以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の全体的な構成を示す模式的な縦断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタなどの機能を有する複合機である。本実施例の画像形成装置100は、フルカラー画像、モノクロ画像の形成が可能であると共に、透明トナーを用いて画像の光沢度の均一化を図ることが可能である。尚、以下の説明において、便宜上、透明トナーも1色として数えることがある。
画像形成装置100は、複数の画像形成部としての第1、第2、第3、第4、第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKと、中間転写ベルトユニット70とを有する。
透明トナー像は、透明画像形成手段としての第1の画像形成部PTによって形成される。イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像は、それぞれ有色画像形成手段としての第2、第3、第4、第5の画像形成部PY、PM、PC、PKによって形成される。本実施例では、各画像形成部PT、PY、PM、PC、PKは、略水平に並設されている。各画像形成部PT、PY、PM、PC、PKによって形成されたトナー像は、中間転写ユニット70が有する中間転写ベルト7にそれぞれ一次転写される。中間転写ベルト7上に一次転写されたトナー像は記録材Sに二次転写される。
尚、本実施例では、第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの構成及びその基本的な動作自体は、使用するトナーの種類が異なることを除いて実質的に同一である。従って、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部のための要素であることを示す符号の添え字T、Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
画像形成部Pは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動手段としての駆動モータからの駆動力を受けて、図示矢印R1方向(反時計回り)に回転する。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としてのレーザスキャナ3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ6である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ5である。
又、中間転写ベルトユニット70は、第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの各感光ドラム1T、1Y、1M、1C、1Kに対向するように配置された、無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト7を有する。中間転写ベルト7は、複数の支持部材としての従動ローラ71、二次転写対向ローラ72、及び駆動ローラ73によって張架されている。従動ローラ71はテンションローラを兼ねており、中間転写ベルト7に張力を付与しながら中間転写ベルト7の移動に従って回転する。各一次転写ローラ6は、各感光ドラム1に対向する位置において、中間転写ベルト7の内周面側に配置されている。各一次転写ローラ6は、中間転写ベルト7を各感光ドラム1に向けて押圧して、中間転写ベルト7と各感光ドラム1とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト7の外周面側には、二次転写対向ローラ72に対向する位置において、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト7を介して二次転写対向ローラ72に押圧され、中間転写ベルト7と二次転写ローラ9とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。駆動ローラ73は、駆動手段としての駆動モータから駆動力を受けて回転する。中間転写ベルト7は、駆動ローラ73からの駆動力を受けて図示矢印R2方向(時計回り)に周回移動(回転)する。
第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの全てを用いて画像を形成する場合を例に画像形成動作を説明する。各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により一様な電位に帯電させられる。続いて、各画像形成部Pにおいて、各種類のトナーでトナー像を形成するための画像信号がレーザスキャナ3に入力される。そして、各画像形成部Pにおいて、レーザスキャナ3は入力された画像信号に応じて、感光ドラム1の表面にレーザ光を照射する。これにより、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面の電荷が中和され、感光ドラム1の表面に静電潜像(静電像)が形成される。続いて、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像は、現像装置4によってトナーで現像される。そして、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において一次転写ローラ6の作用により中間転写ベルト7に一次転写される。このとき、一次転写ローラ6には、一次転写電圧印加手段としての一次転写電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。各一次転写部N1で中間転写ベルト7に転写されなかった感光ドラム1上のトナー(一次転写残トナー)は、ドラムクリーナ5により感光ドラム1上から除去されて回収される。
本実施例では、先ず、第1の画像形成部PTにおいて感光ドラム1上に形成された透明トナー像が、中間転写ベルト7上に一次転写される。その後、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKにおいて感光ドラム1上に形成されたトナー像も同様に、中間転写ベルト7上に順次に重ね合わせるように一次転写される。これにより、中間転写ベルト7上に、透明、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーによる多重トナー像が形成される。
中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において二次転写ローラ9及び二次転写対向ローラ72の作用により記録材Sに二次転写される。このとき、二次転写ローラ9には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。尚、二次転写対向ローラ72にトナーの正規の帯電極性と同極性の二次転写電圧を印加するようにしてもよい。二次転写部N2で記録材Sに転写されなかった中間転写ベルト7上のトナー(二次転写残トナー)は、ベルトクリーナ74によって回収される。ベルトクリーナ74は、中間転写ベルト7の表面移動方向において二次転写部N2の下流側(第1の画像形成部PTの一次転写部N1Tよりも上流側)に設置されている。
ここで、画像形成装置100は、カセット13a及び13b、手差しトレイ14、ピックアップローラ11、搬送ローラ対12、レジストローラ対8などで構成される搬送部120を有する。記録材(シート,記録媒体)Sは、カセット13a及び13bにセットされる。カセット13a及び13bにセットされた記録材Sの光沢、坪量、種類などは、それぞれ操作パネル112を用いて手動登録することができる。カセット13a又は13bにセットされた記録材Sは、ピックアップローラ11によって1枚ずつ送り出される。ピックアップローラ11によって送り出された記録材Sは、搬送ローラ対12によって搬送される。搬送ローラ対12によって搬送された記録材Sは、停止しているレジストローラ対8に突き当たる。このように突き当たった記録材Sは、中間転写ベルト7上のトナー像と同期するように回転するレジストローラ対8によって二次転写部N2に搬送される。
トナー像が転写された記録材Sは、次いで定着手段としての定着装置10に搬送され、定着装置10の定着部(定着ニップ)N3を通過する。これにより、記録材S上に転写されたトナー像は記録材Sに定着される。トナー像が定着された記録材Sは、搬送路を通って画像形成装置100の外部に排出される。
尚、本実施例の画像形成装置100は、透明トナーを用いずに有色トナーのみを用いて画像を形成することもできる。又、本実施例の画像形成装置100は、有色トナーを全色用いてフルカラー画像を形成できるだけではなく、例えばブラック単色などのモノクロ画像を形成することもできる。
2.定着装置
次に、定着装置について更に説明する。本実施例では、定着手段として、加熱・加圧式の定着装置(熱ローラ定着装置)10を用いる。定着部材としての記録材S上のトナー層が直接接触する側のローラとしては、弾性ローラを使用することが好ましい。即ち、定着部材としての弾性を有するローラは、未定着のトナー像の表面の凹凸に対してその表面自体が変形して、未定着のトナー像を押圧する。そのため、トナー像の均一な加熱、加圧が可能となり、画像の光沢度の均一化に効果的である。
図2は、本実施例における定着装置10の概略断面を示す。定着装置10は、定着部材としての定着ローラ10aを有する。定着ローラ10aは、駆動手段としての駆動モータからの駆動力を受けて、図中矢印R4方向(時計回り)に回転駆動される。又、定着装置10は、定着ローラ10aに圧接して定着ローラ10aとの間にニップ部である定着部(定着ニップ)N3を形成する加圧部材としての加圧ローラ10bを有する。加圧ローラ10bは、定着ローラ10aに従動して図中矢印R5方向(反時計回り)に回転する。
定着ローラ10aは、中空筒体であり、その中空空間には熱源としてのハロゲンヒータ10cが内蔵され、記録材Sへのトナー像の定着に必要な熱が供給される。定着ローラ10aの温度制御は、次のようにして行われる。即ち、温度検知素子としてのサーミスタ10dを、定着ローラ10aの回転軸線方向における記録材Sに接触しない領域(非通紙領域)に接触させて配置する。サーミスタ10dは、検知対象である定着ローラ10aの表面温度に応じた抵抗値変化により、定着ローラ10aの表面温度を検知する。そして、制御装置(後述)が、サーミスタ10dから入力された検知結果に係る信号に応じて、定着ローラ10aの表面温度が所定値となるようにハロゲンヒータ10cの電流制御を行う。
本実施例では、定着部材と加圧部材とは同様の構成を有する。即ち、加圧ローラ10bは、中空筒体であり、その中空空間には熱源としてのハロゲンヒータ10eが内蔵され、記録材Sへのトナー像の定着に必要な熱が供給される。加圧ローラ10bの温度制御は、次のようにして行われる。即ち、温度検知素子としてのサーミスタ10fを、加圧ローラ10bの回転軸線方向における記録材Sに接触しない領域(非通紙領域)に接触させて配置する。サーミスタ10fは、検知対象である加圧ローラ10bの表面温度に応じた抵抗値変化により、加圧ローラ10bの表面温度を検知する。そして、制御装置(後述)が、サーミスタ10fから入力された検知結果に係る信号に応じて、加圧ローラ10bの表面温度が所定値となるようにハロゲンヒータ10eの電流制御を行う。
定着装置10において、記録材Sは、ガイド10gにより案内されて図中右方から定着部N3に侵入する。そして、記録材Sは、定着ローラ10aの表面によって加圧及び加熱を受け、トナーが定着された後、定着装置10から排出される。定着部N3の下流には、定着ローラ10a、加圧ローラ10bのそれぞれに接触するように分離爪10h、10iが配設されている。これら分離爪10h、10iは、それぞれ定着ローラ10a、加圧ローラ10bから記録材Sを分離する。
定着ローラ10aは、アルミニウムなどの芯軸(芯金)10a1に、弾性層10a2を厚さ数十μm以上にて設けることが好ましい。これにより、良好に単色〜5色のトナー層の厚み(数〜数十μm)に追従することができる。定着ローラ10aの弾性が小さいと、トナー凹部における未定着やトナーのつぶれによる解像度の低下をもたらすことがある。弾性層10a2の材質としては、メチル系、メチルビニル系の液体シリコーンゴムRTV、LTVタイプのものが弾性を備えているので好適である。又、定着ローラ10aは、弾性層10a2の上に、表層10a3を有する。表層10a3は、上記のRTV、LTVを用いて形成した層の下層に熱に強いHTVの層を設け、表層10a3の裏面の熱劣化や剥がれを防いだ多層構成としてもよい。
本実施例では、より具体的には、定着ローラ10aとして、次のような構成のものを用いた。即ち、アルミニウム製の芯金10a1上に、ジメチルシリコーンゴムのLTVタイプの弾性層10a1を厚さ2.5mmで設け、その上に表層10a3としてPFAチューブ層を厚さ50μmで設けた。そして、これを直径46mmに成型して、定着ローラ10aとして用いた。
加圧ローラ10bは、定着ローラ10aと同様に、芯金10b1上に弾性層10b2と表層10b2とを有する。尚、加圧ローラ10bは、定着ローラ10aに比べて弾性が小さくてもよいので、単純化が可能である。例えば、アルミニウム製の芯軸に、HTV、フッ素ゴムなどの層を設けるのみでもよい。勿論、定着ローラ10aと略同一の構成のものを用いてもよい。
本実施例では、より具体的には、加圧ローラ10bとして、次のような構成のものを用いた。即ち、アルミニウム製の芯金10b1上に、ジメチルシリコーンゴムのLTVタイプの弾性層10b2を厚さ1.5mmで設け、その上に表層10b3としてPFAチューブ層を厚さ50μm設けた。そして、これを直径46mmに成型して、加圧ローラ10bとして用いた。
尚、定着ローラ10a、加圧ローラ10bの弾性層のゴムとしては、本実施例のものの他に、メチルフェニル系シリコーンゴムを用いてもよい。
本実施例では、定着条件は次のように設定した。定着温度は180℃でリップル±3°以内とした。定着温度は、定着ローラ10aの表面温度に対応する(本実施例では加圧ローラ10bの表面温度も定着ローラ10aの表面温度と実質的に同一の温度に制御される。)。又、定着速度は70mm/sec〜110mm/secの範囲とした。定着速度は、定着ローラ10aの周速度(表面の移動速度)に対応する(本実施例では加圧ローラ10bの周速度も定着ローラ10aの周速度と実質的に同一の速度に制御される。)。
尚、本実施例では、定着装置10は、定着ローラ10aと加圧ローラ10bとのローラ対を有するが、定着側と加圧側の一方又は両方がエンドレスベルトによって構成されてもよい。又、定着方法は、本実施例のような加熱・加圧式の定着器を用いるものに限定されるものではなく、少なくとも未定着のトナー像を加熱する手段を用いて行うことができる。
3.制御態様
図3に示すように、本実施例では、画像形成装置100が備える制御装置200がディスプレイ111、操作パネル112、スキャナ部116、画像形成部PT、PY、PM、PC、PKなど、画像形成装置100の各部の動作を統括的に制御する。制御装置200は、画像形成制御部210と画像処理装置(画像処理回路)220とを有する。画像形成制御部210は、画像処理装置220が情報機器やスキャナ部116からの画像情報信号を処理して生成した画像形成信号に従って、画像形成部PT、PY、PM、PC、PKなどを制御し、画像形成動作を実行させる。画像形成制御部210は、制御手段(演算制御部)としてのCPU211を有する。又、画像形成制御部210は、記憶手段としてのROM212、RAM213を有する。CPU211は、ROM212に格納されたプログラムやデータに従って制御を実行する。
4.トナー
次に、トナーについて説明する。本実施例では、トナーとして有色トナーと透明トナーとが用いられる。本実施例では、有色トナーとは、透明トナーを除く、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの総称である。尚、有色トナーと透明トナー、或いは有彩色トナーと無彩色トナーとを区別せずに総称する場合は、単にトナーという。
本実施例では、有色トナーとして、無彩色トナーであるブラックトナーと、ブラック以外の有色トナーとしての有彩色トナーであるイエロー、マゼンタ、シアンの各トナーとが用いられる。後述するように、本実施例では、無彩色トナー(第1の有色トナー)と有彩色トナー(第2の有色トナー)とで、所定のトナー載り量における定着後の光沢度が異なる。
透明トナーとしては、光透過性が高く、着色剤が実質的に入らない樹脂から成る、実質的に無色であり、少なくとも可視光を実質的に散乱することなく良く透過する粒子を好適に用いることができる。但し、透明トナーは、定着後に上述のように実質的に無色透明となるものであれば好適に用いることができ、定着前には無色透明でなくてもよく、例えば集合したときに白色に見えるようなものであっても構わない。
本発明は、トナーの粘弾性特性や定着プロセスの機械的構成に関して限定するものではない。ここでは、画像の光沢度の均一化を容易にするために好ましいトナーの例について説明する。
本実施例では、トナーとして、シャープメルトトナーの中に、予め離型剤として、溶融粘度と分子量がトナー母体樹脂より小さいワックス、パラフィンなどの離型剤を内添した、重合法によるトナー(重合トナー)を使用した。これにより、高い混色性を達成し、且つ、定着時にはトナーから熱によりワックスが滲みだし、熱ローラ定着装置の離型効果を高めることができる。そのため、定着ローラなどに外部からオイルを塗布する構成を省いたオイルレス化を達成することができる。
図4は、上記重合トナーの断面を模式的に示す。重合トナー500は、その製造法上の理由から球形となる。本実施例では、コア503としてエステル系ワックスを内包し、樹脂層502がスチレン−ブチルアクリレートで形成され、表層501がスチレン−ポリエステルで形成された構成の重合トナー500を用いた。本実施例で用いた重合トナー500の比重は約1.05であった。このように重合トナー500を3層構成とする理由は、次の通りである。即ち、コア503にワックスを内包することで、定着工程でのオフセット防止効果が得られる。又、表層501の下層に樹脂層502を設けることによって、帯電効果の向上を図っている。又、この重合トナー500の実際の使用時には、トリボ(トナーの帯電電荷量)の安定化のためにオイル処理したシリカを外添した。
重合トナーの製造方法としては、次のような方法がある。先ず、粉砕方法がある。粉砕方法では、樹脂、低軟化点物質(ワックス)からなる離型剤、着色剤、荷電制御剤などを加圧ニーダーやエクストルーダー又はメディア分散機を用い、均一に分散せしめる。その後、機械的又はジェット気流下でターゲットに衝突させ、所望のトナー粒径に微粉砕化せしめる。その後、更に分級工程を経て粒度分布をシャープ化せしめトナー化する。又、特公昭56−13945号公報などに記載のディスク又は多流体ノイズを用い溶融混合物を吸気中に霧化し球状トナーを得る方法がある。又、特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報、特開昭59−61842号公報に述べられている懸濁重合方法を用いて直接トナーを生成する方法がある。又、単量体は可溶で、得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い、直接トナーを生成する、ソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法がある。例えば、これらの方法のうちいずれかを用いて、重合トナーを製造することが可能である。
本実施例では、比較的容易に、粒度分布がシャープで、粒径が4〜8μmといった微粒子のトナーが得られる、常圧下又は加圧下での懸濁重合方法を用いた。その際、モノマーとしてスチレンとn−ブチルアクリレート、荷電制御剤としてサリチル酸金属化合物、極性レジンとして飽和ポリエステル、更に有色トナーでは着色剤を加え、重量平均粒径7μmの着色懸濁粒子を製造した。
トナーの粒度分布や粒径は、難水溶性の無機塩や保護コロイド作用を有する分散剤の種類や添加量、機械的装置条件(例えばローラーの周速、パス回数、撹拌羽根形状などの撹拌条件や容器形状)、又は、水溶液中での固形分濃度などに依存する。そのため、これらを制御することにより、所定の粒度分布や粒径のトナーを得ることができる。
トナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体を利用することができる。重合法により直接トナーを得る方法においては、これらの単量体が好ましく用いられる。具体的には、スチレン、o(m−、p−)−メチルスチレン、m(p−)−エチルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸ブメル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキサン、(メタ)アクロニトリル、アクリル酸アミドなどのエン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独又は一般的には理論ガラス転移温度(Tg)[ポリマーハンドブック第2版III−P139〜192(John Wiley & Sons社)]が40〜75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合には、トナーの保存安定性や現像剤の耐久安定性の面から問題が生じることがある。一方、理論ガラス転移温度が75℃を超える場合には、定着点の上昇をもたらし、特にフルカラートナーの場合においては各色トナーの混色が不十分となり色再現性に乏しく、更にトラペン画像の透明性を著しく低下させることがあり、高画質の面から好ましくない。
トナーの結着樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。具体的なGPCの測定方法は、次の通りである。トナーは、予め、ソックスレー抽出器を用いてトルエン溶剤で20時間の抽出を行なう。その後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去せしめ、更にエステル系ワックスは溶解するが結着樹脂は溶解し得ない有機溶剤、例えばクロロホルムなどを加えて十分洗浄を行なう。その後、THF(テトラヒドロフラン)に溶解した溶液を、ポア径が0.3μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過したサンプルを、次のような分子量分布の測定に供する。即ち、ウォーターズ社製150Cを用い、カラム構成としては昭和電工製A−801、802、803、804、805、806、807を連結し、標準ポリスチレン樹脂の検量線を用いて分子量分布を測定する。得られた樹脂成分の数平均分子量(Mn)は、5,000〜1,000,000である。例えば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜100を示す結着樹脂が好ましい。又、ワックスの分子量は、結着樹脂の分子量より小さく、数平均分子量(Mn)で数千〜数万とする。
トナーの着色剤としては、次のものを用いることができる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体などを用いることができる。又、黒色着色剤としては、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用いて黒色に調色されたものを用いることができる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物を用いることができる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191などが好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物を用いることができる。具体的には、C.I.ピクメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、220、221、254が特に好ましい。
シアンの着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などを用いることができる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが特に好適に利用できる。
これらの着色剤は、単独又は混色し更には固溶体の状態で用いることができる。例えば、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、トラペン透過性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対し1〜20重量部添加して用いられる。黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、結着樹脂100重量部に対し40〜150重量部添加して用いられる。
本実施例では、有色トナーのうち、ブラックトナーと、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーとで、ワックスの含有量を異ならせることによって、所定のトナー載り量における定着後の光沢度を異ならせている。又、本実施例では、透明トナーの所定のトナー載り量における定着後の光沢度は、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーのものと実質的に同一である。
尚、本実施例では、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーは、着色剤の種類・添加量を除いて、結着樹脂の種類やワックスの含有量などのその他の構成は同一である。又、本実施例では、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーと、ブラックトナーとは、着色剤の種類・添加量、ワックスの含有量を除いて、結着樹脂の種類などのその他の構成は同一である。更に、本実施例では、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーと、透明トナーとは、透明トナーにおいて着色剤を含有していないことを除いて、結着樹脂の種類やワックスの含有量などのその他の構成は同一である。
より具体的には、本実施例では、ブラックトナーにおけるワックスの含有量は、結着樹脂100重量部に対し10重量部である。一方、本実施例では、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーにおけるワックスの含有量は、結着樹脂100重量部に対し14重量部である。又、これにより、ブラックトナーでは、融点が115℃となる。一方、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーでは、それぞれ融点は、イエローが113.5℃、マゼンタが113℃、シアンが112℃となる。そして、これにより、ブラックトナーでは、所定のトナー載り量における、所定の条件による定着後の光沢度が38となる。一方、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーでは、それぞれ、所定のトナー載り量における、所定の条件による定着後の光沢度は、イエローが47.0、マゼンタが47.5、シアンが48.0となる。本実施例では、上記所定のトナー載り量は、いずれのトナーについても、0.6(mg/cm2)である。又、本実施例では、上記所定の条件(定着条件)として、いずれのトナーについても、記録材Sとしてコート紙を用い、定着温度を180℃、定着速度を70mm/secとした。
このように、本実施例では、ブラックトナーは、ワックスの含有量がブラックトナー以外の有色トナーよりも少なく、融点がブラックトナー以外の有色トナーよりも高いため、定着後の光沢度がブラックトナー以外の有色トナーよりも低くなる。
これに限定されるものではないが、次の場合に本発明は特に効果的である。即ち、第1の有色トナーと第2の有色トナーとで、トナー原材料のロット差や、製造誤差なども含め、融点が0.5℃〜20℃程度異なり、これにより所定のトナー載り量における定着後の光沢度が0.5〜30程度異なる場合である。
本発明では、光沢度の定義は、JIS Z 8741の方法2によった。この方法2は、主として紙の鏡面光沢度を測定するときに適用される。
図5は、光沢度測定装置600を概念的に示す。光源601から第1光学系602を介して試料605に光を照射する。この試料605の反射光を第2光学系603を介して受光器604に受光させる。第1光学系601はレンズL1、L2、スリットS1を具備し、第2光学系603は、レンズL3、スリットS’1、S2を具備している。又、図5において、α1は光画像の開き角、β1は垂直面内の開き角、α2は受光器604の開き角、β2は垂直面内の開き角である。図5に示す指定された入射角θに対して試料605の面からの鏡面反射光束をφ、標準面からの反射光束をφsとして、光沢度Gは次式で表される。
G=(φ/φs)×(使用した標準面の光沢度)
ここで、使用した標準面の光沢度は100.0である。従って、光沢度は100以下の数値で表されることになる。特に、ここでは、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計PG−1Mを用いて光沢度を計測した。測定モードは、上述のJIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法に準拠した60度光沢測定モードである。
又、トナーの融点は、次のようにして測定されたものである。トナーの溶融温度である融点は、定荷重押出し式細管式レオメーター、所謂、フローテスターにより測定できる。具体的な測定方法は次の通りである。フローテスターCFT−500D(島津製作所)を用いて、1cm3の試料(トナー)を、50℃にて5分間保温した後、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm2でダイの細孔1.0mmから押し出すようにして測定した。このフローテスターによる測定時に得られる流動曲線を、横軸に温度、縦軸にピストンストロークをとって作成する。このグラフから、軟化温度Ts、流出開始温度Tfb、流出開始温度と流出終了温度の中点である1/2法溶融温度T1/2などが求められる。又、トナー中のワックスの融点は、DSCによって測定できる。測定装置としては、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7を利用することができる。測定方法は、ASTM D3418−82に準じる。より具体的には、5〜20mg、好ましくは10mgの測定試料(ワックス)を精秤し、これをアルミバンに入れ、リファレンスとして空のアルミバンを用い、昇温速度10℃/minで窒素雰囲気下で−100℃〜200℃まで昇温して測定した。ここでは、この昇温過程で、ベースラインのシフト前後の各ベースラインを互いの方向に外挿し、その中間点の線と示差熱曲線との交点を融点としている。
ところで、画像部の光沢度は、記録材S上に形成されたトナー像の定着状態の発現であるため、トナーの粘弾性特性と定着プロセスの機械的な構成、定着条件などによって変化し得る。又、記録材S自体の光沢度によっても、定着後の画像部の光沢度が変化し得る。
記録材Sの光沢度は様々である。ここでは、光沢度の違いによって、記録材Sの種類を次の3種類に大別する。
(1)普通紙、マット紙、ノングロス紙と呼ばれるもので、光沢度が約5以上10以下の比較的光沢度が低い紙(以下「普通紙」という。)
(2)コート紙、アート紙と呼ばれるもので、光沢度が約40以上50以下の比較的光沢度が高い紙(以下「コート紙」という。)
(3)キャストコート紙やミラー紙と呼ばれるもので、光沢度が約70以上80以下の光沢度が非常に高い紙(以下「キャストコート紙」という。)
そして、本実施例の画像形成装置100では、記録材Sの種類に応じて、定着条件をホットオフセットなどの画像欠陥の発生を防止し得る最適なものに変更する。具体的には、本実施例では、上記各記録材Sの種類ごとに次のような定着条件を適用する。
(1)普通紙:定着温度は180℃でリップル±3°以内、定着速度は110/sec
(2)コート紙:定着温度は180℃でリップル±3°以内、定着速度は70/sec
(3)キャストコート紙:定着温度は180℃でリップル±3°以内、定着速度は70/sec
5.光沢度の調整の概要
本実施例では、画像形成装置100は、画像の光沢度の均一化を図ることのできる、画像形成モード(光沢調整モード)を実行可能である。
ここで、先ず、画像の光沢度の均一化を図る一般的な方法について説明する。画像の光沢度の均一化を図るための一般的な方法では、多重トナー像が略均一平面となるように、画像形成可能領域全面において、有色トナーの載り量の多い部分にはそれに応じた少量の透明トナーが重ねられる。一方、有色トナーの載り量が少ない部分にはそれに応じた多量の透明トナーが重ねられるようになっている。又、画像形成可能領域の全面に透明トナーを載せた上に、略均一平面となるように有色トナー及び透明トナーを載せて、トナー像を形成するなどしてもよい。又、有色トナー及び透明トナーにより形成される略均一な平面上の全面に更に透明トナー像を形成するなどしてもよい。
より具体的には、例えば、記録材S上のトナー層における、有色トナーの重ね合わせによる最大載り量を1.5mg/cm2とし、各色単独の最大載り量は0.5mg/cm2とする。尚、一般に、カラー画像形成では、イエロー、マゼンタ、シアンの各色成分の重ね合わせによる画像の一部又は全部をブラックに置き換えることが行われる。又、ブラック単色画像は、ブラックトナーにより形成される。そして、有色トナーの載り量が少ない部分には、記録材S上における有色トナーと透明トナーとを合計した載り量が1.5mg/cm2となるように透明トナーを転写して、画像全体のトナー載り量を均一にする。これにより、画像全体の光沢の均一化を図ることができる。記録材S上の画像形成可能領域内における非画像部、つまり、有色トナーが転写されない部分には、載り量が1.5mg/cm2となるように、透明トナーが転写される。尚、トナーの高さの凹凸、つまり、トナー載り量差を無くすことで、画像の光沢が均一化することは公知である。
ところで、一般に、モノクロのテキスト(文字画像)は、マットな(光沢度の低い)画像が好まれ、カラー写真などのグラフィック画像は、高グロスな(光沢度の高い)画像が好まれる。そのため、前述のように、ブラックトナーの定着後の光沢度を、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーの定着後の光沢度に対して低く設定することが行われる。
しかしながら、前述のように、このような設定とした場合、透明トナーを使用して定着後の画像の光沢度の均一化を図り、画像品質を更に高めようとすると、次のようになる。即ち、グラフィック領域中に文字領域(例えば写真中の文書)がある場合などに、カラー画像部とブラック画像部とでの光沢度の差が大きく、見る側に違和感を与えることがある。即ち、グラフィック領域中に文字領域が混在する場合、文字領域の光沢度がグラフィック領域と異なる、見栄えの悪い画像になることがある。例えば、写真の中に文字がある場合に、文字が沈んだような印象を与えることがある。
従って、本実施例の目的は、有色トナーとして定着後の光沢度が異なるトナーを用いると共に透明トナーを用いて画像の光沢度を調整する場合における、定着後の画像の光沢ムラを抑制することである。
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、次のような構成とする。即ち、画像形成装置100は、有色トナーで画像を形成する有色画像形成手段と、透明トナーで画像を形成する透明画像形成手段と、を有する。本実施例では、有色画像形成手段は、第2、第3、第4、第5の画像形成部PY、PM、PC、PK、中間転写ユニット70、二次転写ローラ9などによって構成される。又、本実施例では、透明画像形成手段は、第1の画像形成部PT、中間転写ユニット70、二次転写ローラ9などによって構成される。又、本実施例では、画像形成装置100は、有色画像形成手段、透明画像形成手段、又はその両方で記録材Sに形成された画像を加熱して記録材Sに定着させる定着手段としての定着装置10を有する。又、本実施例では、有色トナーとして、所定のトナー載り量における定着後の光沢度が異なる第1、第2の有色トナーが用いられる。本実施例では、第1の有色トナーは、ブラックトナーであり、第2の有色トナーは、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーである。そして、本実施例では、第1の有色トナーは、第2の有色トナーよりも、上記所定のトナー載り量における定着後の光沢度が低い。又、本実施例では、画像形成装置100は、次のような所定の画像形成モードとしての光沢調整モードを実行可能である。即ち、光沢調整モードでは、有色トナーで形成される有色トナー像と、該有色トナー像のトナー載り量に応じてトナー載り量が調整されて透明トナーで形成される透明トナー像と、を記録材上で重ね合わせた後に、定着を行う。
そして、画像形成装置100は、光沢調整モードにおいて、一定領域中の有色トナー像における第1の有色トナーが占める割合に応じて、該一定領域中の有色トナー像に重ね合わせる透明トナー像のトナー載り量を調整する調整手段を有する。本実施例では、画像形成装置100の動作を統括的に制御する制御装置200が上記調整手段の機能を有する。特に、本実施例では、調整手段200は、光沢調整モードにおいて、次のようにして、上記一定領域中の有色トナー像に重ね合わせる透明トナー像のトナー載り量を調整する。即ち、上記一定領域中の有色トナー像における第1の有色トナーが占める割合に応じて、該一定領域中の有色トナー像の定着後の光沢度を、該一定領域中の有色トナー像が全て第2の有色トナーで占められていたと仮定した場合の定着後の光沢度に近づけるようにする。上記一定領域は、各画素であってもよいし、画像形成可能領域を複数の画素ごと(所定の面積ごと)に区画した領域としてもよい。
より具体的には、本実施例では、一定領域中の有色トナー像におけるブラックトナーが占める割合に応じて発現する光沢度と、仮に該一定領域中の有色トナー像が全てイエロー、マゼンタ及び/又はシアンのトナーであった場合に発現する光沢度との差分(光沢度差)を埋めるだけの量の透明トナーによる透明トナー像を、該一定領域に有色トナー像に重ねる。
7.透明トナーのトナー載り量の制御
以下、本実施例における光沢調整モードでの透明トナーのトナー載り量の制御について更に詳しく説明する。
先ず、画像が有彩色トナーのみ又はブラックトナーのみで形成される場合を例に、透明トナーのトナー載り量の決定方法の原理について説明する。
図6は、記録材Sの表面に定着されるシアントナー像のトナー載り量と、そのトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係の一例を示す。図6には、記録材Sとして、普通紙、コート紙、キャストコート紙を用いて、対応する上記定着条件によって定着した場合の関係をそれぞれ示した。図6は、シアントナーについてのものである。ここでは、理解を容易とするために、ブラック以外の有色トナー、即ち、有彩色トナーであるイエロー、マゼンタ、シアンの各トナーについて、トナー載り量と定着後の光沢度との関係は実質的に同一の関係となるものとする。
図7は、記録材Sの表面に定着されたブラックトナー像のトナー載り量と、そのトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係の一例を示す。図7には、記録材Sとして、普通紙、コート紙、キャストコート紙を用いて、対応する上記定着条件によって定着した場合の関係をそれぞれ示した。
図8は、記録材Sの表面に定着された透明トナー像のトナー載り量と、そのトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係の一例を示す。図8には、記録材Sとして、普通紙、コート紙、キャストコート紙を用いて、対応する上記定着条件によって定着した場合の関係をそれぞれ示した。
本実施例では、画像信号から画像の一定領域としての各画素の光沢度を予測する。図6に示すように、有彩色トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係がわかっているものとする。又、図7に示すように、ブラックトナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係がわかっているものとする。又、画像形成装置100に入力される各トナーで形成すべき画像の画像信号値に対する各トナーのトナー載り量は、例えば図9に示すように予め決められている。
従って、有彩色トナーによる画素の定着後の光沢度は、画像信号値から、図6に示すような関係を参照することによって予測することができる。同様に、ブラックトナーによる画素の定着後の光沢度は、画像信号値から、図7に示すような関係を参照することによって予測することができる。
ここで、画像の各画素の光沢度が判明すると、光沢度が最も低い画素と、最も高い画素とが判明する。図10は、有色トナーで形成される画像の一定領域として画素(1)〜(3)の光沢度の予測結果の一例を示す。この場合、画素(3)の光沢度が最も高い。
本実施例では、画像形成可能領域において光沢度が最も高い画素の光沢度にその他の画素の光沢度を合わせるように、その他の画素の有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求める(図10の破線のグラフ)。
このとき、画素(1)、(2)のトナー像が有彩色トナーのみで占められている場合には、次のようにして透明トナーのトナー載り量を求めることができる。例えば有彩色トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係と、透明トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係が実質的に同一であるものとする。この場合、画素(3)に対して画素(1)、(2)において不足する光沢度分を補う透明トナーの付加量は、図6に示すような有彩色トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係から求めることができる。例えば、有彩色トナーと透明トナーとが、透明トナーにおいて着色剤を含有していないことを除いて実質的に同一の構成を有するような場合である。この場合には、画素(3)に対する画素(1)、(2)の有色トナーのトナー載り量の不足分に対応する透明トナーを重ねることで、不足分の光沢度を補うことができる。
これに対して、例えば、画素(1)のトナー像がブラックトナーのみで占められており、画素(2)のトナー像がブラックトナーと有彩色トナーとで占められている場合を考える。この場合、ブラックトナーの定着後の光沢度が有彩色トナーの定着後の光沢度よりも低いため、画素(1)、(2)のトナー像がそれぞれ有彩色トナーで占められていた場合と同じ量の透明トナーを重ねても、不足分の光沢度を補うことはできない。
そこで、本実施例では、次のようにして、各画素のトナー像におけるブラックトナーが占める割合に応じて、各画素における光沢度の差分を埋める透明トナーの量を求める。
ここで、有彩色トナーとブラックトナーとが混色している場合は、単色の場合に比べ、定着する負荷が増えるため、光沢度が出にくくなる。又、定着ローラに接触するトナーほどよく溶け、光沢度が出やすいが、定着ローラに接触するトナーの色の割合やトナー層の順番に応じて、光沢度が変化する。又、有彩色トナーのトナー載り量と定着後の光沢度と、透明トナーのトナー載り量と定着後の光沢度とが実質的に同一ではない場合もある。更に、図6〜図8に示すように、使用する記録材Sの種類によっても、トナー載り量と定着後の光沢度との関係は変化する。
従って、本実施例では、予め使用する記録材Sの種類ごとに、重ね合わせる透明トナーのトナー載り量を変化させて求めた、トナー載り量と相関する画像信号値と定着後の光沢度との関係をテーブル情報として求めておく。このテーブル情報は、画像形成装置100の製造時、工場出荷時などにおいて、予め制御装置200のROM212に格納される。尚、当該テーブル情報は、個々の画像形成装置100ごと、所定のロット単位の画像形成装置100ごとなどに特別に求めてもよいが、画像形成装置100の仕様ごとに定めてもよい。
上記テーブル情報は、次のようにして求めることができる。即ち、画像形成装置100において、記録材Sの種類ごとに、例えば、図14に示すような専用チャートを出力する。この専用チャートは、256階調を17分割した17段階の階調パッチ(約5×5mm)を縦と横に並べた画像である。上記17段階としては、0から255の256階調の範囲内であれば、任意の適宜な刻み幅で17分割することができる。例えば、0レベル、16レベル、32レベル・・・256レベルなどと刻むことができる。ただし、少なくとも0レベルと、256レベルを含むことが好ましい。例えば、縦方向にブラックトナーの階調パッチを濃度の薄いものから順に作成し、横方向に有彩色トナー(例えばシアントナー)の階調パッチを濃度の薄いものから順に作成する。縦方向、横方向にそれぞれ17階調のパッチを作るので、ブラックトナーと有彩色トナーのトナー載り量(色割合、総トナー載り量)の異なる17×17の階調パッチを作成することになる。各種類の記録材Sに対する専用チャートの出力時における、定着条件を含む画像形成条件は、画像形成装置100において対応する記録材Sの種類について設定されているものとする。
そして、上述のような専用チャートを、図14に示すように、各階調パッチ上に重ねる透明トナーのトナー載り量を256階調のうち5段階に変更して5個出力する。上記5段階としては、0から256の256階調の範囲内であれば、任意の適宜な刻み幅で5分割することができる。例えば、0レベル、64レベル、128レベル、192レベル、256レベルなどと刻むことができる。ただし、少なくとも0レベルと、256レベルを含むことが好ましい。
尚、ここでは、理解を容易とするために、有彩色トナーは、単色でも複数色が混色しても、トナー載り量と定着後の光沢度との関係は実質的に同一であるものとした。従って、上述のように、有彩色トナーとしてはシアントナーを代表として、専用チャートを作成した。しかし、有彩色トナーのそれぞれで、トナー載り量と定着後の光沢度との関係が異なる場合がある。又、本実施例では、全ての有彩色トナー像が透明トナー像の後に中間転写ベルト7に転写され、且つ、全ての有彩色トナー像がブラックトナー像より先に中間転写ベルト7に転写される。しかし、例えば、有彩色トナーのうちいずれかによるトナー像が、透明トナー像より先に中間転写ベルト7に転写されたり、ブラックトナー像より後に中間転写ベルト7に転写されたりする場合などに、混色後の光沢度が混色割合によって変わってくることがある。このような場合には、専用チャートとして、有彩色トナーの階調パッチが単色のものと、複数色を混色したものを出力して、上記同様のテーブル情報を求めておけばよい。例えば、上記同様の17×17の階調パッチにおいて、縦方向にブラックトナーの階調パッチを形成する。そして、横方向に、イエローとマゼンタ、マゼンタとシアン、シアンとイエロー、イエローとマゼンタとシアンの混色の階調パッチであって各色のトナーの濃度及び割合を適宜変更したものを形成する。例えば、各組み合わせにおいて、全ての色のトナーの濃度が薄いものから濃いものまでの配列したもの、一の色のトナーの濃度が薄く他の色のトナーの濃度が濃いものを順次色割合を変化させて配列したものなどを用いることができる。画像形成装置100において用いられるトナーの色に応じて、トナーの色の組み合わせを適宜変更して、専用チャートを作成すればよい。
上述のような専用チャートを用いて、単色及び多次色におけるトナー載り量と定着後の光沢度との関係と、ブラックトナーの割合と光沢度との関係を測定することができる。それだけではなく、透明トナーのトナー載り量と各階調パッチの定着後の光沢度との関係も測定できる。
上述のような専用チャートを出力したら、光沢度測定装置で各階調パッチの光沢度を測定する。これにより、単色又は混色の各階調パッチのトナー載り量と相関する画像信号値と定着後の光沢度との関係を示すテーブル情報を得ることができる。即ち、それぞれの種類の記録材Sについて、透明トナーのトナー載り量が異なる(5段階)、5セットの画像信号値と定着後の光沢度との関係を示すテーブル情報が得られる。
このテーブル情報を用いることで、画像信号から画素ごとに定着後の光沢度を予測することができる。又、このテーブル情報を用いることで、上記予測結果から定めた目標とする定着後の光沢度を得るために画素ごとに重ねるべき透明トナーのトナー載り量を決定することができる。
つまり、本実施例では、先ず、画像信号からわかる画素ごとの各色のトナーの載り量の情報(画像信号値)から、上述の透明トナーのトナー載り量がゼロである場合のテーブル情報を参照することで、各画素の定着後の光沢度を予測する。次に、本実施例では、画像形成可能領域において定着後の光沢度が最も高い画素の光沢度を求める。次に、各画素の定着後の光沢度をその最も高い光沢度(目標光沢度)に合わせるのに必要な透明トナーのトナー載り量を、上記透明トナーのトナー載り量を5段階に変更して求められた5個のテーブル情報を参照することで求める。即ち、各画素における各色のトナー載り量(色割合、総トナー載り量)に対応する階調パッチの定着後の光沢度が、上記目標光沢度に対応する場合の透明トナーのトナー載り量を、上記5段階の透明トナーのトナー載り量の中から求める。これにより、各画素のトナー像におけるブラックトナーが占める割合に応じて、当該画素のトナー像が全て有彩色トナーで占められていた場合に対する光沢度の差分を埋める透明トナーの量を求めることができる。
尚、テーブル情報において、データのないポイントについては、データのあるより近いポイントに対する値又はデータのあるポイント間を補完した値を用いればよく、そのような手法自体は、利用可能な任意の手法を用いればよい。
又、本実施例では、透明トナーのトナー載り量を5段階としたが、より多段階に透明トナーのトナー載り量を変化させた専用チャートを作成し、光沢度を測定することにより、透明トナーのトナー載り量の調整精度をより高めることができる。又、階調パッチの大きさも、光沢度を測定する測定装置の測定精度などに応じて適宜変更すればよい。
ここで、有色トナー像、透明トナー像のトナー載り量の変化のさせ方としては、斯界にて知られている種々の方法を用いることができる。例えば、トナー像を形成する条件として、感光ドラム1と現像装置4が備える現像剤担持体としての現像ローラとの間の電位差、所謂、現像コントラストを変更することでトナー載り量を変化させることができる。有色トナーについては、トナー載り量を変化させることにより光沢度のみならず発色性も変化してしまい、光沢ムラを改善するにあたり有色トナーのトナー載り量を変化させることは好ましい手段とはなり得ない。しかし、透明トナーについては、トナー載り量を変化させることにより光沢度にのみ影響を及ぼすことができるため、透明トナー像のトナー載り量を変更することで、光沢ムラの改善を図ることができる。
尚、画像形成可能領域のうち最も光沢度が高い画素にも透明トナーを重ねる場合には、それ以外の画素にもその分の透明トナーを加算して重ねるようにすればよい。又、前述のように、トナー載り量と定着後の光沢度との関係は、使用する記録材Sの種類や定着条件によっても変わる(図6、図7)。そのため、当該画像を形成する際の記録材Sの種類や定着条件に合わせて、有色トナーで形成される画像の各画素の定着後の光沢度を予測し、重ねる透明トナーのトナー載り量を求める。
又、光沢度を均一にする場合、その光沢度を低めに合せるのか、高めに合せるのかは、出力物の仕様用途に応じて決めることができる。即ち、本実施例では、上述のように、画像形成可能領域において光沢度が最も高い画素の光沢度にその他の画素の光沢度を合わせるように、その他の画素の有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求めた。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、画像形成可能領域の平均光沢度を求め、その平均値よりも光沢度が低い画素にのみ、平均値に合わせるべく、透明トナーを付加するようにしてもよい。この場合、画像の光沢度を均一化する効果は低下するが、透明トナーの消費量を減少させる効果がある。
又、図6、図7から分かるように、使用する記録材Sの種類によっては、記録材S上のトナーの載っていない領域の方が、トナーが載っている領域よりも定着後の光沢度が高くなったり、低くなったりする。従って、記録材Sの全面の光沢度の均一化を図るために、トナー像の載っていない記録材Sの領域(例えば、余白領域)の定着工程後の光沢度をも考慮することができる。記録材S自体の定着工程後の光沢度は、図6、図7におけるトナー載り量がゼロである場合に対応し、予め求めておくことができる。図11(a)、(b)は、有色トナーで形成される画像の一定領域として画素(1)〜(3)の光沢度と、トナー像が形成されていない記録材領域(4)の光沢度との予測結果の一例を示す。図11(a)の場合は、記録材領域(4)の光沢度が最も高い。この場合、光沢度が最も高い記録材領域(4)の光沢度にその他の画素の光沢度を合わせるように、その他の画素の有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求めればよい。一方、図11(b)の場合は、画素(3)の光沢度が最も高い。この場合、光沢度が最も高い画素の光沢度にその他の画素及び記録材領域の光沢度を合わせるように、その他の画素の有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求めると共に、記録材領域に重ねる透明トナー量を求める。
図12は、本実施例における光沢調整モードの概略動作フローを示す。先ず、例えばパーソナルコンピュータなどの情報機器から画像形成装置100の制御装置200に画像信号が入力される(S101)。次に、画像信号は、制御装置200において、次のように処理、分析される。即ち、本実施例では、画像処理装置220に入力された画像信号から、画像形成制御部210が画像形成可能領域における各画素の有色トナー(ブラックトナー、有彩色トナー、又はブラックトナーと有彩色トナー)のトナー載り量を求める。そして、各画素の定着後の光沢度を予測する(S102)。次に、画像形成制御部210は、画像形成可能領域における各画素の有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求める(S103)。そして、画像形成制御部210は、求めた透明トナーのトナー載り量を達成するように画像形成装置1の各部を制御しつつ、前述したような画像形成プロセスにより、画像形成を行う(S104)。
ここで、本実施例では、予めテーブル情報を求めておき、そのテーブル情報を用いて、透明トナーのトナー載り量を求めた。但し、透明トナー量のトナー載り量を求める方法は、上述の方法に限定されるものではない。別法として、次のような方法を用いてもよい。
即ち、各有彩色トナーのトナー載り量と光沢度との関係(図6のような関係)、ブラックトナーのトナー載り量と光沢度との関係(図7のような関係)、及び混色した場合の光沢度を求めるのに用いる係数を示す情報が、予めROM212に記録される。これらの情報は、記録材Sの種類ごとに記録される。又、これらの情報は、記録材Sに対して画像形成装置100において設定されている定着条件において求められたものである。これにより、使用する記録材Sに応じて、画像信号値から画素毎に定着後の光沢度を計算することができる。即ち、各画素に含まれている有彩色トナーとブラックトナーの載り量と、記録材Sの種類と、記録材Sに定着する際の定着条件とに応じた、画素毎の光沢度を計算することができる。
例えば、シアンとブラックトナーが混色した画素のシアントナーのトナー載り量が0.2mg/cm2、ブラックトナーのトナー載り量が0.3mg/cm2の画像をコート紙に定着する画像信号が入力された場合を考える。この場合、シアントナー単色における定着後の光沢度は図6の関係より40〜45、ブラックトナー単色における定着後の光沢度は図7の関係より光沢度は30〜35となる。しかし、この画素はシアントナーとブラックトナーとが混在し、合わせて0.5mg/cm2のトナーが載っており、単色の場合に比べ、定着する負荷が増えるため、光沢度が出にくくなる。又、定着ローラに接触するトナーほどよく溶け、光沢度が出やすいが、定着ローラに接触するトナーの色の割合やトナー層の順番に応じて、光沢度が変化する。そこで、予め、混色している場合の色割合に応じた光沢度の計算係数と、単色ごとではなく混色した場合のトナー全部のトナー載り量に応じた光沢度の計算係数と、を求めておき、この係数の情報を制御部装置200のROM212に記録しておく。そして、単色ごとのトナー載り量から予想される光沢度に対して上記係数をかけ合わせることで、画素毎の混色した場合の定着後の光沢度を算出する。これにより、画像信号値から画像の一定領域ごとに定着後の光沢度を予測することが可能である。そして、予測された光沢度から画素ごとの透明トナーのトナー載り量を求める。例えば、有彩色トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係と、透明トナーのトナー載り量と定着後の光沢度との関係が実質的に同一の場合などには、透明トナーを更に重ねた場合の光沢度を、上記同様の係数を用いた計算により予測することができる。従って、例えば予測された光沢度のうち最も高い光沢度(目標光沢度)に合わせるために、各画素に重ね合わせることが必要な透明トナーのトナー載り量を求めることができる。
尚、本実施例では、有色トナーのトナー載り量の算出、透明トナーのトナー載り量の算出を行う基本単位である画像の一定領域は画素であるものとして説明した。しかし、これに限定されるものではなく、複数の画素ごと(所定の面積ごと)に区画した領域としてもよい。例えば、20mm×20mmの領域とすることができる。
以上、本実施例によれば、有色トナーとして定着後の光沢度が異なるトナーを用いると共に透明トナーを用いて画像の光沢度を調整する場合における、定着後の画像の光沢ムラを抑制することができる。
実施例2
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、光沢調整モードにおいて、画像の一定領域として、画像形成可能領域における各画素の有色トナーのトナー載り量を求め、各画素に重ねる透明トナーのトナー載り量を求めた。
これに対し、本実施例では、光沢調整モードにおいて、画像信号から画像を文字領域とグラフィック領域に分離し、文字領域とグラフィック領域のそれぞれにおける有色トナーに重ねる透明トナーのトナー載り量を求める。
即ち、実施例1と同様に、本実施例では、ブラックトナーは、ワックスの含有量がブラックトナー以外の有色トナーよりも少なく、融点がブラックトナー以外の有色トナーよりも高いため、定着後の光沢度がブラックトナー以外の有色トナーよりも低くなる。そのため、グラフィック領域中に、ブラックトナーを使用して形成されることの多い文字領域(例えば写真中の文書)がある場合などに、カラー画像部とブラック画像部とでの光沢度の差が大きく、見る側に違和感を与えることがある。
そこで、本実施例では、一般にブラックトナーの占める割合がグラフィック領域より多い文字領域と、一般にブラックトナーの占める割合が文字領域よりも少ないグラフィック領域とに画像を分離して、それぞれに重ねる透明トナーのトナー載り量を求める。これにより、実施例1のように画素ごと(或いは複数画素ごと)に有色トナーのトナー載り量、透明トナーのトナー載り量を算出する場合よりも、制御装置200による処理を簡易とすることができる。
本実施例では、像域分離処理としては、データを展開した際に保存しておいた各領域情報を示すTAGビット情報を用いると共に、ビットマップ領域においては、階調の変化状態から文字領域と写真領域(グラフィック領域)を分ける方法を用いる。
尚、画像信号から画像を文字領域とグラフィック領域とに分離する像域分離技術としては、斯界にて知られている種々の方法を用いることができる。例えば、電子情報通信学会論文誌’87/2 Vol.J70−B No.2において、「ブロック分離変換法」(Block Separate Transformation Method:BSET法)が紹介されている。この方法では、ブロック内の濃度変化により、写真、文字、網点の3領域を分離している。即ち、写真は濃度変化が少ないという特性を利用し判定を行い、更に文字と網点は濃度変化を行う周期が、文字の方が大きいという性質を利用し判定をしている。具体的には、所定ブロック内の最大濃度と最小濃度の差により、写真の判定を行い、更にブロック内を平均信号値で2値化した際の、変化回数から文字と網点の区別を行っている。又、特許03215768号公報では、2値化後のラン長を利用した像域分離方法が開示されている。この方法では、画像を2値化し、最大ラン長を算出すると同時に、所定の条件を満たす場合には、黒画素を膨張させ、その最大ラン長を求める。それらの差分としきい値の比較により、差分が多ければ網点、小さければ文字と区別する方法が提案されている。写真との切り分けは、上述のBSET法との併用による方法などが提案されている。
そして、本実施例では、次のようにして、文字領域におけるグラフィック領域との光沢度の差分を埋める透明トナーの量を求める。先ず、実施例1にて説明したテーブル情報を用いた方法により、透明トナーのトナー載り量を求めることができる。即ち、画像信号から文字領域とグラフィック領域の各色のトナーのトナー載り量(例えば面積平均値)を求め、各色のトナー載り量からテーブル情報を参照することによって文字領域とグラフィック領域のそれぞれに対する透明トナーのトナー載り量を求める。又、別法として、実施例1にて説明したトナー像の色割合、混色した場合のトナー載り量から、予め求められた係数を用いて計算する方法によっても、透明トナーのトナー載り量を求めることができる。即ち、予め、混色している場合の色割合に応じた光沢度の計算係数と、単色ごとだけではなく混色した場合のトナー全部のトナー載り量に応じた光沢度の計算係数と、を求めておく。又、画像信号から文字領域とグラフィック領域の単色ごとのトナー載り量から予想される光沢度に対して上記係数をかけ合わせることで、領域ごとの混色した場合の定着後の光沢度を算出する。そして、予測された光沢度から領域ごとの透明トナーのトナー載り量を求める。
このようにして、文字領域とグラフィック領域の光沢度を均一にすることはもちろん、意図的に部分的に光沢度を調整することも可能となる。
図13は、本実施例における光沢調整モードの概略動作フローを示す。先ず、例えばパーソナルコンピュータなどの情報機器から画像形成装置100の制御装置200に画像信号が入力される(S201)。次に、画像信号は、制御装置200において、次のように処理、分析される。即ち、本実施例では、分離手段としての画像処理装置220は、入力された画像信号から、画像をグラフィック領域と文字領域とに分離する(S202)。次に、画像形成制御部210は、グラフィック領域と文字領域のそれぞれについて、有色トナー(ブラックトナー、有彩色トナー、又はブラックトナーと有彩色トナー)のトナー載り量を求める。そして、グラフィック領域と文字領域とのそれぞれの定着後の光沢度を予測する(S203)。次に、画像形成制御部210は、グラフィック領域と文字領域とのそれぞれに重ねる透明トナーのトナー載り量を求める(S204)。そして、画像形成制御部210は、求めた透明トナーのトナー載り量を達成するように画像形成装置1の各部を制御しつつ、前述したような画像形成プロセスにより、画像形成を行う(S205)。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を達成することができると共に、有色トナーに重ねる透明トナーの量を求める処理を簡易化することができる。
実施例3
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、予め設定されたテーブル情報などに基づいて画像の一定領域の定着後の光沢度を予測し、その結果に基づいて重ねる透明トナーのトナー載り量を求めた。これに対し、本実施例では、各画像形成装置100において、適宜、光沢度を実測する専用のチャートを出力し、各色の画像信号値における光沢度を実測する。そして、画像信号値と光沢度と関係を示すプロファイルを作成し、それに従って画像の一定領域の定着後の光沢度を予測し、その結果に基づいて重ねる透明トナーのトナー載り量を求める。これにより、光沢度の予測の精度を高めることができる。
この目的のために、実施例1にて前述したような光沢度測定装置を、定着装置10から排出された記録材Sの表面の光沢度を測定できるように、例えば複数箇所に設置することができる。光沢度測定装置による検出結果は、制御装置200に入力され、画像信号値と光沢度との関係を示すプロファイル(テーブル情報)の作成に用いられる。
より具体的には、次のような専用チャートを用いる。この専用チャートを記録材Sの種類ごとに出力し、光沢度の測定を行うことで、記録材Sの種類ごとに画像信号値と光沢度との関係を示すプロファイル(テーブル情報)を得ることができる。又、この専用チャートは、実施例1にてテーブル情報を得るためのものとして例示したものと同様であってよい。
例えば、専用チャートとして、256階調を17分割した17段階の階調パッチ(約5×5mm)を縦と横に並べた画像を出力する。上記17段階としては、0から255の256階調の範囲内であれば、任意の適宜の刻み幅で17分割することができる。例えば、0レベル、16レベル、32レベル・・・256レベルなどと刻むことができる。ただし、少なくとも0レベルと、256レベルを含むことが好ましい。例えば、縦方向にブラックトナーの階調パッチを濃度の薄いものから順に作成し、横方向に有彩色トナー(例えばシアントナー)の階調パッチを濃度の薄いものから順に作成する。縦方向、横方向にそれぞれ17階調のパッチを作るので、ブラックトナーと有彩色トナーのトナー載り量(色割合、総トナー載り量)の異なる17×17の階調パッチを作成することになる。各種類の記録材Sに対する専用チャートの出力時における、定着条件を含む画像形成条件は、画像形成装置100において対応する記録材Sの種類について設定されているものとする。
そして、上述のような専用チャートを、図14に示すように、各階調パッチ上に重ねる透明トナーのトナー載り量を256階調のうち5段階に変更して5個出力する。上記5段階としては、0から255の256階調の範囲内であれば、任意の適宜な刻み幅で5分割することができる。例えば、0レベル、64レベル、128レベル、192レベル、256レベルなどと刻むことができる。ただし、少なくとも0レベルと、256レベルを含むことが好ましい。
尚、実施例1で説明したように、専用チャートとして、有彩色トナーの階調パッチが単色のものと、複数職を混色したものを出力して、画像信号値と光沢度との関係を示すプロファイルを求めてもよい。例えば、上記同様の17×17の階調パッチにおいて、縦方向にブラックトナーの階調パッチを形成する。そして、横方向に、イエローとマゼンタ、マゼンタとシアン、シアンとイエロー、又はイエローとマゼンタとシアンの混色の階調パッチであって各色のトナーの濃度及び割合を適宜変更したものを形成する。例えば、各組み合わせにおいて、全ての色のトナーの濃度が薄いものから濃いものまでの配列したもの、一の色のトナーの濃度が薄く他の色のトナーの濃度が濃いものを順次色割合を変化させて配列したものなどを用いることができる。画像形成装置100において用いられるトナーの色に応じて、トナーの色の組み合わせを適宜変更して、専用チャートを作成すればよい。
上述のような専用チャートを用いて、単色及び多次色におけるトナー載り量と定着後の光沢度との関係と、ブラックトナーの割合と光沢度との関係を測定することができる。それだけではなく、透明トナーのトナー載り量と各階調パッチの定着後の光沢度との関係も測定できる。こうして求めた画像信号値と光沢度との関係を示すプロファイル(テーブル情報)は、制御装置200のRAM213に格納される。
尚、テーブル情報において、データのないポイントについては、データのあるより近いポイントに対する値又はデータのあるポイント間を補完した値を用いればよく、そのような手法自体は、利用可能な任意の手法を用いればよい。
又、本実施例では、透明トナーのトナー載り量を5段階としたが、より多段階に透明トナーのトナー載り量を変化させた専用チャートを作成し、光沢度を測定することにより、透明トナーのトナー載り量の調整精度をより高めることができる。又、階調パッチの大きさも、光沢度を測定する測定装置の測定精度などに応じて適宜変更すればよい。
更に、測定に時間を要するので、簡易調整モードと詳細調整モードとを設けることができる。例えば、簡易調整モードでは、17段階の階調パッチを9段階へ減らし、且つ、専用チャートには代表的な色の組み合わせのうち、代表的な階調パッチのみを作成し、その階調パッチの光沢度の測定を行い、光沢度の調整を行うようにする。上記代表的な色の組み合わせは、ブラックとイエロー及びマゼンタの混色、ブラックとマゼンタ及びシアンの混色、ブラックとイエロー及びシアンの混色、イエローとマゼンタ、マゼンタとシアン、イエローとシアンなどである。調整する色や階調パッチの分割段階数に関しては、光沢度に大きく影響する色から選ぶ、ユーザーがよく使用する色を選ぶ、毎回調整する色を変更していくなど、適宜変更することができる。代表的な色のみを補正することにより画像形成装置の調整時間を短縮し、使い勝手のよい装置を提供することができる。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を達成することができると共に、光沢度の予測精度を高めることができる。
(その他)
上述の実施例では、第1の有色トナーと第2の有色トナーとでワックスの含有量を異ならせることで融点を異ならせ、それにより定着後の光沢度を異ならせた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1の有色トナーと第2の有色トナーとでメインバインダーの分子量を異ならせることで融点を異ならせ、それにより定着後の光沢度を異ならせることができる。