以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る画像形成装置1は、図1に示すように、給紙部10、用紙搬送部20、画像読取部30、画像形成部40、潤滑剤塗布部50、潤滑剤均し部60、中間転写部80、二次転写部90、定着部100、および制御部110を備えている。以下、画像形成装置1の各構成について、図1〜図8を参照しながら説明する。
図1は、画像形成装置1の全体構成を示す概略断面図である。図2は、画像形成装置1の潤滑剤塗布部50および潤滑剤均し部60を示す概略断面図である。図3は、画像形成装置1の潤滑剤均し部60を示す概略側面図である。図4は、画像形成装置1の潤滑剤均し部60の均しブレード61の移動を示す概略側面図であり、(a)〜(e)はそれぞれ均しブレード61が感光体ドラム41に当接した状態で連続的に移動する状態を示している。図5は、画像形成装置1の画像形成部40の感光体ドラム41上に塗布された潤滑剤52が均されていく状態を示す模式図であり、(a)〜(e)はそれぞれ潤滑剤52が連続的に均されていく状態を示している。図6は、画像形成装置1の潤滑剤均し部60の制御系の構成を示すブロック図である。図7は、画像形成装置1の均しブレード61に係る移動の軌道を示す模式図であり、(a)〜(d)はそれぞれ均しブレード61の移動の軌道を示している。図8は、画像形成装置1の潤滑剤均し部60の制御を示すフローチャートである。
給紙部10は、後述する用紙搬送部20に用紙Sを給紙する。
この給紙部10は、図1に示すように、給紙トレイ11、12、および13を備えている。給紙トレイ11、12、および13は、それぞれ所定の枚数の用紙Sを収容する。給紙トレイ11、12、および13は、それぞれ画像形成装置1に対して着脱可能に設けられている。給紙トレイ11、12、および13は、異なる形状や種類の用紙Sを個別に収納することができる。
用紙搬送部20は、給紙部10から供給された用紙Sを後述する中間転写部80および定着部100に搬送した後に外部に搬出する。
この用紙搬送部20は、図1に示すように、送出ローラー21、さばきローラー22、搬送ローラー23、ローラー24、搬出ローラー25、用紙反転ローラー26〜29を備えている。送出ローラー21は、給紙トレイ11、12、および13の一端にそれぞれ配設され、その給紙トレイ11、12、または13に収納された用紙Sを送り出す。さばきローラー22は、各送出ローラー21に隣接して配設され、各送出ローラー21により送り出された用紙Sを1枚毎に分離する。搬送ローラー23は、各さばきローラー22に隣接して配設され、各さばきローラー22により分離された用紙Sを搬送経路に配設されたローラー24に搬送する。
また、用紙搬送部20のローラー24は、画像形成装置1内に複数設けられ、各搬送ローラー23から搬送された用紙Sを後述する中間転写部80の中間転写ローラー81に搬送し、中間転写ベルト82上の現像剤画像が用紙Sに転写される。搬出ローラー25は、後述する定着部100から搬出された用紙Sを画像形成装置1の外部に搬出する。用紙反転ローラー26〜29は、中間転写部80から搬出された用紙Sの裏表を反転させる。その用紙Sは、搬出ローラー25を介して中間転写部80の中間転写ローラー81に再度搬送される。再度搬送された用紙Sの裏面側に、現像剤画像が転写される。
画像読取部30は、画像形成装置1に載置された原稿Pの画像を読み取り、その原稿Pに形成されている画像を画像データとして記憶する。
この画像読取部30は、図1に示すように、光源31、光学素子32、撮像素子33、および画像処理回路34を備えている。光源31から出射された光は、読取面35に載置された原稿Pに照射される。原稿Pには、所定の情報や画像が印刷等されている。原稿Pで反射した光は、光学素子32であるレンズおよび反射鏡を介して、撮像素子33に結像される。撮像素子33は、光学素子32を介して結像された原稿Pからの反射光の強度に応じて、電気信号を生成する。撮像素子33で生成された電気信号は、撮像素子33に接続された画像処理回路34において、アナログ信号からディジタル信号に変換される。ディジタル信号は、補正処理、フィルター処理、および画像圧縮処理などが施された後に、画像データとして画像処理回路34内に設けられたメモリーに記憶される。
画像形成部40は、画像形成手段に相当し、画像データに基づき現像剤画像を形成する。
この画像形成部40において、画像データは、図示せぬパソコン等から受信され、または画像読取部30で読み取られ記憶されているメモリーから受信される。画像形成部40は、図1に示すように、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部40Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部40M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部40C、およびブラック(K)色の画像を形成する画像形成部40Kを備えている。画像形成部40Y、画像形成部40M、画像形成部40C、および画像形成部40Kは、形成する画像の色を除いて互いに略同一の構成である。したがって、画像形成部40の構成は、一例としてブラック(K)色に対応する画像形成部40Kを用いて説明する。
画像形成部40Kは、感光体ドラム41K、帯電部42K、光書込部43K、現像部44K、および清掃部45Kを備えている。感光体ドラム41Kは、像担持体であり被塗布部材に相当し、画像データに基づき形成された静電潜像を表面に担持する。帯電部42Kは、感光体ドラム41Kの表面に対して電荷を均一に帯電させる。光書込部43Kは、画像データに基づき感光体ドラム41Kの表面に画像の情報が含まれた信号からなる光を照射して、その感光体ドラム41Kの表面に静電潜像を形成する。現像部44Kは、現像剤供給ローラー、現像ローラー、および層厚規制ブレードを備えている。
また、画像形成部40Kの現像部44Kは、現像剤供給ローラーから供給し層厚規制ブレードにより所定の層厚に規制した現像剤を、現像ローラーを介して感光体ドラム41Kに供給する。現像部44Kから供給された現像剤により、感光体ドラム41Kの表面に形成された静電潜像を現像して現像剤画像を形成する。清掃部45Kは、クリーニング部材に相当するクリーニングブレードからなる。クリーニングブレードは、たとえば、ウレタンゴムからなり、感光体ドラム41の軸方向の全長にわたって当接可能なように板状に形成されている。クリーニングブレードは、後述する中間転写部80の中間転写ローラー81よりも感光体ドラム41の回転方向下流側であって、かつ、後述する潤滑剤塗布部50の潤滑剤塗布ブラシ51よりも感光体ドラム41の回転方向上流側に配設されている。クリーニングブレードは、感光体ドラム41の表面の転写されなかった余分な現像剤や、帯電により生じたイオン生成物等の不純物等を除去する。
画像形成装置1に係る感光体ドラム41の表面に潤滑剤52を塗布する潤滑剤塗布部50、および感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を均す潤滑剤均し部60については、その詳細を後述する。
中間転写部80は、画像形成部40で形成された現像剤画像を、中間転写ベルト82に一時的に転写させる。
この中間転写部80は、図1に示すように、中間転写ローラー81、中間転写ベルト82、回動ローラー83を備えている。中間転写ローラー81Y、81M、81C、および81Kは、それぞれ中間転写ベルト82を挟んだ状態で、感光体ドラム41Y、41M、41C、および41Kと対向して配設されている。中間転写ベルト82は、現像剤画像を一時的に転写させるものであり、無端状に形成されている。画像形成部40Y、40M、40C、および40Kで形成された各色の現像剤画像は、回動している中間転写ベルト82上に逐次転写される。したがって、中間転写ベルト82上には、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色の現像剤画像が重畳したカラーの画像が形成される。回動ローラー83は、中間転写ベルト82の内周面に複数設けられ、その中間転写ベルト82に一定の張力を与えた状態で中間転写ベルト82を回動させる。
二次転写部90は、中間転写部80の中間転写ベルト82に一時的に転写された現像剤画像を、用紙搬送部20で搬送される用紙Sに転写させる。
この二次転写部90は、図1に示すように、二次転写ローラー91、二次転写ベルト92、回動ローラー93を備えている。二次転写ローラー91および回動ローラー93は、現像剤画像が一時的に転写された中間転写ベルト82および搬送されてくる用紙Sを挟んだ状態で、二次転写ベルト92を介して配設されている。二次転写ベルト92は、中間転写ベルト82に一時的に転写された現像剤画像を用紙Sに転写させるものであり、無端状に形成されている。回動ローラー93は、二次転写ベルト92の内周面に複数設けられ、その二次転写ベルト92に一定の張力を与えた状態で、二次転写ベルト92を回動させる。二次転写ローラー91に所定の電圧(V)を印加することにより、中間転写ベルト82上の現像剤画像が電気的に用紙Sに転写される。
定着部100は、中間転写部80および二次転写部90により用紙Sに転写された現像剤画像をその用紙Sに定着させる。
この定着部100は、図1に示すように、加熱ローラー101および加圧ローラー102を備えている。加熱ローラー101と加圧ローラー102は、用紙搬送部20により搬送されてきた用紙Sを付勢した状態で挟み込むように配設している。加熱ローラー101の内部には、図示せぬ加熱用のヒータが設けられている。加熱ローラー101および加圧ローラー102は、用紙Sの表面に静電気力のみで付着している現像剤画像を溶解しながら加圧することにより、用紙Sに現像剤画像を定着させる。
潤滑剤塗布部50は、感光体ドラム41の表面に潤滑剤52を塗布する。
この潤滑剤塗布部50は、図2に示すように、潤滑剤塗布ブラシ51、潤滑剤52、押圧部材53、および押圧バネ54を備えている。潤滑剤塗布ブラシ51は、潤滑剤塗布手段に相当し、図2に示すように、感光体ドラム41および潤滑剤52の表面に当接して回転し、潤滑剤52を感光体ドラム41に塗布する。潤滑剤塗布ブラシ51は、アクリルカーボン等からなるブラシ繊維である毛状部材を芯金に対して所定のパイル密度、パイル径およびパイル長で植毛して形成している。潤滑剤塗布ブラシ51は、ブラシ繊維を植毛したシートを芯金に巻き付けて形成してもよい。潤滑剤塗布部材は、上述したブラシに限定されることはなく、たとえば潤滑剤52を塗布可能なローラーで構成してもよい。潤滑剤52は、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)やステアリン酸カルシウム(CaSt)等からなり、固形状に形成されている。
また、潤滑剤塗布部50の押圧部材53は、コの字状に形成された金属板からなり、外周面に潤滑剤52を載置している。押圧バネ54は、螺旋状に巻かれた金属線からなり、押圧部材53の内周面に収納されている。押圧バネ54は、押圧部材53を介して固形の潤滑剤52を潤滑剤塗布ブラシ51に対して押圧している。この状態で、潤滑剤塗布ブラシ51が回転すると、固形状の潤滑剤52が掻き取られ個片化される。個片化された潤滑剤52は、感光体ドラム41の表面に塗布される。感光体ドラム41の表面に塗布された潤滑剤52は、感光体ドラム41とクリーニングブレードに相当する清掃部45との間に発生する摩擦力を低減させることで、感光体ドラム41の表面を保護する。さらに、潤滑剤52は、感光体ドラム41の表面に残留した残留物を清掃する。
潤滑剤均し部60は、均し部材と移動手段とを備え、感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を均す。
この潤滑剤均し部60の均し部材は、図2および図3に示すように、均しブレード61に相当する。移動手段は、たとえば、カム62a、62b、および62c、ギア63a、63b、および63c、ステッピングモーター64a、64b、および64c、押圧バネ65、張架バネ66、ガイドレール67および68に相当する。均しブレード61は、カム62a、62b、および62cに付勢されて移動する。均しブレード61は、感光体ドラム41の表面に鋭角をなすように当接し、感光体ドラム41の表面に塗布された潤滑剤52の塗布ムラを解消する。均しブレード61は、ウレタンゴム等からなり、感光体ドラム41の軸方向の全長にわたって当接可能なように板状に形成している。
ここで、潤滑剤均し部60のカム62aおよび62bは、第1の変位部材に相当し、図3に示す均しブレード61の下方に並行して配設されている。カム62cは、第2の変位部材に相当し、均しブレード61の側方の一端に配設されている。ギア63a、63b、および63cは、カム62a、62b、および62cと回動可能に噛み合っている。ステッピングモーター64a、64b、64cは、ギア63a、63b、および63cを回動可能に連結している。押圧バネ65は、カム62cと対向するように、均しブレード61の側方の他端側に配設されている。押圧バネ65は、均しブレード61をカム62cが配設された一端側に押圧している。張架バネ66は、均しブレード61の下方の中央に開口された貫通孔61aに係止され、カム62aおよび62bの中間に配設されている。張架バネ66は、均しブレード61を下方側に張架している。ガイドレール67および68は、均しブレード61の下方の両端を支持している。カム62a、62b、および62cを所定のタイミングで回動すると、均しブレード61は、感光体ドラム41の移動方向に沿った方向(図3中にYで示す方向)と、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向(図3中にXで示す方向)とに移動される。
潤滑剤均し部60の均しブレード61の具体的な動作について、さらに図4および図5を参照しながら説明する。
図4(a)〜(e)に示す潤滑剤均し部60の均しブレード61の移動に伴い、図5(a)〜(e)に示す画像形成部40の感光体ドラム41上に塗布された潤滑剤52が均されていく。図4(a)〜(e)および図5(a)〜(e)に示す状態は、図2に示す画像形成部40の感光体ドラム41と均しブレード61の当接部分における(a)〜(e)に示す領域での状態に相当する。
図4(a)から図4(b)に示す均しブレード61は、カム62a、62b、および62cが反時計回りに回動することにより、感光体ドラム41の移動方向と反対方向である図中下方であって、かつ図中左方に移動される。図4(b)から図4(c)に示す均しブレード61は、カム62a、62b、および62cがさらに反時計回りに回動することにより、感光体ドラム41の移動方向と反対方向である図中上方であって、かつ図中左方にさらに移動される。図4(c)から図4(d)に示す均しブレード61は、カム62a、62b、および62cが時計回りに回動することにより、感光体ドラム41の移動方向である図中上方であって、かつ図中右方に移動される。図4(d)から図4(e)に示す均しブレード61は、カム62a、62b、および62cがさらに時計回りに回動することにより、感光体ドラム41の移動方向である図中下方であって、かつ図中右方にさらに移動される。
図4(a)〜(e)に示す潤滑剤均し部60の均しブレード61の移動に伴い、図5(a)〜(e)に示すように、画像形成部40の感光体ドラム41上に塗布された潤滑剤52が徐々に均されていく。図5(a)に示す感光体ドラム41上に塗布された潤滑剤52は、図2に示すように固体状の潤滑剤52から掻き取られて個片化しただけの状態であり、層厚が厚く、かつ不均一である。この図5(a)に示す潤滑剤52は、均しブレード61に付勢されて転がるにつれて亀裂が大きくなり徐々に崩れる。すなわち、潤滑剤52は、図5(b)、(c)、(d)に示す状態を経て徐々に均される。最終的に、潤滑剤52は、図5(e)に示すように、感光体ドラム41上で均一に均された状態になる。
潤滑剤均し部60の均しブレード61を感光体ドラム41上で移動させることによる効果について、表1を参照しながら説明する。
均しブレード61を通過しようとする潤滑剤52は、潤滑剤塗布ブラシ51に掻き取られたままで、十分にほぐされておらず、感光体ドラム41上で塊の状態で点在している状態である。塊の状態の潤滑剤52は、均しブレード61が感光体ドラム41に当接した状態で、例えば円形状に回動しながら移動することにより、均しブレード61のニップ部で転がりつつ、均しブレード61から付勢される。したがって、潤滑剤52は、均しブレード61を通過する際に十分にほぐされて、均一な状態になる。
表1に示すように、均しブレード61が感光体ドラム41の移動方向に対して相対的に移動した場合、潤滑剤52は、十分に均されることなく、A4版における連続印刷枚数が1000[kp]で印刷画像に画像スジが発生した。一方、均しブレード61が感光体ドラム41の軸方向に対して直交する方向と、その直交する方向と交差する方向の合成方向に相当する円方向に回動しながら移動した場合には、潤滑剤52は十分に均された。この結果、均しブレード61が円方向に回動しながら移動した場合には、A4版における連続印刷枚数が1500[kp]まで印刷画像に画像スジが発生しなかった。すなわち、均しブレード61が感光体ドラム41に対して円方向に移動し、潤滑剤52が均一に均されたことから、寿命までの印刷枚数が飛躍的に向上する結果が得られた。さらに、現像剤の内部に取り込まれる潤滑剤52の量も抑制することができた。
ここで、均しブレード61を感光体ドラム41に当接させた状態において、均しブレード61に印加する振動周波数が、20Hzを超えると感光体ドラム41が振動して印刷画像が乱れ、25Hzを超えると振動音も発生する。均しブレード61の振動周波数は、0.1〜20Hzが適当であり、望ましくは1〜10Hzである。
制御部110は、各構成を所定の条件で制御し、画像データに基づく画像を用紙Sに形成する。
この制御部110は、給紙部10、用紙搬送部20、画像読取部30、画像形成部40、潤滑剤塗布部50、潤滑剤均し部60または70、中間転写部80、二次転写部90、および定着部100を所定の条件で制御する。制御部110は、図1に示すように、たとえば、画像形成装置1の内部に設けられている。制御部110は、均しブレード61が、感光体ドラム41の移動方向に沿った方向と、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向とに移動されるように、カム62a、62b、および62c等から構成される移動手段を制御する制御手段を備えている。
制御部110による潤滑剤均し部60の制御系の構成を、図6に示すブロック図を参照しながら説明する。
制御部110のCPU(Central Processing Unit)111は、ROM112(Read Only Memory)に格納された均しブレード61の移動に制御プログラムを実行する。CPU111は、ステッピングモーター64aおよび64bを駆動することにより、ギア63aおよび63bを介して、均しブレード61を付勢するカム62aおよび62bを回動させ、均しブレード61を感光体ドラム41の移動方向に沿って移動させる。ROM112は、潤滑剤均し部60の均しブレード61の移動に係る制御プログラムを、画像形成装置1の環境(温度および湿度)と潤滑剤均し部60の使用状態(消耗具合)等に対応した条件毎に格納している。
また、制御部110のRAM(Random Access Memory)113は、CPU111による制御プログラムの実行に伴い発生する演算結果、および後述するセンサー114およびカウンター115で得られた情報を一時的に記憶する。センサー114は、画像形成装置1に設けられた図示せぬ温度計および湿度計である。センサー114で検出された画像形成装置1の温度および湿度は、一定時間毎にRAM113に記憶される。カウンター115は、潤滑剤塗布部50に設けられた図示せぬ計数器である。カウンター115は、たとえば、潤滑剤塗布部50に設けられた潤滑剤塗布ブラシ51の回転数を計数する。カウンター115で計数された潤滑剤塗布ブラシ51の累積回転数は、RAM113に記憶される。潤滑剤塗布ブラシ51の累積回転数が増加するとともに、潤滑剤塗布ブラシ51は消耗することになる。
制御部110による潤滑剤均し部60の制御において、均しブレード61は、感光体ドラム41に対して感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に沿って線状または面状に当接させながら移動させる。したがって、CPU111は、均しブレード61の下方に並行して配設されたカム62aおよび62bを同一の制御により回動させることが望ましい。CPU111は、ステッピングモーター64cを駆動することにより、ギア63cを介して、均しブレード61を付勢するカム62cを回動させ、均しブレード61を感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に移動させる。
次に、制御部110の制御手段により均しブレード61を円状、楕円状、八の字状、または線状の軌道で移動させる制御について、図7に示す模式図を参照しながら説明する。
制御部110の制御手段において、図7(a)は、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上で円状に移動させる軌道を示す模式図である。均しブレード61を、図中A、B、C、およびDの順で円状に移動させるためには、前述した図4に示すようにカム62a、62b、および62cを回動させる。図7(b)は、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上で軸方向が長手となる楕円状に移動させる軌道を示す模式図である。均しブレード61を、図中A、B、C、およびDの順で楕円状に移動させるためには、たとえば、前述した図7(a)と比較してカム62aおよび62bの回動のみを相対的に高速にする。
また、制御部110の制御手段において、図7(c)は、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上で八の字状に移動させる軌道を示す模式図である。均しブレード61を、図中A、B、C、D、E、F、G、およびHの順で八の字状に移動させるためには、前述した図4(b)における状態を基準として、カム62aおよび62bを時計回りおよび反時計回りで回動させつつ、カム62cを時計回りおよび反時計回りで回動させる。図7(d)は、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上で軸方向に線状に往復運動するように移動させる軌道を示す模式図である。均しブレード61を、線状に往復運動するように移動させるためには、前述した図7(b)におけるカム62aおよび62bを、図中AおよびBの順で感光体ドラム41の周速度に対応する速度で半時計方向のみ回動させつつ、カム62cを高速で回動させる。
さらに、制御部110の制御手段により均しブレード61を所定の軌道で移動させる制御について、図8に示すフローチャートを参照しながらより具体的に説明する。
たとえば、画像形成装置1の電源を投入したり、画像形成装置1の画像読取部30において原稿Pの画像が読み取られると、図8に示すフローチャートにおいて、感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を均しブレード61を用いて均一に均す制御が開始される(スタート)。制御部110において、ROM112に均しブレード61に所定の移動条件が有るか否かが判断され、所定の移動条件が有る場合にはステップ2に進み、所定の移動条件が無い場合にはステップ5に進む(ステップS1)。
所定の移動条件は、たとえば次の条件である。画像形成装置1の周囲の環境は、NN、HH、およびLLで表される。NNは、画像形成装置1の周辺の温度が20℃で相対湿度が50%からなる理想的な環境を表している。HHは、画像形成装置1の周辺の温度が30℃で相対湿度が80%の高温多湿の環境を表している。LLは、画像形成装置1の周辺の温度が10℃で相対湿度が20%の低温少湿の環境を表している。LLの低温少湿の場合には、NNの場合と比較して、潤滑剤52が固着して均し難いことから、均しブレード61を感光体ドラム41上でたとえば八の字状に移動させる。一方、HHの高温多湿の場合には、NNの場合と比較して、潤滑剤52が柔らかく均し易いことから、均しブレード61を感光体ドラム41上でたとえば円状に移動させる。
また、所定の移動条件は、たとえば次の条件である。画像形成装置1の潤滑剤均し部60の潤滑剤塗布ブラシ51の劣化に合わせて、その潤滑剤塗布ブラシ51の回転数を上昇させ、感光体ドラム41に転写させる潤滑剤52の量が相対的に減少しないように制御することがある。この場合、均しブレード61の回転数を上昇させた状態で潤滑剤52を掻き取っていることから、感光体ドラム41に転写させる潤滑剤52の量は相対的に減少していないものの、潤滑剤52の大きさは相対的に粗く個片化された状態である。すなわち、潤滑剤52は、大きな塊の状態で感光体ドラム41に転写されていることになる。したがって、粗く個片化された潤滑剤52を十分に均すために、均しブレード61を感光体ドラム41上でたとえば八の字状に移動させる。
続いて、ステップS1からステップS2に進んだ場合、RAM113に記憶された画像形成装置1の温度および湿度を読み込む(ステップS2)。続いて、ステップS2からステップS3に進んだ場合、RAM113に記憶された潤滑剤均し部60の潤滑剤塗布ブラシ51の累積回転数を読み込む(ステップS3)。画像形成装置1の温度および湿度または潤滑剤均し部60の消耗具合のいずれか一方のみを読み込む構成としてもよい。続いて、ステップS3からステップS4に進んだ場合、ステップ2および3の結果に基づき、均しブレード61の移動方法を決定する(ステップS4)。続いて、ステップS4からステップS5に進んだ場合、ステッピングモーター64a、64b、および64cを駆動することにより、ギア63a、63b、および63cを介して、均しブレード61を付勢するカム62a、62b、62cを回動させる。均しブレード61は、カム62a、62b、62cに付勢されて移動する(ステップS5)。その後、たとえば、画像形成装置1における印刷動作が完了し、または画像形成装置1の電源が消されると、感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を均しブレード61を用いて均一に均す制御が終了される(エンド)。
潤滑剤塗布装置は、少なくとも、潤滑剤塗布部50の潤滑剤52と、均し部材に相当する潤滑剤均し部60の均しブレード61と、均し部材を移動させる移動手段に相当する潤滑剤均し部60のカム62a、62b、および62c等と、移動手段を制御する制御手段を設けた制御部110を有する構成とすることができる。
画像形成装置1は、少なくとも、上記の潤滑剤塗布装置に加えて、画像形成手段に相当する画像形成部40を有する構成とすることができる。ここで、画像形成部40に備えられた感光体ドラム41Kが、被塗布部材に相当する。
以上のとおり、説明した第1の実施形態は、以下の効果を奏する。
均しブレード61が、感光体ドラム41に当接した状態で、感光体ドラム41の移動方向に沿った方向と、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向とに移動される。
このような構成によれば、感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を十分に均すことができる。すなわち、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向においても、潤滑剤の厚みを均一にすることができる。したがって、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に対する均しブレード61の摩耗量を均一にすることができる。この結果、感光体ドラム41の移動方向に沿って生じる画像スジ等の印刷不良を防止することができる。さらに、感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に対する均しブレード61の摩耗量を均一にすることができる。したがって、クリーニングブレードによる感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に対する清掃の状態を均一にすることができる。この結果、感光体ドラム41の表面に対して現像剤に含まれる外添剤や塵等が残留することなく、感光体ドラム41のクリーニング不良を防止することができる。また、均しブレード61の摩耗量が均一になることから、均しブレードの摩耗量が不均一となる場合と比較して、均しブレード61をより長い期間使用することができる。
また、制御部110に設けられた制御手段は、均しブレード61が、円状、楕円状、八の字状、または線状の軌道で移動するように、カム62a、62b、および62c等からなる移動手段を制御する構成とすることができる。
このような構成によれば、たとえば、画像形成装置1の周辺の温度が10℃で相対湿度が20%の低温少湿の環境であるLLの場合には、NNの場合と比較して、潤滑剤52が固着して均し難いことから、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上でたとえば八の字状に移動させることができる。また、画像形成装置1の周辺の温度が30℃で相対湿度が80%の高温多湿の環境であるHHの場合には、NNの場合と比較して、潤滑剤52が柔らかく均し易いことから、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上でたとえば円状に移動させることができる。さらに、均しブレード61の劣化に合わせて、均しブレード61の回転数を上昇させる場合には、感光体ドラム41に転写させる潤滑剤52の量は相対的に減少していないものの、潤滑剤52の大きさは相対的に粗く個片化される。このような場合に、粗く個片化された潤滑剤52を十分に均すために、均しブレード61を感光体ドラム41の表面上でたとえば八の字状に移動させることができる。このように、画像形成装置1の周辺の温度および湿度や、均しブレード61の消耗具合に合わせて、均しブレード61の最適な移動方法を選択することができる。
同様に、均しブレード61は、感光体ドラム41の移動方向に沿って延在させる構成とすることができる。
このような構成によれば、均しブレード61は、感光体ドラム41に対して面状に当接した状態で移動することから、感光体ドラム41上の潤滑剤52を万遍なく均すことができる。したがって、均しブレード61を通過しようとする潤滑剤52が、たとえば、感光体ドラム41上で塊の状態で点在している状態であっても、均しブレード61の面状に当接したニップ部で転がり、十分にほぐされて均一に均される。
また、均しブレード61は、ゴムブレードとすることができる。
このような構成によれば、均しブレード61は、柔軟性に富んだゴムからなり、感光体ドラム41上に密着させることができる。したがって、均しブレード61は、感光体ドラム41上の潤滑剤52を万遍なく均等に付勢して、その潤滑剤52を効率良く均すことができる。
ここで、移動手段は、均しブレード61を感光体ドラム41の移動方向に沿った方向に移動させる第1変位部材(カム62aおよび62b等)と、均しブレード61を感光体ドラム41の移動方向と交差する方向に移動させる第2変位部材(カム62c等)と、を備えた構成とすることができる。
このような構成によれば、たとえば、均しブレード61の下方と側面の一端にカムを配置し、そのカムを用いて均しブレード61を付勢するような簡便な構成により、均しブレード61を円状、楕円状、八の字状、または線状等の軌道で移動させることができる。
また、潤滑剤塗布手段は、潤滑剤52と、潤滑剤52を感光体ドラム41に付勢する付勢部材(たとえば押圧バネ)と、を備えた構成とすることができる。
このような構成によれば、感光体ドラム41に潤滑剤52を直接当接させ、潤滑剤52を感光体ドラム41上に塗布するような非常に簡便な部材により構成することができる。
また、潤滑剤52と、離間して配設された潤滑剤52および感光体ドラム41にそれぞれ当接し潤滑剤52を感光体ドラム41に塗布する潤滑剤塗布部材(たとえば潤滑剤塗布ブラシ51)と、潤滑剤52を潤滑剤塗布部材(たとえば潤滑剤塗布ブラシ51)に付勢する付勢部材(たとえば押圧バネ54)と、を備えた構成とすることができる。
このような構成によれば、感光体ドラム41に潤滑剤52を直接当接させることなく、潤滑剤塗布手段により個片化した潤滑剤52を、潤滑剤塗布手段を介して感光体ドラム41に塗布することができる。したがって、潤滑剤52の硬度等の仕様に基づき、潤滑剤塗布手段で潤滑剤52を掻き取る条件を決定することにより、感光体ドラム41に転写させる潤滑剤52の量を最適化することができる。
第1の実施形態に係る潤滑剤塗布装置は、後から画像形成装置1に取り付けて使用する構成としてもよいし、最初から画像形成装置1に内蔵して使用する構成としてもよい。また、潤滑剤塗布装置を、画像形成装置1に着脱自在に設ける構成としてもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る画像形成装置1に設けられた図9に示す潤滑剤均し部70は、前述した第1の実施形態に係る画像形成装置1に設けられた潤滑剤均し部60よりも簡便な構成からなる。この潤滑剤均し部70は、特に、均しブレード71を予め定めた所定の軌道で移動させる場合に適している。
図9は、第2の実施形態に係る画像形成装置1の潤滑剤均し部70を示す概略側面図であり、(a)および(b)はそれぞれ潤滑剤均し部の均しブレード71が感光体ドラム41に当接した状態で移動する状態を示している。
この潤滑剤均し部70は、前述した潤滑剤均し部60と同様に、均し部材と移動手段とを備え、感光体ドラム41に塗布された潤滑剤52を均す。均し部材は、図9に示す均しブレード71に相当する。均しブレード71は、前述した均しブレード61と同様の構成からなるが、たとえば波状の形状からなるガイド溝71bおよび71cが並行に開口されている。移動手段は、図9に示すように、たとえば、変位部材に相当するカム62c、ギア63c、ステッピングモーター64c、押圧バネ65、張架バネ66、およびガイドピン72および73に相当する。すなわち、潤滑剤均し部70の移動手段は、前述した潤滑剤均し部60の移動手段と異なり、カム62aおよび62b、ギア63aおよび63b、ステッピングモーター64aおよび64b、およびガイドレール67および68を備えていない。
一方、潤滑剤均し部70は、ガイドピン72および73を備えている。ガイドピン72および73は円柱形状からなり、画像形成装置1に固定されている。ガイドピン72および73は、均しブレード71のガイド溝71bおよび71cにそれぞれ挿通されている。均しブレード71は、カム62cに付勢されると、ガイドピン72および73に当接されたガイド溝71bおよび71cの内周面のパターンに沿って移動する。均しブレード71のガイド溝71bおよび71cの内周面が波状の形状であることから、均しブレード71は、感光体ドラム41に当接しながら波状に移動される。
以上のとおり、説明した第2の実施形態は、以下の効果を奏する。
移動手段は、均しブレード71を感光体ドラム41に対して一の方向に付勢する付勢部材(カム62c等)と、位置が固定されたガイドピン72および73と、均しブレード71に形成され、ガイドピン72および73が挿通されるガイド溝71bおよび71cと、
を備えた構成とすることができる。均しブレード71は、変位部材(カム62c等)により付勢されると、ガイド溝71bおよび71cのパターンに沿って移動される。
このような構成によれば、均しブレード71の側面の一端にカムを配置し、そのカムを用いて均しブレード71を付勢するような非常に簡便な構成により、均しブレード71に形成されたガイド溝71bおよび71cの内周面の形状に沿って、均しブレード71を所定の軌道で移動させることができる。特に、均しブレード71を予め定めた所定の軌道で移動させる場合に適している。
(改変例)
改変例に係る被塗布部材は、図2に示す画像形成部40内に設けられた感光体ドラム41と異なり、画像形成装置1に設けられた図10に示す二次転写部90の二次転写ベルト92に相当する。図10に示すように、二次転写ベルト92に、潤滑剤塗布部50と潤滑剤均し部60または70を配設する。二次転写ベルト92に、画像形成部40Kの清掃部45Kに相当するクリーニングブレードを配設してもよい。その他の改変例に係る潤滑剤塗布装置および画像形成装置の構成は、前述した第1の実施形態に係る潤滑剤塗布装置および画像形成装置1の構成と同様である。
改変例に係る被塗布部材は、二次転写部90の二次転写ベルト92に塗布された潤滑剤52を十分に均し、二次転写ベルト92上の潤滑剤52を均一にすることできる。すなわち、二次転写ベルト92の移動方向と交差する方向においても、潤滑剤52の厚みを均一にすることができる。したがって、二次転写ベルト92の移動方向と交差する方向に対する均しブレード61の摩耗量を均一にすることができる。この結果、二次転写ベルト92の移動方向に沿って生じる画像スジ等の印刷不良を防止することができる。さらに、二次転写ベルト92の移動方向と交差する方向に対する均しブレード61の摩耗量を均一にすることができる。したがって、クリーニングブレードによる二次転写ベルト92の移動方向と交差する方向に対する清掃の状態を均一にすることができる。この結果、二次転写ベルト92の表面に対して現像剤に含まれる外添剤や塵等が残留することなく、二次転写ベルト92のクリーニング不良を防止することができる。なお、画像形成部40の感光体ドラム41と、二次転写部90の二次転写ベルト92の両方に、潤滑剤塗布部50と潤滑剤均し部60または70を配設する構成としてもよい。
本発明は、上述した第1と第2の実施形態および改変例にのみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
上述した第1の実施形態では、感光体ドラム41に潤滑剤52を直接当接させ、潤滑剤52を感光体ドラム41上に塗布する構成としてもよい。このような構成の場合、感光体ドラム41に潤滑剤52を塗布する潤滑剤塗布手段は、たとえば、押圧バネに相当する。押圧バネを用いて、潤滑剤52を感光体ドラム41に当接させる。
また、上述した第1の実施形態では、画像形成装置1をプリンタとして説明したが、このような構成に限定されることはない。具体的には、画像形成装置1は、複写機、ファクシミリ装置、または多機能周辺機器(MFP:Multi−Function Peripheral)として構成してもよい。