JP6164744B2 - ソフトバイオマスの分解方法 - Google Patents

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Description

本発明はソフトバイオマスの分解方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、酵素をソフトバイオマスに接触させる工程を含むソフトバイオマスの分解方法、及び、ソフトバイオマスを分解するための酵素または酵素群に関する。
木材チップ等の木質バイオマスや、稲わら、バガス等のソフトバイオマスを原料として、エタノール、ブタノール等のアルコールや、乳酸等の有用な物質を製造する技術の開発が広く試みられている。
これらのバイオマス原料から有用な物質を生産するには、バイオマス原料を糖に分解した後、得られた糖を発酵する必要がある。近年、バイオマス原料は主に酵素によって糖化されている。しかし、バイオマス原料はセルロース以外にも様々な夾雑物を含むため、酵素が作用し難いという問題があった。そこで、糖化効率を上げるために、前処理としてバイオマス原料を希硫酸、加圧熱水等で蒸煮処理したり、超臨界アンモニア流体で処理したりする等の様々な方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、バイオマス原料の分解にあたり、有用な微生物の開発も試みられている。
例えば、特許文献2では、セルラーゼを産生するトリコデルマ リーセイ(Trichoderma reesei)を宿主として、アシドサーマス セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)由来のエンド型セルラーゼ(GH5)とトリコデルマ リーセイ(Trichoderma reesei)由来のセロビオハイドロラーゼ(CBH)とを融合したキメラ酵素を発現させることにより、バイオマス原料に含まれるセルロースの分解能を向上させる方法が開示されている。
さらに、バイオマスからエタノール等の有用な物質を得るためには、糖化工程、発酵工程をそれぞれ独立して行う必要があったが、これらを一度に行える技術の開発も試みられている。
例えば、特許文献3では、改変によってセルラーゼの活性を増強し、リグノセルロース系バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物を提供することが開示されている。そして、活性を増強するためのセルラーゼのひとつとして、クロストリジウム フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)において同定されたヒドロラーゼ等が挙げられており、該ヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチド等が開示されている。
また、特許文献4では、人工セルロソームを構築することを目的として、非セルロソーム生産微生物由来のいくつかのセルラーゼと、セルロソーム生産微生物由来のドックリンドメインとを含むキメラ蛋白質を酵母に発現させる技術が開示されている。しかし、この文献においては、酵母で人工セルロソームを構築するには至っていない。
セルロソームとは、酵素活性を示さない骨格タンパク質(CbpA)とセルロソーマル酵素群の2種類のコンポーネントからなる酵素複合体のことである。骨格タンパク質(CbpA)は、セルロース結合ドメイン(CBD)、Cohesin ドメイン、SLH(Surface Layer Homology)ドメインを有する。セルロソーマル酵素群は骨格タンパク質(CbpA)のCohesinドメインに結合するためのDockerinドメインを有する。これらが結合して、酵素複合体(セルロソーム)を形成することにより、セルロースやヘミセルロースを効率的に分解することが可能となる。
セルロソームを構築する微生物は、バイオマス原料の分解、発酵において有用な微生物であるといえ、このような微生物として、クロストリジウム セルロボランス(Clostridium cellulovorans(以下、C.cellulovoransと示す場合がある))等が知られている。
クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)はグラム陽性の絶対嫌気性中温菌である。本発明者らは、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)が、同じクロストリジウム属のクロストリジウム セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)に比べて約1Mb以上もゲノムサイズが大きいことを確認している(例えば、非特許文献1、参照)。
また、非特許文献2において、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)が、セロビオース等を含む試験試料を発酵することによって、アセテート(acetate)、ブチレート(butyrate)等の有用な物質を産生したことが開示されており、エタノールを産生したことも示唆されている。
さらに、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)由来のセルロソーマル酵素群として、Glycosyl Hydrolase family 5(GH5)のエンド型セルラーゼであるEngE(Endoglucanase E)、Glycosyl Hydrorase family 9(GH9)のプロセッシブ・エンド型セルラーゼであるEngK(Endoglucanase K)、同EngH(Endoglucanase H)、また、Glycosyl Hydrolase family 48(GH48)のエキソ型セルラーゼであるExgS(Exoglucanase S)等が知られている。
このうち、EngKは、不溶性のセルロースに対して高い活性を示したことが開示されている(例えば、非特許文献3、参照)。また、ExgSとEngEの混合物、ExgSとEngHの混合物、EngEとEngHの混合物はいずれも、EngE、EngHまたはExgS単独の場合と比べて結晶セルロースに対して特異的な活性を示したことも開示されている(例えば、特許文献4、参照)。
このように、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)や、この微生物由来の酵素または酵素群は、バイオマスの分解、発酵に有用であることが示唆されている。
しかし、木質バイオマス、ソフトバイオマス等のバイオマスは試験試料、不溶性セルロースや結晶セルロース等とは異なり、バイオマスの種類に応じて、セルロース以外にも様々な夾雑物を含んでいるため、これらの実バイオマス(バガス、稲わら等)を直接分解し、発酵することが必ずしも可能であるとはいえなかった。
従って、前処理等の工程を必要とせず、糖化工程、発酵工程をそれぞれ独立して行う必要もない、実バイオマスを直接分解し、発酵できる方法の提供が望まれている。また、実バイオマスの種類に応じて、その分解および発酵が可能な微生物、酵素や酵素群等の提供も望まれている。
特開2008−161125号公報 特表2007−53050号公報 特表2011−529345号公報 特開2011−182675号公報
Y. Tamaru et al., J. Bacteriol., 192, 901−902 (2010) ROBERT SLEAT et al., Applied and Environmental Microbiology., July 1984, p.88−93 Takamitsu Arai et al., Appl Microbiol Biotechnol 2006, 71 p.654−660 Koichiro MURASHIMA et al., Journal of Bacteriology Sept. 2002, p.5088−5095
本発明はソフトバイオマスのうち、バガス、稲わら等の実バイオマスを、種類に応じて適切に分解できる方法の提供を課題とする。また、該分解方法を含み、エタノール等の有用な物質を標的物質として製造する方法の提供を課題とする。
また、本発明は、ソフトバイオマスの種類に応じて、有用に作用し得る酵素や該酵素の組合せ(酵素群)の提供も課題とする。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、特定のエキソ型セルラーゼ、エンド型セルラーゼまたはプロセッシブ・エンド型セルラーゼから選ばれる酵素をバガス、稲わら等のソフトバイオマスに接触させることにより、これらの実バイオマスが直接分解できることを見出し、本発明のソフトバイオマスの分解方法を提供するに至った。また、本発明者らは、該分解方法を含むことにより、バガス、稲わら等のソフトバイオマスからエタノール等の有用な物質を標的物質として製造できることを見出した。
そして、本発明者らは、さらに、バガス、稲わら等のソフトバイオマスの種類に応じて有用に作用し得る酵素や酵素群も見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(20)に示される、ソフトバイオマスの分解方法、ソフトバイオマスから標的物質を製造する方法、または、ソフトバイオマスを分解するための酵素または酵素群等に関する。
(1)酵素が配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼであり、該酵素をソフトバイオマスに接触させる工程を含む、ソフトバイオマスの分解方法。
(2)エキソ型セルラーゼがExgSである上記(1)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(3)さらに、酵素が配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼであり、該酵素をソフトバイオマスに接触させる工程を含む、上記(1)または(2)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(4)エンド型セルラーゼがEngEである上記(3)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(5)ソフトバイオマスが稲わらである上記(1)〜(4)のいずれかに記載のソフトバイオマスの分解方法。
(6)さらに、酵素が配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼであり、該酵素をソフトバイオマスに接触させる工程を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のソフトバイオマスの分解方法。
(7)プロセッシブ・エンド型セルラーゼがEngKである上記(6)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(8)ソフトバイオマスがバガスである上記(6)または(7)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(9)酵素をソフトバイオマスに接触させる工程が、次の1)〜3)のいずれかを産生する微生物をソフトバイオマスに接触させることによる、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のソフトバイオマスの分解方法。
1)エキソ型セルラーゼ
2)エキソ型セルラーゼ及びエンド型セルラーゼ
3)エキソ型セルラーゼ、エンド型セルラーゼ及びプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
(10)微生物がクロストリジウム セルロボランス(Clostridium cellulovorans)である、上記(9)に記載のソフトバイオマスの分解方法。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のソフトバイオマスの分解方法によってソフトバイオマスを分解する工程を含む、ソフトバイオマスから標的物質を製造する方法。
(12)標的物質が、エタノール、酢酸、酪酸、乳酸、蟻酸、水素から選択されるいずれか一種以上である、上記(11)に記載の方法。
(13)次の1)〜3)のいずれか一種以上を含む、ソフトバイオマスを分解するための酵素または酵素群。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ
3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
(14)エキソ型セルラーゼがExgSであり、エンド型セルラーゼがEngEであり、プロセッシブ・エンド型セルラーゼがEngKである、上記(13)に記載の酵素または酵素群。
(15)次の1)および2)を少なくとも含む、上記(13)または(14)に記載のソフトバイオマスを分解するための酵素群。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ
(16)ソフトバイオマスが稲わらである上記(15)に記載の酵素群。
(17)次の1)〜3)を少なくとも含む、上記(13)または(14)に記載のソフトバイオマスを分解するための酵素群。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ
3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
(18)ソフトバイオマスがバガスである上記(17)に記載の酵素群。
(19)次の1)および2)を少なくとも含む、上記(13)または(14)に記載のソフトバイオマスを分解するための酵素群。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
(20)次の1)および2)を少なくとも5:95〜95:5の割合で含む、上記(13)または(14)に記載のソフトバイオマスを分解するための酵素群。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
本発明により、前処理等を必要とせず、簡便な手順により、ソフトバイオマスを直接分解し、また、エタノール等の有用な物質を製造することが可能となる。また、本発明により、ソフトバイオマスの種類に応じて有用に作用し得る酵素や酵素群を提供することも可能となる。
C.cellulovoransにおける、ソフトバイオマスを原料とした標的物質の産生結果を示した図である(実施例1)。 SDS−PAGEの結果を示した図である(実施例2)。 A.CBB染色の結果を示した図である(実施例3)。B.ウエスタンブロットの結果を示した図である(実施例3)。 p−ニトロフェニル−β−グルコトシドに対する定性的な酵素活性の結果を示した図である(実施例3)。 ASC活性の評価結果を示した図である。(実施例3)。 酵素の相乗作用の結果を示した図である(実施例4)。 セロビオース存在下での酵素の相乗作用の結果を示した図である(実施例5)。
本発明における「ソフトバイオマスの分解方法」とは、稲わら、バガス等の従来知られているソフトバイオマスに含まれるセルロースを酵素によって分解するための方法のことをいう。
本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」は、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」であればよく、その他の工程を含んでいても良い。
ここで、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」において、「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と他のアミノ酸配列を、可能な限り多数のアミノ酸残基が相互に一致するように並列させて比較した場合に、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上のアミノ酸残基が同一であるアミノ酸配列を意味する。ここで、アミノ酸配列を並列させる際には、最大の同一性を与えるようにギャップを含んでもよい。
また、この「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」は、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であればよいが、さらに、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列、85%以上の同一性を有するアミノ酸配列も、本発明の「同一性を有するアミノ酸配列」に含むことができ、特に、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」が好ましいアミノ酸配列とされる。
さらに、この「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」には、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」を含むことができる。このようなアミノ酸配列としては、基準となる配列番号2で示されるアミノ酸配列と比較して、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。更に好ましくは1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。
このようなアミノ酸配列を含む酵素として、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 48(GH48)のExgS等が挙げられる。
このExgSは、配列番号1で示される塩基配列によってコードされている。本発明において、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」は塩基配列によっても特定することができる。該エキソ型セルラーゼをコードする塩基配列であれば、配列番号1で示される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列、85%以上の同一性を有する塩基酸配列、90%以上の同一性を有する塩基配列、さらには95%以上の同一性を有する塩基配列も、本発明の「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」をコードする塩基配列に含まれる。
さらに、本発明における「ソフトバイオマスの分解方法」は「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」であってもよく、その他の工程を含んでいても良い。
ここで、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」において、「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」とは、配列番号4で示されるアミノ酸配列と他のアミノ酸配列を、可能な限り多数のアミノ酸残基が相互に一致するように並列させて比較した場合に、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上のアミノ酸残基が同一であるアミノ酸配列を意味する。ここで、アミノ酸配列を並列させる際には、最大の同一性を与えるようにギャップを含んでもよい。
また、この「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」は、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であればよいが、さらに、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列、85%以上の同一性を有するアミノ酸配列も、本発明の「同一性を有するアミノ酸配列」に含むことができ、特に、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」が好ましいアミノ酸配列とされる。
さらに、この「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」には、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」を含むことができる。このようなアミノ酸配列としては、基準となる配列番号4で示されるアミノ酸配列と比較して、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。更に好ましくは1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。
このようなアミノ酸配列を含む酵素として、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 5(GH5)のEngE等が挙げられる。
このEngEは、配列番号3で示される塩基配列によってコードされている。本発明において、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」は塩基配列によっても特定することができる。該エンド型セルラーゼをコードする塩基配列であれば、配列番号3で示される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列、85%以上の同一性を有する塩基酸配列、90%以上の同一性を有する塩基配列、さらには95%以上の同一性を有する塩基配列も、本発明の「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」をコードする塩基配列に含まれる。
さらに、本発明における「ソフトバイオマスの分解方法」は「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」であってもよく、その他の工程を含んでいても良い。
ここで「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」において、「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」とは、配列番号6で示されるアミノ酸配列と他のアミノ酸配列を、可能な限り多数のアミノ酸残基が相互に一致するように並列させて比較した場合に、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上のアミノ酸残基が同一であるアミノ酸配列を意味する。ここで、アミノ酸配列を並列させる際には、最大の同一性を与えるようにギャップを含んでもよい。
また、この「90%以上の同一性のあるアミノ酸配列」は、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であればよいが、さらに、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列、85%以上の同一性を有するアミノ酸配列も、本発明の「同一性を有するアミノ酸配列」に含むことができ、特に、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」が好ましいアミノ酸配列とされる。
さらに、この「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」には、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」を含むことができる。このようなアミノ酸配列としては、基準となる配列番号6で示されるアミノ酸配列と比較して、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。更に好ましくは1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。
このようなアミノ酸配列を含む酵素として、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 9(GH9)のEngK等が挙げられる。
このEngKは、配列番号5で示される塩基配列によってコードされている。本発明において、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」は塩基配列によっても特定することができる。該プロセッシブ・エンド型セルラーゼをコードする塩基配列であれば、配列番号5で示される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列、85%以上の同一性を有する塩基酸配列、90%以上の同一性を有する塩基配列、さらには95%以上の同一性を有する塩基配列も、本発明の「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」をコードする塩基配列に含まれる。
本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」において、「酵素をソフトバイオマスに接触させる」とは、ソフトバイオマスを分解するために酵素が作用し得るように、酵素をソフトバイオマスに接触させることをいう。
ここで、本発明における「ソフトバイオマス」とは、稲わら、バガス、麦わら、籾殻、エリアンサス、ミスカンサス、ネピアグラス、ソルガム、コーンストバー等のソフトバイオマスそのもの、または、これらをそのまままたは適切な大きさに裁断して水、バッファー等の溶媒に懸濁したもの(ソフトバイオマス懸濁液)等のことをいう。
また、これらのソフトバイオマスやソフトバイオマス懸濁液に、KHPO・3H、NHCl、KCl、MgSO・7H0、L−cysteine hydrochloride monohydrate、Trypton、yeast extract、trace metal solution等の成分を加えて、本発明の実施例と同様に調製した、基質が稲わらの培地や基質がバガスの培地等も本発明の「ソフトバイオマス」に含むことができる。
酵素をソフトバイオマスに接触させる方法としては、ソフトバイオマスを分解するために酵素が作用し得るように酵素がソフトバイオマスに接触する方法であればよく、従来知られているいずれの方法であってもよい。
例えば、本発明の「ソフトバイオマス」がソフトバイオマスそのもの、またはソフトバイオマスを適切な大きさに裁断しただけのものである場合には、酵素または酵素を含む溶液に該ソフトバイオマスを浸漬する、酵素または酵素を含む溶液を該ソフトバイオマスに注射等によりインジェクションする、酵素または酵素を含む溶液を該ソフトバイオマスに振りかける等の方法が挙げられる。また、酵素をソフトバイオマスに接触させる際、または接触させた後に、必要に応じて、減圧、加圧等の圧力処理により、酵素をソフトバイオマスの中に浸透させてもよい。
本発明の「ソフトバイオマス」が、基質が稲わらである培地や、基質がバガスである培地等の場合には、該培地に酵素または酵素を含む溶液を添加する、該培地と酵素または酵素を含む溶液を混合する等の方法が挙げられる。
なお、この「酵素をソフトバイオマスに接触させる」方法には、酵素または酵素を含む溶液に限らず、該酵素または酵素群を産生する微生物を上記と同様の方法等でソフトバイオマスに接触させる方法も含まれる。
これらの「酵素をソフトバイオマスに接触させる」方法は、酵素が「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」でも、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」でも、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」であも同様であり、これらを酵素群としてソフトバイオマスに接触させる場合であっても同様である。
本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」では、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含んでいても良い。
この工程では、それぞれの酵素がソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で接触できればよく、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5等の割合で接触させても良い。
これらの酵素は上記に列挙したような方法でソフトバイオマスに接触させることができる。これらの接触にあたり、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させた後に、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を該ソフトバイオマスに接触させてもよい。この場合、酵素のソフトバイオマスへの接触の順番は逆であってもよい。
また、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」とを同時にソフトバイオマスに接触させてもよい。
さらに、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスと、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスとをそれぞれ作成した後、両者を混合してもよい。
これらの接触方法には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を産生する微生物と、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を産生する微生物とをそれぞれソフトバイオマスに接触させる場合が含まれる。
また、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」とを産生する微生物をソフトバイオマスに接触させる場合も含まれる。
「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」において、各酵素または酵素群を接触させるソフトバイオマスは従来知られているいずれのものであってもよいが、稲わらであることが特に好ましい。
また、本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」では、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含んでいても良い。この工程では、それぞれの酵素がソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で接触できれば良い。
これらの酵素は上記に列挙したような方法でソフトバイオマスに接触させることができる。これらの接触には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させた後に、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を該ソフトバイオマスに接触させて、その後さらに、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を該ソフトバイオマスに接触させてもよい。この場合、酵素のソフトバイオマスへの接触の順番はいずれであってもよい。
また、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とを同時にソフトバイオマスに接触させてもよい。
さらに、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマス、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスと、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスとをそれぞれ作成した後、これらを混合してもよい。
これらの接触方法には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を産生する微生物、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を産生する微生物と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を産生する微生物をそれぞれソフトバイオマスに接触させる場合が含まれる。
また、これらの接触方法には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」とを産生する微生物、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とを産生する微生物、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とを産生する微生物をそれぞれソフトバイオマスに接触させる場合も含まれる。
さらに、これらの接触方法には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」のいずれも産生する微生物をソフトバイオマスに接触させる場合も含まれる。
「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」において、各酵素または酵素群を接触させるソフトバイオマスは従来知られているいずれのものであってもよいが、バガスであることが特に好ましい。
さらに、本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」では、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含んでいても良い。
この工程では、それぞれの酵素がソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で接触できればよく、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5等の割合で接触させても良い。
これらの酵素は上記に列挙したような方法でソフトバイオマスに接触させることができる。これらの接触にあたり、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」をソフトバイオマスに接触させた後に、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を該ソフトバイオマスに接触させてもよい。この場合、酵素のソフトバイオマスへの接触の順番は逆であってもよい。
また、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とを同時にソフトバイオマスに接触させてもよい。
さらに、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスと、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を接触させたソフトバイオマスとをそれぞれ作成した後、両者を混合してもよい。
これらの接触方法には、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」を産生する微生物と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を産生する微生物とをそれぞれソフトバイオマスに接触させる場合が含まれる。
また、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とを産生する微生物をソフトバイオマスに接触させる場合も含まれる。
「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とをソフトバイオマスに接触させる工程を含む「ソフトバイオマスの分解方法」において、各酵素または酵素群を接触させるソフトバイオマスは稲わら、バガス等の従来知られているいずれのものであってもよい。
本発明における、次の1)〜3)のいずれかを産生する微生物をソフトバイオマスに接触させることによる、ソフトバイオマスの分解方法において、該微生物は、次の1)〜3)のいずれかを産生する微生物であれば、従来知られているいずれの微生物であってもよいが、セルロソームを構築できる微生物であることが好ましい。セルロソームを構築できる微生物である、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)であることが特に好ましい。
なお、次の1)〜3)において「エキソ型セルラーゼ」とは「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」のことを指し、「エンド型セルラーゼ」とは「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」のことを指し、また、「プロセッシブ・エンド型セルラーゼ」とは「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」のことを指す。
1)エキソ型セルラーゼ
2)エキソ型セルラーゼ及びエンド型セルラーゼ
3)エキソ型セルラーゼ、エンド型セルラーゼ及びプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
本発明の「ソフトバイオマスから標的物質を製造する方法」は、本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」によってソフトバイオマスを分解する工程を含んでいればよく、その他の工程を含んでいても良い。本発明の「ソフトバイオマスから標的物質を製造する方法」は、ソフトバイオマスを分解した後、分解によって得られた糖等を発酵し、そのまま標的物質を製造できる方法であることが好ましい。
本発明における「標的物質」とは、本発明の「ソフトバイオマスの分解方法」を経て得られる化合物等であればいずれのものであっても良い。例えば、エタノール、酢酸、酪酸、乳酸、蟻酸、水素等を本発明の「標的物質」として挙げることができる。
本発明の「ソフトバイオマスを分解するための酵素または酵素群」とは、稲わら、バガス等のソフトバイオマスを分解できる酵素または酵素群のことをいい、ソフトバイオマスに含まれるセルロースをグルコース等に分解する酵素または酵素群等が挙げられる。
この本発明の「酵素または酵素群」は、次の1)〜3)のいずれか一種以上を含む酵素または酵素群であればよい。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
2)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ
3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
このうち、「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 48(GH48)のExgS等が挙げられる。
また、「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 5(GH5)のEngE等が挙げられる。
さらに、「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」としては、例えば、クロストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)等を由来とする、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するGlycosyl Hydrolase family 9(GH9)のEngK等が挙げられる。
上記のうち、ソフトバイオマスを分解するための「酵素群」として、上記1)および2)を少なくとも含む酵素群が挙げられる。この酵素群において、上記1)および2)の各酵素はソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で含まれていればよく、例えば、上記1)の「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と上記2)の「配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼ」を5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65,40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5等の割合で含んでいても良い。このような「酵素群」が分解するソフトバイオマスは、従来知られるいずれのソフトバイオマスであってもよいが、稲わらであることが特に好ましい。
また、ソフトバイオマスを分解するための「酵素群」として、上記1)〜3)を少なくとも含む酵素群も挙げられる。この酵素群において、上記1)〜3)の各酵素はソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で含まれていれば良い。このような「酵素群」が分解するソフトバイオマスは、従来知られるいずれのソフトバイオマスであってもよいが、バガスであることが特に好ましい。
さらに、ソフトバイオマスを分解するための「酵素群」として、上記1)および3)を少なくとも含む酵素群も挙げられる。この酵素群において、上記1)および3)の各酵素はソフトバイオマスの分解にあたり最適な割合で含まれていればよく、例えば、上記1)の「配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ」と上記3)の「配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ」を5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5等の割合で含んでいても良い。このような「酵素群」が分解するソフトバイオマスは、稲わら、バガス等の従来知られるいずれのソフトバイオマスであってもよい。
なお、これらの「酵素群」は、稲わら、バガス等のソフトバイオマスを分解するために作用する際に、セルロソームを構築していることが特に望ましい。
以下、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
<C.cellulovoransにおける、ソフトバイオマスを原料とした標的物質の産生>
1.培地
1)基質が稲わらの培地
非特許文献2を参照して、以下の(1)〜(4)の工程により、0.5%(w/v)の基質が稲わらの培地を調製した。
(1)KHPO・3H0,1g;NHCl,1g;KCl,0.5g;MgSO・7H0,0.5g;L−cysteine hydrochloride monohydrate,0.15g;Trypton,0.5g;yeast extract,0.5g;稲わら,5g;trace metal solution,20ml;resazurin,0.001gを蒸留水で溶解して1Lに調整した。
(2)上記(1)工程の後、4M NaOHでpH7に調整し、resazurinが還元される(培地の色が赤色から黄色に変わる)まで沸騰させながら、COガスを吹き込んだ。
(3)上記(2)の工程の後、フラスコに栓をして、オートクレーブで滅菌した。
(4)上記(3)の工程の後、10%(wt/vol)NaCOと1.5%(w/v)NaS 9HOを含む混合溶液0.05mlを加えて、pH7.2とした。これにより、0.5%(w/v)の基質が稲わらの培地を得た。
2)前培養用培地
上記1)基質が稲わらの培地の調製方法において、稲わらを除いて(1)〜(3)の工程を行った後、セロビオースを終濃度が0.3%(w/v)となるように添加した。これにより、セロビオースを含む前培養用培地を調製した。
2.試料の調製
1)上記1.2)の前培養用培地でクリストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)を37℃、1日間前培養した。
2)上記1)の培養後の培地の一部をそれぞれ、上記1.1)の基質が稲わらの培地に投入して、さらに37℃で1ヶ月間静置培養を行った。
3)上記2)の培養後遠心分離(15,000xg、15分、4℃)にて培養上清を回収し、Millex−LH(0.45μm)でフィルターろ過し、1μLをガスクロマトグラフィーに供した。
ガスクロマトグラフィーのカラムはRT(登録商標)−Q−BOND(RESTEK製)を用い、SPL温度を250℃、カラム温度を150℃、FID温度を250℃として、キャリヤーガスとしてNを線速度30cm/secで流し、エタノールおよびブタノール濃度を測定した。
その結果、図1に示したように、C.cellulovoransにおいて、基質が稲わらの培地においてエタノールが90.229ppmの濃度で検出された。従って、この結果より、C.cellulovoransが稲わらを分解し、発酵することにより、実バイオマスである稲わらから直接エタノールを生産できることが示唆された。
<基質に応じて適切に作用する酵素または酵素群の特定>
1.培地
1)基質がバガスの培地
稲わらではなく、バガス,5gを基質とした以外は、実施例1の基質が稲わらの培地の調製方法と同様に、0.5%(w/v)の基質がバガスの培地を調製した。
2)基質が稲わらの培地
実施例1と同様の方法により、0.5%(w/v)の基質が稲わらの培地を調製した。
3)前培養用培地
実施例1と同様の方法により、0.3%(w/v)のセロビオースを含む前培養用培地を調製した。
2.試料の調製
1)上記1.3)の前培養用培地でクリストリジウム セルロボランス(C.cellulovorans)を37℃、1日間前培養した。
2)上記1)の培養後の培地の一部をそれぞれ、上記1.1)の基質がバガスの培地、または上記1.2)の基質が稲わらの培地に投入して、さらに37℃で一定時間静置培養を行った。
3)上記2)の培養後の培地より遠心分離によって培養上清を回収し、硫安沈殿法により培養上清に含まれる全てのタンパク質を沈殿させた。沈殿したタンパク質を洗浄した後、Tris−HCl Buffer(pH7.5)に溶解し、タンパク質溶液を得た。
4)上記3)のタンパク質溶液を上清画分とし、さらに上清画分にセルロースとしてAvicel(登録商標)PH−101(シグマ・アルドリッジ製)(以下、Avicelと示す場合がある)を加え、4℃で1時間保温し、遠心沈殿でAvicelと上清を分離した。この上清部分をセルロース非吸着画分(以下、非吸着画分とする場合がある)とした。また、沈殿したAvicelに吸着しているタンパク質をSDS−SampleBufferに溶解し、これをセルロース吸着画分(以下、吸着画分とする場合がある)とした。
3.SDS−PAGE
上記2.で調製した試料(上清画分、セルロース非吸着画分、およびセルロース吸着画分)をそれぞれSDS−PAGEで分離し、CBB染色を行った。SDS−PAGE及びCBB染色は常法に従って行った。
SDS−PAGEにおいて特に濃く見られたバンドを選択し、バカスおよび稲わらの吸着画分において、これらに共通して見られた濃いバンド(図1、B1、B4、R1、R2)と、バガスの吸着画分において、顕著に濃く見られたバンド(図1、B2)、さらにほぼバガスの吸着画分のみに濃く見られたバンド(図1、B3)をそれぞれ切り出し、滅菌蒸留水でCBB脱色液を洗い流した。
4.タンパク質の特定
上記3.にて切り出したそれぞれのバンドに含まれるタンパク質のアミノ酸配列を高速液体クロマトグラフ質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 LTQ Orbitrap Velos ETD)にて決定した。
決定されたアミノ酸配列をC.cellulovoransゲノム配列と照合し、各バンドに含まれるタンパク質を特定し、結果を表1に示した。
5.解析結果
B1、R1は同じ位置のバンドであり、ピルビン酸フェレドキシオキドレダクターゼ(pyruvate ferredoxin/flavodoxin oxidoreductase)をタンパク質として含んでいることが特定された。ピルビン酸フェレドキシオキドレダクターゼは、ピルビン酸から酢酸とATPを生産するために使われる一般的な嫌気性菌の代謝酵素である。
B2は、配列表において、配列番号4のアミノ酸配列で示されるGlycosyl Hydrolase family5(GH5)のEngEをタンパク質として含んでいることが特定された。
EngEはエンド型セルラーゼであり、ゲノム解析において、C.cellulovoransゲノム中のセルロソーム遺伝子クラスター外に存在する主要なエンドグルカナーゼであることが確認されている。さらに、図1において、基質が稲わらの培地由来の試料においても同じ位置にバンドが確認されることから、EngEがセルロソームの主要構成成分である可能性が高いと考えられた。
また、B3は、配列表において、配列番号6のアミノ酸配列で示されるGlycosyl Hydrolase family9(GH9)のEngKをタンパク質として含んでいることが特定された。
EngKは、プロセッシブ・エンド型セルラーゼであり、ゲノム解析において、C.cellulovoransゲノム中のセルロソーム遺伝子クラスターに含まれることが確認されている。EngKはCBMを保有しているがCbpAのCBMとはファミリーが異なる(CbpAのファミリー:CBM3、EngKのファミリー:CBM4_9)。
さらに、B4、R2も同じ位置のバンドであり、配列表において、配列番号2のアミノ酸配列で示されるGlycosyl Hydrolase family48(GH48)のExgSをタンパク質として含んでいることが特定された。
ExgSは、エキソ型セルラーゼであり、ゲノム解析において、C.cellulovoransゲノム中のセルロソーム遺伝子クラスターに含まれるセルロソーマル酵素であることが確認されている。ExgSはCBM(セルロース結合モジュール)を保有していないことから、CbpAのCBMがAvicelに吸着し、吸着したCbpAのcohesinドメインにExgSのdockerinドメインが結合した状態で回収されたことが示唆された。
なお、C.cellulovoransのゲノム解析において、セルロソーム遺伝子クラスターでは、ExgS、EngH、その後にEngKという順番に酵素がコードされているが、今回の系ではEngHは検出されなかった。
したがって、これらの結果より、稲わらの分解には、配列番号2のアミノ酸配列で示されるエキソ型セルラーゼ(ExgS)と、配列番号4のアミノ酸配列で示されるエンド型セルラーゼ(EngE)が重要であることが示唆された。
また、バガスの分解には、配列番号2のアミノ酸配列で示されるエキソ型セルラーゼ(ExgS)、配列番号4のアミノ酸配列で示されるエンド型セルラーゼ(EngE)と、配列表配列番号6のアミノ酸配列で示されるプロセッシブ・エンド型セルラーゼ(EngK)が重要であることが示唆された。
<酵素の相乗作用の確認−1>
1.BglA、ExgSおよびEngKの各酵素発現の確認
以下の1)〜5)の工程により、大腸菌E.coliを宿主として、組換えBglA、ExgSおよびEngKをそれぞれ発現した。
1)低温発現用ベクターであるpCold−TF(タカラバイオ)の可溶化タグであるTrigger factorの下流にbglA(配列番号7)、exgS(配列番号1)またはengK(配列番号5)をそれぞれ挿入し、発現用ホストE.coli origamiに遺伝子導入した。
2)上記1)の遺伝子導入したE.coli origamiについて、コロニーダイレクトPCR法により、各遺伝子が導入されたコロニーをスクリーニングし、5ml LB培地(アンピシリン添加(終濃度100μg/ml))に接種した。
3)上記2)の各遺伝子が導入されたコロニーを、37℃、180rpmで6時間培養した後、培養液1mlを500ml 2×YT培地(アンピシリン添加(終濃度100μg/ml))に接種した。
対数増殖期(OD600=0.45〜0.5)に達したところで15℃、180rpmで30分間保温した後、終濃度1.0mMとなるようIPTGを加えタンパク質発現を誘導し、15℃、180rpmで24時間保温した。
4)上記3)の蛋白質発現が誘導された各菌を、遠心沈殿(10,000×g,、4℃、10分)で集菌し、8mlの20mM リン酸バッファー(pH7.4、500mM NaCl、10mM Imidazole)に懸濁した。
温度が上がらないよう氷冷しながらおよそ300秒間ソニケーションし、懸濁液を遠心沈殿(20,000×g、4℃、30分)し、上清を可溶性画分とした。沈殿を8mlの同リン酸バッファーに懸濁し、沈殿をソニケーションし不溶性画分とした。
5)上記4)において得られたそれぞれの画分をSDS−PAGEに供し、CBB染色および免疫染色で目的タンパク質の有無を確認した。
その結果、図3、AにCBB染色の結果として示したように、可溶性画分において各タンパク質(BglA、ExgSまたはEngK)が発現しており、発現量が増大していることが確認された。
また、この各タンパク質(BglA、ExgSまたはEngK)に対し、常法により、抗His抗体によってウエスタンブロットした結果を図3、Bに示した。その結果、不溶性画分において各タンパク質(BglA、ExgSまたはEngK)の発現が抑えられていることが確認された。
2.ExgSおよびEngKの酵素活性の測定
上記1.において得られたそれぞれの可溶性画分における定性的な酵素活性を、以下の1)または2)によりそれぞれ評価した。
1)β−Glucosidase活性は、10mM p−ニトロフェニル−β−グルコトシド溶液1mlに各タンパク質(BglA、ExgSまたはEngK)の可溶性画分を10μl添加し、37℃で5分間保温した後、溶液の色の変化を観察することで評価した。
2)セルラーゼ活性は、次のように評価した。
1.5mlチューブに分注した490μlの20mM リン酸バッファー(pH7.4、500mM NaCl、10mM Imidazole)に、5%(w/v)リン酸膨潤Avicel(acid swollen cellulose:ASC)を加え、酵素溶液を表2に示した通りに加えた。
その後、37℃、180rpmで18時間保温した後、DNS法を用いて遊離した還元糖量を測定した。
p−ニトロフェニル−β−グルコトシドに対する定性的な酵素活性の結果を図4に示した。その結果、図4に示されるように、試験区b(bglA遺伝子を導入した大腸菌(形質転換体)から得られた可溶性画分を加えたもの)のみが黄色に発色したことから、この形質転換体にのみβ−glucosidase活性が認められた。
また、ASC活性の評価結果の結果を図5に示した。その結果、図5に示されるように、ExgS(GH family 48)は単独ではほぼセルラーゼ活性を示さなかった。一方、EngK(GH family 9)単独ではごくわずかにセルラーゼ活性を示した。さらに、両者を混合することでASCの分解に相乗効果が見られ、還元糖の優位な増加による高いセルラーゼ活性が検出された。
従って、これらの結果から、組換え体のExgSおよびEngKはβ−glucosidase活性は有さなかったが、両者を組み合わせることにより、高いセルラーゼ活性を示すことが確認できた。
<酵素の相乗作用の確認−2>
1.ExgS、EngEおよびEngKの各酵素発現の確認
以下の1)〜5)の工程により、大腸菌E.coliを宿主として、組換えExgS、EngEおよびEngKをそれぞれ発現した。
1)低温発現用ベクターであるpCold−I(タカラバイオ)にexgS(配列番号1)、engE(配列番号3)またはengK(配列番号5)をそれぞれ挿入し、発現用ホストE.coli origamiに遺伝子導入した。
2)上記1)の遺伝子導入したE.coli origamiについて、コロニーダイレクトPCR法により、各遺伝子が導入されたコロニーをスクリーニングし、5ml LB培地(アンピシリン添加(終濃度100μg/ml))に接種した。
3)上記2)の各遺伝子が導入されたコロニーを、37℃で10時間培養した後、培養液1mlを500ml 2×YT培地(アンピシリン添加(終濃度100μg/ml))に接種し、対数増殖期(OD600=0.5)に達するまで、140rpmで振盪培養した。その後、速やかに4℃に冷却して30分放置した後、終濃度0.5mMとなるようIPTGを加えタンパク質発現を誘導し、15℃、140rpmで24時間保温した。
4)上記3)の蛋白質発現が誘導された各菌を、遠心沈殿(8,000×g、4℃、10分)で集菌し、5mlの50mMリン酸カリウムバッファー(pH6.3)に懸濁した。
温度が上がらないよう氷冷しながらおよそ300秒間ソニケーションし、懸濁液を遠心沈殿(1,000×g、3分)し細胞断片等を除去した後、15,000×g、60分間遠心沈殿して不溶性画分を回収した。不溶性画分のペレットに0.1mM Tris/HClバッファー(pH7.4、8M Urea)を加え、沈殿をソニケーションによって完全に懸濁した後、4℃で24時間保温し変性・可溶化させた。
5)上記4)において得られたそれぞれの画分をSDS−PAGEに供し、CBB染色により目的タンパク質の有無を確認した。その結果、各タンパク質(ExgS、EgEまたはEngK)の多くが不溶性画分で発現していることが確認された。
2.酵素の精製
上記1.において、8M尿素(和光純薬)で可溶化しなかった各酵素のタンパク質を遠心沈殿(15,000×g、60min)で除去し、再生セルロース膜による透析を4℃で24時間行った。この透析ではリフォールディングbuffer(20mM Tris/HCl pH7.0、1.5mM cellobiose(和光純薬))を4回交換した。
不溶化したタンパク質を、再度遠心沈殿(15,000×g、60min)によって除去した後、10%ストレプトマイシン(和光純薬)溶液(0.15ml/ml)を加え、4℃で1時間保温した後、遠心沈殿(15,000×g、60min)で沈殿物を除去した。
その後、SDS−PAGEに供し、CBB染色および免疫染色で目的タンパク質の有無を確認した結果、各酵素の精製タンパク質(ExgS、EgEまたはEngK)が得られたことが確認できた。
3.ExgS、EngEおよびEngKの酵素活性の測定
上記2.において精製された各酵素を様々な比で混合し、結晶性セルロースAvicel(Merck)から調製したリン酸膨潤セルロース(ASC:acid swollen cellulose)に対する酵素活性の相乗効果の有無を調べた。
すなわち、1.5mlチューブに1M CaCl2.5μl、20mM 酢酸buffer(pH6.3、2.5mM CaCl)175μl、ASC(セルロース含量2%:セルロース終濃度0.5%)62.5μlを加えて37℃で20分保温した。
これに、上記2.において精製された各酵素をそれぞれ組み合わせ、混合比100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の割合で混合した混合酵素溶液を10μl(終濃度1.6mM)加え、37℃で17時間、140rpmで振盪しながら保温した。この割合は、ExgSの分子量(MW:molecular weight)を80.4kDa、EngEの分子量(MW:molecular weight)を31.5kDa、EngKの分子量(MW:molecular weight)を97.1kDaとして換算し、酵素の終濃度が1.6mMとなるように調整した比であった。17時間反応後、100℃、5分で酵素反応を停止後、溶液中に含まれる還元糖量をDNS法を用いてセロビオース換算で測定した。
その結果、図6、A.に示されるように、ExgSとEngEを組み合わせた場合には、EngEとExgSを75:25の割合で組み合わせのとき(図6、A.S25E75)に最も高い相乗効果が見られた。しかし、図6、B.に示されるように、EngEとEngKを組み合わせた場合には、いずれの割合であっても相乗効果はほとんど見られなかった。そして、図6、C.に示されるようにExgSとEngKの組み合わせた場合には、EngKとExgSを75:25の割合で組み合わせのとき(図6、C.K75S25)に最も高い相乗効果が見られた。
したがって、この結果から、ExgSとEngE、またはExgSとEngKを適切な割合で組み合わせることにより、酵素活性が相乗的に高まることが確認できた。
<酵素の相乗作用の確認−3>
セロビオースはエキソ型セルラーゼ(セロビオヒドラーゼ:cellobiohydrolase)の酵素活性阻害物質として知られており、C. thermocellum由来CelSに関する研究が行われており、セロビオース濃度5%ではその酵素活性は1/10以下になるとの報告がされている。そこで、活性阻害物質であるセロビオース存在下におけるExgS、EngE、EngKの酵素活性の相乗効果への影響を調べた。
すなわち、1.5mlチューブに2.5μl 1M CaCl、18.25μl 40mM Tris/HCl buffer(pH7.0、2.5mM CaCl、0%または0.5%セロビオース(図7:0mg/mlまたは5.0mg/ml))、62.5μl ASC(セルロース含量2%:セルロース終濃度0.5%)を加えて37℃で20分保温した。
その後、上記実施例4、2.と同様に精製したExgS、EngEまたはEngKをそれぞれ混合比100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の割合で混合した混合酵素溶液(終濃度1.6mM)を10μl加え、37℃で17時間保温した。この割合は、ExgSの分子量(MW:molecular weight)を80.4kDa、EngEの分子量(MW:molecular weight)を31.5kDa、EngKの分子量(MW:molecular weight)を97.1kDaとして換算し、酵素の終濃度が1.6mMとなるように調整した比であった。
17時間反応後、100℃、5分で酵素反応を停止させた後、溶液中に含まれる還元糖量をDNS法を用いてセロビオース換算で測定した。
結果を図7に示した。このグラフのy軸は反応溶液中のセロビオース濃度と加えられた酵素のモル数の比が示されており、x軸は加えられた酵素とその比がアルファベットと数値でそれぞれ示されている。x軸のアルファベットはs、e、kがそれぞれExgS、EngE、EngKを示しており、それに続く数値は加えられた酵素1.6mMのうちの、その酵素の比率を表している。例えば、e75k25は、加えられた酵素1.6mMのうち、EngEがその75%、EngKがその25%を占めていることを意味する。
棒グラフの違いは反応液中の初期セロビオース濃度を示しており、黒塗りのバーは初期セロビオース濃度が0mg/mであったもの、点のバーは初期セロビオース濃度5mg/mlであったものを示している。
これらの結果のうち、酵素を単独で加えた場合に対するセロビオース活性の比率と、特にセロビオースによる活性阻害が低かった酵素比率(EngK:ExgS=75:25または50:50)について表3に示した。その結果、単独で酵素を加えた場合には、その活性がExgS、EngE、EngKにおいてそれぞれ19%、8%、10%となり、上述のCelSと同等の活性阻害を受けることが確認できた。しかし、ExgSとEngKの混合比が25:75(図7、k75s25)や50:50(図7、k50s50)の場合には、その活性阻害が緩やかになり、それぞれ44%、41%という高い酵素活性を維持していることが確認できた。
本発明のソフトバイオマスの分解方法は、前処理等を必要としない、簡便な手順によるソフトバイオマスの分解方法として、幅広く活用することができる。また、本発明のソフトバイオマスの分解方法を工程として含むことにより、ソフトバイオマスから、エタノール等の有用な物質を製造することも容易となる。また、ソフトバイオマスの種類に応じて有用に作用し得る酵素や酵素群を提供することもできる。
[図2]
M:タンパク質マーカー、
1:C.cellulovorans培養上清の上清画分(基質:バガス)
2:C.cellulovorans培養上清の上清画分(基質:稲わら)
3:非吸着画分(基質:バガス)
4:非吸着画分(基質:稲わら)
5:吸着画分(基質:バガス)
6:吸着画分(基質:稲わら)
B1、B2,B3,B4、R1、R2:バンド切り出し部分
[図3]
M:Prestained SDS−PAGE standards
b:bglA gene containing transformant
S:exgS gene containing transformant
K:engK gene containing transformant
[図4]
b:bglA gene containing E.coli(origami) soluble fraction
S:exgS gene containing E.coli(origami) soluble fraction
K:engK gene containing E.coli(origami) soluble fraction
N1:20ml phosphate buffer(pH7.4)
N2:E.coli(origami) soluble fraction
[図5]
ExgS:exgS gene containing E.coli(origami) soluble fraction
EngK:engK gene containing E.coli(origami) soluble fraction
ExgS+EngK:exgS gene containing E.coli(origami) soluble fraction + engK gene containing E.coli(origami) soluble fraction
Negative control:20ml phosphate buffer (pH 7.4)
[図6]
A.S100:ExgS 100%、S75E25:ExgS 75%、EngE 25%、S25E75:ExgS 25%、EngE 75%、E100:EngE 100%
B.E100:EngE 100%、E75K25:EngE 75%、EngK 25%、E25K75:EngE 25%、EngK 75%、K100:EngK 100%
C.K100:EngK 100%、K75S25:EngK 75%、ExgS 25%、K25S75:EngK 75%、ExgS 25%、S100:ExgS 100%

Claims (7)

  1. 酵素が配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼであるExgSと、酵素が配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼであるEngE稲わらに接触させる工程を含む、稲わらの分解方法。
  2. 酵素が配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼであるExgSと、酵素が配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエンド型セルラーゼであるEngEと、酵素が配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼであるEngKバガスに接触させる工程を含む、バガスの分解方法。
  3. 酵素を稲わらまたはバガスに接触させる工程が、次の1)〜3)のいずれかを産生する微生物をソフトバイオマスに接触させることによる、請求項1または2に記載のソフトバイオマスの分解方法。
    1)エキソ型セルラーゼ
    2)エキソ型セルラーゼ及びエンド型セルラーゼ
    3)エキソ型セルラーゼ、エンド型セルラーゼ及びプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
  4. 微生物がクロストリジウム セルロボランス(Clostridium cellulovorans)である、請求項に記載のソフトバイオマスの分解方法。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のソフトバイオマスの分解方法によってソフトバイオマスを分解する工程を含む、ソフトバイオマスから標的物質を製造する方法。
  6. 標的物質が、エタノール、酢酸、酪酸、乳酸、蟻酸、水素から選択されるいずれか一種以上である、請求項に記載の方法。
  7. 次の1)および2)を少なくとも5:95〜95:5の割合で含む、稲わらまたはバガスを分解するための酵素群。
    1)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むエキソ型セルラーゼ
    2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上同一性のあるアミノ酸配列を含むプロセッシブ・エンド型セルラーゼ
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