JP5829327B1 - 吸収性物品用不織布 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、近年では、肌と接触する面に、複数列の畝状の凸部と、隣接する凸部の間の空間に設けられた溝部とが設けられた不織布が用いられることが多くなっているが、このような不織布は、比較的柔軟な凸部が肌に接触し、またその凸部が肌面にフィットし易いため、不織布の柔軟性を感じ易い傾向にある。
しかしながら、この特許文献1に記載の不織布は、溝部に貫通孔を形成する工程において、不織布中の熱可塑性樹脂繊維を溶融させながら、貫通孔形成用のピンロールに設けられたピンを不織布の厚さ方向に貫通させることにより貫通孔を形成するため、貫通孔の周縁が溶融によって硬化し易い。
そのため、肌が不織布に接触した際、特に、不織布を厚さ方向に押圧した場合や、不織布の平面方向に肌を滑らせた場合には、貫通孔の周縁の硬い部分が肌に当たって著しい違和感を感じさせる可能性があり、不織布の肌触りを大きく損ねることが考えられる。
しかしながら、貫通孔の開口縁は非常に薄く、実質的に吸収体に線接触した態様となるため非常に脆く、わずかな力が作用しただけで貫通孔の開口縁が潰されたり、貫通孔全体が潰されたりする可能性がある。
そのため、トップシートである不織布が使用者の肌によって吸収体側に押圧された場合や、製品としての吸収性物品を包装用の袋に折り畳んで収容、搬送される際に吸収体全体が圧縮された場合には、貫通孔の開口縁に過度の圧縮力が作用して、貫通孔や開口縁が潰れて元の不織布の形状に戻らなくなることが考えられる。したがって、引用文献1の不織布は、吸収性物品に使用した場合には、この不織布が本来有している柔軟性を発揮できず、所望の使用感を得ることができない可能性がある。
(1)第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面側に突出する凸部と、前記第2面側に窪んだ溝部とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収性物品用の不織布であって、前記凸部は、前記不織布の面の第1方向に向けて延設されていると共に、前記不織布の面において前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で複数列設けられ、前記溝部は、前記第2方向に対して隣り合う前記凸部の間の空間に、前記第1方向に延設されていると共に、前記溝部の溝底部に、該溝部の溝底部よりも前記第2面側に位置する底部を有し、且つ前記第1方向に対して不連続に設けられた複数の凹部を備え、前記凹部は、該凹部の周面の少なくとも一部が、前記第2面に通じる孔部を備えていて、該孔部は、前記熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく形成された周縁部を有していると共に、前記凹部の底部は、前記凸部よりも繊維密度が高く、且つ少なくとも前記第2面側が面状に形成されている、吸収性物品用不織布。
(3)前記凹部の前記底部の厚さは、前記凸部における最も前記第1面側に突出した部分の厚さよりも小さい、前記(1)又は前記(2)に記載の吸収性物品用不織布。
(5)前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさは、前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凸部の頂部の高さまでの大きさの50〜80%である、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の吸収性物品用不織布。
(6)前記凸部は、隣接する他の凸部との間の間隔が0.25〜5mmである、前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の吸収性物品用不織布。
一方で、吸収性物品に使用された場合には、凹部の底部が不織布の変形を抑えると共に、吸収性物品の他の部材に安定的に面接触するため、凹部を通じて不織布全体を支えて保形し易くなり、柔軟な肌触りを安定的に維持、確保することができる。
なお、本発明の不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、尿取りパット、パンティーライナー等の吸収性物品のトップシートや防漏壁等、即ち、吸収性物品の使用者の肌と接する側に配設されるシートとして好適に用いられる。あるいは、使い捨ておむつ等のバックシートの外方側の面に貼り付けられるシートとしても用いられる。
凸部4は、不織布1の面(シート面)の第1方向Xに向けて連続的に延設されていると共に、その不織布1の面における第1方向Xと直交する第2方向Yに予め定めた間隔で複数列設けられている。この実施の形態においては、各凸部4は、いずれも第1方向Xにむけて連続的に、且つ他の凸部4と相互にほぼ平行となるように延設されている。
一方、溝部5は、第2方向Yに対して隣り合う凸部4,4の間の空間に、第1方向Xに延びるように設けられていて、凸部4の頂部4aよりも下面側に窪んだ溝底部6を有している。
隣接する凸部の間の間隔の距離が0.25mm未満であると不織布が凹凸構造を形成しているとは言い難く、凸部による肌との接触面積をあまり減らすことができないため、肌触りが低下する可能性がある一方、逆に5mm超であると加工前における加工対象の不織布と大差がなくなるため、凹凸を生かした柔軟な肌触りを得ることができない。
また、凸部は、溝部の溝底部において最も深い位置(不織布の第2面側)から、その凸部における最も高い位置(通常凸部の頂部)までの高さは0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは、0.75〜2mmとすることである。高さが0.25mm未満であると、凸部の突出が小さすぎて凹凸構造を生かした柔軟な肌触りを得ることができない。逆に5mm超であると、凸部が突出しすぎて鋭利な構造となってしまうため、やはり柔軟な肌触りを得ることができない。
これらの凹部7は、それぞれ、溝底部6と連続した状態で下面3側に向けて延びる立壁状の周面8と、この周面8の下端側に設けられた前述の底部9とを備えている。
この実施の形態においては、凹部7は、平面視略矩形状の開口及び周面8並びに底部9を有する上方開口の略直方体状の空間を備えた構成となっていて、各凹部7は、不織布1の下面3側に突出し、且つ他の凹部7から相互に独立した状態で形成されている。
また、周面8は、第1方向Xに沿うように延びる一対の第1周面8a,8aと、第2方向Yに沿うように延びる一対の第2周面8b,8bとを備えていて、一対の第1周面8a,8a同士は相互に向かい合う位置に配設されていると共に、一対の第2周面8b,8b同士についても相互に向かい合う位置に配設されている。
図2に示すように、この実施の形態においては、孔部11は、一対の第1周面8a,8aのそれぞれに1つずつ設けられていて、それらの孔部11は、第1周面8aにおける凹部7の底部9寄りの位置に形成されたものとなっている(したがって、1つの凹部7には2つの孔部11が存在している。)。
一方で、一対の第2周面8b,8bは、孔部11に相当するものは存在せず、各第2周面8bは、下端側の全部が底部9と、途切れることなく直接的に連結された状態となっている。
また、凹部を溝部の溝底部に設けたのは、肌に触れにくい部分を形成すると共に、その肌に触れにくい部分である凹部において、後に詳述する底部で剛性を確保し、不織布が圧縮された際の強度を補填するためである。
溝部の溝底部の第1面側の高さから凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさが0.05mm未満であると、後述の底部の剛性を確保しづらく、不織布の厚み方向の強度が不足し、逆に2mm超であると、吸収性物品の他の部材、例えば吸収体や不織布、フィルム等と貼り合わせる際、厚さ方向の強度が出ない一方で、圧縮した際に剛直感を感じてしまう可能性がある。
溝部の溝底部の第1面側の高さから凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさが、溝部の溝底部の第1面側の高さから凸部の頂部の高さまでの大きさの10%未満であると、周面における孔部の形成スペースが十分に確保できず、孔部の形成が不十分となって凸部、延いては不織布としての柔軟性を得られない。逆に80%を超えると、凹部が深くなりすぎて凹部の周面の強度が低下し毛羽立ち易くなるため、肌触りが低下する可能性がある。
凹部の第1方向の長さが0.25mm未満であると、凹部が小さくなりすぎて、凹部がほとんど機能しない可能性があり、逆に5mm超であると、凹部が第1方向に長くなりすぎて、平坦な不織布や凹部が存在しない不織布と柔軟性において大差がなく、柔軟な肌触りを得ることができない。
一方、凹部の第2方向の長さは、溝部の溝幅にもよるが、0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmとすることである。
凹部の第2方向の長さ0.25mm未満であると、やはり凹部が小さくなりすぎ、特に底部の形成が不十分になるため、凹部がほとんど機能しない可能性があり、逆に5mm超であると、凹部が大きくなりすぎて、後述する底部の剛性との関係で、不織布が硬くなる可能性がある。
孔部の最大部分の長さが0.25mm未満であると孔部の形成が不十分であり、凹部の柔軟性が確保できない上、凸部の繊維の引張力が低下せずに凸部の十分な柔軟性が確保できない。逆に、5mm超であると孔部が大き過ぎて周縁部が毛羽立ち易くなり、かえって孔部の違和感や異物感が生じ、不織布の肌触りを低下させるおそれがある。
また、孔部の高さ方向の最大長さは、凹部の深さにもよるが、0.1〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.25〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmとすることである。
孔部の高さ方向の最大長さが0.1mm未満であると、孔部の形成が不十分であり、この場合であっても、凹部の柔軟性が確保できない上、凸部の繊維の引張力が低下せずに凸部の十分な柔軟性が確保できない。逆に、5mm超であると、孔部の周縁部が大き過ぎて周縁部が毛羽立ち易くなり、孔部が違和感や異物感が生じさせ易くなるため、不織布の肌触りを低下させる可能性がある。
即ち、孔部を第1周面にのみに形成することによって凸部や凸部の繊維の自由度を向上させ、これにより、凸部の柔軟性、より具体的には凸部における不織布の厚さ方向への柔軟性、及び不織布の平面方向、特に第2方向に肌を滑らせた際の柔軟性を向上させて、滑らかな感触を確保することができる。
また、第2周面については溝部の溝底部と連続させたことにより、肌を第1方向、即ち凸部や溝部が延びている方向に肌を滑らせた場合に、孔部に対する肌の引っ掛かりが小さくなって孔部の存在をより感じにくくなるため、違和感や異物感を感じづらくなる。特に、第1方向に肌を滑らせたと際には、第2方向に肌を滑らせた場合と異なり、肌が凹部に接し易くなるが、その場合であっても孔部が感じられにくくなるため、主に凸部から得られる不織布の柔軟な感触が損なわれにくくなる。
これにより、凸部に、優れた硬軟感(不織布の厚さ方向への優れた柔らかさ)及び不織布の第2方向への優れた粗滑感(不織布の平面方向の優れた滑らかさ)の両方を付与して、不織布全体として優れた硬軟感及び粗滑感を確保することが可能となり、柔軟な肌触りを実現することができることとなる。
これにより、肌を不織布の平面方向に滑らせた際の滑らかさをより安定的に確保することができる。
より具体的には、図3及び図4に示すように、孔部11の周縁部12には、不織布1中の熱可塑性樹脂繊維のうち、破断により形成された破断端部13aを備えた破断繊維13におけるその破断端部13aが含まれている。したがって、孔部11の周縁部12は、熱可塑性樹脂繊維が溶融によって硬化した部分は一切存在せず、柔軟な熱可塑性樹脂繊維の一部、あるいは、熱可塑性樹脂繊維のうち破断によって形成された破断端部13aを有する破断繊維13によって形成されたものとなっている。これにより、仮に人間の肌が孔部11の周縁部12に触れたとしても、硬化した熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、不織布の硬さや粗さを感じることが可及的に抑止される。
したがって、破断端部13aは、熱可塑性樹脂繊維を溶融した場合のように、繊維の端部が溶けて丸くなって繊維径が大きくなることはなく、ちぎれたことによって先細りになったり、あるいは繊維径の変化がほとんど生じない態様となっていたりする。これにより、人間の肌が孔部11の周縁部12に触れた場合であっても、ごわつきや繊維の引っ掛かりによる違和感を感じることが抑えられる。
したがって、孔部11の内部空間11a内には、その内部空間11aに架け渡された繊維14と、一部の延出した繊維とが混在した状態となっていて、完全に開放された空間とはなっていない。
このように、孔部の内部空間に熱可塑性樹脂繊維の一部が架け渡された構成としたのは、仮に肌が孔部に触れた場合であっても、内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維が凹部の周面や底部と孔部との感触の違いをできるだけ小さくし、触れた者の違和感を感じにくくさせるためである。即ち、孔部の内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維が、肌が孔部を完全に突き抜けて不織布の第2面側(下面側)に至らないようにするため、周面や底部と孔部との境目の段差が触感上において小さくなり、これにより、肌触りが比較的滑らかになり、孔部に触れた者が違和感を感じにくくなる。
また、一部の破断繊維の破断端部が孔部の内部空間に延出する場合も、凹部の周面や底部と孔部との間の段差から生じる感触の違いを小さくするため、やはり肌触りを滑らかにする。
孔部の内部空間の開孔率が1%未満であると、開孔率が低すぎて凸部や凸部の繊維に自由度を付与することができず、凸部の柔軟性を十分に確保できない。逆に50%以上であると孔部が設けられた周面(この実施形態の場合は第1周面8a)の強度が低くなり易い上、孔部の周縁部の境目が触感上分かり易くなる可能性がある。
ただし、孔部の内部空間の開孔率については、不織布を使用する吸収性物品の種類や用途等によっては、前記範囲以外であってもよく、任意に設定することができる。
この実施の形態においては、底部9は、第1面2側及び第2面3側の両方がほぼ平坦な平面状に形成された構成となっている。
具体的に、不織布を生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品のトップシートや防漏壁に用いた場合や、バックシートの表面に貼り付けた場合には、使用者の動きによって、不織布が曲がったり、捩じれたり、あるいは肌によって押圧される。また、吸収性物品を販売あるいは搬送のために袋等のパッケージに収容した場合も、吸収性物品全体が折り曲げられ且つ圧縮されて不織布が変形しやすい。しかしながら、本発明においては、底部の繊維密度を凸部の繊維密度より高くして硬くしているため、この底部が不織布の変形を極力抑えて、元の形状に復元させ、不織布の保形性が高い。したがって、不織布の形状を安定的に保持して不織布の柔軟な肌触りを維持することができる。
また、不織布をトップシートとして使用した場合には、吸液性を有する吸収体が底部の第2面側に当接してその底部を第1面側に向けて押圧し、さらに不織布を使い捨ておむつのバックシートの外表面に貼り付けた場合には、そのバックシートが底部の第2面側に当接してその底部を第1面側に向けて押圧するため、この底部が凹部の周面を通じて不織布全体を支え、その不織布の形状をより安定的に保持させる。
したがって、凹部の底部の繊維密度の高さに伴うこの底部の剛性によって、不織布の形状が安定的に保持されるため、凸部の柔軟な肌触りが維持されることとなる。
即ち、従来のように吸収性物品の他の部材に線接触している場合は接触している部分が潰れ易く、不織布の形状を維持できないが、この発明のように面接触させる場合は、他の部材からの押圧力が安定的に伝わり易く、凹部の周壁を通じて不織布を第1面側に押すため、仮に不織布が厚さ方向に潰れても不織布の形状を回復、維持させることができる。
これにより、不織布の柔軟な肌触りをより安定的に維持することが可能となる。
底部の繊維密度が0.005g/cm3未満であると繊維密度が低すぎて、底部が毛羽立ち易くなるため、底部の違和感や異物感を感じ易くなる。逆に0.3g/cm3 を超えると繊維密度が高すぎて底部が必要以上に硬くなることから、やはり違和感や異物感を与え易くなる。
さらに、底部と凸部との関係において、底部の繊維密度は、凸部の繊維密度の1.3〜15倍であることが好ましい。
底部の繊維密度が凸部の繊維密度の1.3倍未満であると、底部の繊維密度と凸部の繊維密度の差が小さすぎることから、不織布の凹凸の成形が不十分である場合があり、凸部や凹部の強度が不良で不織布の凹凸形状を維持することができない可能性がある。逆に15倍を超えると、底部の繊維密度と凸部の繊維密度の差が大きすぎることから、凹部または底部のどちらか一方に過大な圧力が作用して必要以上に圧縮され、他方は圧力不足で圧縮が不十分となっている可能性があることから、凹部又は底部の成形が不良で、結果として不織布の凹凸形状を維持することが難しくなる。
繊維密度の測定方法としては、例えば、不織布の厚さ方向の切断面を電子顕微鏡(例えば、日本電子(株)社製JCM−5100等の走査型電子顕微鏡)で測定し、坪量を厚みで割って算出することも可能である。
あるいは、次のような方法でも測定できる。即ち、不織布の厚さ方向の切断面を、前記電子顕微鏡を使用して拡大観察(拡大倍率は、繊維断面数が30〜60本計測できる倍率(例えば、150〜500倍)に調整する。)し、繊維断面数及び繊維断面数を測定した視野面積に基づいて、繊維密度(本/mm2)を算出する。測定は数ヶ所(例えば3〜5ヶ所)で実施し、平均値を算出してもよい。
このように、底部の厚さを、凸部における第1面側に突出した部分の厚さよりも小さくしたのは、底部9の繊維密度を高めて強度を担保する一方、凸部4については肌に触れる部分であるため繊維密度を高めずに柔軟にするためである。
底部の厚さについては、凸部の頂部の厚さの3〜60%程度とすることが好ましく、さらに好ましくは5〜50%程度とすることである。底部の厚さが凸部の頂部の厚さの3%未満であると、底部の繊維密度が過剰に高まるため硬くなりすぎ、不織布全体としての柔軟性が損なわれる可能性があり、逆に60%を超えると繊維密度が低くなりすぎることに起因して底部の形成が不十分となり、底部の強度を確保することができない。
図5〜図8は、不織布1を製造する製造装置の一例を示すもので、この製造装置50は、不織布1とするための加工を行う加工対象の不織布51がロール状に巻かれ、その加工対象の不織布51を搬送方向MDに向けて巻き出す巻出装置52と、巻出装置52から巻き出された加工対象の不織布51に予熱を与える予熱装置61と、予熱を与えた加工対象の不織布51を延伸して凸部及び溝部(凹部含む)を形成するための賦形加工を行う賦形装置62とを備えている。
不織布の製造方法としては、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法が挙げられ、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。このようにして製造された不織布の他、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースを使用してもよい。
また、熱可塑性樹脂繊維については、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。熱可塑性樹脂繊維は、界面活性剤、親水剤等により親水化処理されていることが好ましい。
また、賦形装置62は、上下一対の延伸ロール63,64を備えていて、図6に示すように、上方の延伸ロール63は、ロール幅方向に一定の間隔で配設された、この上方の延伸ロール63の外周面に沿って相互に平行に複数列設けられた突稜63aと、隣り合う突稜63a,63aの間に設けられた複数列の凹溝63bとを備えている。
一方、下方の延伸ロール64は、外周面に、上方の延伸ロール63の凹溝63bと噛み合うように設けられた複数のピン64aを備えている。図8に示すように、これらのピン64aは、ロール幅方向に対しては、上方の延伸ロール63の突稜63aと接触しないように一定の間隔で配設されていると共に、ロールの周方向に対しては、外周面に沿って一定の間隔でほぼ直線的に配設されている。この実施の形態における下方の延伸ロール64は、図7に示すように、複数のピン64aが、下方の延伸ロール64の外周面に千鳥状に配設された構成となっている。
予熱温度は、加工対象の不織布を構成する熱可塑性樹脂繊維の種類にもよるが、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)と高密度ポリエチレン(HDPE)との芯鞘型の複合繊維の場合、加熱ロールの外周面の温度を60〜120℃程度とすることが好ましい。
このとき、上方の延伸ロール63は、突稜63aが加工対象の不織布51と接触している部分を下方の延伸ロール64の方向に押し込み、これにより凸部4が賦形される。
このとき、加工対象の不織布51のうち、ピン64aと非接触状態で凹溝63b内に引っ張られた部分は溝部5となる。また、ピン64aの先端部分と接触していた部分は、凹溝63b内に強く押し込まれて賦形されるため、これにより、凸部4及び溝部5が延設される方向に延びる第1周面8a、及びロール幅方向に延びる第2周面8b、並びに底部9を有する凹部7が形成されることとなる。
さらに、この工程においては、凹部7の形成に際して、加工対象の不織布51に対しては下方の延伸ロール64のピン64aによって大きな圧力が加えられる一方、凸部4の形成に際しては、加工対象の不織布51は、上方の延伸ロール63の突稜63aの外周面によって、ピン64aに比べると弱い圧力が加えられる。そのため、凹部7と凸部4との形成に際しては、加えられる圧力の違いから、これらの凹部7の底部は凸部4の頂部に比べて薄く形成されることとなる。
これにより、凹部7に、破断繊維13の破断端部13aが含まれた孔部11が形成されることとなる。なお、一部の熱可塑性樹脂繊維は、孔部11の内部空間11aに架け渡された状態で残り、また、一部の破断繊維13の破断端部13aは内部空間11a内に延出した状態となる。
ここで、孔部11が形成されるのは、加工対象の不織布51の搬送方向MDに沿う方向、即ち、延伸ロール63,64の回転方向であって、凸部4及び溝部5が延設される方向であることから、孔部11も凸部4及び溝部5が延設される方向に沿う周面である第1周面8aに形成される。
そのため、凸部4や凸部4の繊維の移動の自由度が増す上、孔部11によって凸部4の引張力が緩和されて凸部4全体が柔らかくなるため、肌で不織布1を厚さ方向に押した際には柔らかく感じ、また肌を不織布の平面方向に滑らせた際には滑らかさを感じることができることができる。
さらに、凹部7の底部9の繊維密度が凸部4よりも高く、凸部4に比べて底部9の剛性が大きく変形しにくいため、不織布1が吸収性物品に使用された場合には、底部9の剛性によって不織布1、延いては吸収性物品の大きな変形を抑えることができる。その上、底部9は第2面3側が面状に形成されているため、吸収性物品の他の部材に安定的に面接触して、不織布1を安定的に支えることができる。この結果、底部9自体が不織布1を保形すると共に、吸収性物品に使用した場合には、吸収性物品の他の部材に面接触した底部9が周面8を通じて不織布1全体を支えるため、不織布1全体を安定的に保形し、不織布1の柔軟な肌触りを安定的に維持、確保することができる。
また、凹部7の孔部11は、繊維を溶融することなく形成された周縁部12を有し、この周縁部12は、破断により形成された破断繊維13の破断端部13aが含まれているため、従来のように溶融によって硬化した部分が存在しない。これにより、不織布1に優れた硬軟感(厚さ方向の柔軟性)及び優れた粗滑感(平面方向の滑らかさ)をさらに向上(柔らかく、滑らか)させることができ、肌に対してきわめて柔軟な感触を与えることが可能となる。
さらに、前記実施の形態では、孔部11が凹部7の周面における底部9寄りの位置に配設されているが、周面における孔部の位置については、必ずしも底部寄りである必要はなく、不織布の柔軟性を損なわない範囲で任意に設定することができる。
さらに、前記実施の形態では、孔部11の内部空間11a内に、熱可塑性樹脂繊維中の一部の繊維14が架け渡されているが、このように孔部の内部空間に架け渡された繊維が存在していなくてもよい。また、前記実施の形態のように、破断繊維の破断端部が孔部の内部空間内に延出していなくてもよい。
2 不織布の上面(第1面)
3 不織布の下面(第2面)
4 凸部
5 溝部
6 溝底部
7 凹部
8 周面
8a 第1周面
8b 第2周面
9 底部
11 孔部
11 孔部の内部空間
12 周縁部
13 破断繊維
13a 破断端部
Claims (6)
- 第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面側に突出する凸部と、前記第2面側に窪んだ溝部とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収性物品用の不織布であって、
前記凸部は、前記不織布の面の第1方向に向けて延設されていると共に、前記不織布の面において前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で複数列設けられ、
前記溝部は、前記第2方向に対して隣り合う前記凸部の間の空間に、前記第1方向に延設されていると共に、前記溝部の溝底部に、該溝部の溝底部よりも前記第2面側に位置する底部を有し、且つ前記第1方向に対して不連続に設けられた複数の凹部を備え、
前記凹部は、該凹部の周面の少なくとも一部が、前記第2面に通じる孔部を備えていて、前記凹部の底部は、前記凸部よりも繊維密度が高く、且つ少なくとも前記第2面側が面状に形成されている、吸収性物品用不織布。 - 前記凹部は、前記第1方向に沿うように形成された一対の第1周面と、前記第2方向に沿うように形成された一対の第2周面とを有し、前記孔部は前記第1周面にのみ設けられていると共に、前記第2周面は前記溝部の溝底部と連続している、請求項1に記載の吸収性物品用不織布。
- 前記凹部の前記底部の厚さは、前記凸部における最も前記第1面側に突出した部分の厚さよりも小さい、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品用不織布。
- 前記凹部の前記底部の繊維密度は、前記凸部の繊維密度の1.3〜15倍である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
- 前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさは、前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凸部の頂部の高さまでの大きさの50〜80%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
- 前記凸部は、隣接する他の凸部との間の間隔が0.25〜5mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
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