《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図5(B)に基づいて説明する。
図1には、第1の実施形態に係る液晶露光装置10の概略構成が示されている。液晶露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
液晶露光装置10は、図1に示されるように、照明系IOP、マスクMを保持するメインステージ40を含むマスクステージ装置MST、投影光学系PL、マスクステージ装置MST及び投影光学系PLなどが搭載されたボディBD、基板PをXY平面に沿って移動可能に保持する微動ステージ21を含む基板ステージ装置PST、及びにこれらの制御系等を備えている。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面(XY平面)内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。後述する第2の実施形態ないし第9の実施形態においても同様である。
照明系IOPは、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない水銀ランプから射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッタ、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。なお、光源としては、超高圧水銀ランプに限らず、例えばエキシマレーザなどのパルスレーザ光源、あるいは固体レーザ装置などを用いることもできる。
マスクステージ装置MSTは、後述するボディBDの一部である鏡筒定盤31の上方に配置されたメインステージ40と、メインステージ40のY軸方向の一側(−Y側)、及び他側(+Y側)に、それぞれメインステージ40とは振動的に分離された状態(非接触状態、あるいは接触しても振動が伝達されない程度の接触状態)で配置されたサブステージ50、70と、サブステージ50、70を床面F上で支持するサブステージガイド37a、37bと、を有している。メインステージ40は、鏡筒定盤31の上面に一体的に固定されたX軸方向を長手方向とする角柱状の部材から成る一対のメインステージガイド35上に支持されている。メインステージ40には、回路パターン(以下、適宜マスクパターンとも称する)などがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により固定されている。サブステージ50、70のそれぞれは、サブステージガイド37a、37b上をX軸方向(図1における紙面直交方向)に所定のストロークで移動可能である。メインステージ40は、サブステージ50、70がX軸方向に移動すると、これらに誘導されてX軸方向に移動する。メインステージ40、サブステージ50、70、サブステージガイド37a、37bなどの具体的な構成、及び駆動系、計測系などを含み、マスクステージ装置MSTの詳細については、後に詳述する。
投影光学系PLは、マスクステージ装置MSTの図1における下方において、鏡筒定盤31に支持されている。本実施形態の投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様の構成を有している。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域がY軸方向に沿って所定間隔で配列された複数の投影光学系(マルチレンズ投影光学系とも称される)を含み、例えばY軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。本実施形態では、複数の投影光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな拡大系で正立正像を形成するものが用いられている。以下では、Y軸方向に沿って配列された複数の投影領域をまとめて露光領域とも呼ぶ。
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるマスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の、照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージ装置MSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターン(マスクパターン)が転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
ボディBDは、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書などに開示されているように、基板ステージ架台33と、基板ステージ架台33上に固定された一対の支持部材32を介して水平に支持された鏡筒定盤31と、を有している。基板ステージ架台33は、床面F上に設置された複数の防振装置34に支持されており、床面Fに対して振動的に分離されている。
基板ステージ装置PSTは、基板ステージ架台33上に固定された定盤12と、X粗動ステージ23Xと、X粗動ステージ23X上に搭載され、X粗動ステージ23Xと共にXY二次元ステージ装置を構成するY粗動ステージ23Yと、Y粗動ステージ23Yの+Z側(上方)に配置された微動ステージ21と、定盤12上で微動ステージ21の自重を支持する自重キャンセル装置26と、を備えている。
定盤12は、例えば石材により形成された平面視(+Z側から見て)で矩形の板状部材であり、その上面は、平坦度が非常に高く仕上げられている。
X粗動ステージ23Xは、平面視で矩形の板状(又は直方体状)の部材から成り、そのXY平面に平行な面の中央部にY軸方向を長手方向とし、Z軸方向に貫通する長穴状の開口部(図示省略)が形成されている。X粗動ステージ23Xは,定盤12の上方に架設された図示しない複数のXリニアガイド部材上に搭載され、例えばリニアモータを含むX粗動ステージ駆動系(図示省略)により、上記複数のXリニアガイド部材上でX軸方向に駆動される。
Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23XよりもY軸方向の寸法が短い平面視で矩形の板状(又は直方体状)の部材から成り、そのXY平面に平行な面の中央部にZ軸方向に貫通する開口部(図示省略)が形成されている。Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23Xの上面に固定された図示しない複数のYリニアガイド部材上に搭載され、例えばリニアモータを含むY粗動ステージ駆動系(図示省略)により、X粗動ステージ23X上でY軸方向に駆動される。なお、X粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23YをそれぞれX軸方向、Y軸方向に駆動する駆動方式は、例えば送りねじによる駆動方式、あるいはベルト駆動方式であっても良い。
微動ステージ21は、平面視略正方形の板状(又は直方体状)の部材から成り、その上面に基板ホルダPHを介して基板Pを保持する。基板ホルダPHは、例えば図示しない真空吸着装置(又は静電吸着装置)の少なくとも一部を有しており、その上面に基板Pを吸着保持する。
微動ステージ21の−Y側の側面には、固定部材24Yを介して−Y側の面に反射面を有するY移動鏡(バーミラー)22Yが固定されている。また、図1では図示が省略されているが、微動ステージ21の−X側の側面にも、同様の移動鏡(以下、X移動鏡と称する)が固定されている。微動ステージ21のXY平面内の位置情報は、Y移動鏡22Y及びX移動鏡のそれぞれに測長ビームを照射し、その反射光を受光するレーザ干渉計システム28によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。なお、実際には、レーザ干渉計システムは、Y移動鏡22Y、X移動鏡それぞれに対応したXレーザ干渉計、Yレーザ干渉計を有しているが、図1では、代表的にYレーザ干渉計がレーザ干渉計システム28として示されている。
微動ステージ21は、Y粗動ステージ23Y上で、例えばY粗動ステージ23Yに固定された図示しない固定子(例えば、コイルユニット)と、微動ステージ21に固定された図示しない可動子(例えば、磁石ユニット)と、から成るボイスコイルモータを含む微動ステージ駆動系により6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θzの各方向)に微少駆動される。これにより、基板ステージ装置PSTは、基板PをXY2軸方向に長ストロークで駆動(粗動)可能、且つ6自由度方向に微少駆動(微動)可能となっている。
自重キャンセル装置26は、微動ステージ21を含む系(具体的には微動ステージ21、基板ホルダPH、及び基板Pなどから成る系)の自重を定盤12上で支持するZ軸方向に延設された柱状の部材であり、心柱とも称される。自重キャンセル装置26は、X粗動ステージ23Xの開口部、及びY粗動ステージ23Yの開口部に挿入されている。自重キャンセル装置26は、図示しない気体静圧軸受、例えばエアベアリングにより定盤12上に浮上支持されている。自重キャンセル装置26は、図示しないフレクシャ装置を介してY粗動ステージ23Yに接続されており、Y粗動ステージ23Yと一体的に、X軸方向及びY軸方向に移動する。自重キャンセル装置26と微動ステージ21との間には、レベリング装置27が配置されている。微動ステージ21は、レベリング装置27を介して、自重キャンセル装置26に対して、θx方向及びθy方向にチルト自在(揺動自在)な状態で支持されている。上述した自重キャンセル装置26,レベリング装置27、及びフレクシャ装置などを含み、基板ステージ装置PSTの構成の詳細は、例えば国際公開第2008/129762号(対応米国特許出願公開第2010/0018950号明細書)などに開示されている。
ここで、本実施形態の液晶露光装置10は、投影光学系PLを構成する複数の拡大投影光学系それぞれを介して基板P上に形成される複数の投影像の合成により、一つのパターン(パターンの一部)が基板P上に生成されるため、マスクMのパターン面は、Y軸方向に所定間隔で離間した複数箇所が同時に照明系IOPに照明される。すなわち、マスクM上には、Y軸方向に所定間隔で離間した複数の照明領域が形成される。また、マスクMのパターン面には、スキャン方向(X軸方向)に延設された複数の帯状(短冊状)の領域が、Y軸方向に所定間隔で設けられている。複数の帯状の領域は、照明系IOPにより、一つおきに照明されるようにY軸方向に関する間隔が設定されている。これらの複数の帯状の領域には、基板P上に特定のパターン(以下、パターンAと称する)を形成するためのマスクパターンの一部、及び、上記パターンAとは異なる別のパターン(以下、パターンBと称する)を基板上に形成するためのマスクパターンの一部が、Y軸方向に関して交互に形成されている(各マスクパターンの図示は省略する)。
このため、本実施形態の液晶露光装置10では、基板P上にパターンAを形成するためのマスクパターンの少なくとも一部を有する複数の帯状の領域が照明系IOPに照明されるように、Y軸方向に関してマスクMを位置決めした状態で走査露光を行うことにより、基板P上にパターンAを形成することができ、基板P上にパターンBを形成するためのマスクパターンの少なくとも一部を有する帯状の領域が照明系IOPに照明されるように、Y軸方向に関してマスクMを位置決めした状態で走査露光を行うことにより、基板P上にパターンBを形成することができる。なお、マスクMは異なるパターンA、Bの一方のみを有するものとしても良い。
そして、本実施形態のマスクステージ装置MSTでは、上述のY軸方向に関するマスクMの位置決めを可能にするために、マスクMを保持するメインステージ40を、Y軸方向(クロススキャン方向)にも所定のストロークで移動させることができる。以下、マスクステージ装置MSTの構成について説明する。図2には、マスクステージ装置MSTの平面図が示されている。また、図3には、マスクステージ装置MSTを+X側から見た側面図が示されている。
図2に示されるように、メインステージ40は、Y軸方向を長手方向とするXY平面に平行な板状部材である本体部41を有している。本体部41は、上方(+Z側)から見て長方形状の板状部材の+Y側且つ+X側の端部(角部)、及び+Y側且つ−X側の端部(角部)それぞれが、斜めに切り落とされたような外形形状(六角形状)を有している。本体部41の中央部には、Z軸方向に貫通する矩形の開口部41aが形成され、該開口部41a内にマスクMが収容される。本体部41は、開口部41aを形成する+X側、及び−X側の壁面(内壁面)のそれぞれに固定された複数の静電チャック(又は真空チャック、あるいはメカニカルチャック)を含むチャックユニット42を有する。チャックユニット42によってマスクMが保持される。なお、開口部41aを中央部に矩形の開口が形成された段付き形状とし、その段部の内周部にチャックユニット42を取り付けても良い。
本体部41は、開口部41aよりも−Y側の部分(領域)が、−Y側のメインステージガイド35によって下方から支持され、開口部41aよりも+Y側の部分(領域)が、+Y側のメインステージガイド35によって下方から支持されている。一対のメインステージガイド35それぞれは、例えば石材により形成され、その上面は、平坦度が非常に高く仕上げられている。本体部41の下面には、−Y側のメインステージガイド35の上面に軸受面が対向する二つの静圧気体軸受、例えばエアベアリング43a、43bと、+Y側のメインステージガイド35の上面に軸受面が対向する一つの静圧気体軸受、例えばエアベアリング43cが取り付けられている。エアベアリング43a、43bは、X軸方向に離間して配置されており、3つのエアベアリング43a〜43cは、同一直線上にない3箇所に配置されている。エアベアリング43a、43b、43cそれぞれは、図示しない気体供給装置から供給される高圧(加圧)気体(例えば、空気)を対向するメインステージガイド35の上面に噴出することにより、本体部41を一対のメインステージガイド35上に浮上させる。なお、エアベアリングの数は、これに限られず、例えば一対のメインステージガイド35それぞれに対して複数(例えば2つずつ)のエアベアリングを対向させて配置しても良い。
図2及び図3に示されるように、本体部41の+Y側の上面中央部には、+Y側に開口した凹部41bが形成され、凹部41bの底部には、Z軸方向に離間して配置された一対の板状部材から成るY可動子44が、固定部材44aを介して固定されている。Y可動子44を構成する一対の板状部材は、互いに対向する一対の対向面それぞれに複数の磁石を含む磁石ユニット(図示省略)を有している。また、本体部41の+Y側の下面中央部(すなわちY可動子44の下方)、及び−Y側の上面中央部には、断面U字状のX可動子45、46が、それぞれ断面L字状の固定部材45a、46aを介して固定されている。X可動子45、46それぞれは、互いに対向する一対の対向面それぞれに複数の磁石を含む磁石ユニット(図示省略)を有している。
また、図2に示されるように、本体部41の−X側の側面には、一対のX移動鏡(バーミラー)48xがそれぞれの反射面をX軸にほぼ垂直な方向に向けて固定されている。メインステージ40のX軸方向(及びθz方向)に関する位置情報は、一対のX移動鏡48xそれぞれにX軸に平行な測長ビームLxを照射する一対のXレーザ干渉計98xによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時計測される。
また、図3に示されるように、本体部41の−Y側の側面には、X軸方向を長手方向とするY移動鏡(バーミラー)48yがその反射面をY軸に略垂直な方向に向けて固定されている。また、鏡筒定盤31には、上述の一対のXレーザ干渉計98xとともにレーザ干渉計システムを構成し、Y移動鏡48yにY軸に平行な測長ビームLyを照射するYレーザ干渉計98yが固定されている。メインステージ40のY軸方向に関する位置情報は、Yレーザ干渉計98yによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時計測される。一対のX移動鏡48x、及びY移動鏡48yそれぞれの反射面は、それぞれのZ軸方向の中心がマスクMの下面(パターン面)とほぼ同一のXY平面(以下、計測基準面と称する)とほぼ一致する高さに配置されている。すなわち、一対のXレーザ干渉計98x、及びYレーザ干渉計98yそれぞれは、上記計測基準面上で測長ビームLx、Lyを各移動鏡48a〜48cに照射し、メインステージ40のXY平面内における位置情報を計測基準面上で、いわゆるアッベ誤差なく計測する。
サブステージ50、70は、図1に示されるように、それぞれサブステージガイド37a、37b上に搭載されている。サブステージガイド37aは、ボディBDの−Y側に、サブステージガイド37bは、ボディBDの+Y側に、それぞれボディBDから離間した状態で、床面F上に設置されている。サブステージガイド37aは、X軸方向を長手方向とするXY平面に平行な板状の部材であるガイド部38a(図2参照)と、ガイド部38aを床面F上で支持する複数、例えば4本の脚部39a(図1では、−X側の2本の脚部39aは紙面奥側に隠れている)と、を有している。サブステージガイド37bも、同様な構成のガイド部38bと、複数の脚部39bとを有している。ただし、サブステージガイド37aのガイド部38aは、サブステージガイド37bのガイド部38bよりも高い位置(+Z側)に配置されている(すなわち、脚部39aが脚部39bよりも長い)。
また、サブステージガイド37a、37bそれぞれの脚部39a、39bには、ケーブルチェーン89a、89b(ケーブルキャリア、ケーブルベア(登録商標)などとも称される)をそれぞれ支持する支持部材36a、36bが固定されている。ケーブルチェーン89aはサブステージ50に(あるいはサブステージ50を介してメインステージ40に)、ケーブルチェーン89bはサブステージ70に(あるいはサブステージ70を介してメインステージ40に)、それぞれに電力を供給するためのケーブル、あるいは用力(例えば、真空吸引力、加圧気体、冷却液など)を供給するためのチューブなどを有する。
ガイド部38aの上面には、図2に示されるように、一対のXリニアガイド51が固定されている。一対のXリニアガイド51は、それぞれX軸方向を長手方向とし、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。また、ガイド部38aの上面における一対のXリニアガイド51の間には、X軸方向に沿って配列された複数の磁石を含む磁石ユニット52が固定されている。さらに、ガイド部38aの−Y側の側面には、X軸方向を長手方向とするXZ平面に平行な板部材から成るXスケール53が固定されている。Xスケール53の表面には、X軸方向を周期方向とする一次元グレーティングが形成されている。ガイド部38bは、ガイド部38aと同様の構成を有している。すなわち、ガイド部38bの上面には、一対のXリニアガイド71と、磁石ユニット72とが固定され、ガイド部38bの−Y側の側面には、Xスケール73が固定されている。
サブステージ50は、図3に示されるように、サブステージガイド37aのガイド部38a上でX軸方向に移動可能なXステージ54と、Xステージ54上に搭載され、Xステージ54上でY軸方向に移動可能なYステージ55と、を有している。
Xステージ54は、X軸方向を長手方向とする平面視で矩形の板状部材から成り(図2参照)、その下面の4隅部には、図示しない転がり軸受(例えばボール、ころ等)を含む断面逆U字状のスライダ56が固定されている(図3では+X側の2つのみが図示され、−X側の2つは図面奥側に隠れている)。+Y側の2つのスライダ56は、+Y側のXリニアガイド51に、−Y側の2つのスライダ56は、−Y側のXリニアガイド51に、それぞれスライド可能な状態で係合している。Xステージ54の下面中央部には、コイルを含むコイルユニット57が、磁石ユニット52に対向した状態で固定されている。コイルユニット57は、磁石ユニット52と共にXステージ54を一対のXリニアガイド51上でX軸方向に駆動するためのXリニアモータを構成している。コイルユニット57を構成するコイルに供給される電流の大きさ、及び向きは、図示しない主制御装置により制御される。
また、図2及び図3に示されるように、Xステージ54の下面の−X側且つ−Y側には、前述したXスケール53と共にXステージ54のX軸方向に関する位置情報を計測するXリニアエンコーダシステムを構成するXヘッド58が所定の固定部材を介して固定されている。Xヘッド58の計測値は、図示しない主制御装置に供給され、主制御装置は、Xヘッド58の計測値に基づいてXリニアモータを制御することにより、Xステージ54のX軸方向に関する位置を制御する。
Xステージ54の上面中央には、図3に示されるように、コイルを含むコイルユニット60が固定されている。コイルユニット60を構成するコイルに供給される電流の大きさ、及び向きは、図示しない主制御装置により制御される。また、Xステージ54の上面の四隅部の近傍には、図示しない転がり軸受(例えばボール、ころ等)を含む断面U字状のスライダ61が固定されている(図3では+X側の2つのみが図示され、−X側の2つは図面奥側に隠れている)。
Yステージ55は、平面視でX軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り(図2参照)、その下面中央には、Y軸方向に配列された複数の磁石を含む磁石ユニット62が固定されている。磁石ユニット62は、コイルユニット60と共にYステージ55をY軸方向に駆動するYリニアモータを構成している。なお、Yリニアモータは、コイルユニット及び磁石ユニットの配置関係が上記の場合(ムービングマグネット方式)とは逆のムービングコイル方式であっても良い。
Yステージ55の下面における磁石ユニット62の+X側、−X側それぞれには、Y軸方向を長手方向とするYリニアガイド63が固定されている(図3では−X側のYリニアガイドは図面奥側に隠れている)。一対のYリニアガイド63それぞれは、Xステージ54の上面に固定されたスライダ61にスライド可能な状態で係合しており、Yステージ55のXステージ54上でのY軸方向への直進移動を案内しつつ、Yステージ55のXステージ54上でのX軸方向への移動を制限している。なお、Yリニアガイド及びスライダの配置関係は、上述の場合と逆であっても良い。
Yステージ55の+X側の側面には、図2に示されるように、Y軸方向を長手方向とするYZ平面に平行な板部材から成るYスケール64が固定されている。Yスケール64の表面には、Y軸方向を周期方向とする一次元グレーティングが形成されている。Yスケール64に対向して、Xステージ54の上面の+X側の中央部には、Yスケール64と共にYステージ55のY軸方向に関する位置情報を計測するYリニアエンコーダシステムを構成するYヘッド59が所定の固定部材を介して固定されている。Yヘッド59の計測値は、図示しない主制御装置に供給され、主制御装置は、Yヘッド59の計測値に基づいてYリニアモータを制御することにより、Yステージ55のY軸方向に関する位置を制御する。なお、図面の錯綜を避けるため、図1及び図3では、Yヘッド59,及びYスケール64の図示が省略されている。
Yステージ55の上面における+Y側の中央部には、X固定子65が断面L字状の取付部材65a(図3参照)を介して固定されている。X固定子65は、複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有しており、サブステージ50がX軸方向に移動する際に、メインステージ40に固定されたX可動子46との間の電磁相互作用によりX軸方向の駆動力(例えば電磁力(ローレンツ力))を発生して、メインステージ40をサブステージ50に対してX軸方向に駆動してメインステージ40をX軸方向に誘導するXボイスコイルモータ(以下、XVCM1と略述する(図3参照))を構成している。すなわち、サブステージ50が前述のXリニアモータによってX軸方向に駆動される際に、XVCM1が駆動力を発生することで、メインステージ40がサブステージ50と一体的に駆動される。
メインステージ40とサブステージ50とのX軸及びY軸方向に関する相対的な位置情報は、図2に示されるように、サブステージ50に所定の固定部材を介して固定された、例えば渦電流方式(あるいは静電容量方式)の変位センサなどを含むギャップセンサ(X軸方向計測用のギャップセンサ66、及びY軸方向計測用のギャップセンサ67)により、メインステージ40に所定の固定部材を介して固定された金属板から成るターゲット(X軸方向計測用のターゲット49a、及びY軸方向計測用のターゲット49b)を介して計測される。すなわち、ギャップセンサ66,67が、ターゲット49a,49bとのギャップをそれぞれ計測することで、メインステージ40とサブステージ50とのX軸及びY軸方向に関する相対的な位置情報が計測される。
サブステージ70は、図3に示されるように、後述するX固定子85の位置が異なること、及び後述するY固定子88を有することを除き、駆動系、計測系を含み、サブステージ50と同様に構成されている。すなわち、サブステージ70は、Xステージ74と、Yステージ75とを有している。Xステージ74は、その下面に固定されたスライダ76を介してXリニアガイド71上に搭載され、その下面に固定されたコイルユニット77と磁石ユニット72とにより構成されるXリニアモータにより、Xリニアガイド71上でX軸方向に駆動される。また、Yステージ75は、その下面に固定されたYリニアガイド83を介してXステージ74上に固定されたスライダ81上に搭載され、その下面に固定された磁石ユニット82とXステージ74の上面に固定されたコイルユニット80とにより構成されるYリニアモータにより、Xステージ74上でY軸方向に駆動される。
Xステージ74のX軸方向の位置情報は、図2及び図3に示されるように、Xステージ74に所定の固定部材を介して固定されたXヘッド78と、ガイド部38bに固定されたXリニアスケール73とにより構成されるXリニアエンコーダシステムにより計測される。また、Yステージ75のY軸方向の位置情報は、Xステージ74に所定の固定部材を介して固定されたYヘッド79と、Yステージ75に固定されたYリニアスケール84とにより構成されるYリニアエンコーダシステムにより計測される。
図3に示されるように、Yステージ75の上面には、X固定子85が断面L字状の固定部材85aを介して固定されている。X固定子85は、メインステージ40に固定されたX可動子45との電磁的相互作用により、メインステージ40をサブステージ70に対してX軸方向に駆動する駆動力を発生するXボイスコイルモータ(以下、XVCM2と略述する)を構成している。不図示の主制御装置は、サブステージ50,70を一対のXリニアモータ(磁石ユニット52,72、及びコイルユニット57,77)を用いてX軸方向に同期駆動する際、併せてXVCM1、XVCM2を用いてメインステージ40をサブステージ50,70に対してサブステージ50,70と同方向に駆動することにより、メインステージ40とサブステージ50,70とを一体的にX軸方向に移動させる。また、主制御装置は、XVCM1,XVCM2による駆動力を異ならせることにより、メインステージ40を適宜θz方向に微少駆動する。
また、固定部材85aには、X固定子85の上方にY固定子88が固定されている。Y固定子88は、複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。Y固定子88は、メインステージ40に固定されたY可動子44との電磁的相互作用により、メインステージ40をサブステージ70に対してY軸方向に微少駆動するYボイスコイルモータ(以下、YVCMと略述する)を構成している。
メインステージ40とサブステージ70とのX軸方向に関する相対的な位置情報は、図2に示されるように、Xステージ74に所定の固定部材を介して固定されたギャップセンサ86によりメインステージ40に所定の固定部材を介して固定されたターゲット49cを介して計測され、メインステージ40とサブステージ70とのY軸方向に関する相対的な位置情報は、Yステージ75に所定の固定部材を介して固定されたギャップセンサ87によりメインステージ40に所定の固定部材を介して固定されたターゲット49dを介して計測される。
ここで、一例としてメインステージ40が、例えば+Y方向に所定のストロークで移動する際の動作(Yステップ動作)を、図4(A)及び図4(B)を用いて説明する。なお、図4(A)及び図4(B)では、サブステージガイド37a、37bそれぞれの脚部、及びボディの図示が省略されている。
図4(A)において、メインステージ40は、そのY軸方向に関する移動可能範囲の−Y側端部近傍に位置している。図4(A)に示される状態からメインステージ40を+Y方向に駆動する際、不図示の主制御装置は、サブステージ50,70それぞれのYリニアモータを制御して、Yステージ55,75それぞれを、Xステージ54,74上で+Y方向に駆動する(図4(B)参照)。また、メインステージ40とサブステージ50,70とが非接触状態であるため、主制御装置は、これと併せて、前述の光干渉計システム(Yレーザ干渉計98y(図3参照))の出力に基づいてYVCMを制御してメインステージ40をサブステージ70に対して+Y方向に駆動することにより、メインステージ40をY軸方向に誘導する(YVCMを介してサブステージ70にメインステージ40を牽引させる)。これにより、メインステージ40と、サブステージ50,70とが一体的に+Y方向に移動する。主制御装置は、メインステージ40を−Y方向に駆動する際にも同様の制御を行う。ここで、サブステージ50,70のY軸方向に関する移動ストロークは、前述したマスクパターン像の複数の投影領域のうちの隣接する2つの投影領域のウエハW上におけるY軸方向の間隔に対応する距離以上に設定されている。また、前述の如く、マスクMのパターン面には、スキャン方向(X軸方向)に延設された複数の帯状(短冊状)の領域が、Y軸方向に所定間隔で設けられ、これらの複数の帯状の領域には、基板P上にパターンAのマスクパターンの一部、及び、パターンBのマスクパターンの一部が、Y軸方向に関して交互に形成されている場合には、サブステージ50,70のY軸方向に関する移動ストロークは、複数の帯状の領域のうちの隣接する帯状領域の間隔と同等以上に設定される。これにより、マスクステージ装置MSTでは、前述したY軸方向に関するマスクMの位置決めが可能になっている。
また、主制御装置は、メインステージ40をX軸方向に駆動する際には、一対のXリニアモータを制御してサブステージ50,70それぞれのXステージ54,74を、X軸方向に同期駆動する。主制御装置は、これと併せて、光干渉計システム(一対のXレーザ干渉計98x(図2参照))の出力に基づいてXVCM1,XVCM2を制御して、メインステージ40をサブステージ50,70それぞれに対してX軸方向に駆動することにより、メインステージ40をX軸方向に誘導する。これにより、メインステージ40と、サブステージ50,70とが一体的にX軸方向に移動する。
また、例えば、露光時などにサブステージ50,70を用いてメインステージ40がX軸方向(スキャン方向)に長ストロークで駆動される際、主制御装置は、XVCM1,XVCM2と併せてYVCMを適宜制御して、例えば基板ステージ装置PST(図1参照)により駆動される基板P(図1参照)の動きに追従させるために、メインステージ40をY軸方向に微少駆動(スキャン動作中にクロススキャン方向に微少駆動)する。
ここで、XVCM1,XVCM2,及びYVCMのZ軸方向に関する配置について説明する。図4(B)に示されるように、XVCM1及びXVCM2は、それぞれメインステージ40の上面側、下面側に配置され、互いに独立にメインステージ40にX軸方向の推力を作用させるため、XVCM1,及びXVCM2がメインステージ40をX軸方向に駆動する際の推力は、それぞれ実質的にほぼ同じ力(力の大きさと方向)なので、XVCM1による推力発生位置と、XVCM2による推力発生位置との中間点でメインステージ40に作用する。そして、XVCM1,XVCM2は、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面からZ軸方向に関してそれぞれ等距離に配置されている。従って、XVCM1,XVCM2は、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面内で、メインステージ40にX軸方向の推力を作用させる。また、YVCMも同様に、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面に平行な面内で、メインステージ40に推力が作用するように、そのZ軸方向に関する配置位置が設定されている。従って、メインステージ40をサブステージ50,70に対してXVCM1,XVCM2,及びYVCMを用いてX軸方向、及び/又はY軸方向に駆動する際、その駆動方向に直交する軸周りのモーメント(ピッチングモーメント)がメインステージ40に作用せず、メインステージ40をXY平面に沿って精度良く駆動できる。
この他、マスクステージ装置MSTは、図3に示されるように、メインステージ40をXY平面内の特定の位置に位置決めする一対の位置決め装置90を有している。一対の位置決め装置90は、メインステージ40の本体部41の+X側の側面に、Y軸方向に離間して固定された一対の位置決め部材91(図2参照)と、上記一対の位置決め部材91と略同じ間隔で鏡筒定盤31の上面に固定された一対の位置決めシリンダ95とを有している。一対の位置決め部材91の下面には、下方(−Z側)に開口した円錐状の凹部92が形成されている。一対の位置決めシリンダ95それぞれは、Z軸方向に延設されたシリンダケース95aと、一端がシリンダケース95a内に挿入されたロッド95bとを含む、例えばエアシリンダ(又は油圧シリンダ、あるいは電動の一軸駆動装置)から成る。ロッド95bの他端には、ボール96が取り付けられている。
一対の位置決めシリンダ95は、例えば液晶露光装置10を初めて使用する際、あるいは液晶露光装置10のメンテナンス後など、レーザ干渉計システムによるメインステージ40の位置情報の計測を初めて行う場合、あるいは停止された計測を再開する場合などに、メインステージ40をレーザ干渉計システムの計測原点位置(以下、計測原点位置と略述する)に位置決めする際に使用される。
一対の位置決めシリンダ95は、メインステージ40の位置決め時以外(例えば、露光時)には、ボール96がメインステージ40に接触しないように、図5(A)に示されるように、ロッド95bがシリンダケース95a内に収容された状態(収容状態)とされる。
メインステージ40を計測原点位置に位置決めする際には、まず、一対の位置決め部材91及び一対の位置決めシリンダ95それぞれのX軸方向、及びY軸方向の位置が概ね一致するように、メインステージ40の位置が調整される。なお、この調整は、液晶露光装置10のオペレータが手動により行っても良いし、ギャップセンサ66,67、86,87(図2参照)の出力に基づいて自動的に位置決め調整されるように制御しても良い。次いで、シリンダケース95a内にエアなどが供給されることにより、図5(B)に示されるように、ロッド95bがシリンダケース95aから突出して、ボール96が凹部92に嵌合する。メインステージ40は、サブステージ50,70に対してX軸方向及びY軸方向に拘束されず、且つ一対のメインステージガイド35上に浮上支持されているので、ボール96が凹部92に嵌合する際、ボール96の表面と位置決め部材91の凹部92を形成する面(テーパ面)とが摺動し、シリンダ95の中心軸線と凹部92の中心軸線とが一致する位置にメインステージ40が案内される。従って、常に同一位置に高精度でメインステージ40を位置決めすることができる。また、一対のボール96が一対の凹部92それぞれに嵌合した状態では、ボール96の外周面と凹部92を形成するテーパ面とが隙間なく接触するので、メインステージ40を位置決めした状態で、そのがたつきが防止される。
そして、図5(B)に示される、一対のボール96が一対の凹部92それぞれに嵌合した状態では、メインステージ40のX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の移動が制限される。一対の移動鏡48x、及び移動鏡48y(図2参照)それぞれは、一対の位置決め装置90によりメインステージ40が位置決めされた状態で、対応する各レーザ干渉計98x、98yから射出された測長ビームLx、Lyが、その反射面に垂直に入射するように本体部41に対する取付位置が調整されている。液晶露光装置10では、上記一対の位置決め装置90を用いてメインステージ40が計測原点位置に位置決めされ、例えば露光時などには、その計測原点位置を基準とするレーザ干渉計システムの計測値に基づいてメインステージ40のXY平面内の位置が制御される。また、液晶露光装置10では、一対の位置決め装置90を用いてメインステージ40を位置決めした状態で、図示しない主制御装置により、前述したギャップセンサ66,67,86,87の出力に基づいて、メインステージ40とサブステージ50,70それぞれとの位置関係が記憶される。これにより、一対のボール96と一対の凹部92との係合が解除されるときに、非接触浮上支持された(すなわちその水平面内での位置を拘束する部材がない)メインステージ40が流れて、レーザ干渉計システムによる計測が行えなくなる事態が防止される。なお、上記一対の位置決め装置において、ボールと位置決め部材(凹部)との配置関係は逆であっても(シリンダに凹部を有する位置決め部材が固定され、ボールがメインステージに固定されても)良い。
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによるマスクステージ装置MST上へのマスクMのロード、及び不図示の基板ローダによる基板ステージ装置PST上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるのでその説明は省略する。
以上説明したように、本実施形態の液晶露光装置10が有するマスクステージ装置MSTは、サブステージ70が有するY固定子88とメインステージ40が有するY可動子44とから成るYVCMにより、メインステージ40をサブステージ50,70に対して(サブステージ50,70上で)クロススキャン方向(Y軸方向)に微少駆動する構成であるので、メインステージ40をクロススキャン方向に微少駆動しても、サブステージ50,70それぞれをX軸方向に駆動するためのXリニアモータを構成する磁石ユニット52とコイルユニット57、及び磁石ユニット72とコイルユニット77とのクロススキャン方向の相対位置がそれぞれ変わらないので、Xリニアモータの固定子(磁石ユニット52,72)を大型化することなく、メインステージ40を常に一定の推力でスキャン方向に駆動することができる。
また、本実施形態の液晶露光装置10では、マスクMを保持するメインステージ40を、YVCMを介して、一対のYリニアモータ(それぞれ磁石ユニット62とコイルユニット60、及び磁石ユニット82とコイルユニット80を含む)によってY軸方向にも長ストロークで駆動することができる。このため、メインステージ40のY軸方向の位置を適宜位置決めすることにより、マスクMを交換することなく、基板P上にパターンA及びパターンBを選択的に転写することができる。これにより、例えば基板P上のひとつのショット領域に対して、パターンAを転写する露光動作を行った後、パターンAに重ねてパターンBを転写する露光動作を、マスクの交換を行うことなく連続で行うことができる。また、複数枚の基板に連続して露光を行う際、最初に所定枚数の基板にパターンAを転写する露光動作を行った後、残りの基板にパターンBを転写する露光動作を行う場合でも、マスクの交換を行う必要がない。また、一枚の基板に露光動作を行う際、複数のショット領域のうちの一部のショット領域にパターンAを転写する露光動作を行い、残りのショット領域にパターンBを転写する露光動作を行う場合でも、マスクの交換を行う必要がない。
また、メインステージ40とサブステージ50,70それぞれとは、互いに非接触であるので、サブステージ50,70を介して外部からの振動(外乱)がメインステージ40に伝達されることが防止される。また、メインステージ40をX軸方向、Y軸方向それぞれに誘導するためのXVCM1,XVCM2、YVCMは、それぞれムービングマグネット式のボイスコイルモータであり、メインステージ40には、磁石ユニットを含むY可動子44、及びX可動子45,46を設ければ良いので、メインステージ40に電源供給のためのケーブルなどを接続する必要がない。従って、ケーブルなどを介して外部からの振動(外乱)がメインステージ伝達されることを防止できる。また、ケーブルの張力によりメインステージの位置制御が困難になることもない。
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態の液晶露光装置について説明する。第2の実施形態の液晶露光装置は、マスクの一部を照明光から遮光するためのマスキングブレード装置(マスキングシステム)がマスクステージ装置に設けられている点を除き、第1の実施形態の液晶露光装置10と同様の構成を有しているため、以下では、マスクステージ装置の構成についてのみ説明する。なお、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、第1の実施形態と同一の符号を用いるとともに、その説明を省略する。
図6には、第2の実施形態に係るマスクステージ装置MSTaの平面図が示されている。また、図7には、図6のA−A線断面図が示されている。なお、図6及び図7では、図面の錯綜を避けるため、サブステージ50、70に設けられたギャップセンサ、並びにメインステージ40に設けられたターゲットなどについては図示が省略されているが、その構成は、第1実施形態と同様である。
図6に示されるように、マスキングブレード装置MBは、サブステージ50,70間に架設された一対のブレード本体110と、一対のブレード本体110それぞれをX軸方向に駆動する一対のブレード駆動装置140と、を備えている。ここで、一対のブレード本体110は、一方が他方の−X側に配置されている点を除き、その構成は同じとなっているため、以下では、図7に示される一方のブレード本体110の構成について説明する。
ブレード本体110は、図7に示されるように、遮光部111と、一対の被駆動部112と、遮光部111と一対の被駆動部112それぞれとを接続する一対の接続部113とを有している。遮光部111は、XY平面に平行に配置されたY軸方向を長手方向とする矩形板状の部材であり、その長手方向の寸法は、マスクMの長手方向寸法よりも長く設定されている。遮光部111は、メインステージ40のステージ本体41の開口部41a内に収容され、その下面がマスクMの上面に所定のクリアランスを介して対向している。
一対の被駆動部112それぞれは、XY平面に平行に配置されたY軸方向を長手方向とする矩形板状の部材から成る。一対の被駆動部112は、Y軸方向に関して、所定の間隔で離間して配置されている。−Y側の被駆動部112は、+Y側の端部が遮光部111の−Y側の端部の上方に配置され、+Y側の被駆動部112は、−Y側の端部が遮光部111の+Y側の端部の上方に配置されている。
一対の接続部113それぞれは、Z軸方向に延設された板状の部材である。一方の接続部113は、遮光部111の−Y側の端部と、−Y側の被駆動部112の+Y側の端部とを接続し、他方の接続部113は、遮光部111の+Y側の端部と、+Y側の被駆動部112の−Y側の端部とを接続している。ブレード本体110は、メインステージ40に対して非接触となっている。
一対のブレード駆動装置140は、それぞれX軸方向を長手方向とする部材であり、一方がサブステージ50に、他方がサブステージ70に、それぞれ一対の断面L字状の固定部材141を介して搭載されている。なお、一対のブレード駆動装置140の構成は同じである。また、一対のブレード駆動装置140は、その上面で一対のブレード本体110それぞれの+Y側、−Y側の端部を支持している。ブレード駆動装置140は、例えば、複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有しており、該コイルユニットと、一対のブレード本体110それぞれの+Y側、−Y側の端部それぞれに固定された磁石ユニット(図示省略)とにより構成されるリニアモータにより、一対のブレード本体110それぞれを独立してX軸方向に駆動する。なお、一対のブレード本体110をX軸方向に直進案内するガイド部材を設けても良い。また、一対のブレード本体110を一対のサブステージ50,70上で駆動できれば、その駆動方式は、これに限られず、例えば送りねじなどを用いても良い。
マスキングブレード装置MBは、マスクMのメインステージ40へのロード時、及びマスクMのメインステージ40からのアンロード時には、一対のブレード本体110が、それぞれ一対のブレード駆動装置140により互いに離間する方向に駆動されることにより、ロード時、アンロード時におけるマスクMの移動経路から退避する。また、露光時には、一対のブレード本体110が、それぞれ一対のブレード駆動装置140により互いに接近する方向に駆動され、マスクM上の任意の位置に適宜位置決めされることにより、X軸方向に関して、マスクM上の任意の位置を照明光から遮光する。これにより、照明光により照明されるマスクM上の照明領域が制限される。なお、マスクMに対してY軸方向に移動可能な一対の遮光部材を有し、Y軸方向に関してマスクM上の任意の位置を照明光から遮光するマスキングブレード装置(図示省略)が、例えばマスクステージ装置MSTaと照明系IOP(図1参照)との間、あるいは投影光学系PLの下方に配置されていても良い。
以上説明した第2の実施形態の液晶露光装置では、第1の実施形態の液晶露光装置10で得られる効果に加え、マスキングブレード装置MBを用いてマスクMの任意の位置を照明光から遮光できるので、マスクM上の任意の位置のパターンのみを確実に基板Pに転写できる。
また、マスキングブレード装置MBをサブステージ50、70に架け渡して配置し、メインステージ40に非接触としたので、マスキングブレード装置MBの重量がメインステージ40に作用しない。これにより、メインステージ40、及びメインステージ40が保持するマスクMの変形を防止することができる。また、マスキングブレード装置MBとメインステージ40とが振動的に分離しているので、これらの間で共振現象が発生することが防止され、メインステージ40を高精度で位置制御できる。また、仮にマスキングブレード装置MBと同様の機能を有するマスキングブレード装置(図示省略)を、例えばメインステージに搭載する場合に比べ、メインステージが重くならないので、メインステージを小さな推力で駆動できる。従って、メインステージを駆動するアクチュエータ(上記実施形態ではボイスコイルモータ)を小型化できる。
なお、上記第1及び第2の実施形態の液晶露光装置が備えるマスクステージ装置の構成は、一例に過ぎない。以下、上記実施形態の液晶露光装置が備えるマスクステージ装置の変形例について説明する。なお、以下の変形例では、説明の簡略化及び図示の便宜上から、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、第1の実施形態と同一若しくは類似の符号を用いるとともに、その説明を省略する。
《第1の変形例》
図8には、第1の変形例に係る液晶露光装置10aが一部省略され、且つ一部断面図にて示されている。液晶露光装置10aは、床面(図1参照)上に設置されたチャンバ200内にマスクステージ装置MSTb、ボディBDa、図示しない基板ステージ装置(図1参照)などが収容されている。そして、第1の変形例に係るマスクステージ装置MSTbでは、サブステージ50,70それぞれを支持するガイド部38a、38bが、それぞれチャンバ200の天井に吊り下げ部材239a、239bを介して吊り下げ状態で固定されている点が上記第1及び第2実施形態と異なる。なお、ガイド部38bは、鏡筒定盤31aの上面に形成された上方(+Z方向)に開口する凹部231内に収容されている。また、図8では、その図示が省略されているが、吊り下げ部材239a、239bそれぞれは、X軸方向に離間して一対設けられており、ガイド部38a、38bのX軸方向の両端部を天井から吊り下げ支持している。
この第1の変形例に係るマスクステージ装置MSTbでは、上記各実施形態に比べ、ボディBDaの両側にサブステージガイドが配置されていない分、ボディBDa(及び図示しない基板ステージ装置)を大型化できる。なお、図8に示される第1の変形例のマスクステージ装置MSTbに、第2の実施形態のマスクステージ装置に搭載されたようなマスキングブレード装置を搭載しても良い。
《第2の変形例》
次に上記第1、第2の実施形態の第2の変形例について説明する。図9には、第2の変形例に係るマスクステージ装置MSTcの一部省略された斜視図が示されている。図9に示されるマスクステージ装置MSTcは、メインステージ340に固定された一対のX移動鏡48xの位置が上記第1、第2の実施形態とは異なる。メインステージ340の本体部341の下面には、−X側に開口した一対の凹部347がY軸方向に離間して形成されている。そして、一対のX移動鏡48xそれぞれは、一対の凹部347それぞれ内に収容されて本体部341に固定されている。この第2の変形例に係るマスクステージ装置MSTcでは、一対のX移動鏡48xが本体部341の内部側に配置されているので、例えば、仮に本体部341がθy方向に揺れたとしても反射面の角度変化を抑制できるので、高精度でメインステージ340の位置制御を行うことができる。また、上記第1、第2の実施形態のX移動鏡取付位置よりも、取付位置の剛性を高められるので、X移動鏡部の固有振動数を上げられ、制御性能を高めることができる。
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態の液晶露光装置について、図10〜図13に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一若しくは類似の符号を用いると共に、その説明を簡略若しくは省略する。
図10には、第3の実施形態の液晶露光装置1000が有するマスクステージ装置MSTdの平面図が示され、図11には、マスクステージ装置MSTdを+X方向から見た側面図が示されている。本第3の実施形態の液晶露光装置1000は、マスクステージ装置MSTに代えてマスクステージ装置MSTdを有している点を除き、前述の第1の実施形態の液晶露光装置10と同様の構成を有している。以下では、マスクステージ装置MSTdの構成についてのみ説明する。
第3の実施形態に係るマスクステージ装置MSTdは、例えば図10と図2とを比較すると明らかなように、全体的には第1の実施形態に係るマスクステージ装置MSTと同様に構成されているが、一部の構成が異なっている。以下、かかる相違点を中心として第3の実施形態について説明する。
マスクステージ装置MSTdでは、前述した一対の位置決め装置90に代えて、図10に示されるメインステージ40とサブステージ50とを接続するロック装置100a、100b、及びメインステージ40とサブステージ70とを接続するロック装置100c、100dを有している。ここで、ロック装置100aとロック装置100bとは、実質的に同じ構成を有している。また、ロック装置100cとロック装置100dとは、実質的に同じ構成を有している。
図12(A)には、ロック装置100a、100bを代表してメインステージ40の−Y側且つ+X側のロック装置100aの構成が概略的に示されている。
図12(A)に示されるように、ロック装置100aは、Yステージ55の上面の+Y側の端部に、断面L字状の固定部材102を介して固定されたロック部101を有している。本実施形態では、前述のY軸方向計測用のギャップセンサ67は、断面L字状の取付部材67aを介して固定部材102に固定されている。
ロック部101は、Z軸方向に延設され、且つZ軸方向に移動可能なシャフト103を有している。シャフト103をZ軸方向に駆動する方式は、特に限定されず、例えばエアシリンダ装置、あるいはソレノイドなどにより駆動することができる。シャフト103の下端には、ボール104が固定されている。一方、メインステージ40の本体部41の上面の−Y側の端部には、平板状の支持部材105が固定されている。ギャップセンサ67でギャップを計測する対象である前述のターゲット49bは、支持部材105の上面に固定されている。
支持部材105の−Y側の端部下面には、断面L字状の板状部材である支持部材106の一端が固定されている。支持部材106の他端(−Y側端)の上面には、シャフト103の下方(ボール104に対向する位置)に円板状(高さの低い円柱状)の部材から成る係合部材107が固定されている。係合部材107の上面には、上方(+Z側)に開口した円錐状の凹部107aが形成されている。
図12(A)に示されるように、シャフト103がそのZ軸方向への可動範囲の+Z側の端部に配置され、ボール104と係合部材107とが離間した状態では、メインステージ40は、サブステージ50に拘束されない。一方、図12(B)に示されるように、シャフト103が−Z方向に移動してボール104が凹部107aに嵌合すると、メインステージ40とサブステージ50とが接続され、そのXY平面内での相対移動が制限される。また、ロック装置100a(及びロック装置100b)は、ボール104を円錐状の凹部107aに嵌合させる構成であるので、図12(B)に示されるメインステージ40がサブステージ50に拘束された状態では、メインステージ40とサブステージ50との相対的な位置関係は、常に同じとなる。
他方のロック装置100b側では、図10に示されるように、X軸方向計測用のギャップセンサ66が、所定の固定部材を介してXステージ54に固定され、ギャップセンサ66でギャップを計測する対象である前述のターゲット49aが、メインステージ40に固定された支持部材の上面に固定されている。ギャップセンサ66及びターゲット49aのそれぞれは、ギャップの計測方向がX軸方向となる向きに向けて固定部材、支持部材に固定されている。
図13には、ロック装置100c、100dを代表してメインステージ40の+Y側且つ+X側のロック装置100cの概略構成が示されている。図13に示されるように、ロック装置100cは、図12(A)に示されるロック装置100aを上下にひっくり返したような構造となっている。すなわち、ロック装置100cは、固定部材102を介してYステージ75に固定されたロック部101を有し、ロック部101は、上下動可能で上端にボール104が固定されたシャフト103を有している。前述のY軸方向計測用のギャップセンサ87は、固定部材102に固定されている。一方、メインステージ40には、支持部材105,106を介して下方に開口する円錐状の凹部107aを有する係合部材107が固定されている。ギャップセンサ87でギャップを計測する対象である前述のターゲット49dは、支持部材106に固定されている。ロック装置100cは、ロック装置100aと同様に、ボール104を凹部107aに嵌合させることにより、メインステージ40とサブステージ70とを接続して、そのXY平面内での相対移動を制限する。
図10に戻り、他方のロック装置100d側では、X軸方向計測用のギャップセンサ86が、固定部材102に固定され、ギャップセンサ86でギャップを計測する対象である前述のターゲット49cは、支持部材105の上面に固定されているが、ギャップセンサ86及びターゲット49cのそれぞれは、ギャップの計測方向がX軸方向となる向きに向けて固定部材102、支持部材105に固定されている。
図10に示されるように、ロック装置100a〜100dを用いてメインステージ40をサブステージ50、70それぞれに接続した状態では、XリニアモータによりXステージ54,74それぞれをX軸方向に駆動すると、XVCM1,XVCM2(図11参照)を用いることなくメインステージ40をX軸方向に駆動して、露光時の目標速度まで加速させること、あるいはメインステージ40を減速させることができる。このため、XVCM1,XVCM2として大きな推力を発生可能なものを用いる必要がなく、XVCM1,XVCM2を小型化できる。同様に、Yリニアモータを用いてYステージ55,75をY軸方向に駆動する際、YVCM(図11参照)を用いることなくメインステージ40をY軸方向に駆動することができる。
また、本第3の実施形態の液晶露光装置1000では、例えば装置の立ち上げ時において、レーザ干渉計システムによるメインステージ40の絶対位置の計測ができないため、メインステージ40を所定の計測原点位置(図示省略)に位置させる必要がある。この際、図示しない主制御装置は、上記ロック装置100a〜100dを用いてサブステージ50,70とメインステージ40とを接続し、サブステージ50,70を用いてメインステージ40を上記計測原点位置まで牽引する。そして、主制御装置は、メインステージ40を上記計測原点位置に位置させた後、ロック装置100a〜100dによる接続を解除し、前述した各ギャップセンサ66,67,86,87(図10参照)の出力に基づいて位置ずれをモニタしながら、干渉計システムのプリセットを行う。
また、各ロック装置100a〜100dでは、各ボール104の外周面と、各凹部107aを形成するテーパ面との接触面が、図12(B)に代表的に示されるように、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面に平行な平面上に配置されるように、各係合部材107の位置が設定されている。従って、サブステージ50,70とメインステージ40とをロック装置100a〜100dを用いて接続した状態で、サブステージ50,70を共にX軸方向及び/又はY軸方向に駆動した場合、サブステージ50,70がメインステージ40を押圧する押圧力は、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面に平行な平面内で作用する。従って、メインステージ40をX軸方向及び/又はY軸方向に駆動する際、その駆動方向に直交する軸回りのモーメント(ピッチングモーメント)がメインステージ40に作用せず、メインステージ40を安定してXY平面に沿って案内することができる。また、ロック装置100a〜100dでは、ボール104の外周面と、凹部107aを形成するテーパ面とが隙間なく接触するので、サブステージ50,70それぞれにメインステージ40を押圧させる際、大きな押圧力を作用させることができる。
さらに、図10に示されるように、本第3の実施形態のマスクステージ装置MSTdは、メインステージ40とサブステージ50との相対移動範囲を制限するストッパ装置120a、120b、及びメインステージ40とサブステージ70との相対移動範囲を制限するストッパ装置120c、120dを有している。ここで、ストッパ装置120aとストッパ装置120bとは、実質的に同じ構成を有している。また、ストッパ装置120cとストッパ装置120dとは、実質的に同じ構成を有している。図12(A)には、4つのストッパ装置を代表してメインステージ40の−Y側且つ+X側のストッパ装置120aの構成が示されている。
図12(A)に示されるように、前述した固定部材102の下端には、ストッパ部材121が取り付けられている。ストッパ部材121は、平面視で矩形枠状(矩形の外形形状を有し、且つ中央部に矩形の開口部(貫通孔)を有する形状)に形成されている。そして、ストッパ部材121の開口部内には、前述の支持部材106が収容されている。支持部材106には、ストッパ部材121との対向面(すなわち+X側、−X側、+Y側、−Y側の4つの側面)に、例えばゴム系の材料により形成された緩衝パッド123(−X側の緩衝パッドは図示省略)が固定されている。支持部材106の+X側、−X側、+Y側,−Y側それぞれに固定された緩衝パッド123のそれぞれとストッパ部材121との間には、所定のクリアランス(隙間)が形成されている。
図12(A)に示される状態では、メインステージ40がサブステージ50に対してX軸方向及び/又はY軸方向に移動する際のメインステージ40とサブステージ50との+X,−X,+Y、−Y各方向への(すなわち、水平面内での)相対移動量(相対可能範囲)が、ストッパ部材121と支持部材106(緩衝パッド123)との間に形成されたクリアランスの幅に応じて制限される。また、図13には、ストッパ装置120cの概略構成が示されている。ストッパ装置120cも、ストッパ装置120aと同様に、固定部材102に固定された矩形枠状に形成され、その開口部内に支持部材106を収容するストッパ部材121を有し、メインステージ40とサブステージ70との相対移動可能範囲を、ストッパ部材121と支持部材106(緩衝パッド123)との間のクリアランスの幅により制限する。
これにより、ロック装置100a〜100dがメインステージ40とサブステージ50、70それぞれとを接続していない状態(図12(A)参照)で、サブステージ50、70を用いてメインステージ40をX軸方向及び/又はY軸方向に所定のストロークで駆動する際、例えば仮にサブステージ50,70が緊急停止して、メインステージ40がその慣性によりX軸方向及び/又はY軸方向に移動しても、4つのストッパ部材121が、対応する支持部材106の周囲4面の緩衝パッド123それぞれに当接することにより、メインステージ40がサブステージ50、70から離れて移動することが防止される。
液晶露光装置1000のその他の部分の構成は、前述の第1の実施形態の液晶露光装置10と同様になっており、同様の露光動作を行う。
以上説明したように、本第3の実施形態の液晶露光装置1000は、マスクステージ装置MSTdの一部の構成を除き、前述した第1の実施形態の液晶露光装置10と同様に構成されていることから同等の効果を得ることができる。これに加え、本第3の実施形態の液晶露光装置1000(が備えるマスクステージ装置MSTd)では、ロック装置100a〜100dを用いて、メインステージ40の重心位置CGを含む平面内で、メインステージ40とサブステージ50,70それぞれとを接続することができるので、XVCM1、XVCM2、及びYVCMを用いることなく、メインステージ40をX軸方向及び/又はY軸方向に適宜駆動することもできる。従って、XVCM1、XVCM2、YVCMとして推力の小さい小型のものを使用でき、これにより電力消費を抑制することができるので、コストの低減を図ることができる。また、ロック装置100a〜100dは、構造が簡単であるので、故障が少なく、且つ動作が俊敏であるので、コストを低減でき、且つメンテナンス性にも優れる。
また、本第3の実施形態に係るマスクステージ装置MSTdでは、メインステージ40とサブステージ50とをロック装置100a、100bを用いて2箇所で,メインステージ40とサブステージ70とをロック装置100c、100dを用いて2箇所(合計4箇所)で、それぞれ接続するので、メインステージ40がθz方向に回転しない。また、ロック装置100a〜100dは、シャフト103がZ軸方向に移動するので、速やかにメインステージ40とサブステージ50,70それぞれとを接続でき、且つX軸方向及びY軸方向に関する剛性が高い。なお、ロック装置は、上記の場合とは逆に、可動式のシャフトがメインステージに、シャフトに固定されたボールが嵌合する係合部材がサブステージ側にそれぞれ設けられていても良い。ただし、上述したように可動部材であるシャフトをサブステージに設ける方がメインステージを軽量化できるので有利である。
さらに、マスクステージ装置MSTdは、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの相対移動可能範囲を制限するストッパ装置120a〜120dを有しているので、例えば、仮にサブステージ50,70が緊急停止した場合などであっても、メインステージ40がその慣性によりサブステージ50,70から離れることを防止できる。また、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの接触面に緩衝パッド123を設けたので、その衝突時の衝撃が緩和される。
なお、上記第3の実施形態の液晶露光装置が備えるマスクステージ装置の構成は、一例に過ぎない。以下、上記第3の実施形態の液晶露光装置が備えるマスクステージ装置の変形例について説明する。なお、以下の変形例では、説明の簡略化及び図示の便宜上から、と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。
図14には、変形例のマスクステージ装置MSTeのロック装置200a、及びストッパ装置220aの概略構成が示されている。なお、上記実施形態と同様に、ロック装置及びストッパ装置は、メインステージ40の−Y側、及び+Y側にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられており、図14には、そのうちの一つ(メインステージ40の−Y側且つ+X側のロック装置200a及びストッパ装置220a)が代表的に示されている。
変形例のマスクステージ装置MSTeのストッパ装置220aは、ストッパ部材121と支持部材106(緩衝パッド123)との接触面が、メインステージ40の重心位置CGを含む平面上に配置されている。従って、支持部材106(緩衝パッド123)と、ストッパ部材121とが当接して、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの相対移動が規制される際、ストッパ部材121と支持部材106とがメインステージ40の重心位置CGを含む平面内で当接(衝突)するので、メインステージ40にその移動方向に直交する軸回りのモーメント(ピッチングモーメント)が作用しない。このため、ストッパ部材121と支持部材106とが衝突しても、メインステージ40の姿勢が大きく乱れることが防止される。なお、本変形例のマスクステージ装置MSTeでは、ロック装置200aによるメインステージ40とサブステージ50,70それぞれとの接続位置は、メインステージ40の重心位置CGを含む平面よりも+Z側となるが、メインステージ40の重心位置CGを含む平面との距離が微少量であること、及びXY平面内の4箇所でメインステージ40とサブステージ50,70それぞれとを接続するので、実質的に上記実施形態と同様に、メインステージ40をXY平面に沿って精度良く駆動できる。なお、これに限らず、例えばロック装置によるメインステージと一対のサブステージそれぞれとの接続位置、及びストッパ装置が設定するメインステージと一対のサブステージそれぞれとの当接位置を、それぞれメインステージの重心位置CGを含む二次元平面上としても良い。また、ロック装置は、メインステージの両側に2つずつの合計4箇所に設けられたが、これに限らず、同一直線上になければ3箇所であっても良い。また、ボールと当接する部材は、一部が円錐でなくても、一軸方向(例えば、X軸方向、又はY軸方向)に延設された溝形状のものでも良い。
なお、上記第3の実施形態では、一対のサブステージは、スキャン方向にのみ移動可能であっても良い。また、上述の第1ないし第3の実施形態では、YVCM及び一対のXVCM1,XVCM2の少なくとも一方、及び/又はロック装置100a〜100dによって、メインステージと一対のサブステージとを一体的に駆動可能な第1の状態と、メインステージと一対のサブステージとを一体的に駆動不可能な第2の状態とが切り替え設定される場合について説明したが、メインステージと一対のサブステージとを一体的に駆動可能な第1の状態と、メインステージと一対のサブステージとを一体的に駆動不可能な第2の状態とを切り替え設定する状態設定装置の構成は、これらに限られるものではない。
《第4の実施形態》
次に、第4の実施形態の露光装置について、図15〜図19に基づいて説明する。
ここで、前述した第1、第3の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一若しくは類似の符号を用いると共に、その説明を簡略若しくは省略する。
図15には、第4の実施形態の液晶露光装置2000が有するマスクステージ装置の平面図が示されている。本第3の実施形態の液晶露光装置2000は、マスクステージ装置MSTに代えてマスクステージ装置MSTfを有している点を除き、前述の第1の実施形態の液晶露光装置10と同様の構成を有している。以下では、マスクステージ装置MSTfの構成についてのみ説明する。
第4の実施形態に係るマスクステージ装置MSTfは、例えば図15と図2とを比較すると明らかなように、全体的には第1の実施形態に係るマスクステージ装置MSTと同様に構成されているが、一部の構成が異なっている。以下、かかる相違点を中心として第4の実施形態について説明する。
マスクステージ装置MSTfは、図15に示されるように、メインステージ40とサブステージ50とを接続するロック装置100a、100b、及びメインステージ40とサブステージ70とを接続するロック装置100c、100dを、一対の位置決め装置90とともに、有している。なお、ロック装置100aとロック装置100bとは、実質的に同じ構成を有している。また、ロック装置100cとロック装置100dとは、実質的に同じ構成を有している。図16(A)には、ロック装置100a、100bを代表してメインステージ40の−Y側且つ+X側のロック装置100aの構成が概略的に示されている。図16(A)と図12(A)とを比較すると明らかなように、ロック装置100a,100bは、前述した第3の実施形態のロック装置100a,100bと同様に構成されている。
従って、図17(A)に示されるように、シャフト103がそのZ軸方向への可動範囲の+Z側に配置され、ボール104と係合部材107とが離間した状態では、メインステージ40は、サブステージ50に拘束されない。一方、図17(B)に示されるように、シャフト103が−Z方向に移動してボール104が凹部107aに嵌合すると、メインステージ40とサブステージ50とが接続され、そのXY平面内での相対移動が制限される。また、ロック装置100a(及びロック装置100b)は、ボール104を円錐状の凹部107aに嵌合させる構成であるので、図17(B)に示されるメインステージ40がサブステージ50に拘束された状態では、メインステージ40とサブステージ50との相対的な位置関係は、上述した位置決め装置90と同様に、常に同じとなる。
図18には、ロック装置100c、100dを代表してメインステージ40の+Y側且つ+X側のロック装置100cの概略構成が示されている。図18と図13とを比較すると明らかなように、ロック装置100c,100dは、前述した第3の実施形態のロック装置100c,100dと同様に構成されている。ロック装置100cは、ロック装置100aと同様に、ボール104を凹部107aに嵌合させることにより、メインステージ40とサブステージ70とを接続して、そのXY平面内での相対移動を制限する。
図15に戻り、各ロック装置100a〜100dを用いてメインステージ40をサブステージ50、70それぞれに接続した状態では、XリニアモータによりXステージ54,74それぞれをX軸方向に駆動させると、XVCM1,XVCM2を用いることなくメインステージ40をX軸方向に駆動して、露光時の目標速度まで加速させること、あるいはメインステージ40を減速させることができる。このため、XVCM1,XVCM2として大きな推力を発生可能なものを用いる必要がなく、XVCM1,XVCM2を小型化できる。同様に、Yリニアモータを用いてYステージ55,75をY軸方向に駆動する際、YVCMを用いることなくメインステージ40をY軸方向に駆動できる。また、ロック装置100a〜100dでは、ボール104の外周面と、凹部107aを形成するテーパ面とが隙間なく接触するので、サブステージ50,70それぞれにメインステージ40を押圧させる際、大きな押圧力を作用させることができる。また、各ロック装置100a〜100dは、前述した一対の位置決め装置90を用いてメインステージ40を計測原点位置の近傍(ボール96と凹部92とが対応する位置(例えば図16(A)参照))に位置させる際にも用いられる。
さらに、図15に示されるように、本第4の実施形態のマスクステージ装置MSTfは、メインステージ40とサブステージ50との相対移動範囲を制限するストッパ装置120a’、120b’、及びメインステージ40とサブステージ70との相対移動範囲を制限するストッパ装置120c’、120d’を有している。なお、ストッパ装置120a’とストッパ装置120b’とは、実質的に同じ構成を有している。また、ストッパ装置120c’とストッパ装置120d’とは、実質的に同じ構成を有している。図17(A)には、4つのストッパ装置を代表してメインステージ40の−Y側且つ+X側のストッパ装置120a’の構成が示されている。
図17(A)に示されるように、前述した固定部材102の下端には、X軸方向を軸方向とする回転軸122が設けられている。固定部材102の下端には、回転軸122を中心として回動(往復回転)可能に部材124が取り付けられており、該部材124の一端に、前述した平面視矩形枠状のストッパ部材121が一体的に固定されている。この場合、部材124とストッパ部材121とは、+X側から見るとL字状の形状を有している。
ストッパ部材121は、不図示のアクチュエータによって回転軸122を中心として回動される。図17(A)に示されるように、ストッパ部材121の開口部内には、前述の支持部材106が収容されている。支持部材106には、ストッパ部材121との対向面(すなわち+X側、−X側、+Y側、−Y側の4つの側面)に、例えばゴム系の材料により形成された緩衝パッド123(−X側の緩衝パッドは図示省略)が固定されている。支持部材106の+X側、−X側、+Y側,−Y側それぞれに固定された緩衝パッド123のそれぞれとストッパ部材121との間には、所定のクリアランス(隙間)が形成されている。
図17(A)に示される状態では、メインステージ40がサブステージ50に対してX軸方向及び/又はY軸方向に移動する際のメインステージ40とサブステージ50との+X,−X,+Y、−Y各方向への(すなわち、水平面内での)相対移動量(相対可能範囲)が、ストッパ部材121と支持部材106(緩衝パッド123)との間に形成されたクリアランスの幅に応じて制限される。また、図18には、ストッパ装置120c’の概略構成が示されている。ストッパ装置120c’も、ストッパ装置120a’と同様に、固定部材102に回転軸122回りに部材124と一体的に回転可能に取り付けられたストッパ部材121を有しており、メインステージ40とサブステージ70との相対移動可能範囲を、ストッパ部材121と支持部材106(緩衝パッド123)との間のクリアランスの幅により制限する。
これにより、ロック装置100a〜100dがメインステージ40とサブステージ50、70それぞれとを接続していない状態(図17(A)参照)で、サブステージ50、70を用いてメインステージ40をX軸方向及び/又はY軸方向に所定のストロークで駆動する際、例えば仮にサブステージ50,70が緊急停止して、メインステージ40がその慣性によりX軸方向及び/又はY軸方向に移動しても、4つのストッパ部材121が対応する支持部材106それぞれに当接することにより、メインステージ40がサブステージ50、70から離れて移動(オーバーラン)することが防止される。
また、各ストッパ装置120a’〜120d’では、各ストッパ部材121と、各支持部材106との当接面が、例えば図17(A)及び図18(A)に代表的に示されるように、メインステージ40の重心位置CGを含むXY平面に平行な平面上に配置されるように、各ストッパ部材121及び各支持部材106の位置が設定されている。従って、各ストッパ装置120a’〜120d’を用いて、すなわち各ストッパ部材121と各支持部材106とを当接させてメインステージ40の移動を停止させる際、メインステージ40にその移動方向に直交する軸回りのモーメント(ピッチングモーメント)が作用せず、メインステージ40の姿勢が大きく乱れることを防止できる。
図19には、ストッパ部材121が不図示のアクチュエータにより回転軸122回りに回転して支持部材106から離間した状態が示されている。図19に示される状態では、サブステージ50,70は、メインステージ40から離れてサブステージガイド37a、37b上をそれぞれX軸方向に移動することができる。このとき、メインステージ40を前述した一対の位置決め装置90(図16(A)、図16(B)参照)を用いて一対のメインステージガイド35上に静止させておくと良い。なお、本第4の実施形態の場合は、図15に示されるように、ギャップセンサ66,86が、それぞれ対応するターゲット49a、49cに対して−X側に配置されているため、サブステージ50,70は、メインステージ40に対して−X方向にのみ、メインステージ40から離れて移動することができる。サブステージ50、70をメインステージ40から離す場合としては、例えばサブステージ50、70のメンテナンスを行う場合などが挙げられる。
液晶露光装置2000のその他の部分の構成は、前述の第1の実施形態の液晶露光装置10と同様になっており、同様の露光動作を行う。
以上説明したように、本第4の実施形態の液晶露光装置2000は、マスクステージ装置MSTfの一部の構成を除き、前述した第1の実施形態の液晶露光装置10と同様に構成されていることから同等の効果を得ることができる。これに加え、本第4の実施形態の液晶露光装置2000では、前述した第3の実施形態の液晶露光装置1000と同様の構成のロック装置100a〜100dを備えているので、液晶露光装置1000と同様にXVCM1、XVCM2、及びYVCMを用いることなく、メインステージ40をX軸方向及び/又はY軸方向に適宜駆動することもできる。従って、XVCM1、XVCM2、YVCMとして推力の小さい小型のものを使用でき、これにより電力消費を抑制することができるので、コストを低減できる。また、本第4の実施形態の液晶露光装置2000では、メインステージ40とサブステージ50とをロック装置100a、100bを用いて2箇所で,メインステージ40とサブステージ70とをロック装置100c、100dを用いて2箇所(合計4箇所)で、それぞれ接続するので、メインステージ40がθz方向に回転しない。また、ロック装置100a〜100dは、シャフト103がZ軸方向に移動するので、速やかにメインステージ40とサブステージ50,70それぞれとを接続できる。
また、本第4の実施形態に係るマスクステージ装置MSTfは、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの相対移動可能範囲を制限するストッパ装置120a’〜120d’を有しているので、前述した第3の実施形態の液晶露光装置1000と同様に、例えば、仮にサブステージ50,70が緊急停止した場合などであっても、メインステージ40がその慣性によりサブステージ50,70から離れることを防止できる。また、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの接触面に緩衝パッド123を設けたので、その衝突時の衝撃が緩和される。
さらに、ストッパ装置120a’〜120d
’のそれぞれは、前述のストッパ装置120a〜120dとは異なり、ストッパ部材121が固定ではなく、メインステージ40とサブステージ50、70それぞれとの相対移動を制限する位置(制限位置)と、その相対移動を制限しない位置(解除位置)との間を移動可能に構成されている。このため、ストッパ部材121を上記解除位置に配置することで、メインステージ40とサブステージ50,70とを、分離させることもできる。なお、ストッパ装置120a’〜120d ’では、上述の場合とは逆に、可動式のストッパ部材がメインステージに、ストッパ部材に当接する部材がサブステージ側にそれぞれ設けられていても良い。ただし、上述したように可動部材であるストッパ部材をサブステージに設ける方が、メインステージを軽量化できるので有利である。
《第5の実施形態》
次に、第5の実施形態の液晶露光装置について説明する。第5の実施形態の液晶露光装置は、メインステージとの間でマスクの受け渡しを行うマスクローダ装置がマスクステージ装置に設けられている点、及び一対のサブステージそれぞれを支持する一対のガイド部が第4の実施形態(及び第1ないし第3の実施形態)よりもX軸方向に長い点を除き、第4の実施形態の液晶露光装置2000と同様の構成を有している。以下では、マスクローダ装置の構成についてのみ説明する。なお、説明の簡略化及び図示の便宜上から、上記第1、第4の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。
図20には、第5の実施形態に係るマスクステージ装置MSTgの平面図が示されている。なお、図面の錯綜を避ける観点から、ロック装置100a〜100d、ストッパ装置120a’〜120d’、ギャップセンサ66,67,86,87、ターゲット49a〜49d(それぞれ図15参照)などについては、図示が省略されている。
マスクローダ装置MLは、一対のマスク保持装置130を備えている。一対のマスク保持装置130は、一方がサブステージ50のYステージ55の上面に搭載され、他方がサブステージ70のYステージ75の上面に搭載されている。一対のマスク保持装置130は、X軸に関して対称(左右対称)に配置されている点を除き、その構成は実質的に同じである。以下、サブステージ50に搭載された(−Y側)のマスク保持装置130について説明する。
図21には、図20のB−B線断面図が示されている。マスク保持装置130は、図21に示されるように、可動部材131、及び支持部材135を有している。可動部材131は、XZ平面に平行な矩形板状の部材から成る(図20参照)。可動部材131の下端には、X軸方向に離間して配置された一対の爪部材132が固定されている。マスクローダ装置MLは、−Y側のマスク保持装置130が一対の爪部材132でマスクM(あるいは図示しないマスクホルダ)の−Y側を下方から支持し、+Y側のマスク保持装置130が一対の爪部材132でマスクMの+Y側を下方から支持する。可動部材131は、−Y側の面に、Z軸方向に延設された一対のZリニアガイド部材133がX軸方向に離間した状態(図20参照)で固定されている。
図20に示されるように、支持部材135は、可動部材131の−Y側の面に対向するXZ平面に平行な矩形板状の部材から成る。支持部材135の+Y側の面の四隅には、断面U字状のスライド部材136がそれぞれ固定されている(図21参照)。4つのスライド部材136のうち、+X側の2つは+X側のZリニアガイド部材133に係合し、−X側の2つは−X側のZリニアガイド部材133に係合している。また、可動部材131と支持部材135との間には、例えば送りねじ装置を含む駆動装置134が設けられている。可動部材131は、駆動装置134を介して支持部材135に対して上下動(+Z方向又は−Z方向に駆動)される。支持部材135は、断面L字状の一対の固定部材137,及びXY平面に平行な一対の接続部材138を介してYステージ55上に固定されている。一対の接続部材138は、X軸方向を長手方向とする矩形板状の補剛部材139により接続されている。なお、サブステージ70がサブステージ50よりも−Z側に位置されていることから、−Y側の固定部材137は、+Y側の固定部材137よりもZ軸方向の寸法が長くなっている(便宜上、同じ符号を用いている)。
ここで、図22に示されるように、第5の実施形態のマスクステージ装置MSTgでは、ガイド部338a、338bそれぞれのX軸方向の長さが第4の実施形態に比べ長く設定されており、サブステージ50,70それぞれは、マスクローダ装置MLを介して保持するマスクMを、所定のマスク交換位置まで搬送することができる。本第5の実施形態では、マスク交換位置は、例えば走査露光時にメインステージ40が移動する領域よりも、−X側に配置されている。なお、サブステージ50,70を用いてマスクMをマスク交換位置に搬送する際は、図19に示されるように、ストッパ装置120a’〜120d’(図15参照)の各ストッパ部材121が支持部材106から離間し、且つロック装置100a〜100d(図15及び図17(A)参照)の各ボール104が、各係合部材107から離間した状態とさせておく。また、メインステージ40を前述した一対の位置決め装置90(図16(A)及び図16(B)参照)を用いて一対のメインステージガイド35上に静止させておく。
次に、マスクローダ装置MLとメインステージ40との間で行われるマスクMの受け渡し動作について説明する。以下に説明するマスクMの受け渡し動作は、図示しない主制御装置の管理の下で行われる。主制御装置は、サブステージ50、70それぞれを−X方向に駆動することにより、マスクローダ装置MLを図22に示されるように、マスク交換位置に位置させる。マスクローダ装置MLは、マスク交換位置で、例えば図示しないマスク搬送装置により、その保持するマスク(図示省略)が交換される。このとき、新たなマスクMは、爪部材132上に載置されている。新たなマスクMを保持したマスクローダ装置MLは、サブステージ50、70がX軸方向に駆動されることにより、メインステージ40の上方に位置される(図20参照)。このとき、可動部材131は、メインステージ40と接触しないように、そのZ軸方向への可動範囲の+Z側に位置される(図21参照)。
次いで図23(A)に示されるように、駆動装置134(図20参照)によりマスクMを保持する一対の可動部材131が−Z方向に駆動される(可動部材131が下降する。図23(A)の矢印参照)。これによりマスクMがチャックユニット42上に載置される。このとき、可動部材131,Zリニアガイド部材133など、マスクローダ装置MLを構成する各部材は、いずれもメインステージ40に非接触となっている。また、主制御装置は、図23(B)に示されるように、マスクMをチャックユニット42上に載置した後も、可動部材131を−Z方向に駆動し、爪部材132とマスクMとを離間させる。この状態では、可動部材131及び爪部材132とマスクMとが接触していないので、サブステージ50,70、マスクローダ装置ML等を介して外部からマスクMに振動が伝達されることが防止される。主制御装置は、図23(B)に示される状態、すなわちマスクローダ装置MLがマスクM及びメインステージ40のいずれにも非接触な状態で、露光処理動作を行う。また、メインステージ40が保持するマスクMをマスクローダ装置MLに受け渡す際には、上記の場合とは逆の動作を行う。
第5の実施形態に係るマスクステージ装置MSTgによれば、マスクローダ装置MLが搭載されたサブステージ50,70を、メインステージ40から離してマスク交換位置に移動させることができるので、例えばメインステージ40自体をマスク交換位置まで移動させる場合に比べ、メインステージ40の移動をガイドするメインステージガイド35のX軸方向の長さ(寸法)を短くできる。
《第6の実施形態》
次に、第6の実施形態の液晶露光装置について説明する。第6の実施形態の液晶露光装置は、マスクステージ装置が備えるマスクローダ装置の構成が異なる点、及び一対のサブステージを支持するガイド部が第5の実施形態に比べてX軸方向に長い点を除き、第5の実施形態の液晶露光装置と同様の構成を有している。以下では、マスクローダ装置の構成について説明する。なお、上記第4及び第5の実施形態と同様の構成を有するものについては、上記第4及び第5の実施形態と同じ符号を付して、その説明を省略する。
図24には、第6の実施形態のマスクステージ装置MSThの平面図が示されている。マスクローダ装置MLbは、ガイド部438a上にサブステージ50と共に搭載された搬送用ステージ250と、ガイド部438b上にサブステージ70と共に搭載された搬送用ステージ270と、一対のマスク保持装置130と、を備えている。
搬送用ステージ250は、サブステージ50の−X側に配置されている。搬送用ステージ250は、X軸方向の寸法が幾分短く設定されている点、及びX固定子65、ギャップセンサ66,67(それぞれ図15参照)を有していない点を除き、その駆動系、計測系を含み、サブステージ50と同様に構成されている。すなわち、搬送用ステージ250は、ガイド部438a上をX軸方向に移動するXステージ254と、Xステージ254上でY軸方向に移動するYステージ255とを有している。Xステージ254のX軸方向に関する位置情報は、Xスケール53と共にXリニアエンコーダを構成するXヘッド258により計測され、Yステージ255のY軸方向に関する位置情報は、Yスケール264と共にYリニアエンコーダを構成するYヘッド259により計測される。搬送用ステージ250は、図示しない主制御装置により、サブステージ50とは独立にガイド部438a上でその位置が制御される。
搬送用ステージ270は、サブステージ70の−X側に配置されている。搬送用ステージ270は、X軸方向の寸法が幾分短く設定されている点、及びX固定子85、Y固定子88,ギャップセンサ86,87(それぞれ図15参照)を有していない点を除き、その駆動系、計測系を含み、サブステージ70と同様に構成されている。すなわち、搬送用ステージ270は、ガイド部438b上をX軸方向に移動するXステージ274と、Xステージ274上でY軸方向に移動するYステージ275とを有している。Xステージ274のX軸方向に関する位置情報は、Xスケール73と共にXリニアエンコーダを構成するXヘッド278により計測され、Yステージ275のY軸方向に関する位置情報は、Yスケール284と共にXリニアエンコーダを構成するYヘッド279により計測される。搬送用ステージ270は、図示しない主制御装置により、サブステージ70とは独立にガイド部438b上でその位置が制御される。
一対のマスク保持装置130は、一方がYステージ255の上面に固定され、他方がYステージ275の上面に固定されている。なお、一対のマスク保持装置130の構成は、上記第5の実施形態と実質的に同一であるので、その説明は省略する。また、図24に示されるように、マスクステージ装置MSThでは、ガイド部438a、438bは、上記第5の実施形態のガイド部よりもさらに+X、−X方向それぞれに長く形成されている。
次に、本第6の実施形態のマスクステージ装置MSThにおける、メインステージ40とマスクローダ装置MLbとの間でのマスクMの受け渡し動作について説明する。マスクMの受け渡し動作は、図示しない主制御装置の管理の下で行われる。
メインステージ40にマスクMを受け渡す際には、主制御装置は、まず、図24に示されるようにマスクMを保持したマスクローダ装置MLbをマスク交換位置に位置させる。マスクローダ装置MLbは、マスク交換位置で、例えば図示しないマスク搬送装置により、その保持するマスクが交換される。また、主制御装置は、サブステージ50、70をメインステージ40から離して、メインステージ40よりも+X側に位置させる。なお、本第6の実施形態では、メインステージ40とサブステージ50,70それぞれとのX軸及びY軸方向に関する間隔を計測するのに用いるギャップセンサ、及びターゲット(それぞれ図示省略)の配置は、上記第4の実施形態(図15参照)とは逆に、各ギャップセンサが対応するターゲットの+X側に配置されている(図示省略)。これにより、サブステージ50,70は、メインステージ40から離れて+X方向に移動することができる。
次いで、主制御装置は、図25に示されるように、Xリニアモータを制御してマスクMを保持したマスクローダ装置MLbを+X方向に駆動し、マスクMをメインステージ40の上方に位置させる。この後、上記第5の実施形態と同様に、図23(A)及び図23(B)に示されるように、マスクローダ装置MLbの可動部材131が下方に移動され、マスクMがチャックユニット42に受け渡される。
この後、主制御装置は、図26(A)に示されるように、Yリニアモータを制御してYステージ255を−Y方向、Yステージ275を+Y方向にそれぞれ駆動し、可動部材131(爪部材132)をマスクMから離間させる(図26(A)の矢印参照)。次いで、主制御装置は、駆動装置134(図24参照)を制御して、図26(B)に示されるように、一対の可動部材131それぞれを、爪部材132の下面がメインステージ40の上面より上方となる位置まで上方(+Z方向)に駆動する(図26(B)の矢印参照)。
次いで主制御装置は、図27に示されるように、Xリニアモータを制御してマスクローダ装置MLbを−X方向に駆動してマスク交換位置に位置させるとともに、サブステージ50,70それぞれを−X方向に駆動して、マスクローダ装置MLbと入れ替わるように、メインステージ40の−Y側、+Y側に位置させる。この後、メインステージ40とサブステージ50,70それぞれとが非接触状態で(電磁的に)、又は接触状態で(機械的に)連結され、サブステージ50,70を用いてメインステージ40がX軸方向へ駆動されることにより、走査露光動作が行われる。なお、走査露光時おいて、メインステージ40がその移動範囲内を移動する際、サブステージ50,70それぞれは、マスクローダ装置MLbの搬送用ステージ250,270それぞれに接触しないようにガイド部438a、438bの長さが設定されている。
以上説明した第6の実施形態のマスクステージ装置MSThによれば、上記第5の実施形態のマスクステージ装置MSTgで得られる効果に加え、マスクローダ装置MLbの一対のマスク保持装置130が、サブステージ50,70とは別の部材である搬送用ステージ250,270によりそれぞれX軸方向に駆動される構成であるため、サブステージ50,70をそれぞれ軽量化でき、サブステージ50,70を駆動するリニアモータの負荷を軽減できる。なお、本第6の実施形態のマスクステージ装置MSThでは、マスクローダ装置MLbの一対のマスク保持装置130は、図26(A)に示されるように、サブステージ50,70と同様の構成の搬送用ステージ250,270によりそれぞれY軸方向に駆動される構成であったが、これに限らず、例えば搬送用ステージをX軸方向にのみ移動可能な構成として、マスク保持装置130の接続部材138(図24参照)をY軸方向に伸縮できるように構成しても良いし、あるいは、該X軸方向にのみ移動可能なステージ上で、マスク保持装置130がY軸方向に駆動される構成としても良い。
《第7の実施形態》
次に、第7の実施形態について、図28〜図31に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、第1の実施形態と同一若しくは類似の符号を用いるとともに、その説明を簡略若しくは省略する。
図28には、第7の実施形態の液晶露光装置3000の構成が概略的に示されている。液晶露光装置3000は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。本第7の実施形態の液晶露光装置3000は、マスクステージ装置MSTiに、一対のサブステージに対して用力を供給する等のために用いられる後述するケーブルユニットが設けられている点などが、前述した第1の実施形態の液晶露光装置10と相違するが、その他の部分の構成は、液晶露光装置10と同様である。従って、以下では、相違点を中心として説明を行う。
本第7の実施形態の液晶露光装置3000では、図28に示されるように、マスクステージ装置MSTiが備えるサブステージガイド37a、37bのそれぞれには、サブステージ50、70に用力、例えば電力、高圧気体(例えば圧縮空気)などを供給するためのケーブル、チューブなど(以下、ケーブル類99と総称する)、あるいはサブステージ50、70と図示しない主制御装置との間で電気信号の送受信を行わせるためのケーブル類を含む同様の構成のケーブルユニット300が設けられてる。
図29には、ケーブルユニットの側面図が、図30には、図29のC−C線断面図がそれぞれ示されている。図30に示されるように、ケーブルユニット300は、サブステージ50のXステージ54に固定された断面U字状の板状部材から成る支持部201を有している。支持部201の下面には、Y軸方向に離間した一対の板状部材から成る軸受部202が固定され、軸受部202には、図29に示されるように、X軸方向に離間した一対のローラ203が、それぞれY軸方向を軸方向とする一対の回転軸204を介して回転可能に支持されている。また、ケーブルユニット300は、+X側及び−X側それぞれの一対の脚部39a(+Y側の脚部それぞれは紙面奥側に隠れている)間に渡して固定された軸205に回転可能に軸支されたローラ206を有している。
また、ケーブルユニット300は、サブステージ50の+X側に配置された複数のケーブル類99から成るケーブル束99aと、サブステージ50の−X側に配置された複数のケーブル類99から成るケーブル束99bとを有している。ケーブル束99a、99bそれぞれを構成する複数のケーブル類99は、図30に示されるように、Y軸方向に離間して配置され、ケーブル束99a、99bそれぞれは、全体的に長尺の帯状に形成されている。なお、ケーブル束は、隣接するケーブル類同士を結合した融着ケーブルのようなものでも良い。ケーブル束99a、99bを構成する複数のケーブル類99それぞれは、その一端がサブステージ50のYステージ55に接続され、その他端が図示しない外部装置、例えば配電盤、主制御装置、気体供給装置などに接続されている。なお、図29及び図30では図示は省略されているが、Yステージ55に接続された複数のケーブル類99は、サブステージ50上で分岐され、その一部がXステージ54、あるいはメインステージ40(図28参照)に接続される。
+X側のケーブル束99aは、図29に示されるように、他端側(外部装置側)の中間部分が固定部材220により+X側の脚部39aに固定されている。また、ケーブル束99aは、脚部39aに固定された部分よりも一端側の中間部分が固定部材220によりローラ206の外周面に固定されている。さらに、ケーブル束99aは、上記ローラ206に固定された部分よりも一端側の中間部分が一対のローラ203のうちの+X側のローラ203の外周面に複数の固定部材220により固定されている。ケーブル束99aにおけるローラ206に固定された部分と、ローラ203に固定された部分との間の領域は、図29に示されるサブステージ50がそのX軸方向に関する移動範囲の中央に位置された状態で、下方に撓んで(重力により垂れ下がって)いる。
また、ケーブル束99aのローラ203に固定された部分よりも一端側の領域は、図30に示されるように、U字状に撓まされるとともに、支持部201に形成された開口部201aの内部空間を通って、その端部(一端)がYステージ55に接続されている。図30に示されるように、ケーブル束99aのローラ203に固定された部分よりも一端側の領域は、固定部材220により支持部201に固定されている。なお、各固定部材220は、図30に代表的に示されるように、ケーブル束99aを構成する複数のケーブル類99に対応して、複数の部材から成る。−X側のケーブル束99bも同様に、その長手方向の2箇所の中間部分がローラ203,206それぞれに固定されている。
次にケーブルユニット300の動作の一例を、サブステージ50が図29に示される位置(中央位置)から+X側に移動した場合について説明する。図31に示されるように、サブステージ50が+X方向に移動すると、Xステージ54に固定された支持部201及び軸受部202が一体的に+X方向に移動し、これに応じて−X側のローラ203にその中間部分が固定されたケーブル束99bが+X側に引っ張られる。一方、+X側のケーブル束99aは、+X側のローラ203と+X側のローラ206とが接近することにより、さらに下方に撓む(重力により垂れ下がる)。この際、一対のローラ203,一対のローラ206それぞれが揺動(θy方向に所定量回転)することにより、ケーブル束99a、99bを構成する各ケーブル類99に大きな曲げ応力が作用するのを防止する。なお、サブステージ50が−X方向に移動する際には、図31に示される場合とは反対に、ケーブル束99bが下方に撓み、ケーブル束99aが−X方向に引っ張られる。
液晶露光装置3000のその他の部分の構成は、前述の第1の実施形態の液晶露光装置10と同様になっており、同様の露光動作を行う。
以上説明したように、本第7の実施形態の液晶露光装置3000は、マスクステージ装置MSTiにケーブルユニット300が設けられている点を除き、前述した第1の実施形態の液晶露光装置10と同様に構成されていることから同等の効果を得ることができる。これに加え、本第7の実施形態の液晶露光装置3000が備えるマスクステージ装置MSTiでは、サブステージ50、70と外部装置との間で用力の伝達を行うケーブル類99を含むケーブル束99a、99bそれぞれは、ローラ203,206に固定された間の領域がサブステージ50,70の移動に応じて重力の作用により下方に撓む、又は水平方向に引っ張られる構成なので、ケーブル類99と他の部材との摺動による発塵、あるいは振動の発生が防止される。従って、本第7の実施形態に係るケーブルユニット300は、液晶露光装置3000(図28参照)のように、クリーンルーム内で用いられる装置、あるいは移動体を高精度で位置制御する必要がある装置に特に適している。また、ケーブル束99a、99bが下方に撓む、又は水平方向に引っ張られる際、ローラ203,206それぞれが回転してケーブル束99a、99bを構成するケーブル類99に大きな曲げ応力が作用するのを抑制するので、例えばチューブが折れ曲がって管路が閉塞するなどといったトラブルを回避できる。また、本第7の実施形態に係るケーブルユニット300は、ケーブル類99の中間部分を支持する部材を有さないので軽量であり、且つケーブル類99の交換作業などメンテナンスが容易である。
《第8の実施形態》
次に第8の実施形態の液晶露光装置が有するマスクステージ装置について説明する。本第8の実施形態の液晶露光装置は、上記第7の実施形態と比べマスクステージ装置の構成が異なるのみなので、以下、マスクステージ装置の構成についてのみ説明する。図32には、第8の実施形態に係るマスクステージ装置MSTjを−Y側から見た側面図が示されている。第8の実施形態に係るマスクステージ装置MSTjは、上記第7の実施形態に係るマスクステージ装置MSTiと比べ、ケーブルユニットの構成が異なる。なお、説明の簡略化及び図示の便宜上から、前述した第7の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、第1の実施形態と同一の符号を用いるとともに、その説明を省略する。
第8の実施形態に係るケーブルユニット300aでは、X軸方向を長手方向とし、Y軸方向に離間した一対のXリニアガイド部材93がガイド部38aの下面に固定されている(+Y側のXリニアガイド部材は紙面奥側に隠れている)。また、ガイド部38aの下方(−Z側)には、X軸方向を長手方向とするXY平面に平行な板状部材から成る可動部210が配置されている。可動部210の上面の四隅部には、断面U字状のスライダ211が固定されている(+Y側の2つのスライダは紙面奥側に隠れている)。−Y側の2つのスライダ211は、−Y側のXリニアガイド部材93にスライド可能に係合し、+Y側の2つのスライダ211は、+Y側のXリニアガイド部材93にスライド可能に係合している。
可動部210の+X側の端部下面には、Y軸方向に離間した一対の板状部材から成る軸受部212(+Y側の板状部材は図面奥側に隠れている)が固定され、その軸受部212には、ローラ213がY軸方向を軸方向とする回転軸214を介して回転可能に支持されている。そして、ケーブル束99aにおける、ローラ203に固定された部分と、ローラ206に固定された部分との間の領域の略中央部が、ローラ213に固定部材220を介して固定されている。また、可動部210の−X側の端部下面にも、同様に軸受部212が固定され、その軸受部212には、回転軸214を介してローラ213が回転可能に支持されている。ケーブル束99bは、ローラ203に固定された部分と、ローラ206に固定された部分との間の領域の略中央部が、ローラ213に固定部材220を介して固定されている。従って、一対のローラ213は、一体的にX軸方向に移動する。
また、一対の軸受部212それぞれには、Y軸方向を軸方向とする回転軸215を介して滑車216が回転可能に軸支されている。−X側の滑車216には、ロープ217が巻き掛けられている。ロープ217は、その一端が+X側の脚部39aに固定され、その他端が軸受部202の−X側の端部に固定されている。また、図32では、図面の錯綜を避ける観点から一部が省略されているが、+X側の滑車216にも同様にロープ218が巻き掛けられている。ロープ218は、その一端が−X側の脚部39aに固定され、その他端が軸受部202の+X側の端部に固定されている。
ケーブルユニット300aでは、図33に示されるように、サブステージ50が+X方向に移動すると、ロープ217が巻き掛けられた−X側の滑車216を支持する軸受部212が、そのロープ217に牽引されて+X方向に移動する。このとき、滑車216が動滑車として機能し、軸受部212は、サブステージ50の半分の速度でサブステージ50に追従する。また、これに応じて+X側の軸受部212もサブステージ50の半分の速度で+X側に移動する。本第8の実施形態に係るケーブルユニット300aも、第7の実施形態に係るケーブルユニット300と同様に、サブステージ50の移動に応じてケーブル束99a、99bの中間部分が下方に撓む(垂れ下がる)、又は水平方向に引っ張られる構成であるので、第7の実施形態に係るケーブルユニットと同様に、発塵、及び振動発生の防止という効果を得ることができる。
ここで、ケーブルユニット300aにおいて、ケーブル束99a、99bは、その中間部分が垂れ下がった状態となっているので、ケーブル束99a、99bを構成する各ケーブル類99には、その自重により張力が作用する。そして、ケーブル類99に作用する張力の水平成分は、サブステージ50をX軸方向に移動させようとするので、サブステージ50のX軸方向に関する位置制御が困難になる可能性がある。具体的に一例を説明すると、図33に示されるように、サブステージ50がガイド部38a上の+X側に位置する場合、+X側のケーブル束99aに作用する張力は、概ねZ軸方向に作用するので、その水平成分、すなわちサブステージ50を+X方向に移動させようとする力は小さい。一方、−X側のケーブル束99bは、X軸にほぼ平行となっているため、その自重による張力の水平成分は、ケーブル束99aに作用する張力の水平成分よりも大きくなる。この張力の水平成分の差により、サブステージ50には、−X方向に移動させようとする力が作用する。しかし、本第8の実施形態に係るケーブルユニット300aでは、ケーブル束99a、99bをそれぞれ3箇所(ローラ203、206,213)で支持しており、ローラ203とローラ213との間のケーブル束99a、99bの長さ、及びローラ213とローラ206との間のケーブル束99a、99bの長さが、それぞれ短く、その自重が小さくなる分、張力の水平成分も小さい。従って、サブステージ50のX軸方向の位置制御に与える影響を軽減することができる。
また、一対のローラ213それぞれを回転可能に支持する軸受部212を、サブステージ50の半分の速度でサブステージ50に追従させるため、ローラ213を常にローラ203とローラ206との中間に位置させることができる。また、滑車216及びロープ217,218を用いて軸受部212をサブステージ50に追従させるので、構造が簡単である。また、上記第7の実施形態よりもケーブル束の下方への撓み量(重力による垂れ下がり量)を小さくできるので、Z軸方向の空間を小さくして装置を省スペース化できる(脚部が短くても良い)。
《第9の実施形態》
次に第9の実施形態に係るマスクステージ装置MSTkについて説明する。図34には、第9の実施形態に係るマスクステージ装置MSTkを−Y側から見た側面図が示されている。第9の実施形態に係るマスクステージ装置MSTkは、上記第8の実施形態に係るマスクステージ装置MSTjと比べ、一対のローラ213の支持構造が異なる。なお、説明の簡略化及び図示の便宜上から、前述した第7、第8の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、第7、第8の実施形態と同一の符号を用いるとともに、その説明を省略する。
第9の実施形態に係るマスクステージ装置MSTkが有するケーブルユニット300bでは、一対のローラ213それぞれは、Y軸方向に離間した一対の板状部材から成る軸受部212b(+Y側の板状部材は紙面奥側に隠れている)に回転軸214を介して回転可能に支持されている。一対の軸受部212bそれぞれは、ガイド部38aの上方に配置された一対の可動部材221それぞれに接続されている。一対の可動部材221は、サブステージ50の+X側、−X側にそれぞれ設けられている。一対の可動部材221それぞれの下面には、ガイド部38aに固定された一対のXリニアガイド部材51にスライド可能な状態で係合する断面逆U字状の一対のスライダ222が固定されている(+Y側のXリニアガイド部材及びスライダはそれぞれ図示を省略する)。一対の軸受部212bは、接続部材223により接続されており、X軸方向に関して一体的に移動する。
また、一対の軸受部212bそれぞれには、上記第8の実施形態と同様に、回転軸215を介して滑車216が取り付けられている。一対の滑車216それぞれには、ロープ224が巻き掛けられている。一対のロープ224それぞれは、一端がガイド部38aの下面中央部に固定され、他端が支持部201に固定されている。
図35に示されるように、第9の実施形態に係るケーブルユニット300bも、上記第8の実施形態と同様に、サブステージ50がX軸方向に駆動されると、一対の軸受部212bそれぞれが、ロープ224に牽引されてサブステージ50の半分の移動速度で、そのサブステージ50に追従して移動する。本第9の実施形態に係るケーブルユニット300bは、サブステージ50のXステージ54をX軸方向に案内するXリニアガイド部材51を用いて一対の軸受部212bをX軸方向に案内するので、上記第8の実施形態に係るケーブルユニット300aに比べ部材が少なくなる(ただし、サブステージ50のX方向の移動可能量が制限される)。
なお、上記第7〜第9の各実施形態に係るケーブルユニットの構成は、一例に過ぎない。例えば、上記第7〜第9の実施形態のそれぞれにおけるケーブルユニットにおいて、ケーブル類の中間部分は、円筒形状の部材から成るローラの外周面に固定されていたが、ケーブル類が固定される部材は、それぞれ回転軸回りに所定の角度、θy方向に回転(揺動)できれば良いので、円筒形状の部材でなくても良い。図36には、上記第7の実施形態のケーブルユニットの一変形例が示されている。図36に示されるように、ケーブル束99bは、回転軸205回りに回転可能に軸支された断面円弧状の板状部材を含む支持部材230にその中間部分が固定部材220を介して固定されても良い(なお、図36では−Y側の脚部39a、及び軸受部202を構成する一対の板状部材のうち、−Y側の板状部材の図示が省略されている)。なお、第8、第9の実施形態のローラ213(それぞれ図32、図34参照)に換えて、図36に示され支持部材230を用いても良い。
また、上記第8及び第9の実施形態において、軸受部212、212b(それぞれ図32、図34参照)は、ロープを介して支持部201(すなわちサブステージ50)に牽引されることにより、サブステージ50の半分の速度でX軸方向に移動する構成であってが、軸受部212、212bをX軸方向に移動させる方式としては、これに限らず、例えば送りねじ駆動、リニアモータ駆動、ベルト駆動などの駆動方式により、サブステージとは独立に駆動しても良い。
また、上記第8及び第9の実施形態では、軸受部212、212b(それぞれ図32、図34参照)は、サブステージの+X側及び−X側に、それぞれひとつ設けられたが、軸受部の数はこれに限られず、Xガイドの長さ(すなわちサブステージの移動ストローク)に応じて、サブステージの+X側、−X側それぞれに、例えば2つ以上設けられても良い。
なお、上述した第1〜第9の実施形態は、その性質上組み合わせることが不合理である場合を除き、適宜組み合わせても良い。例えば、上記第4〜第9の実施形態は、前述した第2の実施形態と組み合わせても良い。すなわち、上記第4〜第9の実施形態において、マスキングブレード装置(マスキングシステム)を設けても良い。
なお、上記第1〜第9の実施形態のそれぞれ(以下、各実施形態と表記する)では、一対のXVCM及びYVCMは、ムービングマグネット型であったが、これに限らずムービングコイル型であっても良い。また、上記各実施形態の露光装置が備える各リニアモータも、ムービングマグネット型及びムービングコイル型のいずれであっても良いし、その駆動方式もローレンツ力駆動方式に限らず、可変磁気抵抗駆動方式等のその他の方式であっても良い。また、上記各実施形態では、一対のサブステージは、リニアモータにより駆動されたが、一対のサブステージを駆動する方式(アクチュエータ)は、これに限らず例えば送りねじ駆動、あるいはベルト駆動などであっても良い。
また、上記各実施形態では、一対のサブステージは、それぞれXステージと、Xステージ上に搭載されたYステージとから成るふたつのステージを備えたXY2次元ステージ装置であったが、これに限らず、一対のサブステージそれぞれは、例えば平面モータなどによりXY二次元方向に駆動される単一のステージであっても良い。
また、上記各実施形態においては、光透過型のマスクを保持するマスクステージ装置が移動体装置である場合を説明したが、これに限らず、例えば露光装置の露光対象である基板(あるいはウエハ)をXY平面に沿って案内するステージ装置が、移動体装置であっても良い。
なお、上記各実施形態において、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光、あるいはF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が拡大系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は等倍系及び縮小系のいずれでも良い。
なお、上記各実施形態の露光装置は、サイズ(外径、対角線、一辺の少なくとも1つを含む)が500mm以上の基板、例えば液晶表示素子などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の大型基板を露光する露光装置に対して適用することが特に有効である。これは、基板の大型化に対応すべく上記各実施形態の露光装置が構成されているからである。
なお、上記各実施形態では、プレートのステップ・アンド・スキャン動作を伴う走査型露光を行う投影露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、上記各実施形態の露光装置は、投影光学系を用いない、プロキシミティ方式の露光装置でも良い。また、上記各実施形態の露光装置は、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(いわゆるステッパ)あるいはステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置などでも良い。
また、上記各実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
また、シリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置として、例えば米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される、投影光学系とウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などに適用しても良い。
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも適用することができる。
なお、上記各実施形態に係る移動体装置は、露光装置に限らず、例えばインクジェット式の機能性液体付与装置を備えた素子製造装置にも適用しても良い。
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開公報、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
《デバイス製造方法》
次に、上記各実施形態の露光装置をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法について説明する。上記各実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることができる。
〈パターン形成工程〉
まず、上述した各実施形態の露光装置を用いて、パターン像を感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に形成する、いわゆる光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成される。
〈カラーフィルタ形成工程〉
次に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列された、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルタを形成する。
〈セル組み立て工程〉
次に、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板、及びカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
〈モジュール組立工程〉
その後、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。
この場合、パターン形成工程において、上記各実施形態の露光装置を用いて高スループット且つ高精度でプレートの露光が行われるので、結果的に、液晶表示素子の生産性を向上させることができる。