次に、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。なお、下記の実施形態に係る空気入りタイヤは、ビート部やカーカス層、ベルト層(不図示)を備える空気入りタイヤであるが、かかる構成は省略して説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
(1)トレッドパターンの構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1を構成するトレッドパターンを示す一部平面図である。本実施形態では、図1に示すように、タイヤ周方向Tcに平行なタイヤ回転方向Tr(図1における下方向)が規定されているものとする。
また、図1に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド面視において、タイヤ周方向Tcに延びる複数の主溝10が形成される。なお、トレッド面とは、タイヤを適用リムに装着するとともに、規定の空気圧を充填し、静止した状態で平板上に垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板との接触面とする。この場合、適用リムとは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定されたリムを示し、規定の空気圧とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧を示し、最大負荷能力とは、下記の規格で、タイヤに負荷することが許容される最大の質量を示す。また、規定の質量とは、上記の最大負荷能力をいう。なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格をいい、例えば、アメリカ合衆国では“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.のYEAR BOOK”であり、欧州では、“THE European Tyre and Rim Technical OrganisationのSTANDARDS MANUAL”であり、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”である。
また、本実施形態では、主溝10は、タイヤ幅方向Tw(トレッド幅方向)に屈曲する、いわゆるジグザグ状にタイヤ周方向Tcに延びる。空気入りタイヤ1では、複数の主溝10として、タイヤ赤道線CLからタイヤ幅方向Tw外側の一方に2本の主溝10a,10cが形成され、他方に2本の主溝10b,10cが形成されている。空気入りタイヤ1は、タイヤ幅方向Twに互いに隣接する主溝10aと主溝10bとによって形成される陸部列15を備える。
陸部列15にはタイヤ幅方向Twに延びる複数の横溝20が形成される。また、複数の横溝20の各々は、タイヤ周方向Tcでオフセットするように形成されている。換言すれば、複数の横溝20の各々は、タイヤ周方向Tcの位相が異なるように形成されている。
具体的に、陸部列15には、複数の横溝20として、一端21aが主溝10aに開口し、他端21bが陸部列15の内部で終端する横溝21と、一端22aが主溝10bに開口し、他端22bが陸部列15の内部で終端する横溝22とが、タイヤ周方向Tcに所定間隔を設けて交互に形成される。
なお、横溝21乃至22の各々は、主溝10a乃至10bのタイヤ幅方向Tw内側に屈曲するピーク部分に開口する。また、本実施形態において、主溝10aは、第1主溝を構成し、主溝10bは、第2主溝を構成し、横溝21は、第1横溝を構成し、横溝22は、第2横溝を構成する。
また、陸部列15には、横溝21の一端と他端との間と、横溝22の一端と他端との間とに連通し、タイヤ周方向Tcに延びる連絡溝30が形成されている。なお、本実施形態では、連絡溝30として、2つの連絡溝31乃至32が形成されている。
具体的に、連絡溝31は、第1ブロック部110のタイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝21と、第1ブロック部110のタイヤ周方向Tcの中間部分に形成される横溝22とに連通する。連絡溝32は、第1ブロック部110のタイヤ周方向Tcの中間部分に形成される横溝22と、第1ブロック部110のタイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝21とに連通する。
本実施形態では、連絡溝31の溝幅は、連絡溝32の溝幅よりも広くなるように形成されている。なお、連絡溝31の溝幅と連絡溝32の溝幅とは、これに限定されるものではなく、同一としてもよい。なお、本実施形態では、2つの連絡溝31乃至32を、連絡溝30として適宜説明する。
上述のように、陸部列15において、横溝21と横溝22と連絡溝30とが形成されることによって、陸部列15には、複数のブロック部100が形成される。具体的に、陸部列15には、連絡溝30の主溝10a側に位置する第1ブロック部110と、連絡溝30の主溝10b側に位置する第2ブロック部120とが形成されている。なお、空気入りタイヤ1をトレッド面視した際、第1ブロック部110の形状は、C字状に形成され、第2ブロック部120の形状は、逆C字状に形成されている。
また、陸部列15では、連絡溝30が、タイヤ赤道線CL上に沿って延びるように形成されており、第1ブロック部110と第2ブロック部120との間に、タイヤ赤道線CLが位置する。なお、連絡溝30がタイヤ赤道線CL上に沿って延びるとは、連絡溝30の少なくとも一部がタイヤ赤道線CLを含むように配置されていることを示す。
このように、空気入りタイヤ1では、陸部列15が、タイヤ赤道線CLに最も近い陸部列として形成されるとともに、第1ブロック部110と第2ブロック部120との間にタイヤ赤道線CLが配置されている。なお、空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向Twの最も外側に形成されるショルダー陸部において、タイヤ幅方向Twに沿って延びるラグ溝が、タイヤ周方向Tcに所定間隔を設けて形成されていているが、ここでは説明を省略する。
(2)ブロック部の構成
次に、ブロック部100の構成について説明する。具体的に、第1ブロック部110と第2ブロック部120との構成について説明する。まず、第1ブロック部110の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る第1ブロック部110の拡大平面図である。図2に示すように、第1ブロック部110は、路面に接地する踏面110Xと、タイヤ幅方向Twに隣接する主溝10aによって形成される主溝側壁面111と、タイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝21によって形成される横溝側壁面112と、タイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝21によって形成される横溝側壁面113と、タイヤ幅方向Twに隣接する連絡溝30によって形成される連絡溝壁面114とを有する。
また、第1ブロック部110では、踏面110Xは、主溝側壁面111側に形成される端部110Aと、一方の横溝側壁面112側に形成される端部110Bと、他方の横溝側壁面113側に形成される端部110Cと、連絡溝壁面114側に形成される端部110D,110Eと、を有する。
なお、本実施形態では、図1乃至2に示すように、タイヤ回転方向Trを規定した場合(図1乃至2における下方向)、第1ブロック部110において、横溝側壁面112側に形成される端部110Bは、蹴出端を構成し、他方の横溝側壁面113側に形成される端部110Cは、踏込端を構成する。
また、本実施形態において、踏面110Xに平行な面による第1ブロック部110の断面形状は、踏面110Xからタイヤ径方向内側に向かうにつれて変形する。つまり、第1ブロック部110の周囲に形成される側壁の傾斜角度が、箇所によって異なる。以下に、第1ブロック部110の側壁角度について具体的に説明する。
第1ブロック部110では、主溝10aによって形成される主溝側壁面111と、路面に接地する踏面110Xとが成す主溝側壁角度θ11は、タイヤ周方向Tcにおける一端部110Bにおいて鋭角となり、タイヤ周方向Tcにおける他端部110Cにおいて鈍角となるように変化する。換言すれば、主溝側壁角度θ11は、タイヤ周方向Tcにおけるタイヤ回転方向Trの前方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
ここで、図3(a)には、図2のA1−A1’線における断面図が示されている。図3(b)には、図2のB1−B1’線における断面図が示されている。図3(c)には、図2のC1−C1’線における断面図が示されている。
主溝側壁角度θ11は、図3(a)に示すように、一方の横溝側壁面112側の端部110Bにおいては鋭角、すなわち90度より小さくなるように構成される。また、主溝側壁角度θ11は、図3(b)に示すように、主溝側壁面111のタイヤ周方向Tcにおける中間部分(ここでは、最もタイヤ幅方向外側の箇所)においては90度になるように構成される。また、主溝側壁角度θ11は、図3(c)に示すように、他方の横溝側壁面113側の端部110Cにおいては鈍角、すなわち90度より大きくなるよう構成されている。
次に、横溝20によって第1ブロック部110の他方に形成される横溝側壁面112と、踏面110Xとがなす横溝側壁角度θ12について説明する。
第1ブロック部110では、タイヤ周方向Tcの一方に隣接する横溝21によって形成される横溝側壁面112と踏面110Xとが成す横溝側壁角度θ12は、主溝側壁面111に近づくに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
ここで、図4(a)には、図2のD1−D1’線における断面図が示されている。図4(b)には、図2のE1−E1’線における断面図が示されている。図4(c)には、図2のF1−F1’線における断面図が示されている。
横溝側壁角度θ12は、図4(a)に示すように、タイヤ幅方向Twの連絡溝壁面114側においては鋭角、すなわち、90度より小さくなるように構成され、図4(b)に示すように、横溝側壁面112のタイヤ幅方向Twの中間部分においては90度になるように構成され、図4(c)に示すように、主溝側壁面111側においては鈍角、すなわち90度より大きくなるよう構成されている。
一方、第1ブロック部110では、タイヤ周方向Tcの他方に隣接する横溝21によって形成される横溝側壁113と踏面110Xとが成す横溝側壁角度θ13は、主溝側壁面111に近づくに連れて、鈍角から鋭角に変化する。
ここで、図5(a)には、図2のG1−G1’線における断面図が示されている。図5(b)には、図2のH1−H1’線における断面図が示されている。図5(c)には、図2のI1−I1’線における断面図が示されている。
第1ブロック部110は、図5(a)乃至(c)に示すように、横溝21によって第1ブロック部110に形成される横溝側壁面113と、踏面110Xとが成す横溝側壁角度θ13は、主溝側壁面111に近づくに連れて、鈍角から鋭角に変化する。つまり、第1ブロック部110では、横溝側壁角度θ12と横溝側壁角度θ13とが、タイヤ幅方向Twに沿って逆側に変化する。
次に、連絡溝30によって第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114と、踏面110Xとがなす連絡溝壁角度θ14について説明する。
連絡溝30によって第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114と踏面110Xとが成す連絡壁角度θ14は、タイヤ周方向Tcにおけるタイヤ回転方向Trの後方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
ここで、図6(a)には、図2のJ1−J1’線における断面図が示されている。図6(b)には、図2のK1−K1’線における断面図が示されている。図6(c)には、図2のL1−L1’線における断面図が示されている。
第1ブロック部110は、図6(a)乃至(c)に示すように、連絡溝31(30)によって第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114aと、踏面110Xとが成す連絡溝壁角度θ14aは、タイヤ回転方向Tr後方に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
また、図7(a)には、図2のM1−M1’線における断面図が示されている。図7(b)には、図2のN1−N1’線における断面図が示されている。図7(c)には、図2のO1−O1’線における断面図が示されている。
第1ブロック部110は、図7(a)乃至(c)に示すように、連絡溝32(30)によって第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114bと、踏面110Xとが成す連絡溝壁角度θ14bは、タイヤ回転方向Tr後方に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。つまり、第1ブロック部110では、連絡溝壁角度θ14aと連絡溝壁角度θ14bとは、タイヤ周方向Tcの同じ方向に向かって鋭角から鈍角に変化する。
なお、上述した主溝側壁角度θ11と、横溝側壁角度θ12、13と、連絡溝壁角度θ14a乃至14bとは、70度から110度の範囲内で変化することが好ましい。
次に、第2ブロック部120の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る第2ブロック部120の拡大平面図である。
図8に示すように、第2ブロック部120は、路面に接地する踏面120Xと、タイヤ幅方向Twに隣接する主溝10bによって形成される主溝側壁面121と、タイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝22によって形成される横溝側壁面122と、タイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝22によって形成される横溝側壁面123と、タイヤ幅方向Twに隣接する連絡溝30によって形成される連絡溝壁面124とを有する。
また、第2ブロック部120では、踏面120Xは、主溝側壁面121側に形成される端部120Aと、横溝側壁面122側に形成される端部120Bと、横溝側壁面123側に形成される端部120Cと、連絡溝壁面124側に形成される端部120D,120Eと、を有する。
なお、本実施形態では、図1に示すように、タイヤ回転方向Trを規定した場合、第2ブロック部120において、横溝側壁面122側に形成される端部120Bは、蹴出端を構成し、他方の横溝側壁面123側に形成される端部120Cは、踏込端を構成する。
また、本実施形態において、踏面120Xに平行な面による第2ブロック部120の断面形状は、踏面120Xからタイヤ径方向内側に向かうにつれて変形する。つまり、第2ブロック部120の周囲に形成される側壁の傾斜角度が、箇所によって異なる。以下に、第2ブロック部120の側壁角度について具体的に説明する。
第2ブロック部120では、主溝10bによって形成される主溝側壁面121と路面に接地する踏面120Xとが成す主溝側壁角度θ21は、タイヤ周方向Tcにおける一端部120Bにおいて鋭角となり、タイヤ周方向Tcにおける他端部120Cにおいて鈍角となるように変化する。換言すれば、主溝側壁角度θ21は、タイヤ回転方向Trの前方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
なお、図8のA2−A2’線における断面図は、図3(a)の断面図と同一であり、図8のB2−B2’線における断面図は、図3(b)の断面図と同一であり、図8のC2−C2’線における断面図は、図3(c)の断面図と同一である。すなわち、第2ブロック部120における主溝側壁角度θ21と、第1ブロック部110における主溝側壁角度θ11とは、タイヤ周方向Tcの同じ方向(タイヤ回転方向Tr前方)に向かって鋭角から鈍角に変化する。
次に、横溝20によって第2ブロック部120に形成される横溝側壁面122と、踏面120Xとがなす横溝側壁角度θ22について説明する。
第2ブロック部120では、タイヤ周方向Tcの一方に隣接する横溝22によって第2ブロック部120に形成される横溝側壁122と、踏面120Xとが成す横溝側壁角度θ22は、主溝側壁面121に近づくに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
なお、図8のD2−D2’線における断面図は、図4(a)の断面図と同一であり、図8のE2−E2’線における断面図は、図4(b)の断面図と同一であり、図8のF2−F2’線における断面図は、図4(c)の断面図と同一である。すなわち、第2ブロック部120における横溝側壁角度θ22と、第1ブロック部110における横溝側壁角度θ12とは、タイヤ幅方向Twに隣接する主溝10に向かって鋭角から鈍角に変化する。
一方、第2ブロック部120では、タイヤ周方向Tcの他方に隣接する横溝22によって形成される横溝側壁123と踏面120Xとが成す横溝側壁角度θ23は、主溝側壁面121に近づくに連れて、鈍角から鋭角に変化する。
なお、図8のG2−G2’線における断面図は、図5(a)の断面図と同一であり、図8のH2−H2’線における断面図は、図5(b)の断面図と同一であり、図8のI2−I2’線における断面図は、図5(c)の断面図と同一である。すなわち、第2ブロック部120における横溝側壁角度θ23と、第1ブロック部110における横溝側壁角度θ13とは、何れもタイヤ幅方向Twに隣接する主溝10に向かって鈍角から鋭角に変化する。
次に、連絡溝30によって第2ブロック部120に形成される連絡溝壁面124と、踏面120Xとがなす連絡溝壁角度θ24について説明する。
第2ブロック部120では、連絡溝31(30)によって第2ブロック部120に形成される第2連絡側壁124と踏面120Xとが成す連絡壁角度θ24は、タイヤ周方向Tcにおけるタイヤ回転方向Trの後方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
なお、図8のJ2−J2’線における断面図は、図6(a)の断面図と同一であり、図8のK2−K2’線における断面図は、図6(b)の断面図と同一であり、図8のL2−L2’線における断面図は、図6(c)の断面図と同一である。
一方、第2ブロック部120では、連絡溝32(30)によって第2ブロック部120に形成される連絡溝壁面124bと、踏面120Xとが成す連絡溝壁角度θ24bは、タイヤ回転方向Tr後方に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。なお、第2ブロック部120では、連絡溝壁角度θ24aと連絡溝壁角度θ24bとは、タイヤ周方向Tcの同じ方向に向かって鋭角から鈍角に変化する。
また、図8のM2−M2’線における断面図は、図7(a)の断面図と同一であり、図8のN2−N2’線における断面図は、図7(b)の断面図と同一であり、図8のO2−O2’線における断面図は、図7(c)の断面図と同一である。
ここで、第2ブロック部120に形成される連絡側壁124a乃至124bと踏面120Xとが成す連絡壁角度θ24a乃至24bと、第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114a乃至114bと踏面110Xとが成す連絡壁角度θ14a乃至14bとは、いずれもタイヤ周方向Tcにおけるタイヤ回転方向Trの後方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
なお、上述した主溝側壁角度θ21と、横溝側壁角度θ22、23と、連絡溝壁角度θ24(24a乃至24b)とは、70度から110度の範囲内で変化することが好ましい。
(3)作用・効果
次に、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1の作用並びに効果について説明する。ここで、一般的な空気入りタイヤにおいて、車両走行時、ブロック部100は、重力、車両の重みに起因する接地圧と、ゴムの非圧縮性とによって蹴出端側へ膨出する。
また、蹴り出し時において、ブロック部100が路面から離れる際に、ブロック部100の膨出した部分によって、踏面には大きな剪断歪が生じる。これにより、踏面が路面上を滑り、ブロック部100は、蹴出端において初期摩耗が発生し易くなる。また、車両の走行距離に応じて摩耗が進行すると、路肩側の蹴出端は、路面との接地圧が弱くなり、その結果、さらに路面上を滑りやすくなる。このため、ブロック部100の摩耗は、さらにタイヤ回転方向前方へ向かって進展していく。
すなわち、摩耗を抑制するためには、ブロック部100に接地圧がかかる際の膨出量を少なくすることが効果的である。発明者は、車両走行時の接地状態におけるブロック部100の膨出量について鋭意研究した結果、接地圧がかかる際のブロック部100の膨出量は、踏面とブロック部100の溝壁の成す角度が90度よりも小さい程、又は、90度よりも大きい程、抑制できることがわかった。これは、次の理由による。すなわち、踏面とブロック部100の溝壁の成す角度が90度の場合に比べて、かかる角度が90度よりも小さい程、又は、90度よりも大きい程、溝壁面の全体面積を大きくすることができる。このような構成によれば、ブロック部100に接地圧がかかった際に、接地圧が分散されるので、ブロック部100の溝壁の膨出量を抑制することが可能になる。
さらに、ブロック部100を構成するゴムは、一般的に、ゴムの非圧縮性によって、タイヤ周方向Tcにおけるブロック部100中央付近を中心に蹴出端側から踏込端側へ流動する。すなわち、ブロック部100では、蹴出端における膨出量を抑制して、ブレーキング力を打ち消すようにゴムが蹴出端側から踏込端側へ流動すれば、タイヤ周方向Tcの剪断歪を減少させることできるので、ブロック部100に発生した初期摩耗がタイヤ回転方向前方へ進展することを抑制できる。
上述した第1実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向Tcに沿って延びる複数の主溝10と、複数の主溝10の内、隣接する2つの主溝10a乃至10bによって形成される陸部列15を備える。陸部列15は、タイヤ幅方向Twに延びる複数の横溝20(横溝21,22)と、隣接する2つの横溝20に連通する連絡溝30(連絡溝31,32)と、複数の横溝20と連絡溝30とによって区画されるブロック部100を備える。陸部列15は、ブロック部100として、第1ブロック部110と第2ブロック部120とを有する。
かかる空気入りタイヤ1では、主溝10(主溝10a乃至10b)によってブロック部100(第1ブロック部110,第2ブロック部120)に形成される主溝側壁面111,121の主溝側壁角度θ11,θ21は、ブロック部100の一方に形成される他端110B,120Bにおいて鋭角となり、他方の横溝20によってブロック部100に形成される一端110C,120Cにおいて鈍角となるように変化する。
また、空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向Tcの一方に隣接する横溝20(横溝21乃至22)によってブロック部100(第1ブロック部110,第2ブロック部120)に形成される横溝側壁面112,122の横溝側壁角度θ12,θ22は、一方の主溝側壁面111,121に近づくにつれて、鋭角から鈍角に変化する。
また、かかる空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向Tcの他方に隣接する横溝20(横溝21乃至22)によってブロック部100(第1ブロック部110,第2ブロック部120)に形成される横溝側壁面113,123の横溝側壁角度θ13,θ23は、主溝側壁面111,121に近づくにつれて、鈍角から鋭角に変化する。
また、かかる空気入りタイヤ1では、連絡溝30(31,32)によってブロック部100(第1ブロック部110,第2ブロック部120)に形成される連絡溝壁面114,124の連絡溝壁角度θ14,θ24は、タイヤ回転方向Trの後方に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、ブロック部100の主溝側壁角度θ11,θ21と、横溝側壁角度θ12,θ13,θ22,θ23と、連絡溝壁角度θ14,θ24とが、90度よりも大きい値と、90度よりも小さい値とを有するように構成されているため、ブロック部100に接地圧がかかる際の壁面における膨出量を抑制できる。このため、ブロック部100のタイヤ周方向Tcにおける端部110B,110C,120B,120Cにおける剪断歪を抑制できるので、端部110B,110C,120B,120Cに発生する偏摩耗を抑制することが可能になる。
また、本実施形態に係るブロック部100では、一方の横溝側壁面112,122だけでなく、他方の横溝側壁面113,123が、主溝側壁面111,121に向かうにつれて、鈍角から鋭角に変化する。これによれば、たとえ使用者が、タイヤ回転方向Trを誤って空気入りタイヤ1を車両に装着したとしても、ブロック部100における横溝側壁面113,123を蹴出端に配置することが可能になる。従って、使用者にとっては、タイヤ回転方向を意識することなく、車両に装着することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、側壁角度θ11,θ13,θ21,θ23と、横溝側壁角度θ12,θ14,θ22,θ24とが、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有する。仮に、これらの角度θ11乃至θ14,θ21乃至θ24の各々が、90度よりも小さい角度のみで構成する場合、ブロック部100の剛性が低下して、倒れ込みやすくなるため、操縦安定性が低下する。一方、角度θ11乃至θ14,θ21乃至θ24の各々が、90度よりも大きい角度のみで構成する場合、主溝10と横溝20と連絡溝30との溝体積が低下してしまうため、排水性能が低下する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、それぞれの角度θ1乃至θ4が、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有することで、操縦安定性及び排水性能も考慮しつつ、偏摩耗を抑制することが可能になる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第2ブロック部120に形成される連絡側壁124(124a乃至124b)と踏面120Xとが成す連絡壁角度θ24(θ24a乃至24b)と、第1ブロック部110に形成される連絡溝壁面114(114a乃至114b)と踏面110Xとが成す連絡壁角度θ14(θ14a乃至14b)とは、いずれもタイヤ周方向Tcにおけるタイヤ回転方向Trの後方(所定方向)に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化する。かかる空気入りタイヤ1によれば、連絡壁角度θ14と連絡壁角度θ24とが、タイヤ回転方向Trの後方に向かうに連れて、鋭角から鈍角に変化しない場合に比べて、タイヤ周方向Tcにおける溝壁角度の変化をなだらかにできるので、ブロック部100において、しわ及びクラックが発生するのを抑制することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、主溝側壁角度θ11,θ21,と、横溝側壁角度θ12,θ13,θ22,θ23と、連絡溝壁角度θ14,θ24とが、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有し、それぞれ70度以上、110度以下にある事が望ましい。側壁角度が70度以下の場合、ブロック部の剛性が低下して倒れ込みやすくなるため、操縦安定性が低下する。加えて、倒れ込み量が大きくなることで偏摩耗を促進してしまう。一方、110度以上ある場合は、溝体積が低下し、排水性能が低下する。
[比較評価]
次に、本発明の効果を更に明確にするために、以下の従来例及び実施例に係る空気入りタイヤを用いて行った比較評価について説明する。具体的には、(1)評価方法、(2)評価結果について説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(1)評価方法
複数種類の空気入りタイヤを用いて試験を行い、偏摩耗量について評価をした。
なお、偏摩耗量の評価については、走行後の空気入りタイヤにおいて、所定走行距離を走行後の摩耗量を実測によって測定するとともに、測定結果の平均値を算出した。なお、表1において、数値が小さいほど偏摩耗量が少ないことを示している。
また、試験に使用した空気入りタイヤに関するデータは、以下に示す条件において測定された。
・ タイヤサイズ :11R22.5
・ リム・ホイールサイズ :7.5×22.5
・ タイヤの種類 :重荷重用タイヤ
・ 車両 :トラクター(定積状態)
・ 試験用タイヤの装着位置 :操舵輪
・ 最終評価時の走行距離 :約50,000km
・ 走行路線の特徴 :高速道路
なお、表1において、実施例に係るタイヤは、本願発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤを使用している。一方、従来例に係るタイヤは、ブロック部の側壁角度が97度である一般的な空気入りタイヤを用いた。他の構成は、従来例、実施例ともに同様である。
(2)評価結果
各空気入りタイヤの評価結果について、表1を参照しながら説明する。
表1に示すように、実施例に係る空気入りタイヤは、従来例に係る空気入りタイヤと比較すると、偏摩耗量の抑制に優れていることが解る。
従って、本発明の空気入りタイヤによれば、ブロック部100の端部に発生する歪が大きくなることを抑制し、偏摩耗の発生を抑制する効果が大きいことが証明された。
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、本発明は、タイヤとして、空気や窒素ガスなどが充填される空気入りタイヤであってもよく、空気や窒素ガスなどが充填されないソリッドタイヤでもあってもよい。
また、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道線CLが陸部列15のタイヤ幅方向Twの中央に位置していたが、陸部列15のタイヤ幅方向Twの中央に限定されるものではない。さらには、空気入りタイヤ1では、陸部列15が、タイヤ赤道線CLを含むことなく、タイヤ幅方向Tw外側に形成されていてもよい。
また、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1では、一列の陸部列15が形成されていたが、一列に限定されず、複数の陸部列15が形成されていてもよい。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。