本発明に係るフロアーポリッシュ用添加剤は、(a)重合性不飽和単量体を重合して得られた(A)水性樹脂を含んでいる。
本発明において、(a)重合性不飽和単量体は、エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体であり、(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体を含んで成るものである。
(a)重合性不飽和単量体として、「(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体」、「(a2)アルコキシシリル基およびエチレン性二重結合を有する単量体」、「(a3)酸基とエチレン性二重結合を有する単量体」及び「(a4)その他のエチレン性二重結合を有する単量体」を例示できる。(a)重合性不飽和単量体は、必ず(a1)単量体を含み、場合により、(a2)〜(a4)単量体を含んでなる。
(a1)単量体は、ヒドロキシル基を有するので親水性である。ヒール(靴底)に練りこまれたカーボンは親油性なので、(a1)単量体とはなじみにくい。本発明のフロアーポリッシュ用添加剤を含むフロアーポリッシュは、(a1)単量体のヒドロキシル基を含むので、ヒール汚れ(カーボン)が付着し難くい皮膜を形成することができ、耐ヒールマーク性に優れたものとなる。また(a1)単量体中のヒドロキシル基は親水性であり、親水性である剥離剤とのなじみが良い。従って、本発明のフロアーポリッシュ用添加剤を含むフロアーポリッシュは、容易に除去できる皮膜を形成することができ、剥離性に優れたものとなる。
本明細書において「エチレン性二重結合」とは、重合反応(ラジカル重合)し得る炭素原子間二重結合をいう。そのようなエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基(CH2=CH−)、(メタ)アリル基(CH2=CH−CH2−及びCH2=C(CH3)−CH2−)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CH−COO−及びCH2=C(CH3)−COO−)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(CH2=CH−COO−R−及びCH2=C(CH3)−COO−R−)及び−COO−CH=CH−COO−等を例示できる。
尚、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、「アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル」を総称して「(メタ)アクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」ともいう。アリル基及びアクリロイルオキシ基についても同様である。
「(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体」(以下「(a1)単量体ともいう」)とは、ラジカル重合反応によって得られる(A)水性樹脂に、ヒドロキシル基を付与することができる化合物をいい、本発明に係る(A)水性樹脂が得られ、目的とするフロアーポリッシュ用添加剤を得ることができるものであれば特に制限されるものではない。(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体は、ヒドロキシル基とエチレン性二重結合を共に有し、ヒドロキシル基とエチレン性二重結合は、例えば、エステル結合、アミド結合及びアルキレン基等の他の官能基を介して結合してよい。
(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体として、下記式(I)で示される化合物が好ましい。
(I):CH2=CR1−X−R2
[但し、式(I)において、R1は、H、メチル基もしくはエチル基、Xは、エステル基又はアミド基(好ましくは、−COO−及び−CONH−)、R2はヒドロキシル基を有する官能基を表す。]
式(I)のR2として、ヒドロキシアルキル基が好ましく、ヒドロキシアルキル基のアルキル基は、置換基を有してよく、環状構造を有しても良い。ヒドロキシアルキル基として、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等を例示できる。
(a1)ヒドロキシル基を含有し、エチレン性二重結合を有する単量体の具体例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどを例示できる。形成される皮膜の耐水性及び耐ヒールマーク性のバランスを考慮すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
本発明における「(a2)アルコキシシリル基およびエチレン性二重結合を有する単量体」(以下「(a2)単量体」ともいう)とは、ラジカル重合反応によって得られる(A)水性樹脂に、アルコキシシリル基を付与することができる化合物をいい、本発明に係る(A)水性樹脂が得られ、目的とするフロアーポリッシュ用添加剤を得ることができるものであれば特に制限されるものではない。
(a2)アルコキシシリル基およびエチレン性二重結合を有する単量体は、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合を共に有し、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合は、例えば、エステル結合、アミド結合及びアルキレン基等の他の官能基を介して結合してよい。
「アルコキシシリル基」とは、加水分解することによってケイ素に結合するヒドロキシル基(Si−OH)を与えるケイ素含有の官能基をいう。「アルコキシシリル基」として、例えば、トリメトキシシル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシシリル基、モノエトキシシリル基、及びモノメトキシシリル基等のアルコキシシルリ基を例示できる。特に、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基が好ましい。「エチレン性二重結合」については、上述のとおりである。
(a)重合性不飽和単量体は(a2)単量体を含むので、(A)水性樹脂はアルコキシシリル基を含んでなる。本発明に係るフロアーポリッシュ用添加剤を含むフロアーポリッシュから形成される皮膜を乾燥すると、アルコキシシリル基は脱水縮合反応し、皮膜中で架橋し、(A)水性樹脂の内部または(A)水性樹脂同士の間に架橋構造を形成し得、皮膜の耐ヒールマーク性および耐水性の向上に寄与し得る。
(a2)アルコキシシリル基およびエチレン性二重結合を有する単量体として、下記式(II)で示される化合物を例示できる。
(II):R5Si(OR6)(OR7)(OR8)
[但し、式(II)において、R5はエチレン性二重結合を有する官能基であり、R6、R7及びR8は、炭素数1〜5のアルキル基である。R6、R7及びR8は、相互に同一でも異なってもよい。]
R5のエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル基、3−(メタ)アクリロイルオキシブチル基、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルを例示できる。
R6、R7、R8の炭素数1〜5のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、及びn−ペンチル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基を例示できる。
(a2)アルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体として、(a2−1)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリn−ブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン:及び下記式(III)で示される化合物
(III):CH2=CR3−COO−Z−Si(OR4)3
[但し、式(III)において、R3は、HもしくはCH3、R4は、炭素数1〜3のアルキル基、Zは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]である化合物が好ましい。
式(III)で示される化合物として、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましく、特に、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
これらの(a2)アルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体は、(A)水性樹脂を含むフロアーポリッシュ用添加剤の性質に応じて適宣選択することができ、単独で又は組み合わせて使用することができる。
本発明では、(A)水性樹脂の酸価に応じて、「(a3)酸基とエチレン性二重結合を有する単量体」(以下「(a3)単量体」ともいう)を使用することができる。ここで「(a3)酸基とエチレン性二重結合を有する単量体」とは、ラジカル重合反応によって得られる(A)水性樹脂に、酸基を付与することができる化合物をいい、本発明に係る(A)水性樹脂が得られ、目的とするフロアーポリッシュ用添加剤を得ることができるものであれば特に制限されるものではない。
本明細書において「酸基」とは、水中で水素イオンを放出して対応する負電荷を有する官能基を形成し得る官能基(例えば、−COOH及び−SO3H等)、その対応する負電荷を有する官能基(例えば、−COO-及び−SO3 -等)及び負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基(例えば、−COO-Na+及び−SO3 -K+等)をいう。これらの「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」、「負電荷を有する官能基」及び「負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基」は、各官能基の周囲の状態、例えば、pH等を変えることによって、容易に相互に変換可能であることはいうまでもない。
ここで、「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」として、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(又はスルホ基)(−SO3H)、及びリン酸基(−PO4H2)等を例示できる。
更に、「負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基」及び「負電荷を有する官能基」として、例えば、カルボン酸塩基(−COO-及び−COOM1)、スルホン酸塩基(−SO3 -及び−SO3M2)、及びリン酸塩基(−PO4H-、−PO4 2-及び−PO4M3M4)等を例示できる[但し、M1、M2、M3、及びM4は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムである(尚、M3及びM4は、いずれか一方が水素であってもよい)]。
「エチレン性二重結合」については、上述の通りである。
このような「(a3)酸基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体」として、例えば、以下の化合物を例示できる:
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、マレイン酸の半エステル等のカルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する化合物、並びにカルボン酸塩基及びエチレン性二重結合を有する化合物;
スチレンスルホン酸等のスルホン酸基及びエチレン性二重結合を有する化合物、並びにスルホン酸塩基及びエチレン性二重結合を有する化合物;
(メタ)アクリル酸オキシエチルアミドフォスフェート等のリン酸基及びエチレン性二重結合を有する化合物、並びにリン酸塩基及びエチレン性二重結合を有する化合物。
尚、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、及びリン酸塩基の対カチオンはアンモニウムイオン及びアルカリ金属イオン類等が好ましく、特に、アンモニウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンが好ましい。
特に、(a3)酸基とエチレン性二重結合を有する単量体として、カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する化合物、並びにカルボン酸塩基及びエチレン性二重結合を有する化合物が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましい。
これらの(a3)単量体は、単独で又は組み合わせて用いることができ、本発明が目的とするフロアーポリッシュ用添加剤の特性に応じて適宜使用することができる。
本発明は、(a)重合性不飽和単量体が、さらに、(a4)その他の単量体を含んで成るフロアーポリッシュ用添加剤を提供することが好ましい。
本発明における「(a4)その他の単量体」(以下「(a4)単量体」ともいう)とは、上述の(a1)〜(a3)以外のエチレン性二重結合を有する単量体であって、上述の(a1)〜(a3)と共重合(ラジカル重合)することができる単量体を言う。目的とする(A)水性樹脂の性質に応じて適宣使用することができる。「エチレン性二重結合」については上述のとおりである。
(a4)その他の単量体は、(A)水性樹脂の後述するガラス転移温度(以下「Tg」と略す)を制御するために重要である。Tgをより高くすることで、フロアーポリッシュ用添加剤の耐ヒールマーク性が向上し、また耐水性も向上すると考えられる。
(a4)その他の単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を例示することができ、これらが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル類として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクレレートオクチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等を例示できる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル類は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
本発明では、(a)重合性単量体100重量部に対し、(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体は、5〜98重量部含まれるのが好ましく、特に、15〜90重量部が好ましく、さらには40〜90重量部が好ましく、70〜90重量部が最も望ましい。(a1)の量が上記範囲にあることで、耐ヒールマーク性、剥離性、耐水性の総合的なバランスに優れたフロアーポリッシュ用添加剤が得られる。
本発明に係る(A)水性樹脂は、(a)重合性不飽和単量体を、ラジカル重合することによって得ることができる。目的とする(A)水性樹脂を得ることができる限り、重合方法は特に制限されるものではなく、一般的なラジカル重合方法を用いて(A)水性樹脂を得ることができる。例えば、(a)重合性不飽和単量体を、有機溶媒中で重合し、水性媒体に置換して得ることができ、この方法が好ましい。(A)水性樹脂は、その水溶性等の特性に応じ、必要に応じてアルカリ性物質で中和してよい。
(A)水性樹脂は、ディスパージョンの形態に調製することが好ましく、より少量で耐久性能(耐ヒールマーク性、耐水性)、除去性能(剥離性)が発揮される。
水性樹脂には、水溶性、ディスパージョン、エマルジョンの三つの形態がある。ディスパージョンは、一般的には、水溶性樹脂とエマルジョンの中間的な性質を示すものとして挙げられる。ディスパージョンおよびエマルジョンの相違点としては、外観、粒子径、分子量等が挙げられる。
本発明では、ディスパージョンは外観が半透明、粒子径10〜70nmであり、エマルジョンは外観が白色、粒子径が70nmよりも大きい。従って、本明細書では、ディスパージョンとエマルジョンとは、明らかに異なるものである。本発明の水性樹脂は、好ましくは粒子径30〜65nmであり、より好ましくは粒子径40〜60nmである。
尚、本明細書では、両成分の粒子径は、ナノトラック粒度分析計による動的光散乱によって測定されるものとする。
(A)水性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、フロアーポリッシュ用添加剤として使用することを考慮すると、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。(A)水性樹脂のTgが上記範囲にあることで、剥離性、耐ヒールマーク性が向上するからである。
(A)水性樹脂のTgは、使用する単量体の質量分率を調整することにより、設定することができる。(A)水性樹脂のTgは、各単量体から得られる単独重合体(ホモポリマー)のTgと、(A)水性樹脂中で使用される単量体の質量分率から、下記の計算式(i)を用いて求めることができる。この計算によって求められるTgを目安にして、モノマー組成を決定することが好ましい。
(i):1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[前記式(i)中、Tgは(A)水性樹脂のガラス転移温度を示し、W1、W2、・・・Wnは各単量体の質量分率を示し、Tg1、Tg2、・・・Tgnは対応するモノマーの単独重合体のガラス転移温度を示す。]
なお単独重合体のTgは、「POLYMER HANDBOOK」(第4版;John Wiley & Sons,Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
例えば、下記の単量体の単独重合体のTgは、以下の通りである:
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:55℃
メタクリル酸:130℃
メチルメタクリレート:105℃
n−ブチルアクリレート:−54℃
尚、(A)水性樹脂のTgを算出する際、(a1)単量体、(a3)単量体及び(a4)単量体を考慮し、(a2)単量体は、少量であるので考慮しなかった。
本発明における(A)水性樹脂の水酸基価は、20mgKOH/gより大きいことが好ましく、200mgKOH/g以上であることが好ましく、240mgKOH/g以上であることが特に好ましい。
本明細書で「水酸基価」とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのmg数を示す。
本発明では、具体的には、下記式(ii)で算出される。
(ii):水酸基価=((a1)単量体の重量/(a1)単量体の分子量)×(a1)単量体1モルに含まれる水酸基のモル数×KOHの式量×1000/(A)水性樹脂の重量
本発明に係る(A)水性樹脂の酸価は、5〜130mgKOH/gであり、特に20〜130mgKOH/gが好ましく、30〜60mgKOH/gが最も望ましい。(A)水性樹脂の酸価が5mgKOH/gより低いと、(A)水性樹脂の耐ヒールマーク性が低下し、(A)水性樹脂の酸価が130mgKOH/gよりも高いと、皮膜の耐水性が低下する。(A)水性樹脂の酸価が、上述の特定の範囲内に維持されることによって、皮膜に、優れた耐水性と耐ヒールマーク性を与えるとともに、剥離性等の性能をフロアーポリッシュへバランスよく付与することができる。
尚、本発明に係る(A)水性樹脂の「酸価」は、樹脂1g中に含まれる酸基が全て遊離した酸であると仮定して、それを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数の計算値で表す。従って、実際の系内で塩基として存在しているとしても、遊離した酸として考慮する。これは、(a3)単量体が含む酸基と対応する。本発明に係る「酸価」は、下記式(iii)で求めることができる。
(iii):酸価=((a3)単量体の重量/(a3)単量体の分子量)×(a3)単量体1モルに含まれる酸基のモル数×KOHの式量×1000/(A)水性樹脂の重量
(a)重合性不飽和単量体の重合は、例えば、通常の溶液重合の方法を使用して、有機溶媒中で適宣触媒等を用いて、上述の(a)重合性不飽和単量体をラジカル重合することで行うことができる。ここで「有機溶媒」とは、(a)重合性不飽和単量体を重合するのに用いることができ、重合反応後のフロアーポリッシュ用添加剤としての特性に実質的に悪影響を与えないものであれば特に限定されることはない。そのような溶媒として、例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール等の低級アルコール及び酢酸エチル等のエステル並びにそれらの組み合わせを例示することができる。
(a)重合性不飽和単量体の重合の反応温度、反応時間、有機溶媒の種類、単量体の種類及び濃度、攪拌速度、並びに触媒の種類及び濃度等の重合反応の条件は、目的とする(A)水性樹脂の特性等によって、適宣選択され得るものである。
「触媒」とは、少量の添加によって(a)重合性不飽和単量体の重合を起こさせることができる化合物であって、有機溶媒中で使用することができるものが好ましい。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチトニトリル(AIBN)及び2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を例示することができ、特に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好ましい。
本発明における重合には、連鎖移動剤等を適宣用いることができる。分子量を調節するための「連鎖移動剤」としては、当業者に周知の化合物を使用できる。例えば、n−ドデシルメルカプタン及びラウリルメチルメルカプタン等のメルカプタン類を例示できる。
重合後、有機溶媒は水性媒体によって置換することが好ましい。水性媒体による有機溶媒の置換は、常套の方法を使用できる。例えば、有機溶媒を蒸留することによって、留去した後水性媒体を加える方法、水性媒体を加えた後有機溶媒を蒸留によって留去する方法を例示できる。
本明細書において「水性媒体」とは、蒸留水、イオン交換水及び純水などのいわゆる水をいうが、水溶性の有機溶剤、例えばアセトン及び低級アルコール等を含むことができる。有機媒体を水性媒体に置換することによって、(A)水性樹脂を得ることができる。
(A)水性樹脂の特性に応じて、(A)水性樹脂を中和してもよい。ここで「中和」は、通常中和に用いられるアルカリ性物質を加えることで行うことができる。その結果、(A)水性樹脂のアニオン基、特にカルボキシル基が中和されて、(A)水性樹脂に水溶性が付与され得る。しかし(A)水性樹脂は、完全に水溶性である必要はなく、本発明に係るフロアーポリッシュ用添加剤を加えて得られるフロアーポリッシュの特性を悪くしない程度の水溶性であればよい。
本明細書において「アルカリ性物質」とは、水に溶解することによって7より大きなPHを呈する物質をいい、通常アルカリ性物質の形態は気体、液体及び固体を問わないが、水に溶解性せしめた水溶性の形態のものが取り扱いやすく、また、中和反応を制御し易いので好ましい。このような「アルカリ性物質」として、例えば、アンモニア、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ金属、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属等を例示できるが、アンモニア水ナトリウム水溶液及びカリウム水溶液が好ましい。
アルカリ性物質は、(A)水性樹脂を含む水性媒体のpHが8.0以上となるように加えることが好ましく、pHが8.0〜10.0となるように加えることがより好ましく、pHが8.0〜9.5となるように加えることが特に好ましい。
本発明のフロアーポリッシュ用添加剤は、一般的なフロアーポリッシュの主成分となる基体樹脂、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等と配合され、フロアーポリッシュ用組成物が生成される。すなわち、本明細書において、フロアーポリッシュ用組成物とは、(A)水性樹脂を含むフロアーポリッシュ用添加剤と、(A)水性樹脂以外のポリマーである基体樹脂で、比較的、分子量の大きいものとの配合物とする。
(A)水性樹脂と基体樹脂との配合量は、両者の合計重量100重量部に対し、(A)水性樹脂が0.5〜30重量部になる量である。(A)水性樹脂と基体樹脂との合計重量100重量部に対し、(A)水性樹脂の量が0.5重量部未満であるとフロアーポリッシュ皮膜の耐ヒールマーク性および剥離性が低下し、30重量部を超えるとフロアーポリッシュ皮膜の耐ヒールマーク性が低下する。(A)水性樹脂の量は、(A)水性樹脂と基体樹脂との合計重量100重量部に対し、3〜25重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることが更に好ましい。
上記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系エマルジョンが好ましい。(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルの重合体に由来する化学構造を有している。(メタ)アクリル酸エステルの重合体に由来する化学構造は、目的とするフロアーポリッシュ用組成物を得ることができる限り、(メタ)アクリル系エマルジョン中に、いかなる形で組み込まれていても良い。すなわち、(メタ)アクリル酸の重合体に由来する化学構造の任意の位置が任意の置換基で置換されていても良いが、置換されていなくても良い。すなわち、(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドおよびこれらの誘導体((メタ)アクリル酸誘導体)の重合体であり、ホモポリマーでもコポリマーでも差し支えない。(メタ)アクリル系エマルジョンは、エチレン、プロピレン等のポリオレフィンに由来する化学構造や、ポリスチレン、α−メチルポリスチレン等のポリビニル芳香族に由来する化学構造を有していても良い。
本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、「アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル」を総称して「(メタ)アクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」とも言い、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体を総称して(メタ)アクリル酸誘導体と言う。
尚、ビニル基と酸素が結合した構造を有するビニルエステル、例えば酢酸ビニル等は、(メタ)アクリル酸エステルに含まれないので、本発明の(メタ)アクリル系エマルジョンには該当しないものとする。
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的に、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(又はラウリル)(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが例示される。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、N−ヘキシルアクリル酸アミド、N−オクチルアクリル酸アミド、N,N−ジメチルアクリル酸アミド、N−ブチルアクリル酸アミド、N−プロピルアクリル酸アミドや、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが例示される。
アルキル基は(例えば、メチル、エチル及びプロピル等の)鎖状構造であってもよく、(例えば、n−ヘキシル及びn−オクチル、n−プロピル、n−ブチル等の)直鎖状でも、(例えば、2−エチルヘキシル、イソブチル及びt−ブチル等の)分枝状でもよく、(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、メトキシ基等の)置換基を有していても有していなくてもよいが、水酸基は有している方が好ましい。
本発明の好ましい態様として、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートが望ましい。これらの中でも、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが特に望ましい。
本発明では、(メタ)アクリル系エマルジョンは、メチルメタクリレートの重合体に由来する化学構造を有しているのが好ましく、さらに、メタクリル酸の重合体に由来する化学構造を有しているのが実施形態としてより好ましく、さらに、ブチルアクリレートの重合体に由来する化学構造を有するのが実施形態として最も好ましい。
尚、(メタ)アクリル系エマルジョンは、メチルメタクリレートの重合体に由来する化学構造を有していれば、ポリスチレンに由来する化学構造を有していても差し支えない。
(メタ)アクリル系エマルジョンの製造方法は、本発明が目的とするフロアーポリッシュ用組成物を得ることができれば、特に制限はない。通常、乳化重合を用いて製造することができる。
本発明のフロアーポリッシュ用添加剤が添加されるのに好ましい(メタ)アクリル系エマルジョンは市販されており、例えば、ヘンケルジャパン社製「ヨドゾールAD57(商品名)」、「ヨドゾールAD176(商品名)」等が挙げられる。
上記ウレタン樹脂としては、分子量、分子構造、製造方法(重合方法、溶媒の使用有無、または溶媒の種類等)のいかんにかかわらず、あらゆる種類の水性ポリウレタン系エマルジョンを用いることができる。また、ポリウレタン系エマルジョンとアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル等の少なくとも一種以上のビニルポリマーとを共重合した水性ポリウレタン系共重合体樹脂、及び上記ビニルモノマーの共重合体とポリウレタン系エマルジョンとの反応により得られるポリウレタン系エマルジョン等を用いてもよい。
本発明の組成物の製造に使用されるポリウレタン系エマルジョンの一例を挙げれば、三級アミンの非存在下で重合製造されたものを好適に用いることができる。この様なポリウレタンは、例えばポリウレタンの繰り返し単位あたり2ないし20個の酸官能基を有するものであり、一般に固形分5ないし60重量%の水性樹脂エマルジョンとして製造することができる。このようなポリウレタン系エマルジョンを含む水性樹脂エマルジョン中では、酸官能基の全部または一部が解離した状態で存在していてもよい。ポリウレタン樹脂の分子量は、約10,000ないし約1000,000、より好ましくは30,000〜200,000、特に好ましくは約50,000ないし約100,000の範囲である。ポリウレタン樹脂を2種以上を混合して使用する場合には、重合製造された2種以上のポリウレタン樹脂の混合物の酸価が上記の範囲内となるように組み合わせて用いればよい。
本発明のフロアーポリッシュ用添加剤が添加されるのに好ましい水性ポリウレタン系エマルジョンは市販されており、例えば、「ヨドゾールRD6(商品名)」、「ヨドゾールRD20(商品名)」が挙げられる。
本発明のフロアーポリッシュ用添加剤で使用する(A)水性樹脂はヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体の含有量が高い。また、樹脂粒子の粒子径が非常に小さい。そのために、(A)水性樹脂は、フロアーポリッシュの主成分となる樹脂エマルジョンに配合されると、比較的大粒子径のエマルジョン粒子の隙間を埋める効果が高い。フロアーポリッシュ皮膜の表面は、ヒドロキシル基で局在化され、親水化されることとなる。靴底(ヒール)に練り込まれるカーボンは親油性が高いので、親水性のフロアーポリッシュ皮膜となじまない。その結果、フロアーポリッシュ皮膜の耐ヒールマーク性が向上すると考えられる。
また、本発明のフロアーポリッシュ用添加剤で使用する(A)水性樹脂は、分子量が低く、かつ親水性であり、親水性化合物である剥離剤となじみ易い。従って、フロアーポリッシュ皮膜の除去性能(剥離性)が向上すると考えられる。
本発明に係るフロアーポリッシュは、上記フロアーポリッシュ用組成物に、アルカリ可溶性樹脂、架橋剤、可塑剤、成膜助剤、(A)水性樹脂以外の重合体を含む水分散体(例えば、ワックスエマルジョンやウレタンディスパージョン等)、消泡剤、防腐剤、充填材、増粘剤、分散剤等が配合されたものである。
上記架橋剤としては、カルボキシル基に作用し得る非金属系又は金属系の化合物が挙げられる。非金属系架橋剤としては、カルボジイミド基やオキサゾリン基等を含有する化合物が挙げられる。金属系架橋剤としては亜鉛、マグネシウム等の多価金属やその化合物が挙げられるが、環境負荷低減の観点から金属系の架橋剤を用いないことが好ましく、また、剥離性向上の観点から架橋剤を用いないことがより好ましい。
可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル、ジブチルフタレート、ジ2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、ジメチルアジピン酸、ジブチルアジピン酸等のアジピン酸エステル、2−エチルヘキサノール等のアルコールへのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
従来、フロアーポリッシュ用の可塑剤としては、特にトリブトキシエチルホスフェートが広く用いられているが、環境負荷低減のために、そのようなリン系の化合物の使用を避ける方向(すなわち、無リン化)が進んでおり、リン系化合物を含有しないことが好ましい。そのような非リン系化合物のなかでも、床材へのぬれ性を良好なものとすることができることから、上記の可塑剤のうち、特に2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物を用いるのが好ましく、さらに2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド1〜8モル付加物を用いることが好ましい。
ワックスエマルジョンのワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス及びそれらの変性物等広く用いることができる。天然ワックスとしては、牛脂や豚脂等の水素添加硬化ロウ、ラノリン、ミツロウ等の動物性ワックス;
大豆油やヒマシ油等の水素添加ロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、木ロウ、ヌカロウ等の植物性ワックス;
モンタンワックス、セリシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物性ワックス;
を挙げることができる。
合成ワックスとしては、分子量500〜5,000程度のポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。これらのワックスのエマルジョンは、これらのワックスに乳化剤を加えて乳化する等の公知の方法により製造することができる。
成膜助剤としては、ベンジルアルコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のアルコール類、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のグリコール類等が挙げられる。
消泡剤とは、通常、消泡剤とされるものであれば特に限定されることはない。例えば、疎水性シリカ、金属石鹸系、アマイド系、変性シリコーン系、シリコーンコンパウンド系、ポリエーテル系、エマルション系、粉末系などがある。例えば、疎水性シリカとして、ノプコSNデフォーマー777(商品名)(サンノプコ(株)製)、SNデフォーマーVL(商品名)(サンノプコ(株)製)、金属石鹸系ではノプコNXZ(商品名)(サンノプコ(株)製)、アマイド系消泡剤として、ノプコ267−A(商品名)(サンノプコ(株)製)、変性シリコーン系消泡剤として、シリコーンKM80(商品名)(信越化学製)、シリコーンコンパウンド系消泡剤として、SNデフォーマー121N(商品名)(サンノプコ(株)製)、ポリエーテル系消泡剤として、SNデフォーマーPC(商品名)(サンノプコ(株)製)、エマルション系消泡剤として、ノプコKF−99(商品名)(サンノプコ(株)製)、粉末系消泡剤として、SNデフォーマー14−HP(商品名)(サンノプコ(株)製)などを例示できる。
防腐剤として、例えば、ACTICIDE LG(商品名)(ソージャパン(株)製)、ACTICIDE MBS(商品名)(ソージャパン(株)製)などを例示できる。
成膜助剤とは、通常、成膜助剤とされるものであれば特に限定されることはない。例えば、CS−12(商品名)(チッソ(株)製)、ベンジルアルコール、ブチルグリコール、2−エチルヘキシルグリコ−ル、フェニルプロピレングリコール、ジブチルジグリコールや、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレンモノグリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテルなどの多価アルコールモノアルキルエーテルの有機エステル類、3−エトキシプロピオン酸エステル類、酢酸3−メトキシ−3−メチル−ブチル等を例示できる。
充填剤とは、性能向上、コスト低減等の目的で添加される物質をいい、通常充填剤とされるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレー、アルミナ等を例示できる。
増粘剤とは、通常、増粘剤とされるものであれば特に限定されることはない。例えば、アルカリ増粘型の増粘剤として、変性アクリルポリマーを、会合型の増粘剤として、ウレタン変性ポリエーテル及びポリエーテル等を例示できる。アルカリ増粘型の増粘剤として、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(SP600(商品名)ダイセル化学社製)、SNシックナー615(商品名)(サンノプコ(株)製)、ASE60(商品名)(R&H(株)製)、KA10K(商品名)(ヘンケルジャパン(株)製)などを例示できる。また会合型の増粘剤として、例えば、SN812(商品名)(サンノプコ(株)製)、RM8W(商品名)(R&H(株)製)、UH752(商品名)(ADEKA(株)製)等を例示できる。
分散剤とは、通常、分散剤とされるものであれば特に限定されることはない。例えば、トリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製)、プライマール850(商品名)(ローム&ハース社製)、デモールEP(商品名)(花王(株)製)ディスコートN−14(商品名)(第一工業製薬(株)製)、オロタン165A(商品名)(R&H製)、SNディスパーサント5020(商品名)(サンノプコ(株)製)を例示できる。
本発明のフロアーポリッシュは、一般的な床材として知られる種々の基材、例えば木質材料、プラスチック、無機質建材等、一般的な床材すべてに塗工可能である。本発明のフロアーポリッシュの塗工は、まず、床材へ塗布し、乾燥させて皮膜を形成させることにより行う。フロアーポリッシュの塗布及び乾燥は常温常圧の環境下で行う。その後、フロアーポリッシュの皮膜に汚れが付着したり、その皮膜が傷んだ場合に、これを除去する。フロアーポリッシュの皮膜の除去は、除去対象である皮膜にフロアーポリッシュ除去剤を接触させ、フロアーポリッシュ除去剤が作用した皮膜を摩擦することにより行う。そして、フロアーポリッシュの皮膜を除去した床材の表面に、再度本発明のフロアーポリッシュが塗布される。
本発明のフロアーポリッシュが塗工された床は、ヒールマークが付き難く、水等で汚れることもなく、しかも皮膜除去が容易なので、定期的なメンテナンスが容易となる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例において部とは、重量部を意味する。
(A)水性樹脂を含むフロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9およびA’10〜A’12の製造
以下、(A)水性樹脂の製造に使用した単量体(a)を示す。
(a1)ヒドロキシル基およびエチレン性二重結合を有する単量体として、メタクリル酸2ヒドロキシルエチル(和光純薬工業(株)製)を用いた。
(a2)アルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(SZ-6030 東レ・ダウコーニング(株)製)を用いた。
(a3)酸基とエチレン性二重結合を有する単量体として、メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)を用いた。
(a4)その他のエチレン性二重結合を有する単量体として、
(a4-1)メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)及び
(a4-2)n-ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製)を用いた。
攪拌翼、温度計、及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、表1及び表2に記載した量で単量体とn−DM(n−ドデシルメルカプタン)を加え、100部の2-プロパノール(和光純薬工業(株)製)、及び1部の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学(株)製)を加えた。混合物を攪拌しつつ80℃に加熱した。80℃にて4間攪拌して化合物を共重合した。反応混合物を室温に冷却後、500部の水を加えながら、アンモニア水を加えて混合物のPHが9になるように調製した。2-プロパノールを減圧除去することで除去して、均一で透明な混合物、即ち、水性媒体中に存在する(A)水性樹脂を得た。
(A)水性樹脂は、各成分の配合によりA1〜A9及びA’10〜A’12とし、そのままフロアーポリッシュ用添加剤とした。
フロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9及びA’10〜A’12の濃度は、いずれも20重量%であった。尚、この濃度は、105℃のオーブン中で3時間乾燥し、残留する部分の、乾燥前の重量に対する重量百分率である。
水性樹脂の酸価、水酸基価、ガラス転移温度(Tg)は、上述した計算式(i)〜(iii)を用いて求めた。尚、水性樹脂の酸価、水酸基価、ガラス転移温度(Tg)を求める際、n-DMについては、考慮しなかった。
次に、フロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9及びA’10〜A’12を含有するフロアーポリッシュを作製し、その性質を評価した。以下、フロアーポリッシュの製造及びその性質の評価について記載する。
<フロアーポリッシュの作製>
(メタ)アクリル系エマルジョン(ヨドゾールAD57(商品名)、ヘンケルジャパン(株)製)40部に対し、ワックスとしてハイテックE−4000(商品名、東邦化学工業(株)製)を7部、アルカリ可溶性樹脂としてのスチレン・マレイン酸アンモニウム溶液(固形分15%)を4部、成膜助剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを8部、可塑剤としてTBEP(トリブトキエチルホスフェート)を1部、レベリング剤としてサーフィノール420(商品名、日信化学工業(株)製)を1部、蒸留水45部を混合して、フロアーポリッシュ用混合物とした。
その混合物100部にフロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9及びA’10〜A’12を添加して、実施例1〜10及び比較例1〜4のフロアーポリッシュを得た。フロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9及びA’10〜A’12の添加量については、表3及び表4に示した。尚、フロアーポリッシュ用添加剤の質量部は、水性媒体を含む質量部である。
<評価試験>
フロアーポリッシュ用添加剤A1〜A9(実施例1〜10)、A’10〜A’12(比較例1〜4)を含有するフロアーポリッシュについて、以下の評価試験を行った。その結果を表3及び表4に示す。
1.耐ヒールマーク性評価
JFPA規格−11に準ずるヒールマーク試験機および方法で評価した。具体的な方法は、以下のとおりである。
フロアーポリッシュをコンポジションビニルタイル(東リ(株)社製、マチコV、寸法300mm×300mm)にガーゼを用い、3回重ね塗りし、その後、1日乾燥させることで、試験片とした。
ヒールマーク試験機は、スネルカプセルと称される機器を使用した。スネルカプセルは、形態が六角柱状であり、六角形の中心に軸が通され、その軸を中心に回転することが可能になっている。
試験片を寸法225mm×225mmに切断し、スネルカプセル(試験機)内壁面に装着し、標準ゴムブロック(JIS S 5050)50mm×50mm×50mm立方体(約175g)6個を試験機内に投入した。
試験機を50回転/分で5分間回転させ、その後、逆方向に5分回転させた。標準ゴムブロックが10分間の回転で試験片に衝突するので、衝突による試験片の汚れで耐ヒールマーク性を評価した。
評価は、試験片に付着したブラックヒールマーク(黒色のこすれたような汚れ)の量を目視によって判断した。評価基準を以下に示す。
◎:汚れがほとんどない
○:汚れがわずかにある。
△:汚れがある
×:汚れがかなり目立つ
2.剥離性評価
先ず、標準剥離液を調製した。剥離液の調製は以下のとおりである。
全量フラスコに、ラウリル硫酸ナトリウム2gおよび500mlの25±5℃のイオン交換水を入れて、透明になるまでよく撹拌してから、ベンジルアルコール20gとモノエタノールアミン40gを順に加えてよく分散させた後、さらに25±5℃のイオン交換水を加えて、全量を1Lにしたものを標準剥離液とした。
次いで、剥離評価試験の試験片を作製した。詳細を以下に示す。
各フロアーポリッシュをコンポジションビニルタイル(東リ(株)社製、マチコV、寸法300mm×300mm)にガーゼを用い、3回重ね塗りした。
その後、重ね塗りされたタイルを50℃に保った恒温乾燥炉中で7日間乾燥し、これを試験片とした。
試験片を寸法50mm×150mmに切断し、標準剥離液に中に2分間浸漬させた。
その後、標準剥離液を含んだ赤色研磨たわし(住友スリーエム(株)製、赤パッド)で試験片の往復磨きをおこない、フロアーポリッシュ皮膜の完全除去に要する往復駆動回数を測定した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:25〜50回で除去できる
○:51〜100で除去できる
△:101〜200回で除去できる
×:201回以上
3.耐水性評価
各フロアーポリッシュをコンポジションビニルタイル(東リ(株)社製、マチコV、寸法300mm×300mm)にガーゼを用い、3回重ね塗りした。その後、1日間乾燥させることにより、試験片とした。
試験片に0.1mLの水をメスピペットで滴下し、1時間経過後、水滴を拭き取り、試験片の白化状態を目視で評価した。
評価基準については、以下のとおりである。
◎:白化現象なし
○:白化の輪郭がわずかにみられる
△:部分的に白化がみられる
×:全面的に白化がみられる
4.総合評価
以上の評価試験によって、フロアーポリッシュ用添加剤の総合性能を評価した。評価基準については、以下のとおりとする。
◎:耐ヒールマーク性及び剥離性が◎で、かつ、耐水性に×が含まれないもの
○:耐ヒールマーク性が○で、かつ、他性能に×が含まれないもの
△:耐ヒールマーク性が△で、かつ、他性能に×が含まれないもの
×:いずれかの性能に×が含まれるもの
表3及び表4に示すように、実施例1〜10のフロアーポリッシュは、本発明に係るフロアーポリッシュ用添加剤を含んでいるので、形成される皮膜の耐ヒールマーク性と剥離性に優れ、更に、耐水性等の総合的な性能にバランスよく優れる。
特に、実施例2、4、7〜10のフロアーポリッシュは優れ、総合評価が◎となっている。
これに対し、比較例1、2のフロアーポリッシュは、本発明に係るフロアーポリッシュ添加剤であるA1〜A9を含まないので、耐ヒールマーク性に著しく劣っている。
比較例3、4のフロアーポリッシュは、A’11、A’12がゲル化してしまったので、各性能を評価することすらできなかった。
これらの結果から、本発明に係るフロアーポリッシュ添加剤は、亜鉛架橋を必要とせずに、フロアーポリッシュの皮膜耐久性、皮膜除去性を向上させることが可能であることが実証された。