JP6024116B2 - 熱電素子および熱電素子の製造方法 - Google Patents

熱電素子および熱電素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は熱電素子および熱電素子の製造方法に関する。
従来、異なる熱電材料を接合して熱電素子を製造することによって使用温度による熱電変換効率を高める技術が知られている。例えば、特許文献1には、BiTe系の熱電材料とCoSb系の熱電材料とを接合して熱電素子を製造する技術が開示されている。また、当該特許文献1には、BiTe系の熱電材料とCoSb系の熱電材料とでは熱膨張率が大きく異なるため、両者の間に、両者の熱膨張率の中間の値を持つ材料層を挿入することで熱応力を緩和する技術が開示されている。
特開2005−19910号公報
従来の技術のように、2種類の熱電材料の熱膨張率の中間の値を持つ材料層を熱電材料間に形成する構成は材料の選定が難しく、汎用性が低い。また、2種類の熱電材料がともにBiTe系の熱電材料である場合など、2種類の熱電材料の熱膨張率が同等である場合には従来の技術を利用することができない。さらに、2種類の材料を接合するための一般的な手法は半田による接合であるが、現在利用されているPbフリー半田の融点は例えば、Au−Sb半田において280℃程度と比較的低温域に存在し、300℃等といった高温域での使用を想定する場合には従来の半田を利用することができない。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、半田を利用することなく熱電材料同士を強固に接合することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明においては、第1の熱電材料と、当該第1の熱電材料と組成が異なる第2の熱電材料とが接合層で接合された熱電素子において、100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することによって接合層を形成する。
すなわち、接合層は100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することによって形成されるため、焼結前に100nmより小さい粒径で存在する金属粒子は、焼結後により大きな結晶粒となって互いに強く結合して接合層を構成する。この結果、接合層の強度が強くなる。また、接合層の電機伝導率は大きくなり、本発明にかかる熱電素子や当該熱電素子を利用した熱電変換モジュールにおける熱電変換効率が低下することを防止することができる。なお、焼結前に100nmより小さい粒径で存在する金属粒子が焼結後により大きな結晶粒となると、当該焼結後の金属は融点に達するまで溶融しない。半田よりも融点が高い金属は多数存在するため、本発明によれば、半田の融点よりも高い融点を有する多種多様な金属によって接合層が形成された熱電素子を提供することが可能である。
第1の熱電材料は熱電変換を行うことが可能な材料であればよく、各種の組成の熱電材料を第1の熱電材料とすることが可能である。第2の熱電材料も熱電変換を行うことが可能な材料であるが、第2の熱電材料の組成は第1の熱電材料の組成と異なる組成である。第1の熱電材料と第2の熱電材料とでは、元素が異なっていてもよいし同一であってもよく、後者の場合には第1の熱電材料と第2の熱電材料とで元素の組成比が異なることになる。また、第1の熱電材料と第2の熱電材料とで結晶構造が同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、第1の熱電材料と第2の熱電材料とに含まれる元素が同一あるいは類似(一部のみ異なる)であって、結晶構造が同一あるいは類似している場合、両者の熱膨張率が類似した値となり得るが、このような2種類の熱電材料であっても、金属粒子を含むペーストを利用すれば両者を強固に接合する接合層を形成することができる。
接合層は、第1の熱電材料と第2の熱電材料とを接合するために形成され、各種の手法によって形成可能であるが、少なくとも一部は100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することによって形成される。すなわち、ペーストは金属粒子が流動性のある溶媒に含まれた状態であって、ペースト自体に流動性のある状態であるが、焼結後には溶媒が揮発して金属粒子が残り流動性のない状態となる。これと同時に金属粒子同士が結合することによって電気的抵抗が低い状態となることで第1の熱電材料と第2の熱電材料とが電気的に接合された状態となればよい。従って、第1の熱電材料と第2の熱電材料とを接合する前においては、第1の熱電材料と第2の熱電材料との間にペーストが存在し、互いの位置を自由に変えられる状態で第1の熱電材料と第2の熱電材料との位置を規定の位置に調整し、位置を調整した後に焼結を行うことで当該位置に第1の熱電材料と第2の熱電材料とが固定されるようにペーストが利用されればよい。
従って、接合層の厚さ方向の少なくとも一部がペーストの焼結によって形成されればよい。むろん、全てがペーストの焼結によって形成されてもよい。また、第1の熱電材料と第2の熱電材料とはバルクの状態で接合された後に切断されてもよいし、規定の大きさの第1の熱電材料と第2の熱電材料とを接合することで規定の大きさの熱電素子を形成してもよい。
また、ペーストは100nmより小さい金属粒子を含んでいればよく、焼結によって粒子が互いに結合し、焼結後に第1の熱電材料と第2の熱電材料とが電気的に接続されるように金属粒子の大きさや元素の種類を選択すればよい。また、ペーストを構成する溶媒は有機溶媒であることが好ましい。すなわち、金属粒子が有機溶媒中に分散したペーストであれば、焼結によって有機溶媒を揮発させることが可能であり、焼結後に溶媒成分によって電気伝導率が高くなることを防止することが可能である。なお、金属粒子の大きさは、例えば、10nmより大きく、100nmより小さい大きさであってもよい。
また、焼結の例として、金属粒子が粗大化し、前記第1の熱電材料および第2の熱電材料の結晶粒が粗大化しない温度で焼結を行う構成を採用してもよい。すなわち、焼結後に接合層の強度を確保するためには、ペースト内の金属粒子同士が焼結によって互いに結合し、熱応力によって結合が破壊されない状態となる必要がある。そこで、金属粒子が粗大化する温度以上で焼結を行えば、焼結の過程で金属粒子同士が結合して粗大化することになり、焼結後には熱応力によって当該結合が破壊されない状態とすることができ、高い強度の接合層を形成することができる。
さらに、高性能の熱電材料において当該性能を維持するためには、熱電材料内の結晶の状態を変化させないことが好ましい。すなわち、熱電材料の性能を高くするためには、性能指数Z=α/(ρ×κ)を大きくする必要があり(αはゼーベック係数)、電気抵抗率ρが小さく、熱伝導率κが小さいことが好ましい。多結晶の物質においては、結晶粒が微細であって結晶軸の向きが乱雑であるほど電気抵抗率ρが大きくなるため、電気抵抗率ρを小さくするためには結晶粒が大きい方が好ましい。しかし、結晶粒が大きくなって結晶の配向の程度が均一化されると、熱伝導率κは大きくなる。従って、性能指数Zを高める上で電気抵抗率ρと熱伝導率κとはトレードオフの関係にあるが、BiTe系等の熱電材料においては、一般に、結晶軸の配向性が強く、特定の方向に結晶軸が揃った材料は当該電気抵抗率ρが小さくなる。そこで、適度に微細化された多結晶の材料において結晶軸が特定の方向に配向した状態とすることで、電気抵抗率ρが小さく、熱伝導率κも小さい熱電材料を製造し、熱電材料を高性能化している。そして、高性能化された熱電材料を切り出すことによって高性能な熱電材料を製造している。
このため、第1の熱電材料および第2の熱電材料内の結晶粒が粗大化するような温度で焼結を行って接合層を形成すると、第1の熱電材料と第2の熱電材料の性能が低下してしまう。そこで、第1の熱電材料と第2の熱電材料の結晶粒が粗大化する温度よりも低い温度で焼結を行うこととすれば、焼結によって第1の熱電材料と第2の熱電材料の性能が低下することを防止することができる。
さらに、ペーストを焼結することによって形成された焼結層と、当該焼結層に隣接するメッキ層とを含むように接合層を構成するとともに、当該メッキ層をペーストに含まれる金属粒子と同一の金属によるメッキによって形成してもよい。すなわち、焼結前にペーストに含まれる金属粒子と同一の金属によるメッキ層を第1の熱電材料と第2の熱電材料との少なくとも一方に形成しておき、当該メッキ層とペーストとが接触する状態で焼結を行えば、焼結の際に金属粒子とメッキ層とが容易に結合するため、接合層の強度を高強度にすることができる。なお、メッキ層は、焼結層に隣接するように形成されていればよく、当該焼結層から見て厚さ方向の一方側に形成されてもよいし、両側に形成されてもよい。すなわち、メッキ層による高強度化が、焼結層の両側にて必要であれば両側にメッキ層を形成すればよいし、一方側にのみ必要であれば一方側のみにメッキ層を形成すればよい。
なお、メッキ層と焼結層とでは、平均粒径が異なることが多い。例えば、100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することにより、平均結晶粒径が1μmより大きく10μm以下の第1層が形成され、メッキによって平均結晶粒径が10μmより大きい第2層形成されるような構成を想定可能である。従って、本発明により、第1層と第2層とを含む接合層が形成されると捉えることもできる。むろん、第1層および第2層は複数層形成されていてもよい。
また、ペーストを焼結することによって接合層の少なくとも一部を形成する場合、焼結前にペーストと接する部位(例えば、第1の熱電材料、第2の熱電材料、第1の熱電材料上のメッキ層、第2の熱電材料上のメッキ層等)が酸化することにより、酸素濃度が局部的に高くなっていることが多い。従って、焼結前にペーストを挟む2カ所の部位は酸素濃度が高い。また、ペーストによる焼結を複数回繰り返すと、同様に酸素濃度が高い部位が2カ所ずつ増加する。従って、本発明により、厚さ方向に沿った酸素濃度の変化が所定の基準を越える位置を界面とする高酸素濃度層を複数層含むような接合層が形成されると捉えることもできる。
なお、所定の基準は、層内の任意の位置における酸素濃度が他の位置における酸素濃度と比較して多くなっているか否かを判断することができればよく、例えば、焼結前に空気等の周囲の気体に触れていた部分と触れていない部分とにおける焼結後の酸素濃度の差を統計的に特定し、両者を区別することができるように距離当たりの酸素濃度の変化に対して所定の基準を設定する構成等を採用可能である。酸素濃度は、各種の指標によって評価可能であり、面積あるいは体積当たりの酸素の濃度で評価してもよいし、特定の観測方法で観測される酸素の量や観測頻度で評価してもよい。むろん、酸素の濃度は絶対量で評価されてもよいし相対量で評価されてもよい。
さらに、接合層に隣接させて種々の機能を有する層を形成してもよい。例えば、接合層と第1の熱電材料との間、接合層と第2の熱電材料との間、の少なくとも一方に、材料の拡散を防止する拡散防止層を形成してもよい。すなわち、接合層と熱電材料との界面において接合層内の材料が熱電材料側に拡散し、あるいは、熱電材料内の材料が接合層側に拡散することが発生し得る。
そこで、このような拡散を防止するために、拡散が発生しにくい材料による層を形成すれば拡散防止層として機能する。このような拡散防止層として機能する材料は、接合層と第1の熱電材料と第2の熱電材料との組成によって選択可能であるが、例えば、BiTe系の熱電材料においては、Niによって層を形成すれば拡散防止層として機能する。
さらに、焼結は各種の環境下で行うことが可能であり、例えば、第1の熱電材料および第2の熱電材料から接合層に向けて圧力が加えられた状況で焼結が行われる構成を採用してもよい。すなわち、接合層が圧縮されるように加圧した環境で焼結を行う。この構成によれば、加圧しない状況と比較して焼結層における空隙の含有率を低下させることができ、焼結層の電気抵抗を低下させることが可能である。
熱電変換モジュールの製造方法を示すフローチャートである。 熱電変換モジュールの製造方法を模式的に示す図である。 熱電変換モジュールの製造方法を模式的に示す図である。 (4A)は熱電変換モジュールの電極間の断面図であり、(4B)(4C)は接合層内の酸素濃度を示す図である。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)熱電変換モジュールの製造方法:
(2)実施例:
(3)他の実施形態:
(1)熱電変換モジュールの製造方法:
図1は、本実施形態にかかる熱電素子を利用して熱電変換モジュールを製造する製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態における熱電変換モジュールの製造方法は、熱電材料のバルクが製造された後に実行される。すなわち、図1に示す熱電変換モジュールの製造方法を実行する以前に、予めn型熱電材料およびp型熱電材料のバルクを製造する。本実施形態にかかるn型熱電材料およびp型熱電材料はBiTe系の熱電材料であり、Bi,Sbからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Te,Seからなる群から選択される少なくとも1種の元素とによって(Bi,Sb)(Te,Se)の組成となるように秤量された原料に対して各種の加工法を適用することでn型熱電材料およびp型熱電材料が製造される。なお、(Bi,Sb)と(Te,Se)との組成比が2:3から僅かにずれたとしても、Bi2Te3と同様の結晶構造(空間群R3−mの菱面体結晶構造(−は通常、3の上方に表記される))である限り、BiTe系の熱電材料である。
BiTe系のn型熱電材料およびp型熱電材料は、例えば、押出処理(ホットプレス法等)や塑性変形を伴う押出処理(せん断付与押出法,ECAP法,ホットフォージ法等)、圧延処理、一方向凝固法,単結晶法等によって特定の結晶軸が特定の配向方位に配向するように加工することで製造することができる。本実施形態において予め用意される熱電材料のバルクは、n型熱電材料とp型熱電材料とであるとともに、高温部の温度域で相対的に性能指数が高い高温材と低温部の温度域で相対的に性能指数が高い低温材とによって構成される。
図2および図3は、図1に示す製造方法における主な工程における加工対象を模式的に示す図であり、図2においては図1に示す製造を実行する前に製造済みのバルクをBnh,Bnl,Bph,Bplとして示している。ここで、バルクBnhはn型熱電材料の高温材、バルクBnlはn型熱電材料の低温材、バルクBphはp型熱電材料の高温材、バルクBplはp型熱電材料の低温材である。すなわち、バルクBnhの熱電材料は高温域(300℃付近の温度域)でバルクBnlの熱電材料よりも性能指数が高く、低温域(50℃付近の温度域)でバルクBnlの熱電材料よりも性能指数が低い。同様に、バルクBphの熱電材料は高温域(300℃付近の温度域)でバルクBplの熱電材料よりも性能指数が高く、低温域(50℃付近の温度域)でバルクBplの熱電材料よりも性能指数が低い。
図1に示す製造方法においては、このようなBiTe系の熱電材料のバルクBnh,Bnl,Bph,Bplを切断して薄板状のウエハを製造する(ステップS100)。本実施形態においては、後述する工程により2枚のウエハの間に接合層を形成することで直方体の熱電素子を製造するため、各ウエハの厚さは熱電素子の大きさに合わせて予め決められた厚さとなるように設定される。図2においては、n型熱電材料のバルクBnhから製造されたウエハをWnh、n型熱電材料のバルクBnlから製造されたウエハをWnl、p型熱電材料のバルクBphから製造されたウエハをWph、p型熱電材料のバルクBplから製造されたウエハをWplとして示している。
なお、本実施形態においては熱電材料間に接合層が形成され、熱電素子と電極との間にも接合層が形成されるため、前者を材料間接合層、後者を素子電極間接合層と呼ぶ。また、他の類似した層においても各層を必要に応じて材料間と素子電極間とで区別する。例えば、熱電材料間のA層を材料間A層と呼び、熱電素子と電極との間のA層を素子電極間A層と呼ぶ。
ウエハが製造されると、次に、ウエハ表面に拡散防止層が形成される(ステップS105)。当該ステップS105において形成される拡散防止層は、熱電材料間に存在し得るとともに、熱電素子と電極との間にも存在し得る。従って、当該拡散防止層は、材料間拡散防止層と素子電極間拡散防止層との双方になり得る。なお、当該拡散防止層が形成された後のウエハに対してさらに後述するペーストに含まれる金属粒子と同一の金属による金属メッキ層を形成する処理を行ってもよい。図2においては、ステップS105によって拡散防止層が形成されることが実線の矩形で示されており、金属メッキ層を形成してもよいことが破線の矩形で示されている。
メッキが行われると、高温材と低温材との間に100nmより小さい金属粒子が含まれたペーストが塗布され、高温材と低温材とを張り合わせるようにして焼結が行われる(ステップS110)。本実施形態においては、焼結対象をリフロー炉内に搬入してリフロー炉内が所定の雰囲気(真空、アルゴン、窒素、空気等)とされた後、所定の焼結温度で所定時間加熱することによって焼結を行う。ここでは、図3に示すように、n型熱電材料の高温材のウエハWnhと低温材のウエハWnlとの間にペーストPが挟まれるような状態で焼結が行われ、p型熱電材料の高温材のウエハWphと低温材のウエハWplとの間にペーストPが挟まれるような状態で焼結が行われる。従って、本実施形態においては、高温材と低温材との一方が第1の熱電材料となり、他方が第2の熱電材料となる。
なお、焼結温度は、ペーストに含まれる100nmより小さな金属粒子が粗大化し、熱電材料の結晶粒が粗大化しない温度である。すなわち、本実施形態におけるペーストには100nmより小さい金属粒子が含まれており、このような微小な金属粒子を加熱すると、当該金属の融点よりもはるかに低い温度で結晶同士が結合して金属粒子が粗大化する。また、有機溶媒は揮発する。このような焼結によって金属粒子の粗大化が発生すると、ペーストであった部分に流動性はなくなり、強固に固化する。そして、当該固化した部分は、当該金属の融点に達するまで溶融せず、熱電変換モジュールの高温部として想定される300℃程度に再加熱された場合であっても固体として安定した状態を維持する。
従って、焼結前にペーストであった部分は、焼結後に熱電材料間を強固に接合する材料間接合層となり、熱電変換モジュールが使用される温度域に加熱されたとしても熱電材料間を強固に接合する層として機能する。なお、焼結温度が高くなるほどペースト内の金属粒子が粗大化しやすくなるが、過度に高い温度にすると熱電材料内の結晶粒が粗大化して性能指数が低下する。従って、焼結温度は、熱電材料内の結晶粒が粗大化する温度よりも低い温度に設定される。
さらに、ペーストが焼結温度に維持される所定時間は、焼結による金属粒子の粗大化により、材料間接合層が充分に高強度化し、また、材料間接合層における電気伝導率が充分に低下するように設定されていればよく、例えば、所定時間経過後に1μm以上の金属粒子が確認されるような長さとして所定時間を設定する構成等を採用可能である。なお、ペーストとしては、例えば、DOWAエレクトロニクス社製銀ナノペースト、大研化学工業製NAG-10、三ツ星ベルト社製MDot等が挙げられる。
以上の焼結の結果、高温材の層とペースト由来の材料間焼結層と低温材の層とが一体となったウエハ状の熱電材料が製造されると、次に、当該焼結後の熱電材料が切断されて熱電素子が製造される(ステップS115)。本実実施形態においては、直方体の熱電素子を製造するため、ウエハの円形の面内で互いに垂直な2方向に切断方向が設定される。この切断により、図3に示すような直方体のn型熱電素子Pn、p型熱電素子Ppが得られる。なお、n型熱電素子Pn、p型熱電素子Ppのそれぞれにおいて、熱電素子間はNiメッキ層(材料間拡散防止層)、ペースト由来の材料間焼結層、Niメッキ層(材料間拡散防止層)という構造となっており、熱電素子の表面は最表層がNiメッキ層となっている。当該熱電素子の最表層のNiメッキ層は、後の工程により素子電極間拡散防止層となる。
次に、基板に電極を形成する(ステップS120)。すなわち、本実施形態においては、熱電素子を支持するとともに熱電素子に熱を伝達し、熱電素子から熱が伝達される部位として薄い矩形板状の基板が使用されるため、当該基板に対して、熱電素子を電気的に直列に接続することができるように予め電極の配置パターンが決められており、当該配置パターンとなるように基板上に電極が形成される。当該電極の形成は、例えば、セラミック基板上にCuによって電極パターンを形成することで実現可能である。図3においては、基板Pb上に直方体の電極Eが横に3個、縦(図の奥行方向)に2個並べて形成されている例を模式的に示しているが、熱電変換モジュールを構成する一対の基板において、一方の基板と他方の基板とで電極パターンが異なっていてもよい。
次に、電極表面にNiメッキによって拡散防止層が形成される(ステップS125)。当該ステップS125において形成される拡散防止層は、熱電素子と電極との間に存在する層となるため、素子電極間拡散防止層である。なお、ここでも、当該拡散防止層が形成された後にさらに金属メッキ層を形成する処理を行ってもよい。図3においては、ステップS125によって電極Eの表面に拡散防止層が形成されることが実線の矩形で示されており、金属メッキ層を形成してもよいことが破線の矩形で示されている。なお、ステップS120,S125はステップS100より前に行われてもよい。
電極表面にメッキが行われると、図3に示すように、電極上の拡散防止層にペーストPが塗布される(ステップS130)。ここで、ペーストは、焼結後に30μm以上の厚さになるように予め量が決められる。すなわち、本実施形態におけるペーストは100nmより小さい金属粒子を含む有機溶媒であり、焼結によって有機溶媒は全て揮発するため、有機溶媒が全て揮発した場合に所望の厚さとなるようにペーストを塗布することで焼結後に形成される層(素子電極間接合層)の厚さを所望の厚さとすることができる。
なお、有機溶媒と金属粒子との比率は限定されないが、所望の厚さの素子電極間接合層を形成するためには有機溶媒の量が少ないことが好ましく、例えば、金属粒子の重量比が80%以上であることが好ましい。より具体的には、6.3mgのAgペーストを所定の昇温速度で加熱し、310℃で30分保持することによって0.988mgの有機溶媒が全て揮発するAgペースト(すなわち、Ag粒子が84.3重量%)を利用して30μm以上の厚さの素子電極間接合層を形成可能である。このようなAgペーストとしては、例えば、DOWAエレクトロニクス社製銀ナノペースト、大研化学工業製NAG-10、三ツ星ベルト社製MDot等が挙げられる。
次に、ペースト上に熱電素子が実装される(ステップS135)。本実施形態においては、図3に示すように、一つの電極Eに対してn型熱電素子Pnとp型熱電素子Ppとのそれぞれが1個ずつ実装される例を示している。従って、電極Eが6個であれば、計6個のn型熱電素子Pnと計6個のp型熱電素子Ppとが実装されることになる。
次に、熱電素子上に基板が載せられ(ステップS140)、焼結が行われる(ステップS145)。すなわち、電極上に熱電素子が実装された基板に対して対となる基板が選択されて熱電素子上に載せられ、一対の基板に熱電素子が挟まれた状態でリフロー炉内に搬入される。そして、リフロー炉内が所定の雰囲気(真空、アルゴン、窒素、空気等)とされた後、所定の焼結温度で所定時間加熱することによって焼結が行われる。なお、図3に示すように熱電素子に載せられる基板Pbは、実装済の熱電素子をn型熱電素子、p型熱電素子が交互に接続されるように各熱電素子を直列接続するパターンによって電極が形成されている基板である。
ここでも焼結温度は、金属粒子が粗大化し、熱電素子の結晶粒が粗大化しない温度である。すなわち、焼結前にペーストであった部分が焼結後に熱電素子と電極との間を強固に接合する素子電極間接合層として機能するように焼結温度が設定される。熱電素子内の結晶粒が粗大化して性能指数が低下しないように、熱電素子内の結晶粒が粗大化する温度よりも低い温度に設定される。また、焼結による金属粒子の粗大化により、素子電極間接合層の高強度化や素子電極間接合層における電気伝導率の低下が充分に実施されるように所定時間が設定される。ここでも、所定時間経過後に1μm以上の金属粒子が確認されるような長さとして所定時間を設定する構成等を採用可能である。
図4Aは、以上のようにして製造された熱電変換モジュールにおける電極間の構造を模式的に示す断面図であり、基板上で電極が形成される面に対して垂直な方向に熱電素子等を切断した様子を示している。同図4Aに示すように、熱電変換モジュールにおいて、電極E,E間には、熱電素子の厚さ方向に沿って、Niメッキ層(素子電極間拡散防止層)LNe、ペーストの焼結によって形成された素子電極間接合層Lae、Niメッキ層(素子電極間拡散防止層)LNe、高温材Pnh(またはPph)、Niメッキ層(材料間拡散防止層)LNm、ペーストの焼結によって形成された材料間接合層Lam、Niメッキ層(材料間拡散防止層)LNm、低温材Pnl(またはPpl)、Niメッキ層(素子電極間拡散防止層)LNe、ペーストの焼結によって形成された素子電極間接合層Lae、Niメッキ層(素子電極間拡散防止層)LNeが順に形成されている。
材料間接合層Lamは、100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することによって形成される。当該焼結の過程では有機溶媒に含まれる100nmより小さい金属粒子が粗大化し、1μm以上の金属粒子が観測される状態となる。従って、焼結後の材料間接合層Lamは1μm以上の金属粒子を含む層となり、やがて焼結温度で金属粒子の粗大化が生じなくなり、材料間接合層Lamが安定化する。また、材料間接合層Lamが1μm以上の金属粒子を含む層となることにより、金属粒子間の結合が焼結前よりも強くなる。
従って、高温部が300℃程度となるような状態で熱電変換モジュールを使用したとしても、材料間接合層Lam内で再度金属粒子の状態が変化することはなく、材料間接合層Lamの状態が変化しない状態で熱電変換モジュールを使用することができる。すなわち、Pbフリー半田の融点よりも高い温度域で使用可能な電変換モジュールを提供することができる。さらに、焼結によって金属粒子が粗大化することによって材料間接合層Lamにおける実効的な断面積が大きくなり、材料間接合層Lamの電気伝導率が大きくなる。この結果、熱電変換モジュールにおける熱電変換効率が低下することを防止することができる。



(2)実施例:
次に、上述の製造方法で製造した熱電変換モジュールの実施例を説明する。本実施例においては、Bi1.9Sb0.1Te2.5Se0.5の組成比の原料に0.3重量%のTeを追加したものをn型熱電材料の高温材の出発原料とし、Bi1.9Sb0.1Te2.7Se0.3の組成比の原料をn型熱電材料の低温材の出発原料とした。また、Bi0.2Sb1.8Te2.85Se0.1の組成比の原料をp型熱電材料の高温材の出発原料とし、Bi0.5Sb1.5Te3の組成比の原料をp型熱電材料の低温材の出発原料とした。
また、本実施例においては、Bi,Sb,Te,Seを秤量して上述の各出発原料となるように各元素の組成を調整し、各出発原料をアルゴン雰囲気中で700℃に加熱して溶解させ、攪拌した。さらに、攪拌/溶解後の出発原料を冷却して凝固させることにより、n型熱電材料の高温材おび低温材、p型熱電材料の高温材および低温材の合金とした。
さらに、得られた各合金を粉砕、もしくは液体急冷処理することで熱電材料の粉末を製造した。粉砕は、ボールミル、スタンプミル等によって実施可能であり、液体急冷処理はロール型液体急冷装置、回転ディスク装置、ガスアトマイズ装置等によって実施可能である。なお、当該液体急冷処理は、例えば、アルゴン雰囲気中において800℃に加熱した合金を急冷することによって実施可能である。
さらに、得られた各粉末を金型に充填し、ホットプレス装置、あるいはスパークプラズマ焼結装置にて一軸加圧した状態で焼結し上述のバルクBnh,Bnl,Bph,Bplを製造した。なお、一軸加圧はアルゴン雰囲気中で450℃に加熱された状態で100MPaの圧力を作用させることによって実施される。むろん、バルクは、上述の組成変形を伴う押出処理や圧延処理等によって製造されてもよい。
以上のようにして作成された熱電材料の室温での特性は以下の表1の通りであった。
Figure 0006024116
なお、表1に示した熱電材料は、n型、p型の双方において、使用温度を25℃から300℃まで変化させると、性能指数が一旦上昇した後に下降し、高温材における下降の程度が低温材における下降の程度より小さいため、高温域で高温材の性能指数が低温材の性能指数より高くなる。例えば、n型の熱電材料の高温材においては、25℃で約1.3程度(単位は10-3−1。以下同様)の性能指数であるが、50℃で1.9、100℃で2.1、200℃で1.9、300℃で1.2のように性能指数が変化する。一方、n型の熱電材料の低温材においては、25℃で約3.3程度の性能指数であるが、50℃で3.7、100℃で3.0、200℃で1.9、300℃で0.35のように性能指数が変化する。p型の熱電材料の高温材においては、25℃で約1.0程度の性能指数であるが、50℃で1.7、100℃で2.0、200℃で1.8、300℃で1.1のように性能指数が変化する。一方、p型の熱電材料の低温材においては、25℃で約3.2程度の性能指数であるが、50℃で3.5、100℃で2.7、200℃で1.7、300℃で0.35のように性能指数が変化する。従って、いずれにおいても50℃では高温材の性能指数<低温材の性能指数、300℃では高温材の性能指数>低温材の性能指数となる。
さらに、得られたバルクBnh,Bnl,Bph,Bplをマルチワイヤーソーにて切断してウエハを製造し(ステップS100)、各ウエハの表面にNiメッキによって10μmの拡散防止層を形成した(ステップS105)。なお、ステップS100においては、高温材の高さと低温材の高さの双方を0.5mmとした。さらに、高温材と低温材との間にAgペースト(例えば、大研化学工業製NAG-10)を塗布し、張り合わせた状態の高温材と低温材をリフロー炉内に導入し、大気中で加熱し、350℃に60分間維持することでウエハを焼結した(ステップS110)。この結果、焼結によって38μmの材料間接合層が形成された。この後、焼結後のウエハをカッティングソーにて切断して熱電素子Pn,Ppを製造した(ステップS115)。ここでは、熱電素子Pn,Ppの高さに垂直な方向の断面が0.6mm×0.6mmになるように切断した。従って、熱電素子Pn,Ppの大きさは、ほぼ1mm×0.6mm×0.6mmである。また、ここではこれらの熱電素子Pn,Ppを100個ずつ製造した。
さらに、2個のセラミックス製の基板(アルミナ製基板、0.5mm×10mm×11mm)の間にn型熱電素子Pnとp型熱電素子Ppとの組を100個配置して、これらのn型熱電素子Pnとp型熱電素子Ppとがn型、p型の順に電気的に直列に接続できるように予め決められたパターンの電極を各基板に形成し(ステップS120)、各基板上の各電極表面にNiメッキによって10μmの拡散防止層を形成した(ステップS125)。さらに、電極上の拡散防止層にAgペースト(例えば、大研化学工業製NAG-10)を塗布し(ステップS130)、ステップS115にて製造された熱電素子をAgペースト上に実装し(ステップS135)、熱電素子上に基板を載せて(ステップS140)、リフロー炉内で焼結を行った(ステップS145)。焼結は、リフロー炉内の雰囲気を大気として加熱し、300℃に60分間維持することで行った。この結果、焼結によって46μmの素子電極間接合層が形成された。さらに、焼結後にリフロー炉から基板を取り出し、配線用の電極に配線を行うことで熱電変換モジュールを製造した。このようにして製造した熱電変換モジュールのサンプルを基準サンプルとし、以下においては、各種のサンプルについての特性を比較する。なお、以下の実施例の各サンプルにおいて、各実施例の説明において言及されたパラメータ(金属種や厚さ等)以外のパラメータは基準サンプルと同一である。
表2は、ステップS105において熱電材料間に材料間拡散防止層を形成することによる効果を示している。
Figure 0006024116
表2は、左列に示す各元素によってステップS105の材料間拡散防止層を形成して上述の製造方法によって作成されたサンプルにおける発電電力低下率の時間依存性を示している。なお、表2の2段目のサンプルは基準サンプルであり、他のサンプルは基準サンプルの製造工程においてステップS105で形成する材料間拡散防止層を他のものに変更したサンプルである。また、「なし」はステップS105を省略したサンプルである。表2においては、製造直後における発電電力と製造後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月経過した後の発電電力とを比較して時間経過による発電電力の低下率を計算して示している。このように、材料間拡散防止層がない場合には、熱電素子内で元素が拡散してしまうため、発電電力が時間の経過とともに低下する。一方、いずれの材料間拡散防止層を形成した場合であっても、時間の経過に伴う発電電力の低下は抑制される。
なお、表2に示す発電電力は、上述のようにして作成された熱電変換モジュールを利用して測定された。すなわち、測定に際しては、熱電変換モジュールの低温部に温度調整用のペルチエ素子を接触させて低温部の基板を50℃に保持し、高温部にヒーターを接触させて高温部の基板を300℃に保持した。そして、この状態において、熱電変換モジュールの電極から延びるリードに外部付加抵抗装置を接続し、外部付加抵抗を変化させつつ電圧および電流を測定することで発電電力を測定した。
さらに、熱電変換モジュールの高温部から当該熱電変換モジュールに供給された熱量を入熱センサー等によって測定し、上述のようにして測定した熱電変換モジュールの発電電力(5.6W)との比を特定すると、発電時の変換効率を特定することができ、基準サンプルにおける変換効率は8.2%であった。一方、上述の基準サンプルに使用された熱電素子を低温材のみの熱電素子に置換して発電電力を測定したところ、発電電力は3.8W、変換効率は3.4%であった。また、基準サンプルに使用された熱電素子を低温材のみの熱電素子に置換した熱電変換モジュールと基準サンプルに使用された熱電素子を高温材のみの熱電素子に置換した熱電変換モジュールとを製造し、高温材が利用された熱電変換モジュールを高温部に接触させ、低温材が利用された熱電変換モジュールを低温部に接触させ、高温部および低温部に接していない基板同士を接触させて発電電力を測定したところ、発電電力は5.1W、変換効率は6.4%であった。なお、この場合の各モジュールの熱電素子の高さは0.5mmである。従って、本実施形態にかかる熱電素子によれば、高温部と低温部との温度差を250℃等の大きな値として発電を行う用途の熱電変換モジュールを実現可能であるとともに、高い変換効率を実現可能である。
ステップS110における焼結温度は、ペースト内の金属粒子が粗大化し、熱電素子Pn,Ppの結晶粒が粗大化しない温度である。表3は、100nmより小さい金属粒子を含むペーストと100nm以上の金属粒子を含むペーストをステップS105にて製造したウエハに塗布し、複数の焼結温度で60分間焼結させた場合における材料間接合層の接合性を示している。
Figure 0006024116
ここで、表3のAg、100nmより小、350℃に示すサンプルが基準サンプルであり、表3の他のサンプルは金属種、焼結温度、ペースト内の粒子の大きさを変更したサンプルである。表3は、熱電素子Pn,Ppのそれぞれに使用された高温材および低温材の電気抵抗率から計算される電気抵抗値と実際に製造された熱電素子Pn,Ppにおいて実測された電気抵抗値との比較を示しており、計算値に対する実測値の増加分が5%未満であるものを丸、増加分が5%以上10%未満であるものを△として示している。また、×は金属粒子が充分に粗大化していないサンプル(1μm以上の粒子が確認できなかったサンプル)あるいは熱電材料の結晶粒が粗大化して顕著に電気抵抗値が増加したものである。なお、金属粒子の大きさや熱電材料の結晶粒の大きさは、例えば、ある断面における結晶粒の面積と同じ面積の円の半径にて定義すればよく、当該結晶粒の面積はTSL社製のEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)装置等にて測定可能である。
以上のように、100nmより小さいAg粒子を含むペーストを利用すれば、焼結温度が250℃〜350℃の範囲において、充分に電気抵抗値が小さくなる材料間接合層を有する熱電素子を製造することができる。また、100nmより小さいAl粒子を含むペーストを利用すれば、焼結温度が200℃〜350℃の範囲において、充分に電気抵抗値が小さくなる材料間接合層を有する熱電素子を製造することができる。100nmより小さいCu粒子を含むペーストを利用すれば、焼結温度が350℃において、充分に電気抵抗値が小さくなる材料間接合層を有する熱電素子を製造することができる。100nmより小さいTi粒子を含むペーストを利用すれば、焼結温度が250℃〜350℃の範囲において、充分に電気抵抗値が小さくなる材料間接合層を有する熱電素子を製造することができる。100nmより小さいCr粒子を含むペーストを利用すれば、焼結温度が300℃〜350℃の範囲において、充分に電気抵抗値が小さくなる材料間接合層を有する熱電素子を製造することができる。なお、電気抵抗値の計算値からの増加率が5%以上10%未満であることを許容すれば、表3内の△のサンプルのように100nm以上の金属粒子を含むペーストを利用し、また、焼結温度を400℃等として材料間接合層を形成することが可能である。
(3)他の実施形態:
本発明は、上述の実施形態以外にも種々の実施形態を採用することが可能である。また、種々の要素を発明特定事項とすることができる。第1の熱電材料および第2の熱電材料から材料間接合層に向けて圧力が加えられた状況で焼結が行われてもよい。この構成によれば、加圧しない状況と比較して材料間接合層における空隙の含有率を低下させることができ、材料間接合層の電気抵抗を低下させることが可能である。
表4は、各種の実施例および比較例の特性を示す表である。
Figure 0006024116
表4に示す例は、Niによって材料間拡散防止層が形成された第1の熱電材料と第2の熱電材料との間にAgペーストを塗布して熱電変換モジュールを製造した場合の例であり、第1の熱電材料と第2の熱電材料との間に左列に示す各圧力を作用させて焼結を行った。圧力0MPaが上述の基準サンプルであり、基準サンプルの製造工程において第1の熱電材料と第2の熱電材料との間に作用させる圧力を変更して他のサンプルを製造した。各サンプルにおいて焼結後の空隙率は圧力が大きくなるほど小さくなっている。すなわち、同量のAgペーストが塗布された状態で焼結が行われた場合、圧力が大きいほど素子電極間接合層におけるAgの密度が大きくなる。従って、圧力を作用させて焼結を行うことにより、より電気抵抗値が小さい素子電極間接合層を製造することが可能である。ここで、空隙率は、材料間接合層を超音波探傷装置で測定して得られた空孔の面積比率である。
さらに、材料間接合層は、上述の実施形態のように100nmよりも小さい金属粒子を含むペーストの焼結によって形成される素子電極間焼結層のみによって構成されてもよいが、他の手法によって形成された層を含んでもよく、例えば、材料間接合層の一部を金属メッキによって形成する構成を採用可能である。
この場合、メッキ層は、ペーストに含まれる100nmよりも小さい金属粒子と同一の金属によるメッキ層であることが好ましい。すなわち、焼結前にペーストに含まれる金属粒子と同一の金属によるメッキ層を第1の熱電材料と第2の熱電材料との少なくとも一方に形成しておき、当該メッキ層とペーストとが接触する状態で焼結を行えば、焼結の際に金属粒子とメッキ層とが容易に結合するため、材料間接合層の強度を高強度にすることができる。
なお、材料間接合層がメッキ層と焼結層とからなる構成において、メッキ層と焼結層とでは、平均粒径が異なることが多い。すなわち、100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することにより、平均結晶粒径が1μmより大きく10μm以下の第1層が形成され、メッキによって平均結晶粒径が10μmより大きい第2層が形成される。従って、このような平均結晶粒径の第1層と第2層とを含む材料間接合層を備える熱電変換モジュールを製造することによって発明を実現してもよい。ここで、第1層は焼結層であるが、第2層はメッキ以外の製法で形成されてもよい。
表5は、第1層と第2層における焼結前後のAg粒子の平均結晶粒径を比較した表である。
Figure 0006024116
ここで、第1層の焼結後、第2層の焼結前および焼結後における結晶粒径は、例えば、ある断面における結晶粒の面積と同じ面積の円の半径にて定義可能である。そして、平均結晶粒径は、材料間接合層の厚さ方向と垂直な方向の断面を、例えば、TSL社製のEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)装置で測定し、断面内の複数の位置および複数の断面について結晶粒径を平均化した値である。また、第1層の焼結前の平均結晶粒径はペースト内に拡散しているAg粒子の平均的な大きさである。表5に示すように、Agペースト由来の第1層においては平均結晶粒径が7μm(1μmより大きく10μm以下)であり、第2層においては平均結晶粒径が16μmである。従って、平均結晶粒径が1μmより大きく10μm以下の第1層と、平均結晶粒径が10μmより大きい第2層とを含む層を構成すれば、電気抵抗値が小さく強度が高い材料間接合層とすることが可能である。なお、この例において、第1層は、10μm、第2層は20μmの厚さである。
さらに、ペーストを焼結することによって材料間接合層の少なくとも一部を形成する場合、焼結前にペーストと接する部位が酸化することにより、酸素濃度が局部的に高くなっていることが多い。従って、焼結前にペーストを挟む2カ所の部位は酸素濃度が高い。また、ペーストによる焼結を複数回繰り返すと、同様に酸素濃度が高い部位が2カ所ずつ増加する。従って、本発明により、厚さ方向に沿った酸素濃度の変化が所定の基準を越える高酸素濃度層を複数層含むような材料間接合層が形成されると捉えることもできる。
図4B,4Cは、材料間接合層内の酸素濃度を示す図であり、材料間接合層の厚さ方向に測定位置を変化させながら測定した酸素濃度を示している。なお、図4B,4Cにおいては、測定位置を横軸、オージェ電子分光法で酸素濃度を評価した結果を縦軸に示しており、ここでは測定された酸素濃度のピークを100に規格化して示している。また、図4Bにおいては、Niメッキ層LNm、Agペーストの焼結によって形成された材料間接合層Lamの位置を破線の矢印で示し、図4Cにおいては、Niメッキ層LNm、第1層L、第2層L、材料間接合層Lamの位置を破線の矢印で示している。図4B,4Cの双方において、グラフの左側に高温材が存在し、グラフの右側に低温材が存在する状態を示している。
図4Bに示すように、酸素濃度はNiメッキ層LNmと材料間接合層Lamとの界面で増加し、他の領域では低下する。この結果、材料間接合層の厚さ方向に沿った酸素濃度の変化が所定の基準(閾値)を越える位置が存在することとなり、これらの位置を界面とする層を高酸素濃度層と定義することができる。図4Bにおいては、界面の位置を一点鎖線で示しており、界面に挟まれた領域を高酸素濃度層Loとして示している。このように、材料間接合層Lam内には、Agペースト内に含有していた酸素に起因して高酸素濃度層Loが形成され、本実施例のように焼結を1回行った場合、当該高酸素濃度層Loは2カ所において形成される。従って、本実施例のような材料間接合層Lamが、高酸素濃度層Loを複数層含む層であるとして発明を捉えることも可能である。
同様に、図4Cに示すような材料間接合層Lamにおいては、図4Cに示すように酸素濃度が第1層Lと第2層Lとの界面で増加し、他の領域では低下する。この結果、材料間接合層の厚さ方向に沿った酸素濃度の変化が所定の基準(閾値)を越える位置が存在することとなり、これらの位置を界面とする層を高酸素濃度層と定義することができる。図4Cにおいても、界面の位置を一点鎖線で示しており、界面に挟まれた領域を高酸素濃度層Loとして示している。このように、材料間接合層Lam内には、第2層Lの基になったAgメッキおよびAgペースト内に含有していた酸素に起因して高酸素濃度層Loが形成され、本実施例のように焼結を1回行った場合、当該高酸素濃度層Loは2カ所において形成される。従って、本実施例のような材料間接合層Lamが、高酸素濃度層Loを複数層含む層であるとして発明を捉えることも可能である。
さらに、材料間接合層は、100nmより小さい金属粒子を含むペーストを焼結することによって形成されればよく、一回の焼結によって材料間接合層が形成されてもよいし、複数回の焼結によって材料間接合層が形成されてもよい。例えば、金属粒子を含むペーストを塗布して焼結する工程を複数回繰り返すことによって所望の厚さの材料間接合層を製造してもよい。
Bnh,Bnl,Bph,Bpl…バルク、E…電極、L…第1層、L…第2層、La…接合層、L…メッキ層、Lo…高酸素濃度層、Pb…基板、Pb…基板、P…ペースト、Pn…n型熱電素子、Pp…p型熱電素子、Wnh,Wnl,Wph,Wpl…ウエハ

Claims (4)

  1. 第1の熱電材料と、
    前記第1の熱電材料と組成が異なり、かつ、相対的に性能指数が高い温度域が前記第1の熱電材料と異なる第2の熱電材料と、
    前記第1の熱電材料と前記第2の熱電材料とを接合する接合層とを備え、
    前記接合層は、金属粒子の平均結晶粒径が1μmより大きく10μm以下の第1層と、平均結晶粒径が10μmより大きい第2層とを含み、
    前記第2層は、前記第1層からみて前記第1の熱電材料と前記第2の熱電材料との少なくとも一方側に存在する、
    熱電素子。
  2. 前記接合層は、当該接合層の厚さ方向に沿った酸素濃度の変化が所定の基準を越える高酸素濃度層を複数層含む、
    請求項1に記載の熱電素子。
  3. 前記接合層と前記第1の熱電材料との間、前記接合層と前記第2の熱電材料との間、の少なくとも一方には、材料の拡散を防止する拡散防止層が形成されている、
    請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱電素子。
  4. 第1の熱電材料と、
    前記第1の熱電材料と組成が異なり、かつ、相対的に性能指数が高い温度域が前記第1の熱電材料と異なる第2の熱電材料と、を、
    熱電材料内の結晶粒が粗大化する温度よりも低い焼結温度において1μm以上の金属粒子が確認される所定時間継続して、100nmより小さい前記金属粒子を含むペーストを焼結することによって接合して熱電素子を製造する、熱電素子の製造方法であって、
    前記所定時間が60分であり、
    前記金属粒子はAg粒子、Al粒子、Cu粒子、Ti粒子、Cr粒子のいずれかであり、
    前記金属粒子がAg粒子である場合、前記焼結温度が250℃〜350℃、
    前記金属粒子がAl粒子である場合、前記焼結温度が200℃〜350℃、
    前記金属粒子がCu粒子である場合、前記焼結温度が350℃、
    前記金属粒子がTi粒子である場合、前記焼結温度が250℃〜350℃、
    前記金属粒子がCr粒子である場合、前記焼結温度が300℃〜350℃、である、
    熱電素子の製造方法。
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