JP5929655B2 - 立方晶窒化ホウ素複合多結晶体およびその製造方法、切削工具、ならびに耐摩工具 - Google Patents

立方晶窒化ホウ素複合多結晶体およびその製造方法、切削工具、ならびに耐摩工具 Download PDF

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本発明は立方晶窒化ホウ素複合多結晶体およびその製造方法、切削工具ならびに耐摩工具に関し、特に高い配向性を有する立方晶窒化ホウ素複合多結晶体、該多結晶体を備えた切削工具および耐摩工具に関するものである。
立方晶窒化ホウ素(cBN)はダイヤモンドに次ぐ硬度を有し、熱的安定性および化学的安定性に優れる。また、鉄系材料に対しては、ダイヤモンドよりも安定なため、鉄系材料の加工工具としてcBN焼結体が用いられてきた。
しかし、このcBN焼結体には、10〜40%程度のバインダーが含まれており、このバインダーが、焼結体の強度、耐熱性、熱拡散性を低下させる原因となっていた。そのため、特に鉄系材料を高速で切削加工する場合に、熱負荷が大きくなり、刃先の欠損や亀裂が生じやすく、工具の寿命が短くなる。
この問題を解決する手法として、バインダーを用いずに、触媒を用いて焼結体を製造する方法がある。この方法では、六方晶窒化ホウ素(hBN)を原料とし、ホウ窒化マグネシウム(Mg3BN3)等を触媒として反応焼結させる。この方法で得られたcBN焼結体は、バインダーを含まないため、cBN同士が強く結合しており、熱伝導率が高くなる。そのため、ヒートシンク材やTAB(Tape Automated Bonding)ボンディングツールなどに用いられている。しかし、この焼結体の中には触媒がいくらか残留しているため、熱を加えると触媒とcBNとの熱膨張差による微細クラックが入りやすくなる。また、粒径が10μm前後と大きいため、熱伝導率が高いものの、強度は弱く、負荷の大きい切削には耐えられない。
一方、hBN等の常圧型BNを、超高圧高温下で触媒を用いず、直接hBNからcBNへ変換させると同時に焼結させること(直接変換焼結法)によってもcBN焼結体は得られる。たとえば、特開昭47−34099号公報(特許文献1)や特開平3−159964号公報(特許文献2)にhBNを超高圧高温下で、cBNに変換させcBN焼結体を得る方法が示されている。また、熱分解窒化ホウ素(pBN)を原料とし、cBN焼結体を得る方法がある。この種の方法が、例えば特公昭63−394号公報(特許文献3)や特開平8−47801号公報(特許文献4)に示されている。
しかし、近年の加工機械の高性能化と高能率化に伴い、加工の高速化が進んでいる。そのため、上記の従来cBN焼結体、多結晶体の切削工具を高速切削で用いると、比較的短時間で工具寿命に至ってしまう。
上記の問題を解決するために、常圧型h−BNから高温高圧下で合成されたcBN焼結体の(111)面を切刃のすくい面として構成する切削工具が特開平8−336705号公報(特許文献5)に記載されている。cBNの(111)面がすくい面側に向くようにして工具を作製することで、すくい面側の耐摩耗性を向上させている。
特開昭47−34099号公報 特開平3−159964号公報 特公昭63−394号公報 特開平8−47801号公報 特開平8−336705号公報
しかしながら、特開平8−336705号公報に記載のcBN合成方法によると、原料であるhBNを熱処理により粒成長させ、結晶性を向上させて使用している。この場合、圧力7GPa、焼結温度2000℃の焼結条件により得られた焼結体には未変換のhBNが残り、強度や耐久性が著しく減少する。
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、高い耐摩耗性を有する面を備える立方晶窒化ホウ素複合多結晶体およびその製造方法、該多結晶体を備えた切削工具、耐摩工具を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、超高圧高温下において、熱分解窒化ホウ素(pBN)を立方晶窒化ホウ素(hBN)とウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)とに直接変換させ、立方晶窒化ホウ素が[111]方向に配向した面をもつ立方晶窒化ホウ素複合多結晶体が得られることを見出した。
本発明に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、ウルツ鉱型窒化ホウ素と立方晶窒化ホウ素と不可避不純物とで構成され、ウルツ鉱型窒化ホウ素の含有率が0.1〜90体積%であり、立方晶窒化ホウ素の平均粒径は500nm以下であり、立方晶窒化ホウ素の(111)面のX線回折強度I(111)に対する、立方晶窒化ホウ素の(220)面のX線回折強度I(220)の比I(220)/I(111)が0.1未満である配向面を備える。
上記の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体において好ましくは、六方晶窒化ホウ素のX線回折強度が検出限界以下である。ここで、「検出限界以下」とは、PANalytical社製X線回折装置X‘Pertを用いて、波長1.54ÅのCuKα線により測定したときに、X線回折強度が検出限界以下であることをいう。
上記の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体において好ましくは、上記配向面のヌープ硬度は55GPa以上である。
上記の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体において好ましくは、立方晶窒化ホウ素の平均粒径は100nm以下である。
本発明に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法は、出発物質として熱分解窒化ホウ素を準備する工程と、圧力8GPa以上、かつ、温度1900〜2300℃の条件下において熱分解窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素に直接変換させると同時に焼結させる工程とを備える。熱分解窒化ホウ素は、(002)面の面間隔が3.35Åより大きく3.5Å以下である。
本発明に係る切削工具は、上記の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を備えており、上記配向面を刃先のすくい面もしくは逃げ面として使用する。本発明に係る耐摩工具は、上記の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を備えており、耐摩耗性が要求される部分に上記配向面を用いる。
本発明によれば、高い耐摩耗性を有する立方晶窒化ホウ素の(111)面が配向している面を備える立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を製造することができる。また、本発明によれば、該複合多結晶体を備えた優れた特性の切削工具、耐摩工具を提供することができる。
以下、本実施の形態について説明する。
(実施の形態)
本実施の形態に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、複数の立方晶窒化ホウ素(cBN)と、複数のウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)とを備えている。立方晶窒化ホウ素同士、ウルツ鉱型窒化ホウ素同士、さらに立方晶窒化ホウ素とウルツ鉱型窒化ホウ素とは、いずれも強固に結合し、緻密な複合組織を有している。具体的には、該多結晶体は、0.1体積%以上のウルツ鉱型窒化ホウ素と、残部を構成する立方晶窒化ホウ素と不可避不純物とで構成されている。不可避不純物とは、たとえば窒素、水素、酸素などである。このとき、立方晶窒化ホウ素の平均粒径は500nm以下程度である。該多結晶体は、実質的にバインダー、焼結助剤、触媒などを含んでいない。
本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、該立方晶窒化ホウ素複合体に含まれる立方晶窒化ホウ素の(111)面のX線回折強度I(111)に対する、該立方晶窒化ホウ素の(220)面のX線回折強度I(220)の比I(220)/I(111)が0.1未満である。つまり、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、該立方晶窒化ホウ素複合多結晶体に含まれる複数の立方晶窒化ホウ素が[111]方向に配向している面を備える(以下、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体においてX線回折強度I(220)の比I(220)/I(111)が0.1未満である面を、[111]方向に配向している面または(111)配向面いう)。
後述する実施例より、ウルツ鉱型窒化ホウ素の含有率が0.1体積%以上であって、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.04〜0.09である立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、配向面における室温でのヌープ硬度が55GPa以上と高硬度であることが確認できた。さらに後述する実施例より、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.05〜0.09である立方晶窒化ホウ素複合体は、配向面の耐摩耗性が優れていることが確認できた。しかし、ウルツ鉱型窒化ホウ素の含有率が0.1体積%以上であって、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.1未満であれば同様の効果が得られるものと考えられる。
本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、六方晶窒化ホウ素のX線回折強度が検出限界以下である好ましい。立方晶窒化ホウ素複合多結晶体に含まれる六方晶窒化ホウ素は、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の硬度低下を引き起こす。後述する各実施例より、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.04〜0.09であって、六方晶窒化ホウ素のX線回折強度が検出限界以下である立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、(111)配向面における室温でのヌープ硬度が55GPa以上と高硬度であることが確認できた。
また、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合体における立方晶窒化ホウ素の平均粒径は150nm以下程度であるのが好ましい。後述する各実施例より、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.04〜0.09であって、立方晶窒化ホウ素の平均粒径が31nm以上148nm以下程度である立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、(111)配向面における室温でのヌープ硬度が55GPa以上と高硬度であることが確認できた。しかし、上記X線回折強度比I(220)/I(111)が0.1未満であって、立方晶窒化ホウ素の平均粒径が150nm以下程度であっても、同様の効果が得られるものと考えられる。
次に、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法について説明する。本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法は、出発物質として、(002)面の面間隔が3.35Å以上3.5Å以下である熱分解窒化ホウ素を準備する工程(S01)と、圧力8GPa以上、かつ、温度1300〜2300℃の条件下において前記常圧型窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素に直接変換させると同時に焼結させる工程(S02)とを備える。
まず、工程(S01)では、(002)面の面間隔が3.35Å以上3.5Å以下である熱分解窒化ホウ素(pBN)を準備する。pBNは、高配向性であることが好ましい。ここでいうpBNの高配向性とは、pBN結晶のc軸と垂直方向におけるX線回折測定において、(002)面のX線回折強度I(002)に対する、(100)面のX線回折強度I(100)の比I(100)/I(002)が2.0以上であることを指す。
次に、工程(S02)では、出発物質である高配向性のpBNを、超高圧高温発生装置を用いて、立方晶窒化ホウ素(cBN)とウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)とに変換させると同時に焼結させる。焼結は、圧力8GPa、かつ、温度1300〜2300℃の条件下において行われ、かつcBNが熱力学的に安定な圧力条件の下で所定時間保持される。好ましくは、焼結条件は圧力8GPa以上20GPa以下程度、温度1300〜2300℃である。本実施の形態では、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にpBNがcBNやwBNに変換焼結される。
立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法においては、特に焼結温度が重要である。焼結温度が2300℃より高いと、微粒cBN結晶は粒成長し、その平均粒径は500nmを超えてしまう。一方、焼結温度が低いと、未変換の出発物質が残ってしまう。未変換の出発物質は六方晶窒化ホウ素として立方晶窒化ホウ素複合多結晶体に含まれることになる。そのため、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法においては、未変換の出発物質が残らない焼結条件とするのが好ましい。
立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を合成するために適切な焼結温度は、工程(S02)において出発物質を直接変換すると同時に焼結する際に加える圧力によって変化する。圧力が低い場合には高い温度で、圧力が高い場合には低い温度で立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を合成することができる。さらに、工程(S02)における上記温度圧力条件は、出発物質の結晶性や粒径によっても変化する。例えば、上記条件を満たす高配向性pBNの場合、10GPaでは1900℃未満の温度で未変換の出発物質が残り、15GPaでは1500℃未満程度の温度で残り、20GPaでは1300℃未満程度の温度で残る。
本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法によれば、wBNの含有率が0.1体積%以上であって、wBN、cBNおよび不可避不純物で構成されて、cBNが[111]方向に配向している面を持ち、cBNの平均粒径が500nm以下程度である立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を得ることができる。
後述する実施例より、工程(S02)において、圧力10GPa以上程度、温度1300〜2300℃程度の焼結条件であれば、得られた立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、(111)配向面を有し、該(111)配向面の室温におけるヌープ硬度は55GPaであることが確認できた。しかし、圧力8GPa以上程度、かつ2300℃程度の焼結条件においても、同様の特性を有する立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を得ることができると考えられる。
以上のように、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、0.1体積%以上のウルツ鉱型窒化ホウ素と平均粒径が500nm以下の立方晶窒化ホウ素と不可避不純物とで構成される。さらに、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、高硬度である立方晶窒化ホウ素の(111)面が配向している面を備えることにより、高硬度でかつ優れた耐摩耗性を有する面を備えることができる。
また、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、六方晶窒化ホウ素のX線回折強度を検出限界以下とすることで、より高硬度とすることができる。
また、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体に含まれる立方晶窒化ホウ素の平均粒径を150nm以下とすることで、緻密で空隙の極めて少ない結晶組織とすることができるため、より高硬度とすることができる。
さらに、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、切削工具や耐摩工具などに用いることができる。このとき、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体に含まれる立方晶窒化ホウ素の[111]方向に配向した面(配向面)を、被加工材と接し摩耗量が大きい面に向くように工具を作製することで、耐摩耗性に優れた切削工具または耐摩工具とすることができる。
例えば、送り量(送り速度)が多い切削を行う場合には切削工具のすくい面に切り屑との摩擦が大きくなる。そのため、本実施の形態の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の(111)配向面をすくい面に向けるように工具を作製することで、切削工具寿命を延ばすことが可能である。
例えば、送り量(送り速度)が小さい切削を行う場合には切削工具の逃げ面に被加工材の仕上げ面との摩擦から摩耗するため、[111]方向に配向した面を逃げ面に向けるように工具を作製することで、切削工具寿命を延ばすことが可能である。
次に、本発明の実施例について説明する。
実施例1〜4に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を以下の方法で作製した。まず、出発原料として、(002)面の面間隔が3.36Åで、かつc軸と垂直方向におけるX線回折測定において、(002)面のX線回折強度I(002)に対する(100)面のX線回折強度I(100)の比I(100)/I(002)が4.0の高配向性のpBNを準備した。また、実施例5に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を以下の方法で作成した。出発原料として、(002)面の面間隔が3.47Åで、かつc軸と垂直方向におけるX線回折測定において、(002)面のX線回折強度I(002)に対する(100)面のX線回折強度I(100)の比I(100)/I(002)が3.4の高配向性のpBNを準備した。その出発原料を高融点金属からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表1に記載の圧力、温度条件下において20分間保持し、出発原料をcBNおよびwBNに直接変換した。
比較例1に係る立方晶窒化ホウ素多結晶体を以下の方法で作製した。まず、出発原料として市販のペレット状のhBNを使用した。その出発原料を高融点金属からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表1に記載の圧力、温度条件下において15分間保持し、出発原料をcBNに直接変換した。なお、超高圧高温発生装置において保持する時間は、出発物質をcBNやwBNに変換焼結するのに必要な時間を越えている限りにおいて、保持する時間の長短によって、得られる立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の硬度や耐摩耗性等の特性は影響を受けない。つまり、本実施例および比較例に関して言えば、保持する時間が15分であっても20分であっても、それによって立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の特性に差異が生じる訳ではない。
比較例2に係る立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を以下の方法で作製した。まず、出発原料として、(002)面の面間隔が3.51Åで、かつc軸と垂直方向におけるX線回折測定において、(002)面のX線回折強度I(002)に対する(100)面のX線回折強度I(100)の比I(100)/I(002)が1.0の低配向性のpBNを準備した。その出発原料を高融点金属からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表1に記載の圧力、温度条件下において20分間保持し、出発原料をcBNおよびwBNに直接変換した。
なお、pBNの配向性を求めるために行ったX線回折は、スペクトリス社製X線回折装置(X’Pert)を使用した。
上記の様にして得られた実施例1〜4および比較例1および比較例2の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の組成、粒径、硬度を下記の手法で測定した。
各相の組成は、X線回折装置(PANalytical社製 X‘Pert)により各相を同定することにより得られた。この装置のX線の線源はCuであり、波長1.54ÅのKα線である。
表1に記載の試料の平均粒径は、走査電子顕微鏡(Carl Zeiss社製 ULTRA55)によって測定した。平均粒径を求める方法として切断法を使用した。この方法では、まず走査電子顕微鏡(SEM)の画像に円を書き、円の中心から8本の直線を放射状に円の外周まで引き、円の中で直線が結晶粒界を横切る数を数える。そして、直線の長さをその横切る数で割ることで平均切片長さを求め、その平均切片長さに1.128をかけると平均結晶粒径が求められる。
切断法を用いるのに使用したSEM画像の倍率は30000倍である。その理由は、これ以下の倍率では、円内の粒の数が多くなり、粒界が見えにくく数え間違いが発生する上に、線を引く際に板状組織を含める可能性が高くなるからである。また、これ以上の倍率では、円内の粒の数が少な過ぎて、正確な平均粒径が算出できないからである。
本実験においては、1つの試料に対して、別々の箇所を撮影した3枚のSEM画像を使用した。それぞれのSEM画像に対して切断法を使用して、その平均値を平均粒径とした。
配向性は、上記X線回折装置を用いて評価した。X線回折法により、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体中の立方晶窒化ホウ素の(220)面の回折強度I(220)と(111)面の回折強度I(111)との比I(220)/I(111)を算出した。
立方晶窒化ホウ素複合多結晶体において、立方晶窒化ホウ素が[111]方向に配向している面(配向面)における室温の硬度の測定として、ヌープ硬度を測定した。ヌープ硬度の測定には、マイクロヌープ圧子を使用し、試験荷重4.9Nで行った。測定機器はニコン製QM型を用いた。
実施例1〜5および比較例1および2の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の組成、X線回折強度比I(220)/I(111)、粒径、硬度の結果を表1に示す。
Figure 0005929655
表1に示すように、実施例1〜5は、0.20〜80.5体積%のウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)を含有していることが確認された。また、実施例1〜5の平均粒径は、31〜148nmであった。このとき、実施例1〜5の(111)配向面における上記X線強度比I(220)/I(111)は、0.03〜0.09であった。さらに、実施例1〜5の(111)配向面における室温のヌープ硬度は、試験荷重4.9Nの条件下において、55〜57GPaであった。
一方、比較例1は、ウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)を全く含有せず、六方晶窒化ホウ素(hBN)を0.08体積%含有していることが確認された。また、比較例1の平均粒径は412nmであり、実施例1〜5と比較して大きかった。上記X線回折強度比I(220)/I(111)は、0.05であり、実施例1〜5と同等であったが、比較例1の(111)配向面におけるヌープ硬度は47GPaであり、実施例1〜5と比較して低かった。
比較例2は、ウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)を1.1%含んでいることが確認された。また、比較例1の平均粒径は99nmであり、実施例1〜5と比較して同等であった。上記X線回折強度比I(220)/I(111)は、0.22であり、実施例1〜5と比較して高く、どの面においても配向しておらず、等方的であった。室温におけるヌープ硬度は50GPaであり、実施例1〜5と比較して低かった。
つまり、実施例1〜5の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、六方晶窒化ホウ素を含有しウルツ鉱型窒化ホウ素を含有しない比較例1の立方晶窒化ホウ素多結晶体と比較して、(111)配向面が高硬度であることが確認できた。また、実施例1〜5の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、比較例2の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体と比較して、高硬度であることが確認できた。
さらに、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の[111]方向に配向している面の耐摩耗性を比較するために、摩耗試験を行った。摩耗試験は以下の方式で行った。メタルボンドで粒度#800のダイヤモンド研磨盤の上に2.0×2.0mmの大きさの試料を置き、0.7kg/mmの荷重を試料にかけた状態で、研磨盤を1000rpmの回転速度で回転させ、研磨盤と接している面を摩耗させ、その摩耗量を比較した。試験は実施例1〜5と比較例1,2の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体で行った。
実施例1〜5および比較例1は[111]方向に配向している面を研磨盤に接するように置き、試験を行った。比較例2は等方的であるため、無作為に選んだ面を研磨盤に接するように置き、試験を行った。その結果を表2に示す。実施例1〜5は比較例1,2の0.6〜0.9倍の摩耗量であった。
Figure 0005929655
つまり、実施例1〜5の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は(111)配向面を摩耗する面とすることで、比較例2の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体と比べて耐摩耗性が向上していることが確認された。また、ウルツ鉱型窒化ホウ素を含有する実施例1〜5の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体は、ウルツ鉱型窒化ホウ素を含有しない比較例1の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体と比べて耐摩耗性が向上していることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。

Claims (7)

  1. ウルツ鉱型窒化ホウ素と立方晶窒化ホウ素と不可避不純物とで構成され、
    前記ウルツ鉱型窒化ホウ素の含有率が0.1体積%以上であり、
    前記立方晶窒化ホウ素の平均粒径は500nm以下であり、
    前記立方晶窒化ホウ素の(111)面のX線回折強度I(111)に対する、前記立方晶窒化ホウ素の(220)面のX線回折強度I(220)の比I(220)/I(111)が0.1未満である配向面を備える、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体。
  2. 六方晶窒化ホウ素のX線回折強度が検出限界以下である、請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体。
  3. 前記配向面におけるヌープ硬度は55GPa以上である、請求項1または2に記載の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体。
  4. 前記立方晶窒化ホウ素の平均粒径は150nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を備え、前記配向面を刃先のすくい面または逃げ面として使用する、切削工具。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の立方晶窒化ホウ素複合多結晶体を備え、耐摩耗性を要求される部分に前記配向面を用いた、耐摩工具。
  7. 出発物質として熱分解窒化ホウ素を準備する工程と、
    圧力8GPa以上、かつ、温度1300〜2300℃の条件下において前記熱分解窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素に直接変換させると同時に焼結させる工程とを備え
    前記熱分解窒化ホウ素は、(002)面の面間隔が3.35Å以上、3.5Å以下であり、
    前記熱分解窒化ホウ素は、c軸に垂直な方向におけるX線回折測定において、(002)面のX線回折強度I (002) に対する、(100)面のX線回折強度I (100) の比I (100) /I (002) が2.0以上である、立方晶窒化ホウ素複合多結晶体の製造方法。
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