発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書における目的のため、「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記定義のような、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同一のアミノ酸配列を含んでいてもよいし、またはアミノ酸配列変化を含有していてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するもの、即ち、直接もしくは前駆体の形態で核酸によってコードされ得るものであってもよいし、または天然には存在しないものであってもよい、カルボキシαアミノ酸の群を意味する。個々の天然に存在するアミノ酸は、3個のヌクレオチドからなる核酸、いわゆるコドンまたは三つ組塩基によってコードされる。各アミノ酸は、少なくとも1種のコドンによってコードされる。これは「遺伝暗号の縮重」として公知である。「アミノ酸」という用語は、本願において使用されるように、アラニン(3文字記号:ala、1文字記号:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシαアミノ酸を意味する。天然には存在しないアミノ酸の例には、Aad(αアミノアジピン酸)、Abu(アミノ酪酸)、Ach(αアミノシクロヘキサン-カルボン酸)、Acp(αアミノシクロペンタン-カルボン酸)、Acpc(1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸)、Aib(αアミノイソ酪酸)、Aic(2-アミノインダン-2-カルボン酸;2-2-Aicとも呼ばれる)、1-1-Aic(1-アミノインダン-1-カルボン酸)、(2-アミノインダン-2-カルボン酸)、アリルグリシン(アリルGly)、アロイソロイシン(アロ-Ile)、Asu(αアミノスベリン酸、2-アミノオクタン二酸)、Bip(4-フェニル-フェニルアラニン-カルボン酸)、BnHP((2S,4R)-4-ヒドロキシプロリン)、Cha(βシクロヘキシルアラニン)、Cit(シトルリン)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、シクロペンチルアラニン、βシクロプロピルアラニン、Dab(1,4-ジアミノ酪酸)、Dap(1,3-ジアミノプロピオン酸)、p(3,3-ジフェニルアラニン-カルボン酸)、3,3-ジフェニルアラニン、ジ-n-プロピルグリシン(Dpg)、2-フリルアラニン、ホモシクロヘキシルアラニン(HoCha)、ホモシトルリン(HoCit)、ホモシクロロイシン、ホモロイシン(HoLeu)、ホモアルギニン(HoArg)、ホモセリン(HoSer)、ヒドロキシプロリン、Lys(Ac)、(1)Nal(1-ナフチルアラニン)、(2)Nal(2-ナフチルアラニン)、4-MeO-Apc(1-アミノ-4-(4-メトキシフェニル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸)、ノルロイシン(Nle)、Nva(ノルバリン)、オマチン(Omathine)、3-Pal(αアミノ-3-ピリジルアラニン-カルボン酸)、4-Pal(αアミノ-4-ピリジルアラニン-カルボン酸)、3,4,5,F3-Phe(3,4,5-トリフルオロ-フェニルアラニン)、2,3,4,5,6,F5-Phe(2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-フェニルアラニン)、Pqa(4-オキソ-6-(1-ピペラジニル)-3(4H)-キナゾリン-酢酸(CAS 889958-08-1))、ピリジルアラニン、キノリルアラニン、サルコシン(Sar)、チアゾリルアラニン、チエニルアラニン、Tic(αアミノ-1,2,3,4,テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)、Tic(OH)、Tle(tertブチルグリシン)、およびTyr(Me)が含まれるが、これらに限定されない。
「アミノ酸配列バリアント」という用語は、ネイティブ配列ポリペプチドとある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをさす。通常、アミノ酸配列バリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドとの少なくとも約70%の配列同一性を保有するであろう。一態様において、バリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドとの約80%以上の配列同一性を有する。一態様において、バリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドとの約90%以上の配列同一性を有する。一態様において、バリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドとの約95%以上の配列同一性を有する。一態様において、バリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドとの約98%以上の配列同一性を有する。アミノ酸配列バリアントは、ネイティブアミノ酸配列のアミノ酸配列内のある位置に、置換、欠失、および/または挿入を保有する。アミノ酸は、従来の名称、1文字記号、および3文字記号によって表記される。
「抗体」という用語は、本明細書において、最も広義に使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
「抗体断片」という用語は、完全抗体が結合する抗原に結合する完全抗体の一部分を含む、完全抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
「ビオチン」、略して「BI」という用語は、5-[(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル]ペンタン酸を意味する。ビオチンは、ビタミンHまたは補酵素Rとしても公知である。
「二重特異性抗体」という用語は、2種の異なる(抗原/ハプテン)結合特異性を有する抗体を意味する。一態様において、本明細書において報告する二重特異性抗体は、2種の異なる抗原、即ち、ハプテンおよび非ハプテン抗原に特異的である。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の起源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる起源または種に由来する、抗体をさす。
抗体の「クラス」とは、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域の型をさす。抗体の五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2へ分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
「細胞傷害剤」という用語は、本明細書において使用されるように、細胞機能を阻害するかもしくは妨害し、かつ/または細胞の死もしくは破壊を引き起こす物質をさす。細胞傷害剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、またはその他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;断片および/またはバリアントを含む、細菌、真菌、植物、または動物に由来する低分子毒素または酵素活性毒素などの毒素;ならびに以下に開示されている様々な抗腫瘍剤または抗癌剤が含まれるが、これらに限定されない。
「ジゴキシゲニン」、略して「DIG」という用語は、3-[(3S,5R,8R,9S,10S,12R,13S,14S,17R)-3,12,14-トリヒドロキシ-10,13-ジメチル-1,2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,15,16,17-テトラデカヒドロ-シクロペンタ[a]-フェナントレン-17-イル]-2H-フラン-5-オン(CAS番号 1672-46-4)を意味する。ジゴキシゲニン(DIG)は、植物ジギタリス・プルプレア(Digitalis purpurea)、ジギタリス・オリエンタリス(orientalis)、およびジギタリス・ラナタ(lanata)(キツネノテブクロ)の花および葉に排他的に見出されるステロイドである(Polya,G.,Biochemical targets of plant bioactive compounds,CRC Press,New York(2003)p.847)。
「エフェクター機能」という用語は、抗体クラスによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;ならびにB細胞活性化が含まれる。
薬剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」という用語は、所望の治療的または予防的な結果を達成するために(必要な投薬量および期間で)有効な量を意味する。
抗体のパパイン消化は、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2個の同一の抗原結合断片、および残りの「Fc」断片(この名称は容易に結晶化する能力を反映する)を生ずる。ペプシン処理は、2個の抗原結合部位を有しかつ依然として抗原を架橋することができるF(ab')2断片をもたらす。
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域由来の1個または複数個のシステインを含む少数の残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に付加されている点でFab断片と異なる。本明細書において、Fab'-SHとは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1個のフリーのチオール基を保持しているFab'を意味する。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として最初に作製された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
「Fv」とは、完全な抗原認識および抗原結合のための部位を含有している最小抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合的に会合した1個の重鎖と1個の軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。各可変ドメインの3個の超可変領域が相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を画定するのは、この配置においてである。集合的に、6個の超可変領域が、抗体へ抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な超可変領域を3個しか含まないFvの半分)ですら、結合部位全体より親和性は低いが、抗原を認識しそれに結合する能力を有する。
「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部分を含有している免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語には、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域が含まれる。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボキシル末端へ及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもよいし、または存在しなくてもよい。本明細書において特記されない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242に記載されているような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付け系に従う。
「フルオレセイン」、略して「FLUO」という用語は、6-ヒドロキシ-9-(2-カルボキシフェニル)-(3H)-キサンテン-3-オン、あるいは2-(6-ヒドロキシ-3-オキソ-(3H)-キサンテン-9-イル)-安息香酸を意味する。フルオレセインは、レゾルシノールフタレイン、C.I.45350、ソルベントイエロー94、D&Cイエローno.7、アンジオフロール、ジャパンイエロー201、またはソープイエローとしても公知である。
「フレームワーク」、略して「FR」という用語は、超可変領域(HVR)残基以外の重鎖および軽鎖の可変ドメインアミノ酸残基を意味する。可変ドメインのFRは、一般に、4個のFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。従って、VH(またはVL)において、HVRおよびFRの配列は、一般に、以下の順序で現われる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
「フリーのシステインアミノ酸」という用語は、親抗体内に改変されており、チオール官能基(SH)を有しており、かつ分子内ジスルフィド架橋として対になっていない、システインアミノ酸残基を意味する。しかし、フリーのシステインアミノ酸は、例えばグルタチオンによって、分子内ジスルフィド架橋として対になり得る。
「全長抗体」という用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似している構造を有するか、または本明細書において定義されるFc領域を含有している重鎖を有する抗体を意味する。ネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合を形成している2個の同一の軽鎖および2個の同一の重鎖から構成された、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端へ、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて、3個の定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端へ、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて、定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる二つの型のいずれかに割り当てられ得る。
「全長抗体」とは、VLドメインおよびVHドメインを含み、軽鎖定常ドメイン(CL)ならびに重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3も含む抗体である。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。全長抗体は、1種または複数種の「エフェクター機能」を有し得る。「エフェクター機能」とは、抗体のFc定常領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因する生物学的活性をさす。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;ならびにB細胞受容体およびBCRなどの細胞表面受容体のダウンレギュレーションが含まれる。
「ハプテン」という用語は、タンパク質などの大きな担体に結合されたときにのみ免疫応答を誘発することができる、低分子を意味する。例示的なハプテンは、アニリン、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、キノン、ヒスタミン-スクシニル-グリシン(HSG)、ヒドララジン、ハロセン、インジウム-DTPA、フルオレセイン、ビオチン、ジゴキシゲニン、テオフィリン、およびジニトロフェノールである。一態様において、ハプテンは、ビオチンまたはジゴキシゲニンまたはテオフィリンまたはカルボランである。
「に結合体化されたハプテン」または「ハプテン化化合物」という用語は、ポリペプチドまたは標識などのさらなる部分に共有結合したハプテンを意味する。活性化されたハプテン誘導体が、そのような結合体の形成のための出発材料として使用されることが多い。一態様において、ハプテンはジゴキシゲニンであり、それはリンカーを介して(一態様において、3-ヒドロキシ基を介して)当該部分に結合体化されている。一態様において、リンカーは、(a)1個もしくは複数個(一態様において、3〜6個)のメチレン-カルボキシ-メチル基(-CH2-C(O)-)、および/または(b)1〜10個(一態様において、1〜5個)の(一態様において、グリシン、セリン、グルタミン酸、βアラニン、γアミノ酪酸、εアミノカプロン酸、もしくはリジンから選択される)アミノ酸残基、および/または(c)構造式NH2-[(CH2)nO]xCH2-CH2-COOH(式中、nは2もしくは3であり、xは1〜10であり、一態様において、1〜7である)を有する1種もしくは複数種(一態様において、1種もしくは2種)の化合物を含む。最後の要素は、式-NH-[(CH2)nO]xCH2-CH2-C(O)-のリンカー(部分)を(少なくとも部分的に)もたらす。そのような化合物の一例は、例えば、12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸である(TEG(トリエチレングリコール)リンカーをもたらす)。一態様において、リンカーはさらにマレイミド基を含む。そのリンカーは、電荷を含有しておりまたは/かつ水素架橋を形成することができるため、安定化効果および可溶化効果を有する。さらに、それは、ハプテンが結合体化されたポリペプチドへの抗ハプテン抗体の結合を立体的に容易にすることができる。一態様において、リンカーは、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖に位置している(例えば、アミノ基またはチオール基を介してリジンまたはシステインの側鎖に結合体化されている)。一態様において、リンカーは、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に位置している。ポリペプチド上のリンカーの位置は、典型的には、ポリペプチドの生物学的活性が影響を受けない領域において選ばれる。従って、リンカーの結合位置は、生物学的活性を担うポリペプチドおよび関連構造要素の性質に依る。ハプテンが結合されたポリペプチドの生物学的活性は、インビトロアッセイにおいて試験され得る。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外来性の核酸が導入された細胞を(そのような細胞の子孫を含めて)さす。宿主細胞には、初代形質転換細胞、および継代数に関係なくその細胞に由来する子孫を含む、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれる。子孫は、親細胞と核酸内容が完全に同一でなくてもよく、変異を含有していてもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同一の機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書において含まれる。
「ヒト抗体」とは、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくはその他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト起源に由来する抗体のものに相当するアミノ酸配列を保有するものである。非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体は、ヒト抗体のこの定義から特別に除外される。
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体をさす。特定の態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)の全部または実質的に全部が非ヒト抗体のものに相当し、FRの全部または実質的に全部がヒト抗体のものに相当する、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全部を含むであろう。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体をさす。
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書において使用されるように、配列が超可変性であり(「相補性決定領域」もしくは「CDR」)、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原と接触する残基(「抗原接触部」)を含有している抗体可変ドメインの領域の各々をさす。一般に、抗体は、6個のHVRを含み;VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)を含む。
本明細書において、HVRには、以下のものが含まれる。
(a)アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917);
(b)アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242);
(c)アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)、および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)、および94〜102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜化された動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、個体または対象はヒトである。
「単離された」抗体とは、天然環境の成分から分離されているものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定されるような、95%または99%を超える純度にまで精製される。抗体純度の査定の方法の概説については、例えば、Flatman,S.et al.,J.Chrom.B 848(2007)79-87を参照のこと。
「単離された」核酸とは、天然環境の成分から分離されている核酸分子をさす。単離された核酸には、その核酸分子を通常含有している細胞に含有されているが、染色体外または天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子が含まれる。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用されるように、実質的に均質な抗体の集団から入手される抗体をさす。即ち、例えば、天然に存在する変異を含有しているかまたはモノクローナル抗体調製物の作製の間に発生する、可能性のあるバリアント抗体(そのようなバリアントは一般に微量に存在する)を除き、集団を構成する個々の抗体が、同一でありかつ/または同一のエピトープに結合する。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含んでいるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。従って、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から入手されているという抗体の特質を示すものであって、特定の方法による抗体の作製を必要とするものとして解釈されてはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、多様な技術によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法およびその他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
「単一特異性抗体」という用語は、各々が同一の結合特異性を有する、即ち、同一の抗原またはハプテンに結合する、1個または複数個の結合部位を有する抗体を意味する。
「ネイキッド抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識に結合体化されていない抗体をさす。ネイキッド抗体は、薬学的製剤の中に存在し得る。
「パッケージインサート」という用語は、そのような治療用生成物の使用に関する指示、用法、投薬量、投与、組み合わせ治療、禁忌、および/または警告に関する情報を含有している、治療用生成物のコマーシャルパッケージに慣習的に含まれる説明書をさすために使用される。
「親抗体」とは、1個または複数個のアミノ酸残基が1個または複数個のシステイン残基に置換されるアミノ酸配列を含む抗体である。親抗体はネイティブまたは野生型の配列を含み得る。親抗体は、他のネイティブ、野生型、または修飾型の抗体と比べて、既存の(付加、欠失、および/または置換などの)アミノ酸配列修飾を有していてもよい。親抗体はハプテンに特異的に結合する。親抗体は、付加的に、関心対象の標的抗原、例えば、生物学的に重要なポリペプチドに対するものであってもよい。非ポリペプチド抗原に対する抗体も企図される。
「ペイロード」という用語は、その活性が細胞へ送達されかつ/または局在することが望まれる任意の分子または分子の組み合わせを意味する。ペイロードには、標識、細胞毒(例えば、シュードモナス外毒素、リシン、アブリン、ジフテリア毒素等)、酵素、増殖因子、転写因子、薬物、放射性核種、リガンド、抗体、リポソーム、ナノ粒子、ウイルス粒子、サイトカイン等が含まれるが、これらに限定されない。
「化学療法剤」とは、癌の処置において有用な化学物質である。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン(piposulfan)などのアルキルスルホン酸;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロメラミン(trimethylomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルアミルアミン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti-adrenals);フロリン(frolinic)酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウム(elliptinium)アセテート;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン(podophyllinic)酸;2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタクセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rh6ne-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-II;35トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体などの、腫瘍に対するホルモン作用を制御するかまたは阻害するよう作用する抗ホルモン剤も含まれる。
「抗血管新生剤」とは、血管の発達を阻止するか、または血管の発達に、ある程度、干渉する化合物をさす。抗血管新生剤は、例えば、血管新生の促進に関与する増殖因子または増殖因子受容体に結合する低分子または抗体であり得る。抗血管新生因子は、一態様において、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体である。
「サイトカイン」という用語は、細胞間メディエーターとして、他の細胞に作用する、ある細胞集団によって放出されたタンパク質を表す総称的な用語である。そなどのサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および伝統的なポリペプチドホルモンである。ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体化ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝増殖因子;繊維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-aおよび腫瘍壊死因子-P;ミュラー管抑制因子;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-pなどの神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-aおよびTGF-pなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよびインスリン様増殖因子-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-a、インターフェロン-P、およびインターフェロン-yなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(GCSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-la、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12などのインターロイキン(IL);TNF-αまたはTNF-Pなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含むその他のポリペプチド因子が、サイトカインに含まれる。本明細書において使用されるように、サイトカインという用語には、天然起源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質、およびネイティブ配列サイトカインの生物学的活性を有する等価物が含まれる。
「fMLP」という用語は、N-ホルミルメチオニン、ロイシン、およびフェニルアラニンからなるトリペプチドを意味する。一態様において、エフェクター部分は、fMLPまたはその誘導体である。
「プロドラッグ」という用語は、腫瘍細胞に対する細胞傷害性が親薬物と比較して低く、より高活性の親型へ酵素的に活性化または変換され得る、薬学的活性物質の前駆体型または誘導体型をさす。例えば、Wilman,"Prodrugs in Cancer Chemotherapy" Biochemical Society Transactions,Vol.14,615th Meeting Belfast(1986)pp.375-382およびStella,et al.,"Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery",Directed Drug Delivery,Borchardt,et al.,(eds.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照のこと。エフェクター部分として使用され得るプロドラッグには、より高活性の遊離の細胞傷害性薬物へ変換され得る、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾型プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、b-ラクタム含有プロドラッグ、任意で置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意で置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンプロドラッグおよびその他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。本発明において使用するための、プロドラッグ型へ誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例には、本明細書に記載された化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。
「細胞傷害性部分」という用語は、細胞機能を阻害するかもしくは妨害し、かつ/または細胞の死もしくは破壊を引き起こす物質をさす。細胞傷害剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、またはその他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびそれらの断片;抗生物質;断片および/またはバリアントを含む、細菌、真菌、植物、または動物に由来する低分子毒素または酵素活性毒素などの毒素;ならびに本明細書に開示された様々な抗腫瘍剤または抗癌剤が含まれるが、これらに限定されない。
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性(%)」とは、配列を整列させ、最大配列同一性を達成するため、必要であれば、ギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の百分率として定義され、保存的置換は配列同一性の一部分とは見なされない。アミノ酸配列同一率を決定する目的のためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内にある様々な方式で達成され得る。当業者は、比較されている配列の全長における最大のアライメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のため、アミノ酸配列同一性(%)の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムの著者は、Genentech,Inc.であり、ソースコードは、U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559にユーザドキュメンテーションと共に提出され、U.S.Copyright Registration No.TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムにおいて使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータが、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために利用される場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性(%)(あるいは、所定のアミノ酸配列Bに対して、あるアミノ酸配列同一性(%)を有するかまたは含む所定のアミノ酸配列Aとも表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、プログラムによるAおよびBのアライメントにおいて配列アライメントプログラムALIGN-2によって同一マッチとして判定されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性(%)は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性(%)と等しくないことが認識されるであろう。他に特記されない限り、本明細書において使用される全てのアミノ酸配列同一性(%)の値が、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載されたようにして入手される。
「薬学的製剤」という用語は、そこに含有されている活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態にあり、製剤が投与されるであろう対象に対して許容されない程度に毒性である付加的な成分を含有していない調製物をさす。
「薬学的に許容される担体」とは、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分をさす。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
「ポリペプチド」とは、天然に作製されたものであってもよいし、または合成的に作製されたものであってもよい、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸からなる重合体である。約20アミノ酸残基未満のポリペプチドは、「ペプチド」とも呼ばれ、2個以上のポリペプチドからなるか、または100アミノ酸残基を超えるポリペプチドを含む分子は、「タンパク質」とも呼ばれる。ポリペプチドは、炭水化物基、金属イオン、またはカルボン酸エステルなどの非アミノ酸成分も含み得る。非アミノ酸成分は、ポリペプチドが発現される細胞によって付加され得、細胞の型によって変動し得る。ポリペプチドは、アミノ酸骨格構造またはそれをコードする核酸によって本明細書において定義される。炭水化物基などの付加は、一般に明記されないが、にも関わらず、存在し得る。
全てのポリペプチド配列が、αN末端アミノ酸残基が左にあり、αC末端アミノ酸残基が右にある、一般に認められている慣習に従って記述される。本明細書において使用されるように、「N末端」という用語は、ポリペプチド内のアミノ酸のフリーのαアミノ基をさし、「C末端」という用語は、ポリペプチド内のアミノ酸のフリーのa-カルボン酸末端をさす。N末端に、ある基を有するポリペプチドとは、N末端アミノ酸残基のαアミノ窒素上に、ある基を保持しているポリペプチドをさす。N末端に、ある基を有するアミノ酸とは、αアミノ窒素上に、ある基を保持しているアミノ酸をさす。
「D」接頭辞によって示されるか(例えば、D-AlaもしくはN-Me-D-Ile)または小文字フォーマットで記述される場合(例えば、a、i、1)(Ala、Ile、LeuのDバージョン)を除き、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されたポリペプチド内のアミノ酸およびアミノアシル残基のα炭素の立体化学は、天然または「L」配置である。カーン・インゴルド・プレローグ(Cahn-Ingold-Prelog)の「R」および「S」表記は、ポリペプチドのN末端の特定のアシル置換基における不斉中心の立体化学を明記するために使用される。「R,S」という表記は、2種の鏡像異性体のラセミ混合物を示すことを意味する。この命名法は、Cahn,R.S.,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.5(1966)385-415に記載されたものに従う。
「単鎖Fv」、略して「scFv」という用語は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖内に存在する抗体断片を意味する。一態様において、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。scFvの概説については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore(Eds),Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
「テオフィリン」、略して「THEO」という用語は、1,3-ジメチル-7H-プリン-2,6-ジオンを意味する。テオフィリンはジメチルキサンチンとしても公知である。
「処置」という用語(および「処置する」または「処置すること」などのその文法的語尾変化)は、処置されている個体の自然経過を改変することを試みてなされる臨床的介入を意味し、予防のために実施されてもよいし、または臨床病理の経過中に実施されてもよい。処置の望ましい効果には、疾患の発生もしくは再発の防止、症状の寛解、疾患の直接的もしくは間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、疾患進行の速度の減少、疾患状態の改善もしくは緩和、および軽減、または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるかまたは疾患の進行を遅くするために使用される。
「x価」、例えば、「一価」または「二価」または「三価」または「四価」という用語は、明記された数(即ち、「x」)の結合部位が抗体分子に存在することを意味する。従って、「二価」、「四価」、および「六価」という用語は、それぞれ、2個の結合部位、4個の結合部位、および6個の結合部位が抗体分子に存在することを意味する。本明細書において報告する二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」または「多価」(例えば、「四価」もしくは「六価」)であり得る。一態様において、本明細書において報告する二重特異性抗体は、二価または三価または四価である。一態様において、二重特異性抗体は二価である。一態様において、二重特異性抗体は三価である。一態様において、二重特異性抗体は四価である。
特定の局面および態様において、本明細書において報告する抗体は、2個以上の結合部位を有し、二重特異性である。即ち、抗体は、2個を超える結合部位が存在する(即ち、抗体が三価または多価である)場合ですら、二重特異的であり得る。二重特異性抗体という用語には、例えば、多価単鎖抗体、ダイアボディ、およびトリアボディ、ならびに、さらなる抗原結合部位(例えば、単鎖Fv、VHドメインおよび/もしくはVLドメイン、Fab、または(Fab)2)が、1個または複数個のペプチドリンカーを介して連結されている、全長抗体の定常ドメイン構造を有する抗体が含まれる。抗体は、単一の種に由来する全長であってもよいし、またはキメラ化もしくはヒト化されていてもよい。2個を超える抗原結合部位を有する抗体について、タンパク質が2種の異なる抗原のための結合部位を有する限り、いくつかの結合部位が同一であってもよい。即ち、第1の結合部位がハプテンに特異的であって、第2の結合部位が非ハプテン抗原に特異的であるか、またはその逆である。
「可変領域」という用語は、抗体とその抗原との結合に関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインを意味する。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、一般に、類似した構造を有しており、各ドメインが、4個の保存されたフレームワーク領域(FR)および3個の超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt,T.J.et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,N.Y.(2007),page 91を参照のこと)。単一のVHドメインまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分である場合もある。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするため、抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインをそれぞれ使用して単離され得る。例えば、Portolano,S.et al.,J.Immunol.150(1993)880-887;Clackson,T.et al.,Nature 352(1991)624-628を参照のこと。
「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を増やすことができる核酸分子を意味する。その用語には、自己複製性の核酸構造としてのベクターも含まれるし、導入された宿主細胞のゲノムへ組み込まれたベクターも含まれる。特定のベクターは、機能的に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
II. 本明細書において報告する結合体
一局面において、本発明は、抗原内の適切に位置付けられた官能基と、抗体の可変ドメイン内、特に、抗体のCDR2(CDR2はカバットによる重鎖可変ドメイン番号付けに従って決定される)内の官能基を含むアミノ酸残基との間の共有結合の形成によって、抗原と、該抗原に特異的に結合する抗体とを含む共有結合性の結合体を入手可能であるという発見に基づく。
特定の態様において、抗原はハプテンである。一態様において、ハプテンは、ビオチンまたはジゴキシゲニンまたはフルオレセインまたはテオフィリンまたはカルボランである。
一態様において、抗原はハプテン化化合物である。一態様において、ハプテン化化合物は、ハプテンとリンカーとペイロードとを含む結合体である。一態様において、ハプテンは、ビオチンまたはジゴキシゲニンまたはフルオレセインまたはテオフィリンまたはカルボランである。
特定の態様において、官能基は、電子欠乏性二重結合またはチオールを含有し得る。一態様において、官能基はマレイミドまたはシステインである。
本発明の特定の局面において、ジゴキシゲニンに特異的に結合する抗体が提供される。
本発明の特定の局面において、ビオチンに特異的に結合する抗体が提供される。
本発明の特定の局面において、テオフィリンに特異的に結合する抗体が提供される。
本明細書において報告する結合体は、ヒトにおける治療剤として使用され得るため、ジゴキシゲニン、ビオチン、およびテオフィリンに対する上記抗体のヒト化バリアントも、本明細書において提供される。
ハプテン-ポリペプチド結合体(ハプテン化化合物)と抗ハプテン抗体との共有結合性の結合体は、有益な生物物理学的挙動および改善されたPK特性をポリペプチドに付与し得る。さらに、二重特異性抗体が使用される場合、結合体は、二重特異性抗体の第2の結合特異性によって認識される抗原をディスプレイしている細胞へポリペプチドをターゲティングするために使用され得る。そのような結合体は、1個の抗ハプテン結合特異性および1個の(非ハプテン)抗原結合特異性から構成される。抗体とハプテン-ポリペプチド結合体との化学量論比は、二重特異性抗体のフォーマットに依り、1:1、1:2、2:1、2:2、2:4、および4:2(抗体:ハプテン-ポリペプチド)であり得る。
ハプテンに結合体化されていても、抗体に結合体化されていても、ポリペプチドは、良好な生物学的活性を保持していることが望まれる。(二重特異性ターゲティングモジュールの場合)二重特異性抗体の細胞表面標的結合部位が、共有結合的に結合体化されたハプテン化化合物の存在下で、結合特異性および親和性を保持していることも望まれる。
抗原(ハプテン)内の反応基は、例えば、マレイミド、例えば、N-エチルマレイミド(NEM)、ヨードアセトアミド、ピリジルジスルフィド、またはその他の反応性結合体化パートナーなどの任意の反応基であり得る(例えば、Haugland,2003,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley,1992,Bioconjugate Chem.3:2;Garman,1997,Non-Radioactive Labeling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Hermanson,G.in Bioconjugate Techniques(1996)Academic Press,San Diego,pp.40-55 and 643-671を参照のこと)。
抗体上の反応基は、選択的、即ち、位置特異的に生成され得るものに限定される。従って、それは、アミノ酸残基システイン、セリン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸の側鎖基に限定される。
抗体と抗原/ハプテンとの間の共有結合性の結合体の形成のためには、両方の化合物を、反応基の導入によって修飾しなければならない。抗体と抗原/ハプテンとの結合によって2つの反応基が接近し、共有結合の形成が可能になる。一態様において、前記修飾は、化合物の各々へのチオール官能基の導入である。一態様において、チオール化合物はシステイン残基である。
変異させる位置は、以下の二要件を同時に満たさなければならない:(i)指定のカップリングのために抗原/ハプテンのポジショニング効果を利用するため、カップリングの位置は結合領域に近接しているべきであり、かつ(ii)変異およびカップリングの位置は、抗原/ハプテン結合自体が影響を受けないように位置付けられなければならない。要件(i)は、結合部位に近い位置によって最も満たされ、要件(ii)は、結合部位から離れている位置によって最も安全に達成されるため、適当な位置を見出すためのこれらの要件は、事実上、相互に「矛盾」している。
事実上相容れないこれらの要件にも関わらず、ハプテンのポジショニングに影響を与えることなく変異させることが可能であり、にも関わらず、同時に、指定の共有結合性カップリングを可能にする位置が同定された。
第1の位置は、カバットの重鎖可変ドメインの番号付けによる、VH52b位またはVH53位にそれぞれ位置する。抗体が、52a、52c、52c、および52dのような断続的な残基を有していない短いVH CDR2を有する場合、その位置は53である(抗体重鎖可変ドメインについてのカバットの番号付けスキームおよびルールによる番号付けおよびアライメント)。抗体が、残基52aおよび52bを含み、任意で、52cおよび52d等のようなさらなる残基を含む長いVH CDR2を有する場合、その位置は52bである(抗体重鎖可変ドメインについてのカバットの番号付けスキームおよびルールによる番号付けおよびアライメント)。
第2の位置は、カバットの番号付けによるVH28位に位置する。
例えば、抗ジゴキシゲニン抗体構造において、ハプテンは、疎水性残基によって形成された深いポケットに結合している。蛍光性ジゴキシゲニン-Cy5結合体を、この結晶学的研究において使用したところ、蛍光体も、ジゴキシゲニンとCy5との間のリンカーも、結晶における高い柔軟性およびその結果としての障害のため、構造内に可視でなかった。しかしながら、リンカーおよびCy5は、重鎖のCDR2の方向に向いているジゴキシゲニンのO32に結合されている。ジゴキシゲニンのO32と、カバットによる52b位のアミノ酸残基のCαとの間の距離は、約10.5Åである。
それらの位置は「ユニバーサルな」位置であることが見出された。即ち、それらの位置は、任意の(抗ハプテン)抗体に適用可能であり、従って、結晶構造を準備し、ハプテンが位置付けられた共有結合性カップリングを可能にする適切な位置を決定することによる、新しい(抗ハプテン)抗体の修飾を、毎回、最初から開始することは必要とされない。
カバットの番号付けスキームによる変異VH52bCまたはVH53Cは、それぞれ、分析された各ハプテン結合抗体のために予想外に使用され得た。抗体および結合ポケットの構造は極めて多様であるにも関わらず、VH52bC/VH53C変異は、ジゴキシゲニン、ビオチン、フルオレセイン、およびテオフィリンに結合する抗体への抗原/ハプテンの共有結合性結合のために使用され得ることが示された。従って、抗体の重鎖CDR2内にあるカバットによる番号付けによるVH52b/VH53位のアミノ酸残基の、システインへの変化が、構造設計または特定の抗体構造についての知識をさらに必要とすることなく、また、抗体の可変ドメインに固有の結合特性に干渉することなく、他の(抗ハプテン)抗体に適用可能であることが、さらに見出された。
本明細書において報告するように修飾された抗体は、親(即ち、野生型)抗体カウンターパートのハプテン(抗原)結合能力を保持している。従って、改変抗体は、ハプテン(抗原)に結合することができ、一態様において、ハプテン(抗原)に特異的に結合することができる。
「結合特異性」または「に結合する抗体」という用語は、結合特異性を含む分子、または抗体が、さらなる分子との複合体を特異的に形成し得ることを意味する。結合は、プラズモン共鳴アッセイ(BIAcore,GE-Healthcare Uppsala,Sweden)などのインビトロアッセイにおいて検出され得る。複合体形成の親和性は、ka(複合体を形成するための化合物の会合についての速度定数)、kD(解離定数、複合体の解離)、およびKD(kD/ka)という用語によって定義される。結合または特異的結合とは、約10-8M以下、一態様において、約10-8M〜約10-13M、一態様において、約10-9M〜約10-13Mの結合親和性(KD)を意味する。従って、本明細書において報告する複合体を形成するためにハプテンに結合する抗体は、約10-8mol/l以下、一態様において、約10-8mol/l〜約10-13mol/l、一態様において、約10-9mol/l〜10-13mol/lの結合親和性(KD)で、ハプテンに特異的に結合する。
システイン修飾型抗体と、ハプテンとポリペプチドとの間のリンカー内にシステイン残基を保持しているシステイン修飾型ハプテン-ポリペプチド結合体との間の共有結合の形成は、形成される結合がジスルフィド結合である場合、還元剤および/または酸化剤の添加の必要なしに、抗体がハプテンに結合したときに起こることが見出された。従って、2種の化合物の間のジスルフィド架橋は、非共有結合性の複合体の形成によって自然に形成される。従って、本明細書において報告する共有結合複合体の形成のための方法は、2種の化合物の混合のみを必要とする。ジスルフィド結合の形成のための唯一の必要条件は、2種の化合物の相互に対する適切な方向である。
本明細書において報告する改変抗体は、反応基を含むハプテンと部位特異的かつ効率的にカップリングされ得る。
(カバットの番号付けスキームによる)VH52b位およびVH53位のアミノ酸残基のCys残基への置換は、それぞれ、抗ジゴキシゲニン抗体-VH52bCについてはSEQ ID NO:20および28、抗テオフィリン抗体-VH53CについてはSEQ ID NO:84および92、抗ビオチン抗体-VH53CについてはSEQ ID NO:52および60、抗フルオレセイン抗体-VH52bCについてはSEQ ID NO:108に記載されている重鎖可変領域配列を有する抗体誘導体をもたらした。
(カバットの番号付けスキームによる)VH28位の重鎖可変ドメインアミノ酸残基のCys残基への置換は、それぞれ、SEQ ID NO:116、124、132、140、148、156、および164に記載されている重鎖可変領域配列を有する抗体誘導体をもたらした。
本明細書において報告する一局面は、ヒト化抗体である抗ジゴキシゲニン抗体である。
本明細書において報告する一局面において、(a)SEQ ID NO:09または25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)SEQ ID NO:10または26のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)SEQ ID NO:11または27のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)SEQ ID NO:13または29のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)SEQ ID NO:14または30のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(f)SEQ ID NO:15または31のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるCDRを少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個含む、抗ジゴキシゲニン抗体が提供される。
本明細書において報告する一局面は、ヒト化抗体である抗ビオチン抗体である。
本明細書において報告する一局面において、(a)SEQ ID NO:41または57のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)SEQ ID NO:42または58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)SEQ ID NO:43または59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)SEQ ID NO:45または61のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)SEQ ID NO:46または62のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(f)SEQ ID NO:47または64のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるCDRを少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個含む、抗ビオチン抗体が提供される。
本明細書において報告する一局面は、(a)SEQ ID NO:105または113のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)SEQ ID NO:106または114のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)SEQ ID NO:107または115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)SEQ ID NO:109または117のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)SEQ ID NO:110または118のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(f)SEQ ID NO:111または119のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるCDRを少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個含む、抗フルオレセイン抗体である。
本明細書において報告する一局面は、抗テオフィリン抗体である。一態様において、抗テオフィリン抗体はヒト化抗体である。
一態様において、(a)SEQ ID NO:73または89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)SEQ ID NO:74または90のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)SEQ ID NO:75または91のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)SEQ ID NO:77または93のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)SEQ ID NO:78または94のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(f)SEQ ID NO:79または95のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるCDRを少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個含む、抗テオフィリン抗体が提供される。
本明細書において報告する一局面は、(a)(i)SEQ ID NO:09または25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:10または26のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および(iii)SEQ ID NO:11または27のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から選択されるVH CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVHドメインと、(b)(i)SEQ ID NO:13または29のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:14または30のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(c)SEQ ID NO:15または31のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるVL CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVLドメインとを含む、抗ジゴキシゲニン抗体である。
本明細書において報告する一局面は、(a)(i)SEQ ID NO:41または57のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:42または58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および(iii)SEQ ID NO:43または59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から選択されるVH CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVHドメインと、(b)(i)SEQ ID NO:45または61のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:46または6242のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(c)SEQ ID NO:47または63のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるVL CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVLドメインとを含む、抗ビオチン抗体である。
本明細書において報告する一局面は、(a)(i)SEQ ID NO:105または113のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:106または114のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および(iii)SEQ ID NO:107または115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から選択されるVH CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVHドメインと、(b)(i)SEQ ID NO:109または117のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:110または118のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(c)SEQ ID NO:111または119のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるVL CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVLドメインとを含む、抗フルオレセイン抗体である。
本明細書において報告する一局面は、(a)(i)SEQ ID NO:73または89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:74または90のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および(iii)SEQ ID NO:75または91のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から選択されるVH CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVHドメインと、(b)(i)SEQ ID NO:77または93のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(ii)SEQ ID NO:78または94のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および(c)SEQ ID NO:79または95のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3から選択されるVL CDR配列を少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全て含むVLドメインとを含む、抗テオフィリン抗体である。
上記の局面および態様のいずれかにおいて、抗ジゴキシゲニン抗体および/または抗ビオチン抗体および/または抗テオフィリン抗体は、ヒト化されている。
一態様において、抗ジゴキシゲニン抗体は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなCDRを含み、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)をさらに含む。
一態様において、抗ビオチン抗体は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなCDRを含み、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)をさらに含む。
一態様において、抗テオフィリン抗体は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなCDRを含み、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)をさらに含む。
本明細書において報告する別の局面は、SEQ ID NO:04または12または20または28のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む抗ジゴキシゲニン抗体である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有しているが、その配列を含む抗ジゴキシゲニン抗体は、ジゴキシゲニンに結合する能力を保持している。特定の態様において、SEQ ID NO:01または09または17または25において、全部で1〜10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、かつ/または欠失している。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、CDR外の領域(即ち、FR)においてなされる。任意で、抗ジゴキシゲニン抗体は、SEQ ID NO:01または09または17または25のVH配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、SEQ ID NO:08または16または24または32のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗ジゴキシゲニン抗体である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有しているが、その配列を含む抗ジゴキシゲニン抗体は、ジゴキシゲニンに結合する能力を保持している。特定の態様において、SEQ ID NO:08または16または24または32において、全部で1〜10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、かつ/または欠失している。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、CDR外の領域(即ち、FR)においてなされる。任意で、抗ジゴキシゲニン抗体は、SEQ ID NO:08または16または24または32のVL配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、SEQ ID NO:36または44または52または60のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む抗ビオチン抗体である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有しているが、その配列を含む抗ビオチン抗体は、ビオチンに結合する能力を保持している。特定の態様において、SEQ ID NO:36または44または52または60において、全部で1〜10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、かつ/または欠失している。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、CDR外の領域(即ち、FR)においてなされる。任意で、抗ビオチン抗体は、SEQ ID NO:36または44または52または60のVH配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、SEQ ID NO:108または116のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む抗フルオレセイン抗体である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有しているが、その配列を含む抗フルオレセイン抗体は、フルオレセインに結合する能力を保持している。特定の態様において、SEQ ID NO:108または116において、全部で1〜10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、かつ/または欠失している。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、CDR外の領域(即ち、FR)においてなされる。任意で、抗フルオレセイン抗体は、SEQ ID NO:108または116のVH配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、SEQ ID NO:68または76または84または92のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む抗テオフィリン抗体である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有しているが、その配列を含む抗テオフィリン抗体は、テオフィリンに結合する能力を保持している。特定の態様において、SEQ ID NO:68または76または84または92において、全部で1〜10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、かつ/または欠失している。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、CDR外の領域(即ち、FR)においてなされる。任意で、抗テオフィリン抗体は、SEQ ID NO:68または76または84または92のVH配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVHと、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVLとを含む抗ジゴキシゲニン抗体である。一態様において、抗体は、SEQ ID NO:04または12または20または28のVH配列およびSEQ ID NO:08または16または24または32のVL配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVHと、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVLとを含む抗ビオチン抗体である。一態様において、抗体は、SEQ ID NO:36または44または52または60のVH配列およびSEQ ID NO:40または48または56または64のVL配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVHと、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVLとを含む抗フルオレセイン抗体である。一態様において、抗体は、SEQ ID NO:108または116のVH配列およびSEQ ID NO:112または120のVL配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
本明細書において報告する別の局面は、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVHと、上記の局面および/または態様のいずれかのようなVLとを含む抗テオフィリン抗体である。一態様において、抗体は、SEQ ID NO:68または76または84または92のVH配列およびSEQ ID NO:72または80または88または96のVL配列を含む(それらの配列の翻訳後修飾体を含む)。
修飾点として同定されたさらなる位置は、カバット番号付けによるVH28位である。
カバットによるVH28位のアミノ酸のCysへの置換は、抗ジゴキシゲニン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:124および132、抗テオフィリン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:156および164、抗ビオチン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:140および148、抗フルオレセイン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:116として記載されている重鎖可変領域配列を有する抗体誘導体を生成した。
ESI-MS分析は、抗体とハプテン化治療用ペプチドとの共有結合性結合体化が、非複合体化抗体または非複合体化ペプチドより大きい規定のサイズの結合体をもたらすことを証明する。
(表1)TIC表
(1)N末端ピログルタミン酸を有するHC
(2)C末端Lysを有しないHC
(3)脱グリコシル化によりグリコシル化部位にN→Dを有するHC
(4)N末端ピログルタミン酸を有するLC
抗体親和性
特定の態様において、本明細書において報告する抗体自体または本明細書において報告する複合体内の抗体は、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、約10-8M以下、例えば、約10-8M〜約10-13M、例えば、約10-9M〜約10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
一態様において、Kdは、以下のアッセイによって記載されているように、関心対象の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFABの溶液結合親和性は、未希釈抗原の滴定系列の存在下で最小濃度の(125I)-標識抗原によってFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体によってコーティングされたプレートを用いて、結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen,Y.et al.,J.Mol.Biol.293(1999)865-881を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するため、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM 炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)によって一晩コーティングし、その後、室温(およそ23℃)で2〜5時間、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc#269620)において、100pMまたは26pM[125I]-抗原を、関心対象のFabの段階希釈物と混合する(例えば、Presta,L.G.et al.,Cancer Res.57(1997)4593-4599における抗VEGF抗体、Fab-12の査定と一致している)。次いで、関心対象のFabを一晩インキュベートする;しかしながら、インキュベーションは、平衡に到達することを確実にするため、より長い期間(例えば、約65時間)継続されてもよい。その後、混合物を、室温での(例えば、1時間の)インキュベーションのため、捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBS中の0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))によって8回洗浄する。プレートが乾燥した時、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間プレートを計数する。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選ぶ。
別の態様によると、Kdは、およそ10レスポンスユニット(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて、25℃で、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用して、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、測定される。簡単に説明すると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給元の説明書に従って、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化する。抗原を、10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)によって5μg/ml(約0.2μM)へ希釈した後、およそ10レスポンスユニット(RU)のカップリングされたタンパク質を達成するため、流速5μl/分で注入する。抗原の注入の後、未反応の基をブロッキングするため、1Mエタノールアミンを注入する。動力学測定のため、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)によるFabの2倍段階希釈物(0.78nM〜500nM)を、流速およそ25μg/分で25℃で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、会合および解離のセンサーグラムの同時フィッティングによる単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算される。例えば、Chen,Y.et al.,J.Mol.Biol.293(1999)865-881を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M-1s-1を超える場合には、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌子付きキュベットを含む8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)のような分光計において測定されるような、増加する濃度の抗原の存在下での、PBS(pH7.2)中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の25℃における蛍光放出強度(励起=295nm;放射=340nm、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用することによって、オン速度を決定することができる。
抗体断片
特定の態様において、本明細書に提供された抗体または本明細書において報告する結合体内の抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab断片、Fab'断片、Fab'-SH断片、F(ab')2断片、Fv断片、およびscFv断片、ならびに下記のその他の断片が含まれるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概説については、Hudson,P.J.et al.,Nat.Med.9(2003)129-134を参照のこと。scFv断片の概説については、例えば、Plueckthun,A.,In;The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,Rosenburg and Moore(eds.),Springer-Verlag,New York(1994),pp.269-315を参照のこと;WO 93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab断片およびF(ab')2断片の考察については、US 5,869,046を参照のこと。
ダイアボディは二価または二重特異性であり得る、2個の抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 0 404 097;WO 1993/01161;Hudson,P.J.et al.,Nat.Med.9(2003)129-134;およびHolliger,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444-6448を参照のこと。トリアボディおよびテトラボディも、Hudson,P.J.et al.,Nat.Med.9(20039 129-134)に記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部分、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部分を含む抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、US 6,248,516を参照のこと)。
抗体断片は、完全抗体のタンパク質消化、および本明細書に記載されているような、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製され得る。
キメラ抗体およびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書に提供された抗体または本明細書において報告する結合体内の抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、US 4,816,567;およびMorrison,S.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)6851-6855に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルのような非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域とを含む。さらなる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合断片が含まれる。
特定の態様において、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるため、非ヒト抗体がヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはそれらの一部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの一部分)がヒト抗体配列に由来する1個以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含むであろう。いくつかの態様において、例えば、抗体の特異性または親和性を回復するかまたは改善するため、ヒト化抗体内のいくつかのFR残基が、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来した抗体)に由来する対応する残基に置換される。
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro,J.C.and Fransson,J.,Front.Biosci.13(2008)1619-1633に概説され、例えば、Riechmann,I.et al.,Nature 332(1988)323-329;Queen,C.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)10029-10033;米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;(SDR(a-CDR)グラフティングを記載している)Kashmiri,S.V.et al.,Methods 36(2005)25-34;(リサーフェイシング(resurfacing)を記載している)Padlan,E.A.,Mol.Immunol.28(1991)489-498;(「FRシャフリング」を記載している)Dall'Acqua,W.F.et al.,Methods 36(2005)43-60;ならびに(FRシャフリングのための「ガイドセレクション(guided selection)」アプローチを記載している)Osbourn,J.et al.,Methods 36(2005)61-68およびKlimka,A.et al.,Br.J.Cancer 83(2000)252-260にさらに記載されている。
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims,M.J.et al.,J.Immunol.151(1993)2296-2308を参照のこと);軽鎖または重鎖の可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289;およびPresta,L.G.et al.,J.Immunol.151(1993)2623-2632を参照のこと);ヒト成熟(体細胞変異型)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro,J.C.and Fransson,J.,Front.Biosci.13(2008)1619-1633を参照のこと);ならびにFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca,M.et al.,J.Biol.Chem.272(1997)10678-10684およびRosok,M.J.et al.,J.Biol.Chem.271(19969 22611-22618を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。
ヒト抗体
特定の態様において、本明細書に提供された抗体または本明細書において報告する結合体内の抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を使用して作製され得る。ヒト抗体は、van Dijk,M.A.and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Pharmacol.5(2001)368-374およびLonberg,N.,Curr.Opin.Immunol.20(2008)450-459に一般に記載されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を有する完全抗体を産生するよう修飾されたトランスジェニック動物へ、免疫原を投与することによって調製され得る。そのような動物は、典型的には、内在性の免疫グロブリン遺伝子座に取って代わっているか、または染色体外に存在するか、または動物の染色体へランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含有している。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内在性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を入手する方法の概説については、Lonberg,N.,Nat.Biotech.23(2005)1117-1125を参照のこと。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載しているUS 6,075,181およびUS 6,150,584;HUMAB(登録商標)技術を記載しているUS 5,770,429;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載しているUS 7,041,870、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載しているUS 2007/0061900も参照のこと。そのような動物によって生成された完全抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾され得る。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の作製のためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株が、記載されている(例えば、Kozbor,D.,J.Immunol.133(1984)3001-3005;Brodeur,B.R.et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987),pp.51-63;およびBoerner,P.et al.,J.Immunol.147(1991)86-95を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li,J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103(2006)3557-3562に記載されている。付加的な方法には、例えば、(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の作製を記載している)米国特許第7,189,826号および(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載している)Ni,J.,Xiandai Mianyixue 26(2006)265-268に記載されたものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ(Trioma)技術)も、Vollmers,H.P.and Brandlein,S.,Histology and Histopathology 20(2005)927-937およびVollmers,H.P.and Brandlein,S.,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(2005)185-191に記載されている。
ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても、ヒト抗体を生成することができる。次いで、そのような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載されている。
ライブラリー由来の抗体
本発明の抗体または本明細書において報告する結合体内の抗体は、所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を保有している抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための多様な方法が、当技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom,H.R.et al.,Methods in Molecular Biology 178(2001)1-37に概説されており、例えば、McCafferty,J.et al.,Nature 348(1990)552-554;Clackson,T.et al.,Nature 352(1991)624-628;Marks,J.D.et al.,J.Mol.Biol.222(1992)581-597;Marks,J.D.and Bradbury,A.,Methods in Molecular Biology 248(2003)161-175;Sidhu,S.S.et al.,J.Mol.Biol.338(2004)299-310;Lee,C.V.et al.,J.Mol.Biol.340(2004)1073-1093;Fellouse,F.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(2004)12467-12472;およびLee,C.V.et al.,J.Immunol.Methods 284(2004)119-132にさらに記載されている。
特定のファージディスプレイ法においては、Winter,G.et al.,Ann.Rev.Immunol.12(1994)433-455に記載されているように、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに組換え、次いで、それを抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫感作された起源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths,A.D.et al.,EMBO J.12(1993)725-734によって記載されているように、免疫感作なしに、広範囲の非自己抗原および自己抗原に対する抗体の単一の起源を提供するため、(例えば、ヒトから)未感作レパートリーをクローニングすることができる。
最後に、Hoogenboom,H.R.and Winter,G.,J.Mol.Biol.227(1992)381-388によって記載されているように、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロで再編成を達成するため、再編成されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、ランダム配列を含有しているPCRプライマーを使用することによって、未感作ライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許刊行物には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号が含まれる。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書において、ヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
抗体フォーマット
上述の抗体および抗体断片を、異なる抗体フォーマットを生成するため、複数の方式で組み合わせることができる。
例えば、1個または複数個のscFv抗体断片を、完全抗体の1個または複数個のポリペプチド鎖のC末端へ融合させることができる。特に、各重鎖C末端へ、または各軽鎖C末端へ、scFv抗体断片を融合させることができる。
例えば、1個または複数個の抗体Fab断片を、完全抗体の1個または複数個のポリペプチド鎖のC末端へ融合させることができる。特に、各重鎖C末端へ、または各軽鎖C末端へ、抗体Fab断片を融合させることができる。
例えば、1個のscFvおよび1個の抗体Fab断片を、抗体Fc領域のN末端へ融合させることができる。
例えば、1個のscFvまたは抗体Fab断片を、抗体Fc領域のN末端へ融合させることができ、1個のscFvまたは抗体Fab断片を、抗体Fc領域のそれぞれの他方の鎖のC末端へ融合させることができる。
多重特異性抗体
多様な組換え抗体フォーマットが開発されており、例えば、IgG抗体フォーマットおよび単鎖ドメインの融合によって、例えば、四価二重特異性抗体が開発されている(例えば、Coloma,M.J.,et al.,Nature Biotech 15(1997)159-163;WO 2001/077342;およびMorrison,S.L.,Nature Biotech 25(2007)1233-1234を参照のこと)。
2種以上の抗原に結合することができる、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、数種の単鎖フォーマット(scFv、Bis-scFv)のような、抗体コア構造(IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)がもはや保持されていない、その他の数種のフォーマットも開発されている(Holliger,P.,et al.,Nature Biotech 23(2005)1126-1136;Fischer,N.,Leger,O.,Pathobiology 74(2007)3-14;Shen,J.,et al.,Journal of Immunological Methods 318(2007)65-74;Wu,C.,et al.,Nature Biotech.25(2007)1290-1297)。
そのようなフォーマットは、全て、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)をさらなる結合タンパク質(例えば、scFv)に融合させるため、または、例えば、2個のFab断片もしくはscFvを融合させるため、リンカーを使用する(Fischer,N.and Leger,O.,Pathobiology 74(2007)3-14)。天然に存在する抗体との高度の類似性を維持することによって、Fc受容体結合を通して媒介される、例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)のようなエフェクター機能を保持することが求められる場合があることに留意しなければならない。
WO 2007/024715には、改変された多価多重特異性結合タンパク質としての二重可変ドメイン免疫グロブリンが報告されている。生物学的活性を有する抗体二量体の調製のための方法は、US 6,897,044に報告されている。ペプチドリンカーを介して相互に連結された、少なくとも4個の可変ドメインを有する多価FV抗体構築物は、US 7,129,330に報告されている。二量体および多量体の抗原結合構造は、US 2005/0079170に報告されている。天然の免疫グロブリンではない、接続構造によって相互に共有結合した3個または4個のFab断片を含む三価または四価の単一特異性抗原結合タンパク質は、US 6,511,663に報告されている。WO 2006/020258には、原核細胞および真核細胞において効率的に発現され得、治療および診断の方法において有用な、四価二重特異性抗体が報告されている。2つの型のポリペプチド二量体を含む混合物から、少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して連結されていない二量体から、少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して連結されている二量体を分離するか、またはより優先的に合成する方法は、US 2005/0163782に報告されている。二重特異性四価受容体は、US 5,959,083に報告されている。3個以上の機能性の抗原結合部位を有する改変抗体は、WO 2001/077342に報告されている。
多重特異性多価抗原結合ポリペプチドは、WO 1997/001580に報告されている。WO 1992/004053は、合成的架橋によって共有結合している、同一の抗原決定基に結合するIgGクラスのモノクローナル抗体から典型的に調製されるホモ結合体を報告している。四価または六価のIgG分子を形成するために会合した2個以上の免疫グロブリン単量体を有するオリゴマー、典型的には、IgGクラスのオリゴマーが分泌される、抗原に対する高いアビディティを有するオリゴマーモノクローナル抗体は、WO 1991/06305に報告されている。インターフェロンγ活性が病原となっている疾患を処置するために使用され得る、ヒツジ由来の抗体および改変抗体構築物は、US 6,350,860に報告されている。US 2005/0100543には、二重特異性抗体の多価担体であるターゲティング可能構築物が報告されている。即ち、ターゲティング可能構築物の各分子が、2個以上の二重特異性抗体の担体として機能することができる。遺伝子操作された二重特異性四価抗体は、WO 1995/009917に報告されている。WO 2007/109254には、安定化されたscFvからなるかまたはそれを含む安定化された結合分子が報告されている。
特定の態様において、本明細書に提供された抗体または本明細書において報告する結合体内の抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の一方はハプテンに対するものであり、他方は他の任意の(非ハプテン)抗原に対するものである。二重特異性抗体は、細胞傷害剤を細胞へと局在化させるためにも使用され得る。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein,C.and Cuello,A.C.,Nature 305(1983)537-540、WO 93/08829、およびTraunecker,A.et al.,EMBO J.10(1991)3655-3659を参照のこと)および「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」技術(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電気ステアリング効果の改変(WO 2009/089004);2種以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号およびBrennan,M.et al.,Science 229(1985)81-83を参照のこと);二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny,S.A.et al.,J.Immunol.148(1992)1547-1553を参照のこと);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Holliger,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444-6448を参照のこと);および単鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber,M et al.,J.Immunol.152(1994)5368-5374を参照のこと);ならびに、例えば、Tutt,A.et al.,J.Immunol.147(1991)60-69に記載されたような三重特異性抗体の調製によっても作製され得る。
一態様において、二重特異性抗体の重鎖のCH3ドメインは、例えば、WO 96/027011、WO 98/050431、Ridgway J.B.,et al.,Protein Eng.9(1996)617-621、Merchant,A.M.,et al.,Nat Biotechnol 16(1998)677-681に数種の例と共に詳細に記載されている、「ノブ・イントゥー・ホール(knob into hole)」技術によって改変される。この方法においては、2個のCH3ドメインの相互作用表面が、これらの2個のCH3ドメインを含有している両方の重鎖のヘテロ二量体化を増加させるために改変される。(2個の重鎖の)2個のCH3ドメインのどちらが「ノブ」であってもよく、その場合、もう一方が「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体を安定化し(Merchant,A.M,et al.,Nature Biotech 16(1998)677-681、Atwell,S.,et al.J.Mol.Biol.270(1997)26-35)、収率を増加させる。
全局面の一態様において、二重特異性抗体は以下のことを特徴とする。
− 一方の重鎖のCH3ドメインおよび他方の重鎖のCH3ドメインはそれぞれ、抗体CH3ドメイン間のオリジナルの界面を含む界面において会合し、
当該界面は、二重特異性抗体の形成を促進するために改変されており、当該改変は、以下のことを特徴とする:
(a)一方の重鎖のCH3ドメインが、
二重特異性抗体内の他方の重鎖のCH3ドメインのオリジナルの界面と会合する、一方の重鎖のCH3ドメインのオリジナルの界面において、
アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基に置換されており、それによって、一方の重鎖のCH3ドメインの界面内の突起であって、他方の重鎖のCH3ドメインの界面内のくぼみの内部に位置し得る、突起が生成されるように改変されており、かつ
(b)他方の重鎖のCH3ドメインが、
二重特異性抗体内の第1のCH3ドメインのオリジナルの界面と会合する、第2のCH3ドメインのオリジナルの界面において、
アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基に置換されており、それによって、第2のCH3ドメインの界面内のくぼみであって、その内部に第1のCH3ドメインの界面内の突起が位置し得る、くぼみが生成されるように改変されている。
従って、本明細書において報告する抗体は、一態様において、以下のことを特徴とする。
− 全長抗体の第1の重鎖のCH3ドメインおよび全長抗体の第2の重鎖のCH3ドメインはそれぞれ、抗体CH3ドメイン間のオリジナルの界面における改変を含む界面において会合し、
(i)第1の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基に置換されており、それによって、一方の重鎖のCH3ドメインの界面内に、他方の重鎖のCH3ドメインの界面内のくぼみの内部に位置し得る突起が生成されており、かつ
(ii)第2の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基に置換されており、それによって、第2のCH3ドメインの界面内に、その内部に第1のCH3ドメインの界面内の突起が位置し得るくぼみが生成されている。
一態様において、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群より選択される。
一態様において、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)からなる群より選択される。
一態様において、両CH3ドメインは、両CH3ドメイン間にジスルフィド架橋が形成され得るよう、各CH3ドメインの対応する位置におけるアミノ酸としてのシステイン(C)の導入によって、さらに改変される。
一態様において、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン内にT366W変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメイン内にT366S変異、L368A変異、Y407V変異を含む。例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインへY349C変異を導入し、「ホール鎖」のCH3ドメインへE356C変異またはS354C変異を導入することによって(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のEUインデックスによる番号付け)、CH3ドメイン間の付加的な鎖間ジスルフィド架橋が使用されてもよい(Merchant,A.M,et al.,Nature Biotech 16(1998)677-681)。
一態様において、二重特異性抗体は、2個のCH3ドメインの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2個のCH3ドメインの他方にE356C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含む。一態様において、二重特異性抗体は、2個のCH3ドメインの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2個のCH3ドメインの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含む(一方のCH3ドメイン内の付加的なY349C変異、および他方のCH3ドメイン内の付加的なE356C変異またはS354C変異は、鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(カバットのEUインデックスによる番号付け(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。EP 1 870 459 A1によって記載されているようなさらなるノブ・イン・ホール技術が、代替的にまたは付加的に使用されてもよい。従って、二重特異性抗体についての別の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のR409D変異、K370E変異、および「ホール鎖」のCH3ドメイン内のD399K変異、E357K変異である(カバットのEUインデックスによる番号付け(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。
一態様において、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S変異、L368A変異、Y407V変異を含み、付加的に、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D変異、K370E変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K変異、E357K変異を含む。
一態様において、二重特異性抗体は、2個のCH3ドメインの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2個のCH3ドメインの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含むか、または二重特異性抗体は、2個のCH3ドメインの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2個のCH3ドメインの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含み、付加的に、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D変異、K370E変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K変異、E357K変異を含む。CH3ドメイン内のそのようなノブ変異およびホール変異は、典型的には、SEQ ID NO:169、SEQ ID NO:170、SEQ ID NO:171、またはSEQ ID NO:172(ヒトIgG1サブクラスアロタイプ(コーカサス人およびアフリカ系アメリカ人または変異体L234A/L235AおよびL234A/L235A/P329G)、SEQ ID NO:173、SEQ ID NO:174、またはSEQ ID NO:175(ヒトIgG4サブクラスまたは変異体S228P、L235E、およびS228P/L235E/P329G)のヒト重鎖定常領域において使用される(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のEUインデックスによる番号付け)。
一態様において、二重特異性抗体は、CH3ドメイン内のそのような「ノブ」変異および「ホール」変異(例えば、2個のCH3ドメインの一方におけるY349C変異、T366W変異、および2個のCH3ドメインの他方におけるS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異)をさらに含む、SEQ ID NO:169、SEQ ID NO:170、SEQ ID NO:171、またはSEQ ID NO:172、SEQ ID NO:173、SEQ ID NO:174、またはSEQ ID NO:175のヒト重鎖定常領域を含む(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のEUインデックスによる番号付け)。
「オクトパス(Octopus)抗体」を含む、3個以上の機能性の抗原結合部位を有する改変抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US 2006/0025576を参照のこと)。
本明細書において、抗体または断片には、ハプテンに結合し、別の異なる抗原にも結合する抗原結合部位を含む「二重作用性Fab」または「DAF」も含まれる(例えば、US 2008/0069820を参照のこと)。
本明細書における抗体または断片には、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254、WO 2010/112193、WO 2010/115589、WO 2010/136172、WO 2010/145792、およびWO 2010/145793に記載された多重特異性抗体も含まれる。
一態様において、二重特異性抗体の第1の結合特異性は、ハプテンに対するものであり、第2の結合特異性は、非ハプテン抗原に対するものである。一態様において、非ハプテン抗原は、白血球マーカー、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、およびTCR;組織適合抗原、MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、SLex、SLey、SLea、およびSLeb;インテグリン、VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3、およびLFA-1、Mac-1、およびp150,95、αVβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、α6β4、αVβ5、αVβ6、およびαV 62 7;セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン、およびE-セレクチン、ならびにそれらの対抗受容体VCAM-1、ICAM-1、ICAM-2、およびLFA-3;インターロイキン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15;IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15Rからなる群より選択されるインターロイキン受容体;PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8からなる群より選択されるケモカイン;TNFα、TGFβ、TSH、VEGF/VPF、VEGFA、VEGFB、VEGF111、VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206、PTHrP、EGFファミリー、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(Fibrosin)(FSF-1)、ヒトラミニン、およびガストリン放出ペプチド(GRP)、PLGF、HGH、HGHRからなる群より選択される増殖因子;TNFαR、RGFβR、TSHR、VEGFR/VPFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、およびその他の造血系受容体からなる群より選択される増殖因子受容体;IFNCαR、IFNβR、およびIFNλRからなる群より選択されるインターフェロン受容体;IgE、FcγRI、およびFcγRIIからなる群より選択されるIgおよびその受容体;her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリン(endosialin)からなる群より選択される腫瘍抗原;ハウスダストダニ抗原、lol p1(イネ科植物)抗原、およびウルシオールからなる群より選択されるアレルゲン;CMV糖タンパク質B、H、およびgCIII、HIV-1エンベロープ糖タンパク質、RSVエンベロープ糖タンパク質、HSVエンベロープ糖タンパク質、HPVエンベロープ糖タンパク質、肝炎ファミリー表面抗原からなる群より選択されるウイルスポリペプチド;シュードモナス内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒コノトキシンからなる群より選択される毒素;補体C3b、補体C4a、補体C4b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン関連成長抑制物質からなる群より選択される血中因子;ならびにコレステロールエステル転移ポリペプチド、膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される酵素から選択される。
抗体バリアント
特定の態様において、本明細書に提供された抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列へ適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製され得る。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を保有するのであれば、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが、最終構築物を獲得するためになされ得る。
(a)置換バリアント、挿入バリアント、および欠失バリアント
特定の態様において、1個または複数個のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発のために重要な部位には、HVRおよびFRが含まれる。アミノ酸置換を関心対象の抗体へ導入し、所望の活性、例えば、抗原結合の保持もしくは改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善について産物をスクリーニングすることができる。
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一つのメンバーの、別のクラスとの置換を含むであろう。
置換バリアントの一つの型は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1個または複数個の超可変領域残基の置換を含む。一般に、さらなる研究のために選択される得られたバリアントは、親抗体と比べて、特定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有するであろう。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されたもののようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して、便利に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡単に説明すると、1個または複数個のHVR残基を変異させ、バリアント抗体を、ファージ上にディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するため、HVRにおいてなされ得る。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟過程において高頻度に変異を受けるコドンによってコードされた残基(例えば、Chowdhury,P.S.,Methods Mol.Biol.207(2008)179-196を参照のこと)、および/またはSDR(a-CDR)においてなされ得、得られたバリアントVHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーの構築および再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom,H.R.et al.in Methods in Molecular Biology 178(2002)1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの態様において、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャフリング、またはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選ばれた可変遺伝子に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを作出する。次いで、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定するため、ライブラリーをスクリーニングする。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、一度に4〜6残基)がランダム化される、HVR指定アプローチを含む。例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、抗原結合に関与するHVR残基を特異的に同定することができる。特に、重鎖CDR3および軽鎖CDR3が標的とされることが多い。
特定の態様において、そのような改変が、抗体の抗原と結合する能力を実質的に低下させない限り、置換、挿入、または欠失が、1個または複数個のHVRに存在してもよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)が、HVRにおいてなされ得る。そのような改変は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外部でなされ得る。上記のバリアントVH配列およびバリアントVL配列の特定の態様において、各HVRは、未改変であるか、または1個、2個、もしくは3個までのアミノ酸置換を含有している。
Cunningham,B.C.and Wells,J.A.,Science 244(1989)1081-1085によって記載されているような、変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法においては、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるか否かを決定するため、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluのような電荷を有する残基)を同定し、中性アミノ酸または負の電荷を有するアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置換する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、さらなる置換を導入することができる。代替的にまたは付加的に、抗体と抗原との間の接触点を同定するため、抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基および近隣の残基を、置換のための候補として標的とするかまたは排除することができる。バリアントを、所望の特性を含有しているか否かを決定するためにスクリーニングすることができる。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100残基以上を含有しているポリペプチドにまで及ぶ長さの、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における融合が含まれ、1個または複数個のアミノ酸残基の配列内挿入も含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子のその他の挿入バリアントには、抗体のN末端またはC末端における、酵素(例えば、ADEPT)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が含まれる。
(b)グリコシル化バリアント
特定の態様において、本明細書に提供された抗体または本明細書において報告する結合体に含まれる抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるかまたは減少させるために改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1個または複数個のグリコシル化部位が作出されるかまたは除去されるよう、アミノ酸配列を改変することによって便利に達成され得る。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合された炭水化物を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的には、一般にFc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって付加されている枝分かれのある二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright,A.and Morrison,S.L.,TIBTECH 15(1997)26-32を参照のこと。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸を含み得、二分岐オリゴ糖構造の「ステム」においてGlcNAcに付加されたフコースも含み得る。いくつかの態様において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作出するため、なされ得る。
一態様において、Fc領域へ(直接または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO 2008/077546に記載されているように、MALDI-TOF質量分析によって測定されるような、Asn 297に付加された全ての糖構造(例えば、複合型構造、ハイブリッド型構造、および高マンノース型構造)の合計に対する、Asn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内のおよそ297位に位置するアスパラギン残基をさす(Fc領域残基のEU番号付け);しかしながら、Asn297は、抗体の軽微な配列変動のため、297位の約±3アミノ酸上流または下流、即ち、位置294〜300に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、US 2003/0157108;US 2004/0093621を参照のこと。「脱フコシル」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例には、US 2003/0157108;WO 2000/61739;WO 2001/29246;US 2003/0115614;US 2002/0164328;US 2004/0093621;US 2004/0132140;US 2004/0110704;US 2004/0110282;US 2004/0109865;WO 2003/085119;WO 2003/084570;WO 2005/035586;WO 2005/035778;WO 2005/053742;WO 2002/031140;Okazaki,A.et al.,J.Mol.Biol.336(2004)1239-1249;Yamane-Ohnuki,N.et al.,Biotech.Bioeng.87(2004)614-622が含まれる。脱フコシル抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化欠損Lec13 CHO細胞(Ripka,J.et al.,Arch.Biochem.Biophys.249(1986)533-545;US 2003/0157108;およびWO 2004/056312、特に、実施例11)、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki,N.et al.,Biotech.Bioeng.87(2004)614-622;Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.94(2006)680-688;およびWO 2003/085107を参照のこと)のようなノックアウト細胞株が含まれる。
例えば、抗体のFc領域に付加された二分岐オリゴ糖がバイセクティングGlcNAcを有する(bisected by GlcNAc)、バイセクト型(bisected)オリゴ糖を含む抗体バリアントが、さらに提供される。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO 2003/011878;米国特許第6,602,684号;およびUS 2005/0123546に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖内に少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗体バリアントも、提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO 1997/30087;WO 1998/58964;およびWO 1999/22764に記載されている。
(c)Fc領域バリアント
特定の態様において、1個または複数個のアミノ酸修飾を、本明細書に提供される抗体のFc領域へ導入し、それによって、Fc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1個または複数個のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含み得る。
特定の態様において、本発明は、インビボの抗体の半減期は重要であるが、(補体およびADCCのような)特定のエフェクター機能は不要であるかまたは有害である適用のため、望ましい候補である、いくつかのエフェクター機能は保有しているが、全ては保有していない抗体バリアントを企図する。CDC活性および/またはADCC活性の低下/欠乏を確認するため、インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害アッセイを実施することができる。例えば、抗体が、FcγR結合を欠く(従って、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能は保持していることを確実にするため、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施することができる。ADCCを媒介するための主な細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch,J.V.and Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492の464ページの表3に要約されている。関心対象の分子のADCC活性を査定するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(1986)7059-7063;およびHellstrom,I.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(1985)1499-1502を参照のこと);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166(1987)1351-1361を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が利用されてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA);およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的にまたは付加的に、関心対象の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes,R.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998)652-656に開示されたもののような動物モデルにおいて、査定され得る。C1q結合アッセイも、抗体がC1qに結合することができず、従って、CDC活性を欠くことを確認するため、実施され得る。例えば、WO 2006/029879およびWO 2005/100402におけるC1q結合ELISAおよびC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を査定するためには、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro,H.et al.,J.Immunol.Methods 202(1996)163-171;Cragg,M.S.et al.,Blood 101(2003)1045-1052;およびCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103(2004)2738-2743を参照のこと)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定も、当技術分野において公知の方法を使用して実施され得る(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int.Immunol.18(2006:1759-1769を参照のこと)。
低下したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1個または複数個の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265位、269位、270位、297位、および327位のうちの2個以上に置換を有するFc変異体が含まれる。
改善されたまたは減少したFcRとの結合を有する特定の抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;WO 2004/056312、およびShields,R.L.et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604を参照のこと)。
特定の態様において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1個または複数個のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、および/または334位における置換を有するFc領域を含む(残基のEU番号付け)。
いくつかの態様において、改変は、例えば、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642、およびIdusogie,E.E.et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184に記載されているように、改変された(即ち、改善されたまたは減少した)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすFc領域においてなされる。
増加した半減期および母性IgGの胎児への移動を担う新生児Fc受容体(FcRn)との改善された結合を有する抗体(Guyer,R.L.et al.,J.Immunol.117(1976)587-593およびKim,J.K.et al.,J.Immunol.24(1994)2429-2434)は、US 2005/0014934に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnとの結合を改善する1個または複数個の置換を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1個または複数個に置換を有するもの、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan,A.R.and Winter,G.,Nature 322(1988)738-740;US 5,648,260;US 5,624,821;およびWO 94/29351も参照のこと。
(d)システイン改変型抗体バリアント
特定の態様において、抗体の1個または複数個の残基がシステイン残基に置換された、システイン改変型抗体、例えば、「thioMAb」を作出することが望ましい場合がある。特定の態様において、置換される残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。それらの残基をシステインに置換することによって、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に位置付けられ、さらに本明細書に記載されているような免疫結合体を作出するため、薬物部分またはリンカー-薬物部分のような他の部分へ抗体を結合体化するために使用され得る。特定の態様において、以下の残基のうちの1個または複数個をシステインに置換することができる:軽鎖のV205(カバット番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン改変型抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成され得る。
(e)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書に提供された抗体は、当技術分野において公知であって容易に入手可能な付加的な非タンパク質部分を含有するよう、さらに修飾され得る。抗体の誘導体化のために適当な部分には、水溶性重合体が含まれるが、これに限定されない。水溶性重合体の非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(同種重合体またはランダム共重合体のいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール同種重合体、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造において利点を有し得る。重合体は、任意の分子量であり得、枝分かれしていてもよいしまたは枝分かれしていなくてもよい。抗体に結合された重合体の数は変動し得、複数個の重合体が結合されている場合、それらは同一の分子であってもよいしまたは異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用される重合体の数および/または型は、改善すべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件の下で治療において使用されるか否か等を含むが、これらに限定されない、考慮に基づき、決定され得る。
別の態様において、抗体と、放射線曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質部分との結合体が、提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam,N.W.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、普通の細胞には害を与えないが、抗体-非タンパク質部分の近傍の細胞が死滅する温度へ非タンパク質部分を加熱する波長を含むが、これに限定されない、任意の波長のものであり得る。
ハプテン化化合物
本明細書において報告する結合体内のハプテンは、それ自体が分子のうちの一つでない場合、治療剤(薬)、細胞傷害剤(例えば、ドキソルビシンもしくは百日咳毒素のような毒素)、フルオレセインもしくはローダミンのような蛍光色素などの蛍光体、イメージング用もしくは放射線治療用の金属のためのキレート剤、ペプチドもしくは非ペプチドの標識もしくは検出タグ、またはポリエチレングリコールの様々な異性体のようなクリアランス修飾剤、第3の成分に結合するペプチド、または別の炭水化物もしくは親油性薬剤と結合体化され得る。ハプテン化化合物とは、そのような結合体を意味する。結合体化は、直接であってもよいしまたは介在リンカーを介していてもよい。
(a)治療用部分
ハプテン-薬物結合体(ADC、ハプテン化薬物)の薬物部分(D)は、細胞傷害効果または細胞分裂阻害効果を有する任意の化合物、部分、または基であり得る。薬物部分には、(i)微小管阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはDNA挿入剤として機能し得る化学療法剤;(ii)酵素的に機能し得るタンパク質毒素;および(iii)放射性同位体が含まれる。
例示的な薬物部分には、マイタンシノイド、アウリスタチン(auristatin)、ドラスタチン、トリコテシン、CC1065、カリチアマイシンおよびその他のエンジイン抗生物質、タキサン、アントラサイクリン、ならびにそれらの立体異性体、アイソスター、類似体、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
タンパク質毒素には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)外毒素A鎖、リシンA鎖(Vitetta et al(1987)Science,238:1098)、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、αサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-5)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテシン(WO 93/21232)が含まれるが、これらに限定されない。
治療用放射性同位体には、32P、33P、90Y、125I、131I、131In、153Sm、186Re、188Re、211At、212B、212Pb、およびLuの放射性同位体が含まれる。
放射性同位体またはその他の標識は、公知の方式で組み入れられ得る(Fraker et al(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49-57;"Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy"Chatal,CRC Press 1989)。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種の複合体への結合体化のための例示的なキレート剤である(WO 94/11026)。
(b)標識
ハプテン化化合物は、ハプテン化標識であり得る。ハプテンに共有結合的に結合させることができる任意の標識部分を、使用することができる。(例えば、Singh et al(2002)Anal.Biochem.304:147-15;Harlow E.and Lane,D.(1999)Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Lundblad R.L.(1991)Chemical Reagents for Protein Modification,2nd ed.CRC Press,Boca Raton,Fla.を参照のこと)。標識は、以下のように機能し得る:(i)検出可能なシグナルを提供するか;(ii)第2の標識と相互作用して、第1もしくは第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを修飾し、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を与えるか;(iii)電荷、疎水性、形、もしくはその他の物理的パラメータによって、移動度、例えば、電気泳動移動度、もしくは細胞浸透性に影響するか、または(iv)例えば、イオン性複合体化をモジュレートするため、捕捉部分を提供する。
本明細書において報告するハプテン化標識を含む結合体は、診断アッセイにおいて、例えば、特異的な細胞、組織、または血清における関心対象の抗原の発現を検出するため、有用であり得る。診断的適用のためには、第1の結合特異性が標的に結合し、第2の結合特異性がハプテン化標識に結合する二重特異性抗体が使用されるであろう。ハプテンは、典型的には、検出可能部分によって標識されるであろう。以下のカテゴリへ一般に分類され得る多数の標識が入手可能である。
(a)3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Gn、86Y、89Zr、99TC、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、または131Biのような放射性同位体(放射性核種)。放射性同位体標識結合体は、受容体標的イメージング実験において有用である。抗原(ハプテン)は、Current Protocols in Immunology,(1991)Volumes 1 and 2,Coligen et al,Ed.Wiley-Interscience,New York,N.Y.,Pubsに記載された技術を使用して、放射性同位体金属に結合するか、キレート化するか、またはその他の方法で複合体化するリガンド試薬によって標識され得る。金属イオンと複合体化し得るキレートリガンドには、DOTA、DOTP、DOTMA、DTPA、およびTETA(Macrocyclics,Dallas,Tex.)が含まれる。放射性核種は、本明細書において報告する複合体との複合体化を介してターゲティングされ得る(Wu et al,Nature Biotechnology 23(9)(2005)1137-1146)。放射性核種によって標識された複合体による受容体標的イメージングは、腫瘍組織における複合体または対応する治療用抗体の進行性の蓄積の検出および定量化によって、経路活性化のマーカーを提供することができる(Albert et al(1998)Bioorg.Med.Chem.Lett.8:1207-1210)。
イメージング実験のための標識として適当な金属キレート錯体(US 2010/0111856;US 5,342,606;US 5,428,155;US 5,316,757;US 5,480,990;US 5,462,725;US 5,428,139;US 5,385,893;US 5,739,294;US 5,750,660;US 5,834,456;Hnatowich et al,J.Immunol.Methods 65(1983)147-157;Meares et al,Anal.Biochem.142(1984)68-78;Mirzadeh et al,Bioconjugate Chem.1(1990)59-65;Meares et al,J.Cancer(1990),Suppl.10:21-26;Izard et al,Bioconjugate Chem.3(1992)346-350;Nikula et al,Nucl.Med.Biol.22(1995)387-90;Camera et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)955-62;Kukis et al,J.Nucl.Med.39(1998)2105-2110;Verel et al.,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670;Camera et al,J.Nucl.Med.21(1994)640-646;Ruegg et al,Cancer Res.50(1990)4221-4226;Verel et al,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670;Lee et al,Cancer Res.61(2001)4474-4482;Mitchell,et al,J.Nucl.Med.44(2003)1105-1112;Kobayashi et al Bioconjugate Chem.10(1999)103-111;Miederer et al,J.Nucl.Med.45(2004)129-137;DeNardo et al,Clinical Cancer Research 4(1998)2483-90;Blend et al,Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18(2003)355-363;Nikula et al J.Nucl.Med.40(1999)166-76;Kobayashi et al,J.Nucl.Med.39(1998)829-36;Mardirossian et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)65-74;Roselli et al,Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals,14(1999)209-20)。
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)、FITC、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型;TAMRAを含むローダミン型;ダンシル;リサミン(Lissamine);シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;およびそれらの類似体のような蛍光標識。蛍光標識は、例えば、Current Protocols in Immunology(前記)に開示された技術を使用して、抗原(ハプテン)に結合体化され得る。蛍光色素および蛍光標識試薬には、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene,Oregon,USA)およびPierce Biotechnology,Inc.(Rockford,Ill.)から市販されているものが含まれる。
蛍光色素および化学発光色素のような検出標識(Briggs et al "Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,"J.Chem.Soc.,Perkin-Trans.1(1997)1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、特に以下の特性によって、標識のために一般に適用可能である:(i)少量の結合体が無細胞アッセイおよび細胞ベースのアッセイの両方において高感度に検出され得るよう、標識された結合体は、低いバックグラウンドで極めて高いシグナルを生ずるべきである;(ii)標識された結合体は、有意な光退色なしに、蛍光シグナルが観察され、モニタリングされ、記録され得るよう、光安定性であるべきである。標識された結合体の膜または細胞表面、特に、生細胞への細胞表面結合を含む適用の場合には、標識は、(iii)有効な結合体濃度および検出感度を達成するために高い水溶性を有しているべきであり、(iv)細胞の正常な代謝過程を破壊するかまたは早熟細胞死を引き起こすことがないよう、生細胞にとって無毒であるべきである。
(c)様々な酵素-基質標識が入手可能であるかまたは開示されている(例えば、US 4,275,149を参照のこと)。酵素は、一般に、様々な技術を使用して測定され得る、発色性基質の化学的改変を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法によって測定され得る、基質の色変化を触媒し得る。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を改変し得る。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、次いで、(例えば、ケミルミノメーター(chemiluminometer)を使用して)測定され得る、光を放射するか、または蛍光アクセプターへエネルギーを供与することができる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のようなペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖酸化酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼのような)複素環酸化酵素、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)等が含まれる。酵素をポリペプチドへ結合体化するための技術は、O'Sullivan et al "Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay",in Methods in Enzym.(ed.by J.Langone & IT Van Vunakis),Academic Press,New York,73(1981)147-166に記載されている。
酵素-基質の組み合わせ(US 4,275,149;US 4,318,980)の例には、例えば、
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と、基質としての水素過酸化酵素(水素過酸化酵素が、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する);
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのパラ-ニトロフェニルリン酸;および
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ:
が含まれる。
本明細書において報告する標識された結合体は、ELISA、競合結合アッセイ、直接および間接のサンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイのような任意の公知のアッセイ法において利用され得る(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques(1987)pp.147-158,CRC Press,Inc.)。
本明細書において報告する標識された結合体は、以下のような生物医学的イメージングおよび分子イメージングの様々な方法および技術による、イメージングバイオマーカーおよびイメージングプローブとして有用である:(i)MRI(磁気共鳴画像法);(ii)MicroCT(コンピュータ断層撮影);(iii)SPECT(単一光子放射型コンピュータ断層撮影);(iv)PET(ポジトロン放出断層撮影)(Tinianow,J.et al Nuclear Medicine and Biology,37(3)(2010)289-297;Chen et al,Bioconjugate Chem.15(2004)41-49;US 2010/0111856)(v)生物発光;(vi)蛍光;および(vii)超音波。免疫シンチグラフィは、放射性物質によって標識された結合体を動物またはヒト患者へ投与し、結合体が局在する体内の部位の写真を撮影するイメージング手法である(US 6,528,624)。イメージングバイオマーカーは、正常な生物学的過程、病原性の過程、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価され得る。バイオマーカーは、いくつかの型のものであり得る:0型マーカーは、疾患の自然経過マーカーであり、公知の臨床的指標と長期的に相関する、例えば、慢性関節リウマチにおける滑膜炎症のMRI査定;I型マーカーは、機序が臨床的転帰に関連していない場合であっても、作用機序に従って介入の効果をとらえる;II型マーカーは、バイオマーカーの変化またはバイオマーカーからのシグナルが、CTによって測定された慢性関節リウマチにおける骨浸食のような、標的とされた応答を「検証する」ための臨床的利益を予測する代理終点として機能する。従って、イメージングバイオマーカーは、以下のものに関する薬力学的(PD)治療情報を提供し得る:(i)標的タンパク質の発現、(ii)治療薬の標的タンパク質との結合、即ち、選択性、ならびに(iii)クリアランスおよび半減期の薬物動態データ。実験に基づくバイオマーカーに対するインビボイメージングバイオマーカーの利点には、以下のものが含まれる:非侵襲処置、定量可能な全身査定、反復的な投薬および査定、即ち、複数の時点、ならびに前臨床(小動物)結果から臨床(ヒト)結果へ移行可能である可能性のある効果。いくつかの適用について、バイオイメージングは、前臨床研究における動物実験に取って代わるかまたはその数を最小化する。
ペプチド標識法は周知である。Haugland(2003)Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley(1992)Bioconjugate Chem.3:2;Garman,(1997)Non-Radioactive Labeling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Glazer et al Chemical Modification of Proteins.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(T.S.Work and E.Work,Eds.)American Elsevier Publishing Co.,New York;Lundblad,R.L.and Noyes,C.M.(1984)Chemical Reagents for Protein Modification,Vols.I and II,CRC Press,New York;Pfleiderer,G.(1985)"Chemical Modification of Proteins",Modern Methods in Protein Chemistry,H.Tschesche,Ed.,Walter DeGruyter,Berlin and New York;およびWong(1991)Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.);DeLeon-Rodriguez et al,Chem.Eur.J.10(2004)1149-1155;Lewis et al,Bioconjugate Chem.12(2001)320-324;Li et al,Bioconjugate Chem.13(2002)110-115;Mier et al Bioconjugate Chem.16(2005)240-237を参照のこと。
抗体結合体
本明細書において報告する結合体内の抗体は、単独で分子の一つでない場合、治療剤(薬)、細胞傷害剤(例えば、ドキソルビシンもしくは百日咳毒素などの毒素)、フルオレセインもしくはローダミンのような蛍光色素などの蛍光体、イメージング用もしくは放射線治療用の金属のためのキレート剤、ペプチド性もしくは非ペプチド性の標識もしくは検出タグ、またはポリエチレングリコールの様々なアイソマーなどのクリアランス修飾剤、第3の成分に結合するペプチド、または別の炭水化物もしくは親油性薬剤に結合体化され得る。
免疫結合体
本発明は、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性を有する毒素、もしくはそれらの断片)、または放射性同位体などの1種または複数種の細胞傷害剤に結合体化された、本明細書において報告する抗体または本明細書において報告する結合体を含む免疫結合体も提供する。
一態様において、免疫結合体は、マイタンシノイド(US 5,208,020、US 5,416,064、およびEP 0 425 235 B1を参照のこと);モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)などのアウリスタチン(US 5,635,483、US 5,780,588、およびUS 7,498,298を参照のこと);ドラスタチン;カリチアマイシンまたはその誘導体(US 5,712,374、US 5,714,586、US 5,739,116、US 5,767,285、US 5,770,701、US 5,770,710、US 5,773,001、およびUS 5,877,296;Hinman,L.M.et al.,Cancer Res.53(1993)3336-3342;ならびにLode,H.N.et al.,Cancer Res.58(1998)2925-2928を参照のこと);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz,F.et al.,Curr.Med.Chem.13(2006)477-523;Jeffrey,S.C.et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.16(2006)358-362;Torgov,M.Y.et al.,Bioconjug.Chem.16(2005)717-721;Nagy,A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(2000)829-834;Dubowchik,G.M.et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters 12(2002)1529-1532;King,H.D.et al.,J.Med.Chem.45(2002)4336-4343;および米国特許第6,630,579号を参照のこと);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタクセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、およびオルタタキセル(ortataxel)などのタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない1種または複数種の薬物に抗体が結合体化された、抗体-薬物結合体(ADC)である。
別の態様において、免疫結合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌由来)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテシンを含むが、これらに限定されない、酵素活性を有する毒素またはその断片に結合体化された、本明細書に記載されている抗体を含む。
別の態様において、免疫結合体は、ラジオ結合体(radioconjugate)が形成されるよう、放射性原子に結合体化された、本明細書に記載の抗体または本明細書において報告する複合体を含む。多様な放射性同位体が、ラジオ結合体の作製のために利用可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が含まれる。ラジオ結合体は、検出のために使用される時、シンチグラフィ研究のための放射性原子、例えば、TC99mもしくはI123、またはヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄などの(磁気共鳴画像法、MRIとしても公知の)核磁気共鳴(NMR)イメージングのためのスピン標識を含み得る。
抗体と細胞傷害剤との結合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、(ジメチルアジピミデート塩酸塩などの)イミドエステルの二機能性誘導体、(ジスクシンイミジルスベレートなどの)活性エステル、(グルタルアルデヒドなどの)アルデヒド、(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどの)ビス-アジド化合物、(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなどの)ビス-ジアゾニウム誘導体、(トルエン2,6-ジイソシアネートなどの)ジイソシアネート、および(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどの)ビス活性フッ素化合物などの多様な二機能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta,E.S.et al.,Science 238(1987)1098-1104に記載されているように調製され得る。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種の抗体への結合体化のための例示的なキレート剤である。WO 94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari,R.V.et al.,Cancer Res.52(1992)127-131;米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書における免疫結合体またはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL.,U.S.A)から)市販されているSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これらに限定されないクロスリンカー試薬によって調製されたそのような結合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
リンカー
「リンカー」という用語は、抗原(例えば、ハプテン)を検出可能な標識または薬物などの他の部分へ結合体化する(連結する)ために使用され得る二官能性または多官能性の部分を意味する。抗原(ハプテン)結合体は、薬物、抗原(ハプテン)、および抗ハプテン抗体に結合するための反応性官能基を有するリンカーを使用して便利に調製され得る。
一態様において、リンカーは、抗ハプテン抗体上に存在する求核基と反応性の求電子基を有する反応部位を有する。抗体上のシステインチオール基は、例えば、リンカー上の求電子基と反応性であって、リンカーと共有結合を形成する。有用な求電子基には、もう1個のチオール基、マレイミド基、およびハロアセトアミド基が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Klussman et al,Bioconjugate Chemistry 15(4)(2004)765-773の766ページの結合体化法を参照のこと)。
チオール反応官能基の例には、チオール、マレイミド、αハロアセチル、スクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステルなどの活性化エステル、無水物、酸塩化物、スルホニルクロリド、イソシアネート、およびイソチオシアネートが含まれるが、これらに限定されない。
リンカーは、抗原(ハプテン)をペイロードと連結するアミノ酸残基を含み得る。アミノ酸残基は、ジペプチド単位、トリペプチド単位、テトラペプチド単位、ペンタペプチド単位、ヘキサペプチド単位、ヘプタペプチド単位、オクタペプチド単位、ノナペプチド単位、デカペプチド単位、ウンデカペプチド単位、またはドデカペプチド単位を形成していてもよい。アミノ酸残基には、天然に存在するものも含まれるし、例えば、シトルリン、または、例えば、βアラニンなどのβアミノ酸、または4-アミノ酪酸などのωアミノ酸などの、天然には存在しないアミノ酸類似体も含まれる。
別の態様において、リンカーは、抗原(ハプテン)上または抗体(抗ハプテン抗体)上に存在する求電子基に対して反応性の求核基を有する反応性官能基を有する。有用な求電子基には、アルデヒドおよびケトンのカルボニル基が含まれるが、これらに限定されない。リンカーの求核基のヘテロ原子は、ハプテン上または抗体上の求電子基と反応し、抗原(ハプテン)または抗体と共有結合を形成することができる。リンカー上の有用な求核基には、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドが含まれるが、これらに限定されない。抗原(ハプテン)上の求電子基は、リンカーとの結合のための便利な部位を提供する。
典型的には、ペプチド型リンカーは、2個以上のアミノ酸および/またはペプチド断片の間でペプチド結合を形成することによって調製され得る。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の領域において周知である液相合成法(E.Schroder and K.Lubke"The Peptides",volume 1(1965)76-136,Academic Press)によって調製され得る。
別の態様において、リンカーは、可溶性または反応性をモジュレートする基によって置換されていてもよい。例えば、スルホン酸(SO3 -)もしくはアンモニウムなどの電荷を有する置換基、またはPEGなどの重合体は、試薬の水溶性を増加させ、リンカー試薬の抗原(ハプテン)もしくは薬物部分とのカップリング反応を容易にするか、または利用された合成経路に依って、カップリング反応を容易にすることができる。
本明細書において報告する薬物または標識を含む結合体は、以下のリンカー試薬を用いて調製された複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない:BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)、ならびにPierce Biotechnology,Incから市販されているビス-マレイミド試薬:DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BM(PEO)3、およびBM(PEO)4。ビス-マレイミド試薬は、例えば、チオール基のチオール含有薬物部分、標識、またはリンカー中間体への逐次または同時の結合を可能にする。例えば、チオール基と反応性であるマレイミド以外の官能基には、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート、およびイソチオシアネートが含まれる。
例示的なリンカーには、マレイミドストレッチャーおよびパラ-アミノベンジルカルバモイル(PAB)自壊性スペーサーを有するバリン-シトルリン(val-citまたはvc)ジペプチドリンカー試薬、ならびにマレイミドストレッチャー単位およびp-アミノベンジル自壊性スペーサーを有するphe-lys(Mtr)ジペプチドリンカー試薬が含まれる。
システインチオール基は、求核性であり、以下のものを含むリンカー試薬上およびハプテン化化合物上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる:(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、および酸ハロゲン化物などの活性エステル;(ii)ハロアセトアミドなどの、アルキルハロゲン化物およびベンジルハロゲン化物;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル基、およびマレイミド基;ならびに(iv)ピリジルジスルフィドを含むジスルフィド(スルフィド交換を介して)。ハプテン化化合物上の求核基には、リンカー部分上およびリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる、アミン基、チオール基、ヒドロキシル基、ヒドラジド基、オキシム基、ヒドラジン基、チオセミカルバゾン基、ヒドラジンカルボキシレート基、およびアリールヒドラジド基が含まれるが、これらに限定されない。
III.核酸
本明細書において報告する抗体または本明細書において報告する結合体に含まれる抗体のアミノ酸配列バリアントをコードするDNAは、当技術分野において公知の多様な方法によって調製され得る。これらの方法には、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介)変異誘発、PCR変異誘発、およびポリペプチドをコードする先に調製されたDNAのカセット変異誘発による調製が含まれるが、これらに限定されない。組換え抗体のバリアントは、制限断片操作または合成オリゴヌクレオチドによるオーバーラップ伸張PCRによっても構築され得る。変異誘発プライマーは、システインコドン置換をコードする。標準的な変異誘発技術が、そのような修飾された改変抗体をコードするDNAを生成するために利用され得る。一般的な案内は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;およびAusubel et al Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,N.Y.,1993に見出され得る。
IV.発現および精製
抗体は、例えば、US 4,816,567に記載されているような、組換えの方法および組成物を使用して作製され得る。一態様において、本明細書に記載された抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードし得る。さらなる態様において、そのような核酸を含む1種または複数種のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一つのそのような態様において、宿主細胞は、以下のものを含む(例えば、以下のものによって形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一態様において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球系細胞(例えば、Y0細胞、NS0細胞、Sp20細胞)である。一態様において、上記の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現のために適当な条件の下で培養する工程を含み、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から抗体を回収する工程を任意で含む、本明細書において報告する抗体を作製する方法が、提供される。
本明細書において報告する抗体の組換え作製のため、抗体、例えば、上記の抗体をコードする核酸が、単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のため、1種または複数種のベクターへ挿入される。そのような核酸は、従来の手法を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され配列決定され得る。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現のために適当な宿主細胞には、本明細書に記載された原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない時、細菌において作製され得る。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、US 5,648,237、US 5,789,199、US 5,840,523を参照のこと(大腸菌における抗体断片の発現を記載しているCharlton,K.A.,In:Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2003),pp.245-254も参照のこと)。発現の後、抗体は、細菌細胞ペーストから可溶性画分へと単離され得、さらに精製され得る。
原核生物に加えて、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌株および酵母株を含む、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適当なクローニング宿主または発現宿主である。Gerngross,T.U.,Nat.Biotech.22(2004)1409-1414;およびLi,H.et al.,Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照のこと。
グリコシル化抗体の発現のための適当な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫の細胞が含まれる。昆虫細胞と共に、特に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る、多数のバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も、宿主として利用され得る。例えば、(トランスジェニック植物において抗体を作製するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号を参照のこと。
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁培養に適応した哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株のその他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74に記載されている、293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載されている、TM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載されている、TRI細胞;MRC 5細胞;ならびにFS4細胞である。その他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR- CHO細胞(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体作製のために適当な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki,P.and Wu,A.M.,Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2004),pp.255-268を参照のこと。
V. 診断および検出のための方法および組成物
特定の態様において、本明細書において報告する抗体、特に、二重特異性抗体および結合体は、いずれも、生物学的試料中の1種または複数種の標的分子の存在を検出するために有用である。「検出する」という用語には、本明細書において使用されるように、定量的または定性的な検出が包含される。一態様において、生物学的試料には、細胞または組織が含まれる。
一態様において、分析または検出の方法において使用するための、本明細書において報告する抗体または結合体が提供される。特定の態様において、方法は、抗体または結合体の標的との結合を可能にする条件の下で、生物学的試料を本明細書において報告する抗体または結合体と接触させる工程、および抗体または結合体と標的との間で複合体が形成されるか否かを検出する工程を含む。そのような方法は、インビトロまたはインビボの方法であり得る。
特定の態様において、標識された抗体または結合体が提供される。標識には、(蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射標識などの)直接検出される標識または部分、ならびに、例えば、酵素反応または分子相互作用を通して間接的に検出される、酵素またはリガンドなどの部分が含まれるが、これらに限定されない。例示的な標識には、放射性同位体32P、14C、125I、3H、および131I、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどの蛍光体、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖酸化酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素、HRPなどの色素前駆体を酸化するために過酸化水素を利用する酵素、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカル等が含まれるが、これらに限定されない。
VI. 薬学的製剤
本明細書において報告する抗体または結合体の薬学的製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で、所望の純度を有するそのような抗体または結合体を、1種または複数種のオプションの薬学的に許容される担体と混合することによって調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed.)(1980))。薬学的に許容される担体は、一般に、利用された投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール、もしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなどの)保存剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)などの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン物質界面活性剤を含むが、これらに限定されない。例示的な薬学的に許容される担体には、本明細書において、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質薬物分散剤がさらに含まれる。rhuPH20を含む特定の例示的なsHASEGPおよび使用法は、米国特許公開番号2005/0260186および2006/0104968に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1種または複数種の付加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、US 6,267,958に記載されている。水性抗体製剤には、US 6,171,586およびWO 2006/044908に記載されたものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン酢酸緩衝液を含む。
本明細書における製剤は、処置されている特定の適応症のために必要な複数種の活性成分、好ましくは、相互に悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有し得る。そのような活性成分は、適切には、意図された目的のために有効な量で、組み合わせられて存在する。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに捕捉され得る。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed.)(1980)に開示されている。
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の適当な例には、成形物、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態で存在する、抗体または結合体を含有している固形疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれる。
インビボ投与のために使用される製剤は、一般に、無菌である。無菌性は、例えば、無菌ろ過膜によるろ過によって、容易に達成され得る。
VII. 治療の方法および組成物
本明細書において報告する抗体または結合体は、いずれも、治療法において使用され得る。
一局面において、医薬として使用するための、本明細書において報告する抗体または結合体が提供される。さらなる局面において、疾患の処置において使用するための、本明細書において報告する抗体または結合体が提供される。特定の態様において、処置の方法において使用するための、本明細書において報告する抗体または結合体が提供される。特定の態様において、本発明は、有効量の本明細書において報告する抗体または結合体を個体へ投与する工程を含む、個体を処置する方法において使用するための、本明細書において報告する抗体または結合体を提供する。一つのそのような態様において、方法は、例えば、有効量の下記のような少なくとも1種のさらなる治療剤を個体へ投与する工程をさらに含む。上記の態様のいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
さらなる局面において、本発明は、本明細書において報告する抗体または結合体の、医薬の製造または調製における使用を提供する。一態様において、医薬は、疾患の処置のためのものである。さらなる態様において、医薬は、有効量の医薬を、疾患を有する個体へ投与する工程を含む、疾患を処置する方法において使用するためのものである。一つのそのような態様において、方法は、例えば、下記のような、有効量の少なくとも1種のさらなる治療剤を個体へ投与する工程をさらに含む。上記の態様のいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
さらなる局面において、本発明は、疾患を処置する方法を提供する。一態様において、当該方法は、有効量の本明細書において報告する抗体または結合体を、そのような疾患を有する個体へ投与する工程を含む。一つのそのような態様において、当該方法は、有効量の下記のような少なくとも1種のさらなる治療剤を個体へ投与する工程をさらに含む。上記の態様のいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
さらなる局面において、本発明は、例えば、上記の治療法のいずれかにおいて使用するのための、本明細書において報告する抗体または結合体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一態様において、薬学的製剤は、本明細書において報告する抗体または結合体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書において報告する抗体または結合体のいずれかと、例えば、下記のような、少なくとも1種のさらなる治療剤とを含む。
本明細書において報告する抗体および結合体は、治療において、単独でまたは他の薬剤と組み合わせられて使用され得る。例えば、本明細書において報告する抗体または結合体は、少なくとも1種のさらなる治療剤と共に投与され得る。
上述のそのような組み合わせ治療は、(2種以上の治療剤が同一または別々の製剤に含まれている)組み合わせ投与および別々の投与を包含し、その場合、本発明の抗体の投与は、さらなる治療剤および/またはアジュバントの投与の前に、同時に、かつ/または後に行われ得る。本明細書において報告する抗体および結合体は、放射線治療と組み合わせられて使用されてもよい。
本明細書において報告する抗体または結合体(ならびにさらなる治療剤)は、非経口、肺内、および鼻腔内を含む任意の適当な手段によって投与され得、局所処置のために望まれる場合には、病巣内投与によって投与され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下への投与が含まれる。投薬は、一部分、投与が短期投与か慢性投与かに依って、任意の適当な経路によって、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によってなされ得る。単回投与または様々な時点での複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むが、これらに限定されない、様々な投薬スケジュールが、本明細書において企図される。
本明細書において報告する抗体または結合体は、良質の医療のための原則(good medical practice)と一致する様式で製剤化され、投薬され、投与されるであろう。これに関して考察するための因子には、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、ならびに医療実務者に公知のその他の因子が含まれる。抗体または結合体は、任意で、当該の障害を防止するかまたは処置するために現在使用されている1種または複数種の薬剤と共に製剤化されてもよいが、そうでなくてもよい。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体または結合体の量、障害または処置の型、および上述のその他の因子に依る。これらは、一般に、本明細書に記載されているのと同一の投薬量および投与経路、または本明細書に記載された投薬量の約1〜99%、または経験的/臨床的に適切であると決定されている任意の投薬量および経路で使用される。
疾患の防止または処置のため、(単独で、または1種もしくは複数種の他のさらなる治療剤と組み合わせられて使用される時)本明細書において報告する抗体または結合体の適切な投薬量は、処置される疾患の型、抗体または結合体の型、疾患の重症度および経過、抗体または結合体が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の病歴、および抗体または結合体に対する応答、ならびに主治医の判断によるであろう。抗体または結合体は、1回でまたは一連の処置によって、患者へ適切に投与される。例えば、1回もしくは複数回の別々の投与によるか、または連続注入によるかに関わらず、疾患の型および重症度に依って、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.5mg/kg〜10mg/kg)の抗体または結合体が、患者への投与のための初期候補投薬量であり得る。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依って、約1μg/kgから100mg/kgまたはそれより多い範囲であり得る。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、状態に依って、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、処置は一般に維持されるであろう。抗体または結合体の一つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲にあるであろう。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の用量が、1回または複数回、患者へ投与され得る。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者が、約2〜約20回、または、例えば、約6回、抗体を受容するよう)投与され得る。より高い初回負荷量の後に、より低い用量が、1回または複数回、投与されてもよい。しかしながら、他の投薬計画が有用である場合もある。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
上記の製剤または治療法は、いずれも、本明細書において報告する抗体もしくは結合体の代わりに、またはそれらに加えて、本発明の免疫結合体を使用して実施されてもよいことが理解される。
VIII. 製品
本発明の別の局面において、上記の障害の処置、防止、および/または診断のために有用な材料を含有している製品が提供される。製品は、容器、および容器上のまたは容器に関連したラベルまたはパッケージインサートを含む。適当な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されていてよい。容器は、単独の組成物、または状態を処置し、防止し、かつ/もしくは診断するために有効な別の組成物と組み合わせられた組成物を保持しており、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本明細書において報告する抗体または複合体である。ラベルまたはパッケージインサートは、選ばれた状態を処置するために、組成物が使用されることを示す。さらに、製品は、(a)本明細書において報告する抗体または複合体を含む組成物を含有している第1の容器;および(b)細胞傷害剤またはその他の治療剤をさらに含む組成物を含有している第2の容器を含み得る。本発明のこの態様における製品は、組成物が特定の状態を処置するために使用され得ることを示すパッケージインサートをさらに含み得る。代替的にまたは付加的に、製品は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的見地および使用者の見地から望ましいその他の材料をさらに含んでいてもよい。
上記の製品は、いずれも、本明細書において報告する抗体もしくは結合体の代わりに、またはそれらに加えて、本発明の免疫結合体を含んでいてもよいことが理解される。
本明細書に引用された全ての参考文献の開示は、参照によって本明細書に組み入れられる。
以下の実施例、図面、および配列は、本発明についての理解を助けるために提供されるものであって、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の本旨から逸脱することなく、示された手法に修飾を施し得ることが理解される。
実施例1
マウスハイブリドーマからのκ軽鎖を有するIgG1クラスのマウス抗ジゴキシゲニン抗体およびマウス抗ビオチン抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードするcDNAの単離および特徴決定
抗ジゴキシゲニン抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードするcDNAの単離および特徴決定、RNA調製、DNA断片の生成、DNA断片のプラスミドへのクローニング、ならびにDNA配列およびアミノ酸配列の決定は、それぞれ、WO 2011/003557およびWO 2011/003780に記載されている。
マウスハプテン結合抗体のVHドメインおよびVLドメインのタンパク質および(DNA)配列情報を、ハイブリドーマクローンから直接入手した。その後に実施された実験工程は、(i)抗体産生ハイブリドーマ細胞からのRNAの単離、(ii)このRNAのcDNAへの変換、VHおよびVLを保有しているPCR断片への移入、ならびに(iii)大腸菌内で増やすためのこれらのPCR断片のプラスミドベクターへの組み込み、およびそれらのDNA(および推定タンパク質)の配列の決定であった。
ハイブリドーマ細胞からのRNA調製:
RNeasy-Kit(Qiagen)を適用して、5×106個の抗体発現ハイブリドーマ細胞から、RNAを調製した。簡単に説明すると、沈殿させた細胞を、PBSで1回洗浄し、沈殿させ、その後、溶解のため、500μl RLT緩衝液(+βME)に再懸濁させた。細胞を、Qiashredder(Qiagen)に通すことによって完全に溶解し、次いで、製造業者のマニュアルに記載されているように、マトリックス媒介精製手法(ETOH、RNeasyカラム)に供した。最後の洗浄工程の後、カラムから50μl RNAse不含水へ、RNAを回収した。回収されたRNAの濃度を、1:20希釈試料のA260およびA280を定量化することによって決定した。単離されたRNA試料の完全度(品質、分解の程度)を、ホルムアミド-アガロースゲル上での変性RNAゲル電気泳動によって分析した(Maniatis Manualを参照のこと)。完全な18sおよび28sのリボソームRNAが入手されたことを表す別々のバンド、ならびにこれらのバンドの完全性(およびおよそ2:1の強度比)は、RNA調製物の高い品質を示した。ハイブリドーマから単離されたRNAを凍結させ、等分して-80℃で貯蔵した。
RACE PCRによるVHおよびVHをコードするDNA断片の生成、これらのDNA断片のプラスミドへのクローニング、ならびにDNA配列およびアミノ酸配列の決定
国際特許出願PCT/EP2011/074273に記載されているような技術を適用することによって、その後の(RACE-)PCR反応のためのcDNAを、RNA調製物から調製した。その後、標準的な分子生物学技術によって、アガロースゲル抽出およびその後の精製によって、VHおよびVLをコードするPCR断片を単離した。正確に製造業者の説明書に従って、pCR bluntII topo Kit(Invitrogen)を適用することによって、PWOによって生成された精製されたPCR断片を、ベクターpCR bluntII topoへ挿入した。Topo-ライゲーション反応物を、大腸菌Topo10-one-shotコンピテント細胞へ形質転換した。その後、VLまたはVHを含有しているインサートを有するベクターを含有している大腸菌クローンを、LB-カナマイシン寒天プレート上でコロニーとして同定した。これらのコロニーからプラスミドを調製し、ベクター内の所望のインサートの存在を、EcoRIによる制限消化によって確認した。ベクター骨格がインサートの両側に隣接するEcoRI制限認識部位を含有しているため、EcoRIによって放出可能な約800bp(VLについて)または600bp(VHについて)のインサートを有することによって、インサートを保有しているプラスミドを区別した。VLおよびVHのDNA配列および推定タンパク質配列を、VHおよびVLについての複数のクローンに対する自動DNA配列決定によって決定した。
抗ビオチン抗体のマウスVL配列はSEQ ID NO:40に示されている。抗ビオチン抗体のマウスVH配列はSEQ ID NO:36に示されている。
抗ジゴキシゲニン抗体のマウスVL配列はSEQ ID NO:08に示されている。抗ジゴキシゲニン抗体のマウスVH配列はSEQ ID NO:04に示されている。
実施例2
マウスハイブリドーマからのκ軽鎖を有するIgG1クラスのマウス抗テオフィリン抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードするcDNAの単離および特徴決定
実施例1に概説されたように、抗テオフィリン抗体の配列を入手した。
抗テオフィリン抗体のマウスVL配列はSEQ ID NO:72に示されている。抗テオフィリン抗体のマウスVH配列はSEQ ID NO:68に示されている。
実施例3
マウス抗ジゴキシゲニン抗体および抗ビオチン抗体のVHドメインおよびVLドメインのヒト化
ジゴキシゲニン結合抗体のヒト化バリアントの生成は、WO 2011/003557およびWO 2011/003780に詳細に記載されている。マウスビオチン結合抗体muM33を、以下のように同様にヒト化した:
マウスハイブリドーマからのκ軽鎖を有するIgG1クラスのマウス抗ビオチン抗体のVHドメインおよびVLドメインを含むコード配列およびアミノ酸配列の生成および特徴決定は、WO 2011/003557およびWO 2011/003780に記載されている。この情報に基づいて、対応するヒト化抗ビオチン抗体を、ヒト生殖系列フレームワークIGHV1-69-02およびIGKV1-27-01の組み合わせに基づいて生成した(huM33)。VLについては、ヒトIGKV1-27-01のフレームワークおよびIGKJ2-01生殖系列のヒトJ要素に復帰変異を組み込む必要はなかった。ヒト化VHは、ヒトIGHV1-69-02生殖系列およびIGHJ4-01-3生殖系列のヒトJ要素に基づく。フレームワーク領域1の24位(A24S)およびフレームワーク領域3の73位(K73T)に、2個の復帰変異を導入した。ヒト化VHのアミノ酸配列はSEQ ID NO:44に示されており、ヒト化VLのアミノ酸配列はSEQ ID NO:48に示されている。
実施例4
マウス抗テオフィリン抗体のVHドメインおよびVLドメインのヒト化
マウステオフィリン結合抗体を、以下のようにヒト化した:ヒト生殖系列フレームワークIGHV4-31-02およびIGKV2-30-01の組み合わせに基づき、ヒト化抗テオフィリン抗体を生成した。ヒト化VHは、ヒトIGHV4-31-02生殖系列およびIGHJ4-01-3生殖系列のヒトJ要素に基づく。フレームワーク領域3内の71位(V71R)に、1個の復帰変異を導入した。ヒト化VLは、ヒトIGHV2-30-01生殖系列およびIGKJ2-01生殖系列のヒトJ要素に基づく。フレームワーク領域2内の46位(R46L)に、1個の復帰変異を導入した。ヒト化VHのアミノ酸配列はSEQ ID NO:76に示されており、ヒト化VLのアミノ酸配列はSEQ ID NO:80に示されている。
実施例5
ジゴキシゲニンの存在下でのマウス抗ジゴキシゲニンFv領域の結合領域の結晶化およびX線構造決定ならびにビオチンの存在下でのマウス抗ビオチンFv領域の結合領域の結晶化およびX線構造決定
ジゴキシゲニン結合抗体のFab断片の構造の決定は、WO 2011/003557およびWO 2011/003780に詳細に記載されており、Metz,S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108(2011)8194-8199にも発表されている(3RA7)。
マウス抗ビオチン抗体の構造を決定した。従って、精製されたIgGのプロテアーゼ消化によってFab断片を生成し、その後、当技術分野において周知の方法(パパイン消化)を適用して精製した。
結晶化のため、20mM His-HCl、140mM NaCl(pH6.0)中のアポFab断片(精製されたFab)を、13mg/mlへと濃縮した。蒸気拡散シッティングドロップ実験において、0.2μlのタンパク質溶液を0.2μlレザバー溶液と混合することによって、結晶化液滴を21℃でセットアップした。5日以内に、0.1M トリス(pH8.5)、0.01M 塩化コバルト、20%ポリビニルピロリドンK15から結晶が出現し、8日以内に0.3mm×0.06mm×0.03mmの最終サイズへ成長した。
凍結防止剤として15%グリセロールを用いて結晶を採取し、次いで、液体N2中で急速凍結させた。Swiss Light SourceのビームラインX10SAで100Kの温度でPilatus 6M検出器を用いて回折画像を収集し、プログラムXDS(Kabsch,W.,J.Appl.Cryst.26(1993)795-800)によって処理し、(BRUKER AXSから入手された)SCALAでスケーリングし、2.22Åの解像度でデータを得た。このFab断片結晶は、a=90.23Å、b=118.45Å、c=96.79Å、およびβ=117.53°の胞寸法を有する単斜晶系空間群P21に属し、結晶学的非対称単位1個当たり4個のFab分子を含有している(表3を参照のこと)。
サーチモデルとしてPDBエントリー3PQPを用いた分子置換によって構造を解明し、電子密度を計算し、X線構造を精密化するため、CCP4ソフトウェアスイートの標準的な結晶学的プログラム(CCP4,Collaborative Computational Project,Acta Crystallogr.D,760-763(1994))を使用した。COOT(Emsley,P.,et al.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.60(2010)486-501)を使用して、構造モデルを電子密度へ再構築した。REFMAC5(Murshudov,G.N.,et al.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.53(1997)240-55)およびautoBUSTER(Global Phasing Ltd.)を用いて、座標を精密化した。
(表3)単斜晶系muM33 Fab断片アポ結晶についてのデータ収集および構造精密化の統計
1 括弧内の値は最高解像度ビンをさす。
2 R
merge=Σ|I-<I>|/ΣI(Iは強度である。)
3 R
cryst=Σ|F
o-<F
c>|/ΣF
o(F
oは構造因子の振幅の観察値であり、F
cは計算値である。)
4 R
freeは精密化中に省略された全データの5%に基づき計算された。
5 PROCHECK [Laskowski,R.A.,et al.,J.Appl.Crystallogr.26,283-291(1993)]によって計算された。
ビオチン誘導体との複合体としてのFab断片の結晶化のため、浸漬実験のために使用されたFab断片のアポ結晶が、スクリーニング後3日以内に0.8Mコハク酸から得られ、5日以内に0.25mm×0.04mm×0.04mmの最終サイズへ成長した。ビオシチンアミドを水に100mMで溶解させた。その後、当該化合物を結晶化溶液でワーキング濃度10mMへと希釈し、結晶化液滴内の結晶に加えた。結晶を、2μlの10mM 化合物溶液で3回洗浄し、最後に、ビオシチンアミドと共に21℃で16時間インキュベートした。
凍結防止剤として15%グリセロールを用いて結晶を採取し、次いで、液体N2で急速凍結させた。Swiss Light SourceのビームラインX10SAで100Kの温度でPilatus 6M検出器を用いて回折画像を収集し、プログラムXDS(Kabsch,W.,J.Appl.Cryst.26(1993)795-800)で処理し、(BRUKER AXSから入手された)SCALAでスケーリングし、2.35Åの解像度でデータを得た。このFab断片結晶は、a=89.09Å、b=119.62Å、c=96.18Å、およびβ=117.15°の胞寸法を有する単斜晶系空間群P21に属し、結晶学的非対称単位1個当たり4個のFab分子を含有している(表4を参照のこと)。
サーチモデルとしてアポFab断片の座標を用いた分子置換によって構造を解明し、電子密度を計算し、X線構造を2.5Åの解像度へと精密化するため、CCP4ソフトウェアスイートの標準的な結晶学的プログラム(CCP4)を使用した。構造モデルを、COOT(Emsley,P.,Lohkamp,B.,Scott,W.G.& Cowtan,K.Features and development of COOT.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.60(2010))を使用して、電子密度へ再構築した。REFMAC5(Murshudov,G.N.,et al.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.53(1997)240-55)およびautoBUSTER(Global Phasing Ltd.)を用いて、座標を精密化した。
(表4)単斜晶系muM33 Fab断片ビオシチンアミド複合体結晶についてのデータ収集および構造精密化の統計
1 括弧内の値は最高解像度ビンをさす。
2 R
merge=Σ|I-<I>|/ΣI(Iは強度である。)
3 R
cryst=Σ|F
o-<F
c>|/ΣF
o(F
oは構造因子の振幅の観察値であり、F
cは計算値である。)
4 R
freeは精密化中に省略された全データの5%に基づき計算された。
5 PROCHECK [Laskowski,R.A.,MacArthur,M.W.,Moss,D.S.& Thornton,J.M.PROCHECK:a program to check the stereochemical quality of protein structure.J.Appl.Crystallogr.26,283-291(1993)]によって計算された。
実験的構造決定の結果は図33に示されている。複合体の結晶形は、非対称単位内に4個の独立のビオシチンアミド:抗ビオチンFab複合体を含有しており、全てのFab分子に同様にビオシチンアミドが結合していた。ビオシチンアミドは、重鎖のCDR1およびCDR3ならびに3個全ての軽鎖CDRによって形成されたポケットに結合している。リガンドの結合ポケットは、重鎖に由来する残基ASN29、ASP31、THR32、PHE33、GLN35、TRP99、およびTRP106、ならびに軽鎖に由来するASN31、TYR32、LEU33、SER34、TYR49、SER50、PHE91、およびTYR96によって画定されている。ビオチンヘッド基は、ポケットの一端でCDR2およびCDR1の残基と水素結合を形成している:ビオシチンアミドのN3は、Ser50のヒドロキシル酸素と相互作用しており、O22は、同残基の骨格アミド窒素に接している。さらに、ビオシチンアミドのO22は、Ser34のヒドロキシル基酸素とも水素結合している。それに加えて、ビオシチンアミドと、結合ポケットを裏打ちしている芳香属側鎖との間に、疎水性相互作用が観察される。ビオチンの(CH2)4脂肪族テールの末端におけるアミド結合は、重鎖CDR1のPHE33の上に重なり、PHE33の骨格アミド窒素およびAsp31との付加的な水素結合によって安定化されている。これが、活性実体との結合の部位であるアミド窒素を、窒素の後続の原子が結合ポケットから溶媒の方に向くよう、位置付ける。
2.5Åの解像度での結合領域の実験的決定の結果は、組換えビオチン結合モジュールの詳細なモデリングおよびタンパク質工学を介したさらなる改善のための必要条件である、リガンドの抗体への結合モードの特徴決定を可能にする。
実施例6
共有結合性結合体化のために導入された官能基を有する抗ハプテン抗体の決定および生成
規定の位置における抗原/ハプテンの抗体との共有結合性カップリングを可能にする化合物を生成するため、上記の抗ハプテン抗体のヒト化されたVH配列およびVL配列の誘導体化を行った。
改変することによって、抗体とその複合体化された抗原/ハプテンとの間に部位特異的カップリング反応が起こることが可能になる位置を同定するため、ジゴキシゲニンに結合した抗ジゴキシゲニンFab断片(3RA7)の実験的に決定された構造(Metz,S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108(2011)8194-8199)を使用した。ビオチン結合抗体断片について導入されたシステイン残基の正確な位置を確認し、同定された位置の一般的な適用可能性の証拠を提供するため、ビオシチンアミドと結合した抗ビオチンFab断片の構造(実施例5を参照のこと)を使用した。
変異誘発される位置は、以下の二要件を同時に満たさなければならない:(i)指定のカップリングのために抗原/ハプテンのポジショニング効果を利用するため、カップリングの位置は結合領域に近接しているべきであり、かつ(ii)変異およびカップリングの位置は、抗原/ハプテン結合自体が影響を受けないように位置付けられなければならない。要件(i)は結合部位に近い位置によって最も満たされ、要件(ii)は結合部位から遠い位置によって最も安全に達成されるため、適当な位置を見出すためのこれらの要件は、事実上、互いに「矛盾」している。
事実上相容れないこれらの要件にも関わらず、本発明者らは、ハプテンのポジショニングに影響を与えることなく変異させることが可能であり、にも関わらず、同時に、ハプテン化化合物の指定の共有結合性カップリングを可能にする位置を同定することができた。
第1の位置はカバット番号付けによるVH52b位またはVH53位に位置し、それは各抗体のCDR2の実際の長さに依存する。抗ジゴキシゲニン抗体の構造において、ハプテンは疎水性残基によって形成された深いポケットに結合している。この結晶学的研究において、蛍光性ジゴキシゲニン-Cy5結合体を使用したところ、蛍光体も、ジゴキシゲニンとCy5との間のリンカーも、結晶における高い柔軟性およびその結果としての障害のため、構造において可視でなかった。しかしながら、リンカーおよびCy5は、重鎖のCDR2の方向を向いているジゴキシゲニンのO32に結合されている。ジゴキシゲニンのO32(上記を参照のこと)と、カバット番号付けによる52b位のアミノ酸残基のCαとの間の距離は、10.5Åである。
VH52b/VH53位のアミノ酸のCysへの置換は、抗ジゴキシゲニン抗体-VH52bCについてはSEQ ID NO:20および28、抗テオフィリン抗体-VH53CについてはSEQ ID NO:84および92、抗ビオチン抗体-VH53CについてはSEQ ID NO:52および60、抗フルオレセイン抗体-VH52bCについてはSEQ ID NO:108として記載されている重鎖可変領域配列を有する抗体誘導体を生成した。
修飾点として同定されたさらなる位置は、カバット番号付けによるVH28位である。
従って、本発明者らは、カバットVH28位にシステインを導入した。VH28位のアミノ酸のCysへの置換は、抗ジゴキシゲニン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:124および132、抗テオフィリン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:156および164、抗ビオチン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:140および148、抗フルオレセイン抗体-VH28CについてはSEQ ID NO:116として記載されている重鎖可変領域配列を有する抗体誘導体を生成した。
これらの位置のうちの一つが「ユニバーサルな」位置であることが見出された。即ち、これらの位置は、任意の抗体に適用可能であり、従って、結晶構造を準備し、ハプテンが位置付けられた共有結合性カップリングを可能にする適切な位置を決定することによる、新しい抗体の修飾を、毎回、最初から開始することは必要とされない。
それぞれ、カバット重鎖可変領域番号付けによる変異VH52bCまたはVH53Cを、各ハプテン結合抗体(抗ハプテン抗体)のために使用することができる。抗体および結合ポケットの構造が極めて多様であるにも関わらず、ジゴキシゲニン、ビオチン、フルオレセイン、およびテオフィリンに結合する抗体への抗原/ハプテンの共有結合性の結合のため、VH52bC/VH53C変異を使用することが可能であることが示された。
これらの配列から構成された結合実体を発現させ、標準的なプロテインAクロマトグラフィおよびサイズ排除クロマトグラフィによって精製することができた(実施例7を参照のこと)。得られた分子は、完全に機能性であり、かつ、未修飾の親分子と同様に同種のハプテンに対する親和性を保持していた。これは表面プラズモン共鳴(SPR)実験によって証明された(実施例9を参照のこと)。
実施例7
組換え抗ハプテン抗体の組成、発現、および精製
単一特異性または二重特異性のキメラ抗体またはヒト化抗体を形成するため、マウス抗ハプテン抗体可変領域およびヒト化抗ハプテン抗体可変領域を、ヒト起源の定常領域と組み合わせた。
単一特異性ヒト化抗ハプテン抗体、ならびにハプテンおよび異なる非ハプテン標的(例えば、受容体チロシンキナーゼまたはIGF-1R)に特異的に結合する二重特異性ヒト化抗ハプテン抗体の生成は、(i)そのような分子についてのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の設計および決定、(ii)トランスフェクトされた培養哺乳動物細胞におけるこれらの分子の発現、ならびに(iii)トランスフェクトされた細胞の上清からのこれらの分子の精製を必要とした。これらの工程は、PCT/EP2011/074273に以前に記載されたように実施された。
概して、(オリジナルの)マウス抗ハプテン抗体の結合特異性を有するIgGクラスのヒト化抗体を生成するために、ヒト化VH配列を、サブクラスIgG1のヒトFc領域のCH1-ヒンジ-CH2-CH3のN末端にインフレームで融合させた。同様に、ヒト化VL配列を、ヒトのCLκ定常領域のN末端にインフレームで融合させた。
ハプテン結合特異性のみならず、他の標的に対する特異性も含有している二重特異性抗体誘導体を生成するため、抗ハプテン抗体、scFv断片、またはFab断片を、以前に記載された抗体の重鎖のC末端にインフレームで融合させた。多くの場合、適用された抗ハプテンscFvは、以前に記載された(例えば、Reiter,Y.,et al.,Nature biotechnology 14(1996)1239-1245)VH44-VL100ジスルフィド結合の導入によってさらに安定化された。
発現プラスミド
重鎖および軽鎖の発現のための発現カセットを含む発現プラスミドを、哺乳動物細胞発現ベクターにおいて別々に構築した。
それによって、上に概説されているような個々の要素をコードする遺伝子セグメントを連結した。
コドン使用頻度を推定することができるヒトの軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication No 91-3242に与えられている。
κ軽鎖の転写単位は、以下の要素から構成されている:
− ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)由来の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− コザック配列を含む合成5'-UT、
− シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
− 5'末端にユニークなBsmI制限部位、3'末端にスプライスドナー部位およびユニークなNotI制限部位が配置された、クローニングされた可変軽鎖cDNA、
− イントロン2マウスIg-κエンハンサーを含むゲノムヒトκ遺伝子定常領域(Picard,D.,and Schaffner,W.Nature 307(1984)80-82)、ならびに
− ヒト免疫グロブリンκ-ポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列。
γ1重鎖の転写単位は、以下の要素から構成されている:
− ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)由来の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− コザック配列を含む合成5'-UT、
− シグナル配列イントロンを含む修飾されたマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
− 5'末端にユニークなBsmI制限部位、3'末端にスプライスドナー部位およびユニークなNotI制限部位が配置された、クローニングされた単一特異性可変重鎖cDNAまたはクローニングされた二重特異性融合scFv-可変重鎖cDNA、
− マウスIgμ-エンハンサーを含むゲノムヒトγ1重鎖遺伝子定常領域(Neuberger,M.S.,EMBO J.2(1983)1373-1378)、ならびに
− ヒト免疫グロブリンγ1-ポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列。
κ軽鎖またはγ1重鎖の発現カセットの他に、これらのプラスミドは、以下のものを含有している:
− ハイグロマイシン耐性遺伝子、
− エプスタインバーウイルス(EBV)の複製開始点oriP
− 大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製開始点、および
− 大腸菌にアンピシリン耐性を付与するβラクタマーゼ遺伝子。
組換えDNA技術
クローニングは、Sambrook et al.,1999(前記)に記載されているような標準的なクローニング技術を使用して実施された。分子生物学試薬は、(他に示されない限り)全て、市販のものであり、製造業者の説明書に従って使用された。
コード配列、変異、またはさらなる遺伝要素を含有しているDNAは、Geneart AG(Regensburg)によって合成された。
DNA配列は、SequiServe(SequiServe GmbH,Germany)において実施された二本鎖配列決定によって決定された。
DNAおよびタンパク質の配列分析ならびに配列データ管理
Vector NTI Advanceスイートバージョン9.0を、配列の作出、マッピング、分析、アノテーション、および図示のために使用した。
抗ハプテン抗体および誘導体の発現
懸濁物中のヒト胎児由来腎臓293(HEK293)細胞の一過性トランスフェクションによって、抗ハプテン抗体を発現させた。そのために、対応する単一特異性抗体または二重特異性抗体の軽鎖および重鎖を、上に概説したような原核生物および真核生物の選択マーカーを保持している発現ベクターにて構築した。これらのプラスミドを、大腸菌において増幅し、精製し、その後、一過性トランスフェクションのために適用した。Current Protocols in Cell Biology(2000),Bonifacino,J.S.,Dasso,M.,Harford,J.B.,Lippincott-Schwartz,J.and Yamada,K.M.(eds.),John Wiley & Sons,Incに記載されているような標準的な細胞培養技術を、細胞の取り扱いのために使用した。
細胞を、37℃/8%CO2で適切な発現培地にて培養した。トランスフェクションの日に、1〜2×106生存可能細胞/mlの密度で新鮮な培地に細胞を播種した。最終トランスフェクション容量250mlにつき250μgの重鎖および軽鎖のプラスミドDNAをモル比1:1で含むOpti-MEM I培地(Invitrogen,USA)にて、トランスフェクション試薬とDNAの複合体を調製した。トランスフェクションの7日後に、単一特異性抗体または二重特異性抗体を含有している細胞培養上清を、14,000gでの30分間の遠心分離および無菌フィルタ(0.22μm)でのろ過によって清澄化した。上清を精製まで-20℃で保管した。
細胞培養上清中の抗体および誘導体の濃度を決定するため、アフィニティHPLCクロマトグラフィを適用した。そのために、プロテインAに結合する単一特異性抗体または二重特異性抗体またはそれらの誘導体を含有している細胞培養上清を、200mM KH2PO4、100mM クエン酸ナトリウム(pH7.4)を含む溶液で、Applied Biosystems Poros A/20カラムにアプライした。クロマトグラフィ材料からの溶出を、200mM NaCl、100mM クエン酸(pH2.5)を含む溶液をアプライすることによって実施した。UltiMate 3000 HPLC系(Dionex)を使用した。溶出したタンパク質を、UV吸光度およびピーク面積の積分によって定量化した。精製されたIgG1抗体を標準物として用いた。
ジゴキシゲニン、フルオレセイン、テオフィリン、またはビオチンに結合する抗ハプテン抗体の精製
トランスフェクションの7日後に、HEK293細胞上清を採取した。そこに含有されていた組換え抗体(または誘導体)を、プロテインA-Sepharose(商標)アフィニティクロマトグラフィ(GE Healthcare,Sweden)を使用したアフィニティクロマトグラフィおよびSuperdex200サイズ排除クロマトグラフィによって2工程で上清から精製した。簡単に説明すると、抗体を含有している清澄化された培養上清を、PBS緩衝剤(10mM Na2HPO4、1mM KH2PO4、137mM NaCl、および2.7mM KCl、pH7.4)によって平衡化されたMabSelectSuReプロテインA(5〜50ml)カラムにアプライした。未結合のタンパク質を平衡化緩衝剤で洗浄除去した。抗体(または誘導体)を、50mM クエン酸緩衝液(pH3.2)で溶出させた。タンパク質を含有している画分を、0.1mlの2M トリス緩衝剤(pH9.0)で中和した。次いで、溶出したタンパク質画分をプールし、Amicon Ultra遠心式フィルタデバイス(MWCO:30K、Millipore)で濃縮し、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)で平衡化されたSuperdex200 HiLoad 26/60ゲルろ過カラム(GE Healthcare,Sweden)にロードした。Pace et.al.,Protein Science 4(1995)2411-2423に従って、アミノ酸配列に基づき計算されたモル吸光係数を使用して、バックグラウンド補正として320nmにおけるODを用いて、280nmにおける光学濃度(OD)を決定することによって、精製された抗体および誘導体のタンパク質濃度を決定した。単量体抗体画分をプールし、急速凍結させ、-80℃で保管した。試料の一部分は、後のタンパク質分析および特徴決定のために提供された。
還元剤(5mM 1,4-ジチオスレイトール)の存在下および非存在下でのSDS-PAGEによって、抗体の均質性を確認し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲル系(Invitrogen,USA)を、製造業者の説明書に従って使用した(4〜20%トリスグリシンゲル)。
還元条件下では、IgG関連ポリペプチド鎖が、計算された分子量に類似した見かけの分子サイズで、SDS-PAGEの後に同定された。全ての構築物の発現レベルをプロテインAによって分析した。そのような最適化されていない一過性発現実験において、平均タンパク質収量は、細胞培養上清1リットル当たり6mg〜35mgの精製されたタンパク質であった。
実施例8
ハプテン化化合物の生成
非共有結合性複合体化および結合体化(共有結合性複合体化)のための化合物の生成のためには、(i)適当なリンカーを介してハプテンを化合物(=ペイロード)にカップリングさせること、および(ii)化合物が機能性を保持することを可能にする様式でカップリングが起こることを確実にすることが必要である。
(a)ハプテン-ポリペプチド結合体:
ポリペプチドとハプテンとの間のリンカーにシステイン残基などの反応性残基を導入できるのであれば、ハプテン保持リンカーによって、任意のポリペプチドがN末端またはC末端または側鎖位置で誘導体化され得る。具体的には、ポリペプチドは非天然アミノ酸残基を含み得る。
例示的なハプテン化化合物は、下記表5に列挙されている。
略語:
4Abu=4-アミノ酪酸
Ahx=アミノヘキサン酸
Btn=ビオチニル
cme=カルボキシメチル
Cy5=インドジカルボシアニン、シアニン-5
Dadoo=1,8-ジアミノ-3,6-ジオキソオクタン
DCM=ジクロロメタン
Dig(Osu)=ジゴキシゲニン-3-カルボキシメチル-N-ヒドロキシスクシンイミド
Dy636=蛍光体
eda=エチレンジアミン
Fluo=5-カルボキシフルオレセイン
HATU=0-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HFIP=1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロパノール
Mmt=4-メトキシトリチル
MR121=オキサジン蛍光体
MTBE=tert.ブチルメチルエーテル
NMM=N-メチルモルホリン
NMP=N-メチル-2-ピロリドン
PEG2=8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸
PEG3=12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸
O2Oc=8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸
Pip=ピペリジン
Pqa=4-オキソ-6-ピペラジン-1-イル-4H-キナゾリン-3-イル)-酢酸
TBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TCEP=トリス(2-クロロエチル)ホスフェート
TFE=2,2,2,トリフルオロエタノール
TIS=トリイソプロピルシラン
カップリング手法のスキームおよび利用された試薬は、図30、31、および32に示されている。
本明細書において使用された例示的なポリペプチドは、ニューロペプチド-2受容体アゴニスト誘導体であった。このポリペプチドは、WO 2007/065808に報告されているようなペプチドチロシンチロシンまたは膵臓ペプチドYY、略してPYY(3-36)類似体である。それを、2位のアミノ酸残基リジンを介してジゴキシゲニン化した。ポリペプチドをジゴキシゲニン残基と連結している側鎖に関係なく、ジゴキシゲニン化されたPYYポリペプチドを、下記文中、DIG-PYYと呼ぶ。
他の例示的な化合物は、非ペプチド蛍光色素Cy5、Dy636、およびMR121である。これらの化合物は、NHSエステル化学を介して、リンカー系を含有しているジゴキシゲニンまたはビオチンにカップリングされ得る。
(i)PYY(3-36)由来ポリペプチド結合体化前駆体の生成のための一般法
自動多重合成装置におけるPYY誘導体のための標準的なプロトコル:
合成装置:ボルテックス撹拌系を含むMultiple Synthesizer SYRO I(MultiSynTech GmbH,Witten)
樹脂:200mg TentaGel S RAM(0.25mmol/g)(RAPP Polymere,Tubingen)、反応槽としてのテフロンフリット付き10mlプラスチックシリンジ
ストック溶液:
Fmocアミノ酸:DMF中またはNMP中で0.5M
デブロッキング試薬:DMF中の30%ピペリジン
活性化剤:それぞれ0.5MのTBTUおよびHATU
塩基:NMP中の50%NMM
カップリング:
Fmocアミノ酸:519μl
塩基:116μl
活性化剤:519μl
反応時間:ダブルカップリング:2×30分
Fmoc-デブロック:
デブロッキング試薬:1200μl
反応時間:5分+12分
洗浄:
溶媒:1200μl
容量:1300μl
反応時間:5×1分
最終切断:
切断試薬:8ml TFA/チオアニソール/チオクレゾール/TIS(95:2.5:2.5:3)
反応時間:4時間
ワークアップ:切断溶液をろ過して1〜2mlまで濃縮し、MTBEの添加によってペプチドを沈殿させた。白色固体を、遠心分離によって収集し、MTBEで2回洗浄し、乾燥させた。
Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)
(PYYと呼ばれる)PYY(3-36)-ポリペプチド誘導体を、樹脂に結合したペプチド配列Ac-IK(Mmt)-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel-RAM樹脂の自動固相合成によって得た。ペプチド合成は、Fmoc化学を使用して、ボルテックス撹拌系を含むMultiple Synthesizer SYRO I(MultiSynTech GmbH,Witten)において実施された。TentaGel RAM樹脂(ローディング:0.25mmol/g;Rapp Polymers,Germany)を利用して、対応するFmoc-アミノ酸(規模:0.05mmol)の連続カップリングによる反復サイクルにおいてペプチド配列を構築した。全てのカップリング工程において、ジメチルホルムアミド(DMF)中の30%ピペリジンによる樹脂の処理(5分+12分)によって、N末端Fmoc基を除去した。1位、13位、14位、および15位においてTBTU(0.25mmol)によって活性化されたFmoc保護アミノ酸(0.25mmol)、ならびにNMP中のNMM50%を利用して、カップリングを実施した(ダブルカップリング、2×30分ボルテックス)。他の全ての位置において、HATU(0.25mmol)およびNMP中のNMM50%を活性化剤として使用した。各カップリング工程間に、樹脂を、DMFで5×1分洗浄した。直鎖状前駆体の合成の後、15分以内にDMF/DIPEA/Ac2Oとの反応によってアセチル化を実施し、DMFで洗浄して、Ac-IK(Mmt)-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂を得た。
Mmt基の除去のため、ペプチドをDCM/HFIP/TFE/TIS(6.5:2:1:0.5)で2×1時間処理し、DMFで洗浄した後に、部分的にデブロックされた前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂を得た。
Ac-PYY(PEG3-Dig)/Ac-IK(PEG3-Dig)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 (SEQ ID NO:177)
合成はWO 2012/093068も参照のこと。
水(5mL)中のペプチドAc-IK(H2N-TEG)-Pqa-RHYLNWVTRQ(N-メチル)RY(100mg、40.6μmol)の溶液に、NMP(1mL)に溶解したジゴキシゲニン-3-カルボキシ-メチル-N-ヒドロキシスクシンイミド(26.6mg、48.8μmol)を添加した。トリエチルアミン(13.6L、97.6μmol)を添加し、混合物を室温で2時間タンブル混合した。その後、NMP(0.5mL)に溶解した付加的なジゴキシゲニン-3-カルボキシ-メチル-N-ヒドロキシスクシンイミド(13.3mg、24.4μmol)、およびトリエチルアミン(6.8μL、48.8μmol)を添加し、溶液を15時間タンブル混合した。粗生成物を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製して、無色の固体としてDig-PYYペプチド(29mg、10.0μmol、25%)を得た。ペプチド誘導体の分析的特徴決定のため、本発明者らは、以下の条件を適用し、以下のデータを受容した:分析用HPLC:tR=11.3分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA、80:20、25分);ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:C140H207N35O32についての計算値:2892.4;測定値:964.9 [M+2H]2+、計算値:965.1。抗体との複合体化の時点まで、4℃で凍結乾燥物としてジゴキシゲニン化ペプチドを保管した。図2Cは、DIG-moPYYの構造を示す。
(ii)システイン含有リンカーを含むジゴキシゲニン化PYY(3-36)由来ポリペプチドの生成
Ac-IK(PEG3-Cys-4Abu-NH 2 )-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 (SEQ ID NO:178)
前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、以下の工程によってペプチド合成を続けた。
1.2ml DMF中の66.5mg(3当量)のFmoc-12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)、57.0mg(3当量)のHATU、および16.7μl(3当量)のNMMを用いた2×30分の手動ダブルカップリング。DMFでの洗浄(5×1分)の後、30%Pip/DMFによってFmoc基を切断し、標準的なプロトコルを使用して樹脂をDMFで洗浄した。
その後のFmoc-Cys(Trt)-OHおよびFmoc-4-Abu-OHのダブルカップリングは、自動多重合成装置におけるPYY誘導体のための標準的なプロトコルに記載されたようなプロトコルによって、SYRO1合成装置において自動的に実施された。最後に、DMF、EtOH、MTBEで樹脂を洗浄し、乾燥させた。
8mlのTFA/チオアニソール/チオクレゾール/TIS(95:2.5:2.5:3)によって、4時間、樹脂からの切断を実施した。切断溶液をろ過し、1〜2mlまで濃縮し、MTBEの添加によってペプチドを沈殿させた。白色固体を遠心分離によって収集し、MTBEで2回洗浄し、乾燥させた。
粗生成物を調製用逆相HPLCによって精製して、無色固体を得た。収量:28.0mg。
精製プロトコル
HPLC:UV-Vis検出器SPD-6Aを有するShimadzu LC-8A
溶媒A:水中の0.05%TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05%TFA
カラム:UltraSep ES,RP-18、10μm、250×20mm(SEPSERV,Berlin)
流速:15ml/分
検出:230nm
勾配:30分で20〜50%B
分析データ:
HPLC:フォトダイオードアレイ検出器SPD-M6Aを有するShimadzu LC-9A
溶媒A:水中の0.05%TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05%TFA
カラム:UltraSep ES,RP-18、7μm、250×3mm(SEPSERV,Berlin)
流速:0.6ml/分
勾配:30分で5〜80%B
MS:Shimadzu飛行時間型質量分析計AXIMA(リニア)(MALDI-TOF)、分子量は平均質量として計算された
m/z:C122H185N37O28Sについての計算値=2650.13;測定値:2650.3
Ac-IK(PEG3-Cys-4Abu-Dig)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH2(SEQ ID NO:179)
50μl DMSO中の15mgのペプチドAc-IK(PEG3-Cys-4Abu-NH2)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-アミド(SEQ ID NO:180)の溶液に、250μl PBS緩衝液(pH7.4)を添加し、溶液を一晩撹拌した。二量体形成をHPLCによって調節した。18時間後、およそ90%の二量体が形成された。
この溶液に、100μl DMFに溶解した7.3mgのジゴキシゲニン-3-カルボキシ-メチル-N-ヒドロキシスクシンイミド(Dig-OSu)を添加し、混合物を室温で5時間撹拌した。その後、100μl DMFに溶解した16.9mgのDig-Osuをさらに添加し、2時間撹拌した。100μl DMF中6.9mgの量をさらに添加し、18時間撹拌した。二量体の還元のため、TCEPを添加して3時間撹拌し、溶液を調製用逆相HPLCによる精製のために直接使用した。
分析データ:
条件はSEQ ID NO:178について記載されたのと同一であった。
調製用HPLCについての勾配:30分で38〜58%B
収量:5.3mg
m/z:C147H219N37O34Sについての計算値=3080.7;測定値:3079.8
PEG3-IK(PEG3-Cys-4Abu-Dig)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 (SEQ ID NO:180)
樹脂に結合したPYY配列:PEG2-IK(ivDde)-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel-RAM樹脂(SEQ ID NO:181)の自動固相合成
Fmoc化学を使用して、自動Applied Biosystems ABI 433Aペプチド合成装置において、確立されているプロトコル(FastMoc 0.25mmol)に従って、ペプチド合成を実施した。TentaGel RAM樹脂(ローディング:0.18mmol/g;Rapp Polymers,Germany)を利用して、対応するFmoc-アミノ酸(規模:0.25mmol)の連続カップリングによる反復サイクルでペプチド配列を構築した。全てのカップリング工程において、N-メチルピロリドン(NMP)中の20%ピペリジンによる樹脂の処理(3×2.5分)によって、N末端Fmoc基を除去した。カップリングは、DMF中のHBTU/HOBt(各1mmol)およびDIPEA(2mmol)によって活性化されたFmoc保護アミノ酸(1mmol)を利用して実施された(45〜60分ボルテックス)。それぞれ、2位、3位、および14位において、アミノ酸誘導体Fmoc-Lys(ivDde)-OH、Fmoc-Pqa-OH、およびFmoc-N-Me-Arg(Mtr)-OHを合成配列へ組み入れた。全てのカップリング工程の後、未反応のアミノ基を、NMP中のAc2O(0.5M)、DIPEA(0.125M)、およびHOBt(0.015M)の混合物による処理によってキャッピングした(10分ボルテックス)。各工程間に、樹脂を、N-メチルピロリドンおよびDMFによって充分に洗浄した。立体障害アミノ酸の組み入れを、自動ダブルカップリングにおいて達成した。この目的のため、カップリングサイクル間に、キャッピング工程なしに、1mmolの活性化されたビルディングブロックによって、2回、樹脂を処理した。標的配列の完成の後、NMP中の20%ピペリジンによってN末端Fmoc基を除去し、HBTU/HOBt(各2mmol)およびDIPEA(4mmol)による活性化の後に、2-[2-(メトキシエトキシ)-エトキシ]酢酸(4mmol)をカップリングした。その後、樹脂を、さらなる操作のため、フリット付き固相リアクタへ移した。
PEG2-IK(PEG3-Cys-Abu-NH2)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH2(SEQ ID NO:182)
ivDde基の除去のため、ペプチド樹脂(PEG2-IK(ivDde)-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel-RAM樹脂;SEQ ID NO:181)を、30分間DMFによって膨張させ、その後、DMF(60mL)中のヒドラジン水和物の2%溶液によって2時間処理した。イソプロパノールおよびDMFによって樹脂を充分に洗浄した後、DMF(3mL)中のFmoc-12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)(887mg、2mmol)、HBTU(2mmol)、HOBt(2mmol)、および2Mジイソプロピルエチルアミン(2mL、4mmol)の溶液を添加し、混合物を3時間振とうした。樹脂をDMFで洗浄し、Fmoc基をDMF中の混合物20%ピリジンによって切断した。その後、樹脂をFmoc-Cys(Trt)-OH(1.2g;2mmol)、HBTU/HOBt(各2mmol)、およびDIPEA(4mmol)の混合物によって2時間処理した。樹脂をDMFで洗浄し、Fmoc基をDMF中の混合物20%ピリジンによって切断し、HBTU/HOBt(各2mmol)およびDIPEA(4mmol)によって活性化されたFmoc-4-アミノ酪酸(0.65g、2mmol)をカップリングした(2時間)。N末端Fmoc基を、NMP中の20%ピペリジンによって除去し、樹脂をDMFで繰り返し洗浄した。その後、樹脂を、2.5時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(19mL:0.5mL:0.5mL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、ペプチドを冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(300mL)の添加によって沈殿させ、無色固体を得、それをジイソプロピルエーテルで繰り返し洗浄した。粗生成物を、酢酸/水の混合物に再溶解させ、凍結乾燥させ、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製した。
分析用HPLC:tR=8.6分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分);ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:C127H195N37O31Sについての計算値:2768.3;測定値:1385.0 [M+2H]2+、計算値:1385.1;923.7 [M+3H]3+、計算値:923.8;693.1 [M+4H]4+、計算値:693.1。
PEG2-IK(PEG3-Cys-4Abu-Dig)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH2(PEG2-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)(SEQ ID NO:183)
DMF(3mL)中のペプチドPEG2-IK(PEG3-Cys-Abu-NH2)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH2(SEQ ID NO:182、4.1mg、1.48μmol)の溶液に、NMP(1mL)に溶解したジゴキシゲニン-3-カルボキシ-メチル-N-ヒドロキシスクシンイミド(0.81mg、1.48μmol)を添加した。DMF中のトリエチルアミン(0.41μl、97.6μmol)を添加し、混合物を室温で2時間でタンブル混合した。粗生成物を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、無色の固体としてPEG3-Cys-4Abu-Digペプチド(1.2mg、0.375μmol、25%)を得た。
分析用HPLC:tR=10.2分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分);ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:C152H229N37O37Sについての計算値:3198.8;測定値:1067.3 [M+3H]3+、計算値:1067.3.
(iii)ビオチンを含むかまたはビオチンおよびシステイン含有リンカーを含むPYY(3-36)由来ポリペプチドの生成:
Ac-IK(PEG2-ビオチン)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-アミド/Ac-PYY(PEG2-ビオチン)(SEQ ID NO:184)
共通の前駆体ペプチド樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、1.2ml DMF中の57.8mg(3当量)のFmoc-8-アミノ-ジオキサオクタン酸(PEG2スペーサー)、48.2mg(3当量)のTBTU、および33.3μl(6当量)のNMMを用いて、手動で、2回、各30分、ペプチドをカップリングし、DMFで洗浄した。SEQ ID NO:176について記載された標準的なプロトコルを使用して、30%Pip/DMFによってFmoc基を切断し、樹脂をDMFで洗浄し、NMP中のビオチン-OBt溶液(1.2ml NMP中の48.9mgのビオチン(4当量)、64.2mgのTBTU(4当量)、および44.4μlのNMM(8当量)、予備活性化3分)によって2時間処理した。DMF、EtOH、およびMTBEで洗浄した後、ペプチド樹脂を乾燥させた。
最終切断を上記のように実施した。粗生成物を、30分で22〜52%Bという勾配を利用した調製用逆相HPLCによって精製し、固体を得た。収量:42mg。
精製プロトコル
HPLC:UV-Vis検出器SPD-6Aを有するShimadzu LC-8A
溶媒A:水中の0.05%TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05%TFA
カラム:UltraSep ES,RP-18、10μm、250×20mm(SEPSERV,Berlin)
流速:15ml/分
検出:230nm
分析データ:
HPLC:フォトダイオードアレイ検出器SPD-M6Aを有するShimadzu LC-9A
溶媒A:水中の0.05%TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05%TFA
カラム:UltraSep ES,RP-18、7μm、250×3mm(SEPSERV,Berlin)
流速:0.6ml/分
勾配:30分で5〜80%B
MS:Shimadzu飛行時間型質量分析計AXIMA(リニア)(MALDI-TOF)、分子量は平均質量として計算された。
m/z:C122H181N37O27Sについての計算値=2630.10;測定値:2631.5。
Ac-IK(PEG3-Cys-β-Ala-ビオチン)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 /Ac-PYY(PEG3-Cys-β-Ala-ビオチン)(SEQ ID NO:185)
前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、1.2ml DMF中の66.5mg(3当量)のFmoc-12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)、57.0mg(3当量)のHATU、および16.7μl(3当量)のNMMを用いて、手動で、2回、30分間、ペプチドをカップリングした。DMFで洗浄した後、Fmoc基を30%Pip/DMFによって切断し、標準的なプロトコルを使用して、樹脂をDMFで洗浄した。
標準的なプロトコルによってSYRO1合成装置において自動的に実施されたFmoc-Cys(Trt)-OHおよびFmoc-β-Ala-OHのダブルカップリングの後、(1.2ml NMP中の48.9mgのビオチン(4当量)、64.2mgのTBTU(4当量)、および44.4μlのNMM(8当量)(予備活性化3分)から調製された)NMP中のビオチン-OBtの溶液を手動で添加し、室温で撹拌した。2時間後、樹脂をDMF、EtOH、MTBEで洗浄し、乾燥させた。
最終切断を上記のように実施した。粗生成物を、SEQ ID NO:184について記載されたような調製用逆相HPLCによって精製し、無色の固体を得た。収量:41.4mg。
分析データ:
調製用HPLCのための勾配:30分で28〜58%B
m/z:C131H197N39O30S2についての計算値=2862.4;測定値:2862.4。
Ac-IK(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 /Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)(SEQ ID NO:186)
前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、以下の工程によってペプチド合成を続けた:
(標準的なプロトコルによる)Fmoc-PEG3-OHによるダブルカップリング、
(標準的なプロトコルによる)Fmoc Cys(Trt)-OHのダブルカップリング、
1.2ml DMF中の57.8mg(3当量)のFmoc-8-アミノ-ジオキサオクタン酸(PEG2スペーサー)、48.2mg(3当量)のTBTU、および33.3μl(6当量)のNMMによるFmoc-PEG2-OHのダブルカップリング、2×30分、ならびに1.2ml NMP中の48.9mgのビオチン(4当量)、64.2mgのTBTU(4当量)、および44.4μlのNMM(8当量)の溶液(予備活性化3分)によるビオチン化、シングルカップリング2時間。
SEQ ID NO:184について記載されたように、樹脂からの切断、精製、および分析を実施した。収量:47.7mg。
分析データ:
SEQ ID NO:184と同一の条件。
調製用HPLCのための勾配:30分で25〜45%B
m/z:C134H203N39O32S2についての計算値=2936.5;測定値:2937.8。
(iv)フルオレセインを含むかまたはフルオレセインおよびシステイン含有リンカーを含むPYY(3-36)由来ポリペプチドの生成
Ac-IK(PEG3-Cys-4-Abu-5-Fluo)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 /Ac-PYY(PEG3-Cys-4-Abu-5-Fluo)(SEQ ID NO:187)
前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)--Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、SEQ ID NO:179と同様にペプチド合成を続けた。標識のため、DMF中の54.2mgの5-カルボキシフルオレセイン、33.1mgのHOBt、および35.6μlのDICの溶液を添加し、室温で18時間撹拌した。
SEQ ID NO:179について記載されたように、樹脂の切断、精製、および分析を実施した。収量:41.6mg。
分析データ:
調製用HPLCのための勾配:30分で29〜49%B
m/z:C143H195N37O34Sについての計算値=3008.44;測定値:3007.2。
Ac-IK(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo)-Pqa-RHYLNWVTRQ-MeArg-Y-NH 2 /Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo)(SEQ ID NO:188)
前駆体Ac-IK-Pqa-R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)-MeArg(Mtr)-Y(tBu)-TentaGel S RAM樹脂(SEQ ID NO:176)から出発して、以下の工程によってペプチド合成を続けた:
(標準的なプロトコルによる)Fmoc-PEG3-OHによるダブルカップリング、
(標準的なプロトコルによる)Fmoc Cys(Trt)-OHのダブルカップリング、
Fmoc-PEG2-OHのダブルカップリング(SEQ ID NO:186を参照のこと)。
標識のため、ペプチド樹脂を、DMF中の56.7mgの5-カルボキシフルオレセイン、34.6mgのHOBt、および37.3μlのDICの溶液と共に18時間撹拌した。SEQ ID NO:185において記載されたように、樹脂からの切断、精製、および分析を実施した。収量:41.7mg。
分析データ:
調製用HPLCのための勾配:30分で34〜64%B
m/z:C145H199N37O36S1についての計算値=3068.5;測定値:3069.2。
(b)ハプテン標識蛍光色素:
(i)ジゴキシゲニン化Cy5の生成
合成はWO 2012/093068を参照のこと。
(ii)Dig-Cys-MR121の生成
三角フラスコにおいて、1,2-ジアミノ-プロパントリチル樹脂(250mg、0.225mmol、ローディング0.9mmol/g)を、30分間DMF(5mL)によって膨張させた。その後、DMF(2mL)中のFmoc-Cys(Trt)-OH(395mg、0.675mmol)の溶液およびDMF(8mL)中のHATU(433mg、1.2375mmol)およびHOAt(164mg、1.2375mmol)の溶液を樹脂に添加した。この懸濁物に、DIPEA(385μL、2.25mmol)を添加し、混合物を環境温度で16時間でかき混ぜ、ろ過し、DMFで繰り返し洗浄した。カップリング工程の後、未反応のアミノ基を、DMF中のAc2O(20%)の混合物による処理によってキャッピングし、続いて、DMFでの洗浄工程を行った。N末端Fmoc基の除去は、2時間のDMF中のピペリジン(20%)による樹脂の処理によって達成された。その後、樹脂を、DMFおよびイソプロパノールで充分に洗浄し、再び、DMFで洗浄し、次いで、DMF(10mL)中の1%DIPEA中のMR121(25mg、0.05mmol)の溶液によって16時間処理した。ろ過およびDMFでの洗浄の後、樹脂を、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9mL:9mL:1mL)の混合物によって3時間処理した。切断溶液を、ろ過し、減圧下で濃縮し、得られた固体を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥させた。分析用HPLC:tR=7.7分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分)。その後、この中間体の一部分(10.0mg、17.6mol)を、DMF(1mL)に溶解させ、 DMF(1mL)中のジゴキシゲニン-3-カルボキシ-メチル-N-ヒドロキシスクシンイミド(9.6mg、17.6μmol)およびDMF(2mL)中の1%トリエチルアミンの溶液を添加し、混合物を16時間タンブル混合した。その後、溶液を濃縮し、標的化合物を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製した。収量:1.0mg。分析用HPLC:tR=10.1分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分)。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:996.3;測定値:995.8[M]1+。
(iii)DIG-Cys-Ahx-Cy5の生成
三角フラスコにおいて、1,2-ジアミノプロパントリチル樹脂(250mg、0.225mmol、ローディング0.9mmol/g)を、30分間、DMF(5mL)によって膨張させた。その後、DMF(2mL)中のFmoc-Cys(Trt)-OH(395mg、0.675mmol)の溶液ならびにDMF(8mL)中のHATU(433mg、1.2375mmol)およびHOAt(164mg、1.2375mmol)の溶液を、樹脂に添加した。この懸濁物に、DIPEA(385μL、2.25mmol)を添加し、混合物を環境温度で16時間かき混ぜ、ろ過し、DMFで繰り返し洗浄した。カップリング工程の後、未反応のアミノ基を、DMF中のAc2O(20%)の混合物による処理によってキャッピングし、その後、DMFでの洗浄工程を行った。N末端Fmoc基の除去を、DMF中のピペリジン(20%)による樹脂の処理によって達成した。その後、樹脂を、DMFおよびイソプロパノールで充分に洗浄し、再び、DMFで洗浄し、次いで、16時間、DMF(10mL)中の1%DIPEA中のCy5-Mono NHSエステル(25mg、0.0316mmol)の溶液によって処理した。ろ過およびDMFでの洗浄の後、樹脂を、3時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9mL:9mL:1mL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、減圧下で濃縮し、得られた固体を、水に再溶解させ、凍結乾燥させた。中間体の精製を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって達成し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。分析用HPLC:tR=6.2分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分)。その後、この中間体の一部分(6.5mg、7.9μmol)をDMF(1mL)に溶解させ、DMF(1mL)中のDig-Amcap-OSu(5.2mg、7.9μmol)およびDMF(2mL)中の1%トリエチルアミンの溶液を添加し、混合物を16時間タンブル混合した。その後、溶液を濃縮し、標的化合物を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製した。収量:3mg。分析用HPLC:tR=8.7分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分)。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1360.0;測定値:1360.7 [M+H]1+。
(iv)ビオチン-eda-Dy636の生成
0.1M K3PO4緩衝液(pH8.0、500μL)中のビオチン-エチレンジアミン臭化水素酸塩(2.14mg、5.83μmol)の溶液に、0.1M K3PO4緩衝液(pH8.0、500μL)中のDy636-OSu(5mg、5.83μmol)の溶液を添加し、得られた混合物を、環境温度で2時間タンブル混合し、ろ過し、標的化合物を、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって単離した。凍結乾燥後、Dy636-エチレンジアミン-Bi結合体を、無色の固体(2.8mg、48%)として入手した。分析用HPLC:tR=8.5分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分);ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:C50H65N6O10S3についての計算値:1006.3;測定値:1007.3 [M+H]+。
(v)ビオチン-Ser-Dy636の生成
工程1:ビオチン-O2Oc-Ser-O2Oc-DADOO-NH2
O-ビス-(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(176mg、0.125mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)において、Fmoc-O2Oc-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-O2Oc-OH(全てIris Biotech)、およびDMTr-D-ビオチン(Roche)を、連続的にカップリングした。(SEQ ID NO:180について記載されたような)Fmoc化学を使用して、自動Applied Biosystems ABI 433Aペプチド合成装置において、確立されているプロトコル(FastMoc 0.25mmol)に従って、ペプチド合成を実施した。
合成の後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンによって充分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで、樹脂を三角フラスコへ入れ、室温で2時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、ペプチドを冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(80mL)の添加によって沈殿させ、無色の固体を得、それをジイソプロピルエーテルで繰り返し洗浄した。粗生成物を、水に再溶解させ、凍結乾燥させ、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に無色の固体を得た。収量:56mg(60%)。分析用HPLC:tR=4.5分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:751.9;測定値:752.4 [M+H]+;376.9 [M+2H]2+。
工程2:ビオチン-O2Oc-Ser-O2Oc-DADOO-Dy-636(Bi-Ser-Dy-636)
ペプチド(5.3mg、7.0μmol)を、200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(583μL)に溶解させた。Dy-636 NHSエステル(4mg、4.7μmol、Dyomics)を水(583μL)に溶解させ、ペプチド溶液へ添加した。反応溶液を室温で2時間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:3.9mg(55%)。分析用HPLC:tR=8.3分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1472.8;測定値:1472.8 [M+H]+;737.0 [M+2H]2+。
(vi)ビオチン-Cys-Dy636の生成
工程1:ビオチン-O2Oc-Cys-O2Oc-DADOO-NH2
O-ビス-(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(352mg、0.25mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上で、Fmoc-O2Oc-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-O2Oc-OH(全てIris Biotech)、およびDMTr-D-ビオチン(Roche)を連続的にカップリングした。(SEQ ID NO:180について記載されたような)Fmoc化学を使用して、自動Applied Biosystems ABI 433Aペプチド合成装置において、確立されているプロトコル(FastMoc 0.25mmol)に従って、ペプチド合成を実施した。
合成の後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンによって充分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで、樹脂を三角フラスコへ入れ、室温で2時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、ペプチドを冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(100mL)の添加によって沈殿させ、無色の固体を得、それをジイソプロピルエーテルで繰り返し洗浄した。粗生成物を、水に再溶解させ、凍結乾燥させ、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に無色の固体を得た。収量:79mg(41%)。分析用HPLC:tR=5.3分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:767.9;測定値:768.4 [M+H]+;384.8 [M+2H]2+。
工程2:ビオチン-O2Oc-Cys(TNB)-O2Oc-DADOO-NH2
ペプチド(30mg、39μmol)を100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(4mL)に溶解させ、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(77mg、195μmol)を添加した。混合物を、室温で30分間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に黄色の固体を得た。収量:31mg(83%)。分析用HPLC:tR=5.4分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:965.1;測定値:965.4 [M+H]+;483.3 [M+2H]2+。
工程3:ビオチン-O2Oc-Cys(TNB)-O2Oc-DADOO-Dy-636
TNB保護ペプチド(1.35mg、1.4μmol)を、200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(291μL)に溶解させた。Dy-636 NHSエステル(1mg、1.2μmol、Dyomics)を水(291μL)に溶解させ、ペプチド溶液へ添加した。反応溶液を室温で1時間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:1mg(50%)。分析用HPLC:tR=9.0分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1686.0;測定値:1686.7 [M+H]+;844.2 [M+2H]2+。
工程4:ビオチン-O2Oc-Cys-O2Oc-DADOO-Dy-636(Bi-Cys-Dy-636)
TNBによって保護され色素によって標識されたペプチド(1mg、0.6μmol)を、200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(250μL)および水(192μL)の混合物に溶解させた。100mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩溶液(58μL)を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製を実施し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:0.7mg(79%)。分析用HPLC:tR=8.6分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1488.9;測定値:1488.6 [M+H]+;745.1 [M+2H]2+。
(vii)ビオチン-Cys-Cy5の生成
工程1:ビオチン-O2Oc-Cys-O2Oc-DADOO-NH2
O-ビス-(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(352mg、0.25mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上で、Fmoc-O2Oc-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-O2Oc-OH(全てIris Biotech)、およびDMTr-D-ビオチン(Roche)を、連続的にカップリングした。(SEQ ID NO:180について記載されたように)Fmoc化学を使用して、自動Applied Biosystems ABI 433Aペプチド合成装置において、確立されているプロトコル(FastMoc 0.25mmol)に従って、ペプチド合成を実施した。
合成の後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンによって充分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで、樹脂を三角フラスコへ入れ、室温で2時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、ペプチドを冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(100mL)の添加によって沈殿させ、無色の固体を得、それをジイソプロピルエーテルで繰り返し洗浄した。粗生成物を、水に再溶解させ、凍結乾燥させ、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に無色の固体を得た。収量:79mg(41%)。分析用HPLC:tR=5.3分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:767.9;測定値:768.4 [M+H]+;384.8 [M+2H]2+。
工程2:ビオチン-O2Oc-Cys(TNB)-O2Oc-DADOO-NH2
ペプチド(30mg、39μmol)を100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(4mL)に溶解させ、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(77mg、195μmol)を添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に黄色の固体を得た。収量:31mg(83%)。分析用HPLC:tR=5.4分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:965.1;測定値:965.4 [M+H]+;483.3 [M+2H]2+。
工程3:ビオチン-O2Oc-Cys(TNB)-O2Oc-DADOO-Cy5
TNB保護ペプチド(9.9mg、10.3μmol)を、200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(1026μL)に溶解させた。Cy5-Mono NHSエステル(6.5mg、8.2μmol、GE Healthcare)を水(1026μL)に溶解させ、ペプチド溶液へ添加した。反応溶液を室温で2時間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:10mg(80%)。分析用HPLC:tR=7.2分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1603.9;測定値:1604.9 [M+H]+;803.1 [M+2H]2+。
工程4:ビオチン-O2Oc-Cys-O2Oc-DADOO-Cy5(Bi-Cys-Cy5)
TNBによって保護され色素で標識されたペプチド(10mg、6.1μmol)を、200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(1522μL)および水(1218μL)の混合物に溶解させた。100mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩溶液(304μL)を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製を実施し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:7.6mg(86%)。分析用HPLC:tR=6.4分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1406.8;測定値:1406.8 [M+H]+;704.0 [M+2H]2+。
(viii)ビオチン-Ser-Cy5の生成
工程1:ビオチン-O2Oc-Ser-O2Oc-DADOO-NH2
O-ビス-(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(176mg、0.125mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上で、Fmoc-O2Oc-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-O2Oc-OH(全てIris Biotech)、およびDMTr-D-ビオチン(Roche)を、連続的にカップリングした。(SEQ ID NO:180について記載されたように)Fmoc化学を使用して、自動Applied Biosystems ABI 433Aペプチド合成装置において、確立されているプロトコル(FastMoc 0.25mmol)に従って、ペプチド合成を実施した。
合成の後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンによって充分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで、樹脂を三角フラスコへ入れ、室温で2時間、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物によって処理した。切断溶液をろ過し、ペプチドを冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(80mL)の添加によって沈殿させ、無色の固体を得、それをジイソプロピルエーテルで繰り返し洗浄した。粗生成物を、水に再溶解させ、凍結乾燥させ、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に無色の固体を得た。収量:56mg(60%)。分析用HPLC:tR=4.5分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:751.9;測定値:752.4 [M+H]+;376.9 [M+2H]2+。
工程2:ビオチン-O2Oc-Ser-O2Oc-DADOO-Cy5(Bi-Ser-Cy5)
ペプチド(5.7mg、7.6μmol)を200mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)(789μL)に溶解させた。Cy5-Mono NHSエステル(5mg、6.3μmol、GE Healthcare)を水(789μL)に溶解させ、ペプチド溶液へ添加した。反応溶液を室温で2時間撹拌し、その後、0.1%TFAを含有しているアセトニトリル/水勾配を利用した調製用逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)によって精製し、凍結乾燥後に青色の固体を得た。収量:6mg(58%)。分析用HPLC:tR=6.1分(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mm、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA 80:20、25分。ESI-MS(ポジティブイオンモード):m/z:[M]についての計算値:1390.72;測定値:1391.2 [M+H]+。
実施例9
組換えヒト化抗ビオチン抗体のビオチン標識化合物(ハプテン化化合物)への結合
ヒト化手法およびその後のシステイン変異の導入が、完全な結合活性を保持している誘導体をもたらすか否かを決定するため、以下の実験を実施した。
組換え抗ビオチン抗体誘導体の結合特性を、Octet QK機器(Fortebio Inc.)を使用したバイオレイヤー干渉(BLI)技術によって分析した。この系は、分子相互作用の研究のためによく確立されている。BLI技術は、バイオセンサーチップの表面および内部参照の表面から反射された白色光の干渉パターンの測定に基づく。分子がバイオセンサーチップに結合することによって、干渉パターンのシフトがもたらされ、それを測定することができる。上記ヒト化手法が抗ビオチン抗体のビオチン結合能を減少させるか否かを分析するため、ビオチン化タンパク質への結合能に関して、抗体のキメラバージョンおよびヒト化バージョンの特性を直接比較した。抗huIgG Fc抗体捕捉(AHC)バイオセンサー(Fortebio Inc.)上に抗ビオチン抗体を捕捉することによって、結合研究を実施した。まず、バイオセンサーを、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中、濃度0.5mg/mlの抗体溶液中で1分間インキュベートした。その後、安定なベースラインに達するため、バイオセンサーを1×PBS(pH7.4)中で1分間インキュベートした。抗体によってコーティングされたバイオセンサーを、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中に濃度0.06mg/mlでビオチン化タンパク質を含有している溶液中で5分間インキュベートすることによって、結合を測定した。1×PBS(pH7.4)中で5分間、解離をモニタリングした。キメラ抗ビオチン抗体およびヒト化抗ビオチン抗体について得られた結合曲線を直接比較した。
抗体のヒト化バージョンは、キメラ抗体と等しいかまたはキメラ抗体より良好ですらあるビオチン化抗原との結合を示した。カバットVH53位にCys変異を有するヒト化抗体についても同様であった。ビオチン化タンパク質は、バイオセンサーへの残余の非特異的結合を示したが、それは、ビオチンに結合しないHerceptinによってバイオセンサーをコーティングすると低下した。従って、抗ビオチン抗体の機能性は、(SEQ ID NO:44および48、SEQ ID NO:60および64に示されているような配列によって定義される)ヒト化バリアントにおいて保持されていた。
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴測定を、BIAcore(登録商標)T200機器(GE Healthcare Biosciences AB,Sweden)にて25℃で実施した。約4300レゾナンスユニット(RU)の捕捉系(Human Antibody Capture Kit(BR-1008-39,GE Healthcare Biosciences AB,Sweden)からの10μg/ml Anti-human Capture(IgG Fc))を、GE Healthcareによって供給された標準的なアミンカップリングキット(BR-1000-50)を使用することによって、pH5.0でCM3チップ(GE Healthcare,BR-1005-36)上にカップリングした。アミンカップリングのためのランニング緩衝液は、HBS-N(10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl(GE Healthcare,BR-1006-70))であった。その後の結合研究のためのランニング緩衝液および希釈緩衝液は、PBS-T(0.05% Tween 20を含む10mM リン酸緩衝生理食塩水)(pH7.4)であった。ヒト化抗ビオチン抗体を、2nM 溶液を流速5μl/分で60秒間インジェクトすることによって捕捉した。ビオチン化siRNAを、PBS-Tで濃度0.14〜100nM(1:3希釈系列)に希釈した。各濃度を流速30μl/分、解離時間600秒で180秒間インジェクトすることによって、結合を測定した。3M MgCl2溶液を用いて流速5μl/分、30秒間洗浄することによって、表面を再生させた。データをBIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare Biosciences AB,Sweden)を使用して評価した。バルク屈折率差を、抗ヒトIgG Fc表面から得られたレスポンスを差し引くことによって補正した。ブランクインジェクションも差し引いた(=二重参照)。KDおよび動力学的パラメータの計算のため、ラングミュア1:1モデルを使用した。
表面プラズモン共鳴(SPR)による動力学的結合分析を、ヒト化抗ビオチン抗体SEQ ID NO:44および48、ならびにヒト化抗ビオチン抗体VH53C SEQ ID NO:60および64について実施した。濃度2nMの抗ビオチン抗体を、CM3センサーチップに結合した抗ヒトIgG Fc抗体によって捕捉した。ビオチン化siRNA(Mw:13868Da)の結合を、濃度0.41nM、1.23nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM、100nM、および300nMで記録した。測定を2回反復で実施した。ヒト化抗ビオチン抗体およびヒト化抗ビオチン抗体VH53Cについて計算されたKDは、それぞれ0.633nMおよび0.654nMであった。
実施例10
ハプテン化化合物の抗ハプテン抗体との非共有結合性の複合体の生成
一般的な方法:
抗ハプテン抗体のハプテン化化合物(=ペイロードに結合体化されたハプテン)との複合体の生成は、規定の複合体をもたらさなければならず、これらの複合体内の化合物(=ペイロード)がその活性を保持することを確実にしなければならない。各ハプテン化化合物と抗ハプテン抗体との複合体の生成のため、ハプテン化化合物を最終濃度1mg/mlとなるようにH2Oに溶解させた。抗体を、20mM ヒスチジン緩衝液、140mM NaCl(pH=6.0)中で最終濃度1mg/ml(4.85μM)まで濃縮した。ハプテン化ペイロードおよび抗体を、ピペットの上下操作によってモル比2:1(化合物:抗体)になるように混合し、RTで15分間インキュベートした。
あるいは、ハプテン化化合物を、最終濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH=8.2)中で最終濃度10mg/mlまで濃縮した。ハプテン化化合物および抗体を、ピペットの上下操作によってモル比2.5:1(化合物:抗体)になるように混合し、RTおよび350rpmで60分間インキュベートした。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との複合体(ジゴキシゲニン-Cy5の非共有結合性の複合体)の形成のための例示的な方法
ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体およびマウス抗ジゴキシゲニン抗体または二重特異性抗ジゴキシゲニン抗体誘導体を、抗体成分として使用した。ジゴキシゲニン化Cy5の抗ジゴキシゲニン抗体との複合体の生成のため、Cy5-ジゴキシゲニン結合体を最終濃度0.5mg/mlとなるようにPBSに溶解させた。抗体を、20mM ヒスチジンおよび140mM NaCl(pH6)からなる緩衝液中、濃度1mg/ml(約5μM)で使用した。ジゴキシゲニン化Cy5および抗体を、モル比2:1(ジゴキシゲニン化Cy5:抗体)で混合した。この手法は、規定の組成の複合体の均質な調製物をもたらした。
抗体に会合している蛍光体の蛍光(650/667nm)をサイズ排除カラムで決定することによって、複合体化反応をモニタリングすることができる。これらの実験の結果は、抗体がジゴキシゲニンに対する結合特異性を含有している場合にのみ、複合体化が起こることを証明している。ジゴキシゲニンに対する結合特異性を有しない抗体は、ジゴキシゲニン-Cy5結合体に結合しない。2:1のジゴキシゲニン-Cy5結合体と抗体との比まで、増加するシグナルが、二価抗ジゴキシゲニン抗体について観察され得る。その後、組成物依存性の蛍光シグナルはプラトーに達する。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との複合体(ビオチン-Cy5/キメラ抗ビオチン抗体(ヒトIgGサブクラス)複合体)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたCy5の複合体(ビオチン-Cys-Cy5)の生成のため、0.16mgのビオチン-Cys-Cy5を濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgの抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度10.1mg/ml(約69μM)で使用した。ビオチン-Cys-Cy5および抗体を、モル比2.5:1(ビオチン-Cys-Cy5:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、実施例11aに記載されているようなSDS-PAGEによって分析した。実施例11aに記載されているように、蛍光の検出を実施した。
ビオチン化蛍光色素と抗ビオチン抗体との結合体(ビオチン-Ser-Cy5/ヒト化抗ビオチン抗体)の形成のための例示的な方法:
リンカー内にセリン残基を含有しているビオチンによって誘導体化されたCy5の複合体(ビオチン-Ser-Cy5)の生成のため、0.61mgのビオチン-Ser-Cy5を、濃度10mg/mlとなるように、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)に溶解させた。18.5mgのヒト化抗ビオチン抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度10mg/ml(約69μM)で使用した。ビオチン-Ser-Cy5および抗体を、モル比2.5:1(ビオチン-Ser-Cy5:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。次いで、試料を、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)を移動相として、流速1.5ml/分で、Superdex 200 16/60 high load prep gradeカラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィに供した。ピーク画分を収集し、純度についてSDS-PAGEによって分析した。(1)280nm(タンパク質)および650nm(Cy5)の波長で試料の吸光度を測定し;(2)式:標識されたタンパク質のA650/ε(Cy5)*タンパク質濃度(M)=タンパク質1モル当たりの色素のモル数[ε(Cy5)=250000M-1cm-1、複合体のA650=47.0、タンパク質濃度は86.67μMである]を使用することによって、色素と抗体との比を計算した。得られた色素と抗体分子との比は、2.17であり、これは、全ての抗体パラトープがビオチン-Cy5分子によって飽和していることを示唆している。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との複合体(ジゴキシゲニン-PYY(3-36)/抗ジゴキシゲニン抗体複合体)の形成のための例示的な方法
ジゴキシゲニン化ポリペプチドの抗ジゴキシゲニン抗体との非共有結合性の複合体の生成のため、マウスハイブリドーマ由来の抗体(10mM KPO4、70mM NaCl(pH7.5)からの凍結乾燥物)を、12mlの水に溶解させ、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)を含む溶液に対して透析し、11mlの緩衝液中に300mg(2×10-6mol)(c=27.3mg/ml)を得た。ジゴキシゲニン-PYY(3-36)結合体(11.57mg、4×10-6mol、2当量)を、1時間以内に2.85mgずつ4回に分けて添加し、室温でさらに1時間インキュベートした。複合体化反応の完了後、複合体を、流速2.5ml/分で、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)で、Superdex 200 26/60 GLカラム(320ml)を介したサイズ排除クロマトグラフィによって精製した。溶出した複合体を、4mlの画分に収集してプールし、0.2μmフィルタで滅菌し、濃度14.3mg/mlで234mgの複合体を得た。同様に、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体の複合体の生成のため、抗体を、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中、濃度10.6mg/ml(0.93ml中9.81mg、6.5×10-8mol)に調整した。0.57mg=1.97×10-7mol=3.03当量のジゴキシゲニン化ポリペプチド(DIG-PYY)を、凍結乾燥物として抗体溶液に添加した。ポリペプチドおよび抗体を、室温で1.5時間インキュベートした。過剰のポリペプチドを、流速0.5ml/分で、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)で、Superose 6 10/300 GLカラムを介したサイズ排除クロマトグラフィによって除去した。溶出した複合体を0.5mlの画分に収集してプールし、0.2μmフィルタ上で滅菌し、濃度1.86mg/mlで4.7mgの複合体を得た。
得られたハプテン化ポリペプチド-抗ハプテン抗体複合体は、サイズ排除クロマトグラフィにおける単一ピークの発生を介して、単量体IgG様分子であることが明らかとなった。得られた複合体は、1抗体分子当たり2個のジゴキシゲニン-PYY誘導体を保持している単量体IgG様分子であることが明らかとなった。サイズ排除クロマトグラフィによって、これらのペプチド複合体の規定の組成が確認され、タンパク質凝集物の欠如も示された。これらの二重特異性ペプチド複合体の規定の組成(および2:1のポリペプチド:タンパク質比)を、SEC-MALS(サイズ排除クロマトグラフィ-多角度光散乱)によってさらに確認した。SEC-MALS分析のため、100〜500μgの各試料を、移動相として1×PBS(pH7.4)を用いて流速0.25〜0.5ml/分でSuperdex 200 10/300 GLサイズ排除カラムにアプライした。光散乱をWyatt miniDawn TREOS/QELS検出器によって検出し、屈折率をWyatt Optilab rEX検出器によって測定した。得られたデータを、ソフトウェアASTRA(バージョン5.3.4.14)を使用して分析した。SEC MALLS分析の結果は、複合体の質量、半径、およびサイズに関する情報を提供する。次いで、これらのデータを、対応する非複合体化抗体のものと比較した。これらの実験の結果は、ジゴキシゲニン化PYYの抗ジゴキシゲニン抗体への曝露が、1抗体分子当たり2個のジゴキシゲニン-PYY誘導体を含有している複合体をもたらすことを証明している。従って、ジゴキシゲニン化PYYは、規定の部位(結合領域)で、規定の化学量論で、抗ジゴキシゲニン抗体と複合体化され得る。
表面プラズモン共鳴研究による複合体の特徴決定は、複合体化反応が、規定の完全に複合体化された分子を生成することを示す、さらなる証拠を提供した。抗ジゴキシゲニン抗体は、SPRチップに結合してシグナル増加をもたらすことができる。その後のジゴキシゲニン-PYY結合体の添加は、全ての結合部位が完全に占有されるまで、さらなるシグナル増加をもたらす。これらの条件で、さらなるジゴキシゲニン-PYYの添加は、さらなるシグナル増加をもたらさない。これは、複合体化反応が特異的であること、シグナルが、ジゴキシゲニン化ポリペプチドの非特異的な粘着性によって引き起こされたのではないことを示す。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との複合体(Ac-PYY-PEG3-Cys-β-Ala-ビオチン/キメラ抗ビオチン抗体複合体)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチン化PYY-ポリペプチドの非共有結合性の複合体の生成のため、0.19mgのAc-PYY-PEG3-Cys-β-Ala-ビオチンを濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度10.7mg/ml(約73μM)で使用した。Ac-PYY-PEG3-Cys-β-Ala-ビオチンおよび抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY-PEG3-Cys-β-Ala-ビオチン:抗体)で混合し、RTおよび350rpmで60分間インキュベートした。サイズ排除クロマトグラフィにおける単一ピークの発生によって、得られた複合体は単量体IgG様分子(95%単量体)であることが明らかとなった。得られた複合体を、SDS-PAGEおよびその後のウエスタンブロット分析によってさらに分析した。10μgの複合体を、4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。試料を、4〜12%ビストリスポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)にアプライし、200Vおよび120mAで35分間泳動した。ポリアクリルアミドゲルにおいて分離された分子を、25Vおよび160mAで、40分間、PVDF膜(0.2μm孔径、Invitrogen)にトランスファーした。当該膜を、RTで1時間、1×PBST(1×PBS+0.1%Tween20)中の1%(w/v)スキムミルクでブロッキングした。当該膜を、1×PBSTで5分間3回洗浄し、その後、1:2000希釈で使用されたストレプトアビジン-POD結合体(2900U/ml、Roche)と共にインキュベートした。膜上のビオチンに結合したストレプトアビジン-PODの検出を、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を使用して実施した。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との複合体(Ac-PYY-PEG3-Cys-PEG2-ビオチン/キメラ抗ビオチン抗体複合体)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチン化PYY-ポリペプチドの非共有結合性の複合体の生成のため、0.16mgのAc-PYY-PEG3-Cys-PEG2-ビオチンを濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度10.7mg/ml(約73μM)で使用した。Ac-PYY-PEG3-Cys-PEG2-ビオチンおよび抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY-PEG3-Cys-PEG2-ビオチン:抗体)で混合し、RTおよび350rpmで60分間インキュベートした。得られた複合体は、サイズ排除クロマトグラフィによって、63%単量体IgG様分子および37%二量体可溶性凝集物であることが明らかとなった。得られた複合体を、SDS-PAGEおよびその後のウエスタンブロット分析によってさらに分析した。10μgの複合体を、4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。試料を、4〜12%ビストリスポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)にアプライし、200Vおよび120mAで35分間泳動した。ポリアクリルアミドゲルにおいて分離された分子を、25Vおよび160mAで40分間、PVDF膜(0.2μm孔径、Invitrogen)にトランスファーした。当該膜を、RTで1時間、1×PBST(1×PBS+0.1%Tween20)中の1%(w/v)スキムミルクでブロッキングした。当該膜を、1×PBSTで5分間3回洗浄し、その後、1:2000希釈で使用されたストレプトアビジン-POD結合体(2900U/ml、Roche)と共にインキュベートした。膜上のビオチンに結合したストレプトアビジン-PODの検出を、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を使用して実施した。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との複合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo)/キメラ抗フルオレセイン抗体複合体)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているフルオレセインと結合体化したPYY-ポリペプチドの非共有結合性の複合体の生成のため、0.33mgのAc-PYY(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo)を濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.99mg/ml(約68μM)で使用した。Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo)および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-5-Fluo):抗体)で混合し、RTおよび350rpmで60分間インキュベートした。得られた複合体は、サイズ排除クロマトグラフィによって、76%単量体IgG様分子および24%二量体可溶性凝集物であることが明らかとなった。得られた複合体を、SDS-PAGEおよびその後のポリアクリルアミドゲルにおけるフルオレセイン関連蛍光の検出によってさらに分析した。8μgの複合体を、4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。フルオレセイン関連蛍光を、645nmの励起波長でLumiImager F1デバイス(Roche)を使用して記録した。
実施例11
酸化還元剤の存在下でのハプテン化色素またはハプテン化ポリペプチドの抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cとの規定の共有結合性の結合体の生成
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(Dig-Cys-Ahx-Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
抗ハプテン抗体とシステインリンカーを含有しているハプテン化蛍光色素との共有結合性の結合体の生成は、抗ハプテン抗体のCDR2内のVH52bCと、ハプテンと蛍光色素との間のリンカー内のシステインとの間で、特異的な位置においてジスルフィド架橋が形成された、規定の結合体をもたらす。結合体化反応を、酸化還元試薬の存在下で実施した。Dig-Cys-Ahx-Cy5を、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)に溶解させた。10%(v/v)酢酸を滴下にて添加することによって、可溶化を容易にした。最終濃度を0.4mg/mlに調整した。20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中の抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCを、濃度10mg/mlにした。抗ジゴキシゲニン抗体を、対照として使用し、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCと同様に処理した。4.7nmolの各抗体を2.5モル当量のDig-Cys-Ahx-Cy5と混合した。これは、11.7nmolのこの物質を15分毎に4回に分けて(各2.9nmol)添加することによって達成された。これらの添加の間に、試料を温和に振とうしながら25℃でインキュベートした。最後の部分の添加の後、0.64nmolの各抗体-Dig-Cys-Ahx-Cy5複合体を、以下の酸化還元試薬を含有している緩衝液に移した:3mM DTE(ジチオエリトリトール)+10mM GSSG(酸化型グルタチオン)、0.3mM DTE+1mM GSSG、および0.03mM DTE+0.1mM GSSG。全ての試料をこれらの条件で15分間インキュベートした。インキュベーション後、試料を二等分し(各0.34nmol)、SDSゲル電気泳動のために調製した。このため、4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)を添加した。各試料について、10×NuPAGE試料還元剤(Invitrogen)を添加することによって、還元バージョンも調製した。全ての試料を、70℃で5分間インキュベートした後、1×MOPS緩衝液(Invitrogen)による4〜12%ビストリスポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)での電気泳動を行った。ゲル中のCy5関連蛍光を、645nmの励起波長でLumiImager F1デバイス(Roche)によって検出した。蛍光の検出の後、ゲルをSimplyBlue SafeStain(Invitrogen)で染色した。ゲルは図8に示されている。
部位特異的なジスルフィド結合形成が、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCについて示され(図8、上ゲル、レーン1 A〜C)、CDR2内にシステインを含まない抗ジゴキシゲニン抗体を使用したときには、低いバックグラウンド蛍光シグナルが示された(レーン2 A〜C)。対照反応におけるバックグラウンドシグナルは、抗体鎖間ジスルフィド結合の形成に通常関与するシステインへのDig-Cys-Ahx-Cy5のカップリングによって説明され得る。増加する量の酸化還元試薬は、抗体の重鎖と軽鎖とを接続するジスルフィド架橋を実質的に低下させ、主として、3/4抗体(-1×LC)、HC二量体(-2×LC)、および1/2抗体(1×HC+1×LC)を生ずる。ゲルの下部には、抗体と共有結合していないDig-Cys-Ahx-Cy5の蛍光が検出され得る。図8の下のゲルは、試料の還元によって、抗体の重鎖および軽鎖の近くにCy5関連蛍光が検出不可能になることを示しており、このことは、共有結合が確かにジスルフィド架橋によって形成されていたことを示している。各ゲルのクーマシー染色は、各レーン中のタンパク質の総量が等しかったことを示す。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(Dig-Cys-Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
Dig-Cys-Cy5を、最終濃度3.25mg/mlとなるように、8.3mM HCl、10%(v/v)DMFに溶解させた。20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中の抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC抗体を濃度15mg/mlにした。抗ジゴキシゲニン抗体を対照として使用し、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCと同様に処理した。13.3nmolの各抗体を、1mM GSH(還元型グルタチオン)および5mM GSSG(還元型グルタチオン)の存在下で、10mg/mlの最終抗体濃度で、2モル当量のDig-Cys―Cy5と混合した。これは、26.6nmolのこの物質を5分毎に2回に分けて添加することによって達成された。これらの添加の間、試料を温和に撹拌しながらRTでインキュベートした。最後の部分の添加の後、試料をRTで1時間インキュベートした。カップリング反応の効率を、SDS-PAGEおよびその後のCy5関連蛍光シグナルの記録によって評価した。5μg、10μg、および20μgの各試料をSDS-PAGEのために調製した。このため、4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)を添加した。全ての試料を、70℃で5分間インキュベートした後、1×MOPS緩衝液(Invitrogen)による4〜12%ビストリスポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)での電気泳動を行った。ゲル中のCy5関連蛍光を、645nmの励起波長でLumiImager F1デバイス(Roche)によって検出した。蛍光の検出の後、ゲルをSimplyBlue SafeStain(Invitrogen)によって染色した。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(PEG3-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)/ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているジゴキシゲニンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、1.4mgのPEG3-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)を濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgの抗体を、5mM トリス塩酸、1mM EDTA、1mM GSH、5mM GSSG(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度10mg/ml(約68μM)で使用した。PEG3-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)および抗体を、モル比2:1(PEG3-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig):抗体)で混合し、RTで60分間、100rpmで撹拌しながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の43%が、2ポリペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、46%が、1ポリペプチド分子にカップリングされた抗体であり、11%が、カップリングされていない抗体として同定された。
実施例12
酸化還元剤の非存在下でのハプテン化色素およびハプテン化ポリペプチドの抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cとの規定の共有結合性の結合体の生成
共有結合性の抗ハプテン抗体/ハプテン化ポリペプチドまたはハプテン化色素ジスルフィド結合結合体の生成のためには、(i)ポリペプチドが抗体表面上に露出し、従って、その活性を保持することを可能にする(例えば、システイン、マレイミドなどの)適当な反応基を含有しているリンカーを介して、ハプテン(例えば、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、ビオチン、またはテオフィリン)を、ポリペプチドまたは色素へカップリングすること、(ii)ポリペプチドの生物学的活性が保持されている、ハプテン化ポリペプチドと、システイン変異を有する抗ハプテン抗体(=抗体VH52bC/VH53C)との共有結合性の部位特異的結合体を生成すること、(iii)抗体鎖間ジスルフィド架橋の還元を回避するため、還元剤の非存在下で反応を実施することが必要である。
一般的な方法:
抗ハプテン抗体とハプテン化化合物との結合体の生成は、規定の化学量論で結合体をもたらさなければならず、これらの結合体内の化合物が活性を保持していることを確実にしなければならない。各ハプテン化化合物と抗ハプテン抗体との結合体の生成のため、ハプテン化化合物を、最終濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH=8.2)中で濃度10mg/mlにした。ハプテン化化合物および抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを、ピペットの上下操作によってモル比2.5:1(化合物:抗体)になるように混合し、RTおよび350rpmで60分間インキュベートした。
システイン含有リンカーを介してハプテンに結合体化されたポリペプチドを、以後、ハプテン-Cys-ポリペプチドまたはポリペプチド-Cys-ハプテンと呼ぶ。ポリペプチドは、フリーのN末端を有していてもよいし、または、例えば、アセチル基(Ac-ポリペプチド-Cys-ハプテン)もしくはPEG残基(PEG-ポリペプチド-Cys-ハプテン)でキャッピングされたN末端を有していてもよい。
システイン含有リンカーを介してハプテンに結合体化された蛍光色素を、以後、色素-Cys-ハプテンまたはハプテン-Cys-色素と呼ぶ。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(Dig-Cys-Ahx-Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
抗体-Dig-Cys-Ahx-Cy5複合体を、酸化還元化合物を含有していないか、0.1mM GSSG(酸化型グルタチオン)を含有しているか、または1mM GSSGを含有している緩衝液に移したことを除いて、正確に実施例11aに記載された通りに試料を調製した。得られた蛍光スキャンされたポリアクリルアミドゲルおよびクーマシー染色されたポリアクリルアミドゲルは、図9に示されている。3種の条件は全て、低レベルのバックグラウンド反応(図9、レーン2 A〜C)で、部位特異的なジスルフィド結合形成(図9、上ゲル、レーン1 A〜C)について類似の特異性を示している。このことによって、ジスルフィド結合の形成は還元剤の必要なしに達成され得ることが確認される。実施例11と比較して、検出される3/4抗体(-1×LC)、HC二量体(-2×LC)、および1/2抗体(1×HC+1×LC)は残余量のみであるように、これは、有意に抗体を安定化させ/抗体分解を低下させる。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(Dig-Cys-Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
酸化還元試薬の非存在下で、13.3nmolの抗体を最終抗体濃度10mg/mlで2モル当量のDig-Cys-Cy5と混合したことを除いて、正確に実施例11bに記載された通りに試料を調製した。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(ビオチン-Cys-Cy5/キメラ抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたCy5の結合体の生成のため、0.16mgのビオチン-Cys-Cy5を濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgの抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.7mg/ml(約68μM)で使用した。ビオチン-Cys-Cy5および抗体を、モル比2.5:1(Ac-ビオチン-Cys-Cy5:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、実施例11aに記載されたように、SDS-PAGEによって分析した。実施例11aに記載されたように、蛍光の検出を実施した。
ハプテン化蛍光色素と抗ハプテン抗体との結合体(ビオチン-Cys-Cy5/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたCy5の結合体の生成のため、0.16mgのビオチン-Cys-Cy5を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgのヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度7.4mg/ml(約51μM)で使用した。ビオチン-Cys-Cy5および抗体を、モル比2.5:1(Ac-ビオチン-Cys-Cy5:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、実施例11aに記載されたように、SDS-PAGEによって分析した。実施例11aに記載されたように、蛍光の検出を実施した。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)/ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているジゴキシゲニンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、2.4mgのAc-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)を、濃度5mg/mlとなるように20%酢酸に溶解させた。10mgのヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC(68.4nmol)を、20mM ヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)から構成された緩衝液中、濃度19.5mg/ml(約133μM)で使用した。Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig)および抗体を、モル比2:1(Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-Dig):抗体)で混合し、RTで60分間、100rpmで撹拌しながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の7.4%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、40%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体であり、52%が、カップリングされていない抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-βAla-ビオチン)/キメラ抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.19mgのAc-PYY(PEG3-Cys-βAla-ビオチン)を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgのキメラ抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.7mg/ml(約67μM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-βAla-ビオチン]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-βAla-ビオチン]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の87.7%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、12.3%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)/キメラ抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.16mgのAc-PYY(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgのキメラ抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.9mg/ml(約68μM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-ビオチン]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-ビオチン]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の100%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-βAla-ビオチン)/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.06mgのAc-PYY(PEG3-Cys-βAla-ビオチン)を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。0.8mgのヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9mg/ml(約62μM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-βAla-ビオチン]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-βAla-ビオチン]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の62.2%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、33.9%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、3.9%が、カップリングされていない抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.08mgのAc-PYY(PEG3-Cys-PEG2-ビオチン)を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。0.8mgのヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9mg/ml(約62μM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-ビオチン]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-ビオチン]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の71.4%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、26%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、2.5%が、カップリングされていない抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-Fluo)/抗フルオレセイン抗体VH52bC)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.33mgのAc-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgの抗フルオレセイン抗体VH52bCを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.3mg/ml(約63μM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の95%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、5%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチドと抗ハプテン抗体との結合体(Ac-PYY(PEG3-Cys-PEG2-Fluo)/抗フルオレセイン抗体VH28C)の形成のための例示的な方法
システイニル化リンカーを含有しているビオチンによって誘導体化されたPYY-ポリペプチドの結合体の生成のため、0.33mgのAc-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。1mgの抗フルオレセイン抗体VH28Cを、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度9.5mg/ml(約63のμM)で使用した。Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]および抗体を、モル比2.5:1(Ac-PYY[PEG3-Cys-PEG2-Fluo]:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた結合体を、質量分析によって分析した。検出された種の100%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
実施例13
共有結合性のテオフィリン-抗テオフィリン抗体複合体の生成
ハプテン認識系としてテオフィリンおよびテオフィリン結合抗体を利用する共有結合抗体複合体の形成を評価するため、ハプテンをテオフィリンに交換したことを除き、ジゴキシゲニン-Cys-Cy5またはビオチン-Cys-Cy5について記載された合成および精製の技術を一般に適用して、蛍光性ペイロードとしてのテオフィリン-Cys-Cy5を生成した(実施例8、ならびに図13、14、および22を参照のこと)。合成されたテオフィリン-Cys-Cy5誘導体の組成を図43aに示している。共有結合ジスルフィドの形成を証明するため、重鎖可変領域の54位または55位に設計されたCysを含有しているテオフィリン結合抗体(抗テオフィリン抗体-Cys)を生成した。これらの抗体の純度は、図43bにY54Cバリアントについて例示的に示されている。これらの抗体誘導体を、テオフィリン-Cys-Cy5と複合体化し、その後、実施例12に記載されたように、非還元条件および還元条件の下でのSDS-PAGEに供した。非還元条件下では、ジスルフィド結合抗テオフィリン抗体複合体化Cy5が、実施例12に記載されたのと同様に、ゲル中のH鎖関連蛍光によって検出された。これは、ハプテンとしてジゴキシゲニン、フルオレセイン、またはビオチンを使用したときに観察されたジスルフィドと同様に、単純なローディング反応の結果として、抗体間の共有結合複合体が形成されたことを証明している図43cに示されている。これらの複合体は、予想通り、還元によって解離した。即ち、ジスルフィドが還元されたときにのみ、H鎖からペイロードを放出した(図43c)。
実施例14
インビボ様条件下での共有結合ハプテン-抗体複合体の生成、およびインビボでの指定のジスルフィド形成の証拠
インビボ様条件下での共有結合ハプテン-抗体複合体の形成を評価するため、抗ビオチン抗体-Cysを、ビオチン-Cys-Cy5と共にマウス血清中で37℃で60分間インキュベートした。その後、プロテインAによってマウス血清から抗体を捕捉した。その後、捕捉された抗体を、実施例12に記載されたように、非還元条件および還元条件の下でのSDS-PAGEに供した。ジスルフィド結合抗体複合体化Cy5を、実施例12に記載されたのと同様に、ゲル中のH鎖関連蛍光によって検出した。図44は、37℃で血清中で、即ち、インビボ条件に類似した条件の下で、抗体との共有結合複合体が形成されることを証明している。これらの複合体は、予想通り、還元によって解離する。即ち、ジスルフィドが還元されたときにのみ、ペイロードがH鎖から放出される(図44)。血清は(ジスルフィド形成反応に干渉する可能性のある)タンパク質、ペプチド、およびその他の化合物を多量に含有しているため、血清の存在下ですら、ハプテンのポジショニングによって、抗体とペイロードとの間に指定のジスルフィド結合が形成され得るという観察は、予想外である。37℃で血清中で、ハプテンポジショニングによって、抗体とペイロードとの間に指定のジスルフィド結合が形成され得るという観察は、プレターゲティング環境(抗体およびハプテン-ペイロードの別々の適用、それに続く、インビボでの抗体複合体の構築およびその後のジスルフィド形成)において、このPK調節系を適用する可能性をも開く。
可能性のあるインビボ「プレターゲティング」適用をさらに評価するため、実施例18に記載されているような、動物の眼の非侵襲光学イメージング技術によって、ビオチン-Cy5の薬物動態をプレターゲティング条件下で決定した。これらの実験においては、毛細血管内のCy5の蛍光を明らかにする動物の眼の光学イメージングによって非侵襲的にCy5の存在を決定した。ビオチン-Cy5の注入の10分後にマウスの眼において検出されたCy5によって媒介される蛍光の値を、100%値として設定し、その後の時点で測定された蛍光値を、それに対して相対的に表した。この実験において、1mgの抗体(抗ビオチン抗体または抗ビオチン抗体-Cys(=抗ビオチン抗体のCys変異体)のいずれか)を、ビオチン-Cy5の注入および眼イメージングの開始の24時間前に適用した。対照群は、抗ビオチン抗体を前注入されなかった。
これらの実験の結果は、図45に示されている:前注入された抗体を受容しなかった動物へのビオチン-Cy5の注入は、短い血清半減期および低い曝露レベルで排除された(菱形)。(cys変異を有しない)抗ビオチン抗体が24時間前に注入された動物へ注入されたビオチン-Cy5の血清中レベルおよび半減期は、大幅に増加した。これは、抗体が循環血中の(ペイロードを含む)抗原を捕捉し、抗原の(同様に、結合体化されたペイロードの)血清半減期を延長することを示している。抗ビオチン抗体-cys(即ち、共有結合ペイロードカップリングのための、本明細書において報告するcys変異を含有している抗体)を24時間前に注入された動物へ注入されたビオチン-Cys-Cy5の相対的な血清中レベルおよび半減期は、さらに増加した。これらの試料においては、相対的なCy5レベルが、非複合体化化合物のみならず、複合体化(しかしジスルフィド結合はしていない)Cy5のレベルよりも高かった。従って、(インビボでプレターゲティング条件下で形成される)ハプテン複合体化ジスルフィド結合ペイロードは、循環血中でより安定しており、非共有結合複合体化ペイロードより高い曝露レベルに到達することができる。
実施例15
抗ハプテン抗体との結合体および複合体においてポリペプチドは機能性を保持している
本発明者らは、非共有結合性のハプテン-ポリペプチド結合体の一部分であり、かつ抗ハプテン抗体との複合体にあるポリペプチドが、機能性を保持することを以前に示した(WO2011/003557、WO 2011/003780、およびPCT/EP2011/074273)。カップリングされたペプチドが、共有結合性のジスルフィドカップリングによっても機能性を保持することを証明するため、抗ジゴキシゲニン抗体と複合体化したポリペプチドと、該ポリペプチドの抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCとのジスルフィド結合体の生物学的活性とを比較した。
PYY由来ペプチドの治療的に望まれる機能性は、同族受容体NPY2に結合して、そのシグナル伝達に干渉することである。NPY2受容体を介したシグナル伝達は、代謝過程に関与し、かつ/またはそれを制御する。
ポリペプチドDig-PYYの抗ジゴキシゲニン抗体との複合体化もしくはSS結合体化、またはポリペプチドDig-Cys-PYYの抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCとの結合体化が、それぞれ、その活性に影響するか否かを評価するため、本発明者らは、NPY2受容体を発現するHEK293細胞において、フォルスコリンによって刺激されるcAMP蓄積を阻害する能力を評価した(cAMPアッセイ)。
下記表6は、PYY(3-36)、Y2受容体特異的修飾型類似体moPYY、抗体複合体化Digバリアント、およびジスルフィドによって結合体化されたDig-Cys誘導体の生物学的活性を査定するために実施されたcAMPアッセイの結果を示す。
cAMPアゴニストアッセイのため、以下の材料を使用した:384穴プレート;Tropix cAMP-Screen Kit;cAMP ELISA系(Applied Biosystems、カタログ番号T1505;CS 20000);フォルスコリン(Calbiochemカタログ番号344270);細胞:HEK293/hNPY2R;増殖培地:ダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM、Gibco);10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco)、熱不活化;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ペニシリン10000単位/mL:ストレプトマイシン10000mg/mL、Gibco);500μg/mL G418(ジェネテシン、Gibcoカタログ番号11811-031);および播種培地:フェノールレッド不含DMEM/F12(Gibco);10%FBS(Gibco、カタログ番号10082-147)、熱不活化;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号15140-122);500μg/mL G418(ジェネテシン、Gibco、カタログ番号11811-031)。
アッセイを実施するため、1日目に、培地を廃棄し、フラスコ(T225)1個当たり10mLのPBSで単層細胞を洗浄した。PBSを用いてデカンテーションした後、細胞を移すために5mL VERSENE(Gibco、カタログ番号1504006)を使用した(37℃で5分)。フラスコを軽く叩き、細胞懸濁物をプールした。各フラスコを10mLの播種培地で濯ぎ、1000rpmで5分間遠心分離した。懸濁物をプールし計数した。懸濁物を、HEK293/hNPY2Rについては、2.0×105細胞/mLの密度で播種培地に再懸濁させた。50マイクロリットルの細胞(HEK293/hNPY2R−10,000細胞/ウェル)を、Multi-dropディスペンサーを使用して、384穴プレートへ移した。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。2日目、細胞を75〜85%コンフルエンスについてチェックした。培地および試薬を室温にした。希釈液を調製する前に、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma、カタログ番号D2650)中の刺激化合物のストック溶液を、5〜10分間、32℃に加温した。希釈液を、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX、Calbiochem、カタログ番号410957)および0.5mg/mL BSAを含むDMEM/F12で調製した。刺激培地中の最終DMSO濃度は1.1%であり、フォルスコリン濃度は5μMであった。細胞プレートをペーパータオル上で静かに反転させ、叩いて細胞培地を除去した。1ウェル当たり50μlの刺激培地を加えた(各濃度について4つの複製物で行った)。プレートを室温で30分間インキュベートし、細胞を毒性について顕微鏡下でチェックした。30分の処理の後、刺激培地を廃棄し、50μL/ウェルの(Tropixキット内に用意された)Assay Lysis Bufferを添加した。プレートを37℃で45分間インキュベートした。刺激プレートから、Tropixキットのプレコーティングされた抗体プレート(384穴)へ、20μlの溶解物を移した。10μlのAP結合体および20μlの抗cAMP抗体を添加した。プレートを1時間振とうしながら室温でインキュベートした。次いで、プレートを、各洗浄について1ウェル当たり70μlの洗浄緩衝液で5回洗浄した。プレートを叩いて乾燥させた。30μl/ウェルのCSPD/Sapphire-II RTU基質/エンハンサー溶液を添加し、RTで45分間インキュベート(振とう)した。照度計(VICTOR-V)において、1ウェル当たり1秒間、シグナルを測定した。
これらのアッセイの結果(表6)は、修飾型ペプチド誘導体moPYYが、野生型PYYより低い、無視し得る程度の活性を有することを示す。cAMPアッセイのIC50値は、野生型PYYについては0.09nM、修飾型類似体については0.14nMであった。共有結合性ジスルフィド結合体化は、生物学的活性のわずかな低下をもたらした。結合体についてのIC50値は、5〜36nMであった。驚くべきことに、共有結合ジスルフィド結合体は、IC50値が10.91nMである非共有結合性の複合体よりも活性が2倍高い。
実施例16
ビオチン化Cy5とヒト化抗ビオチン抗体VH53Cとの共有結合性の結合体と比較した、ビオチン化Cy5のヒト化抗ビオチン抗体との複合体の血清安定性
記載されたペプチド修飾技術の目的は、ペプチドの治療適用可能性を改善することである。ペプチドの治療適用についての現在の主要な障壁は、インビボでの限定された安定性および/または短い血清半減期および速いクリアランスである。蛍光体と抗体との結合体のPKパラメータをインビボで決定し、非共有結合性の抗体-蛍光体複合体のPKと比較した。従って、(i)抗ビオチン抗体VH53Cと、ビオチン化蛍光体であるビオチン-Cys-Cy5とを共有結合的に結合体化し、(ii)抗ビオチン抗体と、ビオチン化蛍光体であるビオチン-Cy5との非共有結合性の複合体を生成し、(iii)共有結合的に結合体化された化合物および非共有結合的に複合体化された化合物を動物に適用し、(iv)これらの動物における化合物の血清中濃度を、Cy5の蛍光(A650)の決定によって経時的に測定し、ヒト化抗体を特異的に検出するELISA法によって、対応する抗体の血清中濃度を測定した。
実験手法
低分子蛍光基質の抗体との複合体化がPKパラメータに及ぼす影響を分析するため、20mM ヒスチジン/140mM NaCl(pH6.0)中、13nmolのCy5-ビオチン/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C結合体、または対応する抗体と非共有結合的に複合体化された化合物、または蛍光化合物単独を、各物質について6匹の雌マウス(NRMI系統)に適用した。約0.1mlの血液試料を以下の時点の後に収集した:第1群のマウス1、2、および3については、0.08時間、4時間、および48時間、第2群のマウス1、2、および3については、0.08時間、24時間、および72時間。RTでの1時間後に、遠心分離(9300×g、3分、4℃)によって、少なくとも50μlの血清試料を入手した。血清試料を-80℃で保管した。
所定の時点での血清中の化合物の量を決定するため、Cy5の蛍光特性を使用する:血清試料中のCy5関連蛍光を、Cary Eclipse Fluorescence Spectrophotometer(Varian)を使用して、室温で120μl石英キュベットにおいて測定した。励起波長は640nmであり、放射は667nmで測定された。放射強度の適切な範囲に達するよう、血清試料を1×PBSで希釈した。それぞれの試料と同様に1×PBSで希釈された未処理マウスの血清を、ブランクプローブとして使用したところ、それは蛍光シグナルを示さなかった。
図34は、共有結合性の結合体、非共有結合性の複合体、および非複合体化ハプテン-Cy5を利用した分析の結果を示す。データは、注入の5分後の(ピーク)血清中レベルに対して標準化されたCy5によって媒介される蛍光の相対(%)レベルとして示されている。極めて小さい分子量の化合物について、非複合体化ビオチン-Ser-Cy5は、血清から急速に消失する。適用されて5分後に血清中に検出可能であった蛍光の6%のみが、注入の1時間後に、まだ検出可能であった。その後の時点、注入の2時間後、4時間後、および24時間後には、Cy5によって媒介されるシグナルは検出不可能であった。
抗体と複合体化された化合物については、注入の4時間後に、適用された蛍光のおよそ50%(5分でのレベルが100%に設定された)が、まだ血清中に検出可能であった。Cy5によって媒介される蛍光のレベルは、その後の時点でも検出可能であり、2時間目に5分での値のおよそ22%、注入後48時間目におよそ12%、72時間後に8%が、まだ検出可能であった。抗体と結合体化された化合物は、抗体と複合体化された化合物より有意に長いインビボ半減期を示す。注入の4時間後に、適用された蛍光の58%(5分でのレベルが100%に設定された)が、血清中にまだ検出可能であった(抗体と複合体化された化合物より1.16倍高い)。24時間後には35%(1.6倍)、48時間後には31%(2.6倍)、72時間後には26%(3.3倍)のCy5によって媒介される蛍光が、血清中に検出された。実験の最初の24時間における複合体化された化合物および結合体化された化合物についての蛍光の比較可能な減少は、複合体および結合体で類似している初期分布による可能性がある。抗体と結合体化された化合物のインビボでの安定性が、24時間後の違いの原因である。
所定の時点における血清中のヒトIgG抗体の量を決定するためには、以下のアッセイ原理を使用した:血清試料中のヒトIgG1抗体を、抗ヒトκ鎖モノクローナルIgG抗体でコーティングされた固相(Maxisorb(登録商標)マイクロタイタープレート、NUNC-Immuno(商標))上に捕捉した。血清試料を1:105および1:106に希釈し、100μlのこれらの希釈物をウェルに添加した。インキュベーション後、ウェルを、各々300μlのPBS/0.05%Tween 20で3回洗浄した。まず、C末端においてジゴキシゲニン化されている抗ヒトCH1ドメインIgGを、濃度0.25μg/mlで100μl添加することによって、ヒトIgG抗体の検出を実施した。各々300μlの1×PBS/0.05%Tween 20で3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化された抗ジゴキシゲニン抗体Fab断片を濃度25mU/mlで100μl添加した。最後に、1ウェル当たり100μlのABTS(登録商標)を添加した。環境温度での30分間のインキュベーションの後、市販のマイクロタイタープレートELISAリーダ(例えば、Tecan Sunrise)において、405nmおよび492nm[405/492]で吸光度(OD)を測定した。
図34は、抗体-ビオチン-Cy5の複合体および結合体によって処理されたマウスにおけるBio-Cy5の血清中レベルおよびヒトIgGの血清中レベルを示す。データは、注入の5分後の(ピーク)血清中レベルに対して標準化された相対(%)ヒトIgGレベルとして示されている。抗体-ハプテンの複合体および結合体の両方の相対的なヒトIgGの血清中レベルは、抗体-ハプテン結合体について測定された相対蛍光と一致する。従って、ビオチン-Cys-Cy5化合物は、それが結合体化された抗体と類似のインビボでの安定性を示し、そのことは、抗体-ハプテン結合体がインビボで完全であり続けることを意味する。このことは、Cy5によって媒介される蛍光の相対値が、相対的なヒトIgGの血清中レベルより速く減少する、抗体-ハプテン複合体には、明らかに当てはまらない。これは、複合体がインビボで経時的にペイロードを放出することを意味する。
要約すると、ハプテン化化合物のインビボでの安定性は、抗ハプテン抗体が結合すると有意に増加する。しかしながら、抗体-ハプテン複合体は、ハプテン-Cy5の血清中レベルの減少が抗体の血清中レベルの減少より速いため、インビボで完全には安定していない。これは、通常のIgG抗体と類似のインビボでの挙動を示す抗体-ハプテン-Cy5結合体には当てはまらない。
Dig-ペプチドの血清動態(非共有結合性の複合体と共有結合性の結合体との比較)
ジゴキシゲニン化ポリペプチドの抗体との複合体化および抗体との結合体化がPKパラメータに及ぼす影響を分析するため、20mM ヒスチジン/140mM NaCl(pH6.0)中の32.1nmolのポリペプチド、または対応する抗体と非共有結合的に複合体化されたポリペプチドを、各物質について2匹の雌マウス(NRMI系統)に適用した。マウスは、MAK-DIG-PYYについては23gおよび25g、DIG-PYYについては28gおよび26gの体重を有していた。約0.1mlの血液試料を以下の時点の後に収集した:マウス1については、0.08時間、2時間、および24時間、マウス2については、0.08時間、4時間、24時間。RTでの1時間後に、遠心分離(9300×g、3分、4℃)によって、少なくとも40μlの血清試料を入手した。血清試料を-80℃で保管した。
血清試料中のポリペプチドを検出するための直接の手段が利用可能でなかったため、所定の時点での血清中のジゴキシゲニン化ペプチドの量の決定は、Dig-Cy5の検出と比較して困難であった。従って、血清中のジゴキシゲニン化ペプチドを検出するためのウエスタンブロット関連アッセイを確立した。最初の工程において、血清試料を還元SDS-PAGEで分離した。試料調製が、高濃度のSDSおよび還元剤への血清の曝露を含んでいたため、複合体化Dig-ポリペプチド結合体は、(完全に変性し/アンフォールドした)抗ジゴキシゲニン抗体から放出され得たが、共有結合性の結合体は結合したままであった。非共有結合性の抗体複合体からのポリペプチドの放出を媒介し、SDS-PAGEによって個々の成分を分離するため、各2μlの血清試料を18μlの20mM ヒスチジン/140mM NaCl(pH6.0)で希釈し、95℃で5分間、6.7μlの4×LDS試料緩衝液および3μlの10×試料還元剤(NuPAGE、Invitrogen)と混合した。対照として、同一系統の未処理マウスの2μlの血清を使用した。試料を、4〜12%ビストリスゲル(NuPAGE、Invitrogen)にアプライし、ランニング緩衝液として1×MES(Invitrogen)を使用して、200V/120mAで20分間泳動した。その後、25V/130mAで、40分間、XCell Sure Lock(登録商標)Mini-Cell系(Invitrogen)を使用して、分離されたポリペプチドをPVDF膜(0.22μm孔径、Invitrogen)上にブロットした。当該膜を、RTで1時間、1×PBS+1%Tween20(PBST)中の1%スキムミルクでブロッキングした。その後、当該膜上のジゴキシゲニン化ポリペプチドを、抗ジゴキシゲニン抗体によって検出した。そのため、抗ジゴキシゲニン抗体を、10mlの1%スキムミルク/PBST中に13μg/mlの濃度で、RTで2時間、当該膜に適用した。当該膜を1×PBSTで3×5分間洗浄した。LumiLightPLUS Western Blotting Kit(Roche)からのPODにカップリングされた抗マウスIgG Fab断片を、RTで1時間、10mlの1%スキムミルク/PBSTで1:25希釈してアプライした。当該膜を1×PBSTで3×5分間洗浄した。検出を、RTで5分間、4mlのLumiLight Western Blotting基質において膜をインキュベートすることによって実施した。化学発光を、20分の露光時間で、LumiImager F1(Roche)によって検出した。
これらの分析の結果は、図35AおよびBに示されている。異なる時点で、マウス血清中のジゴキシゲニンポリペプチドの存在/量を決定した。抗体複合体化ペプチドを受容したマウス(図35左)は、最も初期の時点(投与の5分後)で、強力なシグナルを示した。対照のブロット上のサイズおよび位置によって示されているように、これらのシグナルは、明確に特定可能であった。抗体複合体化ポリペプチドによって処理されたマウスの血清において、ポリペプチド関連シグナルは、初期の時点で最も強力であり、経時的に減少した。しかしながら、ポリペプチドは、全ての時点において、投与の24時間後ですら、良好なシグナルによって、まだ検出可能であった。
非複合体化ポリペプチドを受容したマウスにおいては、小さいポリペプチドに関連付けることができるシグナルが、最も初期の時点ですら、ほとんど検出不可能であった。図35右は、通常の曝露条件の下では、フリーのポリペプチドがブロット上に可視でないことを示している。しかしながら、ブロットのコントラストを強調することによって、微量のみであるが、投与の5分後にポリペプチドの存在が明らかにされた。その後の時点において、規定のポリペプチドバンドは検出不可能であった。
非複合体化ポリペプチドはマウス血清において極めて短い半減期を有することが理解され得る。抗体複合体化形態で同ポリペプチドを受容したマウスは、増加した期間、血清中にこれらのポリペプチドの存在を示す。注入の24時間後、これらのマウスの血清においてポリペプチドを決定することができる。
実施例17
共有結合性のジゴキシゲニン-抗体複合体およびジゴキシゲニン結合IgGの血清半減期
非共有結合性のハプテン複合体に関して、共有結合性の複合体化がPK特性をさらに改善するか否かを分析するため、抗ジゴキシゲニン抗体-ジゴキシゲニン-Cy5複合体および共有結合性の[抗ジゴキシゲニン抗体-Cys]-[ジゴキシゲニン-Cys-Cy5]結合体のPKパラメータをインビボで決定した。従って、ジゴキシゲニン-Cy5を、蛍光(A650)を使用して決定し、対応する抗体を、ヒト化抗体を特異的に検出するELISA法によって決定した。その蛍光特性が血清中の容易で正確な検出を可能にするため、ハプテンとカップリングされたペプチドの低分子量「代理」として、ジゴキシゲニン-Cy5を適用した。
ビオチン-Cy5またはビオチン-Cys-Cy5について記載されたのと同様に(実施例16を参照のこと)、ジゴキシゲニン-Cy5、または抗体と複合体化されたジゴキシゲニン-Cy5、またはさらに抗体-cysと連結されたジゴキシゲニン-Cy5を、雌NRMIマウスへ静脈内注入し、続いて、0.08時間目、2時間目、4時間目、および24時間目に血液を収集した。注入の5分後(t=0.08時間)の時点で、両方のマウスについて/において測定されたCy5によって媒介される蛍光の値を100%値として設定し、それに対して、その後の時点で測定された蛍光値を相対的に表した。
これらの実験の結果は、ジゴキシゲニン-Cy5については、適用された蛍光(5分での値)の10%未満が、注入の2時間後に検出可能であったことを証明している。その後の時点である、注入の4時間後および24時間後には、それぞれCy5によって媒介されるシグナルは検出不可能であった(図41を参照のこと)。非複合体化化合物とは対照的に、抗体と複合体化された化合物は、はるかに高いレベルで、その後の時点で検出可能であった(図41)。これは、抗体複合体化が、小さい化合物ジゴキシゲニン-Cy5の血清半減期を有意に増加させることを示す。さらに、共有結合ペイロードは、非共有結合性の複合体と比較して、より大きいPK延長を示す。ジゴキシゲニン-Cy5レベルおよび抗体レベルの直接比較は、経時的な抗体からのペイロード損失を示し、Cy5レベルが抗体レベルより速く減少した。対照的に、共有結合性のジゴキシゲニン結合体は、ほぼ同一のCy5およびIgGの血清半減期を示した(図41)。これは、ジスルフィド結合されたペイロードは、抗体に安定的に接続され続けるが、非共有結合性の複合体は、経時的に解離することを示す。
実施例18
共有結合性のハプテン-抗体複合体、およびハプテン結合部位を介してのみ結合された複合体の血清半減期および曝露レベル
共有結合性の複合体化が、非共有結合性のハプテン-複合体のPK特性を改善するか否かを分析するため、抗ビオチン抗体のビオチン-Cy5との複合体および共有結合性の結合体[抗ビオチン抗体-Cys]-[ビオチン-Cys-Cy5]のPKをインビボで決定した。Cy5の存在を、毛細血管内のCy5の蛍光を明らかにする動物の眼の光学イメージングによって非侵襲的に決定した。注入の10分後にマウスの眼において検出されたCy5によって媒介される蛍光の値を100%値として設定し、それに対して、その後の時点で測定された蛍光値を相対的に表した。これらの実験の結果は図42に示されている:単独の非複合体化ビオチン-Cy5は、短い血清半減期および低い曝露レベルを有する。共有結合していない抗体と複合体化された化合物は、はるかに高いレベルで、延長された半減期で検出可能であった。さらに、共有結合ペイロードは、非共有結合性の複合体と比較して、より大きいPK延長およびより高い血清中レベルを示した。これは、ハプテン複合体化ジスルフィド結合ペイロードが、非共有結合複合体化ペイロードより、循環血中で安定しており、高い曝露レベルに到達し得ることを示す。
実施例19
異なるハプテンに結合する抗体とのペプチドの複合体化および共有結合性の結合体化
ハプテン化化合物(=ペイロード)をターゲティング媒体にカップリングするためのハプテン結合モジュールの適用は、ハプテンによって媒介される送達が実現され得る一つの技術的な可能性である。その概念は、化合物を捕捉し、ターゲティングモジュールに接続する、さらなるハプテンまたはその他の実体へ拡張され得る。例えば、ポリペプチドの送達または安定化のため、ジゴキシゲニンまたはその他のハプテンに結合する単一特異性または二重特異性の抗体を、治療用ポリペプチドを安定化し、PKを最適化するために適用することができる。
ポリペプチド捕捉モジュールとしての適用のための必要条件は、(i)化合物のハプテンとのカップリングが、ポリペプチドの活性に重度に干渉せず、かつ(ii)抗体のハプテン化化合物との効果的な結合/複合体化が可能であることである。
ハプテンによって指定される結合は、ハプテン化色素またはハプテン化ポリペプチドの抗ハプテンシステイニル化抗体との効率的な共有結合性カップリングのための必要条件である。
ハプテン化化合物の抗ハプテン抗体との親和性によって駆動される複合体化が、効率的なジスルフィド結合形成のための必要条件であることを示すため、ビオチン-Cys-Cy5を、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体およびヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH53Cと共にインキュベートした。ビオチン-Cys-Cy5のヒト化抗ビオチン抗体およびヒト化抗ビオチン抗体VH53Cとのインキュベーションを、対照反応として実施した。
0.13mgのビオチン-Cys-Cy5を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。0.7mgの各抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度6.7mg/ml(約46μM)で使用した。ビオチン-Cys-Cy5および抗体を、モル比2.5:1(Ac-ビオチン-Cys-Cy5:抗体)で混合し、RTで60分間、350rpmで振とうしながらインキュベートした。得られた複合体/結合体を、SDS-PAGE、およびその後のポリアクリルアミドゲル中のCy5関連蛍光の検出によって、さらに分析した。15μgの複合体/結合体を4×LDS試料緩衝液(Invitrogen)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。Cy5関連蛍光を、645nmの励起波長でLumiImager F1デバイス(Roche)を使用して記録した。
非還元試料は、ヒト化抗ビオチン抗体VH53Cについて、共有結合性の部位特異的なジスルフィド結合形成を示すが(図36、レーン4)、CDR2内にシステインを有しないヒト化抗ビオチン抗体が使用されたときには、極めて低いバックグラウンド蛍光シグナルが示された(図36、レーン3)。ビオチン-Cys-Cy5は、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCにも共有結合的にカップリングされたが(図36、レーン2)、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体が使用されたときには、有意に低い効率で、低いバックグラウンドシグナルが示された(図36、レーン1)。これは、ゲルの下部(矢印)に検出される過剰のビオチン-Cys-Cy5から推定され得る。ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCの場合には、ヒト化抗ビオチン抗体VH53C(レーン4)より有意に多く、カップリングされていないビオチン-Cys-Cy5が検出され得る(レーン2)。試料の還元によって、抗体の重鎖および軽鎖の近くにCy5関連蛍光は検出不可能となり、このことは、共有結合が確かにジスルフィド架橋によって形成されていたことを示す。各ゲルのクーマシー染色は、各レーン中のタンパク質の総量が等しかったことを示している。
実施例20
ハプテンによって指定された結合は、ハプテン化色素またはハプテン化ポリペプチドの抗ハプテンシステイニル化抗体との効率的な共有結合性カップリングのための必要条件である
ハプテン化化合物の抗ハプテン抗体との親和性によって駆動される複合体化が、効率的なジスルフィド結合形成のための必要条件であることを示すため、ハプテン化されていないペプチドAc-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2)(Biosynthan 1763.1、SEQ ID NO:178)を、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCおよびヒト化抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベートした。1.4mgのAc-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2)を、濃度10mg/mlとなるように100%DMFに溶解させた。2mgの各抗体を、50mM トリス塩酸、1mM EDTA(pH8.2)から構成された緩衝液中、濃度11〜13mg/ml(約75〜89μM)で使用した。Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2)および抗体を、モル比2.1:1(Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2):抗体)で混合した。溶液をスターラーバーで500rpmで撹拌しながら、ペプチドを3回に分けて添加した。各添加の間に、試料を200rpmで5分間インキュベートした。最後の部分の添加の後、試料をRTおよび200rpmで1時間インキュベートした。
得られた複合体/結合体は、サイズ排除クロマトグラフィによって、Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC結合体については、97%単量体IgG様分子および3%二量体可溶性凝集物であり、Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体複合体については、100%単量体であることが明らかとなった。さらに、得られた複合体/結合体を、質量分析によって分析した。Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC結合体について、検出された種の17%が、2ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、51%が、1ペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、32%が、ペプチドとカップリングされていない抗体として同定された。Ac-PYY(PEG3-Cys-4Abu-NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体複合体については、抗体の100%がカップリングされていなかった。
実施例21
共有結合性のペイロードカップリングのためのシステイン変異を有する適切に折り畳まれた機能性ハプテン結合抗体の形成のために必要とされるジスルフィドパターン
共有結合性の化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合モジュールは、ハプテン化化合物/ペイロードの共有結合性の結合を可能にする追加のシステインを含有しているIgGなどの「標準的な」抗体から構成され得る。本明細書において報告する方法は、折り畳まれたドメイン(その構造および配列が抗体の機能性のための基礎を提供する)内に必要とされる官能基(システイン)を導入する。抗体のドメイン内およびドメイン間の規定のジスルフィド結合の正確な形成は、正確な構造および機能性の形成および維持にとって不可欠である。図37(A)は、未修飾抗体のFabなどの機能性の結合アームを形成するために必要とされるジスルフィドパターンを示し、図37(B)は、VH52cB/VH53C変異型抗体誘導体の構造および機能性を維持するのに必要なジスルフィドパターンを示す。適切なジスルフィドパターンを維持するため、VHドメインに導入された付加的なシステインは、未占有でなければならず、近隣のシステインに干渉したりそれらと反応したりしてはならない。図37(C)および37(D)は、追加のシステインの付加が、そのような分子の生合成の間にVHドメイン内の不正確なジスルフィドを形成する可能性を生ずることを示す。VH52bC/VH53C位がVHドメイン内に(他のシステインの極めて近くに)位置しているという事実は、不正確なジスルフィドが重鎖の生合成の間に形成され得るリスクを増大させる。別の可能性のある問題は、VHドメインおよびVLドメインが、分泌経路内で1個のFv断片へと組み立てられることである。分泌経路は、酸化還元シャフリング条件ならびにジスルフィド形成酵素およびジスルフィドシャフリング酵素を含む。従って、VH52bC/VH53C変異の付加によって不正確なジスルフィドが導入される可能性は、軽鎖のジスルフィドにまで「拡張」され得る(例示的に図37(E)に示されている)。これは、不適切に折り畳まれた非機能性の分子を入手する/生成するリスクをさらに増強する。従って、これらのリスクにも関わらず、VH52bC/VH53C変異を含有しており、ハプテン化化合物/ペイロードに共有結合的に接続され得る、均質な機能性の抗体誘導体が、多量に発現され入手され得ることは、極めて驚くべきことである。
実施例22
共有結合性カップリングのためのシステイン変異を有するジスルフィドによって安定化された抗ハプテン単鎖Fv断片の組成および生成
共有結合性の化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合モジュールは、IgGなどの「標準的な」抗体からなり得る。あるいは、それらは、組換えのFv断片もしくはFab断片またはそれらの誘導体などの修飾された実体であってもよい。単鎖Fv断片は、特に、小さいモジュールサイズが必要とされるか、または二重特異性もしくは多重特異性の抗体誘導体を生成するために付加的な結合モジュールが望まれる適用において、全長抗体の代わりに適用されることが多い。生成された抗ハプテンFv由来実体の一例は、ジゴキシゲニン化化合物/ペイロードに結合し、それに共有結合的に接続される、ジスルフィドによって安定化された単鎖Fvである。Dig結合特異性を有するジスルフィドによって安定化された単鎖Fvを、フレキシブルなGlyおよびSerに富むリンカーを介して、抗ジゴキシゲニン抗体のVHドメインおよびVLドメインを相互に接続することによって生成した。これらのVHドメインおよびVLドメインは、VHの44位およびVLの100位(カバットらによる位置)にシステイン変異をさらに保有していた。これらの付加的なシステインは、VHとVLとの間の安定的な分子間ジスルフィド結合を形成する。以前に記載されたように(例えば、Reiter,Y.,et al.,Nature Biotechnology 14(1996)1239-1245)、これはscFvを安定化する。
それに加えて、Fv断片に共有結合官能基を付加するため、カバット番号付けによるVHの52b位または53位へ、それぞれ、もう1個のシステインを導入した。
しかしながら、ジスルフィドによって安定化されたFv断片へのそのような変異の導入は、全長抗体へそれらを位置付けるよりはるかに困難である。単鎖Fv断片は、安定化しヘテロ二量体化を強制する実体としての定常ドメインを欠くため、全長IgGまたはFab断片より本質的に安定性が低い。安定性は、VH44-VL100ジスルフィドなどの付加的なシステイン変異をFvに位置付けることによって付与され得る。しかしながら、この安定化原理は、ジスルフィドが正確なシステインの間で正確な位置で形成される場合にのみ有効である。従って、規定のドメイン内ジスルフィド(VH内の1個およびVL内の1個)に加えて、1個の単一の規定の正確なドメイン間ジスルフィドが形成される必要がある。マッチしないシステイン間のジスルフィド接続は、誤って折り畳まれた不安定で非機能性の実体を生成するであろう。ジスルフィドによって安定化されたFv断片が6個のシステインを含有していることを考慮すると、21種の異なるジスルフィド接続が理論上形成され得るが、3種の規定のジスルフィドの正しい組み合わせのみが、機能性の安定化されたscdsFvを形成するであろう。この問題は、VHドメインへのもう1個のフリーのシステインの付加によって増大する。望まれる安定化されたdsFvは、2個の規定のドメイン内ジスルフィド(VH内およびVL内に1個ずつ)、1個の規定のドメイン間(VHとVLとの間)のジスルフィドを含有し、さらにハプテン化化合物/ペイロードカップリングのための1個のフリーのシステインを(VH内の52b/53位に)含有している。共有結合性カップリングのための追加のシステイン変異を有するジスルフィドによって安定化されたFv断片が、7個のシステインを含有していることを考慮すると、多くの異なるジスルフィド接続が理論上形成され得るが、VH52b/VH53位に正確なフリーのシステインを有する3種の規定のジスルフィドの正しい組み合わせのみが、機能性の安定化された共有結合性カップリングが可能なdsFvをもたらすであろう。一つの付加的な問題は、天然に存在するシステインではなく、ジスルフィド安定化のために導入された変異であるVH44システインの直近に、付加的なフリーのシステイン(VH52b/VH53)が位置しているという事実である。VH44Cは、正確なドメイン間ジスルフィドの形成のために必要であり、理論によって拘束されないが、このジスルフィドはVHおよびVLの独立の折り畳みおよび組み立ての後に形成される可能性が最も高い。VH44CとVH52bC/VH53Cとの近接は、ドメイン内ジスルフィドが正確に形成されないリスクを増大させる。しかし、ジゴキシゲニンに結合し、同時にジゴキシゲニン化ペイロードにも共有結合的に接続され得る、機能性のジスルフィドによって安定化された単鎖Fvモジュールが、作製され得ることが見出された。正確な位置に正確なジスルフィドおよびフリーのシステインを含有しているジスルフィドによって安定化された単鎖Fv分子の組成、および望まれない不正確に折り畳まれた分子との比較は、図38に示されている。VH52bC変異を有するこのDig結合scdsFv(Fv抗体誘導体)の軽鎖可変領域および修飾された重鎖可変領域をコードする配列はSEQ ID NO:190(VH)に記載され、対応するVLはSEQ ID NO:189に記載されている。二重特異性抗体誘導体の生成のためのモジュールとしてのそのようなdsFvの成功した生成は、(下記)実施例23、ならびに図40(A)、図40(B)、および図40(C)に記載されている。
実施例23
共有結合的にカップリングされた化合物/ペイロードの標的化送達のための二重特異性抗ハプテン抗体誘導体の組成、発現、および精製
共有結合性の化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合抗体モジュールを含有している二重特異性抗体を生成した。これらの抗体は、他の抗原へのターゲティングを可能にする結合モジュールを付加的に含有している。そのような二重特異性抗体のための適用には、ターゲティング抗原を保持している細胞または組織へのハプテン化化合物/ペイロードの特異的ターゲティングが含まれる。生成されたそのような分子の一例は、腫瘍関連炭水化物抗原LeYを認識する結合領域を有し、同時に、ジゴキシゲニン化化合物/ペイロードに結合しそれに共有結合的に接続されるジスルフィドによって安定化されたFvを有する、二重特異性抗体である。従って、ジスルフィドによって安定化された単鎖Fvを、フレキシブルなGlyおよびSerに富むコネクターペプチドを介して、LeY抗体のCH3ドメインのC末端に接続し、2個のLeY結合アームを有し、2個のジゴキシゲニン結合実体を付加的に有する四価の分子をもたらした。ジゴキシゲニン結合実体は、以前に記載された(例えば、Reiter,Y.,et al.,Nature Biotechnology 14(1996)1239-1245)VH44-VL100ジスルフィド結合を保有していた。ジゴキシゲニン結合実体は、共有結合性カップリングのためのVH52bC変異をさらに含有していた。このLeY-Dig抗体誘導体の軽鎖および修飾型重鎖をコードする配列は、SEQ ID NO:191およびSEQ ID NO:192に記載されている。共有結合的にカップリングされた化合物/ペイロードのための送達媒体としてのLeY-Dig二重特異性抗体誘導体の組成は、図39に概略的に示されている。
二重特異性分子を、分子生物学の技術によって生成し、培養細胞から分泌によって発現させ、その後、上記と同様に培養上清から精製した。図40(A)は、抗体のL鎖およびH鎖を検出するウエスタンブロット分析において可視化された、細胞培養上清中のこのLeY-Dig(52bC)二重特異性抗体の修飾されたH鎖およびL鎖の存在を示す。図40(B)は、還元剤の存在下でのSDS-PAGEによって、精製後のこれらの抗体の均質性を証明している。クーマシーブリリアントブルーによるSDS-PAGEの染色は、計算された分子量に類似した見かけの分子サイズを有するIgG関連ポリペプチド鎖を可視化する。図40(C)は、プロテインA精製後のLeY-Dig(52bC)二重特異性抗体のSECプロファイルを示し、タンパク質調製物の均質性および凝集物の欠如を証明している。従って、ターゲティングモジュールを含有しており、ハプテン化化合物/ペイロードの共有結合性カップリングのためのモジュールも含有している二重特異性抗体は、生成され、均質に精製され得る。
実施例24
ビオシチンアミドとの複合体内におけるマウス抗ビオチン抗体Fab断片のX線構造決定
ビオシチンアミドとの複合体におけるマウス抗ビオチン抗体Fab断片のタンパク質構造を決定した。従って、Fab断片の結晶を0.8Mコハク酸中で成長させ、続いて、抗体結晶にビオシチンアミドを負荷した(結晶化溶液でワーキング濃度10mMに希釈し、結晶化液滴中の結晶に適用した)。結晶を、2μlの10mM ビオシチンアミド溶液で3回洗浄し、最後に、ビオシチンアミドと共に21℃で16時間インキュベートし、凍結防止剤として15%グリセロールを用いて採取し、液体窒素中で急速凍結させた。処理された回折画像は、2.5Åの解像度でタンパク質構造を与えた。ビオチン結合可変領域の構造および電荷組成は、図46に示されている:ビオチンは、CDR領域由来のアミノ酸から構成された電荷を有する領域が隣接している表面ポケットに結合する。複合体化されたハプテンは、負の電荷を有するアミノ酸クラスタの直近に位置している。ハプテンとして、カルボキシル基におけるペイロードのカップリングのために誘導体化されたビオチンは、(COOH基の欠如のために)この位置には電荷反発が存在しないため、良好な効率で結合する。対照的に、遊離の(通常の)ビオチンは、カルボキシル基がこの負の電荷のクラスタの直近にあり、そのため、反発されるため、抗体に効率的に結合することができない。