JP6000741B2 - ローヤルゼリー溶液及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本出願は、2012年3月3日に出願した台湾出願第101107190号の優先権を主張するものである。
本発明は、ローヤルゼリー溶液及びそれを製造する方法に関し、より具体的には、天然ローヤルゼリーを酵素で処理することにより不透明でクリーム状のローヤルゼリー溶液を製造する生物工学的方法、及びそれにより製造された安定なオパール様の不透明な懸濁液の形態で存在するローヤルゼリー溶液に関する。
ローヤルゼリーは、働き蜂の下咽頭腺から分泌される黄白色の粘稠なペースト状物質である。発育段階を通してローヤルゼリーを与えられた幼虫は、わずか16日で成熟して女王蜂になり、最長5〜6年の寿命を有することが報告されている。したがって、ローヤルゼリーは、長寿を増進するのに有益であると考えられている。
新鮮なローヤルゼリーは、通常、乳白色又は淡黄色のペースト状の半流動体の形態で存在する。それは、水及びアルコールに部分的に可溶性であり、容易に白色沈殿を生じ、一定時間放置すると自然に層分離する。新鮮なローヤルゼリーは、60〜70%の平均含水率を有し、9〜18%のタンパク質、7〜16%の炭水化物及び3〜8%の脂質を含む。それに含まれる他の成分は、遊離アミノ酸、ビタミン(ビオチン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パントテン酸並びにビタミンB、B及びEなど)、ミネラル、ペプチド、脂肪酸並びに10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10−HDAと略す)及び主要ローヤルゼリータンパク質(MRJPs)などのヒトの健康に有益である可能性のある生物活性化合物などである。このようなことから、ローヤルゼリーは、天然の栄養補助食品としてしばしば用いられている。台湾特許公開第200526193号は、アンチエイジング組成物へのローヤルゼリーの利用を開示している。台湾特許第I340651号は、コラーゲンの産生がローヤルゼリーにより促進され得ることを教示している。
天然ローヤルゼリーは、経口投与できるが、喉の不快感をもたらす刺激的な酸味及び粘着性のある食感のため、人々によってしばしば拒絶される。さらに、天然ローヤルゼリーは、それに含まれるタンパク質及び酵素が温度に対して敏感であり、温度が上昇すると望ましくない褐色の変色をもたらす傾向があるため、冷却又は凍結条件下での貯蔵を必要とする。したがって、天然ローヤルゼリーは、貯蔵性及び味の点で欠点があることが長年にわたり知られていた。貯蔵性の欠点を克服するために、粉末状のローヤルゼリーを充填したカプセル又は錠剤を開発するための努力が製造業者によってなされてきた。中国特許第100421578号及び第101223946号、中国特許公開第1076362号並びに特開平5−9125号は、ローヤルゼリー溶液をかなりの量の炭水化物及びゴムと混合したり又はローヤルゼリー溶液を粉末に乾燥することによるローヤルゼリー溶液の貯蔵性の改善を伴う、ローヤルゼリー含有飲料を製造する方法を開示している。しかし、これらの方法は、このように製造された飲料は不十分な量の天然ローヤルゼリーしか含むことができず、したがって、栄養価が制限され得るという点で重要な限界を有する。飲料に加えるローヤルゼリーの量を高めるための新規な技術が求められる。
ローヤルゼリーは、独特の流体力学的特性のため、25℃超の温度で擬塑性挙動(pseudo-plastic behavior)を示す傾向があり、これが加工及び貯蔵時の品質管理の困難をもたらす。中国特許公開1076362及び特開平5−320060は、ローヤルゼリーを水に溶解し、遠心分離によりローヤルゼリー水溶液から水不溶性沈降物を除去し、当該沈降物をアルコール又はアセトンで抽出し、得られた懸濁液を、加熱し、pH値を調整した後、遠心分離又はろ過して、生物活性物質を含む抽出液を収集し、次いでこの抽出液を、沈降物を除去したローヤルゼリー水溶液に戻すことによって、ローヤルゼリーの擬塑性の原因である不溶解性成分を除去することを教示している。しかし、そのような処理では、アルコール不溶性の特定の生物活性物質が容易に捨てられ、天然ローヤルゼリーに由来する生物活性物質の完全なプロファイルが保持できなくなる。さらに、沈降物から生物活性物質を回収するための抽出剤として用いられる溶媒が僅かに最終製品中に残り、消費者の健康を危険にさらす可能性がある。特開平1−215268及び特開2008−118869は、貯蔵寿命を延長するためにローヤルゼリーの水溶液中へ保存剤を添加することを開示している。しかし、保存剤は、特定の健康上の問題を生じさせる可能性がある。
さらに、台湾特許第62795号及び特願平2−333641は、ローヤルゼリーのタンパク質分解度、回収率及び貯蔵性を改善し、それにより、透明で清澄なローヤルゼリー溶液を提供するための、タンパク質分解酵素、すなわち、ペプシン及びパンクレアチンでのローヤルゼリーの処理を開示している。しかし、この特許文献に開示されている方法は、2種又はそれ以上のタンパク質分解酵素をpH調整したローヤルゼリー溶液と接触させることを伴い、得られる溶液は、かなりの量の不溶性タンパク質の沈殿物を含み、層に分離する傾向がある。製品中に存在する大量のタンパク質沈殿物は、貯蔵寿命を短くする可能性があり、その濁った外観のため、顧客に製品の品質に不信感を抱かせる。通常不溶性タンパク質を含む可視的沈殿のない清澄なローヤルゼリー溶液を得るために、遠心ろ過又は膜ろ過のプロセスを用いて沈殿を除去することがしばしば行われる。このような遠心分離及びろ過の後に、天然ローヤルゼリー由来のいくつかの特有の生物活性物質及び不溶性タンパク質が除去され、捨てられてしまうことも避けることができない。したがって、従来の方法により製造されたローヤルゼリー製品は、天然ローヤルゼリー由来の生物活性物質及びタンパク質の完全なプロファイルを備えておらず、限られた栄養価を有する。さらに、これらの特許公開で開示された方法は、回収率を高めるために哺乳類源由来の2種又はそれ以上の酵素でローヤルゼリー溶液を処理することを伴い、望ましくない濁り、沈殿及び凝集を避けるために天然ローヤルゼリーの添加量を制御する必要がある。これらの事実は、沈殿を除去するために追加のろ過プロセスを行うという事実と相まって、プロセスを費用対効果が低いものとし、経済的により魅力のないものとしている。さらに、伝統的な方法により製造された製品は、限られた量の天然ローヤルゼリーを加えることができるにすぎず、さもなければ、過剰な量の天然ローヤルゼリーの存在により、濁り又は凝集が起こって、安定な懸濁液の形成を妨げる。したがって、伝統的なローヤルゼリー飲料は、不溶性タンパク質の排除により、通常限られた栄養価を有する。
このようなことから、消費者及び市場の要求に応じて、改善された安定性及び栄養価を有するローヤルゼリー溶液を開発する必要がある。また、ローヤルゼリー材料の廃棄物が最小限に減少する、ローヤルゼリー溶液を製造する改善された方法が求められる。
したがって、本発明の目的は、顕著な量の沈殿を発生させたり、可溶性画分と不溶性画分との分離を引き起こしたりすることなく、安定な懸濁液の形態のローヤルゼリー溶液を製造するための、特異的な酵素活性を有する酵素でローヤルゼリーを処理する方法を提供することである。このように製造されたローヤルゼリー溶液は、望ましくない沈殿を除去するためのさらなる処理に供する必要がなく、したがって、実質的に天然ローヤルゼリーに由来するすべての栄養素を保持している。
本発明の1つの態様によれば、20℃〜70℃で、システインプロテアーゼ活性を有する酵素により触媒される酵素反応に水性ローヤルゼリー懸濁液を供するステップを含む、ローヤルゼリー溶液の製造方法を提供する。
本発明の他の態様によれば、前記方法により製造されるローヤルゼリー溶液が得られる。
一般的に、ローヤルゼリーは、本質的に可溶性及び不溶性タンパク質で構成されるタンパク内容を有する。かくして、主要ローヤルゼリータンパク質(MRJPs)は、総タンパク質に基づき90%の量で存在し、蜜蜂の栄養に重要な役割を果たしている。MRJPsがシステイン残基を含み、それらのC末端で疎水性が高いことも見出した。本発明によるローヤルゼリー溶液を製造する方法は、酵素、すなわち、触媒性ダイアドに求核性システインチオールを含むシステインプロテアーゼの一種を利用すると有利である。このタンパク質分解作用は、タンパク質を小さなペプチド又はアミノ酸分子に分解し、それにより、イオン化可能なアミノ基及びカルボキシル基を加水分解により露出させる。ローヤルゼリータンパク質に対するシステインプロテアーゼの酵素作用により、ローヤルゼリー溶液中のタンパク質分子の水和が促進される。タンパク質分解及びタンパク質に対するシステインプロテアーゼの酵素作用の利点により、本発明の方法により製造されるローヤルゼリー溶液中に存在するタンパク質分子は、容易に沈殿せず、長期間にわたり溶液中に安定に懸濁させることができる。従来の方法と対照的に、本発明の方法は、それにより製造されたローヤルゼリー溶液を沈殿物の除去のためのさらなる遠心分離又はろ過にかける必要はない。したがって、本発明の方法は、天然ローヤルゼリー由来の生物活性成分及び栄養素の完全なプロファイルを維持することを可能にし、大きい栄養価を有するローヤルゼリー溶液を提供する。さらに、本発明の方法により製造されるローヤルゼリー溶液は、安定な懸濁液の形態に確実に維持することができ、さらにろ過し、乳化し、又は均質化する必要なしに、飲料又は液体原料(liquid stock)として供給し得る状態にある。従来技術と比較して、本発明は、必要な処理ステップがより少なく、したがって、著しくより高い生産効率及び費用効果を示す。
本発明はさらに、安定な懸濁液の形態であり、層に分離する傾向がないローヤルゼリー溶液を提供する。
本明細書で開示するローヤルゼリー溶液は、ローヤルゼリー原料を水と混合し、得られた水性ローヤルゼリー懸濁液をシステインプロテアーゼ活性を有する酵素により触媒される酵素反応に供することによって得られる。このように製造されたローヤルゼリー溶液は、乳白色で、安定な懸濁液の形態で存在し、1214m/z±0.5%及び/又は2032m/z±0.5%にペプチドマスフィンガープリンティングを示す。
システインプロテアーゼ活性を有する酵素を水性ローヤルゼリー懸濁液と接触させることにより、製造されるローヤルゼリー溶液は、上述のペプチドマスフィンガープリンティングを示す点、及び目に見える沈殿がなく、さらなる遠心分離又はろ過処理にかける必要なしに、乳白色で安定な懸濁液の形態であるという点で利点を有する。本発明のローヤルゼリー溶液は、天然ローヤルゼリーの全エッセンスを保持しているので、その従来の対応物と比較して大きい栄養価を有し、したがって、天然ローヤルゼリーに由来する栄養素の完全なプロファイルを含む全ローヤルゼリー飲料又は液体調製物へと直接的に製造することができる。
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明において添付図面を参照することによって明らかになる。
本発明の好ましい実施形態によるローヤルゼリー溶液を製造する方法を示すフローチャートである。 各種処理の後に得られる水性ローヤルゼリー懸濁液の外観を示す写真を示す図である。 種々の酵素処理により製造された代表的な試料溶液について測定した安定係数を比較した棒グラフである。 試料溶液D1中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D2中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D3中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D4中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D5中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D6中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。 試料溶液D7中のタンパク質物質の分布を示す質量クロマトグラムである。
図1に言及すると、以下のステップを含む、本発明の好ましい実施形態によるローヤルゼリー溶液を製造する方法を示す。
ステップ201は、ローヤルゼリー原料を水と混合して、水性ローヤルゼリー懸濁液を得るステップを含む。ローヤルゼリー原料は好ましくは、新鮮な天然ローヤルゼリー、凍結ローヤルゼリー材料又は凍結乾燥ローヤルゼリー材料から選択される。水性ローヤルゼリー懸濁液を調製するために用いる水の温度は、決定的に重要ではないが、速やかな混合を達成し、ローヤルゼリータンパク質が高温に起因して褐変することを防ぐという点から、好ましくは20℃〜70℃、より好ましくは40℃〜55℃の範囲にする。水性ローヤルゼリー懸濁液中のローヤルゼリー原料の濃度も必要に応じて変化させることができ、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは2〜20重量%の範囲である。
ステップ202は、システインプロテアーゼ活性を有する酵素を水性ローヤルゼリー懸濁液中に加えて、ローヤルゼリー反応前混合物を得るステップを含む。この実施形態によれば、ここで用いる酵素は、植物源由来であるか、又は他の方法により調製され、パパイン(3.4.22.2、3.4.22.6又は3.4.22.30の酵素委員会(EC)番号を有するものなど)、ブロメライン(3.4.22.32又は3.4.22.33の酵素EC番号を有するものなど)、フィカイン(3.4.22.3のEC番号を有するものなど)及びそれらの組合せから選択される。一般的に、上述の酵素のいずれかの添加は、本発明により意図される効果を達成し、水性ローヤルゼリー懸濁液中に加えられる酵素の量は、水性ローヤルゼリー懸濁液の総重量に基づき0.01%〜90%である。酵素の添加量は、酵素レベルの増加に起因する凝集を避けるという点から、水性ローヤルゼリー懸濁液の総重量に基づき好ましくは0.05%〜10%であり、より好ましくは0.1%〜5%である。
上述の酵素委員会番号(EC番号)は、酵素が触媒する化学反応に基づいて酵素委員会により提案された酵素の数字による分類システムである。この命名システムにより、当技術分野で公知のすべての酵素が「EC」という文字とそれに続く酵素の徐々に細かくなる分類を表す4つの数字からなるコードを割り当てられている。各EC番号は、個々の酵素の分類及び活性を表す。例えば、トリペプチドアミノペプチダーゼは、コード「EC3.4.11.4」を有し、その構成要素「EC3」は、ヒドロラーゼに割り当てられ、構成要素「EC3.4」は、ペプチド結合に対して作用するヒドロラーゼを示し、構成要素「EC3.4.11」は、ポリペプチドからアミノ末端アミノ酸を切断するヒドロラーゼに割り当てられ、構成要素「EC3.4.11.4」は、トリペプチドからアミノ末端を切断するものに割り当てられる。
好ましくは、パパイン、ブロメライン及びフィカインなどのここで用いるシステインプロテアーゼ活性を有する酵素は、中性又は酸性プロテアーゼ活性を示す。最大の反応効率を達成するために、水性ローヤルゼリー懸濁液は、酵素が機能するのに適するpH値に予め調整することができる。通常の場合、ステップ201で調製した水性ローヤルゼリー懸濁液は、既に3〜5のpHを示しており、酵素の添加の前のpH調整は場合によって省略することができる。しかし、ローヤルゼリー原料の供給源若しくはバッチの変動又は水性懸濁液中のローヤルゼリー原料の濃度の変動のため水性ローヤルゼリー懸濁液のpH値が所望の範囲から逸脱している場合、pHの調整は、食品及び医薬品規則により許容されるpH調整剤を水性ローヤルゼリー懸濁液に加えることにより行うことができる。本発明に有用な一般的なpH調整剤の例としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム及び乳酸があるが、これらに限定されない。酵素の添加の前に、水性ローヤルゼリー懸濁液は、pH調整剤を用いて2〜8のpHに調整することができる。より良好な反応効率を達成するために、水性ローヤルゼリー懸濁液は、好ましくは3〜6のpHに、より好ましくは3〜5のpHに調整する。
ステップ203は、ローヤルゼリー反応前混合物を20℃〜70℃の温度で反応させて、実質的に沈殿を含まない安定なクリーム状の非層状安定懸濁液の形態のローヤルゼリー溶液を得るステップを含む。得られるローヤルゼリー溶液が高温で褐色に変色し、不安定化することを防ぐために、酵素反応は、好ましくは30〜60℃で、より好ましくは35〜55℃で行わせる。
所望の反応結果を達成すると同時に反応時間を節約して生産効率を維持するために、ローヤルゼリー反応前混合物は、酵素の添加量及び反応温度を調節した後に0.6〜5時間、好ましくは0.7〜3時間の時間反応させる。意図した反応結果又は設定した反応時間が達成されたとき、ローヤルゼリー反応前混合物を70℃〜110℃の温度に加熱すること及びローヤルゼリー反応前混合物を2未満又は8を超えるpHに調整することからなる群から選択される方法により酵素反応を停止させる。換言すると、高温又は不適切なpH環境下におくことによって酵素を不活性化することが好ましい。本実施形態においては、反応前混合物を高温に加熱することによって酵素反応を停止させる。パパイン又はブロメラインにより触媒される酵素反応の完結後、得られたローヤルゼリー溶液が褐色に変色することを防ぐように酵素活性を好ましくは80〜105℃の温度で、より好ましくは90〜100℃の温度で失活させる。
好ましくは、得られるローヤルゼリー溶液は、3〜5の範囲のpHを有する。
本発明の方法により製造されたローヤルゼリー溶液は、質量分析により分析すると、1214m/z±0.5%及び/又は2032m/z±0.5%のペプチドマスフィンガープリンティングを示すことを注意すべきである。上述の2つの主要なペプチドマスフィンガープリンティングの少なくとも1つを示すことに加えて、ローヤルゼリー溶液は、次のm/z値における1つ又は複数の質量スペクトルピークをさらに示し得る:1016m/z±0.5%、2016m/z±0.5%、3477m/z±0.5%、6030m/z±0.5%、6314m/z±0.5%、7413m/z±0.5%及び8640m/z±0.5%。
ステップ202では、一種類の上述の酵素を水性ローヤルゼリー懸濁液中に加えることによってシステインプロテアーゼ活性を簡単に達成することができ、それにより、乳化剤、安定剤、賦形剤、抗凝集剤、可溶化剤、安定化剤及び粘稠化剤といった、食品産業において使用が許容された添加剤が存在しない状態で、沈殿を実質的に含まない安定なオパール様の不透明な乳白色の非層状懸濁液の形態のローヤルゼリー溶液が得られることは強調に値する。このようにして得られたローヤルゼリー溶液は、安定な懸濁液の形態であるので、さらなる清澄化又はろ過処理にかける必要がなく、天然ローヤルゼリーの全エッセンスを保持している。この利点は、ローヤルゼリー溶液が酵素処理後に優れた安定性を示し、安定剤及び保存剤を添加せずに長期間保存することができるという所見と相まって、ローヤルゼリー溶液を、天然ローヤルゼリー由来の栄養素の完全なプロファイルを保持し且つ伝統的な食品添加物が存在しないものとすることによって優れた栄養価をもたらす。さらに、2種又はそれ以上の異なる種類のタンパク質分解酵素を水性ローヤルゼリー懸濁液中に加えることによってのみ意図された効果を達成することができる従来の酵素処理と比較して、本明細書で開示する発明は、さほど高価でない植物源に由来する一種類のタンパク質分解酵素を用い、これによって明らかに費用対効果がより高く、環境に優しい。さらに、必要なタンパク質分解酵素の適用量は、本発明においてより少ない。
それにもかかわらず、本明細書で開示するローヤルゼリー溶液は、様々な製品の開発に適する。すなわち、当該ローヤルゼリー溶液は、種々の形態、経口摂取特性、風味及び他の特性を有する飲料製品を形成するために食品又は医薬品規則により許容される様々な添加物を用いて調製することができる。例えば、ローヤルゼリー溶液に、栄養補助剤、栄養補助食品材料、食事療法用食品、賦形剤、安定剤、粘稠化剤、抗凝集剤などの食品及び医薬品規則により許容される添加物及び物質を加えることができる。1つの実施形態において、ローヤルゼリー溶液は、例えば、食品及び医薬品規則により許容される特定の添加物を用いて調製又は風味を添えて、100ccの飲料製品当たり本明細書で開示するローヤルゼリー溶液を40g含む飲料製品を製造することができる。
酵素処理にかけた後、ペプチド結合が切断されて、イオン化可能なアミノ酸及びカルボキシル基が露出され、タンパク質の表面電荷及び分子配座が変化し、タンパク質表面上に露出した親水性基が増加する。酵素の作用を受けた後、タンパク質分子は、高度に水和され、沈殿したり層に分離することなく、ローヤルゼリー溶液中に安定に懸濁する。さらに、酵素処理後に得られるローヤルゼリー溶液は、依然として溶液中に含まれるタンパク質の等電点(pI)より低い酸性pHにあり、それにより、溶液の全体的な水和の程度が増加する。したがって、システインプロテアーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理の後、最初は沈殿する傾向があった不溶性タンパク質を含む、ローヤルゼリー溶液中に存在するタンパク質のすべては、親水性アミノ酸残基に帰せられる親水性及び溶液のpH値とタンパク質のpIとの差を利用して、溶液中に安定に懸濁させることができ、沈殿したり層に分離する傾向はもはやない。結果として、本明細書で開示するローヤルゼリー溶液は、沈殿する傾向がある不溶性タンパク質が著しく減少しているので、望ましくない沈殿を除去するためのさらなる分離処理にかける必要がない。余分な沈降物の存在のため沈殿除去処理を経る従来のローヤルゼリー溶液と比較して、本発明のローヤルゼリー溶液は、天然ローヤルゼリーの全エッセンスを保持し、より大きい栄養価を有する。
得られるローヤルゼリー溶液がタンパク質のpIより高いpH値を有する場合、食品及び医薬品規則により許容されるpH調整剤を用いて溶液のpHをタンパク質のpIより低いレベルに低下させ、それにより、溶液を安定な懸濁液の形態に維持することができることは強調されるべき点である。
(例1)
本発明の方法と従来の酵素処理との効果に関する比較
A1、A2、A3、A4、A5、A6及びA7とした7本の試験管を準備し、それぞれにローヤルゼリーを5.8重量%の濃度で含ませた水性ローヤルゼリー懸濁液の一部を入れた。これらの7つの試料をそれぞれ以下の処理にかけた。
A1:ペプシンを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1重量%の量で加え、45℃で6時間反応させた。次に、酸性プロテアーゼ(アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来)を水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1重量%の量で加え、45℃でさらに6時間反応させた。得られた溶液をpH5.5に調整し、80℃で10分間加熱して酵素作用を停止させた。
A2:水性ローヤルゼリー懸濁液をpH8に調整した。次に、中性プロテアーゼ(Prolease、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプロテアーゼ)及びトリプシンを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.05重量%の量で加え、45℃で6時間反応させた。得られた溶液をpH5.5に調整し、80℃で10分間加熱して酵素作用を停止させた。
A3:懸濁液(4.0のpHを有する)に酵素を加えず、55℃に維持した。得られた溶液を3時間後に観察した。
A4:パパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.15重量%の量で加えた。酵素反応を55℃でpH4.1で行った。0.5時間後に、5分間95℃として酵素反応を熱的に停止させた。
A5:1時間の反応時間の後に酵素反応を熱的に停止させたことを除いて、A4と同じ条件下で実験を行った。
A6:3時間の反応時間の後に酵素反応を熱的に停止させたことを除いて、A4と同じ条件下で実験を行った。
A7:5時間の反応時間の後に酵素反応を熱的に停止させたことを除いて、A4と同じ条件下で実験を行った。
試験管A1〜A7の溶液の外観を酵素処理後に観察し記録した結果を図2に示す。A1の溶液は、透明な上層とかなりの沈殿を有する底層とで構成されていることが観察された。A2の溶液は、透明な上層と、乳白色の沈降物を含む不透明で濁った底層とを含んでいた。A3試験管においては、白色沈降物が底部に観察され、一方、溶液の上層は濁っていた。A4の溶液は、A3の溶液と比較して、白色沈降物の量がかなり少なかった。しかし、A4溶液の上層は、依然として濁っていた。A5〜A7中の溶液は、透明に見え、2つの層へ分離しておらず、目に見える沈殿も含んでいない。図2に示した結果は、本発明による方法により製造されたローヤルゼリー溶液、すなわち、A4〜A7のパパイン処理により生成した溶液が層分離することなく安定な懸濁液の形態であったことを示す。A4の溶液がA3の溶液と比較して沈降物の量がかなり少ないという事実は、本発明のローヤルゼリー溶液では、不溶性タンパク質の量が減少しており、それにより、望ましくない沈殿及び層状化現象の発生が排除されたことをさらに証明する。結果はまた、溶液中で発生する沈殿及び層状化という欠点は、単に酵素の添加量を増加させる又は反応時間を長くする(A5〜A7に示すように)ことで排除し得ることを示唆する。安定なクリーム状の懸濁液の形態である本発明により調製したローヤルゼリー溶液とは対照的に、従来の酵素処理により製造されたローヤルゼリー溶液(すなわち、A1及びA2中の溶液)は、透明な上層を有するもののかなりの量の沈降物を含む。
(例2)
溶液の安定性、安定性係数、活性物質及び懸濁液の安定性の試験
本発明の方法により調製したローヤルゼリー溶液B1、B2、B3、B4及びB5の5つの試料を、沈降率、安定性係数、10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量及びその安定性並びに懸濁液の安定性に関し、従来の方法により製造されたローヤルゼリー試料溶液C1、C2、C3、C4及びC5との比較に供した。試料溶液B1〜B5及びC1〜C5をそれぞれ以下の方法により調製した。
試料溶液B1:100gのローヤルゼリーを1kgの最終重量に達するように室温(約25℃)で水と均一に混合して、10重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を得た。水性懸濁液をpH4に調整し、次に60℃に加熱した。水性ローヤルゼリー懸濁液に、10gのパパイン(水性ローヤルゼリー懸濁液の1重量%)を加えて、ローヤルゼリー反応前混合物を得た。パパインにより触媒される酵素反応を60℃で3時間行わせ、次に20分間85℃として停止し、ローヤルゼリー溶液を得た。
試料溶液B2:205gのローヤルゼリーを1kgの最終重量に達するように45℃で水と均一に混合して、20.5重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を得た。水性懸濁液をクエン酸又はクエン酸ナトリウムによりpH4に調整した。水性ローヤルゼリー懸濁液に、10gのブロメライン(水性ローヤルゼリー懸濁液の1重量%)を加えて、ローヤルゼリー反応前混合物を得た。ブロメラインにより触媒される酵素反応を55℃で1時間行わせ、次に5分間にわたり90℃として停止し、ローヤルゼリー溶液を得た。
試料溶液B3:400gのローヤルゼリーを1kgの温水(50℃)と均一に混合して水性ローヤルゼリー懸濁液を得た。水性懸濁液をpH4に調整し、次に50℃に加熱した。水性ローヤルゼリー懸濁液に、ブロメラインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき5重量%の量で加えた。酵素反応を1時間行わせ、次に5分間にわたり80℃として停止し、ローヤルゼリー溶液を得た。
試料溶液B4:5.5重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を、上述の試料溶液B3を調製する方法により調製し、次に60℃に加熱した。水性ローヤルゼリー懸濁液に、パパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.5%の量で加えた。酵素反応を60℃で50分間行わせ、次に10分間にわたり90℃として停止した。
試料溶液B5:58gのローヤルゼリーを5.8重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液に調製し、次に55℃に加熱した。水性ローヤルゼリー懸濁液に、パパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.15%の量で加えた。酵素反応を55℃で45分間行わせ、次に5分間にわたり95℃として停止した。
試料溶液C1:10重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を、上述の試料溶液B1を調製する方法により調製し、次に60℃に加熱した。加水分解を酵素活性の非存在下で3時間行わせて、乳状のローヤルゼリー溶液を得た。溶液をろ過にかけて、沈殿物及び不溶性物質を除去した。
試料溶液C2:ローヤルゼリーを45℃の水と調合して、20.5重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を生成した。水性懸濁液に、エタノールを水性懸濁液の35重量%の量で加えた。加水分解を45℃で1時間行った。
試料溶液C3:6重量%のローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、pH4に調整した。得られた水性懸濁液を水浴中で50℃で1.5時間インキュベートした。
試料溶液C4:10重量%のローヤルゼリーの1kg水性懸濁液を調製し、20重量%水酸化ナトリウム溶液を用いてpH4に調整した。水性懸濁液に、1gのペプシンを加え、酵素反応を45℃で6時間行った。次に、アスペルギルス・オリザエ由来の1gの酸性プロテアーゼを加え、酵素反応を45℃でさらに6時間行った。得られた溶液を20重量%水酸化ナトリウム溶液又は10重量%クエン酸溶液を用いてpH5.5に調整し、次に80℃に10分間加熱して酵素を不活性化した。このように製造したローヤルゼリー溶液は、ろ過にかけなかった場合、透明な上層及び沈殿底層で構成されていた。
試料溶液C5:10重量%のローヤルゼリーの1kg水性懸濁液を調製し、20重量%水酸化ナトリウム溶液を用いてpH8に調整した。水性懸濁液に、0.5gの中性プロテアーゼ(Prolease、枯草菌からのプロテアーゼ)及び0.5gのトリプシンを加え、酵素反応を45℃で6時間行った。得られた溶液を20重量%水酸化ナトリウム溶液又は10重量%クエン酸溶液を用いてpH5.5に調整し、次に80℃に10分間加熱して酵素を不活性化した。このように製造したローヤルゼリー溶液は、ろ過にかけなかった場合、透明な上層及び乳白色の不透明な底層で構成されていた。
(1)沈降率の試験、安定性の評価及び舌を刺すような酸味(Astringent Sour Taste)の官能評価
所与のローヤルゼリー溶液の沈降率は、溶液の長期安定性を示す。ローヤルゼリー溶液中において、より大きいサイズ又はより大きい重量を有する粒子は、重力により試験管の底により容易に沈降する。この尺度は、溶液中の粒子の懸濁安定性を記述するのに有用であった。一般的に、沈降率が低いほど、溶液の安定性は良好である。本明細書では、各溶液の乳化及び粒子の懸濁の程度をさらに評価することを目的として、この試験を使用して、本発明の方法により製造した試料溶液B1〜B5及び従来の方法により調製した試料溶液C1〜C5の各沈降率を測定した。試験中、試料溶液B1〜B5及びC1〜C5をそれぞれ遠心分離管に入れ、25℃未満の温度で4000rpmで10分間遠心分離した。各試料溶液の沈降率を下の式(E1)により計算した。試料溶液の安定性及び舌を刺すような酸味をさらに評価し、安定性評価は、1カ月間の放置後に沈降及び凝集の程度に関して各試料溶液B1〜B5及びC1〜C5の安定性を観察することによって行い、各試料の舌を刺すような酸味は、専門家が採点した。
結果を下の表1に示す。

表1に示す結果は、パパイン又はブロメラインの酵素作用のもとで生成されたローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液B1〜B5)が、本明細書で開示したもの以外の酵素により処理した試料溶液C1〜C5と比較して著しく低い沈降率であったことを示す。試料溶液B1〜B5は、1カ月間にわたり沈殿及び凝集がほとんどないままであり、高度に安定であったことを示唆する。試料溶液C1〜C5と比較して、試料溶液B1〜B5は、ローヤルゼリー飲料に調製した場合、沈殿及び凝集を発生する可能性が低いと考えられる。風味に関しては、本明細書で開示した酵素により触媒される酵素反応により製造したローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液B1〜B5)の特有の舌を刺すような酸味は、試料溶液C1〜C5のそれよりかなり少なく、本発明の方法により製造されたローヤルゼリー溶液が風味に関しても改善されていたことを示す。全般的に、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液は、特に、本明細書で開示した試料溶液B1〜B5が飲料安定性がより高く、舌を刺すような酸味がより少ないという点から、従来の方法により製造されたローヤルゼリー溶液より優れていることが示された。
(2)安定性係数
この尺度は、酸性環境下での所与のローヤルゼリー溶液の安定性を記述するのに主として用いた。すなわち、安定性係数が高いほど、溶液の安定性が良好である。試験中、試料溶液B1〜B5及びC1〜C5を3500rpmで15分間遠心分離した。分光光度計(Beckman Coulterから購入したPARADISM(商標)検出プラットフォーム)を用いて660nmにおける吸光度の測定及び下の式による計算により、各試料溶液の安定性係数を得た。
図3に示す結果は、本発明の酵素反応により製造したローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液B1〜B5)は、本明細書で開示した試料溶液B1〜B5のより高い安定性係数の点から、本発明のもの以外の酵素により処理したローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液C1〜C5)より優れていたことを示す。試料溶液B4は最高の安定性係数を有し、一方試料溶液B5は2番目の安定性係数を有する。これらの結果から、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液は、本明細書で開示した酵素により触媒される酵素反応に起因して改善された安定性を有するという結論に達した。
(3)10−ヒドロキシ−2−デセン酸の含量及びその安定性
10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10−HDA)は、ローヤルゼリー中に存在する生物活性物質であり、ヒトの健康に有益であることが知られており、したがって、所与のローヤルゼリー溶液の栄養価の評価のための重要な指標とみなされる。Agilent 1200シリーズHPLCシステム(Agilent Technologies Inc.)を用いて4.6mmの内径及び250mmの長さを有するC18クロマトグラフィーカラムでの高速液体クロマトグラフィーを実施することにより、各試料溶液B1〜B5及びC1〜C5の10−HDA含有量を測定し、その安定性をさらに評価した。吸光度を210nmの波長で測定し、測定値を標準曲線と比較することにより、10−HDA含量を測定した。
表2に示す結果は、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液B1〜B5)が室温で1カ月間の貯蔵後に天然ローヤルゼリーと実質的に同等の10−HDA含量を有していたことを示す。これらの結果は、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液中には、活性物質10−HDAが、本明細書で開示した方法以外の方法により調製したローヤルゼリー溶液と比較してより高い安定性で効果的に保持されていたことを示す。これと対照的に、試料溶液C1〜C5中の初期の10−HDA含量は、天然ローヤルゼリー中のそれよりわずかに低く、そのような10−HDA含量は、1カ月後の観測では低下する傾向があった。これらの結果のすべては、本発明の方法により調製したローヤルゼリー溶液が安定な10−HDA含量及び優れた栄養品質を有することを示すものである。
(4)粒子の懸濁安定性
試料溶液B1〜B5及びC1〜C5を溶液中に懸濁した粒子のレベルについて試験した。この試験は、溶液から屈折した光の関数として濁度を測定する濁度計(HACH2100Q)を用いて行った。溶液は、多数の小粒子が溶液中に懸濁して入射光線を散乱する場合に高い濁度値(ネフェロメ濁度単位(NTU)により表される)を有する。ローヤルゼリー試料溶液C4及びC5は、濁度測定に供する前にろ過して沈降物を除去した。
表3に示す結果は、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液(すなわち、試料溶液B1〜B5)の濁度値が室温で1カ月間の貯蔵後に実質的に変化しないままであったことを示し、本発明の方法により製造した試料溶液B1〜B5は、望ましくない沈殿及び層状化現象の発生なしに長期間にわたり安定な懸濁液の形態を維持できることが示唆された。これと比較して、ローヤルゼリー試料溶液C1〜C5は、最初は沈殿及び層状化現象の発生のため濁度がより低く、比較的透明であった。しかし、室温での1カ月間の貯蔵後に、試料溶液C1〜C5の濁度がどういうわけかより高くなった。このことから、貯蔵中に試料溶液C1〜C5の上部透明層中で沈降物が連続的に発生して、それが白色の濁り及び濁度の増加を生じさせたことが示唆された。換言すると、試料溶液C1〜C5中のいくつかの物質は溶液中に安定に懸濁されず、このことから、試料溶液C1〜C5中のいくつかの物質は、非常に不安定な状態にあると合理的に推測することができる。結論として、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液中に存在するタンパク質分子は、長期間にわたって溶液中に安定に懸濁させることができる。これらの特性を利用することにより、本発明は、沈殿を除去するために溶液をさらなるろ過又は遠心分離にかける必要なしに、天然ローヤルゼリーに由来するタンパク質物質の完全なプロファイルを含む飲料又は液体調製物にすぐに調製することができるローヤルゼリー溶液を製造可能にする。
(例3)
タンパク質の同定
ローヤルゼリー試料溶液中のタンパク質又はタンパク質断片の質量を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALFI−TOF−MASS;Applied Biosystems Voyager−DE(商標) PR;運転モード:線型、極性:正、電圧:2000V、質量範囲:500〜15000Da)を用いてペプチドマスフィンガープリンティング技術により同定する。酵素非処理ローヤルゼリー試料溶液D1並びに各種酵素反応条件下で製造したローヤルゼリー試料溶液D2〜D7を、各溶液に含まれるタンパク質を同定して特徴付けた。試料溶液D1〜D7は、それぞれ以下の方法により調製した。
試料溶液D1:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を酵素処理にかけずに調製した。
試料溶液D2:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにパパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で30分間行った。
試料溶液D3:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにパパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で3時間行った。
試料溶液D4:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにパパインを水性ローヤルゼリーの懸濁液の重量に基づき1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で30分間行った。
試料溶液D5:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにパパインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で3時間行った。
試料溶液D6:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにブロメラインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で1時間行った。
試料溶液D7:6重量%ローヤルゼリーの水性懸濁液を調製し、それにブロメラインを水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき1重量%の量で加えた。酵素反応を50〜55℃の温度で1時間行った。
上述の試料溶液D1〜D7を脱塩処理し、次に、MALFI−TOF MAS(Applied Biosystems、Voyager−DE(商標) PR)を用いてペプチドマスフィンガープリンティング技術により分析し、それにより、各溶液の質量/電荷の特徴を同定した。D1〜D7の質量スペクトルの特徴をそれぞれ図4〜10に示す。
図4と図5〜10とに示す特徴的な質量スペクトルの比較により、酵素で処理したローヤルゼリー溶液は、1000〜1900m/z、2000〜2900m/z、3100〜3600m/z、4200〜4500m/z、6000〜6400m/zの範囲内に位置する質量スペクトルタンパク質ピークに関して酵素非処理ローヤルゼリー溶液と著しく異なるものであった。これは、これらの範囲内に位置するピークシグナルが、酵素的切断により発生したタンパク質分子の質量に割り当てられることを示唆した。ペプチドマスフィンガープリンティング技術により、本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液は、1016m/z±0.5%、1214m/z±0.5%、2016m/z±0.5%、2032m/z±0.5%、3477m/z±0.5%、6030m/z±0.5%、6314m/z±0.5%、7413±0.5%又は8640m/z±0.5%にペプチドマスフィンガープリンティングを有することによって特徴づけられた。すなわち、本明細書で開示した酵素処理により製造したローヤルゼリー溶液は、上述のペプチドマスフィンガープリンティングによって同定されたタンパク質分子を含んでいたこととなる。
以上の説明によれば、本明細書で開示したローヤルゼリー溶液を製造する方法は、下記の効果及び利点を備えることによって意図した目的を確実に達成し得る。
1.上の例で明確に実証されたように、意図した結果を達成するために2種又はそれ以上の異なる種類の酵素を必要とする従来の技術(台湾特許第208043号及び特願平2−333641に開示されているものなど)と異なり、本明細書で開示した発明は、天然ローヤルゼリーを高い成分安定性を有する安定な懸濁液の形態で存在するローヤルゼリー溶液に成功裏に変換するのにたった1種の酵素を用いることを必要とする。このように製造されたローヤルゼリー溶液は、安定な品質を有し、したがって、天然ローヤルゼリーの全エッセンスを含むローヤルゼリー製品にするのに適している。本発明は、1種類の酵素を使用することを必要とし、追加のろ過又は遠心分離プロセスを実施する必要がないので、原料コストが低く操作手順が簡略化されるという利点を有する。これらの利点は、このように製造された製品の安定な品質と相まって、本明細書で開示した発明を費用効果が高く、環境に優しいものとする。
2.本発明の方法により製造したローヤルゼリー溶液は、天然ローヤルゼリーの全エッセンスを含むローヤルゼリー製品にするのに適するだけでなく、溶液安定性、安定性係数、活性物質の含有量及び安定性並びに長期懸濁液安定性の点で高い安定性も示す。これらのすべては、本明細書で開示したローヤルゼリー溶液が栄養素の完全なプロファイルを備えているだけでなく、安定な製品品質も示すことを示している。
本発明を最も実用的且つ好ましい実施形態とみなされるものと関連して説明したが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、最も広い解釈による本質及び範囲に含まれる様々な改変並びに均等の改変を網羅することを意図するものと理解される。

Claims (7)

  1. 安定で、乳白色で、層分離しないローヤルゼリー含有飲料又はそのための液体原料の製造方法であって、
    水性ローヤルゼリー懸濁液を3〜5のpHに調整し、該水性ローヤルゼリー懸濁液を、20℃〜70℃で、0.5〜5時間、システインプロテアーゼ活性を有する酵素により触媒される酵素反応に供するステップから本質的になり、該酵素は、該水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき、0.05〜10重量%の範囲の量で含有され、該酵素は、パパイン、ブロメライン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、製造方法。
  2. 前記酵素を、前記水性ローヤルゼリー懸濁液の重量に基づき0.1〜5重量%の量で加える、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記水性ローヤルゼリー懸濁液のpHを調整する前に、ローヤルゼリー原料を水と混合して、0.1〜40重量%のローヤルゼリー原料を含む水性ローヤルゼリー懸濁液を得るステップをさらに含む、請求項に記載の製造方法。
  4. 酵素反応に供した後に、70℃〜110℃で又は2未満若しくは8を超えるpHで酵素反応を停止させるステップをさらに含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ローヤルゼリー含有飲料又はそのための液体原料は、1214m/z±0.5%及び/又は2032m/z±0.5%にペプチドマスフィンガープリンティングを有する、請求項に記載の方法
  6. 前記ローヤルゼリー含有飲料又はそのための液体原料は、1016m/z±0.5%、2016m/z±0.5%、3477m/z±0.5%、6030m/z±0.5%、6314m/z±0.5%、7413m/z±0.5%又は8640m/z±0.5%におけるペプチドマスフィンガープリンティングをさらに含む、請求項に記載の方法
  7. 前記ローヤルゼリー含有飲料又はそのための液体原料は、3〜5のpHを有する、請求項に記載の方法
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