JP5970309B2 - シールド掘進機とシールドトンネルの構築方法 - Google Patents
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この大断面分割工法は、図6に示すように小断面のトンネルaを多数平行にならべて構築し、トンネル間に止水対策を施した後に小断面トンネルa間のセグメントを解体して一体化し、最終的に大断面のトンネルbとして完成させる工法である。
推進方式とは、推進立坑に設置したジャッキによって鋼殻やコンクリートボックスなど(以下「鋼殻など」という)を地中に圧入してトンネルを構築する工法である。
このように推進工法は推進立坑に設置したジャッキだけで、次々と鋼殻などを地中に圧入する工法であるから、次のような問題がある。
<1> 鋼殻などの経済的な圧入可能な延長は、使用鋼殻の量によって決まり、せいぜい200m程度が推進の限界である。
<2> 推進工法ではなくシールド工法によれば、シールド掘進機に設けてあるジャッキの推力で前進するから、1000m程度のシールドトンネルの構築も可能である。
<3> しかしシールド掘進機を使用する方法では、必然的に掘進機のテール部にクリアランスが生じてそれだけの余掘りが発生し、その結果、先行するセグメントトンネルと、新設するセグメントトンネルとの間隔が30cm以上となってしまう。
<4> その程度までシールドトンネルの間隔が離れると、両者を一体化する工程において、作業が困難となり、止水性も不完全になりやすい。図6に示すように従来の小断面トンネル群が、その間隔を近接させて構築できているのは推進工法によっているからである。
<5> 以上の理由から、シールド掘進機を使用して小断面のトンネルを掘削すれば長い延長の小断面トンネルの構築ができるという利点が分かっていながら、隣接する小断面トンネルを接続して大断面トンネルを構築する方法には利用できない、と考えられていた。
<6> また、ハーモニカ工法と称する工法を推進方式によって施工する場合には、直線から曲線、直線から曲線、のように線形が変化に富んだトンネルを施工することができなかった。
<1> 小断面の多数本のシールドトンネルを構築するために、推進工法ではなくシールド掘進機によってシールドトンネルを構築する方法である。そのために従来の推進工法と比較にならない長い延長の小断面シールドトンネルを構築することができる。
<2> 従来のシールド掘進機を使用したシールドトンネルでは、トンネルのセグメント間の間隔を近接させて構築することができなかったが、本発明の方法では既設のトンネルセグメントの外面に略接触する程度まで近接させて新設の小断面シールドトンネルを構築することができる。
<3> 既設トンネルに面する壁面、床面は薄板で構成してあるから、セグメントを近接させることができ、隣り合うトンネルの鋼殻の除去作業が容易で、推進方式のハーモニカ工法と同様に小断面シールドトンネル間を接続することができる。
<4> 直線から曲線、曲線から直線と連続するような、線形が変化に富んだトンネルの場合でも、設計線形にしたがって自由に掘削することができる。
本発明の装置は、シールド掘進機1を利用して既設の地下構造物に近接してシールドトンネルを構築するためのシールド掘進機1である。
以下、一例として複数本の小断面のトンネルを構築し、隣接した小断面トンネル間を接続して大断面トンネルを構築する場合を説明するがこの用途に限られるものではない。
シールド掘進機1は、機体内でセグメントを組み立ててシールドトンネルを構築する装置である。
その際にシールド掘進機1内に設置した推進ジャッキの反力をセグメントにとって機体自身を地中に押し出し、機体前面の土砂はカッターで掘削し、掘削した土砂はシールドトンネルを通過させて外部に排出する構造である。
以上のような一般のシールド掘進機1の掘削機構、推進機構は公知であるから詳細な説明は省略する。
本発明のシールド掘進機1では、従来公知のシールド掘進機1とはふたつの点で異なった特徴を備えている。
その一つは断面矩形の鋼殻の厚さに相違を持たせる構造、他のひとつは張出装置2を設ける構造である。
シールド掘進機1の鋼殻は矩形断面、すなわち天井部と床部と、両側の壁部で構成する。
本発明のシールド掘進機1の4面は厚肉鋼板で構成するが、特にその内で壁面だけは、そのテール部を他の板厚よりも薄い、薄板壁11で構成する。
このように1面のテール部を薄板壁11で構成する理由は、先行して完成した既設のシールドトンネルBに、シールド掘進機1のテール部の薄板壁11部分の荷重を分担させるからである。
シールドトンネルの構築時には、この薄板壁11側を既設のシールドトンネルB側に近接させて掘進する。
このように断面矩形の鋼殻の一面の厚さを薄くしても片持ち構造の天井部、床部が変形せずに矩形を維持できるのは、後述する張出装置2を介して、片持ち構造の天井部、床部の荷重を、既設のシールドトンネルに負担させるからである。
また既設のシールドトンネルB側の壁面が薄板壁11でも土圧に抵抗できるのは、既設のシールドトンネルBとの距離が近接しているので、大きな土圧が作用しないからである。
さらに本発明のシールド掘進機1には、薄板壁11側の上部と下部に張出装置2を取り付ける。
張出装置2は、断面が略矩形の鋼製容器で、内部に張出カッター21を内装してある。
この張出装置2は、シールド掘進機1の天井部および床部から、一定の距離だけ外側、すなわちシールド掘進機1の掘進方向と直交する方向に張り出した装置である。
略矩形の容器であるシールド掘進機1の天井部から外側に張り出した装置が、上部張出装置2である。
また略矩形の容器であるシールド掘進機1の床部の下面から外側に張り出した装置が、下部張出装置2である。
上部張出装置2と下部張出装置2の張り出す方向は同じ方向である。
両張出装置2は、シールド掘進機1の進行方向には、シールド掘進機1の略全長にわたって取り付ける。
上部張出装置2の下面と、下部張出装置2の上面にテフロン(登録商標)材などのすべり抵抗を軽減する材料を取り付けると、既設のシールドトンネルBとの接触、移動がより容易となる。
上記したように、本発明のシールド掘進機1ではサイズの異なった張出装置2を取り付けることによって掘削寸法を変更することができるから、シールド掘進機1の基本断面はすべて同じ寸法のものを使用することができる。
シールド掘進機1の天井部の上面から張り出した上部張出装置2の下面と、床部の下面から張り出した下部張出装置2の上面との鉛直方向の間隔には特定の制限がある。
その間隔は、先行して構築した、隣接するシールドトンネルBの天井と床の外面との間隔に略等しい。
そのために既設のシールドトンネルBの上下間を、張出装置2ではさむことができ、シールド掘進機1の天井部や床部が片持ち状態にならない。
以上の装置を使用して、既設のシールドトンネルBに近接して新たにシールドトンネルAを構築する方法を説明する。
まず、大断面トンネルを構築する前提として、小断面のシールドトンネルを構築する。
最初の1本目のシールドトンネルは、通常のシールドトンネルとして構築する。これを既設のシールドトンネルBとする。
次に既設のシールドトンネルBに近接して2本目の新設シールドトンネルAを構築する。
その際に、シールド掘進機1の薄板壁11を、既設のシールドトンネルBの側に向けて位置させる。
すると、外側に張り出した上部張出装置2の下面を、既設のシールドトンネルBの天井部の上面に搭載することができ、下部張出装置2の上面は、既設のシールドトンネルBの床部の下面に接触させることができる。
この接触で、荷重を既設のシールドトンネルBに負担させ、矩形断面の一壁面のテール部を薄板壁11で構成して、天井部と床部が片持ち状態になっているシールド掘進機1の変形を回避することができる。
その後は、シールド掘進機1の前面のカッター12などの掘削機構、および張出装置2内に収納した張出カッター21機構の駆動によって掘進を行う。
シールド掘進機1の掘進後には、セグメントを組み立てた、新設シールドトンネルAの構築が完成する。
同様に、新設した2本目のシールドトンネルAを既設のシールドトンネルBとして、その天井部と床部に張出装置2を接触させて3本目のシールドトンネルを構築する。
既設のシールドトンネルBに近接して新設シールドトンネルAを構築する場合に、本発明のシールド掘進機1では上下の張出装置2で既設のシールドトンネルBを挟んだ状態で掘進することができる。
さらに既設のシールドトンネルB側のテール部は薄板壁11で構成しているので従来であれば少なくとも30cm以上の距離を離して構築する必要があった隣接トンネル間の間隔を、数分の1の間隔で構築することができる。
上記のような施工によって、水平方向に複数の小断面トンネル群を、きわめて近接した状態で構築することができる。
以上の説明は水平方向に連続して小断面トンネルを構築する方法についてであった。
それを上下方向にも連続構築するには、張出装置2を両壁面の下方から、床面より下方に向けて下向きに張り出す。
すると下方に位置する既設のシールドトンネルBの両壁間を、張出装置2ではさむことができ、シールド掘進機1の両壁面部が片持ち状態にならない。
さらにシールド掘進機1の天井部、両壁面部は厚肉鋼板とし、床面だけはそのテール部を厚肉鋼板よりも薄い、薄板床13で構成する。
このように前記の水平方向へ連続するためのシールド掘進機1を、90°回転させれば、上記のシールド掘進機1をそのまま転用することができる。
その場合に、下に位置するシールドトンネル群の天井部の高さがそろっていると、張出装置2を両壁面から張り出した状態では、その下のシールドトンネルの両壁面へ接触させることができない。
例えれば洗濯ハサミで平面はつかめない、という意味である。
そこで水平方向に小断面シールドトンネルを並べて構築する際に、隅部のシールドトンネルだけを、高さhだけ高く形成し、そこだけ頭部を突出させておく。
その高さhとは、張出装置2で挟める高さである。
すると、その上に位置させたシールド掘進機1の張出装置2によって、下部の既設のシールドトンネルBの頭部を両側から挟むことができる。
その後の構築は上記の方法と同様である。
例えば水平に4本、鉛直に3本の小断面のシールドトンネルA´を構築して、大断面トンネルの周囲を包囲する状態を形成したら、トンネル間の地盤改良をした後、薄板壁11、薄板床13を取り外して、複数のシールドトンネルA´を順次連結して行く。
周囲に強固な構造物が形成できれば、その内部に残った地盤の掘進は安全で容易である。
こうして最終的に大断面トンネルCが完成する。
11:薄板壁
2:張出装置
A:新設シールドトンネル
B:既設シールドトンネル
C:大断面シールドトンネル
Claims (3)
- 既設の地下構造物に近接してシールドトンネルを構築するためのシールド掘進機であって、
掘削断面が矩形となる掘進機カッターを有し、
天井部と床部、および一方の壁面部を厚肉鋼板で構成し、かつ残りの壁面部はテール部のみを、厚肉鋼板の厚さよりも薄い薄板壁で構成してなる、前記掘削断面と同一の外形を呈する鋼殻を有し、
前記鋼殻の天井部および床部には、天井部の上面の一部または床部の下面の一部から、水平方向に外側へと張り出した張出装置を設置し、
張出装置には張出カッターを内装し、
天井部から張り出した張出装置の下面と、床部から張り出した張出装置の上面との間の距離を、掘進機カッターによる掘削高さと同等としたことを特徴とする、
シールド掘進機。 - 既設の地下構造物に近接してシールドトンネルを構築するためのシールド掘進機であって、
掘削断面が矩形となる掘進機カッターを有し、
天井部と両壁面部を厚肉鋼板で構成し、かつ床部はテール部のみを厚肉鋼板等の厚さよりも薄い薄板床で構成してなる、前記掘削断面と同一の外形を呈する鋼殻を有し、
前記鋼殻の両壁面部には、両壁面部の外面の一部から、下方向に外側へと張り出した張出装置を設置し、張出装置には張出カッターを内装し、
両壁面部から張り出した張出装置の内側面間の距離を、掘進機カッターの掘削幅と同等としたことを特徴とする、
シールド掘進機。 - 矩形の大断面トンネルを構築するために、大断面トンネルの外周に沿って小断面トンネルを連続構築する、シールドトンネルの構築方法であって、
(a)請求項1に記載のシールド掘進機を用いる工程であって、既設の小断面トンネルを、請求項1に記載のシールド掘進機の張出装置で挟む状態で掘進を行って、水平方向に連続する小断面トンネルを構築する工程、
(b)水平方向に連続する小断面トンネルのうち、端部にある、端部側小断面トンネルの天井部を、当該端部側小断面トンネルに隣接する小断面トンネルの天井部よりも高くなるように構築する工程、
(c)請求項2に記載のシールド掘進機を用いる工程であって、前記端部側小断面トンネルの天井部を、請求項2に記載のシールド掘進機の張出装置で挟む状態で掘進を行って、前記端部側小断面トンネルの上方向に、小断面トンネルを構築する工程、
を少なくとも含むことを特徴とする、
シールドトンネルの構築方法。
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