JP5962826B2 - Crを含有するスラグの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化CrをCr23の質量濃度に換算して4%以上含有するスラグの処理方法およびそのスラグに含まれる有価成分の回収方法に関する。
Cr酸化物を含む酸化物は、含Crスラグ、含Crスラッジ、含Crダストなどと呼ばれ、Crを含有する鋼の製造工程、特に製鋼工程で発生する。本明細書では、この酸化物を単にスラグと総称する。
このようなスラグは、Crを含まなければ、鉄鋼生産の副生成物として、路盤材やコンクリート骨材など様々な分野に利用できる。ところが、一般にCrをCr23で4質量%以上含む状態では、スラグ中Crの存在形態や周辺環境条件に依って周辺環境へのCrの溶出の状態が変わるため、その利用は困難である。すなわち、スラグに含まれるCrは、Cr23などの酸化物として固溶するか、MgCrなどのスピネル(Spinel)酸化物として存在しており、この状態で環境中の水分と接触すると、Crの溶出を生じるからである。Crは、この時、スラグに含まれる存在形態によっては、Cr(III)(以下、「三価Cr」という)の他にCr(VI)(以下「六価Cr」という)で溶出する。後者は、その影響から、環境への拡散を制限されているイオンあるいは錯イオンである。このことが、Cr23の質量濃度に換算して4%以上含有するスラグがその有効利用を阻まれている主因である。さらには、そのために該スラグはその溶出形態によって管理投棄型の最終処分が必要であり、資源の浪費とコストの増加の両方が生じてしまう。なお、酸化物系スラグ中でCrはCrO、Cr23などとして存在するが、ここでのCrの濃度は、化学分析で得られたCr濃度、すなわち全Cr濃度をCr23に換算して質量百分率で表記した。
このような課題を解決するため、発生した含Crスラグから六価Crの溶出を抑制する方法として、従来から様々な処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、含Crスラグを30℃以上で100℃未満の温水中に浸漬して、スラグ中に含まれる六価Crを溶出させてスラグを無害化するとともに、溶出水は還元剤を投入して六価Crを還元する方法が示されている。しかし、この方法は、この技術を実現するための専用の処理施設を必要とし、工業的な成立には一定量以上のスラグ、一定以上の規模の施設を要する。その上、この方法は塊状ないし粒状のスラグの表面の無害化は可能であるが、その内部の無害化への効果は限定的であるので、処理されたスラグの利用用途にも制限が生じる。さらには、スラグに含まれたCrそのものは全てがスラグに残留することになる。
近年、資源の有効利用は社会的にも工業的にも重要な課題であり、有用なCrなどの有価金属の回収が効率よくできれば、その価値は大きい。そこで、含Crスラグを高温で溶融還元処理を行って、スラグ中Cr濃度自体を減少させることにより、スラグの有効利用を阻む六価Crの溶出を抑制し、さらにはスラグ中Crの回収を行うことが試みられた。このような考え方は既に広く周知しており、例えば非特許文献1には、その有用性、溶融還元の原理、実験室規模の試験、および実機規模の試験と商用化について述べられている。このような考え方が基本にある訳であるが、その実用化には、含Crスラグを前提とした溶融還元法の適正化、特に還元速度の上昇を低コスト・省エネルギーで実現することが求められており、その方法を確立する必要があった。
例えば、特許文献2には、ステンレス溶鋼の脱炭精錬時に生成したスラグを受滓した容器に溶鉄を投入した後、前記スラグにアルミニウム含有物質を添加し、前記スラグを攪拌しながら加熱して、前記スラグ中の酸化クロムを還元して前記溶鉄中にクロムを回収することを特徴とする、ステンレス溶鋼の精錬スラグの処理方法が開示されている。この方法は、精錬炉でステンレス溶鋼の脱炭、およびそれによって生成したスラグ中Cr酸化物を還元して、スラグ中Cr濃度を4重量%まで減じた後、そのスラグを取鍋に排滓する。排滓後のスラグに還元用の金属Al分を含むAlドロス等を加えてアーク加熱を行うことによって、Crを還元回収するものである。Al還元を行うことによって、生成するAl23がスラグ粉化の原因となる2CaO・SiO2生成を回避することで、スラグの資源化を可能にする。しかしながら、この方法では、熱滓を利用することによる取り扱いの難しさ、スラグの還元を困難にするスラグ中MgOへの対応策がないこと、さらにAl還元することによって生成するAl23やMgAl24、およびそのCr固溶体がCr還元の妨げとなり、必要なAl原単位を悪化させることが懸念される。
また特許文献3には、含Crスラグを電気炉に装入してこの電気炉にさらに屑鉄および場合によっては残留粉塵からなる通常の装入材料が装入され、付加的に炭素、および場合によってはケイ素が添加され、溶解時に、添加されたスラグ中に含まれた酸化クロムが炭素とケイ素とによって金属クロムへと直接に還元される方法が開示されている。しかしこの方法は、例えば前掲の非特許文献に述べられた含Crスラグの溶融還元反応プロセスの概念を示したに過ぎず、安定なクロム酸化物を含むスラグの処理に対して好適な条件を示唆するものは何もない。
上述のように、発生した含Crスラグの形態を、六価Crの溶出を抑制する形態に変換して利材化するとともに、そのスラグからCrなどの有価成分を回収、再利用できれば、産業および環境の視点から極めて有益であるにもかかわらず、これを実現する工業的規模での方法は見出されていなかった。
N.Sano:Proceedings:Tenth International Ferroalloys Congress, 1-4 February 2004, p.670
特許4540350号公報 特開2001−234226号公報 特表2003−502504号公報
本発明は、酸化CrをCr23の質量濃度に換算して4%以上含有するスラグに対して、そのCr23濃度を2質量%以下にする溶融還元処理を施し、六価Crの溶出を抑制する形態に変換してそのスラグを利材化するとともに、そのスラグからCrなどの有価成分を回収、再利用を可能にする方法を提供する。
酸化CrをCr23の質量濃度に換算して4%以上含有するスラグ(以下、「含Crスラグ」と記載)は、特にMgやMnを含むスラグである場合、化学的に安定な酸化物として知られるMgCr24やMnCr24の固溶体(以下、「Crスピネル」と呼称する)を主体に含まれており、このような形態のCrの回収には効率的な分解が、Cr(VI)溶出抑制にはその還元がそれぞれ求められている。さらに、含CrスラグがAlを含むスラグである場合、Cr酸化物にAl酸化物が固溶する形で含まれている。これらのCrスピネルがある場合には、残部のスラグ液相はCaOやSiO2やAl23から構成され、高温では液相を呈する母相にはCr酸化物がほとんど含まれていない。
このような状態でCrスピネルの還元速度を確保し、あるいは過酸化な状態にある六価Crの生成を防ぐ手段として、本発明者らは、液相である母相の粘度を下げること、Cr酸化物にAl酸化物の固溶を抑制するために液相を塩基性にすることを考えた。そして、塩基性酸化物で、かつCrスピネルを形成しない化合物はアルカリ金属酸化物であり、工業的に豊富に利用できるNa2Oの添加という着想を得るに至った。
ここに、製鋼温度域においても化学的に安定なCrスピネルであっても充分な還元速度、すなわち分解速度を得ようとすれば、スラグ液相が形成されること、およびその粘度が低く分解によって生じる物質移動が充分速いことが必要と考えられる。一般には、このような状態を得るには、CaO−SiO2系スラグでは、MgOやAl23の配合量を適量にして多元系の液相の状態をめざす方法が考えられる。しかしながら、含Crスラグ、すなわちCrスピネルを含むスラグでは、MgOの増加はMgCr24の生成を、Al23の増加はMgCr24−MgAl24固溶体の生成を、それぞれ促すので、MgOは可及的少量が望ましく、またAl23も一定量以上は増やすことはできない。
また、CaOの増加は、スラグ組成が高温で安定な化合物である2CaO・SiO2飽和領域となり、このような固相の増加も、液相の粘性低下の観点からは回避することが望ましい。
ところで、このような塩基性・両性酸化物の代わりとして、CaF2に代表される弗化物を添加することが考えられる。
しかしながら、CaF2添加はそのスラグからF溶出が生じる可能性があるという問題があり、Cr(VI)溶出を抑制しても、スラグの再利用を阻むことになる。同様の問題は塩化物にも生じ得る。
そこで、塩基性酸化物として、アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、K2Oに着目した。これらアルカリ金属元素は工業的に利用され、炭酸塩などの形で入手しやすい。アルカリ金属酸化物の性質は塩基性であり、かつ融点も低いことから、含Crスラグの液相の粘性を下げる効果と、固相の形成を抑制する効果が期待できる。またこれらの酸化物はCrとの複合酸化物を形成せず、さらにはCrスピネルにも固溶しないのでCrスピネルの還元を妨げない。但し、このような特性に関しては、Na2Oは他の上記アルカリ金属酸化物と等価であると考えられること、および工業的に入手性が良いことを勘案して、本発明ではNa2Oに着目して、上記着想の具体化を図った。
ここに、本発明は、溶鋼を保持する溶融還元処理炉を用い、組成としてCaO:25〜45質量%、SiO2:20〜35質量%、MgO:5〜15質量%、Al23:2〜15質量%、酸化CrをCr23の質量濃度に換算して4〜15質量%、およびNa2O:1〜15質量%を含有するスラグを、前記溶鋼中に含まれているSiおよびCのいずれか一方または両方と反応させて溶融還元処理することを特徴とする、スラグの溶融還元処理方法である。
本発明にあっては、前記溶融還元処理炉がアーク式電気炉であることが好適である。
Crを含有する鋼の製造工程、特に製鋼工程で発生する含Crスラグに対して溶融還元処理を施すことにより、含Crスラグを環境へのクロム溶出が問題とならないスラグに改質し、スラグの利材化を可能にするとともに、スラグに含まれる有価成分を回収して、有価成分を資源として活用することが可能になった。
スラグ中Na2O濃度と見かけのクロム還元速度との関係を示すグラフである。 含Crスラグの溶融還元処理時の溶鋼中Cr濃度の変化を示すグラフである。
含Crスラグを溶融還元処理するための、要件と効果について説明する。
含Crスラグとしては、CaO:25〜45質量%、SiO2:20〜35質量%、MgO:5〜15質量%、Al23:2〜15質量%、Cr23:4〜15質量%、およびNa2O:0〜15質量%を含むスラグを基本的な対象とし、処理要件と効果の確認試験では試薬を配合して予め滓化させておいたものを用意して用いた。なお、このスラグには、T.Fe:3〜15質量%、MnO::3〜15質量%等の不純物も含まれている。
このスラグ組成を対象とした理由は、製鋼工程で発生する含Crスラグとして、このような組成が一般的だからである。特に、Cr23≧4質量%を対象とした理由は、酸化Crの還元処理を必要とするレベルにも一致している。つまり、4質量%以上のCr23を含むスラグは、水と接触して六価Crを溶出する蓋然性が高まるし、また、Crを含有しない媒溶剤で希釈して、このスラグ中Cr23を2質量%以下にするには、同量以上の媒溶剤を必要とし、スラグ量の過度な増加を招いてしまうため、実際処理困難なのである。一方、Cr23≦15質量%とするのは、15質量%が製鋼工程で発生するスラグ中Cr23の通常の上限濃度であるとともに、これを超えると、スラグの固相率が上昇して還元処理にコストがかかってしまうからである。
また、Na2Oの濃度を15質量%以下とした理由は、後述するように、それが15質量%を超える場合には、その分解反応による白煙の発生が激しくなるため、その添加歩留まりの低下や操業環境悪化への影響を考慮したものである。
スラグの還元剤としては、溶鋼中炭素またはSiを使用する。処理要件と効果の確認試験では、炭素を0.3〜2.5質量%含む溶鋼とし、その炭素を用いるか、あるいは炭素0.2〜0.5質量%の溶鋼に0.2〜1質量%のSiを加えたものを用いた。
溶融還元処理の操作方法は、溶鋼を保持する溶融還元処理炉を用い、その溶鋼にCおよびSiのいずれか一方または両方を含ませておいて、そのCやSiと前記した基本的に対象とする含Crスラグとを反応させて還元する方法である。但し、前記した基本的に対象とする含Crスラグには、クロムの還元速度を高めるための要件を備えさせておく必要がある。
本発明に係る含Crスラグの溶融還元処理に必要な要件は、次のように調査して規定した。
始めにMgOルツボ中で上記したCやSiを含む溶鋼1.8kgを1580から1620℃の温度範囲で保持し、その後、前記した試薬を配合して予め滓化させておいた含Crスラグを、40g/kg−steelの割合で3回に分けて溶鋼に添加した。前記含Crスラグを合計で120g/kg−steel添加し終わった後の溶鋼中のCr濃度の上昇を、一次の速度式で近似して、その見かけの反応速度定数を還元のし易さの指標として評価した。
(1)クロム還元速度への含Crスラグ中Na2O含有の効果
初めに、 含CrスラグにNa2Oを含有させたことによるクロム還元速度の向上効果を調べた。
先ず、表1に示す組成に調整したスラグを、上記温度において溶鋼中炭素によって還元する処理を行った。この表1に記載した試験例1〜5は、いずれも初期溶鋼中にSiは含有させていない。この場合における、溶鋼中Cr濃度の上昇から求めた見かけの反応速度定数KCrを、還元調査条件と併せて表1に示す。表に示さなかったスラグの残部は、MgO、MnO、Al23、T.Feおよび不可避的不純物である。
表1の試験例1および試験例2に示すように、含Crスラグ中にNa2Oを含有させることにより、クロム還元速度が向上する効果があることがわかった。また、処理開始から4000秒経過時の処理後Cr23濃度(表中、「処理後Cr23」として示す)は、試験例1,2では、2質量%未満となった。但し、含Crスラグ中のNa2Oが1質量%未満である試験例3から5では、クロム還元速度は1×10−4(−)未満と低いままであった。処理後Cr23濃度も2質量%以上となった。
なお、表1並びに表2から表4の各表に記載した処理後Cr23濃度とは、その試験の典型例でスラグ中Cr23濃度が2質量%を下回る処理時間での値を記載したものである。その処理時間は、表1は4000秒、表2と表3では1500秒、表4では3600秒とそれぞれ定め、その処理時間での見かけのクロム還元速度で比較を行った。
Figure 0005962826
次に、表2に示す組成に調整した含Crスラグを、上記温度において溶鋼中Siによって還元する処理を行った。この表2に記載した試験例6と7は、いずれも初期溶鋼中Cは0.2質量%に調整してある。この場合における、溶鋼中Cr濃度の上昇から求めた見かけの反応速度定数KCrを表2に示す。試験例6では、表2のスラグ組成で、溶鋼中Siによる還元によって見かけのクロム還元速度が向上する結果となった。また処理開始から1500秒経過時の処理後Cr23濃度は2質量%未満となった。一方、含Crスラグ中にNa2Oが1質量%未満である試験例7では、クロム還元速度は1×10−4(−)未満と低いままであった。処理後Cr23濃度も2質量%以上となった。
Figure 0005962826
さらに、初期溶鋼を炭素約0.5質量%の溶鋼に0.66質量%または0.18質量%のSiを加えた組成とし、含Crスラグを還元する処理を行った。この場合における、溶鋼中Cr濃度の上昇から求めた見かけの反応速度定数KCrを表3に示す。試験例8では、表3の還元条件で、表2に記載した試験例6と比べて溶鋼中初期Cが0.2質量%から0.5質量%に上昇させてあるところ、その溶鋼中CおよびSiによる還元によって見かけのクロム還元速度は、試験例6と比べてほぼ同じレベルであった。また処理開始から1500秒経過時の処理後Cr23濃度は2質量%未満となった。但し、前記した表2の試験例7に比べて、溶鋼中初期C濃度を高め初期Si濃度を下げた一方、含Crスラグ中にNa2Oを1質量%未満とした試験例9では、クロム還元速度は1×10−4(−)未満と低いままであった。処理後Cr23濃度も2質量%以上となった。
Figure 0005962826
(2)Cr酸化物又はNa2CO3の含Crスラグへの追加添加の影響
次に、含CrスラグにCr酸化物またはNa2CO3を添加した場合の溶鋼中Siによる溶融還元における、見かけのクロム還元速度への影響を調べた。
表4には、試験例10が含CrスラグにCr酸化物の添加例としてCr23試薬を追加添加した場合、試験例11が含CrスラグにさらにNa2CO3を追加添加した場合の、処理前後のSi濃度、および処理前スラグ組成と処理後Cr23濃度を示す。また、これらの場合における溶鋼中Cr濃度の上昇から求めた見かけの反応速度定数KCrを表4に併せて示す。
試験例10では、表4のスラグ組成になるように含CrスラグにCr23を6.0質量%相当分追加配合して、初期のCr23濃度(13.3質量%)としたが、スラグ中にNa2Oが含まれていることにより、溶鋼中Siによる還元によって見かけのクロム還元速度が試験例6と比べて遜色ない結果となった。また処理開始から3600秒経過時の処理後Cr23濃度は2質量%未満となった。
試験例11では、表4のスラグ組成になるように、含CrスラグにNa2CO3を添加してスラグ中のNa2O濃度が12質量%に上昇するように配合して、溶鋼中Siによる還元を行った。見かけのクロム還元速度は試験例6と比べて大差なく、試験例7と比べて向上しており、また処理開始から3600秒経過時の処理後Cr23濃度は2質量%未満となった。
一方、試験例12には、処理対象とする含Crスラグ中のCr23濃度を高めて13質量%超とした結果を示した。スラグ中Cr23濃度が高くても、Na2Oが1質量%未満である試験例12では、クロム還元速度は1×10−4(−)未満と低いままで、処理後Cr23濃度も2質量%以上となった。
Figure 0005962826
なお、表1から表4には示さなかったが、スラグ中Mn酸化物の還元速度の向上も認められた。原理的に、Mnの他に、V、Wなどの比較的還元しがたい有価な遷移金属元素の酸化物の還元にも、スラグへNa2Oを含有させる本発明の方法は有効であると考えられる。
ところで、処理対象とする含Crスラグに予め含まれるNa2Oの代わりに、後からNa2CO3を添加して含Crスラグ中Na2O濃度を高めた場合には、添加時に白煙の発生量が増加する傾向が生じる一方、ガス発生によるスラグフォーミングが生じた。前者は実操業時に周辺の集塵を強化する必要やNa2CO3添加歩留まりの低下が懸念される一方、後者はスラグフォーミングでスラグが撹拌される効果もあってクロム還元速度が向上することも期待されるので、スラグ中Na2O濃度の設定については、そのような得失も考慮すれば良い。
(3)クロム還元速度向上に必要な含Crスラグ中Na2O濃度
そこで、表1ないし表4に記載した例を含む一連の試験において、溶鋼中炭素によってCrを還元した例について、処理前スラグ中のNa2O濃度と見かけのクロム還元速度との関係を、まとめて図1に示す。この図に記載した例に関しては、還元初期の溶鋼中炭素濃度は[%C]=0.6〜4.0質量%の範囲で、後述する処理後の溶鋼中炭素濃度が好適な0.3質量%以上であるように配慮してある。
図1に示すように、溶鋼上に存在する初期スラグ中のNa2O濃度が1質量%以上で、クロム還元速度が向上していた。このNa2Oの含有によってクロム還元速度が向上する理由は定かではないが、Na2Oを含有するスラグの液相は低粘度になること、およびスラグ中Al23もスラグ液相への溶解度が上昇して、その分Cr酸化物中へのAl23の溶解が減少して還元が容易になること、が理由と推察される。クロム還元速度の向上効果に関し、Na2O濃度に明白な上限はないが、10質量%を超えるとNa2Oの分解に起因すると思われる白煙が増加するなどの、操業上弊害となる現象が認められた。そこで、その効果飽和と白煙の増加からNa2O濃度の上限を15質量%とした。
このクロム還元速度向上に必要な含Crスラグ中Na2O濃度は、C還元の場合とSi還元の場合に関し表1〜表3に記載したように、C還元とSi還元とで実際上ほぼ同様である。
(4)Cr23およびNa2O以外のスラグ組成、並びに溶鋼中CおよびSi組成
本発明は、Crを含有する鋼の製造工程、特に製鋼工程で発生する含Crスラグに対して溶融還元処理を施す発明であって、具体的には酸化CrをCr23の質量濃度に換算して4%以上含有するスラグの処理を対象としている。また、本発明においてクロム還元速度を向上させるための必要要件として、処理対象とする含CrスラグにNa2Oを1質量%以上含有させることと、溶鋼中にCまたはSiが含まれていることを規定している。
したがって、Cr23およびNa2O以外のスラグ組成は、Crを含有する鋼の製造工程、特に製鋼工程で発生する含Crスラグということから自ずと定まってくるものであるが、通常は次のように考えておくことができる。
CaO濃度は、25質量%未満では塩基度の低下によってCr酸化物の還元を阻害するし、45質量%を超えると液相率の低下によってCr酸化物の還元を阻害する。SiO2濃度は、20質量%未満ではスラグの液相率が低下してCr酸化物の還元を阻害するし、35質量%を超えるとSiO2濃度の増加で生じる塩基度の低下を吸収できなくなる。MgO濃度は、製鋼工程で5質量%未満のスラグを得ようとすればCaOなどの媒溶剤で希釈する必要が生じるためにスラグ量の増加を招くし、15質量%を超えるとCr酸化物の還元が阻害される。Al23濃度は、製鋼工程で2質量%未満のスラグを得ようとすればCaOなどの媒溶剤で希釈する必要が生じるためにスラグ量の増加を招くし、15質量%を超えるとCr酸化物の還元を阻害する。
その他にスラグに含まれる成分についても触れる。スラグ中T.FeはFeOおよびFe23と少量の金属Feの総計であり、その濃度は製鋼工程で3質量%未満のスラグを得ようとすればCaOなどの媒溶剤で希釈する必要が生じるためにスラグ量の増加を招くし、15質量%を超えるとCr酸化物の還元を阻害する。MnO濃度は製鋼工程で3質量%未満のスラグを得ようとすればCaOなどの媒溶剤で希釈する必要が生じるためにスラグ量の増加を招くし、15質量%を超えるとCr酸化物の還元を阻害する。
また、還元に必要な還元剤は、C、Si、Alといった、溶鋼に溶解して溶鋼と含Crスラグの反応時に還元剤として作用する元素であれば良いのであるが、本発明においてはAl還元することによって生成するAl23やMgAl24およびそのCr固溶体がCr還元の妨げとなることを懸念して、Alの含有を必要要件としては規定しない。本発明では、CおよびSiのいずれか一方または両方を溶鋼中に含むことを必要要件とし、前記した第1表ないし第4表に記載した結果等に基づいて、特に好ましい溶鋼の組成に関して、次のようにいえる。
Cはスラグ中Crを還元するとともに反応生成物であるCOガス発生による撹拌が生じるので、還元剤として好適である。その好ましい組成を示せば、溶鋼中0.3質量%以上で還元剤としての作用を好適に発揮し、上限は飽和炭素溶鉄でも良い。充分な還元力を得る観点からは処理後で0.4質量%以上あるのが一層望ましく、処理後の溶鋼を脱炭する操作への負荷軽減を考えれば、1質量%以下が望ましい。その炭素の添加方法は、通常の製鋼法で行われる炭材での添加でよく、撹拌可能な製鋼容器であればスラグに炭材を散布するなどの方法も良い。
Siはスラグ中Crを還元するとともに、反応生成物であるSiO2により造滓されるので、還元剤として好適である。その好ましい組成を示せば、溶鋼中0.1質量%以上で還元剤としての作用を発揮し、2質量%以上でも良い。充分な還元力を得る観点からは処理後で0.15質量%以上あるのが一層望ましく、処理後の溶鋼を脱珪する操作への負荷軽減、およびSiO2生成によるスラグ組成の変化を考えれば、1質量%以下が望ましい。そのSiの添加方法は、通常の製鋼法で行われるFeSiなどの合金鉄での添加でよく、撹拌可能な製鋼容器であればスラグにFeSiを散布するなどの方法も良い。
(5)本発明に係る含Crスラグの溶融還元処理の効果
本発明に係る含Crスラグの溶融還元処理で得られた、処理後スラグの組成とそのスラグのCr溶出量の1例を、試験例10を例にとって表5に示す。表5には環境庁告示46号法による溶出試験を実施した際の、処理後スラグから溶出する六価クロムの溶出量を示した。この溶出量は土壌環境基準(0.05mg/l以下)を満たす結果となった。なお表に示さなかったスラグの残部は、MgO、MnO、Al23、T.Feおよび不可避的不純物である。
Figure 0005962826
(6)実用的に好適な実施形態および諸条件について
本発明に係る含Crスラグの溶融還元処理について、実用的に好適な実施形態および諸条件について述べる。
処理中のスラグおよび還元によって生成する金属はいずれも溶融状態が望ましく、スラグの場合は液相割合が高いほど良い。したがって、その温度は1450℃以上である。一方、耐火物などの設備の耐用性を考えればその上限は1750℃以下である。雰囲気は、非酸化性であることが望ましく、不活性ガスや電磁誘導などによる浴の撹拌が望ましい。
このような反応容器としては、アーク加熱方式の電気炉が適当である。その理由は電気炉の溶解温度はアーク加熱によって所望の高温にすることが可能であること、非酸化性雰囲気にできることが挙げられる。また撹拌は、ランスによるガス撹拌、炉底からのガス撹拌、直流アーク炉の場合には電磁誘導による浴の撹拌も可能である。
さらに有利な点としては、電気炉の場合は、スクラップ等の原料装入の時点で同時に含Crスラグを大量に投入することが可能であり、さらにはスクラップ等の原料が溶け落ちた後は比較的浅い浴形状となり、そこに還元したい含Crスラグを投入すれば反応界面積を大きく得ることが可能だからである。
配合するNa2O含有物質はソーダ灰(Na2CO3:99%)が適当であるが、NaOを20質量%以上含む物質であれば、メタケイ酸ソーダ等を用いてもよい。
また、Na2O含有スラグは、Na2O分解に伴う白煙が生じる場合があるが、アーク加熱電気炉では炉内を集塵しており、これらの問題も解決できる。
本発明の工業的規模での実施には、炉容40tのアーク式電気炉を用いた。あらかじめ原料となるスクラップを2回に分けて装入し、32tの溶鋼を溶解した。この溶鋼に還元剤としてのC、Siを含有させる操作は、電気炉による一般的なスクラップ溶解方法で行えばよい。
本実施例および比較例で用いた含Crスラグの処理前組成を、表6に示す。なお、表6に示していないスラグの残部は、MgO、MnO、Al23、T.Feおよび不可避的不純物である。
スクラップの溶解を目視で確認した後、フェロシリコン、およびまたは黒鉛などで成分調整をして還元剤を含む溶鋼を用意した。
この還元剤を含む溶鋼に、次いで、含Crスラグ80kg/tを4回に分けて添加した。このときの溶鋼中の[C]および[Si]の組成の変化を、表6に併せて示す。
実施例1は、あらかじめCr23が5.1質量%およびNa2Oが5.2質量%含まれたスラグを溶融還元した例である。
実施例2は、あらかじめCr23が7.3質量%およびNa2Oが4.2質量%含まれたスラグを溶融還元した例である。
実施例3は、Cr23およびNa2Oが含まれたスラグに、さらにCr鉱石およびNa2CO3を炉内に添加して、処理前スラグ組成としてCr23が11.2質量%およびNa2Oが8.5質量%含まれたスラグを溶融還元した例である。
比較例は、Cr23が7.8質量%含まれるがNa2Oは1質量%未満のスラグを対象に炭素還元を試みた例である。
添加の際には、適宜アーク加熱によるスラグの滓化促進を図った。また、滓化が進んだ際に、スラグのフォーミングが見られた場合には適宜少量のスラグを電気炉の主口から排出して、電気炉による溶融還元操業に支障のないように行った。実施例1〜3の場合は、スラグからの白煙が炉内で観察されたが、電気炉による集塵で炉外への溢出は問題になる程度ではなかった。
Figure 0005962826
上記の各例における溶鋼中Cr濃度の推移を、図2に示す。同一反応容器としての電気炉で、スラグ中にNa2Oを含む実施例1ないし実施例3の条件では、溶融還元が進行したことによるCr濃度の増加が大きく認められたのに対して、比較例ではCr濃度の増加はわずかであった。
この溶融還元後のスラグを回収し、環境庁告示46号による六価クロムの溶出試験を実施したところ、表5に示したと同じように、本発明の実施例1から3では、いずれも土壌環境基準(0.05mg/l以下)を満たす結果となった。また処理後のスラグ中Cr23濃度はいずれも2質量%未満となった。

Claims (2)

  1. 溶鋼を保持する溶融還元処理炉を用い、組成としてCaO:25〜45質量%、SiO:20〜35質量%、MgO:5〜15質量%、Al:2〜15質量%、酸化CrをCrの質量濃度に換算して4〜15質量%、およびNaO:1〜15質量%を含有するスラグを、前記溶鋼中に含まれているSiおよびCのいずれか一方または両方と反応させて溶融還元処理することを特徴とする、スラグの溶融還元処理方法。
  2. 前記溶融還元処理炉がアーク式電気炉であることを特徴とする、請求項1に記載のスラグの溶融還元処理方法。
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