JP5978420B2 - カルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、操作性に優れ、創傷被覆材等として使用できる生体親和性の高いシート状構造体及びその製造方法に関する。
セルロースは植物主成分の約50%を占めており、地球上で最も多量に生産されているバイオマスである。その中でも、セルロース分子内の遊離の水酸基に官能基を導入したセルロース誘導体は、医薬品、化粧品および食品等の添加剤としても認められるほど人体に対して安全性が高いことがわかっている。セルロース誘導体の中でも、水に対して溶解性を示す水溶性セルロース誘導体は、シート状構造体への成形性や取扱の容易さ及び生体親和性の観点から注目を集めており、特に水溶性セルロース誘導体のシート状構造体は、例えば切り傷及び火傷等の創部に貼付する創傷被覆材に利用されている。
創傷被覆材は、外傷性の皮膚創傷及び採皮創等の創傷並びに疾患に伴う創部に対する創傷保護剤又は保護材料として用いるものであり、創傷部を乾燥状態に保ち、外部からの感染と体液の流出を防止し、痂皮形成によって治癒を行う、所謂ドライドレッシングと、適度の湿潤環境をつくり、速やかに表皮細胞の遊走を行う、所謂ウェットドレッシングとが知られている。ガーゼを用いる方法がドライドレッシングの方法の代表といえるが、滲出液の多い創部などでは、ガーゼと新生組織が固着するので、外部からの汚染を防止しにくいといった問題がある。
近年、創部の滲出液中に治癒を促進する種々の因子の存在が明らかになり、創傷の治療方法として、創部を滲出液で濡れた湿潤状態に保つウェットドレッシングが注目されている。かかるウェットドレッシングにおいては、創部からの滲出液を吸収しつつ創部を湿潤状態に保つことの可能なシート状構造体や吸水性不織布などが用いられており、創部が閉塞されるため細菌感染が未然に防止できるとともに、創治癒が促進されるという効果が得られる。新生組織と創傷被覆材との固着が発生するという問題が存在するため、ウェットドレッシングの中でも特にシート状構造体が好まれる。またウェットドレッシングの中でも、吸水しないシート状構造体を用いるウェットドレッシングでは、滲出液が多量に発生した時に吸水しないため、細菌の繁殖を招く恐れがある。そのため吸水することができ、かつ含水状態を保つことができる吸水性のシート状構造体が好まれるが、吸水性のシート状構造体は、膨潤状態でシート状構造体の強度が弱くなってしまうため、関節部等の動きの激しい部位では使用できない(ここで、強度とは、乾燥状態及び膨潤状態のシート状構造体の引張強度と突き刺し強度を言う)。従って、生体親和性が高いセルロース原料由来で吸水性があり、乾燥状態でも膨潤状態でも強度の高いシート状構造体が期待されている。
下記特許文献1には、水溶性セルロース誘導体であるカルボキシルメチルセルロース(CMC)とヒアルロン酸を、架橋剤にカルボジイミドを用いることにより化学架橋させたものからなるシート状構造体が記載されている。しかし、この製法で製造されたシート状構造体は強度が低い点が欠点である。これは、ドープを調整する時、CMCを用いると、水溶液の粘度が上がりすぎて、ドープ中のCMC濃度を上げられなかったり、高重合度のCMCを使用することができないためである。フィルムの強度を発現させるためには、高い重合度のポリマーを高濃度で溶解したドープを用いることが必須となってくる。またカルボジイミド等の化学的架橋剤は生体に対して毒性があり、残存の懸念もあるため創傷被覆材として使用するには好ましくない。
また、下記特許文献2はCMCからなる不織布を用いた創傷被覆材を報告している。これは、CMC繊維構造の創面から滲出液を吸水するというものだが、CMC不織布は、吸水能力があまりなく、ガーゼを用いるドライドレッシングと同様に、不織布と新生組織の固着が発生し、外部からの汚染を防止しにくくなる点が問題となる。
さらに、下記特許文献3は不溶化させたCMCを熱架橋させたシート状構造体を報告している。本材料は体内の医用材料として使用できるものだが、上記特許文献1と同様、創傷被覆材として使用するには、強度が著しく低いという問題があった。
一方、本発明者らは、新規構造の水溶性のカルボキシルエチルセルロースを架橋させた高吸水性樹脂を報告している(下記特許文献4参照)。しかし、ここで報告している樹脂は、架橋状態が弱く、ポリマー中の結晶の配向度が低いために、乾燥状態及び膨潤状態における強度は十分満足する結果が得られていなかった。
特表2003−518167号公報 特開平8−126659号公報 特開2008−155014号公報 特開2010−18670号公報
本発明の課題は、創傷被覆材等として有効に利用できる高い強度を有し、生体親和性に優れたシート状構造体を提供することである。
本発明者らは、カルボキシルエチルセルロースが、高い重合度でも、高濃度に水に溶解することができることに着眼し、鋭意検討した結果、カルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体中の結晶配向性と強度に相関があることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は下記の発明を提供する。
(1)カルボキシルエチルセルロースを分子鎖骨格にもつ水不溶性高分子から成るシート状の構造体であって、乾燥状態における引張強度が1000g/mm2以上、突き刺し強度が20kg/mm以上および膜厚が5μm以上10000μm以下であり、かつ、水による膨潤状態における引張強度が50g/mm2以上、突き刺し強度が1.0kg/mm以上および膜厚が50μm以上15000μm以下であり、前記水不溶性高分子は、カルボキシルエチル基の置換度が0.2以上2.8以下、カルバモイルエチル基の置換度が0.04以下および重合度が100以上3000以下のカルボキシルエチルセルロースであり、かつ、水酸基およびカルボキシル基間水素結合に基づく物理架橋構造を保有していることを特徴とするシート状構造体。
(2)上記(1)に記載のシート状構造体からなる創傷被覆材。
(3)上記(1)に記載のシート状構造体からなる癒着防止材。
(4)上記(1)に記載のシート状構造体からなる薬剤徐放用基材。
(5)下記(a)〜(d)の工程:
(a)pH9以上13.5以下のアルカリ水溶液にカルボキシルエチルセルロースを0.1wt%以上30wt%以下になるように添加し、50℃以上80℃以下で溶解させる工程;
(b)前記(a)工程で得られた溶液を塗工板に塗工し、pHが1.0以上5.5以下で含水率が5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させる工程;
(c)前記(b)工程で得られた塗工物を、pHが以上8以下で含水率が5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬後、さらに有機溶媒に浸漬させる工程;及び
(d)前記(c)工程で得られた処理物を50℃以上200℃以下で熱処理する工程;
を含む、上記(1)に記載の構造体の製造方法。
本発明のカルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体は、動きの激しい部位でも耐えうる高い強度をもち、安全性の高い創傷被覆材を提供することができる。また不純物も少ないので安定性および安全性が高い。
本発明のシート状構造体は、カルボキシルエチルセルロースを分子鎖骨格にもつことが重要である。セルロースを分子鎖骨格にもつ高分子として、他に、カルボキシルメチルセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の酸性基を有するセルロース誘導体、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース等のヒドロキシアルキル化されたセルロース誘導体、およびメチルセルロース、メチルエチルセルロース等のアルキル化されたセルロース誘導体が挙げられるが、いずれのセルロース誘導体を用いた場合でも、製造時にドープの粘度が急上昇するため、高重合度で高濃度に溶解したドープを作成することができない。その結果、強度の高いシート状構造体を製造することはできなくなる。カルボキシルエチルセルロースは、他のセルロース誘導体等と比べて、同程度の重合度、濃度を溶解させた時に、著しく粘度が低く、また濃度を上げた時も、著しく粘度上昇率が少ない。高強度のシート状あるいはゲル状の構造体を製造するという観点から、カルボキシルエチルセルロースを分子鎖骨格にもつことが重要である。
次に、本発明のシート状構造体は、乾燥状態における引張強度が1000g/mm2以上、突き刺し強度が20kg/mm以上および膜厚が5μm以上10000μm以下であり、かつ、水による膨潤状態における引張強度が50g/mm2以上、突き刺し強度が1.0kg/mm以上および膜厚が50μm以上15000μm以下であることが重要である。本発明のシート状構造体の強度において、引張強度と突刺し強度が共に上記範囲を満たしていることが重要である。どちらかの強度が上記範囲を外れると、関節部等の動きの激しい部位では、創部が治癒される前に、シート状構造体がぼろぼろになり、治癒することができない。シート状構造体が、乾燥状態において、引張強度が1000g/mm2未満、もしくは突き刺し強度が20kg/mm未満であると、膨潤状態にする前に破れてしまう等、取扱性が非常に悪くなる。取扱性及び操作性の観点から、乾燥状態で好ましくは引張強度が1500g/mm2以上、突き刺し強度が30kg/mm以上、更に好ましくは引張強度が2000g/mm2以上、突き刺し強度が40kg/mm以上である。また、乾燥状態における膜厚は、5μm以上10000μm以下であることが重要である。膜厚が5μm未満であると、創傷被覆材として使用するのに十分な強度を保つ事ができない。一方、10000μmを超えると、製造後の構造体内部に、有機溶媒や有機酸や無機酸等が残存してしまう傾向がある。使用時の肌への安全性という観点から、10000μm以下が好ましい。強度及び安全性から、乾燥状態のシート状構造体の膜厚は、10μm以上7500μm以下が好ましく、更に好ましくは12μm以上5000μm以下である。
また、シート状構造体が、水による膨潤状態における引張強度が50g/mm2未満もしくは突き刺し強度が1.0kg/mm未満であると、創傷被覆材として使用した時、関節部等の動きの激しい部位だと容易に破れてしまうことがある。どこの部位でも使用できる強度であるという観点から、膨潤状態で好ましくは引張強度が75g/mm2以上、突き刺し強度が1.5kg/mm以上、更に好ましくは引張強度が100g/mm2以上、突き刺し強度が2.5kg/mm以上である。膨潤状態における膜厚は、50μm以上15000μm以下であることが必要である。膜厚が50μm未満であると、創傷被覆材として使用するのに十分な強度を保つ事ができないことがある。一方、15000μmを超えると、使用感が著しく悪くなる傾向がある。強度及び使用感という観点から、膨潤状態の膜厚は、60μm以上9000μm以下が好ましく、更に好ましくは、80μm以上8000μm以下である。
なお、本発明において乾燥状態とは、シート状構造体の水分率が5.0%以下の状態で、膨潤状態とは、シート状構造体を純水に24時間浸漬させた後の水分率が70%以上の状態の事をいう。
また、本発明における水不溶性とは、大気圧下、130℃で、24時間乾燥させた乾燥状態の該シート状構造体を24時間、純水に浸漬させ、その後、取り出して、大気圧下で130℃、24時間で乾燥した後の重量減が1.0wt%以下であることをいう。
更に、本発明では、重合度が100以上3000以下のカルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体であることが好ましく、また、カルバモイルエチル基の置換度が0.04以下であって、カルボキシルエチル基の置換度が0.2以上2.8以下であるカルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体であることが好ましい。
本発明に用いるカルボキシルエチルセルロースの重合度は、シート状構造体として有効な強度を発現し、かつ塗工しやすい水溶液粘度に調整するためには100以上3000以下であることが好ましい。重合度が100未満であると、目的とする強度が得られないことが多い。重合度が3000をこえるカルボキシルエチルセルロースは、製造上、純度が高いものを得にくく、本発明のシート状構造体使用時の安全性という点で好ましくない。好ましくは200以上2900以下、より好ましくは300以上2800以下である。
本発明におけるカルボキシルエチルセルロースは、カルバモイルエチル基の置換度が0.04以下であって、カルボキシルエチル基の置換度が0.2以上2.8以下であることが好ましい。カルボキシルエチル基の置換度が0.2未満であると、カルボキシルエチルセルロースは溶解性が悪いため、シート状構造体を製造するための完全に溶解したドープが得られず、シート状構造体を製造したとしても、強度が著しく低下する傾向がある。一方、カルボキシルエチル基の置換度が2.8をこえるものは、製造上困難である。水溶性及びシート状構造体の成形性の観点から、カルボキシルエチル基は0.4以上2.0以下が好ましく、最も好ましくは0.5以上1.8以下である。また本発明のカルボキシルエチルセルロースは、カルバモイルエチル基が0.04以下であることが好ましい。ここでカルバモイルエチル基とは、カルボキシルエチルセルロース製造途中に発生する中間体のことで、カルバモイルエチル基が0.04をこえると、理由は明らかではないが、シート状構造体として使用した時に強度が低下する。好ましくは、カルバモイルエチル基の置換度が0.03以下であって、更に好ましくはカルバモイルエチル基の置換度が0.01以下である。
本発明におけるカルボキシルエチルセルロースは、金属塩であってもアンモニウム塩であっても良い。カルボキシルエチルセルロースの金属塩及びアンモニウム塩は、カルボキシルエチルセルロースを10℃以上70℃以下で、酸でpH1以上5以下の範囲で、一旦完全な酸型のカルボキシルエチルセルロースとし、続いて、金属塩及び第四級アンモニウム塩を用いてカチオン交換することで容易に製造することができる。カルボキシルエチルセルロースの金属塩の金属元素としては、周期表に挙げられる第1族元素から第15族元素の中から選ばれる金属イオンである。好ましくは、長周期率表1族ではLi、Na、K、Rb、Cs、2族ではMg、Ca、Sr、Ba、3族ではSc、ランタノイド元素、アクチノイド元素、4族ではTi、Zr、5族ではV、Nb、6族ではCr、W、7族ではMn、Re、8族ではFe、Ru、9族ではCo、Rh、10族ではNi、Pd、11族ではCu、Ag、Au、12族ではZn、Cd、13族ではAl、Ga、14族ではSi、Sn、15族ではSb、Bi等が挙げられ、より好ましくは、Li、Na、K、Mg、Baである。また金属塩の具体例としては、上記金属のハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、オキシハロゲン化物、塩基性炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、及び有機金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは水酸化物またはハロゲン化物である。
また、カルボキシルエチルセルロースのアンモニウム塩に用いる第四級アンモニウム塩は下記式1で表され、式1中、R1〜R4はそれぞれ水素、C1〜C30の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、フェノキシアルキル基、モノもしくはジアルキルフェノキシアルキレンオキシアルキレン基であり、またR1〜R4の何れか2者もしくは3者が窒素原子を介して5員環又は6員環を形成してもよい。
第4級アンモニウム塩としては、具体的にはテトラヒドロアンモニウム塩、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウムおよび塩化テトラヘキシルアンモニウムなどの塩化テトラアルキルアンモニウム、塩化テトラフェニルアンモニウム、塩化テトラベンジルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウムおよび塩化トリエチルベンジルアンモニウムなどのアルキルベンジルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルイミダゾリニウム並びに塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、塩化テトラヒドロアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウムである。またアンモニウムイオンのカウンターアニオンは臭素イオンまたはヨウ素イオンであっても良い。
特に本発明のシート状構造体を、創傷被覆材、癒着防止材および徐放用基材として使用する場合には、生体に接触する用途で使用されるため、これらのうち、ナトリウム塩またはアンモニウム塩であることが好ましい。
本発明のシート状構造体のカルボキシルエチルセルロースおよび水以外の構成物として、如何なる高分子化合物、例えば多糖類、蛋白質または合成高分子を含んでいても構わない。ただし、水以外の構成物に占めるカルボキシルエチルセルロースの割合は、30wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上であり、この範囲であるとシート状構造体の強度及び生体親和性の効果が発現するので好適である。ここで、多糖類の例としては、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン類(ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等)、コンドロイチン硫酸塩(コンドロイチン−6−硫酸等)、ケラチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、アルギン酸、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、デンプン、アミロース、ポリ乳酸、カラギーナン等、種々のアルキルセルロース(CMC、カルボキシメチルアミロースおよびメチルセルロース等)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロースおよびセロウロン酸が挙げられる。蛋白質としては、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、エラスチン、種々のグロブリン、カゼインおよびグルテン等が挙げられる。合成高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグルコール酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびそれらのコポリマーが挙げられる。なお、これらの高分子化合物には何ら制限はない。
本発明において、水不溶性高分子は物理架橋構造および/または化学架橋構造を保有することが好ましい。架橋構造を形成することで、水不溶性の達成が容易となる。
本発明における物理架橋構造とは、疎水性相互作用、イオン性相互作用、水素結合あるいは配位相互作用が架橋に関与したネットワーク構造である。ここで、物理架橋を施すための添加剤としては、例えば無機酸及び多価のカルボン酸またはアミノ酸化合物の群の中から選ばれる添加剤を用いることができる。無機酸としては塩酸、硫酸およびリン酸が挙げられ、多価のカルボン酸としては、カルボキシル基や水酸基を合計で2個以上有する化合物であれば特に制限はなく、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ポリアクリル酸、マレイン酸、ポリマレイン酸、こはく酸等が挙げられる。アミノ酸化合物としては、カルボキシル基と反応可能であれば特に限定されるものではないが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、シスチン、メチオニン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン並びに酸性アミノ酸(アスパラギン酸やグルタミン酸等)及びその塩類等が挙げられる。なお、これらの添加剤には何ら制限はない。
上記物理架橋構造の中でも、水酸基及びカルボキシル基間水素結合に基づく物理架橋構造が、不純物が少ないという理由から好ましい。水酸基及びカルボキシル基間水素結合は、後述するように、シート状構造物を作製後、熱処理することによって簡単に形成することができる。なお、カルボキシル基間水素結合が形成されているか否かは、IRスペクトルを測定することにより、水酸基及びカルボキシル基のピーク減少によって判定できる。
また、本発明における化学架橋構造とは、高分子鎖を共有結合によって結びつけている構造であり、例えばドープに多官能性である架橋剤を添加することで、ネットワーク構造が形成される。化学架橋を施すための架橋剤は特に制限されないが、例えば有機金属化合物(例えばジルコニウム、亜鉛、酢酸亜鉛等)、金属アルコラート(例えばテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプレピレート、アルミニウムsec−ブチレート等)、金属キレート化合物(例えばジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等)、多官能エポキシ化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリシトール、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等)および多価金属イオン(アルミニウムイオン、鉄イオン、チタニウムイオン等)が挙げられる。また他には、紫外線照射や電子線照射等の放射線照射も挙げられる。なお、これらの架橋剤及び架橋方法には何ら制限はない。
本発明のカルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体の製造方法は特に限定はされないが、例えば下記(a)〜(d)からなる工程で製造することができ、特に(c)の工程で強度と膨潤度をコントロールすることが重要である。
(a)ドープ調整工程
(b)塗工工程
(c)pH調整工程
(d)熱処理工程
なお、カルボキシルエチルセルロースは、例えば特開2010−13549号公報等に記載された公知の方法で製造することができる。
以下、(a)〜(d)の工程を詳しく説明する。
(a)ドープ調整工程
pH9以上13.5以下の水溶液にカルボキシルエチルセルロースを0.1wt%以上30wt%以下になるように添加し、50℃以上80℃以下で溶解させる。この工程は、目的とする高い強度のシート状構造体を得るという観点から必要である。pH9未満の水溶液を用いると、カルボキシルエチルセルロースを完全に溶解させることができず未溶解物が残存し、目的の強度のシート状構造体を製造できなくなる。またpHが13.5を超えると、カルボキシルエチルセルロースが加水分解してしまい、重合度低下することで、シート状構造体が強度を失ってしまう。カルボキシルエチルセルロースの溶解に用いる水溶液のpHは、好ましくはpH9.5以上13.0以下、更に好ましくはpH9.8以上12.5以下である。
ドープ中のカルボキシルエチルセルロースの濃度は、0.1wt%以上30wt%以下であることが重要である。0.1wt%未満であると、高い強度をシート状構造体を製造することは困難である。また、30wt%をこえる濃度で、カルボキシルエチルセルロースを溶解させることは難しく、また溶解させることができたとしても、ドープの粘度が高すぎて塗工することはできない。好ましくは1.0wt%以上25wt%以下で、より好ましくは2.0wt%以上20wt%以下である。
カルボキシルエチルセルロースを溶解させるときに、水溶液の温度を50℃以上80℃以下にしておくことが必要である。50℃未満である場合、カルボキシルエチルセルロースを目的の濃度まで溶解させることができない。80℃を超えると、カルボキシルエチルセルロースが加水分解反応してしまうことで、重合度低下を起こし、シート状構造体が強度を失ってしまう。
pH調整剤としては、塩酸、硫酸および酢酸などの無機酸並びに多価のカルボン酸及びアミノ酸化合物等の有機酸を使用できる。多価のカルボン酸としては、カルボキシル基や水酸基を合計で2個以上有する化合物であれば特に制際限はなく、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ポリアクリル酸、マレイン酸、ポリマレイン酸、こはく酸等が挙げられる。アミノ酸化合物としては、カルボキシル基と反応可能であれば特に限定されるものではないが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、シスチン、メチオニン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン並びに酸性アミノ酸(アスパラギン酸やグルタミン酸等)及びその塩類等が挙げられる。経済的な理由から塩酸が好ましい。
(b)塗工工程
上記(a)工程で得られたドープを塗工板に塗工し、pH1.0以上5.5以下の含水率5 wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させる工程。この工程は、目的とする高い強度のシート状構造体を得るという観点から重要である。通常、カルボキシルメチルセルロース水溶液からなるシート状構造体を製造するときはこのような工程はない(前記特許文献3参照)。高濃度のカルボキシルエチルセルロースからなるドープを所定のpHにコントロールした含水有機溶媒水溶液に浸漬させると、驚くべきことに得られたシート状物の結晶が高度に配向し、高い強度を発現する。しかし、カルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体を単純にpH3程度の水溶液に浸漬させただけでは、結晶が高度に配向せずに、本発明の強度を発現しなくなってしまう。そのために、pH1以上5.5以下の含水率5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させることが最も重要になってくる。
有機溶媒水溶液に含まれる水溶液のpHが1.0未満であると、酸による加水分解が起こり、重合度が低下するため、強度を発現しなくなってしまう。pHが5.5を超えると、後述する熱処理を行っても、水に対して溶解してしまい、シート状構造体として使用できなくなる。好ましくはpHが2以上5以下で、更に好ましくは2.5以上4.5以下である。
有機溶媒水溶液の含水率が5wt%未満であると、酸がシート状構造体内部まで浸透せず、熱処理後、水に対して不溶のシート状構造体が得られない。50wt%をこえると、塗工したシート状構造体が浸漬時に溶解してしまう。好ましくは含水率が10wt%以上40wt%以下で、更に好ましくは15wt%以上30wt%以下である。
浸漬時間は5分以上であることが好ましい。5分未満であると、十分に結晶が配向しないため、本発明の強度を発現しなくなってしまう。
使用する有機溶媒としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、酢酸エチル、エーテルなどが挙げられるが、シート状構造体への液の浸透性の観点からメタノール、アセトンおよびエタノールが好ましい。
この工程における有機溶媒水溶液に浸漬させる時の温度は、5℃以上25℃以下である。有機溶媒水溶液に浸漬させる時の温度が5℃未満であると、温度が低すぎるためか、結晶が高度に配向しなくなり、強度が低下する。また25℃を超えると、結晶状態が崩れてしまうためか、同様に強度が低下してしまう。好ましくは7℃以上23℃以下で、より好ましくは10℃以上20℃以下である。
(c)pH調整工程
(b)工程で得られた塗工物をpH5以上8以下で含水率5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させてから、有機溶媒に浸漬させる。この工程は、高い強度を有するシート状構造体を得るという観点から、重要である。有機溶媒水溶液のpHが5未満であると、(b)工程での酸が残ってしまい、乾燥時に重合度低下が起こってしまう。また創傷被覆材として使用した時に、炎症を引き起こしてしまう。pHが8を超えると、後述する熱処理をしても、水に対して溶解してしまい、シート状構造体として使用できなくなる。好ましくはpHが6以上7.8以下で、更に好ましくは6.5以上7.5以下である。
このときの浸漬時間は5分以上であることが好ましい。5分未満であると、シート状構造体中に酸が残ってしまうため、創傷被覆材として使用した時に、炎症を引き起こしてしまう。
有機溶媒水溶液の含水率が5wt%未満であると、酸がシート状構造体内部まで浸透せず、熱処理後、水に対して不溶のシート状構造体が得られない。50wt%をこえると、塗工したシート状構造体が浸漬時に溶解してしまう。好ましくは含水率が10wt%以上40wt%以下で、更に好ましくは15wt%以上30wt%以下である。
この工程における含水率5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させる時の温度は5℃以上25℃以下であり、その後の有機溶媒に浸漬させる時の浴の温度は、5℃以上30℃以下である。含水率5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させる時の温度が5℃未満であると(b)工程での酸が残ってしまい、また25℃を超えると(b)工程で高度に配向した結晶状態が崩れてしまい、強度が低下してしまう。好ましくは7℃以上23℃以下で、より好ましくは10℃以上20℃以下である。その後の有機溶媒に浸漬させる時の浴の温度が5℃未満であると酸が残ってしまい、また30℃を超えると結晶状態が崩れてしまう。好ましくは7℃以上27℃以下で、より好ましくは10℃以上25℃以下である。
本工程で使用する有機溶媒としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、酢酸エチル、エーテルなどが挙げられるが、シート状構造体への液の浸透性の観点からメタノール、アセトンおよびエタノールが好ましい。
(d)熱処理工程
(c)工程で得られた処理物を50℃以上200℃以下で熱処理する。この工程は、シート状構造体を水に対して不溶化させるためとシート状物の強度を発現させるために必要である。熱処理温度が50℃未満だと、シート状物中のカルボキシルエチルセルロース分子鎖同士の水素結合が不十分であるため、シート状構造体が水に対して溶解してしまう。また200℃以上の温度で熱処理をすると、重合度低下が起こり、シート状構造体の強度が低下してしまう。好ましくは60℃以上180℃以下で、更に好ましくは80℃以上150℃以下である。熱処理は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下でも、空気中でも構わない。
熱処理の時間は5分以上360分以下であることが好ましい。5分未満であると、シート状物中のカルボキシルエチルセルロース分子鎖同士の水素結合が不十分であるため、水に対して溶解してしまう。360分以上であるとフィルムが黄変してしまう。好ましくは10分以上120分以下である。
また本発明では、上述したシート状構造体は、創傷被覆材としてだけでなく、癒着防止材ないしは薬剤徐放用基材としても使用することができる。本発明のシート状構造体は、生体親和性及び皮膚への接着性が高いので、癒着防止材として使用すると、術後炎症反応を防止し、また貼付した部位から移動しないため、好適である。また本発明のシート状構造体は、膨潤状態での機械強度が高いため、薬剤徐放用基材として使用すると、活性成分の放出制御性能やゲルの崩壊を回避することができるため、好適である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)カルボキシルエチル基及びカルバモイルエチル基の置換度
置換度測定用のサンプルを重水に溶解させ、3〜5wt%重水溶液を調整し、BRUKER社製のFT−NMR(Avance 400MHz)を用いて、13C−NMRにより測定を行い、置換度はセルロースのC1のピーク(106.32−104.2 ppm)面積dを基準とし、カルバモイルエチル基のα炭素のピーク(38.55−38.27 ppm)面積e及びカルボキシルエチル基のα炭素のピーク(40.96−39.72 ppm)面積fから下式のように算出した。
総置換度 = e/d(カルバモイルエチル基の置換度)+f/d(カルボキ
シルエチル基の置換度)
なお上記の分析でカルバモイルエチル基が検出されない場合は、JASCO社製のFT−IR−6200を用いて測定を行い、カルバモイルエチル基に基づく吸収3300−3200 cm-1のピークが検出されないことを確認する。
(2)シート状構造体が乾燥状態の時の引張強度
引張強度の評価は、JIS P8113にて定義される方法に従い、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用い、幅15(mm)×厚みh(mm)のサンプル10点について測定し、その強度の平均値i(g)をとり、下記式より引張強度j(g/mm)を算出した。
j=i/(h×15)
(3)シート状構造体が膨潤状態の時の引張強度
サンプルを蒸留水中に24時間浸漬させたものを、膨潤状態のサンプルとして使用した。なお、測定方法は(2)と同様に行い、引張強度を算出した。
(4)シート状構造体が乾燥状態の時の突刺し強度
測定には、Stable Micro Systems社製のTexture Analyzer TA−XT2を用いて、厚さk(mm)の測定用サンプルを3cm×2.5cmの大きさに切り出して、ステージ上に固定し、これに直径12.7mmの球状プローブを1mm/secの速度で押し当て、ブローブがサンプルを突き破る際の最大応力l(kg)を測定した。下記式より、突刺し強度m(kg/mm)を算出した。
m=l/k
(5)シート状構造体が膨潤状態の時の突刺し強度
サンプルを蒸留水中に24時間浸漬させたものを、膨潤状態のサンプルとして使用した。なお、測定方法は(4)と同様に行い、厚みとしては乾燥状態の厚みkを用いて突き刺し強度を算出した。
(6)膜厚
Mitutoyo(株)製の膜厚計(Code;547−401)を用い、シート状構造体の3.0cm×3.0cmの正方形片を切り取り種々な位置について5点の測定値の平均値を膜厚L(μm)とした。
(7)シート状構造体の皮膚貼付性についての評価方法
得られたシート状構造体を蒸留水中に24時間浸漬して膨潤させたものを試料として用い、10人の膝表部に24時間貼付して、皮膚貼付性について評価した。なお、評価は、貼付中の皮膚の違和感及び皮膚からの剥離性、並びに貼付後のシート状構造体の状態について下記の基準に従って採点し、10人の平均点を求めた。
(貼付中の違和感)
1点:貼付中、皮膚への違和感があり、不快である。
2点:多少違和感はあるが、気にならない。
3点:違和感はなかった。
(皮膚からの剥離性)
1点:シート状構造体との接触部分から滲出液が滲み出しており、皮膚に完全に付着している。
2点:シート状構造体との接触部分から滲出液が滲み出しているが、スムーズに剥離できる。
3点:シート状構造体との接触部分から滲出液が滲み出しておらず、問題なく剥離できる。
(貼付後のシート状構造体の状態)
1点:シート状構造体が破れるか、潰れてしまっており、貼付直後の形を成していない。
2点:多少破れがあるが、原型を保持している。
3点:貼付直後の原型を完全に保持している。
(実施例1)
<カルボキシルエチルセルロースの製造>
重合度1100のコットンリンターをホソカワミクロン社製の粉砕機(機種:ACMパルペライザ)を用いて約1〜5mm角に粉砕して、70℃で12時間真空乾燥し、10g採取し、15wt%濃度の水酸化ナトリウム水溶液100 gに30℃で30分間浸漬した。セルロース重量に対してアルカリ水溶液重量が5倍量になるまで圧搾し、アクリロニトリルをセルロースのグルコース残基当り1.0 モル加え、プライミクス社製の二軸型混練機(クリアランス:4mm)を用いて自転50rpm、公転35rpm、0℃で24時間攪拌した。その後、25gの純水を加えて反応系内のアルカリ濃度を10wt%に調整し16時間混練した後、6N塩酸を用いて20℃中でpH8.4に調整した。次いで、この反応物にアセトンを添加して凝固させ、含水率20wt%メタノール水溶液で洗浄し、回収した。ここで得られた反応物を真空乾燥機内で70℃、36時間乾燥させて、カルボキシルエチルセルロースを得た。カルボキシルエチル基の置換度は0.93であり、カルバモイルエチル基は検出されなかった。なお、赤外吸収スペクトルより、シアノエチル基は検出されなかった。またこのカルボキシルエチルセルロースは水溶性を示した。
カルボキシルエチルセルロースの製造条件および評価結果を表1に示す。
<シート状構造体の製造>
このカルボキシルエチルセルロースを20g採取し、55℃でpH12の285gの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて6.6wt%濃度のカルボキシルエチルセルロース水溶液を調整した。その後、孔径10μmのフィルターを用いて、カルボキシルエチルセルロース水溶液をろ過して、シンキー社製の遠心脱泡機(あわとり練太郎ARE−310)にセットし、1500rpmで5分間運転した。このカルボキシルエチルセルロース水溶液を、塗工板に塗工し、その塗工板をpH2.5で含水率30wt%のメタノール水溶液に15分間浸漬させた。続いて、塗工板をpH7.5の含水率20wt%のメタノール水溶液に10分間浸漬後、更に、メタノールに浸漬させた。次いで、塗工板から剥がしたシート状構造体を130℃で空気中で30分熱処理を行い、厚みが15μmのカルボキシルエチルセルロースのシート状構造体を得た。得られたシート状構造体のIRスペクトル測定により、水酸基およびカルボキシル基間水素結合の存在が確認された。
シート状構造体の製造条件を表1に併せて示す。
<シート状構造体の物性評価>
得られたシート状構造体の評価結果を表2に示す。乾燥状態での引張強度が6500g/mm2で突き刺し強度が60000g/mm、膨潤状態での引張強度が1360g/mm2で突刺し強度が11000g/m2と本発明の範囲を満足するものであった。
(実施例2〜5)
重合度200〜1800のパルプを原料に用いた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1及び2に示す。いずれのシート状構造体も、本発明の範囲を満足するものだった。
(実施例6〜10)
カルボキシルエチルセルロースを製造する工程でアクリロニトリルの添加量を変えた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1及び2に示す。いずれのシート状構造体も、本発明の範囲を満足するものだった。
(実施例11〜14)
カルボキシルエチルセルロースを製造する工程で、カウンターカチオンを表1記載のイオンに変えた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1及び2に示す。いずれのシート状構造体も、本発明の範囲を満足するものだった。
(実施例15〜28、参考例29、実施例30〜37)
カルボキシルエチルセルロースからシート状構造体を製造する工程で、各工程の条件を表1記載の如く変えた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。なお、得られたシート状構造体のIRスペクトル測定により、水酸基およびカルボキシル基間水素結合の存在が全ての例で確認された。結果を表1及び2に示す。いずれのシート状構造体も本発明の範囲を満足するものだった。
(比較例1および2)
重合度50および150のパルプを原料に用いた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1および2に示す。いずれのシート状構造体も、乾燥状態、膨潤状態共に強度が低く、本発明の範囲を外れるものだった。
(比較例3)
カルボキシルエチルセルロースを製造する工程でアクリロニトリルの添加量を変えた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1および2に示す。このカルボキシルエチルセルロースでは、乾燥状態、膨潤状態共に強度が低く、本発明の範囲を外れるものだった。
(比較例4〜18)
カルボキシルエチルセルロースからシート状構造体を製造する工程で、各工程の条件を表1記載の如く変えた以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表1および2に示す。いずれのシート状構造体も本発明の本発明の範囲を外れるものだった。
(比較例19〜21)
カルボキシルエチルセルロースからシート状構造体を製造する工程で、pH調整剤にクエン酸を用いて、表3記載の条件に変えた以外は、実施例1と同じ条件でカルボキシルエルチルセルロースを合成し、シート状構造体を製造した。結果を表4に示す。
(比較例22〜29)
原料にカルボキシルメチルセルロースを用いて、表5記載の条件で、シート状構造体を製造した。結果を表6に示す。いずれのシート状構造体も本発明の強度範囲をはずれるものだった。
(実施例38〜42)
カルボキシルエチルセルロースからシート状構造体を製造する工程で、表7記載の膜厚で製造した以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを製造し、シート状構造体を製造した。結果を表7に示す。いずれのシート状構造体も本発明の範囲を満足するものだった。
(比較例30〜31)
カルボキシルエチルセルロースからシート状構造体を製造する工程で、表7記載の膜厚で製造した以外は、実施例1と同じ条件で、カルボキシルエルチルセルロースを製造し、シート状構造体を製造した。結果を表7に示す。いずれのシート状構造体も本発明の範囲をはずれるものだった。
本発明のカルボキシルエチルセルロースからなるシート状構造体は、高い強度を有しているために、創傷被覆材や癒着防止材として有効に利用できる。

Claims (5)

  1. カルボキシルエチルセルロースを分子鎖骨格にもつ水不溶性高分子から成るシート状の構造体であって、乾燥状態における引張強度が1000g/mm2以上、突き刺し強度が20kg/mm以上および膜厚が5μm以上10000μm以下であり、かつ、水による膨潤状態における引張強度が50g/mm2以上、突き刺し強度が1.0kg/mm以上および膜厚が50μm以上15000μm以下であり、前記水不溶性高分子は、カルボキシルエチル基の置換度が0.2以上2.8以下、カルバモイルエチル基の置換度が0.04以下および重合度が100以上3000以下のカルボキシルエチルセルロースであり、かつ、水酸基およびカルボキシル基間水素結合に基づく物理架橋構造を保有していることを特徴とするシート状構造体。
  2. 請求項1に記載のシート状構造体からなる創傷被覆材。
  3. 請求項1に記載のシート状構造体からなる癒着防止材。
  4. 請求項1に記載のシート状構造体からなる薬剤徐放用基材。
  5. 下記(a)〜(d)の工程:
    (a)pH9以上13.5以下のアルカリ水溶液にカルボキシルエチルセルロースを0.1wt%以上30wt%以下になるように添加し、50℃以上80℃以下で溶解させる工程;
    (b)前記(a)工程で得られた溶液を塗工板に塗工し、pHが1.0以上5.5以下で含水率が5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬させる工程;
    (c)前記(b)工程で得られた塗工物を、pHが以上8以下で含水率が5wt%以上50wt%以下の有機溶媒水溶液に浸漬後、さらに有機溶媒に浸漬させる工程;及び
    (d)前記(c)工程で得られた処理物を50℃以上200℃以下で熱処理する工程;
    を含む、請求項1に記載の構造体の製造方法。
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