JP5842748B2 - 冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用鋼板としての用途に好適な加工性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境の保全の見地から自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものの軽量化により燃費向上を図る動きが活発になってきている。自動車部品のようにプレス加工や曲げ加工により成型される鋼板では、高強度を保ちつつ加工に耐えうる成形性が要求されている。特に、実際のプレス成形においてはネッキングが無く加工できることが強く求められており、均一伸び(以下、UEL)が重要である。UELの向上には残留オーステナイトによる変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity、以下、TRIP)効果の活用が有効であることが知られており、例えば特許文献1では、TRIP鋼に関する技術が開示されている。このような、いわゆる低合金TRIP鋼は通常、焼鈍、冷却後の過時効帯での保持によりベイナイト変態させて、オーステナイト中に炭素(以下、C)を濃化させ、オーステナイトを安定化することで残留オーステナイトを生成させる方法で製造される。実ラインにおける過時効帯での保持時間は数分程度と短いため、材料開発においては短時間でベイナイト変態を十分に進行させるような鋼成分の設計が重要となる。しかしながら、一般的には高強度鋼ほど鋼成分が高合金となるため、ベイナイト変態が十分進行し難く、残留オーステナイトが得難くなる。一方、特許文献1に示すように、C量を増大させその他の合金元素を低下させる合金設計の場合は、比較的少ないベイナイト変態によってオーステナイトの安定化が可能である。しかし、C量が増加するとオーステナイトの熱的な安定性は低下し、パーライトに分解しやすくなるため、温度や時間の管理制約が強くなるという問題がある。また、C量を過度に高めることは溶接性を劣化させるという問題がある。したがって、高強度鋼においては、ベイナイト変態を妨げず、かつ、オーステナイトの熱的な安定性を維持しつつ、より多くの残留オーステナイトを生成させることが重要となるが、そのようなことを可能とする合金元素に関する技術はない。
特開昭61−217529号公報
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決し、自動車部品用素材として好適な、引張強度TS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上である加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成し、加工性に優れる高強度冷延鋼板を製造するため、鋼板の成分組成およびミクロ組織の観点から鋭意研究を重ねた結果、所定量のSn添加が上記課題の解決に極めて有効であることを突き止めた。すなわち、Snその他特定の成分組成を有する鋼において、ミクロ組織として、ベイニティックフェライト、マルテンサイトと焼戻しマルテンサイトならびに残留オーステナイトの面積率を特定の範囲とすることにより、所望の特性を有することが可能となることがわかった。また、製造条件の一実施形態としては、特定の成分組成を有する鋼素材に仕上げ圧延温度Ar3変態点以上で熱間圧延を施し、400〜700℃で巻取り冷間圧延を施した冷延鋼板に、Ac3変態点−50℃〜1000℃で10s以上保持した後、5℃/s以上の平均冷却速度で冷却停止速度150〜550℃まで冷却し、350〜550℃で10〜1500s保持することによって、TSが980MPa以上、TS×UELが18000MPa・%以上の高強度冷延鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下の発明を提供する。
(1)質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.5〜3.0%、Al:0.010〜3.000%、Mn:1.5〜4.0%、P:0.100%以下、S:0.020%以下、Sn:0.01〜0.50%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ面積率3〜68%のベイニティックフェライトと、面積率の合計が10〜65%のマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトと、面積率10%以上の残留オーステナイトとを含むミクロ組織を有する加工性に優れた高強度冷延鋼板。
(2)さらに、質量%で、Cr:0.005〜0.200%、Mo:0.005〜0.200%、V:0.005〜0.200%、Ni:0.005〜0.200%、Cu:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、かつその合計が0.200%以下である(1)に記載の加工性に優れた高強度冷延鋼板。
(3)さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.200%、Nb:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する(1)または(2)に記載の加工性に優れた高強度冷延鋼板。
(4)さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0050%を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度冷延鋼板。
(5)さらに、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度冷延鋼板。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の成分を有するスラブに、仕上げ圧延温度をAr3変態点以上で熱間圧延終了後、冷却し、400〜700℃の温度で巻き取る熱延工程を施し熱延板とした後、冷間圧延を施し製造した冷延鋼板に連続焼鈍を施すに際し、Ac3変態点−50℃〜1000℃まで加熱し10s以上保持した後、5℃/s以上の平均冷却速度で冷却停止温度150〜550℃まで冷却した後、350〜550℃の温度で10〜1500s保持することを特徴とする加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
なお、本発明において、加工性に優れた高強度冷延鋼板とは、引張強度TSが980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板をいう。
本発明によれば、自動車部品用素材として好適な、TS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上である加工性に優れた高強度冷延鋼板を得ることができる。
以下に、本発明の詳細を説明する。なお、成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
1)成分組成
C:0.15〜0.40%
Cは、マルテンサイトや焼戻しマルテンサイトなどの低温変態相を生成させてTSを上昇させるために必要な元素である。また、オーステナイトを安定させて残留オーステナイトを生成させ、鋼の加工性を向上させるのに有効な元素である。C量が0.15%未満では、残留オーステナイトの生成が不十分になり高加工性を得ることが難しい。一方、スポット溶接性の観点からはC量は低いことが好ましく、上限を0.40%とする。したがって、C量は0.15〜0.40%、好ましくは0.17〜0.35%とする。
Si:0.5〜3.0%
Siは、鋼を固溶強化してTSを上昇させたり、炭化物の生成を抑制して残留オーステナイトを生成させ鋼の加工性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Si量を0.5%以上とする必要がある。一方、3.0%を超えると、脆性が顕著になり、また表面性状や溶接性の劣化を招く。したがって、Si量は0.5〜3.0%、好ましくは0.5〜2.5%、より好ましくは0.8〜2.0%とする。
Al:0.010〜3.000%
AlはSiと同様、鋼を固溶強化してTSを上昇させたり、炭化物の生成を抑制して残留オーステナイトを生成させ鋼の加工性を向上させるのに有効な元素である。また、脱酸材としても有効である。こうした効果を得るには、Al量を0.010%以上とする必要がある。一方、3.000%を超えると、オーステナイト化が困難になり、焼鈍後に所望の組織が得られない。したがって、Al量は0.010〜3.000%、好ましくは0.010〜2.000%、より好ましくは0.010〜1.000%とする。
Mn:1.5〜4.0%
Mnは、鋼を固溶強化してTSを上昇させたり、マルテンサイトや焼戻しマルテンサイトなどの低温変態相の生成を促進させてTSを上昇させる元素である。こうした効果を得るには、Mn量を1.5%以上にする必要がある。一方、Mn量が4.0%を超えると、介在物の増加が顕著になり、鋼の清浄度や加工性低下の原因となる。したがって、Mn量は1.5〜4.0%、好ましくは1.8〜3.5%とする。
Sn:0.01〜0.50%
Snは、オーステナイトを安定化し、またその分解を抑制し、残留オーステナイトを得てUELを上昇させる元素である。こうした効果を得るには、Sn量を0.01%以上とする必要がある。一方、Sn量が0.50%を超えると、脆性が顕著になる。したがって、Sn量は0.01〜0.50%、好ましくは0.02〜0.25%とする。
P:0.100%以下
Pは、粒界偏析により鋼を劣化させ、溶接性を劣化させるため、その量は極力低減することが望ましい。したがって、P量は0.100%以下とする。
S:0.020%以下
Sは、MnSなどの介在物として存在して、溶接性を劣化させるため、その量は極力低減することが好ましい。したがって、S量は0.020%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、必要に応じて以下の元素の1種以上を適宜含有させることができる。
Cr:0.005〜0.200%、Mo:0.005〜0.200%、V:0.005〜0.200%、Ni:0.005〜0.200%、Cu:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも1種を含有し、かつその合計が0.200%以下
Cr、Mo、V、Ni、Cuはマルテンサイトなどの低温変態相を生成させるため、高強度化に有効な元素である。こうした効果を得るには、Cr、Mo、V、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種の元素の各々の含有量を0.005%以上にすることが好ましい。一方、これらの元素の添加量が多くなるとベイナイト変態の遅延が顕著になり、残留オーステナイトの量が減少して加工性が低下するため、その合計の上限を0.200%とする。したがって、Cr、Mo、V、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種の元素の各々の含有量はそれぞれ0.005〜0.200%、かつ合計で0.200%以下が好ましい。より好ましくは、合計で0.100%以下とする。
Ti:0.005〜0.200%、Nb:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも1種
TiおよびNbは、炭窒化物を形成し、鋼を析出強化により高強度化するのに有効な元素である。こうした効果を得るには、TiおよびNbの各々の含有量を0.005%以上にすることが好ましい。一方、TiおよびNbの各々の含有量が0.200%を超えると、高強度化の効果は飽和し、UELが低下する。したがって、含有量は0.005〜0.200%が好ましい。
B:0.0003〜0.0050%
Bはオーステナイト粒界からのフェライト生成を抑制し低温変態相を生成させて鋼の強度を上昇させるのに有効である。こうした効果を得るには、Bの含有量を0.0003%以上にすることが好ましい。一方、0.0050%を超えると、その効果は飽和しコストアップを招く。したがって、含有量は0.0003〜0.0050%が好ましい。
Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる少なくとも1種
Ca、REMは、いずれも硫化物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Ca、REMから選ばれる少なくとも1種の元素の各々の含有量を0.001%以上にすることが好ましい。一方、0.005%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼし特性が低下するおそれがある。したがって、含有量は0.001%〜0.005%が好ましい。
Nは、不可避的不純物として、0.006%以下で含有しても問題はない。
2)ミクロ組織
ベイニティックフェライト:3〜68%
ベイナイト変態によって生成するベイニティックフェライトはオーステナイトへCを濃化させ、残留オーステナイトを得るのに有効である。かかる効果を発現させるためには、ベイニティックフェライトを面積率で3%以上とする必要がある。一方、ベイニティックフェライト自体の強度はあまり高くないため、その面積率が68%を超えるとTSで980MPa以上を得ることが困難になる。したがって、ベイニティックフェライトの面積率は3〜68%とする。
マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトの合計:10〜65%
マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトはTSを上昇させるのに有効である。また、350〜550℃で10〜1500s保持する前の冷却停止時に生成するマルテンサイト(焼鈍後の焼戻しマルテンサイト)はベイナイト変態の起点となってベイナイト変態を促進させ、ベイニティックフェライトを生成することによりオーステナイトにCを濃化させることで残留オーステナイトを生成させてUELを上昇させるのに有効である。かかる効果を発現するためにはマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトの面積率が合計で10%以上とする必要がある。一方、その面積率が65%を超えると、残留オーステナイトの生成量の低下が顕著になり、UELが低下する。したがって、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトの面積率は合計で10〜65%とする。
残留オーステナイト:10%以上
残留オーステナイトはUELの上昇に有効であり、かかる効果を十分に発現するためには残留オーステナイトを面積率で10%以上とする必要がある。上限は特に規定しないが、本発明の範囲内で製造する場合は安定化して残存し得るオーステナイト分率はおよそ30%以下程度である。したがって、残留オーステナイトは面積率で10%以上、好ましくは12%以上とする。
また本発明においては、ベイニティックフェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイトが上記の条件を満足する限り、その他の相(例えば、ポリゴナルフェライト、パーライト)を含んでも良い。しかしながら、TSおよびUELの観点からは、その他の相は合計で20%以下とすることが好ましい。
ここで、ベイニティックフェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトの面積率とは、観察面積に占める各相の面積の割合のことで、ベイニティックフェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトの面積率は、鋼板の板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、板厚1/4の位置をSEM(走査型電子顕微鏡)で1500倍の倍率で3視野撮影し、得られた画像データからMedia Cybernetics社製のImage−Proを用いて各相の面積率を求め、3視野の平均面積率を各相の面積率とした。前記画像データにおいて、ベイニティックフェライトは、SEMの2次電子像で黒色を呈し、その形態から他の相と区別できる。マルテンサイトおよび残留オーステナイトはともにSEMの2次電子像で白色を呈するが、下記方法にて残留オーステナイトの面積率を求められることから白色組織全体の面積率から残留オーステナイトの面積率を減ずることでマルテンサイトの面積率が求められる。焼戻しマルテンサイトは、マルテンサイト内部のラス組織に沿った明らかな炭化物生成が見られる白色を呈する組織であり、他の相と区別できる。また、残留オーステナイトの割合は、鋼板を板厚1/4の位置まで研磨した後、化学研磨によりさらに0.1mm研磨した面について、X線回折装置でMoのKα線を用いて、fcc鉄の(200)、(220)、(311)面とbcc鉄の(200)、(211)、(220)面の積分強度を測定し、bcc鉄各面からの積分反射強度に占めるfcc鉄各面からの積分反射強度の強度比を求め、これを残留オーステナイトの面積率とした。
3)製造条件
本発明の高強度冷延鋼板は、上記の成分組成を有するスラブに、仕上げ圧延温度をAr3変態点以上で熱間圧延終了後、冷却し、400〜700℃の温度で巻き取る熱延工程を施し熱延板とした後、さらに冷間圧延を施し製造した冷延鋼板に連続焼鈍を施すに際し、Ac3変態点−50℃〜1000℃まで加熱し10s以上保持した後、5℃/s以上の平均冷却速度で冷却停止温度150〜550℃まで冷却した後、350〜550℃で10〜1500s保持することによって製造できる。
以下、詳しく説明する。
仕上げ圧延温度をAr3変態点以上で熱間圧延
Ar3変態点未満で熱間圧延を行うと、フェライト生成域のためオーステナイトとフェライトが混粒した不均一組織になりやすく、冷間圧延性やUELの低下を招く。したがって、仕上げ圧延温度をAr3変態点以上で熱間圧延を行うことが好ましい。なお、Ar3変態点は以下の式より求た。
Ar3(℃)=868−396×(%C)+25×(%Si)−68×(%Mn)
式中、%C、%Si、%Mnはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
400〜700℃の温度で巻き取る熱延工程
巻取り温度が700℃を超えると、鋼板表面が過度に酸化し、表面粗度の上昇や表面欠陥の原因となる。一方、巻取り温度が400℃未満では熱延板形状の悪化が顕著になる。したがって、巻取り温度は400℃〜700℃、好ましくは560〜670℃とする。
冷間圧延
冷間圧延条件としては、冷間圧下率を5%以上とすることが好ましい。また、冷間圧延時の圧延負荷を低減するために、巻き取り後の熱延板に、熱延板焼鈍を施してもよい。
Ac3変態点−50℃〜1000℃まで加熱し10s以上保持する
Ac3変態点−50℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、最終的に得られる残留オーステナイト量が低下して、加工性が低下する。上限は、製造性の観点から1000℃以下とすることが好ましい。なお、Ac3変態点は次の式により求めた。
Ac3(℃)=910−203×√(%C)+44.7×(%Si)−30×(%Mn)+200×(%Al)
式中、%C、%Si、%Mn、%Alはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
保持時間が10s未満では、オーステナイトの生成が不十分なり、最終的に得られる残留オーステナイト量が低下し、加工性が低下する。したがって、保持時間は10s以上とする。上限は特に規定しないが、製造性の観点から1000s以下程度とすることが好ましい。
5℃/s以上の平均冷却速度
平均冷却速度が5℃/s未満では、冷却中にフェライトやパーライトが過度に生成しTSが低下する。したがって、平均冷却速度は5℃/s以上とする。
冷却停止温度150〜550℃
冷却停止温度が150℃未満では、焼戻しマルテンサイトが過度に生成して、最終的に得られる残留オーステナイト量が減少し、加工性が低下する。一方、冷却停止温度が550℃を超えるとベイナイト変態が遅延するためにベイニティックフェライトの生成量が減少してオーステナイトへのC濃化が不足し、またフェライトやパーライトが生成しやすくなるために、最終的に得られる残留オーステナイト量が低下し、加工性が低下する。したがって、冷却停止温度は150〜550℃、好ましくは200〜500℃とする。
350〜550℃の保持温度で10〜1500s保持する
保持温度が350℃未満では、ベイナイト変態が遅延することに加えて下部ベイナイトが生成するためにオーステナイトへのC濃化量が低下して十分な残留オーステナイトが得られず、加工性が低下する。一方、550℃を超えるとベイナイト変態が遅延するためにベイニティックフェライトの生成量が減少してオーステナイトへのC濃化が不足し、また、フェライトやパーライトが生成しやすくなるために、最終的に得られる残留オーステナイト量が減少し、加工性が低下する。したがって、温度は350〜550℃、好ましくは370〜500℃とする。また、所望の保持温度とするために、前記冷却停止温度から必要に応じて再加熱してもよい。
保持時間が10s未満では、ベイナイト変態が十分起こらず、ベイニティックフェライトの生成量が減少して残留オーステナイトが十分に得られないため、加工性が低下する。一方、保持時間が1500sを超えるとオーステナイトの分解が顕著になり、加工性が低下する。したがって、保持時間を10〜1500sとする。
その他の製造方法の条件は、特に限定しないが、以下の条件で行うのが好ましい。
スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法により製造することもできる。スラブを熱間圧延するには、スラブをいったん室温まで冷却し、その後再加熱して熱間圧延を行ってもよいし、スラブを室温まで冷却せずに加熱炉に装入して熱間圧延を行うこともできる。あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに熱間圧延する省エネルギープロセスも適用できる。スラブを加熱する場合は、炭化物を溶解させたり、圧延荷重の増大を防止するため、1100℃以上に加熱することが好ましい。また、スケールロスの増大を防止するため、スラブの加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
スラブを熱間圧延する時は、スラブの加熱温度を低くしても圧延時のトラブルを防止する観点から、粗圧延後の粗バーを加熱することもできる。また、粗バー同士を接合し、仕上げ圧延を連続的に行う、いわゆる連続圧延プロセスを適用できる。また、圧延荷重の低減や形状・材質の均一化のために、仕上げ圧延の全パスあるいは一部のパスで摩擦係数が0.10〜0.25となる潤滑圧延を行うことが好ましい。
巻取り後の鋼板は、スケールを酸洗などにより除去した後、上記の条件で冷間圧延、焼鈍が施される。
表1に示す成分組成の鋼を真空溶解炉により溶製し、圧延して鋼スラブとした(表1中、Nは不可避的不純物である)。これらの鋼スラブを1200℃に加熱後粗圧延、仕上げ圧延して巻取り、板厚2.3mmの熱延板とした。次いで、1.4mmまで冷間圧延して冷延鋼板を製造し、焼鈍に供した。表2、3に示す焼鈍条件で焼鈍を行い、冷延鋼板No.1〜28を作製した。そして、得られた冷延鋼板について、圧延方向と直角方向にJIS5号引張試験片を採取し、歪速度10−3/秒で引張試験を行った。なお、各鋼板のミクロ組織については、前述の方法により、面積率を測定した。結果を表4、5に示す。
Figure 0005842748
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本発明ではTSが980MPa以上、TS×UELが18000MPa・%以上となり、加工性を有することが確認された。
本発明によれば、TS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上である加工性に優れた高強度冷延鋼板を得ることができる。本発明の高強度冷延鋼板を自動車用部品用途に使用すると、自動車の軽量化に寄与し、自動車車体の高性能化に大きく寄与することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.5〜3.0%、Al:0.010〜3.000%、Mn:1.5〜4.0%、P:0.100%以下、S:0.020%以下、Sn:0.01〜0.50%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ面積率3〜68%のベイニティックフェライトと、面積率の合計が10〜65%のマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトと、面積率10%以上の残留オーステナイトとを含むミクロ組織を有するTS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板。なお、TSは引張強度、UELは均一伸びを示す。
  2. さらに、質量%で、Cr:0.005〜0.200%、Mo:0.005〜0.200%、V:0.005〜0.200%、Ni:0.005〜0.200%、Cu:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、かつその合計が0.200%以下である請求項1に記載のTS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.200%、Nb:0.005〜0.200%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1または2に記載のTS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板。
  4. さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0050%を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のTS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板。
  5. さらに、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のTS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成分を有するスラブに、仕上げ圧延温度をAr3変態点以上で熱間圧延終了後、冷却し、400〜700℃の温度で巻き取る熱延工程を施し熱延板とした後、冷間圧延を施し製造した冷延鋼板に連続焼鈍を施すに際し、Ac3変態点−50℃〜1000℃まで加熱し10s以上保持した後、5℃/s以上の平均冷却速度で冷却停止温度150〜550℃まで冷却した後、350〜550℃の温度で10〜1500s保持することを特徴とする、面積率3〜68%のベイニティックフェライトと、面積率の合計が10〜65%のマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトと、面積率10%以上の残留オーステナイトとを含むミクロ組織を有し、TS:980MPa以上、TS×UEL:18000MPa・%以上の冷延鋼板の製造方法。
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