以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1及び図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
プリンタ1は、共に直方体形状で且つサイズが略等しい上筐体1a及び下筐体1bを有する。上筐体1aは下面が開口し、下筐体1bは上面が開口している。上筐体1aが下筐体1b上に重なり、互いの開口面を封止することで、プリンタ1内部の空間が画定される(図2参照)。
上筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1a,1bにより画定される空間には、給紙ユニット1cから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される搬送経路が形成されている。
上筐体1aは、その下端の一辺であるヒンジ部1hを中心として、下筐体1bに対して回動可能である。当該回動によって、上筐体1aは、下筐体1bに近接した近接位置(図2)と、近接位置のときよりも下筐体1bから離隔した離隔位置(図1)とを取り得る。上筐体1aは、水平面に対して所定角度(例えば略29°)まで開くことができ且つこれ以上開かないようにストッパ等で規制される。上筐体1aが離隔位置にあるとき、搬送経路の一部が露出され、上筐体1aと下筐体1bとの間にユーザの作業空間が確保される。ユーザは、当該作業空間を利用して、ヘッド10a,10bの汚れ除去、ジャム処理(搬送経路における用紙Pの詰まりを解消する作業)等を手動で行うことができる。
上筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、カートリッジ2及びロック機構70が設けられている。カートリッジ2は、前処理液を収容する前処理液収容部、ブラックインクを収容するインク収容部、加湿液を収容する加湿液収容部、及び、これら3つの収容部を収容する筐体を含む。前処理液は、インク中の顔料色素を凝集させることにより、インクの滲みや裏抜けを防止する機能、インクの発色性や速乾性を向上させる機能等を有する液体である。前処理液は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有してよい。加湿液は、純水、防腐剤を添加した水等であってよい。前処理液収容部、インク収容部、及び加湿液収容部はそれぞれ、チューブ等を介して、ヘッド10a、ヘッド10b、及びタンク51(図9参照)と連通している。各収容部内の液体は、コントローラ1pによる制御の下、適時、ポンプ2Pa,2Pb,2Pc(図10参照)の駆動により、ヘッド10a,10b及びタンク51のそれぞれに供給される。ロック機構70は、近接位置にある上筐体1aの移動を規制する。下筐体1bの正面には、上筐体1aの正面を覆う開閉可能な蓋1dが設けられている。蓋1dを開放することによってロック機構70が露出される。ロック機構70の詳細については後述する。
上筐体1aは、ヘッド10a,10b、コントローラ1p、搬送ユニット20の一部(図2参照)等を保持している。下筐体1bは、対向部材42、搬送ユニット20の残りの一部、給紙ユニット1c、ヘッド10a,10b毎に設けられたワイパユニット36(図8参照)、加湿ユニット50のタンク51(図9参照)等を保持している。
ヘッド10a,10bは、互いに同じ構造であり、主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。記録(画像形成)に際して、ヘッド10a,10bの下面(吐出面10x)からそれぞれ前処理液及びブラックインク(以下、これらを「液体」と総称する場合がある。)が吐出される。ヘッド10a,10bは、副走査方向(主走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に所定ピッチで並び、ホルダ3を介して上筐体1aに支持されている。ホルダ3はさらに、ヘッド10a,10b毎に設けられた環状部材41を支持している。環状部材41は、平面視で吐出面10xの外周を囲む環状に形成された部材である。
対向部材42は、各ヘッド10a,10bの鉛直方向下方(以下、「鉛直方向下方」を単に「下方」と称す。)に設けられている。対向部材42は、環状部材41よりも一回り大きい矩形状の板であり、ガラスや金属(例えばSUS)等の、水分を吸収しない又は吸収し難い材料から構成されている。環状部材41及び対向部材42が、キャップ機構40を構成する。キャップ機構40の詳細については後述する。
搬送ユニット20は、支持機構5、ローラ対22,23,24,25,26,27、ガイド29a,29b,29c,29d,29e、及び、中間ローラ21を有する。
搬送ユニット20の構成要素のうち、中間ローラ21、ローラ対24の上側ローラ24a、ローラ対26,27、及び、ガイド29d,29eは、上筐体1aに保持されている。支持機構5、ローラ対22,23,25、ローラ対24の下側ローラ24b、及び、ガイド29a,29b,29cは、下筐体1bに保持されている。
支持機構5は、各ヘッド10a,10bの下方に設けられている。支持機構5は、2つのプラテン6a,6bから構成されている。プラテン6a,6bは、軸7a,7bを中心としてそれぞれ回動可能である。プラテン6a,6bは、コントローラ1pによる制御の下、プラテン回動モータ5M(図10参照)の駆動により回動し、支持面形成位置(図1)と開放位置(図7(b))とを取り得る。支持面形成位置では、プラテン6a,6bの先端同士が突き合わされ、これらプラテン6a,6bによって、吐出面10xと対向する位置において用紙Pを支持する支持面5aが形成されている。支持面5aは、全体として平面状である。開放位置では、プラテン6a,6bが下方に垂れ下がっている。プラテン6a,6bは、記録時は支持面形成位置、メンテナンス時は開放位置に配置される。
メンテナンスとは、吐出口14a内の液体の状態を回復又は維持するための動作であり、キャッピング、ワイピング、液体排出動作(フラッシング及びパージを含む。)、加湿動作等をいう。これら各動作は、コントローラ1pが記録指令を受信していない期間中、ユーザが指示した場合等に、行われる。これら各動作の詳細については後述する。
ローラ対22〜27は、給紙ユニット1cから排紙部31に向かう搬送経路を形成するよう、搬送方向上流側からこの順で配置されている。ローラ対23〜25の下側ローラ23b,24b,25b、及び、各ローラ対26,27の一方のローラは、搬送モータ20M(図10参照)に接続されており、コントローラ1pによる制御の下、搬送モータ20Mの駆動により回転する駆動ローラである。ローラ対23〜25の上側ローラ23a,24a,25a、及び、各ローラ対26,27の他方のローラは、従動ローラである。
ガイド29a〜29eは、搬送経路を形成するよう、搬送方向上流側からこの順で、給紙ユニット1cとローラ対22との間、各ローラ対間等に、配置されている。各ガイド29a〜29eは、互いに面方向に離隔配置された一対の板からなる。
中間ローラ21は、ヘッド10aとローラ対24との間の、搬送経路に対して上側の位置に配置されている。
給紙ユニット1cは、給紙トレイ1c1及び給紙ローラ1c2を有する。このうち給紙トレイ1c1が下筐体1bに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ1c1は、上面が開口した箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ1c2は、コントローラ1pによる制御の下、給紙モータ1cM(図10参照)の駆動により回転し、給紙トレイ1c1内で最も鉛直方向上方(以下、「鉛直方向上方」を単に「上方」と称す。)にある用紙Pを送り出す。
コントローラ1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)、時間を計測する内蔵タイマ等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。ASICでは、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/Fは、外部装置とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。なお、ASICを含まず、CPUが実行するプログラム等により画像データの書き換え、並び替え等が処理されてもよい。
コントローラ1pは、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期した液体吐出動作等を制御する。給紙ユニット1cから送り出された用紙Pは、ローラ対22〜27に挟持されつつ、ガイド29a〜29eの板間を通って、搬送方向に搬送される。用紙Pが支持面5a上に支持されつつヘッド10a,10bの真下を順次通過する際に、コントローラ1pの制御により各ヘッド10a,10bが駆動し、各吐出面10xの吐出口14a(図6参照)から用紙Pの表面に向けて液体が吐出されることで、用紙P上に画像が形成される。吐出口14aからの液体吐出動作は、用紙Pの先端を検出する用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後上方に搬送され、上筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31に排出される。
次いで、図3を参照し、ロック機構70の詳細について説明する。
ロック機構70は、円柱状の回転部材71、2つの連動部材73a,73b、2つの揺動部材74a,74b、2つのバネ76a,76b、及び、2つの固定部材75a,75bを含む。連動部材73a,73bの長手方向一端はそれぞれ回転部材71の周面に連結されている。揺動部材74a,74bにはそれぞれ、回転部材71aから離れる方向に開口する凹部74c,74dが形成されている。固定部材75a,75bには、凹部74c,74dのそれぞれに挿入可能な軸部材75c,75dが設けられている。揺動部材74a,74bの揺動軸は上筐体1aに固定されている。バネ76a,76bは、回転部材71aに近い側の一端がそれぞれ上筐体1aに固定されている。固定部材75a,75bは、下筐体1bにそれぞれ固定されている。
回転部材71の正面には、棒状のツマミ72が固定されている。ツマミ72は、回転部材71と一体に回転する。バネ76a,76bはそれぞれ揺動部材74a,74bの上端を回転部材71に近づく方向に付勢している。これにより、外力が付加されない状況において、ロック機構70の各部は、図3(a)に示すようにツマミ72が鉛直方向に延在した状態で、静止している。このとき、凹部74c,74dは軸部材75c,75dにそれぞれ係合している。この係合によって、近接位置にある上筐体1aが離隔位置に向かって回動しないように、上筐体1aの移動が規制されている。ユーザがバネ76a,76bの付勢力に抗してツマミ72を時計回りに回転させると、図3(b)に示すように、凹部74c,74dが軸部材75c,75dから外れる。これにより、上筐体1aの移動規制が解除される。上筐体1aが離隔位置から近接位置に戻されると、凹部74c,74dと軸部材75c,75dとの係合が復帰される。これにより、再びロック機構70によって上筐体1aの移動が規制される。
次いで、図4〜図6を参照し、ヘッド10a,10bの構成について詳細に説明する。
各ヘッド10a,10bは、上下に積層されたリザーバユニット及び流路ユニット12、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC(平型柔軟基板)19等を有する。リザーバユニットには、カートリッジ2の対応する収容部から供給された液体を一時的に貯留するリザーバを含む流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12yから下面(吐出面10x)の各吐出口14aに至る流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
リザーバユニットの下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図4に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yと対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図6参照)を互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12の流路は、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別流路14を含む。個別流路14は、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りであるアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10x)における各アクチュエータユニット17の接着領域と対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
なお、図5では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
アクチュエータユニット17は、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、当該アクチュエータユニット17の接着領域に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、圧電層、振動板、共通電極、及び個別電極から構成されている。上記各部材のうち、圧電層、振動板、及び共通電極は、アクチュエータユニット17の外形を画定するサイズの台形形状を有する。個別電極は、圧力室16毎に設けられており、圧電層の上面において各圧力室16と対向して配置されている。振動板は、共通電極と流路ユニット12との間に配置されている。アクチュエータユニット17の各個別電極に対応する部分が圧電型アクチュエータとして機能する。各アクチュエータは、FPC19を介した電圧の印加によって独立して変形可能であり、対応する圧力室16の容積を変化させ、圧力室16内の液体にエネルギーを付与する。これにより、吐出口14aから液体が吐出される。
FPC19は、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有し、その途中部にドライバICが実装されている。FPC19は、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10a,10bの制御基板に固定されている。制御基板は、コントローラ1pから入力された信号を調整し、当該調整した信号をFPC19の配線を介してドライバICに出力する。ドライバICは、制御基板から入力された信号を駆動信号に変換し、当該駆動信号をFPC19の配線を介してアクチュエータユニット17の各電極に伝達する。
次いで、図7〜図9を参照し、キャップ機構40の構成、加湿ユニット50の構成、ワイパユニット36の構成、メンテナンスに係る各動作等について説明する。
環状部材41は、複数のギア43(図9参照)と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、環状部材昇降モータ41M(図10参照)の駆動に伴いギア43が回転することにより、昇降する。
対向部材42は、対向部材昇降モータ42M(図10参照)と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、対向部材昇降モータ42Mの駆動により、昇降する。対向部材42は、第1位置、第2位置、第3位置、及び第4位置のいずれかに配置される(図7参照)。第1位置が最も上方にあり、第2位置が二番目に上方にあり、第3位置が三番目に上方にあり、第4位置が最も下方にある。
対向部材42は、キャッピング又はフラッシングが行われるとき第1位置に配置され、対向面(対向部材42の表面であり、プラテン6a,6bが開放位置にあるときに吐出面10xと対向する面)42aのワイピングが行われるとき第2位置に配置され、吐出面10xのワイピング又はパージが行われるとき第3位置に配置され、記録時又は待機時は第4位置に配置される。対向部材42が第1位置に配置されているときの対向面42aと吐出面10xとの離隔距離は、記録時の支持面5aと吐出面10xとの離隔距離に等しい。
キャップ機構40は、対応するヘッド10a,10bの吐出面10xと対向する吐出空間V1を吐出空間V1の周囲の空間V2に対して閉鎖するキャッピング状態(図7(b)及び図9参照)と、対応するヘッド10a,10bの吐出空間V1を吐出空間V1の周囲の空間V2に対して開放するアンキャッピング状態(図2及び図7(a)参照)とを取り得る。キャッピングとは、キャップ機構40をキャッピング状態に保持することをいう。コントローラ1pは、キャップ機構40をキャッピング状態にする場合、図7(b)に示すように、支持機構5を開放位置に且つ対向部材42を第1位置に配置した状態で、環状部材41を下降させる。これにより、環状部材41の先端41aが対向面42aに当接することによって、対向面42aと吐出面10xとの間に、閉鎖された吐出空間V1が形成される。キャッピングは、記録指令が所定時間以上受信されなかった場合、プリンタ1のユーザによりプリンタ1の電源OFFボタン1s(図10参照)が押下された後プリンタ1の電源がOFFになる前等に行われる。キャッピングにより、吐出空間V1の乾燥が防止され、吐出口14a内の液体の増粘が抑制される。
フラッシングは、記録データ(画像データ)とは異なるフラッシングデータに基づいてアクチュエータユニット17を駆動させることにより、吐出口14aから液体を排出させる動作をいう。パージは、ポンプ2Pa,2Pb(図10参照)の駆動によってヘッド10a,10bに液体を送り込み、ヘッド10a,10b内の液体に圧力を付与することにより、吐出口14aから液体を排出させる動作をいう。フラッシング及びパージは、吐出口14aから所定時間以上液体が吐出されなかった場合等に行われる(上記所定時間はフラッシングとパージとで異なってよい)。フラッシングやパージにより、吐出口14a内の増粘した液体や異物(粉塵、気泡等)混じりの液体が排出され、吐出性能が回復する。
コントローラ1pは、フラッシングを行う場合、支持機構5を開放位置に且つ対向部材42を第1位置に配置し、環状部材41の先端41aが吐出面10xと同じ高さ又は吐出面10xよりも上方にある状態で、ヘッド10a,10bのアクチュエータユニット17を駆動させる。コントローラ1pは、パージを行う場合、支持機構5を開放位置に且つ対向部材42を第3位置に配置し、環状部材41の先端41aが吐出面10xと同じ高さ又は吐出面10xよりも上方にある状態で、ポンプ2Pa,2Pbを駆動させる。フラッシングやパージにより排出された液体は、対向面42a上に受容される。
ワイピングは、ワイパを対象物と当接させつつ当該対象物に対して相対的に移動させることにより対象物上の異物を除去する動作をいう。ワイピングは、ワイパユニット36(図8参照)を用いて行われ、吐出面10xのワイピングと、対向面42aのワイピングとがある。例えば、吐出面10xのワイピングは、パージ完了後に行われ、対向面42aのワイピングは、パージ完了後の吐出面10xのワイピングの後、及び、フラッシング完了後に行われる。
ワイパユニット36は、2つのワイパ36a,36b、及び、ワイパ36a,36bを支持する基部36cを含む。ワイパ36a,36bは、共に弾性体(ゴム等)からなる板状の部材であり、基部36cの上面及び下面から上方及び下方にそれぞれ突出している。副走査方向に関して、ワイパ36aは吐出面10xの長さより若干長く、ワイパ36bは、対向面42aの長さより若干長い。基部36cは、ワイパ駆動モータ36M(図10参照)と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、ワイパ駆動モータ36Mの駆動により、ガイド孔36gに沿って主走査方向に往復動可能である。図8におけるヘッド10a,10bの左方(図8(a)で基部36cが配置されている位置)が、基部36cのホームポジションである。
コントローラ1pは、吐出面10xのワイピングを行う場合、図8(b)に示すように、ヘッド昇降モータ10M(図10参照)の駆動によりホルダ3ごとヘッド10a,10bを上昇させる。そしてコントローラ1pは、支持機構5を開放位置に且つ対向部材42を第3位置に配置し、環状部材41の先端41aが吐出面10xと同じ高さ又は吐出面10xよりも上方にある状態で、ワイパ駆動モータ36Mを駆動させる。このとき、基部36cがホームポジションから図8(b)において右側に移動し、ワイパ36aの先端近傍が吐出面10xと当接しつつ吐出面10xに対して相対的に移動する。これにより、吐出面10x上の異物が除去される。コントローラ1pは、吐出面10xのワイピング後に続いて対向面42aのワイピングを行う場合、基部36cを図8(b)におけるヘッド10a,10bの右方で待機させる。
コントローラ1pは、対向面42aのワイピングを行う場合、図8(c)に示すように、ヘッド昇降モータ10M(図10参照)の駆動によりホルダ3ごとヘッド10a,10bを上昇させ、図8(b)に示す吐出面10xのワイピングのときよりも上方にヘッド10a,10bを配置する。そしてコントローラ1pは、支持機構5を開放位置に且つ対向部材42を第2位置に配置し、環状部材41の先端41aが吐出面10xと同じ高さ又は吐出面10xよりも上方にある状態で、ワイパ駆動モータ36Mを駆動させる。このとき、ワイパ36bの先端近傍が対向面42aと当接しつつ対向面42aに対して相対的に移動する。これにより、対向面42a上の異物が除去される。
コントローラ1pは、吐出面10xのワイピング後に続いて対向面42aのワイピングを行う場合、基部36cを、図8(c)に示すように左側に移動させ、ホームポジションで停止させる。当該移動の間に、対向面42aのワイピングが行われる。一方、コントローラ1pは、上記以外の場合、基部36cを、ホームポジションから図8(c)において右側に移動させ、ヘッド10a,10bの右方で停止させる。当該移動の間に、対向面42aのワイピングが行われる。そしてコントローラ1pは、対向部材42を第4位置に移動させた後、基部36cを、図8(c)において左側に移動させ、ホームポジションで停止させる。
加湿動作は、キャップ機構40をキャッピング状態に維持しつつ、加湿ユニット50の加湿ポンプ50P(図9参照)を駆動させることにより、吐出空間V1を加湿する動作をいう。加湿動作は、例えば、キャッピングが継続する期間中に定期的に行われる。加湿動作により、吐出空間V1内に加湿された空気が供給されることで、吐出口14a内の液体の増粘が抑制される。
加湿ユニット50は、加湿液を貯留するタンク51、2本のチューブ52a、2本のチューブ52c、加湿ポンプ50P、及び液体保持部59を含む。2本のチューブ52aはそれぞれ、タンク51とヘッド10a,10bのジョイント48とを接続すると共に、内部に流入路52afを画定している。流入路52afは、キャップ機構40がキャッピング状態にあるときに、タンク51内の空間51Vと吐出空間V1とを連通させると共に、吐出空間V1から空間51Vに流入する空気が流れる。2本のチューブ52cはそれぞれ、タンク51とヘッド10a,10bのジョイント49とを接続すると共に、内部に流出路52cfを画定している。流出路52cfは、キャップ機構40がキャッピング状態にあるときに、空間51Vと吐出空間V1とを連通させると共に、空間51Vから吐出空間V1に流出する空気が流れる。2つのジョイント48,49は、ヘッド10a,10b毎に設けられており、対応するヘッド10a,10bの主走査方向一端及び他端のそれぞれに配置されている。ジョイント48,49は、環状部材41に取り付けられていると共に、略円筒状であり、その内部空間を介して吐出空間V1と外部とを連通させる。加湿ポンプ50Pは、各チューブ52cの途中部に設けられている。液体保持部59は、各チューブ52aの途中部に設けられており、液体を保持可能なスポンジ59aを内部に有する。スポンジ59aは、チューブ52aの取り付け口よりも下方に設けられている。
タンク51の上面には、上方に突出した円筒状の突起51a,51b,51cが設けられている。2つの突起51aの先端にはそれぞれチューブ52aが取り付けられ、2つの突起51cの先端にはそれぞれチューブ52cが取り付けられている。突起51a,51cの基端はそれぞれ、タンク51の上壁に形成された貫通孔を介して、空間51Vに開口している。突起51bは、タンク51内において下方に突出した円筒部材51b2と接続されている。突起51b及び円筒部材51b2の内部空間は、タンク51の上壁に形成された貫通孔を介して連通しており、空間51Vと大気とを連通させる大気連通路51bfを形成している。
各チューブ52aにおける突起51aの近傍に、流入路52afを開閉するバルブ52avが設けられている。各チューブ52cにおける突起51cの近傍に、流出路52cfを開閉するバルブ52cvが設けられている。突起51bの上端近傍に、大気連通路51bfを開閉するバルブ51bvが設けられている。これらバルブ51bv,52av,52cvは、コントローラ1pの制御により開閉される。
コントローラ1pは、加湿動作を行う場合、キャップ機構40をキャッピング状態とし、バルブ51bv,52av,52cvを開放した状態で、加湿ポンプ50Pを駆動させる。すると、吐出空間V1内の空気が、ジョイント48の下面の開口48xから回収され、チューブ52a内の流入路52afを通り、空間51Vに流入する。当該流入した空気は、空間51Vに貯留された加湿液によって加湿(自然蒸発による加湿)された後、チューブ52c内の流出路52cfを通り、ジョイント49の下面の開口49xから吐出空間V1に供給される。図9において、黒塗りの矢印は加湿前の空気の流れを示し、白抜きの矢印は加湿後の空気の流れを示す。
また、コントローラ1pは、加湿ポンプ50Pによる空気の流れを反転させ、吐出空間V1から空間51Vに流入する空気が流出路52cfを流れ且つ空間51Vから吐出空間V1に流出する空気が流入路52afを流れるように、加湿ポンプ50Pを制御可能である。
タンク51には、加湿液の水位を検知する水位センサ58が設けられている。水位センサ58は、フロート58f、及び、フロート58fに固定された磁石58mを検知する磁気センサ(図示略)を含む。フロート58fは、タンク51の側壁に固定された軸58xを中心として揺動可能であり、内部に空気が封入されているので加湿液の液面に追随して揺動する。磁気センサは、磁石58mの位置がタンク51の最大水位を示す位置にあるか否かを検知する。コントローラ1pは、加湿動作を行う前に、水位センサ58からの検知信号に基づいて、空間51Vに貯留された加湿液が最大水位でなければ、ポンプ2Pc(図10参照)の駆動によりカートリッジ2の加湿液収容部から空間51Vに加湿液を供給し、空間51Vに貯留された加湿液が最大水位(図9に示す液面)になるよう制御する。
次いで、図11を参照し、コントローラ1pが実行する加湿ユニット50の初期化に係る制御について説明する。時間のカウントは内蔵タイマ等を用いて行なわれる。
コントローラ1pは、プリンタ1の電源がONになった後、先ず、加湿ユニット50の初期化信号を受信したか否かを判断する(S1)。プリンタ1の電源は、プリンタ1のユーザにより電源ONボタン1r(図10参照)が押下されることに応じて、ONになる。また、プリンタ1には、引っ越し等でプリンタ1を移動させる必要がある場合に押下される装置移動ボタン1qが設けられている(図10参照)。例えばプリンタ1の電源OFF前に、ユーザが装置移動ボタン1qを押下した場合、コントローラ1pのRAMに、装置移動ボタン1qが押下されたという情報が記憶される。S1において、コントローラ1pは、RAMに当該情報が記憶されている場合に初期化信号を受信したと判断する。S1の後、上記情報はRAMから消去される。コントローラ1pはまた、S1において、前回の初期化信号の受信から所定時間が経過している場合にも、初期化信号を受信したと判断する。
加湿ユニット50の初期化信号を受信しなかった場合(S1:NO)、コントローラ1pは、当該ルーチンを終了する。
加湿ユニット50の初期化信号を受信した場合(S1:YES)、コントローラ1pは、アンキャッピング状態となるようにキャップ機構40を制御する(S2)。キャップ機構40は、プリンタ1の電源OFF前にキャッピング状態とされ、プリンタ1の電源がONになった時点でキャッピング状態にある。またこのとき、対向部材42は第1位置に配置されており、吐出面10xは対向面42aと対向した状態にある。
S2の後、コントローラ1pは、大気連通路51bfが閉鎖され且つ流入路52af及び流出路52cfが開放されるように、バルブ51bv,52av,52cvを制御する(S3)。大気連通路51bf、流入路52af、及び流出路52cfは、プリンタ1の電源OFF前に全て開放又は閉鎖され、プリンタ1の電源OFF中にこの状態が維持されてよい。前者の場合(全て開放される場合)、吐出空間V1の圧力を大気圧に維持することができる。後者の場合(全て閉鎖される場合)、タンク51内で蒸発した加湿がタンク51外に漏れることによりタンク51内の加湿液が減少することを防止することができる。
S3の後、コントローラ1pは、吐出面10xが対向面42aと対向した状態で、キャップ機構40をアンキャッピング状態に維持しつつ、加湿ポンプ50Pを所定時間駆動させる(S4)。仮に、ユーザがプリンタ1を移動させる際にプリンタ1が傾倒することによってキャップ機構40内に液体が漏出し、キャップ機構40内から流出路52cf及び流入路52afの両方に液体が侵入していたとしても、S4の処理により、流出路52cf(例えばジョイント49近傍)に侵入した液体が開口49xから排出され、流入路52af(例えばジョイント48近傍)に侵入した液体が液体保持部59内のスポンジ59aに保持される。開口49xから排出された液体は、対向面42a上に受容される。
S4の後、コントローラ1pは、吐出面10xが対向面42aと対向した状態で、パージが行われるようにポンプ2Pa,2Pbを制御する(S5:パージステップ)。
S5の後、コントローラ1pは、吐出面10xのワイピングが行われるようにワイパ駆動モータ36Mを制御する(S6:吐出面ワインピングステップ)。S6の後、コントローラ1pは、対向面42aのワイピングが行われるようにワイパ駆動モータ36Mを制御し(S7:対向面ワインピングステップ)、その後当該ルーチンを終了する。
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、キャップ機構40をアンキャッピング状態に維持しつつ加湿ポンプ50Pを駆動させることにより、プリンタ1の傾倒によってキャップ機構40内に液体が漏出した場合にも、キャップ機構40内に漏出した液体をタンク51に到達させることなく排出することができる。したがって、タンク51の故障等を抑制することができる。
プリンタ1の傾倒によってキャップ機構40内に漏出した液体が、流出路52cfに侵入することが考えられる。この場合に逆流が生じると、液体がタンク51に到達し得る。しかし本実施形態によれば、流出路52cfに加湿ポンプ50Pが設けられているため、加湿ポンプ50Pが設けられた部分において流出路52cfに侵入した液体の移動が阻止され、液体がタンク51に到達するのを抑制することができる。
プリンタ1の傾倒によってキャップ機構40内に漏出した液体が、流入路52afに侵入することが考えられる。この場合において、キャップ機構40をアンキャッピング状態に維持しつつ加湿ポンプ50Pを駆動させると、流入路52afに侵入した液体がタンク51に到達し得る。しかし本実施形態によれば、流入路52afにスポンジ59aが設けられているため、スポンジ59aが設けられた部分において流入路52afに侵入した液体の移動が阻止され、液体がタンク51に到達するのを抑制することができる。
S4で開口49xから排出された液体が対向面42a上に受容された後、さらにパージによって吐出口14a内の液体の状態を回復させると共に対向面42a上に液体を排出する(S5)。その後、吐出面10x及び対向面42aのワイピングを行う(S6,S7)。このように、本実施形態によれば、加湿ユニット50の初期化に加え、吐出口14a内の液体の状態の回復を行い、さらに吐出面10x及び対向面42a上の異物を除去しておくことで、その後の記録指令に迅速に対応することができる。
なお、キャップ機構40内に漏出した液体が吐出面10xに触れず、吐出面10x上に液体が付着していない場合に、S6の前にS5を行わないと、ワイパ36aとの摩擦によって吐出面10xの吐出口14a周縁が損傷し得る。本実施形態では、S6の前にS5を行い、事前に吐出面10x上に液体を付着させることで、上記のような問題を軽減することができる。
ブラックインク及び前処理液がタンク51に到達した場合、タンク51内においてインクの成分が凝集又は析出してしまい、タンク51の故障等が特に生じ易くなる。しかし本実施形態によれば、タンク51にこれら液体が到達するのを抑制することができるため、上記のような現象を抑制することができる。
続いて、図12を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。本実施形態のプリンタは、液体保持部59が省略されている点、及び、加湿ユニット50の初期化に係る制御内容を除き、第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成を有する。第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
本実施形態において、コントローラ1pは、プリンタ1の電源がONになった後、先ず、S1と同様、加湿ユニット50の初期化信号を受信したか否かを判断する(S11)。加湿ユニット50の初期化信号を受信しなかった場合(S11:NO)、コントローラ1pは、当該ルーチンを終了する。加湿ユニット50の初期化信号を受信した場合(S11:YES)、コントローラ1pは、S2と同様、アンキャッピング状態となるようにキャップ機構40を制御する(S12)。
S12の後、コントローラ1pは、大気連通路51bf及び流出路52cfが開放され且つ流入路52afが閉鎖されるように、バルブ51bv,52av,52cvを制御する(S13)。S13の後、コントローラ1pは、S4と同様、吐出面10xが対向面42aと対向した状態で、キャップ機構40をアンキャッピング状態に維持しつつ、加湿ポンプ50Pを所定時間駆動させる(S14)。仮に、ユーザがプリンタ1を移動させる際にプリンタ1が傾倒することによってキャップ機構40内に液体が漏出し、キャップ機構40内から流出路52cf及び流入路52afの両方に液体が侵入していたとしても、S14の処理により、流出路52cf(例えばジョイント49近傍)に侵入した液体が、開口49xから排出され、対向面42a上に受容される。流入路52af(例えばジョイント48近傍)に侵入した液体は、流入路52afが閉鎖されているため、バルブ52avの部分において移動が阻止される。
S14の後、コントローラ1pは、S3と同様、大気連通路51bfが閉鎖され且つ流入路52af及び流出路52cfが開放されるように、バルブ51bv,52av,52cvを制御する(S15)。S15の後、コントローラ1pは、吐出面10xが対向面42aと対向した状態で、キャップ機構40をアンキャッピング状態に維持しつつ、加湿ポンプ50Pを逆方向に所定時間駆動させる(S16)。加湿ポンプ50Pを逆方向に駆動させると、空気の流れが反転し、吐出空間V1から空間51Vに流入する空気が流出路52cfを流れ且つ空間51Vから吐出空間V1に流出する空気が流入路52afを流れる。このとき、流入路52af(例えばジョイント48近傍)に侵入した液体が、開口48xから排出され、対向面42a上に受容される。
S16の後、コントローラ1pは、S5と同様、吐出面10xが対向面42aと対向した状態で、パージが行われるようにポンプ2Pa,2Pbを制御する(S17:パージステップ)。S17の後、コントローラ1pは、S6と同様、吐出面10xのワイピングが行われるようにワイパ駆動モータ36Mを制御する(S18:吐出面ワインピングステップ)。S18の後、コントローラ1pは、S7と同様、対向面42aのワイピングが行われるようにワイパ駆動モータ36Mを制御し(S19:対向面ワインピングステップ)、その後当該ルーチンを終了する。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタは、第1実施形態と同じ構成によって得られる効果に加え、以下のような効果を奏する。即ち、加湿ユニット50の初期化信号を受信した場合、コントローラ1pは、S13及びS14(第1ステップ)を行う。これにより、流出路52cfに侵入した液体が排出される。このとき、流入路52afは閉鎖されているため、流入路52afに侵入した液体がタンク51に到達するのが抑制される。その後、S15及びS16(第2ステップ)によって、流入路52afに侵入した液体が排出される。このように、本実施形態によれば、液体保持部59が省略されているが、流出路52cf及び流入路52afの両方に液体が侵入した場合にも、当該液体がタンク51に到達するのが抑制される。
続いて、図13を参照し、本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタ301について説明する。本実施形態のプリンタ301は、搬送ユニット及びキャップ機構の構成を除き、第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成を有する。第1実施形態と同じ構成については、同じ参照番号を付す等して、説明を省略する。
本実施形態の搬送ユニット320は、第1実施形態の搬送ユニット20から、支持機構5、ローラ対23,24,25、中間ローラ21、及びガイド29cを省略すると共に、ベルトローラ306,307、搬送ベルト308、プラテン309、ニップローラ304、及び剥離プレート305を追加したものである。
搬送ベルト308は、環状であり、両ローラ306,307間に巻回されている。ベルトローラ307は、駆動ローラであって、搬送モータ20M(図10参照)の駆動により、図13で時計回りに回転する。ベルトローラ307の回転に伴い、搬送ベルト308は、図13の太矢印方向に走行する。ベルトローラ306は、従動ローラであって、搬送ベルト308が走行するのに伴って、図13で時計回りに回転する。ニップローラ304及び剥離プレート305は、搬送ベルト308の外側に配置されている。ニップローラ304は、搬送ベルト308を挟んでベルトローラ306と対向配置され、ガイド29bにガイドされつつ搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト308の表面(用紙Pを支持する支持面)308aに押さえ付ける。剥離プレート305は、搬送ベルト308を挟んでベルトローラ307と対向配置され、用紙Pを支持面308aから剥離してガイド29dへと導く。プラテン309は、2つのヘッド10a,10bの吐出面10xと対向配置され、搬送ベルト308の上側ループを内側から支える。
本実施形態のキャップ機構340は、第1実施形態の対向部材42を含まず、環状部材41及び搬送ベルト308から構成されている。コントローラ1pは、キャップ機構340をキャッピング状態にする場合、環状部材41を下降させ、環状部材41の先端を支持面308aに当接させる。これにより、支持面308aと吐出面10xとの間に、閉鎖された吐出空間V1が形成される。
本実施形態では、S7において、対向面として支持面308aのワイピングが行われる。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ301は、第1実施形態と同じ構成によって得られる効果に加え、用紙Pを支持する支持面308aに環状部材41の先端を当接させることでキャップ機構340がキャッピング状態となることから、以下のような効果を奏する。即ち、記録に迅速に対応する観点から支持面308a上の異物を除去しておく必要性が高く、S5(パージステップ)の後にS7(対向面ワインピングステップ)を行うことによる利益が大きい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
・液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。
・液体吐出装置の筐体は、上下に分離された2つの筐体からなることに限定されず、1の筐体からなってよい。
・液体吐出ヘッドの数は、1以上の任意の数であってよい。複数の液体吐出ヘッドが設けられている場合において、ヘッド毎に貯留部を設けてもよい。
・液体吐出ヘッドは、ブラックインクや前処理液以外の任意の液体(例えば、記録媒体にインクが着弾した後に着弾する後処理液、インク中の成分を析出させる処理液等)を吐出してよい。
・液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式であってもよい。
・記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
・キャップ機構は、複数の部材(第1実施形態の環状部材41及び対向部材42、第3実施形態の環状部材41及び搬送ベルト308等)からなることに限定されず、例えば上面に吐出面と略同じサイズの凹部を有する1の凹部材からなってもよい。
・貯留部に、加湿液を加熱するヒータを設けてもよい。
・水位センサ58を省略してもよい。この場合、最大水位の直ぐ上に排液用の開口を設け、最大水位を超えると当該開口から加湿液が排出されるようにしてもよい。
・加湿機構は、流入路を流れる空気を加湿することができる限りは、加湿液を貯留する貯留部に限定されず、その他任意の構成であってよい。例えば、加湿機構としてミスト発生装置を用い、流入路にミストを供給する構成であってもよい。また、超音波式や加熱式等の加湿方式により、流入路を流れる空気を加湿してもよい。
・流出路は、上述の実施形態のようにチューブ内に形成された比較的長い流路に限定されず、例えば上述の実施形態のジョイント48に形成された貫通孔等からなる、比較的短い流路であってもよい。
・大気連通路を省略してもよい。
・流入路、流出路、大気連通路等を開閉するバルブを省略してもよい。
・流出路に、逆止弁が設けられてもよく、また、送風機構及び逆止弁の両方が設けられてもよい。
・流入路に、送風機構が設けられてもよく、また、液体保持体及び送風機構の両方が設けられてもよい。
・送風機構は、流入路及び流出路のいずれに設けられてもよく、また、これらの両方に設けられてもよい。
・参考例において、パージは、上述の実施形態のような加圧パージに限定されず、吸引パージであってもよい。この場合、例えば、キャップ機構に接続された吸引ポンプを駆動させることで、吐出空間内を負圧にし、吐出口内の液体を吸引してよい。
・吐出面ワインピングステップと対向面ワインピングステップの実行順序は特に限定されず、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
・参考例において、制御手段は、初期化信号を受信した場合、キャップ機構をアンキャッピング状態に維持しつつ送風機構を駆動した後、パージを行わなくてもよい。
・参考例において、ワイパを省略し、初期化信号を受信した後のワイピングに係る制御を省略してもよい。
・制御手段は、装置移動ボタン以外のボタンの押下、その他任意の入力手段(キーボード等)による入力に応じて、任意のタイミングで、初期化信号を受信してよい。また、装置の転倒を検知するセンサからの検知信号が初期化信号として制御手段に入力される構成であってもよいし、対向部材42が液体で漏れたことを検知するセンサ(液漏れセンサ)からの検知信号が初期化信号として制御手段に入力される構成であってもよい。