<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1,2は、本発明の第1実施形態に係るしみ除去装置100を示す縦断面図である。図1,2に示す本実施形態のしみ除去装置100は、しみ除去対象物としての衣類10Aを部分的に洗浄可能な手持ちサイズの装置であり、ヘッド1と、振動手段2と、液体用収容部3と、給水路4と、バッテリ5と、防水カバー部6と、これらの要素部品が内部に組み込まれた半割り構造のケース本体9とを備える。
ヘッド(シリンダヘッド)1は、叩き面111が形成された縦断面略半円状、より詳細には半円よりもやや円に近い形状の叩き部11と、叩き部11から延びるシリンダ挿入部12とを有する。ヘッド1は、樹脂(例えばナイロン)製であり、ケース本体9から開口91を介して当該ケース本体9に凹設したヘッド収容部92内に突出した状態で叩き面111とほぼ直交する方向に振動し、叩き面111と対向して配置されたしみ除去対象物としての衣類10Aに叩き力を付与する。以下、叩き面111とほぼ直交する方向を振動方向と呼ぶ。また、振動方向のうち、ヘッド1が衣類10Aに向かう方向を突出方向Y1、その逆の方向を戻り方向Y2と呼ぶ。なお、ヘッド1の材質は樹脂に限定されず、金属(例えばステンレス鋼(Stainless Used Steel:sus))等であってもよい。
振動手段2は、電力供給部であるバッテリ5からの給電により回転するモータ23と、モータ23の回転力を伝達する第1〜第3ギア22A〜22Cと、叩き面111が先端に位置するようにヘッド1を支持しつつ振動方向に移動可能なシリンダ21と、シリンダ21内部に収容された弾性部材としてのコイルバネ24とを有する。
第1ギア22Aは、モータ23の駆動ギア123と噛合して軸122abの回りに回転可能な大径部122a及び大径部122aと同軸をなすように一体的に形成された小径部122bを有する。第2ギア22Bは、第1ギア22Aと第3ギア22Cとの間に配置され、第1ギア22Aの小径部122bと噛合して軸122cdの回りに回転可能な大径部122c、及び、大径部122cと同軸をなすように一体的に形成されるとともに第3ギア22Cと噛合する小径部122dを有する。第3ギア22Cは、軸122ee(図1参照)の回りに図中時計回りに回転するように構成され、その縁部に周方向に等間隔で前記軸122eeと平行に形成された4つの突起22cを有する。なお、突起22cの数は4つに限定されず、1〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
シリンダ21は、コイルバネ24が振動方向に伸縮可能な状態で収容される有底筒状のコイルバネ収容部121a、ヘッド1のシリンダ挿入部12が挿入される被挿入部121c、および、被挿入部121cとコイルバネ収容部121aとの間に位置し、内部に液体を貯留可能な液体貯蔵部121bにより構成される。
コイルバネ収容部121aは、ケース本体9から突出方向Y1にボス状に延びる固定部93が開口1121aより挿入されるとともに、固定部93の基端側に支持されたコイルバネ24の他端側を収容する。また、コイルバネ収容部121aは、その側面に第3ギア22Cの突起22cと係合可能な係合爪1121bを有する。このようなシリンダ21は、突起22cと係合爪1121bとが係合しない状態(図2参照)では、コイルバネ24の他端側が当接するコイルバネ収容部121aの底面1121cに突出方向Y1に向けてコイルバネ24より弾性力が付与され、ヘッド1が押し出される。
一方、突起22cと係合爪1121bとが係合する状態(図1参照)では、シリンダ21は第3ギア22Cの回転に伴って底面1121cよりコイルバネ24に圧縮力を付与しつつ戻り方向Y2に移動する。その後、突起22cが係合爪1121bから外れると、圧縮されたコイルバネ24の弾性により突出方向Y1に移動する。この動作が繰り返されることでヘッド1が振動(振幅運動)する。本実施形態では、前述のように第3ギア22Cが4つの突起22cを有し、1回転することでヘッド1を4往復させる。
液体貯蔵部121bは、ケース本体9の開口91よりも幅広な幅広部分1121dと、ケース本体9の開口91よりも幅狭で、当該開口91から突出する幅狭部分1121eとから構成され、幅広部分1121dが規制部である開口91の縁部に係止されることでシリンダ21の突出方向Y1への移動範囲が制限される。このような液体貯蔵部121bは、幅広部分1121dに後述する液体供給用ホース41が接続され、この液体供給用ホース41を介して液体用収容部3から供給された液体を貯留するとともに、幅狭部分1121eから被挿入部121cに液体を供給する。
被挿入部121cは、幅狭部分1121eから延びる給水孔1121fと、ヘッド1のシリンダ挿入部12が軽い圧入で挿入される穴としての被挿入部分1121g(図2参照)とを有する。シリンダ挿入部12の外周には軸方向に延びる給水溝(スリット溝)12aが間欠的に形成される。幅狭部分1121e内の液体は給水孔1121fを介して被挿入部分1121gに供給され、振動手段2が振動してヘッド1が振動している状態では、図2に示すように、被挿入部分1121gとシリンダ挿入部12との隙間に位置する所定深さ(この実施形態では0.1〜0.3mm程度)の給水溝12aの吐出口1121hから液体が少量ずつ(例えば1〜1.5cc/min)吐出される。
一方、ヘッド1が振動していない状態では、液体は表面張力により吐出口1121hから吐出されずにシリンダ挿入部12と被挿入部121cとの間に留まる。このように、給水溝12aの大きさはヘッド1の振動によって少量の液体が吐出される程度に調整され、スプレー洗浄やブラシ洗浄などの他の洗浄方式よりも液体の使用量が少ないことから、衣類10Aのしみ部分10a以外の箇所に液体が飛び散りにくくなる。
なお、シリンダ挿入部12は圧入により被挿入部121cに挿入される構成に限定されず、ねじ固定により挿入されてもよい。また、被挿入部121cはヘッド1を抜脱可能に構成され、被挿入部121cに他のヘッドを取り付けることもできる。そのため、しみ除去装置100は、例えば衣類10Aのしみ部分と直接的に接触する叩き面111に汚れが付着した場合、ヘッド1を取り外して洗浄する、若しくはヘッド1自体を新しいものに交換することができる。さらに、給水溝12aはシリンダ挿入部12でなく被挿入部分1121gに形成されてもよい。またさらに、吐出口1121hで液体に表面張力が作用する構成に限定されず、シリンダ21の給水孔1121fを所定径(例えば0.3mm)に調整することで、ヘッド1が振動していない状態において給水孔1121fの開口端で作用する表面張力により液体の滴下が防止されるように構成してもよい。
液体用収容部3は、被挿入部121cから吐出されてヘッド1の周囲に供給される液体を収容する収容部本体31と、収容部本体31に形成された液体供給孔32を塞ぐ蓋部材33とを有する。蓋部材33には図示しない空気孔が形成される。そのため、蓋部材33で閉塞している状態であっても液体用収容部3の内部が負圧になることがなく、給水路4内に液体を円滑に流れ込ませることができるので、振動開始直後から吐出口1121hより液体を滴下させることができる。
ここで液体としては、水のみ、又は水および洗剤を一定割合で混合した洗剤混合液、しみ除去用専用洗剤等を用いることができ、本実施形態では洗剤混合液を用いる。液体として洗剤混合液が用いられると、洗剤が衣類10Aに継続的に供給されるので、しみ除去作業の途中で洗剤が気化や飛散等によりしみ部分10aからなくなることがなく、高いしみ除去効果が維持される。また、洗剤を供給するための手段が別途に設けられる必要がなく、装置構成が簡単になる。
給水路4は、液体用収容部3内の液体をヘッド1の周囲に供給するものであり、一端41aが液体用収容部3に接続され、他端41bが前記液体貯蔵部121bの幅広部分1121dに接続された可撓性の液体供給用ホース(チューブ)41と、液体貯蔵部121bと、被挿入部121cの給水孔1121fおよび被挿入部分1121gと、ヘッド1の給水溝12aとで構成される。ここで、給水路4の一端は液体供給用ホース41の一端41aにより構成され、給水路4の他端は被挿入部分1121gとシリンダ挿入部12との間に位置する前記給水溝12aの開口端に形成される吐出口1121hで構成される。
このようなしみ除去装置100は、衣類10Aのしみ部分10aの下方に裏当てとして吸収パッド10Bを当接させるとともに、ヘッド1の叩き面111が当該しみ部分10aと対向するようにケース本体9を握られた状態で使用される。
ケース本体9の外側に設けられた電源スイッチSが操作されると、バッテリ5からの給電によりモータ23が回転し、この回転が第1ギア22Aおよび第2ギア22Bを介して減速されながら第3ギア22Cに伝達される。突起22cと係合爪1121bとが係合すると、シリンダ21及びヘッド1が所定寸法δ(本実施形態では約5mm)持ち上げられ(図1参照)、突起22cが係合爪1121bから外れるとコイルバネ24の弾性によりシリンダ21が押し出されてヘッド1がしみ部分10aに叩きつけられる(図2参照)。このとき、液体供給用ホース41は中央部41cが可撓変形することでシリンダ21の振動を吸収し、振動に伴って吐出口1121hから液体が徐々に滴下して叩き部11の側面を伝い、しみ部分10aに供給される。
ケース本体9を衣類10Aに沿って動かしながらこのような動作が繰り返されることで、しみ部分10aに供給された液体は、しみ部分10aを構成する汚れを溶解しつつ衣類10Aから叩き出されて吸収パッド10Bに吸収される。すなわち本実施形態のしみ除去装置100は、衣類10Aの汚れを液体とともに吸収パッド10Bに移すことでしみを除去する。吸収パッド10Bとしては特に限定されず、液体の吸収速度が速いものであれば種々のものを用いることができ、例えばキッチンペーパーを折りたたんだものを吸収パッド10Bとして用いることができる。なお、しみ除去作業中に吸収パッド10Bに対するヘッド1の当接位置を定期的に変える作業が行われると、滴下された液体が吸収パッド10Bに安定して吸収されるので、しみ除去効率の高い状態が維持される。本実施形態では液体として洗剤混合液が用いられるので、ヘッド1の当接位置が変更されたとしても、洗剤がしみ部分10aに手間なく供給され続ける。
以上のような構成であると、振動手段2が給電によってヘッド1を振動させ、ヘッド1が衣類10Aを叩く動作を自動化できるので、叩き力が均一になるとともに、手を素早く動かす必要がなく、長時間しみ除去作業を行ったとしても手が疲れない。また、一端41aが液体用収容部3に接続された給水路4の他端である吐出口1121hがヘッド1の叩き面111ではなくヘッド1の周囲に開口し、液体がヘッド1の周囲に供給されるので、しみ部分10aを構成する固形物汚れが叩き面111に付着したとしても給水路4が塞がらず、しみ除去効果を安定して維持することができる。特に、例えば給水路4の流路横断面が適切に設計されることで、振動に伴って適量の液体がしみ除去対象物に向けて継続的に供給されるので、しみ除去効果を高めることができる。さらに、振動を利用して液体が滴下する構成なので、例えば液体ポンプを用いて液体を送り出すものよりも構造を簡単にすることができる。
したがって、このような本実施形態のしみ除去装置100は、コンパクトで携帯性が良好なものであり、外出先で食べこぼしや化粧品等が布製品に付着した場合にすぐに洗浄することで、しみを目立たなくすることができる。また、カーテンやマット等、丸洗いが容易でないものを部分的に好適に洗浄することができる。
防水カバー部6は、図2に示すように、ヘッド1の叩き部11の側方を囲む位置でリブ9aを介してケース本体9に着脱可能に取り付けられた、本実施形態ではアクリル製で非可撓性かつ円筒状の透明部材である。前述のように振動手段2はコイルバネ24の弾性力によりヘッド1を突出させるものであり、ヘッド1のストロークを調整することで、ヘッド1の一方の動作端が防水カバー部6の突出端61よりもわずかに突出可能な位置に設定される。具体的には、突出位置にあるヘッド1の叩き面111から防水カバー部6の突出端61までの振動方向における距離tが所定距離(この実施形態では1〜2mm程度)となるようにする。
このような防水カバー部6の突出端61を衣類10Aに押し当てた状態でしみ除去作業が行われることで、防水カバー部6がヘッド1の振動により飛び散った液体を遮断して広範囲に広がることを防止するので、衣類10Aが濡れる面積を小さくすることができ、しみ除去作業後すぐに衣類10Aを着用することが可能となる。また、しみ除去作業中、装置本体から衣類10Aまでの距離を常に一定に保つことができ、ヘッド1が衣類10Aに与える外力(叩き力)を適切かつ均一にすることができる。また、ヘッド1の一方の動作端が防水カバー部6の突出端61よりもわずかに突出可能な位置に設定されるとともに、ヘッド1がコイルバネ24の弾性によって突出時に衣類10Aを押さえつけるので、手を使ってしみ部分10aを叩く(押さえる)動作を模擬した動作を自動で実現することができる。さらに、防水カバー部6が透明であることから、しみ部分の汚れ落ちの状態がしみ除去作業中に防水カバー部6を介して確認可能となる。
なお、防水カバー部6の形状は叩き部11の側面全体を覆うことができれば円筒状に限定されず、例えば略円錐形状(突出端61が衣類10Aに向けて広がる形状)であってもよい。また、防水カバー部6はケース本体9に着脱可能に構成されず固定されてもよい。
図3は、本実施形態であるしみ除去装置100の不使用時の状態を示す縦断面図であり、図3(a)は液体滴下防止用ヘッド1Xを示す縦断面図、図3(b)は液体漏れ防止キャップ6Xを示す縦断面図である。本実施形態のしみ除去装置100は、ヘッド1を抜き取った被挿入部121cに図3(a)に示す液体滴下防止用ヘッド1Xを取り付け可能に構成される。液体滴下防止用ヘッド1Xは、被挿入部121cの被挿入部分1121gとの間に給水溝12a(図2参照)等の隙間を形成することなく挿入可能な形状およびサイズに設計された挿入部12Xを有する。このような挿入部12Xが被挿入部分1121gに差し込まれると、給水孔1121fを介して供給された液体が挿入部12Xに遮られ、装置本体外への液体の滴下が防止される。このような液体滴下防止用ヘッド1Xがしみ除去装置100の持ち運び時に使用されることで、揺れや振動によって液体が装置本体から漏れることを防止でき、快適に携帯することが可能となる。
また、本実施形態のしみ除去装置100は、防水カバー部6が取り外されたケース本体9に図3(b)に示す液体漏れ防止キャップ6Xを取り付け可能に構成される。液体漏れ防止キャップ6Xは、ケース本体9のリブ9aに一端6Xa1と係合可能な筒状部6Xaと、筒状部6Xaの他端6Xa2側にある底部6Xbとで構成され、吐出口1121hから滴下された液体は、筒状部6Xaおよび底部6Xbで囲まれた空間Sp内に貯留される。そのため、ヘッド1が被挿入部121cに差し込まれた状態のままでも、液体漏れを起こすことなく、しみ除去装置100を持ち運ぶことができる。なお、ケース本体9は、防水カバー部6を取り付けたまま、液体漏れ防止キャップ6Xを取り付け可能な構成であってもよい。
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態であるしみ除去装置を構成するシリンダ155の一部およびヘッド151を示す斜視図である。図4(a)は、ヘッド151がシリンダ155に挿入される前の状態を示し、図4(b)は、ヘッド151がシリンダ155に挿入された状態を示す。本実施形態のしみ除去装置は、液体の滴下量を調整可能な液体量調整部159を備える点が第1実施形態と異なる。以下、後述する構成以外は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図4に示す液体量調整部159は、シリンダ155およびヘッド151によって構成される。シリンダ155は、液体貯留部156と被挿入部158の被挿入部分1121gとが仕切部分157を介して隣接するとともに、仕切部分157の縁部に等間隔で形成された第1〜第3供給領域157a〜157cを有する。これら供給領域157a〜157cは、仕切部分157を貫通する供給孔157xがそれぞれ異なる数だけ形成され、本実施形態では第1供給領域157aで1つ、第2供給領域157bで3つ、第3供給領域157cで5つの供給孔157xが形成される。なお、供給孔157xの数はこれに限定されるものではない。また、ヘッド151は、挿入部152の端部に切欠き1152が形成されるとともに、挿入部152の側部に切欠き1152から叩き部11に延びる複数の給水溝1153を備える。
図5は、図4(b)に示すヘッド151を供給孔157xとともに模式的に示す図である。図5において切欠き1152には斜線を入れて示す。図5に示すように切欠き1152は1つの供給領域157a(157b,157c)に対応する範囲に亘って挿入部152に形成される。図4に示す液体貯留部156内の液体は、切欠き1152が対向する何れかの供給領域157a(157b,157c)に形成された供給孔157xから切欠き1152に流れ込み、給水溝1153を通って叩き部11の周囲に滴下される。そのため、切欠き1152が対向する供給領域157a(157b,157c)に応じて液体の滴下量が変化し、切欠き1152が第1供給領域157aと対向する図5(a)に示す状態、切欠き1152が第2供給領域157bと対向する図5(b)に示す状態、切欠き1152が第3供給領域157cと対向する図5(c)に示す状態の順に液体の滴下量が多くなる。
このように本実施形態のしみ除去装置は、振動手段2による振動を利用して給水路158の他端である給水溝1153とヘッド151の挿入部152との隙間から液体を滴下させるものであり、液体の滴下量を調整可能な図4に示す液体量調整部159を備える。
給水溝12aの溝深さ等に対する設定だけでは液体の滴下が過多になり、その結果輪じみを生じてしまう場合があるが、液体量調整部159を利用することで衣類10Aに向けて液体を過不足なく滴下させることができる。そのため、液体の供給不足によるしみ除去効果の低下を防止できるとともに、しみ部分10aに多量の液体が一気に供給されることによる輪じみの発生を防止することができる。
なお、液体量調整部159としては、液体の滴下量を調整可能な構成であれば前述した構成に限定されない。また、液体量調整部159の構成は、後述する第3〜第5,第7実施形態のしみ除去装置に適用されてもよい。また、本実施形態では給水溝1153が挿入部152に形成されるが、被挿入部158に形成されてもよい。
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態であるしみ除去装置300を示す縦断面図である。本実施形態のしみ除去装置300は、ケース本体309の形状が略直方体状であり、ケース本体309内に組み込まれた要素部品の配置位置および構成の一部が第1実施形態と異なる上に、第1実施形態ではケース本体9を略水平姿勢に保って使用するのに対して、本実施形態ではケース本体309を略立位姿勢に保って使用する。以下、後述する構成以外は第1実施形態と同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように本実施形態のしみ除去装置300は、ケース本体309内において、振動手段302を構成するシリンダ321、第3ギア322C、第2ギア322B、第1ギア322A及びモータ23が振動方向に沿ってこの順で配置される。また、シリンダ321は、コイルバネ収容部321a、被挿入部321cおよびコイルバネ収容部321aと被挿入部321cとを連結する中空状の連結部321bにより構成される。コイルバネ収容部321aは、底面1321aに連結部321bと連通する開口1321abが形成された点を除いて第1実施形態のコイルバネ収容部121a(図1,2参照)と同様の構成である。また、被挿入部321cは、給水孔1121fから連結部321b内に延びる中空状の接続端1321bを有する点を除いて第1実施形態の被挿入部121c(図1,2参照)と同様の構成を有する。さらに、コイルバネ収容部321aに挿入されるケース本体309の固定部393には、振動方向に貫通する貫通孔393aが形成される。
給水路304は、液体供給用ホース341と、被挿入部321cの接続端1321bと、給水孔1121fと、被挿入部分1121gと、ヘッド1のシリンダ挿入部12に設けた給水溝12aとで構成される。液体供給用ホース341は、一端341aが液体用収容部3に接続されるとともに、固定部393の貫通孔393a、コイルバネ24の軸心部およびコイルバネ収容部321aを貫通し、開口1321abを介して他端341bが連結部321b内で接続端1321bに接続される。液体供給用ホース341は、液体用収容部3から接続端1321bまでの間で長さ的な余裕を持って接続され、振動手段302の振動に伴って可撓変形(振動を吸収)する変形部341cを有する。なお、液体供給用ホース341は、長さ的な余裕が確保されることなく液体用収容部3と接続端1321bとに接続されてもよく、その場合、振動を吸収可能にするために液体供給用ホース341の一部が蛇腹形状であることが好ましい。
このような構成のしみ除去装置300は、ケース本体309外側の電源スイッチSが操作されることでバッテリ5からの給電によりモータ23を回転させ、第3ギア22Cの回転およびコイルバネ24の弾性を利用してシリンダ321およびヘッド1を振動させつつ吐出口1121hから液体を滴下させるものであり、第1実施形態のしみ除去装置100と同様の作用効果を有する。
<第4実施形態>
図7,8は、本発明の第4の実施形態であるしみ除去装置400を示す縦断面図である。本実施形態のしみ除去装置400は、洗剤用収容部7および洗剤供給手段8を備える点が第1実施形態と異なる。以下、後述する構成以外は第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
洗剤用収容部7は、ヘッド1の周囲に供給される液体状の洗剤を収容する収容部本体71と、図示しない空気孔が形成され、収容部本体71に形成された液体供給孔72を塞ぐ蓋部材73とを有する。
洗剤供給手段8は、洗剤用収容部7内の洗剤をヘッド1の周囲に供給するものであり、洗剤滴下ボタン81と、洗剤供給用ホース82と、ケース本体409に形成されてヘッド1の周囲に開口する洗剤供給部409aとで構成される。洗剤供給用ホース82は、洗剤滴下ボタン81から押出力が付与される位置で一端82aが洗剤用収容部7に接続され、他端82bが洗剤供給部409aに接続される。洗剤供給部409aはヘッド1の叩き部11に向けて水平よりやや下方へ傾斜した方向から洗剤を供給する形状をなし、開口端はノズル形状となっている。洗剤滴下ボタン81には押し下げ位置から押し上げ位置への弾性力を付与するコイルバネ81aが弾接してある。
このような本実施形態は、液体用収容部3に水のみを収容し、適宜のタイミングで洗剤滴下ボタン81が押されてヘッド1の周囲に洗剤を滴下し、図7に示すように持ち上げたヘッド1を図8に示すように突出させる動作を連続して行って液体を滴下させる。そのため、しみ除去装置400は、しみ部分10aの汚れの程度に応じて洗剤量を調整可能である。また、液体用収容部3内の水と洗剤用収容部7内の洗剤とが異なるタイミングで別々に衣類10Aに供給されるので、洗剤供給手段8から供給された洗剤を利用してしみ除去を行うとともに、給水路4から供給された水のみを利用して衣類10Aをすすぐことができる。
なお、洗剤滴下ボタン81を利用して洗剤を供給する構成は上記のものに限定されず、例えば液体用収容部3内の液体と同様に振動によって供給される構成としてもよい。
また、本実施形態では、洗剤用収容部7および洗剤供給手段8を設けることによる装置本体の大型化を抑制するため、給水路304、シリンダ321およびケース本体409の固定部393に第3実施形態の構成が適用される。
<第5実施形態>
図9は、本発明の第5実施形態であるしみ除去装置500を示す縦断面図である。本実施形態のしみ除去装置500は、ヘッド1の叩き部11に向けてスチームを噴射可能なスチーム噴射手段508を備える構成、および、モータ23がプラグC1を有する電源コードCを介した給電により駆動する構成が第1の実施形態と異なる。このようなしみ除去装置500は、電源コードCを介して給電するのでバッテリをケース本体509内に組み込む必要がなく、装置本体がよりコンパクトである。なお、電源コードCはプラグC1を有するものに限定されず、USBコネクタを有するUSB接続が可能なものであってもよい。また、上記第1〜第4実施形態が電源コードCを介して給電される構成であってもよく、本実施形態がバッテリから給電される構成であってもよい。以下、後述する構成以外は第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、スチーム噴射手段508は、スチーム用液体収容部507と、スチーム用液体滴下ボタン581と、スチームを発生させるスチーム発生部583と、スチーム用液体用収容部507内の水をスチーム発生部583に供給するスチーム用液体供給ホース582と、一端584aがスチーム発生部583に接続され、他端584bがヘッド1の周囲に開口するスチーム噴射部584とを有する。スチーム用液体滴下ボタン581には押し下げ位置から押し上げ位置への弾性力を付与するコイルバネ581aが弾接してある。
スチーム用液体収容部507は、スチーム用の水を収容するスチーム用液体収容部本体571と、スチーム用液体収容部本体571に形成されたスチーム用液体供給孔572を塞ぎ、図示しない空気孔が形成された蓋部材573とを有する。スチーム発生部583は、ヒータ585への給電状態を切り替え可能なヒータ用スイッチ586と、電源コードCからの給電により発熱するヒータ585と、ヒータ585が内部に配置されたスチーム発生部本体583と、スチーム発生部本体583の側壁に設けられ、ヒータ585の温度に応じてヒータ585への給電状態を調整するサーモスタット587とで構成される。サーモスタット587は、上限温度に達するとヒータ585への給電を停止させてヒータ585を冷まし、下限温度まで低下すると再びヒータ585へ給電させるように構成される。
本実施形態のしみ除去装置500では、ヒータ用スイッチ586の操作によりヒータ585の給電が開始されて発熱し、適宜のタイミングでスチーム用液体滴下ボタン581が押されてスチーム用液体収容部507から液体がヒータ585に滴下されると、スチームが発生してスチーム噴射部584の他端からヘッド1に向けて噴射される。しみ除去装置500は、このようにヘッド1に向けてスチームを噴射するスチーム噴射手段508を備えることから、スチームで衣類10Aを温めながらしみ除去作業を行うことができ、しみ除去効果を向上させることができる。また、スチームはお湯を含めた液体状態の水よりも運動エネルギーが高く、液体状態の水よりも固形物汚れ及び衣類10Aに浸透しやすいことから、スチームによって固形物汚れや衣類の繊維の奥の汚れまで溶解して除去することが可能となり、これもしみ除去効果の向上に寄与している。さらに、しみ除去のために強い漂白剤を用いる必要がないので、衣類10Aの色落ちを防止することができる。
また、本実施形態では、スチーム噴射手段508を設けることによる装置本体の大型化を抑制するため、シリンダ321およびケース本体509の固定部393に第3実施形態の構成が適用される。
<第6実施形態>
図10は、本発明の第6実施形態であるしみ除去ユニット600を示す縦断面図である。図11は、図10に示すしみ除去ユニット600を構成する加熱装置601を分解して示す分解図である。図10に示す本実施形態のしみ除去ユニット600は、第1実施形態のしみ除去装置100と加熱装置601とで構成される。
図11に示すように、加熱装置601は、吸収パッドセット部材(吸収パッドセット用蓋)681と、本体カバー671と、化粧板661と、加熱板651と、第1断熱材641と、ヒータ631と、第2断熱材621と、装置本体611とを有する。
吸収パッドセット部材681及び本体カバー671は、中央にそれぞれ開口部681a,671aが形成された平面視円形のものである。吸収パッドセット部材681は、その一面681bと本体カバー671の一面671bとの間に吸収パッド10Bを挟み込んだ状態で回転させ、互いのねじ部同士671c,681cを係り合わせて本体カバー671に取り付けられる。化粧板661は、中央部661aと端部661bとに段差を有し、加熱装置601内に組み込まれた状態では、中央部661aの隆起面661abが開口部671aから露出して本体カバー671の一面671bと略平行になり、端部661bが本体カバー671の他面671dと装置本体611との間に挟み込まれる。化粧板661は例えばステンレス鋼で構成される。このような化粧板661の端部661bおよび本体カバー671には、後述する安全スイッチ1614が貫通する貫通孔661c,671eがそれぞれ形成される。
加熱板651は、化粧板661の中央部にはめこまれるように配置され、しみ除去装置100のヘッド1から外力が付与される被叩き面651aが化粧板661と対向して形成されるものであり、例えば熱伝導率の高いアルミニウムで構成される。加熱板651の厚さは約1〜2mmに設定される。これによって強度および高い熱伝導性を両立できるので、吸収パッド10Bに素早くかつ均一にヒータ631からの熱を伝えることができるとともに、しみ除去作業中にヘッド1から外力が付与されることによる吸収パッド10Bの変形を抑制して高いしみ除去効率を維持することができる。
第1断熱材641は、加熱板651の裏側に配置された温度調整用の断熱材であり、例えばシリコンゴムで構成される。第2断熱材621は、装置本体611上に配置されてヒータ631の熱を遮断するものであり、例えばガラスウールで構成される。これらの断熱材の間に配置されるヒータ631としては例えばセラミックヒータが用いられる。なお、加熱板651をコーティングして見た目を良好にすることで、化粧板661を用いない構成とすることも可能である。
装置本体611は、電源コード1613と、ヒータ631への給電状態を切り替え可能なメインスイッチ1611と、ヒータ631の温度に応じてヒータ631への給電状態を調整可能なサーモスタット1612と、安全スイッチ1614とを有する。サーモスタット1612は、上限温度(例えば70℃)に達するとヒータ631への給電を停止させてヒータ631を冷まし、下限温度(例えば60℃)まで低下すると再びヒータ631に給電を開始させる。安全スイッチ1614は、前記貫通孔661c,671eを介して本体カバー671部の一面671bから突出するものであり、所定位置に装着された吸収パッド10Bによって押し付けられている場合はヒータ631への給電を可能とする一方、押し付けられていない場合はヒータ631への給電を停止するように構成される。すなわち加熱装置601は、吸収パッド10Bが本体カバー671の所定位置にセットされるとともに吸収パッドセット部材681が閉止されることで使用可能となる。
このような構成の加熱装置601は、メインスイッチ1611が操作されるとヒータ631が発熱し、その熱が加熱板651に伝わって吸収パッド10Bの温度を上昇させる。そのため、加熱装置601上に衣類10Aが載置されると、加温された吸収パッド10Bにしみ部分10aが対向する状態で、しみ除去装置100のヘッド1より被叩き面651aに叩き力を付与する動作を行うことができる。したがって、本実施形態のしみ除去ユニット600は、しみ部分10aを50℃程度に継続的に加温して、汚れが液体に一層溶けやすい状態でしみ除去作業を行うことができるので、しみ除去効果をより向上させることができる。また、しみ除去のために強い漂白剤を用いる必要がないので、衣類10Aの色落ちを防止することができる。
なお、本実施形態では、加熱装置601は第1実施形態のしみ除去装置100と組み合わせて使用されるが、前述した第2〜第5実施形態のしみ除去装置200〜500あるいは後述する第7実施形態のしみ除去装置700と組み合わせて使用されてもよい。
また、本実施形態では、加熱装置601は平面視円形状であるが、平面視矩形状であってもよい。この場合、吸収パッドセット部材の一辺が加熱装置の他の構成要素(本体カバー、化粧板、加熱板、第1断熱材、ヒータ、第2断熱材、装置本体)とヒンジ等を介して接続された構成とし、加熱装置601の他の構成要素に対して吸収パッドセット部材を吸収パッドを挟んで折りたたみ可能に構成することが好適である。
<第7実施形態>
図12は、本発明の第7実施形態に係るしみ除去装置700を示す図である。詳しくは、図12(a)は本実施形態のしみ除去装置700を示す縦断面図であり、図12(b)は本実施形態のしみ除去装置700に備わる防水カバー部の斜視図であり、図12(c)は防水カバー部を分解して示す縦断面図である。
また、図13は、しみ除去装置700のモータ23及びヒータ731に給電する回路を示す模式的な回路図であり、スイッチSSが備える操作部SS1のスライド位置に応じた3つの給電状態を示す。なお、図13の回路において、通電部分は実線で表し、非通電部分は一点鎖線で表している。
本実施形態のしみ除去装置700は、図12に示すように、主として防水カバー部706の構成、及び、USBコネクタCC1を介した給電によりモータ23を駆動させる点が図6に示す第3実施形態と異なる。USBコネクタCC1は、USBケーブルCC2(図13参照)を介して外部電源BB(図13参照)と接続されるものである。このように本実施形態におけるしみ除去装置700は、外部電源BBによって給電される構成であることから、バッテリをケース本体709に組み込む必要がなく、装置本体がよりコンパクトとなる。以下、後述する構成以外は第3実施形態と同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。なお、図12ではUSBコネクタCC1とモータ23との間などを接続する配線は図示を省略している。
防水カバー部706は、図12(a)〜(c)に示すように、ガイド枠732と、ヒータ731と、押さえ部材733と、断熱パッキン734と、電源コネクタ735とを備える。この防水カバー部706も上述した実施形態と同様、ヘッド1の叩き部11の側方を囲む位置でリブ709aを介してケース本体709に対して着脱可能とされる。
ガイド枠732は、扁平な環状形状の底面領域732cと、底面領域732cの内周から延びる内筒領域732aと、この内筒領域732aと同軸であり且つ底面領域732cの外周から延びる外筒領域732bとを有し、これらの領域732a〜732cによって内部空間Isを形成する。ここで、図12(c)に示すように、底面領域732cの内面はヒータ731の形状に対応して湾曲するとともに、内筒領域732aの延出方向の長さL1は、外筒領域732bの延出方向の長さL2に対して短く構成される。この内部空間Isには、底面領域732cから開口732dに向けてヒータ731、押さえ部材733および断熱パッキン734がこの順に配置される。しみ除去作業中には、底面領域732cの外面732eが衣類10Aに押し当てられる。ガイド枠732は、例えば熱伝導率の高いアルミニウムによって構成される。そのため、ヒータ731からの熱を素早く衣類10Aに伝えることができるとともに、使用後には急速に温度が低下するので、使用後すぐにしみ除去装置700を収納して持ち運ぶことが可能である。
ヒータ731は、巻回されたニクロム線によって構成された環状形状のものであり、USBコネクタCC1および電源コネクタ735を介した給電によって発熱する。なお、ヒータ731への供給電力は例えば5W程度であり、発熱時のヒータ731の温度は80℃〜100℃程度に設定される。また、ヒータ731は、例えばセラミックヒータなど他のヒータであってもよい。
押さえ部材733は、縦断面が円形であるヒータ731の形状に対応して湾曲する押さえ面733aを有する環状部材である。このような押さえ部材733は、内部空間Isにおいて押さえ面733aをヒータ731に当接させることでヒータ731の移動を規制するとともに、ヒータ731の熱がリブ709aに伝わることを抑制するものである。
断熱パッキン734は、内部空間Isにおいてガイド枠732の内筒領域732aとの間に間隙を有しつつ、外筒領域732aに沿って取り付けられるシリコン製の環状部材であり、外筒領域732aおよび押さえ部材733と当接する筒状領域734aと、この筒状領域734aの端部から外方に延びるフランジ領域734bとから構成される。
図12(b)及び図13に示す電源コネクタ735は、内部空間Isから突出してガイド枠732の開口端面に取り付けられており、ケース本体709側に設けられる図示しない本体側コネクタと嵌り合うものであり、この電源コネクタ735を介して、ヒータ731が外部電源BBと電気的に接続される。
このような防水カバー部706は、断熱パッキン734の内周面734cと当接するように内部空間Isにリブ709aが差し込まれることでケース本体709に取り付けられる。このとき、ガイド枠732の外筒領域732bの端面が断熱パッキン734のフランジ領域734bを介してケース本体709に当接することによって、防水カバー部706が振動方向に位置決めされるとともに、フランジ領域734bがケース本体709と外筒領域732bとを隔てる役割を果たす。また、図12(c)に示すように、リブ709aの振動方向における長さL3は、断熱パッキン734の振動方向における長さL4よりも短く構成され、リブ709aの先端は押さえ部材733と離間した位置となる。そして、ガイド枠732の外筒領域732bとリブ709aとの間には断熱パッキン734が位置し、ガイド枠732の内筒領域732aとリブ709aとの間には断熱空間Gp(図12(a)参照)が形成される。さらに、上述したようにガイド枠732の内筒領域732aの長さL1は外筒領域732bの長さL2に対して短いことから、フランジ領域734bがケース本体709とガイド枠732の外筒領域732bとを隔てていることと相まって、内筒領域732aの先端がケース本体709と離間した位置となる。このように、防水カバー部706は、ヒータ731を内蔵する内部空間Isを利用して、ケース本体709への取り付け時に、ヒータ731からの熱で高温となる押さえ部材733およびガイド枠732と、リブ709aを含めたケース本体709とが直接接触しないように構成されており、防水カバー部706からの熱でしみ除去装置700本体が損傷することを抑制する。
なお、防水カバー部706は、ガイド枠732ひいては衣類10Aの過熱防止のために、ヒータ731の温度に応じてヒータ731への給電状態を調整可能なサーモスタット等の温度調整部を備える構成であってもよい。また、防水カバー部706は、ガイド枠732の温度を表示するサーモテープ等の温度表示部が設けられてもよい。これによって使用者は防水カバー部706の温度を把握することが可能となる。
一方、振動手段702、液体用収容部703および給水路704は、機能的には第3実施形態のしみ除去装置300のものと同様であるものの、図12(a)に示すように形状やケース本体709内での配置位置が第3実施形態のしみ除去装置300のものと異なっている。
具体的には、振動手段702を構成する第3ギア722Cは、図12(a)に示すように、軸線122eeと平行に延びる突起22c(図6参照)の代わりに、周方向に等間隔で径方向に突出する2つの突起722cを有する。この突起722cの数によってヘッド1の単位時間当たりの振動回数を調整でき、本実施形態ではヘッド1の叩き動作は1秒間に15〜20回行われるように設定される。なお、突起722cの数は2つに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。
また、同じく振動手段を構成するシリンダ721は、有底筒状である第1部材721xの外周に第2部材721yの一部が振動方向に一体的に嵌め合わされて構成されており、第1部材721x内部にコイルバネ収容部721aが構成されるとともに、第1部材721xとの重複部分からヘッド1に向けて有底筒状に形成された第2部材721yによって液体貯蔵部721b、被挿入部721cおよび被挿入部分1121gが構成される。第2部材721yは、第1部材721xを振動方向略中央まで覆っており、第2部材721yの第1部材721x側の端部には、第3ギア722Cの突起722cと係合可能な係合爪1721bが形成される。
このようなコイルバネ収容部721aには、コイルバネ24の他端、および、ケース本体709と別部材で構成され、基端側がケース本体709に固定された固定部793が収容される。
液体貯蔵部721bは、ケース本体709の開口1721gよりも幅広な幅広部分1721dと、ケース本体709の開口1721gよりも幅狭で、当該開口1721gから突出する幅狭部分1721eとから構成されており、幅広部分1721dがケース本体709の開口縁に沿って配置された規制部材709bに係止されることで、シリンダ721の突出方向Y1への移動範囲が制限される。また、このシリンダ規制部材709bとして、ゴムやウレタン樹脂等の弾力性のある材質を用いることで、シリンダ721とケース本体709の損傷を抑えるとともに、しみ除去装置700駆動時の騒音も抑制することが可能となる。なお、しみ除去装置700駆動時の騒音を抑制するためには、ケース本体709の全体又はほぼ全体を二重構造とし、このようなケース本体709中に振動手段702等の構成要素を組み込んだ構成とすることも有効である。また、ケース本体が二重構造であることで、ケース内側に固定されたネジ等の固定部材をケース外側で隠すことができ、しみ除去装置のデザイン性を向上させることができる。
被挿入部721cは、幅狭部分1721eから延びるテーパ状の給水孔1721fと、幅狭部分1721eと略同一の幅を有し、ヘッド1のシリンダ挿入部12が軽い圧入で挿入される被挿入部分1121gとを有する。
液体用収容部703は、収容部本体703aの底面703aが液体供給用ホース741の一端741aに向けて傾斜しているなど、収容部本体703aの形状が第3実施形態のしみ除去装置300に備わるものと異なる。また、このような液体用収容部に一端741aが接続された液体供給用ホース741の他端741bは、シリンダ721の幅広部分1721dに接続される。なお、液体供給用ホース741の他端741b近傍にはコイルバネ741cが巻回されており、可撓変形する液体供給用ホース741が折れて液体が流れなくなることを防止している。
また、本実施形態においてスイッチSSはスライドタイプのものであり、スイッチSSの操作部SS1は、図12(a)および図13(a)に示すオフ位置と、図13(b)に示す第1のスライド位置と、図13(c)に示す第2のスライド位置との3つのスライド位置が設定される。具体的には、操作部SS1がオフ位置にあるときには振動手段702のモータ23およびヒータ731何れへも給電が行われない電源オフ状態となり、第1のスライド位置では電源コネクタ735を介してヒータ731のみに給電が行われる予熱状態となる。さらに、第2のスライド位置ではヒータ731と振動手段702のモータ23との両方に給電が行われる加熱およびたたき状態となる。
そのため、予熱状態で防水カバー部706を衣類10Aに押し当てて衣類10Aを加温し、ある程度衣類10Aが加温された段階で、スイッチSSを加熱およびたたき状態に切り替えることで、衣類10Aが加温された状態でしみ除去作業を行うことができる。
このように、本実施形態のしみ除去装置700は、除去作業を行う際に衣類10Aに押し当てられる防水カバー部706がヒータ731の熱で加熱される構成であるため、図10に示す加熱装置601を別途用いなくても、しみ除去作業中に常時、防水カバー部706を介してしみ除去対象物のしみ部分およびその近傍を温めることができ、コンパクト化を実現しつつしみ除去効果をより向上させることが可能となる。なお、仮に防水カバー部でなくヘッドがヒータを内蔵する構成であると、衣類10Aに断続的にしか熱を伝えられず、効率的に衣類10Aを加温することができない。
なお、本実施形態のしみ除去装置700には、ヒータ731が給電された状態であると点灯するLEDが設けられてもよい。こうすることによっても、使用者は防水カバー部706が加熱されていることを把握することが可能となる。
また、本実施形態の防水カバー部706はケース本体709から着脱可能であり、しみ除去装置700のケース本体709には、衣類10Aの汚れ具合や供給可能な電力量等に応じて、図1に示す第1実施形態のしみ除去装置100が備えるようなヒータが内蔵されていない防水カバー部6を装着することも可能である。
さらに、本実施形態において、スイッチSSはスライドタイプのものであるが、ロータリースイッチや押しボタン式のスイッチ等、他のタイプのスイッチを用いることも可能である。
加えて、前述のように本実施形態のしみ除去装置700と図10に示す加熱装置601とを併用することも可能であり、こうすることによって、衣類10Aをより効果的に加温することができ、しみ除去効果をさらに向上させることが可能となる。
<第8実施形態>
図14は、本発明の第8実施形態であるしみ除去装置800を示す部分断面図である。当該図では、シリンダ183の一部およびヘッド181のみを示している。本実施形態のしみ除去装置800は、液体がヘッド1(図1等参照)の側面を流下するのではなく、ヘッド181内部を液体が通るように構成された点が第1実施形態と異なる。以下、後述する構成以外は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図14に示すシリンダ183は、コイルバネ収容部(不図示)と、被挿入部183aと、液体貯蔵部183bと、シリンダ給水孔183a1とを有する。コイルバネ収容部はコイルバネ24(図1等参照)を収容し、被挿入部183aはヘッド181の後述するシリンダ挿入部181aが抜脱可能に挿入されるものである。液体貯蔵部183bは、被挿入部183aとコイルバネ収容部との間に位置し、液体用収容部3(図1等参照)から供給された液体を内部に貯留する。シリンダ給水孔183a1は、液体貯蔵部183bから被挿入部183aを貫通して形成され、ヘッド181の基端184a1に向けてテーパ状に開口する。
ヘッド181は、被挿入部183aに抜脱可能に挿入されるシリンダ挿入部181aと、叩き面182が形成された叩き部181bと、ヘッド181を貫通して叩き面182まで延びるヘッド給水孔184´とを有する。ヘッド給水孔184´は、シリンダ給水孔183a1と対向してヘッド181の基端184a1に開口してシリンダ挿入部181aを貫通する縦断面略長方形の貯水部分184A、叩き面182の中心に向けて拡張しつつ開口した開口端184a2を有する縦断面台形状の拡張部分184C、及び、貯水部分184Aと拡張部分184Cとを繋ぐ小径部分184Bとで構成される。小径部分184Bは、貯水部分184A及び拡張部分184Cよりも流路断面が小さく、小径部分184B内の液体は、図示しない振動手段によるヘッド181の振動時には少量ずつ拡張部分184Cに吐出される一方、ヘッド181の非振動時には表面張力の作用で滴下が防止される。上記液体貯蔵部183b、シリンダ給水孔183a1およびヘッド給水孔184´は、液体供給用ホース41(図1参照)とともに給水路184を構成し、液体貯蔵部183b内の液体はシリンダ給水孔183a1からヘッド181に滴下された後、ヘッド給水孔184´を流下して叩き面182に供給される。
また、ヘッド181のシリンダ挿入部181aは、その側面に円環状の突出部分181a´が振動方向に互いに離間して複数形成されており、シリンダ183への挿入時には突出部分181a´が被挿入部183aの内面を押圧することで安定して固定される。
以上のような構成であると、上記実施形態と同様に、図示しない振動手段が給電によりヘッド181を振動させ、ヘッド181が衣類10A(図1等参照)を叩く動作を自動化できるので、叩き力が均一になるとともに、手を素早く動かす必要がなく、長時間しみ除去作業を行ったとしても手が疲れない。また、振動するヘッド181からの衝撃で分解されたしみ部分10a(図1参照)の固形物汚れが図示しない液体用収容部から供給された液体ですぐに溶解せず、叩き面182から給水路184に浸入したとしても、開口端184a2が拡張していることから、給水路184が固形物汚れで塞がりにくく、また固形物汚れが詰まったとしても給水路184内の清掃が容易で、しみ除去効果を安定して維持することができる。
特に、給水路184のうち開口端184a2以外の部分、すなわち小径部分184Bの流路横断面が適切に設計されることで、ヘッド181の振動に伴って適量の液体が衣類10Aに向けて継続的に供給されるとともに、ヘッド181の非振動時には表面張力の作用で液体の流下が阻害されるので、しみ除去作業を行っていない間の液漏れが防止される。このような滴下調整機能は、シリンダ給水孔183a1でも発揮されるので、シリンダ給水孔183a1から貯水部分184Aの容量を超える液体が一気に供給されることがない。さらに、図1に示すしみ除去装置100のようにヘッド1の側面に給水溝12aを形成する必要がなく、ヘッド181の側面に突出部分181a´を形成できるので、シリンダ183への抜脱が複数回繰り返されてもヘッド181をシリンダ183へ安定して取り付けることができる。
なお、本実施形態のヘッド181及びシリンダ183の構成は、上述した他の実施形態に適用されてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態のしみ除去装置100〜500及び700は、ヘッド1の叩き面111を下方に向けて使用するものであるが、叩き面111を横に向けて使用可能な構成としてもよい。この場合、例えば液体がポンプで送り出される構成にする。
また、上記実施形態においてヘッド1(図1等参照)やヘッド151(図4参照)、及びヘッド181(図14参照)の叩き面111,182は平ら(平面)であるが、叩き面111,182の形状はこれに限定されず例えば図15に示すように凹凸形状であってもよい。図15は、図1等に示すヘッド1の変形例を示す図である。詳細には、図15(a)はヘッド171を示す斜視図、図15(b)はヘッド171を示す側面図、図15(c)はヘッド171を示す底面図である。図15(a),(b)に示すように、ヘッド171の叩き部171aに形成された叩き面172は、ベース172aと、ベース172aから突出する複数の突起172bの表面172baとで構成される。各突起172bは、図15(b),(c)に示すように、半球状であり、ベース172a内で規則的に配置される。本発明のしみ除去装置100〜500及び700は、しみ部分10aを構成する汚れの種類に応じてヘッド171やヘッド1など互いに形状の異なるものに適宜交換されることで、一層効果的にしみ除去を行うことができる。
また、上記実施形態において、ヘッド1,181は、シリンダ21,183から抜脱可能で交換可能な構成であるが、抜脱できない構成であってもよい。さらに、ヘッド1は、ストローク動作を利用して、振動方向に対して平行な軸線回りに回転可能な構成であってもよい。
またさらに、上記実施形態において、しみ除去装置100〜500及び700内に液体を加熱する機構を設け、加熱された液体が衣類10Aに向けて滴下される構成としてもよく、これによってしみ除去効果を一層向上させることができる。
また、図1に示す第1実施形態では、ケース本体9内に液体用収容部3が固定されているが、液体用収容部3がケース本体9から着脱可能な構成であってもよい。この場合、例えば、液体用収容部3が、液体供給用ホース41およびシリンダ21を介在することなくヘッド1に液体を供給可能な位置、すなわちヘッド1に直接接続される位置やヘッド1の近傍に設けられて、液体用収容部3およびヘッド1が一体でケース本体9から着脱可能な構成とする。
このような構成であると、例えば異なる種類の液体(例えば水、溶剤など)が収容された液体用収容部3を複数用意しておき、しみ部分10aの状態に適した液体が収容された液体用収容部3をケース本体9に取り付けてしみ除去作業を行うことで、しみ除去効果を高めることができる。また、液体供給用ホース41内やシリンダ21内など容易に清掃できない箇所に水アカやカルシウム成分が固まって給水路4が詰まることを防止でき、しみ除去装置100本体の分解清掃が不要となる。さらに液体用収容部3が透明又は半透明であることで、しみ除去作業の途中でケース本体9から取り出して液体の残量を確認することができる。
また、液体用収容部3が、内部に液体収容空間が形成された収容部本体と、液体収容空間を開閉する蓋部材とに分解可能な構成としてもよく、このような構成であると、ケース本体9から取り外したときに収容部本体から蓋部材を取り外すことで、液体収容空間に液体を補給したり、液体用収容部3内の液体をエタノールなどの別の種類の液体に簡単に交換することができるので、利便性が向上するとともにしみ除去装置100の継続的な利用が可能になる。このとき、液体用収容部3がケース本体9から取り外された状態で液体の補給や交換等を行うことができるので、補給時にケース本体9が液体で濡れることがなく、ケース本体9に防水処理を施す必要がない。また、収容部本体と蓋部材とに分解して液体用収容部3の内部を清掃することができ、水アカやカルシウム成分を簡単に除去することができる。さらに、液体用収容部3からヘッド1を抜脱可能に構成されてもよく、このような構成であると、しみ部分10aの状態等に応じて最適なヘッド1および液体を選択して使用することが可能になるので、しみ除去効果を向上させることができる。液体用収容部3等がケース本体9から着脱可能な上述の構成は、上記しみ除去装置300〜500,700,800に適用されてもよい。
さらに、しみ除去装置100〜500,700,800および加熱装置601を構成する部材の材質は、各図面のハッチングが示すものに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、しみ除去装置100,300,500,700,800から液体として水のみを滴下させる場合は、しみ除去作業を行う際に予め衣類10Aのしみ部分10aに洗剤を直接塗布することが有効である。この場合、しみ除去装置100,300,500,700,800は水を供給しつつ叩き動作を行ってしみ除去効果を発揮し、さらに動作を続けることによって、滴下された水が汚れと洗剤を吸収パッド10Bに移すため、すすぎ効果も発揮することになる。
また、上記実施形態において、防水カバー部6は円筒形状であるが、断面の径が防水カバー部の突出端61に向かうにつれて大きくなる形状としてもよい。このようにすることによって、しみ除去装置100〜500,800を安定して衣類10Aに押し当てることが可能となる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。