以下に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
本発明の実施形態については、リチウムイオン二次電池用セパレータフィルム(セパレータと記す場合がある)を例にして説明するが、本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータフィルムを製造する場合に限定されるものではなく、様々な機能性フィルムの製造において適用することができる。機能性フィルムとしては、具体的に、セパレータ、及び機能層付セパレータ等が挙げられる。
(リチウムイオン二次電池の構成)
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、それゆえ、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器、自動車、航空機等の移動体に用いる電池として、また、電力の安定供給に資する定置用電池として広く使用されている。
図1(a)は、リチウムイオン二次電池1の断面構成を示す模式図である。
図1(a)に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、カソード11と、セパレータ12と、アノード13とを備える。リチウムイオン二次電池1の外部において、カソード11とアノード13との間に、外部機器2が接続される。そして、リチウムイオン二次電池1の充電時には方向Aへ、放電時には方向Bへ、電子が移動する。
(セパレータ)
セパレータ12は、リチウムイオン二次電池1の正極であるカソード11と、その負極であるアノード13との間に、これらに挟持されるように配置される。セパレータ12は、カソード11とアノード13との間を分離しつつ、これらの間におけるリチウムイオンの移動を可能にする。セパレータ12は、その材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが用いられる。
図1(b)は、図1(a)に示されるリチウムイオン二次電池1の各状態における様子を示す模式図である。図1(b)は通常の様子を示し、図1(c)はリチウムイオン二次電池1が昇温したときの様子を示し、図1(d)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
図1(b)に示されるように、セパレータ12には、多数の孔Pが設けられている。通常、リチウムイオン二次電池1のリチウムイオン3は、孔Pを介し往来できる。
ここで、例えば、リチウムイオン二次電池1の過充電、または、外部機器の短絡に起因する大電流等により、リチウムイオン二次電池1は、昇温することがある。この場合、図1(c)に示されるように、セパレータ12が融解または柔軟化し、孔Pが閉塞する。そして、セパレータ12は収縮する。これにより、リチウムイオン3の往来が停止するため、上述の昇温も停止する。
しかし、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温する場合、セパレータ12は、急激に収縮する。この場合、図1(d)に示されるように、セパレータ12は、破壊されることがある。そして、リチウムイオン3が、破壊されたセパレータ12から漏れ出すため、リチウムイオン3の往来は停止しない。ゆえに、昇温は継続する。
(耐熱セパレータ)
図2は、他の構成のリチウムイオン二次電池1の各状態における様子を示す模式図である。図2(a)は通常の様子を示し、図2(b)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
図2(a)に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、耐熱層4をさらに備えてよい。この耐熱層4は、セパレータ12に設けることができる。図2(a)は、セパレータ12に、機能層としての耐熱層4が設けられた構成を示している。以下、セパレータ12に耐熱層4が設けられたフィルムを、機能層付セパレータの一例として、耐熱セパレータ12aとする。また、機能層付セパレータにおけるセパレータ12を、機能層に対して基材とする。
図2(a)に示す構成では、耐熱層4は、セパレータ12のカソード11側の片面に積層されている。なお、耐熱層4は、セパレータ12のアノード13側の片面に積層されてもよいし、セパレータ12の両面に積層されてもよい。そして、耐熱層4にも、孔Pと同様の孔が設けられている。通常、リチウムイオン3は、孔Pと耐熱層4の孔とを介し往来する。耐熱層4は、その材料として、例えば全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を含む。
図2(b)に示されるように、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温し、セパレータ12が融解または柔軟化しても、耐熱層4がセパレータ12を補助しているため、セパレータ12の形状は維持される。ゆえに、セパレータ12が融解または柔軟化し、孔Pが閉塞するにとどまる。これにより、リチウムイオン3の往来が停止するため、上述の過放電または過充電も停止する。このように、セパレータ12の破壊が抑制される。
(セパレータ(基材)の製造フロー)
まず、基材フィルムとしてのセパレータの製造について、その材料として主にポリエチレンを含む場合を例として説明する。
例示する製造方法は、熱可塑性樹脂に孔形成剤を加えてフィルム成形した後、該孔形成剤を適当な溶媒で除去する方法である。具体的には、セパレータが、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂を材料とする場合には、以下に示す(A)〜(E)の工程を順に経る製造方法となる(図3(a)参照)。
(A)混練工程
超高分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウム等の無機充填剤(孔形成剤)とを混練してポリエチレン樹脂組成物を得る工程。
(B)圧延工程
混練工程で得られたポリエチレン樹脂組成物を用いてフィルムを成形する工程。
(C)除去工程
圧延工程で得られたフィルム中から無機充填剤を除去する工程。
(D)延伸工程
除去工程で得られたフィルムを延伸する工程。
(E)基材検査工程
延伸された基材を検査する工程。
上記の製造方法では、上記除去工程(C)で、フィルム中に多数の微細孔が設けられる。そして、上記延伸工程(D)によって延伸されたフィルム中の微細孔が、上述の孔Pとなる。これにより、所定の厚さと透気度とを有するポリエチレン微多孔膜であるセパレータ12が形成される。なお、前記工程(D)を、前記工程(B)と(C)との間で行なうこともできる。
なお、混練工程において、超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、無機充填剤100〜400重量部とを混練してもよい。
また、セパレータが他の材料を含む場合でも、同様の製造工程により、セパレータを製造することができる。また、セパレータの製造方法は、孔形成剤を除去する上記方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。
以下では、セパレータ(基材、フィルム、例えば、電池用セパレータ)の製造にかかる個別の工程について詳しく説明する。
〔実施形態1〕
図3(b)に示すセパレータ製造装置では、延伸装置からその次の処理装置である検査装置までの搬送に、エキスパンダロールE、及び搬送ローラ(R)を用いている。
本願でいうエキスパンダロールとは、搬送されるフィルムを拡張・拡幅する機能を有するローラであり、これをフィルム(基材)や塗工フィルムの搬送ローラとして用いることでフィルムや塗工フィルムに皺が生じることを防ぐことができる。また、少量の皺が発生したとしても、その皺を伸ばすことができる。
圧延されたフィルムは、1以上の搬送ローラRを介して除去装置に搬送され、無機充填材の除去が行われる。
無機充填材が除去されたフィルムは、1以上の搬送ローラRを介して延伸装置に搬送され、延伸が行われる。
延伸されたフィルムは、1以上のエキスパンダロールEを介して検査装置に搬送され、検査が行われる。検査とは、例えば、異物検査やピンホール検査である。
図3(b)のセパレータ製造装置によれば、検査装置による検査の近くでエキスパンダロールEによる拡張がなされるため、皺の発生が防止され正確な検査が可能となる。
エキスパンダロールEについては、図4(a)のような湾曲ロール(バナナロールとも呼ばれる、長手方向に湾曲した形状のロール)であってもよいし、図4(b)のような非湾曲の(長手方向に湾曲していない)直線状ロールであってもよし、図4(c)のような非湾曲の(長手方向に湾曲していない)直線状ロールであってらせん状の溝を有するロールであってもよい。なお、軸Xは回転せずに軸Xに被せられた筒(例えば、ゴム筒)が回転してもよいし、軸Xが回転してもよい。図4(a)(b)のいずれのエキスパンダロールによっても、被搬送物(フィルムfや塗工フィルムF)が搬送方向に展開拡布されることで被搬送物の拡張(皺の発生の防止)が行われる。
なお、湾曲ロールは摩擦カスが発生し難いというメリットがあり、非湾曲の直線状ロールは、中央部での過剰伸びや耳付近でのたるみが発生し難いというメリットがある。
エキスパンダロールの表面には、ゴム(例えば、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム)やシリコン等の軟質材、あるいは金属等の硬質材が用いられる。
エキスパンダロールの表面は、好ましくは凹凸のない曲面状である。こうすれば、摩擦カス等がロールに溜まり難くなり、ロールに溜まった摩擦カスがフィルムや塗工フィルムFに付着するという現象を抑えることができる。また、本発明におけるエキスパンダロールは、好ましくは、フィルムの幅方向に延在するロールである。
(機能層付セパレータの製造フロー)
次に、機能層付セパレータの製造フローについて説明する。
図5は、機能層付セパレータの製造工程の概略を示すフロー図である。
機能層付セパレータは、基材としてのセパレータに機能層が積層された構成を有している。
基材には、ポリオレフィン等のフィルムが用いられる。また、機能層としては、耐熱層や接着剤層が例示される。
基材への機能層の積層は、基材に、機能層に対応する塗材等を塗工し、乾燥させることで行われる。
図5は、機能層が耐熱層である場合の、耐熱セパレータの製造フローを例示している。例示するフローは、耐熱層の材料として全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を用い、それを、ポリオレフィン基材に積層するフローである。
このフローは、塗工、析出、洗浄、乾燥の工程を含んでいる。そして、耐熱層を基材に積層した後に、検査と、それに続くスリットが行われる。
次に、機能層付セパレータの各工程について説明する。
(機能層付セパレータの製造工程)
機能層として、アラミド樹脂による耐熱層を有する耐熱セパレータの製造工程には、(a)〜(g)の各工程が含まれる。
すなわち、順に(a)基材としてのセパレータ(フィルム)の巻出・基材チェック工程、(b)塗材(機能材料)の塗工工程、(c)加湿等による析出工程、(d)洗浄工程、(e)乾燥工程、(f)塗工品検査工程、(g)巻取工程が含まれる。また、上記(a)〜(g)に加えて、(a)巻出・基材チェック工程の前に基材製造(成膜)工程が、また、(g)巻取工程の後にスリット工程が設けられる場合もある。また、機能層の構成によっては、(c)加湿等による析出工程、(d)洗浄工程は省略しても良い。
以下、(a)〜(g)の順で説明する。
(a)基材巻出工程・基材チェック工程
機能層付セパレータの基材となるセパレータ原反フィルムを、ローラから巻き出す工程である。そして、巻き出した基材について、次工程の塗工に先立ち、基材の検査を行う工程である。
(b)塗材塗工工程
(a)で巻き出した基材に、機能材料としての塗材を塗工する工程である。
ここでは、機能層としての耐熱層を基材に積層する方法について説明する。具体的には、基材に、耐熱層用の塗材として、アラミドのNMP(N−メチル−ピロリドン)溶液を塗工する。なお、耐熱層は上記のアラミド耐熱層に限定されない。例えば、耐熱層用の塗材として、無機フィラーを含む懸濁液(アルミナとカルボキシメチルセルロースと水とを含む懸濁液など)を塗工してもよい。
塗材を基材に塗工する方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、種々の方法を採用することができる。例えば、キャピラリーコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ローラコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビアコーター法、バーコーター法、ダイコーター法などを採用することができる。
耐熱層4の厚さは塗工される塗材の厚み、又は、塗材中の固形分濃度を調節することによって制御することができる。
なお、機能層は、基材の片面だけに設けられても、両面に設けられてもよい。
(c)析出工程
析出工程は、(b)において塗工した塗材を固化させる工程である。塗材がアラミドのNMP溶液である場合には、例えば、塗工面に水蒸気を与え、湿度析出によりアラミドを固化させる。
(d)洗浄工程
洗浄工程は、(c)において析出した塗材を洗浄して溶剤を除去する工程である。溶剤を除去することで、基材上にアラミド耐熱層が形成される。耐熱層がアラミド耐熱層である場合には、洗浄液として、例えば、水、水系溶液、アルコール系溶液が好適に用いられる。
(e)乾燥工程
(d)で洗浄した機能層付セパレータを乾燥させる工程である。
乾燥の方法は、特には限定されず、例えば、加熱されたローラに機能層付セパレータを接触させる方法や、機能層付セパレータに熱風を吹き付ける方法等、種々の方法を用いることができる。
(g)塗工品検査工程
乾燥した機能層付セパレータを検査する工程である。
この検査を行う際、欠陥箇所を除去しやすいよう、適宜欠陥をマーキングしてもよい。
(h)巻取工程
検査を経た機能層付セパレータを巻き取る工程である。
この巻き取りには、適宜、円筒形状のコアなどを用いることができる。
巻き取られた機能層付セパレータは、そのまま、幅広の状態で原反として出荷等されても良い。或いは、必要に応じて、製品幅等の狭幅にスリットし、スリットセパレータとすることも可能である。
以下では、機能層付セパレータ(機能性フィルム、例えば、電池用セパレータ)の製造にかかる個別の工程について詳しく説明する。
〔実施形態2〕
図6は、実施形態2の機能層付セパレータ製造装置の構成例を示す模式図である。図6の機能層付セパレータ製造装置20は、捲き出したフィルムf(基材)を、塗工装置23および塗工フィルムFの検査装置27を含む複数の処理装置(23〜27)に順次搬送することで機能層付セパレータを製造する装置である。
図6に示すように、機能層付セパレータ製造装置20は、前記(b)塗材塗工工程を行う塗工装置23と、前記(c)析出工程を行う析出装置24と、前記(d)洗浄工程を行う洗浄装置25と、前記(e)乾燥工程を行う乾燥装置26と、前記(f)塗工品検査工程を行う検査装置27とを含む。
フィルムfは、塗工装置23、析出装置24、洗浄装置25、および乾燥装置26を経て、検査装置27にフィルムFとして搬送され、各装置(23〜27)で対応する処理が行われる。
塗工装置23は、例えば、グラビアコーター法の機構を有し、グラビアロール23aおよびドクターブレード23bを備える。この機構では、グラビアロール23aの上端がフィルムfに接するとともに下端が塗材Pに浸かっており、グラビアロール23aを回転させることで、グラビアロール23aの表面凹部の塗材がフィルムfに塗工される。なお、グラビアロール表面の余分な塗材はドクターブレード23bによって掻き取られる。
図6の機能層付セパレータ製造装置では、乾燥装置26からその次の処理装置である検査装置27までの搬送に、エキスパンダロールE27及び搬送ローラ(R)を用いている。
具体的には、捲き出されたフィルムfは、エキスパンダロールE23を含む1以上の搬送ローラを介して塗工装置23に搬送され、塗工処理(塗材の塗布)がなされる。
製造対象の機能層付セパレータが電池用セパレータである場合には、例えば、フィルムfにポリオレフィン多孔質フィルムを用い、フィルムfに塗材(塗工液)を塗布することでポリオレフィン多孔質フィルム上に多孔質層を形成する。
塗工処理が完了したフィルム(塗工フィルムF)は、1以上の搬送ローラRを介して析出装置24に搬送され、塗材の析出処理が行われる。
析出処理が完了した塗工フィルムFは、1以上の搬送ローラRを介して洗浄装置25に搬送され、析出した塗材の洗浄が行われる。
洗浄処理が完了した塗工フィルムFは、エキスパンダロールE26を介して乾燥装置26に搬送され、洗浄された塗材の乾燥が行われる。
乾燥処理が完了した塗工フィルムFは、エキスパンダロールE27を介して検査装置27に搬送され、乾燥した塗工フィルムF(例えば、積層多孔質フィルム)の検査が行われる。検査としては、例えば、塗工検査、異物検査、及びピンホール検査が挙げられる。
図6の機能層付セパレータ製造装置によれば、検査装置27による検査の近くでエキスパンダロールE27による拡張がなされるため、皺の発生が防止され正確な検査が可能となる。なお、エキスパンダロールE27を検査装置27の直前に配置することもできる。
また、塗工装置23による塗工の近くでエキスパンダロールE23による拡張がなされるため、皺の発生が防止され均一な塗工が可能となる。なお、エキスパンダロールE23を塗工装置23の直前に配置することもできる。
また、図6の構成では、エキスパンダロール間の搬送距離(E23→E26とE26→E27)を10m以上に設定し、比較的高価であり、また、基材との摩擦によってカスが発生し易いエキスパンダロールの使用数を最小限としている。これにより、必要な拡張(皺の発生の防止)を担保しながら、コスト削減およびカス掃除の手間を少なくすることができる。
エキスパンダロールE23・E26・E27それぞれについては、図4(a)のような湾曲ロール(バナナロールとも呼ばれる、長手方向に湾曲した形状のロール)であってもよいし、図4(b)のような非湾曲の(長手方向に湾曲していない)直線状ロールであってもよい。
各エキスパンダロール(E23・E26・E27)の表面には、ゴム(例えば、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム)やシリコン等の軟質材、あるいは金属等の硬質材が用いられる。また、エキスパンダロールの表面は凹凸(例えば、溝)のない曲面状であることが望ましい。こうすれば、摩擦カス等がロールに溜まり難くなり、ロールに溜まった摩擦カスがフィルムfや塗工フィルムFに付着するという現象を抑えることができる。
〔実施形態3〕
図7は、実施例2の機能層付セパレータ製造装置の構成例を示す模式図である。図7の機能層付セパレータ製造装置20は、捲出装置21から捲き出したフィルムf(基材)を、塗工装置23および塗工フィルムFの検査装置27を含む複数の処理装置(23〜27)に順次搬送することで機能層付セパレータを製造する装置である。
図7に示すように、機能層付セパレータ製造装置20は、前記(a)基材巻出工程および基材チェック工程を行う、捲出装置21およびフィルムチェック装置22と、前記(b)塗材塗工工程を行う塗工装置23と、前記(c)析出工程を行う析出装置24と、前記(d)洗浄工程を行う洗浄装置25と、前記(e)乾燥工程を行う乾燥装置26と、前記(f)塗工品検査工程を行う検査装置27とを含む。
捲出装置21から捲き出されたフィルムfは、フィルムチェック装置22、塗工装置23、析出装置24、洗浄装置25、および乾燥装置26を経て、検査装置27にフィルムFとして搬送され、各装置(22〜27)で対応する処理が行われる。
図7の機能層付セパレータ製造装置では、捲出装置21からその次の処理装置であるフィルムチェック装置22までの搬送に、エキスパンダロールE22、及び搬送ローラ(R)を用いている。
具体的には、捲出装置21から捲き出されたフィルムfは、エキスパンダロールE22、及び搬送ローラ(R)を介してフィルムチェック装置22に搬送され、フィルムチェック処理が行われる。フィルムチェック処理をパスしたフィルムfは、エキスパンダロールE23、及び搬送ローラ(R)を介して塗工装置23に搬送され、塗工処理(塗材の塗布)がなされる。
製造対象の機能層付セパレータが電池用セパレータである場合には、例えば、フィルムfにポリオレフィン多孔質フィルムを用い、フィルムfに塗材(塗工液)を塗布することでポリオレフィン多孔質フィルム上に多孔質層を形成する。
塗工処理が完了したフィルム(塗工フィルムF)は、1以上の搬送ローラRを介して析出装置24に搬送され、塗材の析出処理が行われる。
析出処理が完了した塗工フィルムFは、1以上の搬送ローラRを介して洗浄装置25に搬送され、析出した塗材の洗浄が行われる。
洗浄処理が完了した塗工フィルムFは、エキスパンダロールE26を介して乾燥装置26に搬送され、洗浄された塗材の乾燥が行われる。
乾燥処理が完了した塗工フィルムFは、エキスパンダロールE27を介して検査装置27に搬送され、乾燥した塗工フィルム(例えば、積層多孔質フィルム)の検査が行われる。検査としては、例えば、塗工検査、異物検査、及びピンホール検査が挙げられる。
図7の機能層付セパレータ製造装置によれば、検査装置27による検査の近くでエキスパンダロールE27による拡張がなされるため、皺の発生が防止され正確な検査が可能となる。なお、エキスパンダロールE27を検査装置27の直前に配置することもできる。
また、塗工装置23による塗工の近くでエキスパンダロールE23による拡張がなされるため、適切な塗工が可能となる。なお、エキスパンダロールE23を塗工装置23の直前に配置することもできる。
また、フィルムチェック装置22による検査の近くでエキスパンダロールE22による拡張がなされるため、皺の発生が防止され正確なフィルムチェック処理が可能となる。
また、図7のようにエキスパンダロールE22を捲出装置21の直後に配置することで、捲き出し直後にフィルムfの皺の発生を防止することができる。また、巻き出し直後の皺を取ることもできる。
また、図7の構成では、エキスパンダロール間の搬送距離(E22→E23、E23→E26、E26→E27)を10m以上に設定し、比較的高価であり、また、基材との摩擦によってカスが発生し易いエキスパンダロールの使用数を最小限としている。これにより、必要な拡張(皺の発生の防止)を担保しながら、コスト削減およびカス掃除の手間を少なくすることができる。
エキスパンダロールE22・E23・E26・E27それぞれについては、図4(a)のような湾曲ロール(バナナロールとも呼ばれる)であってもよいし、図4(b)のような非湾曲の直線状ロールであってもよい。
各エキスパンダロール(E22・E23・E26・E27)の表面には、ゴム(例えば、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム)やシリコン等の軟質材、あるいは金属等の硬質材が用いられる。また、エキスパンダロールの表面は凹凸(例えば、溝)のない曲面状であることが望ましい。こうすれば、摩擦カス等がロールに溜まり難くなり、ロールに溜まった摩擦カスがフィルムfや塗工フィルムFに付着するという現象を抑えることができる。
〔実施形態4〕
図7の機能層付セパレータ製造装置を図8のように構成することもできる。すなわち、乾燥装置26での乾燥処理が完了した塗工フィルムFを、2つのエキスパンダロールE27a・E27b、及び搬送ローラ(R)を介して検査装置27に搬送し、乾燥した塗工フィルム(例えば、積層多孔質フィルム)の検査を行う。
ここでは、エキスパンダロールE27a・27bの間に、エキスパンダロールでない搬送ローラRを配し、2つのエキスパンダロールE27a・E27bの形状および表面材質の少なくとも一方を異ならせる。例えば、エキスパンダロールE27aを、図4(b)のような非湾曲の直線状ロール(表面は硬質材)とし、エキスパンダロールE27bを、図4(a)のような湾曲ロール(表面は軟質材)とする。
こうすれば、検査装置27による検査の近くで特性の異なる2つのエキスパンダロールE27a・E27bによる効果的な拡張(皺の発生の防止)がなされるため、より正確な検査が可能となる。
また、2つのエキスパンダロール(E27a・E27b)の一方(E27a)から他方(E27b)への搬送経路上に、エキスパンダロールでない搬送ローラ(R)が配されているため、各エキスパンダロールにおける抱き角を大きくすることができる。
〔まとめ〕
以上のように、本機能性フィルムの製造方法は、フィルム(f)を、フィルム(F)の検査装置(27)を含む複数の処理装置に順次搬送する機能性フィルムの製造方法であって、所定の処理装置(例えば、乾燥装置26)からその次の処理装置である検査装置(27)までの搬送に、1以上のエキスパンダロール(E27)を用いることを特徴とする。
前記方法によれば、検査装置(27)による検査の近くでエキスパンダロール(E27)による拡張(皺の発生の抑制)がなされるため、正確な検査が可能となる。
フィルムの検査には、検査装置の設置スペースを確保するためなど、作業スペースが必要とされる。したがって、検査を行なう場所においては搬送ロール間の距離が長くなる傾向があり、その結果としてフィルムに皺が生じ易い。
本機能性フィルムの製造方法では、フィルム(f)を捲き出す捲出装置(21)からその次の処理装置であるフィルムチェック装置(22)までの搬送に、1以上のエキスパンダロール(E22)を用いることもできる。
前記方法によれば、フィルムチェック装置(22)による検査の直前にエキスパンダロール(E22)による拡張(皺の発生の防止)がなされるため、正確なフィルムチェック処理が可能となる。
本機能性フィルムの製造方法では、フィルムチェック装置(22)から塗工装置(23)までの搬送に、1以上のエキスパンダロール(E23)を用いることもできる。
前記方法によれば、塗工装置(23)による塗工の近くでエキスパンダロール(E23)による拡張(皺の発生の防止)がなされるため、均一な塗工が可能となる。
本機能性フィルムの製造方法では、塗工装置(23)から前記所定の処理装置(例えば、乾燥装置26)までの搬送に、1以上のエキスパンダロール(E26)を用いることもできる。
本機能性フィルムの製造方法では、前記所定の処理装置は、塗工フィルム(F)の乾燥装置(26)とすることもできる。
本機能性フィルムの製造方法では、1つのエキスパンダロールと搬送経路上の次のエキスパンダロールとの間の搬送距離(E22→E23、E23→E26、E26→E27)を10m以上とすることもできる。
前記方法によれば、比較的高価であり、かつ、摩擦カスが発生し易いエキスパンダロール(E22・E23・E26・E27)の使用数を最小限としている。これにより、必要な拡張(皺の発生の防止)を担保しながら、コスト削減およびカス掃除の手間を少なくすることができる。
本機能性フィルムの製造方法では、エキスパンダロール(E22・E23・E26・E27)は湾曲ロールであってもよい。
前記方法によれば、摩擦カスが発生し難いというメリットがある。
本機能性フィルムの製造方法では、エキスパンダロール(E22・E23・E26・E27)は非湾曲の直線状ロールであってもよい。
前記方法によれば、中央部での過剰伸びや耳付近でのたるみが発生し難いというメリットがある。
本機能性フィルムの製造方法では、エキスパンダロール(E22・E23・E26・E27)の表面は凹凸のない曲面状であってもよい。
前記方法によれば、摩擦カス等がロールに溜まり難くなり、ロールに溜まった摩擦カスがフィルムfや塗工フィルムFに付着するという現象を抑えることができる。
本機能性フィルムの製造方法では、所定の処理装置(例えば、乾燥装置26)からその次の処理装置である検査装置(27)までの搬送に用いる複数の搬送ローラに、2つのエキスパンダロール(E27a・E27b)が含まれてもよい。
前記方法によれば、検査装置(27)による検査の近くで2つのエキスパンダロール(E27a・E27b)による拡張(皺の発生の防止)がなされるため、より正確な検査が可能となる。
本機能性フィルムの製造方法では、前記2つのエキスパンダロールの形状および表面材質の少なくとも一方が異なっていてもよい。
このように、検査装置(27)の前に、形状および表面材質の少なくとも一方が異なる2つのエキスパンダロール(E27a・E27b)を用いることで、より効果的な拡張(皺の発生の防止)が可能となる。
本機能性フィルムの製造方法では、2つのエキスパンダロール(E27a・E27b)の一方(E27a)から他方(E27b)への搬送経路上に、エキスパンダロールでない搬送ローラ(R)が配されていてもよい。こうすれば、各エキスパンダロールにおける抱き角を大きくすることができる。
本機能性フィルムの製造方法では、機能性フィルムは、ポリオレフィン多孔質フィルム(f)に多孔質層を形成した積層多孔質フィルムであってもよい。
本機能性フィルムの製造装置は、フィルムを、フィルムの検査装置を含む複数の処理装置に順次搬送する機能性フィルムの製造装置であって、所定の処理装置からその次の処理装置である前記検査装置までの搬送に、1以上のエキスパンダロールが用いられていることを特徴とする。
前記構成によれば、検査装置(27)による検査の近くでエキスパンダロール(E27)による拡張(皺の発生の防止)がなされるため、正確な検査が可能となる。
本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、前記実施形態を技術常識に基づいて適宜変更したものやそれらを組み合わせて得られるものも本発明の実施の形態に含まれる。