
次に、図示していないが、切替えリレー11において、コモン端子12と第2の接続端子14が接続された状態にあると仮定する。この状態では、第1の電圧検知回路17に入力される電圧VAは、第2の加熱コイル10の両端に共振電圧が発生しないので、第2の加熱コイル10の他端10bの電圧VDと同じになる。
インバータ回路6が発振停止している状態においては、第2の加熱コイル10の他端10bの電圧VDは、直流電源1の出力電圧VCと等しくなる。
インバータ回路6を発振動作させた場合には、第2の加熱コイル10の他端10bの電圧VDは、直流電源1の出力電圧VCに第2の加熱コイル10の両端に発生する高周波電圧を加算した値となる。直流電源1の出力電圧VCは、交流電源5を整流した脈流電圧となり、実施の形態1においては、ピーク電圧が約141Vで周波数120Hzまたは100Hzの脈流となる。スイッチング素子8の高周波数(例えば、30kHz程度)のスイッチング動作により、第2の加熱コイル10と共振コンデンサ7とが共振して、高周波電圧が第2の加熱コイル10の両端に発生する。例えば、インバータ回路6における第2の加熱コイル10の他端10bの電圧VDは、ピーク電圧約650Vで周波数33kHz程度の高周波電圧となる。
上記のように、第1の電圧検知回路17が入力する電圧VAは、インバータ回路6が発振停止している場合には直流電源1の出力電圧VCと等しくなり、発振動作を行っている場合には高周波電圧である電圧VDと等しくなる。
ピークホールド回路22の出力電圧VBは、インバータ回路6が発振停止している場合には、VB≒VC/100=1.4Vとなり、インバータ回路6が発振動作を行っている場合には、VB≒VD/100=6.5Vとなる。
さらに、図示はしないが、切替えリレー11のコモン端子12が、第1の接続端子13と第2の接続端子14のどちらにも接続されていない状態にあると仮定する。この状態では、インバータ回路6には、直流電源1の出力電圧VCが印加されないため、第1の電圧検知回路17に入力される電圧VAは零Vとなり、ピークホールド回路22の出力電圧VBも零Vとなる。
以上のように、切替えリレー11の可動接点の状態に対応して、ピークホールド回路22の出力電圧VBが異なる値を示す。比較回路29は、ピークホールド回路22の出力電圧VBが入力されて、切替えリレー11の可動接点の状態を識別することができる。実施の形態1においては、第1の電圧検知回路17内の基準電圧生成回路26が、ピークホールド回路22の出力電圧VBと比較するために生成する第1の基準電圧V1と第2の基準電圧V2の電圧値をそれぞれ、V1=4.0V、V2=0.6Vに設定している。ただし、これらの設定値は例示であり、本発明においてはこれらの数値に限定されるものではなく、回路構成の仕様等に応じて適宜設定される。
なお、本発明に係る実施の形態1の誘導加熱装置において、前記の第1の基準電圧V1および第2の基準電圧V2がそれぞれ閾値として接点状態の判定基準となっている。また、第1の基準電圧V1以上を第1の電圧範囲として設定されている。
次に、実施の形態1の誘導加熱動作における切替えリレー11の接点状態検知動作について、上記で説明した切替えリレー11の接続状態の順に説明する。
[コモン端子12と第1の接続端子13が接続状態]
まず、切替えリレー11において、コモン端子12と第1の接続端子13が接続状態にある場合には、上記のように、インバータ回路6が発振動作を行っている状態と発振停止している状態のどちらの状態でも、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、VB≒1.4Vとなる。このため、比較回路29の第1のコンパレータ27の出力はLOW出力(LOW信号出力)であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力(HIGH信号出力)となる。
[コモン端子12と第2の接続端子14が接続状態]
次に、切替えリレー11のコモン端子12と第2の接続端子14が接続状態にある場合において、インバータ回路6が発振停止している状態では、上記のように、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、VB≒1.4Vとなる。その結果、比較回路29の第1のコンパレータ27の出力はLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力となる。インバータ回路6が発振動作を行っている状態では、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、VB≒6.5となる。このため、インバータ回路6が発振動作を行っている状態においては、比較回路29の第1のコンパレータ27の出力および第2のコンパレータ28の出力は共にHIGH出力となる。
[コモン端子12が接続されていない状態]
さらに、切替えリレー11のコモン端子12が、第1の接続端子13と第2の接続端子14のどちらにも接続されていない状態にある場合には、インバータ回路6は発振動作をせず、ピークホールド回路22の出力電圧VBは零Vとなる。また、比較回路29の第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力は、共にLOW出力となる。
したがって、制御部18は、インバータ回路6が発振停止した状態において、第1の電圧検知回路17からの入力信号である第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力が共にLOW出力の場合には、例えば、切替えリレー11の可動接点と第1の接続端子13または第2の接続端子14の接点間に埃等の異物が挟まって、コモン端子12が第1の接続端子13または第2の接続端子14のいずれにも接続できていない状態であることを検知することができる。
[制御部18がコモン端子12と第1の接続端子13を接続指令状態]
制御部18は、第1の加熱コイル9から高周波磁界を発生させて被加熱物を加熱するために、切替えリレー11のコモン端子12と第1の接続端子13とを接続状態にする指令信号を出力して、インバータ回路6を発振動作させたとき、以下のように第1の電圧検知回路17からの入力信号(HIGH信号/LOW信号)により切替えリレー11の接続状態を検知することができる。
制御部18は、コモン端子12と第1の接続端子13とを接続状態として、インバータ回路6を発振動作させたとき、第1のコンパレータ27の出力がLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力がHIGH出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12は、正常に第1の接続端子13と接続状態にあることを検知することができ、切替えリレー11の可動接点は正常であると検知することができる。
また、切替えリレー11のコモン端子12と第1の接続端子13とを接続状態にする指令信号を出力して、インバータ回路6を発振動作させたとき、第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力が共に、HIGH出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12が第2の接続端子14と接続状態にあることを検知することができる。したがって、切替えリレー11の可動接点が第2の接続端子14に対して溶着していることを検知することができる。
[制御部18がコモン端子12と第2の接続端子14を接続指令状態]
制御部18は、第2の加熱コイル10から高周波磁界を発生して被加熱物を加熱するために、切替えリレー11のコモン端子12と第2の接続端子14とを接続状態にする指令信号を出力して、インバータ回路6を発振動作させたとき、以下のように第1の電圧検知回路17からの入力信号(HIGH信号/LOW信号)により切替えリレー11の接続状態を検知することができる。
制御部18は、コモン端子12と第2の接続端子14とを接続状態として、インバータ回路6を発振動作させたとき、第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力が共にHIGH出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12は正常に第2の接続端子14と接続状態にあることを検知することができ、切替えリレー11の接点は正常であると検知できる。
また、切替えリレー11のコモン端子12と第2の接続端子14とを接続状態にする指令信号を出力して、インバータ回路6を発振動作させたとき、第1のコンパレータ27の出力がLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力がHIGH出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12は第1の接続端子13と接続状態にあることを検知することができ、切替えリレー11の可動接点が第1の接続端子13に対して溶着していることを検知することができる。
上記のように、実施の形態1の誘導加熱装置は、第1の加熱コイル9と、第2の加熱コイル10と、切替えリレー11と、共振コンデンサ7と、スイッチング素子8と、第1の電圧検知回路17と、制御部18と、を備えている。
実施の形態1の誘導加熱装置において、切替えリレー11は、第1の加熱コイル9の一端9aに接続される第1の接続端子13と、第2の加熱コイル10の一端10aに接続される第2の接続端子14と、直流電源1の高電位側の出力端1aに接続されるコモン端子12とを有して構成されている。切替えリレー11は、コモン端子12が第1の接続端子13または第2の接続端子14のいずれかに接続するように、可動接点により切替えるよう構成されている。
共振コンデンサ7は、第1の加熱コイル9の他端9bと第2の加熱コイル10の他端10bの接続部16に一端が接続され、他端が直流電源1の高電位側の出力端に接続され、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10と共振回路を形成する。
スイッチング素子8は、第1の加熱コイル9の他端9bと第2の加熱コイル10の他端10bの接続部16と、直流電源1の低電位側の出力端との間に接続されており、当該スイッチング素子8をオンオフすることにより前記共振回路に共振電流を発生させる。第1の電圧検知回路17は、第1の加熱コイル9の一端の電圧を検知して、制御部18にその検知結果を出力するよう構成されている。制御部18は、第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10の加熱出力が所定の値になるようにスイッチング素子8のオンオフを制御すると共に、切替えリレー11の可動接点の切替えを制御する。そして、制御部18は、共振回路に共振電流が発生しているときに、第1の電圧検知回路17の検知結果に基づき、前述のように切替えリレー11の接点状態を検知することができる。
実施の形態1において、制御部18は、第1の加熱コイル9の一端の電圧(VA)が直流電源1の出力電圧(例えば、約141V)より大きく設定された第1の電圧範囲内(例えば、第1の基準電圧V1(約4.0V)以上)にあることを検知すると、コモン端子12が第2の接続端子14に接続されていると判定する。
実施の形態1の構成においては、切替えリレー11のコモン端子12に第1の接続端子13が接続されていないとき、第1の加熱コイル9には共振電流が流れない。このため、第1の電圧検知回路17は、第1の加熱コイルの他端9bと第2の加熱コイルの他端10bの接続部16に加わる電圧VDを検知する。コモン端子12が第2の接続端子14に接続され、かつ第2の加熱コイル10に共振電流が流れている場合には、接続部16の電圧VDは直流電源1の出力電圧VCより大きくなる。
したがって、制御部18は、第1の電圧検知回路17の検知結果に基づき、第1の加熱コイル9の一端の電圧VAが直流電源1の出力電圧VCより大きく設定された第1の電圧範囲内にあることを検知すると、即ち第1の加熱コイル9の一端の電圧VAが直流電源1の出力電圧VCより大きいことを検知すると、第1の加熱コイル9の一端は開放状態にあり、かつ接続部16の電圧VDが直流電源1の出力電圧VCより大きいと判断することができる。この結果、実施の形態1の誘導加熱装置においては、第2の加熱コイル10に共振電流が流れていると判定することができる。これにより、制御部18はコモン端子12が第2の接続端子14に接続されていると判定することができる。
例えば、制御部18は、切替えリレー11のコモン端子12を第1の接続端子13に接続するように指令信号を出力し、かつスイッチング素子8をオンオフ制御している状態において、接続部16の電圧VDが直流電源1の出力電圧VCより大きいことを検知したとき、切替えリレー11の可動接点が第2の接続端子14と溶着状態となっていると判定することができる。
また、実施の形態1において、制御部18は、共振回路に共振電流が発生しているとき、第1の電圧検知回路17が検知した電圧が直流電源1の出力電圧VCと同じであることを検知すると、コモン端子12が第1の接続端子13に接続されていると判定する。
共振回路に共振電流が発生していると、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAは、コモン端子12が第1の接続端子13に接続されている場合と、第2の接続端子14に接続されている場合とで異なる電圧となる。コモン端子12が第1の接続端子13に接続されている場合には、直流電源1の高電位側の出力端1aと同電圧VCとなり、コモン端子12が第2の接続端子14に接続されている場合には、接続部16と同電圧、すなわち直流電源1の高電位側の出力端1aの電圧VCに第2の加熱コイル10の両端の電圧が加算された電圧VDとなる。
制御部18は、さらに、共振回路に共振電流が発生しているときに、第1の電圧検知回路17の検知結果に基づき、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAが直流電源1の出力電圧VCと同じであることを検知したとき、コモン端子12が第1の接続端子13に接続されて、第1の加熱コイル9に共振電流が流れていると判定することができる。
例えば、制御部18は、切替えリレー11のコモン端子12を第1の接続端子13に接続するように制御し、かつスイッチング素子8をオンオフ制御した場合には、第1の加熱コイルの一端9aの電圧VAが直流電源1の出力電圧VCであれば、コモン端子12が第1の接続端子13に正常に接続されていると判定することができる。
上記のように、制御部18は、共振回路に共振電流を発生させ、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAを検知することにより、切替えリレー11のコモン端子12がいずれの接続端子に接続されていても、切替えリレーの切替え動作を新たに行うことなく、切替えリレー11が制御部18の指示どおりに正常に動作しているか否かを確認することができる。
なお、制御部18は、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAが、直流電源1の出力電圧VCであるか否かを判定して、コモン端子12が第1の接続端子13に正常に接続されていることを判別する方法と、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAが、直流電源1の出力電圧VCより大きく設定された第1の電圧範囲内にあることを検知して、コモン端子12が第2の接続端子14に接続されていると判別する方法のいずれか一方のみを用いて、切替えリレー11が正常に切替え動作を行っているか否かを判別してもよい。
また、実施の形態1において、制御部18は、第1の電圧検知回路17が、零電圧を検知すると、第1の接続端子13および第2の接続端子14のどちらもコモン端子12に接続されていないと判定する。これにより、切替えリレー11の接点を特定の状態に切替えることなく、すなわち、切替えリレー11の切替え動作を新たに加えることなく、共振回路に共振電流が発生していない状態で、切替えリレー11の接点に埃等の異物が挟まって、制御部18が動作させようとする第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10が共振電流を発生できない状態となっていることを検知することができる。
また、実施の形態1において、第1の電圧検知回路17は、第1の加熱コイル9の一端9aの電圧VAのピーク電圧を検知するように構成したことにより、コモン端子12に、第1の接続端子13が接続された場合と、第2の接続端子14が接続された場合とで異なる、入力電圧VAの違いを正確に把握して、判別する際の識別感度を高めて、両者の差を確実に検知することができる。
なお、実施の形態1においては、第1の電圧検知回路17内の基準電圧をV1とV2の2電圧とし、切替えリレー11の異物付着による接点開放と、接点の溶着のどちらも検出する構成としたが、基準電圧をV1のみとし、接点の溶着のみの検出を可能とする構成としてもよい。
また、切替えリレー11は、1個のリレーで2接点を有し、コモン端子をそのどちらかの接点と接続するように切り替えることができるリレーを用いたが、単一の接点を有し、コモン端子とその接点とを、接続か非接続のどちらかに切り替えるリレーを2個使用し、その2個のリレーのコモン端子を接続した構成としても同じ効果を得られる。
また、実施の形態1における切替えリレー11は、2つの加熱コイル9,10に対する切替え動作を行う構成としたが、3個以上の加熱コイルに接続可能に構成し、そのうちのひとつの加熱コイルを選択して、インバータ回路6に接続する場合においても、基準電圧生成回路26が生成する基準電圧の数と比較回路29の比較器(コンパレータ)の数を加熱コイルの数に合わせることにより、対応することができる。即ち、加熱コイルの数をAとした場合には、基準電圧の数をA、比較回路のコンパレータの数をAとする。このように構成することにより、制御部においては、第1の電圧検知回路からの出力信号に基づいて、加熱コイルと共振コンデンサとの共振により発生し、スイッチング素子に印加される高周波電圧のピーク電圧の違いにより、切替えリレーのコモン端子に対して、いずれの加熱コイルが接続状態にあるのかを検知することが可能となる。
なお、基準電圧生成回路26と比較回路29の機能は、制御部18に設けられたマイクロコンピュータに含めても良く、第1の電圧検知回路17は少なくとも加熱コイル9または10の一端の電圧VAに対応する電圧または信号を制御部18に出力すればよい。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱装置を図3を参照しながら説明する。図3は、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱装置の主要部回路を示すブロック図である。なお、実施の形態2の説明において、前述の実施の形態1と同じ機能を有する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
図3に示すように、実施の形態2における第2の電圧検知回路30は、図2に示した第1の電圧検知回路17と同様の構成を有しているが、入力端17aが第1の加熱コイル9の他端9bと第2の加熱コイル10の他端10bとの接続部16に接続されて、電圧VDを検知する点で前述の実施の形態1と相違している。
また、実施の形態2においては、第1の加熱コイル9に共振電流を供給して、所定の加熱出力(例えば、1200W)を得るようにした場合の接続部16の電圧VDは、第2の加熱コイル10に共振電流を供給して、前記所定の加熱出力(例えば、1200W)を得るようにした場合の接続部16の電圧VDよりも大きくなるように、第1の加熱コイル9と第2の加熱コイル10の仕様を決定している点で実施の形態1と相違している。
実施の形態2における制御部31は、コモン端子12を第1の接続端子13(第1の加熱コイル9)に接続するように切替えリレー11を制御し、かつ所定の加熱出力で共振回路に共振電流を発生させているときに、第2の電圧検知回路30の検知結果に基づき、接続部16の電圧VDが第2の電圧範囲内にある場合において、コモン端子12が第2の接続端子14に接続されていると判定する点で実施の形態1と相違している。ここで、第2の電圧範囲とは、第1の加熱コイル9において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧値を含まず、かつ第2の加熱コイル10において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧値を含む範囲である。
以上のように構成された実施の形態2の誘導加熱装置について、その動作および作用について以下に説明する。
切替えリレー11のコモン端子12が、第1の接続端子13および第2の接続端子14のどちらにも接続されていない状態では、第2の電圧検知回路30に入力される電圧VDは零Vとなり、ピークホールド回路22の出力電圧VBも零Vとなる。
また、切替えリレー11において、コモン端子12と第1の接続端子13が接続された状態(図3参照)において、制御部18が、インバータ回路6を発振停止させている場合には、第2の電圧検知回路30に入力される電圧VDは、直流電源1の出力電圧VCと同電圧となる。
この接続状態(図3参照)において、インバータ回路6を発振動作させた場合、第2の電圧検知回路30に入力される電圧VDは、第1の加熱コイル9と共振コンデンサ7との共振回路に発生する共振電流により第1の加熱コイル9の両端に発生する電圧が、直流電源1の出力電圧VCに加わった高周波電圧となる。制御部31は、入力電流検知部32の検知する入力電流を検知して、第1の加熱コイル9の加熱出力が所定の値、例えば、1200Wとなるようにスイッチング素子8を制御する。このとき、第2の電圧検知回路30に入力される電圧VDは、例えば、ピーク電圧が約750Vで周波数が30kHz程度の高周波電圧となる。
したがって、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、インバータ回路6が発振停止している場合は、VB≒VC/100=1.4Vとなり、インバータ回路6が発振動作を行っている場合には、VB≒VD/100=7.5Vとなる。
一方、切替えリレー11がコモン端子12と第2の接続端子14(第2の加熱コイル10)が接続された状態で、制御部18が、インバータ回路6の発振を停止させている場合、第1の加熱コイル9の他端9bと第2の加熱コイル10の他端10bとの接続部16の電圧VDは、直流電源1の出力端1aの電圧VCと同じ直流電源1の出力電圧VCと同じになる。
この接続状態において、インバータ回路6を発振動作させた場合、接続部16の電圧VDは、第2の加熱コイル10と共振コンデンサ7との共振回路に発生する共振電流により第2の加熱コイル10の両端に発生する電圧が、直流電源1の出力電圧VCに加わった高周波電圧である。実施の形態2においては、この高周波電圧は、ピーク電圧が約650Vで周波数が33kHz程度の高周波電圧となる。
したがって、ピークホールド回路22の出力電圧VBの波形は、インバータ回路6が発振停止している場合には、VB≒VC/100=1.4Vとなり、インバータ回路6が発振動作している場合には、VB≒VD/100=6.5Vとなる。
実施の形態2においては、第2の電圧検知回路30内の基準電圧生成回路26が生成する第1の基準電圧V1と第2の基準電圧V2の電圧値をそれぞれ、V1=7.0V、V2=0.6Vに設定されている。
なお、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱装置において、前記の第1の基準電圧V1および第2の基準電圧V2がそれぞれ閾値として接点状態の判定基準となっている。
切替えリレー11のコモン端子12が第1の接続端子13および第2の接続端子14のどちらにも接続されていない状態においては、VD=0Vになるため、比較回路29の第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力は、共にLOW出力となる。
また、切替えリレー11のコモン端子12が第1の接続端子13に接続された状態にある場合には、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、インバータ回路6が発振停止しているとき、VB≒VC/100=1.4Vとなる。逆に、インバータ回路6が発振動作を行っているとき、VB≒VD/100=7.5Vとなる。したがって、インバータ回路6が発振停止している状態での比較回路29の第1のコンパレータ27の出力は、LOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力となる。逆に、インバータ回路6が発振動作を行っている状態での比較回路29の第1のコンパレータ27の出力はHIGH出力であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力となる。
一方、切替えリレー11のコモン端子12が第2の接続端子14に接続された状態にある場合には、ピークホールド回路22の出力電圧VBは、インバータ回路6が発振停止しているとき、VB≒VC/100=1.4Vとなる。逆に、インバータ回路6が発振動作を行っているとき、VB≒VD/100=6.5Vとなる。したがって、インバータ回路6が発振停止している状態での比較回路29の第1のコンパレータ27の出力はLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力となる。逆に、インバータ回路6が発振動作している状態での比較回路29の第1のコンパレータ27の出力はLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力はHIGH出力となる。
したがって、制御部18は、インバータ回路6が発振停止した状態において、第2の電圧検知回路30からの入力信号が、第1のコンパレータ27の出力と第2のコンパレータ28の出力が共にLOW出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12と第1の接続端子13またはコモン端子12と第2の接続端子14の接点間に埃等の異物が挟まり、接続できていないことを検知することができる。
また、制御部18は、第1の加熱コイル9から高周波磁界を発生して被加熱物を加熱するために、切替えリレー11のコモン端子12を第1の接続端子13と接続状態にして、インバータ回路6を発振動作させた状態で、第2の電圧検知回路30からの入力信号により、第1のコンパレータ27の出力がHIGH出力であり、第2のコンパレータ28の出力がHIGH出力の場合には、切替えリレー11の接点は正常に第1の接続端子13と接続状態にあることを検知することができる。この結果、制御部18においては、切替えリレー11の接点は正常であると検知することができる。
この接続状態において、第2の電圧検知回路30からの入力信号における第1のコンパレータ27の出力がLOW出力であり、第2のコンパレータ28の出力がHIGH出力の場合には、切替えリレー11の接点は第2の接続端子14に接続された状態にあると検知することができる。したがって、制御部31は、切替えリレー11の可動接点が第2の接続端子14に対して溶着していることを検知することができる。
一方、制御部18は、第2の加熱コイル10から高周波磁界を発生して被加熱物を加熱するために、切替えリレー11のコモン端子12を第2の接続端子14と接続状態にして、インバータ回路6を発振動作させた状態で、第2の電圧検知回路30からの入力信号により、第1のコンパレータ27の出力がLOW出力で第2のコンパレータ28の出力がHIGH出力の場合には、切替えリレー11の接点は正常に第2の接続端子14と接続状態にあることを検知することができ、切替えリレー11の接点は正常であると検知することができる。
この接続状態において、第2の電圧検知回路30からの入力信号における第1のコンパレータ27の出力および第2のコンパレータ28の出力が共にHIGH出力の場合には、切替えリレー11のコモン端子12は第1の接続端子13に接続された状態にあると検知することができる。したがって、制御部31は、切替えリレー11の可動接点が第1の接続端子13に対して溶着していることを検知することができる。
以上のように、実施の形態2においては、第1の加熱コイルの他端9bと第2の加熱コイルの他端10bの接続部16の電圧VDを検知する第2の電圧検知回路30を備え、制御部31はコモン端子12を第1の接続端子13に接続するように切替えリレー11を制御し、かつ所定の加熱出力で共振回路に共振電流を発生させているときに、第2の電圧検知回路30の検知結果に基づき、接続部16の電圧VDが、第1の加熱コイル9において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧値を含まず、かつ第2の加熱コイル10において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧値を含む第2の電圧範囲内にある場合は、コモン端子12が第2の接続端子14に接続されていると判定するように構成されている。
実施の形態2における具体的な構成において、第2の電圧範囲とは、第1の加熱コイル9において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧(例えば、7.5V)を含まない電圧範囲であり、かつ第2の加熱コイル10において所定の加熱出力で共振電流を発生させている場合に生じる接続部16の電圧(例えば6.5V)を含む電圧範囲を言う。したがって、実施の形態2においては、接続部16の電圧VDが、第1の基準電圧(例えば、V1=7.0V)以上の電圧範囲内にある場合には、第1の加熱コイル9が所定の加熱出力で共振電流を発生させている状態である。また、接続部16の電圧VDが、第1の基準電圧V1(例えば、V1=7.0V)未満であり、第2の基準電圧V2(例えば、V2=0.6V)以上の電圧範囲内(第2の電圧範囲内)にある場合には、第2の加熱コイル10が所定の加熱出力で共振電流を発生させている状態である。なお、インバータ回路6が発振停止した状態において、接続部16の電圧(VD≒1.4V)は第1の基準電圧V1(例えば、V1=7.0V)未満であり、第2の基準電圧V2(例えば、V2=0.6V)以上の電圧範囲にある。
実施の形態2の誘導加熱装置は、上記のように構成することにより、コモン端子12を第1の接続端子13に接続して、第1の加熱コイル9に共振電流を流す場合と、コモン端子12を第2の接続端子14に接続して第2の加熱コイル10に共振電流を流す場合で、第2の電圧検知回路30は、異なる高周波電圧を検知する。制御部31は第2の電圧検知回路30の検知する電圧値に応じて、どの加熱コイルが動作しているかを判別することができる。
また、実施の形態2においては、第2の電圧検知回路30が零電圧を検知すると、制御部31が第1の接続端子13および第2の接続端子14のどちらもコモン端子12に接続されていないと判定するように構成されている。このため、実施の形態2の誘導加熱装置は、切替えリレー11の接点に埃等の異物が挟まり、共振電流を流そうとする第1の加熱コイル9または第2の加熱コイル10が未接続状態であることを検知することができる構成である。
また、実施の形態2においては、第2の電圧検知回路30が接続部16の電圧VDのピーク電圧を検知するように構成したことにより、コモン端子12が第1の接続端子13と第2の接続端子14のどちらに接続されているかにより異なる電圧値において、接続部16に印加される電圧差を確実に検出することができる。
なお、実施の形態2においては、第2の電圧検知回路30内の比較電圧を電圧VAと電圧VBの2電圧とし、切替えリレー11の異物付着による接点開放と、接点の溶着のどちらも検出する構成としたが、比較電圧を電圧VAのみとし、接点の溶着のみの検出を可能とする構成としてもよい。
また、切替えリレー11は、1個のリレーで2接点を有し、コモン端子をそのどちらかの接点と接続するように切り替えることができるリレーを用いたが、単一の接点を有し、コモン端子とその接点とを、接続か非接続のどちらかに切り替えるリレーを2個使用し、その2個のリレーのコモン端子を接続した構成としても同じ効果を得られる。
また、実施の形態2における切替えリレー11は、2つの加熱コイル9,10に対する切替え動作を行う構成としたが、3個以上の加熱コイルに接続可能に構成し、そのうちのひとつの加熱コイルを選択して、インバータ回路6に接続する場合においても、基準電圧生成回路が生成する基準電圧の数と比較回路の比較器(コンパレータ)の数を加熱コイルの数に合わせることにより、対応することができる。即ち、加熱コイルの数をAとした場合には、基準電圧の数をA、比較回路のコンパレータの数をAとする。このように構成することにより、制御部においては、第1の電圧検知回路からの出力信号に基づいて、加熱コイルと共振コンデンサとの共振により発生し、スイッチング素子に印加される高周波電圧のピーク電圧の違いにより、切替えリレーのコモン端子に対して、いずれの加熱コイルが接続状態にあるのかを検知することが可能となる。
なお、基準電圧生成回路26と比較回路29の機能は、制御部31に設けられたマイクロコンピュータに含めても良く、第2の電圧検知回路30は少なくとも接続部16の電圧VDに対応する電圧または信号を制御部31に出力すればよい。
上記のように、本発明の誘導加熱装置は、制御部が、直流電源に接続されたコモン端子と第1の接続端子とを接続するよう切替えリレーを駆動しているにもかかわらず、コモン端子と第2の加熱コイルの一端に接続された第2の接続端子との接続状態を検知することが可能である。したがって、従来のように第1の接続端子および第2の接続端子を両方とも切り離してから駆動制御して接続状態を検知するような、切替えリレーの追加の切替え動作を行うことなく、切替えリレーの接続状態を検知することができる。この結果、本発明によれば、切替えリレーの寿命を延ばすことができ、ひいては寿命が長く、信頼性の高い誘導加熱装置を提供することができる。