以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有しており、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
より詳細には、第1の取付部材12は、鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材であって、全体として小径の略円形ブロック形状を有しており、上部が略円柱形状を有していると共に、下部が下方に向かって次第に縮径する逆向きの略円錐台形状とされている。また、第1の取付部材12には、中心軸上を上下に延びて上面に開口するボルト穴18が形成されており、内周面にねじ山が形成されている。
第2の取付部材14は、第1の取付部材12と同様の材料で形成された高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状を有している。また、第2の取付部材14の上端部分には、外周側に開口する溝状を呈する括れ部20が設けられていると共に、括れ部20の上端から外周側に向かってフランジ部22が突出している。
そして、第1の取付部材12と第2の取付部材14は、同一中心軸上で第1の取付部材12が第2の取付部材14よりも上方に離隔配置されて、それら第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を有しており、小径側の端部に第1の取付部材12が加硫接着されていると共に、大径側の端部の外周面に第2の取付部材14の括れ部20が重ね合わされて加硫接着されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が第1の取付部材12および第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所24が形成されている。大径凹所24は、本体ゴム弾性体16の大径側端面に開口する逆向きの略すり鉢形状乃至は皿形状を呈する凹所であって、本体ゴム弾性体16の径方向中央部分に形成されている。
更にまた、本体ゴム弾性体16における大径凹所24よりも外周側からは、シールゴム層26が延び出している。シールゴム層26は、薄肉大径の略円筒形状を有するゴム弾性体であって、本体ゴム弾性体16と一体形成されていると共に、第2の取付部材14の内周面に固着されている。
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、可撓性膜28が取り付けられている。可撓性膜28は、薄肉の円板状乃至は円形ドーム状を呈するゴム膜であって、軸方向に充分な弛みを備えている。更に、可撓性膜28の外周端部には環状の固着部30が一体形成されており、この固着部30の外周面が環状の固定部材32の内周面に加硫接着されている。
そして、固定部材32が第2の取付部材14の下側開口部に挿入されて、第2の取付部材14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、固定部材32が第2の取付部材14に嵌着されて、可撓性膜28が第2の取付部材14の下側開口部を閉鎖するように配設される。なお、第2の取付部材14と固定部材32の間には、シールゴム層26が介在しており、第2の取付部材14と固定部材32が流体密に固定されている。
このように本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に可撓性膜28が取り付けられることで、本体ゴム弾性体16と可撓性膜28の軸方向対向面間には、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体を封入された流体室34が形成されている。なお、流体室34に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が採用され得る。また、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を効率的に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体室34には、仕切部材36が収容配置されている。仕切部材36は、全体として厚肉の略円板形状を呈しており、上仕切部材38と下仕切部材40とを含んで構成されている。
上仕切部材38は、図2〜図4に示されているように、略円板形状を呈しており、径方向中央部分には上方に開口する中央凹所42が形成されて、後述する受圧室66の容積が効率的に確保されるようになっている。更に、中央凹所42の底壁の中央部分には、上下に貫通する第1の連通孔44が形成されている。この第1の連通孔44は軸方向視で略長方形とされており、一対の第1の連通孔44,44が短辺方向で所定の距離を隔てて設けられている。なお、中央凹所42の底壁部の外周部分には、周上で等間隔に複数の上部嵌着孔46が貫通形成されている。
さらに、上仕切部材38の外周端部には、外周面に開口しながら周方向に所定の長さで延びる上部溝48が形成されており、上部溝48の一方の端部が径方向内側に延び出して中央凹所42に連通されていると共に、他方の端部が下面に開口している。
下仕切部材40は、図5〜図7に示されているように、中央部分が厚肉の略円板形状を呈していると共に、その外周側には下端から薄肉のフランジ状部分50が突出している。このフランジ状部分50は、周方向で一周に満たない所定長さで延びており、一方の端部が周方向外側に向かって次第に厚肉となる傾斜部とされていると共に、他方の端部が軸方向下方に開口している。更に、フランジ状部分50の両端部間には、中央部分と同じ厚肉の隔壁部52が突出している。なお、厚肉とされた中央部分には、周上で等間隔に複数の下部嵌着穴54が形成されている。
また、下仕切部材40の径方向中央部分には、上方に開口する収容凹所56が形成されている。この収容凹所56は、軸方向視で略長方形を呈しており、その長辺方向両端部分の底壁から上方に向かって係止突起としての一対の挿通ピン58,58が突出している。挿通ピン58は、小径の略円柱形状を有しており、本実施形態では、突出先端部分の角部が面取りされることで、突出先端部が先端側に向かって縮径するテーパ形状とされている。
さらに、収容凹所56の底壁部には、一対の第2の連通孔60,60が貫通形成されている。第2の連通孔60は、第1の連通孔44と略同じ長方形断面で上下に延びており、第1の連通孔44と同様に、短辺方向で所定距離を隔てて一対が設けられている。なお、第2の連通孔60は、その長辺方向が収容凹所56の短辺方向と略一致するように設けられており、後述する上下仕切部材38,40の組み合わせ状態において、第1の連通孔44の長辺方向と第2の連通孔60の長辺方向が略一致している。
そして、上仕切部材38と下仕切部材40は、上下に重ね合わされており、相互に位置決めされた上部嵌着孔46と下部嵌着穴54に対して、ピンが圧入されたり、ねじが螺着される等して、相互に固定されている。また、上仕切部材38の上部溝48の下側壁部が下仕切部材40のフランジ状部分50に対して上方に離隔して対向配置されることにより、外周側に開口して周方向に延びる凹溝が形成されており、その凹溝と上部溝48が周方向端部で相互に連通されることによって、周方向に2周弱の長さで螺旋状に延びる周溝62が形成されている。さらに、下仕切部材40の収容凹所56の開口部が上仕切部材38で覆蓋されることによって、上下の仕切部材38,40の間には収容空所64が形成されている。なお、収容空所64の上壁部に第1の連通孔44が貫通形成されていると共に、収容空所64の下壁部に第2の連通孔60が貫通形成されている。
かくの如き構造とされた仕切部材36は、流体室34に収容配置されて、軸直角方向に広がっており、外周端部を第2の取付部材14によって支持されている。これにより、流体室34が仕切部材36を挟んで上下に二分されており、仕切部材36を挟んだ上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室66が形成されている。一方、仕切部材36を挟んだ下方には、壁部の一部が可撓性膜28で構成されて、可撓性膜28の変形によって容積変化が容易に許容される平衡室68が形成されている。それら受圧室66および平衡室68には、上述の非圧縮性流体が封入されている。
また、仕切部材36の外周面が第2の取付部材14に対してシールゴム層26を介して重ね合わされることにより、周溝62の外周開口部が第2の取付部材14によって流体密に覆蓋されて、周方向に延びるトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状流路の周方向一方の端部が受圧室66に連通されると共に、周方向他方の端部が平衡室68に連通されることにより、受圧室66と平衡室68を相互に連通するオリフィス通路70が、周溝62を利用して形成されている。なお、オリフィス通路70は、受圧室66および平衡室68の壁ばね剛性を考慮しながら、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することにより、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。
また、収容空所64には、緩衝体としての緩衝ゴム72が収容配置されている。緩衝ゴム72は、図8〜図10に示されているように、ゴム弾性体で形成された中空構造体であって、軸方向視で略長方形を呈していると共に、本実施形態では短辺方向で貫通する内部空所88を備えた略帯形筒状体とされている。
より具体的には、緩衝ゴム72は、一対の対向板部74a,74bと、それら一対の対向板部74a,74bを相互に接続する一対の側板部76a,76bとを、一体で備えることで、略帯形筒状体をなしている。
一対の対向板部74a,74bは、軸方向視で互いに対応する略長方形を呈する板状体であって、上下方向で相互に所定距離を隔てて対向配置されている。また、対向板部74aに一対の第1の窓部78,78が形成されていると共に、対向板部74bに一対の第2の窓部80,80が形成されている。それら第1の窓部78と第2の窓部80は、相互に略同一の長方形断面を有する貫通孔であって、それぞれ短辺方向で所定距離を隔てて隣り合う一対が形成されている。なお、第1の窓部78の長辺方向が対向板部74aの短辺方向となっていると共に、第2の窓部80の長辺方向が対向板部74bの短辺方向となっている。
さらに、対向板部74aにおける一対の第1の窓部78,78の短辺方向外側と、対向板部74bにおける一対の第2の窓部80,80の短辺方向外側には、それぞれ係止孔としての挿通孔82が形成されている。挿通孔82は、挿通ピン58に略対応する小径の円形断面で上下に貫通する孔であって、緩衝ゴム72の対向板部74aと対向板部74bにそれぞれ一対が対応する位置で形成されている。
更にまた、対向板部74a,74bには、それぞれ突起部84が設けられている。突起部84は、軸方向視で略円形とされており、対向板部74a,74bの中央部分に形成されて、それら対向板部74a,74bの対向方向外方に向かって突出するように設けられている。また、突起部84は、突出先端側に向かって次第に縮径していると共に、突出先端面が略円板形状とされている。なお、突起部84は、対向板部74aにおいて一対の第1の窓部78,78の間に形成されていると共に、対向板部74bにおいて一対の第2の窓部80,80の間に形成されている。
なお、本実施形態の対向板部74a,74bには、突起部84と対応する位置において、対向板部74a,74bの対向方向内方に向かって突出する緩衝突起としての内方突部86が一体形成されている。この内方突部86は、突起部84と略同一の形状で、突起部84と反対側に向かって突出している。
また、一対の対向板部74a,74bの長辺方向の両端部には、それら一対の対向板部74a,74bの対向方向内方に延び出す一対の側板部76a,76bが一体形成されており、一対の対向板部74a,74bが一対の側板部76a,76bによって相互に接続されている。そして、一対の対向板部74a,74bが一対の側板部76a,76bで相互に接続されることにより、帯形筒状の緩衝ゴム72が形成されていると共に、一対の対向板部74a,74bおよび一対の側板部76a,76bで囲まれた内部空所88が形成されている。
かくの如き構造とされた緩衝ゴム72は、図11に示されているように、下仕切部材40の収容凹所56に嵌め込まれている。そして、下仕切部材40に上仕切部材38が重ね合わされて固定されることにより、緩衝ゴム72が収容空所64に収容配置されて、収容空所64の上壁内面が対向板部74aで覆われていると共に、収容空所64の下壁内面が対向板部74bで覆われている。
また、収容空所64に配設された緩衝ゴム72において、対向板部74aが突起部84において上仕切部材38で構成された収容空所64の上壁内面に当接していると共に、対向板部74bが突起部84において下仕切部材40で構成された収容空所64の下壁内面に当接している。なお、突起部84が設けられていることによって、対向板部74a,74bにおける突起部84を外れた部分には、静置状態において収容空所64の上下壁内面に対して離隔した部分ができるようになっている。それ故、対向板部74aの上面と対向板部74bの下面との距離は、収容空所64の上壁内面と下壁内面との対向面間距離に対して、大きくされていても小さくされていても良いし、或いは同じであっても良い。尤も、対向板部74a,74bにおける突起部84を外れた部分には、静置状態において収容空所64の上下壁内面から所定量だけ離隔している部分があることが望ましいので、本実施形態では、対向板部74aの上面と対向板部74bの下面との距離が、収容空所64の上壁内面と下壁内面の対向面間距離よりも小さくされている。
さらに、緩衝ゴム72の収容空所64への配設状態において、一対の側板部76a,76bは、収容空所64の周壁内面(図1中の左右両壁内面)に対して所定の隙間を隔てて対向配置されていることが望ましい。
さらに、緩衝ゴム72の収容凹所56への挿入時に、下仕切部材40に一体形成された一対の挿通ピン58,58が緩衝ゴム72の一対の挿通孔82,82に挿入されることにより、挿通ピン58,58が緩衝ゴム72を上下に貫通するように挿通されている。これにより、挿通ピン58の外周面と挿通孔82の内周面との当接係止によって、緩衝ゴム72を収容空所64内で仕切部材36に対して位置決めする、第1の位置決め手段が構成されている。なお、挿通ピン58の突出先端の角部が面取りされていることによって、挿通ピン58が挿通孔82に容易に挿入されるようになっている。
また、緩衝ゴム72の第1の窓部78が上仕切部材38の第1の連通孔44に対して位置決めされて相互に連通されていると共に、緩衝ゴム72の第2の窓部80が下仕切部材40の第2の連通孔60に対して位置決めされて相互に連通されている。これにより、受圧室66と平衡室68を相互に連通する流体流路90が、第1,第2の連通孔44,60と、第1,第2の窓部78,80と、収容空所64と、内部空所88とを含んで構成されている。
この流体流路90上には、可動部材としての可動板92が配設されている。可動板92は、ゴム弾性体や合成樹脂、金属等で形成された矩形板状の部材であって、緩衝ゴム72とは別体で形成されており、緩衝ゴム72の内部空所88内に収容配置されることで、収容空所64内に配設されている。また、可動板92は、図9に2点鎖線で示されているように、対向板部74a,74bの長辺方向および短辺方向において、第1の窓部78,78および第2の窓部80,80の外端よりも外側まで延び出している。更に、可動板92は、対向板部74a,74bの長辺方向において、一対の挿通ピン58,58の対向間距離よりも小さい寸法で形成されていると共に、対向板部74a,74bの短辺方向において、それら対向板部74a,74bの短辺の長さよりも小さい寸法で形成されている。
そして、可動板92は、緩衝ゴム72の内部空所88に収容されることで、一対の挿通ピン58,58の対向間に配置されて、略軸直角方向に広がっている。なお、可動板92は、内部空所88内で面方向(厚さ方向と直交する方向)に変位しても、その外周端が第1の窓部78,78および第2の窓部80,80よりも外側に位置した状態で保持される大きさで形成されており、それら第1の窓部78,78および第2の窓部80,80の全体が軸方向の投影において可動板92と重なり合っている。
また、可動板92は、軸方向に延びる流体流路90に対して略直交して広がるように配設されており、可動板92の上面には第1の連通孔44および第1の窓部78を通じて受圧室66の液圧が及ぼされていると共に、可動板92の下面には第2の連通孔60および第2の窓部80を通じて平衡室68の液圧が及ぼされている。これにより、可動板92は、受圧室66と平衡室68の相対的な圧力変動に基づいて、内部空所88内で上下に変位するようになっている。
そして、アイドリング振動に相当する中周波小振幅振動の入力時には、可動板92が内部空所88内で上下に微小変位することで、受圧室66と平衡室68の間で液圧が伝達されると共に、低周波大振幅振動の入力時には、可動板92が第1の窓部78と第2の窓部80の何れかを塞ぐことで流体流路90を遮断して、流体流路90を通じた液圧の伝達が防止されるようになっている。要するに、本実施形態では、中周波小振幅振動の入力時に受圧室66の液圧を平衡室68に伝達する液圧伝達機構が、可動板92を含んで構成されている。なお、本実施形態において、大振幅振動の入力時に可動板92が当接する一対の対向板部74a,74bには、内部空所88側に突出する内方突部86が設けられており、大振幅振動の入力時には、可動板92が、内方突部86に当接してから、第1の窓部78又は第2の窓部80の開口周縁部に当接するようになっている。本実施形態では流体流路90のチューニング周波数がアイドリング振動に相当する中周波数域に設定されているが、走行こもり音等に相当する高周波数域に設定することも可能である。
このような構造とされたエンジンマウント10は、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられることによって、車両に装着されて、パワーユニットと車両ボデーを相互に防振連結するようになっている。
かかる車両装着状態において、アイドリング振動周波数相当の中周波小振幅振動が入力されると、オリフィス通路70は、チューニング周波数よりも高周波数の振動入力により反共振を生じて実質的に遮断される。一方、受圧室66と平衡室68の相対的な圧力変動に基づいて、可動板92が内部空所88内で一対の対向板部74a,74bに当接することなく上下に微小変位する。これにより、流体流路90が連通状態に保持されて、受圧室66の液圧が流体流路90を通じて平衡室68に伝達されることから、平衡室68の容積変化による液圧吸収作用が発揮されて、目的とする防振効果(振動絶縁効果)を得ることができる。なお、上記の説明からも明らかなように、流路上に可動板92を配された流体流路90によって、本実施形態の液圧伝達機構が構成されている。
また、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波大振幅振動が入力されると、受圧室66と平衡室68の相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路70を通じた流体流動が惹起される。これにより、流体の共振作用等の流動作用に基づいて目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮される。
なお、低周波大振幅振動の入力時には、可動板92の上下方向での変位量が大きくなることから、可動板92が一対の対向板部74a,74bに押し当てられて実質的に拘束される。これにより、第1,第2の窓部78,80の何れかが可動板92で閉塞されて流体流路90が遮断されることから、受圧室66の液圧が流体流路90を通じて平衡室68側に伝達されるのが防止される。それ故、受圧室66の内圧変動が効率的に惹起されて、オリフィス通路70を通じて流動する流体量を多く確保することができることから、流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。要するに、本実施形態の液圧伝達機構では、可動板92によって流体流路90の連通と遮断が切り替えられることにより、受圧室66と平衡室68との間での液圧伝達機構による液圧伝達の有無が切り替えられるようになっている。また、本実施形態では、可動板92が一対の挿通ピン58,58の対向間に配設されていることから、挿通ピン58,58によって可動板92の軸直角方向への変位量が制限されて、比較的に小型の可動板92によって第1,第2の窓部78,80を確実に遮断することができる。
そこにおいて、可動板92が収容空所64の上下壁内面に当接する際に生じる衝撃力が、緩衝ゴム72によって吸収されるようになっている。即ち、可動板92が収容空所64の上壁内面に対して対向板部74aを介して当接すると、対向板部74aに入力された当接時の衝撃エネルギーが、一対の側板部76a,76bを通じて対向板部74bに伝達される。その際に、入力された衝撃エネルギーによって一対の側板部76a,76bと対向板部74bが微小変形を生じることから、対向板部74bと一対の側板部76a,76bの内部摩擦等に基づいて衝撃エネルギーが熱エネルギーに変換される。これにより、緩衝ゴム72を通じて仕切部材36に伝達される衝撃エネルギーが低減されて、この衝撃エネルギーに起因して発生する打音を低減乃至は回避することができる。なお、可動板92が対向板部74bを介して収容空所64の下壁内面に当接する場合には、対向板部74bに入力される衝撃エネルギーが一対の側板部76a,76bを介して対向板部74aに伝達されることで、同様のエネルギー減衰作用が発揮されて、打音の発生が防止される。
特に本実施形態では、一対の対向板部74a,74bにそれぞれ突起部84が設けられており、それら一対の対向板部74a,74bが収容空所64の上下壁内面に対して突起部84で部分的に当接支持されている。それ故、衝撃エネルギーの入力時には、一対の対向板部74a,74bが収容空所64の上下壁内面で拘束されることなく微小変形して、内部摩擦等によるエネルギー減衰作用が効率的に発揮される。
さらに、一対の側板部76a,76bが収容空所64の周壁内面から離隔していることによって、一対の側板部76a,76bの微小変形も有効に生ぜしめられて、一対の対向板部74a,74b間での衝撃エネルギーの効率的な伝達が実現されると共に、側板部76a,76bにおけるエネルギー減衰作用も効果的に発揮される。しかも、本実施形態では、一対の挿通ピン58,58が一対の挿通孔82,82に挿通されることによって、緩衝ゴム72が収容空所64内で位置決めされており、一対の側板部76a,76bと収容空所64の周壁内面との間の隙間が保持されることから、上記の如き効果を安定して得ることができる。
また、一対の対向板部74a,74bには、対向方向内側に向かって突出する内方突部86がそれぞれ設けられており、可動板92が一対の対向板部74a,74bに当接する際には、内方突部86が可動板92に対して優先的に当接するようになっている。これにより、可動板92と一対の対向板部74a,74bとの当接時に、内方突部86に当接してから第1の窓部78又は第2の窓部80の開口周縁部に当接するようになっており、段階的な当接が実現されて、当接時の衝撃力に起因する打音が低減される。しかも、内方突部86および突起部84の圧縮変形や、可動板92の剪断(撓み)変形によって、内部摩擦等に基づいたエネルギー減衰作用が発揮されることから、第1,第2の窓部78,80の開口周縁部への当接による衝撃が緩和されて、打音がより効果的に低減される。
可動板92の当接時に、衝撃力の車両ボデー(第2の取付部材14)への伝達が低減されることは、図12に示された計測結果からも明らかである。なお、図12のグラフにおいて、実線が本実施形態に係るエンジンマウント10(実施例)の実測結果を、破線が本実施形態に係るエンジンマウント10から緩衝ゴム72を取り除いたもの(比較例)を、1点鎖線が第1の取付部材12と第2の取付部材14の相対的な変位(本体入力変位)を、それぞれ示す。
すなわち、図12のグラフによれば、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間に大振幅の振動荷重が入力された場合に、比較例では、可動板92の当接によって、第2の取付部材14への大きな伝達荷重が確認されたのに対して、実施例では、可動板92の当接時において第2の取付部材14への伝達荷重が極めて効果的に低減されている。このように、車両ボデーに取り付けられる第2の取付部材14への伝達荷重が抑えられることから、可動板92の当接打音が乗室内に伝達されるのを防ぐことができる。なお、図中では示されていないが、防振性能については、実施例と比較例の間に大きな違いがないことを確認している。
図13には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第2の実施形態として、自動車用のエンジンマウント100が示されている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
すなわち、エンジンマウント100は、緩衝体としての緩衝ゴム102を備えている。緩衝ゴム102は、第1の実施形態の緩衝ゴム72と同様に、厚さ方向で相互に所定距離を隔てて対向する一対の対向板部74a,74bが、両端部において一対の側板部76a,76bで相互に接続された帯形筒状体とされている(図14参照)。
一対の対向板部74a,74bは、平面視で互いに対応する略長方形を呈しており、対向板部74aに一対の第1の窓部78,78が貫通形成されていると共に、対向板部74bに一対の第2の窓部80,80が貫通形成されている。また、第1の実施形態の一対の対向板部74a,74bに設けられていた突起部84と内方突部86、挿通孔82は、本実施形態の一対の対向板部74a,74bには設けられていない。なお、緩衝ゴム102に挿通孔82がないことから、下仕切部材40において挿通ピン58が省略されている。
かくの如き構造とされた緩衝ゴム102は、仕切部材36の収容空所64に収容配置されており、対向板部74aが収容空所64の上壁内面に当接していると共に、対向板部74bが収容空所64の下壁内面に当接している。なお、本実施形態の緩衝ゴム102も、第1の実施形態と同様に、長辺方向で収容空所64よりも僅かに小さくされており、一対の側板部76a,76bが収容空所64の周壁内面に対して隙間を隔てて離隔配置されている。また、一対の対向板部74a,74bは、略全体が収容空所64の上下壁内面に接触して非接着で重ね合わされている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント100においても、第1の実施形態のエンジンマウント10と同様に、可動板92が一対の対向板部74a,74bに当接することで生ずる衝撃エネルギーが、緩衝ゴム102の微小変形時の内部摩擦等に基づいたエネルギー減衰作用によって低減されて、打音の発生が防止される。
また、下仕切部材40において挿通ピン58が省略されていると共に、緩衝ゴム102において突起部84および内方突部86、挿通孔82が省略されていることから、構造の更なる簡略化が図られて、製造容易性や信頼性の向上等が実現され得る。
図15には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第3の実施形態として、自動車用のエンジンマウント110が示されている。エンジンマウント110は、緩衝体としての緩衝ゴム112を備えている。
より詳細には、緩衝ゴム112は、図16〜図18に示されているように、それぞれ平面視で略長方形を呈する一対の対向板部74a,74bが、上下に所定距離を隔てて対向配置されていると共に、それら一対の対向板部74a,74bが長辺方向の両端部において一対の側板部76a,76bで相互に接続された帯形筒状体とされている。
さらに、側板部76bには、上下方向の略中央に可動部材としての可動膜114が一体形成されている。この可動膜114は、板状のゴム弾性体であって、側板部76a側に向かって内部空所88内に突出しており、その突出先端が第1,第2の窓部78,80よりも側板部76a側まで延び出すと共に側板部76aまでは至らない長さで形成されている。なお、本実施形態における一対の対向板部74a,74bには、可動膜114をその突出先端側に外れた部分に1つの挿通孔82が形成されており、下仕切部材40には、挿通孔82に対応する位置に1つの挿通ピン58だけが形成されている。
そして、緩衝ゴム112は、仕切部材36の収容空所64に収容配置されており、図15に示されているように、対向板部74aが突起部84において収容空所64の上壁内面に当接していると共に、対向板部74bが突起部84において収容空所64の下壁内面に当接している。また、緩衝ゴム112に一体形成された可動膜114は、流体流路90の流路長方向(図15中の上下方向)に対して略直交して広がっており、その突出先端が軸方向の投影において第1の窓部78,78および第2の窓部80,80よりも外側(側板部76a側)まで至っている。
かくの如き緩衝ゴム112を備えたエンジンマウント110では、中周波小振幅振動の入力時に、オリフィス通路70が反共振によって実質的に閉鎖される一方、可動膜114が一対の対向板部74a,74bに押し付けられることなく上下に微小変形することで、受圧室66の液圧が平衡室68に伝達されて吸収される。これにより、受圧室66の高動ばね化が防止されて、低動ばね化による防振効果(振動絶縁効果)が発揮される。
一方、低周波大振幅振動の入力時には、可動膜114が一対の第1の窓部78,78又は第2の窓部80,80を覆うように上下方向で大きく弾性変形する。これにより、流体流路90を通じた受圧室66と平衡室68の間での液圧の伝達が防止されて、受圧室66の内圧変動が効率的に惹起される。これにより、オリフィス通路70を通じた流体流動量が効率的に確保されて、流体の流動作用に基づいた防振効果(高減衰効果)が有効に発揮される。
このような本実施形態のエンジンマウント110によれば、可動部材が緩衝ゴム112に一体形成された可動膜114とされていることから、部品点数が少なくなると共に、可動部材を緩衝ゴム112の内部空所88にセットする作業を省略することができて、製造が容易になる。しかも、可動膜114は、一方の側板部76bで支持されていると共に、他方の側板部76aからは離隔した片持ち梁状とされており、低周波大振幅振動の入力時に充分に変形して、第1の窓部78,78および第2の窓部80,80を安定して遮断し得るようになっている。
図19には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第4の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。なお、図中に示されていない部分については、原則として、第1の実施形態と同様の構造が採用される。
すなわち、図19に示された本実施形態の構造では、上仕切部材38に対して複数の第3の連通孔120が形成されている。この第3の連通孔120は、収容空所64の長辺方向で可動板92を外側に外れた部分に設けられており、収容空所64の上壁部である中央凹所42の底壁部を上下に貫通している。これにより、収容空所64は、第1の連通孔44だけでなく、第3の連通孔120によっても受圧室66に連通されている。
また、緩衝ゴム102には、複数の第3の窓部122が形成されている。第3の窓部122は、収容空所64の受圧室66側の壁内面に重ね合わされる対向板部74aに貫通形成されており、対向板部74aの長辺方向で一対の第1の窓部78,78よりも外側に設けられている。本実施形態では、第3の窓部122の数や断面形状が、第3の連通孔120の数や断面形状と略同一とされている。
この緩衝ゴム102が収容空所64に収容配置されることで、それら第3の連通孔120と第3の窓部122が相互に位置決めされて上下に連通されている。これにより、受圧室66と内部空所88を常時連通する複数の短絡孔124が、それら第3の連通孔120と第3の窓部122によって形成されている。
そして、エンジンマウントの車両装着状態で衝撃的な大荷重が入力されると、受圧室66に正圧が作用した場合には、図19(a)に示されているように、可動板92が対向板部74bに当接することで一対の第2の窓部80,80が遮断される。これにより、流体流路90が遮断されると共に、内部空所88が平衡室68に対して密閉されることから、短絡孔124が実質的に遮断される。
一方、衝撃的な大荷重の入力によって受圧室66に負圧が作用した場合には、図19(b)に示されているように、可動板92が対向板部74aに当接することで、一対の第1の窓部78,78が遮断される。これにより、流体流路90が遮断される一方、短絡孔124は、内部空所88と第2の窓部80,80と第2の連通孔60,60を通じて平衡室68に連通される。その結果、受圧室66と平衡室68を相互に連通する短絡通路126が短絡孔124を含んで構成されて、短絡通路126を通じて平衡室68から受圧室66に流体が流入することにより、受圧室66の負圧が可及的速やかに低減乃至は解消される。それ故、受圧室66の過大な圧力低下に起因するキャビテーション異音を、低減乃至は回避することができる。
図20,図21には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第5の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。なお、図20では、衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室66に負圧が及ぼされた状態が示されている。
すなわち、図20に示された本実施形態の構造では、上仕切部材38に対して複数の第3の連通孔127が形成されている。この第3の連通孔127は、上下軸方向視において収容空所64の長辺方向(図20中、左右方向)を長手とするスリット状の孔であって、収容空所64の上壁部である中央凹所42の底壁部を上下に貫通している。これにより、収容空所64は、第1の連通孔44だけでなく、第3の連通孔127によっても受圧室66に連通されている。なお、第3の連通孔127は、収容空所64の短辺方向(図21中、左右方向)の両端部分においてそれぞれ形成されている。
また、本実施形態では、図21に示されているように、緩衝ゴム102の短辺方向(図21中、左右方向)での寸法が、収容空所64の同方向での内法寸法よりも小さくされており、緩衝ゴム102の短辺方向の両端面が収容空所64の周壁内面に対して所定の隙間をもって離隔している。そして、短辺方向両側に開口した緩衝ゴム102の内部空所88が、該隙間に連通されている。
さらに、第3の連通孔127が緩衝ゴム102を短辺方向で外れた両側に形成されており、第3の連通孔127の下側開口部が上記隙間に連通されている。これにより、受圧室66と内部空所88とを相互に連通する短絡孔128が、第3の連通孔127と隙間とを利用して常時連通状態で形成されている。
更にまた、受圧室66の圧力が低下して、可動板92が対向板部74bから離隔した状態では、受圧室66と平衡室68が、短絡孔128と、内部空所88と、第2の窓部80と、第2の連通孔60とを通じて、相互に連通される。これにより、受圧室66に負圧が作用することで、受圧室66と平衡室68を相互に連通する短絡通路129が短絡孔128を含んで形成される。
このような構造とされた本実施形態のエンジンマウントにおいても、第4の実施形態に示されたエンジンマウントと同様に、通常の振動入力時に有効な防振効果を得ることができると共に、受圧室66に過大な負圧が作用した場合に問題となるキャビテーション異音が、短絡通路129を通じた流体流動によって低減される。
図22には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第6の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。なお、図22では、衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室66に負圧が及ぼされた状態が示されている。
すなわち、本実施形態のエンジンマウントでは、上仕切部材38に複数の第3の連通孔130が形成されている。第3の連通孔130は、一対の第1の連通孔44,44に対してそれらの短辺方向外側に設けられており、収容空所64の上壁部(中央凹所42の底壁部)を上下に貫通して形成されている。これにより、収容空所64は、第1の連通孔44だけでなく、第3の連通孔130を通じて受圧室66に連通されている。
また、緩衝ゴム72においては、受圧室66側の対向板部74aに形成された挿通孔82aの孔断面積が、挿通ピン58の軸直断面積よりも大きくされており、挿通孔82aの内周面と挿通ピン58の外周面との間に隙間132が形成されている。本実施形態では、挿通孔82aが、第1の位置決め手段を構成する係止孔と、短絡孔を構成する第3の窓部とを兼ねている。
なお、この隙間132は、挿通孔82aの直径が挿通ピン58の直径よりも大きくされることで形成されていても良いが、位置決め作用を有効に得るためには、例えば、挿通孔82aが周上で部分的に拡大された異形断面で形成されて、拡径部分において隙間132が形成されるようになっていることが望ましい。また、平衡室68側の対向板部74bに形成された挿通孔82bの形状は、第1の実施形態と同様に、挿通ピン58の断面形状に略対応している。
そして、緩衝ゴム72が収容空所64に配設されることで形成される隙間132は、上仕切部材38に形成された第3の連通孔130と位置決めされて上下に連通されており、可動板92を外側に外れた位置において、受圧室66と内部空所88を常時連通状態に保持する短絡孔134が形成されている。
このような構造を有するエンジンマウントによれば、衝撃的な大荷重の入力によって受圧室66の圧力が低下すると、可動板92が対向板部74aに当接して第1の窓部78,78を覆蓋することから、流体流路90が遮断される。一方、内部空所88は、第2の窓部80,80および第2の連通孔60,60を通じて平衡室68に連通されていると共に、隙間132および第3の連通孔130を通じて受圧室66に連通されており、受圧室66と平衡室68を相互に連通する短絡通路136が、短絡孔134を利用して形成されている。これにより、受圧室66の圧力低下が平衡室68からの流体の流入によって緩和されて、キャビテーションによる異音の発生が防止される。
なお、衝撃的な大荷重の入力によって受圧室66に正圧が及ぼされると、可動板92が対向板部74bに当接して第2の窓部80,80を覆蓋することで、流体流路90が遮断されると共に、短絡通路136が遮断される。これにより、受圧室66の内圧変動が効率的に惹起されることから、オリフィス通路70において流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮されて、目的とする防振効果(高減衰効果)を得ることができる。
図23には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第7の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。エンジンマウントは、仕切部材36の収容空所64に緩衝体としての緩衝ゴム140が配設された構造を有している。この緩衝ゴム140は、軸方向上下に対向する一対の対向板部74a,74bが一対の側板部142a,142bによって相互に連結された帯形筒状体とされている。
より詳細には、対向板部74aは、図24に示されているように、薄肉の略矩形平板形状とされており、厚さ方向に貫通する3つの第1の窓部144a〜144cを有している。第1の窓部144a,144bは、それぞれ矩形断面を有する孔であって、対向板部74aの短辺方向(図24中、上下)に所定の距離を隔てて形成されており、それら第1の窓部144a,144bの間に桟状部146が設けられている。第1の窓部144cは、第1の窓部144a,144bよりも短手方向の寸法が大きくされており、それら第1の窓部144a,144bに対して長手方向(図24中、左右)に所定距離を隔てて形成されている。
さらに、対向板部74aの桟状部146には、緩衝突起としての内方突部148が一体形成されている。内方突部148は、対向板部74aと可動膜114の対向面間(内部空所88)に突出する突起であって、より具体的には、対向板部74aの下面から可動膜114側に向かって突出して、可動膜114に対して上方に所定の距離を隔てて配置されている。
更にまた、対向板部74aの桟状部146には、位置決め部としての外方突部150が一体形成されている。外方突部150は、内方突部148と略同形状の円形突起状であって、対向板部74aの上面から可動膜114および対向板部74bとは反対側(上側)に向かって突出している。なお、本実施形態では、内方突部148と外方突部150が対向板部74aの同じ位置において上下各一方の側に突出している。
対向板部74bは、第1の窓部144a〜144cと同形状の第2の窓部152a〜152cが形成されているが、形状は対向板部74aと同一であることから、ここでは説明を省略する。なお、対向板部74bの内方突部148は、対向板部74bの上面から可動膜114側に向かって突出して、可動膜114に対して下方に所定の距離を隔てて配置されている。また、対向板部74bの外方突部150は、対向板部74bの下面から対向板部74aとは反対側(下側)に向かって突出している。
側板部142a,142bは、対向板部74aと対向板部74bの長手方向の端部を相互に連結するように、対向板部74a,74bと一体で形成されている。また、本実施形態の側板部142a,142bは、長手方向で外方に向かって凸となる湾曲形状を有しており、縦断面において円弧状を呈している。なお、側板部142bの上下中央部分には可動膜114が一体形成されて側板部142a側に向かって突出している。
そして、緩衝ゴム140は、図23に示されているように、収容空所64に配設されており、対向板部74aが収容空所64の受圧室66側の壁内面に当接状態で重ね合わされていると共に、対向板部74bが収容空所64の平衡室68側の壁内面に当接状態で重ね合わされている。かかる緩衝ゴム140の配設状態において、第1の窓部144a〜144cが第1の連通孔44,44を通じて受圧室66に開放されていると共に、第2の窓部152a〜152cが第2の連通孔60,60を通じて平衡室68に開放されている。
また、対向板部74aの桟状部146が第1の連通孔44の開口部上に位置しており、内方突部148の形成部分が収容空所64の壁部を外れて第1の連通孔44上に配置されている。更に、対向板部74bの桟状部146が第2の連通孔60の開口部上に位置しており、内方突部148の形成部分が収容空所64の平衡室68側の壁部を外れて第2の連通孔60上に配置されている。これにより、対向板部74aにおける内方突部148の形成部分が、厚さ方向で第1の連通孔44内への弾性変形を許容されていると共に、対向板部74bにおける内方突部148の形成部分が、厚さ方向で第2の連通孔60内への弾性変形を許容されている。このことからも明らかなように、本実施形態では、変形許容領域が第1,第2の連通孔44,60によって構成されている。
さらに、対向板部74aの外方突部150が第1の連通孔44内に突出していると共に、対向板部74bの外方突部150が第2の連通孔60内に突出している。そして、緩衝ゴム140の収容空所64に対する配設後に、外方突部150,150の位置を目視等で確認することによって、内方突部148,148が連通孔44,60上に配置されていることを確認することができる。これにより、緩衝ゴム140を仕切部材36に対して所定の位置に位置決めする第2の位置決め手段が構成されている。また、このことからも明らかなように、本実施形態の位置決め孔は、収容空所64の受圧室66側の壁部と平衡室68側の壁部に貫通形成された第1,第2の連通孔44,60を利用して構成されている。なお、本実施形態では、第1の位置決め手段と第2の位置決め手段が何れも設けられているが、何れか一方だけが設けられていても良い。
このような緩衝ゴム140を備えたエンジンマウントでは、エンジンシェイク等の大振幅振動の入力時に、可動膜114が弾性変形して対向板部74aまたは対向板部74bに当接する際に、可動膜114が内方突部148に初めに当接する。これにより、可動膜114の対向板部74a,74bに対する初期の当接面積を小さくすることができて、当接時の衝撃力に起因する打音を抑えることができる。
さらに、内方突部148が第1の連通孔44の開口部上に位置していることから、可動膜114の弾性変形量が大きくなるに従って、対向板部74aが第1の連通孔44内に押し込まれるように弾性変形する。これにより、可動膜114が対向板部74aに対して内方突部148を外れた部分で急激に打ち当たるのが防止されて、当接面積が内方突部148への当接部分を中心として徐々に増すことから、衝撃力が緩和されることによる打音の低減作用が効果的に発揮される。
図25には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第8の実施形態としてのエンジンマウント160が示されている。エンジンマウント160は、仕切部材162を有している。
仕切部材162は、上仕切部材164と下仕切部材166を備えている。上仕切部材164は、第1の実施形態の上仕切部材38に比して内周部分(中央凹所42の底壁部)が厚肉とされた略円板形状を有している。また、上仕切部材164の径方向中央部分には、上収容凹所168が形成されている。上収容凹所168は、左右方向中央に向かって次第に深さ寸法が大きくなる湾曲底面を備えて、前後方向(図25における紙面直交方向)に略一定の弓形断面で延びる凹所であって、上仕切部材164の下方に開口している。なお、分かり易さのために、図25中の紙面直交方向を前後方向、図25中の左右方向を左右方向とそれぞれ称しているが、それらの方向は、エンジンマウント160の車両装着状態における車両前後方向および車両左右方向とは必ずしも一致しない。
さらに、上仕切部材164には、複数の第1の連通孔170が形成されている。第1の連通孔170は、略一定の矩形断面で上収容凹所168の上底壁部を上下に貫通して形成されており、複数の第1の連通孔170が網目状に配置されている。なお、第1の連通孔170の数は特に限定されるものではないが、本実施形態では、前後左右で相互に所定距離を隔てて9つの第1の連通孔170が形成されている。
下仕切部材166は、第1の実施形態の下仕切部材40と同様に厚肉の略円板形状を有すると共に、径方向中央部分には下収容凹所172が形成されている。下収容凹所172は、上収容凹所168に対して上下反転した形状を有しており、下仕切部材166の上方に開口している。更に、下仕切部材166における下収容凹所172の底壁部分には、複数の第2の連通孔174が形成されている。この第2の連通孔174は、第1の連通孔170と略同一の断面形状で下収容凹所172の底壁部を上下に貫通して形成されており、複数が網目状に配置されている。なお、本実施形態では、第1の連通孔170と対応する位置に第1の連通孔170と同数の第2の連通孔174が形成されている。
そして、上仕切部材164と下仕切部材166は、上下に重ね合わされている。これにより、上仕切部材164と下仕切部材166の間には上下の収容凹所168,172を利用して収容空所176が形成されている。
また、収容空所176には、緩衝体としての緩衝ゴム178が収容配置されている。緩衝ゴム178は、一対の対向板部180a,180bを有している。対向板部180aは、上方に凸の弓形断面で前後方向に延びる湾曲板形状であって複数の第1の窓部182が軸方向上下に貫通して形成されている。対向板部180bは、下方に凸の弓形断面で前後方向に延びる湾曲板形状であって複数の第2の窓部184が軸方向上下に貫通して形成されている。そして、対向板部180aと対向板部180bが左右方向の両端部において一体とされており、もって、帯形筒状の緩衝ゴム178が構成されている。なお、一対の対向板部180a,180bの間には、前後方向全長に亘って延びる内部空所88が形成されている。この内部空所88は、左右方向中央側に行くに従って次第に上下寸法が大きくなっている。
この緩衝ゴム178は、収容空所176に配設されている。そして、緩衝ゴム178の対向板部180aが収容空所176の受圧室66側の壁内面(上収容凹所168の上底壁面)に当接状態で重ね合わされていると共に、対向板部180bが収容空所176の平衡室68側の壁内面(下収容凹所172の底壁面)に当接状態で重ね合わされている。また、第1の窓部182が第1の連通孔170の下側開口部に対して位置決めされて、第1の窓部182が第1の連通孔170を通じて受圧室66に開放されていると共に、第2の窓部184が第2の連通孔174の上側開口部に対して位置決めされて、第2の窓部184が第2の連通孔174を通じて平衡室68に開放されている。そして、緩衝ゴム178の内部空所88に収容された可動板92には、上面に対して第1の連通孔170および第1の窓部182を通じて受圧室66の液圧が及ぼされていると共に、下面に対して第2の連通孔174および第2の窓部184を通じて平衡室68の液圧が及ぼされている。
このような構造とされたエンジンマウント160においても、第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。即ち、可動板92の当接時に緩衝ゴム178が弾性変形することで、内部摩擦等に基づいたエネルギー減衰作用によって当接時の衝撃エネルギーが低減されて、打音の発生が防止される。
本実施形態のエンジンマウント160からも明らかなように、緩衝体は、必ずしも一対の対向板部と一対の側板部とを備えた構造に限定されるものではなく、一対の対向板部180a,180bのみからなる緩衝ゴム178の如き構造も採用され得る。
図26には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第9の実施形態としてのエンジンマウント190が示されている。エンジンマウント190は、第8の実施形態に示されたエンジンマウント160と略同じ構造を有していると共に、緩衝ゴム178の内部空所88に可動部材としての可動板192が配設されている。
可動板192は、略平板形状のゴム弾性体で形成されており、軸直中央部分に一対の緩衝突起194,194が設けられている。緩衝突起194は、軸方向視において、仕切部材162に形成された第1, 第2の連通孔170,174よりも小さな矩形を呈しており、可動板192と一体形成されて可動板192の厚さ方向両側に突出している。なお、緩衝突起194の軸方向視での形状は、矩形に限定されるものではなく、例えば円形や異形等であっても良い。
かくの如き構造とされた可動板192は、緩衝ゴム178の内部空所88に収容配置されている。かかる可動板192の配設状態において、上側の緩衝突起194が中央の第1の連通孔170の開口部上に位置決めされていると共に、下側の緩衝突起194が中央の第2の連通孔174の開口部上に位置決めされている。そして、後述する緩衝突起194の緩衝ゴム178への当接時に、緩衝ゴム178の第1,第2の連通孔170,174内への弾性変形が許容されている。このように、本実施形態では、変形許容領域が第1,第2の連通孔170,174によって構成されている。
そして、エンジンシェイク等の大振幅振動の入力時に、本実施形態の可動板192は、先ず左右(図26中、左右)の両端部が緩衝ゴム178に当接する。次に、可動板192は、当接した左右両端を支点として厚さ方向に湾曲して、緩衝突起194を備えた中央部分が緩衝ゴム178に当接する。このように、左右両端角部の当接によって初期の当接面積が小さくされていると共に、次に緩衝突起194が当接することで可動板192の変形による当接面積の増大が段階的に生じて、打ち当たりによる当接面積の急激な増大等に起因した打音の発生が回避される。
しかも、可動板192における緩衝突起194,194の形成部分が第1, 第2の連通孔170,174の開口部上に配置されており、緩衝ゴム178(対向板部180a,180b)が緩衝突起194,194の当接時に第1, 第2の連通孔170,174内への変形を許容されている。これにより、緩衝突起194が緩衝ゴム178に当接する際の衝撃力がより効果的に低減されて、衝撃力に起因する打音がより有利に低減される。
図27には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第10の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。エンジンマウントは、仕切部材36の収容空所64に緩衝体としての緩衝ゴム200が配設された構造を有している。この緩衝ゴム200は、軸方向上下に対向する一対の対向板部74a,74bが一対の側板部142a,142bによって相互に連結された帯形筒状体とされている。
また、対向板部74a,74bには、それぞれ内方突部148が形成されている。内方突部148は、対向板部74a,74bの各桟状部146に一体形成されて、それら対向板部74a,74bの対向方向内側に向かって突出している。本実施形態では、対向板部74aに形成された内方突部148と対向板部74bに形成された内方突部148とが左右方向(図27中、左右)で互いにずれた位置に形成されており、上下方向の投影において互いに外れた位置で重なり合うことなく設けられている。
さらに、対向板部74a,74bには、それぞれ位置決め部としての外方突部150が形成されている。外方突部150は、対向板部74a,74bの各桟状部146に一体形成されて、それら対向板部74a,74bの対向方向外側に向かって突出している。本実施形態では、対向板部74aに形成された外方突部150と対向板部74bに形成された外方突部150とが左右方向で互いにずれた位置に形成されており、上下方向の投影において互いに外れた位置で重なり合うことなく設けられている。また、本実施形態では、対向板部74aに形成された内方突部148と外方突部150が左右方向で互いにずれた位置に設けられていると共に、上下方向の投影において部分的に重なり合っている。同様に、対向板部74bに形成された内方突部148と外方突部150が左右方向で互いにずれた位置に設けられていると共に、上下方向の投影において部分的に重なり合っている。
更にまた、対向板部74a,74bには、それぞれ突起部84が形成されている。突起部84は、対向板部74a,74bと一体で形成されて、外方突部150よりも小さな突出高さと横断面積を有していると共に、対向板部74a,74bの面方向中央部分において厚さ方向外側に突出している。
それら一対の対向板部74a,74bは、一対の側板部142a,142bによって長手方向である左右(図27中、左右)の両端部が相互に連結されている。なお、一対の側板部142a,142bは、一対の対向板部74a,74bと一体形成されている。
また、側板部142bには、可動部材としての可動膜204が一体形成されている。可動膜204は、一対の対向板部74a,74bの対向方向に対して略直交して広がる板状とされており、側板部142bから側板部142aに向かって突出して、側板部142aまでは至らない大きさで形成されている。更に、可動膜204は、基端部分(側板部142b側部分)が比較的に薄肉板状の変形部206とされていると共に、先端部分(側板部142a側部分)が変形部206に比して厚肉の平板形状を呈する弁体部208とされている。なお、弁体部208は、厚肉とされることによって変形部206に比して剛性が高められており、後述する受圧室66と平衡室68の液圧差の作用によって変形部206の弾性変形が優先的に生じるようになっている。また、弁体部208は、対向板部74a,74bの対向面間に配置されて、それら対向板部74a,74bの何れに対しても所定の距離を隔てていると共に、内方突部148の形成部分において部分的に離隔距離が小さくなっている。
このような構造とされた可動膜204を一体で備えた緩衝ゴム200は、仕切部材36の収容空所64に配設されている。また、緩衝ゴム200の収容空所64への配設状態において、対向板部74aにおける内方突部148および外方突部150の形成部分が第1の連通孔44の開口部に対して位置決めされていると共に、対向板部74bにおける内方突部148および外方突部150の形成部分が第2の連通孔60の開口部に対して位置決めされている。なお、外方突部150が第1,第2の連通孔44,60内に突出していることを目視等によって確認することで、内方突部148の位置を把握して、内方突部148を第1,第2の連通孔44,60に対して位置決めすることができる。
さらに、緩衝ゴム200の収容空所64への配設によって、対向板部74aの突起部84が収容空所64の受圧室66側の壁内面に押し当てられていると共に、対向板部74bの突起部84が収容空所64の平衡室68側の壁内面に押し当てられている。これにより、対向板部74a,74bにおける突起部84の形成部分は、それら対向板部74a,74bの対向方向内側に向かって凸となるように湾曲しており、内部空所88に突出している。
そして、エンジンシェイク等の大振幅振動が入力されると、可動膜204に対して受圧室66と平衡室68の液圧差に基づく力が及ぼされて、可動膜204が対向板部74a,74bの何れかに押し当てられる。その際に、本実施形態の可動膜204では、基端部分が先端部分よりも薄肉の変形部206とされていることから、比較的に厚肉で剛性の高い弁体部208の上下変位が変形部206の弾性変形によって充分に許容されて、変形し難い弁体部208によって第1,第2の窓部144,152の何れかが安定して遮断される。
また、弁体部208が上下に変位して対向板部74a,74bに当接する際に、弁体部208と対向板部74a,74bとの初期の当接面積が小さくされていると共に、当接面積が段階的に増大するようにされている。
すなわち、弁体部208が上下に変位すると、先ず、弁体部208が内方突部148に当接する。これにより、初期の当接面積が小さくされて、衝撃力が低減されることにより、当接初期段階での打音の発生が防止される。しかも、対向板部74a,74bにおける内方突部148の形成部分は、第1,第2の連通孔44,60と位置決めされていることから、内方突部148に弁体部208が当接する際に対向板部74a,74bの変形による逃げが許容されており、当接時の衝撃力がより効果的に低減されている。
次に、弁体部208が上下方向で更に変位すると、弁体部208が対向板部74a,74bにおける突起部84の形成部分に当接する。これにより、弁体部208の当接面積の急激な増大が回避されており、段階的に当接面積が増すことによる緩衝作用に基づいて、打音の発生が防止されている。なお、突起部84は、収容空所64の壁内面に当接されているが、内方突部148に比して小さくされていることから、弁体部208による第1,第2の窓部144,152の遮断が突起部84によって妨げられることはない。
図28には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第11の実施形態としてのエンジンマウントが、要部を拡大して示されている。エンジンマウントは、仕切部材36の収容空所64に緩衝体としての緩衝ゴム210が配設された構造を有している。この緩衝ゴム210は、可動膜212を一体で備えている。
可動膜212は、側板部142bから側板部142a側に向かって突出するように形成されており、第9の実施形態の可動膜204と同様に、基端部分を構成する薄肉の変形部206と、先端部分を構成する厚肉の弁体部208とが、ゴム弾性体によって一体形成されている。
さらに、可動膜212の弁体部208には、補強部材214が固着されている。補強部材214は、薄肉の略矩形板形状を有しており、鉄やアルミニウム合金等の金属や、アクリル樹脂等の硬質の合成樹脂によって形成されている。そして、補強部材214は、弁体部208の厚さ方向中央部分に埋設状態で固着されており、もって、弁体部208の剛性の向上が実現されている。なお、補強部材214は、左右方向で第1,第2の連通孔44,60および第1,第2の窓部144,152よりも外側まで至る大きさとされており、弁体部208の上下変位によって補強部材214の固着部分がそれら第1,第2の連通孔44,60および第1,第2の窓部144,152を覆蓋するようになっている。
このように、可動膜は、必ずしも全体が弾性体で形成されたものに限定されず、先端部分が部分的に剛体(硬質体)によって形成されていても良い。また、本実施形態では、剛体である補強部材214が弾性体である弁体部208に埋設固着されており、補強部材214の表面がゴム弾性体で覆われていたが、例えば、可動膜が補強部材214とそれを支持する変形部206だけで構成されていても良い。
図29には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第12の実施形態として、自動車用のエンジンマウント220が示されている。エンジンマウント220は、仕切部材36の収容空所64に緩衝体としての緩衝ゴム222が配設された構造を有している。
緩衝ゴム222は、第1の実施形態の緩衝ゴム72において突起部84および内方突部86、挿通孔82が省略された構造とされており、図30に示されているように、一対の対向板部74a,74bと一対の側板部76a,76bとを一体で備えた帯形筒状体とされている。
また、緩衝ゴム222では、対向板部74aに緩衝突起としての上側の内方突部224が形成されていると共に、対向板部74bに緩衝突起としての下側の内方突部224が形成されている。内方突部224は、図31に示されているように、略矩形環状に延びる突条であって、一対の対向板部74a,74bの各対向内面に形成されて内部空所88に突出していると共に、第1, 第2の窓部78,80の内部空所88側の開口を取り囲むように配置されている。更に、本実施形態の内方突部224は、何れも略半円形の断面形状を有しており、突出先端に向かって次第に狭幅となっている。
このような構造とされた緩衝ゴム222は、図29に示されているように、仕切部材36の収容空所64に配設されており、対向板部74a,74bが収容空所64の上下壁内面に当接状態で重ね合わされていると共に、側板部76a,76bが収容空所64の周壁内面に対して隙間をもって配置されている。また、緩衝ゴム222の内部空所88には可動板92が収容されており、可動板92の外周端部が内方突部224よりも外周側にまで達している。
そして、低周波大振幅振動の入力によって、可動板92が厚さ方向上下に大きく変位して対向板部74a,74bの何れかに当接する際に、内方突部224による緩衝作用によって打音が低減される。しかも、上下の内方突部224,224が第1, 第2の窓部78,80の各一方の周囲を取り囲むように延びる環状の突条とされていることにより、可動板92が全周に亘って連続的に当接されて、第1, 第2の窓部78,80が可動板92によって遮断される。このように、本実施形態の構造によれば、打音の低減効果と、流体流路90の遮断状態への切替えとが、両立して何れも効果的に実現される。
なお、可動板における第1, 第2の窓部78,80の周囲に当接する部分に環状の緩衝突起を形成して、可動板の大変位時には緩衝突起が対向板部74a,74bに対して第1, 第2の窓部78,80の周囲を取り囲むように当接することで、第1, 第2の窓部78,80が遮断されるようにしても良い。要するに、突起部は、可動部材と緩衝ゴムとの対向面間に設けられていれば良く、可動部材と緩衝ゴムの何れの側に設けられていても良い。
図32には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第13の実施形態として、自動車用のエンジンマウント230が示されている。エンジンマウント230は、仕切部材231の収容空所64に緩衝ゴム72が配設された構造を有している。
仕切部材231は、上仕切部材232と下仕切部材234で構成されており、上仕切部材232は、第1の実施形態の上仕切部材38に対して、第1の連通孔44の周囲を取り囲むように凹凸部としての上側の凸部236が設けられた構造を有している。一方、下仕切部材234は、第1の実施形態の下仕切部材40に対して、第2の連通孔60の周囲を取り囲むように配置された凹凸部としての下側の凸部236が、収容凹所56の底壁部に突出形成された構造を有している。
凸部236は、図33,図34に示されているように、軸方向視で略矩形環状を呈する突条であって、上下の仕切部材232,234における収容空所64の上下壁内面を構成する部分にそれぞれ形成されて、上下に対向して配置されている。また、環状とされた上下の凸部236,236は、第1の連通孔44,44と第2の連通孔60,60の各一方を取り囲むように設けられている。
このような構造とされた上仕切部材232と下仕切部材234が上下に重ね合わされて、相互に固定されることにより、仕切部材231が形成されている。更に、仕切部材231の収容空所64には、図32に示されているように、緩衝ゴム72が配設されている。そこにおいて、緩衝ゴム72は、対向板部74a,74bにおける第1, 第2の窓部78,80の開口周縁部が、上下の凸部236,236の各一方に当接されており、対向板部74a,74bが長手方向の中間部分で対向方向内方に突出している。更に、対向板部74a,74bは、上下の凸部236,236との当接部分よりも内方において、収容空所64の上下壁内面に対して隙間を隔てて重ね合わされており、それら対向板部74a,74bと収容空所64の上下の壁内面との当接面積が、凸部236,236の形成によって小さくされている。
そして、低周波大振幅振動の入力時には、可動板92と収容空所64の壁内面との緩衝ゴム72を介した初期の当接面積が、凸部236,236の形成によって小さくされることから、当接時の打音が低減される。しかも、凸部236は、硬質の仕切部材231に一体で形成されていることから、形状のばらつきが抑えられて、優れた寸法精度で形成することができる。
図35には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第14の実施形態として、自動車用のエンジンマウント240が示されている。エンジンマウント240は、仕切部材242の収容空所64に緩衝ゴム140が配設された構造を有している。
仕切部材242は、上仕切部材246と下仕切部材248を含んで構成されており、上仕切部材246は、第1の実施形態の上仕切部材38に対して、第1の連通孔44の短辺方向の内外両側に凹凸部としての上側の凹部250を備えている。一方、下仕切部材248は、第1の実施形態の下仕切部材40に対して、第2の連通孔60の短辺方向の内外両側に凹凸部としての下側の凹部250を備えている。
上側の凹部250は、図36に示されているように、短辺方向で隣り合って形成された一対の第1の連通孔44,44に対して、短辺方向外側と内側にそれぞれ形成された平底段差状の凹所によって構成されている。更に、一対の第1の連通孔44,44の間には、下方に向かって突出する上側の突出部254が設けられており、凹部250における一対の第1の連通孔44,44の間に位置する部分が、突出部254によって二分されている。
一方、下側の凹部250は、図37に示されているように、上側の凹部250と略同一の形状とされており、一対の第2の連通孔60,60の短辺方向外側と内側に形成された凹所で構成されて、収容凹所56の底面に開口している。更に、一対の第2の連通孔60,60の間には、上方に向かって突出する下側の突出部254が設けられており、下側の凹部250における一対の第2の連通孔60,60の間に位置する部分が、突出部254によって二分されている。
このような構造とされた上仕切部材246と下仕切部材248が、上下に重ね合わされて相互に固定されることにより、仕切部材242が構成されている。また、仕切部材242の収容空所64には、緩衝ゴム140が配設されており、緩衝ゴム140における第1, 第2の窓部78,80の開口周縁部が上下の凹部250,250に重ね合わされている。これにより、緩衝ゴム140は、第1, 第2の窓部78,80の開口周縁部において部分的に収容空所64の上下壁内面から離隔して配置されており、収容空所64の上下の壁内面に対する当接面積が小さくされている。
そして、低周波大振幅振動の入力によって可動膜114が緩衝ゴム140を介して仕切部材242に当接する際に、緩衝ゴム140と仕切部材242との当接面積が、凹部250の形成によって小さくされていることから、対向板部74a,74bと収容空所64の壁内面の当接による打音が低減される。特に本実施形態では、対向板部74a,74bの中央部分が突出部254に予め当接されており、変形による打ち当たりが問題になり得る対向板部74a,74bの中央部分において変形が制限されて、打音の発生がより効果的に防止されている。
なお、本実施形態では、可動膜114が対向板部74a,74bよりも薄肉とされており、可動膜114が軽量とされることで、当接時の衝撃が低減されて、打音がより有利に防止されるようになっている。尤も、図38に示されているように、可動膜114を対向板部74a,74bよりも厚肉とすれば、可動膜114の弾性変形が抑えられることから、低周波大振幅振動の入力時に液圧の逃げが低減されて、オリフィス通路70による防振効果を有利に得ることができる。
このように、緩衝体と仕切部材との当接による打音を低減するためには、可動部材の打ち当たり方向において緩衝体と仕切部材との当接面積を小さくすることが有効であるが、緩衝体と仕切部材との当接面積を小さくする手段としては、第13,第14の実施形態に示されているような仕切部材側への凹凸部の形成に限定されるものではない。
具体的には、例えば、図39,図40に示された緩衝体としての緩衝ゴム260のように、対向板部74aに上側の突起部262を形成すると共に、対向板部74bに下側の突起部262を形成することによっても、緩衝体と仕切部材との当接面積を小さくすることができる。
より詳細には、突起部262は、略矩形環状に連続して延びる突条であって、一対の対向板部74a,74bの各対向外面に突出形成されて、第1, 第2の窓部78,80の第1, 第2の連通孔44,66への接続側開口を取り囲むように配置されている。更に、本実施形態の突起部262は、略半円形の断面形状を有しており、突出先端に向かって次第に狭幅となっている。
このような構造とされた緩衝ゴム260は、仕切部材36の収容空所64に配設されており、対向板部74a,74bが収容空所64の上下壁内面に重ね合わされている。そこにおいて、上下の突起部262,262が収容空所64の上下の壁内面における第1, 第2の連通孔44,60の開口周縁部に押し当てられており、第1, 第2の連通孔44,60と第1, 第2の窓部78,80が、軸方向で離隔配置されつつ、上下の突起部262,262の内周側で相互に連通されている。なお、対向板部74a,74bにおける上下の突起部262,262を外れた部分は、収容空所64の壁内面に対して隙間をもって対向している。
これによれば、緩衝ゴム260が変形乃至は変位によって仕切部材36における収容空所64の上下の壁内面に打ち当てられても、緩衝ゴム260と仕切部材36との初期の当接面積が突起部262によって小さくされることから、打音が低減される。しかも、緩衝ゴム260の配設状態において、突起部262が環状とされて、仕切部材36に対して全周に亘って連続的に当接していることから、突起部262,262の形成によって第1, 第2の連通孔44,60と第1, 第2の窓部78,80の接続部分でのリークが増加するのも防止されて、流体流路90を通じた流体流動が有効に惹起される。
図41には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第15の実施形態として、自動車用のエンジンマウント270が示されている。エンジンマウント270は、仕切部材272の収容空所64に緩衝体としての緩衝ゴム274が配設された構造を有している。
仕切部材272は、上仕切部材38と下仕切部材276を含んで構成されている。下仕切部材276は、収容凹所56を備えており、収容凹所56には、図42,図43に示されているように、係止突起としての第1の挿通ピン278と、第1の挿通ピン278の両側に配置された係止突起としての第2の挿通ピン280,280と、それら挿通ピン278,280,280に隣接して配置された係止突起としての支持突片282とが、何れも底壁部から上方に突出して設けられている。第1の挿通ピン278は、略円柱形状とされて、収容凹所56の長辺方向一方の端部付近において短辺方向の略中央に突設されている。第2の挿通ピン280は、第1の挿通ピン278よりも小径且つ短小の略円柱形状を有しており、第1の挿通ピン278に対して収容凹所56の長辺方向両側にそれぞれ所定の距離だけ離隔して設けられている。支持突片282は、略矩形平板形状とされており、第1, 第2の挿通ピン278,280,280に対して収容凹所56の長辺方向外側に配置されている。
このような構造とされた上仕切部材38と下仕切部材276が上下に重ね合わされて相互に固定されることにより、収容空所64を備えた仕切部材272が構成されている。また、収容空所64には、緩衝ゴム274が配設されている。この緩衝ゴム274は、図44〜図46に示されているように、全体として中空形状の帯形筒状体とされていると共に、側板部76aの対向板部74bへの接続部分が切り離されて、分断部284が形成されている。また、対向板部74aには、厚さ方向に貫通する円形の係止孔としての第1の挿通孔286が形成されている一方、対向板部74bには、第1の挿通孔286に加えて、短辺方向両側に小径の係止孔としての第2の挿通孔288が形成されていると共に、長辺方向外側には細長矩形の係止孔としての第3の挿通孔290が形成されている。要するに、第1の挿通孔286が対向板部74aと対向板部74bにそれぞれ形成されていると共に、第2の挿通孔288,288と第3の挿通孔290が対向板部74bだけに形成されている。更に、側板部76aの下端部には、短辺方向の中央部分において下端および内部空所88側に開口する掛止凹部292が形成されている。
そして、緩衝ゴム274は、図47,図48に示されているように、仕切部材272の収容空所64に配設されている。そこにおいて、緩衝ゴム274は、対向板部74a,74bに形成された第1の挿通孔286に対して第1の挿通ピン278が挿通されていると共に、対向板部74bに形成された第2の挿通孔288,288に対して第2の挿通ピン280,280が挿通されている。更に、対向板部74bに形成された第3の挿通孔290には、支持突片282が挿通されており、支持突片282の突出先端部分が側板部76bの掛止凹部292に嵌め込まれている。それらによって、緩衝ゴム274が仕切部材272に対して位置決めされていると共に、緩衝ゴム274の対向板部74aおよび側板部76aが支持突片282で支持されて、対向板部74aが収容空所64の受圧室66側の壁内面に当接されている。
しかも、第2,第3の挿通孔288,288,290が対向板部74bだけに形成されていることから、緩衝ゴム274を収容空所64に対して上下逆向きに取り付けてしまうことがなく、緩衝ゴム274を収容空所64に対して正しい向きで容易に配設することが可能となっている。なお、本実施形態では、第1の挿通ピン278と第1の挿通孔286、第2の挿通ピン280と第2の挿通孔288、支持突片282と第3の挿通孔290の3組によって、第1の位置決め手段が構成されており、特に第2の挿通ピン280と第2の挿通孔288および支持突片282と第3の挿通孔290によって、緩衝ゴム274の収容空所64内での上下が特定されるようになっている。
このように、緩衝体は、収容空所への配設状態で全体として中空形状とされていれば、途中で分断されていても良く、本実施形態の緩衝ゴム274のように、帯形筒状体が周上の一部で分断されて、かかる分断部284に隙間が形成されていても良い。
なお、第1の位置決め手段は、第1の挿通ピン278と第1の挿通孔286、第2の挿通ピン280,280と第2の挿通孔288,288、支持突片282と第3の挿通孔290を必須とするものではなく、それらのうちの1つ或いは複数が採用されても良いし、別の位置決め手段を設けても良い。また、緩衝ゴム274の上下を特定するための手段としては、第2の挿通ピン280,280の第2の挿通孔288,288への挿通と、支持突片282の第3の挿通孔290への挿通との何れか一方のみを採用しても良いし、それらに代えて或いは加えてまた別の上下特定手段を設けても良い。
なお、図49〜図51に示された緩衝ゴム300のように、対向板部74a,74bの四隅に上下の突起部302,302を形成しても良い。それら突起部302の具体的な形状は、特に限定されないが、例えば、小径の略円形断面で突出すると共に、突出先端に向かって次第に小径となる形状等が、好適に採用される。このような上下の突起部302,302を備えた構造によれば、対向板部74a,74bの仕切部材36に対する当接初期の当接面積が小さくされて、打音が低減される。
同様に、図52〜図54に示された緩衝ゴム304のように、対向板部74a,74bの四隅と長辺方向中央部分とに、上下の突起部302,302を形成しても良い。このように各6つの上下の突起部302,302を形成することにより、対向板部74a,74bの長辺方向での自由長が小さくされて、仕切部材36への打ち当たりによる打音の発生がより効果的に防止される。なお、緩衝ゴム304の第1, 第2の窓部78,80は、対向板部74a,74bの長辺方向での内側部分が外側部分よりも狭幅とされた凸形の孔断面形状を有している。このことからも明らかなように、第1, 第2の窓部の孔断面形状は、特に限定されるものではない。
なお、図52〜図54に示された緩衝ゴム304では、可動膜114が対向板部74a,74bよりも薄肉とされており、可動膜114が軽量とされることで、当接時の衝撃が低減されて、打音がより有利に防止されるようになっている。尤も、図27にも示されているように、可動膜を対向板部74a,74bよりも厚肉とすれば、可動膜の弾性変形が抑えられることから、低周波大振幅振動の入力時に液圧の逃げが低減されて、オリフィス通路70による防振効果を有利に得ることができる。
図55,図56には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第16の実施形態として、自動車用のエンジンマウント310が示されている。エンジンマウント310は、仕切部材312の収容空所314に緩衝体としての緩衝ゴム316が配設された構造を有している。
仕切部材312は、上仕切部材38と下仕切部材318を含んで構成されている。下仕切部材318は、厚肉の略円板形状を有しており、径方向中央部分に収容凹所320が形成されている。収容凹所320は、図57に示されているように、軸方向視で略円形の凹所であって、下仕切部材318の上面に開口していると共に、その底壁部には一対の第2の連通孔60,60が貫通形成されている。
このような構造とされた下仕切部材318に対して、上方から上仕切部材38が重ね合わされて、仕切部材312が構成される。更に、下仕切部材318に形成された収容凹所320の開口が上仕切部材38によって覆われることで収容空所314が形成されている。
また、収容空所314には、緩衝ゴム316が配設されている。緩衝ゴム316は、図58〜図60に示されているように、略円板形状の一対の対向板部322a,322bが、一対の側板部324a,324bによって相互に連結された構造であって、全体として中空形状とされて内部空所88が形成されている。なお、対向板部322aに一対の第1の窓部78,78が形成されていると共に、対向板部322bに一対の第2の窓部80,80が形成されている。
さらに、緩衝ゴム316の内部空所88には、可動部材としての可動板326が配設されている。可動板326は、略矩形の平板状とされており、本実施形態では対向板部322a,322bよりも薄肉とされている。更にまた、内部空所88に配設された可動板326は、側板部324bと一体形成された基端連結部328によって緩衝ゴム316に連結されて、弾性的に支持されている。この基端連結部328は、可動板326に比して狭幅とされており、可動板326よりも変形し易い低ばね部を構成している。なお、基端連結部は、可動板に対して、薄肉とされたり、異なる材料で形成される等して、変形し易くされていても良い。
そして、基端連結部328の弾性変形によって、可動板326の上下方向への変位が許容されており、中乃至高周波小振幅振動の入力時に発揮される可動板326の微小変位による液圧吸収作用や、低周波大振幅振動の入力時における流体流路90の遮断が、有効に実現されるようになっている。
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント310においても、前記各実施形態に示されたエンジンマウントと同様に、打音の低減効果が有効に発揮される。また、緩衝ゴム316の形状からも明らかなように、緩衝体は帯形筒状体に限定されるものではなく、全体として中空形状をなして、内部空所が設けられていれば良い。
図61には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第17の実施形態として、自動車用のエンジンマウント330が示されている。エンジンマウント330は、仕切部材312の収容空所314に緩衝体としての緩衝ゴム332が配設された構造を有している。
より詳細には、緩衝ゴム332は、相互に別体で形成された第1の緩衝体334と第2の緩衝体336とを組み合わせて構成されている。第1の緩衝体334は、対向板部322aと側板部324bと可動板326とを一体で備えていると共に、対向板部322aの中央部分から下方に向かって突出する緩衝突起としての上側の内方突部338を備えている。一方、第2の緩衝体336は、対向板部322bと側板部324aとを一体で備えていると共に、対向板部322bの中央部分から上方に向かって突出する緩衝突起としての下側の内方突部338を備えている。なお、上下の内方突部338,338は、互いに対応する位置に設けられていると共に、それらの先端が所定の隙間をもって上下に離隔配置されている。また、内方突部338の突出先端は、角部がR状に面取りされており、先細の略球冠状とされている。
そして、第1, 第2の緩衝体334,336は、第1の緩衝体334の側板部324bの下端が第2の緩衝体336の対向板部322bの上面に当接されると共に、第2の緩衝体336の側板部324aの上端面が第1の緩衝体334の対向板部322aの下面に当接された状態で、仕切部材312の収容空所314に配設されている。これにより、第1, 第2の緩衝体334,336によって、中空形状の緩衝ゴム332が構成されて、対向板部322a,322bと側板部324a,324bで囲まれた内部空所88が形成されている。
さらに、緩衝ゴム332では、上下の内方突部338,338の突出高さ寸法が比較的に大きくされており、上下の内方突部338,338の突出先端面が、可動板326に対して小さな隙間をもって対向しているか、或いは接触している。これにより、上下の内方突部338,338への当接によって可動板326の変位がより制限されており、打音がより効果的に防止されている。
このような構造を有するエンジンマウント330においても、可動板326の当接による打音の発生が、緩衝ゴム332の内部摩擦等に基づいて有効に防止される。このことからも明らかなように、中空形状の緩衝体は、必ずしも全体が一体で形成されたものに限定されず、互いに独立した複数の緩衝体を組み合わせて構成されていても良い。
また、緩衝体と可動部材の間に緩衝突起を設ける場合には、緩衝突起の先端と緩衝体又は可動部材との隙間は、特に限定されるものではなく、所定の距離だけ離隔していても良いし、予め当接していても良い。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、緩衝体が帯形筒状体とされていたが、緩衝体は可動部材が配設される内部空所を備えた中空形状であれば、筒状体に限定されない。具体的には、例えば、前記実施形態に示された帯形筒状の緩衝体において、何れか一方の開口部を閉塞した袋状体や、両方の開口部を閉塞した中空体等も採用され得る。なお、上記の如き袋状体の緩衝体は、一体で予め袋状に成形されていても良いし、帯形筒状体の一方の開口部に別体の蓋体を後付けする等して形成されていても良い。また、中空体の緩衝体は、帯形筒状体の両開口部に別体の蓋体を後付けしたり、一体成形された袋状体の開口部に別体の蓋体を後付けする等して、形成され得る。
また、突起部84は、対向板部74a,74b上に複数が形成されていても良く、それら複数の突起部84がそれぞれ収容空所64の壁内面に当接されることによって、対向板部74a,74bが複数箇所において仕切部材36で当接支持されていても良い。
また、前記実施形態では、第1の位置決め手段が挿通ピン58が挿通孔82に挿通されることで構成されていたが、この挿通ピン58および挿通孔82の形成位置や形成数、形状等は何れも特に限定されない。例えば、収容空所64の中央に挿通ピン58が形成されると共に、緩衝体の中央部分に挿通孔82が貫通形成されて、挿通ピン58が挿通孔82に挿通されることで第1の位置決め手段が構成されていても良い。この場合には、例えば、可動板92の中央に貫通孔が形成されていても良く、その貫通孔に挿通ピン58を挿通することで、可動板92を上下に案内するガイド手段を同時に構成することができる。
また、第1,第2の窓部78,80や第1,第2の連通孔44,60の形状や開口面積、数等は、要求される特性や、可動部材の形成材料(硬度)等によって適宜に変更され得るものであって、何ら限定されるものではない。
また、可動部材として可動膜を採用する場合には、第3の実施形態で示されているように緩衝体と一体形成しても良いし、接着等の手段で別体で形成して緩衝体に後付けしても良い。更に、可動膜は必ずしも緩衝体によって支持されていなくても良い。例えば、板状のゴム板が緩衝体とは別体で設けられて、そのゴム板が帯形筒状体とされた緩衝体に挿入されていると共に、ゴム板の少なくとも一方の端部が緩衝体の開口部から外方に突出しており、ゴム板における緩衝体からの突出部分が仕切部材によって支持されることによって、緩衝体の内部空所に配設される可動膜が実現されていても良い。
さらに、可動膜がどのように支持されているかは特に限定されるものではなく、第3の実施形態に示されているように片持ち梁状に一端で支持されていても良いし、両端或いは外周縁部全体を支持されていても良い。更には、中央部分を支持されて、外周部分の弾性変形によって流体流路の連通と遮断が切り替えられるようになっていても良い。
また、緩衝体は、予め収容空所に対応する形状で形成されていても良いが、収容空所とは異なる形状で或いは収容空所よりも大きく形成されて、収容空所への配設によって収容空所と対応する形状に変形されるようにしても良い。即ち、一対の対向板部の対向方向において緩衝体の寸法が収容空所の同方向における壁内面間の距離よりも大きくされており、緩衝体が収容空所に収容されることで、一対の対向板部が収容空所の壁内面に押し当てられた状態で配置されるようになっていても良い。具体的には、例えば、図62に示されたエンジンマウント460において採用される緩衝体としての緩衝ゴム462は、図63に示されているように、収容空所64への配設前の単体で対向板部464a,464bが上下外方に向かって凸となるように湾曲しており、それら対向板部464a,464bの対向外面間の最大距離が収容空所64の軸方向での内寸よりも大きくされている。そして、緩衝ゴム462は、図62に示されているように、緩衝ゴム462の対向板部464a,464bが収容空所64の壁内面に押し当てられて、軸直角方向に広がる略平板形状に変形された状態で、収容空所64に配設されている。これによれば、緩衝ゴム462がそれ自体の弾性に基づいて収容空所64内で位置決めされることから、緩衝ゴム462が目的とする配設状態に安定して保持される。
内方突部148と外方突部150は、必ずしも突出方向の投影において相互に重なり合っていなくても良く、互いに外れた位置に設けられていても良い。また、前記実施形態では、緩衝体における内方突部148の形成部分が配置される変形許容領域と、外方突部150が配置される位置決め孔が、何れも第1,第2の連通孔44,60によって構成されているが、それら変形許容領域と位置決め孔は、必ずしも同じ孔によって構成されている必要はなく、相互に独立して設けられていても良い。更に、変形許容領域と位置決め孔は、第1,第2の連通孔44,60とは別に設けられていても良い。
また、変形許容領域は、必ずしも収容空所の壁部を貫通する孔に限定されず、例えば収容空所の壁内面に開口する凹所や凹溝、複数の突起に囲まれた谷部のような凹み等であっても良い。要するに、変形許容領域は、緩衝体における内方突部の形成部分と収容空所の壁内面との間に隙間を形成して、内方突部の形成部分において緩衝体の弾性変形を許容し得る構造であれば、具体的な構造を限定されるものではない。
また、内方突部148や外方突部150を備えた緩衝体は、可動膜構造との組み合わせにおいてのみ採用されるものではなく、可動板構造と組み合わせて採用することもできる。なお、可動板構造と内方突部とを組み合わせて採用する場合には、可動板が内方突部に当接する際に、可動板が傾動して緩衝体(収容空所の壁内面)に打ち当たるのを防ぐために、可動板が当接する緩衝体の面に複数の内方突部が設けられることが望ましい。
また、前記実施形態では内方突部148と外方突部150を何れも備えた緩衝体が示されているが、挿通ピン58と挿通孔82の係止による第1の位置決め手段だけで充分に位置決めされる場合等には、内方突部148だけを設けて外方突部150を省略することもできる。
また、前記実施形態では位置決め部(外方突部150)が突出方向の投影において位置決め孔(第1,第2の連通孔44,60)よりも充分に小さくされており、位置決め部の位置を位置決め孔を通じて目視で確認することによって緩衝体が仕切部材に対して位置決めされるようになっていたが、例えば突起状の位置決め部が位置決め孔と同じか僅かに小さい程度の大きさで形成されて、位置決め部が位置決め孔に挿入されることで第2の位置決め手段が構成されるようになっていても良い。
また、位置決め部として外方突部150が例示されているが、位置決め部は突起状に限定されるものではなく、凹所やマーキング等といった視認によって位置を確認可能な他の構造等も採用され得る。要するに、本発明における位置決め部は、外方突部150のように位置決め孔への係合作用により仕切部材への相対的な位置決め作用を発揮することを期待できるものに限定されることなく、収容空所内での緩衝体の配設位置を決めるに際して利用され得るものであれば良い。
また、図26にも例示されているように、緩衝突起は、必ずしも緩衝体から突出するものに限定されず、可動部材から緩衝体に向かって突出して形成されていても良い。具体的には、例えば、図64,図65に示された緩衝体としての緩衝ゴム470のように、側板部76bから突出する可動部材としての可動膜472が複数の緩衝突起474を備えた構造も、採用され得る。この緩衝突起474は、突出先端に向かって次第に小径となる略円形断面を有する突起であって、可動膜472の両面に一体形成されて各6つずつが突設されており、可動膜472の各面において幅方向(突出方向と略直交する図65中の上下方向)の両端部分に3つずつ配列されている。このような緩衝突起474を備えた緩衝ゴム470によっても、可動膜472の打ち当たりによる打音が低減される。
また、緩衝体の収容空所内での向きを仕切部材に対して特定するための構造としては、前記実施形態で示されているように、対向板部74bにのみ形成された第2,第3の挿通孔288,288,290に第2の挿通ピン280,280と支持突片282とを挿通する構造に限定されるものではなく、例えば、図66〜図71に示された構造等も採用され得る。
具体的には、エンジンマウントを構成する仕切部材480が図66に示されている。この仕切部材480は、上仕切部材38と下仕切部材482を備えていると共に、それら上仕切部材38と下仕切部材482の間に形成された収容空所484に緩衝体としての緩衝ゴム486が収容配置された構造を有している。なお、本実施形態の上仕切部材38には、受圧室66と後述する収容空所484とを常時連通する第3の連通孔488が貫通形成されている。
下仕切部材482は、図67に示されているように、全体として略円板形状を有しており、その径方向の中央部分に収容凹所490が形成されている。収容凹所490は、下仕切部材482の上面に開口する凹所であって、収容凹所490の1つの角部に規制突部492が形成された構造を有しており、軸方向視において長方形の角部の1つを斜めに切り落としたような略5角形を呈している。
この収容凹所490には、緩衝ゴム486が配設されている。緩衝ゴム486は、図68〜図70に示されているように、全体として帯形筒状体とされており、上下に対向する一対の対向板部494a,494bと、それら対向板部494a,494bを相互に連結する一対の側板部496a,496bとを、一体で備えている。
対向板部494aと対向板部494bは、何れも略平板形状を有しており、対向板部494aに一対の第1の窓部498,498が形成されていると共に、対向板部494bに一対の第2の窓部500,500が形成されている。第1,第2の窓部498,500は、略同一の矩形断面を有する貫通孔であって、緩衝ゴム486の幅方向(図68中、上下方向)において一方の側に偏った位置に形成されている。なお、対向板部494a,494bには、対向方向の内側に向かって突出する内方突部86が、後述する可動膜504との対向部分にそれぞれ形成されている。なお、対向板部494aには、第3の窓部502が貫通形成されている。
また、側板部496aと側板部496bは、何れも対向方向外側に向かって凸となる湾曲板形状を有しており、上端部が対向板部494aと連続して一体形成されていると共に、下端部が対向板部494bと連続して一体形成されている。これにより、一対の対向板部494a,494bが一対の側板部496a,496bで連結されて、全体として内部空所88を備えた帯形筒状の緩衝ゴム486が一体で形成されている。
さらに、側板部496bには、可動部材としての可動膜504が一体形成されている。可動膜504は、略矩形平板状のゴム弾性体で形成されており、側板部496bから側板部496aに向かって内部空所88に突出している。また、可動膜504の幅寸法が側板部496bの幅寸法よりも小さくされており、可動膜504が幅方向で一方の側に偏って配置されている。なお、図70に示されているように、可動膜504は、第1,第2の窓部498,500よりも大きな幅寸法を有していると共に、その突出先端が第1,第2の窓部498,500を跨って反対側にまで延び出しており、軸方向の投影において第1,第2の窓部498,500を覆い得る大きさと位置で形成されている。
そこにおいて、緩衝ゴム486には、切欠き部506が形成されている。切欠き部506は、図68に示されているように、軸方向視で長方形の4隅の1つを斜めに切断したような態様で形成されている。かかる切欠き部506の形成によって、対向板部494a,494bの幅方向一方の端部の長さ寸法が幅方向他方の端部の長さ寸法よりも大きくされていると共に、側板部496aの幅寸法が側板部496bの幅寸法よりも小さくされている。要するに、緩衝ゴム486は、切欠き部506が形成されることによって、軸方向視で収容凹所490と略対応する形状とされている。
このような構造とされた緩衝ゴム486は、図71に示されているように、下仕切部材482の収容凹所490に挿入配置される。その際、緩衝ゴム486に形成された切欠き部506が、収容凹所490の規制突部492と位置決めされることで、緩衝ゴム486が収容凹所490に挿入可能とされる。一方、緩衝ゴム486を収容凹所490に対して誤った向きで挿入しようとすると、緩衝ゴム486の角部が規制突部492に当接して、緩衝ゴム486の収容凹所490への挿入が阻止されるようになっている。これにより、緩衝ゴム486が収容凹所490に対して所定の向きで挿入配置されるようになっている。本実施形態では、切欠き部506が軸方向視において長方形の角部を斜めに切り落としたような態様とされており、切欠き部506および規制突部492が容易に形成可能とされているが、切欠き部および規制突部の具体的な形状は、緩衝体の収容空所内での向きを特定可能とされていれば、特に限定されない。また、切欠き部および規制突部がそれぞれ複数形成されていても良い。
そして、下仕切部材482に上仕切部材38が重ね合わされて、収容凹所490の開口部が上仕切部材38で覆蓋されることにより、収容空所484が形成されており、収容空所484に緩衝ゴム486が配設されている。更に、上仕切部材38の第3の連通孔488と緩衝ゴム486の第3の窓部502が相互に位置決めされて連通されており、それら第3の連通孔488と第3の窓部502によって受圧室66と内部空所88とを連通する短絡孔が構成されている。
このように、例えば、収容空所の周壁に規制突部を設けると共に、緩衝体には該規制突部と対応する切欠き部(凹み部)を設けて、それら規制突部と切欠き部とが位置決めされた場合にのみ緩衝体を収容空所に配設できるようにすれば、緩衝体の収容空所内での向きを特定することができる。
また、図66〜図71の構造からも明らかなように、可動部材は、内部空所内において、何れかの側に偏倚して設けられていても良い。
また、緩衝体は、全体が途切れることなく筒状に連続したものに限定されず、全体として筒状であれば、例えば、周上の一箇所乃至は複数箇所で分断されていても良い。
本発明は、エンジンマウントにのみ適用されるものではなく、ボデーマウントやメンバマウント等を含んだ各種の流体封入式防振装置に対して好適に適用され得る。また、本発明の適用範囲は、自動車用の流体封入式防振装置に限定されず、例えば自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等、自動車以外に用いられる流体封入式防振装置にも適用され得る。