JP5875718B1 - 混合構造骨組による建築物 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的長スパンで積載荷重の大きな構造物を合理的に実現できるRC造柱・S造梁混合構造骨組を極めて経済的、且つ合理的に構築できる、混合構造骨組による建築物を提供する。【解決手段】柱は中空円筒断面の鉄筋コンクリート構造部材とし、予め工場で製作したプレキャストコンクリートPCa柱とし、柱の接合はすべて嵌合方式による組み立て式とする。大梁はS造を基本とし、柱と梁の接合部を長期応力に対しては単純梁応力となるピン接合、短期地震時応力に対してはピン−摩擦ダンパー(P−FD)接合もしくは回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)により地震エネルギーを吸収する摩擦ピン接合となっている鉛直荷重用骨組Aと、建物全体の水平剛性および水平耐力を提供する自立型ブレース構面Bとの組合せにより建物の上部構造体を構成し、その最下層支持梁の下に免震装置を配置している免震構造建物とする。【選択図】図12

Description

本発明は、柱を鉄筋コンクリート造(RC造)、梁を鉄骨造(S造)とする混合構造骨組による建築構造物の構成方法に関するものである。
従来、中高層ないし中低層のビル建築物を構築する主たる方法としては、鉄筋コンクリート構造(RC造)が最も一般的な工法として採用されてきたが、昨今の我が国においては、型枠職人や鉄筋工等の職人の不足、特に熟練工の不足などの社会情勢の変化によって、建設工事の作業方法、建築物の構成・構築方法も種々の変化・改良を余儀なくされている状況にある。
その解決方法として、柱・梁の鉄筋コンクリート部材を予め工場生産して現場で接合・組み立てるプレキャスト鉄筋コンクリート工法とする建設方法があり、主に超高層住宅等同じ作業を多数回繰り返す必要のある建築物に普及している。
もう一つの方向性として、柱を鉄筋コンクリート造(RC造)、梁を鉄骨造(S造)とする混合構造方式を採用する方法がある。
このRC造柱、梁S造の混合構造骨組形式は、比較的大きなスパンを必要とする建築物・工作物等の構造物において、梁重量が重くならず、長期使用による梁のクリープ撓みの進行の恐れがなく、且つ建物全体としてS造骨組よりも高い剛性が確保でき、その上RC造骨組よりも短工期で建設できる等の利点を有しているため、比較的スパンの大きな建築物や積載荷重の大きな建築物等に採用される例が増加している
この骨組形式では、これまでは、RC造の柱とS造の梁を如何にして剛接合し、一体化するかが重要な課題であると考えられており、柱・梁接合部の構成方法について既に多くの提案がなされている。
その具体的な解決方法として、S造梁の端部を柱内に固定するために、RC造柱の内部に鋼管を内蔵し、この内蔵鋼管とS造梁の端部を溶接・一体化する方法を採用し、その内蔵する鋼管柱を円形鋼管とするもの(引用文献1、2)、角形鋼管とするもの(引用文献3、4)、H型鋼とするもの(引用文献5、6)等がある。
また、1方向の梁端部をRC造とし、直交方向のみにS造梁を貫通させる方式(引用文献7)を採用しているもの、柱・梁接合部の周囲を鋼板で囲って拘束しているもの(特許文献6、8)もある。
S造梁のフランジに着目すると、梁フランジが柱に内蔵されたS造柱で止まっているもの(引用文献1、3)と、梁フランジの鉄骨が柱・梁接合部を貫通しているもの(引用文献2、4、5、6、7、8)の両者が存在している。
特開平5−272170号公報 特開平10−231559号公報 特開平8−270071号公報 特開平11−36449号公報 特開2000−160686号公報 特開2000−160687号公報 特開平10−280541号公報 特開平8−135018号公報
RC造柱、S造梁の混合構造骨組は、比較的スパンの大きな建築物に対して適した構造形式であるが、これまでに実用化されている混合構造骨組は、その重要ポイントである柱・梁接合部の問題を含めて、以下に示すような大きな課題を有している。
まず第1の課題は、柱・梁接合部の構成・形体上の問題である。
図14は従来のRC造柱、梁S造の混合構造骨組の柱・梁接合部の構成を示す図で、(1)は柱・梁接合部付近の上フランジレベルの水平断面図(見下げ図)、(2)は柱・梁接合部付近の鉛直断面図である。符号1はRC造柱、3はS造大梁、101は柱主筋、102は柱のせん断補強筋(Hoop筋)、15は柱・梁接合部の周囲を囲む補強プレート、2は床スラブをそれぞれ示している。
これまでのRC造柱1とS造大梁3の混合構造の柱・梁接合部においては、S造大梁3が柱・梁接合部を貫通するもの、内蔵されたS造柱で止まるもののいずれのタイプにおいても、鉄骨梁のフランジ31が柱筋の配置位置を越えて柱内に挿入されるため、図14に例示するように、柱筋101を配置できる位置が柱の隅角部のみに限定され、配置できる柱筋の数が制限されてしまう。現実の柱寸法と梁のフランジ幅を考慮すると、殆どの場合、柱筋は柱の隅角部に各3本、合計12本が最多となる。その結果、柱の曲げ耐力を十分に確保することが難しく、柱の曲げ耐力を上げるには柱寸法を大きくせざるをえないという問題を有している。
課題の第2点は、梁から柱への応力伝達機構に関する力学的性能上の問題である。
S造大梁が負担している応力を柱・梁接合部内においてRC造柱に伝達しなければならないが、H型鋼形状の梁部材から柱・梁接合部のコンクリート塊を介して柱へ曲げ応力を伝達するには、極めて複雑な応力伝達機構を想定しなければならず、且つその機構は不明瞭である。また鉄骨梁表面とコンクリートとの界面の付着応力度が小さいため、せん断力の伝達も容易ではなく、柱・梁接合部の外周を鋼板15で囲って、接合部全体のせん断破壊を防止しようという間接的な対策が採用されており、S造大梁のせん断力をRC柱へ直接伝達する明確な応力伝達機構を備えているわけではない、
従来の混合構造骨組の柱・梁接合部を、端的に表現すれば、S造大梁(H型鋼)をRC柱のコンクリート内に突っ込み、その周囲を鋼板で拘束しておけば、鉄骨とコンクリート両者がなんとか力のやりとりを行って曲げ応力もせん断力も伝達してくれる筈である、という考えである。このように従来方式の混合構造の柱・梁接合部における曲げ応力およびせん断力の伝達機構は曖昧且つ不明瞭であり、複雑な応力伝達メカニズムを想定してその説明に苦労しているのが実状である。
課題の第3点は、施工の信頼性の問題である。
柱・梁接合部は、どの構造骨組においても最も重要な部位であるが、特にRC造とS造という異なる構造部材を接合する構造形式では、構造骨組全体の安全性・信頼性を支配する重要性を有している。
これまでの混合構造骨組では、図14に示すように柱・梁接合部内に2つのS造大梁3が十字型に交差した状態で挿入されている。施工手順としては、柱筋101の配筋および梁鉄骨部材3が配置された後で、柱・梁接合部のコンクリートを上方より打設することになる。ところが、S造大梁3のフランジ31が通常300mm程度の比較的大きな幅を有しているために、そのフランジ31の直下にコンクリートを完全に充填することが極めて難しい。特にフランジ31の中央部直下には、S造大梁3のウェブプレート32が存在し、コンクリートの水平移動を妨げることになる。通常2方向のS造大梁3が十字型に配置され、その交差部はウェブプレート32が直交し、繋がっているために、コンクリートがどの方向にも流動することができず、最も重要な柱芯(柱中央部位置)付近の上フランジ31の直下位置には、コンクリートが充分に充填されず、隙間が生じている場合がある。
この問題は、実大寸法の柱・梁接合部のモックアップ実験により確認されている。この問題を充分認識した上で、注意深くコンクリートの再打設を行った場合でさえ、コンクリートの充填が不十分である実験例があり、この問題の解決は容易でないと言える。
課題の第4点は、施工の効率性、建設工事そのものの合理化の課題である。
RC造柱、梁S造の混合構造骨組みでは、これまでのところ、RC造柱は、現場打ちコンクリートで構築することが一般的である。柱部材を工場でプレキャスト化することは可能であるが、プレキャスト部材の製造および輸送費を考慮すると柱を現場造成した方が経済的である場合が多い。いずれにしてもRC柱とS造梁との接合・一体化が必要になる柱・梁接合部のコンクリートは現場打ちとせざるを得ないので、「柱部材の構築 → 梁部材のセット → 柱・梁接合部の配筋・コンクリート打設」という手順が必要になり、かなりの手間と時間を要しているのが実状である。
特に昨今では、型枠大工等の熟練工の不足に型枠資材の高騰が重なり、RC造柱を現場造成することが非常に高コスト化する状況になってきている。
本発明は、上記の諸課題を解決するためになされたもので、1)RC造柱の現場での構築に必要となる型枠や配筋等の現場作業を全廃し、信頼性の高い柱部材を迅速・経済的に構築可能とすること、2)S造梁からRC梁柱への応力伝達機構が単純明快で信頼性が高く、且つ現場作業の施工性・効率性が飛躍的に高いこと、3)構造骨組として必要な耐震安全性を柱・梁接合部の局所に頼らず、より高い剛性と耐力を構造物全体として合理的、経済的に確保でき、且つ信頼性の高い施工が迅速に経済的に実施可能であること、これらの課題を解決した設計性能、施工性、信頼性、経済性に優れた「RC造柱+S造梁の混合構造骨組」を実現・提供することを本発明の目的とする。
〈課題解決の基本方針〉
本発明は、従来の柱RC,梁Sの混合構造骨組が抱える全ての課題を抜本的に解消する方法を基本戦略とする。即ち、従来方式の全ての問題は、RC造とS造という異なる材料で構成される建築部材を剛接合で一体化し、ラーメン構造(剛接合)骨組を構成しようとすることに根本原因がある。しかし、これを否定することは、RC造柱、梁S造による構造骨組そのものを否定することに繋がる、というのがこれまでの発想であった。
翻って、構造物骨組を構成する最も効率的な方法、骨組形式は何かという原点に戻って考えると、柱をRC造、梁をS造で構成することの本来の意義は、建築物各階の鉛直荷重を支える柱は圧縮応力が支配的となるのでRC造柱が適しており、各階の鉛直方向の床荷重を部材の曲げ応力として支える梁部材には自重が軽くて長スパンにも対応が容易なS造梁が適している、即ち鉛直荷重を支持する構造骨組として柱RC、梁Sという組合せが効率的なのであり、地震力や風荷重等の水平力に対して、ラーメン構造骨組は必ずしも効率のよい抵抗方式ではない、というのが本発明の発想の原点である。
即ち本発明では、鉛直荷重と水平荷重の両者に対する抵抗方式を分離し、RC造柱・梁S造による混合構造骨組を専ら鉛直荷重に対する抵抗要素に特化することによって、力学的に明快で、施工性・経済性においても極めて合理的な構造骨組を実現する、ことを基本戦略とする。
従って、本発明では、まず鉛直荷重の抵抗要素に特化した構造骨組を実現すればよい、換言すれば「剛接合骨組を構成する必要がない」ので、全ての柱と梁の接合部は単純なボルト接合、もしくはより簡潔な嵌合方式で構成できる乾式接合を基本とし、剛接合を不要・不採用として、ピン接合もしくはこれに類似した簡易な接合方式を採用すること、且つ、その帰結として柱・梁接合部内に梁部材を挿入・貫通させないことを第1の基本方針とする。
本発明の第2の方針は、水平力に対する抵抗方式としては、効率の悪い、換言すれば建物全体として低い水平剛性しか提供できない剛接合ラーメン構造骨組を放棄し、水平荷重に対する抵抗要素としては斜材の軸力で抵抗するブレース構造を基本とし、且つブレース材は柱とは接合せず、上下階のS造梁のみと接合して骨組を構成する。
上記方針により、本発明では建築物全体の構成要素が、1)柱による鉛直部材、2)梁(ブレース含む)部材の水平部材の2大要素に分割されるので、それぞれを簡易に組み合わせて建築物全体を構成する方法をめざすこととし、柱部材同志の接合も部材端部に設けた同心円の空洞に接合部材を挿入し、互いに嵌合させるという極めて簡便な嵌合型接合方式を採用することを本発明第3の基本方針とする。
更に、型枠大工等の専門工職人の不足と施工の効率化に対応するために、柱は工場製作のプレキャスト部材とすることを基本とし、その生産性を高めるために、柱断面形状を円筒形断面として遠心力成形を可能とする。
遠心力成形部材は、既に既製コンクリート杭の製造で実用化されており、その生産設備を利用できるという利点がある。但し、従来の既製コンクリート杭では断面寸法の肉厚が一部材では均一であることが前提となっているが、本発明では柱・梁接合部に該当する位置のコンクリートの肉厚は必要に応じて厚くすること、梁が取り付く位置の柱外周には被覆鋼管を配置することなど、従来の既製杭とは異なる新たな柱部材を、従来の製造設備を利用して製造可能とすることを第4の基本方針とする。
〈課題解決の具体策〉
以下の構成は、上記の方針に基づき、前述の諸課題を解決し、上記方針を具体化して目的を達成するための手段である。
〈構成1〉
柱を鉄筋コンクリート造(RC造)、2階以上の大梁を鉄骨造(S造)とする混合構造骨組であり、
前記柱は、予め工場で製造したプレキャスト鉄筋コンクリート造(PCa)の柱部材を現場打設コンクリートを用いずに上下方向に組立・接続可能な乾式接合柱となっており、
前記柱の外形は円形で、前記柱部材の少なくとも上下両端部には内部に同心円の円形空洞を有しており、
前記柱の長さは、1)最下柱部材は、適用対象柱の適用位置の最下端部から上層階の階高中央部付近までの高さ、2)中間柱部材は、最下柱部材もしくは下側の中間柱部材の上端位置からより上層階の階高中央部付近までの高さ、3)最上柱部材は、最下柱部材もしくは中間柱部材の上端位置から適用対象最上階の適用位置最上端部までの高さとして製造されており、
各階の梁が取り付く高さ位置には、梁の部材成と同等もしくはそれ以上の高さを有し、前記柱部材と外径寸法の等しい被覆鋼管(梁レベル被覆鋼管)が埋め込まれて、柱の外周面が鋼材表面となっており、
前記梁レベル被覆鋼管の内側には、その被覆鋼管部材に溶接された多数の孔(PBL孔)を有する鉛直方向のPBLジベル鋼板が少なくとも2枚以上配置され、前記PBL孔の内部までコンクリートが充填され、且つ前記PBLジベル鋼板がコンクリート内に完全に埋没し一体化されたPCa柱部材となっており、
前記最下柱部材の下端部は、下側床面もしくは当該柱を受ける下側部材に支持され、1)前記最下柱部材の下端中央空洞部に嵌合する円柱状、円筒状、円錐形状のいずれかの突起部を有する柱脚固定部材の上から、前記突起部が前記柱部材の下端部空洞に挿入され嵌合するように設置されるか、もしくは2)前記最下柱部材の柱脚部の外周を囲う柱脚周囲補強鋼管を有する柱脚固定部材の上から、前記柱脚周囲補強鋼管の中に前記柱の柱脚最下部が挿入され嵌合するように設置されることにより、前記最下柱部材の下端部が、鉛直荷重および水平力に対しては剛に抵抗し、柱脚部の回転モーメントに対しては引張側応力度部分の抵抗力が生じない剛性低下型半固定柱脚接合となっており、
前記柱部材の2階以上の梁高さ位置では、表面に露出している前記梁レベル被覆鋼管部材と鉄骨造梁端部とを溶接もしくは高力ボルトにより、鉄骨部材同志の乾式接合とすることが可能となっており、
前記最下柱部材と前記中間柱部材、あるいは前記中間柱部材同士、あるいは前記中間柱部材と前記最上柱部材との柱部材同士の接合部のみが、1)溶接接合をするか、2)周囲拘束鋼管内に柱端部を挿入するか、もしくは3)柱接合部材を前記柱部材の端部に設けられている前記円形空洞内に挿入・嵌合させることによって両柱部材を剛接合乃至半固定接合となるPCa柱部材を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈構成2〉
柱をRC造、2階以上の大梁をS造とする混合構造骨組であり、
前記柱には前記PCa柱部材を、対象建築物の全ての柱もしくはその一部に採用しており、
前記PCa柱部材の柱脚以外に繋がるS造大梁部材は、
1)前記梁レベル被覆鋼管に溶接接合された柱側縦板と前記S造大梁端部のウェブ(W)板を高力ボルト(HB)による2面せん断摩擦接合とし、且つ前記柱側縦板の接合部(柱側接合部)もしくは前記大梁端部ウェブ板の接合部(梁側接合部)のいずれか片方をボルト孔径のゆとりを最小に抑えてすべりを許さない摩擦接合とし、他方の接合部を、当該接合部の高力ボルトの配置中心位置にある高力ボルト(中心ボルト)は孔径のゆとりを最小に抑え、その他のボルト孔は前記中心ボルト位置から遠くにあるボルト位置ほど大きな孔径として、中心ボルト位置を回転中心とした回転ズレ変位を可能とした回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)を採用するか、もしくは、
2)前記S造大梁の上フランジの高さ位置と同等レベル以上の位置に回転可能で鉛直荷重を伝達できる回転中心せん断ピン(P接合)を配置すると共に、前記S造大梁の下フランジの高さ位置と同等レベル以下の位置に、一方は前記PCa柱部材の梁レベル被覆鋼管に溶接接合された柱側抵抗板と、他方は前記S造大梁の下フランジ、もしくは下フランジに固定され下フランジよりも下側位置にある梁側抵抗板を対面させ且つ接触させて配置し、両者を相対ズレ可能に高力ボルトで締め付けた摩擦ダンパー(FD接合)の組合せによる2点接合「ピン−摩擦ダンパー接合」(P−FD接合)を採用するか、
の上記1)もしくは2)のいずれかの接合方法によって前記PCa柱部材に接合されることにより、
長期鉛直荷重による梁応力は、両端ピン接合の単純梁の応力に近い応力状態となっており、且つ地震時や暴風時等に建物に作用した水平力によって層間変位が生じる場合には、梁両端が柱に剛接合された場合の短期梁応力が発生せず、且つ梁両端の摩擦接合部の相対ズレによりエネルギー吸収性能が発揮される摩擦ダンパーとして機能する摩擦ピン接合大梁(以下「摩擦ピン接合大梁」という)を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈構成3〉
柱をRC造、2階以上の大梁をS造とする混合構造骨組であり、
前記柱には前記PCa柱部材を、対象建築物の全ての柱もしくはその一部に採用しており、
前記PCa柱部材の柱脚以外に繋がるS造大梁部材には前記摩擦ピン接合大梁を採用しており、
対象建築物の各階に鋼製ブレースもしくは鋼製の座屈拘束ブレースが、平面的にバランスよく配置されており、
前記ブレース材の鉛直立面の配置形状は、最下階にあっては2本一組のV字型形状、2階以上の階にあっては2本一組のΛ字型もしくはV字型形状となっており、
前記ブレース材の端部接合部は、最下階の下側交点部においては、最下階大梁のスパン中央部に、多数の孔を有する鉛直のPBLジベル板を埋設して固定されたブレース材固定部材に連結されることにより最下階大梁に定着されており、
2階以上のブレース材端部は、ブレース材端部が前記PCa柱部材の近傍に位置する場合には、ブレース材端部と前記S造大梁端部が鋼材同士で連結一体化された梁端部連結ブロックを構成しており、前記梁端部連結ブロックが前記PCa柱部材の前記梁レベル被覆鋼管に溶接接合もしくは高力ボルト接合によって前記柱部材と一体化され、
2階以上のブレース材端部が前記S造大梁の中央部近傍に来る場合には、前記S造大梁中央部に予め溶接された梁中央部連結ブロックのブレ−ス材端部と前記ブレース材が溶接もしくは高力ボルトで接合されることにより前記S造大梁と一体化されることにより、
前記ブレース材およびそれに連結される前記S造大梁の自重は、前記PCa柱なしでも支持でき、自立可能となっている自立型ブレース材を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈構成4〉
構成1に記載した柱部材を対象建築物の全ての柱、もしくはその一部に採用しており、
構成2に記載したS造大梁部材を2階以上の全ての大梁、もしくはその一部に採用しており、
構成3に記載したブレース材を、平面的にバランスよく、各階に配置して、組立型上部構造体骨組を構成しており、
前記柱部材の柱脚部を繋ぐ最下階大梁は、RC造、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造、もしくはS造による剛接合平面フレームを構成しており、
前記最下階大梁の直下で、前記柱部材が配置されている平面位置、および必要に応じてその他の位置に免震装置を配置していることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈構成5〉
構成4に記載した混合構造骨組による建築物において、
建物平面の外周部フレーム、もしくはその一部、あるいは建物平面内の一部分の柱および梁に接合部を剛接合とする従来型のラーメン構造骨組もしくはブレース併用ラーメン構造骨組を混用し、
それ以外の位置には請求項4に記載した組立型上部構造体骨組を採用して、前記両骨組を混合・併用した上部構造体を構成していることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈構成6〉
構成1乃至構成5のいずれかに記載した混合構造骨組による建築物において、
請求項1に記載した柱部材の最下位置の柱脚部接合部もしくはその他の前記柱部材同士の接合部において、前記柱部材の接合部の外側に位置する接合用補強鋼管から前記柱部材の外周部被覆鋼管の表面に接触する摩擦材もしくはボルト形状部材が締め付け接触されており、当該柱部材に浮き上り変位が発生した場合には、前記ボルト形状部材の先端部もしくは前記摩擦材と前記柱部材の外周表面接触部において摩擦抵抗力が発生し、前記柱部材の浮き上り変位に伴うエネルギー吸収が発生する制震構造柱となっていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
〈課題1解決の効果〉
本発明では、まずS造大梁は柱・梁接合部内に挿入されないので、梁フランジが柱筋の配置を阻害するという問題自体が発生しない。
柱部材は、予め工場で製作されるプレキャストコンクリート部材であるので、現場で柱筋を組立て、配筋するという作業自体が存在しない。また、軸方向鉄筋にはPC鋼材を混用することが可能であり、プレストレスを導入したプレストレスト・プレキャストコンクリート柱部材とすることも可能で、高強度コンクリートとの組み合わせにより、より軽量で、強靱で、高耐力の柱部材とすることができる。
柱と梁の交点となる柱・梁接合部は、剛接合によるラーメン構造骨組を構成していないので、大梁は単純支持梁となっており、長期鉛直荷重による梁端部の曲げ応力はほぼゼロであり、柱には梁端部のせん断力が鉛直荷重として伝達されるだけである。従って、柱には曲げモーメントは殆ど作用しないと言ってよい。より厳密に言えば、柱芯から大梁端部のピン接合点までの距離dと梁端部のせん断力QによるQxd分のモ−メントが作用するが、これは端部が剛接合された梁に発生するモーメントに比較すると殆ど無視し得る程度の値である。
更に、柱・梁接合部が剛接合されていないため、地震時に水平力が作用しても、柱および梁端部には地震時応力が発生しない。従って、本発明の骨組みでは、長期鉛直荷重によって生じる単純梁の応力に対して梁部材断面を設計すればよく、極めて経済的なS造大梁を設計可能であり、骨組設計の経済性の観点でも極めて優れた構造となっている。
また円形断面の柱形状は、建物内人員が衝突等によって怪我する恐れも少なく、美観上および建物内部空間の利用効率性等の観点でも優れた点を有している。
〈課題2解決の効果〉
課題の第2点であるS造梁からRC造柱への応力伝達機構という観点においても、本発明では梁端部の鉛直荷重によるせん断力のみを柱に伝達すればよいので、これ以上単純で明快な応力伝達の課題はないと言ってよい。従来の柱RC梁Sの混合構造のように、柱・梁接合部においてコンクリートの圧縮ストラットやねじり応力伝達などの鉄骨部材からコンクリート柱への複雑な応力伝達機構を構成・想定する必要がない。
S造大梁端部のせん断力をRC柱のコンクリート断面へ伝達する機構も単純明快となっている。本発明では、RC柱の梁レベル位置に梁レベル被覆鋼管が設けられているので、S造大梁端部のせん断力は、柱表面の被覆鋼管に鋼材同士の接合によってせん断力を伝達できる。
この柱の被覆鋼管に伝達された鉛直荷重(梁から伝達されたせん断力)は、被覆鋼管の内側に溶接接合されているPBLジベル鋼板によってコンクリートに伝達される。PBLジベルとは、通常直径が30mmφ〜50mmφ程度の複数の孔を設けた鋼板をコンクリート内に埋設しているもので、この孔内に貫入したコンクリートの2面せん断抵抗機構により、極めて高い剛性で大きなせん断力を伝達することができる。従来のスタッドボルトが抵抗力を発揮するには、ボルト自体に大きな曲げ変形が生じる必要があるため、せん断力を定着する剛性はあまり高くないのが実態である。これに対してPBLジベル鋼板は、スタッドボルトの曲げ剛性に対して圧倒的に高い面内曲げ剛性を有しており、しかも鋼板の寸法によりその剛性を自由に高められるので、せん断抵抗力を発揮する際に殆ど水平変形を生じる必要がなく、極めて高い剛性と耐力(抵抗力)を容易に確保できるという利点を有している。
本発明では、RC柱の梁レベル位置に設けられた被覆鋼管の内側に2枚以上、通常は90°方向に4枚の孔付き鋼板(PBLジベル鋼板)を鉛直方向に配置している。柱・梁接合部内のコンクリートはこのジベル鋼板を完全に埋め込むように打設されており、プレキャスト柱が円筒形断面として構成されている場合、PBLジベルが配置されている梁レベル位置の柱のコンクリート断面の厚さは、他の部位よりも厚肉に構成されている。これが従来の既製コンクリート杭とは異なっている点の一つである。
この梁からせん断力が伝達される梁レベル位置は、柱の応力上重要な位置であるが、この部分の外周は梁レベル被覆鋼管により全外周が被覆・拘束されており、その被覆鋼管の面外変形は内側のコンクリートおよびPBLジベル鋼板により拘束・補剛されているので、剛性・耐力共に高い補強ゾーンが構成されている。
更に本発明では、PBLジベルの孔に、柱・梁接合部の周囲を囲む帯筋(Hoop筋)を貫通させている。PBLジベルの孔に鉄筋を挿入することによりPBLジベルのせん断力伝達機構としての靭性(変形性能)を高めることができると同時に、柱・梁接合部の周囲をHoop筋で拘束することにより柱・梁接合部のせん断破壊に対する安全性・安定性も向上させている。
〈課題3解決の効果〉
第3課題は施工の信頼性の問題である。本発明では、柱・梁接合部内にS造梁部材が侵入しないので、S造梁のフランジが柱のコンクリート充填を阻害するという問題自体が発生しない。梁接合レベルに存在する柱内の鋼材は、梁レベル被覆鋼管に溶接されているPBLジベル鋼板のみであり、しかもこの鋼板は柱の鉛直方向に配置されており、力の伝達方向と鋼板の向きが一致しており、円滑な応力伝達が可能である。
また本発明では、RC造の柱部材を全てプレキャスト(PCa)部材として工場生産することを基本としている。建築物用の柱や梁部材をプレキャスト製造することは建築工法として既に採用されており、特に超高層RC住宅や物流倉庫等の建築物ではかなり一般化している。しかし、これらの建築物で用いられている柱や梁部材は、柱は主に正方形、梁は長方形の矩形断面であり、コンクリートが柱全断面にまで打設される中実断面部材である。
これに対して本発明は、外形を円形、内部に空洞を有する円筒形断面を基本としているので、遠心力成型が可能となっている。従って、既製コンクリート杭の製造設備を利用可能であり、極めて効率的に、蜜実で高強度のコンクリートを短時間で製造することが可能である。
〈課題4解決の効果〉
第4課題は、建設現場における施工の効率性、建設工事そのものの合理化の問題である。本発明の柱は、工場製作された円筒形断面が基本であるので、従来の中実の矩形断面のプレキャスト柱よりもかなり軽量になっている。そのため、建設現場における揚重・建て方作業が容易であり、現場における型枠組み立て作業は完全に不要で、現場作業が大きく省力化されることになる。
更に、本発明の特徴は、プレキャストされた柱部材同士の接合は接合部品を介して挿入・嵌合させるだけの組立であり、柱とS造梁の接合は溶接もしくは高力ボルト接合、S造ブレース材も、現場では予めS造梁と一体に工場で接合されている端部とブレ−ス材を高力ボルトで現場組立接合可能となっており、建物全体の構成部材を極めて短時間で、効率よく、高精度で組立・構築することが可能となっている。
以上、各課題に対する本発明の解決策による効果を説明したが、本発明の効果を要約すると以下のとおりである。
(1)RC造柱は、全て工場で製造された高品質部材であり、且つ円筒形断面であるので、プレストレスの導入と高強度コンクリートとの組合せにより、軽量で、高軸耐力の高性能柱部材とすることが可能であり、現場組立作業も容易になっている。
(2)S造梁端部と柱部材との接合部が単純であり、S造梁からRC造柱への応力伝達機構が単純明快で信頼性が高い。
(3)S造梁部材は柱内に侵入せず、柱・梁接合部の柱内にはPBLジベル鋼板が縦板として配置されているだけで、鉄骨梁部材は存在せず、単純な構成となっているため、コンクリート部材(柱)としての高い品質が確保できる。
(4)柱部材同士の接合・組立は、柱接合部品を介して柱空洞内に挿入・嵌合させるだけである。また、梁およびブレース材の接合は高力ボルト接合による組立が基本であり、高品質で高効率の施工が行えるので、施工性・経済性にも優れている。
(5)本発明のS造梁端部の接合方法である「回転摩擦ピン接合」もしくは「ピン−摩擦ダンパー接合」を採用すると、簡便な方法でありながら、長期鉛直荷重に対しては端部ピン支持による単純梁を実現し、且つ地震力の作用に対してはエネルギー吸収を行う制震構造骨組を実現している。
更に、本発明の構造骨組を採用すると、以下の利点を有する建築構造物を実現できる効果がある。
(6)鉛直荷重による応力が支配的になる鉛直積載荷重が大きく、スパンの大きな建物に対して、梁下有効寸法の大きな効率的な建築空間を、経済的に構成することができる。
(7)大きなスパンを必要とする建物に本発明の骨組構造を適用すると、鉄骨造骨組みよりも高い剛性が確保でき、RC造骨組のように重い建物にならないので、経済性、耐震安全性の両観点で優れた建物を実現することができる。
(8)柱部材の2階以上の梁高さ位置では、表面に露出している被覆鋼管部材と鉄骨造梁端部間の溶接もしくは高力ボルトによる鉄骨部材同志の乾式接合を可能としている。
本発明のPCa柱の構成を示す縦断面図であり、A〜Fの記号部はそれぞれ以下の位置における水平断面図である。 A:柱脚部水平断面、B:柱中間部水平断面、C:梁レベル水平断面、 D:柱上階中間部水平断面、E:柱部材上端部平面図、F:柱脚固定部材断面図および平面図 最下柱下端部(柱脚部)の固定方法を示す説明図であり、 (A1)柱部材水平断面図、 (A2)柱脚部縦断面図(挿入方式)、 (A3)挿入方式柱脚固定部材の平面図 (B1)柱部材水平断面図、 (B2)アンカーボルト溶接固定方式による引張力抵抗型の柱脚部および柱脚固定部材の断面図、 (B3)同上柱脚部固定部材の平面図 本発明の柱部材同士の接合部の接合方法を示す説明図で、 (1)接合直前の柱部材および柱接合部品の位置関係を示す図、 (2)接合後の柱部材の接合部近傍を示す図 である。 本発明の柱と梁の接合方法「P−FD接合」(ピン−摩擦ダンパー接合)の一例:S造梁下フランジの下にある摩擦ダンパーが縦板型の構成方法を示す説明図で、 (1)S造大梁の上フランジの上から見た平面図(Aレベル見下図)、 (2)柱とS造梁接合部の縦断面図、 (3)S造大梁の下フランジ直下レベルの水平断面(Bレベル見下図)、 (4)S造大梁から柱方向を見た(C−C矢視)縦断面図 である。 本発明の柱と梁の接合方法「P−FD接合」(ピン−摩擦ダンパー接合)の一例:S造梁下フランジの下にある摩擦ダンパーが水平板型の構成方法を示す説明図で、 (1)S造大梁の上フランジの上から見た平面図(Aレベル見下図)、 (2)柱とS造梁接合部の縦断面図、 (3)S造大梁の下フランジ直下レベルの水平断面(Bレベル見下図)、 (4)S造大梁から柱方向を見た(C−C矢視)縦断面図 である。 本発明の柱と梁の接合方法「P−FD接合」(ピン−摩擦ダンパー接合)の作動原理を示す説明図で、 (1)柱上部が右方向に傾斜した場合の摩擦ダンパーの作動方向を示す立面図、 (2)柱上部が左方向に傾斜した場合の摩擦ダンパーの作動方向を示す立面図 である。 本発明のPCa柱とS造大梁で構成される混合構造骨組の構成例 梁端部接合をW−HBピン接合(回転摩擦ピン接合)とした場合 本発明のPCa柱とS造大梁で構成される混合構造骨組の構成例 梁端部接合をP−FD接合(ピン−摩擦ダンパー接合)とした場合 本発明のPCa柱とS造大梁で構成される混合構造骨組の構成例 S造大梁とS造ブレースを一体化した自立型ブレースを採用した部分 S造自立型ブレースの最下部固定点の詳細図 (1)PBLジベル鋼板による固定部材付近の正面からみたV字形立面と水平断面図(G矢視見下図) (2)同図直交方向立面図(H矢視) 本発明の柱・梁・ブレースによる免震構造建物の構成例−1(ブレース配置スパンを分散配置した場合) (1)基準階平面伏図(見下図)、 (2)外周構面(Y1、Y5通り)軸組図、 (3)内部構面(Y2〜Y4通り)軸組図 である。 本発明の柱・梁・ブレースによる免震構造建物の構成例−2(ブレース配置スパンを集中配置した場合) (1)基準階平面伏図(見下図)、 (2)外周構面(Y1、Y5通り)軸組図、 (3)内部構面(Y2〜Y4通り)軸組図 である。 外周構面に従来型の剛接合(ブレース併用ラーメン構造)フレームを配置し、内部に本発明の柱・梁による骨組架構を採用した免震構造建物の構成例 (1)基準階平面伏図(見下図)、 (2)外周構面(Y1、Y5通り)軸組図、 (3)内部構面(Y2〜Y4通り)軸組図 である。 本発明の柱部材にエネルギー吸収性能を発揮する制震構造柱としての機能を付与する柱の接合部(柱脚部および一般接合部)の接合方法を示す説明図であり、 (A1)柱脚部柱部材の水平断面図、 (A2)柱脚部のすべり摩擦を付与する接合部縦断面図、 (A3)柱脚部のすべり摩擦接合部の平面図 (B1)柱部材接合部の水平断面図、 (B2)柱部材接合部のすべり摩擦を付与する接合部縦断面図、 (B3)柱部材接合部のすべり摩擦発生部の平面図 従来のRC造柱、S造梁の混合構造の柱・梁接合部の構成を示す詳細図 (1)柱・梁接合部付近の上フランジレベルの水平断面図(見下図)、 (2)柱・梁接合部付近の鉛直断面図 である。
本発明の特徴は、RC造柱とS造梁の混合構造であるだけでなく、従来の一般的なラーメン構造骨組(剛接合骨組)でもなく、且つ従来の単純なピン接合骨組でもない、全く新しい構造骨組みを極めて簡便に構成、組み立てることができる点にある。すなわち、
本発明は、柱を鉄筋コンクリート造(以下「RC造」という)、2階以上の大梁を鉄骨造(以下「S造」という)とする混合構造骨組であり、
前記柱は、予め工場で製造したプレキャスト鉄筋コンクリート造(PCa)の柱部材(以下「PCa柱部材」という)を現場打設コンクリートを用いずに上下方向に組立・接続できる乾式接合柱となっており、
前記柱の外形は円形で、前記柱部材の少なくとも上下両端部には内部に同心円の円形空洞を有しており、
前記柱の長さは、1)最下柱部材は、適用対象柱の適用位置の最下端部から上層階の階高中央部付近までの高さ、2)中間柱部材は、最下柱部材もしくは下側の中間柱部材の上端位置からより上層階の階高中央部付近までの高さ、3)最上柱部材は、最下柱部材もしくは中間柱部材の上端位置から適用対象最上階の適用位置最上端部までの高さとして製造されており、
各階の梁が取り付く高さ位置には、梁の部材成と同等もしくはそれ以上の高さを有し、前記柱部材と外径寸法の等しい被覆鋼管(以下「梁レベル被覆鋼管」という)が埋め込まれて、柱の外周面が鋼材表面となっており、
前記梁レベル被覆鋼管の内側には、その被覆鋼管部材に溶接された多数の孔(以下「PBL孔」という)を有する鉛直方向のPBLジベル鋼板が少なくとも2枚以上配置され、前記PBL孔の内部までコンクリートが充填され、且つ前記PBLジベル鋼板がコンクリート内に完全に埋没し一体化されたPCa柱部材となっており、
前記最下柱部材の下端部は、下側床面もしくは当該柱を受ける下側部材に支持され、1)前記最下柱部材の下端中央空洞部に嵌合する円柱状、円筒状、円錐形状のいずれかの突起部を有する柱脚固定部材の上から、前記突起部が前記柱部材の下端部空洞に挿入され嵌合するように設置されるか、もしくは2)前記最下柱部材の柱脚部の外周を囲う柱脚周囲補強鋼管を有する柱脚固定部材の上から、前記柱脚周囲補強鋼管の中に前記柱の柱脚最下部が挿入され嵌合するように設置されることにより、前記最下柱部材の下端部が、鉛直荷重および水平力に対しては剛に抵抗し、柱脚部の回転モーメントに対しては引張側応力度部分の抵抗力が生じない剛性低下型半固定柱脚接合となっており、
前記柱部材の2階以上の梁高さ位置では、表面に露出している前記梁レベル被覆鋼管部材と鉄骨造梁端部とを溶接もしくは高力ボルトにより、鉄骨部材同志の乾式接合とすることが可能となっており、
前記最下柱部材と前記中間柱部材、あるいは前記中間柱部材同士、あるいは前記中間柱部材と前記最上柱部材との柱部材同士の接合部のみが、1)溶接接合をするか、2)周囲拘束鋼管内に柱端部を挿入するか、もしくは3)柱接合部材を前記柱部材の端部に設けられている前記円形空洞内に挿入・嵌合させることによって両柱部材を剛接合乃至半固定接合となるPCa柱部材を用いている混合構造骨組による建築物である。
以下、本発明の実施の形態を実施例を示す図面に基づいて説明する。
図1に示す実施例1は、先ず本発明の主要な構成要素であるPCa柱部材の構成を示す断面図である。
まず、RC造柱1は全長に渡って円形断面をしており、その下端部および上端部である図1のA断面およびE断面位置には、端部にドーナツ型円形平板の端部鋼板14が配置されており、柱部材の上端部および下端部には必ず空洞部13が設けられている。
この両端部の空洞部は、柱脚部にあっては柱脚接合部材50の突起部である挿入鋼管52を柱脚の空洞部13に挿入することにより、「剛−ピン遷移接合」(柱の鉛直軸力により圧縮応力度が存在する範囲では剛接合、その圧縮応力度の低下に伴って徐々に剛性(固定度)が低下し、やがて端部から浮き上がりが生じはじめるとピン接合状態に移行する)を実現するためのものである。また階の中間部高さに位置するB断面、D断面位置では、単純な中空円筒断面のプレキャストコンクリート製のPCa柱部材となっている。
RC造柱1は、予め工場で製造したプレキャスト鉄筋コンクリート造の柱部材を現場打設コンクリートを用いずに上下方向に組立・接続できる乾式接合柱となっている。
RC造柱1の最下柱部材は、適用対象柱の適用位置の最下端部から上層階の階高中央部付近までの高さで製造されている。RC造柱1の中間柱部材は、最下柱部材の上端位置からより上層階の階高中央部付近までの高さで製造されている。RC造柱1の最上柱部材は、最下柱部材もしくは中間柱部材の上端位置から適用対象最上階の適用位置最上端部までの高さで製造されている。
破線で示されたS造梁3が取り付くレベルの柱には、梁レベル被覆鋼管15が外周に配置されており、その内側に溶接されているPBLジベル鋼板17が鉛直方向に4枚配置され、それに設けられている多数のPBL孔171内に侵入したコンクリートにより柱コンクリート11と一体化されている。
この梁レベル被覆鋼管15の外側には、S造梁との接合用鋼板18が溶接されており、この鋼板18を介して伝達された床および梁の鉛直荷重(せん断力)が、PBLジベル鋼板17により柱のコンクリート断面11に伝達される。
柱の上端部(Eレベル)の上には、上階のPCa柱部材が配置され、接合される。その接合方法の詳細は、図3において後述する。
図2は、本発明のPCa柱最下部の柱脚部5の接合、固定方法において、段落[0036]に示した内部空洞挿入型とは異なる「周囲拘束型」による柱脚部5の接合、固定方法の実施例を示したものである。
図2の左側(A1)〜(A3)は、ブレースが隣接していない一般的なPCa柱の柱脚固定方法を示したもので、図2(A1)は柱脚部平断面、(A2)は縦断面、(A3)は柱脚接合部材50の平面図である。
柱脚接合部材50は、柱脚周囲補強鋼管51,ベースプレート53,柱脚固定用PBLジベル鋼板54,アンカーボルト(ナット定着タイプ)55等で構成されており、予め最下階床面コンクリート躯体21に設置されている。
この上にPCa柱部材を吊り込み、柱脚周囲補強鋼管51の内部に柱脚部を挿入し、ベースプレート53の上部に設置する。
本柱の柱脚部の固定条件は、段落[0036]に記した剛接合とピン接合の両者の特性を併せ持つ剛−ピン遷移接合を実現するもので、柱脚部を柱脚周囲補強鋼管51の内部に挿入しただけ(載せるだけ)でよい。柱の圧縮力は、ベースプレート53で支持され、水平せん断力は、柱底面の摩擦力および柱脚部周囲に存在する柱脚周囲補強鋼管51のせん断耐力で最下階床・梁面および基礎躯体21に伝達される。
本PCa柱は上層部各階のS造梁とは剛接合されていないので、建物に水平地震力が作用した時でも梁に上下方向のせん断力は発生せず、従って梁から上向きせん断力が本PCa柱に伝達されることはなく、水平力の作用によって柱に引張軸力が作用することはない。仮に上下動によって柱に圧縮鉛直軸力を上回る上向き引張力が作用した場合を想定すると、柱脚部は上向きに自由に浮き上がることができ、ベースプレート以下の柱脚接合部材50に上向き引張力が作用することはなく、また柱脚周囲補強鋼管51は充分な深さを有しているので、柱脚部が抜け出す恐れもない。仮に柱脚部に浮き上りが生じた状態でも柱の水平せん断力は柱脚周囲補強鋼管51によって負担可能である。
すなわち、最下柱部材の下端部は、下側床面もしくは当該柱を受ける下側部材に支持され、最下柱部材の下端中央空洞部に嵌合する円柱状、円筒状、円錐形状のいずれかの突起部を有する柱脚固定部材の上から、突起部が柱部材の下端部空洞に挿入され嵌合するように設置されることにより、最下柱部材の下端部が、鉛直荷重および水平力に対しては剛に抵抗し、柱脚部の回転モーメントに対しては引張側応力度部分の抵抗力が生じない剛性低下型半固定柱脚接合を実現している。
そして柱脚周囲補強鋼管51およびベースプレート53に伝達された水平せん断力は、PBLジベル鋼板54、およびそれに設けられたPBLジベル孔541により柱下の鉄筋コンクリート躯体21に伝達される。従って、アンカーボルト55に水平せん断力および引張力が作用することはないので、本柱脚部におけるアンカーボルト55は省略することができるが、図2(A3)の例では、PCa柱建て方時における安定性確保のために、若干のアンカーボルトを配置している。
図2の右側(B1)〜(B3)は、柱脚部柱に上向き引張力が作用する可能性がある場合のPCa柱の柱脚固定方法を示したもので、図2の(B1)は柱部材の柱脚部水平断面、(B2)は縦断面、(B3)が柱脚接合部材50の平面図である。
地震時等に上向き引張力が作用する可能性があるPCa柱とは、柱直近の梁に鉛直ブレースが配置されている場合である。即ち、鉛直ブレースに生じた軸力の鉛直成分が、直近のPCa柱に伝達され、この鉛直上向の力が柱の長期鉛直軸力を上回る場合である。
この場合のPCa柱の柱脚部付近は、引張力を負担するために、少なくとも柱脚部近傍は柱外周部に被覆鋼管15を配置しているSC柱としていることを基本としている。
柱脚接合部材50は、柱脚周囲補強鋼管51,ベースプレート53,柱脚固定用PBLジベル鋼板54,アンカーボルト56等で構成されており、予め最下階床面コンクリートに設置されている。アンカーボルト56の上部は、予め柱脚周囲補強鋼管51の外周に直接溶接されている。
この柱脚接合部材50の上にPCa柱部材1を吊り込み、柱脚周囲補強鋼管51の内部に挿入し、ベースプレート53の上部に設置される。
本柱の柱脚部の固定条件の特徴は、柱に作用する上向き引張力に抵抗(定着)できる点にある。柱脚部外周には被覆鋼管15が存在し、これを柱脚周囲補強鋼管51の上端部に全周現場溶接する。これにより、柱脚部に作用した引張力は柱脚周囲補強鋼管51に伝達され、更にこれに溶接されているアンカーボルト56により下部躯体21に定着される。
柱脚部に作用する水平せん断力は、柱1の底部とベースプレート53の上面との摩擦力および柱脚部を囲む柱脚周囲補強鋼管51によりベースプレート53に伝達され、ベースプレート53の下側に溶接されている柱脚固定用PBLジベル鋼板により基礎躯体21に伝達される。
本柱脚部の固定条件は、柱脚部曲げモーメント・水平せん断力共に抵抗できるので、ほぼ完全固定条件となる。
図3は、PCa柱部材同志の接合方法の実施例である。図3(1)は、接合前の状態を示し、図3(2)は接合完了後の形状を示している。
柱接合部材60は、柱境界部接合プレート61、柱接合部−上側挿入部材62、柱接合部−下側挿入部材63より構成されている。
先ず、下側に位置するPCa柱の上端部の端部鋼板14および内側鋼管16のある中空部13に、柱接合部材60の柱接合部−下側挿入部材63を挿入し、その上から上側のPCa柱の下端部を吊り込み、柱接合部−上側挿入部材62を上側柱下端部の空洞部13に挿入する。接合方法は以上で完了である。
尚、柱接合部材60の柱境界部接合プレート61の上下には、PCa柱の上下端部にある端部鋼板14が存在するので、現場での柱の安定化のために、柱境界部接合プレート61とその上下の端部鋼板14を現場溶接することも可能である。
以上のとおり、最下柱部材と中間柱部材、あるいは中間柱部材と最上柱部材との柱部材同士の接合部のみが、溶接接合もしくは鋼製被覆部材を用いる機械式乾式接合により剛接合、もしくは柱接合部材60を接合部上下の柱部材端部に設けられている円形空洞内13に挿入・嵌合させることによって両柱部材を半固定接合となる柱接合を実現している。
図4〜図6は、本発明の鉄骨梁3の端部とPCa柱1の接合方法の実施例を示したものである。
まず図4は、本発明のPCa柱とS造梁の接合方法「P−FD接合」(ピン−摩擦ダンパー接合)の一例であり、摩擦ダンパーが縦板型の構成方法を示す説明図で、図4(1)はS造大梁の上フランジの上から見た平面図(Aレベル見下図)、図4(2)は柱とS梁接合部の縦断面図、図4(3)はS造大梁の下フランジ直下レベルの水平断面(Bレベル見下図)、図4(4)はS造大梁側から柱方向を見た(C−C矢視)縦断面図である。
まず、図4(1)および(2)に示すとおり、S造大梁の上フランジの高さ位置の上側、スラブのほぼ中心高さ位置に回転可能で鉛直荷重を伝達できる回転中心せん断ピン接合部35(P接合)を設ける。その中心にはピンロッド351を配置し、それをPCa柱の被覆鋼管15に溶接された2枚の鉛直鋼板で挟み、2面せん断のピン接合部を実現している。
このピン接合部の中心位置は、鉄骨梁の上側に設けられるコンクリートスラブ厚さの中心と一致しているので、S造梁端部の回転変形に対してその回転運動をスラブが阻害することがなく、このピン位置が、S造梁端部の回転中心となる。更に、スラブによるピンの回転妨害を完全に排除するために、ピンロッド351に平行してコンクリートスラブにスリット23を設ける場合もある。
一方、S造梁の下フランジ31の下側には、下側補強プレート34が鉛直方向に溶接されており、これをPCa柱1の被覆鋼管15に溶接された2枚の柱側抵抗板36で挟み、その中心には摩擦軸力導入用の高力ボルト371が配置されている。梁側プレート34と柱側抵抗版36は対面・接触して配置されており、両者の接触面には摩擦材372が配置されているか、摩擦面処理が施されており、両者を相対ズレ可能に高力ボルト371で締め付けることにより、梁端部の回転運動に伴って、梁下側の水平変位により摩擦ダンパー(FD接合)として作動する2点接合「ピン−摩擦ダンパー接合」(P−FD接合)が実現されている。
S造梁のウェブ板側面には補強プレート38が配置されている。これは、摩擦ダンパーが発生させた摩擦抵抗力のS造梁側負担力により、S造梁のウェブ板の挫靴を防止し、且つダンパー抵抗力をS造梁の上フランジに伝達し、上フランジからピン接合部を介して柱にダンパー抵抗力を伝達するためである。これにより、S造梁側の軸変形を小さく抑えることができるので、梁端部の回転変形に伴う摩擦ダンパー位置での水平変位をロスさせずに有効にエネルギー吸収させることができる。
図5は、本発明の柱と梁の接合方法「P−FD接合」(ピン−摩擦ダンパー接合)のもう一つの実施例で、摩擦ダンパーの抵抗版を水平に構成する場合の説明図であり、図5(1)はS造大梁の上フランジの上から見た平面図(Aレベル見下図)、図5(2)は柱とS梁接合部の縦断面図、図5(3)はS造大梁の下フランジ直下レベルの水平断面(Bレベル見下図)、図5(4)はS造大梁から柱方向を見た(C−C矢視)縦断面図である。
図5(1)および(2)に示すとおり、S造大梁の上フランジの高さ位置の上側、スラブのほぼ中心高さ位置にS造梁端部の回転中心となるせん断ピン接合部35(P接合)を設けることは実施例5と同じであり、このピン位置が、S造梁端部の回転中心となる。実施例5と同様に、せん断ピンロッド351の両側スラブにスリット23を設けることも推奨される。
一方、S造梁の下フランジ31の下側には、水平方向に配置されS造梁下フランジに一体化された摩擦ダンパー用抵抗版373が配置されており、これをPCa柱の被覆鋼管15に溶接された2枚の水平の柱側抵抗板36で上下に挟み、その中心には摩擦軸力導入用の高力ボルト371が配置されている。梁側プレート373と柱側抵抗版36は対面しており、その接触面には摩擦係数を高める摩擦材372が配置されており、その接触面を相対ズレ可能に高力ボルト371で締め付けることにより、梁端部の回転運動に伴って、梁下側の水平変位により摩擦ダンパー(FD接合)として作動する2点接合「ピン−摩擦ダンパー接合」(P−FD接合)が実現されている。
S造梁のウェブ板側面には、摩擦ダンパーの抵抗力によるウェブ板の挫靴を防止するための補強プレート38が配置されている点は実施例5と同じである。
図6は、実施例5および実施例6の「P−FD接合」における「ピン−摩擦ダンパー」の作動原理の説明図である。
図6(1)は、柱上部が右方向に傾斜した場合の摩擦ダンパーの作動方向を示す立面図であり、図6(2)は、柱上部が左方向に傾斜した場合の摩擦ダンパーの作動方向を示す立面図である。
ピン−摩擦ダンパー(P−FD)接合部では、梁端部はいずれも梁の上フランジ上側に位置するピン接合位置35を回転中心として梁端部全体が回転変形を生じるので、その回転変形に伴って下フランジよりも下側に位置する摩擦ダンパー37位置では、水平方向の相対ズレ変位が発生する。この相対ズレ変位により摩擦ダンパーが作動し、摩擦力によりエネルギー吸収効果を発揮する。
摩擦ダンパーは繰り返しにより劣化しない摩擦接合材372を介在させることで、多数回の地震力の作用に対して、劣化を生じることなく、S造梁およびPCa柱を塑性化あるいは損傷させることなく、エネルギー吸収を行うことができる。
図7は、本発明のPCa柱1とS造大梁3で構成される混合構造骨組の構成例を示したもので、PCa柱とS造梁端部の接合方法にW−HBピン接合(回転摩擦ピン接合)を採用した場合の実施例である。
先ず、柱脚接合部5は、最下階のRC造床・梁躯体20上に予め設置されている柱脚固定部材50の挿入鋼管52をPCa柱の柱脚空洞部13に刺差し込んで、柱脚部を剛−ピン遷移接合として柱を立設している。
柱の2階部分に見られるPCa柱同志の接合部6では、柱部材の上下端面に配置されている端部鋼板14を接触させた上で、柱接合部の外周を拘束する柱接合部−周囲拘束プレート64で外周を拘束し、柱の剛接合を実現している。この接合部は階高の中央高さ位置に設けられているので、水平地震力が作用した場合には、この接合部付近が反曲点となり、柱には大きな曲げモーメントは発生しない。従って、柱接合部−周囲拘束プレート64は主としてせん断力を伝達できれば必要充分であり、簡便な方法で安全な構造骨組の接合が実現されている。
次ぎは、PCa柱1とS造梁3の接合方法である。接合部の部分拡大図に示すとおり、柱梁接合部の外周部にある被覆鋼管15に梁接合用補強プレート39が溶接されており、これとS造梁のウェブプレート32が高力ボルトで2面せん断接合される。この時、柱側縦板39の接合部の高力ボルト孔は、ボルト挿入用の孔径のゆとりを最小に抑えたガタのない摩擦接合としており、すべりを発生させない固定摩擦接合としている。
他方S造梁端部のウェブ(W)板側32は、高力ボルトの配置中心位置にある高力ボルト(中心ボルト421)は孔径のゆとりを最小に抑え、その他のボルト孔は中心ボルト421位置から遠くにあるボルト位置ほど大きな孔径として、中心ボルト位置を回転中心とする回転ズレを意図的に発生させる「回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)」を採用している。
この回転変形に伴うズレ変位を生じる高力ボルト371位置の接触面は、摩擦係数を調整する摩擦面処理を行うか、摩擦材372を介在させるものとする。
これにより、地震時に建物に層間変位が生じると、柱の傾斜角に応じてこの摩擦接合部に回転ズレ変形が発生し、摩擦によるエネルギー吸収が発生する。従来の高力ボルト接合は、摩擦力により締め付け鋼板のずれ発生を防止する思想であるが、本発明の回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)は、意図的に摩擦面のズレ発生を許容し、それによるエネルギー吸収を可能にしたものである。即ち、本発明の梁端部における回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)部では、特別の制震装置やダンパーを用いずに、梁端部の単純な高力摩擦接合により制震ダンパーを組み込んだ場合と同等の制震構造を実現している。
図7の最上階の柱は、鉄骨造柱を採用しており、PCa柱1上に鉄骨柱65が接合されている。最上階の柱接合部6の拡大図に示すとおり、上階側のS造柱65の柱脚部には接合プレート61の下側に突出部63があり、これを下側のPCa柱上端の空洞部13に挿入するだけでよいので、極めて簡単に剛−ピン遷移接合が実現される。またS造柱65の上端と最上階S造梁3との接合も高力ボルト接合のみにより回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)が採用されている。
図8は、本発明のPCa柱とS造大梁で構成される混合構造骨組の構成例を示したもので、PCa柱1とS造梁3の端部接合方法にP−FD接合(ピン−摩擦ダンパー接合)を採用した場合の実施例である。
先ず、柱脚部は、最下階のRC造床・梁躯体20上に予め設置されている柱脚固定部材50の挿入鋼管52をPCa柱の柱脚空洞部13に刺差し込んで、柱脚部を剛−ピン遷移接合として柱を立設している点、および2階・3階の階高中央付近に設けられているPCa柱同志の接合方法は実施例7と同じである。
本実施例は、PCa柱1とS造梁3の接合方法に特徴がある。3階床レベルの柱と梁の接合部に示すとおり、S造梁の上フランジレベルの少し上の床スラブ厚さの中央付近にピンロッド351を回転中心とするピン接合が設けられている。これにより、地震時に建物に層間変位が発生すると、梁上端側のピン接合ロッド351を回転中心として梁と柱が相対的に傾斜することになり、梁の下端フランジ端部と柱との間に相対水平変位が発生する。
従って、柱の被覆鋼管側に固定された2枚の鋼板でS造梁の下端フランジ31を上下に挟み、この摩擦面に高力ボルトで接触力を負荷することで、梁下端フランジ位置に摩擦ダンパ−37を構成している。
このPCa柱とS造梁の接合方法が、P−FD接合(ピン−摩擦ダンパー接合)であり、実施例7の回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)と同様に、特別の制震装置を用いずに、梁端部の単純な接合方法により制震(摩擦)ダンパーを組み込んだ場合と同等の制震構造を実現している。
図8の最上階は、より簡便な方法で最上階床に鉄骨造梁3および床・屋根組を導入する方法を示している。即ち、柱は最上階の梁レベル直近までPCa柱を伸ばし、その上端部にS造梁の端部を受ける短いS造柱部材65を設けて、その下側突出部63をPCa柱上端の空洞部13に挿入するだけである。極めて簡単に剛−ピン遷移接合が実現される。また本実施例では、最上階のS造梁の接合にはウェブ板のみを高力ボルト接合とする簡便な擬似ピン接合方法が採用されている。
図9は、本発明のPCa柱1とS造大梁3で構成される混合構造骨組の中で、建物全体の水平剛性を確保し、水平力を負担する自立型ブレース構面の構成例を示したものである。
図示のブレース材7には鋼製ブレースもしくは鋼製の座屈拘束ブレースが用いられており、本構面は建築物の平面内にX・Y両方向共にバランスよく配置されているものとする。
図9の下階の方から説明すると、鉛直立面のブレース配置形状は、最下階にあっては2本一組のV字型形状となっており、2階以上の階にあってはブレース端部位置が連続するように、2本一組のΛ字型もしくはV字型形状となっている。
ブレース材の端部接合部は、最下階の下側交点部においては、最下階大梁のスパン中央部に、多数の孔を有する鉛直のPBLジベル鋼板73を取り付けたベースプレート72を埋設して固定されたブレース材下端定着部71に連結されることにより最下階大梁躯体20に定着されている(詳細拡大図は、図10参照)。
2階以上のブレース材端部は、ブレース材端部が前記PCa柱部材の近傍に来る2階および4階では、ブレース材端部と前記S造大梁端部が鋼材同士で連結一体化された梁端部連結部ブロック74を構成しており、その梁端部連結部ブロック74が前記PCa柱部材の前記梁レベル被覆鋼管15に溶接接合もしくは高力ボルト接合により前記柱部材と一体化されている。
2階以上のブレース材端部が前記S造大梁の中央部近傍に来る場合には(3階では)、前記S造大梁中央部に予め溶接された梁中央部ブレ−ス材端部ブロック75と溶接もしくは高力ボルトで接合されることにより前記S造大梁と一体化されている。
本構面では、ブレース材およびそれに連結されるS造大梁の自重は、前記PCa柱なしでもブレース材自身で支持でき、自立可能となっている自立型ブレース材となっていることに特徴がある。
このブレース構面に水平力が作用すると、ブレース材にはその水平力に釣り合うだけの軸力が発生する。軸力の水平分力は外力の水平力と釣り合うが、鉛直分力は、隣接柱の鉛直方向軸力となるので、隣接するPCa柱には鉛直上向きの引張力もしくは下向きの圧縮力が作用する。鉛直上向きの引張力がPCa柱の長期鉛直軸力を上回る場合には、PCa柱に引張応力度が生じることになるので、ブレース構面に隣接するPCa柱は外周に被覆鋼管を配したSC柱(鋼管被覆コンクリ−ト柱)とすることが望ましい。その柱脚部は図2(B2)および(B3)に示したようにPCa柱の柱脚部外周の被覆鋼管15を柱脚接合部材50の周囲補強鋼管51の上端に溶接し、この周囲補強鋼管51に溶接されているアンカ−ボルト56によって引張力を基礎躯体20に伝達する。
図9の柱脚部の詳細としては、柱脚部のベースプレート53をアンカーボルト55で定着する方法として番号59で示した左側柱の方法と、右側柱は、柱脚外周の被覆鋼管を柱脚接合部材50のベースプレート53に直接溶接し、PBLジベル鋼板54で基礎躯体20に定着する方法の図2とは異なる2方法を示している。
図10は、最下階スパン中央部に位置するV字型ブレースの定着部の詳細図である。ベースプレート72の下側には、多数のPBLジベル孔を有する鉛直のPBLジベル板73が鉛直に3枚配置されており、2本のブレースが負担する水平分力を下側の最下階RC大梁に伝達する。
ブレース材70の鉛直分力はV字型両側の2部材で相殺されるが、そのためには両部材の鉛直分力が伝達される必要があり、ベースプレート72および鉛直のPBLジベル鋼板73がその役割を果たしている。
またこのブレース下端定着部材71を予め下側のコンクリート躯体20に設置するために、ベースプレート72にはコンクリ−ト打設が容易に行えるための孔720が設けられている。
図11は、本発明を採用した免震構造建築物の全体構成を示す実施例であり、水平力を負担するブレース構面を建物全体に分散配置した場合の一例で、図11の(1)は基準階平面伏図(見下図)、図11(2)は外周構面(Y1、Y5通り)の軸組図、図11(3)が内部構面(Y2〜Y4通り)の軸組図である。
図11の(1)および(2)に示すとおり、ブレースが配置されているスパンの両側の柱には引張力抵抗型のPCa−RC造柱もしくはSC柱10が配置されており、ブレースによって柱に生じる圧縮軸力および引張軸力に抵抗できおるようになっている。特に柱10の着色部分はSC柱が採用されていることを示している。各柱は、1階のRC造大梁20上に設置されており、その柱下に積層ゴム免震装置81、すべり支承免震装置82、転がり支承免震装置83が配置されている。
免震装置8の配置位置は、建物全体のねじれ振動や残留変位の発生等を考慮すると、主として積層ゴム支承81は建物外周部に、転がり支承83は外周構面に、すべり支承82は内部構面の柱下に配置することが望ましい。
図12は、本発明による免震構造建築物の全体構成を示す実施例において、水平力を負担するブレース構面を集中配置した場合の一例で、図12の(1)は基準階平面伏図(見下図)、図12(2)は外周構面(Y1、Y5通り)の軸組図、図12(3)は内部構面(Y2〜Y4通り)の軸組図である。
図12の(1)および(2)に示すとおり、ブレースが集中配置されているスパンでは、その最も外側に位置する柱には引張力抵抗型のPCa−RC造柱もしくはSC柱10が配置されており、ブレースによって柱に生じる圧縮軸力および引張軸力に抵抗できおるようになっている。特に柱10の着色部分はSC柱が採用されていることを示している。
しかし、ブレースが連続して配置されている効果により、ブレース位置の最外側の柱以外では、柱の両側に位置するブレース材の軸力の方向が逆転し、ブレース材の鉛直分力が柱の両側で相殺されるため、柱には鉛直軸力が作用しない。そのため、このブレース連続スパンの内部柱は、ブレースが存在しない一般部のPCa柱と同じでよく、被覆鋼管を必要とするSC柱とする必要がない。
各柱が1階のRC造大梁20上に設置されていること、その柱下に積層ゴム免震装置81、すべり支承免震装置82、転がり支承免震装置83が採用されていることは実施例10と同じである。
図13は、本発明による免震構造建築物の全体構成を示す実施例であり、外周構面に従来型の剛接合(ラーメン構造)フレームを配置し、内部構面に本発明の柱・梁による骨組架構を採用した免震構造建物の構成例で、図13(1)は基準階平面伏図(見下図)、図13(2)は外周構面(Y1、Y5通り)の軸組図、図13(3)が内部構面(Y2〜Y4通り)の軸組図である。
図13(2)に示す外周構面は、ラーメン構造を構成する柱69とそれに剛接合された大梁49で構成されるが、構成部材は、鉄筋コンクリート(RC)造としてもよいし、鉄骨(S)造部材として構成してもよい。またRC造柱、梁S造の従来型の混合構造骨組としてもよい。
また、本建物構造では、外周構面が建物全体の水平剛性を提供し、水平力を負担するので、図13(2)のようにブレース材7を組みこんだブレース併用ラ−メン構造骨組としてもよいし、外周構面のみ各スパンの中に柱(間柱)を追加して、水平剛性・水平耐力を高めることも推奨できる。
これに対して建物平面内部に配置される内部構面には、図13(1)および(3)に示すように、鉛直荷重を支える骨組に特化して合理化された本発明のPCa柱1およびS造梁3が採用されている。また、外周構面の柱と内部の柱を繋ぐ大梁には、外周構面柱とは剛接合が採用されており、内部柱との接合には、本発明の回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)、ピン−摩擦ダンパー接合(P−FD接合)、もしくは高力ボルトによりS造梁のウェブのみを接合する従来型の擬似ピン接合のいずれかが採用されている。
外周構面、内部構面を含めて、各柱が1階のRC造大梁20上に設置されていること、その柱下に積層ゴム免震装置81、すべり支承免震装置82、転がり支承免震装置83が採用されていることは実施例10および11と同じである。
本実施例では、外周構面は従来のラーメン構造建物と同じであるので、建て方工事においても従来の工法を採用できるので、従来工法に慣れた工事担当者にとって抵抗感が小さい。また、内部構造面の建て方においては、外周構面の建て方を先行させることにより、建物全体の安定性を確保できるので、全節点がピン接合状態に近い本発明の構造骨組の建て方時の安全性を容易に確保することができる。
図14は、本発明の柱部材に浮き上がりが生じた場合に、エネルギー吸収性能を発揮する制震構造柱とした実施例である。
図14(A1)〜(A3)は柱脚部を制震構造化する説明図で、(A1)は柱部材柱脚部の水平断面図、(A2)は柱脚部のすべり摩擦を付与する接合部縦断面図、(A3)は柱脚部のすべり摩擦接合部の平面図である。
図14(A2)(A3)に示されているとおり、ボルト形状部材57、58が柱脚部外周の外側に配置されている柱脚周囲補強鋼管51に固定されており、これに反力をとって柱脚部外周の被覆鋼管15の表面を強く圧縮している。57はボルト形状部材57の先端が柱部材の被覆鋼管15の表面に直接接触する場合であり、58はそのボルト形状部材の先端に摩擦係数を調節する摩擦板が配置されている場合を示している。57、58はどちらか単独でもよいし、両者の混合としてもよいが、その摩擦力の合計は接触部(本例では柱脚部)の長期柱軸力(鉛直荷重)以下とする。これにより、柱の浮き上りが解消された時には柱部材はエネルギー吸収を行いながら元の位置に復帰することができる。
図14(B1)〜(B3)は柱同士の接合部においてすべり摩擦を利用して制震構造化する説明図で、(B1)は柱部材接合部の水平断面図、(B2)は柱部材接合部においてすべり摩擦を付与する接合部縦断面図、(B3)は柱接合部のすべり摩擦接合部の平面図である。
図14(B2)(B3)に示されているとおり、ボルト形状部材57、58が柱部材接合位置の外周部外側に配置されている柱部材接合用補強鋼管66に固定されており、これに反力をとって柱部材外周の被覆鋼管15の表面を強く圧縮している。57はボルト形状部材57の先端が直接柱部材の被覆鋼管15に接触する場合であり、58はそのボルト形状部材の先端に摩擦係数を調節する摩擦板が配置されている場合を示している。57、58はどちらか単独でもよいし、両者の混合としてもよいが、その摩擦力の合計は接触部(本例では柱脚部)の長期柱軸力以下とする。これにより、柱に浮き上りが生じた場合にはすべり摩擦力によるエネルギー吸収が発生し、接合部上側の柱部材の浮き上がりが解消された時には柱部材はエネルギー吸収を行いながら元の位置に復帰することができる。
以上のとおり、本発明の混合構造骨組を採用すると、柱間距離10メートルを超えるスパンの大きな建築物や積載荷重が大きく長期鉛直荷重による応力が支配的な大型構造物等を極めて経済的に、合理的に構築できる。本発明のS造大梁には、長期荷重によって単純梁に近い応力しか生じず、且つ地震時の応力が付加されないので、長期応力に対して徹底的に合理的・経済的な部材設計が可能であり、しかも地震時には梁部材を塑性化させることなく、地震時エネルギーを吸収する制震ダンパーを組み込んだ骨組みと同様の効果を発揮する。
従って、本発明は、長期応力が支配的な建築物を免震構造化する場合に最適となる構造骨組を提供することができる。
1 :RC造柱
10:引張力抵抗型のPCa−RC造柱、もしくはSC柱
101:柱の軸方向筋(主鉄筋およびプレストレス鋼材)
102:柱のHoop筋(せん断補強筋)
11:柱断面のコンクリート部
12:柱断面の中央空洞部
13:柱部材端部(上端部および下端部)の空洞部
14:柱部材−上端部および下端部の端部鋼板
15:柱断面外周の被覆鋼管
16:柱中空部周りの内側鋼管
17:柱・梁接合部の柱内PBLジベル鋼板
171:PBLジベル鋼板の孔
18:梁レベル被覆鋼管外側の接合用鋼板

2 :RC床スラブ
20:RC大梁
21:RC造基礎躯体
22:PBLジベル孔内を貫通する補強鉄筋
23:RCスラブに設けるスリット

3 :S造大梁
31:S造大梁のフランジ
32:S造大梁のウェブプレート
33:S造大梁端部の上フランジの上側補強プレート
34:S造大梁端部の下フランジの下側補強プレート
35:S造大梁端部のピン接合部
351:S造大梁端部のピン接合用ピンロッド
36:S造大梁端部の摩擦ダンパー用の柱側プレート
37:摩擦ダンパー
371:摩擦ダンパー用高力ボルト
372:摩擦ダンパー用摩擦材もしくは接触面の摩擦面処理部
373:摩擦ダンパーの梁側プレート
38:S造大梁端部の補強プレート
39:S造大梁端部の柱に固定された補強プレート

41:梁端部ボルト接合用摩擦板
42:回転摩擦ピン接合部(W−HBピン接合)
421:W−HBピン接合の回転中心位置の高力ボルト
43:ピン−摩擦ダンパー接合部(P−FD接合)
48:一端剛接合、他端ピン接合大梁
49:両端部−剛接合大梁

5 :柱脚部
50:柱脚接合部材
51:柱脚部周囲の補強鋼管
52:柱脚内への挿入鋼管
53:ベースプレート
54:柱脚固定用PBLジベル鋼板
55:アンカーボルト(ナット定着タイプ)
56:アンカーボルト(溶接定着タイプ)
57:柱部材の浮き上り時に摩擦力を発生させるボルト形状部材
58:同上のボルト形状部材(先端接触部に摩擦材付き)
59:引張力抵抗型柱脚部

6 :柱接合部
60:柱接合部材
61:柱境界部接合プレート
62:柱接合部−上側挿入部材
63:柱接合部−下側挿入部材
64:柱接合部−周囲拘束プレート
65:柱鉄骨(S造)部材
66:柱接合用の補強鋼管
69:剛接合ラーメン骨組の柱

7 :ブレース
70:ブレ−ス軸材
71:ブレース下端定着部材
72:ブレース下端定着用ベースプレート
720:ベースプレート内孔
73:ブレース下端定着用PBLジベル鋼板
74:梁端部−ブレース接合部(梁端部連結ブロック)
75:梁中央−ブレース接合部(梁中央部連結ブロック)

8 :免震装置
81:積層ゴム免震装置
82:すべり支承型免震装置
83:転がり支承型免震装置

Claims (6)

  1. 柱を鉄筋コンクリート造、2階以上の大梁を鉄骨造とする混合構造骨組であり、
    前記柱は、予め工場で製造したプレキャスト鉄筋コンクリート造のPCa柱部材を現場打設コンクリートを用いずに上下方向に組立・接続できる乾式接合柱となっており、
    前記柱の外形は円形で、前記PCa柱部材の少なくとも上下両端部には内部に同心円の円形空洞を有しており、
    前記柱の長さは、1)最下柱部材は、適用対象柱の適用位置の最下端部から上層階の階高中央部付近までの高さ、2)中間柱部材は、最下柱部材もしくは下側の中間柱部材の上端位置からより上層階の階高中央部付近までの高さ、3)最上柱部材は、最下柱部材もしくは中間柱部材の上端位置から適用対象最上階の適用位置最上端部までの高さとして製造されており、
    各階の梁が取り付く高さ位置には、梁の部材成と同等もしくはそれ以上の高さを有し、前記PCa柱部材と外径寸法の等しい梁レベル被覆鋼管が埋め込まれて、柱の外周面が鋼材表面となっており、
    前記梁レベル被覆鋼管の内側には、その被覆鋼管部材に溶接された多数のPBL孔を有する鉛直方向のPBLジベル鋼板が少なくとも2枚以上配置され、前記PBL孔の内部までコンクリートが充填され、且つ前記PBLジベル鋼板がコンクリート内に完全に埋没し一体化されたPCa柱部材となっており、
    前記最下柱部材の下端部は、下側床面もしくは当該柱を受ける下側部材に支持され、1)前記最下柱部材の下端中央空洞部に嵌合する円柱状、円筒状、円錐形状のいずれかの突起部を有する柱脚固定部材の上から、前記突起部が前記PCa柱部材の下端部空洞に挿入され嵌合するように設置されるか、もしくは2)前記最下柱部材の柱脚部の外周を囲う柱脚周囲補強鋼管を有する柱脚固定部材の上から、前記柱脚周囲補強鋼管の中に前記柱の柱脚最下部が挿入され嵌合するように設置されることにより、前記最下柱部材の下端部が、鉛直荷重および水平力に対しては剛に抵抗し、柱脚部の回転モーメントに対しては引張側応力度部分の抵抗力が生じない剛性低下型半固定柱脚接合となっており、
    前記PCa柱部材の2階以上の梁高さ位置では、表面に露出している前記梁レベル被覆鋼管部材と鉄骨造梁端部とを溶接もしくは高力ボルトにより、鉄骨部材同士の乾式接合とすることが可能となっており、
    前記最下柱部材と前記中間柱部材、あるいは前記中間柱部材同士、あるいは前記中間柱部材と前記最上柱部材との柱部材同士の接合部のみが、1)溶接接合をするか、2)周囲拘束鋼管内に柱端部を挿入するか、もしくは3)柱接合部材を前記PCa柱部材の端部に設けられている前記円形空洞内に挿入・嵌合させることによって両柱部材を剛接合乃至半固定接合となるPCa柱部材を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
  2. 柱をRC造、2階以上の大梁をS造とする混合構造骨組であり、
    前記柱にはPCa柱部材を、対象建築物の全ての柱もしくはその一部に採用しており、
    前記PCa柱部材の柱脚以外に繋がるS造大梁部材は、
    1)梁レベル被覆鋼管に溶接接合された柱側縦板と前記S造大梁端部のウェブ(W)板を高力ボルト(HB)による2面せん断摩擦接合とし、且つ前記柱側縦板の接合部(柱側接合部)もしくは前記大梁端部ウェブ板の接合部(梁側接合部)のいずれか片方をボルト孔径のゆとりを最小に抑えてすべりを許さない摩擦接合とし、他方の接合部を、当該接合部の高力ボルトの配置中心位置にある高力ボルト(中心ボルト)は孔径のゆとりを最小に抑え、その他のボルト孔は前記中心ボルト位置から遠くにあるボルト位置ほど大きな孔径として、中心ボルト位置を回転中心とした回転ズレ変位を可能とした回転摩擦ピン接合(W−HBピン接合)を採用するか、もしくは、
    2)前記S造大梁の上フランジの高さ位置と同等レベル以上の位置に回転可能で鉛直荷重を伝達できる回転中心せん断ピン(P接合)を配置すると共に、前記S造大梁の下フランジの高さ位置と同等レベル以下の位置に、一方は前記PCa柱部材の梁レベル被覆鋼管に溶接接合された柱側抵抗板と、他方は前記S造大梁の下フランジ、もしくは下フランジに固定され下フランジよりも下側位置にある梁側抵抗板を対面させ且つ接触させて配置し、両者を相対ズレ可能に高力ボルトで締め付けた摩擦ダンパー(FD接合)の組合せによる2点接合「ピン−摩擦ダンパー接合」(P−FD接合)を採用するか、
    の上記1)もしくは2)のいずれかの接合方法によって前記PCa柱部材に接合されることにより、
    長期鉛直荷重による梁応力は、両端ピン接合の単純梁の応力に近い応力状態となっており、且つ地震時や暴風時等に建物に作用した水平力によって層間変位が生じる場合には、梁両端が柱に剛接合された場合の短期梁応力が発生せず、且つ梁両端の摩擦接合部の相対ズレによりエネルギー吸収性能が発揮される摩擦ダンパーとして機能する摩擦ピン接合大梁を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
  3. 柱をRC造、2階以上の大梁をS造とする混合構造骨組であり、
    前記柱にはPCa柱部材を、対象建築物の全ての柱もしくはその一部に採用しており、
    前記PCa柱部材の柱脚以外に繋がるS造大梁部材には摩擦ピン接合大梁を採用しており、
    対象建築物の各階に鋼製ブレースもしくは鋼製の座屈拘束ブレースが、平面的にバランスよく配置されており、
    前記鋼製ブレースもしくは鋼製の座屈拘束ブレースのブレース材の鉛直立面の配置形状は、最下階にあっては2本一組のV字型形状、2階以上の階にあっては2本一組のΛ字型もしくはV字型形状となっており、
    前記ブレース材の端部接合部は、最下階の下側交点部においては、最下階大梁のスパン中央部に、多数の孔を有する鉛直のPBLジベル板を埋設して固定されたブレース材固定部材に連結されることにより最下階大梁に定着されており、
    2階以上のブレース材端部は、ブレース材端部が前記PCa柱部材の近傍に位置する場合には、ブレース材端部と前記S造大梁端部が鋼材同士で連結一体化された梁端部連結ブロックを構成しており、前記梁端部連結ブロックが前記PCa柱部材の梁レベル被覆鋼管に溶接接合もしくは高力ボルト接合によって前記PCa柱部材と一体化され、
    2階以上のブレース材端部が前記S造大梁の中央部近傍に来る場合には、前記S造大梁中央部に予め溶接された梁中央部連結ブロックのブレ−ス材端部と前記ブレース材が溶接もしくは高力ボルトで接合されることにより前記S造大梁と一体化されることにより、
    前記ブレース材およびそれに連結される前記S造大梁の自重は、前記PCa柱部材なしでも支持でき、自立可能となっている自立型ブレース材を用いていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
  4. 請求項1に記載した、現場打設コンクリートを用いずに上下方向に組立・接続できる乾式接合柱となっているPCa柱部材を対象建築物の全ての柱、もしくはその一部に採用しており、
    請求項2に記載した、摩擦ピン接合大梁としたS造大梁部材を2階以上の全ての大梁、もしくはその一部に採用しており、
    請求項3に記載した、鋼製ブレースもしくは鋼製の座屈拘束ブレースのブレース材を、平面的にバランスよく、各階に配置して、組立型上部構造体骨組を構成しており、
    前記PCa柱部材の柱脚部を繋ぐ最下階大梁は、RC造、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造、もしくはS造による剛接合平面フレームを構成しており、
    前記最下階大梁の直下で、前記PCa柱部材が配置されている平面位置、および必要に応じてその他の位置に免震装置を配置していることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
  5. 請求項4に記載した混合構造骨組による建築物において、
    建物平面の外周部フレーム、もしくはその一部、あるいは建物平面内の一部分の柱および梁に接合部を剛接合とする従来型のラーメン構造骨組もしくはブレース併用ラーメン構造骨組を混用し、
    それ以外の位置には請求項4に記載した組立型上部構造体骨組を採用して、前記両骨組を混合・併用した上部構造体を構成していることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
  6. 請求項1、4および5のいずれかに記載した混合構造骨組による建築物において、
    請求項1に記載したPCa柱部材の最下位置の柱脚部接合部もしくはその他のPCa柱部材同士の接合部において、前記PCa柱部材の接合部の外側に位置する接合用補強鋼管から、前記PCa柱部材の外周部被覆鋼管の表面に接触する摩擦材もしくはボルト形状部材が締め付け接触されており、当該、PCa柱部材に浮き上り変位が発生した場合には、前記ボルト形状部材の先端部もしくは前記摩擦材と前記PCa柱部材の外周表面接触部において摩擦抵抗力が発生し、前記PCa柱部材の浮き上り変位に伴うエネルギー吸収が発生する制震構造柱となっていることを特徴とする混合構造骨組による建築物。
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